「んー……」
それ自体は別段と問題はない、問題はないのだけれど……。

そう、我が家に物がとても増えているのだ。

「まぁ、悪いことではないのだけれど」

一昔前までの積んだダンボールとベッドくらいの飾り気のない殺風景な部屋に比べたら幾らか年相応の部屋になったのではないかと思う。
しかし、前には飾ることもなかった物が増えてくると少し、落ち着かない感覚にもなるもので――

「さすがに少し散らかった物とかを整理しないといけないわね……」

～～～～～
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散らかった物を分け、ゴミを捨て、あらかた片付いたら床に掃除機をかけ――

お部屋の掃除を始めてから数十分、私は掃除の途中で目に付いたカメラもといその写真を眺めていた。

最近腕前はそこそこにカメラ・写真に興味を持つようになった。
そのこともあり、写真がたまの暇な時間にこうして見返すのも密かな私の楽しみになっている。

「そう言えば、なにかある度に写真を撮っていたわね……」

写真の枚数を見るなりそんな一言が出てくる、言うなれば遠足についてくるカメラマンのような。
そんなことを思いながら写真を眺めているとふと目が止まった。

「あら、高槻さんと亜美と真美の写真、ゲームセンターで高槻さんとお揃いのぬいぐるみを取った時のやつね、ふふっ」

ベッドに置いてあるよく寝るときに抱き枕にしているお揃いのぬいぐるみ
前に亜美、真美、やよいと一緒にひょんなことからゲームセンターに入って
亜美と真美達が調子に乗ってクレーンゲームで2つ同じぬいぐるみを取ってしまって
一つはやよいに、もう一つは私にプレゼントしてくれた時の写真ね。

「高槻さんを中心に亜美も真美もぬいぐるみを抱えて、うん、いい笑顔ね」

すこし思い出に浸りながらカメラの写真を一つ一つスクロールしていく。

「これは、春香が笑顔でマグカップを両手に持っている写真……？」

あぁ、思い出した。
この写真は春香が私の家に勉強会に来る途中に寄ったお店で一目惚れしちゃって買って家に来ちゃった時に撮ったのね。
あまりにもいい笑顔だったからすっとカメラ取り出してパシャりと一枚撮ってしまっていたわね。
あのマグカップは春香が私に
「このマグカップはおひとつ千早ちゃんにプレゼントしちゃいまーす！ もう一個の方は私の分だから、お揃いだね、ふふっ」
って言って贈ってくれたのよね、今でも大事に使っているわ。

「～♪」

他には何かあるかしら？
ついつい気分が乗って来て鼻歌を歌いながら次々と写真を回して行く。
私はよく、綺麗だなと思った風景やぬいぐるみだったり、たまに料理や人物だったりを撮ったりする。
だから大抵は風景や小物の写真が多いけれどこうして人物の写真も探すとよく見つかったりするのである。

「～♪ ？」

これは、伊織と美希の……寝顔？

「……何をやっていた時かしら？」

少し思い返して見る、見た所寝ているのは私の家の布団みたいだし……
自分の布団を見ながら前のことを思い返してみる、前に伊織と美希が遊びに来た時……？

なんとなく思い出した、たしか美希と伊織が遊びにきて、その時美希が
「千早さんに最近拘ってる枕を一つ持ってきたのっ！ 」って言ったら
伊織が「枕を拘ったくらいで何が変わるのよ、ねぇ千早？」って言い出したから皆で試しに寝てみることにして
私も含めて川の字でみんなぐっすり寝てしまった時ね……
一足先に目を覚まして、寝てる美希と伊織の写真を撮った時の写真だったわね。

「そう言えば美希、枕置いて行ったままね……」

自分のベッドに置きっ放しの枕を見つめながらすこし苦笑いがこぼれた。

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「あら、これは眼鏡をかけた私？」

青いフレームの眼鏡をかけた私の写真
律子とあずささんが私の家でお鍋をしに来た時に律子が私にこれをかけてみてってもって来た時に律子が撮った写真ね。

確かこの写真の次は……あずささんがカメラを最近の流行りの自撮りみたいに
あずささんを含めて私と律子とお鍋と一緒の写真を撮ったのよね。
お鍋も美味しかったし、楽しかったわ。

「あら、今度は焼肉ね」

2、3枚写真を進めると今度は雪歩、真、響、四条さんとの焼肉の写真。

雪歩が「千早ちゃん、良いお肉が貰えたので今日、皆で焼肉をしませんか？」と真と私で話していたら
四条さんが聞きつけて
「千早、時にこの前あずさと律子嬢とでお鍋をしていたようですね……わたくしも千早と食卓を囲んでみたいのですがお誘いいただけないでしょうか？」
と言い出すと響も「自分も使い切りたいお野菜持っていくから混ざってもいい？」
と気づけば大人数で焼肉をすることになって－－－

その焼肉も、雪歩が焼肉奉行を完璧にこなしたり、真が生焼けのお肉を取ろうとしたら
「真ちゃん！ そのお肉は少し早いよ……っ！」って凄まれて
「へっ！？ あっ、そ、そうなんだありがとね雪歩」ってタジタジになりながら雪歩に焼けているお肉をよそってもらってたりして見ている私が少し驚いたり
四条さんが「お野菜を焦がしたら焼肉を損なうものですよ、響こちらをどうぞ。千早もお肉をどうぞ」
と野菜ばかり食べてる私にお肉をよそったり、お肉をいっぱい食べてる響に野菜をよそったり
途中から響が真と大食い勝負していたり。

……また鉄板を出して皆で今度はお好み焼きとかも囲もうかしら？

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写真のフォルダも残りが少ないところまで流して見続けていた。

ふと見つけたのは、また私の写真。
今度はメガネをかけているのでは無く、いつかのライブの衣装を私が着ていた。

これは……プロデューサーが撮った、衣装を通した私の写真、頭には小さなシルクハットに今でもお気に入りの衣装。

写真越しに自分を改めて見ると少しむず痒い思いがあるけれど、袖を通した時にワクワクしたりドキドキしたりしていたわね。

小さなシルクハットも記念にってプロデューサーが私にプレゼントしてくれて、今でも大事に飾っていたり、ね。

そんなこんなで写真を見終わり改めて部屋を見渡したらモノが増えてさっきまでは落ち着かないと思っていたけれど
一つ一つに思い出がつまっていたりしてこれはこれで良いものね。

ﾓｰﾄﾄｵｸﾍｵﾖｲﾃﾞｰﾐﾀｲｰ～♪


物思いに耽っていたら唐突に携帯の呼び出し音が鳴りハッと我に帰った。
気づけば写真を見始めてからずいぶんな時間が経っていたのね……

携帯の画面に表示されたのは春香からのメール

『これから千早ちゃんの家で集まりたい！！
　って皆が提案しているだけど、千早ちゃんのお家は空いてるかな？ その前に千早ちゃん今日、大丈夫そう？？』

集まりたい……？ 今日？ とふと思いカレンダーを見るとハッとして少し照れくさくなった。

そうか、今日は私の－－－

春香に「分かったわ、丁度掃除が終わったところなの、この後は予定もないし来ても大丈夫。」
と返信する。

こうしてまた私の家に再び嬉しいモノが増えていくのである。

千早「最近モノが増えてきたわね」 終わり