――事務所――
<がちゃ
高森藍子「ただい、ま戻り、ました~……」ヘロヘロ
北条加蓮「お帰りー藍子……藍子?」
藍子「あっ、加蓮ちゃんだ、えへっ……この部屋、涼しくて、いい、ですねぇ……」ベチョ
加蓮「…………」
藍子「…………」ベチョ
加蓮「…………」グニグニ
藍子「いたいですいたいです踏まないでくださいっ」
加蓮「…………とりあえずソファに運ぼ」ズルズル
藍子「引きずらないでぇ~…………」
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――まえがき――
レンアイカフェテラスシリーズ第27話です。今回は逆バージョン。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
~中略~
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「甚雨のカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「小雨のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「虹を見に行きましょう!」
加蓮「首には冷やしたタオル、脇の下と腿に保冷剤っと。ソファが濡れないようにタオルケットでも敷いて……ひとまずこんなところかな?」
藍子「はふぅ……冷たくて、気持ちいい……♪」
加蓮「はいスポドリ。口開けてー」
藍子「あー」
加蓮「とくとくとく……これでよし、っと」
藍子「ごくごく……ふうっ」
加蓮「大丈夫? ほんっとに大丈夫? ちょっとでも気分が悪くなったらすぐに言ってよ? ……フリじゃないよ? 本気で言ってるんだよ? ほんの少しでも我慢してたら許さないからね?」
藍子「そ、そんなに念押ししなくても大丈夫です。加蓮ちゃんのお陰で、だいぶ楽になりましたし……」
加蓮「ホ・ン・ト・に?」ギロ
藍子「本当ですってば~」
加蓮「藍子、変なところで我慢強いし、迷惑かけたくないとか寝言ばっかりだし」
藍子「寝言なんてひどいっ。それにそれは加蓮ちゃんには言われ――」
加蓮「知らない。普段はそれでいいけどアンタ熱中症になりかけてたんだよ? 熱中症は怖いんだよ? ホントに。どれくらいかって……ま、いいや」
藍子「……ど、どれくらいなんですか?」
加蓮「死ぬ」
藍子「そんなまた冗談――」
加蓮「冗談抜きで。そうだね……ほら、熱中症がヤバイって最近よく言うけどさ、昔はそんなに言われてなかったでしょ?」
加蓮「私が入院してた頃なんてさ……前はほら、馬鹿みたいな根性論とかぶっ倒れるまでやるとか、人の命ナメてんの? それならその元気を私に頂戴よ、って感じだったんだ」
藍子「加蓮ちゃん、言ってることが絶妙に怖いです」
加蓮「おっとっと。藍子があまりにも脳天気で頭お花畑なことになってるからつい」
藍子「さっきからひどいっ。私だって、熱中症の予防はちゃんとしてます! アイドルのお仕事の時だって、モバP(以下「P」)さんに何度も気をつけるようにって――」ズキッ
藍子「っ……いたいっ……」アタマオサエ
加蓮「分かった分かった。後でいくらでも聞いてあげるから今は大人しく静かにしてなさい」ナデナデ
藍子「はい……」
加蓮「昔さ、入院してた頃、マンガとかゲームとか雑誌とかイタズラとか色々やって飽きてきたことがあってさ」
藍子「イタズラって、ちっちゃい頃からそうだったんですか?」
加蓮「医者の困る顔を見るのがすっごい楽しくてー♪」
藍子「笑顔ですごいこと言ってる……」
加蓮「大丈夫、事務仕事だけ困る程度のイタズラしかしてないから。診察の妨害とかしてないから」
藍子「そういう問題じゃないような……」
加蓮「私だって毎日困ってたんだ。お前らも困れ、ってね」
藍子「えー」
加蓮「ま、そういう子でしたっと。そんな頃にさ、病院に来る患者を見て何の病気だろって想像して、ついでにいつ来なくなるかな? って予想してみるゲーム」
藍子「あはは、加蓮ちゃんって色々とすごいんですね」
加蓮「皮肉?」
藍子「ちょっぴり皮肉です。でもほとんど本心です。だから加蓮ちゃん、周りの皆さんをしっかり見ることができるんですね」
加蓮「無関係だとは思うけどねー。で熱中症で担ぎ込まれる人が結構いるんだ。今……の何倍くらいかな? 今が分かんないから分かんないけどさ」
加蓮「…………」
加蓮「狂乱してたり、悲しんだりする付き添いがいっぱいいた」
藍子「……? …………! それって――」
加蓮「……さ、つまんない昔話はこれくらいにしてもっと明るくなれる話をしよっか。藍子、何か食べる――って食欲なんてある訳ないっか。私もちょっとのんびりしていこっと。何かあったらすぐに言ってね?」
藍子「あ、はいっ」
加蓮「しばらくそこで横になっててよ? 体温、しっかり逃さなきゃ」
加蓮「クーラーも下げちゃお。推奨温度が28度って言ってたけど……26度、ううん、24度くらいにしちゃえっ」ピッピッ
藍子「……、……ふふっ、あとでPさんに怒られちゃいますよ?」
加蓮「藍子の為だって言っておけばPさん何も言わなくなるでしょ。……いや、藍子が熱中症になりかけたって言ったら何言い出すか分かんないなー」
加蓮「私がちょっと暑いって言うだけでスポドリとかタオルとか大量に渡してくるもん。普通に暑いだけなのに」
藍子「それはきっと、加蓮ちゃんだからですっ」
加蓮「私が貧弱だって言いたいのかー」
藍子「加蓮ちゃんがそれだけ愛されてるって言いたいんです」
加蓮「…………んな訳あるかー」
藍子「あ、加蓮ちゃん目を逸らした。ほらほらこっち向いてくださいっ。私も加蓮ちゃんのこと、愛してますから!」
加蓮「ごめん私はそっちの趣味ない。Pさんには……暑かったから設定温度を下げました、されたくなければここでいっぱい仕事して私を見張ってろ……よし、これで行こう」
藍子「Pさん、今でも働き詰めなのに……ちゃんとお休みしてるのかな……?」
加蓮「またどこかに誘ってみよっか」
藍子「少しこの辺りを歩いてみるだけでも、いい気分転換になれますよ、きっと」
加蓮「……アンタ、ついさっき何も考えないでてくてくしたから死にかけたこともう忘れたの?」
藍子「こ、今度はきっと大丈夫です」
加蓮「んー。いやでもさー、藍子って意外と頑固って言うか、素直なんだけど素直じゃないっていうか? 表向きは了承しておいてこっそり破るみたいな狡猾なところあるもんね?」
藍子「そんなことしませんっ」
加蓮「よし決めた。藍子。いい? 今から言うことをよーく聞くように」
藍子「は、はい。なんですか……加蓮ちゃん」ゴクッ
加蓮「…………」
藍子「…………」ドキドキ
加蓮「1ヶ月間お散歩禁止」
藍子「私を殺す気ですか!?」ガバッ
加蓮「そのままだとアンタ物理的に死んでたんだよ!?」
藍子「つ……次は大丈夫ですから! その、急に暑くなったからつい油断してただけで!」
加蓮「テレビであんだけ熱中症熱中症言っといて油断とかするモンなの!?」
藍子「今年はまだそんなに言われてないから大丈夫だって思っちゃったんです!」
加蓮「そういうのをアホって言うんでしょうが!」
藍子「ぅ~~~、い、嫌です。加蓮ちゃんのお願いでもそれは絶対嫌ですから!」
加蓮「じゃあ2ヶ月禁止ならいい?」
藍子「期間を短くってことじゃなくて――って短くなってないじゃないですか!?」
加蓮「ワガママだなー。それなら2ヶ月間1人でのお散歩禁止。行く時には必ずPさんに同伴してもらうこと。Pさんには私からお願いしておくから」
藍子「ふぇっ!? そ、それはええと…………そのぉ……」
加蓮「…………やっぱ強制的に病院に突っ込んどいた方がいいのかなぁこれ」
藍子「きゃーっ!? 嫌ですっ、それだけは嫌です!」
加蓮「それだけが多いなーもー」
藍子「加蓮ちゃんのお話を聞いてたら病院がとんでもないところみたいに見えて来ちゃうんです! 最近はあの建物がなんだか牢屋みたいに見えてきて……!」
加蓮「あ、あはは、そうなんだ。……あながち間違ってはいないのがなんとも……」
藍子「うぅ……加蓮ちゃん……」グス
加蓮「…………」
藍子「……その……許して、くれませんか……?」ウワメヅカイ
加蓮「……………………ちゃっかりあざとい頼み方を覚えないの」ビシ
藍子「いたいっ」
加蓮「はあっ」スワリナオス
加蓮「……さすがに本気で散歩禁止なんて言わないけどさ。気をつけてね? これでも最初のうちはトラウマだったんだから。集団で運ばれて来るところとか……」
藍子「……はい。気をつけますね、加蓮ちゃん」
加蓮「うん。……あ、あはは、いけないいけない。もうつまんない昔話は終わりだって言ったのにね。話題チェンジ話題チェンジ!」
藍子「そうですねっ。明るいお話をしましょう!」
――少し経って(藍子は再びソファに横になってます)――
藍子「それで、その雑貨屋さんでは傘の半額セールをやっていたんですっ。綺麗な傘がいっぱいあって、迷っちゃって……」
加蓮「梅雨の時の売れ残りかな。いーなー、私も買っとけばよかったかも」
藍子「次は加蓮ちゃんにも教えてあげますね。その時は、私の分と、お母さんの分、って考えていたら、事務所のみんなのことも想像しちゃってて……気がついたら私、3時間くらいそこで悩んじゃってましたっ」
加蓮「もーアンタ常に誰かと一緒にいるくらいでちょうどいいよ……」
藍子「や、やっぱりですか? 実はお父さんにも同じこと言われちゃって……心配されちゃいました」
藍子「わ、私だって子どもじゃないからって言ったら、子どもだって言われちゃって、何も言い返せなくて」
加蓮「16歳だもんね。私よりは普通な16歳」
藍子「加蓮ちゃんだって16歳の女の子じゃないですかっ。私よりずっと大人びていますけれど、でも同い年です」
加蓮「精神年齢は藍子の倍だー。ただしどこかのウサミミ付き宇宙人の半分」
藍子「へ? 菜々さんって(バキュン)歳ですよね?」
加蓮「ぶっ!!」
藍子「…………?」
加蓮「さ、さくっと言うね……私でもそこまで直接は言えないよ……? あの、やめてあげてね? うん」
藍子「はあ……加蓮ちゃんがそう言うなら」
加蓮「本格的に分かってない顔だこれ。大丈夫かなぁ……。っていうか菜々ちゃんの年齢が……いや菜々ちゃんは17歳だけど、菜々ちゃんの年齢がどうかしたの?」
藍子「計算が合わないって思ったんです。私が16歳だから、その倍なら32歳ですけれど、菜々さんの半分ってことは菜々さんが(バキュン)歳、」
加蓮「だからその数字出すのやめなさいってーの!」
藍子「ひゃあっ!? ご、ごめんなさいっ。とにかく、あれ? って思っちゃってっ」
加蓮「その辺しっかり計算してる訳ないでしょテキトーだよテキトー」
藍子「あはは、そうだったんですか。加蓮ちゃんが言うから深い意味があるのかなって思っちゃいましたっ」
加蓮「アンタのその私に対するよく分からない信用はいったい何なのよ……。結局、ここにいないウサミンがズタボロにされただけじゃん……」
藍子「……??」
加蓮「怖い。ここできょとんとする藍子が本格的に怖い」
藍子「…………」ジー
加蓮「……? どうかした?」
藍子「加蓮ちゃん、こうして見ると本当に大人びているなぁって……」
加蓮「ああ、さっきそんなこと言ってたっけ」
藍子「私、加蓮ちゃんを下から見上げること、あまりしないから……こうして見ると不思議だな、って。ふふっ」
加蓮「いつもは私が膝枕してもらって見上げる側だもんね」
藍子「……そうだっ。加蓮ちゃん、たまには私に膝を貸してください!」
加蓮「どーぞ」ポンポン
藍子「お邪魔しますね。えいっ」
加蓮「冷たっ!?」ビクッ
藍子「きゃっ!?」
加蓮「あ。ごめんごめん、藍子があまりにも冷たくて……そっか、あちこち冷やしてるからそうなるよね」
藍子「保冷剤、まだ外さない方がいいでしょうか?」
加蓮「一応ね。はい藍子、今度こそどーぞ」ポンポン
藍子「お邪魔します~」ノッケル
藍子「…………」
藍子「……………………♪」
加蓮「はーい気に入ってもらえてありがとうございますー。今ならなでなでセットもお付けできますがー」
藍子「お願いしますっ」
加蓮「はいはい」ナデナデ
藍子「~~~~~っ♪♪」
加蓮「見せられない顔になってるね……」ナデナデ
藍子「~~~~♪」
加蓮「気持ち良いのは分かったからむずむずしないのっ。くすぐったいでしょー」
藍子「はーい」
藍子「~~~~♪」ナデラレ
藍子「私、ずっとここにいたいですっ」
加蓮「そしたら大好きなお散歩ができなくなっちゃうよ?」
藍子「あう。それは困りますけれど、でも、ここ、あったかくて、ぽかぽかしてて……」
加蓮「くくく。私の膝の上にいるとお散歩はできない、お散歩していると私の膝の上にはいられない。藍子ちゃんはどっちを選ぶのかな~~~?」
藍子「う~~~……か、加蓮ちゃんっ。困っちゃうことを言わないでください!」
加蓮「さらに藍子の大好きなアイドル活動にPさんと2人だけの時間も追加」
藍子「きゃ~~~~~っ!」
加蓮「とどめにポジパで遊ぶことに歌鈴とのんびりすることに凛と散歩の話で盛り上がることに愛梨とお菓子作りをすることに――」
藍子「む、無理です、私には選べません。選ぶだけで何年も経っちゃいます!」
加蓮「何時間何日すっ飛ばして何年と来たよこの子。まー、ほら、藍子にはそれだけ幸せがあるってことで」
藍子「……もうっ。加蓮ちゃん、それが言いたかったんだったら最初から――」
加蓮「いや単に藍子を困らせてみたかっただけ」
藍子「む~。私、今日はずっとここにいますから。絶対ここにいますから。加蓮ちゃんが嫌だって言ってもしがみつきますから」
加蓮「しょうがないなぁ」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「……~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「…………♪」ナデラレ
藍子「…………すぅ」zzz
加蓮「あ、寝た」
加蓮(眠たかったのかな……? 私の膝の上で、いい夢が見られるといいんだけどね)
藍子「くぅ…………」zzz
加蓮「…………」ナデナデ
加蓮(……ほんの少しだけ、悔しいのは。この子の幸せはいっぱいあって、私はその1つでしかないこと)
加蓮(そこに私なんかがいてもいいのかな、なんて思うのはもう飽きた。そうしたら今度は、みんなの中の1人でしかないことが悔しくなった)
加蓮(ワガママだなぁ、私。……そんなの、昔からか)ナデナデ
藍子「……すー……えへぇ……」
加蓮「いい夢、見れてるみたい。よかった……」ナデナデ
藍子「にへ……」
加蓮(…………)ガサゴソ
加蓮「…………」パシャ
加蓮「よし。対藍子用の武器1つゲット」
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「ふふ……かれんちゃん、あーん……♪」
加蓮「…………」ナデナ...
加蓮「…………」
加蓮「…………はいはい、私の考えすぎですよー。どーせ私はネガティブ思考ですよー」
加蓮「ちくしょー。武器に使えないじゃんか、これ」
――しばらく経ってから――
藍子「…………ん」パチクリ
藍子「ふわ…………、…………寒いっ」
加蓮「あ、起きた。おはよー」
藍子「ここ寒い!? 冷蔵庫のなかですかそれとも北極ロケですか!?」
加蓮「…………」ピト
藍子「ね、熱はありませんっ」
加蓮「そっか。じゃあもう保冷剤も大丈夫かな? クーラーの設定温度も上げちゃえ」
藍子「ほれいざい? ……あれ? 加蓮ちゃん? わたし……」
加蓮「へろへろになって帰ってきた藍子、熱中症の怖さを語る加蓮ちゃん、膝枕」
藍子「……………………」エート
藍子「…………!」ピコーン
藍子「…………」ジー
藍子「えいっ」
加蓮「おわっと。そんな勢いよく飛び込んで来なくても。顔くらい洗ってきたら?」
藍子「べたべたしてないから大丈夫です。加蓮ちゃんが拭いてくれたんですか?」
加蓮「他に誰が拭くと?」
藍子「ですよねっ♪」
加蓮「…………」
藍子「…………」ニコニコ
加蓮「なまいきなーなまいきなー」グニグニ
藍子「いひゃいでふっ、なんでほっぺふぁひっぱふんですひゃっ」
□ ■ □ ■ □
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
藍子「……こうしていると」
加蓮「ん?」
藍子「とっても心地いいです……幸せが、いっぱい、ぽかぽかって……」
加蓮「蕩けた顔だなぁ」
藍子「加蓮ちゃん、冷たくて暖かくて……暖かくて冷たくて……私、やっぱりここが大好きですっ」
加蓮「……藍子の笑顔って見てるとこう、すーっ、ってするんだよね。あれ、私なんでさっきいらっときて藍子のほっぺたぐにぐにってやったんだろ。やだなぁ自分勝手な私とかサイテー……あれ? あまり最低だって思わない。藍子の笑顔ってやっぱ、」
加蓮「分かった。魔物だ」
藍子「せめて魔法使いにしてください~……」
加蓮「魔女」
藍子「魔法使い」
加蓮「女の子」
藍子「魔ほ……ふぇ?」
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
藍子「……やっぱり、ちょっぴり不思議な感じです。こうして加蓮ちゃんを見上げるのって」
加蓮「そう? 私はもう慣れてきたけど」
藍子「いつも私が見ていてて、加蓮ちゃんが見上げていましたから」
加蓮「どっちが好き? 膝枕するのとされるのと」
藍子「どっち……どっち? ……どっちもですっ!」
加蓮「どっちもかー。欲張りだね」
藍子「えへへ。加蓮ちゃんも一緒に、よくばりになっちゃいましょうっ」
加蓮「しょうがないなー」
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
藍子「はふっ……♪ あ、そうだぁ加蓮ちゃん」
加蓮「何?」
藍子「さっき、夢の中に加蓮ちゃんが出てきたんですよ。ふふっ、私と加蓮ちゃんが、夢の中でいつものカフェにいたんです!」
加蓮「そういえばなんか寝言で私の名前を呼んでたね」
藍子「へっ? ……あ、あの、何かお恥ずかしいこと言ってたり……?」
加蓮「さあ? 藍子が寝たのを見てから雑誌読んでたり藍子をつついてたりスマフォいじってただけだから」
藍子「そうですか。よかった……。って、私をつつかないでくださいっ」
加蓮「いや、反応が面白くて。こう、びくんっ、ってなるんだよ。でもしばらくしてると受け入れてくれて、にへら、って笑ってくれてさー? 今度は違うとこつつくの。そしたらまた違う反応で、もー面白くて面白くてっ」
藍子「むー」
加蓮「で、夢の中の加蓮ちゃんは何か言ってた?」
藍子「私のこと、いっぱい大好きだって言ってくれました。それに、周りのみなさんのことも大好きだって……確か、凛ちゃんと奈緒ちゃんと、奏さんと――」
加蓮「えー。何よそれ。…………あ、藍子! それは偽者の私なのよ!? 騙されてそっち行っちゃ駄目!」
藍子「でも、私……こっちの加蓮ちゃんを好きになっちゃったんです! 騙されていたとしても……それでいいんです!」
加蓮「藍子~~~~~~!」
藍子「本物の加蓮ちゃん……ううん、今この瞬間からあなたは偽物の加蓮ちゃんです。さようなら、偽物の加蓮ちゃん――偽物の時間でも、あなたとのいっときは楽しかったですから……」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「……悲劇のヒロインになるくらなら無理して頑張る主人公の方がやりたいなぁ」
藍子「加蓮ちゃん、王子様役とか似合いそうですよね」
加蓮「せめて頑張る王女様役くらいで。ってか偽者の私って酷くない?」
藍子「つ、つい。でも最初に言ったの加蓮ちゃんじゃないですかっ」
加蓮「それもそっか。好き好きオーラを振りまく加蓮ちゃんとか想像するだけで伝説の剣ほにゃららら~みたいなので真っ二つにしちゃえ」
藍子「でも、そんな夢を見てたら私、加蓮ちゃんに現実でもいっぱい大好きって言ってほしいって――」
加蓮「あ、もしもしPさん? あのね、藍子が告白される側のシチュエーションを試してみたいって言っ」
藍子「わ~~~~~~!?」ウバイトリ
加蓮「おおっと」
藍子「ぜーっ、ぜーっ、……よ、よかった、通話してない……よね? してない……よね?」ポチポチ
藍子「履歴履歴……うん、大丈夫……。……加蓮ちゃんっ!」
加蓮「いやほら、藍子がまだ加蓮ちゃん(偽)に騙されてるっぽいから目を覚まさせてあげようと」
藍子「加蓮ちゃんがしっかり助けてくれましたから大丈夫です! そ、そこっ、そこでPさん出すのは……はんそくです!」
加蓮「その方が分かりやすくない?」
藍子「だめっ! 加蓮ちゃんにお願いしてるの!」バッ!
加蓮「わ」
藍子「あっ……あのつまりそういうことです。Pさんには……その、まだ…………早いといいますか…………ゴニョゴニョ……」
加蓮「ごめんごめん。そだね、藍子にはちょっぴり刺激が強すぎたかな? ……それはともかくさ。藍子ー、今のもっかい言ってみて」
藍子「な、なにをですか」
加蓮「お願いしてるのっ、って。なんか……なんだろ。すっごい可愛かった?」
藍子「ええぇ? ええと……お、お願いしてるの?」
加蓮「違う違う。もっとお腹から声を出して、こう顔もぐぎゅーって感じで」
藍子「お願いしてるの。……こうですか?」
加蓮「ぜんぜん違うー! むぅ、これは難しいか……ま、もしかしたらまた見られるかもってことにしーとこっ」
藍子「はあ……」ゴロン
加蓮(あーびっくりしたー……)
藍子「…………」ジー
藍子「…………!」キラキラ
加蓮「はいはい」ナデナデ
藍子「~~~~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「~~~~♪」ナデラレ
加蓮「…………」ナデナデ
藍子「加蓮ちゃんって」
加蓮「加蓮ちゃんって?」
藍子「こうして見ると」
加蓮「こうして見ると?」
藍子「お姉ちゃんみたいですっ」
加蓮「はあ」
藍子「……加蓮お姉ちゃんっ♪」
加蓮「そのネタ、前にもやらなかった?」ビシ
藍子「ひゃっ」イタイ
加蓮「そして前にやった時もこうやってどついた気がする」
藍子「だってすっごくそんな感じなんですから。頼れるお姉ちゃんって感じで!」
藍子「ずーっと私のことを見ててくださいね、お姉ちゃんっ」
加蓮「…………もしもしPさん? 藍子がね、妹キャラを」
藍子「とりゃ~~~~~っ!」ウバイトリ
加蓮「してないしてない。電話なんてしてないから」
藍子「がるるるるる……!」
加蓮「せめて妹か犬かどちらかにしなさいよ」
藍子「がるる…………わん?」
加蓮「そっち選ぶの!?」
藍子「もう、加蓮ちゃんってデリカシーがないんですねっ」
加蓮「はぁ?」
藍子「加蓮ちゃん、もっと気遣いができる人だと思ってたのにっ」
加蓮「いや私も女の子なんだけどね。どっちかが男装をするならPさんもファンのみんなも迷わず藍子だって言うと思――」
藍子「……………………」
加蓮「あ、やば」
藍子「…………もしもし、Pさんですか? 実は、加蓮ちゃんが新しいことをやりたいって言っているんです。みんなのお姉ちゃんって役を――」
加蓮「はいはい、そのネタは私がさっきやった」
藍子「ナースさん……ええと、看護師さん? の格好でやってみたいって!」
加蓮「待て。それはない。それはないから」
藍子「今すぐ? はい、冷たいお茶を用意してお待ちしていますね。もちろん加蓮ちゃんも一緒です!」
加蓮「……」
加蓮「…………」
加蓮「……………………ちょっと!?」バッ
藍子「きゃあっ」
加蓮「え、嘘、マジでかけて……ない…………」
藍子「演技をするなら開き直ってしっかりと、って、教えてくれたの加蓮ちゃんですからっ♪」
加蓮「藍子~~~~~~~っ!」ツカミカカリ
藍子「きゃーっ!」
加蓮「アンタねぇ…………!」
藍子「加蓮ちゃんがやったことですっお返しですっ。だ、だめですよ、痛い痛い手の力がっ肩が痛いですっみしみし言ってる~~~~~~!」
……。
…………
――事務所・夜――
<がちゃ
加蓮「あ、Pさんおかえりー」
藍子「お帰りなさい、Pさんっ」
加蓮「何してるのかって? だいたい見ての通りでーす」
藍子「膝枕、してもらっちゃってます。……じいっと見て……あ、もしかしてPさんも?」
……。
加蓮「…………いや、そこまで全力で拒否ることはなくない?」
藍子「慌てて走って行っちゃいましたね。顔、ちょっぴり赤くなっちゃってました」
加蓮「女の子の話をぶった切って逃げるなんてサイテー。にしても藍子。マジでここでてっぺん超えるつもり?」
藍子「さすがにそこまでは……。そろそろ帰らないと、お母さんも心配しちゃいますから」
加蓮「だね」
藍子「…………」
加蓮「……?」
藍子「……帰らなきゃ、帰らなきゃ、って、ずっと思ってるんです。たぶん、何時間も前から」
加蓮「あー……トイレに行く時ですらすっごいしぶしぶって感じだったもんね」
藍子「あ、あと10分したら帰るんです。絶対にです」
加蓮「別に加蓮ちゃんはどこにも行かないし、なんだったらうちに来て続きをやればいいじゃん」
藍子「加蓮ちゃんの家に行くまで我慢できませんっ。加蓮ちゃん、膝枕しながら家に連れていってくれますか?」
加蓮「ごめん藍子、私まっとうなアイドルだから。膝に乗っけながら空飛んで帰るとか無理だから。アンタんところのちょっとおかしなアイドルとは違うから」
藍子「お、おかしくはないですよ? 皆さんちょっぴり元気なだけで」
加蓮「元気なのはいいけど暑さにはホント気をつけてね? 水分補給に体温調節、しんどいと思ったらすぐに休む」
藍子「私からも、皆さんに言っておきますね。加蓮ちゃんがいっぱい助けてくれたことも一緒に!」
加蓮「やめて。まーた未央だの茜だのからぶーぶー言われる。ごほん、『かれんの泥棒猫! 泥棒狐! あーちゃんを返せー!』」
藍子「あ、似てるっ!」
加蓮「でしょー? いつか茜のモノマネも極めて1人ポジパ劇場とかやってやるっ。……あ、Pさんだ。今から帰るの? うん、私達も帰るとこ。大丈夫大丈夫、お父さんに迎えに来てもらうから」
藍子「お疲れ様です、Pさん。……え? 未央ちゃんですか? くすっ、今のは加蓮ちゃんのモノマネなんですよ?」
……。
加蓮「……新しいネタを見つけたーって顔だよ。だから私は芸人枠でもないんだって」
藍子「加蓮ちゃんは加蓮ちゃんですよね。モノマネを極めるんじゃなかったんですか?」
加蓮「使い道のない物を極めるのもたまにはいいかなって。藍子を見てたらそんなこと思っちゃった。さて、私達も帰る準備しよっか。車の中なら膝枕もできるでしょ? お父さんに迎えに来てもらうから」
藍子「…………」ブー
加蓮「……それも嫌なの?」
藍子「その……もうちょっとだけっ」
加蓮「だから車の中でも私の家でも膝枕くらいいくらでも、」
藍子「事務所で、こうしていたいなぁ、って……」
加蓮「……はぁ。ホントにあと10分だけだよ? 10分したらお父さんに連絡するからね」
藍子「はーいっ。~~~~~♪♪」
おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。
デレステのストーリーコミュ第31話、素晴らしかったです。敬意を表します。
でも……もうほんの少しだけ、自由に想像したかったです。
おつです
毎度こんなにいちゃいちゃしてるのに湿り気ないのが素敵
27の加蓮の台詞に違和感あるの、気のせいかしら
あ、すみません
ひとつめの台詞を最初読んだ時に「~想像するだけで」までを心象描写と捉えてたので「真っ二つにしちゃえ」に繋がってないように感じまして……
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません