――――――
早朝

ウメ「……つまり、ナズナの後ろから顔を覗かせているその子供が、団長さんという訳だな？」

ナズナ「はい……そうなんです……」

ショタ団長「…………」ﾋｮｺ

サクラ「あらあら～///」

ウメ「これは……随分と可愛らしい姿になったな」

サクラ「ボク、今いくつかな～？」

ショタ団長「ごっ、5歳……です」

サクラ「あら～///」

ナズナ「記憶も子供の頃に戻っちゃったみたいで、私達の事も分からないみたいで……」

ウメ「一体全体、どうしてこんな事になったのかな？」

ナズナ「一番この件に関わりのありそうなイエローチューリップさんに聞いてみたのですが、やっぱり昨日の夜に団長さまに薬を……」

ウメ「成程、大体分かったよ。最近落ち着いていたように見えたのだが……全く」

ナズナ「ど、どうしましょう……？ 一応、一日経てば元に戻るそうなのですが……」

サクラ「う～ん……。とりあえず、今日の団長業務は副団長の私がするわね～」

サクラ「それで、今日は最低限の警備と哨戒を出して、他の花騎士はお休みにしちゃいましょう」

サクラ「幸い、ちょっと前の大規模討伐で付近の害虫は掃討してから害虫の襲撃や目撃情報もないし、もうしばらくは彼らも近寄ってこないと思うの～」

サクラ「勿論、何かあった時にはすぐに対応できる状態にしておかないといけないけどね」

ウメ「了解した。では、そちらは私が担当するとしよう。サクラ、部隊はこちらで編成しても構わないか？」

サクラ「勿論よ～。誰を連れていくか決まったら教えてね？」

サクラ「ナズナちゃんも、それでいいかしら？」

ナズナ「は、はい！ お二人とも流石ですね！ 私なんて団長さまが子供に戻っちゃって、どうしようか狼狽えてただけなのに……」

ウメ「なに、花騎士たる者、ありとあらゆる事態に即座に対応出来てこそだ」

ウメ「まぁ、今回は非常に変わった事態ではあるが……」

サクラ「私は副団長だから、団長さんが動けなくなっちゃった時に団長の代わりをするのは当然よ～」

サクラ「ただ、流石に団長さん程、上手くお仕事出来ないと思うのー」

サクラ「だから、ナズナちゃん、手伝ってくれるかしら～？」

ナズナ「はい、勿論です！ 団長補佐の私にお任せください！」

ナズナ「あっ、でも団長さまはどうしましょう……？」

ウメ「それなら、花騎士のみんなに面倒を見てもらう事にしようか」

ウメ「幸い、この騎士団の中には子供と接するのが得意そうな花騎士も多くいる」

サクラ「そうね～。ボク、今日は他のお姉ちゃんに一緒にいてもらうようになるけど、仲良く出来るかしら～？」

ショタ団長「う、うん。出来ると思います……」

サクラ「団長さん、良い子さんね～♪」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

ウメ「小さい団長さんは随分と大人しいんだな……」

ウメ「さて、では仕事にとりかかろうか。みんなにも今日の事を説明せねばな」

――――――
こうして、5歳児へと戻ってしまった団長は、今日一日を花騎士達と一緒に過ごす事になった。

だが……


～～～騎士団宿舎 食堂～～～

ナイトフロックス「ここは譲れません！」

スノードロップ「どうして分かってくれないんですか！」

ショタ団長「あわわ……！」ｱﾀﾌﾀ

アスター「全く、いい加減にしないか二人とも……」ﾊｧ

朝食時の食堂、そこでナイトフロックスとスノードロップが団長を挟み、激しく言い争っていた。

目の前のテーブルの上にはナイトフロックスの作った一汁三菜の、焼き魚を中心とした和食。汁が味噌汁ではなく、緑色のスープのようなものになっている。

そして、スノードロップの作ったバターロールやスクランブルエッグとウィンナー、コーンスープなどの典型的な洋食が置かれていた。

ナイトフロックス「やっぱり団長さんの朝ごはんは栄養のバランスが整った和食にすべきです！」

ナイトフロックス「幼い時から栄養のバランスをしっかり考えてこそ、将来の健康に繋がるんですよ！」

スノードロップ「確かにそうかもしれませんが、流石に緑が多すぎる気がします！ 特に薬草のスープって健康な朝の日に飲む必要はない気がしますよ！」

スノードロップ「私のだって、しっかり野菜は取り入れています！ それに今回は子供でも美味しく食べられそうな料理を中心に作ってきました！」

スノードロップ「きっと団長さんも気に入ってくれるはずです！」

アスター（二人とも結局、自分の作った料理をブラザーに食べてほしいだけなんだろう……ナイトフロックスさんは今日一日でブラザーが元に戻るという事を忘れてないかな……？）

アスター「このままだと平行線だ。ブラザーはどちらの料理を食べたいんだ？」

ショタ団長「えっ、えっと……えっとぉ……」

アスター「……昔のブラザーは優柔不断だったのかな？」

ショタ団長「りょ、両方食べる……？」

アスター「……君のその小さな体に、二人前が入るように見えないが……。二つの料理を並べて好きな物だけ食べて残すというのも、行儀が良くないかな」

ショタ団長「うぅ」

アスター「もしかして、選ばれなかった人に悪いと悩んでいるのかな？」

アスター「だが、ブラザー。こういう時はスパッと選んであげるのも優しさだよ」

ショタ団長「ごめんなさい……でも……」

アスター「ふぅ……大人のブラザーと比べての違和感が半端ないな……」

アスター（この子の将来の姿が騎士団長なのだから、人生とは分からんものだな……）

アスター（今度、ブラザーに昔の事を聞いてみるのも面白そうな気がしてきた）

アスター（それよりも、まずは目の前の状況だな……）

アスター（二人はまだ言い争っているし、ブラザーはその雰囲気に気圧されてるのもあるのか、何も決められない状態だ）

アスター（どうしたものかな……）

アプリコット「ど、どうしたんですか？ 何か騒がしいですけど……」

アスター「む、アプリコットさんか」

アプリコット「わぁ♪ この子ってもしかして話に聞いてた小さくなった団長さんですか？ 可愛い！///」ﾀﾞｷｯ

ショタ団長「わぁ！」

アスター「ちょうど良かった。スノードロップさんとナイトフロックスさんが、どちらの朝ご飯がブラザーにとって良いか揉めててな」

アプリコット「そうなんですか？ 喧嘩は良くないですよ」

アプリコット「それに、団長さんだって困ってますよ。お二人がそんな雰囲気じゃ、決めにくいのも当たり前だと思います」

アプリコット「団長さんだって、ゆっくり決める時間欲しいですよね？ お二人の料理とも美味しそうで迷っちゃいますよね」

ショタ団長「うん……ごめんなさい……」

スノードロップ「あ、謝る必要なんてないです！ そうですね、私達がこんな雰囲気じゃ団長さんにも申し訳ないですね……」

ナイトフロックス「私達、団長さんに料理を食べてもらいたいがばかりに、意見の押し付け合いなんてして……」

アプリコット「喧嘩なんてしないで、決まるまで待ってあげて――――はっ！」

アプリコット「ス、スノードロップさん……まさか、このパンってバターを使って……」ｶﾀｶﾀ

スノードロップ「はい、使ってますよ。バターロールは朝ごはんの鉄板―――」

アプリコット「バターはダメです！ マーガリンは敵です！」ｸﾜｯ!

アプリコット「スノードロップさん、あなたはバターで団長さんを育てる気ですか！？」

アプリコット「失望しました……。スノードロップさんがそんな人だったなんて！」ｷｯ!

スノードロップ「え、えぇー！？」

アプリコット「団長さん、バターなんて食べちゃいけません！」

アプリコット「そうです。小さい頃からしっかりジャムの素晴らしさを教えておかないと、団長さんがバターに穢されてしまうかもしれません」

アプリコット「こうなったら、私が美味しいジャム料理を作ってあげます！」

ナイトフロックス「えぇ！？」

アスター「アプリコットさん、行動が言ってた事と真逆なのだが……」

ショタ団長「あわわ、また喧嘩みたいに……」

アルストロメリア「分かってない！分かってないよみんな！」ﾊﾞﾝ!

ショタ団長「！？」

アスター「あぁ、また混沌としていく……」

アルストロメリア「朝なら美味しくて元気が出る物が一番！ 子供にとって美味しく、元気が出る物といえば勿論！」

サフラン「そう！ カレーね！」

ショタ団長「また元気なお姉ちゃん達が増えた……！」

アルストロメリア「朝カレーという言葉もある通り、カレーは最早一般的な朝食だよ！」

サフラン「という事で団長さん、どうぞ♪」ｺﾄｯ

ショタ団長「わぁ……カレー……！」ｷﾗｷﾗ

スノードロップ「カ、カレー……！ 確かにカレーは子供にとって王様的料理……！」

ナイトフロックス「団長さんの興味が一瞬でカレーへ……！ 流石にカレーは強いですね……」

アプリコット「隠し味にジャム入れて良いですか？ 甘くなって美味しいと思います！」

アスター「……って、ちょっと待て。それ、究極カレーじゃないのか……？」

アルストロメリア「勿論だよ！」

アスター「……いや、子供相手に究極カレーはやめた方がいいんじゃないか……？」

サフラン「どうして？ とっても美味しいわよ！ ほら、団長さんだって食べる気になってる！」

アスター「確かにブラザーに選ばせるべきだとは思うが、究極カレーだぞ……？ もう少しマイルドなカレーにした方が―――」

ショタ団長「頂きます！」ﾊﾑｯ

アスター「って、食べてしまったか……大丈夫―――」

ショタ団長「か……辛いぃーー！！」

アスター「あぁ、ほら言わんこっちゃない……」

サフラン「大丈夫！？」

ショタ団長「ｳｸﾞｯ……ｴｸﾞｯ……辛いよぅ……」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

アルストロメリア「わわっ、泣いちゃった！ どうしよう……」

アプリコット「団長さん、どうぞ！ お水です！」

ショタ団長「ｸﾞｽｯ……ありがとう……」ｺﾞｸｯ

ショタ団長「！？！？！？！！？」ﾌﾞﾌｩ

サフラン「きゃっ！？」ｻｯ

スノードロップ「団長さん！？」

ショタ団長「ゔえええぇぇぇ……凄い甘いよぅ……」

アスター「アプリコットさん、まさか……」

アプリコット「辛さを甘さで打ち消せるかなぁと思って、ジャムを入れてみました！」

アスター「何でそう余計な事をするんだ君は！？」

ショタ団長「うぇぇぇぇぇ……口の中が痛いくらいヒリヒリするし甘い……」ｸﾞｽｸﾞｽ

スノードロップ「も、もっと泣いちゃった……」

ナイトフロックス「ごめんなさい、まさかこんな事になるなんて……」

アスター「今はまずブラザーを泣き止ませなければ……」

ハツユキソウ「ふんふん♪ いつもお仕事の日が急にお休みになると特別な感じがして良いですね～♪」ﾃｸﾃｸ

ハツユキソウ「遅い時間にご飯食べても大丈夫ですし～♪」

ハツユキソウ「今日は部屋でずっとダラダラして惰眠を―――」

アスター「ハツユキソウさん！」

ハツユキソウ「はい！？ う、嘘です嘘です！ 本当はお休みじゃなかった日なんですからダラけ過ぎず、有意義に自主鍛錬とかするべきですよね！」

ハツユキソウ「勿論、するつもりでしたよ！ 本当ですよ！？」

アスター「いや、そういう事じゃない。ハツユキソウさんに頼みたい事があるんだ」

ハツユキソウ「頼みたい事？ 」

アスター「この子の口に手をズボッと突っ込んでほしいんだ！」

ハツユキソウ「ふぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！？」

スノードロップ「ア、アスターさん！？ アスターさんも実はかなり混乱してますよね！？」

アスター「すまない、手を突っ込むはやりすぎだな……」

アスター「頼む、この子に指を舐めさせてあげてくれないか！？」

スノードロップ「アスターさん！？」

ハツユキソウ「ゆ、指を舐めさせるですか！？ 何かインモラルな雰囲気が……！///」

ハツユキソウ「……はっ！ これはあれですね！ この子に指を舐めさせてる様子が広まって、『ゆ、雪女が男の子を怪しい儀式で使い魔にしようとしてるぅ～』って噂が流れてしまうやつですね！？」

ハツユキソウ「そうして、幼い男児にいかがわしい行為をさせたとして、逮捕されて花騎士終了なのでは……！？」

ハツユキソウ「それで、釈放された頃には『ショタ食い雪女』の噂が広まって、私の人生も終了する形に……！」

ハツユキソウ「うぅ、そんなのいやですよぉ～～～～～！！ 不幸です～～！！」

ナイトフロックス「ハツユキソウさんも落ち着いてください！ 実はこの子は団長さんで……」

ハツユキソウ「えっ！？ この子、団長さんなんですか！？ あー、そういえば確か今日のお休みの理由にそんなことを聞いたような……」

スノードロップ「それで朝ごはんにカレーを食べたら凄い辛かったみたいで……」

サフラン「ごめんなさい……私達の基準で作ってしまったけど、もう少し甘いカレーにしておくんだったわ……」

アルストロメリア「うぅ……反省だよ」

ハツユキソウ「成程！ それで冷やす為に私が呼ばれたんですね！」

ハツユキソウ「でもでも、流石に舐めさせるのは……そうだ！ 私の部屋に差し入れで貰ったアイスが大量にあったはずです！ 待っててくださいね団長さん！」ﾄｯﾄｯﾄ

スノードロップ「えっ！？ あの、普通に水を……行っちゃった」

ショタ団長「口中い”だい……」


―――その後、すぐにハツユキソウが両手で抱えて持ってきた大量のアイスをみんなで食べ、舌を冷やしている内に、団長はお腹が一杯になってしまった。

ショタ団長「美味しかったぁ」ｹﾌﾟ

ナイトフロックス「朝ごはんをアイスで済ませるというのは、栄養的には良くないですよね……」

スノードロップ「でも、私達が原因だから何も言えませんね……」

アプリコット「見てください！ このアイス、ジャムをかけると凄い美味しいです！」ｼﾞｬﾑﾄﾞﾊﾞｰ

アスター「とてつもなく甘そうだな……」

アルストロメリア「うっ、何かシャーベット食べ過ぎて頭痛くなってきたかも……」ｽﾞｷｽﾞｷ

ハツユキソウ「皆さん、追加で持ってきましたよ！ ささ、食べちゃってください！」ﾄﾞｻｯ

ハツユキソウ（これ……差し入れで溜まりに溜まった要らないアイスを消化できるチャンスかも！）

サフラン「ごめんなさい、流石にもう食べられないわ……。残ったカレーも食べなきゃいけないし……」

ショタ団長「うぅっ、何か今度はお腹が痛く……」ｸﾞｷﾞｭﾙﾙﾙﾙ

ハツユキソウ「やり過ぎちゃった！？ ごめんなさい！ トイレ行きましょうトイレ！」

――――――

ハツユキソウ「うぅ、また調子に乗っちゃったよぅ……。ごめんなさい団長さん」ﾄｺﾄｺ

ショタ団長「大丈夫、僕もたくさん食べちゃったし……」ﾄｺﾄｺ

ハツユキソウに連れられてトイレに向かった帰り道、ハツユキソウは自身が調子に乗った結果、団長のお腹を壊したという事実に落ち込んでいた。

ハツユキソウ「でもでも、私が持ってきたアイスでお腹を壊しちゃった訳ですし……」

ショタ団長「でも、とっても美味しかったから嬉しいよ！ 口中痛いのも治ったし！」

ハツユキソウ（うぅ、ただ要らないアイスを処分しようとしていただけなのに……そんな屈託のない笑顔を向けられると、心が痛い！）

ショタ団長「ありがと、お姉ちゃん！」

ハツユキソウ「お、お、おぉお姉ちゃん……！？」

ショタ団長「？ お姉ちゃん……？」

ハツユキソウ「こ……これは良いかもぉ～♪///　弟っていうのも悪くないですね～♪///」

会話に花を咲かせていると、特徴的な眼帯を付けステッキを持った女性が、廊下を行ったり来たりしながらブツブツと呟いているのが、ふとハツユキソウの視界に入った。

アイビー「守護の執行人たる組織から召喚されし使徒……うぅむ、何か違うわね……」

ハツユキソウ「アイビーさん、こんにちは～！」

アイビー「あら、ハツユキソウちゃん。と、この子は……もしかして話に聞いてた幼くなった団長さん！？」

ショタ団長「こ、こんにちは……？」

アイビー「えっと、確か記憶も昔に戻ってるんだったかしら……？ それなら、自己紹介しないといけないわね！」

アイビー「我は不死なる生命の守護者アイビー！ 超越者に約束されし我が不滅なる力で、全ての生命を守ってみせるわ！」

ショタ団長（何かちょっと変わったお姉ちゃんだ！？）

ショタ団長「えっと、アイビーお姉ちゃん……？」

アイビー「はぅあ！？」

ショタ団長「！？」

アイビー「も、もう一回……！」

ショタ団長「アイビーお姉ちゃん……？」

アイビー「こ、これはクるわね……！」

アイビー「良いわね、とっても良い！」

ハツユキソウ「分かります、良いですよね！」

ショタ団長「？？？？」

アイビー「団長さん、ハツユキソウちゃん！ この後って暇かしら？ 折角お休みになったんだし、外で他のガキんちょ達と一緒に遊び―――」

タチバナ「失礼します、ちょっと待ってください」ﾋｮｺ

アイビー「タチバナさん？」

タチバナ「団長殿が子供になったと聞いて、ずっと探していましたが、やっと見つけました」

タチバナ「皆さん、多くの事を吸収できる多感な時期の子供こそ、いろんな知識や物語に触れ、勉強しておくべきだと思うのです」

タチバナ「そこで、みんなで団長殿を連れて図書館へ行くのを提案したいのですが、どうでしょう？」

アイビー「う～ん……お勉強も確かに大事よ。でも子供の時こそ、いろんな友達と外でたくさん遊んだ方が良いんじゃないかしら？」

タチバナ「子供のうちから本を読む習慣を身につけないと、大人になっても中々本を読みません」

タチバナ「団長殿には、たくさんの本を読んで知識の引き出しを多くして、将来困らないようにしてもらわないと」

アイビー「外で友達と遊ぶことは、社交性を育むトレーニングになるわ」

アイビー「小さいうちにたくさん遊んで運動神経と社交性を育む事こそ、子育てにとって大事なことなんじゃないかしら？」ﾑｯ

アイビー「それに百聞は一見に如かずとも言うでしょ。実際に外に出て、いろんな体験をすることが一番大事よ！」

タチバナ「あてずっぽうにいろんな体験をさせるより、団長殿が何に興味があるのか、まずそこから一緒に探したほうがいいのではないでしょうか？」

アイビー「習い事に関してはそうかもしれないけど、友達と遊ぶことに関しては当てはまらないわよ！」

アイビー「子供のうちからみんなで遊ぶことをたくさんしないと、人と接するのが苦手な子にもなりかねないわ！」

ハツユキソウ「な、なんだか雰囲気が悪くなってきましたよぅ！」

ハツユキソウ（というか、みんな団長さんを育てていくみたいになってますけど、今日一日で戻るらしいってことを忘れてる気がしますよ！？）

ショタ団長「ま、また喧嘩みたいに……」

ハツユキソウ（だ、団長さんが困ってる！ こうなったら、流されてばかりじゃなくてお姉ちゃんとして団長さんを守らないと―――）

アイビー「ハツユキソウちゃんはどう思う！？」

ハツユキソウ「えっ、私ですか！？」

タチバナ「そうですね。ハツユキソウさんの意見も聞かせてもらいたいです」

ハツユキソウ「えと、え～と……」

ハツユキソウ「やっぱり、お外で遊んだり、友達を作るのは大事なんじゃ―――」

タチバナ「…………」ﾑｯ

ハツユキソウ「あっ、でもでも、お勉強も大事ですよね！ この時期に手に入れた知識は一生ものですものね！ まずは図書館で―――」

アイビー「う～～…………」ﾑｯ

ハツユキソウ「うぅぅぅぅぅ、団長さん、助けてください～！」

ショタ団長「えぇ！？」

アイビー「……でも、団長さんの意志が一番大事よね……。私達、勝手に盛り上がって勝手に決めようとしちゃったけど……」

タチバナ「そうですね……今日は、団長さんに、どっちにしたいか決めてもらいましょう」

ハツユキソウ（いや、だから今日で団長さん元に戻るんじゃ……）

ハツユキソウ（でも、それを言ったら、また何か面倒くさいことになりそうだし、収まりそうになってるから言わないでおこう……）

アイビー「団長さん！ お外でみんなと花騎士ごっこして遊ぶのと」

タチバナ「図書館に行って、いろんな本を読んでみることの、どちらが良いですか？」

ショタ団長「えっと、僕は……」

？？？「団長さんは、もちろん私と一緒にいたいですよね？」

ハツユキソウ「えっ？ 誰――」

スズラン「邪魔」ﾄﾞﾝ

ハツユキソウ「うぁいた！？」

その瞬間、どこからともなくスズランが現れ、ハツユキソウを押しのけて団長の元へと駆け寄り、団長を抱きかかえた。

ショタ団長「えっ、えっ！？」

スズラン「あなた達も邪魔。どいて」

そして、杖を掲げると、突然の事態に頭が追い付いていないアイビーとタチバナの足元へ向け、光線を放った。

タチバナ「きゃっ！？」

スズラン「さぁ団長さん、一緒に行きましょう♪」

アイビーとタチバナがひるんだ隙を狙い、スズランは団長を抱きかかえたまま、走り出した。

アイビー「ま、待ちなさい！ って早っ！？ 彼女、あんなに早かったかしら！？」

ハツユキソウ「団長さんが……団長さんがさらわれてしまいました！？」ｶﾞｰﾝ

タチバナ「…っ！ アイビーさん、一緒に追いますよ！ ハツユキソウさんは応援を呼んできてください！」

ハツユキソウ「ら、らじゃ－！」ｱｾｱｾ

アイビー「分かったわ！ 行くわよ！」

――――――
騎士団宿舎　廊下

スズラン「ここまで来れば……」

スズラン「大丈夫でしたか？ 団長さん」

ショタ団長「だ、大丈夫だけど……お姉ちゃん、誰……？」

スズラン「私はスズラン。団長さんを助けに来ました！」

ショタ団長「た、助け……？」

スズラン「はい♪」

そのまま、膝をつき団長の目線へと合わせると、手を両手でギュッと握る。

スズラン「団長さんが小さくなったと聞いてから、良くない人から団長さんを守れるように、私と一緒にいた方が安全って思ったんです」

スズラン「ただ、小さい頃の団長さんが好きだったものをたくさん用意するのに時間がかかって、こんなにお迎えが遅くなっちゃって……」

スズラン「私がいない間、あの女達に何かされてないか気が気じゃなくて、ついつい焦ってしまいました。ごめんなさい団長さん……」

ショタ団長「僕、別に何もされてないよ……？」

スズラン「本当に何もされてないですか？ 変な場所に連れていかれそうになったり……」

ショタ団長（それは今かも……）

スズラン「後、変な物を食べさせられたり、お腹壊しちゃったりとか」

ショタ団長（ｷﾞｸｯ）

スズラン「……『何かあった』んですね？」

ショタ団長（目、目が怖い！ 目が怖いよ！）

ショタ団長「何も……」

スズラン「かばってあげてるんですね？ 流石、団長さん！ 幼い時もとても優しかったんだなって実感します♪」

スズラン「大丈夫、私が守ってあげます。だから、あんな女達の事なんて庇わなくてもいいんですよ？」

ショタ団長「ほ、本当に何もなかったよ……？」

ショタ団長「お腹は壊しちゃったけど、それはアイスとか自分で食べ過ぎちゃっただけで……」

スズラン「『アイスを食べ過ぎてお腹を壊した』んですね」

スズラン「あの場にいた女でアイス……成程、分かりました」

スズラン「あの女、本当は冷たい物が苦手なはず……。きっと、団長さんを利用してアイスを消費しようとして、それで団長さんの体調まで壊して……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

スズラン「許せない……許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

ショタ団長「あ、あの……？」ﾋﾞｸﾋﾞｸ

スズラン「本当にごめんなさい団長さん。私が早く行かないばっかりに、団長さんに辛い目に合わせて……」

スズラン「せめてもの口直しに……はい♪ 団長さん、この飴好きでしたよね？」

ショタ団長「あっ、これ好きな奴！ どうして分かったの？」ﾊﾟｸｯ

スズラン「うふふ、私は団長さんの事なら、分からない事はないんですよ♪」

スズラン「さ、団長さん。一緒にお部屋へ行きましょう！ 団長さんの好きな物、楽しい物が一杯―――」

オオオニバス「―――誘拐の現場、発見よ。スズランさん」

スズラン「っ！？ その声は……」

不意に聞こえてきた声に杖を構え、戦闘態勢を取る。

オオオニバス「全く……随分強引な事をしたわね。スズランさん」

ショタ団長（わぁ、何か優しそうな雰囲気のある人……）

オオオニバス「スズランさん、離してあげなさい。無理やり連れていくのは、団長さんも可哀想」ﾄｺﾄｺ

スズラン「……異常性癖のサイコパスが！！！ 団長さんに近付くなぁぁ！！」

ショタ団長「！？」ﾋﾞｸｯ!!!!

オオオニバス「まぁ……サイコパスだなんてひどい。団長さんもびっくりして可哀想」

オオオニバス「待っててくださいね団長さん。今この怖いお姉さんから解放してあげますから」

スズラン「私はあなたみたいな異常者から団長さんを守ろうとしてるだけ！！」

スズラン「あなたに絶対、団長さんをやらせない……！ やらせるものか！！」

オオオニバス「好き勝手言ってくれるわねぇ……」

オオオニバス「『異常者』はあなたには言われたくないけど」

ショタ団長（な、何この空気……今までも喧嘩ばっかりだったけど、これは全然違う）

スズラン「私が異常者……？ あなたみたいな？」

スズラン「あは……あははははははははははははははははは！！ 面白いわ、オオオニバスさん！ あなた、お笑いの才能あるのね！」

スズラン「殺したくなっちゃうくらい、凄い面白かったもの」

オオオニバス「まぁ、褒めてくれて嬉しいわ」

オオオニバス「少なくとも、あなたの異常とも言える束縛は私にはないわ。私は、最終的に団長さんが傍に戻ってきてくれればいいの」

オオオニバス「それに、私は団長さんの確かな愛が欲しいだけ。あなたみたいな、心なんて不確かで弱い物に縋るばかりに暴走する女とは違うの」

スズラン「全然理解できない。全然全然全然理解できない」

スズラン「心が通じ合わないで何が愛なの？ 体だけ手に入れるのが確かな愛？ はぁ？」

スズラン「それ以前に、あなたの傍に団長さんが行く事なんてないわ」

オオオニバス「そっ。まぁ何を言っても無駄ね。あなたに理解してもらうつもりもないけど」

オオオニバス「ただ一つ、親切心で教えてあげるわね。あなたのやり方で団長さんと心を通じ合わせるなんて、絶対無理だと思うわ」

スズラン「……あはは」

オオオニバス「うふふっ」

ショタ団長（き、気持ち悪くなってきた……舐めてる飴に何の味も感じないよ……）

オオオニバス「何にせよ、団長さんを離すつもりはないのね。それなら……」

スズラン（こいつを殺したいのは山々だけど、団長さんの傍にいないと、誰か他の悪い人が団長さんを引っ張っていっちゃうかもしれない）

スズラン（でも、団長さんの傍にいながら、こいつと戦うのは厳しいわね）

スズラン（あいつらの時みたいに、足元に打ち込んで怯ませるか、直接撃ちこんで逃げる？）

スズラン（いや、こいつは案外すばしっこい。かわされて逆に距離を詰められ、攻撃後の隙を狙われるかも）

スズラン（それなら……）

スズラン「団長さん！ 逃げますよ！」

スズランは咄嗟に団長の手を引いて逃げようとする。

だが、逃げようとした先に、突如として氷の塊で出来た壁のようなものが、音を立て出現した。

スズラン「！！」

その氷の壁はすぐに崩壊し消えるが、スズランの足は完全に止まってしまう。

ラベンダー「―――逃がさないわよ」

氷の壁があった場所の向こうにいた少女、ラベンダーが魔導書を閉じ、ツカツカとスズランへと向かってきた。

オオオニバス「あら？ 意外な援軍ね」

ラベンダー「勘違いしないで。私はこの女が団長さんを連れていこうと阻止しようとしただけ」

ラベンダー（しくったわね……。部屋で小さくなった団長さんの髪の毛を集めてたら、いつの間にか随分と時間が経っちゃったわ）

ラベンダー（幼い団長さんの髪の毛は今しか集められないとはいえ、夢中になりすぎたわね……）

ラベンダー（面倒くさい害虫達に絡まれてるし、もうちょっと早く動くべきだったわ）

ラベンダー「オオオニバス。あなたも、団長さんに何かするようなら……」

オオオニバス「あらあら、穏やかじゃないわね」

ショタ団長（怖い雰囲気がどんどん大きく……）ｶﾞﾀｶﾞﾀ

スズラン「また邪魔な虫が……」

ラベンダー「誰が邪魔な虫よ。あなたこそ団長さんにとってお邪魔虫じゃない」

ラベンダー「早く団長さんを離してあげなさい、さもないと……って、もしかして団長さん飴なめてる！？」

ショタ団長「あっ、うん……」

ラベンダー（だだだだだ、団長さんの舐めた飴！ 団長さんの取れたて唾液がたっぷり、しかも今だけショタverのスペシャル仕様！ 今を逃すと絶対に手に入らない一品……！）

ラベンダー「団長さん、私がもっと良い物あげるから、それペッてしませんか？ ね？ ね？ 大丈夫です、私がしっかり受け止めてあげますから！」

ショタ団長「え、やだ……そろそろ舐め終わっちゃうし……」

ラベンダー「くっ……！」

ショタ団長（飴が好きな人なのかな……？）

ラベンダー「スズラン、団長さんの飴を手に入れるのに協力してくれたら、まずはあの猟奇趣味からやるのに協力してもいいわよ」

スズラン「はぁ？ する訳ないでしょ。あなたみたいな変態の体に一滴たりとも団長さん成分を取り込ませたくないわ」

スズラン「それに、あなたどうせすぐ裏切るでしょ。いつ後ろから刺されるか分かったものじゃないわ」

ラベンダー「………………………………ﾁｯ」

オオオニバス「…………」ｽｯ

睨み合うスズランとラベンダーを見て、オオオニバスは下がろうとする。

ラベンダー「……！」ﾊﾟｻｯ ｼｭﾝ!

だが、それを察知したラベンダーはすかさず魔導書を開き、魔力で作りだした氷柱をオオオニバスに向けて放った。

オオオニバス「危ないわね」ｻｯ

オオオニバスはそれをいとも容易く避け、氷柱は壁へと突き刺さり、消える。

ラベンダー「あなたも逃がさないわ。どうせ私とスズランがやりあいそうな雰囲気になったから下がって、消耗させて美味しい所を持っていこうとか考えてるんでしょ」

ラベンダー「もう二度とその手は食わないわ」

スズラン「前にも同じ事があったわね。本当に姑息……」

オオオニバス「あら、あの時は加減を間違えていろいろ切っちゃわないか考えて、下がってあげただけ」

オオオニバス「……そうね。やってあげても良いけど、私って加減が苦手だから……」

オオオニバス「……腕とか足とか首とか、持って行っちゃっても文句言わないでね？」ｼｬｷ

ショタ団長（斧出したよ！？ どこに閉まってたの！？）

ラベンダー「それはこっちの台詞よ。体が切られたり千切れる痛みが分かれば、猟奇趣味のあなたも大人しくなるでしょ」ﾊﾟｻｯ

スズラン（この状況で、団長さんを連れて逃げるのはもう無理そうね……）

スズラン（傍にいたら確実に団長さんに被害が及ぶ。離れるのは不安だけど、仕方ないわ……）

スズラン「団長さん、ごめんなさい。団長さんとくっついていられないのは寂しいし不安ですけれど、少し離れていてくれますか？」

スズラン「この女達は本当に本当に危ない人です。団長さんにとって害がある人達です」

ショタ団長「あっ……あっ……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

スズラン「大丈夫、団長さんは私が守ってあげます。だから、少し離れた安全な所からしっかり見ていてくださいね」

スズラン「団長さんにとって邪魔な人、良くない人……今から全部殺してあげますから♪」

スズラン「私の活躍、しっかり見ててください。そして、後で一杯褒めてください♪」ｻｯ

オオオニバス「……はぁ。私が切りたい肉は一つだけなのに、どうしていつも汚い肉ばかり切る羽目になってしまうんでしょうか……」

ショタ団長（まさか本当に殺し合うの……？ ど、どうしてこんな事になってるの……？）

ショタ団長（と、止めなきゃ……何とかして止めなきゃ……）ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

ショタ団長（で、でも体が震えて……）ｸﾞｽｯ

ルート分岐です。

1.
『状況に耐え切れず泣き出してしまう。団長の精神はボロボロだ！』

団長を怖がらせてしまったスズランやオオオニバス、ラベンダー。何とか団長からの信頼を取り戻そうと、力を合わせたり罵りあったりしながら、みんなで頑張る√です。
少しだけ独占欲が強かったり、愛が重かったり、ちょっとメンヘラ気味な花騎士が中心に登場する√です。

登場花騎士：スズラン・オオオニバス・ラベンダー・ディプラデニアなど



2.
『泣くのは何とか堪える。団長は強い子』

共通√を続けます。
いろんな花騎士が登場します。この先にもう一つ√分岐があります。

登場花騎士：ラナンキュラス・デルフィニウム・シャクヤクなどなど



こちらの安価は、既に立て直し前に終了しています。

2.『泣くのは何とか堪える』


スズラン「……コロシテアゲル」

団長が震えて行動に移せないうちに、スズランの攻撃により戦いが始まってしまう。

ショタ団長「あわ、あわわわ……」

3人とも団長がいる方向には攻撃が向かないように意識してるのか、攻撃が飛んでくる気配は一切ない。

だが、その光景は5歳児を畏怖させるには十分だった。

ショタ団長「あっ……あぁぁ」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

？？？「団長団長、こっちだよ」

団長が震えていると、ふと服の端が誰かに引っ張られる。

見ると、そこにはヒラヒラとしたピンクのドレスを身に纏った、赤いリースのステッキを持った少女がいた。

ランプランサス「行こ行こ、団長。今ならあの人達見てないよ」ｸﾞｲｯ

ショタ団長「あっ、ちょっと……」

ランプランサス「ほら、早く早く。こんなクソ面倒くさい場所から帰ろ♪」ﾂｶﾂｶ

ショタ団長「帰るって―――わわっ」

どこに連れていかれるのか分からない団長は少し抵抗するが、5歳児の力では敵わずに引っ張って連れていかれてしまった。

――――――

ランプランサス「うんうん、ここまで来れば、少しだけペースを緩めても大丈夫かな」

乱闘の現場から離れた所で、やっとランプランサスは少し歩調を緩める。

ランプランサス「あいつらもバカだよねー♪ 戦うのに夢中で、肝心の団長がいなくなってるのに気付かないなんて♪」

ランプランサス「結局、お嫁さんである私が、団長の事を一番愛してるのよ」

ランプランサス「あっ、ごめんね、団長！ 少し急いじゃって」

ショタ団長「えっと、お姉ちゃんは誰なの……」ﾋﾞｸﾋﾞｸ

強引に連れてこられた事で不信感が抜けていない団長は、少し怯えながらランプランサスへと尋ねる。

ランプランサス「私はランプランサス！ 団長のお嫁さんだよ！」

ショタ団長「えっ、お嫁さん……嘘だよ、僕にお嫁さんなんている訳ないよ……」

ランプランサス「そんなことないよー！ 私と団長は、確かに夫婦なんだよ！ ラブラブ夫婦なの！」

ランプランサス「団長、夢の中では何度も何度も何度も愛を囁いてくれたのに、忘れちゃったの？」

ショタ団長（夢の中なんて、おぼえてるわけないよぉ……）

ショタ団長（どうしよう……この人もちょっと変なお姉さんだった……）

ランプランサス「むー……でもまぁ良いか。それなら、お部屋で一緒に、私達がいかに夫婦か語りあおう♪」

ランプランサス「団長のお部屋は捜索隊が出てる今じゃ危ないから……そうだ、私の部屋に行こう！ そこを新しい愛の巣にしても良いかも～♪」

ランプランサス「さ、行くよ！」

ショタ団長（どうしよどうしよ、このお姉ちゃんちょっと怖い……絶対に着いて行っちゃいけない気がする！）ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

ディプラデニア「……はぁ。何やってるんですかあなたは」

団長を引っ張って連れていこうとするランプランサス。

それを見かねたように、露出がやや多く派手な赤と白の服装に身を包み、レイピアを携えた花騎士、ディプラデニアが現れ、声をかけてきた。

ランプランサス「は？ 何しに来たの？」

ランプランサスは団長から手を離し、警戒するようにディプラデニアを睨む。

ディプラデニア「ただの通りがかりですよ。その子……まぁ、噂の団長さんなんでしょうけど、怯えているのに気付かないんですか？」

ランプランサス「怯えてる？ 何で？ 夫婦が一緒の部屋で過ごすのは当たり前の事だよね、団長？」

ショタ団長「あっ……あう……」ｶﾀｶﾀ

ディプラデニア「……呆れた。病的な妄想癖ですね……」

ディプラデニア「経験則から言わせてもらうと、妄想や思い込みで男性を引っ張り回す女は嫌われますよ」

ランプランサス「思い込み？」

ディプラデニア「そうです。今のあなたみたいな人は、男性にとって負担で避けられるって事を言ってるんです」

ディプラデニア「……もっと現実の団長さんを、見てあげたらどうですか？」

ランプランサス「へぇ、言うわね～。メンヘラクソビッチの癖に」

ディプラデニア「生憎ですが、私はその事を十分自覚しています。悪口として言ったつもりなら、あまり効きませんよ」

ディプラデニア「それに、あなたみたいな夢と妄想の世界で生きてる人に言われたところで、尚更効きません」

ランプランサス「あぁ、もうクソうざい！」

ショタ団長（な、何で何で、ここでも怖い喧嘩みたいに……）

ショタ団長（もうやだよ……何で行った先でこんな事ばかり起きるの……？）ｼﾞﾜｯ ｸﾞｽｯ

ショタ団長（僕が何も自分で決められないから？ だからみんな喧嘩ばっかりするの？）

ショタ団長（ごめんなさいごめんなさい、誰か助けて――――）

食堂での言い争いも可愛い物と感じさせる程のギスギスとした剣呑な雰囲気が続き、流石に精神的に堪え切れなくなる。

身体の震えは止まらず、今まで寸前で堪えていた涙も、最後の防波堤が決壊して溢れ出しそうになる。

？？？「押し通ぉぉぉるっ！！」

？？？「豪快にいっくよぉ！」

そこへ、小柄な二人の人物が、間に強引に割って入った。

その際、二人で団長を取り囲むようにして、ランプランサスとディプラデニアに対峙する。

ランプランサス「な、何！？ 誰！？」

あまりの強引さに思わず数歩後ずさりするランプランサス。ディプラデニアも突然の乱入者に少し目を丸くしている。

デルフィニウム「ふっふっふっ、何だかんだと聞かれたら！」

ラナンキュラス「答えてあげるが何とやらだね！」

デルフィニウム「我が名は第六天魔王デルフィニウム！ そして！」

ラナンキュラス「第六天魔王！ ラナンキュラスだぁ！」

デルフィニウム「ラナァァァァァン！ 打ち合わせと違う！ 魔王はデルちゃんで、参謀がラナンのはずでしょ！」

ラナンキュラス「冷静に考えると、デルフィばっかりずるいよ！」

ラナンキュラス「私だって魔王役がやりたい！ やらせろぉ！」

デルフィニウム「なぬ！？ ラナンでも冷静になる時があるとは……こいつぁ予想外だぜ……」

デルフィニウム「だがしかぁぁぁぁぁぁし！ 魔王役は渡さぬぁぁぁぁぁい！」

ラナンキュラス「なんとぉぉぉ！」

ランプランサス「…………くっそくだらないよぉぉぉ～～！ 何なの～～～！？」

ディプラデニア「というか、第六天魔王の意味を分かっているのでしょうか……」

ショタ団長（な、何なの何なの！？）

今まで会った花騎士とは明らかに違うテンションの、嵐のような騒がしさの乱入者に狼狽える団長。

その様子を見て、ラナンキュラスはそっと前かがみになり、団長へと耳打ちする。

ラナンキュラス「大丈夫、私達に任せて」ﾆｺｯ

そして、そのまま団長の幼い小さな手のひらへと、手を伸ばした。

ショタ団長「う……うん」

信用していいのか分からなかったが、この二人が来てからピリピリとした雰囲気が嘘のように吹き飛んだ事、そしてラナンキュラスの微笑みを見て、そっとその手を握った。

デルフィニウム「こうなればみんなに聞いてみよう！ デルちゃんとラナン、どちらが魔王に向いてそう？」

ランプランサス「どっちでもいいよぉ！」

ディプラデニア「どちらが魔王に向いているかは正直分からないですが……えっと、ラナンキュラスさん」

ラナンキュラス「ほいほい？」

ディプラデニア「魔王より参謀の方が、頭が良いイメージはありますね」

ラナンキュラス「何と！？」

ディプラデニア「最近の物語では、魔王を参謀が裏で操っていた～なんていうのも目にしますし、参謀もそう悪い物じゃない気がします」

デルフィニウム「な、何だってー！？」

ラナンキュラス「成る程！ それなら私、参謀でも良いかな！」

デルフィニウム「いや、デルちゃんが参謀をやろう！」ﾄﾞﾝ!

ラナンキュラス「なんだとぉ！！？」

デルフィニウム「頭が良いイメージがあるなら、ラナンよりこのデルちゃんこそ適任！ 何より！」

デルフィニウム「ラナンなんかに操られてたまるかぁぁぁぁい！」

ラナンキュラス「言ったなデルフィィ！ 表でろぉい！」

ランプランサス「あぁ、頭痛くなってくる……」

デルフィニウム「こうなれば、もう一回配役について考えてくるね！」

デルフィニウム「それでは、デルフィニウムちゃんと！」

ラナンキュラス「ラナンキュラスちゃんでした！ ばいばい！」

ランプランサス「ちょっと待って。何でさりげなく団長を連れていこうとしてるの？」

ランプランサスの言葉で、さりげなさを装って団長の手を引いて去ろうとしていたラナンキュラスとデルフィニウムの動きがぴくっと止まる。

デルフィニウム「……相棒！」

ラナンキュラス「応とも！ 団長、背中にしっかり掴まってね！」

ショタ団長「えう！？ う、うん！」

ラナンキュラスはしゃがみ、背中に団長を背負う。

デルフィニウム「逃げるんだよぉぉぉぉ！！」ﾀﾞｯ!

ラナンキュラス「豪快にすすめぇ～～～！」ﾀﾞｯ!

ランプランサス「あっ、ちょっと！？」

ランプランサス「あんなバカ達と一緒にいたら団長までバカになっちゃうよ！」

ランプランサス「ディプラデニアさん、追うよ！ あなた走ったりするのは得意でしょ！」

ディプラデニア（確かにあの二人は少しおバカっぽい所はありますが……団長さんに悪い事をするタイプの人達ではないですね）

ディプラデニア（団長さんも幼くなった分、相手の年齢も多少でも低い子の方が話しやすいかもですし、この人に任せるよりかはよっぽど安心でしょう）

ディプラデニア（……それに、何か追ったら嫌な予感もしますし）

ディプラデニア「何で私も追う前程になってるんですか」

ランプランサス「はぁ！？」

ディプラデニア「私はあなたが団長を連れていくのが可哀想だから止めていただけです。あの二人ならまだ安心できます」

ランプランサス「むっかつくぅ！ 結局最後の最後まで邪魔ばっかり！」

ランプランサス「良いもん！ 私一人でだって追いかけるよ！」ﾀﾞｯ!

ディプラデニアを残し、ランプランサスは急いで二人を追いかけ、廊下を走る。

子供を背負って走っているからか、タイムラグはあったが大きく離されてはいない。

ラナンキュラス「わぁぁ、やっぱり追ってくるぅー！」ﾀｯﾀｯﾀｯ

デルフィニウム「う、狼狽えるなラナァン！ 走り抜けるのだ！ 風のように！」ﾀｯﾀｯﾀｯ

ショタ団長「ぼ、僕邪魔じゃない……？ 降ろしても……」

ラナンキュラス「だいじょーぶ！ ラナンキュラスちゃんは強い！」

ラナンキュラス「団長、今は私達を信じてしっかり掴まっててね！」

ショタ団長「う、うん……」

デルフィニウム「修羅場からの迷える子羊救済もお手の物！ 安心と信頼の頼れるあなたの味方！ デルラナお助け業者だよ！」

ラナンキュラス「ちょっとぉ！ それを言うならラナデルお助け業者でしょ！」

ショタ団長「あはは……」

ショタ団長（何か……このお姉ちゃんたちの雰囲気はまだ安心できる……）

この二人も口論はし合っているが、友人同士のお互いを信頼しあっての悪ふざけ、じゃれ合いのような空気を感じ、ピリピリとした一触即発のような空気の中にいた団長にとっては、少し心地よく感じた。

デルフィニウム「……ラナン！」

ラナンキュラス「分かってらい！」

そして、二人はそれぞれ、廊下の左右の端へと移動、そのまま駆け抜ける。

ランプランサス「何あの動き……」

ラナンキュラス「えっへへ、鬼さんこちら！」

デルフィニウム「ふっふっふ！ この完璧なるデルちゃん達には追いつけないかな？」

ランプランサス「な……むーかーつーくー！」

煽りをド直球に受け止めてしまったランプランサスは追いつこうとスピードをあげる。

それとほぼ同時に、ｶﾁｯと小さな音と共に、床が押されて下にずれるような感覚がランプランサスは感じた。

ランプランサス「え？」

嫌な予感がしたランプランサスは、今走り抜けた廊下を振り返ろうとする。

それと同時に真上の天井がｶｺﾝ!と開き、仕込んであったバケツが真っ逆さまになって、中に入っていた液体がランプランサスや廊下に降り注いだ！

ランプランサス「きゃあああああああああ！！！？？？」ﾂﾙﾝ

慌てたランプランサスはその液体に滑り、ぬるぬるの廊下へﾊﾞｼｬ!と音を立てて倒れ込む。

ランプランサス「ひゅぃい！？ なにこれ！？ ロ、ローションか何か！？」

ランプランサスは立ちあがって走り去る二人を追おうとするが、液体に足を取られて上手く立ちあがれない。

そうこうしている内に、いつの間にかラナンキュラス達は廊下の突き当りのT字になっている曲がり角の先へと消えてしまった。

ランプランサス「あぁもう！ こんなクッソくだらなくて面倒くさい事するなんて、もしかしてあのウサギ達も関わってるんじゃないの！？」

細工をされて開いた天井から、ブラブラと吊る下がっているバケツを忌々しげに見つめ、ランプランサスは壁を使って強引に立ちあがる。

ランプランサス「ま、まだ諦めてないんだから……！ 団長を取り戻さないと……！」

ゆっくりと壁伝いに歩き、何度か転びながらも、何とか抜け出したランプランサスは、廊下の曲がり角へと急ぐ。

やっとたどり着き、曲がり角の先へと行くと、並ぶドアの一つから、一人の花騎士が出てくるのが見えた。

ピンクの和装に身を包み、どことなくオドオドとした雰囲気を漂わせている。

ランプランサスには、その花騎士に見覚えがあった。

ランプランサス「シャクヤクさん！」

シャクヤク「ひゃ、ひゃい！？」

突然名前を呼ばれ驚いたシャクヤクは、ビクッと体を震わせランプランサスの方へと向く。

ランプランサス「ちょうどよかった！ ねぇ、こっちに子供を連れたバカそうな二人が走ってこなかった！？」

シャクヤク「えぅ……あの……バカとかそういう言葉はあんまり……」

ランプランサス「いいから教えて！」

シャクヤク「は、はいぃ！ で、でも私さっきまで部屋にいて……」

シャクヤク「そういえば、廊下をバタバタ走り抜ける音は部屋から聞こえたような……」

ランプランサス「分かった！ ありがとうね！」

シャクヤクの言葉を聞くと、ランプランサスは急いで廊下の更に先へと向かう。

シャクヤク「き……緊張……しましたぁ」

ランプランサスが見えなくなったところで、シャクヤクはホッと胸を撫で下ろした。

ｷｨ……

？？？「ナイスうさ！ 同志シャクヤク、安全を確認出来たら早く部屋に戻るうさ」ｺｿｯ

シャクヤク「わ、分かりました！」

背後でわずかにドアが開き、中から聞こえてきた声に促され、シャクヤクは再び部屋の中へと戻っていった。

――――――
シャクヤクの部屋


ウサギノオ「作戦大成功うさ！」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ!

ススキ「みんなお疲れ様！」

ラナンキュラス「どうだぁ！私達にかかれば、不可能な事などないのだ！」

ウサギノオ「流石、私の見立て通りだったうさ！」

ウサギノオ「空気を壊す事に定評のある二人なら、あの空気をぶち壊しつつ団長さんを救い出してくれると信じてたうさ！」

デルフィニウム「えへへ、そんなに褒められちゃうと照れちゃうね！」

ラナンキュラス「ふふーん！ ……ってちょっと待って！ もしかしてこれは『空気が読めない』って馬鹿にされているのでは……！」

デルフィニウム「何だとー！ ウサギノオ貴様ぁー！」

シャクヤク「私はどうだったでしょうか……堂々と出来てましたか……？」

ウサギノオ「う、うーん……堂々してたかどうかは微妙かもうさ……いつものシャクヤクって感じで……」

ウサギノオ「ただ、いつも通りの自然な感じで、相手も上手く騙されてくれたウサ！ 胸を張って良いと思ううさ！」

シャクヤク「そうですか……えへへ、やりました」

ショタ団長「あの……お姉ちゃん達は誰……？」

ウサギノオ「私は魔王軍を操りし裏の支配者、トリックマスターウサギノオうさ！」

ススキ「あっ、その設定まだ続いてたんだね……」

デルフィニウム「そして魔王を裏で操りし参謀、デルちゃんと！」

ラナンキュラス「魔王を支配する参謀、ラナンキュラスだよ！」

シャクヤク「私は……えっと……この場合、魔王役を引き受けた方が良いですか……？」

シャクヤク「魔王らしく背筋を伸ばして……えと、魔王シャクヤクです……がおっ！」

ウサギノオ「何か可愛い魔王うさ……」

ススキ「魔王ってがおがおって言うかな……？」

シャクヤク「あぅ、違いましたか……？」

ススキ「いや、可愛いから良いかも……？」

そこまで紹介して、最後にススキが団長へとしゃがんで目線を合わせる。

ススキ「私はススキ。設定に乗るならトリックマスター補佐……かな？」

ススキ「えへへ、何か団長さんに改めて自己紹介するって言うのも変な気がするね。小さい間もよろしくね！」

ショタ団長「ススキお姉ちゃん……？」

ススキ「そうそう！ 成程、これは新鮮かも……！」

デルフィニウム「団長！ デルちゃんの事もデルちゃんお姉ちゃんって呼んでもいいよ！」

ラナンキュラス「ちゃんが被って不自然だよ！ 却下！」

ウサギノオ「デルフィお姉ちゃんじゃダメうさ……？」

ショタ団長（な、何か凄い賑やかな人達……！）

ススキ「って、ごめんね。あんな空気の中にいたんだから、こういうのも喧嘩に見えちゃうかな……？」

ショタ団長「えっ、違っ……」ﾌﾙﾌﾙ

ススキ「そっか、良かった。団長さん、もう安心して大丈夫だからね」

ショタ団長「安心……？」

ウサギノオ「そううさ！ 少なくとも、あそこよりかは安心うさ！」

ススキ「ウサギノオがね、ちょっとヤバイ人達に囲まれて涙目になってる可哀想な子供を見て、話を盗み聞きしたら小さくなった団長さんらしくて、何とか助けたいーって言い出して」

デルフィニウム「そこでデルちゃん達も協力して、団長救出作戦に出たのさ！」

シャクヤク「がお！」

ススキ「あっ、がお魔王設定続けるんだね……」

ウサギノオ「ちょっと仕込みに時間かかっちゃったけど、間に合って良かったうさ」

デルフィニウム「言われてた通りに動いたけど、むしろあんな短時間でどう作ったのあれ！？ すげー！ まじリスペクト！」

ウサギノオ「このトリックマスターウサギノオと我が友ススキにかかれば、あの程度ちょちょいのちょいうさ！」

ウサギノオ「まぁ、いつもは勝手に弄って団長さんに怒られるんだけど……今日はその団長さんが小さくなってるからセーフうさ！」

ラナンキュラス「中に入ってたあれはー？」

ウサギノオ「特製ぬるぬる液君！ 片栗粉とかで作ったうさ」

デルフィニウム「あの短時間で！？ すっげー！ ますますリスペクト！ 惚れた！」

ススキ「あれ普段は何に使うの？」

デルフィニウム「ちょっと待て！ 明らかにえっちな事だって！ そんな事聞いちゃダメでしょーが！ 察しないと！」

ラナンキュラス「そうだよ！ そんなえっちな質問はダメ！」

シャクヤク「え、えっちなぬるぬる……///」

ウサギノオ「そんな訳ないうさよ！ 悪戯目的！ シェービングにも使えて、団長さんにもプレゼントしたことあるうさ！」

ショタ団長「安心……そっか……」

飽きずに繰り返す喧噪の中、団長はポツリと気の抜けたような声で呟く。

ショタ団長「うぅぅう……」ｸﾞｽﾝ

そして、今にも押しつぶされそうだった殺伐とした空間から和気あいあいとした所に戻ってこれたことの安心からか、今まで堪えてきたものが溢れ出してくる。

ススキ「だ、団長さん大丈夫！？」

ショタ団長「ごめ、ごめんなざい……」ｸﾞｼｸﾞｼ

ショタ団長「ずっと怖くて、すごい怖くて、でも泣いちゃダメって、今日はずっと、僕が選べないせいでみんな喧嘩ばっかりで、でもやっと怖くなくなって……」ｸﾞｽﾝ

ススキ「うんうん。ここは大丈夫、安心していいからね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

ショタ団長「うぅぅぅぅ、でもごわかった……怖がっだよぉぉ！」ﾋﾞｴｰﾝ

ススキ「あぅ、泣いちゃった」

ススキ「よしよし、怖かったね……。はい、チーンってして」ﾊﾝｶﾁ

ショタ団長「うぅううう」ｸﾞｽｸﾞｽ

ウサギノオ「あれは泣いても仕方ないうさ……」

ウサギノオ「私も今の団長さんくらいの歳で、同じような状況に放り込まれたら絶対泣くうさ……しばらく人と接するのが嫌になるかも―――」ﾊｯ

ウサギノオ「今思ったけど……今の団長さんが時間が経って大人に戻ったら、記憶はどうなるうさ？」

ラナンキュラス「と言うと？」

ウサギノオ「今の団長さんが大人に戻った時に、小さい間に起きた事の記憶はなくなるのか、残るのか分からないうさ」

ウサギノオ「もし残ったり影響するなら、これがトラウマになって大人に戻った時に女性不信になっちゃったりとか……」

ススキ「か、考え過ぎじゃないかな……？」

シャクヤク「でもあり得る事かもしれません……。子供の時に体験した強烈な記憶は、その後にずっと影を落としますから……」

シャクヤク「女性に不信感や恐怖を抱いたまま戻ると、多少の影響はあるかもしれません……」

デルフィニウム「も、もし大人に戻った時に女性不信になっちゃってたら……？」

ラナンキュラス「ここは地獄の職場でしょ……。花騎士みんなの事も苦手になっちゃうかも」

ラナンキュラス「そしたら、もう団長に構ってもらえない！」ｶﾞｰﾝ

デルフィニウム「何だと！？ それはデルちゃんも困るよ！ デルフィは団長ラブなんだから、この先遊んでくれないなんて事になったら……うぅぅ、団長～！」ｸﾞｽﾝ

シャクヤク「私も団長さんに嫌われるのは嫌です……ど、どうしましょう」

ショタ団長「うぇぇぇん……うぅぅ」ｸﾞｽｸﾞｽ

ススキ「う～ん……どうであれ、全然泣き止まないし、やっぱり結構深く傷ついてるかも」

ススキ「小さくなってる時の記憶が嫌で辛い思い出だけの状態で大人に戻るのも、確かに良くないかも」

ウサギノオ「そううさね。どうせなら、楽しい思い出が一杯の状態で帰った方が安心うさ」

ウサギノオ「……そううさ！ ススキ！」

ススキ「なになに？」

何かを思いついた様子のウサギノオがススキへとそっと耳打ちする。

ススキ「……うん、良いんじゃないかな。何かあっても団長さんを逃がして、私達だけでやった事にすれば、『いつも通り』で収まるしね」

デルフィニウム「くぉら！ 何の話をしてるんじゃ！」

ラナンキュラス「そうだぞー！ 放置良くない！」

ウサギノオ「これからデルフィ達にも話すつもりだったうさ。よく聞くうさよ」ｺｿｯ

ウサギノオ「――――――――どううさ？」

デルフィニウム「むむむ、中々にハイリスク……。最悪、三時のおやつがなくなってしまうかも」

デルフィニウム「だがしかし！ 乗りかかった船を途中で降りるようなデルちゃんではない！ その話、乗ったぁ！」

ラナンキュラス「私もいいよ！ もし失敗しちゃっても、これでみんなが私に注目して構うようになる！」

ウサギノオ「わざと失敗しちゃダメうさよ！？」

ラナンキュラス「分かってる！ 何より最優先は団長の笑顔の為だよ！」

ウサギノオ「その意気うさ！ 後はシャクヤクだけど……ハロウィンの件もあるし、もし嫌なら……」

シャクヤク「私……私、やります！」

シャクヤク「ここで怖気ついてたら、積極的になるなんて到底無理ですし……何より、これで団長さんを楽しませて笑顔に出来れば、もっと自信がついて、胸を張って前を向けそうです」

ウサギノオ「よく言ったうさ、同志シャクヤク！ 後は団長さん次第うさね！」

そしてウサギノオは団長へと向き直った。

ウサギノオ「ねぇ坊や？ お姉さんたちと楽しい事しない？」

デルフィニウム「うーん、セクシーっぽさで攻めてるみたいだけど、顔が童顔だからちょっと惜しい感じだね！」

ラナンキュラス「75点くらいかな！」

ウサギノオ「外野うるさいうさ！」

ショタ団長「楽しい事って……？」ｸﾞｽﾝ

ウサギノオ「それは勿論…………悪戯うさー！」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ!

ショタ団長「い……悪戯？」

ウサギノオ「そううさ！ みんなで悪戯すれば、とーっても楽しいうさよ！」

ウサギノオ「団長さんも、みんなに困らせられてばかりじゃなく、ここで一発華麗に悪戯を決めて、みんなを逆に困らせてやるうさ！」

ウサギノオ「勿論、悪戯は楽しく面白く後に響かないように！ 加減は考えるから安心していいウサよ！」

ショタ団長「悪戯……みんなで……」

ウサギノオ「おっ、少し泣き止んだうさね？」

ウサギノオ「子供のうちから良い子な事ばっかりやるのは、本人にとっても負担で疲れちゃうし、頭も固い大人になっちゃううさ」

ウサギノオ「やり過ぎない範囲でちょっとだけ悪い事してみるのも、人生の経験、スパイスになるうさよ？」

ショタ団長「そうなの……？」

ウサギノオ「……まぁ、綺麗事を並べたけど、悪戯はやっぱり悪い事うさ」

ウサギノオ「悪いことを無理してやるのは間違ってるうさ。だから、団長がしたくないなら、無理しなくていいうさよ」

ショタ団長「もし悪戯をしないなら、どうするの……？」

ウサギノオ「その時は、私達が執務室まで安全に送り届けて、しっかりしたお姉ちゃんを一人決めて、その人に団長さんといてもらうように副団長に直接お願いするうさ」

ウサギノオ「団長さんの話を聞くと、ヤンデレーズに囲まれる前からいろいろあったみたいだし、誰と一緒にいるか第三者に決めてもらわないと、また意見の食い違いが発生するうさ」

ウサギノオ「さぁ、どうするかは団長さん次第！ 私達と楽しい悪戯をするか、安全なお姉ちゃんに一緒にいてもらうか！」

ショタ団長「僕次第……」

デルフィニウム「大丈夫。今すぐ決められないなら、ゆっくり考えて決めていいよ！」

ススキ「私達はどっちでも大丈夫。断ったら悪いなんて考えないで、団長さん自身がどうしたいかゆっくり考えてね」

ススキ「団長さんのしたい事を正直に教えてくれるのが、私達は一番うれしいな」

ショタ団長（……このお姉ちゃん達、とっても楽しそうな人ばかりだし、一緒にしてみようかな……）

ショタ団長（でも悪戯は悪い事だし、バレたら怒られちゃうかも……）

ショタ団長（……いつも悩んでばっかで、それで今日は周りで喧嘩ばっかりで……）

ショタ団長（今度こそは自分でしっかり選ばないと……！）

ショタ団長（僕―――――）

ルート分岐です。

1.
『一緒に悪戯に挑戦してみる』

ウサギノオ達と悪戯大作戦をする√。
悪戯が好きだったり、ストーリーでおなじみの花騎士が中心に登場する√です。

3ルートのうち、一番平和なルートです。

登場花騎士：ウサギノオ、セントポーリア、ワレモコウなど



2.
『執務室まで送ってもらう』

バナナオーシャンで、ネリネと共に『スワンボートレース公開練習会』で過ごす√。
ちょっと泣き虫だったり、面倒見が良くて癒してくれたり、自分を卑下する癖がある花騎士が中心に登場する√です。

3ルートのうち、一番長いルートです。

登場花騎士：ネリネ・プルメリアなど

直下の安価を採用します。なお、しばらく待ってこなかった場合は、1.『一緒に悪戯に挑戦する』ルートとなります。

確か選ばなかった方の分岐も後でやるんだよね？
たちまち1で

1.『一緒に悪戯に挑戦してみる』


今回はここまで。 後はルートが終了するまで安価はありません。
また少し書き溜めて、近いうちに投下しますね。

>>64
はい。ルート終了後に再び、どこの分岐からやり直すか安価を取って、最終的には3ルート全て書く予定です。

1.『一緒に悪戯に挑戦してみる』


ショタ団長「えっと、あの、そのね……」

ウサギノオ「うさ？」

ショタ団長「僕も一緒に悪戯したい……」

ショタ団長「いい……？」

ウサギノオ（か、可愛いうさ！ キュンッて来たかも！）

ウサギノオ「勿論うさ、団長さん！ さぁ、我らと共に狂乱と愉悦の悪戯の旋風を巻き起こしましょうぞ！」

ショタ団長「きょーらん？ ゆえつ？」

ウサギノオ「あっ、ちょっと難しい言葉だったうさね……」

ススキ「みんなで楽しく悪戯しようねって事だよ～団長さん」

ススキ「一緒にがんばろーね！ 団長さん！」

ショタ団長「うん！」

ウサギノオ「それじゃあ善は急げ！ お昼前までには全ての準備を終らせないといけないうさ！」

ウサギノオ「まずはシャクヤク！ さっき話した『特製プリン』を作ってほしいうさ！」

ウサギノオ「結構な数が必要になるけど、頼めるうさ？」

シャクヤク「やってみます……！」

ウサギノオ「助かるうさ！ デルフィニウムとラナンキュラスは、かぼちゃ煙幕をたくさん作ってほしいうさ！ 作り方はメモがあるから、この後に渡すうさ！」

デルフィニウム「まっかせなさい！」

ラナンキュラス「たくさん作っちゃうよー！」

ウサギノオ「ススキは、二人の補佐に回ってほしいうさ！ あ、その前にさっきの修羅場の様子を見てきて欲しいんだけど、良いうさ？」

ウサギノオ「今回は少し激しそうだったから、もしまずい事態になってたら人を呼んだりして止めてほしいうさ」

ススキ「スズランさん達のだね。分かったよ」

ショタ団長「えっと、悪戯って何をするの……？」

ウサギノオ「それは準備が出来たら教えるうさ！」

ショタ団長「僕、何したらいいの……？」

ウサギノオ「団長さんは……まずは悪戯に慣れたほうがいいかもうさね」

ウサギノオ「先に私と、少し悪戯をしてほしいうさ！ いいうさ？」

ショタ団長「うん、頑張る！」

ウサギノオ「それじゃあ、各自準備を――」

デルフィニウム「ちょっと待ったぁぁ！」

ウサギノオ「わっ！ な、何うさ？」

デルフィニウム「ウサギノオ！ 肝心な事を一つ忘れてるよ！」

ラナンキュラス「そうだよ！ 私もずっと気になってた！」

ウサギノオ「何うさ？」

デルフィニウム「ずばり……作戦の名前だよ！」

ラナンキュラス「そうそう、こういうのは作戦名がないと！」

ウサギノオ「作戦の名前……」

ウサギノオ「う～ん、団長さんにも分かりやすい名前の方が良いから……」

ウサギノオ「『団長さんを笑顔にしよう作戦』……は直球うさね」

ウサギノオ「『にこにこ作戦』！ これでどううさ？」

ショタ団長「にこにこ？」

ウサギノオ「そう！ にこにこ！ 団長さんや私達がニコニコ出来る、そんな作戦うさ！」

ショタ団長「にこにこ……うん！」

ウサギノオ「団長さん、良い顔になってきたうさね！ みんなもそれで良いうさ？」

ススキ「団長さんがそれで良いなら、私もいいよ！」

シャクヤク「分かりやすくて良いと思います……！」

デルフィニウム「デルちゃん的にはもうちょっと格好いい名前も良いかなと思っ
たけど、分かりやすさの点で異議なし！」

ラナンキュラス「シンプルいずなんとか！！」

ウサギノオ「それじゃあ、まとまった所で悪戯魔王軍、作戦開始うさ！」

ウサギノオ「みんなで一緒に頑張るうさ！ おー！」

全員「「「「おー！！」」」」

ショタ団長「お、おー！」

――――――

オトギリソウ「いたっ！」ｽﾞﾙｯ! ﾄﾞｻｯ

ハギ「わっ、大丈夫！？」

オトギリソウ「だ、大丈夫大丈夫！ 躓いちゃっただけ！」

オトギリソウ「忍法！ 転んでもすぐ立ち上がるの術！」

ハギ「げ、元気そうだけど本当に大丈夫？ 怪我とかしてない？」

オトギリソウ「へーきへーき！ 怪我なんてしてないよ！ ほら、走っても大丈夫！」ﾀﾀﾀｯ

ハギ「わ、あんなに派手に転んでたのにもう平気そう……って、あぁ、オトギリソウさん！？」

オトギリソウ「うゆ？……うわぁ！」ﾊﾞﾅﾅ ﾂﾙﾝ! ﾄﾞｽﾝ!

ハギ「もう、全然大丈夫じゃなさそうだよぉ……オトギリソウさん、大丈夫？」

オトギリソウ「だいじょうぶぅ……うぐぐ……何でこんなところにバナナの皮が……」

ハギ「よく見たら、この辺やけにバナナの皮が散乱してる……お猿さんでも遊びに来てたのかな？」

ハギ「でも、バナナの皮はしっかり見てれば大丈夫！ 見てて」ﾀｯﾀｯﾀｯ

ハギ「たぁ！」ﾋｮｲｯ

ハギ「――――――ふわぁ！？」ﾎﾞｽﾝ!

ハギは早足でバナナの皮へと向かっていき、ひょいっとジャンプ。華麗に着地を決めた瞬間、ズボッと地面へと半身が埋まってしまった。

オトギリソウ「ひゅあ！？ ハギちゃん！？」

ハギ「うぅぅ、落とし穴ぁ……。何でバナナの先に落とし穴なんてあるのぉ……」

オトギリソウ「待っててハギちゃん！ 忍法、ハギちゃんを落とし穴から救出するの術！」ﾀﾞｯ

オトギリソウ「みゅう！？」ﾎﾞｽｯ!

オトギリソウは急いでハギの下へと駆け出すが、進行方向すぐにあった新たな落とし穴に綺麗にはまる。

ハギ「オトギリソウさんまで！？ もう、何でこの辺落とし穴だらけなの！？」

ハギ「でも、そんなに深くないから簡単に出れるかも。オトギリソウさん、平気だから―――」

オトギリソウ「し、忍びなのに罠にはまってしまった！ こうなれば……忍法、落とし穴から脱出の術！」ﾎﾟｽｯ

オトギリソウ「脱出成功！ さぁ、今度こそハギちゃんを――」ﾀﾞｯ

オトギリソウ「にゃああ！！」ｽﾞﾎﾞｯ!

ハギ「オトギリソウさぁぁぁん！ 平気だからじっとしててぇ！」

ハギ「もー！ だれ、こんなことしたのー！？」

――――――
庭園


ハゼ「はにに♪ お散歩楽しいね、ウフソー♪」ﾄｺﾄｺ

ウフソー「♪」ｸﾙｸﾙ

ハゼ「ウフソー、あそこにベンチがあるし、そろそろ休憩しよっか～」

ハゼ「折角だから、今日はお外でピカピカにしてあげるね」

ウフソー「♪♪♪」ｸﾙｸﾙ

ハゼ「その前に、持ってきたお菓子食べていい？」

ウフソー「！！」OKﾉ ﾎﾟｰｽﾞ!

ハゼ「ありがとぉ、ウフソ～♪ 今日のお菓子は、きのこのチョコレートなんだよぉ～♪」

ハゼ「何かピクニック気分でいいねぇ～♪」

ﾋﾞｭｵｫｫｫｫ……

ハゼ「あっ、風でハンカチが！ ハンカチさー、待ってぇ～！」ﾄｯﾄｯ

ウフソー「！！！」（ハゼの後を滑るように追いかける）

ウサギノオ「…………よし、今がチャンスうさ！」ｻｯ

ウサギノオ「……悪戯完了、逃げるうさ！」ﾀﾞｯ

ショタ団長「うん！」ﾀﾞｯ

ハゼ「――――良かったぁ、あんまり遠くまで飛んでいかないで……」ﾄｺﾄｺ

ウフソー「（一安心のポーズ）」

ハゼ「さぁ、食べよ～ウフソ～♪ って、あぁー！？」

ハゼ「あたしのきのこのチョコレートが……たけのこのチョコレートに変わってるぅ！？」

ウフソー「！？！？！？」

ハゼ「そんなぁ……たけのこじゃなくてきのこがいいよぉ……きのこ、どこ行っちゃったのかなぁ……？」

ウフソー「…………」ｵﾛｵﾛ

ハゼ「ふぇぇ……きのこぉ……」

ウフソー「！！！！！」（分裂）

―――その後、ウフソーの決死の捜索により、ベンチの下に隠してあったきのこのチョコレートを無事発見した。

ハゼ「はにに……ありがとぉ、ウフソー♪」ｷﾞｭｯ

ウフソー「///」ﾎﾟｯ

――――――
庭園


ナイトメア「……美味しい！ 流石、エーデルワイスっちの淹れてくれた紅茶だね」

エーデルワイス「うふふ、喜んでくれたようでうれしいわ」

エーデルワイス「……ところで、エーデルワイスっちって言いにくくないかしら？」

ナイトメア「そうかにゃ？」

エーデルワイス「あなたが良いなら、それでいいんだけど……」

ナイトメア「それなら、エーデルワイスっちを略して……えっち―――」

エーデルワイス「絶対に嫌よ！？」

エーデルワイス「……それにしても、あなたと一緒にお茶を飲むのは初めてね」

ナイトメア「エーデルワイスっちっていつもサフランっち達と飲んでるもんね」

ナイトメア「今日はあたしで良かったの？」

エーデルワイス「勿論よ。新しいお茶友達と共にお茶を嗜み、同じ時を共有する。これもまた、尊い思い出になるわ」

エーデルワイス「ただ、少し意外だったわね。正直、あなたはコーラしか飲まないイメージがあったから」

ナイトメア「あたしだってコーラ以外も飲むよ！ まぁ、大好きなのはコーラなんだけどね、にゃはは」

ナイトメア「今日も、さっき食堂からもらってきたんだ！」

そう言って、ナイトメアはどこに隠し持っていたのか、懐からコーラのボトルを出し、エーデルワイスに見せる。

エーデルワイス「私はコーラって飲んだ事ないけど……どんな味なのかしら？ 見るだけだと、黒くて苦そうだけれど……」

ナイトメア「ううん、とっても甘いよ！ それでいてスッキリ爽快！ 病みつきになるよ！」

ナイトメア「良かったら少し飲んでみる？」

エーデルワイス「あら、良いの？ それならお言葉に甘えようかしら」

エーデルワイスは空のコップに少しコーラを注いでもらい、口元へと運ぶ。

エーデルワイス「では、頂くわね」ｺﾞｸｯ

エーデルワイス「！？」ﾌﾞﾌｩ!!!!

ナイトメア「わぁ！？ びっくりしたぁ……そうだ、炭酸入ってる事言い忘れちゃったね！ ちょっと驚いちゃったかな？」

ナイトメア「ただ、この甘さに炭酸が―――」ｺﾞｸｯ

ナイトメア「めんつゆ！！！！！！！！！！」ﾌﾞﾌｩｩｩｩｩｩｩｩ!

――――――
騎士団内カフェバー


ヘザー「突然の休日に乾杯！ 美味しいお酒にかんぱーい！」

ホップ「かんぱ～い！ いやぁ、昼から飲むお酒ってさいっっっっっこう！」

クチナシ「そんな事言って、ホップさんいつだって昼でも夜でも気にせず飲んでるじゃないですか～」ｺﾞｸｺﾞｸ

ホップ「任務で仕事の事考えながら飲むお酒と、休日に飲むお酒は違うよ～」

ホップ「それに今日は本来仕事だったはずの休日！ お酒の味も変わるってものよね～♪」

クチナシ「でも突然出動入るかもしれませんよ～？」

ホップ「そん時ぁそん時で戦えるってば～。酔えば酔うほど強くなるってね！」ｺﾞｸｺﾞｸｺﾞｸｺﾞｸ

ヘザー「私達はただの酒飲みじゃありません！ すごい酒飲みです！」

ヘザー「それに、クチナシさんだって飲んでるじゃないですか～♪」ｺﾞｸｺﾞｸ

クチナシ「あはは、やっぱりお酒の魅力には勝てませんね～♪」ｺﾞｸ

ホップ「ｺﾞｸｺﾞｸｯ…………プッハァー！ みんな、わたしは生もう一杯いくけど、どうする～？」

ヘザー「あ、じゃあ私もビールもう一杯お願いします！」

クチナシ「それなら私も合わせますね！」

ホップ「りょ～かいっと。店員さーん、生3つちょうだ～い！」

ショタ団長（変装）「よいしょ、よいしょ……」

ショタ団長（変装）「びーる3つです！」

ホップ「おっ、可愛い店員さんだね～♪ ありがとね！」

ショタ団長（変装）「ゆっくりしていってください！」ﾊﾟﾀﾊﾟﾀ

ホップ「……これ、明らかに泡立ちがないし、ビールじゃないわよね……？」ﾋｿﾋｿ

ヘザー「あの子、ずっと物陰からじっと見てますね。ウサギの耳みたいなのも厨房辺りからチラチラ見えましたし、あの子達の悪戯かもしれませんね」ﾋｿﾋｿ

クチナシ「まぁ、ここは引っかかってあげましょう」ﾋｿﾋｿ

ホップ「そだねぇ」ｺﾞｸｺﾞｸｺﾞｸｺﾞｸｺﾞｸ

ホップ「……ぷっはぁぁー！ こののどごし爽快感……がない！！ ちょっと店員さーん、これ子供ビールじゃないのぉー？」

ヘザー「私達が頼んだのは生ビールですよぉー！ これじゃ酔えません！」

クチナシ「新しいの持ってきてくださーい！」

ショタ団長「！！」ﾊﾟｧｧｧｧ ﾀｯﾀｯﾀｯ

ショタ団長「……ウサギノオお姉ちゃん！ 悪戯出来たよ！」ｷﾗｷﾗ

ウサギノオ（あの三人、何か気付いてそうな雰囲気だったけど……合わせてくれたうさ？）

ウサギノオ「すごいうさ、団長さん！ これは、私を超える悪戯マスターになる日も近いうさね！」

ショタ団長「えへへ」

ウサギノオ「さて、ここまでいろんな場所を行ったり来たりして悪戯してきたけど、疲れてないうさ？」

ショタ団長「平気だよ！ 元気！」

ウサギノオ「流石、未来の騎士団長うさ！」

ウサギノオ「他のメンバーもそろそろ準備が終わった頃うさ。一回、シャクヤクの部屋まで戻るうさ！」

ショタ団長「うん！」

――――――
～～～ウサギノオと団長が悪戯を各所で引き起こしてる頃～～～

害虫討伐作戦会議室


ｶﾞﾁｬ

ススキ「あっ、来てくれた！」

アイビー「ススキさん！ 団長さんは無事なの！？」

タチバナ「どこかに怪我してたりとか……」

ススキ「うん。団長さんは私達が無事保護してるよ」

ススキ「ただ、怪我の方は大丈夫だけど、喧嘩続きだったみたいで精神的にショックがでかかったみたいで……」

アイビー「うっ……私達も団長さんの前で少し喧嘩みたいな事しちゃったのよね……」

ススキ「スズランさん達の所にいたから、何か関係あると思って呼んだんだけど、やっぱり団長さんと一緒にいたんだ」

ススキ「あのね、頼みたい事があるんだけど……良いかな？」

タチバナ「頼みたい事？」

ススキ「うん、まだ他の人にも頼んでて―――」

ｶﾞﾁｬ

セントポーリア「ススキさ～ん、来ましたよぉ～」

アブラナ「珍しいわね。あなたがあたし達を呼ぶなんて」

ワレモコウ「極めて稀な例？ 何かあったです？」

ギンラン「何かのお手伝いですか？」

ススキ「ちょうど来てくれたね！ えっと、みんなに聞いてほしいんだけど……」ｶｸｶｸｼｶｼﾞｶ


ススキ「―――――――っていうのを考えてるんだけど、どうかな？」

アイビー「面白そうじゃない！ 私は乗ったわ！」

セントポーリア「みんなで遊ぶの、とっても楽しそうですね～♪ 私も賛成ですよ～」

ワレモコウ「反対する理由、特にない？断じて、任せてほしい？」

ギンラン「はい！ そういう事でしたら任せてくださいな！」

タチバナ「上手く絡めればお勉強にもなりそうですね。私は賛成です」

アブラナ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

ススキ「あれ、アブラナさんは反対？」

アブラナ「いや、これをやる事自体に異議はないけど、配役何とかならないわけ？」

アブラナ「正直、あたしがこれをやるの、気が進まないんだけど……」

セントポーリア「えぇ～……とっても似合うと思いますよ～？」

セントポーリア「アブラナさん、格好いいですもんねぇ～♪」

ギンラン「はい、適役かと！」

ワレモコウ「アブラナ、ファイトです？」

アブラナ「ちょ、みんなであたしがやる流れに持っていかないでよ！」

アブラナ「ほら、外見的にはギンランだって！」

ギンラン「私は剣を持っていないので……」

アブラナ「ならアイビー、あなたならどう？」

アイビー「我は魔眼に秘められし不滅なる深淵の力を操る者……神々より選ばれ使徒を創造せる聖なる力とは相容れないわ」

アイビー「それに、私の武器や恰好もどちらかというと合わないわね。ということで、アブラナさんよろしく～♪」

アブラナ「くっ……セントポーリアは……合わないわね」

セントポーリア「え～、ひどいですよぅ。でも、その通りかもです～」

アブラナ「ぐぬぬ……」

ススキ「あの、本当にやりたくなかったら……」

アブラナ「そ、そんな悲しそうな顔しないでよ……」

アブラナ「……もう、分かったわよ！ やってやるわよ！」

ススキ「やったぁ！ ありがとう！」

セントポーリア「おぉ～♪ アブラナさん、ふぁいとぉ～！ ですぅ～！」

タチバナ「ただ、この計画は実行しない可能性もあるんですよね？」

ススキ「そうだね。これは失敗したときの計画だから……」

タチバナ「今回の件は私も団長殿に悪いことをしてしまったので、多少の悪戯には目をつむります……が、あまりにも風紀を乱す悪戯をするようなら……」

ススキ「そ、その時は私がストッパーになるから大丈夫だよぉ！」

ススキ「それに、失敗しなくても、準備完了次第、こっちの流れに上手く持っていっても良いかもだしね」

セントポーリア「それじゃあ、早速準備に入りましょう～」

ギンラン「何だかワクワクしてきましたね～♪」

ススキ「それじゃあ、みんな！ 今日はよろしくね！」

今回はここまで
また近いうちに続きを書きますね

――――――
シャクヤクの部屋


ウサギノオ「みんな！ 首尾はどううさ？」

シャクヤク（ハロウィン）「特製プリン、たくさん作ってきました……！ 時間がなかったので簡単プリンになっちゃいましたが、容器に入れたら口に入れるまでバレないかと思います」

シャクヤク「なので、いつでも大丈夫です！ がお！」

ウサギノオ「あれ、いつの間に着替えたうさ？」

シャクヤク「形から入った方が良いと思って、着替えておきました」

ウサギノオ「ちょっと今だと目立つかもしれないけど、まぁ同志シャクヤクがその方がやりやすいなら良いかな……？」

ウサギノオ「デルフィニウムとラナンキュラスは？」

デルフィニウム「ばっちりさ！」ｺﾞﾛﾝ

そう言って、デルフィニウムはカバンから大量のカボチャを取り出す。

ハロウィンでよく見る顔が彫られた、ジャック・オー・ランタンだ。

ラナンキュラス「ご注文の煙幕かぼちゃ、たくさん作っておいたよ！」

ウサギノオ「よくやったうさ！」

ススキ「シャクヤクさんもデルフィニウムさん達も手際が良くて、私がそんなに手伝わないでも大丈夫だったよ」

ススキ「だから、私は作戦地の下見をしてきたよ。まだ人が少ないから、忍び込むなら今だね」

ショタ団長「なにするの？」

ウサギノオ「では、準備も終わった事だし、説明するうさ！」

ウサギノオ「そろそろお昼ご飯時！ そして今日の日替わりランチにはプリンがデザートで付くうさ！」

ウサギノオ「この騎士団の食堂のプリンは美味しくて大人気うさ。当然、今日は日替わりランチを頼む人も多いうさ」

ウサギノオ「そんな中、食堂の厨房に忍び込み、プリンの中に特製の激辛プリンを紛れ込ませれば……！」

ススキ「今日のお昼ご飯は大騒ぎになるってことだね！」

デルフィニウム「改めて聞くと、これは恐ろしい計画だね……！」

ウサギノオ「おや、怖気付いたうさ？」

デルフィニウム「まさか、このデルちゃんに恐れるものなどぬぁい！」

ウサギノオ「団長さんはどううさ？ やれそう？」

ウサギノオ「当然、この悪戯はさっきの場所より大きい厨房に見つからないように忍び込む必要があるうさ。かくれんぼうさ！」

ショタ団長「かくれんぼ……うん、できるよ！」

ウサギノオ「それじゃあ、団長さんと私、同志シャクヤクで忍び込むうさ！」

シャクヤク「だ、大丈夫です……！」

ウサギノオ「ススキ、デルフィニウム、ラナンキュラスは食堂の従業員に話しかけて、気を引いてほしいうさ！」

ウサギノオ「なるべく長く時間を稼いでくれると嬉しいうさ！」

ススキ「りょーかい！」

デルフィニウム「デルちゃん達のトーク力を見せるときが来たね！」

ラナンキュラス「私たちにかかれば、井戸端会議のおばちゃん並に長時間張り付かせてみせるよ！」

ウサギノオ「みんな、頼もしいうさ！ 士気も十分……作戦成功は間違いないうさね！」

ウサギノオ「さぁみんな！ 時間はあまりないうさ！」

ウサギノオ「時は来た！ 今こそ、ニコニコ作戦……開始うさ！」

――――――
食堂 厨房


ウサギノオ「侵入成功うさ！」

シャクヤク「ド、ドキドキします……」

シャクヤク「ううん、私がしっかりしないと団長さんも心配しちゃう……！ 背筋をしっかり伸ばして前を向いて……！」

ショタ団長「おいしそうな物が一杯……！」ｷﾗｷﾗ

ウサギノオ「おっと、後で何か買ってあげるから、今は我慢うさよ？」

ウサギノオ「同志シャクヤクも心配しなくて大丈夫うさ！ ススキの言った通り、人は今ほとんどいないうさ」

ウサギノオ「後は迅速にプリンの場所まで移動し、特製プリンを紛れ込ませるだけ。簡単うさ！」

ウサギノオ「プリンは……っと。あったうさ！」

ショタ団長「おいしそう……！」ｷﾗｷﾗ

ウサギノオ「団長さん、今はガマンガマン！ 同志シャクヤク、プリンの準備うさ！」

シャクヤク「は、はい！」ｶﾞｻｺﾞｿ

ウサギノオ「今日は絶好調！ 計画は超スムーズに進んでいるうさ」

ウサギノオ「今ならサンカクサボテンだって出し抜ける気がするうさ！」

サンカクサボテン「ほぅ。誰を出し抜けるって？」

ウサギノオ「だからサンカク―――うさ？」

シャクヤク「うぁぁぁぁぅぅ！？ サンカクサボテンさん、いつの間に！？」

サンカクサボテン「シャクヤク、またウサギノオの悪戯なんかに付き合って……っと、その子はまさか噂の小さくなった団長？」

ショタ団長「えっと……」ｵﾄﾞｵﾄﾞ

サンカクサボテン「ウサギノオ、まさか団長に悪戯を吹き込んでたんじゃ……」ｼﾞﾄ

ウサギノオ「ど、どうしてここが分かったうさ！？」

サンカクサボテン「何、簡単な事だよ。さっき、シャクヤクが滅多に着ないハロウィン衣装で香辛料や卵や牛乳を買いこんでいるのを見つけてね」

サンカクサボテン「その時に聞いたらはぐらかされて、これは絶対に何かあると思ったんだ」

ウサギノオ「あぅ……同志シャクヤク、それ着て買い物に行っちゃったうさか……」

シャクヤク「ごめんなさいぃ……」

サンカクサボテン「まず頭に浮かんだのはウサギノオだ。シャクヤクはその衣装でウサギノオと共にハロウィンパーティーを騒がせたこともあるからね」

サンカクサボテン「そして大量の香辛料……やるとしたら食べ物系の悪戯ね。そして材料から見るとデザート系の可能性が高い……」

サンカクサボテン「そこで、今日の昼のデザートがプリンであることを思い出したのよ」

ウサギノオ「あぁもう！ 何でサンカクサボテンはこんなに勘が鋭いうさ！？」

サンカクサボテン「まぁ憶測だったのだけれどね」

サンカクサボテン「その時は複数人で悪戯をしようとしている確証もまだ持てなかったけど、食堂でハロウィンで没収した煙幕かぼちゃを作っているデルフィニウムとラナンキュラスを見つけたの」

サンカクサボテン「そこで、今回の悪戯には複数人が絡んでいて、纏めているのがウサギノオだって気付いたのよ」

ウサギノオ「何でそこで作業してるうさ！？あの二人！？」

サンカクサボテン「後は私の推理が当たっていれば、ここに姿を現すはずと隠れて待っていたのだけれど……ビンゴだったわ」

サンカクサボテン「まさか団長まで巻き込んでいるなんて……ウサギノオ、今回は少し反省しないとダメね？」

シャクヤク「あわわわわ、どうしましょうウサギノオさん……！？」

ウサギノオ「こ、ここは戦術的撤退うさ！」

ウサギノオはデルフィニウム達が作ってくれた煙幕かぼちゃを床に投げる。

だが、本来なら煙幕が出てウサギノオ達の姿を隠してくれるはずのそれは、ただ虚しく転がるだけで何も起こる気配がなかった。

ウサギノオ「……うさ？」

サンカクサボテン「それの中身ならすり替えておいたよ。あの二人が作業中に席を立った隙にね。構造自体は簡単だったから比較的簡単に済んだわ」

サンカクサボテン「それより、食品を扱う場所で煙幕なんて使わない！」

ウサギノオ「うっ、確かにそううさ。それは浅はかだったうさ……」

ショタ団長「ど、どうしよう、僕たち怒られちゃうのかな……？」

シャクヤク「ウサギノオさん、どうしましょう……！？」

ウサギノオ「むむむ……」

サンカクサボテン「さぁ、観念してお縄に―――」

？？？「ちょっと待ったぁ！」

？？？「待ってくださ～い」

サンカクサボテン「おや、アブラナとギンランじゃない。どうしたの？」

アブラナ「その子たちの身柄はゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ………」

ウサギノオ「ゆゆゆ？」

アブラナ「ゆっ……勇者アブラナが預かるわ！ 魔王シャクヤクにトリックマスターウサギノオとその手下よ！ 大人しく降参しなさい！」ｶｵﾏｯｶ

サンカクサボテン「…………は？」

ウサギノオ「うさ？」

シャクヤク「ど、どういう事なんでしょうか……？」

ショタ団長（また変わったお姉ちゃん……？）

アブラナ「…………うわぁぁぁん！ もうやだ！ 帰る、帰るわ！」

ギンラン「まだ帰っちゃダメですよ～！」

サンカクサボテン「えっと……どういう事なのか説明してくれる？」

アブラナ「だから！ その悪戯軍団はあたし達勇者軍が引き受けるって言ってるのよ、もう！」ﾔｹｸｿ

アブラナ「見なさい！ ちゃんと副団長からの許可だって取り付けてるんだから！」ﾍﾟﾗｯ

サンカクサボテン「いや勇者軍って……あら、本当に副団長のサクラさんのサインね」

ウサギノオ「えっと……アブラナ、どうしたうさ？ キャラチェン？」

シャクヤク「無理にキャラは変えない方が……」

アブラナ「いや、これは！」

ギンラン「アブラナさんは勇者だったんですよ～」

シャクヤク「勇者だったんですか……！？ 凄いです……！」

アブラナ「あぁぁぁぁあああ！！ そうよ！ あたしは勇者アブラナ！ 悪戯魔王軍を倒しにきたの！」ﾁｮｳ ﾔｹｸｿ

ギンラン「私はパラディンですよ～」

シャクヤク「あの、武器は……」

ギンラン「素手です。肉体派パラディンがいても私は良いと思うんです。これも運命です」

シャクヤク「？？？」

ウサギノオ（これはどういう事うさ……？ というか何で悪戯魔王軍の設定がバレてるうさ？）

サンカクサボテン（アブラナとウサギノオが組んでて逃がすために一芝居打ったとも考えたけど、アブラナは悪戯に手を貸すタイプには見えないし、ウサギノオも本気で困惑してるから違いそうね）

サンカクサボテン（かといってアブラナが急に勇者キャラにデビューするって正直考えにくいわ。ギンランも一緒になって乗ってるし、サクラさんのサインまで持ってる……。これはきっとみんなで何か考えてるっぽいわね）

サンカクサボテン（それなら、ここは乗っておこうか）

サンカクサボテン「成程。そういう事なら分かったよ」

サンカクサボテン「それなら、私も賢者かランサー辺りで勇者一向に加えてもらってもいいかしら？」

アブラナ「うぇぇ！？ どうするのギンラン？」

ギンラン「後でしっかり説明すれば大丈夫だと思いますよ～。よろしくお願いしますね、サンカクサボテンさん」

サンカクサボテン「任されたわ。外にも魔王軍がいるはずだけど……」

アブラナ「あぁ、あの三人ならもう勇者軍の仲間が捕まえたわよ」

ウサギノオ「うそ！？」

ショタ団長「ススキお姉ちゃん達が……！」

サンカクサボテン「それなら安心ね。なら今度は目の前の魔王軍を捕えないと！」

アブラナ「えぇ、おしゃべりはここまで！ 奴らは完全に囲んでるわ！ さぁ、悪戯魔王軍を捕えるわよ！」

ウサギノオ「くっ、結局敵が増えただけうさね……」

シャクヤク「こうなれば、団長さんだけでも―――」

アイビー「待たせたわね！ 我が同胞よ！」

ショタ団長「アイビーお姉ちゃん！？」

ウサギノオ「どこから来たうさ！？」

セントポーリア「私達もいますよ～」

ワレモコウ「です？」

アブラナ「くっ、仲間を呼んだわね魔王軍！」

シャクヤク「えっ、いや……どういう状況なんでしょうか……？」

突然の乱入者に困惑するウサギノオとシャクヤクを余所に、アイビーは団長へと続ける。

アイビー「私が来たからにはもう大丈夫よ団長さん！ 実はね、あの時は隠していたけど……」ｻｯ

アイビー「私は魔王軍の裏上級幹部だったの！」

ショタ団長「そうなの！？」

アイビー「えぇ！ 我は封印されし闇の力の継承者！ 死の運命の否定者アイビー！ 我が影の同胞達を脅かすものは決して許さない！」ﾅｿﾞﾎﾟｰｽﾞ

ギンラン「あなたは幻の幹部アイビーさん……！ しかし、こちらには光の勇者がいます！」

アイビー「伝説に語り継がれし光の勇者……！？」

サンカクサボテン（何か演劇みたいなのが始まったわね……。下手に空気壊さないように少し黙ってようか）

アイビー「これは、我が力を解放するときが来たようね……！ 我が魔眼に宿りし爛漫たる力、華王ブロッサム・グラスを！」

そう言ってアイビーは眼帯を外し投げ捨てようとするが、厨房でポイ捨てみたいになってしまって不味いと思ったのか、そのまま懐へとしまい込む。

アイビー「こほん。さぁ団長さん！ ここは私と魔王シャクヤクさんとトリックマスターウサギノオさんに任せて、セントポーリアさんとワレモコウさんと逃げなさい！」

ショタ団長「でも……！」

セントポーリア「だいじょーぶですよ、私も魔王軍なんですよ～♪」

ワレモコウ「ここは任せて引くのが得策？ モコウ達だけでも逃げて体勢を整えるです？」

ウサギノオ「ちょ、何で勝手に決めるうさ！？」

シャクヤク「でもこの二人なら信頼は出来ると思います……！」

シャクヤク「それに今は団長さんを逃がさないと……！」

ウサギノオ（アブラナ達自称勇者軍とつるんでる可能性がかなり高いうさが、まぁ確かに悪いようにはしなさそううさね……）

ウサギノオ「……団長さんを連れていってお説教とかじゃないうさ？」

セントポーリア「そんな訳ないじゃないですか～」

ワレモコウ「心外です？ 断じて、ご主人を裏切るような真似はしない？」

ウサギノオ「……信じるうさよ？ 団長さん、そのお姉ちゃん達と逃げててほしいうさ！」

ショタ団長「ウサギノオお姉ちゃん達は……！？」

ウサギノオ「後でまた会ううさ！」

セントポーリア「団長さん、今はみんなを信じて逃げましょう！」

シャクヤク「後でまた一杯遊びましょう……！」

ウサギノオ「約束うさ！ 団長さん！」

ショタ団長「……うん！」

セントポーリア「さ、逃げますよ～♪」ﾄﾄﾄｯ

団長はセントポーリアとワレモコウに手を引かれ、食堂から出ていった。


ウサギノオ「……で、これはどういうつもりうさ？ 勇者アブラナ」

アブラナ「や、やめてよ。かなり恥ずかしいんだからそれ……」

サンカクサボテン「何となく合わせたけど、しっかり説明はしてくれるのかい？」

アイビー「大丈夫、悪い事はしないわ！」

ギンラン「とりあえず場所を移しましょう。そこでしっかり説明をしますから」

サンカクサボテン「当然ながら、そのプリンはしっかり持って帰るんだよ？」

ウサギノオ「うぐっ、分かってるうさ！」

シャクヤク「これ、もしかして私達が全部食べるんですか……？」

ウサギノオ「大丈夫うさ！ 保存しておいて団長さんが大人に戻ったらプレゼント—――」

サンカクサボテン「ウーサーギーノーオー？」

ウサギノオ「じょ、冗談うさ！」

サンカクサボテン「全く……きちんと反省するなら一個くらい貰ってあげるから」

アブラナ「ほら、場所を移すわよ。捕虜はキリキリ歩く！」

シャクヤク「捕まった設定なんですか！？」

アイビー「私は無事撤退した設定よ！」

ウサギノオ「何それ、ずるくないうさ！？」





――――――
サンゴバナ「………………とりあえず、厨房で騒ぐのはやめてほしかったです……」

今回はここまで
また近いうちに続きを書きますね

―――――
セントポーリアの部屋


ショタ団長「……」ｿﾜｿﾜ

セントポーリア「団長さ～ん、食堂からお弁当をもらって来ましたよ～！」

セントポーリア「今日のお弁当は～……お子様ランチにしましょう～♪」

ショタ団長「あ、ありがと……セントポーリアお姉ちゃん」

セントポーリア「は～い♪」

ワレモコウ「お子様ランチのお弁当なんてあったです？」

セントポーリア「なかったですけどぉ……お願いしたら作ってくれました～」

セントポーリア「あっ、結局また食堂にご飯を取りに戻るなら、そのまま待ってても良かったかもですね～！」

ワレモコウ「セントポーリア……厨房から逃げたのに、そのまま食堂で待ってるのは不自然極まりないです？」

ショタ団長「つかまっちゃう……」

セントポーリア「確かに……そうかもしれませんね～うふふ」

ショタ団長（ゆっくりしたお姉ちゃんだ……）

ワレモコウ「ご主人、セントポーリアはいつもこんな感じだから、気にしないでいいです？」

ショタ団長「ご主人……？」

ワレモコウ「今のご主人には分かりにくい呼び方だったです……？」

ワレモコウ「うぅん、でも小さくなってもご主人はご主人。あんまり気にしないでほしいです？」

ショタ団長「？？ うん……？」ｸﾋﾞｶｼｹﾞ

セントポーリア「団長さ～ん！ お子様ランチ、旗がついてますよ～！」

セントポーリア「団長さんも、こういうの集めてますか～？」

ショタ団長「ううん、集めてないよ……？」

セントポーリア「あらあら、そうなんですねぇ」

ワレモコウ「……」ｳｽﾞｳｽﾞ

セントポーリア「もしかしてワレモコウちゃん、欲しいんですか？」

ワレモコウ「べ、別にいらないです？ 確かに昔は集めてたけど、もう子供じゃないです？」

ワレモコウ「それに、軍師の血が旗を見て騒いだだけ……断じて、欲しい訳じゃないです？」

セントポーリア「あらあら……じゃあ、団長さん。旗は私が貰っていいですか～？」

ショタ団長「ほしいの？」

セントポーリア「はい～。思い出に取っておこうかな～って」

ショタ団長「うん、いいよ」

ワレモコウ「お、思い出という事なら、モコウが貰ってもいいです？」ｽﾞｲｯ

セントポーリア「うふふ♪ それなら、ワレモコウお姉ちゃんに上げてくださいね～♪」

ショタ団長「うん、ワレモコウお姉ちゃん。これあげるね」

ワレモコウ「ありがとうです、ご主人。小さいご主人からプレゼントを貰えるのも、モコウは嬉しい？」

ワレモコウ「……む～、ただ何かセントポーリアに一本取られた気がするです？」

セントポーリア「そんなことないですよぉ」

セントポーリア「さぁ、ワレモコウちゃんの分も持ってきましたので、みんなでお昼ごはんにしましょう～」

ショタ団長「…………」ｼﾞｯ

みんながお弁当を広げる中、団長は特製のお子様ランチ弁当を見つめたまま動かない。

セントポーリア「……団長さん」

セントポーリア「はい、あーんしてくださ～い♪」

セントポーリアはそんな団長を見て、お子様ランチのウィンナーを橋で掴み、団長の口元へと運んできた。

ショタ団長「わっ、なっ、一人で食べれるよぅ！////」ﾌﾟｲｯ

セントポーリア「あらあら、恥ずかしがり屋さんなんですねぇ」

セントポーリア「……ウサギノオさん達が心配ですか？」

ショタ団長「うん……」

セントポーリア「ウサギノオさん達が大好きなんですね～♪」

ショタ団長「えっ！？ えっと……」

セントポーリア「恥ずかしがらなくていいんですよ～？」

セントポーリア「今日は～、ウサギノオさん達と何をして遊んだんですか～？」

ショタ団長「えっと、一緒に悪戯をしたよ」

ショタ団長「いろいろ教えてくれて、すごい楽しくて……」

ショタ団長「僕、何もできないから……」

セントポーリア「団長さんは何も出来なくないですよ～」

ショタ団長「だって……」

セントポーリア「団長さんが楽しいと感じてる時、きっとウサギノオさん達も楽しいと感じてたと思いますよ～？」

セントポーリア「だって、私も今団長さんと一緒にいて、と～っても楽しいですよ？」

ショタ団長「ほんと……？」

セントポーリア「はい～♪ だからきっと、団長さんはみんなを楽しくさせて、元気をあげてたんですよ～？」

セントポーリア「……また後で、みんなで一緒に遊びましょうね？」

ショタ団長「……うん！」

セントポーリア「でもぉ……遊ぶ時にお腹減ってたら、元気が出ませんよ～」

セントポーリア「だから～……はい、あ～ん♪」

ショタ団長「一人で食べれるってばぁ！///」ﾌﾟｲｯ

ﾄﾝﾄﾝ

ギンラン「失礼しま～す。果たし状を届けに来ましたよ～」ｶﾞﾁｬ

セントポーリア「あらあら、お疲れ様です～。今ご飯食べてるので、行くのはまた後でも良いですか～？」

ギンラン「勿論、大丈夫ですよ～」

セントポーリア「ありがとうございま～す！」

ギンラン「ではでは、また後で～」ｶﾞﾁｬ

セントポーリア「は～い♪」

ワレモコウ「…………何だか、果たし状のやり取りとは思えない緩さです？」

ショタ団長「果たし状？」

ワレモコウ「挑戦状みたいなものです？ セントポーリア、何が書いてあるです？」

セントポーリア「えっとぉ……」ﾍﾟﾗｯ

セントポーリア「……どうやら、ウサギノオさん達が捕まっちゃったみたいですねぇ」

ショタ団長「えぇ！？」

セントポーリア「ひどい事はされてないみたいで、もし勇者アブラナさんが挑む勝負に勝つことが出来たら離してくれるみたいです～」

セントポーリア「ただ、もし戦いに来なかった場合、ウサギノオさん達はお説教を受けてしまうみたいですねぇ……」

ワレモコウ「お説教ならそんなにひどい事ではない？ ただ、長引くとこの後一緒に遊ぶのは厳しくなる？」

セントポーリア「団長さん、どうされますか～？」

ショタ団長「ウサギノオお姉ちゃん達を助けないと……！」

ショタ団長「でも、勝てるかな……」

セントポーリア「大丈夫ですよ～。私達がついてます」

ワレモコウ「策ならモコウに任せてほしい？」

セントポーリア「みんなで力を合わせれば～きっとぉ助けられますよ～！」

セントポーリア「……また、みんなで一緒に遊ぶんですよね？ 団長さん」

ショタ団長「……！」

ショタ団長「うん……！ 遊びたい……！」

ショタ「僕、がんばってみる……！」

セントポーリア「その意気ですよ～！」

ワレモコウ「一緒に頑張るです？」

セントポーリア「勇者さんを倒しちゃいましょう～！」

セントポーリア「ふぁいとぉ～お～！ ですぅ～！」

ワレモコウ「お～、です？」

ショタ団長「お～……！」

セントポーリア「えへへ、気合い入りましたか～？」

ショタ団長「う、うん……！」

セントポーリア「さぁ、ウサギノオさん達を助けるために、しっかりご飯を食べないといけませんね～？」

セントポーリア「は～い、あ～んですよぉ～♪」

ショタ団長「もー！ だから一人で食べれるよー！」

今日はここまで
また近いうちに続きを書きます

――――――
庭園


アブラナ「……来たわね！」

セントポーリア「こんにちは～」

ショタ団長「みんなは……！？」

ギンラン「魔王軍の皆さんなら、ここにいますよ～」

シャクヤク「団長さん……！」

ウサギノオ「ごめんね団長さん、捕まっちゃったうさ……」

デルフィニウム「うぅおおぉぉぉ！ なんだかよく分からないけど捕まってしまったぁ！ 助けて団長！」

アブラナ、ギンランの後ろにはウサギノオ達がローブでぐるぐると縛られて座っていた。

あまりきつくは縛られてないようだが、何故かデルフィニウムとラナンキュラスだけはギュウギュウに縛ってあり、縄先がサンカクサボテンとタチバナに握られている。

ラナンキュラス「というか、何で私達だけガチ縛りなのさ！？」

タチバナ「いや、何やら趣旨がよく分かってなさそうだったので……」

デルフィニウム「分かってるよぅ！ 団長に楽しんでじし―――」

アブラナ「わー！ わー！」ｸﾁﾌｻｷﾞ

デルフィニウム「ﾓｶﾞｯ」

ショタ団長「こらー！ デルフィニウムお姉ちゃんをいじめるな！」

アブラナ「あぁごめん！ これは苛めてる訳じゃなくて……！」

アブラナ「デルフィニウム、後でお菓子上げるから今は捕まってて！」ﾋｿﾋｿ

デルフィニウム「えっ……デルちゃん、もしかしてめっちゃ子供に見られてる……？」

ラナンキュラス「デルフィ……今のはしょうがないかも……」

デルフィニウム「何だとラナンー！」

ショタ団長「ススキお姉ちゃんとアイビーお姉ちゃんは……！？」

アブラナ「ススキ達には逃げられちゃったわ。今頃、どこかに隠れてるんじゃない？」

ショタ団長「そっか……良かった……」

アブラナ「だけど、魔王シャクヤク達は見ての通り捕まったまま」

アブラナ「さぁ、どうするの？ 悪戯魔王軍！」

ショタ団長「みんなをはなせ！ わるもの勇者！」

セントポーリア「そうですよ～！ 放してあげてください～！」

ワレモコウ「早く解放するです？」

アブラナ「うっ……これ、普通に憎まれ役よね……」

ギンラン「まぁ、美味しい役ではないのは確かですわね～」

アブラナ「全く……今度何か奢ってもらわないと割に合わないわ……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

アブラナ「とにかく、魔王軍のメンバーを解放してほしいなら、あたしとあれで勝負よ！」

アブラナは近くのテーブルを指さす。

そこには花騎士と害虫をテーマにした、スプリングガーデンで人気のボードゲームが広げてあった。

アブラナ「この決闘で団長があたしに勝つことが出来たら、みんなを放してあげる」

アブラナ「他の二人は、助言するくらいなら許してあげるわ。ただし、全部教えるのは駄目」

ショタ団長「ゲーム……もし負けたら……？」

アブラナ「負けたら！？ えっと……」

アブラナ（どうしよう、負けた時の事を考えてなかったわ……）

アブラナ「えっと、男がやる前から、負けた時の事なんていちいち考えない！」

ショタ団長「！？」ﾋﾞｸｯ

ギンラン「アブラナさーん？」

アブラナ「ご、ごめんって！ そうね、でも一回くらいなら――――」

ショタ団長「うっぅ……うん、がんばる！ 勝つよ！」ﾅﾐﾀﾞﾒ

サンカクサボテン「おや、逆に火をつけられたようね」

セントポーリア「団長さん、応援してますから……頑張ってくださいね？」

ワレモコウ「ご主人、ルールは分かるです？」

ショタ団長「ううん……ごめんなさい……」

ワレモコウ「大丈夫。モコウがしっかり教える？」

ワレモコウ「ご主人ならきっと勝てる……自分を信じるです？」

ショタ団長「うん！」

アブラナ「さぁ、決闘よ団長！ 勇者の力、思い知らせてやるわ！」

――――――


ショタ団長「うぅぅ……」ﾅﾐﾀﾞﾒ

団長は涙目になり、ゲーム盤上を見つめる。

途中まではアブラナの手加減により、団長が有利にゲームが進行していたが、今ではアブラナが逆転し、団長の駒は減り、アブラナが操る害虫達に完全に包囲されつつあった。

ギンラン「アブラナさん～？」ｼﾞﾄｯ

アブラナ「な、なんだか『負けるっ！』て思ったら熱くなっちゃって……」ｱｾｱｾ

ワレモコウ「子供相手にムキになってどうするです……？」

セントポーリア「アブラナさんも負けず嫌いですからね～」

セントポーリア「でもこれは……どうしましょう～？」

アブラナ「わ、悪かったわよ！ その団長、初めからやり直しても……」

ショタ団長「負けないもん！！ うううぅ」ｼﾞﾜｯ

セントポーリア「あらあら、団長さんもムキになっちゃいましたねぇ……」

タチバナ「どうするんです？ もう早速計画が狂ってきてますが……」

アブラナ「と、とりあえずこの勝負は一回決着つけるしかないでしょ！」

サンカクサボテン「もう手加減したとしても、負けるのは難しい感じになっちゃってるけど……」

シャクヤク「な、何だか勇者が勝ちそうなのに仲間に攻め立てられるシュールな光景になってます……！」

ウサギノオ「そもそも決闘の内容がボードゲームの時点でだいぶシュールうさ……」

シャクヤク「もっと筋トレ勝負とか……」

ウサギノオ「いや、それもおかしいうさ」

ワレモコウ「……！ ご主人、モコウのヒント、欲しい？」

ワレモコウは盤上を見て突破口に気付いたのか、団長へと声をかける。

ショタ団長「ｸﾞｽｯ……」ｺｸｯ

ワレモコウ「ご主人は、大型害虫を倒すのに固執しすぎてるです？」

ワレモコウ「大型害虫は当然厄介……。でも、勇者の大型害虫は一方に集中している……視野を広くすれば、効果的な打開策が思い浮かぶはずです？」

ショタ団長「えっと……？？？」

ワレモコウ「つまり、今ご主人が見てる場所以外と、自分の残った駒をよく見るです」

ショタ団長「…………」ｼﾞｯ

ワレモコウ「そうして、駒の力と残った大型害虫の位置。これをよく見て考えるですよ」

ショタ団長「……あっ！ そっか……！」

ワレモコウ「気付いたですね、ご主人」

ワレモコウ「……勝負、出るです？」

ショタ団長「……うん、勝つよ！」

――――――


盤上には、先ほどとは打って変わり、大型害虫一匹が残った花騎士に包囲される光景が広がっていた。

そして、その最後の一匹が、花騎士の攻撃により倒れる。

アブラナ「……ぐっ、負けたわ」

ショタ団長「やった……！」

セントポーリア「やったぁぁ～♪」

ワレモコウから助言を受けた団長は、遠距離攻撃出来る駒で大型害虫を足止めしつつ、残った駒で足が速い近接攻撃が主体の部隊を編成し直した。

そして、その部隊で小型害虫の一番薄い場所を突破し展開。そして最小限の駒を大型害虫の足止めへ残しつつ、残りを小型害虫の包囲へと回し、雑魚の殲滅を図ったのだ。

そのうちに、いつの間にかアブラナの手持ちの駒は大型害虫一匹になっていたのだ。

ショタ団長「僕、勝ったよ！ 自分で決めて勝てた……！」ﾊﾟｧｧｧ

セントポーリア「流石、未来の騎士団長さんですね～♪」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

ワレモコウ「あの助言だけでここまで出来るのは流石です？ ご主人」

ギンラン「えぇ、本当ですわ！ こんな小さな時から、指揮の才能があったのかもしれませんね」

ワレモコウ「で、でも大人の時でも、ボードゲームならいつもモコウが勝ってるです？」

ギンラン「ワレモコウさんも対抗意識持ってどうするんですか……」

ショタ団長「さぁ、お姉ちゃん達をはなして……！」

アブラナ「えぇ、勇者に勝ったんだもの。約束通り解放するわ」

サンカクサボテン、タチバナの二人が、魔王軍一行の縄をほどく。

ウサギノオ「団長さん、信じてたうさ！」ﾀﾞｷｯ

シャクヤク「勇者さんに勝っちゃうなんて凄いです……！」

デルフィニウム「デルちゃんには良く分からなかったけど、凄いね団長！ 惚れた！」

ラナンキュラス「団長、ブイッ！ だね！」ﾌﾞｲｻｲﾝ!

ショタ団長「えへへ……ブイッ！」

サンカクサボテン「おっと、もう勝ったつもりになってるのかな？」

ショタ団長「えっ……？」

タチバナ「確かに勇者アブラナは倒れ、魔王軍は解放されました……しかし、まだ勇者の仲間たちは残っていますよ」

サンカクサボテン「そう。私達を倒さないと、まだ勝利とは言えないわね」

タチバナ「でも勇者アブラナを倒し、仲間が解放された今なら大丈夫ですよね？ 団長殿？」

ショタ団長「えっと……うん！」

サンカクサボテン「流石団長。では、私達とはクイズ対決で勝負！」

サンカクサボテン「神童と呼ばれた私が出すクイズ、果たして答えられるかしら？」

タチバナ「分からなかったらお姉ちゃんたちにヒントを貰っても大丈夫ですよ」

デルフィニウム「ふっ……クイズなんてデルちゃんズの敵ではない！ 団長、いつでも頼っていいからね！」

デルフィニウム「―――って誰だ『デルフィはクイズで頼りにならないでしょ』って呟いた奴はー！？ ラナンキュラスか！？」

ラナンキュラス「えぇい、何故バレた！？」

デルフィニウム「やはりお前かぁぁ表でろぉー！」

サンカクサボテン「全くあの二人は……」

タチバナ「ちなみに三問正解ごとにお菓子をあげます。頑張ってくださいね！」

ショタ団長「お菓子……！」ｷﾗｷﾗ

ギンラン「そのクイズでサンカクサボテンさんとタチバナさんを倒したら、次は私が相手ですよ～」

ギンラン「私はパラディン。それも聖なるパラディンですので、どんな攻撃も効きません。無敵です！」

ショタ団長「えっ、ずるい！」

ギンラン「ですが、この騎士団のどこかに隠されている3つのパーツを繋ぎ合わせて作られる『深淵なる魔剣』を使えば、倒す事が出来ます！」

ギンラン「クイズ対決でサンカクサボテンさん達を打ち破る事が出来たら、地図を差し上げます。みんなで協力して探してくださいね。宝探しです！」

ショタ団長「宝探し……楽しそう！」ｷﾗｷﾗ

アブラナ「……あたし勇者設定なのに一番弱くない…………？」

ワレモコウ「……アブラナ、泣いちゃダメです？」

タチバナ「で、では行きますよ！ 第一問！」

賑やかにクイズが始まり、団長はシャクヤク達にヒントを出してもらって協力してもらいながら、一問一問答えていく。

その光景を、ウサギノオは遠巻きに少し安心したような顔で見つめていた。

ススキ「―――ふぅ、疲れた。あれ、ウサギノオ？」

ウサギノオ「あっ、ススキ！ どこにいたうさ？」

ススキ「アイビーさんと一緒におもちゃの魔剣作りをしてたんだけど、アイビーさんが熱くなって時間かかっちゃって……」

ススキ「やっとセットも終わったから、後はアイビーさんに任せて様子を見に来たんだ」

ススキ「それより、ウサギノオは混じらないの？」

ウサギノオ「ふっふっふ……真打はピンチになったら登場するうさ！ 私が助言するのはまだ早いうさ！」

ススキ「そんなこと言って、クイズは自信ないとか？」

ウサギノオ「違ううさ！」

ウサギノオ「…………それにしても、団長さん、楽しそううさ」

ススキ「そうだね、良かった……」

ウサギノオ「……これ、ススキが考えたうさ？」

ススキ「あれ、バレちゃった？」

ウサギノオ「この私の名推理！ ……と言いたい所だけど、実はアブラナから誰の考えか聞いちゃったうさ」

ウサギノオ「全く、結果的に団長さんが楽しそうだから良いけど、魔王軍の情報を売っちゃダメうさよ？」ｸｽｸｽ

ススキ「ごめんね。でもウサギノオ達、作戦が失敗した時の事を何も考えてなかったでしょ」

ススキ「団長さんだけ逃がすにしても、下手したら私達だけお説教で団長さんがまた一人になっちゃう可能性だってあるし、じゃあその時のプランを考えておこうって」

ススキ「それで、折角だから、ウサギノオ達には内緒にして驚かせちゃおうかなって」

ススキ「つまり、ウサギノオへの私からの悪戯も兼ねてたんだけど、誰が考えたか知らされちゃったならあんまりびっくりしないよね……」

ウサギノオ「……いや、十分びっくりしたうさ。流石我が相棒、ススキうさ！」

ウサギノオ（人見知りだったススキが、私がいなくても率先していろんな人に話しかけて、協力をお願いして行動して……）

ウサギノオ「……二人とも、もう大丈夫そううさね」ﾆｺｯ

ススキ「え？ 二人？」

ウサギノオ「何でもないうさー♪」

ショタ団長「ねぇ、ウサギノオお姉ちゃんも一緒に―――あっ、ススキお姉ちゃん！ どこに行ってたの？」

ウサギノオ「さぁさぁ、我らが団長さんがお呼びだよ！ ススキ、一緒に行くうさ！」

ススキ「もぅ、気になるよー！ 後でちゃんと教えてね？」

今回はここまで。
悪戯大作戦ルートは次の投下でラストです。

また近いうちに続きを書きますね。

――――――


ショタ団長「ｽｩ……ｽｩ……」ｽﾔｽﾔ

セントポーリア「あらあら～……団長さん、お腹いっぱいになっちゃったのか寝ちゃいましたね～」ｵﾝﾌﾞ

宝探し、夕食も無事終わり、既に日は没して暗くなっている。

団長は騎士団施設中を探し回り、遊び疲れてしまったのか、セントポーリアの背中でスヤスヤと眠ってしまっていた。

ウサギノオ「もう時間も時間……団長さんも疲れちゃったみたいだし、今日はこの辺うさね」

デルフィニウム「えー！ デルちゃんのこの有り余る気力と体力をどうすれば―――ふわぁ……」ｱｸﾋﾞ

ラナンキュラス「あはは、デルフィも眠そうじゃん」

デルフィニウム「違うわい！ これは心の溜息さ！」

アイビー「良い寝顔……私の作った宝探し、楽しんでもらえたみたいね！」

ワレモコウ「あの地図、ちょっと子供に出すには難しかった気がしないでもないです？」

アイビー「と、解けたんだから結果オーライよ！」

サクラ「みんな～」

ナズナ「みなさ～ん！」

すると、一行にサクラとナズナの声が聞こえてくる。

アイビー「サ、サクラさんとナズナさん！」

サクラ「みんな、今日は団長さんと遊んでくれてありがとう～！」

アイビー「いえ、私達こそ、騎士団施設の遊びでの使用許可、ありがとうございます！」

サクラ「みんなが団長さんの為に一生懸命になってくれてるのに、それを邪魔するような事はしないわ～」

アイビー「あぁ、流石サクラさん！ 聖母のようにお優しく慈愛に満ちています！」

アブラナ「何と言うか……アイビーは相変わらずね」

ナズナ「団長さま、ぐっすりですね。皆さんのおかげで楽しく充実した一日を過ごせたようで何よりです！」

アブラナ「本当に頑張ったわよ……。まぁ、楽しんでくれたようで空回りにはならなくて良かったけど」

アブラナ「たまには、こういうのも良いかもしれないわね」

ギンラン「はい、貴重な体験をさせて頂きました～！」

シャクヤク「結局、魔王らしい事は出来なかったですが、団長さんが笑ってくれていて良かったです」

シャクヤク「にこにこ作戦は成功ですね、ウサギノオさん。私もやると決めた事を成し遂げられて、少しだけ前を向けそうです」

ウサギノオ「うん。当初考えてたのとは別の形になっちゃったけど、最終的な目標は達成したうさね」

ススキ「これで安心して大人に戻れるかな？」

タチバナ「えぇ。きっと」

タチバナ「私も、今日の事は教育について考える良いきっかけになりました」

アイビー「ね？ やっぱり子供には外で遊ばせてなんぼでしょ？」

タチバナ「いえ、私が参考になったのは、子供に抵抗なく知識を吸収させるにはどうしたらいいかって事ですね」

タチバナ「子供はどういう風に育てたらいいかは、また議論が必要だと思います」

アイビー「むむむ……」

サクラ「喧嘩しちゃダメよ～？」

アイビー「は、はい！ その通りです！」

サンカクサボテン「そもそも子供なんて、まだまだ当分先の話じゃないか。結婚すらしていないのに」

サンカクサボテン「来年の事を言えば鬼が笑うものよ？」

アイビー「それはそう……だけどぉ……」ﾁﾗｯ

アイビーはセントポーリアに背負われている団長をチラチラと見ながら、ごにょごにょと今にも消え入りそうな声で反論しようとするが、すぐに少し顔を赤くしてしまう。

アイビー「そ、それよりサクラさん達はどうしてここに？」

ナズナ「もうそろそろ時間も時間ですし、団長さまを迎えに来たんです！」

サクラ「私はまだお仕事があるけど、一緒に来ながら様子を見に来たのよ～」

ワレモコウ「それじゃあ、この後は誰がご主人を見るです？」

サクラ「そうね～……それじゃあ、ナズナちゃんにお願いしようかしら～」

ナズナ「えっ、私ですか！？」

サクラ「後はもうお仕事一人で大丈夫だから、団長さんを寝かしつけてあげてくれないかしら～？」

アブラナ「ま、適役よね」

ウサギノオ「あんまり大勢で団長さんの部屋に詰めかけても眠れないかもしれないし、一人くらいでちょうどいいうさね」

ススキ「また団長さんと誰が一緒にいるかで揉めるよりかは、最後はナズナさんが一緒にいてあげた方が良いかもだね」

サクラ「それに、確か団長さんが今朝起きたときに最初に会ったのはナズナちゃんよね？」

サクラ「それなら、寝るときもナズナちゃんがいてあげた方が、団長さんも安心できると思うの～」

ナズナ「……分かりました！ 私で良いなら、不肖ながらこのナズナ、団長さまのお休みを見守りますね！」

アイビー「そういう事でしたら、代わりに私がサクラさんのお手伝いをします！」

サクラ「ありがとうアイビーちゃん。でも、本当に後少しだから大丈夫よ～？」

ショタ団長「ううん……」ﾊﾟﾁﾘ

ワレモコウ「あっ、起きたみたいです？」

ナズナ「団長さま、おはようございます！」

セントポーリア「それともぉ……こんばんは、かしら～？」ｸｽｯ

ショタ団長「ねちゃってた……」ｳﾄｳﾄ

団長は眠い目をこすりながら、セントポーリアの背から降りる。

ショタ団長「あの……ナズナさん……？」

ナズナ「はい、ナズナです！ 団長さま、覚えていてくれたんですね！」

ショタ団長「どうしたの？」

ナズナ「団長さまをお迎えに来たんですよ！ 今日はもう遅いですし、帰ってお休みしましょうか？」

ショタ団長「えっ……？」

ショタ団長「もうバイバイの時間なの……？」

タチバナ「そうですね……。今日はそろそろ寝る準備をしないと、大きな大人になれませんよ？」

ショタ団長「うぅ……」

ススキ「それに団長さん、今日はたくさん遊んだから疲れちゃったよね？」

アイビー「数多くの聖戦を乗り越えたんだもの。しっかり体は休めないとダメよ？」

ウサギノオ「……団長さん、今日は楽しかったうさ？」

ショタ団長「…………うん！」ｺｸｯ

ウサギノオ「良かったうさ。悪戯は失敗しちゃったけど、私もすっごく楽しかったうさ！」

ススキ「私も凄く楽しかったよ！」

ショタ団長「あの…………」

ウサギノオ「？」

ショタ団長「みんな、また明日も会えるよね……？」

ウサギノオ「……勿論うさ！」

ススキ「また一緒に悪戯したり、遊んだりしようね！」

セントポーリア「今度は～日向ぼっことかも良いかもしれませんね～♪」

ワレモコウ「モコウはいつだって、ご主人とボードゲームをするのを断じて楽しみにしている？」

アイビー「それか、今度は花騎士ごっこよ！ 私がサクラさん役を……いや、もしサクラさんにも参加していただけるなら実際にサクラさんに……！」

サクラ「あらあら、混じってもいいのかしら～？」

アイビー「勿論です！ あぁ、サクラさんのサクラさん役が見れるなんて……！ 感激です！」

サンカクサボテン「それ、結局いつものサクラさんじゃないかしら……？」

タチバナ「いや、まずは本でいろんな知識に触れてからでしょう。劇なんかも良い教養になるかもしれませんね」

アイビー「はぁ？ タチバナさんはサクラさんのサクラさん役を見たくないの！？」

タチバナ「いや、だからそれ、結局サクラさんじゃないですか。生で散々見てる訳ですし……」

アイビー「……こうなれば、団長さんに明日また直接聞くしかないわね！」

アイビー「だから団長さん、また明日会いましょう！ 約束よ！」

アブラナ「それより、あたしは団長に何か奢ってもらわなきゃ気が済まないんだけど……」

ギンラン「みんな、団長さんとしたい事がたくさんありますね」

ギンラン「だから心配しなくても、明日もみんなとたくさん会えますよ」

ラナンキュラス「そうそう！ それに、みんなが忙しい時だって、私達が構ってもらいに行っちゃうから」

デルフィニウム「そんな心配をする必要は尚更ないのだ！ 団長は一人ではなぁい！」

シャクヤク「その通りです！ だから団長さん、そんなに俯かないで、前を向いてください」

シャクヤク「きっと、明日の私は、今日より更に背筋が伸ばせてると思います。それをしっかり見てくださいね？」

ウサギノオ「だから、団長さん」

ウサギノオ「……また明日うさ！」ﾆｺｯ

ショタ団長「……うん！」

ショタ団長「みんな、バイバイ……！」ﾌﾘﾌﾘ

ナズナ「さぁ、団長さま。行きましょう！」

ナズナ「皆さん、今日は本当にありがとうございました！」

そして、団長とナズナはみんなに手を振りながら帰っていった……。

――――――
団長の寝室


ショタ団長「それでね、その時にウサギノオお姉ちゃんがね」

ナズナ「ふむふむ、流石ウサギノオさん……いつ悪戯をセットしているのかいつも気になってましたが、流石の手口ですね……」

入浴や洗面を終え、子供用パジャマ（サフランお手製）を着て、団長はベッドに入っている。

すぐ傍にはナズナがいて、寝る前に団長の、今日のお話に付き合っていた。

ショタ団長「あふぅ……」ﾌﾜｧ

ナズナ「団長さま。そろそろ無理せずに寝た方がいいのでは？」

ショタ団長「うん……」ｺﾞｼｺﾞｼ

ショタ団長「あのね、ナズナさん」

ナズナ「どうしました？」

ショタ団長「今日ね、とってもたのしくて」

ショタ団長「だからね、また明日みんなと―――」

ナズナ「……団長さま？」

ショタ団長「ｽｩ……ｽｩ……」ｽﾔｽﾔ

ナズナ「……寝ちゃったみたいですね」

ナズナ「……大丈夫ですよ、団長さま。花騎士のみんなは、あなたの事をいつでも待ってます」

ナズナ「だから、安心してくださいね」ｸｽｯ

ナズナ「……さて、イエローチューリップさんによれば明日朝起きたときには大人に戻ってるらしいです……が……」

ナズナ（今思ったけど、団長さまに、このまま子供用パジャマを着せていても良いのでしょうか！？）

ナズナ（大人に戻る時につっかえちゃったり、それで体を痛めちゃったりとか……）

ナズナ（やはり、脱がせておいた方が良いのでしょうか？）

ナズナ（でも、さっきの入浴の時にも一緒に入るのは恥ずかしがって拒否されましたし、勝手に脱がせたら団長さまに悪いかも……）

ナズナ（あぁぁどうしましょう……！ 大ピンチです！）

――――――
翌日

昼頃の執務室



ﾄﾝﾄﾝ

ナズナ「失礼します！ すみません、ちょっと遅くなってしまって！」ｶﾞﾁｬ

団長「いや、大丈夫です！ それよりナズナさん、ちょっと聞きたいことがあって……」

ナズナ「昨日の事ですか？ って、ちょっと団長さま、疲れてそうな顔してますね……？」

団長「俺の知らない所で起きた乱闘騒ぎによる宿舎の一部損壊の修理見積もりで頭を抱えてる所でした……」

ナズナ「あっ……あれですね……」

団長「それ以外にも、ちょっと朝からみんなの様子がおかしくて」

団長「朝起きて朝食に行ったら、ナイトフロックスとスノードロップ、サフランやアルストロメリアに全力で謝られるし」

団長「食事中、アスターに俺が昔どういう子供で、どのように騎士団長の道を歩んだか根掘り葉掘り聞かれるし」

団長「その後廊下を歩いてたら、『団長さん助けて！』って突然ハツユキソウに泣きつかれて、何かと思ったら鬼のような形相のスズランが追いかけてきてて、なだめるのに苦労したし……」

団長「その後、アイビーとタチバナに何故か子育ての方針について相談されるし……」

団長「返答に困ってたら、ラナンキュラスとデルフィニウムとシャクヤクが来て、いつも以上に絡まれました」

団長「正確にはラナンキュラスとデルフィニウムが凄い絡んできて、シャクヤクが困ってた感じですが……」

団長「とりあえず仕事があるから脱出したら、アブラナに突然お菓子をせがまれたり、ワレモコウにボードゲーム勝負を挑まれたり、セントポーリアに日向ぼっこに誘われたり……」

団長「勿論、みんなに声をかけられたり、話すのが嫌と言う訳ではないですよ？」

団長「ただ、今日はやけにみんなが絡んできて、執務室に辿りつくのも大変だったんですよね。というかスズランを宥めるのに神経使いました」

団長「それで、いざ執務室で仕事に取りかかったら謎の見積書に頭を抱えていたところです……」

ナズナ「何と言うか……お疲れ様でした……」

団長「どうやら、記憶がない昨日の事が関係してるっぽいんですが、みんな断片的にしか教えてくれないんですよね」

団長「俺が子供になって、みんなといたとか……」

団長「子供になったっていうのは最初は半信半疑でしたが、イエローチューリップに何か飲まされて、それから一日分記憶が抜け落ちてたり、サクラにも教えてもらった事で信じました」

団長「それで……ナズナさんにはその子供になっていた昨日の事を詳しく教えてほしいんです」

ナズナ「えっ、私にですか？」

団長「サクラによれば、昨日最後に俺といたのはナズナさんだとか」

ナズナ「いや、確かに最後に一緒にいたのは私ですが、団長さんの一日を全て把握しているわけでは……」

ナズナ「寝る前に聞かされてた内容だけですよ？」

団長「そうそう。それで、もう一つナズナさんに聞きたい事があって……」

団長「俺、今日起きたときに裸だったんですけど、もしかしてナズナさんに服の面倒を見てもらっていたのでは……」

ナズナ「なっ！？ ふっ、服！？///」

団長「いや、だって気になるじゃないですか！」

団長「俺が知らない間に良く知る女性に服を脱がされたり裸を見られたりしてるのは結構恥ずかしいものがありますよ！」

団長「増してや、子供の体ですよ！？ 子供の裸のお世話をされていたって事ですよ！？」

ナズナ「お、大人の体なら良いって問題じゃないですよぅ！///」ｶｵﾏｯｶ

ナズナ「って、裸のお世話って変な言い方しないでください！ セクハラですよ！？///」

団長「その反応、やっぱり見られてたんですね！？」

ナズナ「子供じゃないですかぁ！！！　もう！」

言い争っていると、不意に執務室のドアがノックされ、開かれた。

ススキ「失礼しま～す。って、何だか騒がしいね」

ウサギノオ「何やってるうさ？」

団長「おっ、どうした二人とも？」

ウサギノオ「団長さん！ 元に戻ったうさね！」

ススキ「うん、何だか見慣れてる姿のはずなのに、凄く懐かしい気がするよ！」

団長「その反応、もしかして子供だった時の俺の事を知ってるのか？」

ウサギノオ「そううさ！ それで今日は、大人に戻ったお祝いとしてプレゼントを持ってきたうさ！」

そういって、ウサギノオは装飾が施された綺麗な箱を差し出す。

ススキ「じゃーん！」ﾊﾟｶｯ

そして、横からススキがその箱の蓋を開くと、中には可愛い容器に入ったプリンがいくつか並べられていた。

団長「おぉ、プリンか。ちょうど疲れて甘い物が欲しかった……って、ちょっと待て。これ悪戯じゃないよな？」

ウサギノオ「えぇ～、ひどい！ ちゃんとしたプリンうさ！」

ススキ「元に戻れたと思ってお祝いの気持ちで持ってきたのに、そんなひどい事を言われたら泣いちゃうよ……しくしく」

団長「いや、嘘泣きじゃないか。しくしくって思いっきり言ってるし」

ウサギノオ「でも、本当にただのプリンうさよ？ ほら！」

ウサギノオは机の上にプリンの箱を置くと、一つ手に取って、一緒に入っていた使い捨てスプーンを使って一口。

ウサギノオ「うん、甘くて美味しいうさ！」

ススキ「ウサギノオだけだと団長さんも信じないだろうから、ナズナさんも一口どうぞ！」

ナズナ「えっ、私ですか！？ むむっ、結構勇気いりますね……」

ウサギノオ「大丈夫、安心していいうさ！」

ナズナ「それでは一つだけ……」

ナズナは箱から一つプリンを取り、同じように一口食べる。

ナズナ「あっ、本当ですね。甘くて美味しいです」

ススキ「でしょ！」

ススキ「ほら、団長さんも安心して食べちゃって！」

ウサギノオ「折角持ってきたんだから、今ここで食べてほしいうさ！」

団長「むっ、そういう事なら……」

そうして、団長も一つプリンを手に取る。

団長（ナズナさんも大丈夫だったんだし、本当に普通のプリンなのか？）ﾍﾟﾘｯ ﾊﾟｸｯ

団長「！！！？！？！？？！？？！？！？！？」

団長「かっっっっっっらぁぁぁ！！！！！！！！？？？？」

ウサギノオ「きゅほーい！」

ススキ「悪戯だーいせいこーう♪」

ナズナ「だ、団長さま！？」

団長「水、水……！」ｺﾞｸｯ

団長「な、何だこれは！？ どうしてプリンが辛いんだ！？ 形容しがたい味だったぞ！？」

ウサギノオ「そのプリンには一つ当たりが入ってたうさ！ 特製の激辛プリンが！」

ススキ「団長さんなら、当たりを引いてくれると信じてたよ！」

ウサギノオ「それに、団長さんはこういう時に真ん中から取りやすいうさ。ふっふっふ、団長さんの癖は既に御見通し！」

団長「ナズナさんに当たったらどうするつもりだったんだ！？」

ウサギノオ「まぁ……それはそれで、ナズナには悪戯成功うさ？」

団長「全くお前たちは……！」

ウサギノオ「……うん、いつも通りの団長さんうさ！」

ススキ「良かったね、ウサギノオ！」

団長「何だ？ どういう事だ？」

ウサギノオ「なーんでもないうさよー♪」

ススキ「いつも通りの、悪戯のし甲斐がある団長さんで安心したって事だよ♪」

団長「何だそれは、何か嫌な安心のされ方だな……」

ウサギノオ「ね、団長さん！」

ウサギノオ「これからも、た～くさん悪戯するから！」

ススキ「この先もずっと、一杯い～っぱい！ 遊ぼうね！」



　　　　　～悪戯魔王軍の大作戦編　おわり～

どこの分岐からやり直しますか？


1.
>>35 スズランやオオオニバス、ラベンダーが争い始めそうな所から

『状況に耐え切れず泣き出してしまう。団長の精神はボロボロだ！』

団長を怖がらせてしまったスズランやオオオニバス、ラベンダー。何とか団長からの信頼を取り戻そうと、力を合わせたり、やっぱりダメで喧嘩したりしながら、みんなで頑張る√です。
少しだけ独占欲が強かったり、愛が重かったり、ちょっとメンヘラ気味な花騎士が中心に登場する√です。

3ルートの中では、一番短めです。


登場花騎士：スズラン・オオオニバス・ラベンダー・ディプラデニアなど



2.
>>63 ウサギノオ達と一緒に悪戯するか執務室へ行くか決めるところから

『執務室まで送ってもらう』

バナナオーシャンで、ネリネと共に『スワンボートレース公開練習会』で過ごす√。
ちょっと泣き虫だったり、お世話してくれて癒してくれたり、自分を卑下する癖がある花騎士が中心に登場する√です。

3ルートのうち、一番長いルートです。


登場花騎士：ネリネ・プルメリア・エニシダなど



直下の安価を採用します。なお、しばらく待ってこなかった場合は、『状況に耐え切れず泣き出してしまう。団長の精神はボロボロだ！』ルートとなります。

1.
『状況に耐え切れず泣き出してしまう』


今回はここまで。次から>>35まで戻って、新ルートを始めます。

また近いうちに続きを書きますね。

>>35から
1.『状況に耐え切れず泣き出してしまう』


ショタ団長「うっ……うぅぅぅ」ｼﾞﾜｯ

ショタ団長「うわぁぁぁぁぁぁん！ げんがじぢゃだめぇぇ！」ﾋﾞｪｪｪｪｪ

スズラン・ラベンダー「団長さん！？」

オオオニバス「あら……これは……困ったわね」ｵﾛｵﾛ

スズラン「あなた達、よくも団長さんを泣かせて！」ｷｯ

ラベンダー「はぁ！？ あんたが威圧したからでしょ！？」

ショタ団長「ひぅ！？」ﾋﾞｸｯ!

オオオニバス「やめなさい、二人とも」

オオオニバス「ごめんなさい団長さん……私、団長さんを泣かせたかった訳じゃないんです……」

ショタ団長「うぅぅ、げんがじぢゃだめ……ごろずのはだめなんだよぅ……うえぇぇえんん！」ｼｸｼｸ

オオオニバス「分かりました。もう喧嘩しませんから……」ｶﾞｻｯ

オオオニバスは団長をあやしながら、握っていた斧をしまう。

オオオニバス「ほら、怖い物も、もうありません。安心してください」

ラベンダー「団長さん！ ほら、私も怖い物はもうありませんよ！ ね？ ね？」ｱｾｱｾ

それを見たラベンダーも慌てて魔導書を閉じ、団長へと駆け寄る。

ラベンダー「スズラン！ あんたもその長物隠すか捨てるかしないと団長さんが泣き止まないでしょうが！」

スズラン「い、言われなくても分かってるわよ！」

スズランはそういって、杖を背中の後ろへもっていく。

ラベンダー「全っっっっっっっっ然隠せてないわよ！ ほんっと、あんたの杖は無駄にでかいんだから！」

ラベンダー「あんたのその要らない胸と一緒にどこかに捨ててくれば？」

スズラン「何、あなた自分の胸が小さいからって僻んでるの？ うわぁ……お子様……」

ラベンダー「」ｶﾁﾝ

ラベンダー「やっぱりあんただけは殺す……！」

ショタ団長「！！？？」ﾋﾞｸﾋﾞｸ

ショタ団長「うぇぇぇぇええん……やだぁぁぁ」ｸﾞｽｸﾞｽ

スズラン「あぁ、団長さん！？ 本当、あなた何やってるのよ！！！？？？」

ラベンダー「その言葉、そっくりそのままお返しするわ！」

オオオニバス「二人とも本当にいい加減にしなさい。潰し切られたいの？」

ディプラデニア「………………何やってるんですか、あなた達は」ﾄｺﾄｺ

オオオニバス「あら、ディプラデニアさん」

ラベンダー「何しに来たのよ。野次馬？」

ディプラデニア「野次馬と言ったらまぁそうかもしれないけど……子供の泣き声が聞こえたから様子を見に来たんですよ」

ディプラデニア「ほら、あなた達がそんな事ばっかしてるから、また泣いちゃってるじゃないですか」

スズラン「それは、この女が……！」

ディプラデニア「ストップです。あなた達三人が集まって、大体何をやって泣いてしまったか何て容易に想像がつきます」

ディプラデニア「多分、その子は噂の小さくなった団長さんですよね？ それで、三人で取りあった結果泣かせたと」

ディプラデニア「……団長さんの事を想うなら、今はまず一回停戦。良いですね？」

スズラン「ぐっ……あなたに諭される日が来るとは思わなかったわ」

スズラン「仕方ないわね。それじゃあ――――」

ディプラデニア「ここで『私が見るから、面倒起こさないようにあなた達は帰りなさい』とか言うと、また揉めるからダメ」

スズラン「うぐっ……」

ディプラデニア「今は全員で行動。それでいて喧嘩はしない。分かりましたか？」

スズラン「……団長さんの為なら、分かったわ」

ラベンダー「そういう事。無駄な挑発とかしちゃダメだからね？ その無駄乳みたいに」

スズラン「そうね、あなたの胸並に減らしておくわね」

ショタ団長「うぅ……」

ラベンダー「あっ、ちっ、違うの団長さん！ これは……そう、褒め合ってるんです！ おっぱいが大きくて良いですねって！」

スズラン「そうです団長さん！ おっぱいが小さくて良いですねって褒めてるんですよ！」

ラベンダー「殺す」

ショタ団長「ううううう……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

ディプラデニア「ハァ……何回繰り返すつもりですか……」

ディプラデニア「……とりあえず場所を移した方が良いかもしれません。団長さんを落ち着かせなきゃいけませんし、ここは目立ちます」

ディプラデニア「私の部屋が近いので、そこに行きますか？」

オオオニバス「あら、良いの？」

ディプラデニア「正直に言うと、放っておいて帰りたいです。自分から面倒事に首を突っ込んでる気がします」

ディプラデニア「ですが、あなた達だけでは絶対に収拾がつきませんし……その中に団長さんを置いて、見捨てる訳にもいきませんしね……」

ディプラデニア「団長さん。歩けますか？」

ショタ団長「ｸﾞｽｯ……」ｺｸｯ

ディプラデニア「うん、強い子です」

ディプラデニア「ほら、みんなも行きますよ」

オオオニバス「助かるわ。ほら、二人とも睨み合ってないで、今はディプラデニアさんの厚意に甘えるわよ」

ラベンダー「…………今度絶対殺すから」ﾄｺﾄｺ

スズラン「…………ﾁｯ」ﾄｺﾄｺ




――――――
ランプランサス「……隠れて団長を連れ出すチャンスを窺ってたら、みんな喧嘩する雰囲気じゃなくなっちゃって、どっか行っちゃった……」ｺｿｯ

ランプランサス「ど、どうしよう……このままだと、団長と二人っきりでイチャイチャする計画が……！」

ランプランサス「……そうだ！ 頭のおかしい人達には、頭のおかしい人をぶつければいいんだよ！」

ランプランサス「そうして場をカオスにして、その隙に団長を連れ出そう！ クソ面倒くさいけど、私と団長の夢の為だもんね！」

ランプランサス「そうと決まれば早速……！」

今日はここまで。今回の投下、短くてごめんなさい。書き溜める時間がなかった……。

また近いうちに続きを投下しますね。

――――――
ディプラデニアの部屋


ショタ団長「ｸﾞｽｯ……」

ディプラデニア「中々泣き止みませんね……」

オオオニバス「まぁ、最も……」

スズラン「……」

ラベンダー「……」

オオオニバス「……場の雰囲気が険悪なままだからよね」

ディプラデニア「口喧嘩こそしなくなりましたが、まだお互い牽制心が残ってますしね……」

オオオニバス「根本的に二人とも相性が悪すぎるのよ」

ディプラデニア「いや、それはあなたもだと思いますが……」

ディプラデニア「……今思ったのですが、このまま大人に戻ったらどうなるんでしょう」

スズラン・ラベンダー「」ﾋﾟｸｯ

オオオニバス「どういう事？」

ディプラデニア「団長さんが大人に戻った時に、今の状態の事を覚えているのか、それとも全て忘れてしまうんでしょうか……」

ディプラデニア「もし記憶が残ったり、小さい間の事が戻った時に影響するなら……」

オオオニバス「……ちょっと不味いわね」

ラベンダー「ど、どういう事よ！？」

オオオニバス「団長さん、怯えているもの。このまま怖いお姉さん達と記憶したまま大人に戻ったら、最悪私達の事が嫌いになってる可能性すらあるわ」

スズラン「そんな！？ 団長さんに嫌われた世界なんて生きていける自信がないわ……！」

スズラン「団長さん、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……嫌いにならないでください、お願い……！」ｶﾞﾊﾞｯ ｷﾞｭｩｩ

ショタ団長「わっ！」

ラベンダー「だ、団長さんに嫌われるなんて絶対に嫌よ！」

ラベンダー「団長さん、私達どうすればいいの……！？」ｷﾞｭｯ

ショタ団長「えっと……あの……その……」

ショタ団長「……ケンカしないでくれたら僕は……」

スズラン「分かりました！ もう絶対に喧嘩しません！」

スズラン「そうだ！ 団長さん、これからどこかに一緒にお出かけしましょう！」

オオオニバス「待って、スズランさん。ここは共同戦線を張りましょう」

スズラン「は？」

オオオニバス「今日は協力しましょうって事よ。誰か一人が独占しようとして、争いが生まれ、団長さんが私達全員に怯える事になってるもの」

ディプラデニア（いや、私は大丈夫じゃないですか？）

オオオニバス「だから、これ以上無駄に争って団長さんからの好感度を下げるより、今日はみんなで団長さんを楽しませて、汚名返上に努めた方が良いと思わない？」

スズラン「誰のせいでっ――――ってダメね。団長さんと約束したもの。もう今日は喧嘩はしないわ」

スズラン「こうなった以上、今日はしょうがないわね。一緒に行きましょう」

ラベンダー「私も賛成よ。『今日』は協力ね」

スズラン「えぇ、『今日』は」

オオオニバス「ディプラデニアさんはどうするの？」

ディプラデニア「……当初言った通り、あなた達だけでは不安です。監視もかねて、私もついて行きます」

ディプラデニア「本当はこういうタイプじゃないんですが……巻き込まれているのが団長さんである以上、仕方ありません」

オオオニバス「団長さんも、私達と一緒にお出かけで良いですか？ やっぱり嫌なら……」

ショタ団長「……ううん。お姉ちゃん達が仲良くしてくれるなら、行きたい……」

オオオニバス「……ありがとうございます、団長さん。決まりですね」

スズラン（……かといって、この人達は本当に危ない。出来れば団長さんに近付けたくない……）

スズラン（険悪な雰囲気にならず、何とか団長さんと二人っきりになる方法……考えるのよスズラン……）

ラベンダー（こんな変態達に染められたりしないよう、私がしっかり団長さんを守らないと……！ でも、喧嘩はしちゃダメ……それなら、自然と二人っきりになれるように……）

オオオニバス（今日のお出かけで、他の娘に団長さんがなびかないようにだけは注意しないと……）

オオオニバス（もし、団長さんが今回のお出かけで、私以外のこの中の誰かと仲良くなって、それが大人に戻った時に影響するとしたら……）

オオオニバス（最終的に私の元に戻ってきてくれればいいだけですけど、それまで団長さんの腕を……）

ディプラデニア（……とか考えてそうですよね、この三人。やっぱり気が抜けません。私がしっかり監視しないと……）

ディプラデニア（うぅ……胃が痛いです……。助けてくださいプルメリア……どうしてこういう時に限ってプルメリアはバナナオーシャンにお出かけなんですか……）

オオオニバス「それで団長さん。どこかお出かけしたい所はありますか？」

ショタ団長「えっと……お姉ちゃん達の好きな所でいいよ……？」

ラベンダー「団長さん、遠慮しないでどこでも良いんですよ？ 私達はどこだってついて行きますから。団長さんの好きな場所や、好きな物がある所に行きましょう？」

スズラン「昔の団長さんは控えめで、自分からしたい事を言うのは苦手だったみたいだから……」

ラベンダー「いや、あんた何でナチュラルに昔の団長さんの、そんな事まで知ってるのよ……」

スズラン「愛する人の事は何でも知りたくなるものでしょ？」

オオオニバス「それで、団長さんは昔は何が好きだったの？」

スズラン「団長さんの好きな物は乗り物全般。今と変わらないわね」

スズラン「昔はお気に入りの船のおもちゃもあったみたい」

ラベンダー「乗り物？ それならクジラ艇でも強奪する？」

オオオニバス「良いわね」

ディプラデニア「良くないです。何でそう血気盛んなんですか。もうちょっと穏やかになってください」

ディプラデニア「流石に国際指名手配犯だけは勘弁ですよ……」

スズラン「私は団長さんの為なら世界を敵にする覚悟だってあるわよ」

ディプラデニア「だからと言って、積極的に世界を敵に回そうとしないでください！」

ディプラデニア「事情を説明して中を見学は……あれでも一応機密の塊ですし、今の団長さんを部外者に数えるか否かで揉めそうですね」

ディプラデニア「乗り物のおもちゃを買いに、みんなで街まで行ってみますか？」

ディプラデニア「その後は、ぶらぶらと散策して、団長さんの興味を惹くお店に入ってみるとか」

ディプラデニア「ブロッサムヒルの街はスプリングガーデンの都市の中でも最大級ですし、団長さんが気に入るお店もきっとあるかと」

ディプラデニア「どうでしょう？ 団長さん」

ショタ団長「いいの……？」

ディプラデニア「勿論です」

ショタ団長「でも……」

ディプラデニア「子供が何を遠慮しているんですか……。ここにいるお姉ちゃん達はみんな団長さんに何かしてあげるのが大好きなお姉ちゃん達なんです」

ディプラデニア「きっとどんなものでも買ってくれますよ？」

ショタ団長「えっと……じゃあ、海賊船のおもちゃが欲しい！ 押すと弾出るの、ずっと欲しかったの！」

オオオニバス「はい、ではそのおもちゃを探しに行きましょうか」

ラベンダー「おもちゃじゃなくたって、団長さんが望むのなら、本物の海賊船だって手に入れてきますよ！ ちゃんと弾も出ますし！」

ディプラデニア「海賊だからって敵に回して良い訳じゃありません。おもちゃにしてください」

スズラン「それじゃ、急いだ方が良いわね」

ディプラデニア「そうですね。あまりゆっくりしてたら時間が……」

オオオニバス「それもあるけど……スズランさんが追われてる立場だから、早く移動しないと、ここを勘付かれて面倒くさい事になるわね」

ディプラデニア「……………………は？」

――――――
騎士団　施設外への秘密の抜け道


ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ

スズラン「ここの先を抜ければ、街へ向かう道へと抜けるわ」

ディプラデニア「こんな道があったんですね。というか思ったよりすんなりとたどり着けましたね」

ディプラデニア「まさかスニーキングごっこをする羽目になるとは思いませんでしたが……」

ショタ団長「かくれんぼ上手く出来た……！」ｷﾗｷﾗ

オオオニバス「団長さんが楽しんでくれてるみたいで、結果的に良かったんじゃないかしら」

ラベンダー「言っておくけど……万が一見つかった時には、知らなかったで無関係を貫き通させてもらうわよ」

スズラン「今日は一蓮托生なんでしょ？」

ラベンダー「つまり何とか『今日は』見つからないようにすればいい訳ね」

オオオニバス「ここまで来たら、帰るまでは大丈夫じゃないかしら」

？？？「あらあら、お揃いねぇ」

スズラン「―――っ！」

ベロニカ「はぁ～い♪ 誘拐犯のみなさん♪」

ラベンダー「全滅丸の女！！！」

オオオニバス「意外と普通にレースしてたわよね、全滅丸」

ディプラデニア「正直ちょっと拍子抜けでしたね」

スズラン「また面倒くさい女が……」

ショタ団長「…………だれ？」ｻｻｯ ｼﾞｯ……

ランプランサス「凄い、本当に来た！」

スズラン「何でこの道を知ってるのかしら」

ベロニカ「こんな抜け出すのに最適で面白そうな道、私が知らない訳ないじゃない」

ベロニカ「あなた達がもし外へ出るとしたら、絶対にここを通るかな～って」

ベロニカ「で、その子が誘拐された団長……へぇ」ｼﾞｯ

ショタ団長「！！」ｿﾞｸｯ

ショタ団長（な、何かこわい……！）

ベロニカ「大人の団長とはまた違う、良い声で鳴きそうな子ね～♪ 誘拐したくなるのも分かるわぁ」

スズラン「……団長さん、私の後ろから出ないでくださいね」

ショタ団長「う、うん……」

ランプランサス（よし、この調子で争ってくれれば……）

オオオニバス「……ところでベロニカさん。何をしに来たの？」

ベロニカ「誘拐犯を捕まえてくれって頼まれたのよ。困った人の悩みを聞くのも、修道女の仕事じゃない？」

ベロニカ「何より面白そうじゃない。今、騎士団中大騒ぎになってるわよ」

オオオニバス「成程ね。それなら一つ提案があるのだけど……」

ベロニカ「何かしらぁ？」

オオオニバス「私達の側に立った方が、面白そうだと思わない？」

ランプランサス「は？」

ベロニカ「どういう事かしら？」

オオオニバス「ここで私達を捕まえるより、このまま通した方があなたにとって面白い事になりそうじゃない？ だってこの面子よ？」

ディプラデニア（自分で言います？）

ベロニカ「……確かにねぇ。あなた達を捕まえて団長さんを戻したら、そこで終わっちゃうものね」

ベロニカ「正直、それじゃあつまらないわね」

ランプランサス「ちょ、ちょっと！」

ベロニカ「それじゃあ、通したら私も一緒に着いて行って、団長の苦悶の表情鑑賞でもしていいのかしら？」

ショタ団長「ひぇ……」

スズラン「こいつ……団長さんを怖がらせて……！」ｷｯ

ラベンダー「…………」（無言で魔導書を広げる）

オオオニバス「まぁ待って」

ラベンダー「は？ もしかして連れていくの？ 正直こいつは絶対にお断りよ！」

ディプラデニア「私も、この人はどうかと……」

ランプランサス「そうだよ！ やっぱり争って押し通らなきゃダメだって！」

ベロニカ「あらあら、みんな酷いわぁ」

オオオニバス「ベロニカさん。お願いがあるのだけれど……騎士団の騒ぎを静めてきてくれない？」

ベロニカ「それ、私に何の得があるのかしら？」

オオオニバス「そうね……このカメラであなたが望む団長さんの姿や、何かあった時に写真を撮っておいてあげる」ｽｯ

オオオニバス「それ以外なら……死なない程度に切断する時のコツとか教えてあげてもいいわ」

ベロニカ「へぇ、カメラはともかくとして、切断についてくれるのは良いわね。部位を切断するなら、あなたが一番上手いもの」

オオオニバス「後は私がもし団長さんの体を****する時は―――」ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ

ベロニカ「…………ふぅん」ﾆﾔｯ

ショタ団長「な、何だか聞こえないけど凄い怖い話をしてる気がするよぅ……」

スズラン「やっぱり、団長さんは私が守らないと……！」

オオオニバス「心外ね。ちゃんと痛くないようにするわ」

ベロニカ「そうよ、痛くするだけが愉悦じゃないわ♪」

ラベンダー「意気投合してないでよ！ 何か怖いから！」

ベロニカ「……さ、みんな通っていいわよ♪ 話は私がつけておくわぁ」

ランプランサス「はぁ！！！！？？？？ 私のお願いは！？」

ベロニカ「一度っきりの人生、面白い事をやった方がいいわ。ここで捕まえちゃったらつまらないじゃない」

ベロニカ「帰ってきた時には警戒状態も解除されてるようにするから、問題なく帰ってこれるはずよ。その代わり、ちゃんと帰ってきてからも『楽しい事』しなさいね？」

オオオニバス「約束するわ」

ランプランサス「そんな勝手に……！」

ベロニカ「何か文句あるかしら？」

ランプランサス「ひっ……」

ベロニカ「ついでに、ちょっといろんな所に根回しするけど手伝ってね♪」

ランプランサス「な、何でそんな事……」

ベロニカ「良 い で し ょ ？」

ランプランサス「ひぅ！」

ベロニカ（どっちにしろ、ここで騎士団に身柄を引き渡すつもりはなかったものね）

ベロニカ（それに、ランプランサスちゃんの裏切られて悲しむ顔が見たいもの）

ベロニカ（折角私を頼ってきたのに可哀想。場がごちゃごちゃになった隙に団長を連れ出すのを狙っていたんでしょうけど、最悪の結果になって本当に可哀想♪ うふふふふ♪）

ベロニカ（はぁぁ……その顔、本当にたまらないわぁ……♪ この調子で、今日はコキ使ってあげようかしら♪）

ランプランサス（ほ、本当に何でこんなことになっちゃったの！？ とんだ人選ミスだよぅ……！）

ディプラデニア（凄い可哀想な事になってる気がしますが……まぁ黙っておきましょう。面倒くさいですし）

ベロニカ「さ～あ♪ 地獄のツアーにしゅっぱ～つ♪」

ランプランサス「ひぇぇぇ、助けて団長～～！」ｽﾞﾙｽﾞﾙ

ショタ団長「助けなくていいの……？」

ディプラデニア「あれはああいうプレイなんです。気にしたらダメです。悦んでるんですよ」

ショタ団長「プレイってなに……？」

ランプランサス「そんな訳ないでしょうぅぅぅう、きゃあ、待ってちょっとスカートめくれ―――」ｽﾞﾙｽﾞﾙ

オオオニバス「…………さ、みんな行くわよ」

ラベンダー「あの女を言いくるめたのは素直に褒めてあげるけど、団長さんに変な事は絶対にさせないから」

ラベンダー「停戦は今日だけって事、覚えておきなさい」

オオオニバス「うふふ」