両義式「秋隆!秋隆は居ますか!?」 (57)
秋隆「はっ、お嬢様!御用でしょうか?」シュタ
式「大変です、恋をしました」
秋隆「なんと、してお相手は?」
式「先ほど散歩の途中、雪の降る町を眺めていたら、黒ずくめの方が声を掛けてきたのです」
秋隆「いかように?」
式「『こんばんは』と、あの瞬間間違いなく二人は恋に落ちたのです」
秋隆「二人、といいますと相手の方も式お嬢様のことを?」
式「間違いありません」キリッ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1486444278
秋隆「両思いとは・・・おめでとうございます」
式「しかし二人は出会ったばかり、お互いのことをこれからもっとよく知っていかなければなりません」
秋隆「おっしゃるとおりです」
式「さしあたっては、彼の名前、家族構成、住所、学校等々、可能な限り調べ上げなさい」
時間を頂けますでしょうか?」
式「明日まででかまいません」
秋隆「はっ!もったいなくも寛大なお言葉!直ちにかかります」
式「下がってかまいません」
秋隆「お休みなさいませ」フカブカ
―翌日朝―
式「秋隆!秋隆は居ますか!?」パンパン
秋隆「御前に」シュタ
式「件の調査はどうなっていますか?」
秋隆「こちらにレポートに纏めてあります」サッ
式「ふむ・・・」パラパラ
式「家族は両親と妹が一人、ああ叔父に警官が、本籍地に誕生日、周りからの評価は『平凡』『目立たない』ですか、ふむふむ、非行補導歴はなし、秩序や一般常識を好む、なるほど、趣味嗜好等に少々抜けがありますが・・・」
秋隆「申し訳ございません、すべてはこの秋隆の不徳のいたすところ、処罰はいかようにでも」
式「いえ、誰にでも限界はあります。それらは一週間以内でかまいません、よくやってくれました」
秋隆「ありがたき幸せでございます!」
式「彼の名前は黒桐幹也ですか、アヘン中毒で死んだフランスの詩人みたいな、よい名前ですね」
秋隆「おっしゃるとおりです、ゆくゆくはお嬢様は黒桐式となられるわけですな」
式「急ぎすぎです秋隆」
秋隆「はっ!申し訳ありません!」
式「両義幹也という選択肢もあります」
秋隆「おっしゃるとおりでございます」
式「彼が両義姓になれば私のものという感じで、いやしかしあちらの姓に入るのも彼のものという感じで捨てがたい」ブツブツ
秋隆「恐れながらお嬢様、まずは距離を縮めることが寛容かと」
式「そのとおりです!彼の学校は・・・まずは高校で偶然同じクラスで再会する。といったところですか」
秋隆「すでに同じクラスになるよう手配してあります」
式「さすがです秋隆」
秋隆「つきましてお嬢様には学校で会った際は、黒桐様とは初対面のように接して頂きますよう」
式「何を言っているのですか?私と彼はもう出会っていて両思いなのですよ?」パァドゥン?
恐れながらお嬢様はこれが初恋、まだまだ恋の何たるカを分かっておられません」
式「・・・私になにか教えたいようですね秋隆」
秋隆「僭越ながら、恋とはドラマチックなほうが燃え上がり、成功するのです」
式「雪道で出会っただけでは足りないと、こう言いたいのですか?」
秋隆「ご明察です」
式「では、具体的には私にどうしろと?」
秋隆「まずは二重人格を演じていただきます」
式「二重人格?」
秋隆「男の人格と女の人格です、もちろんそれぞれ話し方や立ち振る舞いも変えていただかなければなりません」
式「」
秋隆「時間が無いこともあり、取り急ぎ女の人格はお嬢様の素のままとし、ギャップを強調するため男の人格は活発で少々攻撃的に設定するのがよろしいかと、細かい設定はおいおいでかまわないかと、普段着は着物で統一しましょう」
式「秋隆、お前が何を言っているのかよく分かりません。世間では恋にそのような事が必要なのですか?」
秋隆「この程度は誰もがやることです。失礼ながら、式お嬢様は恋の手練手管に掛けては素人同然、ここはこの秋隆を信じて頂きたく」
式「・・・信じましょう、お前の言うことなら」
秋隆「では練習も必要なので急ぎ男の人格の基本設定を取り決めましょう、まず男言葉は当然として一人称は『俺』とし、名前は間違ってもいいよう同音で字だけを変え『織』としましょう、明るく少し残酷、軽薄に笑うような感じで・・・」
式「待ちなさい秋隆、学校で初対面のように振舞うということは、昨日会ったのは男の人格ということになるのですか?」
秋隆「いえ、昨日黒桐様と出会った式お嬢様はどちらの人格でもありません」
式「?意味がよく分かりませんが?」
秋隆「そこに関しましては腹案がございますので後々、まずは男人格の演技の練習が必要かと」
式「分かりました、時間がありません厳しく指導しなさい」
秋隆「はっ、ではまず口調から・・・」
―学校―
黒桐「やあこんにちは」
式「あなた・・・誰?」
黒桐「君いつも着物だね」
式「寒くなったら上着を羽織るわ」
黒桐「上着って。赤い革ジャンとか?ww」
黒桐「シンギンザレインン」フンフン
式「///」
秋隆(雨班、勢いはそのままでもう少し静かに降らせろ)
秋隆「これまでのところ順調といってよろしいでしょう」
式「秋隆これどうでしょう?振袖の上から赤い革ジャンって変ではないかしら?」モコモコ
秋隆「・・・大変よくお似合いでございます、しかしながら袖が少々、これからは着物は上から革ジャンを着ても袖がモコッとしないよう特別に仕立てさせます」
式「よきにはからいなさい、ところでお互い好きあっているのですし、そろそろ彼との距離を縮める時期ではないでしょうか?」
秋隆「ごもっともです、そこでそろそろ連続殺人事件が起こることになります」
式「なるほど、私が狙われ、そこを黒桐くんに心配して貰うというわけですか」
秋隆「式お嬢様、残念ながらそれは二流三流の展開です。一流は逆を行きます。つまり式お嬢様には連続殺人事件の容疑者になって頂きます」
式「私が容疑者に?」
秋隆「そうです、そしてお嬢様が犯人ではないと信じ、それを証明しようとする黒桐様と急接近することになるわけです。そうですね、リアリティを出すため男の織様には殺人衝動があるという設定にしましょう」
式「秋隆、すばらしいわ。となると真犯人や事件の背景は今後の展開に大きく影響を与えることになりますね」
秋隆「まさに、特に最終的な展開を左右する真犯人は重要です。できればお嬢様と黒桐様がご両人がご存知の方がよろしいかと」
式「そうですね・・・ああ、この前私に告白してきた、しろ、しら?白なんとかとかいう上級生でいいでしょう、黒桐くんとも面識があった筈です」
秋隆「白なんとか様ですね、よろしいかと横恋慕は王道ですから。しかしながら少々捻りも加えたいかと」
式「詳細は任せます、そういえば黒桐くんの叔父に警官が居ましたね、彼にも協力させなさい」
秋隆「これは気づきませんでした、早速手を回します」
―デート―
式(織)「俺が織で、あいつが式、俺が式の破壊衝動や殺人衝動をつかさどるんだ」
黒桐「え、ちょ」
式(織)「幹也、殺人と殺戮は違うよ」
黒桐「あっ、うん」
首無し死体「」ブシュウウウウ
式「いい夜ね、黒桐くん」
黒桐「」
式「秋隆!ついに幹也くんの家に遊びに行くことになりました!」
秋隆「おめでとうございます」
式「新しい着物でご両親に挨拶をしなくてはなりませんね、そういえば妹さんも帰ってきてるとか」
秋隆「式お嬢様、差し出がましいようですが黒桐様のお宅へは男の織で行って頂きたいかと」
式「しかし、識の態度では家族の方に不興を買う可能性が、ゆくゆくは私の家族になるのですし」
秋隆「実は調査の結果、黒桐様の妹の鮮花様が曲者のようでして」
式「・・・具体的には」
秋隆「どうも実の兄である黒桐様に道ならぬ恋をしているようで」
式「実の兄妹で!?なんと不道徳な!」
秋隆「まさに、ついに現れた最初の恋のライバルというわけですな」
式「ライバル?」イラ
秋隆「もちろん最終的には式お嬢様の義妹となるわけですが」
式「当然です」
秋隆「そこで最初にあえて男の織様で行き、奔放に振舞いつつ黒桐様とイチャイチャすることで鮮花様に格の違いを見せ付けるのです」
式「なるほど」
秋隆「全ての戦いは初撃で8割以上が決まります。恋もまたしかり、初手で出し惜しみをするのは悪手、最大威力の攻撃を最速で叩き込むことがこそが肝要です」
式「義妹にショックを与えるのは気が引けますが、早めに目を覚まさせるのも義姉の務めですか」
秋隆「おっしゃるとおりかと」
式「鮮花がショックで寝込んだようですね」
秋隆「まずは成功といってよろしいかと」
式「鮮花のためとはいえ、義姉として心が痛みます」
秋隆「心中お察しします」
式「しかし、口調や立ち振る舞いの使い分けは疲れます、何とかなりませんか?」
秋隆「では展開をよりドラマッチックにするためこのあたりで織様には死んでいただきましょう」
式「お前のことですから既に考えがあるのでしょう。話しなさい」
秋隆「では、プランは幾つかございますが、まずは黒桐様をおびき出し、ナイフで切り付け殺そうとし、やはり殺せず自殺、その後、しばらく寝たきりというのが基本の流れでいかがでしょう?」
式「寝たきりですか、しかしそれだと幹也くんとその、会えないような」
秋隆「お嬢様、押すだけが恋ではありません。時には引くことも肝要。戦術的撤退により敵の突出を誘い、包囲殲滅するのです。敵陣が伸びきれば兵站線を叩き斬ることも可能です、追撃に浮かれる敵ほど隙だらけなものはありませんから」
式「つまり?」
秋隆「お嬢様が寝たきりになったと想像してください。黒桐様はそんなお嬢様をほおっておきますか?」
式「幹也くんはそのような薄情な人ではありません」
秋隆「まさに、間違いなく毎日のようにお見舞いにいらっしゃるでしょう」
式「なるほど、追撃してくる敵ですか」
秋隆「そこまで来たら後は退路を断つだけです。さすればもはや事は掌を返すより容易いかと」
黒桐「僕は死にたく・・・ない」
ころ
式「私はお前を犯したい」
式(織)「お前を消せないなら、俺が消えるしかない」キキィードーン!!
黒桐「しきーーー!」
―病院―
式「どうでしたか?」
秋隆「よろしかったかと、ではしばらくお嬢様は昏睡ということで」
式「どの位ですか?」
秋隆「それほど待つ必要はありません、ほんの二年ほどです」
式「」
式「二年?二年は長過ぎます!!」
秋隆「お嬢様!!」クワッ
式「は、はい」ビクッ
秋隆「お嬢様は黒桐様を生涯の伴侶とお決めになったのではないのですか!?」
式「その通りですが」
秋隆「それが子供のように待つのが長い短いと、二年がどれほどだというのですか?全ては後の人生を全て黒桐様と過ごすためです!」
式「秋隆、私が間違っていました」
秋隆「お分かりいただけましたか?」
式「ええ、全て貴方の言う通りです。私は良い家臣を持ちました」
秋隆「もったいないお言葉、しかしこの秋隆、主に暴言を吐いた処罰は謹んで受けたく」
式「ではこれからも私を助けなさいそれが貴方への処罰です」キリッ
秋隆「式お嬢様は私ごときにはもったいない主人でございます」ドゲザ
―時は加速する―
式「例の件はどうなっていますか?」
秋隆「ご安心ください、先日、黒桐様が「偶然見た」人形に感銘を受けて作者を探しているそうです」
式「そうですか、では幹也くんの就職先が決まるのももうすぐですか」
秋隆「そのようになるかと存じます」
式「でも高校を中退してよく分からない人形師の事務所で働くなんて、幹也くんがご両親と喧嘩しないといいけど・・・」
秋隆「全くです、もしその結果黒桐さまが勘当同然で家を飛び出し、一人暮らしなどを始めたら一大事です」
―時は加速する―
式「例の件はどうなっていますか?」
秋隆「ご安心ください、先日、黒桐様が「偶然見た」人形に感銘を受けて作者を探しているそうです」
式「そうですか、では幹也くんの就職先が決まるのももうすぐですか」
秋隆「そのようになるかと存じます」
式「でも高校を中退してよく分からない人形師の事務所で働くなんて、幹也くんがご両親と喧嘩しないといいけど・・・」
秋隆「全くです、もしその結果黒桐さまが勘当同然で家を飛び出し、一人暮らしなどを始めたら一大事です」
式「まあ仮の話しを心配しても仕方がありません・・・ああ、私のアパートの方の手配も忘れずに」
秋隆「はっ、既に予想される部屋の候補と近すぎず遠すぎない位置に候補をいくつか抑えてあります」
式「さすがですね、それと意識を取り戻したら女の人格ということでいいのですね?」
秋隆「はい、しかしながらここでその人格の設定をハイブリッドさせたいと思います」
式「つまり?」
秋隆「死んだのは確かに男の人格の識なのですが、これからはあえて常に織の方の言葉遣いをなさってください」
式「女の人格が残っている設定なのですよね?」
秋隆「その通りです、つまり「識を忘れて欲しくないためあえて男らしい言葉遣いをや立ち振る舞いを真似するが内面は乙女」という設定で勝負をかけていただきたいのです」
式「なにやらややこしくなってきました」
秋隆「式お嬢様、男とは愚かなもの。失礼ですが黒桐様も男です。男性的でありながらふと見せる女性性にグッと来るのです」
式「そういうものなのですか、しかし、識の言葉遣いを真似ている理由とかそのような細かい点が幹也くんに伝わるでしょうか?」
秋隆「そのあたりは折を見て「人形使い」の方からさり気なく言ってもらいましょう、せっかく雇ったのですから給料分は働いていただかないと」
式「そうですね、ところで私もその事務所で働くことに説得力がある特殊能力が必要だと思うのですが」
秋隆「おっしゃるとおりです」
式「そこで考えたのですが、死に掛けたという設定なのですから、『死が見える』というのはどうでしょう?」
秋隆「お嬢様・・・」
式「もちろん見えるだけではなく、それをなぞることで何でも『[ピーーー]』事が出来るという設定で、近接戦闘では無敵に近いですが、弱点としては遠くから攻撃されると反撃手段が限られる事ですね」
秋隆「ご立派に・・・なられました」ウルッ
式「秋隆、お前のおかげです。感謝しています」ニコッ
秋隆「滅相もない、全てお嬢様の才能と怠ること無い修練による当然の結果」
式「いえ、まだまだです」
秋隆「となればやはり特殊な能力がある敵が必要かと」
式「任せます、手はずが整ったら奇跡的に回復するということで」
秋隆「御意に」
―事務所―
橙子「式はお前には織を忘れて欲しくないんだよ、可愛いじゃないか」
黒桐「そうだったんですか、では僕は今日はこれで」バタン
秋隆「ご苦労様です、今日の報酬です」シュタッ
橙子「ありがとうございます―!最近、事務所も苦しくて」
秋隆「ああ、来月も適当な理由を付けて黒桐様に給料を支払わないように」
橙子「えー、でも今月も払わなかったんですよ?幹也くん可哀想じゃないですかー」
秋隆「しばらく黒桐様には貧しい状態で居てもらうのが式お嬢様のご意向なので」
橙子「わかりましたーでも、ほどほどにしてあげてくださいね?」
秋隆「承知しております」
―どっかの橋―
式「ここでお前は俺と戦って、盲腸だけ殺してもらって見逃されるんだ。ああ、お前の能力は物を曲げるサイコキネシスだからな」
藤乃(え、何この人ちょっとおかしい)
秋隆「橋は後で爆破させます」
藤乃(何でこんなおかしな人たちがこんなにお金持ってるんだろう)
ドカーンバカーン
ウワーキキィーイ
ドンガラガッシャーン
橙子「乗ってくかい?」(答えは分かってるんだけどねー)
式「いや・・・いい」
黒桐「式・・・」
橙子「はっはっはっ、式ぃ!浅上藤乃を殺せなかったからって黒桐を[ピーーー]なよー!」(仕事とはいえ我ながらこれは酷いマッチポンプ)
―廃ビル―
式「で、ここでお前の幽体は俺に負けて、最後にはお前はここで飛び降り自殺するんだ」
霧絵「はあ」
式「ちなみに俺の左手は霊体をつかめる義手だから、幽体離脱したお前もつかめるんだ」
霧絵「なるほど」
式「ところでお前は実は見捨てられた難病患者で、俺に見舞いに来る黒桐に憧れてたという設定もある」
霧絵「それはそれは」
秋隆「式お嬢様、そろそろ黒桐さまが目を覚ますかと」シュタ
式「もうそんな時間か、睡眠薬を追加しておけ、ニュース等の操作も忘れるなよ」
秋隆「はっ」
霧絵(お給料払ってくれたら早く死ねばいいのに)
式「幹也、今日は・・・泊まれ///」
黒桐「///」
秋隆(お嬢様、本当に成長なさいましたな)ウルッ
―珍妙なマンション―
式「分かったか?つまりお前は黒桐が居ない間俺に飼われてたわけだ、で、お前は黒桐に俺の部屋の鍵を渡すのが一番大切な役目、いわば『起源』なんだ」
巴(可愛いのになんでこんな残念な感じなんだろう)
式「ちなみに『起源』ってのは俺がこの間考えたんだけど、全てのものには根源につながる何かがあってだな」
巴(可愛くてお金持ちなのになんでこんな凄く残念な感じなんだろ)
秋隆「式お嬢様、医者の準備が整いました」
式「ご苦労、今回は幹也も怪我をする展開だ、失敗は万に一つもできないぞ」
秋隆「承知しております、腕がよく此方の言うことをよく効く医者を雇いました」
式「いいだろう」
巴(黒桐って人苦労してるんだろうなあ)
式「幹也、鍵」
黒桐「鍵?」
式「お前だけ俺の家の鍵持ってるなんて、不公平だろ・・・だからお前の部屋の鍵///」
黒桐「」
―事務所―
橙子「黒桐くんご飯作ってー」
黒桐「僕はパスタ位しか茹でれませんよ」
橙子「へー意外、式にご飯作ってあげたりしてるのかと」
黒桐「めったに作りませんが、式はああ見えて和食はプロ級ですよ」
式「ふむ、今日はこんなものか?」
秋隆「よろしいかと存じます、お前達下がっていいぞ」
黒服達「「ははっ!!」」ササササササッ
式「それにしても幹也の好みまで調べたかいがあったな、この前なんてあいつ美味しくて驚いてたぞ」
秋隆「ありがたいお言葉、しかと「黒桐幹也対策料理研究準備会」に伝えます」
式「しかし料理はともかくとして、調理前や調理後の隠密行動はまだまだだな」
秋隆「はっ、その点も訓練させます。黒桐様は鋭い方ですから」
秋隆「先日提案なされた鮮花様の女学校で妖精関係の事件が起こる件に関してですが」
式「幹也はしばらくいないし、全寮制だし口裏を合わせるのと、電話を細工するだけでいいだろう」
秋隆「おっしゃるとおりです、しかし鮮花様がなんと言うか・・・」
式「幹也とデートさせてやるのをダシに承諾させた」
秋隆「流石です。しかしながら、よろしいのですか?」
式「妻は夫が妹と食事にいったくらいでは目くじらを立てないものです」ニコヤカ
秋隆「ご立派です」フカブカ
式「ところで幹也、この前鮮花と食事に行ったんだって?その店が偶然俺が前から行きたかった店だったんだよ。俺、初めて鮮花を殺したくなっちゃったぜ」
黒桐「ちょ、まったく、しょうがないな一緒に行こう」
式「そろそろ物語もクライマックスになるんじゃないか?」
秋隆「おっしゃる通りです、前々から伏線が張ってあった連続殺人鬼と式様お嬢様がついに対決となります」
式「なんだっけ、白いのだな確か」
秋隆「はい、上級生でした白純様でございます」
式「あいつが俺の最後の敵ってわけだ」
秋隆「まさに、ところでその後の話ですが、前に少しお話しした式お嬢様と黒桐様の初対面のときの人格ですが・・・」
式「言われなくてももうわかってるさ、その「私」は空っぽの根源そのもの「」としか言えない全能だが全能に意味が無い存在、根源の渦そのものといってもいい、そうだろ?」
秋隆「お嬢様・・・ここまで成長なされていたとは、もはやこの秋隆に教えることはございません!!」フカブカ
式「幹也と、そしてお前のおかげだぞ秋隆」
秋隆「もったいないお言葉、秋隆はそのお言葉だけで冥土に参れます!!」ドゲザッ
式「つまりお前・・・しら?いや、しろ?お前名前なんだっけ?ともかくお前の起源は「食べる」事で殺人鬼兼食人鬼なわけだ」
里緒(あれ?間違いなく式さんだよね?こんな子だっけ?)
式「でだ、実はお前は本当は幹也の方に好意があった節もあるんだが、いやそれはいまはいいな。早い話、片手は失うが一生両儀家がお前の生活は保証する、お前の家族も同様だ。言うまでも無いがお前に拒否権は無い」
里緒(いや?僕なんでこんな子を昔好きになったんだっけ?)
式「泣いているのか黒桐」
黒桐「式、よかった・・・無事で」
式「・・・しろずみを殺したよ」
黒桐「ああ。分かってる」
里緒(死んでません)
式「これで、色々無くしちまった・・・・・・怒ってるのか?」
黒桐「ああ!人殺しはいけない事って言ったろ!たった一つの約束も守れないなんて、君は馬鹿者だ!今度ばかりは泣いたって許してやらないからな!」
式「そうか、泣いてもダメなのか」
黒桐「ああ、泣いたってダメだ、式、君を一生許さない」ギュ
里緒(なんという、昼ドラかよ、早く帰りたい)
式(ああ、ついにここまで・・・大変だったけど、抱きしめてもらえるともうどうでもいい)
黒桐(こんなに回りくどい告白なんて、式って変わった子だなあ)
秋隆(お嬢様、お幸せに!)パチパチ
― 時は流れる―
未那「いつかお母様を倒して、パパを取り戻すのがわたしの目標です」
秋隆「なるほど。ではこの秋隆、未那様の教育係として全力で応援いたしましょう」
おわりんこ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません