真夏のサンタクロース (6)
今夜は7月に珍しく涼しい夜だった。窓から入る風もとても心地がよかった。
だからだろう。らしくも無いことを思いつき行動に移したのは。
さくら 「あれ、純一君でかけるの?」
アイシア「買い物ですか純一?」
純一 「いや、ただの散歩だよ。」
アイシア「じゃあわたしもついていっていいですか?」
さくら 「あ、ぼくもぼくも!」
純一 「いいけど。テレビ良いのか?」
アイシア「あんまり面白いのやってませんし。
それにその言い方だとまるで私がテレビにかじりついてるみたいじゃないですか」
純一 「いやいや気にしすぎだぞ。アイシア嬢」
アイシア「むうぅぅ・」
さくら 「まぁまぁアイシア。ほら早く出かける用意しよう?純一君先にいっちゃうよ。」
純一 「外でて待ってるからな?40秒で支度しろよ」
アイシア「早すぎですよ!待っててくださいよ」
騒ぐアイシアやさくらを尻目に一人玄関へ向かう。
バタッ。外に出てみるとやっぱり涼くて、てすりに手を掛けて外を眺めてみる。
家々からこぼれる灯り、点在する電柱の明かり、それらが島の海岸線を形作り
夜の帳に初音島を浮かび上がらせる。
さて、あの二人はあと何分で出てくるやら。三日月に問いかけて答えを待ってみる。
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アイシア「で、さくら公園にでも行くんですか?純一」
純一 「今からそこ行くのはちょっと遠いだろ。特に行き先は決めてなかったよ。」
アイシア「珍しいですね。出不精の純一が理由も無く散歩とか言い出すの。」
さくら 「あはは、そうだよね。純一君らしくないかもね。でもまぁ健康のためにはいいことだよ。」
純一 「・・・・」
返す言葉が無いとはこのことだ。日ごろの行いの賜物か。いや最近はそうでもない筈・・・昔の印象がそうさせるのか
だけど、アイシアとさくら二人相手に言い返すのも面倒だ。きっと一言言い返せば3倍くらいになって帰ってくる。しかもステレオで
徒労に終わるだろう反論も、さっき自販機で買った紅茶で飲み込んでしまう。
どうでも良いがこの紅茶昔より甘くなった気がする。なんとなく紅茶の成分記載欄を見ていると
さくら 「どうしかした?純一君」
緑茶のペットボトルに口をつけながら、さくらが聞いてくる。
純一 「甘いなと思っただけだよ」
さくら 「紅茶甘すぎるの?ぼくのと交換する?」
純一 「いや良いよ。これくらい甘いほうがいい。」
「じゃあわたしのと・・」とでも言おうとしたんだろうアイシアは、俺と同じやつを買ったことを思い出したのか何も言わなかった。
アイシア「あま~い」
自分も飲んでみて、アイシアはこの紅茶よりも甘ったるい笑顔を見せながらこちらの意見に同意してくる。
アイシア「で、さくら公園にでも行くんですか。純一?」
純一 「この時間にそこまで行くのは遠いだろ。どこに行こうとは決めて無かったよ。」
アイシア「珍しいですね。純一が理由も無く散歩とか言い出すなんて。」
さくら 「あはは。そうだよね純一君らしくはないかもね。でもまぁ健康のためにはいいことだよ。」
純一 「・・・・」
返す言葉がないとはこのことだ。日ごろの行いの賜物か。いや・・最近はそうでもない筈。昔の印象のせいか
アイシアとさくら二人相手に言い返したところで、3倍くらいになってかえってくるだろう。しかもステレオで
二人への反論も、さっき自販機で買った紅茶で飲み込んでしまう。
どうでも良いがこの紅茶昔より甘くなった気がする。なんとなく成分記載表を見ていると
さくら 「どうしたの?純一君」
緑茶のペットボトルに口をつけながらさくらが聞いてくる。
純一 「いや甘いなぁって」
さくら 「甘すぎるの?ぼくのと交換する」
純一 「大丈夫だよ。甘すぎるくらいで丁度いい」
「じゃあ、わたしのと・・」とでも言おうとしたのだろうアイシアは、俺と同じものを買ったのを思い出したのか何も言わなかった。
アイシア「あま~い」
自分も飲んでみてアイシアは紅茶よりも甘い笑顔を浮かべながら俺の意見に同意する。
アイシア「う~ん。いい風ですね。いつもこれくらいなら過ごしやすいんですけどね。」
純一 「同感だ。日本の夏は暑すぎる。」
さくら 「でも、暑くない夏なんて情緒がないよ。」
純一 「その情緒のために日本中で多くの電気代がかかってる。」
アイシア「純一は面倒くさがりの癖に理屈っぽいのがダメですね」
さくら 「ダメだよね。もっと素直な気持ちで夏を愛すべきだよ。純一君。」
ほら見ろ。一言言っただけなのに二言三言になって返ってきた。しかもなぜか同意した筈のアイシアにまで言い返された。納得がいかん。
そんなことを言い合いながら3人夜の島をぶらつく。真っ暗な海を見れば漁船の灯りだろう光がぽつぽつ点在していてまるで空に浮かぶ星を思わせた。
あそこで何かの漁をしているのだろう。当たり前だがその光の下には船があり”誰か”がいる。星の光は・・少し違う。
今見ている光も、気が遠くなうような遠い過去の光であり、もしかしたらもうその星はないのかもしれない。
もしかしたら人がいなくなっても変わらずに一万年、十万年と輝き続けるのかもしれない。
と、センチなことを少し考えていたがふと最近考えていたことを思い出した。
純一 「なぁ、また今度どこか皆を誘って旅行にいくか? もうすぐ学生たちも夏休みだろ」
アイシア「良いですね。私またキャンプに行きたいです。キャンプにバーベキュー!」
さくら 「うんうん。ぼくも賛成。なら皆に連絡取らないとね。予定ある人もいると思うし。」
純一 「そうだな。清隆たちならある程度都合は利くと思うけど。さくら頼めるか?」
さくら 「了解っす。義之君たちにはどうしようか。」
純一 「俺から義之君に聞いてみるよ。今年は音姫もいけると思うし。」
アイシア「皆でいけると良いな~。楽しみです。」
月日は決して待ってはくれない。人はただ流れる時の中で生きるしかない。望む結果になろうと不本意な結果になろうと。
だから大切な人の側に居続けることが出来たのなら上々なのだろう。たくさんの良い思い出を作り共有し、未来を紡ぎ続ける。
どうしようもなくかったるいことだけどその努力はし続けようと思う。それで目の前の人たちの笑顔が見られれば充分。
それは、・・それがおれが移ろう時の中で一人長く長く歩いて得た真実だった。
「あつい・・・」
ザァア、ザァア・・・・と、潮騒が心地よく純一の耳に届く。
寄せては返す波音を聞いているだけで涼しく感じられる・・・わけがなかった。
照りつける真夏の陽光の下、純一は呟いた。
純一 「いくつになっても、暑いものは暑いんだよなぁ。はぁ」
アイシア 「純一もそんなとこに座ってないで一緒に遊びましょうよ。」
さくら 「そうだよ。純一君もおいでよ。」
波打ち際で、足まで海に浸けて遊ぶ二人の少女は暑そうにしている純一を誘う。
ワンピースの裾を軽く持ち上げなら、月の色と星の色をした髪を持つ少女たちは純一をみて苦笑する。
さくら 「暑くないの?純一君。」
純一 「いや暑いな。今すぐ帰りたいくらいだ。」
さくら 「だから、純一君も水浴びしようって言ってるでしょ?」
アイシア 「気持ち良いですよ?」
純一 「年寄りには少しの水浴びもしんどいんだよ。」
アイシア 「年寄りって。純一今は若いんだから大丈夫でしょ。」
さくら 「純一君、時々おじいちゃんみたいなこと言うよね。気持ちが空回りって言うか。」
純一 「なんか違うだろ。それだと」
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