ルビィ「親愛なるお姉ちゃん」 (23)
「はぁ……」
いけない、またため息をついちゃった。
マルちゃんが言うには「ため息をつくと幸せがひとつ逃げていっちゃう」らしい。
今ので何回目かわからないため息に――これ以上ため息をついたらヨハネちゃんみたいに不幸になって堕天使になっちゃうかも、なんて、クスクス♡
最近、ルビィには悩みがあるの。
この年頃の女の子だったら、そんなにも珍しくないことだけど――すごく珍しいこと。
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ルビィ、好きな人ができちゃった――♡
スクールアイドルが恋愛なんて――もちろんご法度。
あ、でも――昔一部だけ公開されたμ'sの活動日誌で穂乃果さんが「女の子同士なら大丈夫!」って言ったって、書いてあったのを思い出す。
でも、それがあってもルビィの悩みは晴れないの。
だって、ルビィの好きになっちゃった相手は、女の子は女の子でも特別な女の子だから。
良家の長女で、浦の星女学院の生徒会長で――ルビィには絶対届かない高嶺の花。
いつも厳しくて、怒ってばっかりで――ルビィがプリンを食べちゃっただけで怒る怒りん坊。
だけど、どこかやっぱり甘くて、ルビィのことを大事に思ってくれてる――。
ルビィの、親愛なるお姉ちゃん。
黒澤ダイヤお姉ちゃんのことが好きになっちゃったの♡
「女の子同士なら大丈夫!」って穂乃果さんは言ったけど――。
ねえ、姉妹でも大丈夫なのかな?
そんな心の中の問いかけに答えてくれるのは、穂乃果さんではなくて天使さんと堕天使さん。
「だ、だだだ、ダメずら! 女の子同士はもとい、姉妹でなんて、絶対にダメずら!」
「くくく。リトルデーモンたるもの、禁忌に触れてこそよ♡ さあ、リトルデーモンのルビィ、堕ちるところまで堕ちなさい♡」
禁忌――やっぱり、姉妹でなんていけないことなんだよね――。
こんこんこん。
ルビィの部屋のドアが3回鳴る。
「はーい?」
「少し、よろしいかしら?」
聞こえてきたその声に――ルビィの心臓が飛び跳ねるのを感じる。
だって、聞こえてきたその声は、ルビィが今ちょうど考えてた――お姉ちゃんの声だったから――。
「えっと、えっと――」
「入るわよ」
突然のお姉ちゃんの来訪に――戸惑ってるルビィのことなんて知りもしないお姉ちゃんは返事も聞かずに入ってくる。
お風呂上がりなのか、ほっぺがちょっと紅潮してるお姉ちゃんの姿に――。
どきどきしちゃうルビィは、やっぱり悪い子です。
「……」
お姉ちゃんはじっとルビィのことを見つめてる。
こういうときって、大抵お姉ちゃんは――怒ってるんだよね?
「ご、ごめんなさい!」
だから、ルビィは先に謝ってみたの。
きっとルビィが何かをしちゃって怒らせちゃったから――。
恐る恐る、瞑っていた目を開けると――お姉ちゃんはきょとんとした顔でルビィのことを見てたの。
予想外のお姉ちゃんの反応に、ルビィも何がなんだかわからなくなっちゃって――きょとんとしちゃった。
しばらく2人できょとんとしていると、お姉ちゃんが先に口を開いた。
「どうして謝るの?」
それは責めている感じでもなくて、ただ――純粋に疑問に思っているのがわかる。
「だって、ルビィが何かをして怒らせちゃったのかなって――」
ルビィがそういうと――。
ぽすっ、と――お姉ちゃんはルビィの頭に手を乗せて――なでなでと手を動かします。
エヘヘ♡
お姉ちゃんになでなでされるのなんていつぶりだろう♡
お姉ちゃんの手はちっちゃいルビィにはとても大きくて、温かくて、とっても安心できるの♡
じゃなくて――。
「なんでなでるの?」
怒られるのかなって思ったら――急になでられて、ルビィの頭じゃ追いつかないよ。
その質問に対して、お姉ちゃんはクスクスと笑いながら――。
「別に怒っているから黙っていたわけじゃないの。ただ、どう切り出そうか悩んでいて」
照れたようにそう笑うお姉ちゃんは――やっぱり素敵で。
普段はあんまり見られないお姉ちゃんの姿にどきりと胸がときめいちゃった♡
「ねえ、ルビィ」
お姉ちゃんは頭をなでるのをやめて――でも相変わらず優しい顔でルビィに話しかける。
本当はもっとなでてほしかったけど、ガマンガマン。
「何か――悩み事があるでしょう?」
お姉ちゃんのその言葉は予想してなくて――お姉ちゃんが本当に心配してくれてるって言うのは伝わってくるんだけど――。
ルビィはびっくりして、血の気が引いて、全身が冷たくなっていく感覚に襲われたの――。
「な、悩みなんてないよ?」
悩みはある、けど――こんな悩み、絶対におねえちゃんには言えないもん。
お姉ちゃんを好きになっちゃったなんて、口が避けても言えない――。
「嘘おっしゃい。ここ数日――何回ため息をついていたのよ」
そっか――ため息、聞かれちゃってたんだ。
お姉ちゃんを見る度に想いが強くなっちゃって――それと同時に悩みも大きくなって――。
でも、お姉ちゃんの前ではしないように気をつけてたのに――聞こえちゃってたんだ。
「深刻そうな顔だったし――妹が悩んでいるんだから、力になるのは姉として当然」
黙ってるルビィに対して――お姉ちゃんはそう続ける。
姉として、ってお姉ちゃんは言った。
何気ない――けれど、ルビィの心には深く突き刺さって――。
「うぅ、ぐすっ――」
泣いちゃダメなのに――涙が溢れ出してきちゃった。
泣いたらもっと心配かけちゃうのに――。
「辛かったのね――お姉ちゃんに相談して?」
涙の理由を、お姉ちゃんは勘違いしているみたい。
そうやって抱きしめられたら――もっとつらいのに。
お姉ちゃんの匂いがすごく近くに感じて――。
お姉ちゃんの温もりがルビィに直接伝わってきて――。
こんなに近いのに――心はすごく離れてる。
お姉ちゃんとルビィの想いの矢印は全く違う方を向いてて――想いが強くなる毎に離れていくんだ。
「ルビィは――」
涙が更に溢れてきて――それと一緒にお姉ちゃんに対する想いも溢れ出てくる。
「ルビィは、お姉ちゃんのことが好きなの!」
止めなきゃいけないのに、ダムが決壊したみたいに止まらなくて――。
「お姉ちゃんが好きで――いけないことなのにどんどん好きになっちゃって――」
無我夢中でお姉ちゃんに想いを伝えちゃったの。
「お姉ちゃんを好きになっちゃった――」
この時のお姉ちゃんの顔は――怖くて見れなかった。
「ごめんなさい、こんな妹で――ごめんなさい」
お姉ちゃんはどう思ってるんだろう。
そんなこと――怖くて絶対聞けないけど。
きっと気持ち悪いって、そう思ったんだろうな――。
そう思っていると、ぎゅーっと――お姉ちゃんがルビィを更に強く抱きしめてくれたの。
なんで――こんなルビィを抱きしめてくれるの――?
「なんで、謝るの?」
さっきまでの優しい声とは違った――低い声でルビィに問い詰める。
やっぱり気持ち悪いって、そう思ったんだよね――。
「好きになっちゃって、好きになっちゃいけないのに――だから」
ルビィがそういうと、お姉ちゃんはルビィのことをもっと抱きしめる。
いたいくらいに抱きしめて――そっか、ルビィにおしおきをしてるんだ。
「ごめんなさい、ルビィ」
お姉ちゃんの声は震えてて――まるで泣いてるみたい。
どうしてお姉ちゃんが泣くんだろう――。
「気付いてあげられなくて、つらかったでしょう?」
今度は震えながら、優しい声で――耳元でそう囁く。
「本当は、わたくしから言わなきゃいけなかったのに――怖くて言えなかった。つらい想いをさせてしまって、ごめんなさい」
お姉ちゃんはルビィを抱きしめるのをやめて――ルビィの肩を掴んで少し距離をあける。
「わたくしも――好きよ、ルビィ♡」
ちゅっ――と。
お姉ちゃんはルビィの唇に――柔らかい唇を重ねたの。
お姉ちゃんとのはじめては――。
すっごくしょっぱくて――でもすっごく甘い味がした――♡♡♡
おわり
SID風に書きたかったのに着地点が見えなくなった
やっぱりGODって神だわ
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