【はいふり】もえか「ねぇねぇミケちゃん……」明乃「なぁにモカちゃん……」 (64)

注意

・はいふりSS
・モカミケ
・アニメ最終回から二ヶ月後くらい
・二人ともゆるみきってるので3点リード多めです



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1466949174

もえか「ねぇねぇミケちゃん……」

明乃「なぁにモカちゃん……」

もえか「夏だよ……」

明乃「夏だねぇ……」

もえか「今日は雲ひとつないね……梅雨が明けたのかな……」

明乃「海の青と空の青がくっつきそうだね……」

もえか「こうして埠頭に座って見てるとさ……晴風って結構大きいよね……」

明乃「うん……艦長室だけで孤児院の二階の部屋くらいあるよ……」

もえか「あはは……狭かったもんね……わたしたちの家……」

明乃「というかこれ晴風じゃないよ……同じ陽炎型だけど……」

もえか「あ……そっか……晴風はもう……」

明乃「うん……」

もえか「……」

明乃「それよりさ……武蔵の艦長室なら、孤児院の二階だけじゃなくて一階の部屋も全部入るんじゃない……?」

もえか「あはは……さすがにそこまでじゃないけど……でも大きいよ……」

もえか「というか……大きくて落ち着かない……」

明乃「あ、わかる……わたしあまり物がないから……」

もえか「みんなテレビとかパソコンとか楽器とか色々持ち込んでるけどね……」

明乃「あー……シロちゃ……うちの副長もたくさんぬいぐるみ持ち込んでたなぁ……」

もえか「まぁ学生寮だからねー……」


明乃「でもやっぱり……あれからみんな私物をあまり持ち込まなくなったよ……」

もえか「まぁ……そりゃそうだよね……下手すると全部海の底だもん……」

明乃「それに陸にも寮はあるからね……」

もえか「どっちで暮らしてる人が多いの……?」

明乃「半々かなぁ……それぞれ慣れてる環境が違うから……」

もえか「そっか……」

明乃「船で育った子は艦内の、陸で育った子は陸の寝床が落ち着くみたい……」

もえか「……まぁ人にはいろいろ事情があるよね」

明乃「わたしたちもそうだもんね……」


もえか「それにしても暑いね……」

明乃「海のそばだからね……」

もえか「わたしたちの家も暑かったもんね……」

明乃「クーラーなんてなかったからね……」

もえか「日中はよく公民館や図書館に逃げてたよね……」

明乃「せめてちゃんと動く扇風機がほしかったなぁ……」

もえか「孤児院……っていってもわたしたち二人だけのために、空き家に設けられた臨時の施設だったからね……」

明乃「そうだね……どうして二人だけだったんだろうね……」

もえか「他の子たちは引き取り先があったからね……」

明乃「……」


もえか「……どうしたの……?」

明乃「もし……わたしも引き取ってくれる人がいたらどうなってたかなと思って……」

もえか「引き取られたかった……?」

明乃「ううん……やっぱりいいや……」

明乃「だってそうなってたらモカちゃんと会えなかっただろうし……」

もえか「ミケちゃん……」


明乃「モカちゃんと会えたことを思うと、引き取られなくてラッキーだったなぁって……」

もえか「ミケちゃん……!」ダキッ

明乃「あはは……モカちゃん暑いよー……」ポンポン

もえか「わたしも引き取られたりしなければ……ミケちゃんと同じ中学にいけたのに……」

明乃「だけどちゃんとこうして会えたから……」

もえか「でも……寂しかった……」ギュウ

明乃「わたしも……」ギュウウ







レオ「あれ艦長じゃない?」

さくら「抱きついてるのは武蔵の……!じゃやっぱり噂は」

るな「やっぱり艦長っていけるくちなんだぁ」

そら「ちょっ、その言い方なんかやらしくない……?」

クロ「こらあなた達、また変な噂してんじゃないでしょうね」

レオ「えー、でも抱きついてるし……」

マロン「幼馴染なら抱きつくのは当たり前でい!」ギューッ

クロ「こ、こらマロン!もう……とにかくそっとしておいてあげなさいよ」

四人組「「「「はーい……」」」」




もえか「ねぇねぇミケちゃん……」

明乃「なぁにモカちゃん……」

もえか「もうすぐ夏休みだね……」

明乃「………うん…」

もえか「どうしたの?嬉しくないの?」

明乃「だって……夏休みになったらみんな……」

もえか「……帰っちゃうだろうね」

明乃「でも……わたしはこの艦以外に帰る場所なんてないから……」


もえか「…うん……わたしも……」

明乃「あれ……?里親の方は……?」

もえか「実はちょっと折り合いが悪くて……」

明乃「……そっか……あんなに優しそうなご夫妻だったのに……」

もえか「うん……最初は優しかったんだけどお子さんが産まれてからは……」

明乃「……そっか……」

明乃「なかなか世の中上手くはいかないね……」


もえか「きっとわたしは子供に恵まれなかった二人の穴を埋める代役だったんだと思う……」

明乃「そんな……もかちゃんは誰の代わりでもないし、もかちゃんの代わりだっていないよ……」

もえか「うん……ミケちゃんがそう思っててくれるからわたしは……」

もえか「ありがとう……」キュッ

明乃「わたしだってモカちゃんがいてくれたから頑張れたの……」

明乃「こっちこそありがとうだよ……」キュウ







のま「……」

めぐ「どうしたのマッチ~? ってか港をぼんやり眺めてる姿もかっこい~!」

のま「……あそこ」

つぐ「あ……艦長また武蔵の艦長と……」

まゆ「手を握り合ってるね……」

しゅう「……」ニコニコ

サト「見てるだけで暑いぞな~」

まゆ「それはどっちの意味で?」

サト「ああーん? んなもん両方に決まってるぞな~!」

つぐ「だよねぇ」

のま(艦長……)

のま(あの夜……抱きつかれたときに感じた肩の震え……)

のま(もう治まったのなら良かった……)ニコリ

めぐ「あー!マッチが笑ったー!カメラ!カメラどこ!」ガソゴソ

アニメ最終回録画したのまだ見てないけど、もかちゃんと幼なじみってことくらいしか知らなかったなぁ
里親いるけど生まれた子どもにばかり愛情がいくってもかちゃんにとっては家に居場所ない感じでつらいね

>>11
里親に引き取られたってところは創作です
孤児院育ちで中学から離れ離れになったことしかわかってないです

すいませんつづけますね



もえか「ねぇねぇミケちゃん……」

明乃「なぁにモカちゃん……」

もえか「ミケちゃんは中学校の近くの新聞屋さんに住み込んでたんだよね……?」

明乃「そうだよー……毎朝配達してたから寝起きが良くなったんだー……」

もえか「ええー……あんなにお寝坊さんだったのにー……本当……?」

明乃「ほんとだよぉ……就寝中に突然艦橋から呼び出されたときなんていつも一番乗りなんだから………ふふっ」

もえか「どうしたの……?」


もえか「どうしたの……?」

明乃「ううん……シロちゃ……うちの副長はね、意外に寝起きが悪くてさ……」

もえか「えっ……あの真面目な宗谷さんが……?」

明乃「非常事態なのに寝ぼけてぬいぐるみを抱えたまま現れて……」

もえか「ぷっ……そ……それは意外だね……」

明乃「おかしかったなぁ……おかげで緊張がほぐれて良かったけどね……」


もえか「ミケちゃんも新聞屋さんで鍛えられててよかったね……いいところだったの……?」

明乃「うん……社員さんたちは優しいし……仕事上スキッパーの免許もとらせてくれたし……」

明乃「あ、あと新式スキッパーの導入で廃車予定だった旧式を一台譲ってくれたっけ……」

もえか「いつも乗ってる小型のあれ……?」

明乃「そーそー……」

もえか「へぇ……得したねー……」

明乃「もう毎日時間があれば乗ってたっけ……奨学金以外にお小遣いもくれたけど全部燃料に回してたよ……」

もえか「ミケちゃんらしいね……」クス

明乃「いい人たちばかりだったけど……家じゃなくて職場だからもう帰ることはできないし……」

もえか「それは……」

もえか「……しかたないね……」

明乃「うん……」


もえか「じゃあ……ミケちゃんは夏休みもずっとこの艦に……?」

明乃「入学式のときも言ったとおり、艦が私の新しい家だから」

もえか「そっか……」

明乃「一人で9月までお留守番するには大きすぎる家だけど……」

もえか「うん……」

明乃「待つことも大事だって教わったから……」

もえか「待つの苦手だったもんねミケちゃん……」

明乃「だって、もしまた……いくら待っても帰ってこなかったらって思うと……」

もえか「……」

もえか「じゃあさ……」

もえか「もしミケちゃんがよければだけど……」

明乃「……え?」

もえか「わたしたちまた一緒に暮らさない……?」


明乃「……えっと」

明乃「……」

明乃「……いいの……?」

もえか「てっきりミケちゃんが言い出すと思ってたんだけどな……」

明乃「…っ!言いたかったよっ……言いたかったけど……でも……」

もえか「わたしの里親に遠慮して言えなかった……?」

明乃「……」

もえか「大丈夫だよ……さっきも言ったとおり、わたしもうあまり歓迎されてないから……あの家では……」

明乃「ごめんね……」

もえか「気にしないで……わたしが言いだしたことだし……」


明乃「ちがうの……その話を聞いたときわたし……心の中でちょっと喜んじゃったの……」

もえか「え……?」

明乃「モカちゃんがわたしの所へ戻ってきてくれるかもって……そんな自分に嫌気がさして……」

もえか「ミケちゃん……」

明乃「ほんと最低だよ……」

もえか「…ふふっ……それじゃわたしも最低だね……」

明乃「どうして……?」

もえか「だってわたし全然悲しくなかったんだもん……」

もえか「もちろん三年間住まわせてくれたことには感謝してるけどね……でも……」

明乃「……」

もえか「でも……情緒的な交流があったのは最初の半年だけだったから……」

もえか「むしろ用済みになったことでミケちゃんの所へ帰られるんじゃないかって期待してたんだ……」


明乃「そうなんだ……」

もえか「だから本当はいつもミケちゃんのことばかり考えてたの……」

もえか「ずっとミケちゃんと撮った写真だけがわたしを受け入れてくれた……」

もえか「遠い夏の記憶だけがわたしの居場所だったの……」

明乃「……わたしも」

明乃「わたしだって……いつもミカちゃんのことばかり考えてた……モカちゃんの写真に話しかけたりしてた……」

明乃「不安で押しつぶされそうな時はいつもモカちゃんとの思い出にすがってたよ……」

もえか「わたしたちおそろいだね……?」クス

明乃「うん……うん……!」クスクス







モモ「あああ……わたしはシロミケ派のはずッス……!でもなんスかぁっこの湧き上がる衝動はぁぁああ!!」ダンダンッ

ヒメ「なにー?また百合がどうとかって話ぃ? 友達でやるのやめなっていつも言ってんのに……」ハァ

ココ「いいえ青木さん、いいところに目をつけてますよ! 今こそわたしのフィクションが現実になるときです!」

リン「ううう……岬さん……知名さん……二人とも顔が近いよぉ……」ウルウル

メイ「そうかなー、あれくらいだったら普通の友達じゃん? なータマー」

タマ「うぃ……」

タマ(……ちょっと羨ましい)





ミケ「でもやっぱり寂しいなぁ……みんなと会えなくなるのは……」

もえか「まぁ……一ヶ月と二週間くらいかな……きっとあっという間だよ……」

ミケ「そうなんだけどさぁ……」

もえか「……」

もえか「ミケちゃん」

ミケ「ん……?」

もえか「いい家族ができたね……」


ミケ「……うん……」

もえか「どうしたの……?」

ミケ「わたし……ちゃんとお父さんできてないかも……」

もえか「お父さん……?」

ミケ「ほら船が家族だとしたら艦長はお父さんでしょ……?」

もえか「あー……そういうことかぁ……」

ミケ「でも家族の記憶って曖昧でさ……」

ミケ「最期にわたしを庇ってくれたことは覚えてるんだけど……」

もえか「まだ5歳だったもんね……」

ミケ「だから、本とかテレビで見る……理想のお父さん……? って言ったらいいのかな……?

ミケ「とにかくそれを目指そうと思ってがんばったんだけど……」


もえか「失敗しちゃった……?」

ミケ「うん……いっぱい失敗して……頭の中がぐちゃぐちゃになって……いつもお腹痛くって……」

もえか「むかしからミケちゃんは抱え込みすぎるからね……」

ミケ「きっとわたしは本当の家族が何なのかよくわかってなかったんだ……」

ミケ「家族に憧れて、お父さんを演じて、思い出せない家族を作ろうとして……」

ミケ「……でも家族はそうやって出来るものじゃなかった……」

もえか「……」

ミケ「それでも何とかみんなとの距離が近付いてきて……そんな時にシュペー……ドイツの留学艦と戦闘することになったの」

もえか「シュペーってたしか武蔵と同じで操られていた……」

ミケ「そう……その時はいつもと同じように『絶対に勝つ!』って思いながら戦闘したんだけど……」

しまった…>>20-22にかけて明乃がミケになってる……
はいふり視てる方ならわかるとおもいますがミケは明乃のあだ名です
↓から明乃にもどします


もえか「えっ? 実際に勝ったって聞いたけど……」

明乃「勝ったよ……でも戦闘後に見た晴風はボロボロで……」

明乃「下手すると誰かが怪我……ううん……きっと死んでたとおもう……」

明乃「そのあとにやったお祭りで、みんなが楽しむところ見てたら、こう、心の底からみんなのことが大切に思えてきて……」

明乃「ああ……家族ってこういうものだったんだ……って……」

もえか「……」

明乃「そしたら急に怖くなっちゃって……また十年前みたいに……大事な家族を失うんじゃないかって……」

もえか「……ミケちゃん」

明乃「そう考えたらもう動けなくなってしまって……変な話だよね……?」
   
明乃「家族を守りたくて直ぐ動く癖を付けてたのに……家族を思い出した途端に動けなくなっちゃった……」

もえか「ミケちゃん」

明乃「動けずに泣いているわたしをみんなが支えてくれて、やっと動くことができたの……」
   
明乃「こんなのお父さんじゃないよ……ただの子ども――」

もえか「……」ギュッ


もえか「……」ギュッ

明乃「――……モカちゃん?」

もえか「ミケちゃん……違うんだよ……」

明乃「ちが……う……?」

もえか「昔からミケちゃんって無理することが多くて……なんでもすぐ抱え込むし……」
    
もえか「特に……誰かを助けるためだったら自分の身のことも考えずに無茶するでしょ……?」

明乃「……」

もえか「でもね家族は……ううん、家族だからこそ心配になるの……」
    
もえか「もしミケちゃんに何かあったらどうしよう……もしミケちゃんがいなくなったらどうしよう……って」

明乃「うん……そうだよね……わたし自分のことしか考えてなかった……」

もえか「自分のことを考えてなかった、でしょ……? そうやってすぐ自責する癖もよくないと思うよ……」

明乃「そんなつもりは……」


もえか「ミケちゃんも本当の意味で晴風のみんなを家族として感じることができた……」

もえか「大事な家族を想って無理ができなくなったり躊躇したりするのは、人間として当たり前のことなんだよ……」

もえか「ましてミケちゃんは一度失ってしまった現実を知ってるから……怖くなるのが当たり前なんだよ」

明乃「……」

明乃「……モカちゃんは強いね……すごいや」

もえか「ふふっ……でもこれみんなミケちゃんに教えてもらったことだよ……」

明乃「へ……?」

もえか「危なっかしいミケちゃんは心配の種だったけれど、同時にわたしの憧れでもあったの……」
    
もえか「ミケちゃんがいてくれたおかげでわたしは普通の家族の在り方を知ることができた……」

明乃「そんな……わたしいつもモカちゃんからもらってばかりで何も……」

もえか「あるがままでいいんだよミケちゃん……がんばってお父さんを演じなくてもいい……」

明乃「……モカちゃんはあるがままなの?」


もえか「わたしは……そうだね……足りない部分はミケちゃんを真似してたかな……」

明乃「えっ……わたし……?」

もえか「だってわたしの家族はミケちゃん一人だったから……」

明乃「……」

もえか「らしさはわたしの中にあるけれど、その他のところは家族で補う……」

もえか「それも知識で作られた家族じゃなくて、実際に過ごしてきた家族……」

もえか「わたしにとって思い浮かぶのはミケちゃんだけだった……」

明乃「‥…」

明乃「………そっか……‥…そっかぁ」

明乃「……わたしにはちゃんとモカちゃんっていう家族がいたんだ……」


もえか「といってもこれはわたしの持論だけど……」

明乃「ううん、シロちゃんにもそう言われた……足りない部分はわたしたちが支えるからって……」

もえか「そっか……それじゃ晴風でもミケちゃんはミケちゃんのままでいいってことだよ……!」

明乃「うん……!」ギューッ

もえか「ふふっ……よかったね……ミケちゃん……」ナデナデ







かよ「いつもはかっこいい艦長が……かわいい……」キュン

りつ「あれ?かよちゃんストライク?」

まりこうじ「青春ですわねぇ」アラアラウフフ

ほまれ「そういえばミカンちゃんあの二人とたまに絡んでるよね」

ミカン「ああ、うん、いろいろあってねー、今度料理教えることになったから」

あかね「二人を連れてカラオケに行ったって聞いたけど……」

ミカン「……なーぜか、あの二人と一緒に歌っとかないとなーって思って」

あかね「なんで?」

ミカン「んーー……わかんない」

みなみ「……」

みなみ「……袖振り合うも多生の縁、か」

ここで一旦切ります
あと少しなのでまた明日

それでは投下します




もえか「ねぇねぇミケちゃん……」

明乃「なぁにモカちゃん……」

もえか「むかし一緒に大和を見たことがあったよね……」

明乃「あったねー……」

もえか「家の近くにある小高い丘の上で……ミケちゃんに引っ張られて……」

明乃「あの時はまさかモカちゃんが姉妹艦にのることになるなんて思ってなかったなぁ……」

もえか「わたしも……」

明乃「別々の艦になるとも思ってなかったけど……」

もえか「前にも言ったけど……出来ればミケちゃんと同じ艦に乗りたかったな……」

明乃「あはは……わたしじゃ武蔵なんて無理だよー……」

もえか「そんなことないよー……入試の実技試験なんてちょっと話題になってたよ……?」


明乃「え……どこで……?」

もえか「座学の授業では教科書にとらわれない成功例として挙げられてたし、実技でもそうだったよ……」

明乃「ええー……なんか恥ずかしいなぁ……」

もえか「でも最後にちゃんと『決して真似しないように』とも言ってたけどね……」クス

明乃「もうっ、やっぱり悪い例としてじゃん……」プクー

もえか「違うよー……ちゃんと天性の直感力があって初めて成功するんだって褒めてたよー……」アハハ

明乃「でも絶対褒める目的で紹介されてないよー……」

もえか「そうかなぁ……わたしはさすがミケちゃんだって思って嬉しかったけど……」

明乃「そう思ってくれるのはモカちゃんだけだよ……」

もえか「だから違うってば……ちゃんと先生褒めてたよ……」

もえか「教科書だけだと不可能なことを成し遂げる力があるって……」

明乃「……」

もえか「ミケちゃん……? おやおや……赤くなってませんかー……?」ニヤニヤ

明乃「だってぇ……」テレテレ

もえか「あれ……でもそっか……実技の力が買われて艦長に抜擢されたって言ってたから……」

明乃「……」

明乃「ってことはやっぱり武蔵には……」

もえか「だね……」

明乃「嬉しいような残念のような……」

もえか「わたしも複雑だよ……武蔵の艦長は嬉しいけど……」

もえか「やっぱりミケちゃんと同じ艦じゃないのが残念……」

明乃「……」


明乃「……まぁでもお互い良い家族に巡り会えたことだし」

もえか「うん……」

明乃「わたしとモカちゃんは離れてても気持ちは一緒だし……!」

もえか「だね……!」

明乃「三年間も遠く離れてたことを思えば、今は同じ学校だし……!」

もえか「うん……うん……!」

明乃「クラスが離れたって……」

もえか「……離れたって……?」

明乃「……」スッ

もえか「……」スゥッ

明乃「でもやっぱり離れたくないよー!」ダキッ

もえか「わたしもだよー!」ヒシッ


明乃「三年も離れてたんだから二週間なんてあっという間だって言ってたのに……!」

もえか「お互いの安否もわからないまま一ヶ月は長かったよ……!」

明乃「武蔵から救援要請がきたときは心臓が張り裂けるかと思ったよ……!」

もえか「こっちだってミケちゃんがスキッパーでこけるのを見て、そのあとどうなったかずっと分からなくて……!」

明乃「ごめんね……無茶して本当にごめんね……」ギューッ

もえか「こっちこそ……助けに来てくれてありがとう……」ギュウウ








ましろ「艦長……またあんな目立つところで……」ヤレヤレ

村野「うちの艦長も……いえ、武蔵の艦内まで二人の噂話で浮ついた空気になってるんですよ」ハァ

ましろ「お互い困った艦長を持ちましたね……」

村野「ええ……しかし……」

ましろ「どうかしましたか?」

村野「普段は柔和ながらも精悍としていて艦長らしい艦長なのですが、どうも岬さんといるときは人が変わったように見えます」

ましろ「ああ……うちのは普段から艦長らしくないですが……」

村野「そうなんですか?」

ましろ「ええ……抜けたところが多いというかのんきというか……」


ましろ「……いえ、やはり違いますね」

村野「というと?」

ましろ「艦長……岬さんは、一見すると能天気そうな顔をしていますが、いつも重圧に耐えて苦しんでいるんです」
    
ましろ「ただそれを殆ど見せてくれない……少し翳りが見えたかと思うとふらっとどこかにいなくなって」

ましろ「そして誰にも見えないところで全部自分の中に抱え込んでしまう」

ましろ「度し難いほどの強がりというか……」

村野「……しかし、先ほどから見ていると」

ましろ「ええ……あんなに素直に心をさらけだしているのは知名さんといるからでしょう」

ましろ「正直、少し……いえ……とても悔しいですが」フッ

村野「それはわたしも同感ですね……」クス

ましろ「お互い難儀ですね……」

村野「ええ……」

村野「……」

村野「……宗谷さん」

ましろ「はい?」


村野「どうして彼女たちの絆があそこまで強いのかご存知ですか?」

ましろ「――ええ。少しですが、艦長の過去については聞いております」

村野「では副長として、どう接するべきか考えたことはありますか?」」

ましろ「……」

村野「わたし……正直わからないんです。不安と言った方が正確かもしれません」

村野「わたしと艦長では見てきた世界があまりに違いすぎて……」

村野「艦長とどう向き合えばいいのか、どう支えていけばいいのか……」

ましろ「……わたしも、先の事件の最中ずっと同じことを考えていました」

村野「では……」

ましろ「結論からいえばわたしにもはっきりしたことは分かりません。ただ――」

村野「ただ……?」

ましろ「副長として……ではなく、家族として支えていきたい。そう思ったんです」


村野「……」

ましろ「月並な表現かもしれませんが……」

ましろ「家族を知らない艦長がいくら晴風に家族を求めたところで、一人で家族を作るのは土台無理な話なんです」

ましろ「わたしが……いえ、わたしたちが教えてやらないと……」

ましろ「支えてやらないと、ね」

村野「……ありがとうございます」

ましろ「あまり参考にはならないと思いますが……」

村野「『船の仲間は家族』」

ましろ「……!それは……」

村野「うちの艦長がよく言っている言葉です。たしかに月並な表現ですが――」

村野「――ようやく端緒がつかめた気がします」ニコッ

ましろ「……」フッ


村野「と、そろそろ演習の時間ですね」

ましろ「ですね。艦長たちを呼びに行かないと」

村野「そうしましょう」

ましろ「……村野さん」

村野「はい?」

ましろ「お互いがんばりましょう」グッ

村野「はい……!」グッ





もえか「それでさ、ミケちゃん……」

明乃「なぁにモカちゃん……」

もえか「夏休みになったら一緒に長野に行かない……?」

明乃「……わたしも言おうと思ってた」

もえか「え……もしかして……」

明乃「うん……たぶん同じ理由かな……」

もえか「……」コクリ

明乃「……」コクッ

もえか「お父さんとお母さんに」

明乃「会いにいこう」


もえか「決まりだね……!」

明乃「うん……!あ……でも……」

もえか「どうしたの……?」

明乃「わたしお父さんたちのお墓がどこにあるか知らない……」

もえか「だと思った……これ見て?」ペラ

明乃「長野県松もと――……これって……霊園の……?」

もえか「うん……校長先生がわたしのお母さんとブルマーの同期だったらしくて……聞いたら調べて下さったの……」

明乃「へぇ……やっぱりシロちゃんのお母さんってすごいなぁ……」

もえか「同じ墓地に岬家のお墓もあって……ちゃんとそこに葬られたって……」

明乃「そっか……」

明乃「……」

もえか「………」


もえか「……もしかして親戚の人たちのこと……?」

明乃「………え?」

もえか「あの人たちに会うかもしれないって心配してるんじゃないの……?」

明乃「あ、ううん……そうじゃなくて……」

明乃「良かった、って思って……」

もえか「……どうして?」

明乃「だって、お父さんやお母さんがちゃんと家族の元に帰れたんだもん……」

明乃「それにわたしもう全然気にしてないよ……」

もえか「でも……岬家の人たちはミケちゃんを……!」

明乃「うん……だけどあの人たちがわたしを捨ててくれたおかげで、わたしはモカちゃんに会えたから……」

もえか「ミケちゃん……」

明乃「それはわたしにとって幸せなことだったから……」

もえか「……でも……わたしは許せないよ……」



明乃「わたしだってモカちゃんを捨てた知名家の人たちは許せない……」

明乃「でもね……そういう巡り合わせがなければ、わたしたちは出会えてなかったんだと思うと」

明乃「それってすごいことだなって思ったの……」

もえか「……うん、そうだね……」

もえか「わたし……ミケちゃんのいない世界なんて想像できない……」

明乃「うん……」

明乃「……わたしさ」

明乃「運がいいって言われるのあまり好きじゃなかったんだ……」

もえか「え……わたしいつもミケちゃんに……」

明乃「あっ、今は全然大丈夫だよ……!」

明乃「ただ、お葬式のときに知らない人たちに言われたの……」

もえか「なんて……?」

明乃「あんな状況から生還できたなんて運のいい子だ、って……」

もえか「……っ!」

明乃「それから何度も同じことをいろいろな人に言われて……」

明乃「そのたびに生き残ったことを責められてるみたいに感じてさ……」

明乃「でもモカちゃんに会って……ううん、モカちゃんと仲良くなって初めて思ったの……」

明乃「わたしって本当に運がいいんだなぁって……」

もえか「ミケちゃん……」


明乃「だから、その運の途中にあの人たちがいるなら……もういいかなって……」

もえか「……そっか……」

もえか「わたしも……家族を失ったことは辛かったけど、ミケちゃんに会えて幸せだよ……」

明乃「ありがとう……」

もえか「……ふふっ」

明乃「……?どうしたの……?」

もえか「ううん……今日わたしたちずっと同じやりとりしてるなーって思って……」

明乃「そう言われてみれば……」

もえか「四月に再会したときだってこんなにいっぱい話さなかったよね……」

明乃「だってあの時はすぐにまた会えると思ってたからね……でもそうじゃなかったから……」

もえか「今日からまた演習だもんね……」

明乃「学期末演習かぁ……」


もえか「大丈夫だよ……今度はたったの三日だし……それにもうあんなことにはならないよ……」

明乃「うん……でもやっぱり心配……」

もえか「……わかった……それじゃわたしにもミケちゃんの運を分けて……?」

明乃「え……?」

もえか「そうすればきっと……ううん、絶対にまたすぐ会えるはずだから……」

明乃「わかった……どうやればいいのかわからないけど……」

もえか「うーん……」


もえか「あ、そうだ……」











???「むぅ……たしかこの辺におると言うておったが……」タッタッタッ

???「……ん? おお、いたいた……おーい!」


もえか「え?」

明乃「あっミーちゃん!」

ミーナ「久しぶりじゃのぅアケノ! 探しとったんじゃ!」

明乃「久しぶり! 試験官として同乗する先輩ってミーちゃんのことだったんだねぇ」

もえか「えっと……ミケちゃんの知り合い?」

明乃「うん、シュペーの副長をしている……」

明乃「ウィン……ナー…………インゲンマ……メ……?」

もえか「思い出せないんだ……」


ミーナ「ははは、もうミーちゃんでええわい!それよりおぬしは武蔵の艦長じゃな?」

もえか「えっどうして」

ミーナ「そりゃ知っとるわい、なんせあの武蔵じゃけぇのぅ。それにアケノからよう聞かされとるぞ?」

明乃「あっ!ちょ、ちょっとミーちゃん!」

もえか「ミケちゃんから?」

ミーナ「大半は惚気話じゃがの……あとは写真を自慢されたこともあったのぅ……」

もえか「のろけ……ってもうミケちゃんったら……」

明乃「違うよぅ……モカちゃんってかっこよくて美人さんでわたしの世界で一番大切な幼馴染なんだって言っただけだよぅ……」

もえか「……」カァァ

もえか「……ミケちゃんのばか……」

明乃「ふぇっ……な、なんで……?」


ミーナ「相変わらず勘が鋭いんか鈍いんかようわからんのう、おぬしは……それより出航時間が迫っとるぞ」

ミケ「時間……あっ!そうだった!」


                          艦長ーーーーはやくきてくださーい!!!>


ミーナ「ほれ、シロの字がしびれを切らしてこっちに叫んどるわ」

もえか「あっうちの副長も……ちょっとゆっくりしすぎたね……」アハハ

明乃「うん……でもこれでまた離れ離れかぁ……」

ミーナ「何をしょんぼりしとるんじゃ、たったの三日じゃろう」

ミーナ「……と、言いたいところじゃが、おぬしが不安に思うんも仕方ないことじゃ」

もえか「たしかミーちゃん……先輩は、暴走するシュペーからたった一人で……」

ミーナ「ああ……じゃけぇあの時のアケノの気持ち……いや、今もじゃが自分のことのようにわかる」

明乃「テアちゃんたちのこと心配だったもんね……」


ミーナ「じゃがおぬしに命を救われたあの夜、手伝うと言うてくれて随分と気が楽になった」

ミーナ「今更かもしれんが……ありがとの」

明乃「ミーちゃん……」

ミーナ「……と、よう見るとおぬし、いつもとなんか雰囲気が違うのう」

明乃「え?そうかな……」

もえか「たぶん髪型のせいじゃないかな」

ミーナ「おおそうじゃ!今日はマゲを片方しか結うとらんのか」

明乃「マゲ? ……ああ!」

ミーナ「そういえばもえかの髪型も写真とはずいぶん……ん?」

ミーナ「 おぬしが付けとるそのリボンはたしかアケノの……」

もえか「ええ、実はさっき交換したんです。ミケちゃんの方には代わりにわたしのを」

明乃「ほらこれモカちゃんのヘアピンなの!こうすればずっと一緒でしょ?」エヘヘ


ミーナ「なるほどのう……ゲン担ぎとは任侠魂を感じるのう……かっこええのう……」

明乃「にんきょう?」

もえか「かっこいい?」


                     
                          艦長ーーーー!!?出航しますよーー!!?>



ミーナ「おっ、そろそろ行かんとシロの字の雷が落ちそうじゃ!」

ミーナ「わしは先に行ってるけぇ、おぬしもはよ来んさいよ!」タッタッタッ

明乃「か……かみなりこわい……」

もえか「そうだね……名残惜しいけどそろそろ……」

明乃「……」


明乃「ねぇねぇモカちゃん」

もえか「なぁにミケちゃん」

明乃「あれやろ、あれ!」

もえか「……!あれだね!いいよ!」キョロキョロ

明乃「どうしたの?」

もえか「ううん、誰かに見られてないか確認してただけ……じゃやろっか!」

明乃「うん! それじゃ……」





ミケ「……海に生き!」


もえか「海を守り!」


ミケ「海を住く!それが――」



ミケもえか「「ブルーマーメイド!」」






ミケ「……」キマッタカナ…

もえか「……」キマッタネ…




       ワァァァアアアアアアアアアアアアアア




ミケもえか「「」」ビクッ





    <ナツカシー!              クスクス>

                          ヒューヒュー!!>
     <アレ、ムサシトハレカゼノカンチョウダヨネ!
                             イツモ アツイネー!>
                       アハハハハ>
<ブルマーノヒョウゴ、ムカシヤッタヨネー!
              <ヒュー!!
                          遊んでないで早くきてください艦長!! >

       <クスクス




もえか「そ、それじゃまた明々後日ねっ!」カァァ

明乃「う、うんっ!お互いがんばろうね!」マッカ





――三日後、無事に期末演習を終えた明乃ともえかは、港で再会するなり人目もはばからず抱き合って
周りから散々冷やかされることになるが………それはまた別のお話







艦!

最後の方でまた明乃がミケ表記になってしまった……orz

とりあえず以上です!
モカミケの設定を設定で終わらせずに二期か漫画か小説でちゃんと描いてほしい今日この頃

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