おうぎワンダー (41)
化物語のssです。
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扇「阿良々木先輩は私が生まれた日をご存知でしょうか?」
暦「いや、悪いけど知らないな」
暦「いつなんだ?扇ちゃん」
扇「私も知りません」
扇「私が知らなくて、あなたも知らない」
扇「こういった場合どうすれば良いのでしょうね」
暦「うーん・・・だったらもう決めてしまうしかないんじゃないか?」
扇「分かりました。阿良々木先輩が決めちゃってください」
暦「ちょっと待って扇ちゃん。それは責任重大だぜ」
扇「ええ、責任をとってください。認知してください」
暦「認知ってあれみたいだな」
扇「いいから責任を取りなさい。愚か者」
暦「うーん」
扇「決められませんか?仕方ありません。ならば今日にしましょう」
暦「おいっ!?いいのか扇ちゃん」
扇「それではなにか頂けますか?」
暦「なにかってなんだ?」
扇「ええ、ですから誕生日なので」
扇「誕生日って優しくされるのでしょう?」
扇「優しくしてください」
暦「・・・うん。そうだな」
扇「おや?阿良々木先輩はそういった思い出があまりないのでしょうか」
扇「誕生日のパーティとかやられたりはしませんでした?」
暦「やったよ」
扇「そうですかやられていませんか。それは淋しかったことでしょう」
暦「・・・そりゃあ」
扇「ならば一緒にいましょうか」
扇「あなたの寂しさは私にも感じ入ることがあります」
扇「ですので今日は、これからも一緒にいましょう」
暦「扇ちゃん」
扇「ええ、気にせずに私のためです」
扇「私はあなたのためを思って行動します」
暦「じゃあ僕は扇ちゃんを思って行動するよ」
扇「あははー・・・それはそれはそれは」
暦「どうしたんだ?」
扇「はい阿良々木先輩」
扇「ええ、わかっていますとも」
扇「あまりにも私が話さないといけません」
扇「本当に、あまりにも」
扇「あなたは私が構わないと、私に構ってくれないですからね」
暦「そんなことないだろ」
扇「ええ、そんなことないですね」
扇「でしたら、そうです」
扇「今日はこれからも一緒に話していただけますか?」
扇「そして、私が笑うことを許しなさい」
扇「ねえ阿良々木先輩」
扇「私はあなたを笑いましょう」
暦「僕を笑ってどうするんだ扇ちゃん?」
扇「わかりませんか?そうですか」
暦「ああ、そういうことか」
暦「一緒にってことか」
暦「それでどうするんだ扇ちゃん?」
扇「どうするとはどうすればいいのでしょう?」
暦「どう祝えばいいってことだぜ」
扇「どう祝ってもらえばいいのでしょう?」
暦「おめでとう扇ちゃん」
扇「ええ、ありがとうございます」
暦「・・・えっと」
扇「それでどうするんだ暦」
暦「プレゼントとか持ってないしなあ」
扇「まあ、持っていたらすごいでしょう。先ほど言ったばかりですので」
暦「扇ちゃんなにが要る?」
扇「なにも要りません。邪魔になりますから」
扇「私としてはこのままここで話していてもいいくらいです」
扇「夜になってしまうまで、空が暗くなるまで」
暦「全然構わないけど、2人だけってのも少し寂しいな」
扇「寂しいですか・・・一緒にいてもいいよ扇ちゃんって言ってもいいですよ」
暦「もちろん、一緒にいるさ。ずっといるよ」
扇「ずっとはいいです阿良々木暦。でも一緒にいてくださいね」
暦「他に誰か呼ぶか?」
扇「私としては」
扇「私は他に誰も何も知りませんから」
暦「そんなことはないだろ」
扇「いやいやそうです。誰だコイツって顔されますよ?」
扇「阿良々木暦も経験あるでしょうに」
暦「あるけど、そうだけれども」
扇「つらい経験は自分への糧になると信じましょう暦」
暦「扇ちゃんならできると思うんだが」
扇「ならば例えば、誰をお呼びすればよろしいでしょうか?」
扇「お父様ですか?お母様ですか?」
暦「なぜ僕の両親を呼ぶんだ?」
扇「阿良々木先輩のご両親に挨拶に伺いたいのです。阿良々木先輩を幸せにしますと」
暦「要らぬ誤解を生むだろ」
扇「死が2人を別つまで」
暦「神原とかどうだ?」
扇「はい、いきなり阿良々木先輩の後輩ですね」
暦「扇ちゃんの先輩だ」
扇「暦ー、早く電話してくださいよ。時間がありません。夜になってしまいます」
暦「ちょっと待ってくれ。神原なかなか出てくれなくってさ」
扇「嫌われているのではありませんか?」
暦「きっ嫌われているわけなんかないだろ」
扇「ご自分ではなかなか気付きにくいものです」
扇「正しく自分の健康のようにいつの間にか悪くなっているかもしれません」
扇「それはどちらも勝手に良くなることはありませんね」
扇「だから定期的に診断しましょう」
扇「ねえ暦、こんな風にです」
暦「扇ちゃん?」
扇「静かに、心音を聴いています・・・はい。いいですよ」
暦「どうだったんだ?」
扇「はっはー」
暦「何か言ってくれよ。びっくりしただろ」
扇「替わりに私を聞いてみますか?」
暦「僕は聞いてもわからないよ」
扇「その通りです」
暦「そうだ、この際に扇ちゃんは神原と仲良くなったらどうだ?」
扇「阿良々木先輩とは駄目なのでしょうか?」
暦「僕とは既にいいだろ」
扇「はっはー、そうでしたー」
暦「神原だったら同じ学校だろうし、面識もあるだろ?」
扇「あの方、変態じゃないですか」
暦「ストレートに言うじゃないか。でもな扇ちゃん」
暦「世の中には良い変態と悪い変態がいるのだよ」
扇「へー、阿良々木先輩はどちらですか?」
暦「僕はもちろん良い変態だよ」
扇「ありがとうございます。通報しますね」
暦「やめて」
扇「戦場ヶ原先輩に」
暦「なにが望みだ扇ちゃん」
扇「望みはありません」
暦「ともかく仲良くなってほしいと僕は思うんだ」
扇「善処しましょう。しかしそれでは私も変態にならなくてはなりませんね」
暦「ならなくていいんだ、扇ちゃん。そのままでいい」
扇「優しいですね阿良々木先輩。お優しくて泣きたくなりますし、笑いたくなります」
暦「呼ぶか?来てくれると思うんだ」
扇「老倉先輩も呼びましょうか?」
暦「来てくれないだろ。どんな集まりだ」
扇「意外ときてくれたりしたら・・・どんな惨劇になるのでしょうか」
暦「ぎこちない集まりだろうな」
扇「はっはー、ならば誰も呼ばなくてもいいですね」
扇「私達2人だけでもぎこちないですし」
扇「私の誕生日には、やはり阿良々木先輩がいらっしゃればいいです」
暦「僕でいいか?」
扇「あなたしかいません」
扇「なぜなら私達は世界で一番と言っていいでしょう。奇妙な関係です」
扇「だから特別な関係ですね」
扇「うふふ」
暦「扇ちゃん」
扇「お寿司です」
暦「お寿司食べたいのか?」
扇「ええ、楽しく食べたいです。何時ぞやに約束をしましたよね」
暦「僕、まだそれを果たしていないんだな」
暦「悪かったよ扇ちゃん」
扇「いやー謝罪の言葉は必要ありません」
扇「あはは」
扇「お詫びをしていただけますか」
暦「いいよ、どんなことでもするぜ」
扇「そんなことを軽々しく言うものではありませんけどね」
扇「ねえ愚か者」
暦「そうだな」
扇「ええ、それにそのような目をしないでください」
扇「・・・お寿司は見逃してあげましょう」
暦「なんでだ?食べたかったんじゃあ」
扇「贖罪というものは行動で示すしかありません」
扇「一時の、一瞬で済まされることではないのです」
扇「さあ、私と一緒にフィールドワークにいきましょう」
扇「ねえ暦」
暦「扇ちゃん?えっと」
扇「あなたはそんなことを考えなくてもいいのです」
扇「一緒に自転車に乗って」
扇「いまはもういい季節でしょうから」
扇「私はあなたと行きたいのです」
扇「どうぞ連れて行って下さい」
扇「また夜にお会いしてもよろしいでしょうか?」
暦「夜じゃないと駄目なのか?」
扇「夜は私達の時間でしょう?黙ってきてください」
暦「・・・」
扇「ええ、本当に黙られてしまいますと困ります」
扇「また会いたいよ扇ちゃん、と言いなさい」
扇「星を見ましょう。勿論、私が案内を致します」
扇「今晩は」
暦「また会えたな扇ちゃん」
扇「会おうとしたからですよ」
暦「扇ちゃんの自転車、格好いいな」
扇「阿良々木先輩ほどではありません」
扇「ではでは出発しましょう」
暦「どこにいくんだ?」
扇「着けばわかります」
暦「どれくらいなんだ?」
扇「着けばわかります」
暦「あのー」
扇「着けばわかります」
暦「扇ちゃんっ」
扇「何ですか?心細くなってしまいましたか」
扇「情けないことこの上ないですね」
扇「私がいますよ阿良々木先輩。何を迷うことがあります?」
暦「それはすごく頼りになるけども」
暦「まだ着かないけれど」
暦「僕達この暗い中、道を間違えたりなんかしていないか?」
扇「おやおや、阿良々木先輩には正しいとか間違っているとかは分かりせんよね」
扇「私を信じてください。誰よりも」
扇「そうでないと、不安でしょう?」
暦「まあ、扇ちゃんのことは僕が一番信じているよ」
扇「そうですか。それは嬉しいことですね」
扇「しかし、それとこれとは別問題でしょう」
暦「えっ?」
扇「間違えています」
扇「さてどこに向かっているのでしょう?」
暦「本当か?」
扇「笑ってしまいますね」
暦「扇ちゃん嘘だろう?」
扇「嘘ですよ。嘘においても嘘です」
暦「どこに向かっていたんだ?」
扇「はい、そうですね・・・」
扇「あなたは間違った時どうしますか?暦」
暦「僕か?」
扇「あなたです。阿良々木暦」
扇「道を失いました。しかし、来た道は覚えているでしょう」
扇「引き返すこともできます。しますか?」
暦「・・・しない。僕は覚えるのは苦手だからな」
扇「そうですか、引き返しませんか」
扇「ここで帰ってしまわれては私1人になってしまうところです」
扇「結局はあなたが私を導きますか?」
暦「とにかく、扇ちゃんを置いて帰らないよ」
扇「明るい中においても道を間違えないってことはありません」
暦「だから?」
扇「私も実はそうだとしたら、前が見えるでしょうか」
扇「それは、ええ駄目でした。駄目でしたとも」
扇「阿良々木先輩のせいですね」
暦「今日はどうしたんだ扇ちゃん」
扇「ふふふ」
暦「扇ちゃんってさ、いつも笑っているよな」
扇「暦、こういうことは聞いたことはありますか」
扇「作り笑いであっても脳が勘違いをして」
扇「勝手に楽しいと判断するそうですよ」
扇「あー楽しいなー」
扇「私は1人きりになれてしまうのですから」
暦「僕はそんなことしない」
暦「迷ったのなら僕が先に行こうか」
扇「御心のままに」
扇「さあ私の手を取り、進みましょう」
扇「どうぞ、どうしました?手をとりなさい」
暦「ここか?扇ちゃん」
扇「袖です」
暦「わかんねーよ」
暦「こっちで良いのか?そろそろ近いから分かるだろう」
扇「そちらで良いですよ」
扇「はじめから阿良々木先輩の携帯で調べればよかったのです」
暦「まあ仕方ないな」
扇「暦は私など見ずに空をご覧下さい」
扇「綺麗であるとは思いませんか?」
暦「扇ちゃん悪いけど今日はずっと曇りだって」
扇「曇りが綺麗でないと?」
暦「そんなことは言ってないけどさ」
暦「着いたところで同じなんだ」
扇「同じですね」
扇「さて、もう少しです。お疲れの出ませんように」
暦「着いたのかな?」
扇「着いたでしょう。見れば分かります」
暦「自転車はここでいいか?」
扇「はい、この駐輪場でいいと思います」
暦「あとどれくらい時間が残っているんだ」
扇「後、数分というところではないでしょうか」
扇「阿良々木先輩、ここまでこれましたね」
暦「うん」
扇「私達はどこまでいけるでしょうね」
扇「私達はどこまでわかるでしょう」
扇「私達はどこまでなれますか?」
扇「いやなれてしまうのでしょう」
扇「今までで分かったことはありますか?」
扇「分からなかったことのほうが多いのですか?」
暦「この先のことは分からない」
扇「他者を否定することは、自分を肯定することでしょう」
扇「そうですね?」
扇「自分を肯定することが、自分の存在をより強固にしますか?」
扇「私はそうは思えませんね」
扇「私達はまだ、何も始っていません」
暦「そうだな。まだ始まってない」
暦「これから始まることで分かればいいさ」
暦「それよりも寒くないか?」
扇「いえ」
扇「暗いですね」
暦「そりゃあまあ」
扇「ライトを点けてください」
暦「駄目だ。迷惑になる」
扇「足元を照らすだけですよ。それに」
暦「誰もいないな」
扇「あまりそんなことを思ってはいけませんが」
扇「まあ私も何故いるのかわかりせんからね」
扇「ですからそれは怖いですよ」
扇「この世にふたりきりだと怖いですね」
扇「この夜にひとりきりだと怖いですね」
扇「これから一瞬で夕暮れから夜へ、そして朝になるでしょう」
扇「選ばれなかった物語は寂しいですね」
扇「空空しく、空しく1人で」
扇「あなたに沢山の喜びがあり、それは素晴らしいことです」
扇「阿良々木先輩」
扇「その夢が未だ終らず、むしろ終ってほしいと願いませんか」
扇「暗さの中で照らす灯りのように」
扇「消え去って欲しいと」
扇「でもその言葉も言わなくなってしまうでしょうに」
扇「怖くないよって、言いなさい」
扇「君は素敵だよ扇ちゃんとも」
暦「扇ちゃんは・・・」
扇「本当に言うものではありません」
扇「2人っきりですから」
扇「ほらっ見えましたよ先輩」
扇「どうです?素晴らしい夜空ではありませんか」
扇「溶けてなくなるように黒さですね」
扇「消えてなくなるような白さですね」
扇「その先は見えませんね」
扇「喜びましたか?それは良かったです」
扇「あなたは喜びに打ち震えるのでしょう」
扇「星は沢山数えては駄目です」
扇「魂を奪われないために」
扇「私達はとても小さいものです」
扇「北極星でさえ入れ替わってしまうのですね」
扇「しかし、それを信じるしかないのです」
扇「迷ったらそれを見ましょう」
扇「私はあなたに何かを与えたいのです」
暦「いや駄目だよ。僕はここにいるさ」
扇「それはそれで困りますね」
扇「いやいいです。我侭を言いました。帰りましょう」
暦「いいのか?」
扇「いいのです」
扇「平気です」
扇「解りました」
暦「分かった」
暦「扇ちゃんはここにいるんだ。僕は行くよ」
扇「阿良々木先輩・・・行ってしまわれましたね」
扇「1人の時は何を話せばよいでしょう」
扇「もう忘れないよって言いなさい」
扇「もう大丈夫だよって言いなさい」
扇「私はどんな風に見えます?」
扇「あなたに私が見えますか?」
扇「目を閉じたときのように見えますか?」
扇「私はまったくうまくいかないことをやりたかったのでしょう」
扇「所詮、星の鱗をまとった化け物なのですから」
扇「私はこれまで全て星のことを言っていただけですよ」
扇「阿良々木先輩に楽しんでいただきたいだけです」
扇「私のことなんて一言も言っておりません」
扇「自分のことではありません」
暦「扇ちゃん。起きて」
扇「寝ていませんよ」
扇「ああ・・・あなたはずっとここにいましたか」
暦「もちろん」
扇「どのくらいここにいらっしゃったのですか?」
暦「君と同じくらいに」
扇「寒かったでしょうに」
暦「いや、ブランケットを借りてきた」
扇「暗かったでしょうに」
暦「ずっと暗い」
扇「よく見つけて下さいました」
暦「僕らはずっとここにいる」
扇「阿良々木先輩、一度はどちらに?」
暦「もう一度チケットを買ってきたんだ」
暦「もう1回見たいのなら、そういってくれないかな扇ちゃん」
扇「申し訳ございません」
扇「1回目と2回目では上演の内容が違うのですよ」
扇「このプラネタリウムは」
暦「どんな内容だ?」
扇「見れば解ります」
暦「扇ちゃんはいつも重要な事を言わないよな」
扇「仕方ありませんね。1回目は天体の動きについてでしたね」
扇「2回目は宇宙の始まりと終りについてです」
扇「星座の物語の上演は今日ではありません」
暦「違くてさ」
暦「僕には扇ちゃんの顔が見えているんだぜ」
扇「それがどうしたというのですか?」
暦「今日・・・色々な事を言って欲しいってあったよな」
扇「ええ、何度が言っていただきました」
暦「その代わりじゃないが」
暦「僕は扇ちゃんから言って欲しいことがある」
暦「その言葉を、今度は僕から言わせてくれないか」
扇「構いませんよ」
暦「愚か者」
扇「はい?」
暦「って言ってくれると。僕は嬉しいんだ」
扇「はぁ?」
暦「なんて言うか、それを言ってくれ。そうすると僕の体は喜ぶんだぜ」
暦「僕は単純だろ?」
暦「さあ言ってくれ扇ちゃん。さあ、さあ」
扇「はっはー」
扇「流石の私も引いてしまいますね。またもや通報したくなります」
扇「老倉先輩に」
暦「やめて!」
扇「あなただってあなたから言ったことはないのですから」
扇「ここは愚か者と愚か者ということで手打ちにしましょう」
扇「私は阿良々木先輩になにか与えることはできました?」
暦「それはいるだけで」
暦「僕は君と話をしたいんだ」
扇「あなたがいる限り永遠にさ迷い続けましょう」
扇「永遠はまだ、始まってもいないのですから」
扇「五劫の擦り切れや星の大きさの鉄球に貼り付く蝿のように、その程度でも」
扇「だれもいなくなっては寂しいものです」
扇「孤独に耐える価値と何も感じないことの価値の差はどうでしょう」
扇「それはどちらも自己満足ですね」
扇「最後に残るものは誰でしょうね」
暦「一緒に残るんだよ扇ちゃん」
暦「扇ちゃんの手は見えなくても」
暦「離れたら寂しいからさ」
暦「だから僕が駄目なときは罵ったり、煽ったりしてくれよ」
暦「それができるのは扇ちゃんだけなんだ」
扇「・・・阿良々木先輩、もう一度始まりますよ。お静かに」
扇「終わりまでどうしても一緒にいるしかありません」
扇「宇宙は無事に終わりを迎えましたね」
暦「でもなんかさ、どう終るかなんて本当は分からないんだろう」
扇「もう一度見ますか?」
暦「そろそろ帰ろうぜ」
扇「ええ、畏まりました。はい、承りましたとも」
扇「私にはいかなるときも励ましたり、優しい言葉をかけてください」
扇「それができるのは阿良々木先輩だけです」
暦「ああ、いつでも僕はそうする。誓うよ」
扇「そうでなくてはいけません」
扇「さあ、朝になるまで話を」
扇「そして朝日を見ましょう」
扇「それまでは、全てあなたの話をお聞かせください」
暦「それは随分長いぜ、扇ちゃん」
扇「はっはー」
朝日までまだもちろん全然あったが
街灯で逆光になっている扇ちゃんが自転車に跨り、言った
扇「今度は阿良々木先輩が先頭を走って、行っちゃってください」
扇「せーの」
暦「あっ」
ずるをして、先に行く様を少し見ていた
扇ちゃんは僕をぶっちぎって疾走していき
もちろん僕は全力で追っていくのだけれど
なんとか追いついたら、互いに顔を見て
そう、どんな顔をしているかって想像することは楽しいだろう
いつもの顔でも全然構わないさ
それにも増してあの言葉を言ってくれると期待していて
きっと僕は、喜ぶと思う
扇「遅いですね。ええ、着いてきてください」
扇「愚か者」
暦「ははっ」
僕は奮い立って
先を急ぐ
いつまでいけるかは
分からないけど
これで終わりです。ありがとうございました。
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