関裕美「自然なデートの誘い方……」 (36)

裕美「………」ペラッ←観光雑誌を読んでいる

裕美「いつもPさんにはお世話になってるし、たまには私の方から、どこかリフレッシュできるような場所に連れて行ってあげたいな……」

裕美「で、でも。それっとなんだか……で、デートっぽいよね」

裕美「もちろん、そういうのが本題じゃないけど。でも、そうとられてもおかしくないし」

裕美「デート。デートかぁ……」ポーー

裕美「どういう感じで誘えばいいんだろう……意識したら、急に難しいような気がしてきた」

裕美「いつも頑張ってくれているPさんのためっていうことを伝えて、自然にお誘いするにはどうしたら……」


友紀「なにぶつぶつ言ってるの?」

裕美「きゃっ!? ゆ、友紀さん!」

友紀「あは、ごめんごめん。びっくりさせちゃった?」

裕美「い、いえ……私がぼーっとしていただけだから」



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友紀「なにか考え事?」

裕美「は……はい。実は――」カクカクカクナカ

友紀「なるほどー。プロデューサーのリフレッシュね」

友紀「裕美ちゃんは優しいいい子だね」

裕美「べ、べつにそんなことは」テレリ

友紀「でも、どさくさ紛れにデートに誘うってところはちょっと策略家~?」

裕美「あ、いや、ちがうの。そうじゃなくて」アタフタ

友紀(うっわー、この子かわいいなぁ)



友紀「とりあえず、自然なデートの誘い方が知りたいってことでいいんだよね?」

裕美「はい」

友紀「よーし、じゃあお姉さんがとっておきの誘い方を教えてあげよう!」

裕美「ほ、本当に?」

友紀「ほんとほんと」

裕美「どんな誘い方?」

友紀「こう誘うのさっ」

友紀「プロデューサー! いつもお仕事おつかれさまっ」

友紀「疲れた身体にはビールが欲しくなるよね! うんうんわかるよその気持ち!」

友紀「じゃあ、一緒にビールが楽しく飲める場所に行こうよ」

友紀「そう、みんなお馴染み東京ドームへレッツゴー!! 今日の先発は菅野だよー!」



友紀「ね?」

裕美「そんなことだろうと思ってた……」ジトーー

友紀「いやいや、ちゃんとデートに誘ってるじゃん。自然に」

裕美「そうだけど、そうですけど……私、そんなに野球に詳しくないし」

友紀「うーん、ダメかー」

友紀「じゃあ、助っ人を呼んでこようか。待っててね」

裕美「え? ちょっと、友紀さん……行っちゃった」

裕美「助っ人って、いったい誰を……?」

友紀「おまたせ!」

友紀「やっぱり助っ人と言えば外国人だよね! でも純正外国人は近くにいなかったから」

フレデリカ「呼ばれて飛びててフフフーン♪」

裕美(どうしよう……申し訳ないけど、まともなアドバイスが来るとは思えない)



フレデリカ「ほうほうなるほど」

フレデリカ「裕美ちゃんは優しいいい子だね~」

裕美「だ、だからそんなんじゃ」

フレデリカ「それで、自然なデートの誘い方だよね? ふっふふーん、それならこのフレちゃんにおまかせあれー」

友紀「よーいスタート!」



フレデリカ「見て見てプロデューサー!」

フレデリカ「全盛期宮本慎也のバッティングフォームの真似~」グイッ

裕美「すでにおかしいんですが」

友紀「右打ちうまそうなフォームだ!」

フレデリカ「晩年宮本慎也のサード守備の真似~」バッバッ

友紀「守備範囲は多少狭まっても、堅実さは相変わらずだったよね~」

フレデリカ「というわけで、神宮球場いこ?」

裕美「肝心のデートへの誘い方がまったく堅実じゃないんですけど」

フレデリカ「じゅりあす? じぇふん? うらでぃみーる?」

裕美「なんかフランス語っぽく言ってますけど、絶対フランス語じゃないですよねそれ」

友紀「お次の助っ人はこちら!」

夕美「裕美ちゃんやさしいね!」

裕美「ど、どうしてみんなそこから入るんですかっ」カアァ

夕美「デートの誘い方……正直私もよくわからないけど、こんな感じじゃないかな」

友紀「プレイボール!」




夕美「Pさん、ちょっといい?」

夕美「えっと、その。よかったら今度、一緒お花を見に行かない?」

夕美「きれいなものを見ると、心がすーっとなるし、Pさんにとってもいいリフレッシュになるかなって」

夕美「それに……私、あなたと一緒に、大好きな花を眺めていたいな。えへ」

夕美「だから……ね?」



友紀「おお!」

裕美「そうそう、こんな感じのものを求めて――」


夕美「一緒にいこ? 週末の横浜ヤクルト戦」

裕美「なんでそこからそうなるんですかっ!?」

夕美「え?」

友紀「え?」

裕美「わ、私がおかしいの!?」

友紀「結構きれいだよ? ハマスタの花火。たまに煙ばっかりで何も見えなくなるけど」

裕美「花は花でも花火だったの……?」

夕美「それだけじゃないよ。ベイスターズには、きれいな花を咲かせる選手たちがたくさんいるんだ」

夕美「今はまだ、チームがつぼみのままだけど……15年以上つぼみのままだけど……」ハァ

裕美「今ため息つきませんでした?」

友紀「夕美ちゃんはお父さんと一緒に、昔からスターの球団を応援してるらしいから」

裕美「そういえば、出身神奈川だっけ……」

夕美「でも、きっといつか。あの人達が、チームが、とっても素敵な花を咲かせるって信じているの」

夕美「だから私は、横浜スタジアムに足を運び続けるんだよ」

裕美「夕美さん……」

夕美「……うん」ニコッ


裕美「その気持ちはすごく素敵だと思うんだけど、デートの誘い方とは関係ないんじゃ」

夕美「あっ」

友紀「次の助っ人!」


智香「フレー! フレー! 裕美ちゃん! 優しい優しい裕美ちゃん!」

裕美「は、恥ずかしいからやめて……っ」テレテレ

智香「自然なデートの誘い方だね。任せて☆」

友紀「プレイ!」




智香「Pさんっ! 今日もお仕事お疲れ様です!」

智香「ちょっとお願い事があるんですけど、いいですか?」

智香「アタシ、いろんな応援のやり方を勉強したいなって思っているんです。だからたまに、今まで見たことのない応援を求めて、いろんな場所に足を運んでいるんですけど……」

智香「よかったら、それに付き合ってくれませんか?」

智香「Pさんの意見、とっても参考になりそうだし。それに、今度行く場所、初めてだから……エスコート、お願いしちゃったりなんてして……えへへ☆」

智香「だから……一緒に、来てくれませんか?」

智香「真夏の西武ドーム☆」


友紀「おお、自然だ! すごく自然だよ智香ちゃん!」

智香「いやあ、それほどでも」アハハ

裕美「………」

裕美「自然だけど……いつの間にか、自然な球場デートの誘い方になっているような」

友紀「次の助っ人!」


亜子「裕美はええ子やね……」ホロリ

裕美「だ、だからぁ」ワタワタ

友紀「で、どう? 亜子ちゃんの考えは」

亜子「自然な誘い方ね……あ、そうだ」

裕美「なに?」

亜子「とりあえず球場飯の味が気になるってところから始めたらええと思うよ?」

裕美「自然な球場デートの誘い方を知りたいわけじゃないんだけど……!」ギロリ

亜子「うひゃあっ! えっ、違うん? だってさっきからそんな話に」

裕美「違うのっ」

友紀「わお、相変わらずすごい眼力……」

亜子「で、出直してきますー……でもご飯って発想はありやと思うよ?」

裕美「あ、えっと……別に、怒ってるわけじゃないから」

裕美「ちゃんと考えてくれたんだよね。ありがとう……」

亜子(うっわ、かわいいなぁ)

友紀「それじゃ、次! 次は期待できるよ!」

のあ「………」

裕美「の、のあさんを連れてきたんですかっ!?」

友紀「だって頼りになりそうじゃん。強いし」

裕美「そ、それはそうだけど……恐れ多いというか」

のあ「………」

友紀「さあ、のあさん。裕美ちゃんにアドバイスをっ」

のあ「………」ジッ

裕美「………」ドキドキ

のあ「……ちゅ」

裕美「ちゅ?」

のあ「中華系……シウマイなどは、あらかじめ中華街で買って持ち込むといいわ。球場ではみかん氷を買いなさい……」

のあ「選手プロデュース弁当があった場合は……よく考えてから決めること……」

のあ「………幸運を」スタスタスタ

裕美「………」

裕美「あの、行ってしまったんですけど……」

友紀「今のは、ハマスタでのご飯の食べ方のレクチャーだね」

裕美「結局球場飯じゃないですかっ!!」

友紀「あ、のあさん戻って来た」

裕美「えっ? あ、今の声聞かれちゃった……?」



のあ「裕美……優しいわ」

裕美「わ、わざわざそれ言いに戻ってきたんですかっ?」

友紀「ノルマ達成だね」

友紀「つぎ!」

藍子「こんにちは」

裕美「あ、藍子さんなら……いや、でも夕美さんの例があるし……」

藍子「裕美ちゃん、やさしくていい子なんだね」

裕美「球場飯の話じゃなければもう……なんでもいいかも……」ブツブツ

友紀「言われすぎてだんだん慣れてきたね」



藍子「デート、かどうかはべつとして……誰かを自然に誘うやり方、ですよね」

藍子「それなら、こんな感じにやるのはどうかな」



藍子「Pさん。今度のお休み、一緒にお散歩にいきませんか?」

藍子「たまには、ゆっくりと静かに、穏やかな時間を過ごすことも大切だと思うから」

藍子「いつもは、どうしても急がなくちゃいけない状況が多いけれど……だからこそ、心を落ち着ける時間が必要だと思うんです」

藍子「自分自身を見失わないように……少しだけ、のんびりしてみませんか?」ニコッ


裕美「す、すごい……自然にお出かけに誘えてる」

裕美「これは、参考にできるかも」

友紀「藍子ちゃん、藍子ちゃん」

藍子「はい?」

友紀「お散歩先は後楽園にしない?」

藍子「え? 後楽園ですか?」

裕美「まともだったからって無理やり野球をねじこまないでくださいっ」

友紀「はい、じゃあ次!」

笑美「ろーっこうおろーしにー♪」

裕美「登場からすでにダメ」

笑美「ツッコミが厳しいっ!?」

友紀「裕美ちゃんもだんだん疲れてきてるねー」

裕美「というか、友紀さん何人連れてきてるんですか……」

友紀「んっとねー、確か合計17人」

笑美・裕美「多いっ!!」

笑美「草野球できるやん!」ビシィッ

友紀「いやー、あたし将来は、野球チーム作れるくらい子どもが欲しいと思ってるんだよね!」

裕美「それ今関係ないでしょっ!」ビシィッ

友紀「ま、あたしの人徳がなせる業だよねっ」

笑美裕美「なんでやねんっ!」ビシィッ


笑美「………」チラ

裕美「………」チラ

笑美「裕美はん」

裕美「笑美さん」

がしっ!

友紀「わお、熱い握手」

風香「よ、よろしくお願いします」

裕美「風香さん。風香さんも来てくれたんですか?」

風香「は、はい……あの、すみません。私なんかじゃたいして力になれないとは思ったんですけど」

裕美「そ、そんなこと言わないでください。風香さんの気持ち、うれしいから」

風香「裕美さん……うぅ、いい子ですね」

友紀「そうそう! 風香ちゃんも謝らずに、ガンガンいこうよ!」

風香「そ、そうですね。すみません……あ」

裕美「あ、あはは……」

風香「ごめんなさい、癖で……」

友紀「むむむ……あ、そうだ」

友紀「風香ちゃん風香ちゃん。すみませんとかごめんなさいとか、そういうのを言わずにすむいい方法があるよ」

風香「ほ、本当ですか?」

友紀「うん。それはね」ゴニョゴニョ

風香「……なるほど!」

裕美「?」

友紀「レッツゴー☆」

風香「お待たせしました、裕美さん。すみま……っと」

風香「すみま関根大気さんです」

裕美「……え?」

風香「すみま関本賢太郎さんのほうがいいですかね」

友紀「すみま関谷」

風香「ごめんな歳内さん」

友紀「あ、それよさそう!」

風香「あ、ありがとうございますっ」


裕美「………」

裕美「確かに、すみませんは封印されているのかもしれないけど。何かが違うような」

友紀「風香ちゃん、自信つけて帰っていったね」

裕美「すまんりっじーって歌ってましたね」

友紀「いいことしたよ」

裕美「……ところで、自然なデートの誘い方は」

友紀「あ」

友紀「だ、だいじょーぶ! 次の助っ人がフォローしてくれるよー! どうぞっ」


きらり「にょわ~☆ やさすぃー裕美ちゃんのために、一肌脱ぎに来たにぃ☆」

裕美「きらりさん」

きらり「やっぱり行くなら神宮球場がおすすめだにぃ」

裕美「……だから、球場デートの誘い方じゃ」

きらり「ううん? 冗談でも勘違いでもないよ?」

裕美「え?」

きらり「Pちゃん、毎日一生懸命お仕事がんばってるでしょ? ホントにおっつおっつばっちし☆」

きらり「あれもこれもやらなくちゃいけないのに、きらり達のお世話もちゃーんとしてくれる……たぶん、きらり達が思うよりもずっとストレスを感じてるにぃ」

裕美「それは……うん。そうかも」

きらり「そういう時は、ゆるーくくつろげる場所がばっちしばっちし!」

きらり「ぽつぽつ空いている席がある外野席に座って、好きな時に食べて飲んで、空の下でたまーに歌って。盛り上がる時はみんなでハイタッチ☆」

きらり「平日の神宮球場は、そういういい場所なんだよぉ?」

友紀「あー、わかるわかる。東京ドームもいいんだけど、夜空の下で見る野球も最高なんだよね!」

裕美「そうなんだ……野球観戦って、もっと落ち着きのないものだと思ってた」

友紀「まー確かに、応援を思いっきりするってなったら落ち着いていられなくなるかもだけど」

恵磨「でも、応援もいいもんだぜ?」

裕美「恵磨さん? 恵磨さんも野球場にいくんですか?」

恵磨「おう! こっちは大阪生まれで根っからのバファローズファン!」

恵磨「近鉄はなくなっちゃったけど、今はオリックスを応援してるんだ!」

友紀「東京にきてからも、恵磨ちゃん結構オリックス戦行ってるもんね」

恵磨「ビジターばっかりだけど、それもそれで楽しいんだよな」

恵磨「こっち側の応援が少ない分、自分の声援が選手に届きやすい気がする」

きらり「それ、わかるにぃ」

恵磨「アタシさ、普段は声がムダにでかいって言われるときもあるんだけど……球場で応援するときは、声がでかいほうが絶対いいもんな!」

恵磨「自分の声が、相手に力を、パワーを与える! それってアイドルと似てるんじゃないかって、最近ちょっと思う!」

裕美「アイドルと、似てる……」

友紀「選手の名前を思い切り叫んだら、それに応える大活躍を見せてくれたーなんて時は最高だよね!」

裕美「………」

裕美「もう少し……他の人の意見も、聞いてみたい、かも」

沙紀「野球っすか?」

沙紀「いいっすよね。白いボールを人が投げて、それを人が木の棒で打つ。シンプルに言えばそれだけなのに、あれだけたくさんの人の心を惹きつけるのはすごいっす。あれもある種のアートっすね、きっと」

裕美「もし、Pさんと一緒に球場に行ったとしたら?」

沙紀「んー? 楽しいんじゃないかな……適度にくつろいで、適度に盛り上がって」

沙紀「ホームランが出たらハイタッチかまして、サヨナラ勝ちなんてしたら、もしかして抱き合ったりとか……」

沙紀「……抱き合う」

裕美「沙紀さん?」

沙紀「あー、あー、なんでもないっす! 今日は暑いっすね、ははは!」

裕美「?」

日菜子「野球観戦ですか? いいと思いますよ」

日菜子「日菜子はベイスターズを応援しているんですけどね、今年はいけると思うんですよ」

日菜子「むふふ……右腕の生え抜きエース……左腕王国……鉄壁の中継ぎ陣……むふふふふ」

日菜子「倉本さん3割……宮崎さん覚醒……石川さん頑張って……ジェイミーもそのうち打ちます……」

日菜子「そして秋には優勝決定戦……ドラマチックベイスターズの歴史的瞬間を、日菜子は王子様と一緒に……」

日菜子「幸せな瞬間を、幸せになりたい人とともに……これ、とても素晴らしいことですよね」

日菜子「むふ……むふふふふふ♪」

裕美「い、いつもより妄想の度合いがすごいような」

友紀「今年もスターの球団は上がったり下がったり忙しいよね」

美穂「そうだなあ……アイドルと野球選手、実は少し似ているのかも」

飛鳥「ともに偶像さ。ボクらも、彼らも」

飛鳥「そのパフォーマンスでギャラリーを魅了し、ひとときの夢を与える存在。そう表現すれば、何か近しいものを感じるだろう」

美穂「あ、なんとなくわかるかも」

裕美(わかるんだ……)

裕美「ちなみに、Pさんを球場デートに誘うとしたら?」

美穂「で、ででデートっ!??」カアァ

飛鳥「そうだね……デートなんてものは、生まれてこの方経験したことがないけれど」

飛鳥「ボクのイメージから語らせてもらうなら、こうなるかな」


飛鳥「さあ――ボク達の戦争(デート)を始めよう」

美穂「どこかで聞いたことあるような……」

裕美「美穂さんは?」

美穂「わたし? わたしは……うーん」

美穂「素直に気持ちを伝えるかな。プロデューサーと一緒に、思い出を作りたいです、って」

裕美「……なんだか、素敵ですね」

美穂「そ、そうかな。ちょっと照れちゃうね、えへへ」

愛海「野球観戦? いいよね!」

裕美「え……愛海さんも好きなの? 球場観戦」

愛海「うん、好き! 思わず夢中になっちゃう!」

裕美「そうなんだ。なんだか意外かも」

愛海「一生懸命前を向いて頑張っている人の姿って、かっこいいでしょ?」

裕美「うん……そうだね」

愛海「ま、売り子さんのお山を見るのに夢中になっちゃうのが悩ましいところだけど!」

裕美「………なんか、安心した」

奈緒「野球観戦かあ……実は一回、Pさんと一緒に行ったことがあってさ」

裕美「そうなんですか?」

奈緒「ロッテの試合で、アニメとのコラボイベントがあって……思い切って誘ってみたんだ」

奈緒「そしたら、割とすんなり来てくれて……二人で試合見るの、思っていた以上に楽しくて」

奈緒「って、別にあれだぞ! めちゃくちゃ楽しかったとか、そこまでじゃないからなっ」

裕美「は、はい」

奈緒「それで、試合が終わった後……うちが球場から近かったから、親に招待しろって言われて。勇気出して誘って、なんだかんだでPさんと一緒にうちで晩御飯を食べることになって」

奈緒「うちの料理をおいしいおいしいって言いながら食べてくれたのが、なんでかすごくうれしくてさ」テレテレ

裕美(普段奥手な奈緒さんがここまで……野球観戦、すごい)

奈緒「なんか失礼なこと考えてないか?」

瞳子「プロ野球……一軍の試合の華やかさもいいけれど、私は二軍の試合を見るのも好きよ」

裕美「二軍ですか? どうして」

瞳子「そうね……煌びやかなステージを目指して、必死に努力を続けている選手たちの姿が見られるから、かしら」

瞳子「特に、一度自由契約になって他球団に拾われた選手には、傲慢だけれど自己投影をしてしまっているんだと思うわ」

裕美「自己投影?」

瞳子「私も、一度は挫折を経験した身だから。Pさんに手を引かれて、ここまでやってくることができたけれど……あの時あの人と出会わなかったら、それで終わりだったわ」

瞳子「這い上がることに、夢をもう一度抱くことに、遅すぎるなんてことはない……彼らを見ていると、その気持ちがより強くなるの」

瞳子「だから私も、挑み続けるわ。すべてを出し切るまで」

裕美「瞳子さん……」

瞳子「……ふふ。こんなこと、14歳のあなたに話すような内容じゃないわね。ごめんなさい」

裕美「いえ……私も」

裕美「私も、一度は諦めかけていたものがあるから……みんなを笑顔にできるような、笑顔」

裕美「今は、瞳子さんと同じ。やれるところまで、やりたいと思ってるから」

瞳子「……素敵なことよ、それは」ニコ

友紀「お、戻ってきた」

友紀「どうだった? みんなに話を聞いた感想は」

裕美「時々話が脱線しかけることもあったけど……」

裕美「野球って……素敵なのかなって、思いました」

友紀「そっかそっか! それはよかった!」

裕美「あの……ひとつ、聞いていいですか」

友紀「うん?」

裕美「もしかして、最初の最初から、私に球場デートを勧めたかったんじゃ」

友紀「そうだよー」

裕美「それなら、最初から自分でおススメすればよかったのに」

友紀「だって、普段から野球野球言ってるあたしがおススメしても、ひいき目入ってるって思われちゃうでしょ? だから、いろんな人の話を聞いてもらいたかったってわけだよ」

裕美「………」

裕美「意外と策士ですね、友紀さん」フフ

友紀「ま、オトナだからね~」ニコニコ

友紀「剛速球やぐねぐね曲がる変化球で三振をとるのも、空へ向かってホームランをかっ飛ばすのも」

友紀「風を切るように走るのも、華麗なグラブさばきも」

友紀「全部が全部、魅力的だから。一回プロデューサーと行ってみなよ、裕美ちゃん!」

裕美「………」

裕美「私の負けですね。誘いたくなっちゃいました」

友紀「いえーい!」

裕美「でも、どういうふうに誘えば……」

友紀「それはね――」ゴニョゴニョ

夕方


裕美「Pさん……お仕事、お疲れさま」

裕美「あの、ね。今度、ふたりとも仕事がお休みの日があったよね」

裕美「その日なんだけど……一緒に、神宮球場にいかない?」

裕美「うん……そう、野球。私、生で見るのは初めてなんだけど」

裕美「でもきっと、Pさんと一緒に楽しめると思うから」

裕美「えっと……」

裕美「ロマンはもういないけど、ロマンチックな思い出なら、きっと作れる……から」テレリ

裕美「………」

裕美「ごめん、やっぱり今のセリフなし。忘れて」

裕美「って、きゃあっ!? ちょ、なんでいきなり頭をなでなでしてくるのっ!」

裕美「そんなにかわいいかわいい言わないでっ。は、恥ずかしいから……」カアァ

友紀「……うん、うん」

友紀「一件落着! 大成功!」

友紀「野球はいいぞ! 野球は楽しいぞ!」

友紀「だからみんなで野球場へ行こう!」



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
球場飯が食べたい


関係ない過去作
市原仁奈「梨沙おねーさんは、動物にモテモテでごぜーます」
橘ありす「雪美さんのお姉さんになります」
モバP「えっちえりん」

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