男「奨学金?借りてないけど」友「は? (23)
友「……ああ、じゃあバイトで稼いでるのか。でも家賃も生活費もとなると結構大変だろ?」
男「いや、バイトはこの前辞めたよ。今は何もしてない」
友「じゃあどうやって暮らしてるんだ?」
男「親の仕送りで暮らしてるよ」
友「……ハァーーーー。お前って意外と常識無い奴だったんだな。」
男「そう?自分では常識的な人間だと思ってたけど」
友「常識的な人間は親のすねかじって暮らしたりしないだろ」
男「でも君だって大学の学費から何まですべて自分で出してるわけじゃないだろ?
少なからず親の援助は受けてるんじゃない?」
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友「それは屁理屈だろ。たいていの奴は学費は親に出してもらって、奨学金借りてバイトして生活費を補ってるんだよ」
男「それは知ってるよ。ただ僕の家は比較的裕福だったから奨学金を借りなくて済んだんだ。
卒業と同時に借金背負うのは避けたかったからね。でも僕以外にもこういう人いるし、そこまで常識外れじゃないでしよ」
友「それは一部の人の話だろ?平均と比べてどうなのかって話をしてんだよ」
男「んー、確かに平均と比べたらちょっとだけ生活水準は上かもしれないけどさ、だからって誰にも迷惑かけてないし、今後奨学金を借りる予定もないよ」
友「いや、両親に迷惑かけてるだろ」
男「かけてないよ」
友「どう考えてもかけてるだろ。大学生活4年分の生活費って結構するだろ。しかもお前一人暮らしなんだから、家賃だってかかる」
男「なんで君が僕の両親の気持ちを代弁するのさ。僕の両親の気持ちは僕の方がよく知ってるよ。あの人達はその程度の出費で迷惑だなんて思わないよ」
友「なんでそう言い切れるんだ?表では何ともない素振り見せてても、裏ではどう思ってるかわからないだろ?」
男「僕の入学祝いに分譲マンションとベンツ買い与えようとした親だよ?あの人達にとって、4年で数百万程度の出費は痛くも痒くもないんだよ」
友「………ハァ。お前さあ、親に申し訳ないとか思わないの?」
男「思わないよ。感謝はしてるけどね。」
友「じゃあ、なんでバイトしてたんだ?必要ないだろ」
男「金銭面ではね。ただ、皆やってるから、どんなものかなと思ってやってみたんだ。まあ、3ヶ月でやめたけど」
友「なんでやめたんだ?お坊ちゃまにはきつかったか?」
男「3ヶ月で、だいたいどんなものかわかったからね。これ以上得るものは無いと思って辞めたんだ」
友「お前、そんなんじゃ社会でやってけねーよ?バイトぐらい続けろよ」
男「まだ社会に出てない君に言われても説得力に欠けるよ」
友「いや俺はバイトしてるし」
男「バイトしてたら社会に出たことになるの?正社員と同等の責任を取ったり、同じ目線でお店のこと考えたりしてないでしょ?」
友「……それはそうだけど。でも、バイト続けることで得られるものはあるだろ。」
男「例えば?」
友「コミュ力とか」
男「それはバイトじゃなくても得られるでしょ。サークルには入ってるし、そっちで身に着けるよ」
友「……あのさあ、俺はお前のために言ってんだぜ?就活の時どうすんだよ?バイトは3ヶ月で辞めて、あとはサークルで遊んでましたって言うのか?」
男「そんなこと言うわけないでしょ。バイトは3年やってたことにするよ」
友「……お前彼女いたよな?彼女はお前のそういうとこ何も言わないわけ?」
男「言わないね。彼女の家は僕の家以上にお金持ちだしね。むしろ、僕がバイトを辞めたことで遊べる時間が増えて喜んでるよ」
友「彼女のプレゼントとかも親の金で買ってんだろ?情けないとか思わないの?」
男「特に思わないかな。親に『彼女にプレゼント送りたい』って言ったら、ノリノリでお金送ってくれるし。プレゼントの内容相談したりもしたよ」
友「わかったわかった。お坊ちゃんは一生そうやって親のすねかじってろよ。俺はちゃんと自分の力で生きていくからさ」
男「やけにつっかかるねえ。よっぽど僕の家の財政事情が気に食わないみたいだけど、僕にあたらないでよ。配られたカードに文句があるなら君の親か、神様に文句言ってよ」
友「……お前みたいなやつは、いつか痛い目みるからな。覚えてろよ」
数年後
男「就職先決まって良かったー。卒業旅行の計画でも立てるか」
友「……あの、久しぶり、男」
男「誰かと思ったら友か。あれから全然会話しなくなったけど、今更何の用さ?」
友「いや……、俺就活上手くいかなくてさ。虫のいい話だとは分かってるんだけど、お前の父親の会社とか紹介してもらえないかな。下請けの子会社でもいいからさ。頼む、この通りだ」
男「それは無理だねえ。最近コネ入社に対する風当たりが強くなってるから。息子の僕ですらコネ使わなかったし」
友「そーなのか?じゃあお前どこに就職したんだ?」
男「公務員だよ。うちはもうお金もってるし。あとは公務員っていう安定した身分が欲しかったんだ」
友「……公務員試験勉強したのか。独学でか?」
男「いや、予備校に行ったんだ。30万ぐらいしたけど、親が出してくれてさ。ほんと、親には頭あがらないよ」
友「また、親の金かよ……。ほんとにお前クズだな」
男「この時期に就職先ない君よりはマシだとおもうけどね。ま、そういうわけだからこれから頑張りなよ。僕今から友達と遊ぶからもう行くね。じゃあね」
友「……ああああああああああああああああああああああああなんであいつばっかりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
卒業後、男は公務員として安定した身分と家の財力で優雅に暮らし、数年のうちに彼女と結婚。幸せな家庭を築く。
一方、友は一年中社員募集していたブラック企業に就職。しかし、」数年のうちに耐え切れず、辞職。その後は、就職活動もろくにせず、親のすねをかじるニートになったとさ。
おしまい
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