成歩堂「異議なし!!!」真犯人「え!?」 (32)
― ○月×日 午後3時28分 地方裁判所 第3法廷 ―
真犯人「……あいにくだが、オレは認めるつもりはないね」
成歩堂(ウソだろ……!? まだ粘るのかよ!)
真犯人「クックック……弁護士さん、あんたにオレを罰することはできないのさ」
真犯人「今から行う証言で、オレの無実をカンペキに証明してみせる!」
裁判長「……分かりました」
裁判長「弁護人、これが最後の証言となるでしょう」
裁判長「この証言に問題がなければ、この証人を真犯人として告発することはできません」
裁判長「よろしいですね?」
成歩堂「……分かりました」
成歩堂(“あんたにオレを罰することはできない”だって……?)
成歩堂(いや……ぼくはお前に“真犯人にとって最大の≪罰≫”を与えてみせる!)
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― 証言開始 ―
~ オレが犯人ではない理由 ~
真犯人「オレが犯人ではない理由を教えてやるよ」
真犯人「被害者のダイイングメッセージを覚えてるだろう?」
真犯人「ほら、あのビデオにも記録されてたやつさ」
真犯人「たしか“犯人は顔にキズがある男”だったよな?」
真犯人「だが、ごらんの通り、オレの顔にキズなんかない!」
真犯人「つまりオレが犯人じゃないことは明白なんだ!」
裁判長「……ふむう、なるほど」
裁判長「いかがですかな? 御剣検事」
御剣「証人のいうとおり、被害者は“犯人は顔にキズがある男”と言い残している」
御剣「これは映像としても記録されており、たしかな情報だ」
御剣「しかし、証人の顔にキズはない……」
御剣「このムジュンがある限り、証人を告発するのは難しいといわざるをえまい」
裁判長「おっしゃる通りです」
裁判長「では弁護人、尋問をお願いします」
成歩堂『異議なし!!!』
裁判長「……へ?」
御剣「……ム?」
真宵「え……?」
裁判長「すみません、弁護人……“異議なし”とはどういうことでしょう?」
成歩堂「そのままの意味です」
成歩堂「弁護側は、今の証言を全面的に認めます」
成歩堂「よって……尋問はしません!」
真犯人「え!?」
裁判長「それはつまり、この証人は犯人ではないと認めるということですよ?」
裁判長「よろしいんですね?」
成歩堂「はい、ぼくの依頼人である被告人の無罪は今の時点で証明されてますし」
成歩堂「彼の証言にも問題がない以上、もう裁判は閉廷すべきであると主張します」
『待った!!!』
成歩堂「!」
真宵「!」
御剣「!」
裁判長「!」
裁判長「なぜあなたが……“待った”を?」
真犯人「ま、待ってくれ……」
真犯人「ここで裁判が終わったら……」
真犯人「オレがせっかく用意してきた面白モーションはどうなる?」
真犯人「正式名称は≪ブレイクモーション≫とかいうらしいが……」
真犯人「犯人最大の見せ場である発狂シーンはどうなっちまうんだよ!?」
裁判長「なんなんですか、いきなり。ブレイクだの発狂だの、わけの分からないことを」
御剣「キサマが犯人ではない以上、当然……≪お蔵入り≫ということになるだろうな」
真犯人「そ、そんなっ!?」
真犯人「待ってくれ!」
真犯人「おい弁護人、異議を唱えてくれ!」
真犯人「あんた、オレが最新式特殊メイクの達人だっていう証拠持ってんだろ!?」
真犯人「メイクでキズを隠してるってこと知ってんだろ!?」
真犯人「んで、そのキズに決定的証拠があるかもしれない、って感づいてるんだろ!?」
真犯人「それをさっき話した証言につきつけてくれよ! さあ早く!」
成歩堂「いや……そんな証拠持ってませんけど(持ってるけど)」
真犯人「なんだってぇ!?」
真犯人「ま……待てよ! あんたは絶対持ってるはずだ!」
真犯人「出せる証拠あるのに、わざと出さないのは問題になるって聞いたことあるぞ!」
真犯人「それに、あんたは≪真実≫を追い求める弁護士なんだろう!?」
真犯人「だったら、早く真実を追求しろよ!」
成歩堂「まあ、たまには路線を変えてみることも必要かなって」
裁判長「もっともな主張ですな。私も裁判中コロコロ意見を変えることで有名ですし」
御剣「うむ、たまには寄り道もいいものだ。トノサマンは外伝も出来がいいからな」
真宵「寄り道して食べるミソラーメンがまた、おいしいんだよねー」
成歩堂(真宵ちゃんの場合、ラーメンを食べるルートが正規ルートな気がする)
真犯人「こんなバカな……ッ!」
裁判長「では、そろそろ閉廷しましょうか」
真犯人『待った!!!』
裁判長「なんですかな?」
真犯人「自白します! オレは犯人なんだ! オレがあいつを殺したんだ!」
真犯人「だから……だから! ブレイクモーションをやらせて下さい! お願いします!」
裁判長「そういわれても……あなたは無実なんですから」
御剣「検察側としても、彼は事件と無関係と考える」
真犯人「いやいやいやいやいや! オレ、犯人ですから!」
真犯人「こうなったら……強引にブレイクしてやる! 発狂してやるぅ!」
真犯人「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
裁判長「あ、ダメですよ、それはルール違反です」
裁判長「係官、証人を取り押さえて、法廷から連れ出しなさい!」
真犯人「や、やめろっ! はなせっ! オレは犯人なんだ!」
真犯人「弁護士さん、オレの証言に異議ありしてくれっ!」
真犯人「ブレイクモーションを披露させてくれえええええええええええええええええ!」
バタンッ……
成歩堂(終わった……)
……
……
裁判長「……やれやれ、騒がしい証人でしたな」
裁判長「では、被告人に判決を言い渡します」
無 罪
ワーワー……! ピーピー……!
裁判長「この事件の犯人は見つかりませんでしたが、それはまあしょうがないでしょう」
御剣「しょうがないな」
真宵「しょうがないよね、なるほどくん!」
成歩堂「うん……こういうこともあるさ!」
裁判長「本日はこれにて閉廷!」カンッ
― ○月×日 午後4時18分 地方裁判所 第3控え室 ―
依頼人「私の無罪を証明していただいて、ありがとうございました!」
成歩堂「いえいえ、当然のことをしたまでですよ」
真宵「よかったですね!」
依頼人「それに真犯人であるあいつが、無罪になって法廷から引きずり出されるところ……」
依頼人「とてもスカッとしました!」
真宵「下手にタイホされるより、被害者の人も喜んでるよ、きっと」
成歩堂「今回の犯人は本当に許せない人物だったんでね」
成歩堂「ぼくの主義を曲げてでも、彼に最大の≪罰≫を与えさせてもらったよ」
成歩堂「あの真犯人はもう……立ち直ることはできないだろう」
真宵「なんたって、最大の見せ場を奪われちゃったんだもんね」
その後、法廷から追い出された真犯人は――
真犯人「異議ありして……」
真犯人「異議ありしてよぉ……」
真犯人「異議ありしてくれよぉぉ……」
空気の抜けた風船のようになって、今も町をさまよい歩いている……。
おわり
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