―湯町中・部室―
慕「すみません遅れましたー」
玲奈「学活が長引いて……」
雫「いいよいいよ。石飛さんたちヒマしてるから打ってあげて」
李緒「一年面子で卓囲んどいてよー」
美凛「あ、それポン」
亜搖子「はいよ」
慕「今は先輩たちで打ってたんですね」
玲奈「おーい、閑無ー。杏果ー」
閑無「話しかけてくんな!」クワッ
慕玲奈((!?))
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杏果「ごめんね二人とも。いま閑無、夢中になってるから」
玲奈「それにしてもびっくりだよ」
慕「……ねえ閑無ちゃん、なにしてるの?」
閑無「ゲーム!」
杏果「雑すぎでしょ」
玲奈「ホントだよ」
玲奈「ゲームやってるのは、見れば分かるけど」
慕「うん」
玲奈「んな夢中になってるなんて、ゲームで何してるわけ?」
閑無「対戦!」
玲奈「……」
慕「……」
杏果「だから雑だってば」
閑無「しゃーないだろ。今レート戦の途中なんだから集中させろよ」
玲奈「レート? ってことはポケモン!?」
閑無「おう。話ならこのバトル終わってからしてやるから」
玲奈「わかった! そん代わし、今やってるバトル見せて!」
閑無「うるさくするんじゃねーぞ」スッ
玲奈「……ほほー、サザンドラとパルシェンの対面かー」
慕(予想外の!)
杏果(食いつきのよさ!)
慕「ポケモン……ってピカチュウの? レーティング対戦なんて出来たんだ」
杏果「ポケモンはよく知らないのに、レート戦は知ってるんだ?」
慕「ネット麻雀みたいなものでしょ? 私はあまりやってなかったけど……」
杏果「へー。慕がネト麻やったら結構いいレート行けそうなのに」
慕「ネットだと、生麻雀と違ってイーソウ【鳥さん】が見えなくて……」
杏果「ごめんなに言ってるかわかんないや」
杏果「とにかく、最近閑無はそれにハマってるのよ。元々負けず嫌いなだけにね」
慕「へぇー」
杏果「覚えなきゃいけない知識も多いし、結構頭使うんだよ?」
慕「……たしかに、普通のゲームより大変そう……」
閑無「パルノツララバリッテゲッコウガナンハツデオトセタッケ? カラヤブシタラコウゲキニバイダカライマヒトツナノヲソウサイシテ……」ブツブツ
玲奈「閑無だいじょぶー? 落ち着いて考えよ~?」
杏果「あれは例外かな……」
慕「ハマりすぎってことだね」
閑無「くっそ負けたー。さっきまで連勝続いてたんになー」
杏果「ドンマイ」
玲奈「ねえねえ閑無、そのボーマンダって努力値どんな風に振ってるの?」
閑無「え? 確か、ネットにあった型をそのままパクって……」
杏果「最速じゃなかったっけ? ボーマンダ同士の対面は絶対勝つとか言って」
慕「…………」ソワソワ
閑無「あーそうだった。むじゃきで攻撃と素早さに振って、30くらい特攻に分けて……あとなんだっけ」
玲奈「へー。竜舞やはねやすめは入れてないんだ」
杏果「元のステータスも高いし、この型なら技範囲広げた方がいいのよね」
閑無「おいそれ私のセリフ!」
慕「…………」
慕「……」シュン
杏果「ほら閑無、四人そろったしポケモンは一旦やめよ?」
慕「!」
閑無「そうだな。せっかく一年面子も揃ったし……」
閑無「……あれ、はやりは今日来ねーんだっけ?」
玲奈「仕事の関係で、来るとしてもだいぶ遅刻するって言ってた」
閑無「しょーがないやつだな。ま、とにかく一年生四人揃ったことだし……」
慕「うん!」
閑無「みんなで総当たり対戦でもするか!」
杏果「ポケモンから離れなさいよ」
玲奈「私ゲーム機持ってきてないんだけど……」
李緒「そんなこんなでゲーム組と麻雀組に分かれたわけだ」
美凛「ふふ。部活中にゲームやってるなんてバレたら没収されるね」
慕「え」
杏果「閑無大丈夫かな……」
李緒「大丈夫じゃない? そこまで真面目に締めてる部活も少ないし」
美凛「特に、ウチは顧問が放任主義だし」
李緒「むしろ麻雀サボったら機嫌よくなりそう。坂根先生の場合」
慕「それは流石に……」
杏果「ない……と思いたい」
李緒「にしても、ポケモンとはなつかしいね。昔やってたけど、ゲームもアニメも離れちゃったよ」
杏果「私は、例によって閑無がやるって言ってたのに付き合って……。おかげで、小4くらいからの3年間で詳しくなりましたよ」
慕「えっ、5,6年のときそんなにゲームやってた?」
杏果「その頃はもう麻雀中心だったからね。最近、新作出たんでそっちのモチベ戻ってきてるだけど」
美凛「私はアニメ見てるよ。あのね、モクローっていう子がすっごくかわいいの!」
慕「へえ……」
美凛「丸々としてて、柔らかそうで……あの子見てると親近感湧いてくるわぁ」
李緒「先輩それ自虐か天然かわかんないです」
李緒「……じゃあ、慕ちゃんは叔父さんのを遊ばせてもらってたんだ……」
慕「はい。楽しかったけど、遊ぶ時間がとれないのと遊ぶ友達がいないのとでだんだん離れていっちゃって……」
美凛「閑無ちゃんたちが誘ったげてればよかったのにねー」
李緒「タイミングが合わなかったのか。運命のいたずらだなぁ」
杏果「そうじゃなくて、慕の持ってるソフトがだいぶ古いやつだったんです」
李緒美凛「「そっちか~~~!」」
美凛「まっ、中学上がったんだしこれを機に再デビューしてもいいと思うよ」
慕(中学要素がどう関係してるんだろう……?)
李緒「それにぃ、実際麻雀以外の遊びも覚えた方がいいんじゃないの~?」
慕「えっ。あの」
雫「こら李緒ちゃん! 後輩に変なこと吹き込まないの!」
李緒「ありゃ聞こえてた?」
美凛「妹を守るお姉さんかな」
雫「で、でも白築さん! もしよかったら、私が色々教えてあげても……」
杏果「堕落させる気満々ですよ」
美凛「ダメなお姉さんだったね……」
雫「じゃ、今日の部活はこれくらいにしよっか。少し早いけど、市大会終わったばかりだしそこそこにね」
全員「はーい」
閑無「あっ。私ちょっとだけ居残ってくんで、鍵渡してもらっていいですか?」
雫「いいけど……白築さんたちも残る?」
慕「えっ」
玲奈「なにも聞いてないよね……?」
杏果「閑無、仮に一人で居残るとしてなにする気?」
閑無「ああ、ここWi-Fi使えるしもうちょっと対戦してこうかと……」
李緒「もはや依存症じゃない?」
亜搖子「兆候出てるなー」
李緒「てかそれならさ、慕ちゃんも一緒に残って色々教えてもらえば?」
美凛「そだね。一年一人だけだと心配だし、新作の話でもしてポケモンのジェネレーションギャップ埋めちゃいなよ」
慕「えぇ~?」
玲奈「じゃあ、私も残ろうかな。閑無とも話したいし、ポケモン飽きたら三麻もできるし」
杏果「それなら私も残りますよ。新作知らない慕があぶれちゃうかもしれないので」
亜搖子「お~。お姉さん、いやお母さん気質だな~」
杏果「誰がお母さんですか……」
雫「し、白築さん! よかったら私も残って色々と……!」
李緒「ダメなお姉さんはもう帰ろうね」ガシッ
閑無「てわけで四人になったけど、とりあえずパソコン点けるか」カチッ
玲奈(なんで?)
閑無「まああれだ。慕もそこそこは知ってるし、私が教えてやるのは現状で強いポケモンたちのほんの一部だな」
慕「かなり限定的な縛りなんだ」
閑無「そんだけ数も多いからなー。他にも、新しい技とか持ち物とか教えた方がいいのかもしんないけど」
閑無「詳しいことはネット使って自分で調べてくれ!」
杏果「それ言ったらおしまいでしょ」
閑無「検索検索……よし、出た」カタカタ
閑無「ほい、こいつ! まずはこの『ガブリアス』ってポケモンから知ってくれ!」
慕「あ、これ知ってる! 隠れダンジョンで出てくる子の進化形だったよね?」
玲奈「10年前からいたもんねー。私らまだ学校にも通ってないよ」
閑無「こいつはとにかく汎用性がはんぱねーんだ。ステータス全部に無駄がないし、攻撃力も技のレパートリーも優秀で絶妙な素早さから一致で撃てるドラゴンとじめん技の威力・範囲がシンプルに強い。耐久も高いから起点作り型なんてのもあるぞ」
慕「えっと……」
杏果「もうちょっとわかりやすく教えてあげれば?」
閑無「器用で強くて速いんだ!」
玲奈「わかりやすくなったなぁ!」
閑無「で、そんなガブリアスを上回る勢いで使われてるのがこの『カプ・テテフ』ってやつだな。こいつはとにかく火力がヤバすぎる」カタカタ
玲奈「覚える技も、タイプ相性で半減されにくいエスパーとフェアリーだもんね」
慕「へー。そういえば、フェアリータイプ? っていうの増えたんだっけ」
杏果「今はフェアリータイプいっぱい使われてるよね。さっき言ったガブリアスみたいな、人気どころのドラゴンタイプに有利だし」
慕「そうなんだ。ポケモン対戦って食って食われての弱肉強食なんだね」
閑無「いやまあ、そうだけど……」
玲奈「もうちょっとこう……言い方というか……」
慕「ドラゴンといえば、『カイリュー』とか『ボーマンダ』とかっていなかったっけ?」
閑無「あいつらもまだまだ元気だぜ。ってか、ボーマンダは私も使ってる」
杏果「『メガシンカ』っていうシステムで、一部ポケモンはバトル中に進化できるのよ」
慕「あ、それもなんとなく知ってるかも」
閑無「英語で言うとメガエボリューションだな」
玲奈「つまり、閑無のボーマンダはエボってるんだよ!」
慕「エボってる!?」
杏果(どっかで聞いたような動詞だ……)
閑無「ガブリアスもメガシンカできるけど、こいつの進化は微妙だからな。メガシンカできるのでは『リザードン』とか『ギャラドス』とか『フシギバナ』がメジャーっぽい」カタカタ
慕「みんな一番はじめのポケモンだ! 懐かしいなぁ」
玲奈「ちょっと前は、『メガガルーラ』ってのが強かったんだよ。今も強いけど」
杏果「ものすごく流行ってたよね……」
慕「親と子供で、二匹一組のポケモンだったよね? そんなに強かったの?」
閑無「くそ強かったぞ。二回攻撃できて、追加効果も二回分だったからな」
杏果「単純計算で攻撃力1.5倍、持ち物や特性も貫通するしね」
玲奈「技はたくさん覚えるし、意外に速いし硬いしでやばかったね」
慕「さっきのガブリアスより強そう……」
閑無杏果玲奈「「「ガブ関係なく一番強かったよ」」」
慕(満場一致!?)
閑無「そんなメガガルも今は弱体化されて、今度はカプっつー伝説のポケモンたちが出張ってくるわけよ」
慕「さっきのカプ・テテフって子も?」
閑無「おう。めちゃくちゃ強い『カプ・テテフ』、超速くて攻撃も強い『カプ・コケコ』、よくわかんないけどイラつく『カプ・レヒレ』、超強いけどタイプ的にちょっと微妙な『カプ・ブルル』の四体だな」
杏果「一体だけ紹介が変だよ?」
閑無「だってレヒレはよー。他の三体と違って高火力でドーン! と来るタイプじゃないし防御固めてくるのが厄介なんだもん」
閑無「かといって攻撃が弱いわけじゃねえし、色んな技でこっちの体力削ってくるし、単純に防御力も高くてやりづれぇ」
慕「…………」
慕「……そのカプ・レヒレってポケモン、もしかして素早さ高いんじゃない?」
閑無「おお! 高いっつってもそれなりだけど、よくわかったな」
慕「わかったっていうか、閑無ちゃんが嫌がりそうな相手の特徴考えたらね」
杏果「なるほどね。守備が硬くて、攻撃にバリエーションがあって……」
玲奈「あーなるほど。水タイプっていうのも、それっぽいかも?」
慕「これだけ共通点があるなら、そのポケモンも速さに自信があるんだろうなって」
閑無「……あーあーあー! そういうことかー!」
閑無「じゃあカプ・レヒレを私らの知ってる打ち手でたとえると、はやりになるわけだ」
杏果「火力高くて速さもあるカプ・テテフは……三尋木咏ちゃん?」
閑無「一見可愛げあるけど、厄介な戦い方して読み合いにもつえー『ミミッキュ』は小禄かな」
玲奈「今まで戦ってきた相手にたとえたら、ポケモンも覚えられそう?」
慕「うん! 特徴がスッと頭に入ってくるよ!」
閑無「そっか。曖奈さんや善野あたりはどいつになるかな……」カタカタ
はやり「こんにちはー☆ だいぶ遅れちゃいましたけどまだ部活やって……」
閑無「うおっ、噂したら出てきやがった!」
玲奈「伝説のポケモンだー!!」
はやり「はやや!?」
一旦中断します。つづきは後日に
作中世界のポケモンソフトの発売日については時空がレボってるということでお願いします
はやり「ポケモンかぁ。私も、お仕事兼ねてそこそこ遊んでるよ」ハヤ~
杏果「仕事って、CMとかイベントゲストみたいな?」
はやり「ポケモン扱ってる番組で、会社の人にお話聞きに行ったり、タレントさんとポケモン勝負したり」
閑無「こいつ、春くらいからレギュラー定着してんだよ」
玲奈「すごーい。じゃ、その内はやりのポケモンが配信されたりってのもありうるわけだ」
はやり「あはは。そのときはよろしくね☆」
閑無「夏の映画も声優で出るし、なくはない話だな」
慕(あいかわらず詳しいなぁ……)
杏果(さすが閑無)
はやり「へー、閑無ちゃんってレート1700近いんだぁ。私はレートやんないから分からないけど、平均以上の数字だよね?」
閑無「んだよ、はやりもやっとけよなー」
杏果「まーまー。人の楽しみ方に注文つけないの」
閑無「そんで私以下のレートであえいで私の強さを思い知れ!」
慕「その楽しみ方はどうなんだろう……」
玲奈「ちょっと注文つけたくなるね」
はやり「でも、私じゃ無理だよぉ。さっき言ったタレントさんとの対戦でも勝てないもん」
慕「相手はどんなポケモン使ってくるの?」
はやり「えぇと……ポケモンの名前覚えてるから紙に書くね」サラサラ
・カバルドン
・ルカリオ
・カイリュー
・トリトドン
・カプ・テテフ
・ハッサム
閑無「これ多分ガチ勢のパーティーだ……」
杏果「勝てなくて当たり前だよ」
はやり「そうなんだ!?」
玲奈「やー、今日はポケモン談議に花を咲かせて楽しかったねー」
はやり「私は麻雀するつもりで来てたんだけど……」
閑無「まーいいじゃん。部活で麻雀、休憩中にポケモンで常に頭働かせられるし」
杏果「坂根先生もやりすぎるなって言ってるからね。ま、今日みたいのが続くのはアレだけど」
慕「私、ポケモンの話楽しかったよ。対戦以外でも、色んな子のこと知られて面白かった」
玲奈「ねえねえ。慕って金のかかる趣味や習い事とかもなさそうだし、ゲームくらい買ってもらえば?」
閑無「いいなそれ。家事とかもやってあげてんだし、あのおっさんなら3DS込みで買ってくれんだろ! ってか買わせろ!」
慕「え~?」
はやり「はやや~。もし慕ちゃんも始めたら、麻雀以外でもみんなで対戦できるね☆」
慕「…………」
―白築家―
慕「……って話をみんなでしたの」
耕介「ほー。そりゃまた懐かしい話題を」
慕「話しておいてなんだけど、新作とか欲しくないのでお構いなくー。閑無ちゃんのを見てるだけでも楽しかったし」
耕介「つってもなぁ。閑無ちゃんが対戦とかやりこんでるなら、新しいキャラとかアイテムとか知らないとついてけないんじゃねえの?」
慕「……おじさん、ひょっとして私におねだりしてほしいの?」
耕介「そうだな!」ビシィ
慕「その開き直りは一体……?」
耕介「俺も大人だし、姪の趣味に関係した出費が麻雀オンリーなのは、我ながらどうかと悩んだりすることもあるんだ」
慕「大人の悩みってフクザツだ……」
耕介「ゲームの相場とかあんま知らんけど、3,4万ならまあ出せるから気軽におねだりしてほしいな」
慕「そっ、そんなに!?」
耕介「お、おう」
慕「3万円、4万円…………そんなにあったら……」
耕介(やべ、ちょっと盛ったかも。一体何をねだられるか……)
慕「そんなにあったら食費2か月余裕で保つよ!!」
耕介「やっぱ慕ならそう言うよなー!」
慕「まあ、本当に欲しくなったとしても大会終わってからかなぁ」
耕介「あ、そっか。麻雀の県大もすぐそこだっけ」
慕「うん。そのあとは全国もあるし、落ち着くまでもう少しかかるかも」
耕介「へぇ、もう市大会終わったばっかでもう全国見据えてんのか」
慕「……ぁっ! べべ、別に県は余裕とかそういうわけじゃなくて!」
耕介「つっても、島根の小学校の上位4人がそのままいんだし可能性高くないか?」
慕「そ、そうかなぁ。……えへへ」
耕介「自信があるのかないのかどっちなんだよ」
耕介「話戻すけど、ゲーム機はもう家にあるかもな。3DSだろ?」
慕「うん。たしかそうだったはず」
耕介「俺、それ持ってるわ。周藤に誘われてしょーがなく買ったけど今でもゲーム楽しいんだよな」
慕「へぇ。たまに会社の人同士でゲーム遊んでるCMとか見るけど、あれって本当?」
耕介「んー……。ごくまれに編集長からマルチプレイの誘いが来るし、まるきり嘘ではないのかも」
慕「そうなんだ。じゃあじゃあ、女の人で一緒にゲームする人とかいる?」
耕介「いないけど?」
慕「……あっ」
慕「ごめん、変なこと聞いちゃって……」
耕介「謝られるともっと辛いからやめてな」
慕「…………」カリカリ
耕介「慕ー。宿題中みたいだけどちょっといいか?」
慕「ん、なに?」
耕介「いや、さっきの話で思い出して色々探してみたらさ。昔遊んでたポケモンのソフト見つけたんだ」
慕「ポケットモンスター・ダイヤモンド……。……あれ、私これ知らない……」
耕介「昔の慕が遊んでた古いバージョンより、さらに一世代古いやつだな」
耕介「もう10年くらい前ので、小っちゃかった頃の慕にも遊ばせてやった記憶あるんだけど、おぼえてない?」
慕「んー……」
耕介「うっわ~……なっつかしいなぁー。10年前の俺が捕まえたやつらみんな残ってるわ」カチカチ
慕「あ~。言われてみれば、こんな感じの画面見たような気も……」
耕介「あの頃は慕に『フカマル』捕まえるとこ見せてドヤ顔してたっけなぁ」
慕「フカマル……って、ガブリアスの進化前?」
耕介「そうそう! 『このポケモンはめっちゃ分かりにくいこのダンジョンでたまにしか出てこねーんだぜ!』みたいな感じで意気揚々と捕まえに行って……」
耕介「マジで捕まえて慕と一緒に喜んでたら、姉貴に笑われたの覚えてない?」
慕「おかーさんが!?」
耕介「おう。笑った姉貴に『小さい子供に遊んでもらって楽しそうね』って言われた」
慕「覚えてないけど、その光景はすごくリアルにイメージできそう……」
耕介「おぉっ、見ろよこれ! 『しの』って名前のポケモンがいる!」
慕「え!? ……って、ニックネームのことか」
耕介「『ムクホーク』、鳥ポケモンだな。野生で出てきたやつの進化形だよ」
慕「鳥さん……」
耕介「ガキだった慕が野生で出てきたのを見て、どーしても捕まえて捕まえてってせがむから、しょーがなく捕まえてやったやつだ」
慕「扱いひどくない!?」
耕介「だって全然珍しくない種類だったし……」
慕「せめて言い方考えてよ!」
耕介「そんな『しの』も、なかなか頼れるポケモンだったな。いい技覚えるし、攻撃重視のステータスがストーリーだと役に立つんだ」
耕介「『そらをとぶ』要員としても世話になったし、捕まえてからクリア後まで『しの』はずっと一緒にいたなぁ」
慕(うぅ……。なんとなくむずがゆいこの感じ)
耕介「『すてみタックル』とか『ブレイブバード』みたいに自分にもダメージ来る技ばっか使わせて申し訳ないと思ったりもしたな」
耕介「ま、その分威力高い技で敵のポケモンどんどんぶっ倒して……『しの』は手持ちのMVPだったかも」
慕「……~~」ソワソワ
耕介「そう考えると、ほんと『しの』は俺にとって最高のパートナーだったな!」
耕介「ってわけで、別に扱いひどかったわけじゃないぞ? むしろ『しの』はめちゃくちゃ大事にされてた……」
慕「はっ、恥ずかしくなってきたからやめてー!!」
耕介「ほかにも『ナナ』ってニックネームのがいるな。こいつも、慕が捕まえてっていうから捕まえたやつだ」
慕「『ロズレイド』、花のポケモン……どうしておかーさんの名前が?」
耕介「え? これも慕がそうしろって言ったのおぼえてねえ?」
耕介「なんだっけな、きれいなお花がぴったりだからうんたらかんたら…………」
慕「…………あっ!」
~~~~~
しの「わー、おじさんすごーい! またポケモンつかまえたー!」
耕介「どういたしまして」
ナナ「あら。こーすけったらまだ慕に遊んでもらってるの?」
耕介「あーうるせうるせ」
しの「おかーさん! こっちきて、これみておかーさん!」グイグイ
ナナ「お~? どうしたの慕?」
しの「この子、おかーさんのなまえつけたの! みて!」
ナナ「どれどれ……あ、この子ね!」
ナナ「ねーねー耕介。これってどんなポケモンなの?」
耕介「『ロゼリア』っつー草タイプのポケモンだよ」
ナナ「へー、かわいいじゃない」
しの「えへへー」
しの「この子ね、りょうてに花もってるでしょ! あかとあおで、きれいなお花ふたつ!」
ナナ「ほんとだ。綺麗ね~」
しの「でしょー?」
ナナ「うん。きれーきれー」
しの「あのね、この子ねー……」
しの「お花みたいで、かわいくってきれいだからおかーさんみたいだなって!」
ナナ「…………!」
ナナ「もう! 慕ったら! それで私の名前つけてくれたの?」
しの「うん!」
ナナ「そっかぁ。慕、ありがとう……。……すごくうれしいなぁ」
耕介「毒タイプ持ってるのも姉貴らしいけどな」
ナナ「おい弟、そりゃどういう意味だ」
~~~~~
慕(そうだった……。私、10年前におじさんやおかーさんと……ポケモンで…………)
慕「…………」ポロッ
耕介「うぉ!? 急に泣いてどうした?」
慕「ううん、ちょっと思い出しただけ。ありがと、おじさん」
耕介「お、おう?」
慕「……ねえおじさん。このソフトにいる子たちって、今の新しいソフトに連れてこられないかな?」
耕介「たぶん出来ると思うけど……」
耕介「もし、連れてこられたらどうしたいんだ?」
慕「……もし、連れてくることが出来るなら」
慕「私、この子たちと一緒に旅がしたい!」
慕「昔の私と、昔のおじさんと、昔のおかーさんとでかわいがってた子たちに……もういちど、『今』に居てほしいの!」
慕「それで、今はおかーさんいないけれど……」
慕「そうやって遊んでできた思い出を、また次の10年後にこうやって振り返ることができたらいいな……って」
耕介「……慕!」
慕「だから、そのぅ。前言撤回してのおねだりになるけど、いい?」
耕介「うん。遠慮なく言ってくれ」
慕「……あのね、」
慕「おじさん、私ポケモンやりたい!」
耕介「! ……おう! 買ってやるよ!」
―湯町中・部室―
慕「……というわけで、私も新作始めることにしたの」テレテレ
閑無「おー! あのおっさんやるじゃん!」
杏果「へぇ。慕にそんな思い出が……」
玲奈「泣かせる話だね~」
はやり「でも、大会近いのに大丈夫なの?」
慕「うん、ゲームは一日一時間までっておじさんとも約束したから」キッパリ
閑無「おいおいマジかよ……!」
玲奈「本気で言ってるとしたら都市伝説級だよ……!?」
杏果(なんだその反応)
はやり「それで、インターネットのサービス使って新作に連れてきた子たちとまた冒険してるんだ」
慕「えっ? まだ始めたばかりだけど、連れてこられるの?」
閑無「あれ、知らなかったのか?」
玲奈「ここならネット使えるし、今やってみればいいじゃん」
慕「う、うん! やってみる!」カチカチ
杏果(あれ? 昔のソフトで育てたポケモンを、今始めたばかりのソフトへ連れてくるってことは……)
しのは いうことを きかない!
しのは そっぽを むいた!
ナナは しらんぷりを した!
ナナは なまけている……。
慕「……わぁ~ん! いうこときいてくれないよぉ~!」
杏果「ま、こうなるよね」
(おしまい)
以上でおしまいです。読んでいただきありがとうございました
今回シノハユで初めてSS書いたのですが、杏果と閑無のセリフを書くのがめちゃくちゃ楽しかったです。ほんとこの二人のキャラ造形は革命的でレボってると思います
玲奈「みんなのお気に入りの子を寄せ合ってパーティー作ってみたよ」
杏果「うーん……」
・しの/ムクホーク(慕選)
・ナナ/ロズレイド(慕選)
・ボーマンダ/ボーマンダ(閑無選)
・まりりん/アシレーヌ(はやり選)
・どんちゃん/トリトドン(杏果選)
・スイム/キングドラ(玲奈選)
はやり「正直あまり強くなさそう……」
閑無「フリドラ持ちの氷タイプで全壊だな」
慕「み、みんなひどいよぉ……」
(カン)
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