短めのほのぼのSSです
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///ライブ前、楽屋にて///
文香「あの…今、なんと…?」
モバP(以下P)「ん? あ、もうそろそろ出番だぞ。さぁ行ってこい文香!」
文香「あ…は、はい…。いってきます……っ!」
ワァァァァァ!!! フミフミィィィィ!!!
///ライブ後///
文香「ふぅ……」
P「おつかれ文香! 今日も大成功だったな!」
文香「お疲れ様ですプロデューサーさん…ありがとうございます…」
P「俺は観てただけだけどな!」
P「いやぁ~今日も最高に文ってたな!」
文香「あ…あの…その『フミ』っていたというのは…どういう意味でしょうか…?」
P「ん? 文香のことを表す言葉だよ」
文香「なるほど…そうでしたか………え?」
文香「いえ、あの…すみません…。恥ずかしながら、そのような言葉は初めて聞いたのですが…」
P「そりゃそうだろうな。最近俺が作った言葉なんだから」
文香「作った…?」
P「文香ってさ綺麗なのに可愛くて、儚げなのに存在感があって、知的で、美しくて、神秘的で…なんかもうすごいだろ?」
文香「えっ、あっ、あの…っ」タジタジ
P「そうやって既存の言葉で表現しようしたら時間がいくらあっても足りないからさ、そういった全てを内包した文香らしさを言い表す新語として俺が作ったんだ」
文香「そ、そうだったの…ですか……?」
文香(…プロデューサーさんの言葉を額面通りに取ると『ふみ-る【文る】鷺沢文香然としていること』といったところでしょうか…?)
文香(分不相応に持ち上げられている気恥ずかしさと、語感の安直さは否めませんが、私のことを表現するための言葉…)
文香(それになにより、プロデューサーさんが生み出した言葉…)
文香「……っ」トゥンク
文香(胸の高鳴りを禁じ得ません…っ!)
P「どうした文香? ほっぺ赤くして…あぁ~これ文ってるわ~~」
文香「い、いえ…なんでもありません……ふふ」
後になって振り返れば…よく考えもせずただ浮足立っていたそのときの私は…どうしようもなく愚かでした………
しばらくして
///ライブ前、楽屋にて///
ガヤガヤ イソガナキャー ソレトッテー ガヤガヤ
文香(今日は他の方と一緒の合同ライブ…)
文香(皆さんライブ用の衣装で着飾ってとても華やか…)
文香(そして、それは私も同じ…筈です……)
コンコン
P『おーい、入って大丈夫かー?』
文香「!」
瑞樹「はーい、いいわよー」
ガチャ
P「みんな、準備はできて……おぉ、壮観だな!」
瑞樹「そうでしょ? 私のこの衣装はどうかしら? 似合ってる?」
P「えぇ、とても似合ってますよ! セクシーで綺麗で、川島さんの大人の魅力を引き立ててます!」
瑞樹「うふっ♪ ありがと! さぁーライブ頑張っちゃうわよ!」
ガヤガヤ
文香「あ、あの…っ」
P「お、ふみ……か」
文香「この衣装は今回が初めてで……あの…プロデューサーさん…如何でしょうか…?」
P「………」
文香「似合って…いますか…?」
P「………」
文香「プロデューサーさん…?」
P「……文ってる」
文香「ぁ……」
文香(嗚呼、やはり……)
P「最高に文ってるよ、文香! これは最高の文り具合だ! あぁ、最高に文々しい!」
文香「………そう…ですか……。ライブ…頑張ります……」
P「ん、文香…?」
文香(脱力するように楽屋の隅の椅子に腰を落とし出番を待ちます…皆さんの調子を確認していくプロデューサーさんの姿を視界に捉えながら……)
幸子「フフーン! プロデューサーさんにはライブ衣装姿のボクの感想を言う権利を上げましょう!」
P「最高にカワイイぞ、幸子! 世界一カワイイな! 抱きしめて猫可愛がりしたいぐらいだ!」
幸子「おっと!ボクがカワイイからって、お触りはダメですよ! でも…ライブ後なら頭を撫でるくらいなら許可してあげてもいいです…フフフ♪」
文香「………」モヤッ
文香(文っている…その言葉には綺麗や可愛いなどという単純な言葉では言い尽くせない程の意味が込められていると…そうプロデューサーさんは言いました…)
文香(だから取りようによっては…この場の誰よりも私のことを称賛してくれているのかもしれません…)
文香(でも……っ)
P「うおぉぉぉ! 智絵里ぃぃ! なんって可愛さだよ! これもうかなり天使だよ!?」
智絵里「えっ!? そんな…わたしなんて……っ///////」
P「超☆天使! 愛☆天使!」
文香(プロデューサーさんは相手によって、また衣装によって、時に冷静、的確に、時に情熱的に…言葉を選んでいるのが分かります……)
文香(それなのに…私には…最近は…文っているとしか………)
文香(こういうのをなんというのでしょうか…?)
文香(…………)
文香(…………………雑?)
文香「……っ」モヤモヤッ
合同ライブは成功裡に終わりました。
この胸中のいかr……しっt………闘争心…のおかげでしょうか……。
数日後の夕方
///事務所///
文香(今日は覚悟をして来ました…)
文香(さきほど、奏さんにお願いしてブティックに付き合ってもらい…羞恥に耐えながら今時の、所謂攻めた洋服を購入して、態々着替えてから事務所へとやって来たのです…)
文香(誰かに見せるために自身を着飾る日が来ようとは…古書に積もった埃と戯れていた頃には想像だにしませんでした…)
文香(あまつさえ、事の如何によっては身勝手な主張をする腹積もり…身の程知らずの強欲な俗物に成り果てた自分の変化は…なかなかどうして、決して悪いものではありません)
文香(斜陽に朱く染められた事務所は、倦むような気怠さと妙な解放感とが混在しています…)
文香(目当てのプロデューサーさんは、やはりこの時間はデスクで書類仕事の最中でした)
P「ん? 文香か?」
文香「は、はい…私です……」
P「んんん!? お、おまっ…文香かぁぁぁ!?」スック ドタバタ
文香「ぁ……近……っ」ドキッ
P「これっ! おニューだな!? おっニューー!の!服!だ!な!?」
文香「そ、そうです……っ。さっき…買ったものです…っ!」
P「おまっ、これっ、おまっFOOOOOOO!!」
文香「っ!?」ビクッ
P「………………………」シーン
文香「あ、あの……プロデューサーさん…固まって…?」
P「…………ってる…」
文香「ぁ………」
文香(やはりまた…でしょうか…予想はしていましたが…いえ、正直なところ半ば諦めていましたが…)
文香(ですが私のその落胆は、ある意味では裏切られることとなりました)
P「鷺ってる……これ…鷺ってるよぉぉぉ!!」
文香「え…? さぎ…? …………は?」
文香(いえ、分かります…。さぎ、というのは鷺沢の鷺のことでしょう……。意味もおそらく本質的には『文る』とそう変わらないことも推察できます…)
P「あぁぁああ! もうこれ鷺だよ! 文鷺だよぉぉ! 掛けるじゃないよ二乗だよぉぉ!!」
文香(ですが…!)
文香「プロデューサーさん! あの! お願いが!」
P「はぁ! はぁ! んぁ? ど、どうした文香? はぁ、はぁ…」
文香「その…っ! 文とか…鷺とか……もう使わないで欲しいんですっ!」
文香(本当はもっと冷静に伝えるつもりでした。でも、今日初めて聞いた新たな造語であろう『鷺る』は…これはいけません…)
文香(自分の苗字から取ったとはいえ、サギだなんて…語感が最悪です。詐欺という言葉が頭に過るではないですか…っ!)
文香(称賛するための素敵な言葉であるのなら! その響きも素敵であって然るべきです! それを…サギなどと…! そもそも、フミも大概なのですが…)
文香(プロデューサーさんの残念な言語センスを目の当たりにして頭に血が上ってしまったのでしょう…気付けば語気を強くして捲し立てるように胸に堆積していた澱のような想いを、恥ずかしげもなく吐露していました)
文香「ですから…っ! 正確に言い表そうとしなくても構いません! 我儘を言っていることは承知しています…でも、以前のように…他の方たちと同じように……!」
文香(他の方たちと同じように綺麗だと、可愛いと…ただそう言って欲しい。絶対に言うつもりはなかった浅ましい本心までがまろび出そうになる既の所で、いつになく真摯な表情のプロデューサーに目を奪われ、呼吸と共に言葉が止まりました)
P「そうか…文香がそんなに気にしていたなんてな…。良かれと思ってやっていたんだが、ひょっとすると単なる手抜きになっていたのかもしれないな」
文香「プロデューサーさん……」
P「わかったよ文香。もう文や鷺は封印する」
文香「嗚呼…良かった…わかってくれたのですね……」
P「でもそのせいで、文香を称える言葉がいつまでも止まらなくなっても知らないぞ?」
文香「それは…寧ろ望むところです……ふふ♪」
P「……文香…新しい服に身を包んだ文香……」
文香「……っ」ドキッ
文香(プロデューサーさんの視線が頭の天辺から足の爪先まで……っ!)ドキンドキンッ
P「あぁ………」
P「………鷺沢文香ってるわ……」
文香「………」ピキッ
文香「ん゛~~~~っ!」ポコポコッ
P「あ、痛っ、文香…ごめっ…ウソウソ、冗談だから! ちょ、力強……っ!?」
\\\ ヤイノヤイノ ///
***おわりんこ***
突発的に思いついたので書きました。
なんだこれ。
書きながらどこかで読んだことがあるような気がしてなりませんでした。
もし類似のSSをご存知の方がいらっしゃいましたら、お教えください。
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