Fate/stay nightと任天堂ゲームもろもろのクロス作品です。主役側鯖は上の三名です。
第三次聖杯戦争にてアンリマユでなくある存在が召喚されたために、任天堂ワールドの英霊ばかりを召喚するようになってしまった聖杯システムによる五次の物語です。
1.Fateキャラと任天堂キャラのカップリングあり
2.原作とマスターとサーヴァントのクラスの組み合わせが異なる
3.アルトリアをはじめ、本来の五次鯖は全員不参加
上の3点がOKという方は、どうぞ読んでやってください。
#REDIRECT機能のやり方がいまいちわからず、SSWikiへのリンクはないです。申し訳ない。
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士郎(10年前のあの夜のことは、はっきりとは覚えていない)
???『◆◆◆―!!!!』
士郎(ただ、細長くてばかでかい、蛇みたいななにかが暗い空を飛んでいるのがうっすらと見えていた気がする)
士郎(だけど、それはごく短い時間だった)
士郎(夜空に溶け込むように真っ黒だったそいつは、真っ白な骨に変わっていって、そして消えたからだ)
士郎(何故そいつが突然骨になったかはわからない。そいつがなんだったのかもわからない)
士郎(ただ一つだけ確かなことは、その時冬木は絶望のただなかにあったということだ)
士郎(何十っていう建物が次々に倒壊していき、大勢の人が逃げる間もなく押しつぶされていった。それだけでも十分阿鼻叫喚だっていうのに、そのどさくさでどこからか出火した炎が冬の乾燥した空気の中広まって、しかも消防隊も出動するにできない状況だったために、とんでもない大火災へと変わってしまった)
士郎(10年たっても未だに原因不明の大災害。あれがあの骨になった何かのせいなのか、それともあれはあの災害に理由がほしい俺が無意識に作り上げた幻想だったのか)
士郎(どっちにしても、そんな地獄の中にいた俺自身もただでは済まなかった。助けを求めるたくさんの手から目を背けて、苦しいと訴える幾つもの声を聞き流して、ひたすら自分だけが助かるために歩き続けた)
士郎(それなのに、大勢の人を見捨ててきた俺は結局自分の事さえ助けることが出来なくて、力尽きて倒れた)
士郎(雨が降っていたと思う。炎の中を歩き続けて熱かった体に、冷たい粒が幾つも当たる感覚があったから)
士郎(けれど、体が冷めていっても楽になることは無くて、ただ苦しさだけが募っていった。重くなっていく体と一緒に意識も深く沈んでいき、このまま死ぬんだな、とだけ妙に無感動に自覚した)
士郎(だけど)
切嗣『ああ、生きている、生きている……!』
士郎(俺は、落とすはずだった命を拾ってもらった。目に映るのは、俺を抱き上げながら涙を流している男の顔。泣いているはずなのに、それでも嬉しさがこみあげてきているのだとわかる表情)
士郎(その表情を見て、俺が思ったことは「羨ましい」だった)
士郎(俺は見捨てることしかできなかったのに、この人は人を助けようとして、それでこんなに嬉しそうにすることができるなんて、すごく羨ましかった)
士郎(だからきっと、俺はこの姿に憧れたんだと思う)
士郎(どこからか男が火がそのまま固まったような赤い宝石の嵌められた剣を取り出す姿を薄れていく意識の中で見ながら、自分もあんな風になりたいと、そう思っていた)
――遠坂邸――
凜「閉じよ(みたせ)、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ満たされる刻を破却する。素に銀と鉄」
凜(ついにこの時が来た)
凜「礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
凜(私が今臨んでいるのは、英霊の召喚。この冬木市で60年周期で行われる、万能の願望機たる宝具、聖杯を巡る7組の魔術師たちの戦争、「聖杯戦争」に参戦するための戦力、「サーヴァント」を呼び出す儀式だ)
凜「告げる。汝の身は我がもとに、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ――」
凜(聖杯の持つ膨大な魔翌力により、通常魔術師が使役する使い魔たちとはけた違いの存在たる英霊を、「セイバー」、「アーチャー」、「ランサー」、「ライダー」、「キャスター」、「アサシン」、「バーサーカー」の7つからなるクラスという枠に押し込めることで力を制限させ、「令呪」と呼ばれる魔術的聖痕を以って使役可能となった英霊の分身、それがサーヴァント)
凜「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者――」
凜(そして私の狙いは、7つのクラスの中でも最優と名高いセイバーのクラス! 目当ての英霊を引き当てるための触媒になる英雄所縁の聖遺物が手に入らなかったのは痛いけれど、自惚れ抜きにしても私の魔術師としての才と、この遠坂家家宝のルビーに込められた魔翌力なら、十分に強力な英霊を引き当てられるはず!)
凜「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」
凜(よし、手ごたえあり! 召喚の余波で魔翌力が煙ってるけど、間違いなく最高のサーヴァントを引き当てた!)
凜「って、あれ?」
凛(なんか……煙の向こうに見える人影がやけに小さいような)
セイバー「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ、参上した」
凜(あ、やっぱりセイバー! 期待通りの結果ね……って)
セイバー「問おう、其方が私を呼んだマスターか」
凜(……なに、この一頭身のまんまる仮面……)
とりあえず今回はここまでです。
SS Wikiへのリンクがスレたてすると自動でつくとは知らず、いらないことを書いてしまいました。面目ない。
続きを行きます。
凜(肌の色は暗いブルーで身に着けてるのは同じく青いマントに紫のブーツ、黒い肩当、それから鈍いV字型のスリットが入った白い仮面と腰に帯びた剣……そして体格は身長30センチ未満で体形は一頭身のボール型……太ってる比喩じゃなくて本当に体自体が丸いって、なんなのよこいつ!?)
凜(いえ、落ち着きなさい遠坂凜。遠坂家の当主たるもの常に余裕を持って優雅たれ。幾ら召喚したのがちょっと……かなり頼りない見た目でも、英霊は英霊。無様に取り乱した姿は見せられないわ)
凜「ええ、そうよ。私が貴方を召喚したマスター、遠坂凜よ」
セイバー「承知した。これより我が剣は其方と共にあり、其方の運命は私と共にある。ここに契約は完了した」
凜(見た目はともかく、風格は十分ね。スイカくらいの大きさしかないっていうのに、妙に威風堂々としてるというか。それに、セイバーだけあって感じる魔力も半端じゃないし)
凜「それで、貴方は何者なの? どう見ても人間の英霊ではないわよね」
セイバー「確かに、この星の人類の観点からは私は人間には当てはまることはないだろう」
凜「はあ?」
セイバー「我が名はメタナイト。銀河の平和のために剣を振るった、星の戦士の一人だ」
凜「銀河って……つまり貴方、宇宙人ってこと?」
メタナイト「そう考えてもらって構わない」
凜(宇宙人の英雄……あり得ないって言いたいところだけど、こいつの姿が肯定材料として十分すぎるわね。なんでそんな英霊が召喚されたかはひとまず置いておくにしても、それじゃあ知名度補正は期待できないってことじゃないの? せっかくのセイバーなのに、それじゃあ能力値(ステータス)に影響が出るんじゃ……)
凜(あ、マスターになればサーヴァントの力量を読み取る透視力が聖杯から与えられるはずよね。よし、それじゃあセイバーのステータスは……)
CLASS セイバー
マスター 遠坂 凛
真名 メタナイト
属性 秩序・善
筋力 A
耐久 C
敏捷 A+
魔力 B+
幸運 B
宝具 EX++
クラス別能力
対魔力:D 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:A 幻獣・神獣ランクを除くすべての獣、乗り物を自在に操れる。
保有スキル
宇宙生命:A 前人未到の領域である太陽系外の知性体であるために、「宇宙人」という概念の知名度を自らの信仰として利用できる。
カリスマ:C 軍団を指揮する天性の才能。Cランクであれば一軍を率いるのに十二分なレベル。
宝具
【銀河を護りし至宝の剣(ギャラクシア)】
ランク:EX++ 種別:対天宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人
古の時代に光の種族フォトロンの手で鍛造された宝剣。金属ながら命と自我を持ち、最強の騎士に己が使われることを望んでいる。強大なエネルギーを持つが故に持ち主も相応の力を必要とし、力なきものが長く持てば命が危うくなる。何万年もの長い時の中で宇宙を見守り続けてきた宝剣が秘める神秘は、地球の宝具とは比較にならない。
凜(な、なにこのステータス!? 他の能力値も十分強力なのに、宝具がEX++ですって!? 評価規格外のさらに上だなんて、前代未聞よ!)
セイバー「マスター? どうかしたのか?」
凜「え、ええ。貴方のステータスが、想像以上に強力なものだから、少し驚いたわ」
セイバー「では、私はマスターの眼鏡にかなったようだな」
凜「ええ、セイバーにしては耐久と対魔力が低めなのが気になるけど、貴方の宝具はそれを帳消しにして余りあるみたいね」
メタナイト「無論だ。いかに宇宙広しといえど、この剣に勝る刃は数えるほどもあるまい」
凜「頼もしいことね。なら、その真価は戦いの中でしっかり見せてね、セイバー」
メタナイト「わかっている、マスター。其方もまた一流の魔術師であることは、其方から流れてくる魔力の量で解る。私と其方の力を併せれば、恐らく敵はいまい」
凜「ええ、この戦争、勝ちにいくわよ」
メタナイト「ところでマスター、体は大丈夫なのか。英霊の召喚には、膨大な魔力を消費するのだろう?」
凜「大丈夫、と言いたいところだけど、確かにちょっと辛いかな。眠くなってきたし、今日はもう休みましょう」
セイバー「心得た、ならば私は見張りに徹するとしよう。霊体であるサーヴァントは眠る必要がないからな」
凜「なら、お願いね。それじゃあ、お休みセイバー」
――翌朝 衛宮邸土蔵――
桜「先輩、またこんなところで寝てたんですか」
士郎「ん……桜か」
桜「ちゃんと布団で寝ないと、体によくないですよ?」
士郎「わかってるんだけどな、ガラクタいじりの途中で寝ちまうなんて……って、しまった、朝飯の支度(したく)!」
桜「大丈夫です、私がやっておきましたから」
士郎(えへんとばかりに胸を張るのは可愛いけど、桜、いつの間やらすっかり大きくなったなあ……って、何考えてんだ俺は! 桜は慎二の、友達の妹で、俺にとっても妹みたいな子で、他所様から預かってる大事な娘さんなんだぞ。変な考えを起こすな、色即是空空即是色煩悩退散、喝っ!)
士郎「悪いな、桜。朝早くに来てもらってる上に全部任せちまって」
桜「気にしないでください、私が好きでやってることですから。それに、朝ごはんが遅れると藤村先生に怒られちゃいますよ?」
士郎「だな」
士郎(我が家に出没する虎の雄叫びを思い浮かべると、苦笑するしかない)
士郎「じゃあ、着替えてくるから、桜は居間で待っててくれ」
桜「はい、先輩」
大河「おっはよー!」
桜「おはようございます、藤村先生」
士郎「今日も朝から元気だな、藤ねえ」
士郎(今年で25になろうっていうくせに)
大河「おー、今日は珍しく洋食なのね」
桜「はい、今日のソテーは自信作ですよ」
大河「それじゃあ、早く食べよう! お姉ちゃんお腹ペコペコだよー」
士郎「朝っぱらからよくそんな腹空かせられるな、あんたは」
士郎(家の地主の娘である藤ねえこと藤村大河、友人である間桐慎二の妹の間桐桜、そしてこの俺、衛宮士郎。この3人での朝食は、すっかり俺にとっての当たり前になっている。それはきっと、他の2人も同じだろう)
士郎(当たり前の日常、それがどれだけ尊いものか、あの災害で全てを奪われた俺はよく知っている)
TVアナウンサー[昨日未明、冬木市の住宅街で原因不明の爆発事故が起こりました]
士郎(そして、当たり前の日常が、どれほど容易く失われるかということも)
桜「物騒ですね、爆発事故なんて」
大河「そうねー、最近新都の方でもガス漏れ騒ぎがよく起きてるし、やっぱりガス爆発かな?」
TVアナウンサー[警察の調べでは、爆発そのものは水蒸気爆発であると発表されました]
士郎「水蒸気爆発? 街中で?」
TVアナウンサー[この爆発により、住宅一軒がほぼ全壊し、この家の住民3人が死亡、1人が重症となりました。現在、警察は事故の原因について詳しい調査を進めています]
士郎「……」
士郎(住宅街で水蒸気爆発なんて、普通に起きるはずがない。誰かが起こしたんだ、誰かが、その家に暮らしていた人たちを)
大河「士郎?」
士郎「あ……なんだ、藤ねえ?」
大河「なんだ、じゃないでしょ? 士郎、すごい怖い顔でテレビ見てるんだもん」
士郎(ほとんど食事に集中してたくせに、よく気付くな。野生の勘か?)
大河「士郎、危ないことはしないでよ」
士郎(そういう藤ねえの顔は、常になく大人としての威厳が見て取れた。普段はちゃらんぽらんなくせに、時折藤ねえは年長者としての顔を見せる)
士郎「……わかってるよ」
士郎(だから、俺はそう答えるしかなかった。5年前に親父が死んでからは、藤ねえが俺の保護者みたいなものだったから、心配をかけるのが嫌だった)
士郎(だけど、俺は言葉の通りにできるかわからなかった。俺には、ならないといけないものがあるから)
士郎(10年前の災害で助けられた俺は、助けてくれた男、衛宮切嗣に引き取られ、衛宮士郎となった。それだけなら、珍しくはあっても聞かない話じゃなかっただろう。だけど、1点だけ普通じゃない話があった)
切嗣『初めに言っておくとね、僕は魔法使いなんだ』
士郎(俺を引き取るときに言っていた言葉、その言葉は正しくはなかったが、嘘でもなかった。親父は条理に外れた技、魔術を操る魔術師だったんだ)
士郎(俺は渋る切嗣に無理に頼み込んで魔術を習い始めた。といっても、親父はしょっちゅう家を空けるし、俺は才能ないしで、未だに初歩すら覚束ないのだが)
士郎(魔術を得たいと思ったのは、切嗣に憧れていたからだ)
士郎(あの時、自分のことさえ救えなかった俺を救ってくれた切嗣のようになりたかった。あの災害の時みたいな、わけもわからず死んでいく人たちを助けられるようになりたかった)
士郎(切嗣は、俺にとって正義の味方だったから。その切嗣の息子であるのなら、俺も正義の味方にならないといけないんだ)
士郎(それが、あの地獄で生き残った俺の義務だと、あの時救われた命の使い道なんだと、そう思うから)
――夜 冬木市新都センタービル屋上――
凜(今日は学校を休んで、一日中セイバーに町を案内するのに費やした。幾ら英霊でもこの広い街をたった一日案内しきれる範囲で把握できるものじゃないでしょうけど、戦場の理解は重要だからね。そして仕上げとしてここに来たんだけど)
凜「どう、ここなら見通しがいいでしょう」
セイバー「ああ、町の全景がよく見える」
凜(横に並んで立つと、本当に小さいわねこいつ……)
セイバー「美しい夜景だ。平和と繁栄が一目で見て取れる、この国は本当に平和なのだな」
凜「まあね。世界的に見て、この国は特に平和な部類よ」
セイバー「その平和な国で、我らは戦争を起こすのだな」
凜「気が咎める?」
セイバー「正直に言えばな」
凜(まあ、平和のために戦ってきたって言ってたし、英雄ならそういう正義感は持ってて当たり前なのかもね)
凜「でもね、セイバー。だからこそ私たちはこの戦争に参戦すべきなのよ」
セイバー「ふむ?」
凜「私は、遠坂はこの冬木という霊地の管理者(セカンドオーナー)なの。私が管理している以上は、何も知らない一般人から余分な犠牲者なんて許さないわ」
セイバー「なるほど。其方もまた民衆の平和のために力をふるうということか」
凜「そんな酔狂じゃないわ。ただ、見知らぬ誰かの死を背負うなんて面倒だっていうだけの話」
セイバー「ふっ、そうか」
凜「な、なによ? 何か文句あるっていうの?」
セイバー「いや、其方に召喚され、私は幸運だったと改めて実感した」
凜「そ、そう?」
凜(見た目に似合わずいい声してるから、妙に気障な台詞が様になるわね……)
セイバー「これほどの町だ。今はまだ聖杯戦争が始まっていないといえども、英雄とはすなわち規格外の存在。存在するだけで災厄たりえるが故に、既に何らかの形で命を奪われた無辜の民もいるやもしれぬ」
凜「ええ、それは否定できないわ。特に、ここ最近この新都で起きてるガス漏れ事故、あれもサーヴァントによるものじゃないかって私は疑ってるしね」
セイバー「だが、その犠牲も今日までだ。其方が私を召喚した以上はな」
凜「当然。これ以上、私の管理地で好き勝手させるもんですか」
――冬木市新都路上――
士郎(バイト遅くなったな、藤ねえに色々言われそうだ、ん?)
士郎(あそこの屋上にいるの、遠坂か? なんかぬいぐるみみたいなのが足元にあるけど、遠坂そういう趣味あったんだな)
――センタービル屋上――
凜「はっ」
セイバー「どうした?」
凜「なにか不本意な勘違いをされた気がする」
――冬木市上空――
ルヴィア(私ことルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトは、極東の片田舎である日本のフユキという町に来ていた)
ルヴィア(その理由は唯一つ。かつての当主が敗れたという魔術儀式、聖杯戦争に参戦するため)
ルヴィア(たかだか田舎魔術師の管理地で行われる儀式に2度も参戦する必要などありませんが、それでも我がエーデルフェルトがこの地で敗れたことと、そして私に令呪が宿ったことは覆しようのない事実)
ルヴィア(ならば、先祖の雪辱を現当主たる私が晴らさねば沽券にかかわるというもの)
ルヴィア(そして、いざ召喚してみれば、結果は意外な形に終わった。参戦した時の先祖たちと同じく、最優たるセイバーを期して召喚したはずでしたのに……)
アサシン<人間の町の夜は明るいな、それにごみごみしている>
ルヴィア(自身のサーヴァントからの念話に、私は自分を乗せて夜空を飛ぶ巨体を見下ろす)
ルヴィア「同感ですわね、アサシン。無駄に雑多で、おまけに湿っぽくて、エレガンスの欠片もありませんわ」
ルヴィア(そう、私の召喚したサーヴァントは、最優どころか戦闘力としてはキャスターに並んで最弱と言われるアサシンだったのですもの。その上、驚くべき点はそこだけではなかったのですし)
ルヴィア(一番の予想外は、アサシンが人間ではないことですわね。5メートル以上ある巨体は紫色の羽毛で覆われ、白いゴーグルのような部位に囲まれた瞳はシンクに輝き、ずんぐりした胴体からは長いしっぽが伸びて、腕部は手を思わせる形のたくましげな翼になっている、まるで翼竜のような生き物。正直に言って、とても英霊には見えませんでしたわ。声帯の関係上、年話でしか言葉が解りませんし)
ルヴィア「ですから、私たちで真の優雅さというものを見せつけて差し上げましょう?」
ルヴィア(一方で、嬉しい誤算もある。それはアサシンの能力値)
CLASS アサシン
マスター ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
真名 ダークルギア
属性 中立・悪
筋力 C
耐久 A+
敏捷 A
魔力 C
幸運 E
宝具 B
クラス別能力
気配遮断:D 暗闇の中では体色が保護色となり、非常に発見しにくくなる。
保有スキル
マルチスケイル:A 特殊な鱗による恩恵。体力が万全の時に敵から受けるダメージが半減される。
怪力:B 一時的に筋力を増強させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。使用することで筋力をワンランク向上させる。
宝具
【闇の旋風(ダークブラスト)】
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:3~40 最大補足:100人
闇の威力を纏った息吹。水中生物のごとく長期間潜水可能な桁外れの肺活量を駆使し、ため込んだ空気に自身の持つ闇の力を帯びさせ、闇色をした空気の渦として発射する。空気が渦巻いて敵を飲み込むため、敵の急所をとらえやすい特性を持つ。
ルヴィア(見れば見るほど、暗殺者とは思えない強力なステータスですわね)
ルヴィア「軽量級の私と重量級の貴方、タイプこそ違いますけれど、そうであるが故に互いを補える私たちは、最強のタッグとなれますわ!」
アサシン<そういう割には、召喚された時はアサシンなど優雅でないだの丸いお腹が太って見えるだの一世一代の失敗ですわだの、散々な言われようだったが>
ルヴィア「あ、あの時のことは私も反省しておりますわよ。肩書だけで相手を判断するなど、淑女のふるまいではありませんでしたわね。あのように取り乱す前に、貴方というヒトを理解するべきでしたわ」
アサシン<……初対面で投げ飛ばし合う果てに理解を深めることが、淑女としてあるべき姿だったのか?>
ルヴィア「無論ですわ。流石に貴方ほどの巨体を投げるのは骨でしたけれど、おかげで貴方の実力もよく解りましたし」
アサシン<私としては、聖杯から与えられている淑女という言葉の定義とずれているように思えてならないのだが>
ルヴィア「聖杯からの知識も、あまり正確ではないようですわね。まあそのようなことよりも、私が申し上げたいのは、貴方となら十分に王位(タイトル)を掴めるということですわ」
ルヴィア(そう、一度レスリングを挑んでみることではっきりと確信したことは、アサシンが間違いなく強いということ。知名度補正がないせいか、巨体に似合わず筋力が低いのが気になりますけれど、それは怪力スキルで十分補強可能。なによりも、耐久の高さとマルチスケイルというスキルが魅力的ですわ。この優れた防御力に、翼による飛行能力。暗殺などという野暮な手段に頼らなくとも、真正面から堂々とした戦うことができるはず)
アサシン<無論、私とて戦うことに文句はない。目の前に敵が現れたのならば、叩き伏せてみせよう>
ルヴィア「ならば、精々他のマスターやサーヴァントたちにご覧いただきましょう。地上で最も美しいハイエナ……い、いえ、地上で最も美しいハンターと呼ばれるエーデルフェルトの魔術師の戦いぶりを」
ルヴィア「相手がなんであろうと、全力を以って戦い、観客を沸かしてみせる。それがショウマンシップというものです。ふ、ふふ、ふふふ、ほーほっほっほ!」
今回はここまでです。
名前欄が消えていたためにトリップを正確に思い出せず、>>13、>>14のトリップが変わっていますが、どうぞご容赦ください。
アサシンことダークルギアのマスターとしてルヴィアも参戦してもらいました。この作品ではキャスターも任天堂キャラですし、任天堂ワールドの魔法使いが型月ワールドの召喚魔術を本来あり得ないサーヴァントによるサーヴァント召喚ができるほど把握しているというのも変ですから、キャスターの代わりにサーヴァントを呼ぶ魔術師が一人ほしかったですので。
(続きの前に前回の修正分いきます。)
――冬木市上空――
ルヴィア(私ことルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトは、極東の片田舎である日本のフユキという町に来ていた)
ルヴィア(その理由は唯一つ。かつての当主が敗れたという魔術儀式、聖杯戦争に参戦するため)
ルヴィア(たかだか田舎魔術師の管理地で行われる儀式に2度も参戦する必要などありませんが、それでも我がエーデルフェルトがこの地で敗れたことと、そして私に令呪が宿ったことは覆しようのない事実)
ルヴィア(ならば、先祖の雪辱を現当主たる私が晴らさねば沽券にかかわるというもの)
ルヴィア(そして、いざ召喚してみれば、結果は意外な形に終わった。参戦した時の先祖たちと同じく、最優たるセイバーを期して召喚するはずでしたのに……)
アサシン<人間の町の夜は明るいな、それにごみごみしている>
ルヴィア(自身のサーヴァントからの念話に、私は自分を乗せて夜空を飛ぶ巨体を見下ろす)
ルヴィア「同感ですわね、アサシン。無駄に雑多で、おまけに湿っぽくて、エレガンスの欠片もありませんわ」
ルヴィア(そう、私の召喚したサーヴァントは、最優どころか戦闘力としてはキャスターに並んで最弱と言われるアサシンだったのですもの。その上、驚くべき点はそこだけではなかったのですし)
ルヴィア(一番の予想外は、やはりアサシンが人間ではないことですわね。紫色の羽毛で覆われた5メートルを超す巨体に、白いゴーグルのような部位に囲まれた深紅に輝く瞳、ずんぐりした胴体からは長いしっぽが伸びて、腕部は手を思わせる形のたくましげな翼になっている、まるで翼竜のような生き物。正直に言って、とても英霊には見えませんでしたわ。声帯の関係上、念話でしか言葉が解りませんし)
ルヴィア「ですから、私たちで真の優雅さというものを見せつけて差し上げましょう?」
ルヴィア(一方で、嬉しい誤算もある。それはアサシンの能力値)
CLASS アサシン
マスター ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト
真名 ダークルギア
属性 中立・悪
筋力 C
耐久 A+
敏捷 A
魔力 C
幸運 E
宝具 B
クラス別能力
気配遮断:D 暗闇の中では体色が保護色となり、非常に発見しにくくなる。
保有スキル
マルチスケイル:A 特殊な鱗による恩恵。体力が万全の時に敵から受けるダメージが半減される。
怪力:B 一時的に筋力を増強させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。使用することで筋力をワンランク向上させる。
宝具
【闇の旋風(ダークブラスト)】
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:3~40 最大補足:100人
闇の威力を纏った息吹。水中生物のごとく長期間潜水可能な桁外れの肺活量を駆使し、ため込んだ空気に自身の持つ闇の力を帯びさせ、闇色をした空気の渦として発射する。空気が渦巻いて敵を飲み込むため、敵の急所をとらえやすい特性を持つ。
ルヴィア(見れば見るほど、暗殺者とは思えない強力なステータスですわね)
ルヴィア「軽量級の私と重量級の貴方、タイプこそ違いますけれど、そうであるが故に互いを補える私たちは、最強のタッグとなれますわ!」
アサシン<そういう割には、召喚された時はアサシンなど優雅でないだの丸いお腹が太って見えるだの一世一代の失敗ですわだの、散々な言われようだったが>
ルヴィア「あ、あの時のことは私も反省しておりますわよ。肩書だけで相手を判断するなど、淑女のふるまいではありませんでしたわね。あのように取り乱す前に、貴方というヒトを理解するべきでしたわ」
アサシン<……初対面で投げ飛ばし合う果てに理解を深めることが、淑女としてあるべき姿だったのか?>
ルヴィア「無論ですわ。流石に貴方ほどの巨体を投げるのは骨でしたけれど、おかげで貴方の実力もよく解りましたし」
アサシン<私としては、聖杯から与えられている淑女という言葉の定義とずれているように思えてならないのだが>
ルヴィア「聖杯からの知識も、あまり正確ではないようですわね。まあそのようなことよりも、私が申し上げたいのは、貴方となら十分に王位(タイトル)を掴めるということですわ」
ルヴィア(そう、一度レスリングを挑んでみることではっきりと確信したことは、アサシンが間違いなく強いということ。知名度補正がないせいか、巨体に似合わず筋力が低いのが気になりますけれど、それは怪力スキルで十分補強可能。なによりも、耐久の高さとマルチスケイルというスキルが魅力的ですわ。この優れた防御力に、翼による飛行能力。暗殺などという野暮な手段に頼らなくとも、真正面から堂々と戦うことができるはず)
アサシン<無論、私とて戦うことに文句はない。目の前に敵が現れたのならば、叩き伏せてみせよう>
ルヴィア「ならば、精々他のマスターやサーヴァントたちにご覧いただきましょう。地上で最も美しいハイエナ……い、いえ、地上で最も美しいハンターと呼ばれるエーデルフェルトの魔術師の戦いぶりを」
ルヴィア「相手がなんであろうと、全力を以って戦い、観客を沸かしてみせる。それがショウマンシップというものです。ふ、ふふ、ふふふ、ほーほっほっほ!」
――翌朝 遠坂邸――
セイバー「開戦前とはいえ、準戦時下で登校するのか?」
凜「ええ。聖杯戦争中だからって、普段の生活を変えるつもりはないわ。それに、魔術は秘匿されるべきもの。人目の多い学校で仕掛けてくるマスターなんていないでしょう」
セイバー「部外者ならばそうかもしれないが、もし学校に其方と同じくマスターになっている者がいれば、不意を受ける可能性は高いだろう。特に、アサシンやキャスターといった直接戦闘向きでない者であればなおのこと策をめぐらしてくるはずだ」
凜「それは、ないわ。この町には魔術師の家系はうちとあとひとつだけなの。そっちはもう没落してて跡継ぎは魔術回路も閉じてるから、マスターにはなっていないはずよ」
セイバー「その家には、まともな魔力を持つ魔術師はいないということか」
凜「……ええ、そうよ」
セイバー「? まあ、だとしても油断は禁物であろう。其方の言う通り、魔術が秘匿すべきものならば、同じ魔術師にすらその存在を隠匿する者とていよう。其方の知らぬ魔術師が学校にいたとしても決しておかしなことではない」
凜「それこそまさかよ。よほど強力な魔力殺しの魔具でも持ってなきゃ、魔術師の存在くらいは感知できるわ。魔術回路をたまたま持って生まれた人ならいないとは言い切れないけど、少なくともまともに魔術を使える魔術師はいないはずよ」
セイバー「そうか。ならば、なおさら学校は危険かもしれないぞ」
凜「どういう意味?」
セイバー「昨夜、マスターはこの土地の管理者と言っていたであろう? ならば、他の魔術師はマスターの存在を知っているはずだ。戦闘準備が不十分なことが予想される校内こそ、いつ襲撃されるかわかるまい。心得違いをした者であれば、目撃者になりえる校内の人間全てを殺してでも戦果をあげようとするだろう。まして、横槍となり得る他のマスターが校内にいないとなれば、な」
凜「そうね、それは弁えてるわ。でもね、セイバー。さっきも言ったけど、私はこれまでの生活をわざわざ変えてあげるつもりはないわ。私は10年前から聖杯戦争のための準備を進めてきた、言ってみれば10年前から私の聖杯戦争は始まっていたの。今更本番でじたばたはしないし、もし本当に襲い掛かってくるなら、叩き潰してあげるだけよ」
セイバー「そうか。そこまで言うのであれば、私は其方を護るだけのこと」
凜「ええ、昨日みたいに霊体化してついてきてちょうだい。いざという時は、頼りにしてるわ」
セイバー「承知」
凜(もともと霊体であるサーヴァントは、マスターの魔力供給により疑似的に受肉した実体と元の霊体を使い分けることが出来る。人目のある場所に同伴させるには便利よね。こいつの場合、誰かに見られでもしたら学校にへんてこなぬいぐるみを持ち込んでる女だなんて思われかねないし)
凜「じゃ、行きましょうか」
セイバー<ああ、行くとしよう>
――穂群原学園――
凜(なによ、これ……)
セイバー<どうやら、先手を打たれていたようだな>
凜<これ、結界なんてちゃちなもんじゃない……学校の敷地一帯が丸ごと異界化してる!?>
セイバー<狙いは間違いなくマスターだろう。そしてこれほどの砦を築けるとなると>
凜<十中八九、陣地作成スキルを持つキャスターでしょうね。セカンドオーナーのテリトリーにここまで派手なことしでかすなんて、随分舐めたことしてくれるじゃないっ!>
セイバー<それで、どうする? ここまでのものとなると、対処は容易ではない。こうも周り中に人の目があるのでは、どうともできないだろう>
凜<ええ。癪だけど、動くのは人がいなくなってからね。幸い、近頃物騒だからってことで学校の門限が早まってるから、放課後はすぐに人気がなくなるわ>
セイバー<それまでは敵陣の真っただ中というわけか。気を引き締めなければならないな>
今回は短いですがここまでです。
続きいきます。
――穂群原学園 生徒会室――
士郎(なんか今日は学校の雰囲気が変だな。ピントが合ってるようであってないような……疲れてんのか、俺?)
一成「朝からすまんな衛宮。この寒い時期だというのに、故障したストーブが多くてな」
士郎「いいって、このくらいならすぐ直せるから、ちょっと出ててくれ」
一成「うむ、衛宮の邪魔はせん。終わったら呼んでくれ」
士郎(一成には悪いけど、魔術のことを知られるわけにはいかないからな)
士郎「さて、と」
士郎(一成が部屋を出たのを確認したら、視覚を閉じてストーブの中身を触れた指先から視る。途端、頭の中に湧き上がってくるストーブの構造のイメージ)
士郎「本当に、これだけは巧いんだけどな……」
士郎(そのイメージから故障個所を確認しつつ、思わずぼやく。魔術の才能はからきしなのに、何故か物の構造把握と設計図の連想だけは得意だった)
士郎(親父曰く「無駄な才能」らしいけど……物の隅々まで把握するなんて無駄な作業より、物事の核たる中心を即座に読み取り、即座に変化させることの方が魔術師としては大事らしい)
士郎(一応魔術属性が“火”らしいから、熱エネルギーを操作する魔術もできなくはない。が、火傷せずに使えたためしがなかったりする)
士郎(そんなわけで、俺の唯一の魔術師としての取り柄は故障品の故障個所把握ぐらいにしか使えないわけだ)
士郎「しかも、それも素人知識でどうにかなるレベルの修理に使えるだけで、専門知識が必要な場合は故障個所が解ってもしょうがないんだがっと。今回は電熱線は大丈夫そうだな」
士郎(さすがに電熱線の故障となると、素人の手には負えない。なので、素人ではない方法が必要となるのだが、今回はその必要はなさそうだ)
士郎「しかし、流石に色あせてるな」
士郎(もとは真っ白だっただろうストーブも、あちらこちらが黄ばんでいたり汚れがついていたりで、元の姿は見る影もない)
士郎「……あの子の髪は綺麗な白、いや、銀色だったな」
士郎(思い起こすのは、昨日のバイトの帰り道)
士郎(センタービルの屋上でぬいぐるみと一緒に佇む遠坂という不思議な光景に形容しがたい気分になっていたっけ)
士郎(遠坂凜。うちの学校に通う俺と同じ二年生でA組所属。大きな洋館に棲むお嬢様にして美人かつ文武両道、しかも理知的で礼儀正しいという欠点知らずなヤツで、学園のアイドル扱いになっている女生徒だ。かくいう俺も男であるわけで、彼女に憧れを抱いている男子の一人であったりする。何故か我が友人たる生徒会長、柳洞一成とは仲が悪いらしいけど)
士郎(っと、それはさておき、そんな学園のアイドルの意外な一面を知り、いいとも悪いとも言えない妙な気持でわが家へ続く坂道を歩いていたら、気が付くと人気が全くなくなっていた)
士郎(時間は7時半ごろだったけど、最近物騒になったから夜に出歩く人が減るのも当然だ、とかうちに夕飯の手伝いをしに来てくれる桜を一人で出歩かせるのも危なくなってきたな、とか思ってたら、一人分だけ人影を見つけたのだ)
士郎(坂の途中、上っているこちらを見下ろすように立ち止まっている小さな影。その姿を認めた時、思わず息をのんだ)
士郎(影は、美しい少女だった。齢は10歳かそこらで、多分外国人だろうか。日本人とは違い彫が深く、なおかつ愛らしさに満ちたあどけない美貌。深い赤色に輝く、大きな瞳。何よりも目を惹くのは、その長い銀色に輝く髪だった)
士郎(幻想的な雰囲気を持った、どこか浮世離れした印象を受ける少女。彼女は表情を変えることなく俺の方を見ると、足音も立てずに坂道を下りてきた)
士郎(その様子がますます人間離れして見えて、まるで妖精みたいだなんてメルヘンじみたことを考えていたな)
士郎(そして、その途中)
少女『早く呼び出さないと死んじゃうよ、お兄ちゃん』
士郎(舌足らず気味な声で、おかしな言葉を聞かされた)
士郎(けど、その言葉以上に気になったのは……)
士郎「なんで、あんな寂しそうな声だったんだろうな」
士郎(まるで、何かを諦めているような、何かを訴えたいのに訴えられないような、哀しい響きの声。それが、どうにも気になっていた)
士郎「おっと。それより早く済ませないとな」
士郎(ホームルームまで大して時間があるわけじゃない。早く修理しないと)
――穂群原学園 2年C組――
一成「ギリギリ間に合ったか。すまんな衛宮、また苦労を掛けた」
士郎「別に気にするな。この季節は、どこもストーブは必需品だしな。助けになれたなら嬉しい」
一成「そう言ってくれると助かるが、衛宮は少し人が好すぎるぞ。いや、助けられておいて言うことではないが」
士郎「そんなことないぞ。俺だって無理なことは断ってる」
一成「俺の見る限り、そんなことは極稀にしか起きていない気がするが、それならばいい」
士郎(こっちは好きでやってることだし、自分じゃ無理だと思うことはちゃんと断ってるから、一成が心配するようなことはないのにな)
慎二「なんだい、衛宮。部活辞めてからは、柳洞の太鼓持ちやってるわけ?」
士郎(そして席に着こうとすると、見慣れた顔が目に入った。中学時代からの友人であり桜の一つ上の兄貴でもある、間桐慎二だ)
慎二「僕には関係ないけどさ、元関係者としてうちの評判を落とすようなことはしないでよね。お前、無節操になんにでも首突っ込むからさ」
士郎「む、そこまで節操なく見えるか、俺?」
慎二「自覚ないっていうのがたち悪いね。衛宮さ、あんまりどこそこ構わず他所の問題に手を出そうとすると、お前の周りの奴の評判にも影響が出るってわからないかい?」
士郎「そうだな、それは気を付ける。そういえば、弓道部の調子はどうだ?」
慎二「はあ? とっくに部外者になった奴がそんなこと気にするわけ? まあ、教えてやるけど、いいに決まってるだろう。僕がいるんだからさ。今度の大会だっていいところまで行くさ」
士郎「そうか、ならよかった。けどまあ、手伝えることがあるなら、いつでも言ってくれよ。弦張りとか弓の直し、慎二は苦手だったろ」
慎二「だから部外者のくせにおいそれと道場に近づこうと……」
士郎「慎二? どうした?」
慎二「いや、それなら頼まれてくれよ。最近何かと物騒だろ? そのせいで部活も下校時刻が早まって、掃除の時間が大して取れないんだよね。おかげで道場が散らかってるからさ。衛宮、掃除頼むよ」
士郎「掃除か。わかった、今日はバイトもないし、大丈夫だぞ」
慎二「じゃあ、任せたからな」
士郎(はて。いつもは道場に近づけたがらないのに、素直に頼み事なんて珍しいな)
一成「衛宮。忠告した傍から頼まれごとを引き受けているではないか」
士郎「なんだよ一成。そんな呆れたような目で見て」
一成「実際、呆れているのだ。人助けはいいことだが、衛宮の場合は来るもの拒まず過ぎる。これでは心無い奴らにいいように利用されかねんどころか、たった今利用されてしまうとは」
士郎「慎二のことか? あれがあいつの味なんだよ。口ほど悪い奴じゃない」
一成「ふむ、そんなものか」
士郎「そんなものです。あいつとの付き合いもそれなりに長いからな」
士郎(まあ、少し前に桜が慎二に暴力を振るわれてることを知った時、あいつを殴っちまってからは疎遠気味なんだけど。俺として仲直りしたいんだけどな、俺たちが仲違いしたままなのを桜も気にしてるみたいだし)
士郎「それより、早く席についてないと、そろそろ藤村先生がスッ飛んでくるぞ」
一成「ははは。あの方は飛んでくるというより浮いてくるという感じだがな」
士郎(笑いながら一成が席に着いた時にはすでにホームルーム開始1分前。普通なら5分は前にクラス担任が来ているものだが、この2-Cにおいてその常識は当てはまることならず)
士郎(そしてとうとうホームルーム開始の鐘が鳴った、その瞬間)
大河「今日はぎりぎり間に合ったーあ! みんな、おはよー!」
士郎(ドドドドドー! という擬音が似合う足音と共に、教室に突入してきた我が家の虎こと藤村大河先生)
士郎(そう、一体何がどう間違ったのか、このクラスの担任は藤ねえなのである。仮にも魔術に携わっている俺が言うのも変だが、世界は不思議なことで溢れているものだ)
――放課後 穂群原学園 弓道場裏雑木林――
凜「ここら辺が一番空気の質が違うわね」
セイバー<私は魔術についてはよく知らないが、それではこの辺りが学校の異常の中心ということか?>
凜「多分そうだろうとは思うけど……参ったな、これわたしの手には負えない。異界になっているのは解るけど、それを戻す方法どころか意味も意図もわからないなんて」
セイバー<では、この状態がどういう結果をもたらすのかはわからないということか>
凜「悔しいけどね。ただ、現代の魔術とはシステムが違いすぎる。ひょっとすると、失われた系統の魔術なのかも」
セイバー<もしくは、私のように地球の英雄ではないのかもしれないな>
凜「まさか、とは言えないわね。あなたがいる以上は」
凜(地球外の魔術師……もしそれが事実なら、そんなわけのわからない奴の魔術に現代の魔術がどう作用するのか、未知数すぎて想像できないわね)
凜「まったく、分のわからないギャンブルなんて主義じゃないってのに」
凜(だけど、ここが結界の中心になっているとなると、そうも言っていられないわね)
凜(弓道場には気が置けない付き合いのできる数少ない友人である美綴綾子、それに“あの子”が通ってるんだから)
凜「とりあえず、この辺の魔力の流れをいろいろと調べてみるわ。せめて異界化の目的だけでもつきとめないと」
セイバー「マスター、どうやらその必要はないらしい」
凜「って、セイバー!? いきなりなに実体化して、っていうか、必要はないってどういう意味?」
セイバー「それは」
凜(? 石なんか拾って何を)
セイバー「こういうことだ!」
?「ギャンッ!」
凜「!?」
ボコブリンA「グルル!」
ボコブリンB「ブキャーーッ!」
ボコブリンC「フシュー、フシュー!」
凜「な、なにこいつら!?」
凜(セイバーが石を投げた茂みのあたりから、外国童話の絵本に描かれた子鬼みたいなやつらがうじゃうじゃ出てきた!?)
セイバー「この異界化の原因の主の僕たちだろう。明らかにこの惑星の生態系とは異なる存在、恐らくこいつらを呼び出すことがこの状況の目的だ」
凜「なるほどね。でも大掛かりな仕掛けの割にはお粗末な兵隊だわ」
凜(言いつつ、私は右手の全ての指先を敵の群れに向ける)
凜「セイバー、下がってて。こいつら程度なら、あなたの力を借りるまでもないわ」
セイバー「レディーに仕事を任せるとは恐縮だが、お言葉に甘えるとしよう」
凜「ええ。それじゃあ、いくわよ!」
ボコブリンA「グギャアアッ!?」
ボコブリンB「ブゲッ!?」
ボコブリンC「フゴァッ!?」
凜(伸ばされた5本の指先から放たれた呪いが、怪物たちの群れを吹き飛ばしていく。北欧に伝わる人差し指で指差すことで呪い、病を与える初等呪術“ガンド”。私の場合は、強力な魔力を注ぐことで「フィンの一撃」と呼ばれる物理的な破壊力を持った魔弾として打ち出せる。その威力は、少なくとも拳銃の弾くらいはあるって自負してるわ)
凜「数はいるみたいだけど、やっぱり一匹一匹は大したことないわね。テリトリーにわけのわからないもの仕掛けられてイライラしてたし、ついでに発散させてもらうわ」
セイバー「それは八つ当たりではないか、マスター」
凜(なにか言っているセイバーを無視し、ひたすらに撃ち続ける。大したことはないけど、本当に数だけは多い。というか、見ている間にどんどん増えていっている?)
凜「きりがないわね、この無尽蔵に雑魚を湧き出させられるのが一番の目的ってことかしら? っと」
リザルフォスA「プァウッ!」
リザルフォスB「プウォアーッ!」
凜「っ、盾で弾かれた! あのトカゲ頭の奴ら、子鬼たちとは少し違うみたいね」
セイバー「では、そろそろ私の出番だな」
凜「サーヴァントでもない連中相手に頼るのは少し癪だけど、まあいいわ。役不足に過ぎるでしょうけどセイバー、あなたの力、ここで見せて」
セイバー「期待には背かない」
凜(剣に手を掛けた……そういえば、あの鞘やけに小さいのよね)
凜「って、え!?」
凜(抜いたと思ったら、刀身がない!?)
セイバー「いざ、見せよう。邪悪なる帝王の宇宙制覇の野望を阻み続けた」
凜(いえ、違う。柄から電気みたいなのが迸って、剣の形になっていく)
凜「黄金の、剣……」
凜(そして現れたのは、炎みたいな形をした、金色に輝く刃。その輝きが放つ尋常でない魔力に、知らずのうちに後ずさる。これが、評価規格外の中の評価規格外、EX++の宝具の神秘!)
セイバー「我が宝剣の力を!」
凜「きゃっ!」
凜(素振りだけでものすごい衝撃波が周囲を荒れ狂い、思わず目をかばう。そして再び目を開けた時には、少なくとも50はいた怪物たちが一匹残らず吹き飛んでいた)
凜「これが、サーヴァントの力……」
凜(いくら雑魚ばかりとはいえ、あれだけの数を一撃で一掃する。それも、本気の一割も出すことなく。英霊の規格外ぶりを、改めて実感したわ)
男子生徒A「キキキキキ……大したもんだ」
凜「!? 嘘、まだ生徒が残ってたの!?」
男子生徒A「おっと、ウワー、ヘンナバケモノト、ガクエンノアイドルガタタカッテタゾ」
男子生徒B「ビックリシタナ」
男子生徒C「アノマルイノナンダロウ?」
男子生徒D「ナンカアヤシイナ」
男子生徒E「モシカシテ、トオサカモアイツラノドウルイナノカ?」
凜「……いや、明らかに何も知らない一般人じゃいわね。それとも、操られてるのかしら」
セイバー「恐らく、前者だろうな。私と同じ霊体の気配を感じる」
偽男子生徒A「キキキキキ……流石は最優と呼ばれるセイバーとそのマスター。このカンペキな普通の学生の演技をあっさり見抜くとは」
凜(あれで完璧なつもりだったんだ……つっこむ気にもならないわね)
凜「あの怪物たち、貴方たちの仕業?」
偽男子生徒A「キキキキキ、さあな、もしそうだとしても言うわけないだろ? 守秘義務をしっかり守り、余計な情報は与えない。これが上司に気に入られるヒケツ!」
凜(なんなの、このバカ……)
セイバー「それで? 余計な情報を与えるような会話はしないというのなら、お前は何をしに来たのだ」
偽男子生徒A「キキキキキ……まあ、本当は一般生徒に聖杯戦争の現場を見られ狼狽し、一般生徒だからと油断して隠ぺいを図ろうと近づいてきたセイバーのマスターを潰すという計画だったのだが」
凜「せこい……」
偽男子生徒A「こうなっては仕方がない。本当の姿をお見せするとしよう。合体だ!」
凜(? 一番しゃべってたやつの周りを、他の4人が回りだして、って、なんかどんどん早くなってる?)
凜「きゃっ」
凜(と思ったら、いきなり眩しく光って1人にくっついた。そしてどうなったかっていうと)
凜「……なにこれ」
凜(出来上がった珍妙な姿に、思わず率直な感想を漏らす)
凜(身長は3メートル以上あるだろうか。手足と胴体は鉄パイプくらいの太さで、腰回りは鉄製のカボチャズボンみたいな感じ。身に着けているのは赤いグローブとマント、それに手に持っている身長と同じくらいの槍。そして赤いカイゼル髭を生やした頭部は槍の穂先のようになっていて、鉄製のちょんまげのみたいなものが後頭部から伸びている。いや、本当になにこれ……)
セイバー「この魔力、どうやらサーヴァントらしいな」
凜「ええ、認めたくないけど、そうみたいね。確かに変身したら、威圧感が格段に増したわ」
凜(こんなヘンテコなバカが英霊だとは信じがたいけど……というか、聖杯戦争に参加してから、敵にしろ味方にしろ人間の姿した関係者を見たことないってどういうことよ!?)
凜「クラスは、まずランサーでしょうね。なんかもう自分自身が槍みたいな感じだし」
セイバー「確かに……私も己の剣とは一如であるつもりだが、ここまで見るからに自分自身が武器そのものという奴も珍しいであろうな」
ランサー「キキキキ、どうした? オレの真の姿に恐れをなしたか?」
セイバー「まさか。ところで、正体を明かした以上は、私たちと戦うということでいいのだな?」
ランサー「当然。マスターからの命令は様子見程度だったが、命令だけを鵜呑みにせずより大きな戦果をあげてご機嫌取りしなきゃ、出世はできないからな」
凜「サーヴァントがどんな出世するっていうのよ。セイバー!」
セイバー「わかっている。先の戦いでは見せきれなかったが、今度こそ私の真価をお見せしよう」
ランサー「キキキ……いいだろう。このカジオー軍団の一人、ヤリドヴィッヒ様が相手になってやるぞ!」
セイバー「私は銀河戦士団メタナイト卿、いざ勝負!」
凜「って、二人して堂々と真名を名乗るな!」
凜(どっちも聞いたことないけど!)
▼ステータス情報が更新されました▼
CLASS ランサー
マスター
真名 ヤリドヴィッヒ
属性 秩序・悪
筋力 C
耐久 B
敏捷 A
魔力 A+
幸運 E
宝具 B
クラス別能力
対魔力:B 二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりんな魔術は防げない。
保有スキル
出世根性:A 出世に対する意欲。出世の関わる場面では能力に補正がかかる。
魔力放出:B 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
宝具
【出世を目指して一番槍(ヤリドヴィッヒ)】
己自身が一つの宝具。元々が命を持った武器であるために、英霊の肉体が宝具になったというよりも宝具自体に英霊としての側面があるという奇妙な英霊。全身が鋼鉄製であり、英霊の域に達している鋼は並大抵の武器では傷つかず、生半可な防御は打ち砕けるため、筋力と耐久にステータス値以上の補正をかける。
今回はここまでです。士郎の魔術属性が剣ではなく火になっていることやイリヤが無表情な理由はおいおい本編で明かしていきます。
>>30の誤字修正版です
▼ステータス情報が更新されました▼
CLASS ランサー
マスター
真名 ヤリドヴィッヒ
属性 秩序・悪
筋力 C
耐久 B
敏捷 A
魔力 A+
幸運 E
宝具 B
クラス別能力
対魔力:B 二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
保有スキル
出世根性:A 出世に対する意欲。出世の関わる場面では能力に補正がかかる。
魔力放出:B 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
宝具
【出世を目指して一番槍(ヤリドヴィッヒ)】
己自身が一つの宝具。元々が命を持った武器であるために、英霊の肉体が宝具になったというよりも宝具自体に英霊としての側面があるという奇妙な英霊。全身が鋼鉄製であり、英霊の域に達している鋼は並大抵の武器では傷つかず、生半可な防御は打ち砕けるため、筋力と耐久にステータス値以上の補正をかける。
たびたびあれですが、上のヤリドヴィッヒの宝具ランクを追記
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
待ってるよー
>>33
ありがとうございます。
忙しさにかまけて1か月以上放置してしまい申し訳ないです。ひさびさに投稿します。
ランサー「じゃあ、さっそくいくぞ!」
凜「っ!? この魔力の高まり、まさかいきなり宝具!?」
セイバー「マスター、下がれ!」
ランサー「【水も弾ける(すいじょうき)】……」
セイバー「くっ、マスター!」
凜「えっセイバー!?」
凜(マントが、コウモリみたいな翼に?)
セイバー「はっ!」
ランサー「【出世魂(ばくはつ)】!」
凜(抱えられたと思ったら、一気に飛び上がられた。そう思ったら、背後からものすごい爆発音と熱風が巻き起こる)
ランサー「キキキキキ! オレの【水も弾ける出世魂(すいじょうきばくはつ)】をよけきった奴は初めて見たぜ! 流石は最優って触れ込みなだけあるなセイバー!」
凜「なっ」
凜(爆発の痕がクレーターになってる……直径10メートルちょっとってところか。爆風の熱気からいって、セイバーにかばわれなかったら危なかったわね)
セイバー「開始早々に宝具を使ってくるとは、無茶苦茶な奴だな」
凜(セイバーの言葉に、思わず頷く。父の話では、宝具とはサーヴァントが英雄であった頃に愛用した武器や防具、能力であり、文字通り奥の手として扱われるもの。宝具の「真名」とサーヴァント自身の魔力、その2つを以って伝説上の威力を再現するのが宝具の本領であり、サーヴァントにとって唯一無二の頼みのはず。それをこんなあっさり使うなんて)
ランサー「あいにく、戦いにはまず真っ先にこいつを叩き込んでやるのが俺の流儀なんだよ」
凜「開幕でいきなりあんな大技を使うって、どんな流儀よ」
凜(呆れながらも、セイバーに降ろされて着地する。それにしても、こいつよく人を横抱き出来るわね、この短い腕で)
セイバー「マスター、もっと下がっていてくれ。あのランサー、広範囲への攻撃が可能なようだ」
凜「ええ。おまけにやることなすこと無茶苦茶だし……悪いけれど、戦闘はあなたに任せるわ」
セイバー「わかっているさ。先程私の力を見せろと言われたばかりなのだからな。それに、あのような大味な技、これ以上使わせる隙を与えはしない」
ランサー「言ってくれるな、だったらここからは武器で勝負だ!」
凜「げっ」
凜(頭をもぎ取ったらと思ったら、槍にくっつけて穂先にした。どこまでへんてこなのよ、あのランサー)
セイバー「望むところだ、今度はこちらから行くぞ!」
ランサー「おっと!」
セイバー「ハアアァァッ!」
ランサー「ウララララッ!」
凜(突っ込んでいったセイバーの振り下ろしの一撃を、ランサーが槍の柄で防御。槍を振り回しての牽制をくぐって間合いを詰めるセイバーを足で迎撃。その蹴りを剣の腹で受け止めながら、蹴りの衝撃に逆らわずそのまま勢いに乗るようにして後退。間合いが開いた途端に繰り出してきたランサーの連続の突きを、セイバーが剣で防御)
凜(私の目で解るのはそこまでか。流石は英霊同士の闘い。速すぎて強化した視力でも追いきれない)
凜(だけど、分があるのはセイバーみたいね。ランサーは最速のクラスだけど、知名度補正の差なのかステータス上はセイバーの方が上だもの)
ランサー「くっ、やるなメタナイトとやら」
セイバー「そういうお前はその程度か、ヤリドヴィッヒとやら」
ランサー「なんだとっ! キキキキ、だがお前のその短いリーチじゃまともに攻撃を入れられないだろう。長期戦なら間合いの広いオレの方が有利だ!」
凜(押されてる負け惜しみ、ってわけでもなさそうね。セイバーの剣は、せいぜい刃渡り30センチあるかないか。人間が持てば長目のナイフくらいのリーチしかない。その上セイバー自身の手足が短いから、下手したら素手の私より間合いは短いかも。幾らEX++の規格外宝具といっても、白兵戦をするには不向きに見えるのは確かだわ)
セイバー「それはどうかな?」
凜(だけど、英霊であるセイバーがそれをわかっていないはずがない)
セイバー「確かに、普通に剣を振るうだけならばお前に刃を触れさせることは難しい。だが、剣身一如となれば、届かぬ距離も刃は届く」
ランサー「なにを?」
セイバー「疑うならば、教えてやろう」
凜(! セイバーの構えが変わった……それにこの魔力の高まり、セイバーも宝具を使うつもり?)
セイバー「剣という硬い武器も、使いようでは」
凜(大気中のマナが、そしてセイバーの魔力が、セイバーの剣に吸い込まれていく……いえ、セイバーと剣の持つ魔力が、一体化していく?)
セイバー「風になるのだ!」
ランサー「……キキキキ、面白い。どうせ元々様子見を命じられていたんだ、貴様の手の内、見せてもらうぞ!」
凜(強気を装っているけど、セイバーの放つ一撃の強大さが解るのかランサーの声には余裕はない。間違いなく、あれが放たれればセイバーが勝つ!)
セイバー「【剣に宿りし(ソード)】……」
凜(そう考え、油断していたのが悪かったのかもしれない)
セイバー「むっ!?」
ランサー「誰だっ!」
凜(この場を見ていた、第三者の存在を見逃してしまっていたのは)
???「っ!」
ランサー「待て!」
凜(飛び出していくランサーの方へ顔を向けると、走り去っていく足音と一緒に男子の学生服を着た後ろ姿が見えた)
凜「生徒!? まだ学校に残ってたの!?」
セイバー「いかん! ランサーは恐らく目撃者を殺すつもりだぞ!」
凜「っ!」
凜(そう、目撃者は殺すのが魔術師のルール。それが嫌だから目撃者を出さずにやってきたっていうのに、なんて間抜け!)
凜「セイバー! ランサーを追っ……」
ゴーマ「LGWAAAAAA!」
凜「っ、またキャスターの手下!?」
凜(高さ3メートル、横9メートルくらいありそうな、盾を構えた1つ目のカニみたいな化け物……こんな時に!)
凜「邪魔だ、このおっ! Anfang(セット)――――!」
ゴーマ「JAW!」
凜「なっ、魔術が弾かれた!?」
凜(今のはガンドとは桁違いの攻撃力を持つ宝石を使った魔術、それを弾くだなんて……いくらしたと思ってるのよそのファイアーオパール!)
セイバー「マスター、下がれ! その怪物、先程の雑魚たちとは格が違う!」
凜「くっ!」
凜(確かに、この化け物は低く見積もっても幻獣クラス、真正面からじゃ現代の魔術師がやりあうのは荷が重い……こんな奴まで生み出せるなんて、これがキャスターの真の狙いってわけ?)
凜(セイバーならこの化け物を倒せるだろうけど、その間に間違いなくさっきの生徒はランサーに殺される。だけど、わたしが追いかけたところでランサーに太刀打ちできるはずもない)
凜(つまり、結論としてわたしがあの目撃者に対してできることはないということ。あの目撃者は、今頃ランサーに殺されているだろうということ)
凜(そうやって冷静に分析している自分の冷徹さが、現状に対しなにもできない自分の無力さが、そしてこんなことになってしまった自分のうかつさが、今は呪わしかった)
ゴーマ「GYSHAAAA!」
セイバー「くっ、ビーム光線か。悪くない威力だが、その盾! 明らかに眼を守るためのものだろう!」
ゴーマ「GLL」
セイバー「ならば、その眼に受けてみるがいい! 返礼として、こちらのビームを見せてやろう!」
凜(この魔力の高まり、さっき使いそこなった宝具!?)
セイバー「【剣に宿りし魂の一閃(ソードビーム)】!」
ゴーマ「GYAAAAAAAAAAN!」
凜(セイバーの振った剣の軌跡が、三日月状の光の刃になって化け物ガニの眼を切り裂いた!)
ゴーマ「GLL……GWAW!」
セイバー「むっ! ……逃げたか」
凜「逃げたって、どこに行ったか分かる?」
セイバー「いや、アーチャーやキャスターならまだしも、私は白兵戦専門のセイバーだからな。索敵能力は高くない」
凜「そう……って、のんびりしてる場合じゃないわ! セイバー、ランサーを追うわよ!」
セイバー「了解だが、マスター……言いにくいが、恐らく」
凜「ええ、解ってるわ」
凜(ほぼ確実に、あの生徒はもう死んでいる。あのランサーのアホさ加減からして逃げ切れた可能性は否定しきれないけれど、仮にも英霊相手にそんな幸運がありえる可能性が低いのも事実)
凜(だとしても、その現実は直視しなければ。それは他でもない、私の責任なのだから)
――穂群原学園 廊下――
凜「……どういうこと?」
凜(目の前の惨状に、疑念の声が零れる)
凜(わたしの視界に移っているのは、点々とした鮮血の跡と、黒焦げになった床と壁……それだけだった)
凜(目撃者の遺体らしきものは、どこにもない)
セイバー「もしや、ランサーが目撃者を連れ去ったのか?」
凜「いいえ、そのつもりがあるんだったら、こんな廊下を黒焦げにするほどの炎を使うのは変だわ。それに、あのランサーなら槍で一突きすればただの学生なんて簡単に殺せたはず、わざわざ無駄に痕跡を残すような真似はしないはず」
凜(セイバーには押されていたといっても、それはあくまでセイバーが強いから。人間の目から見れば、ランサーは途轍もなく強大な怪物なのだから)
セイバー「では」
凜「目撃者の方が、周りを焦がすほどの炎を使ってランサーから逃げ延びた、と考えるべきなんでしょうね」
凜(モグリの魔術師か、それとも突然変異の超能力持ちか、どっちにしてもセカンドオーナーと同じ学校に堂々と通っていただなんて、いい度胸じゃない……!)
凜「とりあえず、使い魔に探させてみるわ。もしかしたら、そいつがキャスターのマスターかもしれない」
▼ステータス情報が更新されました▼
宝具 ランサー
【水も弾ける出世魂(すいじょうきばくはつ)】
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ1~25 最大補足:20人
名前の通り強力な水蒸気爆発を発生させる魔術。本来はそこまで強力な代物ではないのだが、ヤリドヴィッヒの高い魔力により必殺級の破壊力に高められている。
宝具 セイバー
【剣に宿りし魂の一閃(ソードビーム)】
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~40 最大補足:40人
エネルギーを剣に蓄積し、放出する技。魂を無心にすることで、エネルギーを体から放し手にする剣へと移す、限りある力を無限へと高める一撃。
今回はここまでです。次回は早めに投稿したい……
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