息抜きに短めのを。
ちょっと病んでて、それでも綺麗な時雨を書きたかった。ただそれだけです。
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執務室
シトシト シトシト ポツリ…
時雨「ねぇ、提督。」
提督「何?」カキカキ
時雨「いい雨だね。」チラッ
提督「あぁ…そうだな。」カキカキ
時雨「………」
提督「………」チラッ
シトシト シトシト ポツリ…
……………………
……………………
時雨「あのね、提督。」
提督「何?」カキカキ
時雨「僕、昨日とある本を読んだんだよ。」
提督「……どんなの?」カキカキ
時雨「うん。それはね…」
時雨「男の子の飼っていた犬が死んじゃう物語。」
提督「………」ピタッ
提督「……面白かった?」
時雨「………うん。でもね。」
時雨「とても悲しかった…」
提督「そっか。元気だせよ。」
時雨「うん。僕は大丈夫だよ…」
シトシト シトシト ポツリ…
……………………
……………………
時雨「………」じーーーー
提督「………」カキカキ
時雨「………」じーーーーー
提督「………」カキカキ
時雨「………」じーーーーーーーーー
提督「どうした?」
時雨「あっ…ごめん。なんでもないんだ…」
提督「そうか。」スッ
提督「………」カキカキ
時雨「………」じーーーーーー
時雨「ふふっ。」ニコリ
…………………………
提督。僕はね。
ときどきこう思うんだ。
こうして艦娘として生まれ変わって、本当によかったのだろうか…って。
僕は一度沈んだ。駆逐艦・時雨は沈んだ。
僕が生まれた時…
かすかに僕の頭の中に残っていたものは…どれも辛く、悲しい記憶ばかりだった。
浮かび上がっては、消えてゆく…たくさんの出逢いと別れ。
艦艇だった僕がどうしてそんな記憶を残したのか、それはわからない。でも、僕が確かにその時思ったこと。
それは…
あぁ…僕はきっとまた、死ぬために生まれてきたのだろう、と。
生まれたものはいつか消える運命だ。それは人だろうと、動物だろうと。
……船だろうと変わらない。死は、みな等しく訪れる。
出逢いがあれば別れがある。そんなことは当然のことだ。
でも…
僕の中に芽生えた人の心はそれを認めようとはしなかった。
端的に言えば、僕はもう二度と味わいたくなかった。
誰かを失う、という悲しみを。永遠に別れてしまうという辛さを。
だから…僕はいつだって求めている。
僕の、死に場所を。
僕は、自分の死に場所を求めて戦っている。
それが僕の…唯一の願いだった。そう、信じていた。
…………………………
シトシト シトシト ポツリ…ポツリ…
時雨「ねぇ、提督。」
提督「何?」カキカキ
時雨「もしもの話だよ。もしもだからね。」
時雨「もしも僕が沈んだら…提督は悲しい?」
提督「………」ピタッ
提督「………」
提督「……悲しいよ。」
提督「凄く、悲しい。」
時雨「そっか。うん。そうだよね…」
時雨「変なこと聞いてごめんね。」
時雨「こうして雨が降っていると…」
時雨「なんだかセンチな気分になっちゃうんだ。」
時雨「本当に…ごめんね。」シュン
提督「………」
提督「時雨。」
時雨「………」
提督「そういう時もあるさ。気にするな。」ナデナデ
提督「………」
時雨「………///」
時雨「うん。ありがとう。提督。」
シトシトシト… ポツン ポツン…
……………………
……………………
雨が好きなのは…この静かな雰囲気が、僕の心を穏やかにしてくれるから。
それと…提督がいつもよりちょっとだけ優しく構ってくれるような気がするから。
雨は悲しみと一緒に、僕の心も洗い流してくれる。
けれども、僕は忘れない。
そんな優しい雨も、いつかは止むのだ、ということを。
………………………
時雨「ねぇ、提督。」
提督「ん。何?」
時雨「あのね。うんとね…」
時雨「………」
提督「………」
時雨「僕はまだ…ここに居てもいいのかな?」
時雨「提督やみんなと、一緒に居ても…いいのかな…?」フルフル…
提督「………」
提督「時雨。」
時雨「ん………」ドキッ
提督「辛いことや悲しいこと。生きていれば色んなことがあるよ。」
提督「でもな。」
提督「同じくらい嬉しいことや幸せなことだって、生きていればたくさんある。」
提督「だから…さ。」
提督「俺たちは生きるんだ。」
提督「そして、俺たちには互いにそれを分かち合うことができる。一緒にな。」
提督「時雨。」
提督「今を生きよう。」
時雨「今を…生きる…?」
提督「あぁ。そうだ。」
提督「今を一生懸命生きるんだ。」
提督「そうすれば…きっといつか、後悔なく果てることができる。」
提督「時雨、俺には…俺たちの今にはお前が必要だ。」
提督「だから…」
提督「いいんだよ…ずっと一緒にいよう。」
提督「その時が訪れるまで…ずっと一緒にいられるように。」
提督「今はお天道様に祈っておこう。」
提督「な?」
いつの間にか、僕の目からは涙が溢れていた。
僕が本当に求めていたものは、そう…死に場所なんかじゃなかった。
提督「好きだよ、時雨。」
時雨「ヒグッ、グスッ…うん…僕も…」
時雨「ありがとう、提督。大好きだよ。」ニコリ
僕が本当に欲しかったものは…分かち合ってくれる人だった。
辛いことも苦しいことも、悲しいことも。
嬉しいこと、楽しいこと、幸せなこと。そう…全部。
雨は止む。きっといつか。全てを洗い流してしまう。何もかも消えて行ってしまう。
……ただ、少なくとも今は…
この雨が僕と…世界中の人たちの悲しみだけを洗い流してくれることを祈って
「さようなら」ではなく「また明日」 そう言えるように。
僕はもう少しだけ長生きしてみようと思うことにするのだった…
……………………
……………………
シトシト シトシト ポツポツ…
提督「………」
時雨「ふんふふ~ん♪」
提督「………」ギュ
時雨「///♪」ギュ
提督「雨、なかなか止まないな…」
時雨「ううん。大丈夫だよ。提督。」
……………………
ふと気づくと…雨はあがり、天に晴れ間が指していた。そして…
窓から見える空は蒼く…見渡す限りどこまでも澄み渡っていた。
時雨「ほらね。ふふっ。いつも言ってるでしょ?」
時雨「雨は、いつか止むさ。」ニコッ
終わり
読んでくださった方、ありがとうございます。
時雨はメランコリックな雰囲気が似合いますよね。それだけ悲しい史実がありますけど…
物憂げだけど、辛い過去を背負っているだけに優しい心を持った…そんな時雨が大好きです。
最近は…ボケまくり、ツッコミまくり、ちょいと外道だったりもする時雨を書いてるせいで、危うく本来の時雨のキャラを忘れそうになりました。
ごめんね。時雨。
以上です。
このSSまとめへのコメント
ありがとう