【安価】アンチョビ「クラウドファウンディング……?」 (132)


アンチョビ「う~ん……」

ペパロニ「どーしたんっすか?」

アンチョビ「いや、P40の修理費を冷静に計算してるんだが……」

カルパッチョ「全然足りてないんですよねえ……」

アンチョビ「かといって、支出もこれ以上減らせそうにないしなあ」 ハァ

ペパロニ「何かネットで寄付呼びかけてたじゃないっすか」

ペパロニ「あれはどーなったんすか?」

アンチョビ「んー、正直あんまり良くはないな」

アンチョビ「やっぱり無名に近いからダメなのかなー」

カルパッチョ「大学選抜戦での活躍も、ニュースで見ただけじゃ分からないような内容でしたもんねえ」

アンチョビ「知名度も固定ファンもないから寄付も集まらない……」

アンチョビ「うーん、どうすればいいんだ……」

ペパロニ「あ、じゃあ、完全な寄付じゃなくて、何かあげたらいいんじゃないっすか」

アンチョビ「ん?」

ペパロニ「ほら、ウチら、料理で活動費稼いでるじゃないっすか」

ペパロニ「それのもっと利益乗せまくった商品を用意して、応援の気持ちがある人は是非、みたいな」

アンチョビ「おおお、ペパロニやるじゃないか!」

アンチョビ「早速屋台にそういう応援メニューを組み込もう!」

カルパッチョ「それなら、クラウドファウンディングもしてみたらいいかもしれませんね」

アンチョビ「クラウドファウンディング……?」


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アンチョビ「クラウド……って、雲とかそういう意味だったよな?」

アンチョビ「ファウンディングってなんだ?」

ペパロニ「ばっかだなー姐さん、そんなのも知らないんすか?」

ペパロニ「ファウンディングニモとか流行ってたじゃないっすか」

アンチョビ「うっ、た、たしかに」

カルパッチョ「どっちも全然違います」


カルパッチョ「ざっくりと言ってしまうと、ネットでの資金調達ですね」

アンチョビ「寄付とは違うのか?」

カルパッチョ「寄付と同じようなものもありますけど、それは失敗したので……」

カルパッチョ「寄付してくれた金額に応じて、何かを贈る、という方式がいいんじゃないかと」

ペパロニ「通販ってことっすか?」

カルパッチョ「うーん……説明がちょっと難しいけど……」

カルパッチョ「さっき言ってた利益大きくしたメニューみたいに、基本資金に回せるようにあんまり高いものは送れないというか……」

アンチョビ「お気持ち程度ってことか」

カルパッチョ「他にも、物じゃないお返しなんかもありますけどね」

アンチョビ「ものじゃないお返し?」

カルパッチョ「何かのイベントだったり、権利だったり、そういうのですね」

アンチョビ「なるほどなあ」


アンチョビ「アンツィオ特性ピザのセットでも送るか?」

アンチョビ「金額に応じて枚数が変わる!みたいな」

ペパロニ「でもそれだと屋台と被っちゃいません?」

アンチョビ「だよなあ……」

アンチョビ「ウチのピザはアンツィオ特性の窯で焼くのも美味しさの秘訣だしなあ」

カルパッチョ「屋台の劣化品というのは気が引けますよね」

アンチョビ「うーん、詳しくないから全然浮かばない……」

ペパロニ「そうっすよねえ」

アンチョビ「カルパッチョは、クラウドファウンディングとやらは詳しいのか?」

カルパッチョ「詳しいというほどでは……」

カルパッチョ「まあ、何度かやったことくらいなら」

アンチョビ「……こういうのは知識がある人間に素直に従う方がいいよな」

アンチョビ「カルパッチョ、何か返礼品を考えてくれ」

カルパッチョ「ええ、私ですか!?」

アンチョビ「ああ、なんだっていいぞ」

アンチョビ「こういうのどうだろう、っていうのがあったら、遠慮せず言ってくれ」

カルパッチョ「ええと、それじゃあ、>>6なんてどうでしょう?」

私達の手打ちパスタ


アンチョビ「手打ちパスタか……」

アンチョビ「そんなに手打ちっていいものか……?」

ペパロニ「そこらの素人と比べたら絶対上手ですよウチら」

アンチョビ「まあそりゃそうだが……」

アンチョビ「よほどの職人でもなければ、機械にやらせた方が多分美味しく出来上がるんじゃ……」

ペパロニ「まあ、確かに普段から麺は仕入れてるやつっすもんねぇ」

アンチョビ「素材に拘って選んでるけど、アレも多分機械で作ってるやつだもんなあ」

カルパッチョ「こういうのは味じゃないから大丈夫かと」

アンチョビ「味じゃない……?」

カルパッチョ「ええ」

カルパッチョ「私だってコンビニのおにぎりより味が落ちても、タカちゃんの握ったおにぎりの方が食べたいですし」

アンチョビ「目が怖いぞ」


アンチョビ「まあ、でも、あれか……」

アンチョビ「手作りの真心的なやつなのか?」

カルパッチョ「そういうのもありますね」

アンチョビ「そういうのじゃなきゃ何なんだ…・・・?」

ペパロニ「まー、でも、手間かけると普通は人件費かかるっすからねー」

ペパロニ「手間をかけることで、ちょっと高めのお金を出そうとは思うのかも」

アンチョビ「なるほどなあ」

アンチョビ「まあ、手探りだし、とりあえずやってみるか」

アンチョビ「えーっと、まずはどうやるんだ」

カルパッチョ「クラウドファウンディングのサイトに登録するのがいいかと」

ペパロニ「ドゥーチェ大丈夫っすかー?」

ペパロニ「うっかりパソコン壊さないでくださいよー」

アンチョビ「私はバカなだけで機械音痴じゃ……」

アンチョビ「って、誰がバカだ誰が!」

カルパッチョ「とりあえず登録はやっちゃっておきますね」 カタカタカタッターーーン


カルパッチョ「目標額はどうします?」

アンチョビ「目標額?」

カルパッチョ「ええ」

カルパッチョ「それを達成して初めてお金を貰って、到達しなかったら返金するんです」

アンチョビ「な、なにぃ~~!?」

アンチョビ「お金なんていくらあったって足りないんだぞ!?」

アンチョビ「じゃ、じゃあ、例えばあと2万円って所まできても、最終的に足りなかったら……」

カルパッチョ「返金ですね」

アンチョビ「な、なんだって~!?」

アンチョビ「く、クラウドファウンディング、なんて恐ろしいんだ……!」

ペパロニ「目標に届かなきゃ1円も入ってこないなんて……」

ペパロニ「本腰入れてパスタ打たないと駄目っすね!」


カルパッチョ「目標金額どうしましょう」

アンチョビ「え!?」

アンチョビ「わ、私が決めるのか……」

ペパロニ「そりゃそうっすよー」

ペパロニ「姐さんあってのアンツィオなんっすから」

アンチョビ「いやでも私はもうすぐ引退する身だしなあ」

アンチョビ「と、とりあえず、目標額に行かないと困るし、1万円とかに……」

カルパッチョ「でもそれだと、すぐ達成して他の人が『あ、じゃあもういいか』ってなってしまうかも」

アンチョビ「えええ~……うう……」

ペパロニ「いくらに挑戦するんすか?」

カルパッチョ「いくらであろうと、全力でお手伝いしますよ」

アンチョビ「じゃ、じゃあ、100万円で」

ペパロニ「おおー」

カルパッチョ「100万円ですね、わかりました」 カタカタカタッターーーン

ペパロニ「でもなんで100万円なんっすか?」

アンチョビ「え?」

アンチョビ「あー……まあ、ペパロニも来年活動費を管理するようになれば分かるようになるさ、うん」

アンチョビ「……」

アンチョビ(挑戦って単語のせいで『炎のチャレンジャー』が頭をよぎったから、とは言えないよな……)


ペパロニ「あれ?」

ペパロニ「でもお金は達成するまで入ってこないンすよね」

アンチョビ「ああ、らしいな」

ペパロニ「んじゃ食い逃げされるかもしれないんじゃないっすか?」

カルパッチョ「あ、それも心配なくて」

カルパッチョ「御礼の品も目標額達成してから贈るのが基本なの」

ペパロニ「へー」

ペパロニ「ウッカリ忘れちゃいそうっすねー」

アンチョビ「そうっすねー、じゃあないだろ!」

アンチョビ「……まあでも、100万円入ったら、戦車の整備をして大会に備えなきゃいけないんだよな」

アンチョビ「私も進学の準備やらあるし……」

アンチョビ「返礼品、目標額達成してからだと難しくないか?」


ペパロニ「んじゃ、振り込んでもらったら速攻やったらどーっすか」

ペパロニ「その方が分かりやすいしー」

アンチョビ「うーん、それだと目標額行かなかったら大損だぞ」

カルパッチョ「ですよねえ」

ペパロニ「でもほら、ぶっちゃけ手打ちパスタってどーなのかわっかんないじゃないっすか」

ペパロニ「ウチラの屋台も基本は口コミ」

ペパロニ「まずは良さを知ってもらって、それから広まって今があるんすよ」

ペパロニ「じゃあクラウドマウンティングとかいうやつのも、先に良さを知ってもらって広めてもらわなくちゃ」

アンチョビ「うーん」

アンチョビ「……そうだな」

アンチョビ「折角ペパロニがちゃんと考えてたんだ、そうしてみるか」

ペパロニ「酷いなー」

ペパロニ「これでもいろいろ考えながらやってるんっすよー」

アンチョビ「料理関係だけは、な……」

ペパロニ「宴会芸もっすよ!」

アンチョビ「お前なあ」


カルパッチョ「まあ、商品は随時追加出来るならするとして……」

カルパッチョ「まずはこの手打ちパスタですけど、いくらで売ります?」

アンチョビ「うーん、どうするかな……」

アンチョビ「屋台と違って薄利多売だとキツイよなあ」

ペパロニ「屋台で出すチャリティメニューなんかだと、回転早いからちょっとは安く出来るんすけどねー」

アンチョビ「現地に赴いて作るとなると、時間もかかっちゃうもんなあ」

ペパロニ「ついでにそこで出張屋台とかどーっすか?」

アンチョビ「お、いいなそれ!」

カルパッチョ「でもやっぱり回れる数にも限界はありますよ」

アンチョビ「だよなあ」

アンチョビ「かといって高すぎて買う人なんて限られるだろうし……」

アンチョビ「とりあえず値段は>>19で設定してみるか」

300g 800円


カルパッチョ「300グラム800円ですか……」

アンチョビ「ああ」

アンチョビ「あんまり高いと気が引けるしな……」

カルパッチョ「まあ、販売戸数を絞ればなんとかなる……のかな……」

カルパッチョ「とりあえず……」 カタカタカタッターーーン

ペパロニ「いやー、誰か買ってくれるといいっすねー」

アンチョビ「誰かに食べてみてもらわないことには始まらないもんなあ」

カルパッチョ「あ、さっそく購入されました」

アンチョビ「ホントか!?」

ペパロニ「はっや」

カルパッチョ「まあ、あれだけ安ければ……」

アンチョビ「それで、どこの誰が買ってくれたんだ!?」

カルパッチョ「ええっと……」 カタカタカタ



手打ちパスタの購入者 >>23
(ガルパンキャラ以外でも名もない一般人等でも可)

役人(辻)


カルパッチョ「辻さん、という方ですね」

アンチョビ「名前からすると男性かな」

ペパロニ「男性客の方がガッツリ食べてくれたりするっすからねー」

ペパロニ「いいんじゃないっすか?」

アンチョビ「だな!」

アンチョビ「出張屋台も用意!」

アンチョビ「向かうは首都!」

アンチョビ「鍋を持て、具材を積み込め!」

アンチョビ「アンツィオ高校手打ちパスタ部、出動だあ!」


【会議室】

アンチョビ「ノリと勢いとパスタの国からドゥーチェ参戦だな!」 バーン

アンチョビ「手打ちパスタ、ノリと勢いで即座にお持――」

辻「……」

お偉いさん「……」

政治家先生「……」

何か真面目そうなおじさん「……」

ハゲ「……」

アンチョビ「……」

アンチョビ「ごめんなさいでした……」 バタン

ペパロニ「姐さーーーーーーーーーーーーーん!?」


ペパロニ「何速攻で扉閉め直してるんすか!」

ペパロニ「こっちは今でも打ち始められるんすよ!?」

アンチョビ「いやいや無理無理!」

アンチョビ「もうめっちゃ真面目そうな話し合いしてたから!」

アンチョビ「っていうか本当にここで合ってるのか!?」

カルパッチョ「間違ってはないようですね……」 カタカタカタ

ペパロニ「ほら、届けてあげましょうよ」

アンチョビ「いやいやいや」

アンチョビ「サプライズ特急便とか思ってたけど、誰より一番私が驚いてるからな!」

アンチョビ「っていうか今私間違いなく不審者だぞ!」

アンチョビ「いきなりあの場でパスタなんて打ち始められるか!」

ペパロニ「姐さんならいけますって」

アンチョビ「お前はあの『なんだこいつ』みたいな視線を見てないからそんなことが言えるんだ!」

ペパロニ「あー、そりゃあれっすね、室内に入る時はウィッグを外せという――」

アンチョビ「これは地毛だって言ってるだろ!」


ペパロニ「とにかく金を稼がなくちゃならないっすよ!」

ペパロニ「ここはガツン!と言ってやらないと」

アンチョビ「う、うう……そりゃそうだが……」

ガチャリ

辻「……」

アンチョビ「あ゙……」

辻「……アンツィオ高校の安齋選手がこんなところでなにを?」

アンチョビ「え、えーっと、その……」

ペパロニ「姐さんホラ、ノリと勢いで押しちゃいましょうよ!」 コソコソ

カルパッチョ「まずは礼儀正しく代表として挨拶をするべきじゃ……」 コソコソ

アンチョビ(えーっとえーっとどっちもその通りだよなまずは挨拶そんで元気にノリよく明るく――)

アンチョビ「ボ、ボンジョルノーゥ!」 ニッコー

辻「……」

アンチョビ「……」

辻「……」

アンチョビ「……」

アンチョビ「ごめんなさいでした……」 グスッ

ペパロニ「姐さーーーーーーーーーーーーーーーーん!?」


ペパロニ「どーしたんすか、いつものようにノリと勢いでぶっ壊しちゃいましょうよ!」

アンチョビ「無理無理無理無理!」

アンチョビ「初対面の大人だぞ!」

アンチョビ「っていうか完全にノンアポできた私達が悪かったというか……」

辻「……」

辻「他の部屋でも会議が行われています」

辻「あまり廊下で騒がれては困りますね」 クイッ

アンチョビ「あ、はい……」

辻「そもそも建物の中に屋台の道具を持ち込むのは非常識では?」

アンチョビ「はい……」

辻「きちんと許可は取ったんですか?」

アンチョビ「すみません……」

辻「戦車道を嗜む者として、最低限の礼節は覚えて頂きたい」 クイッ

アンチョビ「はい……」

ペパロニ「……」

カルパッチョ「こっちに非があるんだから突っかるのは駄目……!」 コソコソ

ペパロニ「でも、姐さんが……」 コソコソ

カルパッチョ「……非があった時に代表して頭を下げるのも、きっとドゥーチェのお役目」 コソコソ

カルパッチョ「来年アンツィオを率いる身として、目をそらさずに、見ていましょう」 コソコソ

アンチョビ「うう……」 ペコペコ


辻「これに懲りたら、あまりハメを外しすぎないように」

アンチョビ「はい……」

辻「例えば試合開始直前に援軍に来たりしないように」

アンチョビ「はい……はい?」

辻「……まったく」

辻「しかしまあ、注文していたことは事実」

辻「丁度、先方をどう饗すか困っていた所ですし……」

辻「手打ちパスタ、>>31グラムほど、頂きましょうか」

アンチョビ「……!」 パァァァァ

カルパッチョ「本当ですか!?」

ペパロニ「優しいおじさん……!」

辻「先方にお出しして問題ないクオリティを期待してますよ」

アンチョビ「は、はいっ!」

3000


アンチョビ「3000グラム……ってことは、いくらだ!?」

ペパロニ「馬鹿すねえ姐さん、そんな計算も出来ないんすか?」

ペパロニ「30000円っすよ」

カルパッチョ「8000円です」

アンチョビ「まあいい、依頼を貰ったからには全力だ!」

アンチョビ「釜の準備だ!」

ペパロニ「おーう!」

アンチョビ「私は一生懸命こねるぞー!」

アンチョビ「んしょ……!」

アンチョビ「ほっ……!」 

アンチョビ「んっ……とっ……!」 

辻「……」

辻(目の前で女子高生が今から口にするパスタを打っている……)

辻(なんだ、この謎の背徳感と卑猥さは……?)


ペパロニ「ありゃ、いつの間にかギャラリーが」

カルパッチョ「現役女子高生の手打ち姿を見に、といったところかしら」

ペパロニ「?」

カルパッチョ「……わからないならそれはそれで」

ペパロニ「まあいいや」

ペパロニ「今のうち、他の屋台メニューも作っておこっかな」

ペパロニ「こっちの売上がなきゃ、売れたお祝いに宴会する資金がないしな!」

カルパッチョ(そういうことにお金使うからすぐなくなるんじゃあ……)

カルパッチョ「それじゃあ私は……」

カルパッチョ「少しでも更に稼げるように、商品を追加しておこうかな」

追加する商品 >>35

ドゥーチェの生写真


カルパッチョ「手打ちパスタときたら、やはり生写真よね」

カルパッチョ「私だったらタカちゃんの手打ちパスタを食べたら生写真を眺めたくなるし……」

カルパッチョ「一応ドゥーチェに許可を――」

アンチョビ「はい!」

おっさん達「おおーーーー!」

カルパッチョ「若さとノリでオジサマの心を掴んでる……」

カルパッチョ「今声かけたら迷惑だろうし、あとでいいかな」

カルパッチョ「とりあえず登録して……と」 カタカタカタッターーーン

カルパッチョ「どんな写真にするかはあとでドゥーチェに相談するとして――」

カルパッチョ「あら?」

カルパッチョ「……」

カルパッチョ「ドゥーチェの生写真、もう売れてる……」


購入者 >>40

ダー公


カルパッチョ「うわー……ダージリンさんだ……」

カルパッチョ「……」

カルパッチョ「どうしよう……」

カルパッチョ「今更取り下げるわけにも……」

アンチョビ「どうしたーカルパッチョ」

アンチョビ「暗い顔なんて似合わないぞ!」

アンチョビ「今は新たなお得意様と宴会だ!」

カルパッチョ「はあ……」

カルパッチョ(まあ、最悪発送までにドゥーチェに言えばいいかな……)

アンチョビ「オトナのぶどうジュースも開けるかぁ!?」

辻「はっはっは、我々はまだ仕事が残っているので……」

辻「またの機会に味わわせてもらいますよ」

おっさん「楽しみですなあー! はっはっは!」

アンチョビ「お待ちしてまぁーす!」

辻「次は是非大洗廃校祝勝会をしたいものですね」

おっさん「ですなあ」

アンチョビ「その時は是非! アンツィオの料理で宴会を!」

アンツィオ「……」

アンツィオ「ん?」

予測変換使ってたらアンチョビがアンツィオになってやがる。申し訳ねえ。


【車内】

アンチョビ「はあ……」

アンチョビ「気まずくて思わず逃げるように撤収してきてしまった……」

ペパロニ「次どっかから依頼来てないんすかねー」

カルパッチョ「あ、それなんですけど、実は……」

カクカクシカジカー

アンチョビ「はぁ!? 私の生写真だぁ!?」

アンチョビ「な、なんでそんなものを……」

アンチョビ「っていうか、アイドルじゃないんだから、そんなものが売れるわけがだなァ!」

カルパッチョ「売れました。しかも秒で」

アンチョビ「なっ、ば、そ、そうなのか……?」

カルパッチョ(あ、ちょっと嬉しそう……)


アンチョビ「って、買ったのはダージリン……!?」

カルパッチョ「ええ、まあ……」

アンチョビ「何だか怖いな」

カルパッチョ「気持ちはわかります」

カルパッチョ「ですが、まあ、金額達成時に渡す写真を厳選すればいいだけですし……」

ペパロニ「あれ?」

アンチョビ「ん?」

ペパロニ「これ、うちらのページの説明文っすけど……」

ペパロニ「説明文、手打ちパスタの時のままになってないっすか?」

アンチョビ「は?」

ペパロニ「この書き方だと、生写真もパスタと一緒で『良さを知ってもらうため、最速で本人がお届け!』になってるよーな」

カルパッチョ「…………あっ!!」

アンチョビ「な、なにぃ~~!?」


アンチョビ「くっ……」

アンチョビ「だが今更撤回は出来ないだろ……」

カルパッチョ「身内だし、そこはなんとかなるんじゃ……」

アンチョビ「ダージリンだぞ?」

カルパッチョ「ああ……」

ペパロニ「ああ……」

アンチョビ「それに……」

アンチョビ「商品を引っ込めたなんて噂が広まれば、アンツィオの商売全体に関わってくる」

アンチョビ「ここは恥を忍んででも届けるぞっ」

カルパッチョ「ドゥーチェ……」 ジーン

ペパロニ「さっすが姐さん、まじマキシマムかっけーす!」

アンチョビ「ふっふーん、そうだろそうだろ!」

アンチョビ「それじゃあ世グロに向けて出発だー!」


カルパッチョ「……あっ! ちょっと待って下さい!」

アンチョビ「ん、なんだ?」

カルパッチョ「……」

カルパッチョ「向こうが……」

カルパッチョ「写真のリクエストをしてこようとしています!!」

アンチョビ「は?」

カルパッチョ「ポーズや衣装を、払った人の指定したものにする、ということです」

アンチョビ「なんだって!?」

カルパッチョ「……たしかにそれなら、より高額でもいい気がしますね……」

アンチョビ「いやいや、アイドルでもあるまいし、さすがに気が引けるというか……」

アンチョビ「かといって、安売りは絶対しないぞ」

カルパッチョ「でもこれ、ダージリンさんなりのアドバイスなのかもしれませんし……」

アンチョビ「うーん……」

アンチョビ「ちなみに衣装やポーズを指定した生写真でいくらって言ってるんだ?」

カルパッチョ「ええと、ダージリンさんは>>50円払ってくれるそうです」

5万


アンチョビ「5万か……」

アンチョビ「……」

アンチョビ「ゴマンン!?!?」

ペパロニ「え、リラとかでなく!?」

カルパッチョ「ええ……」

アンチョビ「ごまっ……5万てお前……」

ペパロニ「すげー!」

ペパロニ「ドゥーチェの写真にはそれだけの価値があるってことっすよ!」

アンチョビ「待て待て待て待て」

アンチョビ「そんないやまじでいやいやだっておま」

カルパッチョ(物凄い真っ赤になってる……)

ペパロニ(姐さん可愛い……)


カルパッチョ「その代わり、その衣装を着て届けてほしいんだそうです」

アンチョビ「な、なるほど……」

アンチョビ「まあその羞恥の分と考えれば、受け取ってもいいのかもな……」 ゴクリ

ペパロニ「姐さん目がドルマークになってるっすよ」

アンチョビ「ええいうるさい!」

アンチョビ「お前は前見て運転してろ!」

アンチョビ「……ま、まあ、ダージリンの奴はきっとP40の件を申し訳なく思ってアドバイスをくれたんだろう」

アンチョビ「ならば、素直に受け取ろうじゃないか!」

アンチョビ「5万ってことは、20枚売れば目標達成だぞ!」

カルパッチョ「ええ!」

カルパッチョ「あ、衣装をどこか道中で調達しなくちゃ……」

アンチョビ「あ、カメラもいるか……」

カルパッチョ「あ、カメラならタカちゃんを撮る用に使ってる私のやつが……」

アンチョビ「え、使っていいのか?」

カルパッチョ「はい」

カルパッチョ「丁度買い換えようと思ってましたから」

アンチョビ「そっか……」

アンチョビ「まあタダで貰うのは悪いし、中古として私が買い取るよ」

カルパッチョ「あ、なら、ドゥーチェが大学に行ってバイト始めてからでもいいですよ」

アンチョビ「そうか? 悪いな」

カルパッチョ「いえ」

アンチョビ「ところで、衣装とポーズってどんなのを指定してきてるんだ?」

カルパッチョ「>>54

フリフリピンクのファンシー衣装で胸元に手でハートを作ってウインクしてる


カルパッチョ「フリフリピンクのファンシー衣装で胸元に手でハートを作ってウインクしてるやつ、だそうです」

アンチョビ「なるほ……なんて!?」

カルパッチョ「フリフリピンクのファンシー衣装で胸元に手でハートを作ってウインクしてるやつ、だそうです」

アンチョビ「聞き間違っていてほしかったァー!」

アンチョビ「何考えてんだよダージリンは!」

ペパロニ「さぁー、格言のことしか考えてないんじゃないっすか?」

アンチョビ「お前はお前でダージリンを何だと思ってるんだ


ペパロニ「でもそんな衣装どこで手に入れるんスか?」

カルパッチョ「ドンキホーテとか……」

アンチョビ「ここでまた経費がかかるのか……」

アンチョビ「そりゃ5万くらい必要だよな……」

アンチョビ「……」

アンチョビ「ああああああああ~~~~!!」

アンチョビ「やるよ! もう!」

アンチョビ「ほらドンキ行くぞ!」

ペパロニ「ええ、マジっすか」

ペパロニ「聖グロにかちこむなら付き合うっすよ?」

ペパロニ「元々あいつらのせいだし」

アンチョビ「いいんだよ!」

アンチョビ「いや、よかないけどさ!」

アンチョビ「……私がちょっと恥をかけば、後輩たちにP40を残せるんだ」

ペパロニ「姐さん……」

アンチョビ「それで強いアンツィオが見られるなら、胸を張って恥ずかしいポーズをしてやるさ!」


カルパッチョ「そんなわけで買ってきました!」

アンチョビ「……」

アンチョビ「なあ」

ペパロニ「めっちゃ似合ってるっすよ!」

アンチョビ「なあ」

カルパッチョ「萌え萌えきゅん、ですね!」

アンチョビ「おい!」

アンチョビ「これスカート短すぎないか!?」

アンチョビ「ちょっと高いとこ登ろうものなら速攻ワカメちゃんだぞこれ!?」

ペパロニ「いいじゃないっすかー」

ペパロニ「その格好で高台登ってドゥーチェコールしたら最高にキュートっすよ」

アンチョビ「何がキュートだ! キュートじゃなくてアウトだよコレ!」

アンチョビ「もうこれ絶対あんまりよくないコスプレ衣装だろ!?」

カルパッチョ「そんなことありませんよ」

カルパッチョ「ちゃんとドンキホーテで、のれんの向こうに置いてあった立派なパーティグッズですよ」

アンチョビ「バカルパーーーーーーッチョ!!!!!」


ペパロニ「いいじゃないっすかー」

ペパロニ「パーティのための衣装なんて、アンツィオらしいっすよ」

アンチョビ「ああもう無垢だなお前は!」

アンチョビ「コレ多分そういうレベルの衣装じゃないの!」

アンチョビ「夜のパーティグッズというか、パーティのためじゃなくてパンティのための衣装なんだよ!」

アンチョビ「アンツィオらしいじゃなくて、アンツィオいやらしいになっちゃうんだよ!」

カルパッチョ「まあでも、露骨に穴とか空いてるわけでもないですし……」

アンチョビ「空いてたら着ないで出てきてるわ!」


ペパロニ「もー」

ペパロニ「でも他にそういう可愛いフリフリなかったっすよね」

カルパッチョ「ギリギリ要望満たしそうなのは、無いではなかったけど……」

アンチョビ「じゃあそれでいいだろそれで」

カルパッチョ「でもそれは、あまりにも健全コスプレ向けすぎてもさいというか……」

ペパロニ「あんまり可愛くなかったんすよね」

カルパッチョ「……折角だし、可愛らしいドゥーチェを撮りたいなあ、なんて」

アンチョビ「な、お前ら、何を言ってるんだ!」

ペパロニ「?」

ペパロニ「そりゃ姐さんの写真なんすから、最高に可愛く撮りたいじゃないっすか」

カルパッチョ「お客様にも満足してもらいたいですしね」

アンチョビ「……」

アンチョビ「んあ~~~~!」 アタマガシガシガシ

アンチョビ「わかった! わかったよ!」

アンチョビ「やるよ! やればいいんだろ!」

アンチョビ「卒業まで、私はお前らのドゥーチェだ!」

アンチョビ「その期待と想い、応えきってやるよ!!!」


カルパッチョ「はい、それじゃあ撮りますよ~」

アンチョビ「あ、ああ……!」

アンチョビ(は、恥ずかしい……!)

アンチョビ(いやでも我慢だ……)

アンチョビ(私のこの萌え萌えきゅん?な写真を求めてくれてる人がいるんだ……)

アンチョビ(これを可愛いと思って、大金を出してくれるんだぞ)

アンチョビ(私がそれを恥じてどうする!)

アンチョビ(私自身もそれを“いい!”と思って撮った写真じゃないと、失礼じゃないか!)

アンチョビ(料理だって、最高だと思うものしか出さないもんな……!)

アンチョビ(だったら、見せてやる! 魅せてやる!)

アンチョビ(自分を騙してでも、最高に可愛いと想いながら、満足してもらえるポーズを取るぞ!)

カルパッチョ「はい、チーズ!」

アンチョビ「ちょびーっ?」 キャルリーン


【聖グロリアーナ学園艦】

ダージリン「ブフォーーーッwwwwwwww」

ダージリン「んんっふwwwwwwwwwwww」

ダージリン「し、失礼wwwwwwwぶふっwwwwwwwwwwww」

ダージリン「面白wwwwっwすぎてwwwwwww紅茶が気管支にっwwwwwwwwんふうっw」

アンチョビ「…………ッ!」

ペパロニ「姐さん抑えて、あいつまだ今の時点じゃギリギリ客っす!」

カルパッチョ「拳をおろして下さい殴るならお金貰ってからです!」


アンチョビ「はっはっは……楽しんでもらえたか……?」 ヒクヒク

ダージリン「ええ」

ダージリン「最高のプロ意識をみせてもらったわ」

ダージリン「…………ンフッw」

アンチョビ「お前な……!」

ダージリン「ご、ごめんなさいね……w」

ダージリン「ところでこんな格言を知ってる?」

アンチョビ「?」

ダージリン「お客様は神様です」 キリッ

ダージリン「wwwwwwwwwwwww」

アンチョビ「…………ッ!」

ペパロニ「姐さん抑えて、あいつがウザいのは今に始まったことじゃないじゃないっすか!」

カルパッチョ「拳をおろして下さい殴るならハンマーを使って一撃でです!」


オレンジペコ「もう。嫌われても知りませんよ」

アンチョビ「もう好感度は大分急落してるぞ」

ペパロニ「これがパワプロなら付き合い長いのに『誰でやんす?』とか言い出すレベルで怒ってるからな!」

ダージリン「ごめんなさいね……w」

ダージリン「でも……そこまで私を嫌ってもいいのかしら」

アンチョビ「?」

ダージリン「一応、P40故障に私も多少関わっているし、力になろうと思っていたのだけど」

アンチョビ「多少……?」

カルパッチョ「力、というのは?」

ダージリン「クラウドファウンディングをしているのでしょう?」

ダージリン「私がさっさと目標額にいけるようなものを教えてあげようと思って」 フフ


アンチョビ「……」

ダージリン「何かしらその顔は」

アンチョビ「いや……」

アンチョビ「正直ろくでもない予感が……」

ダージリン「ふふ……こんな格言を知ってる?」

ダージリン「信じる者は得をする」

オレンジペコ「救われる、では?」

ダージリン「信じられないこの値段」

アンチョビ「よくそんなローカルで懐かしいCM知ってたな」


アンチョビ「まったく……」

アンチョビ「わかったよ、聞くだけ聞いてやる」

オレンジペコ「……私が言うのも何ですけど、いいんですか?」

アンチョビ「……まあ、ダージリンとは付き合いが浅いけど、悪いヤツじゃないのは知ってるしな」

アンチョビ「変なやつだけど、頭はキレる」

アンチョビ「話を聞くだけ聞いてもいいだろ」

アンチョビ「それで、何をいくらで提供すればいいと思うんだ?」

ダージリン「>>68

アンチョビの料理教室。女子高生が指導してくれます
1回2000円


アンチョビ「料理教室か……」

オレンジペコ「2000円ですか」

ダージリン「クラウドファウンディングにしては安い方よ」

ダージリン「でも――」

ダージリン「限られた人数にだけ返礼として行うのでなく、大人数相手にするのなら?」

ダージリン「この値段に釣られてわらわらと人が集まるはずよ」

アンチョビ「なるほどなあ……」

ダージリン「とりあえず、うちの学校でやっていったら?」

アンチョビ「え?」

オレンジペコ「うちの学園艦、料理は正直さっぱりですから……」 ゲッソリ

ダージリン「美味しいお弁当でも作れるようになりたい生徒は大勢いるのよ」 ゲッソリ

アンチョビ「目がマジだな……」


アンチョビ「よーし、お前達に料理を教えてやる!」

オレンジペコ「ありがとうございます」

アンチョビ「それにしても、何のメニューがいいんだろう?」

アンチョビ「とりあえず告知打たせて貰って、準備がいるから数日貰うとして……」

ペパロニ「その間に屋台で滞在費を稼ぎたいっすね!」

カルパッチョ「ついでに料理教室の宣伝も出来ますしね」

アンチョビ「客を入れるためにも、メニューが大事だよな」

ダージリン「それなら私が決めましょうか」

ペパロニ「えー、なんでっすか」

ダージリン「私は聖グロリアーナの代表」

ダージリン「生徒の心はよく分かっていて」

ダージリン「だからこそ、的確な意見を言えるはずよ」

アンチョビ「……ふむ」

アンチョビ「まあ聖グロの料理レベルがわからない以上、やたらと難しいやつやらせてもしょうがないしな」

アンチョビ「ダージリン、決めてくれ」

ダージリン「それじゃあ、>>71の作り方を教えてもらおうかしら」

美味しいイギリス料理


ダージリン「美味しいイギリス料理の作り方を教えてもらおうかしら」

アンチョビ「なんだその『空飛ぶ潜水艦』」みたいな自己矛盾の塊は」

ダージリン「あら、失礼なことを言うのね」

アンチョビ「実際イギリス人だって認めてるだろ……」

アンチョビ「アンツィオの料理は、確かに素材に拘ってはいるが、素材を選ばなくても美味くなるようなやつがほとんど」

アンチョビ「素材の味が完成品にダイレクトで直結するイギリス料理向きじゃないんだよなあ」

ダージリン「あら、自信がないのかしら」

アンチョビ「そうじゃなくてだなあ」

アンチョビ「美味いイギリス料理なんてものは、そもそも――」

ダージリン「こんな格言を知ってる?」

ダージリン「カラスは黒いという命題を覆すには、何千何億の中にたった一羽翼の白い者がいればよい」

アンチョビ「……?」

オレンジペコ「散様ですね」

ダージリン「貴女がその白い鳥を生み出してくれれば、イギリス料理は不味いという定義が覆る」

ダージリン「それができるのはイタリアンを極めたアンツィオ高校のドゥーチェたる貴女だけよ」


アンチョビ「しれっと結構な無茶を言ってないか?」

ダージリン「言ってるかもしれないわね」

ダージリン「でも、知名度もさほどなく寄付金すらまともに集まらない高校がクラウドファウンディングで突然100万集めようなんて……」

ダージリン「それこそ十分“無茶なこと”でなくて?」

アンチョビ「くっ……耳が痛い……」

ダージリン「貴女なら出来ると信頼しての依頼だったのだけれど……」

ダージリン「それとも難しかったのかしら?」

アンチョビ「……いいだろう」

アンチョビ「明日またここに来てくれ」

アンチョビ「本当に美味いイギリス料理を見せてやるよ!」

1日で終わるつもりが全然終わらなかったので、一端中断して明日の夜また続きを書きます
土日あたりでやればよかった……


【翌日・聖グロリアーナ学園艦】

アンチョビ「……」

アンチョビ「冷静に考えて……」

アンチョビ「イギリス料理を美味く作らせるのに、事前準備数時間じゃ足りなかったな……」

カルパッチョ「美味しい食材も揃えられませんでしたね」

アンチョビ「あいつらまともな食材持ってるかなー……」

ダージリン「あら、できないのかしら」

アンチョビ「おわあ!!」

アンチョビ「と、突然背後から現れるな怖いから!」

ダージリン「学園艦に無償で泊めてさしあげた……」

ダージリン「その礼を、渾身の料理教室をもって返して頂けると思っていたけれど……」

ダージリン「荷が重たかったかしら」

ペパロニ「出来らぁ!」

アンチョビ「お、おいペパロニ!」

ペパロニ「姐さんにかかれば、どんなイギリス料理だって至高の味に出来るって言ってんだよ!」

アンチョビ「す、すまないダージリン、ペパロニは寝起きが最悪なんだ!」

アンチョビ「あんまり煽るなよ、私だってさすがにイギリス料理をそこまで美味くさせる自信は――」

ダージリン「ふふふ……」

ダージリン「こんな格言を知ってる?」

ダージリン「吐いた唾は呑めぬ」

ダージリン「そこまで言ったからには、育ちのいいとされる聖グロリアーナの生徒を満足させるイギリス料理を作ってもらうわ」

ペパロニ「え!? イギリス料理なのに美味しいイギリス料理を!?」


ダージリン「では、会場に移動しましょうか」

アンチョビ「あ、ここでやるんじゃないのか?」

ダージリン「ええ」

ダージリン「あくまで、集合場所がここだっただけ」

ダージリン「こんなところで料理をして、大爆発しようものなら、大惨事になってしまうもの」

アンチョビ「なんで料理で爆発なんてするんだよ」

ダージリン「きちんと会場は燃える建造物のない広場を抑えてあります」

アンチョビ「なんで燃えるんだよ!?」

アンチョビ「なあ大丈夫か!? お前ら本当に料理出来るのか!?」

アンチョビ「美味い料理とか以前の段階じゃないよな!? な!?」


ダージリン「だだっ広い広場で調理をするのも乙ではなくて?」

アンチョビ「そりゃそうかもしれないけど、ちゃんと調理になるんだろうなあ?」

ダージリン「それよりもっと心配することがあるでしょう?」

アンチョビ「は?」

ダージリン「ちゃんと人が集まっているか――」

アンチョビ「確かに、人が集まってお金になるに越したことはないけど……」

アンチョビ「元々はダージリン相手くらいに考えてたし、別にダージリンとサシでも――」

ダージリン「あら、そうだったの」

ダージリン「てっきり人が多い方がいいと思って……」

ダージリン「チケット売り切れ間近! 超激レア! 淑女必見!」

ダージリン「みたいなキャッチコピーを添えて、アッサムに宣伝させたのだけど」

アンチョビ「ダージリン……」

ダージリン「少しくらい、力になろうと思ってね」

ダージリン「100人キャパの広場を抑えてあるし、調理器具も100組用意してあるわ」

ダージリン「そして、100枚限定完売必須を謳ってあるの」

アンチョビ「ダージリン……?」

ダージリン「全然売れてないと、赤っ恥ね」 フフ

アンチョビ「ダージリン!!!!!!」


アンチョビ「い、いやだー!」

アンチョビ「だだっ広い広場で100組の調理器具に囲まれながら数人で料理なんていう光景は嫌だぞ!」

ダージリン「安心して」

ダージリン「誰にもそれを見られてないと悲しいだけだけど、ちゃんとアッサムがSNSにその光景をアップしてくれるから」

アンチョビ「安心要素がどこにもないだろ!」

ダージリン「でも、もう逃げられなくってよ?」

ダージリン「間もなく、会場の広場につきますから」 フフ

アンチョビ「うう……」

アンチョビ「頼む~、せめて半分くらいは埋まっていてくれ~~~~!」


アンチョビの料理教室の受講者人数 >>84のコンマの人数

aaaa


がらーーーーん

アンチョビ「う……」

アンチョビ「おお……」

ダージリン「微妙そうな顔ね」

アンチョビ「いや、こう……」

アンチョビ「初めての料理教室でこれなら上出来だよなとは思うんだよ……」

ダージリン「なら素直に喜んだらどうかしら」

アンチョビ「お前がハードルガン上げしてこんな孤独感煽るような調理環境を用意したせいでそうなってるんだろ!」

アンチョビ「っていうか青空の下にシステムキッチン100組とかよくやったなお前ら!」

アッサム「うちもそこそこお金はありますので」

オレンジペコ「あまり皆調理しないせいで、キッチンも余っていて……」

アンチョビ「くっそーなんか腹立つな」


アンチョビ「まあ、見知った顔ばっかだけど、とりあえずちゃんとやるぞ」

ダージリン「よろしく」

オレンジペコ「ちょっと楽しみだったんですよね」

アッサム「食事にそこまで手間をかけてもコストパフォーマンに疑問が残るけれど」

ローズヒップ「早く食べられる手間入らずこそ正義、ですわ!」

アンチョビ「まあまあ」

アンチョビ「確かに手間に比例して美味くなるわけじゃあない」

アンチョビ「でも、その一手間が、小さな幸せや笑顔につながっていくんだ」

ルクリリ「おお……何か講師っぽい……」

ニルギリ「ちょっとドキドキしてきますね」

アンチョビ「こっちもちょっと不慣れでドキドキしてるけど……」

アンチョビ「折角出し、楽しんで料理をしよう!」

ルフナ「バニラ達は来られないみたいだし、後から教えてあげられるようにならなくちゃ」

アールグレイ「ダージリンに誘われて遊びに来たのだけれど……」

アールグレイ「アンツィオの今の隊長が講師なら、期待できるかもしれないわね」 フフ

伊右衛門「緊張の至り」

アンチョビ(何か変な奴が混じってる……)


アンチョビ「まあいいか」

アンチョビ「とりあえず今日は、ローストビーフを作ろうと思う」

オレンジペコ「ローストビーフ……ですか」

アンチョビ「ああ」

アンチョビ「正直、最初からまともなイギリス料理なんてこれくらいしか浮かばなかったからな……」

ローズヒップ「あー、それは言えてますわ」

ローズヒップ「私も限界まで名前をローズヒップにするかローストビーフにするかで迷いましたし」

アッサム「聖グロリアーナの生徒として恥ずかしくない名前を名乗るように」

アールグレイ「はは、相変わらず固いのね、アッサムは」

伊右衛門「堅物の極み」

アンチョビ(我慢しろ私……人のネーミングや性格やキャラ付けに不躾なツッコミを入れるのは失礼だぞ……!)

ペパロニ「何か変なやついないっすか?」

アンチョビ「しっ! そういうの言っちゃ駄目なんだぞ!」


アンチョビ「まあローストビーフは抑えておけばサンドイッチとか色々応用が効くしな」

ダージリン「サンドイッチならきゅうりが欠かせないわ」

ローズヒップ「きゅうりですね! シュバッと買ってきて差し上げますわ!」

アンチョビ「うん話ちゃんと聞いてくれな」

ルクリリ「広場にキッチンだけ並んでる姿……すごいな……」

ペパロニ「いっそ一人で10台使うとか!」

ルクリリ「面白い!」

アンチョビ「うんいきなり無駄にハードモードにするのやめようなー?」

ルフナ「先生! 包丁の切れ味を確認しようと指でなぞったらとんでもなく血が吹き出してきました!」

アンチョビ「うん先生ちょっと卒業前のこのタイミングで担任の先生の苦労が分かって申し訳なさでいっぱいになってきたぞー」

アンチョビ「仮に教員免許が取れても物事教えて食ってく自信完全になくなってるからなー?」

アンチョビ「頼むからちょっと話聞いてくれー?」


【数時間後】

アンチョビ「……」

アンチョビ「どっと疲れた……」

アンチョビ「ローストビーフって、こんなに時間と体力使うものだったっけ……」

ダージリン「あらあら、お疲れのようね」

アンチョビ「誰のせいだと思ってるんだ……」

ダージリン「あら、やると決めたのは貴女でしょう?」

アンチョビ「そりゃそうだけど……」

アンチョビ「あの生写真の格好しろって言い出したお前との問答がなかったらもっと楽だったと思うんだよな」

ダージリン「こんな格言を知ってる?」

アンチョビ「知らん」

ダージリン「……」

アンチョビ「……」

ダージリン「……」

オレンジペコ「あの、ああ見えてダージリン様はこういう扱いに対して結構繊細で……」 コソ

アンチョビ「わ、悪かったよ……そんな泣きそうな顔するなよ……」


ダージリン「何を言おうとしたのか忘れてしまったけれど――まあ、いいわ」

アンチョビ「いいのかよ……」

アンチョビ「まあいいや……私も疲れた」

アンチョビ「とにかく9人もローストビーフ作れたら、これで美味いサンドイッチくらいつくって士気高揚にできるだろ」

オレンジペコ「ええ、感謝します」

ダージリン「ところで……」

アンチョビ「ん?」

ダージリン「そんなに料理教室や生写真が大変だったのなら、自分自身で返礼品を考えてみたらどうかしら」

ダージリン「楽で、それでいて効率よく稼げるものが浮かぶかもしれないわよ?」

アンチョビ「……」

アンチョビ(確かに、これだけ苦労したのに、思ったより稼げてないもんな……)

アンチョビ「んー……」

アンチョビ「>>94も扱ってみるか」

ウィッグ


ペパロニ「おー、さすが姐さん」

ペパロニ「普段こーいうウィッグをつけてるんっすね!」

アンチョビ「馬鹿これは地毛だ!」

アンチョビ「……地毛を色々弄ってる内に、髪の毛整えるのは結構上手くなった自信あるからな」

アンチョビ「普段皆が面倒臭がるような、こういうオシャレなウィッグも需要あるんじゃないと思ってさ」 フンス

カルパッチョ「さすがドゥーチェ、乙女な技術に長けてますね」

アンチョビ「あとは値段かー」

アンチョビ「結構先が長いもんなあ」

アンチョビ「とりあえず>>96に設定しておくか」

2000円


カルパッチョ「2000円ですか……」

アンチョビ「ん? どうかしたか?」

カルパッチョ「いえ」

カルパッチョ「それだと目標が遠いんじゃないかと……」

ペパロニ「ええっと、今って確か……」

手打ちパスタ 3000グラム 合計8000円
ドゥーチェの生写真 1枚(恥ずかしいポーズ指定) 合計50000円
アンチョビの料理教室 生徒9人(イギリス料理) 合計18000円

クラウドファウンディング合計 76000円

カルパッチョ「7万6千円ですね」

アンチョビ「おお、そんなに!」

カルパッチョ「……でも目標の10分の1にもきてませんよ」

アンチョビ「うっ……」

ダージリン「こんな格言を知っている?」

ダージリン「脱いだら稼げる」

アンチョビ「ふざけんなお前」


アンチョビ「生写真はあくまで健全なやつだけに決まってるだろ!」

アンチョビ「イケない稼ぎ方だし、大体そんな稼ぎ方で得たお金で胸を張って戦車道なんて出来るか!」

カルパッチョ「ドゥーチェ……」

アンチョビ「確かにウィッグだって安いかもしれないさ!」

アンチョビ「でも、ぼったくるような形を取って得たお金よりも!」

アンチョビ「満足して喜んでもらい、笑顔と共に貰ったお金で直してこそだろ!」

アンチョビ「それでこそ、ノリと勢いで皆が笑顔になる我がアンツィオの戦車道なんだ!」

カルパッチョ「ドゥーチェ……!」 ジーン

ペパロニ「姐さん……!」 ジーン

ダージリン「……」

ダージリン(それじゃあただの通販売上と変わらないのでは……)

オレンジペコ(クラウドファウンディングの意味を分かってないんでしょうか……)


アンチョビ「それに商品も充実してきたし、ここから爆発的に稼げるに決まってるだろ!」

ダージリン「果たしてどうかしらね」

アンチョビ「い、今だってきっと注文がバンバン――」

カルパッチョ「あっ、注文入りました!」

アンチョビ「え、ほ、ほんとに!?」

アンチョビ「あ、いや、予想通りだな、うん!」

ペパロニ「でもまだ一件だけみたいっすねー」

アンチョビ「馬鹿、大きな数だけ求めて小さな積み重ねに感謝出来なくなったら終わりだぞ!」

アンチョビ「それで、どれが売れたんだ!?」

カルパッチョ「ええと、>>101>>103購入されたようです!」


>>101は下記商品から選択
・アンツィオ生徒の手打ちパスタ 300グラム800円
・ドゥーチェの生写真 1枚50000円
・アンチョビの料理教室 1人1回2000円
・ウィッグ 1つ2000円

>>103>>101の商品のお買上げ個数

ケイ

1万個

自由安価は何でも通すけど、さすがにこれ通すと際限ないから、商品だけ再安価だよ >>108
下記から選んでね
・アンツィオ生徒の手打ちパスタ 300グラム800円
・ドゥーチェの生写真 1枚50000円
・アンチョビの料理教室 1人1回2000円
・ウィッグ 1つ2000円

パスタ


カルパッチョ「パスタが1万個購入されたようです!」

アンチョビ「おお!」

アンチョビ「ホラ見ろ!」

アンチョビ「安価で良いものを提供するからこそ、こうして纏め買いが――」

アンチョビ「って、一万ンンンン!?」

カルパッチョ「は、はい……」

カルパッチョ「300グラムの商品を1万個注文されてます!」

アンチョビ「ってことは、300グラムかける10000個で……えーっと、300万グラムってことは……」

アンチョビ「な、何キロだ?」

ペパロニ「ばっかだなー姐さん、そんなことも分からないんすか?」

ペパロニ「300キロっすよ300キロ!」

アンチョビ「さんびゃくう!?」

カルパッチョ「……3000キロです」

アンチョビ「3000キロぉ!?」

カルパッチョ「言い換えると、3トンです」

アンチョビ「と、トン!?」

アンチョビ「トンって、あのトンか!?」

カルパッチョ「どのトンのことを言いたいのかわかりませんが、トンです」

ペパロニ「うおーっ、マジで!? キング・ザ・100トンのトン!? ローリング1000トンのトン!?」

アンチョビ「と、ととととんでもない量だな!」

カルパッチョ「トンでもないのでなく、トンなんです」

ダージリン「面白いぐらいに動揺してるわね」


アンチョビ「えーっとえーっと、10000個購入したってことは合計が……」

ペパロニ「80万っすよ! 目標目前じゃないっすか!」

カルパッチョ「えーっと、800万円なので余裕で達成できます」

アンチョビ「800万ンンンン!?」

アンチョビ「お、おおおお落ち着け!」

アンチョビ「落ち着いて返信するんだ!」

アンチョビ「きっ、気分を害してキャンセルされないようになっ」

カルパッチョ「は、はい!」

オレンジペコ「……あの、そこまで来るとさすがにイタズラなんじゃ」

アンチョビ「!?」

アンチョビ「い、いや、さすがにネットニュースに載せてもらうくらい状況のヤバさをアピールしてるんだし、そんな悪質なことはないだろ……」

ダージリン「随分お優しいのね」 フフ

アンチョビ「い、いいだろ! そんだけ頼んでくれた人なんだぞ、信じたいじゃないか!」

オレンジペコ「ちなみにどなたが注文しているんです?」

カルパッチョ「ええっと、>>112

アンツィオ高校OB会


カルパッチョ「……アンツィオ高校OB会、のご名義です」

アンチョビ「えっ……」

ダージリン「あら」

ペパロニ「あれ、この注文画面、何か長くないっすか?」

カルパッチョ「長い?」

ペパロニ「ほら、こう、下までずらっと何か続いてるというか……」

カルパッチョ「言われてみればスクロールバーがいつもより――」

カルパッチョ「これ……」

アンチョビ「備考欄が、びっしり……」


『やったな! 見てたぞ! 悲願の初戦突破おめでとう!』

『祝勝会だ!鍋の準備をしろ!選手とスタッフ全員を労え!私達からの奢りだぁ!』

『ちゃんとついてきてくれた皆に感謝の気持ちを記さないと駄目だよ。手打ちパスタは皆に振る舞ってあげてね』

アンチョビ「これ……」

ペパロニ「一行ずつコメント書かれてるっすね……あと、何か名前も添えられてるっす」

アンチョビ「この名前……」

オレンジペコ「これは……?」

ダージリン「去年聞いた名前ですし、卒業生の方でしょうね」

『P40、買ってすぐに壊しやがって!??? あれは私達のおやつ代でもあるんだぞ~????』

『↑絵文字、文字化けしてそうwwwww』

『↑そーいうどっか抜けてるとこあるから、安齋にカリスマで劣ったんだよwwwwwwww』

アンチョビ「先輩……」

『実際安齋には色々負担かけちゃってたよね、ごめんね』

『頼りなかった先輩だけど、もう社会人様だっていっぱいいるからな、金くらいならちょっとはなんとかなるのだよ!(ΦωΦ)フフフ…』

『本当にちょっとだから、安齋と面識のないOGの方にもいっぱい出して貰ったんだけどね笑』

『むしろ私らより上の代のほうが羽振りがよかったんだけどね』

『↑黙っておけよそれはwwwwwwwwwwwwwwww』

アンチョビ「はは……備考欄はチャット欄じゃないっていうのに……」

『これは、皆からのお礼と、労いと、それと素直な応援の気持ち。受け取ってね』

『私達がこうしたように、次は安齋がする番なんだからな! 美味いパスタ打ってやれよ!』

『茶々入れたくないし、ドゥーチェ引退パスタ祭りには行けないけど、見たいから誰か録画しておいてねw』

『安齋絶対泣くわ。花京院の魂賭けれる』

『分かる』

『それな』

アンチョビ「はは……」

アンチョビ「先輩達、相変わらずだなあ……」 グスッ


ダージリン「あらあら」

ダージリン「さすがにこれが手の込んだイタズラなんてことは――」

オレンジペコ「さすがにないかと」

アンチョビ「うう……」 ゴシゴシ

アンチョビ「どうだ!」

アンチョビ「こういうこともあるんだよ!」

ダージリン「何が『どうだ』なのかさっぱり分からないのだけれど」

ダージリン「でもまあ、今回は素直に『おみそれしました』と言っておこうかしら」

ダージリン「さすがにこれは、予想もしてなかったもの」

ルクリリ「……でも、OB会が出してくれるなら、別にクラウドファウンディングなんてしてなくてもよかったんじゃあ」

ダージリン「それは違うわ」

ダージリン「彼女のこれまでの姿勢が、クラウドファウンディングでもブれなかった彼女の信念が、この結果を生んだのよ」

ダージリン「それに――例えば手打ちのパスタを振る舞って後輩とお別れ会をするのが伝統にでもなろうものなら」

ダージリン「今後もどんどん絆を深め、強力な“ドゥーチェ”が生まれてくるかもしれない」

ルクリリ「……そんなものですか」

ダージリン「ええ」

ダージリン「こんな格言を知っている?」

ダージリン「戦車道には、人生の大切なものが詰まっている――」

ダージリン「……彼女の生き様や信念が詰め込まれた戦車が通った道こそが、未来を作る彼女の“戦車道”なのよ」

ルクリリ「……なるほど」

ルクリリ(何言ってるんだかよく分からないけど、格好いいこと言ってるっぽし、とりあえずなるほどって言っておこう)

オレンジペコ(あ、これ絶対よく分かってないやつだけど指摘したら面倒そうだから黙っていよう……)


アンチョビ「よーし、ペパロニ、カルパッチョ! アンツィオに戻るぞ!」

アンチョビ「一刻も早く戻って、練習に集中だ!」

アンチョビ「そして冬の大会で成果を残し、先輩達の想いに報いる!」

アンチョビ「祝勝会で、手打ちパスタパーティーをするぞ!」

ペパロニ「おおーっ!」

カルパッチョ「はい!」

ダージリン「あらあら、手強いライバルが生まれてしまったこと」 フフ

アンチョビ「……まーだ余裕ぶってるけど、今のうちだぞー?」

アンチョビ「西住が、大洗が、わずか一大会で強豪校の仲間入りを果たしたように!」

アンチョビ「この“ドゥーチェ”アンチョビが、残りの期間でアンツィオを強豪校の仲間入りさせてやる!」

ペパロニ「さっすが姐さん!」

アンチョビ「その後で上位常連校にするのはお前達の役目だからな?」

カルパッチョ「任せて下さい!」

アンチョビ「まだまともに戦ったことはないけど――」

アンチョビ「戦車道で顔を合わせることがあったら、よろしくな!」


ダージリン「ええ、そうね」

ダージリン「私としては、戦車道以外で顔を合わせてもいいと思っているのだけれど」

アンチョビ「はあ!?」

アンチョビ「な、なんだよ急に……そんな、こ、告白みたいなこと言って……」

ダージリン「料理教室」

ダージリン「また受けたかったのだけれど」

アンチョビ「あ、ああ~~! はいはい! 料理教室ね!」

アンチョビ「まあ、ウチは万年金欠だからな」

アンチョビ「クラウドファウンディングのページは残しておくし、クリックしてくれたらまた来てやるさ」

ダージリン「楽しみにしているわ」

アンチョビ「それまでローストビーフを何度も反復練習して、ちゃんと作れるようにしておけよー?」 ハハハ

アンチョビ「サンドイッチとかにも使えるし、オカズに最適なんだからな!」

ダージリン「ええそうね」

ダージリン「料理教室の内容を思い出しながら、この生写真を何度も眼福拝見しておかなくちゃね」 クス

アンチョビ「んなっ!」

ダージリン「オカズに最適らしいし、反復するのが楽しみだわ」 クスクス

アンチョビ「あーーーっ、もう! そういうのよくないんだからなあ!」 マッカッカー


アンチョビ「ったく……そーいう目で見るなら写真返せ!」

ダージリン「あらあら、お金はいくらあっても足りないのでしょう?」

ダージリン「もう目標額も達成して入金も確定したのだし、返せないわよ」 クスクス

アンチョビ「うぐぐぐぐぐぐ……!」

アンチョビ「次会ったとき覚えておけよー!」

アンチョビ「もう私の生写真なんて見たくないってくらい、ギッタンギッタンにしてやるんだからな!」

ダージリン「こんな格言を知ってる?」

ダージリン「向こう30年、日本にはちょっと手を出せないなみたいな、そんな感じで勝ちたいなと思ってます――」

オレンジペコ「イチロー選手の言葉ですね」

ダージリン「伝統の聖グロリアーナの隊長として、その日が来たら全力を持って叩き潰してあげる」


ダージリン「……最後に、一ついい?」

アンチョビ「ん?」

ダージリン「……」

ダージリン「ここまで来て、どうして私達に修理費の請求をしなかったのかしら」

アンチョビ「え?」

ダージリン「一応、P40大破の一因はこの私」

ダージリン「そこまでお金に困っているなら、私か聖グロリアーナに請求してもおかしくはないと思ったのだけど」

アンチョビ「……当たり前だろ?」 キョトン

アンチョビ「まあ正直腹は立ってるけどさ」

アンチョビ「でも、早々に賠償を自分から言い出さなかったってことは、悪意がなかったり、何か理由があったってことだろ」

アンチョビ「付き合いは長いわけじゃないけど、意味なくそんなことする奴とは思ってなかったし」

アンチョビ「……実際、本当に悪意とかでやってたんだとしたら、今だってこうしてわざわざそこに触れたりしなかっただろうしな!」

ダージリン「……」

アンチョビ「あ、さっきも言ったけど、ムカついてはいるんだからな!」

アンチョビ「……ただまあ、ムカついたけど、恨み続けてもしょうがないし」

アンチョビ「恨み続けるよりも、許して前に進んだ方がいいからな!」 ニカッ


アンチョビ「……それにさ」

アンチョビ「私はドゥーチェ、アンツィオのトップなんだ」

アンチョビ「……自分のトコで起きた揉め事の責任を取るのが、トップの役目だろ?」

ダージリン「……なればこそ、トップとして、請求してもよかったのに」

アンチョビ「まあ、出してくれるっていうなら、そりゃ貰ったけどさ」

アンチョビ「ドゥーチェってのは、アンツィオの“顔”だからな」

アンチョビ「私が、“陽気で明るくノリと勢いのあるアンツィオ”のイメージに泥を塗るわけにはいかないだろ」

ダージリン「……」

ダージリン「全く、甘っちょろい理想論なことを言うのね」

アンチョビ「いいだろー、結果としてなんとかなったんだから」

ダージリン「ええ、勿論」

アンチョビ「ふえ?」

ダージリン「甘い理想論を吐きながら、信念を貫き、そして結果として勝利と夢を掴む――」

ダージリン「ひょっとすると、貴女が一番みほさんい近い隊長なのかもしれないわね」


ダージリン「お金で解決、というのも淑女とは言い難いし――」

ダージリン「後日、貴女のところの副隊長にでも、連絡を取らせてもらうわ」

アンチョビ「?」

アンチョビ「おお、それはいいけど……」

アンチョビ「多分ペパロニよりはカルパッチョの方が、何か連絡を取るんだったら向いてるだろうな」

ダージリン「言われなくともその予定よ」

アンチョビ「……で、連絡ってなんだ?」

アンチョビ「あ、私が聞いちゃ駄目なやつか?」

ダージリン「かまわないわよ」

ダージリン「どうせお披露目はあるんだし」

アンチョビ「?」

ダージリン「……淑女には、反省し、次に活かせる賢さが必要なの」

ダージリン「だから――次はもう、簡単にP40が壊れないよう、あれこれとアドバイスでも送ってあげようかと思って」

アンチョビ「本当か!?」

アンチョビ「助かるよ、ありがとうな!」

ダージリン「いいわよ」

ダージリン「……一応、お詫びなんだし」


ペパロニ「姐さ~ん! 出発するっすよ~!」

アンチョビ「ああー! 今行くー!」

アンチョビ「それじゃあな!」

アンチョビ「冬の大会では負けないからな!」

ダージリン「あらあら、随分と台詞が無粋なのね」

ダージリン「それじゃあ決勝戦でかち合う前に敗退するかのようですわ」

アンチョビ「?」

ダージリン「こんな格言を知っている?」

ダージリン「こういう場面に適した、機知を効かせた格言なのだけど」

アンチョビ「なんだ、それ?」

ダージリン「ボン ボワイヤジュ(よい旅を)」

アンチョビ「……?」

アンチョビ「ええっと……」

アンチョビ「ボン ボワァイエ(猪木)」

ダージリン「聞き取れなかったなら無理して真似しなくていいわよ」


【数ヶ月後】

アンチョビ「ついに……」

アンチョビ「ついにこの日が来たァ!」

アンチョビ「P40、復活の日だァ!」

ペパロニ「あの布の中に、P40がいるんっすね!」

アンチョビ「ああ!」

アンチョビ「なんとか間に合ったのも、クラウドファウンディングで協力してくれた人達のおかげだ」

アンチョビ「お前ら、OGの先輩方に!」

アンチョビ「そして政府の役人さんや聖グロリアーナの連中に感謝だぁ!」

アンツィオ生「ありがとー!」「グラッツェ!」「愛してるぜー!」

アンチョビ「今大会では、このP40を用いて二回戦突破――」

アンチョビ「否! 絶対優勝を果たしてみせる!」

オオーーーーーーー!

イエェェェェェェイ!

ヒューヒュー!

アンチョビ「今後も修理費が嵩んで実戦投入できない、なんて戦艦大和みたいなことになったら本末転倒だ」

アンチョビ「そこで今回、聖グロリアーナから聞いた、大破しないカスタマイズもしてくれているらしい!」

ヒューヒュー!

グロアナサイコー!

イイゾー!

カルパッチョ「そのカスタマイズは、ダージリンさんに聞いて、私が担当させて頂きました」

アンチョビ「私もまだ見てないから楽しみなんだよなー」

ペパロニ「え、そうなんすか?」

アンチョビ「ああ」

アンチョビ「どうせなら――帰ってきたP40は、皆と一緒に見たいと思ってさ」

ペパロニ「姐さん……」 ジーン

アンチョビ「それじゃあ公開するぞ!」

アンチョビ「カルパッチョ、布を取れェ!」

アンチョビ「生まれ変わった、THEニューP40の、御開帳だあ~~~~~!!」


アンチョビ「…………」

ウオオオオオオオオオオオオオ!!

スゲエエエエエエエエエエエエエエエ!!

ヒャア! タマンネェナア!

アンチョビ「…………は?」

ペパロニ「うおおおおおおおおお!?」

ペパロニ「こ、ここここここれは!?」

カルパッチョ「かつて、船乗りの多くは、乗っている船が大破せぬよう、船に女神を乗せていたとされてます」

カルパッチョ「そこに由来するのか、愛機を撃墜され大破せぬよう、愛機に女神を乗せる人も少なからずいるんだそうです」

ペパロニ「な、なるほど……」

ペパロニ「だから、こんな女神の絵が……!」

カルパッチョ「そう」

カルパッチョ「船は女神の像だったけど、戦闘機や戦車にそれは難しい」

カルパッチョ「だから、女神のイラストを、戦車に入れるようになったんだそうで」

アンチョビ「いや、いやいやいやいやいや!」

アンチョビ「これ! これぇ!」

アンチョビ「女神っていうか、私じゃないかあ!」

アンチョビ「しかも、ダージリンに渡した生写真のと同じ格好で同じポーズの!!!!」


ペパロニ「何言ってるんスか、うちらの女神って言えば、姐さんに決まってるじゃないっすか」

アンチョビ「え、そ、そう……?」

アンチョビ「じゃなくてだなあ!」

カルパッチョ「ほら、他の皆の士気も上がってますし……」

カルパッチョ「タカちゃ――大洗の戦車だって、シンボルになるイラストを入れてたじゃないですか」

アンチョビ「こんなデカデカと、しかもちょっと卑猥な実在人物の絵じゃなかっただろぉ!」

ペパロニ「いやでもこれ効果大っすよ!」

ペパロニ「愛する姐さんを被弾させるわけにはいかねー!ってなりますし!」

アンチョビ「お前らアホだから絵が描かれてる部分を庇ってもっと大事な部分に砲撃受けるだろ絶対!」

カルパッチョ「ですが、アンツィオっぽさは出てるかと……」

アンチョビ「来年もう私いないんだぞお!?」

アンチョビ「居ない人物でアンツィオらしさを表現って、それ絶対間違ってるからな!?」


カルパッチョ「でも……今から消すのは費用がかかりますし……」

ペパロニ「げ、マジで?」

カルパッチョ「ええ」

カルパッチョ「お詫びだからと、ドゥーチェの絵を描くのはタダでしてくれたんですけど……」

カルパッチョ「厚意を無碍にするようなら、最初に描いた時の分とイラストを塗りつぶした時の2回分料金を請求するって」

アンチョビ「はあ!?」

アンチョビ「……」

アンチョビ「ち、ちなみにそんな条件を出してきたのって――」

カルパッチョ「ダージリンさんです」

アンチョビ「やっぱりか畜生!」


ペパロニ「やっぱ今から姐さんのイラスト消すなんて無理ですって!」

アンチョビ「無理じゃない!」

アンチョビ「っていうか、このままの方が色々と無理だ!」

ペパロニ「でも、皆はテンション上がりまくってるし……」

カルパッチョ「この絵を消すためにおやつ減らして、なんてとても……」

アンチョビ「ぐう~~~~~っ……!」

カルパッチョ「ちなみに他の費用も当然ゆとりなんてありませんし……」

ペパロニ「いいじゃないっすかー、P40のPはプリティーアンチョビ姐さんの略ってことで」

アンチョビ「よくない! 全然よくない!」

ペパロニ「我儘っすねえ~」

カルパッチョ「お金もない、でも塗り直したい……一体どうすれば……」

カルパッチョ「……あ」

アンチョビ「な、なんだよ、その『あ』って……」

カルパッチョ「いえ」

カルパッチョ「今お金がなくて、でもなんとかする方法、あったかも――って」

ペパロニ「……あ! なるほど!」

ペパロニ「また姐さんが人肌脱いで、今度は自分のために頑張るってことっすね!?」

アンチョビ「ま、待て待て! 話が見えないぞ!?」

ペパロニ「あれ? でも、塗替え費用を稼ぐために“やる”って話じゃないんすか?」

アンチョビ「そ、それってまさか……」

アンチョビ「クラウドファウンディング……?」


アンチョビ「っていやいやいやいやいや!」

アンチョビ「思わずループエンドで終わりかけたけど、いやいやいやいやいや!」

ペパロニ「とりあえず姐さんの生写真、小遣いはたいて買うっすよ」

アンチョビ「ちょ、待て!」

カルパッチョ「また登録しなくっちゃ」

アンチョビ「待てこら!」

ダージリン「ふふふ……」

ダージリン「遠く離れた小高い丘で、双眼鏡で優雅に喧騒を眺める」

ダージリン「まるで自分が神になったかのように錯覚するわ」

オレンジペコ「悪趣味ですね」

ダージリン「でも――」

ダージリン「ちょっと可愛くて、素敵だとは思わない?」

オレンジペコ「嫌われても知りませんよ」

ダージリン「そうなる前に助け舟くらい出すわよ」

オレンジペコ「お言葉ですが……もうそうなりつつあります」

アンチョビ「だあああああ、もう!」

アンチョビ「お前らいい加減にしろ!」

ドゥーチェ! ドゥーチェ!

アンチョビ「卑猥なイラストを崇め奉るんじゃなーい!」

ドゥーチェ! ドゥーチェ!

アンチョビ「ああ、もう!」

アンチョビ「クラウドファウンディングなんて懲り懲りだああ~~~~~~っ!!」




【おしまい】

くぅ疲ry
投下終了です
近日中にhtml化依頼します
お付き合い頂きありがとうございました

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