神北小毬観察日記 来ヶ谷唯湖 (45)
2月28日 晴れ
これから神北小毬女史の生態観察日記をつける理由は、私に何かが起きたという訳ではなく、むしろ、何も起きないこの退屈した日常を少しでも紛らわすためである。
現在は消灯時間のため、明日から本格的な行動に出るが、その前に現在判明している小毬君の概要についてを下記に示す。
神北小毬
誕生日 4月5日
身長 159cm
体重 45kg
3サイズ B83 / W57 / H84
趣味・・・お菓子作り、ボランティア
好きな物・・・アプリコットジャム、童話、棗鈴。
性格・・・かわいい
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492090751
2月29日晴れ
早朝
早速、小毬君と笹瀬川女史の部屋を死角から張り込み、食堂に到着するまでの道のりを観察する。
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ガチャッ
小毬「ふぁぁ……眠い~」
佐々美「ああ、ほら!また髪の毛が跳ねておりますわ。全く、どうして髪飾りを付ける段階で気付きませんの?」
小毬「えへへ~、ありがとうさーちゃん」
佐々美「こ、これくらいどうって事はありませんわ……」
来ヶ谷「…………………」
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2人がルームシェアしているという事は前もって知っていたが、まるで親子のようなやり取りを見るに予想以上に相性は良好なようだ。
朝食時。
観察のため、今回は小毬君の向かいに席を取ることにした。小毬君の朝食メニューは日替わり定食で、今回はオムそばになっていた。
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鈴「それじゃあ、いただきます」
小毬「いただきまーす!」
来ヶ谷「いただきます」
小毬「えへへ~オムそば~~」
来ヶ谷「…………っ!」
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凄く可愛かった。人目さえ気にしなければ私が小毬君を”いただきます”したかった。
3時間目。
数学の授業だったので本来は自主休講の予定だったが小毬君を観察する為にやむなく受講。
しかし、それ相応の収穫を得た。
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教師「で、あるからして~」
小毬「……………すぴー」
来ヶ谷「!」
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小毬君のスカートがイスに挟まって捲れていた。他に気付いた人間は確認出来なかったので携帯の無音カメラで資料の保存に成功する。
スペクトル分析によるとパンツの素材はコットンと判明。柄の方は[削除済み]であった。
今回は短いけどここまでにしておく(∵)
小毬ちゃん見たいな子が空から降ってこねーかなー
今日の8時か9時から再開する
昼休み。小毬君の特徴の一つに、この時間は屋上で過ごすのを好むものがある。この日は鈴君と一緒じゃなかったせいか、日向の暖かさに当てられて昼食の途中で寝てしまった。
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小毬「すぴー………」
来ヶ谷「………君は本当によく寝るな」
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風がよく吹くのでセーターがまくれてヘソの部分が丸見えになっていた。風邪を引かれて観察対象が部屋に籠るのを避けるため、私の上着を布団のように被せることで問題を処理した。
放課後。
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キーンコーン
小毬「ほえ~終わった~」
来ヶ谷「ではまた明日だ」
小毬「ほあっ、あ、うん……ばいばーい」
来ヶ谷「…………」
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昼休みの終わりに制服を返してもらった時にも感じたことだが、ここ最近小毬君の私への対応に少し違和感がある。具体的にどこが?と自問しても満足出来る回答が思い浮かばない。ただ少しよそよそしいような印象だ。これは観察を続ける上で今後の大きな障害になる予感がする。
3月10日 曇り
放課後
この9日間、何度近辺調査を繰り返しても大きな収穫は得られなかった。日曜日に1人で街に出かけた事もあったがせいぜい洋菓子店で一般的なホールケーキの予約、パーティー用の装飾品とクマのぬいぐるみの購入など目立った行動はなかった。それから休憩時間や放課後に心情把握プロトコルを実施したが、私に敵意がない事くらいしか確認出来なかった。そこでこれから最終手段を取ることにした。
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来ヶ谷「やあ小毬君」
小毬「ほあ!ゆ、ゆいちゃん……どしたの?」
来ヶ谷「これから暇だろう。少し裏庭で喋らないか?」
小毬「え、えと………」
来ヶ谷「君にこれから何の予定もないことは確認済みだ。大人しく来なさい」
小毬「ふ、ふぇぇ……」
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……………………………
…
小毬「そ、それで話ってなんですかぁ…?」
来ヶ谷「まあ落ち着きたまえ。とりあえずジュースでもどうだ?」
来ヶ谷(カバンから缶ジュースを一つ取り出して小毬君に渡した)
小毬「あ、ありがと……」
ゴクリ
小毬「ほ、ほあ……?な、なんだか眠い?ような……」
来ヶ谷「ふふふ……いや小毬君はいたって正常だよ。ただ少し私の質問に答えやすくなってもらっただけさ」
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小毬君に渡した自白剤入り缶ジュースだが、使用したのは科学部が最近開発したカントリーマアムを原料とした身体に優しい自白剤なので小毬君などにも安心して使えるものである。
薬が充分に効いた頃合いを見て質問を始めた。
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来ヶ谷「では小毬君。君の今日のパンツの柄はなんだ?」
小毬「えへへ…[削除済み]だよぉ……」
来ヶ谷(よし、嘘はついていない。問題はなさそうだ。勿体ぶる意味もないので単刀直入に聞こう)
来ヶ谷「君は私に何を隠している?」
小毬「ゆいちゃんに……ふふっ…楽しい事ぉ……」
来ヶ谷「……もう少し具体的に」
小毬「パーティー……みんなでやろうと思うの……」
来ヶ谷(パーティー?)
来ヶ谷「何故私に隠す必要があるんだ?」
小毬「え~ゆいちゃん、こういうの恥ずかしいかもしぇなぃから……だから……秘密…………怒るかもしれないけど……」
来ヶ谷「私が怒る?それは何のパーティーなんだ!?」
小毬「んへへぇ~~………ぐぅ……」
来ヶ谷「……………」
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ここで対象は寝てしまった。薬の連続使用は危険なのでこの方法はしばらく中止する。別の手段で『パーティー』とやらの内容に迫ることにした。
3月11日
昼休み。
小毬君の言う『パーティー』がどういうものかは想像つかないが、それを行うメンバーについてはおおよその予想が付く。今回はその中でも私に対するメンタルが貧弱な者を狙うことにした。
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食堂
来ヶ谷「やあ少年達」
理樹「う、うわぁぁぁあ!?」
真人「うぉおおおお!?」
謙吾「何奴!?」
来ヶ谷「………私だよ。まるで敵が来たような反応だな」
理樹「……な、なんだ来ヶ谷さんか……」
謙吾「お前が食堂なんて珍しいな」
来ヶ谷「気まぐれさ。それより隣、いいかな?」
理樹「どうぞ」
来ヶ谷「さて……時に理樹君。最近私に何か隠していないか?」
真人・謙吾「!」
理樹「い、いや!別に何も隠してないよ!?」
来ヶ谷(瞳の揺れ方、頬の引きつり具合を見るに嘘をついているのは明白だった。この一言に反応した所を見ると3人とも関与しているのだろう)
来ヶ谷「ふむ……そうか。いや、それなら良いんだ。疑って悪かったね」
真人「こいつといるといつも取り調べを受けてる気分だぜ……」
理樹「は、はは……いや、別に気にしてないよ……」
来ヶ谷「おっと、スプーンを取ってくるのを忘れていた」
来ヶ谷(立ち上がる寸前、肘でジュースの入ったコップを少年の方に倒した)
バシャッ
理樹「うわっ!」
真人「オイオイオイ!」
謙吾「大丈夫か!?」
来ヶ谷「おっとすまない!飛んだ不注意だ!服を着替えに行かなくてはならないな。同行しよう」
理樹「い、いいよ。1人で着替えてくるから」
来ヶ谷「そういう訳にはいかない!さあさあ」
理樹「そ、そこまで言うなら……」
真人「今日らどうしちまったんだ来ヶ谷の奴……」
謙吾「さあ…」
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………
理樹部屋
理樹「じゃあシャワー浴びてくるよ。来ヶ谷さんはもう行って大丈夫だから」
来ヶ谷「すまなかったな。あとで洗濯代を出そう」
理樹「いやいや……」
バタン
来ヶ谷(2人で服を取りに少年の部屋へ来た時、少年の視線を掻い潜ってテーブルの下に盗聴器を仕掛けておいた。これで準備は整った)
夜
今日は理樹君と真人少年がいる時のみぴったり近くにいたので私のことについて話し合う隙を与えなかった。そうすることで部屋で私が疑っていることを話し合わせるのが狙いだった。そしてそれは上手く実を結んだようだ。
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理樹部屋
バタンッ
理樹『ま、不味いよ!来ヶ谷さんにもう勘付かれてるって!』
真人『落ち着けよ!明後日までバレなきゃいいんだから……』
来ヶ谷(3月13日……その日にパーティーがあるのか。やれやれ、よりによって私の誕生日に何をしでかす気だ?)
真人『それにしてもよぉ小毬も大胆だよな。いつもあんなのほほんとした顔しながら来ヶ谷に隠れて俺たちとやろうってんだからな』
来ヶ谷(大胆……俺たちとやる……まさかな)
理樹『ふふっ、とかいいつつ真人もノリ気だよね』
真人『ま、こういうことを小毬とやるとは思ってなかったからなゲヘヘ』
来ヶ谷(………!?)
理樹『恭介が場所はセッティングしてくれるらしいよ。もし声が漏れても誰にも見つかる心配はないんだってさ』
来ヶ谷(そんな怪しい場所で……そんな馬鹿な!)
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最初は私の下卑な考えだと思っていたことが急に真実味を帯びてきた。いや、しかし、小毬君のような天使に限ってそんなことは!
真人『お楽しみの道具はもう買ってあるのか?クラッカーならあるぜ?』
来ヶ谷「く、クラッカー?」
来ヶ谷(まさか何かの隠語か?確かにクラッカーという語感からは何かいやらしい響きを感じるが……)
理樹『それも全部恭介がやってくれるってさ。派手にやりたいらしいよ』
真人『ふっ……あんまりやりすぎるとあいつも腰を抜かすだろうな』
理樹『ほどほどにね』
来ヶ谷「こ、腰を抜かす!?」
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信じられないことだが確かにこの耳で全てを聞いてしまった。『パーティー』とはそういう事だったのか!なるほど、通りで隠したがる訳だ。ええい、私の小毬君に指一本触れさせはせんぞ!明日は手始めに井ノ原真人に痛い目にあってもらう事にする。
3月12日
一時限目。
明日は休日なので教室では浮かれている生徒がちらほら見える。もし私が事実を掴んでいなかったら小毬君もその1人に数えていた所だろう。だが、今の小毬君には何か別の陰謀じみた笑みを浮かべているのがはっきり見てとれる。人の印象とはたった1日でこうも変わるのか。
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小毬「ふふっ」
鈴「なにを笑ってるんだ小毬ちゃん?」
小毬「秘密だよ~」
鈴「む。なら仕方ないな」
来ヶ谷「……………」
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なんだか彼女の仕草、ボディー、雰囲気のどれもが色っぽいように見えてきた。くそっ!やはりこの世には天使などいないのかっっ!!
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美魚「来ヶ谷さん」
来ヶ谷「ハッ!?」
美魚「どうしました?いつも以上に小毬さんを観察しているようですが」
来ヶ谷「う、うむ……私の観察眼にいささか疑問を抱いていた所だ。君はあるか?手の届かない存在だと思っていた者が割とそうでもなかった事が」
美魚「ええありますよ。例えばかの有名な夏目漱石はよく自分の鼻毛を抜いて、それを畳みに植えて遊んでいた事があったとか」
来ヶ谷「……………」
放課後
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キーンコーン
真人「うーっし帰ろうぜ理樹!」
理樹「うん、ちょっと待ってね」
来ヶ谷「真人少年」
真人「うおっ!?……ってまた来ヶ谷かよ!」
来ヶ谷「………少し話がある。ここの生徒が全員いなくなるまで居てくれないか?」
真人「……なんだよ?」
来ヶ谷「私も筋トレを始めようと思うんだが君に手取り足取り教えてほしくてね」
真人「なんだそういう事かよ!遂にお前も筋肉の素晴らしさってヤツに気づいたようだな。すまねえ理樹、先に帰ってくれ!」
理樹「はーい!」
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…
来ヶ谷「そろそろ頃合いだろう。始めてくれ」
真人「へへっ!それじゃあまず筋肉の名称についてレクチャーしていくぜ!」
来ヶ谷(筋肉仲間が出来たと思い込んでとても嬉しそうに語る真人少年だった。ほとんど聞いてなかったが恐らくこれからの人生に支障はないだろう。しかしまさかこんなある意味純粋だと思っていた真人少年まであの有様とは……いささか頭痛がしてきた)
真人「~~それでふくらはぎの筋肉だが、実はこいつは他の動物には無くて……」
来ヶ谷「少年よ」
真人「おっ、どうした?」
来ヶ谷「君の背中の筋肉も見せてくれないか?実際に見て覚えてみたいのだが」
真人「おおいいぜ!よーし!」
来ヶ谷(シャツを脱いで自慢の筋肉を見せるため振り向いた少年。そこに渾身の当て身を繰り出した)
真人「ぐふぉっ!?」
バターンッ
来ヶ谷「………………」
真人「あ………………」
夜。
椅子の座る部分の中心だけをハサミでくり抜いていると少年が起きた。
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ザクザク……
真人「うっ……こ、ここは……」
来ヶ谷「体育館倉庫だ」
真人「な、何を……ぐっ!?」
来ヶ谷「ふふふ……申し訳ないが腕と足を縛らせてもらったよ」
真人「だ、誰か!理樹ー!!謙吾ーー!!!」
来ヶ谷「はははははっ!!もう夜中の1時だ。用務員もここへは来ないよ」
真人「ち、ちくしょう!なんのつもりだ!?」
来ヶ谷「君には少し質問に答えてほしいだけだ」
真人「さ、さっきから何の音かと思ったらなんだよその椅子…なんか穴空いてねえか?」
来ヶ谷「ああ。必要なんだ」
来ヶ谷(重たい少年の身体を持ち上げ、無理やりその椅子に乗せ、念のため身体をガムテープでさらに固定。そして用意していた結び目のついたロープを取り出した)
真人「おいおいおい……何する気だよ!?」
来ヶ谷「さて、一応聞いておくが少年よ。君は明日……いや、今日行われるパーティーの事を知っているな?」
真人「……な、何の話だ?」
来ヶ谷「………何故手の込んだ拷問が必要なのか?もっとも簡単な拷問こそ耐えられぬ苦痛を与えるのだ」
来ヶ谷(ロープを回し、結び目が真人少年の股間にヒットするように椅子の穴の空いた部分に勢いよく振り上げた)
ドスッ
真人「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッッッ!!!」
来ヶ谷「この方法は苦痛もさることながら、早いうちに降参しなければ男性たる機能も失われることになる」
真人「ぉぉぉっ………!」
来ヶ谷「君らの会話は傍聴していた。今日、小毬君達と『パーティー』を行うのは知っている!さあ場所と時間を吐け!」
真人「フゥーーッ!フーーッ!だ、誰が言うかよ……!」
来ヶ谷「………」
来ヶ谷(2度目を振り上げた)
ドスッ
真人「があ”あ”あ”あ”あ”あ”………ッッツ!!!」
来ヶ谷「時間はたっぷりあるぞ!!まともにトイレにも行けなくしてやろうかこの屑め!」
真人「い、今言ったら全てが無駄になるんだよ……!小毬の計画を、俺が、台無しに出来るわけ……」
ドスッ
真人「オォッ……!!グゥッ………!!」
来ヶ谷「君から漏れたと気付きやしないよ。安心して楽になるんだ」
真人「……はっ、はははっ!こんなもんで倒れる俺じゃねえ!」
ドスッ
真人「ぐぉおおおっ!!」
真人「…………………………」
来ヶ谷(朝を迎えた。この他にも電流を走らせたり、傷口に塩を塗りたくるなど普通なら既に気絶していてもおかしくない拷問を何度も繰り返したが、一向に喋る気配を見せない。これでは埒があかない)
来ヶ谷「……ここで待っていろ」
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ガヤガヤ
来ヶ谷(食堂では朝食を食べにリトルバスターズの何人かがテーブルに座っていた。小毬君はそこにはいなかった)
理樹「あっ、おはよう来ヶ谷さん。そういえば来ヶ谷さん真人知らない?昨日の放課後から見てないんだ。携帯も繋がらないし……」
来ヶ谷「ああ、真人少年なら修行しに山籠りをしたらしい。心配するな」
理樹「また変なことを………」
来ヶ谷「それより理樹君、小毬君はどこへ行ったか分かるか?今朝は姿が見えないようだが…………」
理樹「ああ、小毬さんなら鈴とケーキ……」
来ヶ谷「ケーキ?」
理樹「あっ、いや!ケ……景気付けに老人ホームに行ったらしいよ!」
来ヶ谷「なんの景気付けなんだ?」
理樹「さ、さあ……それよりどうしたの急に?」
来ヶ谷「いや、とくに理由はないよ。ありがとう少年」
来ヶ谷(ケーキ…きっとこの前に予約していたものだな。しかし鈴君も同行とは……ま、まさか鈴君もこの計画に加担しているのか!)
夕方、井ノ原真人の様子を見に来たが相変わらず口を破る気配がしない。
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真人「グッ…………」
来ヶ谷「ううむ、どうしたものか……あまりゆっくりしている時間はないのだが…………ああ、そうだ」
真人「……?」
来ヶ谷(どうしてもっと早くこの方法に気づかなかったのだろう。私は真人少年の携帯の電源を入れ、そこから理樹君へ電話をかけた)
真人「な、なにして……」
プルルルル
理樹『あっ、もしもし真人!?』
来ヶ谷「出ろ」
真人「あっ、て、てめえ!」
理樹『真人?どうしたのさ』
真人「り、理樹……」
理樹『まったく……今までどこに行ってたの?もうそろそろ始めるよ。まだ恭介から場所聞いてないよね?』
来ヶ谷「………」
真人「ま、待て!」
理樹『場所は食堂、20時からだからあと2時間で来ヶ谷さんを誘い込むからね』
真人「理樹!今俺の隣に……」
プツッ
来ヶ谷「ふっ……ふふふ……」
真人「あっ……くっ……!」
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作戦は上手くいった。あとは私からあえてそこへ乗り込むまでだ。もちろん”準備”が整うまでに。
夜、19時。
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廊下
来ヶ谷「……………」
来ヶ谷(鈴君まであちら側ということはもはやリトルバスターズのメンバー全員が堕ちていても不思議ではない。ああ、ここまで落胆したことが人生であっただろうか?)
来ヶ谷「……………」
来ヶ谷(どれだけ輝いて見えた光も所詮は見せかけだったのだ。裏ではどこまでも汚くなれる……彼らがどんどんその様に染まっていくのであれば……せめて私から終止符を打ってやる。それがせめてもの今までの恩返しというもの)
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私は部屋に隠しておいた偽造パスポートと現金30万、その他に彼らに捧げる***と***を持って食堂の前に立った。
さらばリトルバスターズ。
ガチャッ
来ヶ谷「来たぞ!!」
理樹「えっ」
恭介「なっ」
謙吾「む?」
鈴「っ!」
クド「わふー!?」
美魚「………」
葉留佳「なぬ山なぬ夫!」
小毬「あっ、ゆ、ゆいちゃん!?」
来ヶ谷「……なんだ……これは……………」
来ヶ谷(重いドアの向こうを抜けるとそこは随分ご機嫌な光景が待っていた)
来ヶ谷(まず全員派手な帽子をかぶり、恭介氏にいたっては付けひげなどをまるで誕生日会のような格好で、テーブルにはケーキやターキーレッグなど、まるで誕生日会のようなご馳走。挙げ句の果てには天井からは『来ヶ谷唯子誕生日おめでとう』と誕生日会のような……)
小毬「どどどどうしてもう来たの~!?」
恭介「ば、バカな!もうバレたのか!?」
来ヶ谷「…………………」
来ヶ谷(………………………)
謙吾「ふん…だから俺は最初から無理だと言ったんだ。来ヶ谷にサプライズパーティーなど!」
葉留佳「あちゃ~姉御~!そこは分かってても騙されたふりをするんですヨ!」
鈴「おい、絶対バレないんじゃなかったのか?」
恭介「そ、そのはずだったんだが……」
来ヶ谷「ふむ……」
来ヶ谷(なるほど。これはまずい)
美魚「来ヶ谷さん……その両手に持っている禍々しいものは……?」
来ヶ谷「これか?……これは、あれだ。さっき廊下で拾った」
謙吾「そんなものを誰が落としたんだ!?」
来ヶ谷「知らん!」
来ヶ谷(私はそれを勢いよくゴミ箱に放り込んだ)
クド「わふ~やっぱり来ヶ谷さんは凄いのです!こうみょーに内緒に進めたパーティーは全部お見通しだったのですね!?」
来ヶ谷「あ、ああ……」
来ヶ谷(な、なんという勘違いを私はしてしまったのだ!!くそっ、勘違いをするにしてもここまで酷く汚れた想像をしてしまうとは!)
来ヶ谷「くっ……悪かった、小毬君……みんな……少し風に当たってくる……」
理樹「な、なんか急に落ち込み出したー!?」
葉留佳「あ、姉御!いや、別にそこまで空気読めないとか思ってないッスヨ!?」
小毬「そうだよゆいちゃん!」
パシッ
来ヶ谷「こ、小毬君……?」
小毬「確かにサプライズじゃなくなったけど、それはそれ。今から一緒に祝いましょー!」
来ヶ谷「わ、私を許してくれるのか……?」
小毬「えへへ、大袈裟だよ~」
来ヶ谷「こ、小毬君!」
小毬「それじゃあ改めまして!せーのっ」
「「「お誕生日おめでとう!!」」」
来ヶ谷「ふふっ……」
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私は今、彼らとの非常に楽しいパーティーから帰ってきてこれを綴っている。
私はもう彼女らを一寸ほども疑うことはないだろう。そう、リトルバスターズは”本物”だったのだ!そしてこの日記は今日をもって終わらせることにする。そしていつまでも私の机にしまって処理することはないだろう。それは私自身に対する教訓なのだ。
終
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「………あ…………ぁ………」
終わり
遅れて申し訳なかった
このSSまとめへのコメント
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