ニセコイ ~もう一つの結末~ (19)

ある日、凡矢理市内の集英組にて……


俺の名は一条楽。
本年度から凡矢理市役所に勤める事になった どこにでもいる普通の新米公務員____のはずだった。


楽「よし、メシ出来たぞてめぇら~」

竜「あっ!お早うごぜぇやす坊ちゃん!!」

楽「おいおい一体誰が坊ちゃんだ?」

竜「あ!いけねぇ!すいませんいつもクセで…二代目!!」


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そう、俺はこの集英組を継いでしまったのだ。
あれだけ嫌がっていたにもかかわらず何故継いだのか、それを語ると長くなるが、俺はこの集英組の実態を知ってしまったのである。

話は変わるが、この凡矢理市は妊娠率が著しく低いのだ。
中高生の望まぬ妊娠が少ないと評価される反面、その妊娠率の低さが成人しているカップルや若い夫婦にまで及んでいることに問題がある。

凡矢理市にはある変わった裏の条例がある。それは____性行為時のコンドームの使用の絶対義務化である。たとえ子作りが目的である性行為であっても、コンドームを正しく使用することが絶対に義務付けられているのだ。これに違反した場合、凡矢理市内の病院で医療行為を受けた場合保険が適用されなくなり、支払う税金も通常の1.5倍となり、さらに生活保護受給の対象外となる。
男性は初めて夢精または射精を迎えた場合、女性は初めて生理が始まってから必ず役所に届けなければならず、届出を出さなかった場合厳しく罰せられてしまうのだ。

組員A「うんんめぇぇー!!さすが坊ちゃんだー!!」

組員B「バカ!二代目だろ!!」

竜「おうおめぇら、しっかり食えよーー!」


この裏政策の影響から、凡矢理市内では中絶手術が行われておらず、産婦人科も休業状態となっているのだ。
それどころか凡矢理市内ではこの数年間で新しく子供が生まれておらず、女性の妊娠例すらなくなっていたのだ。

気づけば、凡矢理市からは子供たちの元気な声はおろか、新しい産声すら聞こえなかったのだ。
振り返ると、俺は高校時代千棘や小野寺といった魅力的な女子達に囲まれていたというのに、性行為とは無縁な高校生活を送っていたのだ。さらに、俺たちが三年の時、一年生の数が極端に少なかったのを思い出す。

そして、俺が組を継いだ理由だが____俺は知ってしまったのだ。凡矢理市から子供達の無邪気な声を消し去ってしまった元凶を。

それは____この集英組だったのだ。

集英組の正体、それはこの街を裏から支配していたヤクザ以上に危険な思想集団だったのだ。
集英組と凡矢理市役所は内通しており、集英組はヤクザの体を装い裏でコンドームを製造し凡矢理市内へ流していた。凡矢理市内で販売されているコンドームのほとんどが集英組製のものだったのだ。

俺たちの街をこんなことにしていたのが俺の実家であったと知り、さらに市役所もそれに協力していたと知って、俺は気付けば辞表を出していた。

俺が組を継いだのは、そんな集英組を監視するためだ。もう親父の代とは違う。俺が組長である。
だから俺は、組の連中の面倒を見るという名目でこいつらを監視することにした。


竜「くうぅぅぅ~~~!! 二代目が立派になられて、天国の先代が泣いてやすぜ!」

楽「……そう……だな」


先代、つまり親父だか既にこの世にいない。
俺が二代目を襲名して間もなく、親父は海外にいるお袋と久しぶりにバカンスを楽しみたいと言い出したのだ。
老夫婦といえど久しく会わない男女がする行為といえば決まっている。だから俺は、親父の荷物の中に毒を塗ったコンドームを入れておいたのだ。
親父とお袋の死は旅行先の現地メディアでも報道され、コンドームに細工をしたこともあり性行為時の不慮の事故と伝えられた。

そういや、ビーハイブでも俺が二代目を継ぐタイミングで千棘の親父さんがなんか亡くなったらしい。んで、今はあのメガネ……クロードがボスをしているようだ。

楽「さて、そろそろ出掛けるか」

組員「おや、二代目どちらへ?」

竜「ばっきゃろーー! 今日は大切な用事が」

組員「あ、そうでしたね」

楽「留守番頼むぞ」

竜「わかりやした!」

ちなみに、他の奴らがどうなったかというと……。

まず集だが、あいつももうこの世にはいない。集は教師になっていたのだが、赴任先の学校で青いツナギを着た良い男に無理矢理こいつのトイレに連れ込まれて直腸に棒状のものを突き刺され、その時の出血多量によるショック死で亡くなった。
集の恋人であった宮本だが、この事件をきっかけに翻訳家から小説家に転身。男性同士の禁断の愛をテーマとした官能小説を書くもイマイチ売れず、敷居が低そうとエロノベル作家になるも腐女子から心ないバッシングを受け、心身を病んで帰らぬ人となったのだ。

春ちゃんは和菓子屋おのでらを継ぐが、不況の煽りを受けて店は閉店。金を稼ぐために両親の反対を押し切って風俗嬢を転身するも、勤務する店が暴力団関係者との紛争に巻き込まれ命を落とした。
春ちゃんの友達だった風ちゃんは風俗雑記の記者をしていて、春ちゃんの取材のためにその場に居合わせていたが不運にもその紛争に巻き込まれたのだ。

あとポーラだが、大学院に進んだのだがなんか死んだらしい。

そして、羽姉ちゃんだが、日本に向かうため飛行機に乗っていたがその飛行機がバスジャックに遭ってしまい墜落し、命を落とした。

鶫はひどいもので、日本に向かうため現地の空港に向かう車の中でうんこを漏らしてしまい、運転手にそのことを笑われたのがきっかけで口論となり、運転手が無茶苦茶な運転をした結果前方を走る大型車と激突し爆炎に飲まれてこの世から消えた。

橘は確か、千葉県の人とお見合いをしていた席で、そのお見合いの会場となっていた料亭で大規模な火災が起こり死亡したという。本田さんもそれに巻き込まれたみたいだ。

そして____小野寺だが、彼女とは高校卒業後連絡を取っていない。
小野寺は高校卒業と同時に姿を消し、音信不通の状態である。千棘との結婚式の招待状を出そうにも今どこにいるのか、消息すらわからないのだ。


だが、俺にはもう小野寺という存在すらどうでもいいのかもしれない。

なぜなら___

千棘「遅い!5分遅刻よ!…久しぶり」

楽「…おう…」

千棘「前に会ったのって何か月前だっけ?」

楽「確か半年以上前だな。お前が忙し過ぎんだよ」

千棘「何よ!あんただって試験とか就職とかで相手してくれなかったクセに…!」

楽「あーあーそれはまぁ…そうだな。それにしてもまさかお前が世界で活躍するファッションデザイナーになるとはなぁ」

千棘「何よ、意外?」

楽「意外っちゅーかなんちゅーか、確かに昔つぐみ相手に色々やってはいたけど、少しはゆっくり出来んのか?」

千棘「あんまり。明後日には戻らないといけないから」

楽「まるっきり華さんみたいな生活してんな」

千棘「結婚したら一緒に住めるんだからもう少しの我慢よ!だからほら、急がないと……例のアレ持ってきた?」

楽「おう」


楽?千棘「ザクシャインラブ!」


____そうだ。俺にはかけがえのない人がいるんだ。

千棘という、かけがえのない人が。



楽「愛してるぞ……千棘///」

千棘「私もよ、楽///」

楽「なぜか俺らの周りの友達はみんないなくなっちまったけど……俺にはもう、千棘しかいねえ……いや、千棘がいるんだ!」

千棘「楽……ううん、私たちはもう二人だけじゃないよ」

楽「えっ………」

千棘「たくさん欲しいな……楽との子供///」

楽「千棘………///」








???「そっか……また、コンドームを義務付けないとね………ズルいよ、千棘ちゃん………」




END

次回予告(今回の担当は小町!)

いぇーい!小町だよ!
お兄ちゃんの復讐が段々はげしくなってるねぇ~。でも、小町はお兄ちゃんを応援するのです!あ、今の小町的にポイントたかーい!
そんな事より次回予告!
お兄ちゃんの噂を聞きつけ、ついに動こうとした結衣さん!
彼女の口から出たのは謝罪では無く糾弾だった!
お兄ちゃんはそれに対して声を荒らげる!
次回!『断罪するバハムート』

お兄ちゃん、きっとお兄ちゃんを理解してくれる人は現れるよ!あ、いまの小町的にポイントたかーい!

あとがき

遂に文化祭実行委員会からのヘイトが霧散し始めました。そして、葉山を停学にしたのは、ご都合主義ということで理解してください。

あと、R-18にはしません。

書けないし。

ということで今回も読んでくださりありがとうございました!


次回予告!(今回の担当はシド!)

やぁ皆。
当分出ないからという理由で駆り出されちまった。

次回!
それぞれが抱いた思いが入り乱れ、彼等の運命は激しく絡み合う。
彼等はその時何を思うのか。

そして動き出した時は何処へ向かうのか!
次回
番外編『それぞれの思い、それぞれの後悔』

観てくれよな。



あとがき

八幡の噂が粗方片付きました。
由比ヶ浜への復讐はまだ続き、葉山は死ぬほうが楽だと思う程に地獄へたたき落とすつもりです。

今回も読んで下さってありがとうございました!

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