厨二な俺が作ったss (56)

天帝アルフ、獄帝ゾメ、海帝マリン、獣帝ダッフィ、機鋼帝スティー、

この五帝とその配下がこの世界を競い合うようにして喰い荒らした。

天帝勢の放つ極光が幾分の狂いもなく敵を薙ぎ払う。

獄帝勢が生ある者から魂を抜き出し、おびただしい数のゾンビを産みだす。

海帝勢が海の深淵から這い出ては、大地を引きずりこみ、溺れさせた。

獣帝勢は同胞たちの断末魔で怒り狂い、傷つけるもの全てを傷つけた。

機鋼帝勢は創造主への反逆を行い、この世界を完全な統制の下に置くことを目論む。

この長きにわたる戦争は、5勢力の疲弊と共に痛み分けという形で終わりを見せる。

俺は、足元から一握り分の砂粒を掬った

こんなのではまるで足りないくらい、死んだのだ。

次にこんな戦争が起きれば、この広大な砂漠をすべて死の粒子に変える必要があるだろう

無論、それを防ぐために俺のような酔狂がいるのだが。


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元は、戦争を逃れた者たちが身を寄せ合うようにして組織されたものだったらしい。

勢力を問わず、魔女の窯のごとく混ざったそれは戦争が長引くと共に絆を深めた。

そして戦争が終わった今でも、故郷に戻らないものがいる。

見る影もなく荒廃した故郷で暮らすのは、辛いのだという。

それに産みの親を失った者や仕える主人を失った者は、どこにも行くところがない。

彼らは、帝でも一晩で落とすのは苦労するような砦をたて、そこで暮らし始めた。

彼らの心にあるのは、戦争への恐れ。

やがて、彼らは一種の情報組織を編成する。名はない。しかし目的はある。

戦争の火種となりかねないものをもみ消すこと。

下手をすれば、帝に目を付けられかねないものだったが、勢力が混在していたことが功を奏した。大半の勢力にとって、仲間殺しは大罪である。ましてや、砦に暮らす彼らは戦争の被害者だった。

そしてなにより、彼らの存在を利用して互いを監視し合う方が得策だと考えたようだ。

「5大勢力の矛先に立ったようなものだが、悪くないのう。

儂らが滅ばねば、彼奴らが突き刺し合うことはなかろうて」

と組織の発足を提案した長が笑ったのはいまだに憶えている。

そして、今回俺はその組織から任務を与えられ、この砂漠へきた。

砂漠の名はない。

戦争の影響で至る所に砂漠ができてしまったから、名前が付けられていないのだ。

されど砂漠。夜は冷える。

俺は、手についた砂を払い落としテントの中へ入った。

中には体をちいさく丸めたきつね、組織の同僚であるフェネックがど真ん中にででんと横たわっていた。

フェネックは、そのままの姿勢で呟いた。

「なにしてたの」

「ただのトイレだ」

「大?」

「大」

フェネックは小さく唸ってから、足の間をするりと抜けると、テントの外へ姿を消した。

彼女は匂いに敏感で、特に大便をした後は決まって離れた。

悪いな、と心中で謝ってから俺はフェネックが先ほどまでいた場所に寝転んだ。

目の前の布に砂の粒子が繊維の間に入りこみ、怪奇な模様を描いている。

よく見ると、いかにも醜悪な面をしたばけもののようだ。

俺が捜してる帝具は、こんな奴が持っているのではないか。

組織に与えられた依頼を思い出す。

帝具、精神分離機を回収すること。

この世の果てでまた会いましょう
だから今は笑って

>>19
最期の瞬間にマルルが笑ったのか、それが分かりません
ありがとうございます

一通り男を怒鳴りつけた女はくるりと俺の方へ振り向き、頭を深く下げた。

「すいません。突然、失礼しやした」

フェネックはなにも答えず、警戒心のこもった眼で二人を見ていた。

今すぐに、彼女が和解することはないだろう。

ならば俺は、それを利用して情報を引き出すことにしよう。

フェネックには悪いが、ここで心理的優位に立てたのは僥倖なのだ。

「確かに驚いた。まるで子供のようだな、彼は」

「えぇ、どうにも身体と釣り合っていない奴でして。普段からよく言ってきかせているんですがねぇ」女はこんがりと灼けた褐色の唇を歪ませて、答えた。

精神交換のことは話すつもりはないらしい。

だが、俺たちはそれを聞く必要がある。

狩りと同じく獲物を徐々に追い詰め、こらえきれず飛び出したところを襲うのだ。

「延々と門の前に立つというのは退屈だろう。俺たちが今日初めての来訪者ではないか?」

「普段よく見る顔を除けば、そうなりますねぇ」

「ふむ、ここは戦争のあと復興したキィエルドーでも有数の町だというのに、上手くはいかないものだ」

「戦争でここら一帯が砂漠になってしまいましたから、わざわざここまで来る旅人も減りました。ですが、もともと少なかったので、気にする者はいません」

「それは寂しい話だ。私たちは西の砂漠を渡ってきたのだが、追剥ぎにあうことも、他種属に狙われることも少なかった」

これは事実だ。そこにすこし刺激を与えてやる。

「なんとも平和でいいところじゃないか、ここは」

予想通り、女の眉がぴくりと上がった。

「旦那はたまたま幸運だったんだ。ここには甲鱗のワームって言うそこらの城よりもでかい化物が住んでたんだよ。

キィエルドーにいる奴ならその噂を聞いただけで、震えあがっちまう」

女は口調が崩れていることにはっと気づいて、口をおさえた。

俺は、それに気づかない能天気な旅人を装う。

「なるほど。そういえば、ここは獄帝勢と獣帝勢が大きくぶつかりあった場所だったな。

ワームとは獣帝の帝具『覚醒』によるものだったとか」

「え、ええ。そうです、はい。」

「結果的には獣帝勢が勝利し、ワームがそこに残った。住民は魂を抜かれずにすんだものの

ワームに苦しめられることになった。皮肉なことだ」

「あんた、いったい…?」

「しかし、どういうわけかこのところワームが町や都市を襲わなくなった。

そして、住民の様子がおかしいという噂が流れ始める。

一体なにが起きたのだろうな」

女は右手をそっと腰の剣にかけて、鋭い眼差しで俺を見た。

「何が起きたと思うんだい」




「獄帝の帝具『精神分離機』がここで使われてしまったんだろう?」



俺が言うと同時に、女は剣を抜刀しどこからともなく取り出した笛を力強く吹こうとした。

だが、笛から危険を知らせる音が発せられることはない。

「な、なんで……」

女は唇まであと数センチのところで震える笛と自身の左手を見ていた。

「あのさーこういうことをするなら、最初に言ってよね」

フェネックはすでにそれまでのキツネの姿をしていなかった。

若葉のように明るい緑の炎を凶悪な牙の間から漏れ出て、樹影にまぎれてしまうような灰色の毛と流れるような尾を持ち

黄金色の三日月の形をした獰猛な眼が、女を見ていた。。

サイコ・ビーストの中でも指折りの念動力と、純粋さをもつ生き物。

それは、狼の肉体をもち、竜の如き強靭な顎と爪をもっていた、

俺は、いつ見ても彼女の姿を美しいと思ってしまう。

「無視しないでよ!ねぇ!結構ぎりぎりだったんだから」

そう、中身の幼稚なアレを除けば、崇拝に値するというのに。

「悪かった。まさか、ここまで露骨に敵対されるとは思わなかったのだ」

「うそだー!君すんごい悪い顔してたもんっ。ぜったいいじめて楽しんでいたでしょ!」

「顔はもともとだ、放っておいてくれ。それより、どうしたものか。このまま誘拐して話をきかせてもらうか」

「また悪い顔してる……でもそうするしかないね」

「なぜだ?」

「もう片方の男が城門の中に逃げたから。きっとすぐに応援が来るよ」

「……どうして」

「わたしのせいじゃないよ!気づいたときにはもう逃げられたの!」

「ああ、うん」


眠くなったのでここまで!
引き続き厨二なフレーバーテキストを募集中です!

女を強引に目の前で引き倒し、彼女の両ひざを抱え込むように拘束した。

女は精一杯身をよじり、抵抗してくる。

「この変態っ!離せばか!」

「ならば真実を話せ。俺とてこんな危ない橋は渡りたくないのだ」

「この○○○野郎!」

とんだ言い草だ。俺はこの女に手を出すつもりは一切ない。

荷物の中から取り出しておいた投薬瓶から、きっかり三滴、自分の掌に垂らした。

そうしてから、女の膝の裏にも三滴垂らす。

これは激烈な効果を持つ笑い薬だ。

一滴でも肌に触れれば、一分間呼吸もできないくらいに笑い転げる。

周りから見れば、半狂乱といったところだ。

三滴ということは、三分間延々笑い続けることになるからして

異常に痙攣した横隔膜で痛むこと請け合いである。

だが、こんなものが危険と言うわけではない。

問題は、この女の心がどれほどの層を持っているかだ。

俺は首にかけていたペンダントをとりだし、女にかけた。

「な、なんだこりゃ?」女が素っ頓狂な声をあげた。

「これは、お前の魂へと到達するための帝具だ。

普段魂とはきつく閉ざされ、誰にも干渉することはできない。

だが、ある一定の条件を満たせば、帝具でこじ開けることができる。

例えば、『精神分離機』は持ち主のなによりも深い愛いや憎しみの感情に呼応して、発動すると聞く」

「……っ!」

「ふんっ、心当たりがあるようだな。

そして、これは『脳内旅行』という獄帝の帝具だ。

笑うという行為が、魂を無防備に曝け出した状態であることを利用したものだ。

対象が一体一であること、発動した際に精神崩壊を引き起こす可能性があるところから、戦争中でもめったに使われなかった。

獄帝にとっては、後身の『精神分離機』の方がよっぽど大切なのだろうな。おかげで俺のようなヒューマノイドが持っても、それほどは狙われん」

「ちょいと待ちな!『精神崩壊を引き起こす』ってのはどういうことでぃ!」

「誰かの思考の中で、迷うことはとても危険だ。相手の思想や価値観がダイレクトに伝わってくるわけだからな。

長くいれば俺が、俺でいられなくなる可能性は高い。そのせいでお前の思考の中に滞在できる時間は、三分間が限界とみている。

それを過ぎればお前と俺の魂は閉じられ、俺はお前の中から出られなくなる」

「んー?つまり、それはお前だけが危ないってことか」

女は底意地の悪い笑みを浮かべた。

「馬鹿が。一つの肉体に二つも魂が入っても見ろ。まず、精神は立ち代わり入れ替わって

まともな意識は保てん。そのうち、どちらかが滅びるまで精神世界で。血で血を洗う闘争が起きて、残った者はその弱り切った身体をさすりながら、フェネックに頭から喰われる」

「フェネックってあのバカでかい狼だよな。お前の仲間じゃないのか!?」

「フェネックの身を守る為でもあるが、一番の問題は

フェネックに何度も説明しても『よく分からないんだけどっ!』の一点張りだったことだ。諦めろ」

それを聞くと女はひくひくと口端を引き攣らせた。笑う前兆かもしれない。

今日はここまでです!
意地でも完結させます。なので突然終わるかも

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