穂乃果「私が音ノ木坂のテッペンを取るよ!」 (418)
穂乃果(私、高坂穂乃果! この春から高校二年生!)
穂乃果(……のはずだったんだけど)
穂乃果「嘘…」
穂乃果「この私が…」
穂乃果「……留年なんて嘘だよぉ」ガーン
穂乃果(一年生のときの成績が悪すぎて留年になっちゃったんだ……)
穂乃果(こんなことなら、無理して進学校なんて受験せずに海未ちゃんとことりちゃんと一緒に音ノ木坂に行けばよかったよぉ)ズーン
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穂乃果(そして……二回目の高校一年生もあっという間に一ヶ月が過ぎ、中間テストを受けたんだけど)
担任「高坂さん、このままだと貴女また留年することになるわよ」
穂乃果「えぇ!? 一年生のときよりも点数上がってますよね!?」
担任「……はぁ、貴女ねえ、一桁だったのが二桁に乗っただけで、全部赤点ということには変わりはないのよ」
穂乃果「そんなぁ……中学校のときは補習出てれば卒業できたのに!」
担任「中学校と高校は違うんですよ。しかも貴女の通ってた中学校って不良だらけの底辺学校でしょう? うちは進学校なんですから、同じように行くとは思わないでくださいね」
穂乃果「うぅ……」ズーン
穂乃果「はぁ……」
穂乃果(やっぱり喧嘩ばっかしてた私が、今さら勉強を頑張ろうとしても無理だったのかな……)
穂乃果(海未ちゃんとことりちゃんと一緒に遊んでた頃が懐かしいや)
「……あら? もしかして穂乃果ちゃん?」
穂乃果「え? あ、ことりちゃんのお母さん! こんにちは!」
理事長「こんにちは、久しぶりね。どうしたのこんな場所で黄昏たりして」
穂乃果「……実は」
理事長「なるほど…進学校は大変なのね」
穂乃果「はい……それで、音ノ木坂に行ってた方が海未ちゃんもことりちゃんも一緒だったし、今よりずっと楽しかっただろうなぁって思ってたところだったんです」
理事長「……」
穂乃果「はぁ……また留年したらどうしよう」
理事長「ねぇ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「なんですか?」
理事長「もし良ければなんだけど、うちの学校に転校してみない?」
穂乃果「……え?」
穂乃果(そうしてことりちゃんのお母さんに誘われて、私は音ノ木坂に転校することを決めたんだ!)
穂乃果(お母さんとお父さんにも私が無理していたことは見抜かれていたようで、転校したいって相談したら快く受け入れてくれたよ)
穂乃果(前の学校では留年しちゃったけど、音ノ木坂は私と同じレベルの人達がいっぱいいるみたいだから留年する心配はないみたい!)
穂乃果(一年生からやり直すことには変わりはないけど、今度こそちゃんと頑張るぞー!)
穂乃果「頑張るぞー!!」
雪穂「お姉ちゃんうるさい!」
<高坂家、玄関>
穂乃果「おっけー、これで準備よし!」
雪穂「そっか、今日から音ノ木坂だっけ」
穂乃果「うん! 久々に海未ちゃんとことりちゃんに学校で会えるよ~」
雪穂「一学年上だけどね」
穂乃果「うっ…それは言わないでよ」
雪穂「はいはい、私と同じ学年にならないように頑張ってよ?」
穂乃果「も~、前の学校とは違うんだから大丈夫だよ!」
雪穂「ならいいんだけどね…あれ? そろそろ時間じゃない?」
穂乃果「あっ、本当だ! それじゃいってきまーす!」
雪穂「……」
雪穂「…まあ、お姉ちゃんなら音ノ木坂でも大丈夫かな…たぶん」
<音ノ木坂学院高校、校門前>
穂乃果「……あれ? ここで合ってるよね?」
穂乃果(なんだか怖そうな人達ばっかり入ってくんだけど…)
穂乃果(まあ、音ノ木坂は進学校じゃないから、ちょっと不真面目な人が多いだけだよね)
「おい、テメェわざとぶつかってきただろ」
「なによ、アンタがぶつかってきたんでしょ」
「んだと? 喧嘩売ってんのかゴラァ!!」
「上等だわ、ちょっとこっちきなさいよ」
穂乃果(……うん、そういう人達がいてもおかしくないよね!)
<廊下>
先生「あ~、その~、君もわかってるとは思うんだが」
穂乃果「?」
先生「この学校は、ちょっとヤンチャな子が多くてだね……君は進学校からうちに転校してきたみたいだから……くれぐれも気を付けてね」
穂乃果「はぁ」
穂乃果「……」
穂乃果(もしかして、音ノ木坂って私が通ってた中学校みたいな感じなのかな?)
<教室内>
先生「え~、それでは高坂さん、自己紹介を」
穂乃果「はい! 今日からこのクラスに入ります、高坂穂乃果です!」
穂乃果「よろしくお願いします!」
ザワザワ
先生「み、皆さん静かに…」
「おい、転校生」ガタッ
穂乃果「?」
「お前、シンガクコーから来たみてーだけどよ」ツカツカ
「勉強してーなら引きこもってた方がいいぞ?」ズイッ
ギャハハハ
先生「き、君…席に戻って」
「センセーは黙っててくださいよ、新入りにはここのルール教えなきゃいけないんで」
先生「ぼ、暴力はだめですよ」
「……放課後、校舎裏に来い。来なかったら…わかってんだろーな?」
穂乃果「……」
キーンコーンカーンコーン
先生「ほ、ホームルームは終わりです! 解散!」ダッ
穂乃果(……あんな近くでメンチ切られたの久しぶりだなぁ)
<校舎裏>
穂乃果「さて、と……」テクテク
穂乃果(今日一日過ごして気づいたけど)
穂乃果(この学校、どこを見てもヤンキーしかいないね!)
穂乃果(友達になれそうな人も見つからなかったし……)ズーン
穂乃果(一年間進学校にいたから、こういう雰囲気久々過ぎて慣れないなぁ……ん?)
「よー、小泉ちゃん」
「今日は星空のヤツはいねーのかよ?」
花陽「り、凛ちゃんは先生に呼び出されてて……」
穂乃果(私を呼び出してた人達、他の子も呼んでたのかな?)
「ってことは、今はお前一人なわけだ」
「アタシらよー、こないだ星空にボッコボコにされてさぁ、ちょーどムカついてたとこなんだよね」
花陽「そ、それはあなた達が凛ちゃんに絡みに行ったから……」
「あぁ? 今そういう話はしてねーだろうが!」
「アタシらのストレス解消に付き合えっつってんの」
花陽「そ、そんなぁ」
穂乃果「!」
穂乃果「ちょっと」ザッ
「!」
穂乃果「なにやってんの、君たち!」
「きたな、転校生」
穂乃果「その子は誰? 私に用があって呼び出したんじゃないの?」
「そうさ、お前にも用があるんだ」
花陽「……」ブルブル
「この怯えてる奴をアタシらと一緒にボコさない?」
穂乃果「!」
花陽「えっ……」
「アタシら、この前別のクラスの星空ってヤツにちょー痛めつけられてさ、ひどい目にあってんだよね」
「で、コイツはその星空のツレでさ」
「だからコイツを痛めつけて星空を誘い出そーってわけ」
「せっかく同じクラスになったんだからさ、協力してくれるよね?」
「ね?」
穂乃果「……そんなことしないよ!」
「は?」
花陽「!」
「お前マジで言ってんの?」
穂乃果「当たり前だよ!」
「……まー、別にどっちでも良かったんだけどさ」
「転校生もサンドバッグに追加ー」
花陽「あ……わ、私のせいで」
「お前はこっちだよ!」
花陽「ひっ」
花陽「だっ」
花陽「誰か助けてぇ!!」
「助けなんか来ねぇよ!!」ブンッ
花陽「っ」ギュッ
バキィッ
ドガッバキッズドッ
花陽「……あれ?」
「ぐはっ…」
「んなっ…」
「こ、こいつ…」
「ぐ、くそ…」
穂乃果「…ふぅ」
花陽「えっ!?」
穂乃果「そこの君! 今のうちに逃げるよ!」ダッ
花陽「あっ、は、はい!」ダッ
タッタッタッ……
「あ、あの転校生」
「なんつー動きだ…」
「…とんでもないヤツが来たね」
「あの人に報告だ!」
書き貯め終わりです
出来次第投下していきます
投下始めます
<学校外、とある公園>
タッタッタッ
穂乃果「はぁっ…はぁっ…ここまで来れば大丈夫かな!」
花陽「ぜぇっ、はぁ、はっ…はっ…」
穂乃果「ふぅっ」
花陽「…あ、あの」
穂乃果「ん?」
花陽「た、助けてくれて、ありがとうございます…」
穂乃果「あぁ、私もあの人達に呼び出されてたしね!」
花陽「そ、そうだったんですか…」
穂乃果「まったく、転校してきて初日に呼び出しなんて参っちゃうよね~」
花陽「あ……転校生の人だったんですね」
穂乃果「そうだよ、高坂穂乃果っていうんだ! あなたは?」
花陽「わっ、私は…小泉花陽、です」
穂乃果「小泉花陽ちゃんだね、よろしく!」ニコッ
花陽「よ、よろしくお願いしますっ」
花陽「あの…なにかお礼できることはありませんか?」
穂乃果「えっ、じゃあ穂乃果と友達になってもらえないかな!」
花陽「えっ」
穂乃果「だ、だめ…かな?」
花陽「あっ、いや、だめじゃないです! でも、そんなのでいいんですか?」
穂乃果「うん!」
花陽「それじゃ…私なんかでよければ」
穂乃果「えへへ、やったぁ!」
花陽「…ふふ」
穂乃果「ん? どうかした?」
花陽「あ、いや、その…この学校で喧嘩強い人って、皆怖い人ばかりだから……穂乃果ちゃんみたいに明るい人もいるんだなって思って」
穂乃果「私みたいなのは珍しいタイプってこと?」
花陽「そうだね…あ、でも私の友達の」
チイサナシグナルリンリンリンガベー
花陽「あ、噂をすれば…ごめん、穂乃果ちゃん、ちょっと電話させてもらうね?」
穂乃果「どーぞどーぞ」
花陽「もしもし凛ちゃ
『かよちんどこにいるにゃーーーーー!!!!』
花陽・穂乃果「!?」
<近くのハンバーガー屋>
花陽「ご、ごめんなさい、友達のこと待ってたのすっかり忘れちゃってて…」
穂乃果「いいよいいよ! それに花陽ちゃんの友達にも会ってみたいし!」
穂乃果「それで、その子が花陽ちゃんの言ってた…」
花陽「うん、とっても可愛くて優しい子なんだよ」
「見ーつけたっ!!」
花陽「あっ、凛ちゃ
凛「かよちーーーん!!」ダキッ
穂乃果「わっ」
凛「かよちんかよちんかよちん」ギュー
花陽「り、凛ちゃんっ、抱き締めすぎだよぉ」
凛「大丈夫? 怪我は? 痛いとこない?」ジー
花陽「だ、大丈夫だよぉ、どこも怪我してないよ」
凛「よかった」ホッ
凛「……心配、したんだからね」ボソッ
花陽「う……ご、ごめんなさい」
凛「でも無事でよかったにゃ!」ニコッ
花陽「えへへ…あ、凛ちゃん! 紹介するね、こちらがさっき私を助けてくれた、穂乃果ちゃんだよ」
凛「かよちんを助けてくれたんだよね? ありがとう!」
穂乃果「どういたしまして! 高坂穂乃果だよ、よろしくね!」
凛「星空凛だよ、よろしく穂乃果ちゃん!」
凛「それにしても、かよちんを襲うなんてアイツら許せないにゃ! 凛に用があるなら直接来ればいいのに!」
花陽「うぅ、また一人のところを襲われたらどうしよう…」
穂乃果「あのさ、さっきの人達とはなにがあったの?」
凛「アイツら一人一人はただの雑魚だよ、厄介なのは徒党を組んで西木野についてってることだにゃ」
穂乃果「西木野…?」
花陽「あ、私から話すよ、えっとね…まず今の音ノ木坂について説明した方が早いかな?」
凛「かよちんに任せる!」
穂乃果「花陽ちゃんがやりやすいように説明してくれて大丈夫だよ!」
花陽「二人ともありがとう、それじゃ説明するね」
花陽「もう穂乃果ちゃんも察してると思うけど、音ノ木坂は不良と呼ばれる人達がたくさんいるの」
穂乃果「そうみたいだね…花陽ちゃん達みたいに優しそうな子は全然見かけなかったよ」
花陽「入学式のときはもう少しいたんだけどね…気の弱そうな子たちはもうあんまり来ないと思う」
穂乃果「どうして? 虐められてるとか?」
花陽「そういうのもあるだろうけど…この学校はね、生徒同士での喧嘩がすっごく多いみたいなの」
花陽「それも個人間だけじゃなく、集団対集団での喧嘩が一度始まると凄いらしくて」
穂乃果「へぇー…」
花陽「実はね、この学校にはいくつかの派閥があるんです!」
穂乃果「派閥?」
凛「不良達の集まりだよ」
花陽「それぞれトップに三年生が立っていて、何人もの下級生を従えることで学校内で幅を利かせてるんです!」
花陽「中でも、最大派閥の『絢瀬派』は人数も一際多くて、トップの絢瀬先輩は音ノ木坂の頂点(テッペン)に最も近いと噂されています…」
穂乃果「ふ~ん、その絢瀬先輩っていうのが一番強いってこと?」
花陽「いや、まだその辺りははっきりとしていないみたいで…あ、あともう一人特に恐ろしく強いって噂の人がいるんだ」
穂乃果「その人はどんな人なの? やっぱり大きな派閥を持ってるの?」
花陽「いえ、その人は派閥を持っていないそうです…ただ、タイマンでは負けなしとの噂で、興味半分で挑戦しに行った今年の新入生は、もれなく病院送りになったみたい」
穂乃果「ほへぇー、そんな凄い強い人がいるんだね」
花陽「名前は確か、矢澤先輩だったかな? とにかくその二人には要注意です!」
穂乃果「ふむふむ…」
花陽「で、ここからが本題です!」
花陽「私達が入学してすぐのことなんだけど…絢瀬派の先導で『一年生最強決定戦』が行われたの」
凛「やっと凛と西木野の話だね」
穂乃果「えっと…?」
花陽「文字通り、一年生で一番喧嘩の強い人を決めようっていうことなんだけど…絢瀬派の人から、優勝者には絢瀬派幹部の座をやるって言われたの」
穂乃果「うん…?」
花陽「えっとね、派閥の幹部って基本的に二年生以上じゃないとなれないみたいなんだ…だから最大派閥の幹部っていうのは特権階級みたいなもので…」
凛「要はドヤ顔で学校内を歩き回れるってことにゃ」
穂乃果「なるほど!」
花陽「…伝わったのかな? それでね、私は外からその乱闘を見てたんだけど、そのとき特に目立ってたのが……」
花陽「ここにいる凛ちゃんと、西木野さんの二人だったの」
<<一ヶ月前、音ノ木坂学院高校、体育館>>
「オラァ!」ブンッ
凛「ほっ」サッ
凛「えいっ」
バキッ
「ぐはっ…」ドサッ
凛「よっし、これで五人目」スタッ
「次は私が相手だ!」ダダッ
凛「上等!」バッ
ワーワーギャアコノヤローブットバス
「短髪のアイツ、なかなかやるね」
「ええ、さっきから全然相手の攻撃を受けてないものね」
「あの俊敏さは厄介だな」
花陽「……」ホッ
「おっ、あっちにも凄そうなヤツがいるよ」
花陽「?」
ボゴッ
「ぐはっ…こ、このっ」
真姫「……」スッ
ガッドゴッバキッ
「あ、が…」ガクッ
真姫「…なによ、もう終わり?」
ドガッ
「ぐふっ…」バタッ
真姫「あっけないわね」
「あの赤髪のヤツ、容赦ねぇな」
「あそこまで痛めつけられたらしばらく学校には来れないわね…」
花陽「あ、あんなに強い人が……凛ちゃん大丈夫かな」
バキィッ
凛「ふぅ……はっ、はっ」スタッ
凛「次は誰かな?」クルッ
ドガッ
真姫「……はぁ」
真姫「さて、と…」クルッ
「おっ、とうとうあの短髪と赤髪の二人だけになったわね」
「どっちもかなり強いけど、どっちが勝つのかしら」
花陽「り、凛ちゃん…」ゴクッ
凛「あとは凛たちだけみたいだね?」
真姫「……」
凛「…来ないならこっちから行くよ!」ダッ
真姫「……」ボソッ
凛「ん?」
「そこまでです!」
真姫「!」
凛「!」ピタッ
「残り二人になったので今日はこれで終わりです」スタスタ
真姫「…アナタは」
凛「確か絢瀬派の…」
「貴方達、名前は?」
凛「星空凛だよ!」
真姫「…西木野真姫よ」
「星空凛に…西木野真姫、ですね……わかりました」
「貴方達二人には一週間後、再びこの場所でタイマンをしてもらいます」
凛・真姫「!!」
花陽「凛ちゃんと…あの赤髪の子でタイマン!?」
「あの二人がタイマンか…」
「今日はここまでみたいね」
ザワザワ
「勝った方を私達の派閥に迎え入れます、いいですね」
真姫「…派閥に入るとか入らないとか、そんなことはどうでもいいわ」
「…おや?」
真姫「…ただ、頂点(テッペン)を取るのに邪魔な相手は倒すだけよ」
凛「それって凛のこと?」
真姫「…ふん」スタスタ
凛「シカトされたにゃ」
「……貴方はどうなんですか?」
凛「凛はもちろんやるよ!」
「ならば問題はないですね」フッ
凛「あっ…かよちんだ! おーい!」
花陽「凛ちゃん! おつかれさま!」
花陽「…といった感じに、凛ちゃんと西木野さんでタイマンをすることになったんです」
穂乃果「ほへぇー、凛ちゃん強いんだね!」
凛「かよちんを守る為に鍛えてるからね!」
花陽「でも、そこからが大変で……凛ちゃんと西木野さんのところに、二人にやられた人達が仕返しにきて…」
凛「『アンタ達二人で一年生最強を決めるなんて許さないわ!』って感じにね」
花陽「まあ結局二人とも強いから大丈夫だったんだけどね」
凛「全員返り討ちにしてやったにゃ!」
凛「…でも、西木野とのタイマン当日に……」
<<三週間前、体育館への道中>>
凛「…お揃いで何のご用かな?」
「見てわからない?」
「この一週間でテメェと西木野にやられたモンで集まったのさ」
凛「雑魚キャラの顔はいちいち覚えてないにゃー」
「テメッ!?」
「この人数を前によくそんな減らず口が叩けるな!!」
「まあ、落ち着け」
「……実はアタシらよ、一つ決めたことがあるんだわ」
凛「…?」
「アンタと西木野、どっちについてくかって話さ」
「見たところ、アンタら二人の実力はどっこいどっこいってとこ」
「つまり、どっちが勝つかは読めない」
「だったら、アタシらに得のある方を選ぶのがいいってものさ」
凛「ふーん…それで?」
「この音ノ木坂で生き残るのは西木野みたいなヤツの方だ……星空、アンタみたいなのは強くても生き残れないよ」
「……小泉みたいな弱いヤツとつるんでるようじゃ、ね」ニヤッ
凛「……!!」
凛「……かよちんを、馬鹿にするなっっ!!」ダッ
「!!」
バギィッ
「ごばっ」
凛「西木野の前にお前達を潰してやるっっ!!」
「来たなっ!」
「やっちまえ!」
<現在、ハンバーガー屋>
凛「……って感じで、アイツらの挑発に乗っちゃって」
穂乃果「それは怒るよ! 友達のことを悪く言われたんだもん!」
凛「…もちろん、そこでやられる凛じゃないけど、さすがに人数が多くてさ」
花陽「体育館に来たときの凛ちゃん、ボロボロだったからなにがあったのかと思って心配しちゃったよぉ」
凛「悔しいけど、その後にやった西木野とのタイマンに、勝てなかったんだ…」
花陽「あれはしょうがないよ、西木野さんが相手だったわけだし…」
穂乃果「西木野って人も強いんだね」
花陽「うん、凛ちゃんと同じくらい強いよ」
凛「かよちん! 凛は負けないよ! 次は絶対勝つんだから!」ガタッ
花陽「わっ…う、うん!」
<同時刻、音ノ木坂学院高校、音楽室>
真姫「……」スッ
「ピアノ、弾かれるのですか?」
真姫「!」
真姫「…また来たの?」
「今日は良い御返事が聞けるかと思いまして」
真姫「…何回も言ってるでしょ、派閥に入るつもりはない、って」
「貴方のお仲間は派閥入りを期待しているようですが?」
真姫「…アイツらは仲間なんかじゃないわ」
真姫「私についてくることで、自分達も強くなった気でいたいだけよ」
「なるほど」
真姫「…それに、余計なことしかしないし」
「それは小泉花陽を襲ったことを指して言っているのですか?」
真姫「……」
「確かに、それで星空凛を誘い出せたならともかく、今日入って来たという転校生に負けてしまったようですし、そもそも星空凛とちゃんと勝負がしたい貴方としては
ガンッ!!
真姫「…黙りなさい」
「ふふ、これは失礼しました」
真姫「…喧嘩を売りたいのなら買ってあげるけど?」
「いやですね、私は貴方を仲間に迎え入れたいんですよ?」
「そんな相手に喧嘩を売る訳がないじゃないですか」
真姫「……」
「それで…お仲間に頼まれた通り、転校生をやるんですか?」
真姫「…やらないわよ、興味ないし」
「ふむ」
真姫「無駄話は終わりよ、今日はもう帰って」
「彼女が貴方以上の実力者だとしても?」
真姫「…! どういうこと?」
「転校生の高坂穂乃果は貴方よりも強い、と言ったんですよ」
真姫「…なによそれ」
「実際、不意打ちとは言え、四人いたのを一瞬で倒していましたし」
真姫「なんでアナタがそんなことを知っているのよ」
「一体絢瀬派の人間が何人いると思ってるんですか?」
真姫「……」
「まあ、やるかやらないかは貴方の好きにしてもらって構いません」
「とにかく、私は貴方が『一年生最強』である限り派閥への勧誘を続けますので」
「では」スタスタ
真姫「……」
真姫「…転校生…高坂、穂乃果、か」
投下終わりです
また書き貯めが出来次第投下します
投下始めます
<ハンバーガー屋からの帰路>
穂乃果「あ、二人ともそっち?」
凛「そうだよ、穂乃果ちゃんはそっち?」
穂乃果「うん、それじゃここでお別れだね」
穂乃果「二人とも、今日は色々教えてくれてありがとね!」
花陽「そ、そんな、こちらこそっ助けてくれてありがとうございました!」
凛「また明日、そっちのクラスに遊びに行くにゃ」
花陽「うん、穂乃果ちゃんもお昼ごはん一緒に食べよう?」
穂乃果「ほんとに? やったー!」
花陽「ふふ、それじゃまた明日ね」
穂乃果「うんっ、またあした!」
凛「ばいばーい!」
<高坂家、穂むら店内>
穂乃果「ただいまー」
高坂母「おかえりー…って、こら! 帰りは裏口から入りなさいっていつも言ってるでしょ!」
穂乃果「えへへ、ごめんごめん」
高坂母「まったく、この子は…」
海未「…ふふ、穂乃果は相変わらずですね」
穂乃果「もー、そんなにいつも怒られてるわけじゃないよ、海未ちゃん……って海未ちゃん!?」
海未「こんばんは、久しぶりですね、穂乃果」
穂乃果「ほんとに久しぶりだよっ、どうして海未ちゃんがここにいるの? ひょっとして穂乃果に会いに来てくれたの?」
海未「いえ、久々にほむまんが食べたくなりまして、帰り道に寄らせていただきました」
穂乃果「なーんだ、ほむまんが目当てかー…海未ちゃん、ほむまん大好きだもんね」
高坂母「音ノ木坂に入ってからもたまに買いに来てくれてるのよ」
穂乃果「そうだったの? 言ってくれればお店に出てきたのに!」
海未「…昼間に買いに来ることが多かったですし、進学校に行った穂乃果の勉強の邪魔をしてはいけないと思いまして」
穂乃果「えーっ、全然大丈夫だよ! お母さん、今度から海未ちゃんがお店に来たら穂乃果のこと呼んでね!」
高坂母「そうねぇ、そしたらついでにそのままお店の手伝いもしてもらおうかしら」
穂乃果「…海未ちゃんの接客ならやるよ!」
海未「私の相手だけしてどうするんですか」
海未「…おや、もうこんな時間ですか」
穂乃果「あれ、もう帰っちゃうの?」
海未「ええ、そろそろ夕飯の時間も近いですし……それに、穂乃果にも会えましたから」ニコッ
穂乃果「! えへへ、今度はお茶でも入れてゆっくり話したいな」
海未「そうですね、穂乃果の部屋にも久しく上がっていませんし…」
穂乃果「明日からは学校でも会えるしね!」
海未「…学校では先輩と後輩ですけどね?」
穂乃果「それは言わないで~!」
海未「ふふっ、それではまた」
穂乃果「うんっ! あっそうだ、ことりちゃんは元気?」
海未「…ええ、ことりも穂乃果に会いたがってると思いますよ?」
穂乃果「そっか、今度また三人で集まろうね!」ニコッ
海未「…そうですね」ニコッ
海未「それでは、失礼させていただきます」
穂乃果「またね!」
海未「はい、また会いましょう」
<夜、高坂家、居間>
穂乃果「はー」ゴロゴロ
穂乃果「……」ゴロゴロ
穂乃果「……」ピタッ
穂乃果「……久々だったな、人を殴るの」
ガララ
穂乃果「あっ、雪穂かな?」ガバッ
雪穂「……」コソコソ
穂乃果「雪穂、おかえり!」
雪穂「わっ…あれ、お姉ちゃんだけ?」
穂乃果「うん、お母さんはお風呂、お父さんはお店の厨房に…って、雪穂どうしたのその怪我!?」
雪穂「ちょっ、しーっ、静かに!」
穂乃果「えっ、ご、ごめん」バッ
穂乃果「…で、どうしたのその怪我?」ボソボソ
雪穂「…部屋で話すよ、お母さんに見つかったら面倒だし」
<高坂家、雪穂の部屋>
穂乃果「ふーん…じゃあその子を助ける為に?」
雪穂「まあ、結果的にそうなったというか…痛っ」
穂乃果「あっ、ごめん、痛かった?」
雪穂「…傷口に染みただけだから平気だよ」
穂乃果「えへへ、昔は手当てするのはいっつも雪穂の役目だったもんね……私はされる側だったし」
雪穂「あの頃のお姉ちゃんは怪我して帰ってくること多かったし…痛っ」
穂乃果「…下手っぴでごめんね?」
雪穂「いいよ、もう…」
雪穂「……」
雪穂「…お姉ちゃんはさ」
穂乃果「ん?」
雪穂「今日、どうだった?」
穂乃果「ふふん、驚きたまえ雪穂! なんと! 転校初日にして、新しく出来た友達と早速寄り道して帰ってきちゃったのだ!」
雪穂「ふーん」
穂乃果「えっ、反応薄くないっ!?」ガーン
雪穂「いや、お姉ちゃんならそれくらい普通にしそうだし」
穂乃果「えぇ~」
雪穂「私が聞きたいのは、音ノ木坂のことだよ」
穂乃果「音ノ木坂のこと?」
雪穂「うん、絡まれたりしなかった?」
穂乃果「うん、朝のホームルームで転校生です!って挨拶したら、放課後に校舎裏来てっていきなり呼び出されちゃったよ~」
雪穂「い、いきなりだね」
穂乃果「でしょ?」
雪穂「…でもその様子じゃ、どうせ平気だったんでしょ?」
穂乃果「まあね、でも久々だったから、ちょっと勘が鈍ってたかも?」
雪穂「何人相手だったの?」
穂乃果「確か、四人だったかな?」
雪穂「…はぁ、私は三人相手にこのザマだったってのに」
穂乃果「はっはっはっ、精進したまえ」
雪穂「……腹立つ」
雪穂「それで」
穂乃果「?」
雪穂「取るの? 音ノ木坂の頂点(テッペン)は」
穂乃果「えっ、なんで?」
雪穂「えっ? だって、中学のときは海未ちゃんとことりちゃんと三人でトップに立ってたじゃんか」
穂乃果「穂乃果達はそういうつもりなかったんだけど…」
雪穂「けど、その頃一年生だった私達の間でも噂になってたよ、三年の『ことほのうみ』だけには逆らっちゃいけないって」
穂乃果「うわ、その呼ばれ方懐かしい!」
雪穂「…そんな感じだったから、てっきり音ノ木坂でもそういう感じになるのかなって思ってたんだけど……違うの?」
穂乃果「別にそういうつもりで喧嘩してたわけじゃないもん、音ノ木坂のテッペンを取るつもりもないよ」
雪穂「ふーん、そうなんだ…」
コンコン
穂乃果・雪穂「!」
「穂乃果ー? 雪穂の部屋にいるの?」
穂乃果「うん、いるよー」
「お風呂空いたから、次入っちゃって」
穂乃果「はーい」
「雪穂も帰ってきてるのよね?」
雪穂「う、うん」
「ご飯、下にあるから、自分でよそって食べちゃってね」
雪穂「わかった」
「お母さんはお父さんのところ行ってくるから」
穂乃果・雪穂「はーい」
雪穂「…ふぅ」
穂乃果「あ、下行くの?」
雪穂「うん、お母さんがいないうちにささっと食べちゃいたいから」
穂乃果「そっか、穂乃果もお風呂入っちゃおっと」
雪穂「…ねぇ」
穂乃果「?」
雪穂「…やっぱいいや」
穂乃果「ええっ? なになに、気になるよ~」
雪穂「なんでもないよー」ダッ
穂乃果「むぅ」
穂乃果「……」
穂乃果「…音ノ木坂のテッペン、か」
穂乃果「……」
穂乃果「…それよりもまず留年回避しないと!」グッ
短いですが投下終わりです
次はもっと書き貯めてきます
投下始めます
<翌朝、音ノ木坂学院高校、廊下>
ザワザワ
穂乃果「あれ? なんだろ、この人だかり」
「!」
「おいっ、来たぞ」
「アイツが例の転校生ね」
穂乃果「ん?」
「よー、転校生」
「昨日は世話になったなぁ」
穂乃果「! 昨日花陽ちゃんに絡んでた人達…」
「シンガクコーのイイ子ちゃんだと思って甘くみてたけどよ」
「今日は油断しないわよ」
「クラスのヤツらにも声かけてこんだけ人数集めたんだわ」
「今からお前を潰す……昨日みたいに不意打ちで逃げれると思うなよ?」
穂乃果「……」
穂乃果「いいよ」
「あ?」
穂乃果「その喧嘩、買ってあげるよ」
<校舎裏>
穂乃果「鞄は……この辺りに置いておけば大丈夫かな?」
「わざわざ人目のつかない場所を選ぶなんてなぁ」
穂乃果「よーし……ふぅ」
穂乃果「いっちに、さんしっ」ノビー
「まあ、アタシらにとっちゃ好都合だし」
穂乃果「ごーろく、しっちはっち」グイー
「自分から死にに行ってるとかマジ笑えるわ」
ギャハハハ
穂乃果「にーにっ、さんしっ」グッグッ
「こいつ昨日ので調子に乗ってんじゃね?」
穂乃果「ごーろく、しっちはっち」ノビー
「つーか、アタシは昨日その場にいなかったから知らねーけどさ、アンタ達四人が油断し過ぎだったんじゃね?」
「ホントにコイツ強いわけ?」
穂乃果「すー…はー…」
「は? 今なんつったお前ら」
穂乃果「すー……ふぅ……」
「待て待て、今は仲間割れしてる場合じゃねぇだろ」
穂乃果「……よしっ」ダッ
「…つーか、転校生! お前、なに呑気に準備体操なんかして
バギィッ
「ぶばっ」ドサッ
「!?」
「んなっ!?」
穂乃果「…っと」スタッ
「こ、コイツ、今何メートル跳びやがった…?」
穂乃果「……あれ? 喧嘩、もう始まってるんだよね?」
「!!」ゾクッ
穂乃果「来ないならこっちからいくよっ!」ダッ
<同時刻、廊下>
花陽「凛ちゃん、もう授業始まっちゃうよぉ」
凛「ちょっと挨拶するだけだから大丈夫だって」
凛「穂乃果ちゃーん」ガララ
花陽「り、凛ちゃんっ、別のクラスに入るときは目立たないように…あれ?」
凛「全然人がいないにゃ」
花陽「穂乃果ちゃんもいないね…どうしたんだろ」
凛「ねぇねぇ」
「あ? って、星空!?」
凛「穂乃果ちゃんがどこにいるか知らない?」
「…転校生か」
「アイツなら、今頃西木野の仲間達にボコられてんじゃね?」
凛・花陽「!!」
「おっおい、言っちゃっていいのかよ」
「いんじゃね? 別にアタシら西木野の仲間じゃないし」
「まー、転校生の味方するつもりもないけどね」
「なんなら今から見物しに行く?」
花陽「あ、あの…」
「ん? 誰お前?」
花陽「ひっ…そ、そのっ、穂乃果ちゃんが、どこに連れて行かれたか、知りませんか…?」
「あ? あー、なんか人目のつかない場所に行ったっぽいよ」
「なに、アンタ達も見物しに行くの?」
凛「見物じゃないよ」
「は? じゃあ、なにしに行くのよ」
凛「かよちん」
花陽「?」
凛「凛、ちょっと遅刻して行くから」
凛「先生への上手い言い訳考えるの、よろしくにゃ!」ダッ
花陽「えっ、ちょっ、凛ちゃん!」
キーンコーンカーンコーン
花陽「あぁ、チャイム鳴っちゃった! 授業始まっちゃうよ凛ちゃーん!」
凛「かよちんは授業受けててほしいにゃー! 穂乃果ちゃん連れてすぐ戻るからー!」ダダダ
花陽「えー!? あっ……もう見えなくなっちゃった……」
花陽「もうっ、凛ちゃん……」
花陽「…穂乃果ちゃんと一緒に、無事に帰ってきてね…」
<校舎裏>
「オラァぁぁあ」ダダダ
穂乃果「!」
「喰らえっ!」ブンッ
穂乃果「ほっ」サッ
穂乃果「ふっ」
バキッ
「ぐはっ」ズサッ
「こっちだコラ!」ブンッ
穂乃果「っ」パシッ
ズドッ
「ぐっ、ふ…」
穂乃果「やあっ!」
バキィッ
「あぎゃっ」ドサッ
「くそっ、なんなんだアイツの身のこなしは!」
「お前らっ殴りかかって避けられるなら、押して倒せ!」
「よっしゃ」ダッ
「っのやろぉ」ダッ
ガツンッ
穂乃果「っ」グラッ
「そのまま倒れなっ!」グワッ
穂乃果「!」サッ
「なにっ」
「屈んで避けやがった!」
穂乃果「鼻曲がったらごめんねっ!」ブンッ
バギッグシャッ
「えぶっ」「あべっ」ドサドサッ
穂乃果「ふぅー…」
「二人がかりでダメなら三人がかりだっ」ダッ
「ふっ」ダッ
「任せなっ」ダッ
穂乃果「! 一度に三方向から…ならっ」ダッ
「なにっ!」
「アタシ一人の方に自分から!?」
穂乃果「やあああああ」ダンッ
「そのまま跳んだっ!?」
「こっコイヅっ!?」グチャッ
穂乃果「顔踏んじゃってごめんねっ」ダンッ
「げっ」
バキッ
「ぐふっ」ドサッ
穂乃果「っ」ドサッ
「チャンスッ」ダッ
穂乃果「もう一人は!?」ガバッ
「後ろだよっ!」ガバッ
穂乃果「しまっ」
ギュウウウ
穂乃果「うっぐ…」
「一人を踏み台にしてっ、反対側のヤツに向かって跳んで殴りに行ける、その身体能力は大したもんだがなっ」ギュウウウ
穂乃果「く、くるし…」グググ
「こうやって首絞めちまえばっ、どんな人間でもオチるだろうがっ」ギュウウウ
穂乃果「ま、まずい……かもっ」グググ
「やってくれたな、転校生っ」
「オチる前に痛めつけてやるよっ」ダッ
「オラァっ」ダッ
穂乃果「う、うぐぐぐ」グググ
凛「穂乃果ちゃーんっ!!」ダダダ
「なっ!!」
「星空っ!?」
「なんでアイツがここにっ」
凛「とうっ」ダンッ
ドカッ
「あがっ」ドサッ
凛「よっ」スタッ
凛「えいっ」ブンッ
バキッ
「ぐおっ」
穂乃果「りっ、凛ちゃ…」グググ
「な、なんで星空のヤツがここに来てるんだ!?」フッ
穂乃果「! えいっ」
ズドンッ
「うぐっ」
穂乃果「もいっちょ」
ガンッ
「あべっ」パッ
穂乃果「よしっ、離れたっ」バッ
ドカッバキッズドッ
「あ、が」
穂乃果「おりゃっ」ブンッ
ボコッ
「ぐっ、くそ…」ドサッ
穂乃果「はっ…はっ……惜しかったね? でも、絞め技するなら一瞬でも緩めちゃダメだよ? 前に私の友達がそう言ってたもん」
凛「穂乃果ちゃんっ」タタッ
穂乃果「凛ちゃん! どうしてここに?」
凛「教室に遊びに行ったら穂乃果ちゃんいなかったから、探しに来たんだよっ 」
穂乃果「そっか…助かったよ、ありがとう!」
「こ、コイツら~」
「星空と転校生のヤツが繋がってたなんてね…」
「ちょうどいいわ、星空もまとめてやっちゃいましょ!」
「それもそうだっ!」
穂乃果「…ごめん凛ちゃん、半分任せてもいいかな? 私、まだ体がなまってるみたいでさ…」
凛「全然大丈夫だよっ、凛もコイツらにはお返しするものがあるからね!」
「なに喋ってんだゴラァ!」ダッ
「仕切り直しよっ」ダッ
穂乃果「来るよ!」バッ
凛「うん!」バッ
<同時刻、凛・花陽のクラス、教室内>
ザワザワ
花陽「はぁ……やっぱり付いていくべきだったかなぁ」ボソッ
花陽「……うー」
ガララ
「はーっ、はーっ…」
花陽「?」
先生「こ、コラ、授業中だぞ…しかも君は別のクラスの…」
「お前ら! 校舎裏来てみろよ! 星空と昨日来た転校生が、西木野の仲間のヤツらとやり合ってんぞ!」
花陽「!」
「えっ、マジで?」
「星空と転校生が?」
「そういや昨日、西木野の仲間の何人かが誰かにやられたって話聞いたな」
「もしかして…転校生が?」
「西木野を倒す為に組んだのか?」
ザワザワザワザワ
先生「あっ、あー皆さん静かに、静かに…」
「ちょっと見に行かね?」ガタッ
「そうだな、おもしろそうだし」ガタッ
「喧嘩だ喧嘩だー」ガタッ
先生「ちょっ、ちょっと皆さん、まだ授業中…」
ドドドドド…
花陽「……」ポツーン
先生「……」ポツーン
花陽「あはは……」
先生「残ったのは、君だけか……」
花陽「……」
花陽「すみません、先生っ!」ガタッ
先生「えっ、こっ小泉さんまでっ!?」
花陽「ごめんなさーい!」タッタッタッ
<校舎裏>
凛「やああっ!」バッ
ドカッ
「ぐふっ」
穂乃果「えいっ!」ブンッ
バキッ
「ぎゃっ」ズサッ
「コイツらっ」
「二人になって更に面倒になったわね」
「…私が星空を引きつけるから、これで背後から狙ってくれ」スッ
「りょーかーい」パシッ
「いくよっ!」ダッ
「星空ァ!」ブンッ
凛「っ!」サッ
「ふっ!」シュッ
凛「っしょ」パシッ
「! おらっ」ブンッ
凛「ほっ」パシッ
「くっ…」グググ
凛「っ」グググ
「……」ニヤ
穂乃果「凛ちゃん! 後ろっ!」ダッ
凛「え?」
ガンッ
花陽「はっ…はっ…」
ザワザワ
花陽「凛ちゃんと、穂乃果ちゃんは…?」ソーッ
穂乃果「がっ……」グラッ
凛「えっ…?」グググ
「ちっ…こりゃやる順番が変わっちまったかぁ?」
花陽「えっ、嘘…?」
花陽「……!」
ズダンッ
凛「!」
「!!?」
穂乃果「ふーっ……」
穂乃果「……あはっ」
「なっ、なんで」
「倒れないんだ、コイツはっ」
穂乃果「……」ニヤッ
「ぼっ木刀が、モロに頭に直撃したはずっ」
ドゴッ
「ぐふっ!?」ドサッ
穂乃果「…ふぅ」スッ
穂乃果「いやぁ、久々にいいモンもらっちゃったぁ」ニヘラ
「っ…ぁぁああ」ダッ
凛「うわっ」ドサッ
「あああああっ」ブンッ
ガンッ
穂乃果「……」
「あっ…が……」ドサッ
花陽「す、すごい…」
「あそこから、クロスカウンター決めやがった…」
「てかなんであんな一撃喰らって動けんだアイツ」
「とんでもないヤツが来たんじゃねぇか、これ…」
ザワザワザワザワ
穂乃果「ふぃー…」
凛「ほ、穂乃果ちゃん…頭、大丈夫?」
穂乃果「あっ、凛ちゃん? 大丈夫だよ!」ツー
凛「穂乃果ちゃん、血! 血が出てるよ!?」
「く、くそ~、なんなんだアイツは」
「マジでバケモンなのか…」
「お、おい、動けなくなってるヤツが増えてきてるぞ」
「これ勝てんのか…?」
「くっ……」
花陽「凛ちゃんは大丈夫そうだけど…」
花陽「穂乃果ちゃん大丈夫かなぁ…?」
「オトモダチの心配してるのー?」
「今から大丈夫じゃなくなりまーす」
花陽「へっ?」
花陽「きゃっ、なにし」
「はいはい、黙っててねー」ガシッ
花陽「ん、むっ!?」ジタバタ
「ちょいちょい、抵抗すんなって」スッ
花陽「!?」
「可愛いお顔に一生モノの傷、残したくないだろ?」チャキッ
<穂乃果のクラス、教室内>
先生「であるからして…」
ガララ
真姫「……」スタスタ
先生「あっ、に、西木野さん」
真姫「……」スタスタ
先生「ち、遅刻はダメですよ?」
真姫「……」ジッ
先生「ひっ! つっ次からは気を付けてくださいね…」
真姫「……ふん」ガタッ
「…なんだ? アイツ、自分は行かないのかよ」ボソボソ
「ライバルとやるのはお仲間に任せて、自分は手を下さずってかぁ?」ボソボソ
「良い御身分だなぁ、一年生ナンバーワンって上に認められてるからってよ」
真姫「…は?」
「ちょ、お前声でけーよ!」
「あっ」バッ
真姫「なにか言った?」
「な、なんでも」
真姫「……ふん」
真姫「……」キョロキョロ
真姫「……」
真姫「……ねぇ」
「ひっ、なっなんだよ」
真姫 「転校生、今日来てないの?」
「……は?」
真姫「…なによ」ギロッ
「ひゃっ、えっ、にっ西木野が呼び出してたんじゃないの?」
真姫「……はぁ?」
「えっ、違うの?」
真姫「私はそんなことしてないわよ」
「……マジで?」
「じゃあなんでアイツら転校生を連れてってたんだ?」
「西木野の指示じゃなかったのか?」
真姫「ちょっと、どういうことよ」
「なんだ、本当に関わってないのか?」
「今ね、アンタの仲間達と転校生がやり合ってるのよ」
真姫「!」
「しかもそこに星空も加わったらしいじゃん?」
真姫「なっ」
「やっぱ見に行きゃよかったかなぁ」
真姫「……教えなさいよ」
「?」
真姫「ソイツらがどこにいるのか、今すぐ教えなさい」
投下終わりです
書き貯めが出来次第、また投下します
投下始めます
<校舎裏>
凛「穂乃果ちゃん」ブンッ
バキッ
「ぐえっ」
穂乃果「なーに、凛ちゃん」バッ
ドガッ
「あがっ」
「こんにゃろっ」ブンッ
凛「これ終わったらさ」サッ
穂乃果「終わったら?」ブンッ
ガンッ
「ぶっ」ドサッ
凛「保健室行こ?」
穂乃果「そうだねぇ、さっきから血が垂れてくるし」ツー
「舐めやがって!」ダダッ
凛「ほっ」穂乃果「えいっ」
ドゴォッ
「ぎゃっ」ドサッ
凛「穂乃果ちゃん! 今の、タイミングばっちりだったね!」
穂乃果「だね! 私達、相性いいんだね!」
「く、くそ…こんな喧嘩の合間にくっちゃべってるようなヤツらに…」
「転校生ィ!!」「星空ァ!!」
穂乃果・凛「!?」バッ
「くっくっくっ…」ニヤニヤ
花陽「むぐっ」
「随分と好き勝手に暴れてくれてるじゃん?」ニタニタ
凛「かよちん!?」ダッ
穂乃果「花陽ちゃんっ!」ダッ
「おーっと、そこでストップだキミタチ」ニヤニヤ
「このナイフが見えないかなー?」チャキッ
凛「!!!」ピタッ
穂乃果「なっ」ピタッ
花陽「む、ぐ」ブルブル
「キミタチがそこから一歩でもこっちへ近づくようなら…」ニタニタ
「この子のお顔に、おーっきなキズを作っちゃおうかな?」ニヤニヤ
花陽「ぅっ…」ブルブル
凛「だ、だめっ!! かよちんに刃物はっ!!」
「うんうん、そう思うならそこから動かないでね?」ニタニタ
穂乃果「ぐっ……」
「よしよし、エライぞー」ニヤニヤ
「あの不気味なニヤケ面……あっ、アイツら! 入学式のときにも暴れてた…」
「思い出した、双子のヤツらか!」
「確か三年の矢澤先輩に挑んで、返り討ちに遭ったんじゃ?」
「病院から戻ってきてたのか…」
「まさかアイツらも西木野の仲間になってたってのか?」
ザワザワザワザワ
「まさか、お前ら二人が戻ってきてるとはな……一体、どういう風の吹き回しだ?」
「うーん? 面白そうなことが起きてたからねー」ニヤニヤ
「なんでも星空ちゃんが新しく来た子と一緒に暴れてるんだって?」ニタニタ
「アタシらも星空ちゃんとはちょーっと揉めたことがあってね」ニヤニヤ
「こりゃ参戦するっきゃないってね」ニタニタ
「それでこの子を捕まえて来たってわけ」ニヤニヤ
花陽「……」ブルブル
「そうか……それで? お前らは誰の味方なんだ?」
「んー、まあ少なくとも星空ちゃんの味方ではないね」ニタニタ
「だから星空ちゃんとヤり合ってるキミタチに敵対するつもりはないかな?」ニヤニヤ
「……なるほどな、敵の敵は味方ってヤツだな?」ニヤッ
穂乃果「凛ちゃんっ、花陽ちゃんを助けなくっちゃ!」
凛「だめ…かよちんに刃物は…」ブツブツ
穂乃果「凛ちゃん?」
凛「凛が…凛が、守らなきゃ…」ブツブツ
穂乃果「凛ちゃ
「おいお前らァ!」
穂乃果・凛「!!」
「小泉を傷つけられたくなけりゃ動くんじゃねーぞ?」スタスタ
穂乃果「くっ…」
「おらっ」ブンッ
ドゴッ
凛「がっ」
穂乃果「! 凛ちゃんっ!」バッ
「動くなっつったよなァ!?」
穂乃果「っ」ピタッ
「さっきはやってくれたじゃねぇかっ」
ガンッ
凛「っ」
「調子に乗りやがって!」
ドガッバキッズドッ
凛「っ…」グラッ
穂乃果「凛ちゃん!」
「おっとォ」ガシッ
「簡単には寝かせねーぞ?」
「転校生はそこで大人しく見とけよ」
「新入りには見せてやるよ、音ノ木坂の怖さってヤツをなァ」
穂乃果「っっ」ギリッ
「くくっ、これで星空ちゃんも終わりだねぇ」ニタニタ
花陽「っ」
「ねぇねぇ、今どんな気持ち?」ニヤニヤ
「キミのせいでオトモダチがボコボコにされてて」ニタニタ
「なんにもできないのってどんな気持ち?」ニヤニヤ
花陽「ぅっ…」
花陽「っ」ポロポロ
「ありゃりゃ、泣き出しちゃったかー」ニタニタ
「イイ顔してるなぁ……最高だねっ」ニヤニヤ
トントンッ
「ん? 今いい所なんだけ
バギイィィッ
「ぶべらっっっ」グルンッ
ドサッ
「ぁぎゅっ……」ピクピク
「なっ!?」
花陽「!?」
真姫「ふぅ……」
真姫「全く、どいつもこいつも勝手なことしてくれて……」
真姫「私は最悪な気分なんだけど?」
「なっ、なんで西木野ちゃんがアタシらを
ガンッ
「ぐふっ」パッ
花陽「!」
真姫「なんで……って」ガシッ
ドゴッ
「あぶっ」
ドゴッ
「えぐっ」
ドゴッ
「あびっ」
ドゴッ
「おぇっ」
ドゴッ
「ぉっ」
ドサッ
「あ、あぅ」ガクガク
真姫「ふっ」ブンッ
バギイィィッ
「ぶごっ」グルンッ
ドサッ
真姫「……アナタみたいに、喧嘩に凶器(オモチャ)を持ち出すような卑怯者は、大嫌いなのよ」
「ぅげ……」ピクピク
バキッ
凛「ぐっ……」
「おらっ、もう一発いくぞ!」
ガシッ
「あ?」クルッ
穂乃果「……」
「転校生っ! テメェ動きやがっ
ガンッッッ
「ぐべっ」グルンッ
ドサッ
「こ、このやろっ、小泉がどーなってもいいのかっ」
穂乃果「あれ、見なよ」クイッ
「は?」
「ぁげ……」ピクピク
「ぅご……」ピクピク
真姫「……」ギロッ
「真姫さんっ!?」
「なっなんでここに真姫さんがっ
バキッ
「ぐふっ」
穂乃果「……ふぅっ」
「あ……」ブルブル
穂乃果「これでもう、私達が反撃しない理由はないよね?」
穂乃果「凛ちゃん!」
凛「……っ」ガバッ
「ひっ」ビクッ
凛「……お前ら全員」
凛「逝っくにゃぁぁぁあああ!!!」ダッ
ガンゴンッドガッバキッズドッ
凛「ふぅ……」
「ぁが…」「ぅび…」「…ぇげ」ピクピク
穂乃果「これで……」クルッ
「ひっ……」ビクッ
穂乃果「あとは一人だけだね?」サッ
凛「覚悟は出来てるかにゃ?」サッ
真姫「待ちなさい」
穂乃果・凛「!」
真姫「ソイツには聞きたいことがあるわ」スタスタ
花陽「凛ちゃんっ! 穂乃果ちゃんっ!」タタッ
凛「かよちんっ!」ギュッ
花陽「ごめんなさいっ、私の、私のせいでっ」ギュッ
花陽「凛ちゃんが、こんなっ」ポロポロ
凛「かよちん……」
花陽「ごめんなさい……」グスッ
凛「……怪我は、ない?」
花陽「……え?」
凛「痛いところは? ナイフ突きつけられて怖くなかった?」
花陽「……うん、私は大丈夫、だよ」
凛「ならよかった」ニコッ
花陽「あ……」
花陽「で、でも凛ちゃんが」
凛「えいっ」ピッ
花陽「っ?」
凛「凛はね、かよちんを……友達を守る為に喧嘩をするんだよ」
凛「だから、かよちんが無事なら、それで充分なんだよ」ニコッ
花陽「凛ちゃん……」
凛「むしろ、凛が助けてあげられなくてごめんね」
花陽「そ、そんなっ、凛ちゃんが謝ることじゃないよっ!」
凛「ううん、かよちんを守るのは凛の役目だから……」
花陽「……そ、それだったら! まず私が凛ちゃんの言う通りに教室で待ってなかったのが良くなかったし……」
凛「いーや、かよちんが心配して見に来ちゃうことを予想できなかった凛が悪い!」
花陽「いや私が
穂乃果「はい、そこまでー!!」バッ
凛・花陽「っ?」
穂乃果「二人が謝り合うことなんてないんだよ!」
穂乃果「だって、凛ちゃんは私を助ける為に、花陽ちゃんは私と凛ちゃんを心配して来てくれたんでしょ?」
穂乃果「なら、一番謝らなきゃいけないのは私だよ」
穂乃果「二人とも、巻き込んでごめんなさい!」バッ
花陽「そっ、そんな」
凛「穂乃果ちゃんが謝ることないよ! これは凛が自分から…」
花陽「私も、私が二人を心配したから…」
穂乃果「……うん、だからね!」
穂乃果「二人とも、ありがとう!」ニコッ
凛・花陽「!」
凛「……かよちん!」
凛「ありがとう、凛のこと心配してくれて!」ニコッ
花陽「凛ちゃん……」
花陽「花陽のこと、守ってくれてありがとう!」ニコッ
穂乃果「うんうん、二人は笑い合ってるのが一番似合うよ!」
真姫「……」
真姫「で、私はいつまでコイツが逃げないように見張ってればいいのかしら?」
「ぁ、う……」ガタガタ
穂乃果「……あなたが西木野さんなの?」
真姫「ええ、そうよ…私が西木野真姫」
真姫「まともに話すのはこれが初めてね、転校生さん」
凛「っ、西木野っ!」ダッ
花陽「あ、凛ちゃ」
凛「ふっ」ブンッ
真姫「っ」パシッ
穂乃果「!」
凛「ぬ、ぐぐぐ」グググ
真姫「……そんなボロボロの状態で私とヤる気?」グググ
凛「……負けないよっ」グググ
凛「仲間を使って、こんな卑怯な真似をするヤツにはっ、絶対負けない!」バッ
真姫「っ」バッ
穂乃果「ストーップ!!」ガシッ
凛「えっ」
真姫「なっ」
凛「穂乃果ちゃんっ、どうして止めるの!」
花陽「凛ちゃんっ、今はやめてっ」
凛「か、かよちんまで…?」
花陽「……西木野さんは、私を助けてくれたの」
凛「えっ?」
真姫「……」
穂乃果「そっか、凛ちゃんは見てる余裕なかったよね」
花陽「あのナイフを持ってた人達を倒してくれたの、西木野さんなの……」
凛「えっ、だって、アイツらも西木野の仲間なんじゃ……」
真姫「……アイツらは、私の仲間じゃないわ」
真姫「大方、アナタを潰すのにちょうどいいタイミングだから参戦してきたんでしょうね」
凛「で、でも! 最初に穂乃果ちゃんを襲ってたのは西木野の仲間なんじゃ…」
穂乃果「…それを今から確認するんでしょ、西木野さん?」
真姫「ええ、そのつもり、よ」ガシッ
「ひぃっ」ガクガク
真姫「一体どういうつもりなのかしら? 私の許可なく勝手に動いて」
真姫「……しかも凶器(オモチャ)まで持ち出して」
「き、昨日報告したじゃないですか……転校生にやられたって」
真姫「一人相手に四人がかりで、でしょ」
「うっ」
真姫「それで今度はクラスの大半を集めて復讐? 聞いて呆れるわね」
「き、危険なヤツだと判断したので……」
真姫「前に星空凛を襲ったのもそれが理由?」ボソッ
「!!」
真姫「私が気づいてないとでも思ったの?」
「わ、私達は、ただ…真姫さんの、邪魔になりそうなヤツを……」
真姫「……私の邪魔になりそうなヤツ?」
グイッ
「ひっ」
真姫「私は、私の判断で動く」
真姫「倒す相手も私が決めるし、ソイツは私自身の手で倒す」
真姫「私の名前を使って、勝手に暴れるのはこれで終わりにしなさい」
真姫「もし次こんな真似をしたら」
真姫「私が、アナタ達全員を潰すわよ」
真姫「周りのくたばってるヤツらにも後で伝えておきなさい」
「は、はひっ」
真姫「ふんっ」パッ
「ひゃ」ドサッ
「ひ、ひいいぃぃぃ」ダダダッ
真姫「……転校生さん」
穂乃果「?」
真姫「コイツらは、アナタと星空凛の二人でヤったの?」
穂乃果「うーん、まぁ……」
凛「……凛が手伝ったのは途中からだよ」
凛「半分以上は穂乃果ちゃんが一人でヤってたよ」
真姫「! そう……」
真姫「……あの先輩の言うことも、まんざらデタラメってわけでもなさそうね」ボソッ
穂乃果「ん?」
真姫「高坂穂乃果」ザッ
真姫「アナタ、結構強いみたいじゃない」
穂乃果「えへへ、まあね!」
真姫「私と勝負しなさい」
凛・花陽「!?」
穂乃果「……ん?」
真姫「聞こえなかった?」
真姫「私と、タイマンで勝負しなさいよ」
投下終わりです
書き貯めが出来次第また投下します
投下始めす
誤字りました…投下始めます
<保健室>
花陽「動かないでね」スルスル
穂乃果「ん……」
花陽「どうかな? これくらいで大丈夫?」キュッ
穂乃果「うん、ピッタリ合ってるよ!」
花陽「ならこれでよし、っと」パチッ
穂乃果「ありがとう花陽ちゃん、これで頭から血が垂れてくる心配もなくなるよ!」
凛「かよちんは手当てするの上手だからね! かよちんにやってもらえれば安心だよっ」
花陽「そ、そんな……凛ちゃんが怪我したときによく手当てしてたから、それで慣れてるだけだよ」
凛「ううん、かよちんの手当ては凄いよ! 自信持っていいにゃ!」
穂乃果「うんうん、私なんか手当てしても痛がられるばっかりでさ~」
穂乃果「あっ! 昨日もね、妹が怪我して帰ってきたからその手当てしてたんだけど、痛い痛いって連呼されちゃってさ」
花陽「そ、そうなんだ」
凛「わかるわかる! 自分が怪我するのは慣れてるけど…」
穂乃果「怪我した人に手当てするのは苦手なんだよね…」
キーンコーンカーンコーン
穂乃果「あっ、二時間目始まっちゃったね」
凛「このままサボっちゃう?」
花陽「だめだよ凛ちゃん!」
凛「かよちんは真面目だにゃ~」
花陽「さっきの授業は皆抜け出しちゃったから、先生可哀想だったんだよ」
凛「かよちんも抜け出してきちゃったしね!」
花陽「うっ……そ、それを言われると」
穂乃果「花陽ちゃんは真面目そうだもんね」
凛「たぶんセンセーもビックリしてたよ! きっと『小泉さんまでぇ!?』って感じになってたにゃ」
穂乃果「あはは、それ雰囲気出てるよっ」
花陽「も、もう凛ちゃんてばっ」
凛「えへへ」
穂乃果「……あっ!」
凛「どうしたの?」
穂乃果「穂乃果の鞄、さっきの場所に置いてきちゃった…」
花陽「教室に置かなかったの?」
穂乃果「うん、入る前に校舎裏に行くことになっちゃったからね……二人ともごめん、ちょっと鞄取ってくるね!」ガララ
凛「凛もついてくよ!」ガタッ
穂乃果「大丈夫! すぐ戻ってくるからっ」タッタッタッ
花陽「あっ……」
凛「行っちゃったね…」
花陽「大丈夫かな、一人で…」
凛「すぐに戻って来なかったら凛が様子を見に行くよ!」
花陽「……うん」
花陽「……」
凛「かよちん?」
花陽「穂乃果ちゃん、本当に大丈夫かな」
凛「……さっきの話?」
花陽「うん…」
花陽「……だって、相手はあの西木野さんなんだよ? 穂乃果ちゃんも西木野さんがあの二人を簡単に倒しちゃったところを見てたはずなのに…」
凛「……穂乃果ちゃんは強いよ」
花陽「それは私も見てたからわかるけど……」
凛「ううん」
花陽「?」
凛「たぶん、本気になった穂乃果ちゃんはあんなものじゃないと思う」
花陽「どういうこと?」
凛「さっきの喧嘩でね、穂乃果ちゃんが凛を庇って殴られたとき……」
花陽「あっ、私そこ見てたよ! そのまま倒れちゃうかと思ったら踏みとどまってて…」
凛「うん……そのときね、笑ってたの」
花陽「えっ?」
凛「穂乃果ちゃん、頭殴られて痛いはずなのに笑ってたの」
凛「それまでの穂乃果ちゃんも十分強かったけど、あのタイミングからさらに動きが良くなってたように見えた」
花陽「……それまでは手加減してた、とか?」
凛「それはないと思う……けど」
凛「……」
花陽「?」
凛「……なんでもないにゃ! とにかく穂乃果ちゃんが帰ってくるのを待とう!」
花陽「う、うん!」
<<少し前、校舎裏>>
穂乃果「えっと……どうして西木野さんと私が?」
凛「そうだよっ、なんで穂乃果ちゃんが西木野とタイマンしなくちゃいけないの!」
真姫「簡単なことよ」
真姫「私が、アナタをこの手で倒すべき相手だと判断したからよ」
花陽「え、えっと……それじゃあ、さっきはなんで私を助けてくれたんですか…?」
真姫「……嫌いなのよ、ああいう卑怯な真似をする連中は」
真姫「私は、倒したい相手は真正面から叩き潰す」
真姫「だからアナタにタイマンを挑むのよ」
穂乃果「……」
穂乃果「……私は」
凛「待って、穂乃果ちゃん」ガシッ
穂乃果「凛ちゃん?」
凛「コイツとの喧嘩は、凛に先にヤらせて!」
花陽「!!」
真姫「……」
穂乃果「えっ、でも……」チラ
花陽「り、凛ちゃん」
凛「この前のリベンジがしたいの!」
凛「それに、西木野より凛の方が強いってわかれば、アイツらだってもう手を出してこなくなるよ!」
穂乃果「それは……」
凛「穂乃果ちゃんお願いっ」
穂乃果「……凛ちゃ
花陽「だめっ!!」
凛「えっ、かよちん…?」
花陽「……だめだよ、凛ちゃん」
花陽「前もそうやって西木野さんに挑んで……それでヤられて……」
花陽「こんなにボロボロな状態でまた西木野さんとヤったら、凛ちゃんもっと怪我しちゃうよ…」
花陽「そんなの嫌だよっ…」
凛「かよちん……」
穂乃果「……凛ちゃん、ここは私に任せてもらえないかな」
凛「穂乃果ちゃん……でも穂乃果ちゃんも怪我して…」
穂乃果「私は大丈夫! …でも、もしものときは凛ちゃんに任せるよ!」
花陽「穂乃果ちゃん……」
凛「……」
凛「仕方ないにゃ、穂乃果ちゃんに任せる!」
穂乃果「任せて!」
真姫「……話はまとまったかしら?」
穂乃果「うん、いいよ」
穂乃果「その喧嘩、買ってあげるよ」
真姫「商談成立、ね」
穂乃果「今すぐヤる? それとも場所を変える?」ツー
花陽「ほ、穂乃果ちゃんっ、頭から血がっ」
凛「やっぱり凛と交代するかにゃ?」
真姫「……」
真姫「……日付は一週間後、場所と時間はまた改めて伝えるわ」
穂乃果「わかったよ!」
真姫「それじゃ」スタスタ
ザワザワザワザワ
「結局どういうことなんだ?」
「西木野のヤツが出てきたと思ったら、あの双子をぶっ飛ばすし」
「アイツらと西木野は手を組んだんじゃなかったのか?」
「西木野は転校生達と話して、そのままどっか行っちゃったしね」
「とにかく転校生と西木野がタイマン張るのは確かってことだな!」
「どこでヤるのかなー、またここなのかな?」
ザワザワザワザワ
穂乃果(ギャラリーがうるさくなってきたね……)
穂乃果(……ん? あれは…)
体育教師「コラァッ!! お前らそこでなにやってるっ!!」ダダダ
「うわっ、めんどくさいのが来た!」
「ヤベェ、逃げろ!」
「捕まったらやばい!」
体育教師「また喧嘩でもしてたのかっ!!」ダダダ
穂乃果(げっ、先生っぽい人がこっちに来てるし!)
穂乃果「ふっ二人とも!」ガシッ
凛・花陽「えっ」
穂乃果「とりあえずここから離れよう!」ダッ
凛「ちょっ」ダッ
花陽「穂乃果ちゃん!?」ダッ
体育教師「待たんかコラァ!!」ダダダ
「逃げろ逃げろっ」ダッ
「捕まったら説教地獄だしな!」ダッ
「私ら見てただけだしね~」ダッ
体育教師「何もしてないなら逃げるんじゃないっ!!」ダダダ
ザワザワザワザワ…
<現在、校舎裏へ続く廊下>
穂乃果(先生から逃げるのに必死で鞄のことなんてすっかり忘れてたよ)タッタッタッ
穂乃果(二人に心配かけないように早めに戻らなきゃね!)タッタッタッ
穂乃果「……あれ?」ピタッ
海未「……おや?」
穂乃果「海未ちゃん! 学校で会うのは初めてだね!」
海未「そうですね……って、その頭の包帯はどうしたんですか?」
穂乃果「あっ、これ? 友達に巻いてもらったんだ!」
海未「いや、そういうことではなくてですね……誰かとヤり合ったんですか?」
穂乃果「うん、まあそんなところかな」
海未「早いですね……今日でまだ二日目でしょう?」
穂乃果「えへへ……」ポリポリ
海未「はぁ……まあ、大方誰かを庇ってというところでしょうか? 穂乃果が一人でいて、そんな傷を負わされることは考えにくいですし」
穂乃果「さ、さすが海未ちゃん……よくわかったね」
海未「……どれだけ私が貴方と共に戦っていたと思っているのですか」
穂乃果「あはは、そう言われると確かに海未ちゃんならわかりそうだね!」
穂乃果「それにことりちゃんも!」
海未「……ええ」
穂乃果「あっ、そうだ! 今日の昼休み、海未ちゃんの教室に遊びに行ってもいいかな? ことりちゃんも同じクラスなんだよね?」
海未「今日ですか? すみませんが今日は用事がありまして……恐らく、ことりも……」
穂乃果「あっ、そうなんだ」
海未「すみません、最近は忙しくて中々時間が……」
穂乃果「それって部活とか委員会とか?」
海未「……そんなところです」
穂乃果「そっか、なら仕方ないね……残念だけど」シュン
海未「すみません……」
穂乃果「ううん、大丈夫だよ! 海未ちゃんは二年生だもんね、一年生の穂乃果と違って色々大変なことがあってもおかしくないよ!」
海未「そうですね……穂乃果も今度はちゃんと二年生に上がるのですよ?」
穂乃果「うっ……だ、大丈夫だよ! ここならちょっとくらい勉強が出来なくても、留年することはないって聞いたもん!」
海未「まぁ、そうですね……ですが、油断していると痛い目に遭いますよ?」
穂乃果「わかってるよー、ちゃんとやるってば」
海未「だといいのですが」
穂乃果「信用ないなぁ」
海未「相手が穂乃果ですからね、心配の一つや二つじゃ足りませんよ」
穂乃果「え~、そんなに? 海未ちゃん心配しすぎだよ~」
海未「……ところで穂乃果」
穂乃果「ん?」
海未「先程急いでいるように見えましたが、どこかへ向かう途中だったのですか?」
穂乃果「……」
穂乃果「あっ、鞄取りに行く途中だったの忘れてた」
海未「鞄ですか?」
穂乃果「ごめん、海未ちゃん! また今度話そうね!」
海未「ええ、また時間のあるときに是非」
穂乃果「うん、それじゃまた!」ダッ
海未「……」
海未「……本当に、二年生になると大変なことばかりですよ」
海未「油断しないでくださいね、穂乃果」
<校舎裏>
穂乃果「確かこの辺りに置いたよね……」
穂乃果「……あ、あった!」タッタッタッ
穂乃果(……えっ?)
猫「」ガサゴソ
穂乃果(なんで穂乃果の鞄に猫ちゃんが入り込んでるの……?)
猫「」ガサゴソ
穂乃果「ちょ、ちょっと」
猫「っ!」ガバッ
穂乃果「!」ビクッ
猫「?」クルッ
穂乃果「な、なにしてるのかなー……って、あーっ!? それ穂乃果のパンだよ!?」
猫「!!」ダッ
穂乃果「ちょっ、ちょっと待ってよ!」ダッ
猫「」タッタッタッ
穂乃果「もーっ、穂乃果のパン返してよぉ」タッタッタッ
猫「っ」ダッ
ダンッ
穂乃果(えっ、学校の外に出ちゃうのっ!?)
穂乃果「……仕方ないっ!」ダッ
ダンッ
穂乃果「よしっ」ガシッ
穂乃果(この塀を越えればっ)グイッ
穂乃果「よいしょっ!」ピョンッ
スタッ
猫「!?」
穂乃果「追いついたっ!」
猫「っ」ダッ
穂乃果「えっ、まだ逃げるの!?」
穂乃果「……あっ、おーい! そこの人!」
「?」クルッ
猫「」タッタッタッ
穂乃果「その猫捕まえてくださいっ!」タッタッタッ
「は?」
猫「ふっ」ダンッ
「!」サッ
ガシッ!!
猫「にゃっ!?」ポロッ
穂乃果「!!」
猫「!!?」ジタバタ
「なによこの猫……これ、菓子パン?」ヒョイッ
猫「にゃーっ」ジタバタ
「ちょっ、こらっ、暴れるなっ」
猫「ふしゃーっ」ガリガリッ
「ぎゃっ」パッ
猫「にゃっ」ダッ
「くっ……あの猫、思いっきり引っ掻いたわね」
穂乃果「あっ、あのっ大丈夫ですか?」タッタッタッ
「あ? アンタ、あの猫の飼い主か何か?」
穂乃果「いや、私はそのパンをあの猫に盗られて……」
「ふーん……これ、アンタのってこと?」
穂乃果「はいっ!」
「そんじゃ、はい」
穂乃果「ありがとうっ!」
「どーいたしまして」
穂乃果(この子、穂乃果と同い年くらいの子かな? 学校の制服は着てないみたいだけど……)
「……じゃ、私はこれで」
穂乃果「あっ、あの!」
「なに? まだなんか用?」
穂乃果「猫捕まえてくれて、さらにパンも取り返してくれて助かりました!」
「そりゃよかったわね」
穂乃果「なにかお礼させてください!」
「……別にいいわよ、そういうの」
穂乃果「えっ、でも」
「振り返ったら猫が飛びかかってきてて、私はそれを反射的に避けて掴んだだけ……アンタを助けようとしてやったわけじゃないわ」
「だからお礼なんてなくて大丈夫よ」
穂乃果「う、で、でも」
「じゃあね」クルッ
穂乃果「……な、名前!」
「?」
穂乃果「名前を教えてくれませんか?」
「……」
穂乃果「せめて、助けてくれた人の名前くらいは覚えておきたいんだ」
「……」
穂乃果「……ダメ、かな」
「……はぁ」
穂乃果「……」
「にこ」
穂乃果「?」
「それが私の名前よ」
穂乃果「あっ……」
にこ「二度は言わないわよ」
穂乃果「えへへ、ありがとうにこちゃん!」ニコッ
にこ「……」
にこ「……で、アンタは?」
穂乃果「えっ」
にこ「人に聞いといて、自分は名乗らないの?」
穂乃果「あっ、穂乃果、だよ!」
にこ「そう、穂乃果、ね」
穂乃果「うん!」
にこ「……その制服、音ノ木坂よね?」
穂乃果「そうだよ、昨日転校してきたばっかりなんだ!」
にこ「ああ、道理で……」
穂乃果「?」
にこ「なんでもないわよ」
穂乃果「にこちゃんは学校行ってないの?」
にこ「は?」
穂乃果「制服、着てないからさ」
にこ「……」
穂乃果「まあ、うちの学校の場合はまともに制服着てる人の方が少ないんだけどね」
にこ「……」
穂乃果「ブレザーの下に何か着込んだり、シャツが指定の色じゃなかったり、スカートの下にズボン履いてたり……」
「……」
穂乃果「そもそも完全にそれ私服だよねみたいな人もいるし」
「……」
穂乃果「はっ! ひょっとしてにこちゃんもそういう感じで、実は音ノ木坂の生徒とか!?」
「……」
穂乃果「……なーんて」チラ
ねこ「にゃー」
穂乃果「あれ!? にこちゃんがいつの間にかねこちゃんになってる!?」
穂乃果「って、んなわけないでしょ!」
ねこ「?」
穂乃果(穂乃果の話に飽きてどこかに行っちゃったのかな?)
穂乃果「……にこちゃん」
穂乃果(ぶっきらぼうで愛想も悪かったけど……悪い人じゃなさそうだったな)
ねこ「にゃ~」
穂乃果「……また、会えるかな?」
ねこ「にゃ!」
穂乃果「ふふ、そうだよね!」
穂乃果(会えるといいな!)
投下終わりです
書き貯めが出来次第また投下します
投下始めます
<保健室>
凛「穂乃果ちゃん、遅いね」
花陽「うん、校舎裏に行くだけならそろそろ帰ってきてもいい頃なんだけど……」
凛「……よしっ」
凛「やっぱり凛が様子見に行ってくるよ! もしかしたらまた何かあったのかもしれないし!」
花陽「で、でも、凛ちゃんも怪我してるしあんまり動き回ったら」
凛「心配しないでかよちん、探すだけだから、ね?」
花陽「そ、それなら二人で一緒に……!」
ガララ
凛・花陽「!」
穂乃果「ごめん二人とも! 遅くなっちゃった!」
穂乃果「いやぁ、鞄を見つけたはいいんだけど、猫ちゃんにパンを盗られちゃってさ~」
穂乃果「校舎の外まで行くことになってもう大変だったよ」
花陽「……はぁぁ、よかったぁ」
凛「これでひと安心だにゃ」
穂乃果「?」
<一年生の教室へと続く廊下>
穂乃果「そっかぁ、凛ちゃんが私を探しに行こうとしてくれてたんだね」
花陽「うん、でもその前に穂乃果ちゃんが帰ってきてくれたから」
凛「すれ違いにならなくてよかったにゃ」
穂乃果「二人ともありがとね、穂乃果のこと心配してくれて」
花陽「うん、無事でよかったよ」
凛「うん! あっ、でも凛も猫ちゃんたち見たかったなぁ」
花陽「凛ちゃん猫好きだもんね」
穂乃果「へぇ~、そうなんだ!」
凛「うん、この間もね……あっ」
花陽「教室着いちゃったね」
穂乃果「またあとで話そうよ!」
凛「そうだね! お昼ご飯も一緒に食べるにゃ!」
花陽「じゃあ私達はこっちの教室だから」
穂乃果「うん、またあとでね!」
花陽「うん!」
凛「またね~」フリフリ
<穂乃果のクラス、教室内>
ガララ
穂乃果「すいません、保健室行ってましたー」
「うぉっ、転校生が戻ってきた」
「怪我してんじゃん」
「でも意外とピンピンしてね?」
穂乃果「……あれ? 今授業中だよね? 先生は?」
真姫「……先生ならいないわよ」
穂乃果「え?」
真姫「教室にいる生徒が少なすぎるから今日は自習だって」ペラ
穂乃果「そうなんだー、教えてくれてありがとう!」
真姫「……どういたしまして」
穂乃果「って、いやいや! 今普通に会話しちゃったけどさ! なんで西木野さんがここに!?」
真姫「……知らなかったの? アナタと私、同じクラスよ」
穂乃果「えぇ!?」
穂乃果(て、てっきり、一週間後のタイマンまで顔を会わせることはないと思ってたのに……)
穂乃果「ていうか昨日は教室にいなかったよね?」
真姫「昨日はたまたまいなかっただけよ」
穂乃果「えぇ……」
穂乃果(こんなことってあるんだね……)
真姫「……」ペラ
穂乃果「あはは……」
穂乃果(さっき、あんな感じで別れたのに……これから毎日教室で会うってことだよね?)
真姫「……」
穂乃果(西木野さん普通に本読んでるし……ちょっとやりづらいなぁ)
真姫「……」ペラ
穂乃果(まぁいいや! 私も勉強してよっと)
穂乃果「えーと、今の時間は……」ゴソゴソ
<昼休み、裏庭>
穂乃果「はぁぁぁ、疲れたぁぁぁ」グテー
穂乃果「まさか西木野さんが同じクラスだなんて思わなかったよ……」
花陽「そっか、穂乃果ちゃんも私達の隣のクラスだもんね」
凛「ついてないねー」
穂乃果「うん、一週間後にタイマンする相手と、毎日同じ教室で顔会わせ続けるって変な気分だよ」
凛「心中お察しするにゃ」
花陽「わ、私だったら耐えられないよ」
凛「授業サボっちゃえば?」
穂乃果「それはダメだよ!」
花陽「そうだよ凛ちゃん!」
凛「えぇ、いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」
穂乃果「だって、授業サボりすぎて勉強に追いつけなくなったらまた……」
花陽「また?」
凛「?」
穂乃果「あっ、いや、テストで悪い点数取っちゃうなぁーってね!」
花陽「そうだね、穂乃果ちゃんは偉いよ」
凛「やっぱりシンガクコーではちゃんと勉強してたの?」
穂乃果「ま、まあ、それなりに……」
花陽「わぁ、じゃあ今度穂乃果ちゃんにも一緒に凛ちゃんの勉強見てもらおうかな?」
凛「凛知ってるよ、この学校はテストで悪い点数取っても進級だけはさせてくれるって」
凛「だから勉強できなくても大丈夫!」
花陽「ダメだよ、凛ちゃん! 今の内にちゃんとしておかないと社会に出た後が大変だってお母さんが言ってたよ?」
凛「うっ……だとしても英語は必要ないよ! 凛、日本から出る予定ないし!」
穂乃果「だよねっ!」
花陽「えっ?」
穂乃果「あっ」
花陽「穂乃果ちゃん?」
凛「穂乃果ちゃんも凛と同じ意見なんだね!」
穂乃果「えっと……凛ちゃん!」
凛「にゃ?」
穂乃果「穂乃果も最初はそう思ったよ、英語なんて必要ないってね」
穂乃果「だけどね、今や国際化の進むこの日本社会、街には外国人が増え始め、日本人も海外にどんどん働きに出る時代……」
穂乃果「この先の未来……英語を使える者だけが生き残るのだよっ!!」ビシッ
凛「!!」
花陽「ほ、ほらね、穂乃果ちゃんもこう言ってるんだし、凛ちゃんも英語の勉強頑張ろう?」
凛「……凛、このままだと死んじゃうのかなぁ」
花陽「えぇっ!? 凛ちゃん死んじゃうのぉ!?」
花陽「って、簡単に諦めないで凛ちゃん! 私と一緒に頑張って卒業しよう?」
凛「かよちんと一緒に卒業したいにゃー!」
穂乃果「その意気だよ凛ちゃん!」
凛「よーし、そのためにも早く怪我を治して、身体鍛え直すにゃ!」
花陽「そうだね……って勉強するんじゃないの!?」
凛「まずは打倒西木野だよ! それで勉強に集中できる環境を整えるんだ!」
花陽「に、西木野さんを倒さなくても勉強はできるよぉ」
穂乃果「あはは……」
穂乃果(な、なんとか誤魔化せた)
穂乃果(花陽ちゃんは私が勉強できるって思ってるみたいだけど、全然そんなことないんだよねぇ……)
穂乃果「……ふぅ」
穂乃果(それに、さすがに出会ってまだ二日目の友達に「実は進学校で留年したので転校してきました」なんて言えないよ……)ズーン
花陽「そ、そんなに勢いよく食べたら喉に詰まっちゃうよ凛ちゃん!」
凛「だいじょーぶ! たくさん食べて元気にならないとだからね!」
花陽「もー、凛ちゃんってば……あれ、穂乃果ちゃん?」
穂乃果「ぇ?」
凛「もぐもぐ……ごっくん……なんか元気ないね?」
穂乃果「えっと、なんでもないよ、大丈夫!」
凛「ほんとに?」
穂乃果「うん! あ、そうだ、凛ちゃんにさっき出会った猫ちゃんたちの話しなきゃね!」
凛「あっ、そうだったにゃ! 聞かせて穂乃果ちゃん!」
花陽「花陽も聞きたいです!」
穂乃果「よーし、なら今日の昼休みは猫談義で盛り上がろう!」
凛・花陽「おー!」
<同時刻、音楽室>
真姫「……」スッ
真姫「……」
真姫「盗み聞きでもするつもり?」
「おや? 気づかれてしまいましたか」ヒョコッ
真姫「アナタ、いつも私がピアノの前に座るとやってくるじゃない」
「貴方の伴奏を聴かせて頂く良い機会になるかと思ったのですが……残念です」
真姫「……」
真姫「それで、今日は何の用?」
「転校生にタイマンを申し入れたそうですね」
真姫「……ええ、それが?」
「昨日はやらないと言っていたものですから」
真姫「事情が変わったのよ」
「ふむ」
「それは今朝、貴方のお仲間が転校生にやられてしまったことと関係が?」
真姫「……」
「それとも、転校生が星空凛と手を組んでいたことと関係が?」
真姫「……」
真姫「どちらも、違うわ」
真姫「私が」
真姫「彼女のことを」
真姫「私自身の手で倒すべき相手だと判断したからよ」
「……なるほど」
真姫「一週間後、私は高坂穂乃果に勝つ」スクッ
真姫「その次は、万全の状態の星空凛に勝つ」スタスタ
「そして、正真正銘の一年生ナンバーワンになる、というわけですか?」
真姫「ええ」スタスタ
「ふむ、それで我々の派閥に入ってくれれば言うことなしなんですけどね」
真姫「いいえ、アナタ達の仲間にはならないわ」スタスタ
「そう言うと思いましたよ」
真姫「その次は」ピタッ
「?」
真姫「絢瀬派幹部にして、二年生ナンバーワンの座にいる」
真姫「園田先輩」
真姫「アナタに勝つからよ」
海未「……そう来ましたか」ニコ
真姫「そして、最後に絢瀬派トップの絢瀬絵里を倒して、私が音ノ木坂の頂点(テッペン)を獲る」
海未「……」ニコニコ
真姫「……」
海未「……ふふっ」ニコニコ
真姫「……私、なにか可笑しいことでも言ったかしら?」
海未「いえ、手早く音ノ木坂の頂点(テッペン)を獲りに行く方法としては中々でしたよ?」ニコニコ
真姫「……」
海未「楽しみですねぇ」ニコニコ
真姫「……見てなさい」
真姫「その余裕そうな表情、ぐちゃぐちゃに崩してやるわ」スタスタ
海未「期待してますよ」ニコニコ
真姫「……」スタスタ
ガララ……バタン
海未「……」ニコニコ
海未「……」ニコ
海未「……ふぅ」スッ
海未「……」
海未「さて、音ノ木坂での貴方がどうなるのか見せてもらいますよ……穂乃果」
<夜、高坂家、雪穂の部屋>
穂乃果「はぁ~、疲れたよ~」グテー
雪穂「ここ、私の部屋なんだけど」
穂乃果「まあまあ、お母さんから怪我のことで一緒に説教された仲ではないかユッキーさんや」ゴロゴロ
雪穂「いや、それとこれとは関係なくない?」
穂乃果「関係あるよっ!」ガバッ
雪穂「!?」ビクッ
穂乃果「雪穂も私も、喧嘩の中で友達を助けるために怪我したわけでしょ? 雪穂は昨日、穂乃果は今朝と姉妹で二日続けて同じことをしてるんだよ? これって凄いことだよ!」
雪穂「いや私の方は友達というわけじゃ」
穂乃果「えっ、だって同じ学校の子を庇って喧嘩になったんでしょ?」
雪穂「うん、けどまあそれは偶然見かけてたまたまそうなっただけで、別にその子と私が友達というわけじゃあ……」
穂乃果「ええっ、だったら私も怪我はしなかったけど昨日同じようなことしてるよ!」
雪穂「えっ、そうだっけ?」
穂乃果「ほら、昨日呼び出されたって話したよね?」
雪穂「ああ、その話ね」
穂乃果「そのとき、もう一人呼び出されてた子がいたの」
穂乃果「私を呼び出した人達は、その子を一緒にいじめないかって私に言ってきてさ」
雪穂「なにそれ、嫌な人達だね」
穂乃果「でしょ? だから穂乃果は「そんなことしないよ!」ってその人達を返り討ちにしちゃったんだけどね」
雪穂「お姉ちゃんを呼び出してたのが運の尽きだったね」
穂乃果「で、そのとき呼び出されてた子が昨日話した初日に出来た友達なの!」
雪穂「なるほどね」
雪穂「で、今日一緒に喧嘩した人がもう一人の友達ってわけだ」
穂乃果「うん! 二人ともとってもいい子なんだ~」
穂乃果「一緒に喧嘩した子は、凛ちゃんっていうんだけど、とっても明るくて活発な子で、一緒にいると元気が貰える感じなんだよ!」
雪穂「へー、それってなんか」
雪穂「……お姉ちゃんみたい」ボソッ
穂乃果「へ?」
雪穂「な、なんでもないよっ」
穂乃果「そう? それで、もう一人の子は花陽ちゃんっていうんだけど、ほんわかした雰囲気でちょっとおっとりした感じで、癒される感じの子なんだよ!」
雪穂「ふーん……なんだか特徴だけ聞くと、ことりちゃんみたいだね」
穂乃果「ことりちゃん? あー……ことりちゃんとはまたちょっとタイプが違うかな?」
雪穂「そうなの?」
穂乃果「うん、それにことりちゃんは……」
雪穂「?」
穂乃果「……あはは、なんでもない」
穂乃果(喧嘩してるときのことりちゃんはちょっと怖いところあったからなぁ……花陽ちゃんがあんな風になるのは全然想像できないや)
雪穂「……というかさ、結局お姉ちゃんは友達になってるよね、その人達とさ」
穂乃果「うん? そうだね」
雪穂「私は別にあの子と友達にはなってないし、やっぱり違うよ」
穂乃果「えぇ、今日会ったりもできなかったの?」
雪穂「……会いはしたけど」
穂乃果「じゃあお話は?」
雪穂「……話もしたけど」
穂乃果「それで友達じゃないの?」
雪穂「だって、違うクラスの子で今までまともに話したことないし、それに……」
穂乃果「それに?」
雪穂「私みたいな人間とは、違う世界に生きてる感じの子だし……」
穂乃果「違う世界?」
雪穂「……あの子は、喧嘩なんてしたことなさそうだし、私みたいなのとは仲良くしない方がいいんだよ」
雪穂「ほら、私も学校では喧嘩ばっかしてるからさ、学校内じゃそれなりに有名なんだよ? ……お姉ちゃんみたいに凄い強いわけじゃないけど」
雪穂「だから
穂乃果「雪穂」
雪穂「?」
穂乃果「雪穂は、その子と友達になりたいの?」
雪穂「……いや、だから仲良くしない方がいいって」
穂乃果「しない方がいいとか、するべきとかじゃなくてさ」
穂乃果「なりたいか、なりたくないかで言ったらどっちなの?」
雪穂「……」
雪穂「……別に、なりたく、ないよ」
穂乃果「……そっか」
雪穂「……」
穂乃果「ならいいんじゃない? ならなくてもさ」
雪穂「え?」
穂乃果「だって、なりたくないんでしょ?」
雪穂「あ……うん」
穂乃果「なった方がいいよーって言われると思った?」
雪穂「……うん、そういう話するのかなって」
穂乃果「雪穂が嫌なら別にそういう話はしないよ~」
雪穂「……ふふっ」
穂乃果「雪穂?」
雪穂「あはっ、なんか意外で、可笑しくて」
雪穂「お姉ちゃんなら、誰とでも友達になっちゃいそうだから、私にもそう言うのかなって思ってて」
穂乃果「えぇっ? 確かに穂乃果は友達すぐにできる方だけど、雪穂に同じようにさせようとは思わないよ?」
雪穂「さっきは散々姉妹で同じことやってるって話してきたのに?」
穂乃果「えっ、い、いやそれとこれとは別でしょっ!」
雪穂「ふふっ、さっきの私と同じこと言ってる」
穂乃果「あっ、確かに」
雪穂「あははっ」
穂乃果「えへへっ」
コンコン
穂乃果・雪穂「!」
「穂乃果も雪穂もいるのよね?」
穂乃果「うん」
雪穂「いるよ」
「そう、どっちでもいいからお風呂空いたから入っちゃって」
穂乃果・雪穂「はーい」
雪穂「じゃ、私が先にいただいちゃおっかな」スクッ
穂乃果「どーぞー」ゴロッ
雪穂「……」
穂乃果「ん? どしたの」ゴロゴロ
雪穂「私、お風呂行くんだけど」
穂乃果「うん、だから穂乃果はここでゴロゴロするよ?」
雪穂「いや、自分の部屋に戻らんかいっ」ゲシッ
穂乃果「痛っ!?」
<翌朝、音ノ木坂学院高校、穂乃果のクラス、教室内>
ガララ
穂乃果「ふぅ……」
穂乃果(今日は何もなく教室まで来れたなぁ、よかったよかった……ん?)
穂乃果(今日も人が少ないような……?)
「おっ、来た来た」
「噂の通りみたいだな」
「よー、転校生」
穂乃果「あっ、おはよー」
穂乃果(えっ、昨日一昨日は話しかけてもらえもしなかったのに向こうから挨拶してきた!?)
「転校生が登校してきたってことはたぶん星空もフツーに来てるんだろうな」
「だろうねー」
穂乃果「えっ、なんの話?」
「んー? ああ、転校生は知らねぇのか」
「昨日あの場にいたヤツのほとんどが一週間の自宅謹慎くらったんだよ」
「外野は除いてなー」
穂乃果「……」
穂乃果「えぇっ!?」
穂乃果「それ本当なの!?」
「らしいよー、まあ昨日の喧嘩は参加してた人数が多かったからねぇ」
「あの後、先公に捕まった奴らのほとんどがなったみたいだねー」
「だからいつもは騒がしいこの教室も静かになってるってわけ」
「くくっ、喧嘩の中心にいた転校生と星空はくらってないってのがまた笑えるわ」
穂乃果「まあ、私達は先生の姿を見つけてすぐに逃げたからね……」
穂乃果「でも、私達が参加してたことは皆知ってるはずなのに、どうして先生にはバレてないんだろ? 誰も言わなかったのかな?」
「そりゃあ、ね」
「アンタ達のことを話すってことは、自分達がたった二人にヤられたってことを話すことにつながるからね」
「そーんなことはしたくないでしょうね? なんせアタシらみたいなのはプライドだけは高いからさ」
「誰々にヤられたーなんてことをわざわざ人に話すヤツなんて中々いないわな」
「ま、停学にならなかっただけマシなのかな?」
「ウチの学校、そこらへんユルいもんね」
穂乃果「へぇ~」
穂乃果(……昨日さっさと逃げて本当によかった)
<昼休み、裏庭>
穂乃果「……って感じの話をクラスでしてたんだけど、二人は知ってた?」
凛「教室で聞いたよー」
花陽「私達のクラスにも西木野さんについてた人はいたから」
穂乃果「びっくりしちゃったよ、自宅謹慎なんてさ」
花陽「小規模の小競り合い程度なら見過ごされることも多いみたいだけど、昨日のは結構騒ぎになっちゃったみたい」
花陽「だから先生達も見過ごせなかったんだろうね」
凛「凛達はラッキーだったにゃ!」
穂乃果「あっ、びっくりしたと言えばもういっこあった」
穂乃果「昨日までは教室で普通に話しかけられることなんてなかったのに、今朝は話しかけてくれた人がいたんだよ!」
花陽「……それは、穂乃果ちゃんの実力を認めたからだと思うよ」
穂乃果「私の実力?」
花陽「穂乃果ちゃんが校舎裏に連れていかれた時点では、きっと「転校生はリンチされておしまい」っていう風に周りの人達は考えてたと思うの」
花陽「けど、そうはならなかった」
花陽「穂乃果ちゃんは大勢の外野の前で全員を倒して、自分だけ教室に戻ってくるなんていう誰も予想してなかった結果を出しました!」
穂乃果「うーん、でもあれは凛ちゃんの協力があったおかげだし」
花陽「それも周囲に認められる要因の一つです!」
穂乃果「え?」
花陽「凛ちゃんは西木野さんに次いで、一年生のナンバーツーとして学年内で名前が知れ渡ってます」
花陽「そんな人と転校して間もなく既に共闘関係にあるっていうのも、周りからしたら凄いことなんです!」
花陽「さらに穂乃果ちゃんは西木野さんからタイマンを挑まれてます!」
花陽「転校してきた翌日に学年ナンバーツーと協力して多人数との喧嘩に勝利、さらに学年ナンバーワンにタイマンを挑まれる……それらを見て、実力を認めない人なんてほとんどいませんよ!!」
穂乃果「そ、そっか、説明ありがとう」
穂乃果(花陽ちゃん、なんか変なスイッチ入っちゃった?)
凛「凛はこっちのかよちんも好きにゃー」
<同時刻、校舎内、“最上階の教室”>
「へー、あの子が噂の転校生なん?」ジー
「はい、頭に包帯を巻いてるのがそうです」
「そんで、残りの二人が星空凛ちゃんと……誰やっけ?」ジー
「小泉花陽です」
「せやせや、小泉花陽ちゃんや! 確か星空凛ちゃんの中学からのツレやろ」ジー
「そうですよ、ただ彼女はここに入ってから喧嘩をした様子がありません」
「そうなん? まあええわ、星空凛ちゃんのお友だちには変わらんのやろ」ジー
「顔は覚えましたか?」
「うん、こんだけ見ればバッチシや」スッ
「いきなり双眼鏡を取り出したときは何をするのかと思いましたよ……」
「ふふ、しっかり顔覚えとかんとアカンからなぁ」
「エリちのとこには海未ちゃんがおるし……今年の優勝者も勧誘中なんやろ?」
「西木野真姫のことですね」
「そうそう、西木野真姫ちゃん」
「絢瀬派は戦力を固めている最中ですからね、今度のタイマンの結果次第では新たな動きを見せるでしょう」
「ウチは強い子が相手に回れば回るほど楽しめるんやけどなぁ」
「はぁ……本当に相変わらずですね」
「喧嘩は強い子とヤってこそなんやで?」
「それは……先輩が強いから言えることですよ」
「ふふっ、まあええわ」
「キミがここでどうなるのか……期待しとるで、高坂穂乃果ちゃん?」
投下終わりです
書き貯めが出来次第また投下します
投下始めます
<五日後、朝、音ノ木坂学院高校、下駄箱前>
「うぃーす」
「おー」
「ねみぃ……」
ザワザワ
穂乃果(よしっ、今日も遅刻しなかったよ!)
穂乃果(……雪穂に起こされなかったら危なかったけど)
ガチャ
穂乃果「……ん?」
穂乃果(何か入ってる)スッ
穂乃果「……」
穂乃果「は、果たし状!?」
「?」クルッ
「なんだなんだ」
「アイツ、噂の転校生じゃん」
ザワザワ
穂乃果(あちゃー……声に出ちゃってたか)
穂乃果(人目のつかない所で読もうっと)ササッ
「……おい」
「ああ、追うよ」ササッ
<昼休み、裏庭>
花陽「ええっ、果たし状貰っちゃったのぉ!?」
穂乃果「あはは……前に場所と時間はまた今度って言われてたけど」
凛「果たし状を書くなんて、西木野も味な真似するヤツだにゃ」
花陽「そ、それで中にはなんて?」
穂乃果「うん、学校からちょっと離れた所に河川敷があるでしょ? 明日、あそこの橋の下に午後四時に来いってさ」
花陽「河川敷でのタイマン……」
凛「王道だね」
穂乃果「あそこなら人目にもつきづらいしね」
「おい、聞いたか」コソコソ
「ああ、河川敷、だね」コソコソ
「全員に報告するぞ」コソコソ
凛「……ん?」チラ
「あっ、やべ」
「隠れろっ」サッ
花陽「凛ちゃん?」
穂乃果「どうしたの?」
凛「今、誰かに見られてたような……」
花陽「えっ、ど、どこから?」キョロキョロ
凛「気のせいかな……」
ガサゴソ
凛「!」バッ
花陽「ひっ」ビクッ
猫「……」ヌッ
凛「えっ」
花陽「ね、猫?」
穂乃果「あーっ!? この前の泥棒猫ちゃん!?」
猫「しゃっ」バッ
穂乃果「わっ」サッ
猫「!」スタッ
穂乃果「だ、だめだよ! これは穂乃果のパンなんだからね!」
花陽「この子が……」
凛「わぁ、猫ちゃん!」
猫「?」クルッ
凛「あっ」サッ
花陽「凛ちゃんっ」バッ
凛「うぅ……」ジー
穂乃果「あっ……凛ちゃん、猫アレルギーって言ってたもんね」
凛「触りたいにゃあ……」ジー
「ふぅ、なんとかバレずに済んだみたいだな」
「今のうちにさっさと逃げようぜ」ササッ
凛「……やっぱり」ボソッ
花陽「凛ちゃん?」
凛「なんでもないにゃ」
穂乃果「もぅっ、なんでこんなに穂乃果のパンを狙ってくるのさっ」タタッ
猫「しゃーっ」タタッ
花陽「あはは……」
凛「かよちん」スクッ
花陽「ん? どしたの、凛ちゃん」
凛「凛、ちょっとお花摘みに行ってくるね」タタッ
花陽「あ、うん」
穂乃果「えぇい、食べられる前に先に食べてやるっ!」パクッ
猫「しゃーっ」ダッ
穂乃果「もぐもぐっ」サッ
花陽「……食べながら逃げるって、穂乃果ちゃん器用だなぁ」
<学校外、とある住宅街>
「ふぅ……さてと、この辺りでいいだろ」
「ああ、全員に連絡回すわ」スッスッ
「はぁ、にしても星空に気づかれそうになったときはどうしようかと思ったわ」
「それな、ちょっとビビったわ……はい、送信完了っと」
「あざーす」
「うぃー、んじゃこの後は……」スッ
凛「失礼するにゃー」パシッ
「なっ!? アタシのケータイ!?」
凛「うん? ふむふむ……なるほど」
「って、星空ァ!?」
「なんでコイツがここに!?」
凛「大体わかったよ」スッ
凛「なんで停学くらったヤツらが今日学校にいたのかってことと」
凛「ソイツらが凛達の様子を隠れて見てた理由がね」
「くっ……」
「お、おい、どうするんだよ」
「どうするって……ヤるしかないだろォ!」バッ
「ちっ」バッ
凛「二人がかり、ね」スッ
凛「リハビリにはちょーどいいにゃ」ニヤッ
凛「……って、思ったんだけど」
「」グッタリ
「」グッタリ
凛「キミタチ、ちょっと骨が無さすぎじゃないかにゃー?」
ブーブー
凛「ん? コイツらのケータイか、なんだろ」スッ
凛「えーと、なになに……」
凛「……」
凛「ふーん、相変わらず懲りないヤツらだね」
凛「こんなヤツらに支持されてた西木野にちょっとだけ同情するにゃ」ポイッ
凛「さーて、急いで学校に戻らないと……かよちんに心配されちゃう!」ダッ
「あの子、中々やるやん」ヌッ
「あの子とヤったら楽しいかもしれんなぁ」スタスタ
ブーブー
「……ん?」ヒョイッ
「……」スッスッ
「……へー、エライ物騒なこと考えるなぁ、最近の一年生は」ポイッ
「よっ」スッ
「……あー、もしもし? あんなぁ、明日のことやけど……」
<翌日、朝、高坂家、玄関>
ドタドタ
穂乃果「あー!! なんでよりによって今日みたいな日に寝坊しちゃったの私!!」
雪穂「言っとくけど、私はちゃんと起こしたからね」
穂乃果「今日は余裕持って過ごすつもりだったのに!!」
穂乃果「あっ」ピタッ
雪穂「?」
穂乃果「雪穂」クルッ
雪穂「んー?」
穂乃果「今日、久々にお願いするかもしれないから」
穂乃果「そのときはよろしくね?」
雪穂「……別にいいけど」
穂乃果「ありがとっ!」ニコッ
穂乃果「それじゃいってきまーす!!」ダッ
雪穂「いってらっしゃーい」
<放課後、音ノ木坂学院高校、穂乃果のクラス、教室内>
キーンコーンカーンコーン
穂乃果「よし、今日の授業終わり!」ガタッ
「お、そういや今日だっけ? 西木野とのタイマン」
穂乃果「あ、うん」
「結局アイツ来なかったな~」
「精神統一でもしてんじゃね?」
「ぶふっ、武士じゃあるまいしそんなことしねーだろ」
穂乃果「あはは……」
「転校生! アタシはあんたに賭けたからな! 絶対勝てよ!」
「バーカ、いくら転校生でも西木野には勝てねーよ」
「これで明日の昼飯代が浮くわ~」
穂乃果(……ヒトの喧嘩で勝手に賭けやらないでほしいなぁ)
<凛・花陽のクラス、教室内>
穂乃果「おーい、花陽ちゃーん」
花陽「あ、穂乃果ちゃん……その、凛ちゃんが」
穂乃果「……やっぱり凛ちゃんいないんだ」
花陽「え?」
穂乃果「えっと、さっきの授業中にね、凛ちゃんからメールが来てたみたいで」
穂乃果「ちょっとやることができたから、二人は先に行っててほしいって」
花陽「そうなんだ、穂乃果ちゃんにはメールしてたんだね」
花陽「凛ちゃん、小テストの追試が入っちゃったって慌てて出て行っちゃって」
花陽「終わるの待つよー、って言ったんだけど、穂乃果ちゃんと二人で先に行っててほしいって」
穂乃果「つ、追試が入っちゃったの?」
花陽「あはは……凛ちゃん、さっきの英語の小テスト0点だったからなぁ」
穂乃果「えぇ……」
花陽「凛ちゃん、追試大丈夫かなぁ」
穂乃果「あはは、どうだろうね」
穂乃果(……凛ちゃん)
穂乃果(花陽ちゃんには本当の理由、言わなかったんだね)
<追試の行われる教室>
英語教師「……」
英語教師「……遅い」
英語教師「星空のヤツ、まだ来ないのか」
「センセー、まだ始めないんすかー」
「私達この後カラオケ行くんですけどー」
英語教師「全員揃うまで待ちなさい!」
「えー」
英語教師「まったく、星空め……毎回点数の低いヤツだったが、とうとう今回白紙のプリントを出してくるとは……」ブツブツ
英語教師「友人の小泉は真面目にやっているというのになんでアイツは真面目にやってこないんだまったく……」ブツブツ
英語教師「教室に来たらまず今回の態度を反省させてそれから……」ブツブツ
「あのー」
英語教師「……なんだ」
「星空ならさっき校舎から出ていくの見たけど」
英語教師「……は?」
<学校外、とある空き地>
凛「はー……」
凛「いくらかよちんの目を誤魔化す為って言ってもさー」
凛「やっぱりわざと白紙で提出して、本当に追試にしたのはやりすぎだったかにゃ?」
凛「ね、どう思う?」バシバシ
「」グッタリ
凛「あ、もうノビちゃってるか」
「て、テメェ……」
「なんでだ……」
「なんで星空がここに来てやがんだ!?」
凛「まったく……停学くらって大人しくしてるのかと思ったら」
凛「西木野組の連中が揃いも揃って、凶器持ち出してこんなところに集まって」
凛「まさかあの二人のタイマンを邪魔しようと企んでたなんてね」
「くっ……どっから情報が漏れやがった!?」
凛「お前ら、西木野の仲間じゃなかったの?」
「うるせぇっ!!」
「アイツにはもうついていけねぇんだよ!」
凛「ふーん」
「西木野のヤツ、一年生ナンバーワンになったってのにいつまでたっても絢瀬派の幹部になろうとしやがらねぇ」
「アタシらはナンバーワンになったアイツが幹部入りすることを期待してたってのに……」
「そんで私らも絢瀬派に入れると思ってたってのによぉ」
「まあそれもいつかは誘いに応じるだろうと思っていた」
「だけど! アイツはこの一ヶ月誘いを断り続けた!」
「しまいにゃ、転校生とオマエを潰そうとしたアタシらの邪魔をしやがった!」
凛「……」
「星空ァ、一ヶ月前にお前に言ったことだがよ……あれ、訂正するわ」
「西木野もお前と一緒だ……この音ノ木坂じゃあ生き残れない」
「少なくとも、アタシらにとっては邪魔な存在なんだよ!」
「西木野も、お前も、転校生も! 全員潰してやるよ!!」
凛「……はー」
凛「ホントに、考え方まで雑魚キャラなヤツらだにゃ」
「んだとっ!?」
凛「こんなヤツらについて来られてたなんて、やっぱり少しだけ西木野に同情するにゃー」
「こ、コイツ……!」
凛「まあいいや、雑魚キャラ達の言い分も聞いたし」スッ
凛「さっさとお前ら全員倒して」トーンッ
凛「かよちんと穂乃果ちゃんのとこに行きたいから」トーンッ
凛「本気で行くよ」トンッ
ダンッ!!
「なっ」
「速っ」
凛「おっせぇにゃっっっ!!」
バキィッッ
「あぐっ」ドサッ
ドゴォッッ
「ぐげっ」ドサッ
ダンッ
凛「ふっ!!」グルンッ
ガンッッ
「うごっ」ドサッ
凛「ふぅ」スタッ
「い、一瞬で三人が……」
「コイツの動き……一週間前とは違う!」
「前宙からの踵落としって、喧嘩でやる技じゃねーだろっ……!」
凛「西木野は穂乃果ちゃんに任せる」トーンッ
凛「そう言っちゃったからね」トーンッ
凛「だからこっちは凛に任せて!」トンッ
ダンッ!!
<空き地から少し離れた場所>
「おー、やっぱあの子強いやん!」
「今年の一年生ナンバーツーですからね」
「ええなぁ、やっぱあの子とヤるのも……」
「ていうか見てるだけでいいんですか?」
「ん? あの人数ならあの子一人で大丈夫やろ」
「え、じゃあなんで私達まで呼ばれたんですか……?」
「一人で十分ならここで見てる必要もないんじゃ……」
「いや、ウチらはここにいる必要がある」
「はぁ、もしかしてまた……」
「そう、カードがウチに告げるんや」
「……」
「……」
「……」
「なんで三人とも黙るん?」
「いや、なんでって言われましても……」
「あっ、ほら見てみぃ! あれが理由や!」
「ん? あれは……」
<とある空き地>
ザッザッザッ
「ん~? コイツがそうなの~?」
「でも一人しかいなくな~い?」
凛「?」クルッ
「う……ぐ、やっと来たかっ……」
「遅かったじゃねぇか……」
ザッザッザッ
「ん~? 一人相手にヤられちゃってるの~?」
「それってダサくな~い?」
ザッザッザッ
ザッ……
凛「……」
「あ、ははっ……どうよ、星空っ」
「この人数相手にも同じ立ち回りができるかよっ!?」
「ん~? コイツが星空凛~?」
「思ってたよりちっちゃくな~い?」
「ははっ、これでテメーもおしまいだぜ!」
<空き地から少し離れた場所>
「アイツら、音ノ木坂の生徒じゃないですね」
「かなりの人数……よく集めたね」
「先頭の二人がリーダー格かな?」
「これ全部、たぶん近隣の高校から集めたんやろなぁ」
「なるほど……」
「な? ウチらがおらなアカン理由、わかったやろ?」スクッ
「……そうですね」スクッ
「同じ音ノ木坂の生徒で争う分には手出しする義理はないけど」スクッ
「他校の生徒が関わってくるんじゃあ話は別ですね」スクッ
「なんや、ヒフミちゃん達もヤる気満々やん」
ヒデコ「これだけの人数を相手にするのは久々ですからね」
フミコ「全員凶器持ってますし」
ミカ「ていうかヒフミちゃんって、まとめて呼ぶのやめて下さいっていつも言ってるじゃないですか!」
「ウチは呼びやすくてええんやけどなー」
ヒフミ「……」
「ま、ええわ」
「……ほな、いこか?」ニヤッ
<とある空き地>
凛「……ふぅ」トーンッ
「ん~? 跳びはね出してどうしちゃったの~?」
「準備体操でも始めるの~?」
凛「多勢に無勢、上等だよ」トーンッ
凛「何人いようが関係ない」トーンッ
凛「全員倒すだけにゃ」トーンッ
パチパチパチ
凛「?」トーンッ
「ん~? 拍手~?」クルッ
「誰がしてるの~?」クルッ
「いや~、よう言うたでホンマ」パチパチパチ
「そういう姿勢、ウチ好きやわ~」パチパチパチ
凛「……誰?」スタッ
「はじめましてやね、星空凛ちゃん」
凛「……凛を知ってるの?」
「知っとるで」
「そんでウチらはキミを手伝いに来たんや」
凛「えっ……?」
ヒデコ「……先輩、呑気に自己紹介してる場合じゃないですよ」スタスタ
フミコ「ちょっとは緊張してくださいよ……」スタスタ
ミカ「本当に相変わらずですね」スタスタ
「まあまあ、第一印象は明るくいかんとアカンやろ?」
「ん~? いきなり出てきたけど誰なの~?」
「コイツらも音ノ木坂なの~?」
「なんだ、アイツら……見たことないぞ……」
「アタシらの学年にはいない……音ノ木坂のヤツなのか?」
ザワザワザワ
ヒデコ「さて、どうします?」
フミコ「どこまで私らで相手しますか?」
「そうやな……とりあえず他校のヤツらはウチが全員もらうわ」
凛「!?」
ヒフミ「はぁ……」
「んじゃまたヒフミちゃん達は事後処理よろしく頼むで~」スタスタ
ヒデコ「……そんなことだろうと思ったよ」
フミコ「先輩はやっぱりおかしいです」
ミカ「出番あると思ってヤる気になってたのがアホらしくなってきちゃった……」
凛「ちょ、ちょっと!」
ヒデコ「ん?」
凛「あの人、凛を手伝いに来たって……?」
ヒデコ「ああ、それは言葉通りの意味だよ」
フミコ「先輩、今日の一年生同士のタイマン楽しみにしてるからね」
凛「え?」
ミカ「大方、他校の生徒が絡んできてるってことを理由にして、あっちに邪魔が入るのを止めたいんだろうねぇ」
フミコ「まあついでに自分が楽しめたらってのもあるんだろうけど」
ヒデコ「……下手したらそれだけかも」
ミカ「……それもありえる」
凛「……」ダッ
「なんだ? 一人だけこっちに来たぞ」
「おい、テメェ! アタシらは西木野真姫、高坂穂乃果、星空凛の三人をヤりに来てんだよ!」
「オマエ、その三人の誰でもないだろっ!? 邪魔しに来てんじゃーよ!」
ギャーギャー
「あー、もううるさいやっちゃなー」スタスタ
「ていうかその三人が狙いなら尚更なんやけどなぁ」スタスタ
「ん~? ねぇ、アイツはどうするの~?」
「ターゲットじゃないみたいだけど~?」
「アタシらの邪魔しに来てるなら誰でも一緒だよ! 全員でヤっちまいな!!」
「おっ、やっと来るんかな」ピタッ
「誰か骨のある子がおるとええんやけどなー」
凛「……」スタッ
「お? 凛ちゃんも来たんやね」
凛「……どこの誰かは知らないけど、手伝うって言うなら止めないよ」
凛「ただ、凛の足引っ張らないでね」
「……ふふっ、それは気を付けんとなぁ」
凛「……名前」
「ん?」
凛「名前、なんて言うの?」
「ウチ?」
凛「うん」
「うーん、それはこの喧嘩が終わってからやなぁ」
凛「……どうして?」
「ふふっ、事情があるんや」
凛「……じゃあさっさと終わらせるよ」トーンッ
「ウチはなるべく楽しみたいんやけどなぁ」
凛「……変な人だにゃ」トーンッ
「喧嘩は楽しんでナンボやで?」スッ
凛「その余裕があれば」トンッ
凛「ねっ!」
ダンッ!!
<同時刻、とある河川敷>
ザッザッザッ
真姫「……来たわね」
ザッ……
穂乃果「来たよ、西木野さん」
花陽「うぅ……」
真姫「……その子は?」
穂乃果「立ち会い人をお願いしたんだ」
花陽「よ、よろしくお願いします」
真姫「そう、まあなんでもいいわ」スッ
穂乃果「……四時までまだ少し時間があるね」
真姫「ええ」スタスタ
穂乃果「今日なんで学校に来なかったの?」
真姫「集中したかったから」スタスタ
穂乃果「何に?」
真姫「決まってるじゃない」スタスタ
真姫「アナタを倒す」ピタッ
真姫「ただそれだけに」
穂乃果「……っ」ジリッ
花陽「ひゃっ」ヘナッ
穂乃果(西木野さんから出てるこの圧力……!)
穂乃果(半端じゃない集中力を感じるよ……! 教室にいる静かなときとはまるで別人……っ)
真姫「アナタは」
穂乃果「っ?」
真姫「どうしてこの学校に来たの?」
穂乃果「っ……それは」
穂乃果(い、言えない! この西木野さんに『留年したから』なんてことは言えない……!)
真姫「……言いたくないなら別にいいわ」
真姫「質問を変えましょう」
真姫「アナタ、音ノ木坂の頂点(テッペン)を獲る気はある?」
穂乃果「音ノ木坂の……テッペン……?」
真姫「そう」
穂乃果「私は、テッペンを獲るとか、そういうことを考えたことはないよ」
真姫「へぇ……そうなの」
穂乃果「うん」
真姫「なら尚更負ける訳にはいかないわね」
穂乃果「……っ!?」ジリリ
穂乃果(さ、さらに圧力が強く!?)
真姫「高坂穂乃果、アナタが星空凛並みの強さだってことはこの前見てわかった」
真姫「そして、私と頂点(テッペン)を奪い合う相手になるかもしれないと考えたわ」
穂乃果(に、西木野さん……そんなこと考えてたんだ)
真姫「だけど、当の本人に頂点(テッペン)を獲る気が無いなんて」
真姫「そんな人には絶対に負けない」
真姫「負ける訳にはいかないわ」
穂乃果「……」
穂乃果「西木野さん」
真姫「何よ?」
穂乃果「私はね、学校のテッペンを獲るだとか、何人もの不良達のトップに立とうだとか」
穂乃果「そんなことを考えたことはないんだよ」
真姫「……」
穂乃果「でもね?」
穂乃果「売られた喧嘩には絶対に勝つ」
穂乃果「私の考えてることはそれだけだよ」
西木野「……へぇ」ジリッ
花陽「あ、あのっ、間もなく四時になります!」
穂乃果「花陽ちゃん、カウントダウンお願い」
真姫「そうね、四時ちょうどに開始しましょう」
花陽「へっ、あっ、えっと……10!」
花陽「9!」
穂乃果「すぅーっ」グーッ
花陽「8!」
穂乃果「はぁーっ」ダラーッ
花陽「7!」
穂乃果「すぅ」
花陽「6!」
穂乃果「……」スッ
花陽「5!」
穂乃果(……集中)
花陽「4!」
穂乃果(……集中)
花陽「3!」
穂乃果「……」
花陽「2!」
真姫「……」
花陽「1!」
穂乃果・真姫「っ」カッ
花陽「0!」
ガンッッッ!!
穂乃果・真姫「っ」ギリギリ
花陽「ぴゃっ」ドサッ
穂乃果「まさかっ、二人とも同じこと考えてたなんてねっ」グググ
真姫「そっちもっ、いきなり頭突きしてくるとは思わなかったわっ」グググ
花陽「あわわっ」
真姫「っ」フッ
穂乃果「!」グラッ
真姫「ふっ」ガシッ
ドゴォッ
穂乃果「お、ぐ」
花陽「あぁ、西木野さんの膝が思いっきり鳩尾に……」
穂乃果「……なんてね」ニヤ
真姫「っ!」
花陽「と思ったら寸前で両手を滑り込ませてガードしてたのぉ!?」
穂乃果「お返しだよっ!」ガシッ
真姫「なっ」フワッ
穂乃果「どりゃあっ!!」ブンッ
真姫「くっ」
ドガッバキッ
穂乃果「痛っ!?」グラッ
真姫「っ……」ゴロゴロッ
花陽「ひぇぇ……二人とも凄すぎて何がなんだか……」
穂乃果「ちぇっ、今のはいけたと思ったのにな」スッ
真姫「あそこから持ち上げられるとは思わなかったわ」スクッ
穂乃果「こっちこそ、まさかあの体勢から頭に蹴り入れられるとは思わなかった、よっ!」ダッ
真姫「全力で叩きつけられなくて残念だったわ、ねっ!」ダッ
ダンッ!!!
真姫・花陽「!?」
ガンッ
真姫「あぐっ」グラッ
穂乃果「っと」スタッ
花陽「えっ、穂乃果ちゃん、今何メートル跳んで……?」
穂乃果「ありゃ、これも防がれちゃったか」スクッ
真姫「くっ……ふふ」
穂乃果「?」
真姫「何よ……期待以上じゃない……」
花陽「に、西木野さん……?」
真姫「アナタなら……」ボソッ
穂乃果(何……? 西木野さんの雰囲気が……)
真姫「今の私の全力」
真姫「受け止めてくれる?」ニィッ
投下終わりです
書き貯めが出来次第また投下します
投下始めます
穂乃果「!?」
真姫「今度はこっちの番よ」ダッ
穂乃果「っ」サッ
真姫「ふっ」ダンッ
ドゴォッッッ
穂乃果「っったぁ!?」ズザァッ
真姫「……あら」
穂乃果(西木野さんのパンチ重っ!?)
真姫「よく防いだわね」
穂乃果「これくらいっ!」
真姫「けど」
真姫「いつまで耐えられるのかしら?」スッ
ガッドカッゴンッ
穂乃果「ぐっ……」グラッ
穂乃果(一発一発が重い……っ!)
真姫「がんがん行くわよ」
バシッガッズドッ……
穂乃果「くっ」
穂乃果(受けてばっかりじゃダメだっ)
穂乃果(こういう押せ押せタイプが相手のときは……)
真姫「ふっ」ブンッ
穂乃果「っ」サッ
真姫「!」
穂乃果(避けてカウンターだよっ!!)
バキィッッッ
真姫「っ……!」グラッ
花陽「穂乃果ちゃんのカウンターが入った……!」
穂乃果(これはかなり効いたはずっ!)
真姫「……ったいじゃない!」グワッ
穂乃果・花陽「!?」
ガンッッッ
穂乃果「へぶっ!?」グラッ
花陽「ずっ頭突き!?」
真姫「お返しよ」ガシッ
穂乃果(ま、まずっ)
ズドンッ
穂乃果「ごっ!?」
真姫「まだまだ」
ズドンッ
穂乃果「あっ、ぐ」
真姫「ふっ」ブンッ
穂乃果「……こんのっ!」パシッ
真姫「っ」
ガンッ
穂乃果「がっ!?」グラッ
穂乃果(拳を止めたと思ったらまた頭突きっ!?)
真姫「喰らいなさい」ガシッ
バギィッッッ
穂乃果「っ!!」ブシュッ
真姫「……ふぅ」スタッ
穂乃果「あ、が」フラッ
花陽「が、顔面固定からの膝蹴りっ……!」
花陽「穂乃果ちゃんっ!!」
ズダンッ!
真姫・花陽「!!」
穂乃果「……」ポタ…ポタ…
真姫「……っ」ジリッ
花陽「ほ、穂乃果ちゃ、鼻血がっ……」
穂乃果「……」ザッ
真姫「……へぇ」
真姫「あれだけ私が叩き込んでも倒れないなんて」
真姫「アナタってとんでもなく丈夫なのね?」
穂乃果「……」ザッ
真姫「……いいわ」ザッ
真姫「それなら」スッ
穂乃果「……」
真姫「倒れるまで……叩き込むだけよっ!!」グワッ
バキィッッッ!!
真姫「ぶっ!?」グルンッ
ドサッ
穂乃果「……ふーっ」
真姫「ぁ、え……?」
花陽「……え!?」
真姫「地面……? なん、で私……」
穂乃果「んん……べっ」ベシャッ
花陽「に、西木野さんが倒れて、穂乃果ちゃんが立ってる……?」
穂乃果「うぇ……口ん中血だらけで気持ち悪い……」
真姫「はっ!?」ガバッ
穂乃果「……ふぅ」ザッ
真姫「くっ」ジリッ
穂乃果「……どうしたの?」
真姫「は?」
穂乃果「全力、受け止めてほしいんでしょ?」ニコッ
穂乃果「それなら」フッ
穂乃果「かかって、来なよ」チョイチョイ
真姫「……こんのっ!!」ダッ
<しばらくして、とある空き地>
ピーポーピーポー
「怪我人は?」
「はぁ、また音ノ木坂の子達ね……」
「はは、もう慣れましたよ……さて、運びましょうか」
「あ、ぐ……」
「が……」
「ぐ、お……」
「くそっ……なんなんだよアイツは……」
「聞いてないわよ……あんな化け物がいるなんて……」
「く、あ……」
「ちくしょぅ……」
「いってぇ……」
「おい、ノビてるヤツらどうすんだ?」
「知るかボケッ」
「仕切ってたヤツら皆ノビちまってるからなぁ……」
「ははっ……こんなに人数集めたのにね……」
「あの女一体何者なんだ……」
「そういやよ、あの双子はどうしたんだ?」
「あ? あー、刃物使いのヤツらか」
「さぁ? アイツらはこの件にノらなかったみてぇだし知らねーわ」
「そんなのどうでもいいわよ……どうすんのアタシらこのザマで」
「はぁ……まあ、こうなったら結果を待つしかないっしょ」
「なんの?」
「決まってんだろ」
「一年生最強が誰になるか、だよ」
<とある空き地からとある河川敷への道>
「んー、毎度毎度ありがとうな」
「いやー、ホンマにヒフミちゃん達には頭が上がらんわー」
凛「……ん」パチ
「ほな、また明日なー」ピッ
「お、目ぇ覚めた?」
凛「あぇ……?」
「ふふ、寝ぼけとるん?」
凛「……にゃっ!?」
「おはよー、凛ちゃん」
凛「な、なんで凛はおんぶされてるのっ!?」
「あはは、凛ちゃん喧嘩終わったら倒れてもーたからね」
凛「なっ、えっ」
「あんなとこに倒れてる女の子放っとくわけにもいかんしね」
「だからウチが背負ってくって話になったわけやん?」
凛「いやいや、降ろしてよ! 凛、自分で歩けるし!」ジタバタ
「こらこら、怪我人は無茶したらアカンでー」
凛「なっ、それを言うならあなただって……」
「ん?」
凛「怪我して、る、はず……あれ?」
「んー? ウチは全然平気やで?」
凛「え、だっ、だって凛よりもたくさん相手いたのに」
「まーさすがに無傷ってわけやないけど、全然大したことあらへんで?」
凛「そ、そんな」
「結局骨のある子もおらんかったしなー」
凛「……」ジー
「?」
凛「……本当に大したことなさそうだね」
「はは、せやからそう言うとるやん?」
凛「それで」
「んー?」
凛「今はどこに向かって歩いてるの?」
「凛ちゃんのお友達のとこやで」
凛「え? それって」
「結果」
凛「?」
「気になるやろ、どっちが勝つのか」
凛「もちろんっ!」
「ははっ、ええ返事や」
凛「もし穂乃果ちゃんが負けてたら凛と交代だからね!」
「えっ、そうなん?」
凛「だってもしものときは凛に任せるって穂乃果ちゃん言ってたもん!」
「へー、ならますます現場に駆けつけんといかんわけやね」
「よっしゃ、ちょーっとスピード上げたるでー!」ダッ
凛「わっ、ちょっ、揺れるにゃー!」
「ははっ、しっかり掴まっとき!」タッタッタッ
<同じ頃、とある河川敷>
穂乃果「ふぅ……ふぅ……」ポタ…ポタ…
真姫「はぁっ、はぁっ」ポタ…ポタ…
花陽「ふ、二人とも……血だらけだよぉ……」
花陽「さ、さすがにこれ以上は……!」ザッ
真姫「入ってこないでっ!!」
花陽「!?」ビクッ
真姫「まだ……まだ、決着ついてないんだから……」ズル…ズル…
真姫「ここで止められたら、たまんないわよっ……!」ザッ
穂乃果「ふぅ……西、木野、さん……!」ザッ
真姫「行く、わよ……!」ダッ
穂乃果「……!」ダッ
真姫「ふっ!!」ブンッ
バキッ
穂乃果「っ、のっ!!」ブンッ
ガンッ
真姫「ぐっ、っらあ!」ブンッ
ドカッ
穂乃果「いっ、たいな!」ブンッ
ゴンッ
真姫「っっ、くぅっ!」ズザァッ
穂乃果「はぁ……はぁ……」
真姫「こ、の……」ザッ
穂乃果「い、いよ……」ザッ
真姫「あ?」
穂乃果「とこ、とん……やろうよ」ニィッ
真姫「……上等よっ!」ニイッ
ドカッバキッズドッ……
花陽「あ、あわわ……二人とももうノーガードで殴り合ってるよぉ……」
花陽「私じゃ止められないし……誰か助けてぇ!!」
真姫「はぁっ!!」ブンッ
ドゴッ
穂乃果「っっう!」ズザァッ
真姫「ちっ……!」
穂乃果「くっ!」ブンッ
バキィッ
真姫「ぶっ、がっ」グラッ
花陽「あ、西木野さんが……」
ズダンッ!
真姫「はぁっ、はぁっ」グググ
穂乃果「ふぅっ……ふぅっ……」
真姫「負けるわけには……負けるわけにはいかないのよ!」グググ
真姫「私は……音ノ木坂の、テッペン、を……」グググ
真姫「絢瀬、絵里を……」グググ
穂乃果「……」
真姫「倒さなきゃいけないのよっっっ!!」グワッ
真姫「ぁぁぁああああっ!!!」ダッ
穂乃果「……」スッ
花陽「え、穂乃果ちゃ、なんで構えを解いて……」
バギィッッッ!!
穂乃果「っっ!!」ズザァァッ
穂乃果「っ、っ……」グググ
穂乃果「ふんっ!!」グワッ
真姫「はぁっ、はぁっ、なん、で」
穂乃果「……ぺっ」ベシャ
真姫「なんで、倒れない、のよ」
穂乃果「……ねぇ」
真姫「……なに、よ」
穂乃果「全力、出せた?」
真姫「!!」
真姫「……えぇ」
穂乃果「そ、っか……じゃあ」グッ
穂乃果「次は、穂乃果の番、だね」
穂乃果「行くよっ……!」ダッ
真姫(あぁ……もう、最悪)
真姫(口の中切れてるし、鼻血ダラダラ出てるし、体中が痛くて)
真姫(こんなの、めちゃくちゃで、最悪よ)
真姫(私の全力、ぶつけたのに)
真姫(だけど)
真姫(私の全力を、受け止めてくれて)
真姫(私に全力でぶつかってくれる人)
ダンッ!!
真姫(ようやく、見つけられたわ)
バギィッッッ!!
ドサッ……
真姫「……」
穂乃果「はぁっ……はぁっ……」
花陽「えっ……あっ……」
花陽「に、西木野さん……?」
真姫「……」
穂乃果「はぁっ……はぁっ……?」クルッ
花陽「あっ……こ、この勝負っ」
花陽「穂乃果ちゃんの勝ちですっ!!」
穂乃果「はぁっ……やっ、た」フッ
穂乃果「勝った……私、勝ったよ」ズル…ズル…
花陽「穂乃果ちゃんっ!」ダッ
穂乃果「……っ」グラッ
花陽「わっ、と!」ガシッ
穂乃果「あ、りがと……は、なよちゃん」
花陽「お疲れさま、穂乃果ちゃ、ん」グスッ
穂乃果「え、花陽ちゃ……泣い、てる……?」
花陽「だって……こんなにっ、ボロボロになっ、て……血、だらけで……」グスッ
花陽「心配、したんだから……」ポロポロ
穂乃果「あ……」
穂乃果「え、へへ……ありがと」
花陽「あ、そうだ! 血! 血を止めなきゃ!」ゴシゴシ
穂乃果「あ、ごめ……せ、ふくに、私の血、ついちゃ……」
花陽「ううん! 気にしないで!」
花陽「え、と、座れる?」
穂乃果「うん、だいじょぶ」
花陽「よしっ、ちょっと待っててね? 鞄から救急セット取り出してくるから!」スクッ
穂乃果「え、持ち歩いてた、の?」
花陽「もしもの為に今日は準備してたんです!」タッタッタッ
穂乃果「そっかぁ……はは、花陽ちゃんは凄いや……」
真姫「……」スッ
真姫(……負けた)
真姫(私の、全力をぶつけた……今の全力を)
真姫(それでも負けた)
真姫(それに……最後の私からの一撃)
真姫(あの子は、私のパンチをわざと喰らったように見えた)
真姫(私の、全力の一撃を、ね)
真姫(それでも倒せないなんて)
真姫(完敗、ね)
真姫「……」パチッ
真姫(こんな風に大の字になって空を見上げるのなんて、久しぶりじゃないかしら)
真姫(……このまま眠れたら気持ち良さそうね)
真姫(あいにく、体中痛くてできそうにないけれど)
真姫「……ふっ」
花陽「……あの」
真姫「!?」
花陽「あ、ご、ごめんなさい……!」
真姫「あ……?」
真姫(この子……立会人をしてた……小泉さん、だっけ)
真姫(私に何の用……?)
花陽「あ、あの、に、西木野さんも、ボロボロっだからっ」
真姫「?」
花陽「え、っと、私、手当てするのが、その、得意っでして……あっ、いや、そんな大したことは、ないんです、けど……」
真姫「……」ジッ
花陽「その、穂乃果ちゃんの、応急処置ができたので、あの……」
真姫「……?」
花陽「西木野さんも、ね? 傷だらけ、だから……あの、手当てを……」
真姫(何が言いたいのかしら?)
花陽「に、西木野さんのっ、手当てを、してもいい、ですか……?」
真姫「……え?」
花陽「あ、いや、迷惑でなければ、なんですけど……」
真姫「何、言ってるの……?」
花陽「あっ、ご、ごめんなさい……」
真姫「いや、だっ、て……」
真姫「私は、アナタ達の敵、なのよ?」
花陽「えっ、と……」
真姫「どうして、敵を助けるようなことを……」
花陽「……っ」
花陽「わ、私っ!」
真姫「?」
花陽「にっ西木野さんは、悪い人ではないと思うんですっ!」
真姫「……は?」
花陽「西木野さんは、喧嘩が強くて、その、怖い感じの人だとは思うんですけどっ……」
真姫「……」
花陽「でもっ、私に絡んでくる人みたいな、そんな悪い人達とは違うと思うんですっ!」
真姫「……」
花陽「だって、あのっこの前も、私が悪い人に捕まったときに、助けてくれましたし……!」
真姫「あれは……私が、気に食わないヤツを、ぶっ飛ばしただけよ……」
花陽「で、でも、あれがなかったら、私も凛ちゃんも穂乃果ちゃんも! 皆、あそこでやられてたと思うんですっ!」
真姫「……それは」
花陽「ほ、本当に、敵だったら……私達がやられてしまう方が、都合がいいはずですよね?」
真姫「……そんな勝ち方、私のプライドが許さないわよ」
真姫「私は、勝負は正面からヤり合って、それで勝つものだと、思ってるもの」
真姫(今回は、それで負けちゃったけど)
花陽「えっ、と……たぶん、そういうところが、悪い人だと思えないところ、なんです」
真姫「……」
真姫「……はぁ、いいわよ」
花陽「……」
真姫「手当てでも、なんでも……好きにしたら?」
花陽「あ……は、はい!」ニコッ
花陽「えっ、と、まずは血を拭いて……」ガサゴソ
真姫「……」
真姫(この子……さっきまで自分の仲間と喧嘩してた相手の手当てするなんて、一体何を考えてるのかしら?)
花陽「あ、の……ちょっと、動かないでください、ね?」スッ
真姫「……ええ」
真姫(こんな、ビクビク怯えながら私に接するくらいだったら、放っといて帰ればいいのに)
真姫(恩でも売るつもりなのかしら)
真姫(よくわかんない人……)
花陽「よし、次は……」
真姫「……」ジッ
「にっしっきっのちゃぁぁぁん!!」
真姫・花陽「!?」
「おーおーおー、あらまぁ無様な格好ですこと」ニヤニヤ
「あらららぁ? この様子じゃ負けちゃったんですかな?」ニタニタ
花陽「あ、こ、この人達、は、この前の双子の……」
真姫「アナタ達……何しに、来たの?」
「あっはは~、何しに来た、だってぇ?」ニヤニヤ
「決まってんじゃん、そんなの」ニタニタ
「お前を」チャキッ
「殺しに来たんだよ」チャキッ
花陽「ひっ!? な、ナイフっ!?」ビクッ
真姫「……っ」グッ
「おっとっとっ?」ニヤニヤ
「その体で動けるんですかぁ~?」ニタニタ
真姫「くっ……」グググ
真姫(さっきのタイマンでのダメージが……っ)
花陽「あ、う……」ブルブル
「おろろ~ん? 隣にいるのは誰かと思えば!」ニヤニヤ
「この前の弱虫泣き虫ちゃんじゃな~い!」ニタニタ
「キミもついでに刺されとくぅ?」ニヤニヤ
「なんつってー、ぎゃははは!」ニタニタ
花陽「ひっ」ブルブル
真姫「っ」バッ
真姫(この子は、関係ない)
真姫(これは、私がケリをつけないと)
「お? なーに、西木野ちゃん?」ニヤニヤ
「いつの間にかその子と仲良くなっちゃった感じ?」ニタニタ
真姫「別に、そんなんじゃないわ」
花陽「っ」ブルブル
真姫「……ただ」スクッ
真姫「この子には、私の手当て、してもらうから」
真姫「だから、手は出させないわ」バッ
花陽「に、西木野さん……」ブルブル
真姫「……」
「あーあーあー! そうそう、それだよその目っ!」チャキッ
「その目がムカつくんだよっ!! 目ん玉えぐり出してやろうか、あぁ!?」チャキッ
真姫(コイツら、冷静じゃないわね)
真姫(頭のネジが飛んでるのか知らないけど、本気で刺しに来る、そういう目をしてる)
真姫「……」グッ
「行くぞオラァっ!!」ダッ
「殺してやるよ西木野ォっ!!」ダッ
穂乃果「ぐっ……」
穂乃果(まずい……まさか、今のこの状況に乱入者が現れるなんて考えてなかった……!)
穂乃果(凛ちゃんが食い止めてくれてるヤツら以外にまだいたなんて……!)
穂乃果(私も、行かなきゃっ)
穂乃果「ふんっ!」スクッ
穂乃果「今行くよ、花陽ちゃん!」ダッ
「オラァっ!!」ブンッ
真姫「っ」サッ
「死ねっ!!」シュッ
真姫「くっ」サッ
真姫(体が、重い……反撃にまで手が回らないっ!)
花陽「に、西木野さん!」
「オラオラどうしたァっ!?」ブンッ
「いつまで避けられるかなァっ!?」ブンッ
真姫「このっ」
ガッ
真姫「あっ」グラッ
真姫(しまっ、バランスが……!)
「はい、もらったァ!!」シュッ
真姫「!!」サッ
花陽「っっ!!」ダッ
ドスッ
穂乃果「っ、花陽ちゃん!!!」
真姫「……っ!?」
花陽「ふーっ、ふーっ」ブルブル
「あ?」
「おいおいおいおいおいおーい、え? 何割って入ってくれちゃってんのキミ?」
真姫「あ、アナタ……!」
「ちっ、鞄なんか盾にして防ぎやがって、このっ」
花陽「っ」グッ
「あっ? てめ、ナイフ抜けねーじゃねーか!」ググッ
花陽「っっ」グググ
「もういいっ、俺がソイツを刺す!!」バッ
真姫「!? あぶなっ
凛「やあああぁぁぁっっ!!」ギューン
ドゴォッッッ
「ぐはっ!?」ドサッ
凛「ぐっ!?」ドサッ
「なっ、星空ァ!?」
真姫「っ」ダッ
バキィッッ
「ぐふっ!?」
「こ、このっ、に、しきのォ!」
穂乃果「せいやぁっ!」バッ
ドガッッ
「あぐっ!?」ドサッ
穂乃果「っとぉ」スタッ
穂乃果「花陽ちゃん!!」クルッ
花陽「は、ほ、穂乃果ちゃ」
凛「うぉぉぉおおっ!!」ガバッ
花陽「り、凛ちゃんっ!?」
凛「テメェっかよちんに何向けてんだっ!!」ブンッ
ドゴォッ
「ぁぐっ!?」ゴロゴロッ
穂乃果「はい、この二つ危ないから没収ね!」バッ
「っ……くそっ!!」ダッ
「ちっ、くしょ!!」ダッ
凛「あっ、こら、待てっ……ぐっ!」ガクッ
花陽「り、凛ちゃん!」サッ
凛「う、ぐ……ごめん、かよちん……アイツら、逃がしちゃった」
花陽「そんな、そんなのいいよっ! 助けてくれてありがとうっ!」
穂乃果「花陽ちゃん! 大丈夫!?」サッ
花陽「あ、穂乃果ちゃん! う、うん、怪我はないよ」
穂乃果「……はぁ~、よかったぁぁ」ガクッ
穂乃果「花陽ちゃんにもしものことがあったら、私、凛ちゃんに顔向けできなくなるとこだったもん……」
穂乃果「ていうか凛ちゃんっ! 来てくれて本当にありがとうっ!」バッ
凛「穂乃果ちゃん! うん、かよちんを守るためなら凛はいつでもどこでも駆けつけるからね!」
真姫「……小泉さん」ザッ
花陽「あ、西木野、さん……」
真姫「アナタ、どうして私を庇ったの?」
花陽「え?」
真姫「だって、アナタ、刃物を見たとき物凄く怯えていたじゃない」
花陽「……」
真姫「なのに、どうして仲間でもない私なんかのことを……」
花陽「……だって」
真姫「?」
花陽「だって、刃物で刺されたら、死んじゃうかもしれないんですよ……?」
真姫「それは、そうだけど……」
花陽「私、それは、絶対に怖くて、だから……刃物は、怖いけど……」
凛「……」
花陽「それ以上に、目の前で誰かが刃物で傷つけられちゃうことの方が怖い、から……」
凛「かよちん……」
花陽「だから、私……」
真姫「……もういいわ」
花陽「……」
真姫「……ありがとう」ボソッ
花陽「え?」
真姫「……助けてくれて、ありがとう」
花陽「……うんっ」
花陽「あ、そういえば……凛ちゃんはどうしてここに?」
凛「……え?」
花陽「英語の追試は終わったの?」
凛「え、ああ、えーと」
花陽「……それにしては、やけに傷が多い気がするんだけどな?」
凛「うーんと、うーんと」
花陽「……何かあるなら、正直に話してほしいな?」ニコッ
凛「うぅ……穂乃果ちゃーん」
穂乃果「仕方ないよ、正直に話そう? 私も一緒に謝るから」
花陽「え、穂乃果ちゃんも知ってるの?」
穂乃果「ご、ごめんね、花陽ちゃん」
凛「しょうがないかにゃ……実はね」
花陽「えぇっ、西木野さんの仲間達がタイマンの邪魔をしないように、そんな大人数と一人で喧嘩してたのぉっ!?」
真姫(……本当に私についてきてたヤツらが迷惑かけっぱなしなのね)
凛「ひ、一人じゃないよ! なんか、知らないけど、協力してくれた人達がいて……」
穂乃果「えっ、そんな人達がいたの?」
凛「うん! お恥ずかしいことにその内の一人にここまでおんぶしてきてもらっちゃったにゃ……」
花陽「えぇっ!?」
凛「ほら、あそこに……あれ?」
穂乃果「どうしたの?」
凛「おかしいな、そこで降ろしてもらったんだけど」
花陽「どこにもそれらしき人は見当たらないね……」
穂乃果「帰っちゃったのかな?」
凛「ええっ、結局まだ名前も聞いてないのに……」
真姫「……」
凛「どこに行ったんだろ……」
<とある路地裏>
「はぁっ……はぁっ……」
「こ、ここまで来れば平気だろっ」
「くそっ……タイマンが終わった頃に襲撃かけりゃ間違いないと思ったのによ!」
「まさかあんな弱虫泣き虫ちゃんに邪魔されるとはな……ちっ!」
「あの四人……ぜってぇぶっ殺してやる!!」
「あぁ!! どんな風に痛めつけてやろうか」ニヤニヤ
「そうだなぁ、考えとかないとなぁ」ニタニタ
「ちょいと、そこの双子さん?」ヌッ
「あ?」
「なんだテメーは」
「いやぁ、ウチな、喧嘩は正々堂々ヤるのが好きなんや」スタスタ
「は?」
「それも素手の殴り合いが一番好きなんよ、わかるかな?」スタスタ
「なんだそりゃ、喧嘩は勝てばなんでもいいだろうが」
「……はぁー、わからんかー、まぁわからんやろなぁ」スタスタ
「キミらみたいな卑怯モンには、な」ザッ
「あぁん?」
「なんだテメー、喧嘩売ってんのか」
「いいや? これは喧嘩売ってるのとちゃうよ」
「じゃあっなんだっつーんだよ!!」
「アタシら、マジで今気ィ立ってっからよ! ぶっ殺されたくなかったらさっさと消えろやっ!!」
「……“殺す”?」
「そうだよ、マジで殺すぞ!!」チャキッ
「アタシら、ネンショーとか別に怖くねーからよ!!」チャキッ
「……アカンなぁ、ホンマにアカンで、キミら」
「そんな物騒な言葉は覚悟ナシに使ったらアカンのやで?」
「るせェえええ!!」ダッ
「死ねごらァあああ!!」ダッ
「やれ、“死ね”だの“殺す”だの、ホンマ物騒やなぁ」ピキッ
「キミらさぁ」パキッ
「……自分が“そうなる”覚悟ができてて、使っとるんか?」スッ
ドッゴォォォオオオ!!!!
バッギィィィイイイ!!!!
「……あー、楽しないわ、ホンマ」
「やっぱ喧嘩は強い子と正々堂々ヤるのが一番やで」
「はーっ……」スッスッ
「……あーもしもし、ヒデコちゃん?」
「すまんけど、また救急車呼んでくれへん?」
「……あー、うん、そう……すまんなぁ」
「……うん、わかるところに出しとくから」
「はい、はい……わーってるって、はいはい」
「じゃ、頼むでー」
「はーっ、今日は夜ごはん何にしようかなーっと」スタスタ
「あ、が……」ピクピク
「っ、ぁ……」ピクピク
投下終わりです
書き貯めが出来次第また投下します
月刊連載になっちゃってるんでペース上げられるように頑張ります
投下始めます
<とある河川敷>
凛「どこに行ったのかなぁ、あの人……」
穂乃果「どんな人だったの?」
花陽「確かに、気になります!」
凛「ん、えっとね……」
凛「……関西人?」
穂乃果「え?」
花陽「か、関西の人だったの?」
真姫「……」
凛「だって関西弁っぽいしゃべり方してたし……あとね」
凛「おっきかったにゃ」
穂乃果「何が?」
凛「おっぱいが」
花陽「!?」
花陽「凛ちゃんっ!!」ガシッ
凛「えっ、どしたのかよちん」
花陽「その人に何もされなかった!?」
凛「えっ、と? 別に何もされてないよ?」
花陽「ほ、本当に?」
凛「あっ、でも凛、喧嘩終わったあと寝ちゃったみたいで……目が覚めたらあの人におんぶされてたんだ!」
花陽「えっ」
凛「だから凛が寝てる間に何があったかはわからないにゃ~」
花陽「……」
凛「かよちん?」
花陽「……凛ちゃん」ギュッ
花陽「傷の手当て、しよっか」ニコッ
穂乃果(何……? 花陽ちゃんの雰囲気が……)
真姫(本当によくわかんない人ね)
花陽「……あっ」
穂乃果(変わった、と思ったら元に戻っちゃった)
花陽「ご、ごめんなさい、西木野さんの手当てを……」
真姫「……いいわよ、私は後で」
真姫「血は拭いてもらったし、別にこのまま帰っても」
花陽「そっそれはだめです!」
真姫「……じゃあ待ってるから」
花陽「は、はい! あ、ごめんなさい……大きな声出しちゃって」
真姫「いいわよ別に」
花陽「は、はい……」
凛「……」
凛「ねぇ」
花陽「あっ凛ちゃん、ちょっと待っててね、今救急セットを……」
凛「どうしてかよちんと西木野が仲良さそうに話してるの?」
花陽「えっ」
真姫「……」
凛「だって、西木野は敵なんだよ?」
花陽「え、えっと」
凛「そうだっ、ねぇっ! タイマンの結果はどうなったの!? ちゃんと決着着いたの!?」
穂乃果「……それは
真姫「負けたわ」
穂乃果「えっ」
凛「!!」
真姫「私が、負けたわよ」
凛「……ほっ」
穂乃果「ほ?」
凛「穂乃果ちゃんすっごいにゃあ!!」ガバッ
穂乃果「うわぁ!?」グラッ
凛「本当に勝っちゃったんだ! 凄い凄い!」ピョンッピョンッ
穂乃果「あ、はは……いやぁそれほどでも」ポリポリ
真姫「何よ、私に勝ったことは大したことないってわけ?」
穂乃果「あ、いや、そういうわけじゃあ……」
凛「ふっふーん、これで一年生ナンバーワンは穂乃果ちゃんになったんだね!」
凛「西木野は『ナンバーツー』に降格だにゃ!」
真姫「……ふっ、私がナンバーツーになるなら、アナタは『ナンバースリー』に降格かしら?」
凛「なっ!」
真姫「だってそうでしょ? 一つずつズレるんだし」
凛「……穂乃果ちゃんがナンバーワンになるのはいいけど、凛が降格するのはなんか気に喰わないにゃ」
穂乃果「あー、えっと」
凛「西木野! 今ここでナンバーツーの座をかけて勝負にゃ!」
穂乃果「えっ! ちょ、ちょっと凛ちゃん」
真姫「上等よ、白黒はっきりさせようじゃない」
穂乃果「えぇっ! に、西木野さんまで!?」
凛「へぇ……珍しいね、凛の挑発に乗るなんて」
真姫「アナタ、私に喧嘩売るときいっつもボロボロだったじゃない」
真姫「私は、自分よりボロボロの相手と喧嘩しようだなんて思わないわ」
凛「ふーん」
真姫「アナタこそいいの?」
凛「なにが?」
真姫「ナンバーワンとタイマンした後でボロボロのナンバーツーに挑んで負けるなんて、せっかくのナンバースリーの座に傷がつくんじゃないかしら」
凛「ななっ! どうして凛が負ける前提で話してるの!」
真姫「今ならまだ、かつてボロボロの状態で元ナンバーワンに挑んだ『元ナンバーツー』っていう肩書きでいられるわよ?」
凛「むむむ……! こ、この」
真姫「何よ」
凛「え、と……穂乃果ちゃんに負けた癖に!」
真姫「……それは事実だけど、別にアナタより弱いというわけじゃないわ」
凛「むむむむ……! 仲間に裏切られた癖に!」
真姫「……そもそも、アイツらのことをちゃんとした仲間だと思ったことは一度もないわ」
凛「むむむむむ……!」
真姫「ほらどうしたのよ、何も言い返せないのかしら?」
穂乃果「お、おーい、二人ともそこらへんで……」
凛「こ、このつり目っ!」
真姫「は?」
凛「赤毛っ!」
真姫「あのね、私の身体的特徴と今の話に何の関係が……」
凛「ぼっちっ!」
真姫「っ」
凛「なーにが
『アイツらのことを仲間だと思ったことは一度もないわ』キリッ
だにゃ!」
凛「凛知ってるよ、西木野には友達がいないってこと!」
真姫「べっ別に友達なんて」
凛「あーあーあー、可哀想だにゃー友達がいることの素晴らしさがわからないなんてー」
凛「生まれてこの方ぼっちの西木野にはわからないんだにゃー」
真姫「だっ誰が生まれてこの方ぼっちよ!!」
凛「お? 何かにゃ? 友達いたことあるのかにゃ?」
真姫「そ、そんなの当たり前じゃない」
凛「へー、じゃあ最後に友達と遊んだのはいつなのかにゃ?」
真姫「……」
真姫「……中二の夏」ボソッ
凛「え? よく聞こえなかったなぁ、もう一回大きな声ではっきり言ってくれるかにゃ?」
真姫「……」
凛「ん~?」
真姫「っ! 中二のっ、夏よっ!!」グワッ
凛「うるさいにゃ」
真姫「ええ、そうよ! 友達なんてまともにいたことないわよ! その子もそれを最後に音信不通だし! 同じ学校でもなかったし、同級生でもなかったし! そもそも向こうは私のこと友達と思ってくれてたかもわからないし!」
凛「そんなことまで聞いてないにゃ」
真姫「……はーっ、はーっ、ったく大声出させるんじゃないわよ」
凛「勝手に語り出したのはそっちだにゃ」
真姫「はぁ……ほんっとにムカつくわね、アナタ」
凛「……それはこっちのセリフだよ」
真姫「いいわよ、決着つけてあげる」スッ
凛「凛は最初からそのつもりだよ」スッ
穂乃果(あ、これヤバイやつだ)
穂乃果(私が止めなきゃ……!)
穂乃果「ふ、二人ともいい加減に
花陽「いい加減にしてくださいっ!!!」
穂乃果・凛・真姫「!?」ビクッ
花陽「凛ちゃんっ!!」
凛「にゃっ!?」
花陽「前にも言ったよね? ボロボロなときに無茶しないでって!」
凛「う、うん」
花陽「なのになんですぐ自分から喧嘩売ろうとするの! もっと怪我しちゃうからだめって言ったよね?」
凛「ご、ごめんかよちん」
花陽「あと体の特徴を悪口に使うのはだめだよ! 言われた人の気持ちを考えて!」
凛「う……ごめんなさい」
花陽「私にじゃなくて、謝るなら西木野さんに、だよ?」
凛「ぐ……そ、それは」
花陽「凛ちゃん」
凛「ぐ、ぐぐぐ……ご……わ、悪かった、ね」
花陽「……」ジッ
凛「うぅ……ごめんなさいっ!」バッ
花陽「うん、ちゃんと言えたね」ニコッ
凛「……」
真姫(凄い顔してるわね……ていうか別にその点に関しては謝られなくてもいいんだけど)
花陽「西木野さん」クルッ
真姫「なっ、なに?」
花陽「西木野さんも怪我してボロボロなんだから無茶しないでくださいっ!」
真姫「……え?」
花陽「さっきも危なかったのに……これ以上怪我するようなことしないでくださいっ」
真姫「……」
真姫「……悪かったわね」
花陽「あと凛ちゃんのこと煽りすぎです! 西木野さんが煽らなければ、凛ちゃんだってあそこまで煽ったりしなかったはずですっ」
穂乃果(それはどうなんだろう……)
真姫「……はぁ」
真姫「ごめんなさい」ペコッ
凛「ありゃ? 随分簡単に頭下げたね」
真姫「私は大人だから」
凛「ん? それは凛が子どもだって言いたいのかにゃ?」
真姫「あら、そんなつもりはなかったけど?」
凛「言い方が紛らわしいんだにゃ」
真姫「勘違いするってことは、アナタ自身に子どもだっていう自覚があるんじゃないかしら?」
凛「なんか言った?」
真姫「何も」
凛・真姫「……」
花陽「二人とも、さっき言ったこと聞いてなかったのかなぁ?」
凛・真姫「っ」ビクッ
凛「な、なんでもないにゃー」
真姫「……」
花陽「そっかぁ、じゃあ凛ちゃんから手当て始めよっか?」ニコッ
凛「う、うん」
穂乃果(花陽ちゃん、怒ると凄いなぁ)
真姫「……ふぅ」ドサッ
真姫(疲れたわね)
真姫(小泉さん、あんな表情もできるのね)
真姫(さっきまではビクビクしてたのに)
真姫(変な人)
穂乃果「西木野さん」ザッ
穂乃果「隣、いい?」
真姫「……駄目って言ったら?」
穂乃果「駄目なの?」
真姫「……」
穂乃果「聞きたいことがあるんだ、西木野さんに」
穂乃果「……本当に嫌なら諦めるけど」
真姫「……はぁ、別にいいわよ」
穂乃果「やった! それじゃ座るね!」ドサッ
真姫「……一応聞くけど」
穂乃果「なになに?」
真姫「普通、喧嘩の直後にこんな風に隣り合って座ったりはしないんじゃないかしら」
穂乃果「えー、そうかな?」
真姫「少なくとも、私はほとんど経験がないわ」
穂乃果「そっかー……あ、でも確かに私も喧嘩相手としたことはあんまりないかも」
真姫「それじゃどうして?」
穂乃果「えっとね、気になったことがあって……」
穂乃果「西木野さん」
穂乃果「どうしてあなたは音ノ木坂のテッペンを目指すの?」
真姫「……不良の集まる高校でトップを目指すなんて、私達みたいな人間にとっては普通のことじゃないかしら」
穂乃果「かもしれないね」
穂乃果「……でも」
真姫「?」
穂乃果「西木野さんからは、他の人からは感じないような、なにかこう……強いものを感じたんだよね」
真姫「……」
穂乃果「なんだろう……意地、みたいな……えっと、かっこよく言えば覚悟!みたいな感じ?かな」
穂乃果「だからかな、西木野さんからもらう一撃一撃が本当に重たく感じて、凄いなーって思ってたの」
真姫「……アナタは倒せなかったけどね」
穂乃果「あー、それは私が頑丈だから、あはは……」
真姫「……」
真姫「いいわ」
穂乃果「ん?」
真姫「アナタには、話してあげる」
真姫「どうして私が、音ノ木坂の頂点(テッペン)を目指すのかを」
真姫「……中学生の頃にね、ある人と出会ったの」
穂乃果「ある人?」
真姫「……私に、喧嘩のやり方を教えてくれた人」
穂乃果「へぇ! それじゃ西木野さんの師匠みたいな人なんだ!」
真姫「別に、そんなんじゃなかったわ」
真姫「ただ」
穂乃果「ただ?」
真姫「とても、強い人だった」
穂乃果「……西木野さんがそう言うってことは、よっぽど強いんだね、その人」
真姫「……ええ」
真姫「それに、あの人は喧嘩はもちろん……人間的にも強い人だったわ」
真姫「いつも一人でたくさんの人達を相手にして……自分より背も大きくて強そうな相手もたくさんいる中で、それでも怯まずに戦っていたわ」
穂乃果「ほへぇ……一人で、なんだ」
真姫「そう、一人で、よ」
真姫「弱い癖に、群れて行動することで強くなった気になってる連中とは全く違う……」
穂乃果「……そっか」
穂乃果「それで西木野さんも一人で行動してるんだね!」
真姫「……どういうこと?」
穂乃果「だって、西木野さんが誰ともつるまずにいたのってさ」
穂乃果「その人に憧れてるからでしょ?」ニコッ
真姫「……」
真姫「なっ!?」
真姫「そっ、そんなんじゃないわよ! 憧れとかじゃなくて、ただ、私も群れて生きるようなカッコ悪い真似したくないって……そう思ったのよ!」
穂乃果「じゃあその人の生き方はカッコいいと思ったんだよね?」
真姫「っ、それは」
穂乃果「そういうのを憧れって言うと思うんだけどなぁ、西木野さんにとっては違うのかな?」
真姫「……」
真姫「……はぁ」
穂乃果「えへへ」
真姫「アナタって、本当に変な人よね」
穂乃果「えぇっ!?」
真姫「……話が逸れたわね」
真姫「それで、その人と私は……まぁ時々会ったりしてたんだけど……」
穂乃果「だけど?」
真姫「二年前のある日を境に、突然あの人は変わってしまったの」
穂乃果「それって、どういう……」
真姫「詳しいことはわからないわ」
穂乃果「そう、なんだ」
真姫「……ただ、一つだけわかっていることがあるわ」
真姫「絢瀬絵里」
真姫「彼女が、関係してるということよ」
穂乃果「絢瀬、絵里……」
真姫「そう」
穂乃果「……誰だっけ?」
真姫「えっ……まさか、嘘でしょ?」
穂乃果「うーん……どこかで聞いたことがあるような気はするんだけどね、忘れちゃった」
真姫「はぁ……絢瀬絵里はね、現在の音ノ木坂で最も頂点(テッペン)に近いとされている三年生よ」
穂乃果「テッペン……三年生……」
穂乃果「……あっ、思い出した! 前に花陽ちゃんから聞いた人だ!」
真姫「小泉さんから?」
穂乃果「そう! 凄く強いって!」
真姫「……そうね、彼女は強いわ」
真姫「そして、私が音ノ木坂に入った目的は……」
真姫「その絢瀬絵里を倒すことよ」
穂乃果「!」
真姫「だけど、音ノ木坂で三年生が一年生を相手にするなんてことは、まずないわ」
真姫「ましてや、絢瀬絵里のような『最大派閥のトップ』がわざわざ『無名の一年生』からの挑戦を受ける、なんてことはね」
穂乃果「じゃあどうするの?」
真姫「『無名の一年生』じゃなくなればいいのよ」
穂乃果「……どういうこと?」
真姫「つまり、相手にとって勝負する価値のある相手になればいいのよ」
真姫「私にとって、アナタがそうなったようにね」
穂乃果「……あっ!」
真姫「理解したようね」
真姫「頂点(テッペン)を目指す者にとって無視できない存在……それは自分と同じように頂点を目指す者……さらに自分の立場を脅かすであろう実力を持つ者よ」
真姫「だから私は、音ノ木坂の頂点(テッペン)を目指した」
真姫「そして、学年トップの座を手にした」
真姫「全ては、絢瀬絵里とタイマンをして、倒す為に」
穂乃果「そうだったんだ……」
真姫「えぇ」
真姫(……まあ、アナタに負けたことでその計画は狂ってしまったけれど)
穂乃果「……うーん」
真姫「どうしたのよ?」
穂乃果「えっとね……なんかちょっとしっくり来ないなぁって」
真姫「……どうして?」
穂乃果「んーとね、西木野さんがその……絢瀬先輩?を倒す為にテッペンを目指そうとしてたことはわかったよ」
穂乃果「けどね、なんで絢瀬先輩を倒したいのかがわかんないなぁって」
真姫「……」
穂乃果「西木野さんは、どうして絢瀬先輩を倒したいの?」
真姫「……」
真姫「……それは」
ザッ
穂乃果・真姫「!」バッ
花陽「わっ」ビクッ
穂乃果「あっ、花陽ちゃんかぁ」
穂乃果(また誰か襲ってきたのかと思っちゃった)
真姫「……ふぅ」
花陽「ご、ごめんなさい、驚かせちゃいましたか……?」
穂乃果「ううん、大丈夫だよ! ちょっと西木野さんとお話してただけだから!」
花陽「そうだったんだ……あ、あのね、凛ちゃんの手当てが終わったから、次は西木野さんの手当てを始めようと思って……」
真姫「……なら行くわ」スクッ
花陽「あ、えと……お話は、大丈夫ですか?」
真姫「ええ、話すべきことは話したから」
穂乃果「えっ、まだ聞きたいことが」
真姫「小泉さん、向こうでお願いするわね」スタスタ
花陽「あっ、ちょっちょっと待ってくださいっ」タッタッタッ
穂乃果「……えぇ?」ポツーン
<同時刻、河川敷より離れた場所>
海未「……」スッ
プルル…プルル…ガチャッ
海未「園田海未です」
海未「……はい、決着が着きました」
海未「勝ったのは、高坂穂乃果です」
海未「……ええ、例の転校生です」
海未「……はい」
海未「それと、西木野真姫についてはいかが致しますか?」
海未「……承知しました」
海未「では」ピッ
海未「……ふぅ」
海未「……」
海未「これで、ようやく……」
海未「……」
海未「……ことり」
<しばらくして、河川敷>
花陽「……これで、よしと」キュッ
花陽「えっと……一応これで終わりなんです、けど……」
真姫「……本当に得意なのね」
花陽「えっ?」
真姫「手当ての話よ、正直ここまでのレベルだとは思っていなかったわ」
花陽「あっ、と、ごっごめんなさい」
真姫「……褒めてるのにどうして謝るのよ」
花陽「えっ? あっ……ありがとう、ございます」
花陽「……えへへ」
真姫(本当に、よくわかんない人ね)
真姫「さて、と」スクッ
花陽「どうしたんですか?」
真姫「小泉さん……手当てしてくれたこと、感謝するわ」
花陽「どっどういたしまして!」
真姫「……それじゃ」クルッ
花陽「えっ、どっどこに行くんですか?」
真姫「? 家に帰るに決まってるじゃない」
花陽「じゃっじゃあ凛ちゃんと穂乃果ちゃんを呼んで
真姫「待って」
花陽「にっ西木野さん?」
真姫「一人で帰るから、呼ばなくていいわ」
花陽「えっ、でも」
真姫「……私、これでもプライドを賭けて全力の勝負した後なのよ」
真姫「その全力の勝負をして負けた相手と、仲良く一緒に帰るなんてできると思う?」
花陽「あっ……」
真姫「……さよなら」ザッ
花陽「……」
凛「かよちーん!」タッタッタッ
花陽「あ、凛ちゃん……」
穂乃果「あれ、花陽ちゃん一人?」
花陽「穂乃果ちゃん……うん、西木野さんは先に帰るって」
穂乃果「そっかぁ、まだ聞きたいことがあったんだけど……」
花陽「西木野さんに?」
穂乃果「うん! さっき西木野さんと話してたんだけどね……」
<少しして、河川敷からの帰り道>
花陽「……なるほど、西木野さんが絢瀬先輩を倒したい理由……それは確かに気になりますね」
凛「単純に自分より上がいるのが気に喰わないタイプなんじゃないかにゃ? プライド高そうだし」
穂乃果「うーん……なんかそういうのとは違う気がするんだよねぇ」
花陽「西木野さんと絢瀬先輩……私もあの二人に何か因縁があるって話は聞いたことがないし……」
穂乃果「むむ……謎は深まるばかりだね」
花陽「それと、西木野さんのお師匠さんがどんな人なのかも気になります!」
凛「あの西木野に喧嘩を教えたっていうくらいだから、きっとゴリラみたいにムキムキな感じだよ!」
花陽「ご、ゴリラはさすがにないんじゃないかなぁ……?」
穂乃果「でも西木野さんが強いって言うくらいだからきっと凄いんだろうね!」
穂乃果「……名前だけでも聞いておけばよかったかなぁ?」
花陽「そうだね、さすがにどこの誰かもわからないとなると調べることもできないし……」
穂乃果・花陽「うーん……」
凛「……」
穂乃果「っと、もう別れるところまで来ちゃったね!」
花陽「本当だ……色々話しながら考えてたらあっという間だったね?」
穂乃果「そうだね……よしっ」グッ
穂乃果「花陽ちゃん! 凛ちゃん!」
花陽「穂乃果ちゃん?」
凛「どうしたの?」
穂乃果「二人とも、今日はありがとう!」
穂乃果「花陽ちゃんは立会人と喧嘩後の手当てしてくれたよね!」
花陽「そんな、私は大したことは……」
凛「かよちん!」ガシッ
花陽「りっ凛ちゃん?」
凛「こういうときはケンソン?せずに素直にどういたしましてって言えばいいんだよ!」
花陽「すっ素直に……」
凛「うん!」
花陽「どっどういたしましてっ、穂乃果ちゃん!」
穂乃果「うんっ、ありがとう!」ニコッ
穂乃果「凛ちゃん!」
凛「にゃ?」
穂乃果「凛ちゃんはタイマンに邪魔が入らないようにしてくれたし、花陽ちゃんが危ないときに助けに来てくれたよね!」
凛「穂乃果ちゃんにもしものときは任せるって言われてたからね!」ニコッ
穂乃果「うんっ、本当に助かったよ! ありがとう!」ニコッ
凛「えへへ、どーいたしまして!」
穂乃果「それじゃまた、学校でねー!」タッタッタッ
凛・花陽「またねー!」
花陽「……穂乃果ちゃん、凄いなぁ」
花陽「西木野さんに勝っちゃうくらい強いのに、あんなに明るくて元気で」
凛「そうだね! 凛も負けてられないにゃ!」
花陽「それからね、今日思ったんだけど」
凛「?」
花陽「西木野さんもね、悪い人じゃないんじゃないかなぁって」
凛「え……」
花陽「今までの感じとか喧嘩してる姿を見て怖い人だなって思ってたけど、実際に話してみたら少し違っててね?」
花陽「私が手当てすることも許してくれて……それに、前に私を襲ってきた危ない人達からも守ってくれたんだよ?」
花陽「それと、手当てするときにちょっと聞いてみたんだけどね」
花陽「凛ちゃんや穂乃果ちゃんと喧嘩してたのも、嫌いだからとかじゃなくて、純粋に強い人と勝負をして勝ちたいっていう理由からだったみたいで」
凛「……」
花陽「あっ、ごっごめんね? 花陽だけ喋り続けちゃって……」
凛「……ううん」
花陽「えっと、だからね……もし、もし上手くいったら」
花陽「西木野さんとも、仲良くなれるんじゃないかなぁ……って、そう思ったの」
凛「っ!」
花陽「凛ちゃん……?」
凛「……凛は」
凛「凛は、そう簡単に……敵だった相手のことを、そんな風には思えないよ」
花陽「……そっか」
凛「ごめんね、かよちん」
花陽「ううん……」
花陽「……とりあえず、今日は帰ろう?」
凛「……うん」
<しばらくして、夜、穂むらへの帰路>
穂乃果「はぁーっ、疲れたーっ!」
穂乃果(西木野さん、か……久々にあんなに強い相手と喧嘩したなぁ)
穂乃果(あれで一個下なんだよね……学年は一緒だけど)
穂乃果(そうなると三年生はきっともっと強いんだろうなぁ)
穂乃果(特に絢瀬?先輩はテッペンに近いって言われてるくらいだし、凄いんだろうな)
穂乃果(……まぁ、穂乃果がそんな凄い先輩と勝負することはないだろうけど)
穂乃果(音ノ木坂のテッペンを獲ろうなんて考えてないしね!)
穂乃果「留年回避できればそれでいいのだ~」
穂乃果「……ん?」
穂乃果「……あれは」タッタッタッ
穂乃果「海未ちゃん!」
海未「穂乃果……お待ちしておりました」
穂乃果「どうしたの? こんな時間にお饅頭買いに来たの?」
海未「いえ、そうではありません」
穂乃果「そうなの? あ、じゃあ穂乃果の部屋上がってく? それか一緒に穂乃果の家で夜ご飯食べちゃおっか!」
海未「いえ、そこまでには及びません」
穂乃果「えぇー? 久々に一緒に食べようよぉ」
海未「穂乃果」
穂乃果「っ」
穂乃果(海未ちゃんのこの目は、何か大事な話があるときの……)
穂乃果「……何か、あった?」
海未「単刀直入に言わせていただきます」
穂乃果「うん」
海未「穂乃果」
海未「私達の仲間に……絢瀬派に、入ってください」
<同時刻、とある公園>
ザッザッザッ
真姫「……」ピタッ
真姫「……」
真姫「……まぁ、いるわけないわよね」
真姫(つい、来てしまった)
真姫(あの人に会えるかもしれない、って)
真姫(ほんの少しだけ……そう思ってしまった自分がいて)
真姫「……」
真姫「……バカね」
真姫「……」
真姫(やっと、見つけられたのよ)
真姫(私の全力を受け止めてくれて)
真姫(私に全力でぶつかってくれる人)
真姫(……にこちゃん、アナタ以外の人でね)
投下終わりです
書き貯めが出来次第また投下します
投下始めます
<同じ頃、穂むら前>
穂乃果「……絢瀬派?」
海未「ええ」
穂乃果「えーと……ちょっと待って、確か絢瀬派って一番おっきな派閥のことだよね?」
海未「そうですね、音ノ木坂内では最大派閥と呼ばれています」
穂乃果「じゃあ絢瀬先輩がトップをやってるところ?」
海未「はい」
穂乃果「……」
穂乃果「えっ、海未ちゃん絢瀬派に入ってるのっ!?」
海未「……ええ」
穂乃果「ちょっ、ちょっと待って! えーとえーと、うーん……」
海未「……」
穂乃果「……まず、海未ちゃんがそういう派閥に入ってることが驚きなんだけど」
海未「……事情がありまして」
穂乃果「てっきりことりちゃんと二人でいると思ってたんだけどな……あ、じゃあことりちゃんも一緒に絢瀬派に入ってるんだよね?」
海未「……」
海未「……今は、ことりとは一緒にいません」
穂乃果「えっ」
海未「……」
穂乃果「ことりちゃんは一緒にいないの?」
海未「……ええ」
穂乃果「喧嘩でもしたの?」
海未「……そう、ですね……喧嘩、と言えるのかもしれません」
穂乃果「ええっ!? 海未ちゃんとことりちゃんが!?」
海未「……」
穂乃果「二人が一緒にいないなんて……何があったの?」
海未「……それは」
ガララ
穂乃果・海未「!」
雪穂「やっぱりお姉ちゃんいた……あっ、海未ちゃんもいたんだ!」
穂乃果「雪穂! ただいま~!」
雪穂「おかえり……って、やっぱりボロボロになって帰ってきたね」
穂乃果「あはは……」
雪穂「まあでも応急処置は済んでるみたいだし、後で湿布とか取り替える感じでいいかな」
穂乃果「うん、お願いね!」
海未「こんばんは、雪穂」
雪穂「こんばんは、海未ちゃんまたお饅頭買いに来てくれたの?」
海未「いえ、今日は穂乃果に話がありまして……」
穂乃果「ちょっとここで話してたんだよ」
雪穂「へぇ、そうなんだ……あ、じゃあせっかくだし上がってく?」
海未「いえ、本日はこれで失礼させていただきます」
穂乃果「えっ、まだ話途中……」
海未「穂乃果」
穂乃果「?」
海未「詳しい話は、またの機会に」ボソッ
穂乃果「……そっか、それならまた今度ね!」
海未「ええ」
雪穂「また今度遊びに来てね?」
海未「……是非」ニコッ
海未「それでは、また」スタスタ
<高坂家、穂乃果の部屋>
穂乃果「そっとだよ? そっとお願いね?」
雪穂「はいはい、わかってるよ」チョンッ
穂乃果「……ったぁっ!?」ビクッ
雪穂「もー、さっきから暴れないでよお姉ちゃん」
穂乃果「うぅ……だって染みるんだもん」
雪穂「はぁ……喧嘩のときはいくら殴られても絶対に倒れない癖に」
穂乃果「殴られるのと消毒液じゃ痛さが違うもん! 消毒液はなんかこう、バチっとしたというかビリっとしたというか……とにかく違うの!」
雪穂「はぁ」
穂乃果「うぅ、口の中切れてたから夜ご飯も食べづらかったし……やっぱり強い子とヤった後は大変だよ……」
雪穂「……お姉ちゃんをここまでボロボロにするってことは、かなり強かったんだねその人?」
穂乃果「そうだね、久々にあんなに強い相手と喧嘩したかなぁ」
雪穂「やっぱり音ノ木坂のレベルは高そうだね……その人だって実際はお姉ちゃんの一つ下な訳だし」
雪穂「……ま、それでもちゃんと勝つのはさすがお姉ちゃんだね」
穂乃果「売られた喧嘩には絶対に勝ちたいからね!」グッ
雪穂「それで本当に勝てるのが羨ましいよ……」
穂乃果「えへへ」
雪穂「……」
雪穂「えい」チョンッ
穂乃果「ったぁっ!?」
雪穂「あはは、さっきからお姉ちゃん大袈裟すぎだよ」
穂乃果「も~、怪我人で遊ばないのっ」
雪穂「ごめんごめん、お姉ちゃんの反応が良かったから……つい、ね?」
穂乃果「……もぅ、昔は穂乃果が怪我して帰ってきたら心配してくれてたのに」
穂乃果「 『お姉ちゃんどうしたのその怪我っ!?』って玄関に救急箱持って駆け寄ってきてくれてたっけなぁ~」
雪穂「ちょっ、いつの話してんのさっ!」
穂乃果「あの頃の雪穂は素直で可愛かったなぁ」
雪穂「もー、お姉ちゃんっ!」
穂乃果「えへへ、照れ屋な雪穂も可愛いよ」ニコッ
雪穂「ぐっ……も、もうっ!」チョンチョンッ
穂乃果「あぃたぁっ!?」
雪穂「っていうかお姉ちゃん! トップ興味ないとか言って結局学年ナンバーワン獲ってるじゃん!」
穂乃果「あはは、そうだね……別にトップを取るつもりはないんだけど、ね」ポリポリ
穂乃果「だって」
雪穂「売られた喧嘩を買ってたら勝手にそうなっちゃうんだもん、でしょ?」
穂乃果「おぉ、よくわかったね! さすが雪穂!」
雪穂「昔から散々同じ台詞聞いてるからね……さすがにもう覚えたよ」
穂乃果「えっ、そんなに?」
雪穂「そんなに、だよ」
雪穂「それに、海未ちゃんとことりちゃんもお姉ちゃんと同じこと言ってたし」
穂乃果「……そうだねぇ、あの二人も自分から喧嘩を売るタイプじゃなかったからなぁ」
穂乃果「それに、派閥とかに入るようなタイプでもなかったし!」
雪穂「どういうこと?」
穂乃果「あっ、えっとね、さっき海未ちゃんに言われたんだけど……」
雪穂「……へぇ、海未ちゃんが音ノ木坂の最大派閥にいるんだ」
穂乃果「そうなんだよ、何があったのかはまだ聞けてないんだけどさ……」
雪穂「アヤセ……ね」
穂乃果「?」
雪穂「あ、ううん、続けて」
穂乃果「そう? あ、それでね、なんで海未ちゃんがそういうのに入ってるんだろうなって気になっちゃってさ」
雪穂「……その派閥の人と仲が良かったとか?」
穂乃果「う~ん、仲が良い子に呼ばれて喧嘩の助っ人に行くことはあると思うけど、そのグループ自体に所属する海未ちゃんは想像できないなぁ」
雪穂「確かに……あ、じゃあその派閥の人との勝負に敗北して傘下につくことになったとか」
穂乃果「それこそないよ! 海未ちゃんはすっごく強いんだから!」
雪穂「まぁ、それは私も知ってるけど……でも、音ノ木坂ならあり得ない話じゃないと思うよ」
穂乃果「そうかなぁ、でもあの海未ちゃんがなぁ……」
雪穂「……お姉ちゃんは、海未ちゃんとヤったことあるんだっけ?」
穂乃果「え?」
雪穂「どうなの?」
穂乃果「……そうだね、海未ちゃんとは口喧嘩はよくしてたけど……殴り合いの喧嘩をヤったことはないかな」
穂乃果「……でも」
雪穂「?」
穂乃果「海未ちゃんとはずっと肩を並べて一緒に喧嘩してたし、お互いに助け合ってきた仲だから……やっぱり海未ちゃんが負けるところなんて穂乃果には想像できないよ」
雪穂「そっか……あ、じゃあさ」
雪穂「お姉ちゃんと海未ちゃんが本気で勝負したらさ、どっちが勝つのかな?」
穂乃果「……穂乃果と、海未ちゃんが?」
雪穂「あっ、ごめんね、変なこと言っちゃった」
穂乃果「ううん、大丈夫だよ!」
雪穂「ま、お姉ちゃんと海未ちゃんが本気で喧嘩なんてするわけないもんね」
穂乃果「……そうだね」
雪穂「あはは……」
穂乃果「……」
穂乃果「けど」
雪穂「?」
穂乃果「もし、本気で穂乃果達がヤり合ったら」
穂乃果「きっと、お互いタダじゃ済まないと思うよ」
雪穂「……っ」ゴクリ
穂乃果「まっ、そんなことはないと思うけどね!」
雪穂「だ、だよね」
穂乃果「それに、穂乃果と海未ちゃんが喧嘩したとしてもさ」
穂乃果「きっと、ことりちゃんが止めてくれるよ」ニコッ
雪穂「ふふっ、そうだね」
穂乃果「あー、なんだか二人に会いたくなってきちゃった!」
雪穂「もう、同じ学校なんだから明日会いに行けばいいじゃん」
穂乃果「なるほど! よーし、明日は海未ちゃんとことりちゃんに会いにいくぞー!」
雪穂「あはは、また張り切って行って、喧嘩に巻き込まれでもして怪我しないでよ?」
穂乃果「もう、それくらいわかってるよっ」
雪穂「どうだかねぇ」チョンッ
穂乃果「ぃたぁっ!?」
<翌日、朝、音ノ木坂学院高校>
「おい、お前聞いたかよ?」
「は? 何をだよ」
「今の話題っつったらアレしかねーだろ」
「西木野と転校生のタイマンだよ!」
「ああ、まあどうせ西木野が勝ったんだろ?」
「転校生も中々強いみたいだけどねー」
「あ、賭けの話忘れんなよ?」
「転校生に賭けたヤツらはおごれよなー」
「ふっふっふっ……」
「あ? 何笑ってんだお前」
「どうやらまだ聞いてないみたいだな……」
「昨日のタイマン、勝ったのは転校生の方なんだよ」
「……は?」
「つーわけで今日の昼飯おごるのはお前らだよバーカ」
「何にしてもらおっかなー?」
「お、おいおいちょっと待てどういうことだ!?」
「転校生が西木野に勝った、って……マジかよ!!」
「アイツやるじゃねーか!」
<凛・花陽のクラス、教室内>
「聞いたか! 西木野が転校生に負けたってよ!」
「聞いた聞いた!」
「こいつぁ本当にとんでもねーヤツが現れたな!」
ザワザワザワザワ
凛「いやー、どこも穂乃果ちゃんの話で持ちきりだね、かよちん!」
花陽「皆、西木野さんが勝つだろうって予想してたからね」
凛「やっぱり穂乃果ちゃんはスゴいにゃ!」
花陽「うん!」
キーンコーンカーンコーン
凛「あっ、もうホームルームの時間だ」
花陽「穂乃果ちゃんにはまたあとで会いに行こっか」
凛「うん!」
<同じ頃、高坂家、穂乃果の部屋>
穂乃果「……すー……すー」
穂乃果「……すー…………」
穂乃果「ん……」ゴロン
穂乃果「……」
穂乃果「……ん?」パチッ
穂乃果「……」ゴロン
穂乃果「……めざまし」ガシッ
穂乃果(今何時……?)
穂乃果「ん……ふぁ~ぁ…………ん~」ジー
穂乃果(……はちじ、よんじゅっぷん……?)
穂乃果「……」ゴロン
穂乃果「……」
穂乃果「遅刻だーーーー!!!!」ガバッッッ
<しばらくして、通学路>
穂乃果(お母さんに聞いたら、「雪穂が『お姉ちゃん傷だらけの状態だし、気持ち良さそうに寝てるから今日は起こさなくてもいいんじゃない?』って言ってたから無理に起こさなかったの」って言われたけど……)
穂乃果「その気持ちは嬉しいけど、留年回避したい穂乃果にはありがたくない気づかいだよー!!」タッタッタッ
穂乃果(せめて近道して少しでも早く学校に着かないとだね!)
穂乃果「だからここで裏路地突入!」ダッ
シーン……
穂乃果「あれ? 今日は誰もいないのかな?」
穂乃果(前に通ったときは、ここでたむろってる人達と喧嘩になっちゃってちょっと大変だったんだけど……)
穂乃果「まぁいいや、今日はツイてるね!」タッタッタッ
「……う、ぐ」ガサッ
「まさか全員ゴミ袋の山に向けてぶっ飛ばされるとは……」ゴソッ
「あ……が……」ピクピク
「なん、だったんだあのチビ……」ガクガク
「油断、した……ぜ…… 」ガクッ
ガサガサ
穂乃果(よーし、裏路地は無事に抜けたし、後はここの林を突っ切って)
穂乃果(最後にここから飛び降りれば……)
穂乃果「思ったより早く着く……ねっ!」ダンッ
「……」スタスタ
穂乃果(って……着地点に人が!?)
穂乃果「どっ、どいてどいてー!!」
「!?」バッ
穂乃果「ぁいてっ!」ドテッ
「……ふぅ」
穂乃果(うぅ、着地失敗しちゃった……)
穂乃果「……って、それよりも!」バッ
「っ」バッ
穂乃果「いきなり飛び出してすみませんでしたー!」ガバッ
「……は?」
穂乃果「私、今日寝坊してっ、だから急いで学校行かなきゃって慌てて、近道しててっ」
「……」
穂乃果「あっ、今飛び出してきたところが近道に使える場所なんだよ!」
「……あっそ」
穂乃果「……じゃなくて! だから、着地点も見ずに飛び出しちゃったりして……ごめんなさい!」
穂乃果「あの、怪我とかしませんでしたか……?」チラ
「……別に、避けたから平気よ」
穂乃果「えっ……わっ、ホントだ! よくあの一瞬で……凄い!」
「……」
穂乃果「あっ、でも避けたからいいってわけじゃないもんね……ごめんなさい!」
「……だから謝んなくていいわよ」
「とうとう空から奇襲しに来るヤツが現れたのかと思ったわ」ボソッ
穂乃果「え?」
「なんでもないわよ」
「じゃ、私行くから」クルッ
穂乃果「あ、はい」
「……」スタスタ
穂乃果「……あれ?」
「……」スタスタ
穂乃果(あの後ろ姿……どこかで見たような……?)
穂乃果「……」
穂乃果「あーっ!!」ビシッ
「っ!?」
穂乃果「思い出したよっ!」タッタッタッ
「……はぁ」クルッ
穂乃果「一週間ぶりだねっ、にこちゃん!」
にこ「ったく、朝からうるさいヤツね……」
穂乃果「えへへ、また会えて嬉しいよ!」
にこ「……私のこと、覚えてたのね」
穂乃果「もちろん覚えてるよっ! さっきは慌ててたから気づかなかったけどさっ」
穂乃果「ていうかにこちゃんこそ私のこと覚えてくれてたの?」
にこ「……アンタみたいはヤツは珍しいからね、嫌でも覚えるわよ」
穂乃果「? それってどういう意味?」
にこ「……別に」
穂乃果「えぇ~、気になるよ~」
にこ「……」
にこ「ていうかアンタ、急いでたんじゃないの?」
穂乃果「え?」
にこ「……学校、遅刻なんでしょ」
穂乃果「あっ」
にこ「私なんかに構ってないでさっさと行った方がいいんじゃないの?」
穂乃果「う~ん……」
にこ「? 何悩んでるのよ」
穂乃果「よしっ……決めたっ!」
穂乃果「今日は途中までにこちゃんと一緒に登校するよ!」
にこ「……は?」
穂乃果「だってにこちゃんと会える機会って中々なさそうだし!」
にこ「……」
穂乃果「あと今から頑張って走っても中途半端になるかなぁ、って」
穂乃果「だから今はにこちゃんと一緒にいるのを優先するよ!」
にこ「……あっそ」
穂乃果「じゃあ行こっか!」
穂乃果「あっ、そうだ、にこちゃんはこれからどこに行くの?」
にこ「……」
にこ「とりあえず、アンタの学校に向かいましょ」
<同じ頃、通学路>
真姫「……」スタスタ
「よー、西木野ォ!」
真姫「……」スタスタ
「聞いたぜ! お前、昨日のタイマンで転校生に負けちまったんだってなぁ!」
「傷だらけのそのお顔は転校生ちゃんにタコ殴りにでもされちゃったのかなぁ?」
真姫「……」スタスタ
「……おい、シカトこいてんじゃねーぞ!」
「こっち向けやオラァ!」ブンッ
パシッ
「!?」
「なっ」
真姫「……うるさいわよ」
ドガッバギッズドッ
「あ……が……」ピクピク
「ぐ……お……」ピクピク
「う……げ……」ピクピク
真姫「……」
真姫「……」クルッ
「ちょい待ち、そこのお嬢さん」
真姫「……」スタスタ
「あ、ちょっ、無視せんといてや!」
真姫「……!」ピタッ
「まったく……人から声かけられたらとりあえず立ち止まるくらいしてもええやん……」
真姫(この関西弁らしき口調は……)
真姫「まさか……」クルッ
希「おはよーさん、昨日は随分ええ喧嘩ヤれたみたいやんな? 西木野真姫ちゃん?」ニコッ
真姫「東條……希っ……!!」
真姫「……昨日のタイマン、アナタも見てたのね」
希「いやぁ、ウチが着いたときにはもう終わってたかなぁ?」
希「ウチが見たのは、なんやようわからん二人とヤり合ってるのやったね」
真姫「……なるほどね」
真姫「昨日、星空凛をあそこまで連れて来たのは……アナタね」
希「おっ? なんでわかったん?」
真姫「……」ジッ
希「? どこ見てるん?」
真姫「……別に、関西弁っぽいしゃべり方をする人間が他に思い浮かばなかっただけよ」
希「あ、もしかして凛ちゃんがウチのこと話したんかな?」
真姫(もう一つの特徴は……別に言わなくていいわね)
希「それにしても、こうして話すんは久々やんね?」
真姫「……一体、何しに来たのよ」
希「やだなぁ、そんな怖い顔せんでもええやん……ちょいとお話しに来ただけやのに」
真姫「……知らないようなら言っておいてあげるけど、私にとってはアナタもターゲットの一人なのよ」
希「あれ、そういやそうやったっけ?」
真姫「……そうよ」
希「そっかぁ、まあそう思ってくれるのは別に構わんけど」
希「今のその状態で、ウチとヤれるつもりなん?」
真姫「……」
真姫「どんなときでも、私は逃げるつもりはないわ」
希「……ふぅん」
希「面白いやん」ニィッ
希「……」スッ
真姫「……っ」バッ
希「なんて、今ヤるわけないやん!」
真姫「……は?」
希「だって真姫ちゃんボロボロやし! そないな状態の子とヤっても楽しめないやん!」
真姫「……」
希「ヤるなら、今度また元気なときに……真姫ちゃんが全力を出せるときに、な?」ニコッ
真姫「……そのときは全力で叩き潰すわよ」
希「おー、楽しみに待っとるでー」ニコニコ
真姫「……」
希「あっ、アカン忘れとった、こういう話をしに来たわけやないんよ」
希「なぁ、真姫ちゃん」
希「ウチも昨日の……高坂穂乃果ちゃんとのタイマンの結果は聞いたよ」
希「二人とも真正面からガチンコ勝負して、お互い全力をぶつけた結果やったって」
真姫「……ええ」
希「全力をぶつけられる相手、見つけられたんやろ」
真姫「……」
希「今はどうなんよ」
希「それでも、にこっちの為に……またエリちに挑戦するつもりなん?」
真姫「当然よ、絢瀬絵里は必ず倒す」
真姫「それに、それはもうにこちゃんの為だけじゃない」
希「……そっか」
真姫「というか」
真姫「にこちゃんを裏切った側の人間の癖に、気安くにこちゃんの名前を出すんじゃないわよ」
希「……」
真姫「……それじゃ」スタスタ
希「……なぁ、真姫ちゃん、あと一個だけ話があるんや」
真姫「……何よ」ピタッ
希「この先、音ノ木坂の校門前に、昨日のタイマンの結果を聞いた連中が真姫ちゃんを潰そうと待ち構えてるんよ」
真姫「……へぇ」
希「結構な人数おるし、手伝ったろか?」
真姫「必要ないわ」
希「そう言うと思ってたわ」
真姫「その程度、私一人で蹴散らすわ」
希「……ほぉ」
希「なら、サクッとヤってきや」
真姫「言われなくとも」
<同じ頃、穂乃果・にこの通学路>
穂乃果「いやぁ、まさかこんな早くまたにこちゃんと会えるとは思わなかったよ~」
にこ「……そうね」
穂乃果「あ、そうだ! この前にこちゃんがいつの間にかいなくなっちゃったときにね、にこちゃんと入れ替わるようにして、同じ場所にねこちゃんがいたんだよ!」
穂乃果「だから私、一瞬にこちゃんがねこちゃんになっちゃったのかと思って驚いちゃってさ~」
にこ「……あるわけないでしょ、そんなこと」
穂乃果「あはは、だよねぇ」
にこ「……」
穂乃果「? どうしたの?」
にこ「……アンタさ」
にこ「やけに傷だらけだけど、何かあったの?」
穂乃果「えっ?」
にこ「一週間前は頭に包帯巻いてたけど、今日は湿布やら絆創膏やらで顔中覆われてるじゃない」
穂乃果「あー……」ポリポリ
にこ「……虐められでもしてんの?」
穂乃果「まさかっ、それは違うよ!」
にこ「……そう」
穂乃果「……喧嘩、したんだよ」
にこ「……」ピタッ
穂乃果「?」
にこ「……アンタみたいな能天気そうなヤツでも、喧嘩はするのね」
穂乃果「ちょっ、ノーテンキってなにさ! 穂乃果、勉強はできないけど頭カラッポじゃないよー!」
にこ「はいはい」
穂乃果「も~、じゃあにこちゃんは勉強できるのっ?」
にこ「……」
穂乃果「できるの?」ジー
にこ「ノーコメントよ」
穂乃果「あっ、それずるい!」
にこ「……で、相手にボコボコにされてそのツラ構えになったってことね」
穂乃果「うー……それは否定できないかなぁ」
にこ「……喧嘩の理由は?」
穂乃果「相手に売られたからだね」
にこ「なんで売られたのよ」
穂乃果「うーん……私が目立ってたから、かな……?」
にこ「……ああ、アンタ転校生って言ってたものね」
穂乃果「それだけが原因じゃないけど、まあそんなとこかなぁ」
にこ「……ていうかアンタ、よくそんなさらっと話せるわね」
穂乃果「え?」
にこ「普通のヤツだったら、そんなボコボコにされたことについての話はしないんじゃないかしら」
穂乃果「まぁ、喧嘩で怪我するのは慣れてるからね」
にこ「……そ」
穂乃果「いやぁ、昨日の喧嘩は大変だったんだよ! 相手がスゴく強い子でさー」
にこ「昨日?」
穂乃果「うん、久々に正々堂々一対一の勝負だったよ~」
にこ「……まるで普段はそうじゃないみたいな言い方ね」
穂乃果「え? あ、うん、いつもは一人で何人かを相手にすることが多いからね」
にこ「……そう」
穂乃果「いやぁ、一年生であんなに強い子がいるなんて驚きだよホントに!」
にこ「……アンタも一年生でしょ?」
穂乃果「……あっ、うん! そうだよ! いやぁ~、同い年であんなに強い子がいるなんて驚いたよ、あはは~」
にこ「……」
穂乃果「あはは……」
穂乃果(……危ない危ない、うっかりボロが出るところだったよ……!)
にこ「……なんか、アンタ変なヤツね」
穂乃果「えっ」
にこ「ボコボコにされてる割りにへらへらしてるし、まるで落ち込んじゃいないし」
穂乃果「へっ、へらへらはしてないよ!」
にこ「……変にプライドとか持ってないタイプ? だとしたら、音ノ木坂じゃ結構珍しい類の人間ね」
穂乃果「プライド? んー、確かにそういうのは気にしたことないかも……」
にこ「……ま、喧嘩に負けたのにそんな風に明るくしていられるのもある意味才能ね」
穂乃果「えっ、穂乃果才能あるの!? ……って、あれ?」
にこ「……何よ?」
穂乃果「私、負けてないよ?」
にこ「……は?」
にこ「だってアンタ、ボコボコにされたのは否定しないって……」
穂乃果「んー、確かに昨日の喧嘩はスゴく強い子が相手でボコボコにされたーって話はしたけど」
穂乃果「負けたなんて、一言も言ってないよ?」
にこ「……!」
にこ「……そう」
穂乃果「?」
にこ「やっぱり、アンタも音ノ木坂の人間ね」ボソッ
穂乃果「え?」
にこ「なんでもないわよ……それより」
穂乃果「?」
にこ「学校、もう着くわよ」
穂乃果「あっ、ホントだ!」
穂乃果「……ん?」
ザワザワザワザワ
穂乃果(校門前に、やけに人が集まってる?)
にこ「……喧嘩、ね」
穂乃果「えっ、あっホントだ!」
穂乃果「どんな人がヤってるんだろ……」ジー
にこ「……あれは」
真姫「はぁっ……はぁっ……」
穂乃果「西木野、さん?」
にこ「……」
「おらぁっ!」ブンッ
真姫「ふっ!」サッ
バキィッ
「ぐっ!」グラッ
真姫「まだよ」ガシッ
「……ぇ?」
ズドンッ
「ぉっ!?」
ズドンッ
「ごっ」
ズドンッ
「ぎっ」
ズドンッ
「あ、が……」
真姫「……」パッ
ガンッッッ
「げぶぅっ!!」ズザァァァ
「ひぃっ!」サッ
「こ、こいつ、ゲロまみれになって気絶してやがる……」
「そりゃあんな連続で腹にパンチされたらな……」
「や、やっぱ西木野のヤツ容赦ないわね……」ゴクッ
真姫「……はぁっ……はぁっ」
真姫(……思ったより、昨日のダメージが残ってるわね)
真姫(結構キツい、かも……)
穂乃果「やっぱり西木野さんだ! なんであそこであんな人数と喧嘩してるの!?」
にこ「……あの子、アンタの知り合いなの?」
穂乃果「うん! だって昨日喧嘩した相手だもん!」
にこ「……は?」
穂乃果(西木野さん、昨日の喧嘩で今はボロボロなはずなのに……)
穂乃果「ちょっとこのままじゃマズイかも……」
にこ「ねぇ、それってアンタがあの子に……」
穂乃果「ごめんね、にこちゃん! 私ちょっと行ってくる!」ダッ
にこ「えっ……ちょっ、待ちなさいよ!」
穂乃果「また今度話そうねー!」タッタッタッ
にこ「あー……っ、もう……」
にこ「……」
にこ「まさか、あの能天気そうなヤツが……」
にこ「……アイツが、あの子に勝った相手だっての……?」
真姫「はぁ……はぁ……」
「西木野ォ、やっぱお前バケモンだわ」
「その状態でもそんなにヤれるなんてな」
「だけどさぁ、昨日転校生に負けちゃってんだろ?」
「そんな状態でこの人数相手にすんのはキツいんじゃないの?」
真姫「……はぁ……はぁ」
「休ませねぇぞ!」ダッ
「行くぞコラ!」ダッ
真姫「……」スッ
「おらっ」ブンッ
真姫「っ 」サッ
「避けんじゃねぇっ!」シュッ
真姫「くっ」パシンッ
「隙ありィ!」グワッ
ドゴッ
真姫「がっ!?」
「喰らえっ!」
バキッ
真姫「ぐっ!」グラッ
「そのままブッ倒れろや!」グォッ
パシッ!
真姫「……」グググ
「なっ!?」グググ
真姫(確かにキツい、けど)
「こ、この」グググ
真姫(こんな、この程度のヤツらなんかに)
真姫「……負けてらんないのよっ!!」グォッ
バギィッッ!!
「ぶべらっ!?」グルンッ
ドサッッ
「なっ!?」
「コイツっ……!」
真姫「はぁっ……はぁっ……!」
「クソっ、全員で一気に行くぞ!」
「うぉぉぉっ!!」
真姫「かかって、来なさいよ……」
真姫「……私はっ」
真姫「一人でだって、生き残るんだからっ!!」
「に、西木野もこっち向かってきたぞ!」
「構うなっ、このまま突撃だ!」
「全員で囲んでやれ!」
「袋叩きにしてやるっ!」
ウォォォォォォ
ダンッ!!
穂乃果「とりゃぁぁっ!!」バッ
ガンッッッ!!
「ぐぶっ!?」
「なっ」
「はっ?」
「えっ!?」
真姫「……っ!?」
穂乃果「……っと!」スタッ
「なっ、あ……」
「おっ、お前は」
「てっ」
「転校生ェッッ!?」
真姫「アナタっ、なんで……っ」
穂乃果「ごめんね! この喧嘩、ちょっと割り込ませてもらうよ!」
「な、なんで転校生がここに……」
「ていうかアイツ今どっから飛んで来たんだ?」
「バカ、人間は飛べないわよ」
「お前こそバカだよ、跳んで来たの聞き間違いでしょ」
「んだとっ!?」
穂乃果「ふぅ……西木野さん、大丈夫?」
真姫「……何しに、来たのよ」
穂乃果「何しに、って……う~ん……乱入しに、かな」
真姫「乱入……?」
穂乃果「うん!」
真姫「……ふざけてるの?」
穂乃果「ふざけてないよっ!」
真姫「……何でもいいけど」
真姫「これは私の喧嘩だから、余計な手出しは無用よ」ザッ
穂乃果「待って!」ザッ
真姫「……何よ」
穂乃果「私も一緒に戦うよ!」
真姫「はっ……?」
真姫「今、手出しは無用って言ったの、聞いてなかったの?」
穂乃果「聞いてたよ! けど、このままじゃさすがにキツいよね?」
真姫「……大丈夫よ、別に一人で」クルッ
穂乃果「えいっ」バシッ
真姫「っいた!?」
真姫「……ちょっと、いきなり何すんのよ!?」ガシッ
穂乃果「わっ、いっいきなり叩いたのはごめん!」
穂乃果「……けど」
穂乃果「昨日の西木野さんなら、あれくらい簡単に防げたよね?」
真姫「……は?」
穂乃果「だって、明らかに昨日私とヤったときとは動きのキレが違うもん」
真姫「それは……」
穂乃果「昨日のダメージが残ってるんだよね?」
真姫「……」
穂乃果「それくらいわかるよ、だって、私もまだ痛いとこいっぱいあるもん」
真姫「……だから何だって言うのよ」
真姫「別に、怪我してるときに喧嘩して来なかったわけじゃないし、これくらい」
穂乃果「えいっ」ゴンッ
真姫「っで!?」
穂乃果「ほら、また隙だらけだよ?」
真姫「……っ、このっ!」
穂乃果「それにっ」ビッ
真姫「っ?」ピタッ
穂乃果「昨日全力で殴り合って実力を認めた相手が……自分と殴り合った怪我が原因で、翌日違う誰かにヤられるなんて……穂乃果、そんなのイヤだもんっ!」
真姫「なっ」
穂乃果「だから西木野さんが嫌だって言っても勝手に割り込むよ!」
真姫「……」
真姫「はぁ……呆れた、アナタ結局自分の都合で人の喧嘩に割り込んでるってことね」
穂乃果「はっ、言われてみれば確かにそうかも……?」
真姫「……はぁ」
真姫(……まぁ、それでも、中途半端に私の為とか言われるよりは、マシかもね)
真姫「……勝手にしなさいよ」クルッ
穂乃果「! うん、勝手にやるよ!」
真姫「私の足、引っ張んないでよね」ザッ
穂乃果「もちろん」ザッ
真姫「……それじゃ」スッ
穂乃果「今度はこっちから突撃と行こっか!」グッ
<少しして、凛・花陽のクラス、教室内>
ガララ
「おい、お前ら!」
「あ、なんだよ?」
「いきなりうるせーな」
「校門前来てみろよ! おもしろいモンが見られるぜ!」
「おもしろいモン?」
「ああ、西木野と転校生がタッグ組んで喧嘩してるんだよ!」
「は? どういうこと?」
「その二人って、昨日タイマンしてたよな……?」
「タッグ組んでるって、なんで?」
「とにかく行ってみようよ!」ガタッ
「ああ、そうだな」ガタッ
「よっしゃ、喧嘩だー!」ガタッ
ドドドドド……
凛「かよちん、今の聞いた?」
花陽「うんっ、穂乃果ちゃんと西木野さんが……って」
凛「凛たちも行こう!」ガタッ
花陽「そうだねっ!」ガタッ
タッタッタッ……
先生「……」ポツーン
先生「……あはは、一応授業中なんだけどな~」
先生「……はぁ」
投下終わりです
書き貯めが出来次第また投下します
青峰と黄瀬と紫原君と明石とDQN緑間ツイカナ
黒子「奇跡の世代111:11」
黒彼女「青峰君黄瀬君緑間君後で明石課金工場で話し合いが」
紫原「ほっ僕は無関係だよね決勝戦棒立ちしてただけだもん」
明石「結婚指輪( ゚д゚)クレ京様」
京太郎「此の指輪は鳳翔様や空母に渡すんだ」
大淀「成績表示リセットアイテム大淀様追加任務追加今では何と翔鶴姉が入手」
久々に投下始めます
<校門付近>
ザワザワザワザワ
凛「野次馬だらけだね」
花陽「この先に穂乃果ちゃんと西木野さんがいるんだよね……?」
「ウォォォ!!」
「やっちまえっ!!」
「転校生ぇっ!!」
「西木野ォッ!!」
花陽「ひっ」ビクッ
花陽「も、もしかして二人ともリンチされてるんじゃ……!」
凛「とにかく行ってみよう!」ダッ
「おおおお!!」
「とんでもないわね……」
「あんなん喰らったら立ち上がれないわ」
凛「どいてどいてー」グイグイ
「あ? なんだ?」
「押すなコラ!」
花陽「すみません通りますすみません……」グイグイ
「いって!」
「誰だ今ぶつかってきたヤツ!」
凛「っ、と……ふぅ、ここが最前線かにゃ?」
花陽「はぁぁ……やっと抜けられたね」
花陽「二人は……?」
穂乃果「おりゃぁぁっ!!」
花陽「あっ……!」
バキィッッ
「ふごっ!」グルンッ
ドサッ
穂乃果「よぉし、次ぃっ!」
「隙ありっ!」ブンッ
穂乃果「!」クルッ
真姫「ふっ!」シュッ
ドガッッ
「あぎゃっ」ズザァァ
穂乃果「西木野さん!」
真姫「全く……好き勝手に暴れるのはいいけど、隙を見せるんじゃないわ」
穂乃果「……!」グイッ
真姫「よっ?」グラッ
ブォンッ!
「ちっ、外したかっ!」
真姫「なっ」
穂乃果「よいしょー!」グオッ
ガンッッ
「ぶっ!?」ズザァァ
穂乃果「ふふっ、西木野さんも隙だらけだったよ?」
真姫「……これでおあいこよ」
「何くっちゃべってんだ!」ダッ
「楽しくお喋りする時間じゃねーぞコラ!」ダッ
穂乃果「ほっ」パシッ
真姫「ふん」パシッ
「あっ」
「なっ」
穂乃果「えいっ!」
真姫「ふっ!」
ドゴッバキッ
「ぎゃっ」ズザァァ
「ぐふっ」ズザァァ
花陽「わぁ……本当に二人で戦ってるんだ……!」
「そのまま行け! 西木野っ!」
「転校生っ、後ろ後ろ!」
「おぉー、すげえなアイツら」
「二人とも気合い見せろー!」
凛「野次馬達も、ただヤジ飛ばしてるだけじゃないみたいだね」
花陽「穂乃果ちゃん達を応援する声も聞こえるね!」
凛「……」
「怪我してんのに凄いね~、あの二人」
「さすが一年のツートップね」
凛「……!」
「え? 一年のツートップって言ったら西木野と星空じゃないの?」
「何言ってんの、昨日のタイマンで転校生が西木野に勝ったんだから、今のツートップは転校生と西木野でしょ」
凛「……」
「確かに……言われてみればそうかも」
「それに、以前のタイマンで星空は西木野に負けてるんだから、今の星空はナンバースリーよ」
凛「……!!」
「順位が繰り下がっちゃったわけか~」
「まあ強さランキングなんてそういうものだし、仕方ないわね」
「今の一年生は上から、転校生、西木野、星空の順なわけだ!」
「そういうこと」
「こりゃひょっとして一年最強コンビの誕生かな?」
凛「……」
凛「かよちん」
花陽「凛ちゃん?」
凛「……ちょっと凛も行ってくる!」ダッ
花曜「えっ、あっ……凛ちゃん!」
「……あれ、でも西木野とヤったときの星空って怪我してたんじゃなかったっけ?」
「……そうなのよね……だから、あの二人に関しては本当はどっちの方が強いのかはわからないわ」
「そっかぁ……お互いが全力のときにヤり合ったらどっちが勝つんだろ?」
「さぁね」
凛「穂乃果ちゃーん!」ダダダダダ
穂乃果「! 凛ちゃん!?」
真姫「あの子……」
「なにボーッとしてんだ!」グオッ
穂乃果・真姫「!」
凛「とうっ!」ダンッ
ドガッッッ
「ぐぇぇっ!?」ズザァァ
凛「ふぅ」スタッ
「おぉ!?」
「なんだなんだ? 乱入者か?」
「あれは……星空じゃん!」
「なんでアイツまで!?」
花陽「り、凛ちゃんまで……」
凛「西木野!」
真姫「なによ、アナタも人の喧嘩に割り込むつもりじゃ」
凛「穂乃果ちゃんと一緒に一年ツートップの座に立つのは、西木野じゃなくて凛だよ!」ビシッ
真姫「ないわよね……って、は?」
穂乃果「凛ちゃん……?」
凛「昨日も言ったけど、凛はナンバースリーに降りる気はないからね!」
真姫「……なんでいきなりその話が出てくるのよ」
凛「ここで大勢の野次馬に穂乃果ちゃんとの活躍を見せつけて、一年ツートップの印象を付けようったってそーはいかないにゃ!」
真姫「あのねぇ、私はそんな理由で喧嘩してるんじゃ……」
凛「とにかく! 凛もこの喧嘩参加するよ!」
穂乃果「おお! 凛ちゃんも加わってくれるなら心強いよ!」
真姫「ちょっと、何勝手に……」
凛「それじゃいっくにゃー!」ダッ
穂乃果「おおー!」ダッ
真姫「……」
「くたばれ西木ボォ!?」グシャッッ
真姫「……」スッ
「あ、が……」グラッ
真姫「……」ガシッ
「ぁ……?」
バギィィッッ!!
「ごばァ!?」グルンッ
ドサッッ
真姫「……どいつもコイツも好き勝手してくれちゃって」
真姫「もーっ、頭来たわ!! 全員かかって来なさいよ!!」ダッ
ザワザワザワザワ
「お、おいおい……」
「星空まで加わるってこれ……」
「まさかっ、一年トップスリーが手を組んだってのか!?」
ザワザワザワザワ
穂乃果「とりゃぁっ!」
ドガッッ
「ぐはっ!?」
凛「えいっ!」
バキィッッ
「ごぼっ!?」
真姫「ふんっ!」
ドゴォッッ
「おごっ!?」
ザワザワザワザワ
「あ、あの三人が手を組むって……」
「それもう一年の中じゃ敵ナシなんじゃないの……?」
「こ、コイツぁやべぇな!」
ザワザワザワザワ
真姫「はぁっ……はあっ……」
「な、なんだよ……なんでお前らが一緒に戦ってんだよ!」
「西木野はっ、転校生と敵対してたんじゃねーのかよ!?」
「それに星空も加わるとかっ、ホントにどうなってんのさ!?」
真姫「……」
真姫「私だって、そんなの知らないわよ」
真姫「向こうが勝手に乱入してきてるんだから」
真姫「恨むなら、こんなタイミングで私に喧嘩を売った自分達を恨むことね」
「く、くそっ!」ダッ
「もうヤケクソだ!」ダッ
「あああああ!!」ダッ
真姫「それに、乱入者がいようがいまいが」
真姫「私に喧嘩売ったヤツは、全員ぶっ飛ばす」
真姫「ただ、それだけよ」
穂乃果「そうだね」ザッ
凛「全員ぶっ飛ばすのには同意するにゃ」ザッ
真姫「……行くわよ」ザッ
ドガッッッバギィィィドゴォォッ!!
「ぎゃっ!?」グルンッ
「がっ!?」グルンッ
「ぐふっ!?」グルンッ
ドサッッッ
真姫「……ふぅ」
「おっ……」
「おおおおおお!!」
「すげえっ、アイツら本当に全員ぶっ飛ばしやがった!!」
ザワザワザワザワ
花陽「す、凄い……三人とも、本当に……」
花陽「……」
ザワザワザワザワ
真姫(思ったより、キツかったわ、ね……)
真姫「……っ」フラッ
穂乃果「っと!」ガシッ
真姫「!」
穂乃果「大丈夫?」
真姫「……これくらい、余裕よ」
凛「……ふーん? 凛には全然余裕そうには見えないけど」
真姫「……あ?」
凛「何?」
真姫「……アナタこそ、昨日の怪我で余裕なさそうに見えるけど」
凛「は?」
真姫「何よ」
凛・真姫「……」
穂乃果(な、なんでこの二人は毎回こんなに喧嘩腰なの!?)
穂乃果「もうっ二人ともっ、そういうこと言わないのっ! また花陽ちゃんに怒られちゃうよ?」
凛「……穂乃果ちゃんがそう言うなら」
真姫「……ふん」
穂乃果「ほ、ほら、ここは片付いたんだし、保健室でも行ってちょっと一休みしよ! ね?」
凛「そうだね、凛もちょっと休みたいにゃ」
真姫「……」
穂乃果「よーし、じゃあ保健室へレッツゴー!」
凛「……あ、かよちーん!」タッタッタッ
花陽「凛ちゃん!」
穂乃果「おっ、花陽ちゃんも見てたんだね!」ザッ
真姫「……」ザッ
花陽「穂乃果ちゃん、それに西木野さんも……」
穂乃果「花陽ちゃん、お願いなんだけど……また保健室で手当てしてもらってもいいかな?」
花陽「もちろん、大丈夫だよ!」
穂乃果「ありがとね!」
真姫「……私は、別に」
穂乃果「えいっ」バシッ
真姫「いたっ!?」
穂乃果「西木野さん、まーたやせ我慢してるでしょ」
真姫「……アナタに言われたくないわよっ」ドカッ
穂乃果「いっ!? け、蹴るのはさすがにひどいよ~」
真姫「ふん、さっきヤられた分も合わせて三発分のお返しよ」
穂乃果「……もー! とにかく保健室に行くよ! ほらっ」グイッ
真姫「あっ、ちょっと引っ張らないで!」
花陽「な、なんだか穂乃果ちゃんと西木野さん、いつの間にか仲良くなったみたいだね……?」
凛「……そうだね」
<しばらくして、保健室>
花陽「これでよしっ、と」
穂乃果「ありがとう花陽ちゃん!」
花陽「どういたしまして」ニコッ
真姫「……小泉さん」
花陽「は、はいっ」
真姫「……私も、感謝してるわ」
花陽「あっ……は、はい!」
凛「……」
真姫「それじゃ、私はここで寝るから」スッ
穂乃果「えっ、西木野さん、教室行かないの?」
真姫「ええ」ゴロン
花陽「あっ……えと、じゃあ私たちは行こっか?」
凛「うん」
穂乃果「……」
花陽「穂乃果ちゃん?」
穂乃果(マズイ……ベッドに寝転がる西木野さんを見てたら、穂乃果も眠くなってきちゃったよ……!)
穂乃果(うーん、でも授業に出る為に今日は急いで来たわけだし……)
穂乃果(あっ、でも今から出てももう……うーん……)
穂乃果(……今も体中痛いままだしなぁ)
穂乃果「……決めた」
花陽・凛「?」
穂乃果「私もここで寝る!」
花陽「えっ、穂乃果ちゃんも?」
穂乃果「うん、ちょっとお昼までね……ふわぁぁ……」
花陽「そっか、じゃあおやすみなさい」
花陽「またお昼に来るね?」
穂乃果「うんっ、おやすみ~」
花陽「行こっか、凛ちゃん」
凛「うん、穂乃果ちゃんまた後でねー」
穂乃果「またね~」
ガララ……バタン
穂乃果「……さて、と」
穂乃果「よいしょー!」ゴロン
穂乃果(はぁぁ、この時間に布団で寝るなんて、なんて贅沢……!)
穂乃果「はぁー……」
穂乃果「……」
真姫「……」
真姫「……」チラ
穂乃果「……すー……すー」
真姫(……寝付くの早すぎでしょ)
<さらにしばらくして、保健室>
穂乃果「……ん」パチッ
穂乃果「……ふぁああぁ……」
穂乃果「んーっ」ノビーッ
穂乃果「はあぁぁ……ふぅ~、いやぁよく寝たよく寝た!」
真姫「……すー」
穂乃果「あれ?」
真姫「すー……すー……」
穂乃果(……そっか、西木野さんもここで寝てたんだっけ)
真姫「ん……」ゴロン
穂乃果(……こうやって、寝てる姿だけ見たら普通の女の子なんだけどなぁ)
穂乃果「容赦ない喧嘩する子だとは思えないなぁ」ジー
真姫「……ん?」パチッ
穂乃果「あ、起きた」
真姫「!?」
ゴンッッ
穂乃果「ったぁ!?」
真姫「……な、なっ」
真姫「何してるのよアナタは!」
穂乃果「あたたた……もぅ、いきなり頭突きするなんて酷いよ~」
真姫「起きてすぐ目の前に人の顔があったら驚くでしょっ!」
穂乃果「だからって頭突きはさすがに……」
真姫「……ふん、殴るよりこっちの方が早いわよ」
穂乃果「えぇ……」
穂乃果(やっぱり、西木野さんは西木野さんだ……)
グゥ~
穂乃果「あっ」
真姫「……今の」
穂乃果「あはは……お腹空いちゃった」
真姫「まだお昼前だけどね」
穂乃果「んー、こういうときは早弁だ!」バッ
真姫「ちょっと、ベッドの上で食べる気?」
穂乃果「え、ダメかな?」
真姫「行儀が悪いわよ」
穂乃果「えー……あ、そうだ!」ポンッ
穂乃果「病気の人とか怪我した人ってベッドの上で食べたりするでしょ? 私達今怪我人だし……ほら、病院のベッドで食べるのと一緒だよ!」
真姫「何よその屁理屈は……」
穂乃果「よーし、それじゃいただきまーす!」
真姫「ちょ、ちょっと」
穂乃果「む?」モグモグ
真姫「……」
穂乃果「ん~、よく寝た後に食べるパンはおいしいね!」
真姫「……」
穂乃果「西木野さんは食べないの?」
真姫「私は別に……」
グゥ~
真姫「……」
穂乃果「食べないの?」ニヤニヤ
真姫「……っ、うるさい」ゴソゴソ
真姫「……」バッ
真姫「ふん……」ハムッ
穂乃果「あっ、トマトサンド! それ私も好きだよ~」
真姫「そう」モグモグ
穂乃果「……ふふっ」
真姫「何よ」モグモグ
穂乃果「いやぁ、結局西木野さんもベッドの上で食べてるなぁ、って」
真姫「……うるさい」モグモグ
花陽「失礼しまーす……」ガララ
凛「穂乃果ちゃーん、起きてるー?」
穂乃果「あ、二人ともおはよう!」
凛「おはよー! ……って、穂乃果ちゃんもうご飯食べてる!」
穂乃果「あはは、お腹空いちゃったからついね~」
凜「保健室のベッドで早弁なんて、穂乃果ちゃんもなかなかのワルだにゃ~」
穂乃果「いやぁそれほどでも~」
真姫「なんで照れてるのよ」
凛「凜もこのままここで食べちゃお! かよちんも、ほら!」
花陽「ほ、保健室で食べたりしても大丈夫なのかなぁ」
真姫「……」
真姫「……」スッ
穂乃果「あっ、西木野さん!」
真姫「……何よ」
穂乃果「西木野さんもこのまま一緒に食べようよ!」
凛・花陽「!」
真姫「……は?」
穂乃果「ほらほら、こっち座って」グイグイ
真姫「ちょ、ちょっと」
穂乃果「……だめ?」
真姫「っ……あ、アナタが良くても、他の二人はそうとは限らないでしょ」
真姫「だから」
花陽「わっ私も!」ガタッ
真姫「!」
花陽「私も、西木野さんと一緒に食べたいです!」
真姫「なっ」
真姫「で、でも」チラ
凛「……」
凛「まぁ、かよちんと穂乃果ちゃんがそう言うなら……別にいいけど」
真姫「!」
真姫「……わ、わかったわよ」
穂乃果「!」
真姫「一緒に食べればいいんでしょ、別にそれくらい……」
穂乃果「じゃあこっち座って座って~」グイグイ
真姫「ちょっと! いきなり引っ張らないでっ」
花陽「……ふふ」
凛「西木野うるさいにゃー」
<昼食後、保健室>
穂乃果「はぁ、もう授業の時間か~」
凛「次英語かぁ……」
凛「……このままここでゴロゴロしてようかな」
花陽「ずる休みはだめだよ凛ちゃんっ! ただでさえ昨日英語の再テスト出てないんだし!」
凛「うぅ……」
穂乃果「あっ、そういえばそうだったね……」
真姫「別に休んでもいいんじゃない? 私もたまにサボるし」
凛「西木野のわりには良いこと言うにゃ~」
花陽「に、西木野さん……」
真姫「……」
真姫「……まあ、その代わりにテストでちゃんと点を取る必要があるけど、ね」
凛「うぐっ」
穂乃果(うぐっ)
花陽「凛ちゃん……」
凛「……」
凛「……すっごーーーーい、イヤ、だけど」
凛「出る」
花陽「凛ちゃん!」
凛「……まあ、西木野の言うことに従う形になるのは癪だけど」
真姫「あ?」
凛「なんでもなーい」
真姫「……あっそ」
凛「……ふーんだ」
凛「かよちん、先行こ」ガシッ
花陽「えっ?」
凛「穂乃果ちゃん、またあとでね!」ダッ
穂乃果「あ、うん! またあとで!」
花陽「わわっ」タタッ
凛「かよちん急ぐにゃー!」タッタッタッ
花陽「そっそんなに強く引っ張らないでぇ~」タッタッタッ
真姫「……」
穂乃果「……行っちゃったね」
キーンコーンカーンコーン
穂乃果「わっ、予鈴のチャイム鳴っちゃった」
穂乃果「西木野さん! 私たちも急ごっ」
真姫「先行ってていいわよ」
穂乃果「えっ? なんで?」
真姫「……走るのイヤだからよ」
穂乃果「えぇっ、それじゃ間に合わなくなっちゃうよっ」
穂乃果「ほらっ、一緒に行こ!」グイッ
真姫「あっ、ちょっ」
穂乃果「いっそげー!」タッタッタッ
真姫「……もう!」タッタッタッ
<穂乃果・真姫のクラス、教室内>
ガララ
穂乃果「はぁっ、はぁっ」
先生「あっ、こ、高坂さん」
キーンコーンカーンコーン
穂乃果「ぎ、ギリギリセーフ?」
真姫「はぁっ、はぁっ……全くもう」
「おっ、来たな転校生!」
穂乃果「ん、おはよー」
「おはよーって、お前もう午後だぜ」
「午前はサボってたのか~?」
穂乃果「サボっ……あ、サボりになっちゃうのか」
「それよかお前凄いじゃん!」
穂乃果「え?」
「あの西木野にタイマンで勝ったんだろ!?」
穂乃果「あ、えと」
「しかも今朝はその西木野とコンビ組んで喧嘩してたし!」
「星空のヤツも一緒に喧嘩してたしな!」
「一年ナンバーワンになるだけじゃなく、あの二人も仲間にしちゃったって本当?」
穂乃果「うーんと……」
「まだ転校して来てそんなに経ってないのにすげぇな~」
「それにしても、一年のスリートップが手を組んだとなればこれはもう一大事ね」
「上のヤツらも黙ってないかもな~」
穂乃果「えぇ?」
「にしても、西木野を相手によく……」
真姫「……」ジッ
「わぁっ!?」ビクッ
「にっ西木野!?」ガタッ
真姫「……邪魔」
「え?」
真姫「どいてくれる? 席、座りたいんだけど」
「あっ、あぁ、ごめん」サッ
真姫「……」スタスタ
「お、おぉ……まさか西木野もいたなんて」
「あれ、もしかして転校生と一緒にいたのか?」
穂乃果「うん、お昼一緒に食べてたんだよ」
「あら、本当に仲良くなったのね」
「タイマンをヤった翌日に一緒に飯を食べる仲になるなんて……」
「なんか転校生……いや」
「高坂って、不思議だよね」
穂乃果「え?」
「確かに、音ノ木坂じゃあんまり見かけないタイプかも?」
「うん、珍しい人種だと思う」
穂乃果「そうなの?」
穂乃果(あれ、確かにこちゃんにもそんなこと言われたような……?)
先生「あ、あのー……」
「あ?」
「なんだよ」
先生「じゅ、授業始まってるから……その、席着いてほしいなー……なんて」
穂乃果「あっ」
「あぁ、そういや始まってたね」
「はぁー……めんどくさ」
「センセー、今日はもうこのままダベってたいでーす」
先生「えっ、いや、それは……」
穂乃果「……ごめんなさい先生! 今座りますねっ」
先生「!」
穂乃果「ほらほら、皆も座った座ったー!」
「な、なんだよ高坂」
「やっぱシンガクコーから来たしマジメちゃんなの?」
「喧嘩はすげー強いのにな」
穂乃果「もう、先生困らせちゃダメだよっ」
穂乃果「お喋りするにしてもさ、席座ってからしよ?」
「……ちっ、しゃあねぇな」
「まあ座ってた方が楽だしねー」
「ふわぁぁ……ねむぅ」
ゾロゾロ
穂乃果「……ふぅ」
真姫「……」ジッ
<放課後、女子トイレ>
穂乃果「ふぅ……疲れたぁ」ジャー
真姫「……やっぱり、変わってるわね」ジャー
穂乃果「え?」キュッ
真姫「アナタのことよ」ジャー
穂乃果「んー、フツーにしてるつもりなんだけどなぁ」フキフキ
真姫「アナタのフツーが、ここの普通と同じとは限らない」ジャー
真姫「そういうことよ」キュッ
穂乃果「なるほどー」
真姫「……さて」フキフキ
真姫「行くわよ」ザッ
穂乃果「うんっ」ザッ
<<少し前、穂乃果・真姫のクラス、教室内>>
ガララ
「……」
「はいはーい、ちょっと邪魔するよー」
穂乃果「?」
真姫「……」
「……高坂穂乃果と西木野真姫はいるか?」
「ん? なんだなんだ……っ!?」
「あ、あの二人っ、赤のリボンっ!!」
「なっ……」
「なんで二年生がウチらの教室に!?」
真姫(来たわね……)
穂乃果「二年生……?」
「あ、西木野ちゃんみーっけ」ビシッ
真姫「……はぁ」
「あーん、相変わらずツレない態度なんだからぁ」
真姫「ちっ……」
「……」スッ
「……」キョロキョロ
「……!」
穂乃果「ん?」
「画像と同じ顔……」ジッ
「……あんたが、高坂穂乃果か」
穂乃果「うん、そうだよ」
「……」ジロジロ
穂乃果「?」
「……こいつが……」
穂乃果(な、なんかこの人凄いジロジロ見てくるなぁ)
「な、なんだこれ……」
「二年生二人が高坂と西木野に絡んでるぞ……」
「まさか、今朝の噂を聞いてさっそく二人をヤりに……!?」
ザワザワザワザワ
ザワザワザワザワ
「……」ジッ
穂乃果「えーと……」
「……ついてこい」
穂乃果「えっ?」
「ウチらのトップがぁ、高坂ちゃんと、そこの西木野ちゃんと話がしたいって呼んでるのっ」
真姫「……へぇ」
穂乃果「そうなんだ」
「……そういうことだ、わかったら黙ってついてこい」
穂乃果「あっ!」
「……なんだ」スッ
穂乃果「その前に、お手洗い行ってきてもいいかな?」
「……」ピクッ
「んなっ……」
「ばっ、アイツ……!」
シーン
穂乃果「あ、あれ……私、なんか変なこと言った?」
真姫「……ふっ」クスッ
穂乃果「あっ、なんで笑うの西木野さんっ」
真姫「いや、なんでもないわ」クスクス
「……さっさと行ってこい」
穂乃果「うんっ」タッタッタッ
真姫「私も行くわ」スッ
「……ふふ、思った以上にオモシロい子ねぇ?」
「……」
「ナチュラルに私たちのこと舐めてる発言してたし、ね」クスクス
「……ふん」
「お、おい……なんかあの二人キレてないか?」ボソボソ
「あ、あいつら、は、早く戻ってきてくれないかな……」ボソボソ
<現在、"二年生の階"、とある教室へ向かう途中の廊下>
「……」ジー
「ちっ」ギロッ
「あいつらか、"今年の"は」
「ふーん、あれが例の……」ジロジロ
穂乃果(わぁ~……皆すごいガンつけてくるなぁ)
穂乃果(やっぱり、二年生ともなると気合の入り方が違うなぁ)
真姫「……何を一人でうんうん頷いてるのよ」
穂乃果「ぇ? 穂乃果そんなことしてた?」
真姫「……はぁ」
真姫(……二年生の階は、一年生の階なんかよりも遥かに張り詰めた空気で満ちていて)
真姫(私でさえ、常に周りを警戒するレベルだってのに……)
真姫(ホント、この子は器が大きいのか、それともただの能天気なのか……)
穂乃果「?」
「……着いたぞ」ザッ
穂乃果「この教室にトップの人がいるんだね」
真姫「……」
「そういうことっ、じゃあ入るわよ」
コンコンコン
「……姐さん、高坂穂乃果と、西木野真姫を連れてきました」
「どうぞ」
穂乃果(……この人たちのトップってどんな人なんだろ?)
穂乃果(悪い人じゃないといいんだけどなぁ)
「……失礼します」
ガララ
海未「……来ましたね」
穂乃果「えっ」
海未「ご苦労様でした、二人は下がっ」
穂乃果「海未ちゃん!」
「!?」
「は?」
真姫「……うみ、ちゃん?」
海未「昨日ぶりですね、穂乃果」
穂乃果「うん!」
穂乃果「それにしても、穂乃果たちを呼んだのが海未ちゃんだったなんて……」
海未「ふふ、意外でしたか?」
穂乃果「もうっ、驚いたよ!」
穂乃果「でも、よかった」
海未「なにがです?」
穂乃果「穂乃果ね、今日は海未ちゃんに会いに行こうと思ってたのっ」
穂乃果「だから、ちょうどよかったなあって」
海未「なるほど、そうだったんですね」クスッ
穂乃果「うん」ニコッ
「ちょ、ちょっとちょっとなになにあの雰囲気? え、あの二人知り合いだったの?」ボソボソ
「……何者だ、あの女」
真姫「……ちょっと」ガシッ
穂乃果「ん?」
真姫「どういうことか、説明しなさい」
穂乃果「? 何を?」
真姫「……アナタ、園田先輩と知り合いだったの?」
穂乃果「あ、うん、そうだよ」
穂乃果「私と海未ちゃんは、幼馴染なの」
真姫「……は?」
穂乃果「ていうか西木野さんこそ、海未ちゃんと知り合いなの?」
真姫「そうだけど、いや……ちょっと待って、待ちなさい」
穂乃果「? うん」
真姫「……幼馴染?」
穂乃果「そうだよ」
真姫「園田先輩と、アナタが?」
穂乃果「うん」
真姫「……」
穂乃果「西木野さん?」
真姫「……頭が痛くなってきたわ」
穂乃果「ええ!?」
真姫「……」チラ
海未「おや、なんでしょうか?」
真姫「……以前、私に言ってたわね」
真姫「『転校生の高坂穂乃果は貴方よりも強い』って」
海未「そうですね、確かに言いました」
真姫「アナタ、この子のこと前から知ってたのね」
海未「ええ」クスッ
真姫「……はあ」
真姫(なるほどね……だから、この子が私に勝つことを予見してあんなことを……)
真姫「……ホント、頭にクる人だわ、アナタ」
海未「ふふ、恐縮です」
真姫「褒めてないわよ」
海未「おや、そうでしたか」クスッ
真姫「……ふん」
穂乃果(あ、あれー……もしかして、この二人も結構バチバチしてる感じなのかな……?)
穂乃果「あ、あー、海未ちゃん!」
海未「なんですか?」
穂乃果「穂乃果たちに話があるんだよね! 何のお話か聞きたいな!」
海未「おっと、そうでしたね」
海未「では……」チラ
「! はいっ、私たちはこれでっ」ビシッ
海未「ご苦労様でした」ニコッ
「っ、はい!」
「……」ジッ
穂乃果「?」
「……」フイッ
ガララ
「失礼しますっ」
「……失礼します」ペコリ
バタン
穂乃果(……なんか、最後睨まれてたような?)
真姫「……」
海未「さて、では本題に入りましょうか」
海未「まずは……真姫」
海未「貴方への勧誘は打ち切られることになりました」
海未「理由はわかりますね?」
真姫「……別に、最初から入るつもりなかったし、どうでもいいわよ」
海未「そうですか」
海未「……私個人としては、貴方が仲間に入ってくれたら、と思っていたのですが」
真姫「……どういう意味?」
海未「いえ、なんでもありません」
真姫「……」
海未「穂乃果」
穂乃果「なあに? 海未ちゃん」
海未「昨夜話したことは、覚えていますか?」
穂乃果「……うん」
穂乃果「海未ちゃんと同じ派閥に入ってほしいって話だよね?」
海未「はい」
海未「音ノ木坂の中でも最大派閥として恐れられる絢瀬派ですが……未だ頂点(テッペン)は獲れていません」
穂乃果「そうなんだ」
海未「……ええ」
海未「絢瀬派が頂点(テッペン)の座に立つ」
海未「その実現のために……『一年生最強』となった貴方の力を借りたいのです」
穂乃果「……」
真姫(……そういうことね)
穂乃果「うーん……」
海未「気が進みませんか?」
穂乃果「……ねぇ、海未ちゃん」
穂乃果「なんで絢瀬派に入ったの?」
海未「……はい?」
穂乃果「穂乃果ね、昨日海未ちゃんが音ノ木坂の派閥に入ってるって聞いて、スゴいビックリしたんだよ!」
穂乃果「穂乃果のイメージだと、海未ちゃんってそういうグループに入ったりするイメージあんまりなかったからさ」
海未「……」
穂乃果「それに、今はことりちゃんと一緒にいないって言ってたよね?」
海未「……ええ」
穂乃果「だからね、昨日の夜、久々にことりちゃんに連絡してみたの」
海未「! ことりはっ、なんと!?」ガシッ
穂乃果「わっ! う、海未ちゃん?」
海未「はっ……す、すみません……」スッ
穂乃果「ううん、大丈夫だよっ」
海未「……それで、ことりは?」
穂乃果「……」
穂乃果「返事、もらえなかったんだ」
海未「……っ」
穂乃果「家にも電話してみたんだけど、誰も出なくて……」
海未「……」
穂乃果「……だから、昨日からずっと気になってたの!」
穂乃果「教えて、海未ちゃんっ」ガシッ
穂乃果「穂乃果がいない間に、ことりちゃんと何があったの!?」
海未「穂乃果……」
穂乃果「……っ」ジッ
海未「……」
真姫「……」
真姫(私、完全に蚊帳の外ね)
「おっ、お疲れ様ですっ!」
「海未は?」
「……姐さんは中にいらっしゃいます」
「そう、ここにいたのね」
真姫(……さっきの二人とは、違う声)
真姫(絢瀬派の誰かが来たのかしら……?)
真姫「……」スッ
穂乃果「海未ちゃん……!」ジッ
海未「っ……」
海未「……」
海未「……私、は」
「海未ー、入るわよー」
ガララ
穂乃果「?」クルッ
海未「……!」
真姫「なっ……!!」
「あら……?」
穂乃果「……誰?」
海未「……お疲れ様です」
海未「絵里先輩」
穂乃果「え?」
穂乃果(絵里先輩、って……)
絵里「ええ、海未もお疲れ様」
真姫(絢瀬、絵里……っ!!)
投下終わりです
ここまで読んでくださっていた方々、長らくお待たせしてしまいすみません
保守してくださっていた方々、ありがとうございます
これからは月に1~2回くらいの更新ペースとなるように頑張りますのでよろしくお願いいたします
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