俺「500個のボタンがある部屋」【安価あり】 (14)

不動産屋の男(以降、不動男)「本日はどのような部屋をお探しで」

俺「そうですね、予算が少ないから安めのところで――」

俺「あと俺基本的に面倒くさがりなんで、駅からなるべく近いところがいいんですけど」

不動男「家賃安めで、駅から近く、かつ面倒くさがり、と・・・」

俺「・・・そう、ですね」

不動男「そんなあなたにぴったりのお部屋がありますよ」

それが、事の発端だった・・・

まさか、あんな事になるなんて・・・

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――数週間後。

俺「俺、死ぬかも・・・・・・」

俺がこの部屋に住み始めてしばらく経った。1日1個ボタンを試すという勝手なルールを作って、色々試していたが、ついに今日地雷を踏んだようだ。今俺がいるのは・・・

俺「寒い・・・」

氷点下10℃、雪の吹き荒れる“自室”である――。

どれもこれも、全部俺の面倒くさがりな性格がもたらしたことなのだ。この部屋に決めたのだって――

不動男「こちらがそのお部屋になります」

俺「・・・・・・」

俺(間取り図が普通だったから来てみたものの・・・・・・)

俺(なんだこの部屋は!見るからに怪しいボタンがいくつも壁についてるじゃないか!)

不動男「この壁にあります、ボタン一つ押すだけで様々なことが自動で行われる、面倒くさがりな方に大変便利なお部屋です」

俺「それにしては、ボタンが多すぎじゃ」

不動男「様々なことができますから」

俺「それにしては、ボタンが主張しすぎじゃ」

不動男「様々なことができますから」

俺「それ関係ないですよね」

不動男「そうでしょうか。とりあえず中の様子を見てみましょう」

俺「は、はぁ」

俺「まさかリビングまで壁一面にボタンがついているとは・・・」

俺「いくつぐらいあるんですか?このボタン」

不動男「500個と聞いております」

俺「・・・・・・?」

不動男「500です」

俺「多すぎやしませんか」

不動男「様々なことができ」

俺「それはもういいです」

俺(これだけボタンがあったら、どれがどのボタンか分からなくなりそうだな)

不動男「ご心配なく、こちらにお部屋の説明書がございます」

俺「・・・そっすか」

俺「厚っ」

不動男「様々な」

俺「それしか言えないんですか」

不動男「説明書が面倒でしたら、使用の度にご自分でボタンにラベルを付けてください」

俺「・・・・・・で、家賃はいくらでしたっけ」

不動男「月、1万2千円です」

俺「・・・・・・」

不動男「さらに、駅から徒歩6分。周辺は住宅地なので騒音もほぼありません。条件にぴったりの物件だと思いますが・・・」

俺「・・・・・・」

不動男「それに、新しいので部屋もとても綺麗ですし、建物も丈夫ですし、家具家電も一通り揃っています」

俺(怪しい・・・・・・)

俺(けど、考えるの面倒くせーし、説明書もあるなら大丈夫か・・・・・・)

俺(聞いたとこ、イワクツキでも無さそうだし)

俺「わかりました、俺、ここにします」

それからは早かった。トントン拍子で手続きが進み、気がついてみるとその部屋への引越し作業は終わっていた。

部屋は1LDK。風呂とトイレは別個で、テラス付き。アパート1階の端にある。駅からも近く、周辺にはスーパーもコンビニもあり、とりあえず日々の買い物には困らない。元々一人暮らしするには充分なサイズの上に、家具家電も確かに充実している。

こんな部屋を月1万2千で借りれるなんて、夢のようで逆に怖い気もする。というより、申し訳ない気もする。ボタンさえ無かったらの話しだが。

実を言うと、部屋に入ってしばらく、俺は壁に並ぶボタンを使ってなかった。理由は2つある。

1つは、ボタンが無くても困らなかったから。家電は普通に本体のボタンを押せば動くし、照明もぶら下がっているヒモを引っ張ればどうにかなる。分かりにくいボタンを、分かりにくい説明書を読んで、わざわざ押す意味が無かったのだ。

もう1つは・・・・・・非常に馬鹿らしいのだが、その説明書を無くした、というより見つけられなかったから。最初来た時には確かにあったそれが、住み始めて探してみると、無くなっていたのだ。

不動産屋に電話しても、

不動男「その件に関しては、私どもは責任を負いかねます」

と言うものだから、どうしようもない。大家さんに問い合わせようと思って電話をしても、

「ただいま、電話に出ることができません――」

この一点張り。直接会いに行こうにも、

俺「遠っ、めんどくさっ」

調べても調べても、大家さんの家は部屋から離れた山中にある、と出る。どうやってここを管理しているんだろう。

とにかくそんな理由で、最初の1週間くらいはボタンを、ただの近未来的な部屋構造だと思って、使わずに過ごすことが出来た。しかしその後は、ボタンが気になって気になって仕方なかった。

やはり新しい説明書を取り寄せようと電話をしても通じないので、面倒くさがりな俺は、

俺「めんどくさ・・・・・・」

と言いながらボタン検証を始めたのだった――。

俺「マジで500個あるし」

まず、一つ一つのボタンにとりあえず番号を振るという、俺にしては地道な作業をした。玄関、廊下、キッチンにリビング、そして風呂場にトイレ。部屋の壁という壁にあるのだから、番号付けで一苦労だった。

次に、適当なノートに1から500までの番号を書く。後は適当にボタンを押して、機能が分かればノートに書いていく。

試すボタンは1日につき、新しいものを最低1個。順番は問わない。そういうルールをささっと決めて、いよいよ、記念すべき1個目のボタンを押してみるのだった。

その番号は・・・・・・ ↓

俺「最初だし、1番にするか・・・・・・」

とりあえずリビングを出て、玄関に移動する。その壁の隅に番号1のボタンはある。

用途不明のボタンを押すことがこれ程怖いものだとは。ボタンに指先が触れたところで動きが止まり、その先が踏み出せない。それでも、死ぬことはないのだから、と覚悟を決めて、えいっと押す。


――――あれっ。


俺(・・・・・・何も変わってなくね?)


何かが点いたりだとか、動いたりだとか、音がするだとか、そういう分かりやすい反応はなく、部屋にはただ不気味な程の静寂が居座り続けている。

しかしこれではいけない。ノートに書くためにも、機能を確かめなければ。

そう思って、何度も押し直してみたがやはり反応がない。まさかダミーか。ただのギミックと化しているのか。

俺(なんだ・・・・・・つまんねぇの)

緊張の反動だろうか、謎のガッカリ感が生まれた。ノートを書きにリビングに戻ると、時間は午後1時を過ぎていた。自炊を面倒くさがる俺は、いつものように買いためたコンビニパンを頬張りながら、昼のテレビ番組を冷めた目で観るのだった。

その頃、近くの駅ではホームにいきなり落とし穴が出来て数人が危うく怪我をするところだったという事件が起きていたのだが、俺はそんなことは知る由もない。

ましてや、その犯人が俺だということなんて。


No.001:駅のホームに落とし穴を作る

ボタン検証2日目。

目が覚めると、夥しいボタンの威圧を感じた。あまり良い目覚めではない。慣れることを祈るばかりだ。

机上のカレンダーに目を遣ると、今日は9月4日の日曜日。今日ものんびり出来ると一安心すると、まだ朝の7時なので、二度寝をするために再度ベッドの布団に潜る。

正直言うと、今日は暇だ。元々少ない引越しの荷物は昨日のうちに全て開け、整理も終えた。隣の部屋に引越し恒例の挨拶に行ったのだが、隣の部屋はおろか、この建物に住んでいるのは俺一人のようだった。建物入口にある郵便箱には自分の名前しかなく、3階建てであるこの建物はそもそも2階、3階が封鎖されていた。

こんな怪しすぎるアパートに住む物好きも俺くらいではないだろうか。内装の小綺麗さから、まるで一軒家を借りたような錯覚を受けながら、布団に包まれていた。


しばらくして、

ピンポーン

と、呼び鈴が鳴った。


俺「誰だよ・・・」

面倒くさそうに俺は起き上がる。

俺(俺の住所変わったの家族以外誰も知らねぇはずなんだが・・・)

その家族はここから遠く離れた実家に居る。わざわざ会いに来たとは考えにくい。変な勧誘では?と心配しながら、俺は扉を、チェーンを掛けた状態で開けた。

↑酉ミスったすまぬ

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