問題児青葉とゴシップ大好き提督 (29)
タイトル通りです。地の文あります。
世に幾ばくもの艦娘たちがいる中でも、こと性格や趣向の差異のない艦はいないものか?
そう、いつぞやに友人の整備兵から聞かれたことがある。
その答えは間違いなくノーだ、と俺は言った。
先に広報任務を担当した某鎮守府のPV戦略がヒットしてからというもの、
この手の質問は結構多い。
あれは確かに全国的に統計を取った上で綿密に練り上げられた性格設定の下、
委託を受けた映像作成会社が何度も何度も艦娘たちにインタビューを重ねた
末に作られたものだったから、再現度が高いのは事実だろう。
しかしあくまで現実は現実だ。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492343046
例えば、あそこまで北上にご執心な大井はそんなにいない。
大井が北上にべったりなのは主に尊敬からくる場合がほとんどで、
くだんのPVに出てくるような狂ったベクトルの恋愛感情を抱いてしまったタイプの大井は
同じ大井達からも割と白い目で見られていたりする。
後で聞いた話では、例の鎮守府の大井がどうも"かなり"だったらしく、
監督といがみ合った結果の折衷案がああだったんだとか。
「飛んだ風評被害だ」と各鎮守府の大井達は―うちも例外でなく―
怒っているらしい。まあ、当然のことだと思うが。
それと、比叡が料理下手、というのもはっきり言って真っ赤な嘘である。
私事になるが、うちの鎮守府の比叡ともなると料理はまさに天下一品だ。
補給艦の間宮に勝るとも劣らないセンスと腕で、俺たちに
至福の一時を提供してくれている。
彼女は俺たちにとって欠かせない、大切な功労艦だと言えるだろう。
例の鎮守府のおっちょこちょいとは大違いだ。
まあ、そういうわけであの有名なドキュメント番組で描かれた艦娘たちと、
全国数多の艦娘たちはまるで別物なのである。
だからこそ、鎮守府によって抱えるメリットもデメリットも全く異なるわけで、
だからこそ提督業は面白みにあふれているのだ。
…と、俺は思っているし、先ほどからこうして物思いにふける俺の横で、
カメラを手に意味深な微笑みをたたえている相棒も、どうやら
同じことを思っているらしいことを、こないだ一緒に飲みに行ったときに
言っていたと思う。たぶん。
提督「よう青葉。今回の遠征はどうだった?」
青葉「相変わらずモノローグが長いですねぇ、司令官。この青葉がいて
失敗するわけがないでしょう?」
提督「“ワレアオバ”が抜かしやがる。」
青葉「そのワレアオバを平気で遠征艦隊旗艦にしやがるアホ司令官が
よく言いますねえ。」
提督「ハハハいつも通りの減らず口で安心したぜオイそういうの
俺好きよ?」
青葉「死んでも司令官の情婦だけはお断りです♪」
提督「辛辣ゥー!つーかそこまでしろとは一言も言ってねえしwwww」
青葉「目は口ほどにものを言う、って言うじゃないですか。」
提督「俺の目がスケベだって言いたいの?前からじゃね?」
青葉「そんなんだから嫁艦の天龍さんに浮気を疑われてご無沙汰
しちゃってんじゃないんですかぁ??」
提督「ぐぼぁ!?ちょっ、そ、その話はだめだって中止中止!!」
青葉「ハハハハハもう一か月じゃないですか相変わらず進展無いんですねえ?www」
提督「やめてぇ!!もう僕ちんのライフはゼロよ!!ゼロなのよ!!」
青葉「さすがにその歳で僕ちんはないですよアホ司令官wwwwあーおもしれwwww」
さっきは相棒とか言って説明した気がするが、前言撤回する。
こいつはただの悪魔だ。
「青葉」の共通点として「野次馬気質」「物怖じしない」という傾向があるが、
この悪魔はその性質を多め濃いめにした上に、もともとの性格の悪さが
合わさって傲慢不遜、欲望億千万倍の超ド級マスゴミ艦と化したスーパーレジェンド級
問題児艦娘なのである。
奴が引き起こした騒動や被害は計り知れず、最近では自費出版の雑誌の記事のネタの
ために明石の研究施設に勝手に侵入し、内側から鍵を開けて川内を招き入れた挙句
「これで夜戦がもっと楽しくなりますよ!」
とのたまい、最新の実験試作兵装を盗ませた上
夜中に散々暴れさせるという迷惑極まりない所業を平気でやってのけた。
これに激怒した明石に対しては
「研究所に入られる方が悪いんですよwwwm9(^Д^)プギャー」
とやってのけ、夕張をして
「あんな明石さんは初めて見たし、もう見たくない」
と言わしめる程に本気でブチ切れた明石に一方的に蹂躙されたらしい。
さすがの青葉も
「高練度の重巡が工作艦風情にやられるわけねえだろ、って思ったら艤装が全て意思と関係なく
解除された。艤装の手入れを誰がやってたかを思い出したあたりから記憶がない。」
と供述し、明石に対ししばらくの間真摯な態度をとるなど
反省の色を見せていたが、当時一緒に飲みに行った時に
「死にたくないから演技してるに決まってるでしょww本気で青葉が反省したらそんときゃ地球が
滅びるときですよwww」
と言っていたのでこいつもうほんと駄目だわと思ったのを
よく覚えている。
そんな世界中のクソを塗り固めてアヘ顔ダブルピースさせたような悪魔と、
品行方正素行良好の、健康優良嫁持ち提督俺とがどうして悪友なのだろうか。
俺にもわからない俺七不思議のひとつだ。
青葉「いや、それはあんたにゴシップネタ大好き他人の不幸万歳のビチグソ野郎の素質が
あるからに決まってるでしょうが司令官。」
いや思考に割り込んでくるなビチグソ女。俺がそんな人間のクズなわけがねえだろう。
青葉「好きな週刊誌は?」
文○と週刊ポ○トとゲン○イですが何か?
青葉「言い逃れできないんだよなあ。」
うるせえ黙れ。確かにゴシップ大好きだけど。お前の雑誌毎週購読してるけど。
青葉「いい加減認めましょーよーしれいかーん。あんたも青葉とおんなじ穴のムジナ
なんですよーう。」
提督「ええいうるさいうるさい!俺はぜってえ認めねえからな!俺は誰が何と言おうと
真面目で真摯な海軍軍人だ!」
青葉「おっやっとしゃべった。はいはい、分かりましたからさっさといつもの情報提供
しましょーねー。こちとら誰かさんが遠征に駆り出したせいで次の『ルナーャジばおあ』
締め切りカツカツなんですからー。」
提督「話を勝手に進めるんじゃねえ!ていうかまた俺から情報仕入れる気かよ!出所自分の
ゴシップなんかなんも面白くないから今回はマジで勘弁して」
青葉「扶桑さんの生着替え写真20枚組生○完全補償版非売品で」
提督「おk商談成立だ相棒仲良くしようぜ」
青葉「そうこなくっちゃ。んで、今週のゴシップは?」
提督「今週は…ええと、三日前に赤城が鳳翔んとこで大食いに挑戦して見事に
腹をやられた上、鳳翔の雷が落ちてたじたじ。」
青葉「ふーん…んで、ほかには。」
提督「他ァ?えーっと…響が雷の俺へのご奉仕癖を直そうとロリコンもののキッツイAV
見せようとして電に見つかり、その後消息不明、とか…」
青葉「…んー。言っちゃなんですが代り映えしませんねえ。わりとよくある
話の延長線上じゃないですかそんなの。」
提督「てめえ言わせておいてそれかよ…と言いたいところだがぶっちゃけ俺も
そう思うわ。こいつ(扶桑のπ乙写真)もらっといてなんだが、今週の
鎮守府は割と平和だったんだよ。どっかの誰かがいなかったこともあって。」
青葉「えええ…その写真だってタダじゃないんですよぉ?何もないってんなら
とっとと返してくださいよ。」
提督「ええ…やだよ今日のオ○ズにすんだもん。」
青葉「青葉これでも女なんですけど…まぁいっか。いやよかないか。
返さないんだったら何か思い出すなりアイデアなりさっさと寄越して
くださいな。ほら、時間は有限なんですよ?」
提督「だーもう、せかすな!アイデアって例えばどんな奴だよ?」
青葉「ええ?そりゃもう、例えば提督しか知らない私たち艦娘の秘密とか?
随分とご無沙汰みたいですが天龍さんとの情事の話とか…」
提督「お前はまたそーやって人の傷を…ねーよそんなもん。
大体仮にそんなもんがあったらタブーすぎて記事になる前に憲兵から…ん?」
その時、ふと俺の頭にその「タブー」という言葉が引っかかった。
「タブー」。うちの鎮守府にまつわる、絶対触れられない大ゴシップ。
あれ?確かそんな話なかったっけ?
前にすごい気になったけど怖くて調べられなかった奴。
何だったっけ?
じっと考えていると、青葉が期待に満ちた真っ黒な微笑みでこちらを
見ているのに気が付いた。
この女いつになくもの欲しそうな顔してくれやがって…こいつにゃ明石じゃなくて
鳳翔クラスの洒落にならない規模の雷でも足りねえんじゃなかろうか?
…ん?鳳翔…?
提督「…そうだ。鳳翔だ。鳳翔の過去。」
青葉「…!?」
鳳翔の名を聞いた途端、あの不遜な青葉の顔が引きつる。
そりゃそうだろう。
なにせ、相手は「あの」鳳翔だからだ。
空母鳳翔。またの名を「日本最古の空母、竜飛」。
日本で最初に確認された「空母の生まれ変わり」だった当時の鳳翔は当初「竜飛」と呼称されており、
最盛期にはその肩に背負わされた重荷を弾き飛ばして余りある、あるいはそれをはるかに凌駕するほどに
凄絶な戦果を挙げ続けたという。
その姿はまさに一騎当千の古強者か、あるいは「鬼」とまで言われ、恐れられた。
ある日の海戦では一切の躊躇なく、沈黙した敵空母ヲ級のどでっぱらに三連砲を叩き込み、沈みゆく船体を
片足で踏み砕いて、引きちぎった飛行甲板で無理やり離着艦を行ってまで敵艦隊を殲滅することに
命を賭したとまで言われていて、その武勇伝は俗に「竜飛無双」と言われ、今も語り継がれている。
そんな彼女、「オリジナル艦娘」の鳳翔、「竜飛」は、海上に次なる空母や次なる「鳳翔」が安定して
現れ始める頃まで、そうした驚異的な戦闘を繰り広げ続けたらしい。
曰く、「次の世代に安心して引き継げるようになるまでこの海を守ることが私の仕事だ」、と。
そして、ついに日本海上に十分な数の空母がそろったとされる頃と丁度重なる時期に、「竜飛」の姿は
その言葉通りに海から忽然と消えてしまったのだそうだ。
一説には戦いのさなかにとうとう撃沈されたとか、そうじゃなくて別の鳳翔たちの中に紛れて今も
どこかで生きているだとか、退役して軍人になったとか、いろんな噂がいまだにまことしやかに
流れ続けている。
…と、以上が海軍の世界にだいたい流れている「竜飛」の情報だ。
こと艦娘統率者界隈ではもっと話が誇張されてることが大概で、
中には鳳翔が人知を超えた神業で人を救ったーみたいな
「嘘に決まってんだろ」的噂が流れているところもある。
だが、うちの鎮守府ではそーいう誇張系の噂は全くと言って流れていない。
というより、「流せない」のだ。
なぜか?
そんなのは簡単だ。
実はその「竜飛」は第一線を退いたのち、
「うちの鎮守府にやってきて」
「うちの空母寮でこっそり空母の教官を請け負いながら」、
「割烹「ほうしょう」の女将をやっている」
からである。
わかりやすいでしょ?噂の根源が目と鼻の先にいるってのに、
嘘くさい噂なんて流せたものじゃないのだ。
そう。海軍の者ならだれもが知っている「あの」世界で一人目の空母艦娘、数多の空母艦娘や
「鳳翔」たちの建造データ源となった自然発生型のオリジナル鳳翔、「竜飛」は、
なんとうちの鎮守府に所属しているのである!
とりあえず今日はここまで。続きは一週間くらいでうpします。
質問あったらどーぞ。
>>1
くノ一
遅くなってしまった…ちょっと続き出します。
青葉「いや…それもダメでしょう。だって急すぎる。今更鳳翔さんの過去の新事実を暴こうったってそこに至る経緯や理由が無いじゃないですか」
さすがの青葉もネタの危険度に恐れをなしたらしく、それを悟られないように理由を探して否定してきた。
そりゃそうだ。いくら最高級の料理の乗った皿が手の届くところに置いてあろうとも、その下にはとても分かりやすく設置された超メガトン級の機雷が見えているのだから。
俺だってそんなものに触ってオダブツになるくらいなら、もっと手ごろな料理に手を出す方を選ぶ。当たり前だ。バカじゃないんだから。
だが。
そんな青葉に同調して逃げ腰の言葉を発しようとしたところで俺の身体は硬直した。
待てよ、と。
青葉が怪訝な顔でこちらを見てくるが、それどころじゃない。だって、気づいてしまったから。
このネタ、もしかして、とんでもないパンドラの箱だったんじゃないのか?と。
俺の頭に今走ったこの記憶は、あまりにあっけなくそいつを開けてしまうカギだったんじゃないのか?
ふっと思い出してしまったそいつは、確かに目の前の鍵穴にすっぽりハマっている。
ヤバいんじゃないか?開けたらもう、戻れないんじゃないか?俺と青葉はこいつを開けたら…どうなっちまうんだ?
僅かな時間の中で、逡巡した。ふと青葉を一瞥する。余計に怪訝さを増した顔がこちらを見ている。
思考が再びパンドラの箱に戻る。
鍵は、勝手に開いていた。
あーあ。残念だったな、青葉。
お前はどうやら俺を“もう戻れないところまで”導いてしまったらしい。
お前が追い込んでくれたおかげで俺は、“今絶対に思い出してはいけないこと”まで思い出しちまったよ。
提督「いや、経緯も理由も大アリだ。青葉」
青葉「は?…いや、特に思い当たりませんけど。」
青葉(何言ってんだこの人。見え見えの地雷踏み抜いて死にたいワケ?もしかして司令官って青葉が思ってたよりもかなりバ)
提督「青葉。“空母「鳳翔」の解体は、一体いつ完了したんだっけなぁ?”」
青葉「…あっ!?」
提督「…そうだよ。1947年5月1日。次週の月曜、あおばジャーナル発売日の丁度70年前だ。」
ぞくり。青葉に告げたその言葉が、俺と青葉の体内にこだまする。
わざわざ目を向けなくても分かった。だって、これはゴシップ好きの本懐なのだから。
70年前。節目の年。鳳翔。禁断のネタ。初公開。極上の環境。
ぞくっ。ぞくぞくぞくぞくっ。
青葉「よくも…よくも思い出させてくれましたね、司令官。恨みますよ?」
提督「恨む?バカ言え。鏡で見てみろよ、お前のその顔」
青葉「…くくく…そういうアンタも、鏡見た方がいいんじゃないですかぁ?…っくくく」
提督「けっ…けけけ、言われなくても分かってらあ、んな事…けけけけけっ…」
そう。俺たちゴシップ好きにとって、何よりもたまらないものは、そのネタの鮮度、危険性、そして希少性だ。
希少価値が高く、新鮮そのもの…さらに、測り知ることすらためらわれる、強烈な危険度…。
そのすべてが重なり合う、最高で最凶のタイミング。限られに限られたそのタイミングにかけた乾坤一擲のゴシップにこそ、俺たちは極上のエクスタシーを感じうるのだ。
そんな俺たちにとって、この「鳳翔に掛かる暴露記事の特別掲載」という命すら顧みぬ地獄のミッションは―
提督、青葉「「くく、くけけけけけ!!!」」ニタァァァァァァァァ
人生に一度味わえるか否かの、またとない「御馳走」なのだ。
「問題児青葉とゴシップ大好き提督」
―鳳翔編―
青葉「司令官。ここはいっそ過去だけじゃない。洗いざらい全部行きましょう。あの人が青葉たちや空母たち、果ては他の古参艦に隠していることまで」
提督「当たり前だ。鳳翔の人目をはばからぬ素の姿も、隠れた趣向も、全てすっぱ抜いて丸裸にしてやる」
青葉「言うまでもありませんでしたね。じゃあ早速、今日の青葉と司令官の行動のすり合わせから行きましょうか」
提督「うむ」
エンジンに火が入った俺たちの行動は、先ほどとは比べ物にならないほど加速した。
まずすべきことは何か。気取られず、迅速に、無駄なく情報を集めるためには、何から始めるべきか?
提督「さっき青葉が執務室に入ってきた時間は」
青葉「2100時丁度。遠征報告書にも書いたけど、気象条件が悪かったから1700時から1940時に到着が遅れてる。私以外のメンバーはみんな無傷だったからお風呂に行かせた。」
提督「21分前か。メンバー内の入浴時間誤差は」
青葉「平均40~50分台がほとんどだけど、睡眠時間を気にしてる如月は恐らく早めに30分台で出てくる。一番遅いのは遊び癖のある卯月で50~60分」
提督「卯月出現の22時10分前後を目安に…と言いたいところだが、その前に如月単体か睦月と二人かでここにやってくる可能性があるな」
青葉「時間がありませんね。とりあえず先の提督発のあるあるネタで行く体で合わせましょう。散々強請ったが出てこなかった、と」
提督「普段がだいたい40分だからな。いいだろう、風呂行ってこい。ついでに如月睦月のどちらかと遭遇の場合は時間を稼げ。執務に頭を悩ませてる体で思考を整理する」
青葉「了解。ついでに風呂場で卯月とじゃれてきます」
提督「ありがたい」
青葉「では」ガチャ
短いけど今回の更新はここまでです。また一週間くらいで更新します。
>>14
盲点だった
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