キョン「……はぁ」
ハルヒ「……」
長門「……」ペラ
キョン「……はー」
朝比奈「キョンくん、どうしたんでしょうか……」
古泉「いやにため息が多いですね。彼にしては珍しくなにか悩むようなことがあるのでしょうか?」
キョン「…………はーぁ」
ハルヒ「あ、そうだ」
ハルヒ「今日あれじゃない、節分。だったらやらなきゃ豆まき」
朝比奈「豆……まき?」ハテ
ハルヒ「あと恵方巻も! 失念してたわ、まさか今日がもう節分だったなんて」
長門「恵方巻」パタン
ハルヒ「行事ごとに積極的に関わっていくSOS団としてはもちろん、節分も見逃せないわよね」
古泉「では、今から買い出しに向かいますか?」
ハルヒ「その必要はないわ、キョン!」
ハルヒ「ちょっと一っ跳びで恵方巻と豆と鬼面とを『スーパー平安時代!!』で買って―――」
キョン「はぁ……」ガサッ
ハルヒ「きてるわね!! 上出来よ!!」
古泉「す、素早いっ! 気だるげな、悩まし気な雰囲気を醸し出している割にいつもより行動が俊敏です」
朝比奈「そ、それに涼宮さんの言うことに何も反抗せず従っています!! こ、これは……」
古泉・朝比奈「「(いつもよりスムーズな有能かも……!!)」」ピッシャーン!
長門「それはいつもの彼に失礼」モグモグ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462708290
ハルヒ「はい、じゃあみんな恵方巻持ったわね。あ、食べてる最中は無言じゃないとダメよ? 祈りが届かなくなるとかそんなんだから」
朝比奈「(そ、そんなんなんだ……)」
古泉「今年の恵方は……あちらですね」
ハルヒ「みんな向こうむいてー、いただきます」パクッ
朝比奈「いたあだきまぁす」パクッ
古泉「いただきます」パク
長門「ごちそうさま」
朝比奈「ブフォッッ……!」
ハルヒ「…………」モグモグ
キョン「……………………」ボー
ハルヒ「…………」ガッ!!
キョン「……………………」モガ
キョン「なんの儀式だこれ!!!!!」バーン!
ハルヒ「儀式じゃないわよ!!! 文化!!! 伝統よこれ!!! って喋っちゃったじゃない!! あんたのせいで!!!」アー!
キョン「バッカやろう!! 気づいたら口の中に恵方巻が入ってた俺の気持ちが分かるか!?!? 恐怖でしかねえよ!!」
ハルヒ「それはあんたがボーっとして一向に食べないからでしょ!!」
キョン「ボーっとしてる人間に恵方巻つっこむなんざ人間じゃねぇ!!! いっそ鬼そのものだろうがお前!!」
ハルヒ「あーもう!! うるさいうるさい!! これならボーっとしてた時の方が静かでよかったわよ!!!」
キョン「……………………」ボー
ハルヒ「うわぁ!!! 急にボーっとするんじゃないわよっっ!!!」バシッ!
古泉「モグ……ご馳走様、やはりSOS団はこう騒がしい方が『らしい』ですね」
朝比奈「んんっ……!」モグモグあー!
>>4 ミス訂正
ハルヒ「はい、じゃあみんな恵方巻持ったわね。あ、食べてる最中は無言じゃないとダメよ? 祈りが届かなくなるとかそんなんだから」
朝比奈「(そ、そんなんなんだ……)」
古泉「今年の恵方は……あちらですね」
ハルヒ「みんな向こうむいてー、いただきます」パクッ
朝比奈「いたあだきまぁす」パクッ
古泉「いただきます」パク
長門「ごちそうさま」
朝比奈「ブフォッッ……!」
ハルヒ「…………」モグモグ
キョン「……………………」ボー
ハルヒ「…………」ガッ!!
キョン「……………………」モガ
キョン「なんの儀式だこれ!!!!!」バーン!
ハルヒ「儀式じゃないわよ!!! 文化!!! 伝統よこれ!!! って喋っちゃったじゃない!! あんたのせいで!!!」アー!
キョン「バッカやろう!! 気づいたら口の中に恵方巻が入ってた俺の気持ちが分かるか!?!? 恐怖でしかねえよ!!」
ハルヒ「それはあんたがボーっとして一向に食べないからでしょ!!」
キョン「ボーっとしてる人間に恵方巻つっこむなんざ人間じゃねぇ!!! いっそ鬼そのものだろうがお前!!」
ハルヒ「あーもう!! うるさいうるさい!! これならボーっとしてた時の方が静かでよかったわよ!!!」
キョン「……………………」ボー
ハルヒ「うわぁ!!! 急にボーっとするんじゃないわよっっ!!!」バシッ!
古泉「モグ……ご馳走様、やはりSOS団はこう騒がしい方が『らしい』ですね」
朝比奈「んんっ……!」モグモグ
キョン「節分だぁ? 何も今日しなくったって……」
ハルヒ「今日以外いつするのよ!!? 今日が節分だって言ってるでしょ!!!」バーン!
キョン「来年だってできるじゃねえか」
ハルヒ「毎年やるわよ!?!!? そんな何年に一度とかの行事じゃないからこれ!!!」ババーン!
朝比奈「ケフッ、ご、ご馳走様……」
長門「お茶を……」
朝比奈「あ、ありがとうご―――」クルッ
長門「淹れて欲しい」
朝比奈「あ、え、はいっ! た、ただいま!!」ダッ!
古泉「涼宮さん、豆まきはどこで行うおつもりですか?」
ハルヒ「んー、ここでやってもいいけど、掃除を……!」キラーン
キョン「やらんぞ」
ハルヒ「キョンが!!!……やらないと思うから、渡り廊下から中庭に撒きましょ。鳥が掃除してくれるだろうしね」
古泉「では参りましょうか」ガタッ
朝比奈「豆を撒く……うーん?」
長門「……」スタスタ
ハルヒ「あ、有希! どこ行くの? 渡り廊下はこっちよ」
長門「中庭」
ハルヒ「なんで?」
長門「豆を……食べる」キリッ
ハルヒ「投げつけられた豆を!!?!? 撒いた豆を!!?!?」ガーン!!
ハルヒ「だ、ダメよ!! あなたは撒く側!! ちゃんと食べる用の豆もあるから!! ていうかそんな有希を見たくないッ!!!」
長門「そう……」
古泉「(見てみたい気も……いえ、しませんね)」
ハルヒ「いーい? かけ声は、福は内ー!! で統一だからね」
キョン「鬼を討てー! の方は?」
ハルヒ「そんな方聞いたことないけど、鬼は外の方なら言うのは禁止よ」
ハルヒ「あたしは『泣いた赤鬼』を呼んで以来、鬼には優しくしてあげようって心に決めたわけ!」
キョン「ふーん。んっ、なんだ? 頭から急に角が……生えて……」ニョキニョキ
古泉「うわ……」
朝比奈「ひぇ!」
ハルヒ「化け物っっ!!!」マメマキッッッ!!!
キョン「…………」バシーン!!!!
ハルヒ「あ…………」
キョン「…………」ヒリヒリ
古泉「お、鬼の皮膚のように赤く……腫れて……」
ハルヒ「……とまぁこんな風に福を内に呼び込むわけ!!」
キョン「嘘つけ!! 完全に鬼を撃退する感じだったじゃねえか。豆一つ一つに殺意が籠ってたぞ」
キョン「ったく、鬼に優しくするなんて言うからなってみたのに……いっつ! 角抜くの大変なんだぞ?」ブチブチィイイィ!
朝比奈「キュウ……!」バターン!
古泉「朝比奈さーーーん!!!! 違います!! コーン!! あれとん○りコーンですから!!! 朝比奈さーーん!!!」ユサユサ
長門「とんが○コーン?」ピクッ
古泉「長門さんが反応してどうするんですか!? ありませんよそんなものは!!!」
長門「……すまない」
キョン「…………はぁ」
ハルヒ「はい福はー内ー! 福はー内ー!!」ポイッ! ポイッ!
朝比奈「ふ、福はー内―? 福はー内ー?」ポイッ ポイッ
長門「福は内、福は内」ポイ ポイ モグモグ
古泉「福は……長門さん、豆を口の中にリリースするのはやめて下さい。中庭に投げましょう」
長門「福を呼び込む豆をあえて体内に吸収することにより、幸福エナジーをより密に吸収―――」モグモグ
古泉「長門さん」
長門「福は内、福は内」ポイ ポイ
ハルヒ「福はー内ー!! しまった。これみくるちゃんに巫女さんの衣装でも着させて有料イベントにすれば良かったわね」
ハルヒ「そうすれば一気にSOS団の知名度もあがったのに!」
朝比奈「み、巫女さんですか……?」
ハルヒ「ん? メイドでもいいけど?」
朝比奈「そ、それはなんとなくですけど、関係なさすぎる気が……」
長門「福は内、福は内」ポイ ポイ
長門「…………」ジィ
古泉「長門さん?」
長門「…………もったいない」
古泉「そんな主婦的な……ええ、ですがこれもこの国の伝統的な風習なんですよ」
長門「朝倉涼子が何というか……」
古泉「あぁ……いやしかし、朝倉さんなら豆を袋に入れてから投げ掃除する手間を除くといった方法を―――」
長門「食べ物を粗末にする風習は廃止すべき」
古泉「……根付いてしまった文化、風習を取り除くのは難しいですね」
長門「情報操作は得意」スッ
古泉「やめてください」
キョン「…………はぁ」
古泉「……そろそろ伺いたててもよろしいでしょうか?」
キョン「…………節分の起源は」ハァ
古泉「いえ、そうではなく」
キョン「違うのか」
古泉「あなたが思い悩んでいる原因について、ですよ」
キョン「……悩む? バカを言え、この俺に悩み事などありは……」
古泉「…………」
キョン「……俺そんなに分かりやすいことしてたのか?」
古泉「お気づきになりませんでしたか? ここ1週間ほどあなたは時々上の空状態になっていましたよ」
キョン「多分その内7割は『スーパー平安時代!!』のことだとして残り3割もか……」
古泉「えっ」
キョン「えっ」
古泉「い、いえ……ではその3割、あなたを悩ませる原因の3割は一体どのようなことなのです?」
キョン「…………」
古泉「……正直申しますと、我々『機関』はあなたが敵対組織に幾度か接触したという情報を得ています」
古泉「最後に接触したのが先月の中頃、恐らくはそこでの出来事が原因かと……」
キョン「そこまで調べ上げてるのか……なら古泉」
古泉「なんでしょう?」
キョン「あの未来人が巨乳フェチだって情報は……」
古泉「…………えっ」
キョン「……知らなかったか。すまん藤原何奴、お前のフェチをまた世界に広めてしまった……遺憾だ」グッ
古泉「……え、ええと……あの、あれ?」
ハルヒ「ほーらおいで―ハトポッポー。あ、でもすっごい菌もってるから適度に近寄っておいで―」ポイ ポイッ
朝比奈「な、中庭だけじゃなくて渡り廊下にも集まってきましたね……いいのかなぁ」
ハルヒ「ほーら、豆をお食べ―」ポイッ
長門「承知した」シュッッ!! パクパクッッ!
ハルヒ「ちょ」
キョン「悩みって程でもないんだがな。そのことで頭がいっぱいになったり、周りが見えなくなるほど考え込んだりするだけで」
古泉「ええ、十分重大な悩みに該当しますね、それは」
キョン「そうなのか、自覚はないがな」
古泉「自覚してください。ありありと傍目からでも分かるんですから」
キョン「と言ってもなぁ……悩みではあるにしろ、解決ができるできないってモンじゃないからなぁ」
古泉「と、いいますと?」
キョン「まぁ……なんだ。お前の言う通り先月奴らに会った時によ」
キョン「なんだかんだで佐々木と会うことになってよ」
古泉「…………えぇ!? そんな軽いノリでみたいな!?」ガーン
キョン「なんとなくでいけた」
古泉「なんとなく、ってそんな」
キョン「で、あの電波宇宙人に案内してもらったんだが……」
キョン「…………はぁ」
古泉「そ、そこでどのような問題が……?」
キョン「…………」
キョン「…………どうやら俺」
キョン「親友に避けられてるっぽい……」ズーン
古泉「…………は?」
キョン『よう……親友』
『……………………』
周防『――――――ふ―――ふふ!』
キョン『ようやくご対面じゃねーか、あの改変世界はなしにしてな』
『……………………』
キョン『所謂、敵対同士? って感じで再会するとは思いもよらなかったがな。前例もないし』
キョン『お前もお前で随分癖の強い連中を引き連れてるみたいじゃねーか、結構趣味変わったなお前』
周防『―――く―――ふふっ―――ふふふ!』
キョン『……ま、お前はこいつらに担がれてるだけかも知れねーが、どうするつもりだ?』
キョン『お前と争うような真似はしたくない、したくないが』
キョン『ハルヒに手を出そうってんなら話は別だ、筋違いだぜそれは』
『……………………』
キョン『【お前】を継いだのは確かにハルヒだ、それに口や手を出そうってんなら今までの【お前達】が嘘になる』
キョン『……というかそもそも、いくらお前とはいえまず、どうやってまたこの世界に姿を現したんだ?』
周防『―――あは―――はははは―――ははっ!!』
キョン『ハルヒはしっかり力を持ってるし、【器】としても問題はない』
キョン『だとしたら……』
キョン『【お前】は【誰】で、何の【力】を持っているんだ……?』
『……………………』
キョン『……答えてくれ』
周防『―――あーっはっははははははははははは!!』
キョン『……あ゛-!! うるっせぇ!!! お前もお前でさっきから何一人で笑ってやがる!』
周防『―――だって―――あなた―――』
周防『さっきから誰に話しているの?』
キョン『・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』
古泉「…………誰もいなかった。ということですか」
キョン「ああ、そしてそれに気づかなかった俺というまぬけな構図が完成する」
古泉「ものすごく笑われてましたからね……つまりは彼女に騙された、ということなんでしょうか?」
キョン「まぁそうだろうが、完全にそうだとは言い切れないな」
古泉「どういうことです?」
キョン「初めから『佐々木』があの場にいなかったのだとしたら、さすがに俺は気づいてるはずだ」
キョン「つまり、周防はちゃんと『佐々木』の場所に案内したが、俺がきたと分かった『佐々木』はどっかにいっちまった」
キョン「まだ自分がそこにいるかのように俺を騙してな」
古泉「あなたを騙すほどの相手……ですか」
キョン「周防が何をしたいのかは分からんが……『佐々木』が俺から何故逃げるのかが分からん……」
キョン「……親友なのに」ズーン
古泉「……意外とメンタルが逞しくありませんね」
キョン「うるせぇ、女々しい部分だって俺にはちゃーんとあるんだよ」
古泉「確かに、あのあなたが一人の人間に避けられているからへこんでいる、とは考え難いですからね」
キョン「親友に避けられている、となりゃ分からんこともないだろう?」
古泉「それは……そう、かもしれませんね」
キョン「あん?」
古泉「いえ、何でも」
キョン「というか、俺はともかく、ハルヒがだな―――」
ハルヒ「キョーン! 古泉くーん!! 豆なくなったから部室戻るわよー!!」
古泉「はい、ただいま。涼宮さんが何か?」
キョン「……いんや、別に」
「それじゃあ、あとはそっちの俺が全て理解しています。くれぐれも、お気をつけてください」
「はっ、はい。え、と……行ってきます……?」
ここまでー
前スレ
ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」
ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440765266/)
ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」 キョン「退屈しないだろ?」
ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」 キョン「退屈しないだろ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441618557/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEE!!!!!!」 キョン「暴走するなよ?」
ハルヒ「キョンTUEEEEEE!!!!!!」 キョン「暴走するなよ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444835920/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEEE!!!!!!!」 キョン「消失してるぞ?」
ハルヒ「キョン「TUEEEEEEE!!!!!!!」 キョン「消失してるぞ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446966133/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEE!!!!!!!!」キョン「動揺してるな?」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEE!!!!!!!!」キョン「動揺してるな?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450521607/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEE!!!!!!!!!」 キョン「憂鬱入ってるよなぁ」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEE!!!!!!!!!」 キョン「憂鬱入ってるよなぁ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455258389/)
7スレ目になります。
投下頻度が心配ですが、よろしくお願いします。
九時までにはとーかー
とーかー!
キョン「……」キィ
キョン「(古泉にも言われたが最近随分ボーっとすることが増えたみたいだな)」
キョン「団活を疎かにするわけにもいかんし、そろそろ気を引き締めて……」
カタン
キョン「……おや、今聞き間違いでなければそちらの掃除用具入れから音がしたヨウナ」ハテ
キョン「…………おーけい、どこもかしこも問題を俺に押し付けるのがトレンドらしいな」
キョン「お蔭でこの一年間退屈はなかったが……随分奔走したぜ」
キョン「中でも―――」
ガチャ
朝比奈(?)「こ、こんにちはぁ……」
キョン「時空をかける系にはな。こんにちは、朝比奈さん」
キョン「とてつもなく急に発生する展開ってのも中々に慣れてきましたよ。大分今更ですが」
朝比奈(?)「え、っと……あの、キョンくん? その、事情は……」
キョン「えーえー、もちろん理解していますよ。なんてったって俺ですよ、俺!」
朝比奈(?)「そ、そう。よかっ―――」
キョン「安心してください、朝比奈さんが掃除用具入れに住んでるなんて誰にも言いませんから!」
朝比奈(?)「ちちち違いますよぉ!!! あれ!? ほ、ホントに分かりませんか!?」
キョン「んー……ハッ! ま、まさか閉所フェチ……!」
朝比奈(?)「違いますっ!! も、もしキョンくんが何も知らないんだったらホントに困ることに……!」
朝比奈(?)「キョンくん! ダメっ! こっち! 隠れて!!」グイッッ!
キョン「あっ! これはまさか掃除用具入れの中でドキッ! 密着ハプニング的な―――え?」
キョン「朝比奈さん? ここ、窓。押すと危な―――」
朝比奈(?)「ごめんなさいっ!! 多分大丈夫ですよねっっ!!!」ドンッ!
キョン「嘘ですよねぇぇぇええぇえええ朝比奈さぁぁあああああああああああぁああ―――!!」
朝比奈(?)「っ!」パタン
ガチャ
朝比奈「あれ? キョンくんの声がしたと思ったけど……気のせいかなぁ?」
朝比奈(?)「(キョンくんごめんなさいキョンくんごめんなさい。これは既定事項これは既定事項)」
キョン「…………」ガサッ
キョン「……解せぬ」ボロッ
朝比奈(?)「(とりあえず、『わたし』がどこかへ行くまでばれない様にしないと……)」
朝比奈「ふんふーん♪ キョンくんのカバンが置いてあるから、トイレでも行ったのかな?」
朝比奈「長門さんも来てないみたいだし……来る前にお茶の準備しておこう」
朝比奈「確かこの前買った新茶が……」ゴソゴソ
朝比奈(?)「(……わたしって意外とひとり言多いんだ……じゃなくて!)」
朝比奈(?)「(確かこの後、長門さんが……)」
ガチャ
長門「……」
朝比奈「あ、長門さんこんにちはぁ。今お茶淹れますね」
長門「……」
朝比奈「? どうしたんですか、長門さん。扉の前に立ったままで……」
長門「ついてきて」
朝比奈「え、どこにですか? それにわたしが、ですか……?」
長門「そう、怪しいところに行く」
朝比奈「あ、ああ怪しいところ!?!?!!? そんな抽象的な!?」ガーン!
朝比奈「だ、ダメですよぉ!! そ、そんなトコ行っちゃあ!」
長門「では一人で行く」スタスタ
朝比奈「あっ、ダメっ! ま、待って! 待ってください長門さぁん!」タッタッタ!
朝比奈(?)「…………」キィ
朝比奈(?)「……た、助かった……?」
キョン「えぇ、ギリギリですけどね」ボロッ!
朝比奈(?)「っ!?」ビクーン!
朝比奈(?)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」ペコペコ
キョン「もう大丈夫ですよ。とっさの判断にしちゃ迷いなくアグレッシブでしたけど」
キョン「それで……今の状況でしたよね? 落ちていく間に大体ほぼ分かりましたよ」
朝比奈(?)「わ、わたしの抹消方法……?」ガタガタ
キョン「そんな物騒な……そんなことしませんよ、ていうか怒ってませんってば」
キョン「朝比奈さん……あなたは『未来から来た朝比奈さん』で間違いありませんね?」キリッ
朝比奈(?)「え……ええと、はい。ですけど……」
朝比奈(?)「こ、この時代にいる以上はどちらのわたしも未来人なので……その……」
キョン「……………………なんという羞恥」
キョン「すいません、キメ顔まで作って的外れなこと言ってしまって」
朝比奈(?)「い、いえ! そ、それにニュアンスではちゃんと伝わりましたからぁ!」
朝比奈(?)「オホン、そうです。わたしは今から『八日後の未来から来た朝比奈みくる』です」
キョン「なるほど……言うなれば朝比奈さん(中)と言ったところですね」
朝比奈(中)「?」
キョン「いえ、こっちの話です。それで朝比奈さん、その目的は……」
朝比奈(中)「え? わ、分かりません……というより」
朝比奈(中)「キョンくんがキョンくんに聞けば理解している、って……あれ?」
朝比奈(中)「も、もしかして……キョンくんにも分からな……あれーっ!?」
キョン「なるほど、未来の俺め過去にぶん投げってわけか。ま、それならそれで対策を……」
キョン「………………おぉう?」
朝比奈(中)「ど、どうかしましたか……?」
キョン「…………未来のことが分からない」
朝比奈(中)「え…………?」
キョン「…………ダメですね、読み取れません」
朝比奈(中)「あの、わたしの頭に手を当ててなにか分かるんですか?」
キョン「まぁ大体は分かります、普通ならね」
キョン「朝比奈さんの情報なら、朝比奈さん自身が知らないようなことでも触れることで読み取ることもできたりします、が」
キョン「どうやら今回は『誰か』がその情報にプロテクトをかけたみたいですね」
朝比奈(中)「まさか……未来の誰かが……」
キョン「その可能性はありません。失礼ながら未来の技術程度で俺が完全に妨害されるなんてことはありませんから」
朝比奈(中)「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ一体誰が」
キョン「まぁ俺ですね」
朝比奈(中)「……ええっ!?」ガーン!!
キョン「恐らく未来の俺自身が朝比奈さんに情報プロテクトをかけたんです。意図は図りかねますが」
キョン「何か、この時間においては『知られてはいけないこと』があるようですね」
朝比奈(中)「分かるんですか?」
キョン「まぁ、過去何度か似たように未来の自分が情報プロテクトをかけた人物と会ったことがあるんですよ」
キョン「しかし未来の俺も面倒な事をしてくれたな……一体なんの目的でこんなことを……」
キョン「朝比奈さん、なにか手掛かりになるような、『未来の俺が過去の俺にすら知られたくないこと』とか教えられていませんか?」
朝比奈(中)「知られてはいけな、あっ……」
キョン「あっ?」
朝比奈(中)「い、いえ! なんでもありません。多分時間遡行の理由とは関係ないですから……」
キョン「そうですか、まぁ関係ないならいいんですが……あっ!」
キョン「まさか……某アニメのじゃんけんバレを防ぐために……」ゴクリ
朝比奈(中)「あ、それならチョキでしたよ」
キョン「あぁぁああぁぁあああぁぁぁあぁあぁあぁああああああ!!!!!!」ガクン!
キョン「……気を取り直して」
朝比奈(中)「ごめんなさい」シュン
キョン「朝比奈さんが気に止むことはありません、本日は少々良いブローを喰らってはいますが……」
キョン「そう言えば、さっき長門が朝比奈さんを連れてどこかへ行っていましたけど」
朝比奈(中)「あ、あの時は結局食堂での長門さんの大食いチャレンジに付き合って……」
キョン「なにしてるんだ長門」
朝比奈(中)「止めにきた朝倉さんに長門さんを任せて、先に部室に戻ろうとした時に進路相談終わりの涼宮さんと出会って」
朝比奈(中)「一緒に、部室に来…………」
キョン「……それって、まずくないですか」
朝比奈(中)「ま、まずいです!! ガチでギリでマジヤバイ状態ですぅ!!!」
キョン「は、はい」ビクッ
朝比奈(中)「ど、どどどどうしよう!! あ、あの時わたしはわたしなんて見てないし、今ここで会っちゃったら」
朝比奈(中)「れ、歴史の改変……キュウ!」クラッ!
朝比奈(中)「ダメっ! 今ここで倒れたらそれが実現してしまうっ!!!」ダンッ!
キョン「(きょうのあさひなさんはつよい)」
朝比奈(中)「で、でもでも! も、もうすぐわたしと涼宮さんが―――!」ポンポン
キョン「」グッ!
朝比奈(中)「…………」
朝比奈(中)「キョンくん!!! 全速力でどこかへ飛んでッッ!!!!!」
キョン「お安い御用でっ」シュン!!
ガチャ!
ハルヒ「あれっ? 誰もいないわ」
朝比奈「あれ? キョンくんのカバンも無くなってる……帰っちゃったのかなぁ?」
ハルヒ「おかしいわね……みくるちゃんの匂いが部屋に充満してる。今戻ってきたばかりなのに。まるでさっきまでいたかのような……」スンスン
朝比奈「…………え、匂い? え?」
キョン「っと」スタ
朝比奈(中)「わわっ、と」スタ
キョン「とりあえず、窮地は脱しましたね」
朝比奈(中)「そう、ですね……でも、まだわたしがここでなにをすべきなのかが分かっていません……」
キョン「そのことなんですが……これを」スッ
朝比奈(中)「これは……?」
キョン「俺宛に届いた便箋です。気づいたらポケットの中に入ってました」
朝比奈(中)「『どうか今あなたのそばにいる朝比奈みくるをお願いします』……?」
キョン「覚えはありませんか?」
朝比奈(中)「いえ……まったく」
キョン「(朝比奈さん(大)で確定だな)」
朝比奈(中)「…………」ジィ
キョン「未来の俺が情報規制したことから恐らく、このメッセージのようなものがまた届くはずです」
キョン「当面はそれに従って行動するのがいいと思いますよ」
朝比奈(中)「うん、そうですね。他に何をすればいいのかも分からないし……」
朝比奈(中)「でも、どうしてキョンくん……あ。未来の方のね」
朝比奈(中)「どうして過去のキョンくんが全部理解してるなんて言ったんだろう……?」
キョン「過去の俺を困らせるための遊び心か……そんなところでしょう」
キョン「朝比奈さんも俺に知られちゃ困ることなんて特に覚えがないでしょう?」
朝比奈(中)「え、えーと。な、ないです、よ?」ダラダラ
キョン「………………デスヨネー」
キョン「(ま、時間遡行に関係なさそうな隠し事をつつくのは控えよう)」
ピリリリリリリリリリ
キョン「電話? ハルヒからみたいですね」
朝比奈(中)「そうだわ、涼宮さん。連絡がないキョンくんに電話を……」
キョン「その時俺は電話に出てましたか?」
朝比奈(中)「で、出てました」
キョン「ならば」ピ
ハルヒ『あんた、なんで部活きてないのよ』
キョン「あー、あれだ。ちょっと個人的に不思議探索でもしようと思ってな」
ハルヒ『ふーん、あんたにしては中々の行動力ね。でも、するならするでちゃんと連絡いれなさい』
キョン「悪かったよ、なにしろ突発的にやりたくなったんでな、すまん」
ハルヒ『もういいけど……ねぇ、あんた。今誰かといるの?』
キョン「……いや? 一人だが?」
ハルヒ『ふーん。そうなんだ、みくるちゃんの匂いがしたからなんでだろ、と思って』
キョン「……電話で匂い? はい? えっ?」
ハルヒ『ま、理由が分かったからもういいわ、次からは連絡すること。じゃーね』
キョン「……なにやら珍妙なこと言ってたが……まぁいい、これで今日は部活には出なくてよくなったが」
キョン「まず、決めなければならないことがあります」
朝比奈(中)「決めなければならないこと……?」
キョン「朝比奈さん、あなたの住む場所です。元の時間に帰るまでの居場所を決めましょう」
朝比奈(中)「? キョンくんの家じゃダメなの?」
キョン「なんとっ、なんとありがたいお言葉……っ!! でもっ、でもっ……ダメなんです」
キョン「常識的に……っ!」クゥ!
朝比奈(中)「そ、そうなんだぁ……」
キョン「しかし、あてはあります」
朝比奈(中)「あの、わたしを未来……八日後の未来からきたと知って受け入れてくれる人がいるんですか……?」
キョン「もちろんです。詳しく状況を理解しているかは曖昧ですが……まぁ信用できる奴のところに行くつもりです」
キョン「それには……」
朝比奈(中)「?」
キョン「食材の準備を忘れちゃダメだな」
朝倉「で、あたしのところに来た、と」
キョン「頼むよアサえもん~~~。一生のお願いだぁ」
朝倉「誰がアサえもんか!! 事あるごとにキョンくんにお願いされてる気がするんだど」
朝比奈(中)「ごめんなさい、朝倉さん。迷惑かけちゃって……」
朝倉「あ、いえいえ! 朝比奈先輩、迷惑なんかじゃないですよ!! あたしの家で良ければどうぞごゆっくり」
キョン「不束者ですが」ペコ
朝倉「キョンくんはちゃんと帰りなさい」
キョン「ちゃんと食材買ってきたから、ほらなんか作りたいだろう? ん?」
朝倉「なんか作りたいだろうって何!? まるであたしが料理依存症かなんかみたいに!!!」
キョン「その間俺は朝比奈さんと今後について語らねばならんから、な! よろしく頼むよ朝倉ちゃーん」
朝倉「くっ、朝比奈先輩の名前を出すとは……はぁ、しょうがないわね」
キョン「お母さん、なるはやでお願いしまーす!」
朝倉「ぶつわよ」ゴツン!
キョン「ぶってる」ゲフッ
朝比奈(中)「お、お邪魔しまぁす……」
キョン「どっこいしょ、っと。さて朝比奈さんとりあえずなんですが」
キョン「ここから先の未来スケジュール。この八日間で何をしたのかを教えていただけませんか?」
朝比奈(中)「はい、八日前から言うと……」
キョン「…………」
朝比奈(中)「……………………」パクパク
キョン「……朝倉ぁ!! 朝比奈さんが夕飯をご所望だぞ!! 急げぇ!!」ガタッ!
朝倉「え、ええっ!? 朝比奈先輩が……? い、今やってるからもう少し待ってて!!!」
朝比奈(中)「ち、ちがっ!! あ、あの! 未来のことを話そうとすると……言葉がでないんです」
キョン「禁則事項ってやつですか?」
朝比奈(中)「いえ……これは多分…………うん、キョンくんだわ」
キョン「また未来の俺がいらん制限をかけたんですか、これから何が起こるか分からなくするために徹底的な情報封鎖をしてきたな」
朝比奈(中)「あ、でも部室の時や、キョンくんが涼宮さんの電話に出ていいか聞かれた時には答えられたのに……どうしてだろう」
キョン「……ふむ、つまりは限定的な情報封鎖。『知られてはいけないこと』に繋がる情報のみを封鎖してること考えるべきでしょう」
キョン「俺が朝比奈さんに質問した情報から読み取れる情報に『知られてはいけないこと』に関するヒントが隠れているみたいです」
朝比奈(中)「…………あ」
キョン「思い当たる部分が?」
朝比奈(中)「えっと、その……はい」
キョン「ふむ、しかしその情報封鎖と未来からの指令の関連性は何なんだ……?」ウーム
キョン「俺が知ってはまずいことがこの八日間で起こる……うーん……」
キョン「実はハルヒは三日に一回しか下着を変えないとか……? うわー! 確かに知りたくねぇ!!」ウワァ
朝比奈(中)「そ、そんなわけないじゃないですかぁ!!」
朝倉「はい! 朝比奈先輩お待ちぃ!」コト
キョン「20分22秒……まずまずだな」
長門「普段より早い時間といえる。朝比奈みくるがいるためだと思われる」ヌッ
朝比奈(中)「ひゃうぅっ!? な、長門さんいつの間に……?」ビクッ
長門「料理在りしところにわたしはいる。そう、わたしはここにいる」
朝倉「長門さん、残念だけれどあなたの分はまだ用意してないわよ。しかも放課後に大食いチャレンジなるものをしておいてまだ食べるの?」
長門「………………なぜ?」
朝倉「えらい間をあけて言ったけれど、だって長門さんがいるなんて思わなかったし」
長門「いつもわたしはここにいる」
朝倉「いや確かに夕飯時になるとフラッと現れるけど、いつもの時間にはまだ早いじゃない」
朝比奈(中)「(そんなノラ猫みたいな習性が……?)」
キョン「まぁまぁ母さん、いいじゃないか作っておやり」
朝倉「そんなノラ猫が来たときみたいな!?」ガーン
朝比奈(中)「(被っちゃった)」
長門「おねがい」
朝倉「うっ……はぁ、分かったわよ。今つくるから待ってて」
長門「了解した。遠慮してお茶請けをいただいておく」モグモグ
朝倉「遠慮の意味がまるで違うけど……」
キョン「それじゃ朝比奈さん、俺たちも冷めないうちにいただきましょう」
朝比奈(中)「は、はい。いただきます」
長門「……………………」ジィ
朝比奈(中)「(た、食べづらい……)」ビクビク
キョン「ごちそうさまでした」
朝比奈(中)「ご、ごちそうさまでした」
長門「ごちそうさま」
朝倉「なんで後に出した長門さんも同時に食べ終わってるのかしら……はい、お粗末様」
キョン「ところで、なんとなーく特に深く理由も言ってなかったが、お前達今の状況は分かっているのか? 同期ってやつで」
朝倉「あぁ、それなんだけど……」
長門「わたしたちは同期機能を失い、自律起動を自由化する権利をえた」
キョン「そりゃつまり……未来を知れなくなった、ってことか」
朝倉「えぇ、そういうこと。知ってるんでしょ? 同期をしなくなったこともその理由も」
キョン「……まぁな」
長門「未来の束縛はわたしたちの自律行動に齟齬を発生させると判断した」
長門「よってわたしたちは今後、自らの意志、責任を現在のわたしたちが負うべきだと判断した」
朝倉「……まぁどんな未来でも、それが自分の意志で決めたってなったら言い訳のしようもないじゃない?」
朝倉「だからまぁ……そういう失敗を重ねて、成長していけたらなぁって……なんちゃって」
キョン「……いいじゃねえか、それでさ」
長門「同期の禁止処理コードは互いが互いのコードを管理している。よって自らの意志で解除することはない」
キョン「つまりは長門が同期するには朝倉の、朝倉が同期するのは長門の許可がいるわけか」
朝倉「えぇ、まぁこの先同期する必要も特にないから、あってないようなものだけどね」
キョン「ふーん、ま、そっか。となるとお前達も今の状況をあまり理解していないということか」
朝倉「今の状況って……朝比奈先輩を何日間か程家に泊めてほしいことの理由のこと? 深い追及はしないつもりだったけど」
キョン「この朝比奈さんはな……未来からきた朝比奈さんなんだっ!!」ドンッ!
朝比奈(中)「あ、また……」
朝倉「…………知ってるけど? 今さらよね、それ」
キョン「……八日後の未来、だッッ!!!」
長門「…………八日後?」
朝倉「……はい?」
朝倉「なるほどねー、また未来的な出来事が起こっちゃったみたいね」
朝比奈(中)「うぅ……すいません」
朝倉「い、いえ! 朝比奈先輩がどうとかじゃなくてですね! えっと!」
キョン「みろぉ長門、クラス委員長が上級生をいじめているぞ」
長門「所詮、人は権威に弱いもの。それを振りかざして威をとするものこそが弱者と知らずに」
朝倉「なんか深い言葉っぽいので批判されてるっっ!!?!? い、いじめてるわけじゃないから!!」
キョン「まぁそういうわけだから、とりあえず朝比奈さんの衣食住を保障してくれ」
キョン「それと、ハルヒと朝比奈さんには他言無用で、古泉は~……まぁ勝手に知るだろうな」
朝倉「それはいいけど……ちゃんと朝比奈さんが八日後の未来に帰れるあてはあるんでしょうね?」
キョン「安心しろ、例え帰れなくたって問題はない」
朝比奈(中)「えっ」
キョン「なぜならあの朝比奈さんが二人!! 天使がこの世に二人存在することになるんだぞ!? それに何の問題があろうか!? いやない!」
朝倉「朝比奈先輩、困ったらキョンくんなんかよりまずあたしに相談してください。きっとキョンくんなんかより力になりますから、ね!」ギュッ!
朝比奈(中)「あ、ありがとうございます……?」
キョン・キョン「「朝比奈さんが二人になった暁にはマンツーマンで俺がこうして付きっ切りに―――!!」」
朝倉「うるさいっっ!! まずは自分の頭をどうにかなさいっっ!!!!」バシッッ!
キョン・キョン・キョン「「「ぶっふぁッっ!!?!?」」」ギャッシャァ!!
朝倉「なんで増えた!? 叩くと増えるの!!? ビスケットかあなたは!!!」ガーン!
朝比奈(中)「ぷっ! ふふ、うふふふふっ!」
長門「安心して」
朝比奈(中)「長門さん……?」
長門「あなたがそうして笑っていられっるよう、彼は最善を尽くすとおもうから」
朝比奈(中)「長門さん……」
長門「わたしも、彼女も」
朝比奈(中)「……はい!」
キョン・キョン・キョン「「「次叩くと5人になるからやめといた方がいいぞ! マジで!」」」
朝倉「なんなのその素数分身の術は!!?!?!? どんな仕組みでそうなるのよ!?!?」ガーン!!
朝比奈(中)「…………だ、大丈夫ですよね……?」
長門「………………」コクリ
ここまでーぇ
0時半までにはとうかよてー!
とーかー
キョン・キョン・キョン「「「さて、それじゃあ俺はそろそろ帰ります」」」
朝倉「いつまで三人でいるのよ、煩わしいから一人になってから帰って」
キョン・キョン・キョン「「「間違い探しだ」」」
朝倉「間違いだらけじゃない」
朝比奈(中)「あれ? キョンくんは泊まっていかないの?」
朝倉「えっ」
朝比奈(中)「えっ?」
キョン「え? いやぁ! そこまで言われちゃ仕方ありませんね! おい朝倉、俺の布団も用意―――!」
朝倉「パジャマは死に装束でいいかしら?」
キョン「すいません、朝比奈さん。俺は帰ってまたメッセージが来たらここへきます」
朝比奈(中)「あ、分かりました。それじゃあ……」
キョン「えぇ、今日は朝倉といちゃいちゃして寝てください。どうぞ」
朝倉「ちょっと!!」
朝比奈(中)「え、と……よ、よろしくお願いします……?」
朝倉「朝比奈先輩違いますからっ!! よ、よろしくすることなんてないですから!」アセアセ
キョン「ふむ、朝倉はタ―――」
朝倉「ふんっっ!!!」ゴスッッ!!
キョン「―――ち、血が……」プッシャァアア!
朝倉「バカなこと言ってないで早く帰りなさい」
キョン「それじゃあ朝倉、朝比奈さんを頼んだぞ」
朝倉「分かってるわよ」
キョン「それじゃあ、お邪魔しましたー」シュン!
朝倉「せめて玄関から出てから帰ればいいのに……それで」
長門「……?」
朝倉「長門さんはなんでまだいるの? いや、そんな不思議そうな顔されても」
長門「そろそろわたしの晩御飯の時間」
朝倉「さっき作ったのに!!? そこ律儀にまた食べるの!!?」ガーン!
朝比奈(中)「(い、家でもよく食べるんだ長門さん……)」
翌日
キョン「なんじゃぁぁああこりゃあぁぁぁあああああ!!?」
谷口「……!?」ビクゥ!
キョン「(とまぁわざとらしいリアクションはさておき……)」ペラ
キョン「起こる出来事に対して未体験ってのは久々だな……」
谷口「(朝っぱらから大声出したり独り言言ったり……ついにキョンもおかしくなっちまったんだなぁ)」
キョン「安心しろー谷口、お前よか大分正常だ」
谷口「しかも他人の考えてることが分かるときた。こりゃあ完全に…………ん? うん? うん??」
キョン「バカを相手にしてる暇はないんでな、先に行くぞ」
谷口「うん? これってあれか? サイ、サイコ……サイコパス?」
キョン「どちらかと言えばそれはお前だろ、っと何々……」
キョン「…………こりゃなんだ、イタズラの指令か? 一体なんのために……。それにこりゃあ未来の最優先命令コードの暗号か」
キョン「……なるほど。確かに無知ってのはあまり気が落ち着くもんではないな」
キョン「だが、新鮮さという点では。全知より楽しみがいがあるってもんか」ガラッ
ハルヒ「…………」
キョン「よっ、ハルヒ」
ハルヒ「……おはよ。一人不思議探索の収穫はあった?」
キョン「いんや。土星人と火星人のハーフに会ったぐらいだな」
ハルヒ「ふーん…………ふぅうぅううぅううん!!?!?!?」ガタッ
キョン「ジョークだよ」
ハルヒ「しょうもないこと言うな!」バシッ
キョン「いてぇ」
キョン「で、ハルヒそのことなんだが」
ハルヒ「そのことって何よ、土星人と火星人のハーフのこと?」
キョン「は? なんだそりゃ? そんなんは関係ないぞ」
ハルヒ「……」イラッ
キョン「団活を休んだことなんだが……どうやら今日も、いや今週は何日か抜けることになりそうだ」
ハルヒ「……なんでよ」
キョン「いや、それがな言うにやまれぬ事情が……な?」
ハルヒ「…………」
キョン「…………ダメか?」
ハルヒ「……いや、いいわ。そうね、誰しも言えない事情ぐらいあるわよね」
キョン「お前……なんて物分かりのいい子に成長したんだ……」ジーン
ハルヒ「バカにしてんの? まぁ今週は特にやることもないし、あんたが一人で不思議探索したいってんなら止めはしないわよ」
ハルヒ「あ、でも土日は不思議探索する予定だからそれには出ること、いいわね?」
キョン「あん? 土曜はともかく今週は日曜日もやるのか? 確かに春にはそんな週もあったけどよ」
ハルヒ「ん……まぁたまにはいいでしょ。祝日もあるし一応の予定だから変動するかもだけど」
キョン「へいへい、それにはでれるようにするよ。いざとなったら分身するしな」
ハルヒ「ん。お願いね」
キョン「…………」
キョン「(ハルヒの様子も気にはなるが、こっちの問題で気を回してやることはできんな、悪いが)」
キョン「……」フーム
ハルヒ「……」
国木田「……あれは、アレなのかな。倦怠期ってやつかな、朝倉さん」
朝倉「はは、どーだろ。あの二人に倦怠する暇なんてないと思うけどなぁ」
放課後
キョン「さて、じゃあ俺は帰るわ。みんなにはよろしく言っといてくれ」
ハルヒ「ん、精々私用とやらに精を出しなさい。」
キョン「あいよ。それじゃ」ガタッ
キョン「朝倉、一緒に帰ろうぜ」
ハルヒ「な˝っ……!?」
朝倉「げ……」
キョン「ん? どした、早く行こうぜ」
朝倉「あ、あー……あの、キョンくん? 涼宮さんがすっごいこっちを見てるんだけど?」
キョン「ん? あぁハルヒなら大丈夫だぞ。快く俺の私用で抜けることを許可してくれたからな」
ハルヒ「…………」
朝倉「私用って言ってあたしのところにきたら色々まずいでしょ! 団活よりも優先してることになるんだから!」ボソボソ
キョン「なにも間違ってないからいいだろ」
朝倉「あ~~~!」ガシガシ!
キョン「……それに」
ハルヒ「…………」スッ
朝倉「あっ、行っちゃった……」
キョン「俺が朝倉とデートするために休むなんてことしない、ってことちゃんとハルヒは分かってるさ」
朝倉「それは……そうだけど、その……そうなのかしら?」
キョン「あいつだって一方的に自分の考えを押し付けることはもうしないさ。さぁ、朝比奈さんが待ってる、行こうぜ」
朝倉「……うん」
ハルヒ「…………」スタスタ
ハルヒ「(朝倉さんと何かするならそう言えばいいじゃない……私用なんて言わずに)」
ハルヒ「(別に止めや……いや、止めるかもしれないかもだけど……でもまぁ朝倉さんなら……)」
ハルヒ「…………」
ハルヒ「(……ま、あのキョンが私用って言うなら、特に詮索はしないけど)」
ハルヒ「……はぁ」
ハルヒ「それよりも……」
ハルヒ「そろそろ、決めてかないとまずいわね……」
ハルヒ「有希とみくるちゃんにも案出してもらおうかしら……?」
ハルヒ「いやでも最後までふせとかないと情報漏えいしたら困るし……」
ハルヒ「うーん……。あーもう! なんでこんなに悩んでるのか分からなくなってきた!」
ハルヒ「こういうのはもうスッ! っとサッ! っと終わらすべきなんじゃないかしら!」
ハルヒ「悩んでるのがアホらし……」ピタッ
キョン「行くぞー朝倉ー!! ダイナミック帰宅だっっ!!!」ビューン!!
朝倉「ちょちょちょーっと!!! 飛んっ、浮い!? ちょーーっとぉおぉおおおおおお!!?!?」バビューン!
ハルヒ「……楽しそ…………」
ハルヒ「…………」
ハルヒ「悩んでるのがアホらしくなってきた!!!!!!! もう!!!!!!」プンスカ!
ハルヒ「……今度ダイナミック帰宅やってもらうんだから!!!! もう!!!!」ドカドカ!
キョン「お迎えにあがりました、朝比奈さん」
朝比奈(中)「お、おかえりなさい……あの、朝倉さん?」
朝倉「……あ、すいません。ちょっと放心してただけです」ポー
朝比奈(中)「(ちょっと放心するような何かって一体……)」
キョン「朝比奈さん来てましたよ、こ、れ!」ゴソゴソ
キョン「じゃーん未来からの指令書……あ、これローマ古文書だ。これじゃなくて……」
朝倉「なんでそんなものがカバンに入ってるのよ……四次元ポケットなのその鞄」
キョン「あとは古事記が一つに聖書が二つ」ゴソゴソ
朝倉「まぁキョンくんの鞄ってマジ多神教!! ってなに持ち歩いてるのよホントに」
キョン「これです、朝比奈さん」ピラッ
朝比奈(中)「あ……これ」
キョン「これは未来の最優先命令コード、で間違いないですか?」
朝比奈(中)「は、はい。これを見たからにはわたしはそうなるように行動しなければなりません」
キョン「なるほど、つまり未来のコードを覚えれば朝比奈さんをうまーく誘導することが……」
朝倉「あら偶然、あたしもあの世までの誘導なら大得意なのよ?」
キョン「冗談はここまでにして」
朝倉「嘘だ。絶対この後もボケ続けるわよ、この人」
キョン「……………………」
キョン「じゃあ行きましょうか朝比奈さん」
朝倉「いや否定しなさいよ、ねえ」
キョン「朝倉ー! 帰ってくるまでに夕飯作っているのよー!」フリフリ
朝倉「逆だから!! 夕飯までに帰ってきなさいよーだから!!! ていうかさっそくボケてんじゃないわよ!!」
キョン「キレッキレだな」
朝比奈(中)「キレッキレですね」
とある路上
キョン「つくって!」ドーン!
朝比奈(中)「わ、わくわく?」バーン!
キョン「今日はね、みくるちゃん。これ、空き缶と釘とカナヅチ! これを使うんだ!」
朝比奈(中)「み、みくるちゃん!? わ、わぁ! 一体何をするのかなぁ!」
キョン「そうだね! これだけ道具が揃っていれば完全犯罪も容易なんだけども」
朝比奈(中)「そ、そうかなぁ?」
キョン「まずはコンクリート道路に釘を打ち込みます! 気合を入れて……えいっ!」ビキビキィィッ!!
バッキーーン!!
朝比奈(中)「」
キョン「おっと! 力を入れすぎると釘もろともコンクリートを砕いてしまうので力加減に注意しよう!」
キョン「割れたコンクリート道路の時間を巻き戻して……はい、次はうまく釘を半ばまで打ち込めたね!」
朝比奈(中)「(遠くの遠くから朝倉さんの声が聞こえそうです……)」
キョン「半ばまで打ち込んだ釘に空き缶を被せたら……そう! これでもう完成だ!!」
朝比奈(中)「わ、わぁ! こ、これは一体なんなのかなぁ?」
キョン「『キョンの気まぐれ釘パンチ~100%オレンジジュース空き缶を添えて~』……だね!」
朝比奈(中)「わ、わぁ~。と、とっても悪意たっぷりのスパイスが効いてそう~!」
キョン「いやそんなに褒めると照れるなぁ~~……」
キョン「ってこれイタズラ以外のなにモンでもねーじゃねーかぁぁあぁああああああああああ!!!!」ウガァア!!
朝比奈(中)「えぇえええ!!? こ、この茶番をノリツッコミで終わらせたぁぁあぁぁああぁあぁあ!!?!?」ガーン!
朝比奈(中)「あ、キョ、キョンくん! そろそろ時間です! で、電柱の陰に隠れて……」
キョン「待ってください! あの空き缶……ひょっとしてオレンジジュースよりもコーラとかの方がよかっ」
朝比奈(中)「どっちでもいいですからぁ!! は、はやくこっちに……!」
「はぁ……」
キョン「なんだ? あのくたびれたおっさんは?」
朝比奈(中)「さあ……って、あっ、えっ? まさか……」
「……誰だこんなところに空き缶を~~~」スッ
「捨てたのはぁぁあああぁあァァアアアアアアアアアアァアアアアいってぇぇえええええええええええ!!!!」ガッッッ!!!
朝比奈(中)「うっ!」
キョン「野郎……それは捨てたんじゃなくて置いたんだよッッ!!!!」クワッ!
朝比奈(中)「そ、そこはどうでもいいですからぁ!! た、助けないと!」
キョン「待ってください、朝比奈さん」
朝比奈(中)「なんですかっ!?」
キョン「ここで俺たちがあの男性に関わってしまう事は既定事項ではないんじゃないですか? 指示にはそんなことまでは書いてません」
朝比奈(中)「っ~~!!」
キョン「ここでむやみやたらに過去をいじくって未来に悪影響でも与えようなら―――」
朝比奈(中)「でもっ!!!」
キョン「…………」
朝比奈(中)「……わたしたちのせいでああなったのに……放っておけないよぉ」
キョン「…………」
朝比奈(中)「た、確かに命令違反かもしれないけど……でも!」
キョン「…………賛成です、朝比奈さん」
朝比奈(中)「え?」
キョン「優しい朝比奈さんがこうなった時、助けようとすることを予想できない様では未来人は務まりませんよ」
朝比奈(中)「……ありがとうキョンくん」
「あがっ、あぁあっぁぁアアああアアああアァァアアアァァア!!!!」
キョン「だ、大丈夫ですかぁぁあああああぁぁあああああああああ!!!?」
「うわっ!? び、びっくりした……っ、み、見てたのかい?」
キョン「えぇ、あまり良いとは言えないフォームで空き缶を蹴ろうとして足首をひねった雄姿……しかと見届けました!!」
「ゆ、雄姿でもなければバッチリ見られたくはなかったんだけどね……いつつ、どうやら折れてはないようだが……」
キョン「金貸しましょうか?」
「で、できれば肩を貸してくれ。持ち合わせならいくらかあるから大丈夫だ」
朝比奈(中)「あ、あの。救急車は……」
「あぁいや、そんな大したことはないよ。タクシーで病院に行くとするよ」
キョン「でもっ!! あんなに!! あんなに大声で赤ん坊のように叫んでたじゃないですか!!」
「あ、あれはーー……うん、まぁアドレナリンをね、出してね、痛みをね……アレするためだからね」
キョン「わっかりました、では大通りでタクシーをひろうまで肩をかしましょう」
「そんなに物分かりが良いなら初めから聞かなくても……」
キョン「あ、でもタクシー代は貸せませんよ! 持ち合わせがないんで!!」キリッ!
「じゃあなんでさっきあんなことを……いつっ、まぁいいか」
「にしても誰だ、こんな幼稚なイタズラをしたのは……」
キョン「さ、さぁ???? だ、誰なんでショネー??」
「うん?」
朝比奈(中)「(分かりやすっっ!!!!)」ガーン!
「……君たちはカップルかなにかかい?」
朝比奈(中)「ふえっ!? え、えっと……」
キョン「えぇ、アベックですがなにか?」キリッ
「そ、そうかい。アベック……知ってるんだなぁ、アベック……そうか……」
キョン「かわいいでしょう? 彼女」
朝比奈(中)「キョ、キョンくん!」カアァ
「はっはっは! ああ、可憐で小動物みたいにかわいい子だね。君は誇っていいよ」
キョン「はっはっは!! 遠慮しときます!」
朝比奈(中)「ええっ!?」ガーン
「(何故……? 若い子の感性が分からなくなってきたのかなぁ……)」
キョン「お兄さん、奥さんは?」
「俺かい? 俺は独身だよ、お兄さんと言うよりももうおっさんだけどね」ハハ
キョン「……そうですか」
「ま、そろそろ身を固めたいと思ってはいるんだが……まずは相手を探さないと……って何言ってるんだ俺は」
「っと、悪いね。ここまでで大丈夫だ。キミたち本当にありがとう」
朝比奈(中)「あ、あの……お大事に……」
「……あぁ、ありがとう。キミは優しいんだね」
キョン「俺はどうですか?」
「君は……優しいけども、少し変わってるかな? 失礼だけどね」ハハ
「それじゃあ、改めてありがとう。運転手さん、病院までお願いします」バタン
キョン「…………俺たちが犯人とも知らずに、良心が痛いぜ」ポワポワ
朝比奈(中)「そ、その割には効果音がおかしい気もするけど……これでよかったのかなぁ」
朝比奈(中)「というかあの人はこの指令に関係が……?」
キョン「なぁに、深いことは考えないでおきましょう。抽象的な指示に従ったまでなんですから。さ、朝倉のトコにかえりましょう」
キョン「大将が晩御飯つくって! わくわく! してますよ」
朝比奈(中)「う、うん……それまだやるんだ……」
こっこまでーぇ
短めだけど、とーかー
翌日
キョン「お、今日も入ってる。意外とさくさく進むもんなんだな」ピラッ
谷口「んなっ!? キョンにラブレター!? 昨日驚いたりブツブツ言ってたのはそれが原因か!?」
キョン「ちげーよ。朝からめんどくさい勘違いしてんじゃねー」
谷口「なんだよなんだよキョンばっかり……俺だって、俺だってなぁ」カチャ
谷口「…………」ピラッ
谷口「……入ってるぅ!? キョン見ろ!! 俺のところにもラブレターらしき便箋が!! 入ってるぞ!!!」
キョン「よかったじゃねーか、どれ見せてみろ」
谷口「慌てなさんな! どれ、一体どんな子猫ちゃんが俺にメッセージを……」
『間違えました。すいません』
谷口「……いや意味わからんわ!!!!!! むしろ何を間違ったんだよ!!?!? あってるよこの内容なら!!!!!」ガーン!
谷口「こういうのは本命のラブレターありきのものだろ!?!? 間違いと分かってて初めから入れてんじゃねーよおい!!!!!」
キョン「あ、そうか。すまん、そこんトコ気づかなかったわー」
谷口「お前か犯人!!! さらっと自白してんじゃねー!!! しかも謝るところはそこじゃねぇえぇぇぇええぇええええ!!!」
キョン「んだよ。お前が俺も欲しいみたいなこと言うから気をきかしていれてやったんじゃねーか」
谷口「誰もこんなもん欲しいなんて言ってねーし望んでねー!! 大体野郎からの手紙なんざちっともうれしく」
キョン子「これでもダメか?」パッ
谷口「ねー…………え。え? はっ、えっ? おっ?」ゴシゴシ
キョン「と、お前に構ってる時間はねーんだった。先教室いっとくからなー」
谷口「え? え? ちょ、今一瞬キョンが……あ? 見間違い? 眼精疲労かこれ?」ゴシゴシゴシッ!
キョン「山へ行ってください、そこに目立つ形をした石があります。それを移動させて……場所は朝比奈みくるが……」スタスタ
キョン「……うーむ、こりゃまた謎な指令だな。石を移動させて未来に何の関係があるんだか……」
キョン「(それに朝比奈さんが場所を知っている……か。どうもきな臭くなってきたな)」
キョン「(……とは言っても、俺自身がかけた情報プロテクトを解除する事なんてできないしな)」
キョン「(今はただ指示通りに動いてやるとしますか)」ガラッ
ハルヒ「……あら、おはよ」
キョン「おーっす、残念ながら昨日の私用では不思議なことは見つからんかったぞ」
ハルヒ「ふーん。まぁ一朝一夕で見つかるような不思議じゃ大した不思議とも言えないしね」
キョン「あぁ、だから今日も私用で抜けさせてもらうことは……」
ハルヒ「……いいけど」
キョン「助かるよ。悪いなハルヒ」
ハルヒ「……いいけど、あんた。あさ……」
キョン「あさ?」
ハルヒ「…………なんでもないわ」
キョン「? 俺の朝飯はフランスパン派だが……」
ハルヒ「なにそのマイノリティな朝ごはん。誰が興味あるのよ」
キョン「フランスパンとココア。これが俺のスタンダードな朝食だ。というかよく出てくるんだ。フランスパン」
ハルヒ「…………あっそ」
キョン「ちなみに一歩間違えば朝からピロシキが出てくることもある」
ハルヒ「なんでっ!? 一歩どころか方向性を間違えてるわよ!!?!!?」ガーン
放課後
キョン「うー☆ さて、それじゃあ今日も帰るわ。あと任せたぜ」
ハルヒ「ん……今日も朝倉さんと帰るの?」ジッ
キョン「え、いや今日は違うぞ。朝倉もう『戦』に行ったからな」
ハルヒ「『戦』……ああ、『スーパー平安時代!!』での合戦か……大変ね朝倉さんも」
キョン「俺も最近忙しくて行ってないからなぁ……セールの情報もろくに仕入れてねぇな。朝倉も張り合いがねぇんだとよ」
ハルヒ「ふーん……。ま、仕様なら仕方ないけど、土日の不思議探索には出席するのよ」
キョン「はいよ。それまでにゃおもしろそうなモンの一つ二つぐらいは揃えてくるよ、じゃあな」
ハルヒ「……土曜日曜……だあぁ! マズいわね。そろそろタイムリミットが……」
鶴屋「やっほー!! ハルにゃんいるっかな!?」
ハルヒ「あれ、鶴ちゃん? どうしたの1年の教室なんかに……あたしに用があるの?」
鶴屋「あるあるっ! 大ありっさ!! むしろハルにゃんにしか用はないと言っても過言じゃないね!」
鶴屋「これっ!! 見てよこの古ぼけた紙!! まさにって感じだよねっ!!」ガサッ!
ハルヒ「うわっ、これって本物……なの? それっぽいのはぽいけど……」
鶴屋「うーん、実はあまり確証はないんだよねぇ。書いてることは意味深だけど、なんでもイタズラ好きの先祖様だったって話だから!」
鶴屋「でもまぁ何かあったらいいな程度の期待なら持ってもいいと思うよっ!! 何か出てきたらもらってくれちゃってもいいしっ!」
鶴屋「その代わりなにもなくても恨まないでおくれっ!! これでお互いさまっさ!!」
鶴屋「最近ハルにゃんがすこーし元気がないように見えるってみくるから聞いてたから、面白そうなものでも教えてあげようと思ってね!」
ハルヒ「……うん、いやありがとう鶴ちゃん!! これよ、これでいいんだわっ!」
鶴屋「おおっ! なにか閃いたのかなっ!?」
ハルヒ「ええ! エジソンもビックリのものすっごい閃きよ!! きたきたきたぁ!!」
ハルヒ「あのね鶴ちゃん!! 実は……」ゴニョニョ
鶴屋「ほうほう…………ほうほう!!」
キョン「フサエモンッッッ!!!」ックショーイ!
朝比奈(中)「ひえっ!?」ビクッ!
キョン「んんっ? くしゃみ、ということは誰かが陰謀めいた画策でもしてるのか?」
朝比奈(中)「あ、それくしゃみだったんですね……。陰謀めいた画策がどうくしゃみに繋がるのか分からないけど……」
キョン「と、朝比奈さん。手紙に書いてあった山のことなんですが……ご存じなんですか?」
朝比奈(中)「ええ、っと……多分、わたしが知っている山ってことは……それにこの石の絵……うん。合ってると思う」
キョン「にしてもどうして朝比奈さんの知っている場所なんでしょうね? 未来との連絡をする場所だったりするんですか?」
朝比奈(中)「いえ、これは…………」パクパク
キョン「……大将っ!! おでんだ!! おでんを持って参れぇ!! あ、今いねぇんだ」
朝比奈(中)「ご、ごはんを下さいのサインじゃなくて!! キョンくんの情報プロテクトが……」
キョン「なるほど、しかし未来の俺よ墓穴だったな」
キョン「情報プロテクトをかけているということは今後、朝比奈さん(中)がいた八日後までに訪れるであろう場所であるということだ」
朝比奈(中)「…………」パクパク コクコク
キョン「まぁ目的は知りませんが……つまり朝比奈さん、いや多分SOS団全員が来るであろう場所に先回りして行動するってことか」
朝比奈(中)「でも石を動かして何になるんでしょう……?」
キョン「案外そういう場所から未知との遭遇があるかもしれません。石を割ったらハルヒが出てきたりして……えー!お前ん家ここかよー! 的な」
朝比奈(中)「そんな奇想天外な!!?!?!? て石割ったらだめですよぉ!! あくまで移動させるだけなんですから!!」
キョン「瞬間移動でもいいんですかね?」
朝比奈(中)「だっ、ッあれ? い、いいの……かな? 一応移動だし……でも他に瞬間移動で移動させられる人なんて……そもそも一般的じゃ……」ブツブツ
キョン「さっ、暗くなると危険と書いてありますからまだ明るい今の内に動かしに行くとしますか」
朝比奈(中)「あっ、はぁい」
キョン「さー腕が鳴るぜ!」ボキボキ!!
朝比奈(中)「わ、割っちゃだめですからね!! 絶対!! 絶対に!!」
朝比奈(中)「あ、ここです。ここから登ったの」
キョン「あーこの山だったんですね。確か鶴屋家が保有している山ですよね?」
朝比奈(中)「はい、キョンくんも知っていたんですね。登ったことあったりするんですか?」
キョン「登ったことはないんですが、この山を買ったのは俺ですからね。や、懐かしいなぁ」
朝比奈(中)「………………ヘー」ポカーン
キョン「房右衛門が家督を継いだ時の祝いに……って思い出に浸ってる場合ではありませんね。さくっと終わらしちゃいましょう」
朝比奈(中)「……あ、はぁい」
キョン「しかし、こんな急勾配の道を登ったんですね。苦労しそうだ」
朝比奈(中)「は、はい……あ、でも…………」パクパク
キョン「あぁ、すいませんね。余計な質問をすると朝比奈さんが腹話術の人形になってしまいますね」
朝比奈(中)「ご、ごめんなさい。詳しいことは言えないみたいで」
キョン「いえいえ、むしろそうしたのは未来の俺ですから。気にしないでください。さ、気合いれて登りましょうか」
朝比奈(中)「は、はい! じゃあ案内しますね」
キョン「お願いしまーす」
朝比奈(中)「えっと……西から登ったお日様が東に沈むから……うん、こっちであってる」
キョン「あのー朝比奈さん? それは違う、というか未来まで受け継がれてることに驚きですよ」
朝比奈(中)「……うん、あってる。これでいいのだ!」
キョン「……いやかわいいけども」キュン
朝比奈(中)「はひっ、ひぃ。こ、ここだわ。ここであってます。ほら、あの石」
キョン「案内お疲れ様です朝比奈さん。割と近い場所にあったんですね」
朝比奈(中)「うん。い…………ごめんなさい」
キョン「いえいえ、会話に不便な制限ですが、俺がやったことですから。さて、指令通りにすると……」
キョン「このどでかい石っつうよりかは岩を西に3m移動させろ、か」
キョン「…………ハルヒ、入ってる?」コンコン
朝比奈(中)「は、入ってませんよぉ! そろそろ暗くなってきたから急いだ方が……」
キョン「ですね。よ、っと!」ガシッ!
キョン「むっ、コイツ中々重たいな……少し力入れないと持てな―――」ビキィッッッ!!
朝比奈(中)「あっ……」
キョン「あっ…………」
キョン「ハルヒの家が!!!!!! ごめーんハルヒぃぃいいいい!!!」アァアアアァ!
朝比奈(中)「す、涼宮さんの家じゃ……じゃなくて!! ひ、ヒビが……」
キョン「ま、こんなもんは修復しときゃ問題ないでしょう」キュゥウウウ
キョン「それで西に3mっと、こんなもんでいいか」ドスッ
朝比奈(中)「あ、でもその石立ててありましたよ。 あれっ? 今度は言えた」
キョン「ただでさえ目立つコイツを立てて……ふむ、まぁ立ててあったんだと言うならばそうするしかないか」グッ
キョン「こんなもんでどうです? 俺的にはデザインが悪いと思うんで足でも彫って彫刻のようにすれ―――」
朝比奈(中)「うん、これでいいと思う。こんな感じだったし」
キョン「……そうですか。元々寝かせてあったから側面に泥がついてるんですが……どうします?」
朝比奈(中)「うーん……一応、払っといた方が……いいのかなぁ?」
キョン「了解です。しかしあれだな、もし本当にハルヒがこの中にいたら箱男ならぬ岩女……」パッパッ
朝比奈(中)「い、いませんからぁ!! ほ、ほら! 雨が降りそうですし早くすまして降りましょう」
キョン「ホントに降ってきましたね。さすが朝比奈さん。お天気予報士にでもなれるんじゃないですか?」
朝比奈(中)「そ、そんなこと……それにこの日雨が降ることは知ってましたから」
キョン「あ、そうですね。しかし朝比奈さんが来てからもう三日目が終わろうとしてるが……」
キョン「未だに目的がはっきりしませんね。俺の情報プロテクトと未来からの指令の関係性が事をややこしくしてるんですが」
朝比奈(中)「そうですね。でも最優先命令コードが書かれているから、決して無駄なことではないと思います。ところで……」
朝比奈(中)「なななんで雲の上をを飛んで帰ってるんですかぁ!?!? こここんな高いところ!!」
キョン「え、だって下は大雨ですよ? 朝比奈さんの柔肌が雨粒に打たれるなんて……銃弾を浴びることと同義です!」
朝比奈(中)「そんなに!!?!? さすがにそこまで肌は弱くないですよっ!!??!?」ガーン!
朝比奈(中)「そそそれにわざわざ飛んで帰らなくたってしゅ、瞬間移動だってキョンくんならできるでしょう!?」
キョン「はは、随分と俺の力に慣れてもらってるみたいで嬉しい限りですよ」
キョン「でも瞬間移動もそうですが、こうやって雲の上を飛ぶことだって普通じゃできないことですよ」
朝比奈(中)「それは……そうだけどぉ」
キョン「まま、せっかく短い間ではありますが時間遡行で来たんです」
キョン「たまにゃ、団活や未来の指令なんか忘れて、こういう珍しい体験でもしていいんじゃないですか?」
キョン「せっかく。こんな力を使える奴がいる時代に来たんですから、ね?」
朝比奈(中)「…………キョンくん」
朝比奈(中)「…………でも」
朝比奈(中)「キョ、キョンくんには見えてないかもだけど、さっきからスカートが風邪で煽られてすごい恥ずかしいんですけどぉ!!!」カアァ
キョン「なんとぉ!!?!? こ、これは見るべきか? いやむしろ見ないと失礼に値する類のやつなのか……っ!?」
朝比奈(中)「そんな博物館の歴史的価値のある展示物とかじゃないですからぁ!! 絶っっっっ対に見ないでぇ!!!!」
キョン子「女同士ならあるいはっっっ!!?!?」バッ!
朝比奈(中)「ふえぇえええええぇえええええええっ!!?!? なにそれぇえぇえ誰えええぇええぇええ!!?!?」ウワーン!
ここまでぇ
とうかー
翌朝
キョン子「まじかよ……一気に三通とは……」ピラッ
谷口「朝一にまじかよ!?!?!? 昨日みたのは見間違いじゃないのかよ!!? キョンが女になってるぅうぅう!!?」
キョン子「あ? なーに言って……あ、やべ。昨日アンナコトしてるからこのままだったのか」
谷口「アンナコト!!? ちょ、ちょっとそこのお姉さん詳しくお聞かせ願えますかっ!!?」
キョン子「誰が」バッ!
キョン「お姉さんだっ、バカやろう。キモイこと言うな」ゴンッ!
谷口「ブッ!! ハッ! キョン子ちゃん!! いない、いないっ!? おいテメェキョン!! キョン子ちゃんをどこへやった」
キョン「…………」ウワー
谷口「な、なんだその痛い奴を見る目は!! どこだ!? どこへ隠したキョン子ちゃーん!!」
キョン「さすがに同情するわ。憐れ谷国、幻想の中を彷徨い続けるがいい」シラー
谷口「おーい!! キョン子ちゃぁあーーーん!!」
キョン「……ちゃんと正気に戻るんだろうな? おのれ谷回俺を不安にさせるとは大した奴よ……」ピタ
キョン「しかし構ってる暇はない。俺には朝比奈さんとやらなければならないことがあるんでな」
谷口「キョン子ちゃんと朝比奈さんがアンナコトを!!?!?!? するのか!!?!!?」
キョン「うわ、なんで俺をキョン子とみなしてるんだよ気持ち悪い。重症だな頭と目と耳とが」
キョン「…………はぁ」
キョン子「正気に」バッ!
谷口「! キョン子ちゃ―――」
キョン子「戻れパーンチ!!」ガスッッ!!
谷口「ぐわぁあぁあぁああああああああぁああああ!!!!!」グッシャァアア!
キョン「……近隣の皆々様の迷惑になるんじゃねえぞ、谷靴」
キョン「ナンバリングされた封筒が3、4……6……と。前までのが0、1、2だとして5はどこだ?」
キョン「順番どおりに実行しないといけないんだったらまずいな、どこかへ落としちまったのか?」
キョン「あのアホに絡まれた時か? いや、いくらなんでもそんな不注意なことはしないだろう」
キョン「むしろ朝比奈さん(大)がミスった可能性の方が高いな、失礼だけども。もちろん、ドジッ子属性と言うチャームポイントだがな」
キョン「(っとまぁしかし、次の指令は土日……ハルヒ曰く不思議探索を行う日だが……実行する時間はあるのか?)」
キョン「(まぁ……やらなきゃいけないんだろうが……ま、今のブルー気味なハルヒからなら目を盗んで実行することも容易―――)」ガラッ
ハルヒ「おはよ! キョン!! 遅いじゃない!!」ニカッ!
キョン「…………誰だお前!?」ガーン!
ハルヒ「はぁ? SOS団団長の顔を忘れるなんて不敬が過ぎるわね!!」
キョン「なんだなんだ、最近静かだと思ったらもういつも通りにってわけか?」
ハルヒ「あら、最近のあたしは静かに見えた? ふふん、なんなら大和撫子でも名乗っていこうかしら? それとも演技派女優?」
キョン「よせよせ、むしろ益荒男の方がお前にはあってる」
ハルヒ「なんであたしが男なのよ!!! それよか、あんた! あたしが土日にやるって言ったこと忘れてないでしょうね?」
キョン「えーっと……一揆とかだっけ?」
ハルヒ「不思議探索!!! 何に対する一揆をするのよ!? キョン、あんたが私用と称して行った不思議探索の成果は?」
キョン「ない」
ハルヒ「から! 土日で挽回のチャンスをあげるのよ!! SOS団全員で探せばなんか見つかるかもしれないわっ!! それと!」
キョン「まだあるのか。騒がしいな今日は。いや、むしろこれが普通なのか……」
ハルヒ「なにブツブツ言ってんのよ。明日、祝日でしょ? 明日も集まってやらなきゃいけないことができたのよ!!」
キョン「やらなきゃいけないこと?」
ハルヒ「ふっふっふ……これよっ!!」ピラッ!
キョン「あぁ? なんだこの汚い紙、使用済みティッシュか?」
ハルヒ「宝の地図、よ!!!! 使用済みティッシュとか言うな! ばか!!」
ハルヒ「鶴ちゃんがね、わざわざ持ってきてくれたのよ!! あたしに!」
キョン「ゴミ箱と勘違いしたんじゃねえか?」
ハルヒ「なんてこと言うのよ!!! ちゃんと見なさいほら!! ここに先祖様の名前だって入ってあるでしょ!!」
キョン「なになに……元禄十五年、鶴屋房右衛門……ほう、房右衛門の」
ハルヒ「『この山に珍しいものを埋めた。わたしの子孫で気の向いたものは掘ってみるといい』」
キョン「(お前の場合は子孫というより母親の生まれ変わりなわけであって……まぁなんでもいいか。それよりも……)」
キョン「ハルヒ、その翻訳はあってるのか?」
ハルヒ「え? うん。鶴ちゃんにも確認したし、元禄時代ぐらいの言葉の翻訳なら間違わないはずよ」
キョン「やっぱなにげにハイスペックだなお前。しかしそうか……」
ハルヒ「なによ考えるような顔して。あっ、安心なさい! 出てきた宝はあたしと団員で半々だから!」
キョン「なんで遺産分配の形式みたいになってんだよ、なにも安心できねーよ」
キョン「(ハルヒの翻訳はあっている。だが、このメッセージには裏がある。元禄時代よか前にも生きた俺だからこそ分かるようなもんだが)」
キョン「(そういや房右衛門が子供の時に流行ったアナグラムを教えたのは俺だったな。このメッセージのアナグラムを読み取ると……)」
キョン「(『何だか変なものを手に入れたが妙な胸騒ぎがするので山に埋める』……となる、か)」
キョン「(房右衛門の奴、俺と『佐々木』がいなくなってから何を手に入れたのかは知らんが……ははあ、大分読めてきたぞ)」
キョン「(恐らくあの石の元あった場所を掘ればこの変なものとやらが出てくるんだろう。そしてそれが見つかっちまうと未来にとって悪いことになる)」
キョン「だから俺と朝比奈さん(中)を使って工作を……回りくどいことしやがる」ボソッ
ハルヒ「というわけで、明日はSOS団総出で宝探し!! でもって今日の放課後はそのミーティング!! いいわね!」
キョン「へいへい。シャベルは誰が用意するんだ?」
ハルヒ「ん? スコップならあたしが用意するから問題ないわよ」
キョン「は? スコップ? シャベルだろ? あぁ?」ゴゴゴ!
ハルヒ「なに? シャベル? スコップでしょ? はぁ?」ゴゴゴ!
部室
ハルヒ「というわけで! 『あの穴を掘るとき使うやつはスコップかシャベルか?』について徹底討論をしたいと思います!」
キョン「異議ありっ!! 議題を『あの穴を掘るとき使うやつはシャベルかスコップか?』に変更することを希望するっ!」
ハルヒ「有罪!!!!」ドーン!
キョン「なんでだよ!!?!?」バーン!
朝比奈「あ、あのぅ……ほ、本当に今日の会議はそんなことなんですか?」
ハルヒ・キョン「「そんなこと!?!?」」
キョン「正気ですか!? 朝比奈さん!!」
朝比奈「ぎゃぴっっ!?!?」ビクッ!
ハルヒ「と……いや、みくるちゃんの言う通りだわ。今はそんなことで争ってる場合じゃないわ……みんなこれ見なさいっ!」バッ!
古泉「おや、随分古ぼけた……何かの地図でしょうか?」
キョン「古泉の家からとってきた使用済みのティッシュだぞ」
古泉「…………はい?」
ハルヒ「聞いて驚きなさい!! これはね、鶴ちゃんからもらった宝の地図なのよ!!!」
朝比奈「宝の地図……わぁー」
古泉「宝……といいますと、小判などの財貨のことでしょうか?」
ハルヒ「ここには珍しいもの、って書いてあるからそんなありふれたものではないと思うわっ!!」
ハルヒ「珍しい宝を探すなんてまさにSOS団のためにある宝の地図だと思わないっ!? ねぇみくるちゃん!」
朝比奈「あ、そうですね。すごーい」
ハルヒ「だから明日、みんなで宝探しに行くことにします!! 急がない誰かに先を越されちゃうかもだからね!!」
古泉「了解しました、動きやすい服装で行った方がいいですね」
キョン「そうだハルヒこういうのはどうだ? 俺は家で寝る。お前は山へ行く。所謂一つの適材適所」
ハルヒ「あたしに適した場所は山じゃないけど!!?!? 明日は全員強制参加だから妹ちゃんに引きづってもらってでも来なさいっ!」
キョン「バカ!! 妹の名前を出すな―――」
キョン妹「任せてっ! ハルにゃん!!!」ルンッ!
ハルヒ・古泉・朝比奈「「「!?!?」」」
長門「……ユニーク」
朝倉家
キョン「とまぁそんなわけで今日明日はフリーみたいです。こっちは宝探しがあるんでフリーとは言えませんけど」
朝比奈(中)「あ、はい。でも一気に『二通』も来たんですね……」
キョン「えぇ、まずはNo3、明後日植え込みの落とし物を拾う」
キョン「次のNo4は日曜日、指定した時間に川に亀を投げ込む……」
朝比奈(中)「…………これは、一体」
キョン「うーん……分かることはこれが朝倉のルーチンワークであることぐらいですが……」
朝比奈(中)「えっ」
朝倉「そんなにクセの強いルーチンワーク持ち合わせていないわよ、はいお待ちどうさま」コト
朝比奈(中)「あ、ありがとうございます。いつまでもすいません……」
朝倉「謝らないでください朝比奈さん。あたしが好きでやってることなんですから」
キョン「そうですよ。むしろ遠慮なんかせずガツガツ食っておかわりでもすりゃいいんですよ。朝倉おかわり!」バクバク
朝倉「キョンくんが普通に食べてるのもおかしいんだけどね……まぁ今更か」
長門「おかわり」ヌッ
朝倉「ちょっと!! 不自然におかわりを要求する登場の仕方はやめて!! 心臓に悪いじゃない!!」ドキドキ
長門「遠慮する」
朝倉「善処するのよ!!! もう!!!」
キョン「おかーさーん。おかわりまだぁー?」チン☆チンッ☆
朝倉「誰がお母さんか!!!!!」
キョン「しかし、土曜日曜と不思議探索がある中でこなせるモンなんですかね。特に日曜日は時間指定もあるし」
朝比奈(中)「多分大丈夫だと思います。いつも通りクジで二手に分かれましたから」
キョン「なるほど、つまりその時間に今の俺の事情を知っているやつ、長門か古泉と組めばいいわけだ」
朝比奈(中)「はい、えっと確か……そう、この指令に書かれた時間帯の時のキョンくんのペアは両方とも長門さ……あ」
キョン「……なるほど、そういうことか。というわけで長門、事情は今の通りだ」
長門「……了解した。組み合わせを操作してあなたと組むようにする」
キョン「あぁ頼む。これで時間に関する問題はなくなった」
朝比奈(中)「あ、それと日曜日にキョンくんがイタズラ電話をかけてきた、って涼宮さんが……」
キョン「イタズラ? それに関しちゃ随分今更感ありますね。なんてったって俺はハルヒにイタズラをするプロですから、えぇ」キリッ
朝倉「なんの自慢なのよ、それ」
朝比奈(中)「内容が、何か、キョンくんがわたしのフリをしてドッキリを仕掛けたみたいな……?」
キョン「朝比奈さんのフリ? そりゃまたなんで……ていうかさすがにそんなことは」
朝比奈(偽)「いくら俺でもできねーよなぁ、朝倉」ハハハ
朝倉「いやできてるけど!!? むしろ今更できないわけがないと思ってたわよ!?? 案の定よまったく!!!」ガーン!
朝比奈(中)「え、わ。あ、か、鏡っ? え、キョンくん、え?」
朝比奈(偽)「いやぁ、自分でもできるとは思わなかったなぁ……やってみるもんだなぁ」
朝倉「やらなくていいから!!! 需要は……もしかしたらあるかもだけどいまここにはないから!!!」
朝倉「ていうかホントになんでもできるのねキョンくん……もしかしたらわたしや長門さんにも化けたり……」
長門(偽)「もちろん」バッ!
朝倉(眉)「可能だ」ドンッ!
朝倉「眉ってなんだ!!!!! なにそのカッコの中!!!!眉って何よ眉って!!?!?」ガーン!
長門「眉毛のこと」
朝倉「言わなくていいから!!! 言わなくても分かってるから本当は!!!」
朝倉(眉)「それにしても朝比奈さん」
朝倉「いやいつまで(眉)の状態なのよ……誰が眉よ!!!!!」ビッシィ!
長門「あなた」
キョン「なんというノリツッコミ、素晴らしいぞ朝倉」パッ
長門「落ち着いて。向こうで料理でも作っておいた方がいい」
朝倉「それもそ……その手には乗らないわよ。もう今日はご飯をつくりません」
長門「……せめてその海苔だけでも」
朝倉「だからこれは眉……誰が眉毛よ!!!!!!」ドーン!
キョン「とりあえずツッコミマシーンは置いておいて」
朝倉「誰のことかっ!!!」ビシッ!
長門「反応すれば負け」
キョン「朝比奈さん、さっきのクジのことにしろ、少しずつ情報のプロテクトが弱まってるような気がするんですが」
朝比奈(中)「あ……そういえば……」
キョン「もしかしたら……時間が経てば制限が弱くなってくるのかもしれません」
キョン「既に知っている情報に制限をかけても仕方ないですからね」
朝比奈(中)「あ、そういうことですか」
キョン「だからつまり、未来の俺が『知られたくないこと』の真相に徐々に近づいているというはずなんですが……」
キョン「当の俺はまだ見当もついていません。こりゃ一体どういうことなんでしょうね?」
朝比奈(中)「あー……それはー……えーっと」
朝比奈(中)「…………その方が、やっぱりいいから、かなぁ? うん、まだ知らなくていいことだと思う」
キョン「……じゃあ無理に知る必要はありませんね。もう少し、俺たちだけでやってみますか」
朝比奈(中)「うん。まだ、あと……そう、四日後ぐらいまでは」ボソッ
ここまでぇ
今日(金曜)中にとーかー!
とーかーーー
翌日
朝比奈「はっ、ひぃ、はっ、ふぅ」ヨロヨロ
ハルヒ「みくるちゃん! しっかり! ヒッヒッフーよ! ヒッヒッフーよ!」
キョン「イヤッフウゥウゥウウウゥウウウウウウウウ!!!!!」
古泉「あなたも涼宮さんも違います。朝倉さんがいませんので過剰なボケは慎んでください」
キョン「にしてもハルヒ、朝比奈さんには酷だろこの道は。パワハラ10歩手前だぞ」
ハルヒ「結構手前じゃないの!! 宝を得るんだから相応の対価ぐらい払わなきゃ! みくるちゃん! 気合よ気合!」
朝比奈「は、はっ、はぁい! ひぃ、ひぃ!」
長門「…………」ジィ
古泉「おや長門さん。何をご覧になっているんです?」
長門「あれ」ピッ
古泉「あれは……野ウサギでしょうか? 鶴屋さんも生息していると言っていましたが、かわいいものですね」
長門「食べられる?」
古泉「食べ……食べる? 長門さん? 生き物を食用か食用でないかで見るのはあまり常識的とは言えませんね」
長門「しかし、山で遭難した場合はその限りではない。エマージェンシーモード」
古泉「そういうことも……ないとは言えませんが……野ウサギを見て食べられるかどうかを尋ねるのはちょっと……」
長門「でも彼が」
古泉「彼?」
キョン「ウサギガニゲテル!!! 追えー! 飯だ―!! 肉じゃぁああ!!!」ダッ!!
古泉「長門さんに悪影響を与えるのはやめて下さい!!! ああ朝倉さん!! 母の手も借りたいとはこのことでしょうか!」
長門「そんな言葉はない」
朝倉「? 呼ばれた気がする……」ハテ
古泉「(いけませんね、合宿等は主に朝倉さんの存在によって僕がツッコまなくていい状況にかまけていたようです……)」
古泉「(果たして今日一日、いえ、これ以降もですが、僕の心身は持つのでしょうか……)」
ハルヒ「はい! じゃあまずはこの辺を掘りましょ!! 宝がでるまで掘って掘って掘りまくるわよ!!!!」
キョン「俺はノンケだ!!!!!!!!!!」ドーン!
ハルヒ「そういう意味じゃないから!!!! てか何考えてんのよあんたぁ!!!!!!!」
朝比奈「???」
古泉「(……涼宮さんがボケにまわらない限りはなんとか大丈夫でしょうか)」ホッ
キョン「掘るのは古泉が得意だし」
ハルヒ「……古泉、くん?」ゴクリ
古泉「ええ! 大得意ですよ!! 地面を!! 地面に向かって穴を掘るのは得意です!! お任せください!」
古泉「ですからあらぬ疑いをかけぬようお願いいたします!」
朝比奈「あ、あらぬ疑い……」ゴクリ
キョン「何を必死になってるんだ。まぁ得意なら頑張ってくれりゃ俺は楽だが」
ハルヒ「何言ってんのよ、あんたも掘るの」
キョン「え?」
ハルヒ「なーに驚いた顔してんのよ。当然でしょ、あんたは雑用なんだから。はいスコップ!」ポイッ
キョン「お前はどうすんだよ」
ハルヒ「あたしは現場指揮!! あ、といっても疲れたらたまになら代わってあげるから! ま、頑張んなさい!!」
ハルヒ「みくるちゃんは危なっかしいから応援。やる気がでるやつお願いね!」
朝比奈「あ、はぁい」
ハルヒ「有希は……」
長門「……」スタスタ
ハルヒ「うん! なにか珍しいもの落ちてたら報告ちょうだい!! それじゃ各々頑張りましょ! おー!」
キョン「ハルヒ! 大変だ!! 空から天使が堕ちてきた!!!!!」ウワァアア!
ハルヒ「字違うから!!!! 昼間っから堕天使なんていないから!!! ボケかましてないであんたはさっさと穴掘りなさいよ!!!!!」バシィ!
朝比奈「が、頑張ってくださーい。キョンくんー古泉くーん」フレフレー
古泉「ふっ、っと。土が柔らかいとはいえやはり重労働であることにか変わりませんね。運動不足には堪えますよ」ザクッ
キョン「デカいヤツとヤリあうスポーツはやってねぇのか?」
古泉「神人狩りですね、誤解を生むような言い換えはよしてください」
古泉「実を言うと結構ご無沙汰なんですよ。涼宮さんが随分と落ち着いていらっしゃるのでね」ザクッ
キョン「ほう、あれだけブルーだった割に意外とイライラとかはしてなかったんだな」ザクッ
古泉「えぇ、それだけ涼宮さんの精神が成長なさったと言う事でしょう。良いことです」
キョン「ふーん」ザクッ
ハルヒ「いーい!? キョン! 古泉くん!! 人骨とか巻物とか、とにかく珍しいものを見つけたらすーぐあたしに報告するのよ!!」
キョン「大変だハルヒ!!! 見ろぉ!!! ま、巻物のミイラがぁあああ!!!!」
ハルヒ・朝比奈「「巻物のミイラってなに!!?!?!?」」ガーン!
キョン「み、見ろ! こ、こっちには古泉の一樹が!!!!」ヒィイィイイ!!
古泉「え?」
朝比奈「ひぃぃいいいいいいいい!!!! キュウ……」バタン!
古泉「いや、ひぃいいいいいいい!! って。あの、朝比奈さん?」
ハルヒ「みくるちゃーーん!!!! あれはただの古泉くんだから!!! ただのいっちゃんだからぁ!!!!」ユサユサ
古泉「…………このように」
古泉「落ち着いた涼宮さんの精神を揺さぶるのはやめていただきたいのですが……」
キョン「見ろ、長門。ツチノコだ、これ。大して珍しくもないが」
長門「食べられる?」
キョン「んーどうだろな。やってみるか?」
古泉「聞いてますか!!?!?!?」ゴァ!
キョン「はぁ……見つからねぇぞ、なにも。よーいしょ!」ザック
古泉「涼宮さんがいつも仰っているように、不思議とは、そう簡単に見つかるものではないのでしょう」ザック
ハルヒ「うーん。みくるちゃんなら山のどこにお宝埋める? 頂上? 大きい木の下?」
朝比奈「えーと……見晴らし位のいい場所か、お花畑とかですかね」
ハルヒ「うん! ナイスよみくるちゃん!! あなたに求めているのはそういう答えだから!! うん! 合格!!」
朝比奈「え? ええと、ありがとうございます……?」
キョン「……ま、なんかあれだな。こうしてると」
古泉「えぇ、そうですね。ちょっとした遠足のような―――」フフッ
キョン「まるで墓荒らし―――」フッ
古泉・キョン「「えっ?」」
ハルヒ「おーい! 有希ー! 何か見つかったー?」
長門「……これは」ジィ
ハルヒ「ん? なになに!? え、これって……カエンタケ!!!? ちょ、ちょ有希! ダメ離しなさいそれ!」
長門「食べられる?」
ハルヒ「食べられないわよ!! いーい有希! それはカエンタケと言ってね」
ハルヒ「摂取後10分前後の短時間で症状が現れる。初期には消化器系の症状が強く、腹痛・嘔吐・水様性下痢を呈する。
その後、めまい・手足のしびれ・呼吸困難・言語障害・白血球と血小板の減少および造血機能障害
全身の皮膚の糜爛・肝不全・腎不全・呼吸器不全といった多彩な症状が現れ、致死率も高い。
また回復しても、小脳の萎縮・言語障害・運動障害、あるいは脱毛や皮膚の剥落などの後遺症が残ることがある」
ハルヒ「危険な子㐮菌の一種なのよ!!!」
キョン「なんだコイツ」
朝比奈「Wiki宮さん……」
長門「……じゃあ」
長門「ギリギリ大丈夫?」
ハルヒ「なんっで!!?!? 全然ギリギリじゃないわよ!!? オーバーランして来世にスタート地点までいっちゃうわよ!!?!?」
ハルヒ「ああもう、ホントは触るのだって危険……まぁ有希なら大丈夫なんだろうけど……とにかく絶対食べちゃだめよ! ね!」
キョン「なんだその信頼。(なんなら食べても大丈夫だろうが)」
長門「……もったいない」
古泉・朝比奈「「ええっ!?」」
ハルヒ「木が意外に多くて掘りづらいわね……うーん、みくるちゃん。ちょっとこっちきて」
朝比奈「あ、はぁい」トテトテ
ハルヒ「よし、それじゃあみくるちゃん」
ハルヒ「ミクルビームでここら一体焼き払いなさい!!!」ドーン!
朝比奈「ええっ!!?」ガーン!
ハルヒ「ちょっと、ちょっとだけなら鶴ちゃんもいいって、多分、恐らく……なーんちゃって!」
朝比奈「じょ、冗談ですか……」ホッ
ハルヒ「やーね! 冗談に決まってるでしょ!! 今は映画撮影とかじゃないんだから!」
キョン「おいWiki宮」
ハルヒ「誰がWiki宮よ!!!!」ビシッ!
キョン「ハルヒ見て! サンマがとれた!!」ドーン!
ハルヒ「いや時期!!!!! ていうか場所!!!! なにもかもおかしいから!!!!!!!」ガーン!
キョン「あっ、そっか。イワシならよかったのか」
ハルヒ「イワシ……あっ、節分。ふーん……」
ハルヒ「じゃないわよ!!!! だからおかしいわよ!! なんで山で水産物が捕れるのよ!!! 季節外れの!!!」
長門「……それは」
長門「食べられる」キリッ
ハルヒ「知ってるわよ!? おいしい、すごくおいしいけども!!!!!!」
ハルヒ「なんか!!!! いややっぱり全部違うから!!!!!!!!」ドーン!!
キョン「おい古泉! 仕事(ツッコミ)ハルヒに任せきりにしてんじゃねえ」
古泉「はは……案ずるより産むがやすし、でしたね」
キョン「はっ、はっ……なにも出てこねーぞ! 手あたり次第じゃ山中掘らなきゃ見つからねーだろ」
ハルヒ「おっかしいわねぇ、そろそろ何か出てきてもいい頃合いなんだけどねぇ」
キョン「何基準だよそれは。30分アニメの引きみたいなこと言ってんじゃねーぞって、あ!」
キョン「おい! 古泉後ろ危な―――あー」
古泉「うし―――えっ?」フッ
古泉「ええぇえぇえええええええええええぇえ…………」エェエエェエ!!
ハルヒ「……古泉くん堕ちた。いや落ちた」
キョン「あぁ、おちたな」
ハルヒ「……落ち着いてる場合じゃないでしょ!!?!? てかなにこの穴ぁ!!!!!」
キョン「いやぁ、ちょっと気合入れて掘ったら予想外に掘れちまってよぉ。まいったまいった!」ハハハ
ハルヒ「軽いミスか!!! 笑えないわよ!!! ちょっ、深っ!!! もう古泉くんなんて欠けらも見えないけどどこまで掘ったのよ!!?」
キョン「うーん……マントルぐらい、かな?」
ハルヒ「岩盤ぶち抜いてんじゃないわよ!!! どんだけ気合入れて掘ってんのよ!! それだけ掘れたことがもはや不思議じゃない!!!」
ハルヒ「と、とにかく古泉くんを引き上げないと……なにかと不憫な目に遭ってるわね、古泉くん」
キョン「急に冷静になるんじゃねぇ」
朝比奈「うわぁああぁああん!!! こ˝い˝す˝み˝く˝ぅ˝ぅ˝う˝ん˝ん˝ん˝ん˝!!!!」ダッ!
ハルヒ「あっ! ダメよみくるちゃん! 穴に近づいたらあなたまで落ちちゃうじゃない!!」ガシッ
朝比奈「ううっ! でもこっ、古泉くんがぁ! 古泉くんが死、死……あっ」ピーン!
朝比奈「ぶ、ブラジル人の方ー!!! 聞こえますかー!! そっちにいった男の人を受け止めて下さーい!! お願いします!!!」オーイ!
キョン「……」
ハルヒ「…………」
キョン「……ハルヒ」
ハルヒ「……ほっこりするわね!!」ドーン!
キョン「あぁ! ほっかりした!!」ドーン!
長門「……古泉一樹の救出と、穴の修復を早急に」
古泉「ゼェ……ゼェ……」
キョン「ハルヒ、古泉大丈夫だって」
ハルヒ「せめて確認とってから言いなさいよ! 古泉くん、本当に大丈夫?」
古泉「ゼェ……えぇ、大丈夫ですよ。およそ誰も体験したことのない落下速度の体験は貴重なものですからね」
キョン「すまんな古泉。調子にのってあんなところまで掘っちまった」
古泉「いえ、僕も不注意でしたので……まぁ、命があっただけよしとしましょう」
ハルヒ「間違いなく地元の山での宝探し中に言うセリフではないけど……そろそろいい時間ね」
ハルヒ「とりあえず一旦休憩にしましょ! さっきいい感じに開けたスペースがあるからそこにゴザしいてたのよ!」
キョン「……ほう、いい感じのスペースね」
ハルヒ「うん! なんかでっかいひょうたんみたいな石があるところ! お昼終わったらそこら辺も掘りましょ!」
キョン「へいへい」
長門「お昼」ザッ
ハルヒ「有希お待ちかねのランチタイムよ!! 思う存分食べて頂戴!! みくるちゃん特製サンドイッチもあるわよ!」
長門「? さっき食べた」
朝比奈「?」
ハルヒ「あれ?」
長門「?」
朝比奈「あれ? 本当だ……いつのまにか空に……あれ?」
ハルヒ「えーっと、あれ?」
長門「?」
キョン「よせハルヒ。深く考えなくていい。幸い、ここは山だ食料なら山ほどあるさ。山だけに」ドヤッ
ハルヒ「…………」
朝比奈「(言うと思った……)」
キョン「…………サンマとかな!」ヌッ
ハルヒ「だからそれ海の幸だから!!!! ていうか今どっから出したぁそれぇ!!!!」
長門「山の幸……」スッ
古泉「長門さん? 野ウサギの方へ歩を進めるのはやめて下さい。おっと、カエンタケもダメですよ?」
ここまでーー
すません、生存報告がてらちょっとだけ更新します。
久しぶりですみません
ハルヒ「んー午前午後と結構掘ったとは思ったんだけど、何も見つかんなかったわねぇ……」
キョン「サンマはともかくさすがにイワシはなぁ……」
ハルヒ「探してないから!!! サンマが見つかる時点で色々おかしいわよ!!?」
古泉「広大な敷地ですからね。一日ではさすがに無理があったようですね」
朝比奈「へぅ……へとへとです」クタッ
ハルヒ「まぁでも、たまにはこうして大自然の空気に触れることだって大事よね!」
キョン「なんならアマゾンの奥地に1週間ぐらい飛ばしてやってもいいんだが」
ハルヒ「ぐぅっ……! 7:3の気持ちでお断りするわ!! ちょっと行きたいけど!!」
キョン「今なら古泉もセットだぞ」
古泉「え?」
ハルヒ「ん~~!! 6:4の気持ちにまでなったけど……まだ! まだちょっと厳しいわ!!」
キョン「そうかぁ、じゃあ古泉。1人だけど頑張ってな」グッ
古泉「なんで僕が行く前提なんです? せめて飛ばすなら飛ばすで誰か……」
キョン「谷口のことはよろしく頼むぞ」
古泉「ただ厄介者を押し付けただけじゃないですか!!?」
朝比奈「や、厄介者……」
古泉「あ、いや……その、彼にとっての、という……あの」
ハルヒ「いいのよいいのよ古泉くん。あいつに対するイメージは人類万国皆共通よ、謝謝」アーイ
キョン「ハルヒに全面同意的承认失败」アーイ
古泉「な、なぜ中国語……しかもただ知ってる単語を言っただけ……」
長門「滋扰」
ハルヒ「というわけで、結果は残念だったけど今日はここらでお開きにしましょ!!」
キョン「サンマの?」
ハルヒ「わざわざ山で魚捌かないわよ!!! だからどうせなら山の幸採集しときなさいよ!!」
古泉「あれ? さきほどまで周りにいた野ウサギ、野ヘビ、野鳥はどこへ……?」
長門「……山の幸」
ハルヒ「とにかく!! 今日はこれで終わりだけど、明日の土曜日!! 言った通り不思議探索するからね!!」
ハルヒ「意外と不思議探索久しぶりで勘が鈍ってないといいわね」
キョン「勘が鈍るって……今まで鈍るほどの勘を見せたことがあったっけ?」
ハルヒ「シャラップ!!! そろそろ油断した不思議が顔を覗かせても不思議じゃないから気を引き締めてかかるわよ!」
朝比奈「え、と? 不思議が見つかっても不思議じゃなくて……不思議は、不思議……フシギ?」
キョン「こらハルヒ。お前が妙にややこしい日本語を使うから朝比奈さんが混乱なされたじゃねえか」
ハルヒ「不思議が見つかることが不思議じゃないことのどこが不思議なのよ!?」
朝比奈「ふ、ふし……ふふ、フシギ……? ふし、ふ、ダネフシッッ!!」プシュー
キョン「知恵熱が!!! 朝比奈さん!!」ガーン!
ハルヒ「知恵熱ってそんなのだっけ!!?」ガガーン!
古泉「不思議なことが不思議でない……なるほど、二律背反ですか」
長門「ミーツハイパー?(すごい肉塊?)」ピクッ
古泉「言ってません。仮に言ってたとしたらそんなことを言う僕が不思議そのものです」
長門「……そう」
ハルヒ「明日も時間は今日と一緒。いーい? 集合時間は今日と一緒、よ!?」
キョン「なぜそんなに釘をさす。誰も遅刻してないだろう」
ハルヒ「じゃあ聞くけど、みんなが集合したのは集合時間のどれくらい前だった?」
キョン「確か」
長門「2時間前」
古泉「くらい」
朝比奈「ですかね?」
ハルヒ「ほらおかしいじゃない!!!! 誰か1人なら分からんでもないけど! いや1人だけでも2時間前集合はおかしくない!!?」
キョン「お前もそろそろ学べ。指定した集合時間にはみんなちゃんといるし、最後にくるのも決まってお前だ」
ハルヒ「くーやーしーい!!! 徐々にあたしだって集合場所に向かう時間早めているのにぃ!!」ダンダン!
キョン「なんだその無駄な努力。誰に勝っても賞金は出ねぇよ」
ハルヒ「……ま、いいわ。とりあえず明日はそういうことだから。今日は下山即解散でいいわよね」
ハルヒ「そうと決まれば下山よ下山!! あ、下山中も周りに注意しながら下るのよ?」
朝比奈「周りに注、ひわぁっっ!!?!?!?」ズルッ!
古泉「おっと」ガシッ
長門「危ない」ガシッ
ハルヒ「……全員みくるちゃんに注意して、囲むようにして降りるわよ!!!」
キョン「合点」
古泉「承知いたしました」
長門「その方がいい」
朝比奈「ふえぇ……ごめんなさぁい」
ハルヒ「そっれじゃ!! まった明日ねーー!!」
朝比奈「さようなら」
キョン「終始ごきげんだったな。ハルヒの奴は」
古泉「いつもと変わったことをする新鮮さに面白みを感じていたのかもしれません」
キョン「無駄に疲れたあげく、なんの成果も得られてねぇってのに。ったく……んじゃま」
古泉「長門さんの家に?」
キョン「ん? あぁ、まぁ長門と言うか朝倉の家だな。こちとら団活とは別の任務があるんでな。辻褄合わせに奔走中さ」
古泉「……わざわざ僕からいうことではないのでしょうが」
キョン「ん?」
古泉「気をつけてください。何やらまた、懲りずに悪だくみをしている輩がいるようでして」
キョン「あぁ、そのことか。ま、ヘタをうつようなことはしねぇさ。こっちの協力者にゃ長門も朝倉もいる」
長門「……」コクリ
キョン「そして俺。過剰戦力もいいところだろ? ま、いままでだってそうだったわけだが」
古泉「もちろん。あなた達には絶大な信頼を置いていますよ。ただ」
古泉「あまりあたって欲しくない胸騒ぎが……するものでしてね」
キョン「胸騒ぎ……? まさかいつの日か突いた『なんか知らんけど確実に3日は苦しんで死ぬツボ』が今になって……?」
古泉「なんてツボをついているんですか!!?!? というか僕の生死にそこまで関心がないことが驚きですよ!!!」ガーン!
キョン「まぁまぁ苦しみだしたら連絡くれ。解除のツボ押しに行くから。あ、寝てたら悪い。諦めてくれ」
古泉「今してくださいよ!!! このままだと胸騒ぎが収まらないまま寝ることすらできませんよ!!!?」
キョン「はい」ズボッッ!!
古泉「か、っへっ……!!」ベチャ
長門「……山の幸が」
キョン「なんかの耳か? これ」ウワァ
古泉「ぐっ……とに、かく……お気をつけて……ウッ」
キョン「あぁ、お大事にな」
古泉「どの口がっ!!? ウッッ!!」ガーン!
朝倉家
朝比奈(中)「じゃあやっぱり宝探しではなにも出なかったんですね。よかったぁ……」
キョン「ええ、なんとか今は未来の望む既定路線に乗っかってる感じですよ。母さん、お茶!」
朝倉「はいはい、ちょっと待ってて」バタバタ!
キョン「……違う!!! 俺がお前に望んでるのはお茶なんかじゃねぇ!! ツッコミだ!! 職務放棄するんじゃねぇ!!!!」ガン!
朝倉「そんな理不尽な!!?!?!?!?」ガーン!
キョン「それだよそれそれ。なんだよ分かってるじゃねーか、ところで朝比奈さん、明日のことなんですが……」
朝倉「……結局お茶はいらないの!? いるの!!?」
長門「いる。ついでに晩御飯も」
朝倉「片手間に晩御飯をつくれと!? 傍若無人ね長門さん!!!!」
キョン「No.3の手紙の通りにするならばその場所にさえ行けばすぐ終わりそうなことですよね」
朝比奈(中)「植込みの落とし物を拾う……そして匿名で以下の住所に郵送する……うーん?」
キョン「まぁ相変わらずやってることの意図はあまり汲み取れませんが……やらなければないらないことなんでしょう」
朝比奈(中)「それは、はい。絶対に……」
キョン「よし。あ、それと明日は目立たない格好で怪しまれない程度の変装、んで」
キョン「朝倉に送ってもらって来て下さい」
朝比奈(中)「えっ? 朝倉さんに? どうして?」
キョン「まま、とある野郎からの忠告と、牽制もかねての朝倉投入みたいなもんです」
朝比奈(中)「牽……どういう。あ、それに朝倉さんの予定もあるんじゃ……」
キョン「大丈夫。基本的に朝倉は暇ですから」ニコッ
朝倉「ちょっとぉおぉおお!!! いい笑顔で人を暇人扱いしないでよ!!!!! ちょ、可哀想な人を見る目禁止!!!」バン!
キョン「そういうわけだから明日は朝比奈さんを頼むぞ朝倉」
朝倉「ぬぐっ……! ざ、残念ねキョンくん! あ、明日はクラスのお友達とショッピングに……」チラッ
朝比奈(中)「……」シュン
朝倉「なぁあああんちゃって!!!! 涼子嘘ついちゃった!!! 明日もいつも通り暇だから朝比奈さんを送ることぐらいできるわよっ!」ウルウル
キョン「お、おう……なんかごめん。朝倉」
朝比奈(中)「朝倉さぁん……ありがとぅ」
朝倉「な、なんのなんの……嘘つこうとしたあたしが悪いんです……ていうかキョンくんが分身すればいいのに……」グスッ
キョン「それは常識に反する」キリッ
朝倉「今更どの口が言うのよ!!! このルールブレイカー!!!」グギギ!!
キョン「いひゃい! いひゃぁああい!!!」ギリギリ!
>>221 ミス
朝倉家
朝比奈(中)「じゃあやっぱり宝探しではなにも出なかったんですね。よかったぁ……」
キョン「ええ、なんとか今は未来の望む既定路線に乗っかってる感じですよ。母さん、お茶!」
朝倉「はいはい、ちょっと待ってて」バタバタ!
キョン「……違う!!! 俺がお前に望んでるのはお茶なんかじゃねぇ!! ツッコミだ!! 職務放棄するんじゃねぇ!!!!」ガン!
朝倉「そんな理不尽な!!?!?!?!?」ガーン!
キョン「それだよそれそれ。なんだよ分かってるじゃねーか、ところで朝比奈さん、明日のことなんですが……」
朝倉「……結局お茶はいらないの!? いるの!!?」
長門「いる。ついでに晩御飯も」
朝倉「片手間に晩御飯をつくれと!? 傍若無人ね長門さん!!!!」
キョン「No.3の手紙の通りにするならばその場所にさえ行けばすぐ終わりそうなことですよね」
朝比奈(中)「植込みの落とし物を拾う……そして匿名で以下の住所に郵送する……うーん?」
キョン「まぁ相変わらずやってることの意図はあまり汲み取れませんが……やらなければないらないことなんでしょう」
朝比奈(中)「それは、はい。絶対に……」
キョン「よし。あ、それと明日は目立たない格好で怪しまれない程度の変装、んで」
キョン「朝倉に送ってもらって来て下さい。帰りは迎えで」
朝比奈(中)「えっ? 朝倉さんに? どうして?」
キョン「まま、とある野郎からの忠告と、牽制もかねての朝倉投入みたいなもんです」
朝比奈(中)「牽……どういう。あ、それに朝倉さんの予定もあるんじゃ……」
キョン「大丈夫。基本的に朝倉は暇ですから」ニコッ
朝倉「ちょっとぉおぉおお!!! いい笑顔で人を暇人扱いしないでよ!!!!! ちょ、可哀想な人を見る目禁止!!!」バン!
キョン「そういうわけだから明日は朝比奈さんを頼むぞ朝倉」
朝倉「ぬぐっ……! ざ、残念ねキョンくん! あ、明日はクラスのお友達とショッピングに……」チラッ
朝比奈(中)「……」シュン
朝倉「なぁあああんちゃって!!!! 涼子嘘ついちゃった!!! 明日もいつも通り暇だから朝比奈先輩を送ることぐらいできるわよっ!」ウルウル
キョン「お、おう……なんかごめん。朝倉」
朝比奈(中)「朝倉さぁん……ありがとぅ」
朝倉「な、なんのなんの……嘘つこうとしたあたしが悪いんです……ていうかキョンくんが分身すればいいのに……」グスッ
キョン「それは常識に反する」キリッ
朝倉「今更どの口が言うのよ!!! このルールブレイカー!!!」グギギ!!
キョン「いひゃい! いひゃぁああい!!!」ギリギリ!
キョン「それじゃあそういうことだから。長門は組み合わせの操作。朝倉は朝比奈さんの送迎。頼むぜ」
長門「……」コクリ
朝倉「はいはい、任されましたわよ」
キョン「よし、そんじゃ―――」
pipipipipipipipipipipipipipipipipipipi
キョン「っ、火事かっっ!!?!?」ビクッ!
朝倉「違うわよ。ケータイでしょ、長門さんの」
キョン「ほほう、長門に電話か。なんとなく珍しいな。どれどれ誰から―――」
朝比奈(中)「あっ―――!」ガタッ
長門「ダメ」スッ
キョン「―――え?」
長門「帰ってほしい」
キョン「………………え? なが、長門……?」
長門「早急に」
キョン「……………………ほえっ?」
朝倉「な、なんだか分からないけどキョンくん帰った方がいいんじゃない? 長門さんがここまで言うんだし……」
キョン「あ……あー……そうだな……長門に拒絶されたわけだし……早く帰って死ぬとしよう。介錯は妹でいいかな……?」ユラァ
朝倉「ダメよ!! 気持ちは十二分に分かるけど!! まだキョンくんにはやることがあるか―――」
長門「早く彼を帰らせてあげて」
キョン・朝倉「「…………はい」」
キョン「…………さようなら」ダバー
朝倉「めっちゃ泣いてるっ!!」ガーン!
朝比奈(中)「キョンくんっ!!」
キョン「……朝比奈さん」ズビッ!
朝比奈(中)「理由は明日話します、だから!!」
朝比奈(中)「早く帰ってくださいっ!!」
キョン「うわぁあああっぁああぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」シュン!!
朝倉「朝比奈先輩までっっ!!?!? 一体全体キョンくんになんの恨みが……いや、ないこともないか」ウン
長門「……」ピ
『もしもし?』
朝倉「結局誰からの電話……あぁ、なるほど……ね」
藤原「ゴホン、遅かったじゃま、オホン、遅かったじゃないか」エフン
橘「……はぁ、憂鬱です。本当にやらなきゃダメなんですかね……?」
藤原「なに? この予行練習が必要かだと!? 考えるまでもなく必要だろう!!」ダンダン!
橘「いやそっちもですけど、ていうか意外とマメなんですね。そうじゃなくて……」
橘「そもそもの今回の計画自体の実行ですよ。誰の目から見ても明らかな準備不足……」
橘「成功確率は天文学的に低い……もっとも、向こうにあの人がいる限り成功率の低さはいつでも変わりませんが……」
藤原「フン! どこまでも不快な過去人だ! その癖能力だけはあるから厄介極まりない……!」
橘「あたしとしても今回の計画の実行は不本意です。確実に成功しないし、何より内容が内容です」
藤原「何を今更……臆したか? 自分が行おうとしている事に」
橘「臆したとか……まぁないとは言いませんけど、単純に好き嫌いの話です」
橘「あの人の言った通り、何もこれ以上過激なアクションで気を引く必要はないと思うんです」
橘「それに、後ろ盾として『佐々木』さんの名を使うっていうのも……その」
藤原「ではお前は何もせず、ただ待っていればいいとでも言うのか?」
橘「それは……」
藤原「計画を非難するなら代替案の一つでも考えてから話せ」
藤原「それに、この計画も既定事項だ。実行しないわけには…………チッ!」
藤原「未来の言いなり、か……言ってくれるな過去人の分際で……!」
藤原「……まぁいいさ。今一度、未来の優位性を示さなければならないと感じていたところだ」
藤原「計画が失敗に終わろうとも、実行することに意味はある」
橘「……はぁ、失敗が前提の計画かぁ……なんだかなぁ」
藤原「そんなことを言うならば、あの過去人に出会ってから碌に計画が成功したことがあったか?」
橘「うっ……! それは…………藤原さん風に言うならば、既定事項ってやつなのでは?」アセアセ
藤原「よく分かってるじゃないか。そうだ、最後に笑えればそれでいいんだ。そこまでの道のりは既定事項だと思えばいい」
橘「ハァ……ため息の多い道のりですね、まったく」
藤原「それがお前の専売特許だろう。苦労人の過去人」ニヤッ
橘「……ボッチの巨乳フェチ」ボソッ
藤原「ボッ、たっ、お前ぇええええええええええええええええ!!!!!」
ここまでーー
とーかー
翌、土曜日
ハルヒ「おはよっ」
キョン「おう」
朝比奈「おはようございまぁす」
古泉「おはようございます」
長門「……」
ハルヒ「うん、みんないるわね。じゃあいつもの喫茶店に移動しましょ」
キョン「ん? そういやハルヒ。今日は随分遅、いや、集合時間通りに来たじゃないか」
キョン「俺たちより早く来るという意気込みはどうしたんだ?」
ハルヒ「……あたし思ったのよ。例え、あたしが2時間も3時間も、いえ、1日前に集合場所に向かったとしてもあんたたちはもうそこにいてる気がする」
朝比奈「さ、さすがに一日前は……」
ハルヒ「だから無理に早く集合するのはやめたの! それでもちゃんと集合時間は守るけどね!」
ハルヒ「だから『色々遅くなって』もあたしは寛容でいるつもりよ。変に対抗意識燃やしても仕方がないしね!」
キョン「ほほう、少しはオトナになったようだな」
ハルヒ「でしょ? そもそも目的は不思議を探すことなんだから集合時間にばっかり気をとられてちゃ本来いけないのよ!」
キョン「うんうん、それを理解するまで約1年の月日を要したわけだが……どう?」
ハルヒ「どう? じゃないわよ!! せっかく人が踏ん切りをつけたって言うのに一々ケチつけんな!! さっさと喫茶店にいくわよ!!」
キョン「あ、あと一つだけ。何の偶然かは知らんが今日全員が集合したのはお前の来る10分前だったぞ、おしかったな」
ハルヒ「あぁぁああああぁああぁああああ!!!! だから後ろ髪を引くようなことをするなっっ!!!!」
喫茶店
ハルヒ「それじゃくじ引いてメンバー分けしましょ!! 印ありが2つになしが3つ!」
キョン「ハルヒ!!!」
ハルヒ「な、なによ? 大声出して……」
キョン「お、お前……いつのまにくじのトラウマを克服したんだ……?」ブルブル
ハルヒ「結構前だけど!?!!? ていうか大体の人はくじのトラウマをそこまで引っ張らないわよ!!!」ガーン!
ハルヒ「ほら、さっさと引く!」
キョン「……へいへい」チラッ
長門「…………」
キョン「(……長門、結局昨日の真意は不明だが、約束を反故にするようなやつだとは思ってないぜ……!)」バッ!
キョン「~~~っ印ありぃいいいいいい!!! 長門ぉおおおお!!!!」グッ!
朝比奈「?」
ハルヒ「印ありがよかったの? ていうかなんで有希? あ、もしかして……あんたもくじにトラウマがあっちゃう系!?」ワクワク
キョン「んなわけあるか!!! なにをワクワクして同類を探そうとしてるんだお前は!」
長門「……印なし」
キョン「はぇ!!?!? えぇ!? あぁ……」ガクッ
朝比奈「??? な、なしです……きょ、キョンくん大丈夫?」
古泉「おや、僕は印ありのようですね」
ハルヒ「ということは男女で分かれただけかー、まっ! たまにはいいわよね! それじゃお会計して午前の部やっちゃいましょ!」
キョン「あぉぉ……」
ハルヒ「なにがあんたにそんなショックを与えたのよ……ほら! 立ちなさい! さっさと行くわよ!」グイッ
キョン「ぉお……」
長門「……」スッ
キョン「っ長門? お前どうし―――」
長門「時間の指定があったのは明日。今日は午後のくじであなたと組むようにするつもりだった。情報に齟齬があったことを謝罪する」ボソッ
キョン「……な、長門ぉ!!」パァア
ハルヒ「表情の起伏が激しいわねあんた!!!! 赤ちゃんでももうちょっと落ち着いてるわよ!!!」バン!
不思議探索
古泉「それで、そちらの方は順調ですか? なにやら機関のお株を奪うような暗躍は」
キョン「順調もクソも、意図がわからない以上。今現在がどういう状況なのかさえ分かりかねるね」
古泉「あなたをもってしてもですか?」
キョン「……まぁ、色々制限がかかってるんだよ。見えない制限ってやつがな」
古泉「どうやら、あなた程のお力を持ちながら、中々に苦労されているみたいですね」フフッ
キョン「まったくだ。まぁ朝比奈さん(中)と2人きりの時間が多いから、イーブンってことにでもしとくかね」
古泉「お優しい。随分未来側に協力的なんですね」
キョン「俺はいつでも誰にでも協力的だっての。大きなお世話的な感じになることもしばしばだけどな!」
古泉「自覚はあったんですね……それはともかく」
古泉「山登りの際にも言いましたが、敵対組織……えぇ、あの方々です。彼らに動きがありました」
キョン「動き? なんだ、また不思議現象ズドーン! とこっちに過干渉してくるつもりか?」
古泉「いえ、恐らくそのようなことではない、と思いますが……歯切れが悪くて申し訳ありません」
古泉「ですが近日中、涼宮さん、もしくはあなた、ないしは僕、でなければ長門さん、大穴で朝比奈さんに接触してくる可能性があります」
キョン「全然予想が絞れてないじゃねえか!」ビシッ!
古泉「全員にその可能性があると言いたかったのですよ」
キョン「ふーん……まぁ忠告だと思って覚えておくよ」
古泉「ありがとうございます。十分にお気をつけて」
キョン「おう。にしても接触の可能性、か……」
古泉「お心当たりが?」
キョン「…………どうだろうな」
ハルヒ「結果発表~~~~~~っ!!」
キョン「ハルヒ、それ違うぞ」
ハルヒ「あたしたち? はい! これ!!」スッ
キョン「んだこれ? 3人で写ったプリクラ……っておぉい! 何普通に遊んでんだ!! 羨ましい!!」
ハルヒ「おーっほっほ!! 何か知らないけど優越感に浸れてる気分だわー! こんな簡単にキョンに勝った気になれたんだ!」
キョン「チッ! こうなったら……こっちだってこれを見ろぉ!!」バン!
ハルヒ「ん? え、なにこれ……古泉くんとの……プリク、ラ? え、どうして?」
古泉「え? なんで?」ゾクッ
キョン「うらやましいだろ?」
ハルヒ「……いや」
古泉「え? 撮ってない……え? なんでそのようなものが……?」
キョン「うらやましくない?」
ハルヒ「うん……ちょっと引いた」
キョン「…………」
キョン「カアァッ!」ボオッ!!
ハルヒ・朝比奈「「燃やしたあぁああっ!!!?!?」」
キョン「こんなもんはなかった!! なかった歴史とする!!!」ドン!
古泉「いや元々そんな歴史はないんですが……この場合記憶を消されたのか、写真を捏造したのか……どっちなんだ?」ブツブツ
キョン「くそぅ!! なにやら正体不明の敗北感に押しつぶされそうだが……ハルヒ! 午後の部のクジだ!」
ハルヒ「みくるちゃん、ケータイに一緒に貼りましょ!」キャッキャ
キョン「やめんか!!!!! 羨ま死しちまうぞ!!!! 俺が!!!!」ゴォア!
ハルヒ「あともう少しよみくるちゃん!! 何か! 何か!!」
キョン「なんでお前は俺を殺す気なんだよ! 怖ぇよ!!!」
長門「…………」
ハルヒ「そんじゃくじ引いて」スッ
キョン「…………」チラッ
長門「……」
キョン「……おらぁ!!!」スッ
ハルヒ「今日のあんたのクジに対する心構えはなんなの?」
キョン「おらっしゃーい!!! 印ありだあぁあああああ!!!!」
長門「……あり」スッ
古泉「おや、引く前に決まってしまいましたね」
ハルヒ「ん、そんじゃ午後はこれで行きましょ!! くれぐれも遊ぶんじゃないわよ!?」
キョン「どの口が言うんだどの口が」
ハルヒ「それじゃ午後の部に行きましょ! さー午後は狩るわよーー!!」
朝比奈「狩るんですか!?」ギョッ!
キョン「……長門、助かった。ありがとよ」ボソッ
長門「……いい」
キョン「よし、んじゃ朝倉と朝比奈さん(中)との待ち合わせ場所に行くか」
長門「……その前に」
キョン「ん?」
長門「行きたい場所がある」
キョン「ほぅ。どこだ? 瞬間移動していけば寄り道しても時間にゃ間に合うだろ」
長門「……それは」
キョン「…………」
長門「…………」
キョン「…………」
長門「…………」
キョン「あの、長門? 多分笑った方がいいんじゃないか?」
長門「……何故?」
キョン「何故、っていうと何故なんだろうな……というかこの状況が何故? なのであって……」
長門「……あれ」
キョン「ん? あぁピースサインね。はい、ピース! じゃなくて! おぉ綺麗に撮れてる……ハッ!」
キョン「なぜ俺と長門が一緒にプリクラを撮るという状況になっているんだという話だ!!!! これは夢!!?!?」ハッ!
長門「……わたしがここに行きたいと言ったから」
キョン「そう、そこなんだよ長門さん! これまたどうしてプリクラを撮りたいと思ったんだ? さっき撮ったんだろ?」
長門「…………あなたが」
キョン「俺?」
長門「あなたが、写真を撮らなければ死ぬと言っていたから」
キョン「…………っあー!」
長門「死なれてしまうのは、困る」
キョン「……すまん、長門。気を使わせてしまったのか……だが安心してくれ、俺は死んでも死なん男だ!」ドン!
長門「そう………………でも」
キョン「でも?」
長門「…………これ」スッ
キョン「え? でも、の続きは? これ……プリクラの写真……」
長門「……あなたの分」
キョン「お、おう……」
長門「……死なないで」
キョン「……だ、大丈夫だって。俺は死んでも死なん男! さ、さぁ長門! 朝倉たちの待っている場所に行こうではないか!!」
長門「…………」コクリ
キョン「(……俺の調子が悪いのか? 長門の調子が悪いのか……分からんっっ!!)」ブンブン!
長門「…………」ジィ
長門「――――――。」
朝倉「もうそろそろですかね」
朝比奈(中)「うん、約束の時間まであと少し……」
キョン「よっ」シュン!
長門「……」シュン!
朝比奈(中)「あ!」
朝倉「こんにちわキョンくん、長門さん。約束通り朝比奈先輩を―――」
キョン「うわぁ!! 誰だ!!? 変質者ぁ!!?」
朝倉「誰が変質者よ!!!! キョンくんが変装しろって言うからこんな恰好したんじゃない!!!」
キョン「俺が変装してと頼んだのは朝比奈さん(中)だし、その変装はかえって目立ってんじゃねえか!!! あほ!!!」
朝倉「あ、あほですってぇ!!! せっかく人がお願いを聞いてあげてるのになんなのその態度は!!!」
朝比奈(中)「……」シュン
キョン「あぁ! 朝比奈さんが!! 朝倉のせいで!!!」オヨヨ
朝倉「あ˝あ˝あ˝あ˝!!! 違うんです朝比奈先輩!! そこの男、そこの男が悪いだけであって決して朝比奈先輩が」
キョン子「そこの男って誰のことなんだ?」
朝倉「い˝い˝い˝い˝ぃ!!! 休みの日にまでツッコませないでぇぇえぇええええ!!!!!」
キョン「悪かったよ。休日出勤ありがとさん、用事が済んだらまた朝比奈さん(中)の護衛頼むな」ポン
朝倉「わっ! もう! 分かったわよ、早く用事とやら済ましてきなさい。あ、でもその間長門さんと遊べるなら別にゆっくりしてきても―――」
長門「……」スタスタ
朝倉「っておーい、長門さん!!? どこへいずこへ!? ちょっと! 置いてかないでよ!! ま、待ってってばぁ!!!」ダッ!
キョン「騒がしい宇宙人だなぁ」
朝倉「ダレノセイヨーーー!!」
キョン「遠くからでもツッコミを……さすが朝倉」
朝比奈(中)「あの、キョンくんそろそろ……」
キョン「えぇ、そうですね。向かいましょうか」
キョン「……さぁて、鬼が出るか蛇が出るか」
朝比奈(中)「……?」
ここまでー
5時半ぐらいにとうかー
でけた。とーかー
朝比奈(中)「場所は……この近くの歩道橋下の歩道に沿った花壇でしたよね?」
キョン「ええ、手紙にはそう書いてあります。そして落ちているのは情報の記憶媒体であるとも」
キョン「のんびり歩いていきましょう。落ちてる媒体を見逃すといけませんから」
朝比奈(中)「あ、はぁい」
キョン「いやぁ、それにしても。未来からの指令とはいえ、ここ数日朝比奈さんと2人きりでいる時間が多くて役得ですよ」ルン!
朝比奈(中)「お、お世辞はいいですよぉ。それにわたし迷惑にしかなっていないし……」
キョン「迷惑だなんてとんでもない。むしろ朝比奈さんは未来の俺に迷惑を押し付けられたようなもんなんですから」
朝比奈(中)「で、でもそれはきっと未来のキョンくんも未来の既定事項を遵守したから……!」
キョン「だとしたら、今の俺が朝比奈さんに協力するのは、未来の俺の意志ってことです」
キョン「未来の俺だとしても俺は俺なわけだから……俺は俺の意志で朝比奈さんに協力しているのでなにも迷惑なことはありません」
キョン「昔の人は言いました。我思う、故に我あり。俺の意志は過去も未来も現在も俺のものですよ」
朝比奈(中)「キョンくん……ごめんね、色々ありがとう」
キョン「いえいえ、なんのなんの。ともかく今までなんとなくですが、うまくいっているみたいなんで」
キョン「残り数日、いくつの指令があるのかは分かりませんが、一緒に頑張りましょう」
朝比奈(中)「うん! あ、未来に帰ったら朝倉さんや長門さんにもお礼をしなきゃ……」
キョン「そうですね、特に朝倉には衣食住を提供してもらってるわけだし、俺からも何か……」
キョン「…………なんのゆかりもないだろうけど、岐阜県の写真でもあげておこう」ウン
朝比奈(中)「な、なんのゆかりもないのならなんで岐阜県の写真……?」
キョン「そうすれば朝倉なら『せめて島根県にしなさいよ!!!』とかキレのあるツッコミをしてくれるはず……」ウン
朝比奈(中)「そ、そんなツッコミは多分しないと……それキレのあるツッコミのお手本なんですね……」
キョン「この辺ですね。ほぉ、こりゃまた随分きれいに咲いているもんですね」
朝比奈(中)「本当ですね。市の人が綺麗に手入れしているのかなぁ」
キョン「福寿草にシクラメン、ビオラにマーガレット。あっちはデージーか」
朝比奈(中)「…………」ポカーン
キョン「どうしました朝比奈さん? ハトが豆鉄砲喰らったような顔を1200万倍ぐらいキュートにした感じの顔して」
朝比奈(中)「そ、それは誉めてるんですか!!? じゃなくて、キョンくんお花に詳しいんですね」
キョン「あー……まぁ昔教えられたことがあったんですよ。むかーしむかしにね」
朝比奈(中)「『佐々木』さん!!?」ズイッ!
キョン「おおぅ……ズイズイこられるのはありがたいのですが、もう少しであててんのよ状態になってしまいます朝比奈さん」
朝比奈(中)「っ!! ご、ごめんなさい!! ちょ、ちょっと取り乱しました……」
キョン「まぁ、朝比奈さんの言う通りですよ。ちょいと『親友』にお花の勉強をさせられてた、ってだけですよ」
キョン「えっと、確かパンジーの植え込みに落ちてるって書いていたな」
朝比奈(中)「パンジーの植え込みはあの一角だけみたいだから、すぐ見つかるかもしれないですね!」
キョン「ですね。花壇荒らしと間違われる前にささっと見つけちまいましょう」
朝比奈(中)「はい!」
キョン「えーっと、どこだー!! ハルヒーー!!!」ガサ!
朝比奈(中)「いませんよ!!? 山の岩の中に引き続き涼宮さんを探してるの!!?」ガーン!
朝比奈(中)「キョンくん! 探すのは情報媒体です!! 涼宮さんはお花の中にはいません!」
キョン「そうでしたね、すいません。ハルヒは花の中にいるんじゃなくてハルヒの頭の中がお花畑……」
朝比奈(中)「キョンくん」
キョン「すいません」
朝比奈(中)「…………」ガサガサ
朝比奈(中)「…………うーん」
朝比奈(中)「…………ない。ないなぁ」
キョン「おかしいですね、一通りみたのにそれらしいものは見当たらない」
朝比奈(中)「な、ないと困るんです! 未来の最優先コードでの指令ですから……」
朝比奈(中)「ま、まだじっくり探せてないし、もしかしたら土がかかって隠れちゃったのかも!!」
朝比奈(中)「わたし、少しだけ掘り返して……」グィ
キョン「待ってください。その綺麗な御手を汚す必要はありませんよ」
朝比奈(中)「え、でも情報媒体が見つからないとわたし……っ!」
キョン「ええ、分かっています。ただ、そこを探しても欲しいものはきっとみつからないんですよ」
朝比奈(中)「え? でも、手紙にはここに落ちているって……」
キョン「…………」スゥ
キョン「おらぁ!!! 出て来い巨乳フェチパンジー藤原ぁ!!! テメーの仕業ってこたぁバレてんだよ!!!!」
朝比奈(中)「え、あ、きょ、キョンくん!? い、一体何を……!?」
キョン「ネタはあがってんだよ!!! おら!! どうしても出てこねぇってんならここの朝比奈さんにお前の―――!」
藤原「やめい!!!!!」ドン!!
朝比奈(中)「やめい!!?!?!? って誰か出てきた!!?!?」ガーン!
藤原「やめいというかやめろ!!! とういかもういい加減よせ!!! よしてくれ!!!!! なぁ!!!!」
キョン「ああもう!! 分かった分かったから巨乳藤原ぁ!!!!」
藤原「どこを省略しとるんだあんたはぁああぁあぁあぁぁああああぁあぁあぁあああああぁああ!!!!!!!」
キョン「誰だお前はっっ!!!?!?」バッ!
藤原「今更か!!! 完全に呼び出しておいて今更言うことなのか!!?!? っ!! ッチ! いや、今日はあんたのペースには飲まれないぞ」ギリッ!
朝比奈(中)「(いや、もうとっくにキョンくんのペースだと……それに、この人……)」
朝比奈(中)「あ、あなたは……未来人、なの?」
藤原「! そういえば……あんたに会うのは初め―――」
キョン「ダメです朝比奈さん!! こいつと話しては恰好のおかずにされてしまいます!!」バッ!
朝比奈(中)「ふえっ!? え? お、おかず……って、え?」ワタワタ
キョン「ああもう視線が顔から下に!! ああ、いやらしいいやらしい!!」
藤原「よせ!!! やめろ!!!! やめろと言っているだろう!!!!!」
キョン「お前さっきからやめろやめろ言う癖に、一切巨乳フェチに関して否定はしないよな」
藤原「ぐっ…………!!!」グサッ
藤原「……スーッ、話を……戻そう」
キョン「ほらな。でも俺お前のそういうとこは男らしくて評価してるぞ」
藤原「ほ、本当か……だから!!! 話を戻すといっているだろう!!!」
キョン「戻すもなにも、戻すと巨乳フェチの話になっちまうわけだが……」
藤原「話を!!!!! 始めさせてもらうぞ!!!! いいな!!!?!?」
キョン「それはいいが、さっさとお前の持ってる記憶媒体を返せ、ほら」
藤原「ぐっ! よ、用件が互いに分かっているなら先ほどの無駄な会話は一切必要ないじゃないか……!!」プルプル
キョン「巨乳フェチがなんだって?」ア?
藤原「ふん!!!!!」ブン!!
キョン「あぶねーな、大事なモンなんだから丁重に扱え」パシィ!!
藤原「フーッ! フーッ! この野郎……!!」ギリリ!
朝比奈(中)「(きょ、キョンくんとこの人の関係は? け、結局この人は未来人なの? 違うの?)」
藤原「(せっかく練習したセリフも水の泡だ……クソ)」
キョン「で、一応聞いてやるが今日はなんのようでここにいる?」
藤原「あ? あぁ、なに、僕にとっての既定事項だからだ。それ以上でもそれ以下でもない」
キョン「お前もつくづく好きだな、既定事項」
藤原「好き嫌いなんかじゃないんだ。そちらの未来人も既定事項の重大さは身に染みて分かっているだろう?」
朝比奈(中)「…………」ギュッ
キョン「分かっているとも。朝比奈さんたち未来人がどれだけ時間軸でのルールを遵守しているかを」
キョン「分かっているからこそ、それをめちゃくちゃにしようとするお前の既定事項とやらが気にくわないのさ」
朝比奈「……!」
藤原「誤解を生むような発言はやめてくれ。まるで僕が悪者みたいじゃあないか」
キョン「セクハラは悪だぞ」
藤原「モラルハラスメントも悪なんだが!!!」
キョン「俺に常識は通用しねぇ」ドヤッ
藤原「く……っ!! 屁理屈ばかりで忌々しい人間だな、あんたは!!」
キョン「時に藤原よ、どうやらとある情報筋によるとまたなにかよからぬことを考えているみたいじゃないか」
藤原「……あぁ、橘京子の組織が尻尾を掴まれたか。まったく、情報保護がザルすぎるな、あいつらは」
キョン「それで、次はいったいどんなちょっかいを出してくる?」
藤原「ネタをばらしてしまってはつまらないだろう? おっと、頭の中を覗いても無駄だぞ?」
キョン「まぁた『佐々木』にべったり保護されてんのか。何歳児だよお前」
藤原「なんとでも言うがいいさ。所詮僕もあの女の『力』を利用しているに過ぎない」
キョン「でも巨乳フェチはばらされたんだなぁ。 きょん」
藤原「ぎ…………く……フー。まぁ、まぁいい。今日のところはこのくらいにしといてやる」
朝比奈(中)「わぁ!」
藤原「っ、なに?」
朝比奈(中)「漫画とかでよく聞くセリフを現実で初めて聞いちゃった!」
藤原「……っくだらないことを!……って本当にくだらないな!!!!」ガーン!
キョン「くだらなくなんかないぞ。見ろ、いやお前は見るな。あの朝比奈さんのご立派ァ! な……」
藤原「しつこいなあんたも!! もう!! もういいだろ!!? 認めてくれているのならもういいんじゃないか!!?!?」
キョン「ほら、さっさと帰りなさい。『佐々木』が心配してるぞ」
藤原「おつかいに行った小学生じゃないんだぞ!!? バカにするのはやめろ!」ガーン!
キョン「しっしっ! 用事が済んだらすぐ帰る!! 『佐々木』も言ってただろ?」
藤原「事あるごとに『佐々木』の名を出すな!! 『佐々木』は母親でも先生でもない!!!」
キョン「じゃあ……姉ちゃんか?」
藤原「…………何故?」ピクッ
キョン「おおぅ、なんでそんな急にマジになるんだよ。冗談だよ冗談」
藤原「……まぎらわしいことを言うな!!」
キョン「どこがだよ。ていうか何が?」
藤原「とにかく! もうあんたたちに話すことはない、今日は帰らせてもらう」
朝比奈(中)「あ、あの! え、えーっと……」
藤原「?」
朝比奈(中)「えー……」
キョン「パンジーさん」ボソッ
朝比奈(中)「パンジーさん!!!」
藤原「いや誰が!!?」ガーン!!
朝比奈(中)「未来人のあなたなら分かっていると思いますが、例えいくつの既定事項があろうとも事実は一つではありません」
朝比奈(中)「あなたの望む未来がどんな形かは分かりませんが……」
朝比奈(中)「どうか……過去を壊すようなことはしないで……」
藤原「………………」
朝比奈(中)「お願いします」ペコリ
藤原「…………ふん!」クルッ!
朝比奈(中)「あっ……行っちゃった……」
キョン「……また、そう遠くない内に会う機会がありますよ」
キョン「巨乳フェチにね」
藤原「しつこいぞ!!!!」ビュッ!
朝比奈(中)「ひっ!!?」ビクッ!
キョン「お前のがしつけーよ。帰れよ、帰ったんじゃねえのかよ。おい」
キョン「さて、これで今日の分の指令は終わりですかね」
朝比奈(中)「うん。さっきの人が気にはなるけど……」
キョン「これも既定事項ってやつでしょう。なんの問題もないはずです」
キョン「それよか、ここにいるはずの長門と朝倉はどこへ行っちまったんだ?」
朝倉「あ、おまたせー! 少し遅れちゃったわね。ごめんね」タッタッタ
長門「……」
キョン「ん、そりゃいいが……どこへ行ってたんだ?」
朝倉「別にどこってことはないけど、長門さんとその辺をお散歩しながらお話してただけよ? ねー長門さん」
長門「……」コクリ
キョン「そうかい。それじゃ俺と長門は戻るとするよ、朝比奈さんをよろしくな」
朝比奈(中)「よ、よろしくお願いします。朝倉さん」
朝倉「はい、任されました。それじゃ朝比奈先輩、帰りましょうか」
キョン「あ、それと朝倉。今日の夕方ぐらいにちょっと送り届けるものがあるから待っててくれ」
朝倉「送り届けるもの? なぁに? プレゼントかなにかでもくれるの?」
キョン「それは今度岐阜県の写真をやるから勘弁してくれ」
朝倉「なんで岐阜県!!? せめて島根県にしなさいよ!!!」
朝比奈(中)「ふえっっ!!?」ビクッ
朝倉「えっ!? な、なんですか朝比奈先輩……その過度なリアクション」
朝比奈(中)「い、いえなんでも……ほ、ほんとに言ったぁ……」ボソッ
キョン「っと、長門。遅れるとハルヒがうるさいからちょっと急ごうぜ。それじゃ朝倉、朝比奈さん。また明日ー」
朝倉「はいはい。また明日ね……ふぅ、結局なにを送るのか教えてくれなかったわね」
朝倉「あ、それよりもなんですけどね! 朝比奈先輩! 長門さんとさっき話してたんですけど明後日の―――」
朝比奈(中)「あ、それは―――」
キョン「悪かったな長門。今日一日俺達の用事に振り回して。と、まぁ明日も世話になるんだが」
長門「別にいい」
キョン「そう言ってくれると助かるぜ。朝比奈さん(中)と言ってたがまた長門と朝倉にはお礼でもしなきゃと思ってな」
長門「…………」
キョン「なにが食べたい?」
長門「………………食べ物であることが前提?」
キョン「えっ? 長門!? ち、違うのか!? 俺はてっきり何か食べ物をご所望なのかと……」ワタワタ
長門「…………」
長門「満漢全席……」
キョン「さすが長門。期待通りに期待以上だ。満漢全席、承ったぜ」
長門「…………をわたしと―――」
ハルヒ「あ、おーい!! キョン!! 有希!!! 若干遅れてるわよーっ!!! 急ぎなさーい!!」
キョン「げっ! ハルヒのやつあんな遠くから人の名前を呼ぶんじゃねーっての。高校生にもなって恥ずかしい」
キョン「ほら長門、急ごうぜ。なにやらまだご機嫌みたいだがいつそっぽを向くか分からんからな」スッ
長門「…………そう」ギュッ
キョン「超速前進!!!! ダーーーシュッッッ!!!!」ダダダダダッ!!
長門「…………」プラーン
ハルヒ「なに有希の手握りしめてんのよ!!!! このエロキョン!!!!!」ガスッッ!!
キョン「思ったよりも機嫌が悪くなるのが早かっ、痛い」ジンジン
長門「…………」
朝倉家
朝倉「ふんふふーんふふーん♪ 今日のご飯は煮込みハンバーグ♪」
朝比奈(中)「朝倉さんの手料理は凝ってて味もおいしいからすごいですよね」
朝倉「いやですね朝比奈先輩!! 誉めても煮込みハンバーグしかでませんよっ!」ニヤニヤ
長門「それで十分」
朝倉「いやだから長門さんはいつの間にいるの? もしかしてキョンくんみたいに分身でもしてるの?」
長門「…………違う」
朝倉「分かってるわよ!!! このくらいの皮肉ぐらい言ってもいいじゃない!! いいじゃない!!」
朝比奈(中)「あ、危ないです! 朝倉さん落ち着いて!!」
朝倉「もう……! あ、それで長門さん。明後日のこと涼宮さんは何か―――」
シュン!!!! ゴトッッ!!
朝倉「言って……て!!? なに!!? なんなのこれ急に出てきてなにこれっっ!!?」ガーン!
長門「玄武」
朝倉「ただの亀よね!!? そんな大層な四神とかじゃないわよね!!?」
朝比奈(中)「かわいい」
朝倉「っていうかなんでいきなりこんな…………これ!!? キョンくんが言ってたのってこれのこと!!?」
朝倉「送り届けるって宅配とかじゃなくて、テレポートによる受け渡しなの!!? せめて一緒に瞬間移動してきなさいよ!!」
朝倉「でもなんで亀……あっ、朝比奈先輩この亀が送られてきた理由とかは……」
朝比奈(中)「あ、はい。多分、明日の用事で使うことになる亀さんだと思います」
朝倉「ますます朝比奈先輩たちの用事とやらが分かんなくなってきたわね……亀使ってなにするのかしら?」
長門「……竜宮城……乙姫…………ご馳走?」
朝倉「まさかの自作自演!!!!!!!!」ガガーン!!
ここまでーー!!
遅れました。すいません、投下しますー!
pipipipipipipipipipipipipi
キョン「……ッ!!!!」ガバッ!
キョン妹「キョンくーーん!!!!」ピューン!
キョン「いや起きてる!! もう起きてるから!!!」ダッ!!
キョン妹「起ーきー!!!」グググッ!
キョン「その目と耳は飾りかあほんだらぁあああ!!!!!」シュン!!
キョン妹「てーーーっっ!!!!」ドンッッ!!
キョン「こんなもん避けりゃ……」
キョン「避けらんねえ!!!!」グッシャアァン!!
キョン妹「あははーっ!! 起きた―? キョンくーん!!」ユッサユサ
キョン「ゴホッ……ああ起きたさ、起きてたよ妹よ。あやうく永遠の眠りにつくとこだったがな」
キョン妹「延々?」
キョン「俺が言いたいのは永遠。ま、なんでもいいさ。目覚ましありがとよ」
キョン妹「朝ごはんだよーー!! 早めにした降りてきてねーっ!」タタタッ
キョン「……ふぁ。さぁーって、今日が運命の一日、か」
キョン「なにが起こるやら知らんが……いやまぁ大体予想はつくが」
キョン「昨日の封筒もどうやらちゃんと届いたみたいだし」
キョン「……なんとかなるか」
ハルヒ「おはよー!」
古泉「おはようございます」
朝比奈「あはようございます」
長門「……」
ハルヒ「よし、それじゃあ……って、ん? 何か足りな……あれ? キョンは?」
朝比奈「あ、キョンくんは……」
ハルヒ「!!!? も、もしかして……まだ来てないの!!? あたしより後なの!!?」
古泉「涼宮さん、あの……」
ハルヒ「まさか!! 意図せずきた今日がキョンに勝つ運命の日だったなんて!!!! 油断してたわ!!!」
長門「油断禁物」
ハルヒ「~~~くくっ!! キョンのやつー!! この団長様であるあたしを待たせるなんて何様ぁ??」ニヤニヤ
ハルヒ「SOS団の雑用係も随分偉くなったものね。まっ、仕方ないかーあたしが本気を出せばキョンより早く来ることぐらい―――」
キョン「油断してたって言ってたじゃねえか」ヌッ
ハルヒ「……………………………………いつから?」
古泉・朝比奈「「(すごく冷静……)」」ゴクリ
キョン「最初からいたよ」
ハルヒ「……どこに」
キョン「お前を待ってる間暇だから光の屈折を利用して周囲から見えなくなる『ミラーマン』ごっこをしてだな……」
ハルヒ「なにしてんのよ!!!!! なにしてくれちゃってんのよあんた!!!!!!」
キョン「期待した?」
ハルヒ「っしてないっ!!! けども!! だ、団長を欺くなんて……不敬罪よ不敬罪っ!!!」
キョン「それは今に始まったことじゃないだろ」
ハルヒ・古泉・朝比奈「「「確かに……」」」
ハルヒ「じゃなくて……!! いや、もういいわ。無益な言い争いは時間の無駄ね」
キョン「なんだと!!? SOS団を全否定するつもりか!!!」バン!
ハルヒ「それどういう意味なのよあんたぁああああああ!!!!!!」
キョン「あり」
朝比奈「なしです」
古泉「ありません」
長門「あり」
ハルヒ「ん、組み合わせはこれで決まりね!!」
キョン「余り1?」
ハルヒ「違うから!!! あたしはなしの方だから!!! 今まで余り制度なんてなかったでしょうが!!」
キョン「ハルヒはなしだなー」
ハルヒ「ちょっとその言い方ムカつくからやめて」イラッ
キョン「自分で言ったくせに」
ハルヒ「とにかく!! 二日連続で不思議探索なんてそうそう機会ないんだから!! なにか一つぐらい目ぼしいもの見つけるのよ!! いい!?」
古泉「承知しました」
朝比奈「が、頑張ります!」
長門「了解した」
キョン「涼宮さんは目ぼしいものに入りますか?」ハイ
ハルヒ「……はいりま」
ハルヒ「せんっ!!!」ガツン!!
キョン「づぁっ!!……ほ、星が見える」ピヨピヨ
ハルヒ「よかったじゃない。ちゃんと捕まえておきなさいその一等星」
ハルヒ「それじゃ、まったあとでねー!」
キョン「……あいつの最近のテンションの高さが不気味だな。さて……」
長門「……」
キョン「サンキュな長門。これでどうやら予定通りに事が済みそうだ」
長門「別にいい」
キョン「全部終わったらちゃんと満漢全席ごちそうするよ。約束だ」
長門「…………そう」
朝倉「あっ、いたいた。おーいキョンくん、長門さーん」
キョン「おっ、来たか。ご苦労朝倉。おはようございます朝比奈さん」
朝比奈(中)「おはよう、キョンくん」
朝倉「それはいいけど、昨日のは何よキョンくん!!」
キョン「昨日の? なんだそりゃ?」
朝比奈(中)「あ、これのことじゃ……」スッ
キョン「亀? あぁ、ちゃんと伝えたじゃないか。送り届けるものがあるって」
朝倉「そんな瞬間的にものが届くと思わないじゃない!! 瞬間移動でもいいからせめてキョンくんが持ってくるとかさぁ……」
キョン「悪かったって。それもこれも含め、全部の用事がすんだら長門と朝倉に満漢全席ご馳走するって約束するからよ」
朝倉「それは嬉しいけど……主に長門さんが満足するお礼よねそれ。まぁ、長門さんが喜ぶんならいいけど……」
長門「…………」
キョン「よし、それじゃ俺らは行きますか朝比奈さん。今日は時間指定もあるみたいなんであまりのんびりはできませんしね」
朝比奈(中)「あっ、はぁい。朝倉さん、送ってくれてありがとうございます」
朝倉「いえいえ、それじゃ二人共お気をつけて。じゃ、長門さんあたしたちは何して……あれ? もういない?」
長門「……」スタスタ
キョン「しっかし、亀を川へ逃がすなんてまたなんの意味もなさそうなことをするもんですね」
朝比奈(中)「なにかしらの目的は必ずあるはずなんだけど……わたしにも分かりません」
キョン「願わくば、その亀によってこの川の生態系が破壊されませんように」ナム
朝比奈(中)「そ、そんな危険な亀さんなんですかこの子!!? 外来種!!?!?」ガーン
キョン「そろそろ時間ですね。朝比奈さん、亀をケースから出してください」
朝比奈(中)「はい……ごめんね、玄武ちゃん。冷たいと思うけど我慢してね」スッ
キョン「大層な名前をもらったんだなぁお前。朝比奈さんに愛されるということがどれだけ凄いことか……愛され……愛……」
キョン「……ちょっとだけ私怨を含めてお前を川へ返そう。サラダバ―――」スッ
「こんにちは」
朝比奈(中)「あっ!」
キョン「っとぉ。どこの誰だぁ? ドリームボールばりの投球モーションに入った俺を止める奴は……お」
「この前はありがとうございました」
キョン「誰かと思えば……ハルヒが洗脳教育している疑惑のハカセくんじゃないか。あの時ぶりだな」
「洗脳……? いえ、それよりもあなたは涼宮お姉さんとこのお姉さんのお知合いですか?」
キョン「ん? あ、そういや俺は会ってなかったんだっけ。そっかそっか、うん。そうだ、俺はこのお姉さん方と知り合いだ」
朝比奈(中)「あの後、家に帰って何もなかった? どこか痛むとかなかった?」
「えっ、あ、えっと……はい。だ、大丈夫でした」
キョン「初々しく照れてやがる……あざとい」
朝比奈(中)「今はなにしているの?」
「今日はこれから塾に行く予定です。その途中に見たことのあるお姉さんの姿が見えたので……それで」
キョン「塾に家庭教師と大忙しだな。将来は多分立派なタイム―――」
朝比奈(中)「わー! わー! き、禁則事項だからぁーー!!!」バタバタ!
「禁則……? それよりも、お二人は今何をしているんですか?」
キョン「見てわからんかね?」ドヤッ
「…………痴話喧嘩?」
キョン「正解っ!!!」ドン!
朝比奈(中)「違います!」
「その亀……」
キョン「本当はこの亀を川へ逃がそうとしてたんだ」
「それは、どうしてですか?」
キョン「さあな。俺にも分からん。ただ、必要なことであるのは確かだ」
「それは、あなたにとってですか?」
キョン「そうであるのかもしれないし、会ったことのない誰かのためかもしれない。もしかしたら、君のためなのかもしれない」
キョン「一つの行動が誰にとってどんな意味を持つかなんて、未来人でもなきゃ分からんさ」
「……」
朝比奈(中)「……」
キョン「ふむ。時に少年、君の家はペットを飼える環境か?」
「えっ? あ、平気だと思います。僕が世話をするのであれば」
キョン「そうか……それじゃあこの亀を……」スッ
キョン「川へバッシャァアアアァアアアァアアーン!!!!!」ポチャン!
「!!?」ビクッ!
朝比奈(中)「その流れで!!?!?」ガーン!!
「あ、あの……」
キョン「ま、ちょっと待ってな」スッ
朝比奈(中)「えっ、ちょ、キョ、キョンくん!!?」
キョン「さあ亀さん戻っておいで、スイスイ―っと」フワフワ
「え……か、亀が……飛んで、う、浮いてる!!? どうして!?」
キョン「おかえり、えーっと……白鵬?」サスサス
朝比奈(中)「玄武ちゃんです……」
キョン「玄武。そう玄武だ。こいつの名は。それで……少年よ」
「亀が飛ぶ……? そんなこと物理学的にも生物学的にもありえな、っはい! な、なにか」
キョン「この亀を君に託そう」
「えっ、いいんですか?」
キョン「あぁ、目的は果たした。それに、君も興味があるだろう。その亀……玄武に」
「……はい! こんな不思議な亀は見たことがありません」
キョン「だろう? それは俺からの宿題だ。この亀の謎を解き明かしてくれ。あぁ、期限は特になしだ」
キョン「それと、まぁ……亀の研究をするのもいいが、その途中、君がどうしても気になることがあった場合」
「?」
キョン「今日のことを思い出してみてほしい。そう、例えば投げ入れた時の波紋とか―――」
朝比奈(中)「キョンくん。ありがとう、でももう大丈夫です」
キョン「……そうですか。これはとんだお節介を」
朝比奈(中)「いえ。ただ、この子はちゃんと分かっていてくれるはずです。それが―――既定事項だから」
「……あの」
朝比奈(中)「あ、ごめんね。塾に行く途中だったよね。引き止めちゃってごめんね」
「いえ、それでは亀……玄武をありがとうございました。大切に育てます」
キョン「おう、任したぞ少年。ゴジラぐらいになるまで育てていいぞ!」
朝比奈(中)「な、なりませんよそんなに大きくは!」
キョン「あ。あと少年。今日俺たちとここで会ったことは誰にも秘密だ。もちろん、涼宮のお姉さんにもな」
キョン「これは三人だけの秘密にしよう。どうだ、守れるか?」
「守ります」
キョン「よし。約束だ」
「はい。それでは、僕はこれで……ありがとうございました」ペコ
朝比奈(中)「……車には気をつけて、しっかりお母さんの言うことを聞いて、ちゃんとお勉強して……そしたら」
朝比奈(中)「あなたはきっと、立派な人になる。だからそれまでは――――――」
キョン「……行っちゃいましたね。もう一回伝えに行きますか?」
朝比奈(中)「……ううん。例え聞こえてなくても、彼はきっと……きっと大丈夫です」ニコッ
キョン「さて、これで指令は全て終わったはずです」
朝比奈(中)「ですね。でも、これからどうすれば……」
キョン「んーとりあえず、長門達と合致しましょう。また待機してもらうことになりそうですし」
朝比奈(中)「そうですね、それじゃあ図書館の方に行きましょうか」
キョン「ええ……ん? あれ?」
朝比奈(中)「? どうかしましたか?」
キョン「朝比奈さん、確か今日は俺がハルヒにイタズラ電話をする日でしたよね?」
朝比奈(中)「えっ? あっ、今日は日曜日……そうです! 涼宮さんにキョンくんから電話が……」
キョン「このまま長門達と合致しちゃうと、もうハルヒに電話かける機会はなくなるような……」
朝比奈(中)「ど、どうしましょう。み、未来が変わっちゃったのかも……」
キョン「なぁに、案ずることはありません。それなら今から電話をかけりゃあいい話ですから」
キョン「ハルヒに朝比奈さんのフリしてイタズラすりゃあいいんでしょう? そんなもん」
朝比奈(偽)「日課の如くこなしてるっての」pi
朝比奈(中)「わ、な、なにも誇れることはないけど……」
朝比奈(偽)「ふっふーん。さて、どんな嘘をぶちまけてやろうか……というか今この状況結構目立ちますね」prrrr
朝比奈(中)「え、あ。そっくりですもんね、わたしたち。双子よりも似てるはずですもんね」アハハ
朝比奈(偽)「まったく、この状況で知り合いに出くわすようなことがあれば間違えても仕方がな、あ、ハル、涼宮―――?」ブルルルル
朝比奈(偽)「―――さぁああぁああああん!!? って何すん、はぁああぁああああ!!? おま」ガシッッ!
「っ、出せ!!! 早く!!!!!」ブォオオオォオオオオン!!!
朝比奈(中)「………………………………?」
朝比奈(中)「………………………………へ?」
『おーいキョン!! 一体なんだってのよ!! なに? 今の音は!?』
朝比奈(中)「……………………えっ、と」スッ
朝比奈(中)「………………キョンくんが」
『は?』
朝比奈(中)「誘拐されちゃいましたぁあぁあぁああぁぁああああああああん!!!! わぁああぁああああああん!!!!」ピャー!
『…………はぁ!?!!?!?』
ここまでーーー!
とうかーー
朝比奈(中)「うぇえぇええええええええぇえええん!!! キョンくぅんーーー!!!」
『ちょ、ちょっと! 気持ち悪いわねあんた! いつまでみくるちゃんのフリしてんのよ!』
朝比奈(中)「ぴぎっ!? き、気持ち悪……涼宮さんがひどいことを、うぇええぇええええん!!! キョンくぅううん!!!」
『わ、分かった! 分かったから! あんたがみくるちゃんの真似がうまいのは分かったから!』
『その……あまり人のいるところでそんなことしてちゃダメよ! あと、ドッキリとしても全然ダメ、出直しなさい。じゃまたね』pi
朝比奈(中)「えっ? あっ、す、涼宮さぁん! 涼宮さん!! キョンくんがぁ……ひっく、うぅ……」
朝比奈(中)「キョンくんが……ひっく、誘拐……キョンくん……」
朝比奈(中)「………………キョンくんが? あの?」アレ?
朝比奈(中)「……………………そんなことできる人っているのかな」ボソッ
朝比奈(中)「…………落ち着いて。うん、大丈夫。キョンくんなら無事。今は泣いているよりも他にやらなきゃいけないことがある」
朝比奈(中)「わたしにできることは……ま、まず事情を理解している朝倉さんと長門さんに連絡して……そ、それからっ!」
朝比奈(中)「うぅー……お、落ち着いて。キョンくんなら大丈夫キョンくんなら大丈夫……だから、今は―――え?」ブォオオン!
ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!!!
朝比奈(中)「へ?」グイッ
「OKです!! 出してください!!」
朝比奈(中)「へぇええぇぇえぇえぇええええぇえええ!!!?!? わっ、ちょっと、まっ―――!!」
朝比奈(偽)「…………これは?」
「質問はなしだ。今は大人しく眠って、んぐっ? ふぁ……」ドサッ
「何やって……ぐぅ……」ドサッ
朝比奈(偽)「……えーっと」
「あ、あれ? お、おかしいですね。朝比奈みくるさんには戦闘能力はないと判断していたんですが……」
朝比奈(偽)「……橘」
橘「あ、あたしの名前まで……? あ、なるほど古泉さんたちと情報共有を行っているということですね! それなら納得が―――」
藤原「騒々しい。いいからさっさと眠らせておけ橘京子。無駄口を叩くな」
橘「そ、そうしたいところですが、この方を眠らせようとすると逆にこっちの方が眠らされてまして……」
朝比奈(偽)「おい、巨乳フェチ」
藤原「っあんたもう来やがっ……!? いない? というか声の発信源は……朝比奈みくる?」
朝比奈(偽)「お前らな……やりたかったことは分かるが、どうせ失敗に終わるんなら余計な失敗を増やすんじゃねぇ」
橘「あ、あのさっきからこの方ちょっとおかしい……」
朝比奈(偽)「…………いい加減に」
キョン「気づけこのポンコツ野郎どもぉぉおおおおお!!!!」パッ!
橘「ぎゃぁあああぁああぁぁああぁああ!!!!! 偽乳だったぁああぁああああぁあああ!!!」
キョン「どこに驚いてんだお前は」
藤原「っ、卑怯な!!!!! なんのつもりで朝比奈みくるに化けていた!! 返答次第じゃただじゃ済まさないぞ!!」
キョン「勝手に間違えたのはそっちだろうが。まぁ本物の朝比奈さんがお前らに誘拐されなくてよかったが」
藤原「くそっ! これが既定事項なのか……っ? そうじゃなきゃこんな……こんなことっ!」ギリッ!
橘「あれ? じゃあ本物の朝比奈さんはどこへ?」
キョン「ん。うしろ」ピッ
橘「うしろ……? げっ!」
朝比奈(中)「…………あ、あの」
「なんでしょう?」
朝比奈(中)「……ど、どうして」
朝比奈(中)「朝倉さんと長門さんがこの車に?」
朝倉「いやですね。キョンくんのピンチと聞いてすっ飛んできたんですよ」ドンッ!
長門「……」ドドンッ!
朝比奈(中)「ピンチと聞いた割にはすごい笑顔のような……」
朝倉「えぇーー? そうですかー? もしそうだったらキョンくんにすごい失礼ですねぇー」ニヤニヤ
朝比奈(中)「(絶対キョンくんが無事なの分かってて楽しんでる……)」
朝比奈(中)「それに……新川さんと森さんまで」
森「わたしたちは朝比奈さん達というよりも、向こうの組織を監視していましたから」
新川「ご友人を攫うなど狼藉にもほどがありますな。逃がしますまい」
朝倉「あたしたちも、様子見がてら追けてたら森さん達に出会って乗っけてもらってたんですよ」
長門「行き先には見当がついていたから」
朝比奈(中)「つまり……わたしたち、いいえ、わたしを攫うことは分かっていた、ということですか?」
朝倉「あっ、いえ! そうじゃなくてですね!」
長門「確かに、何らかのアクションを起こすことは事前に分かっていた。そして、それは恐らく未来側も」
朝比奈(中)「未来側も……?」
長門「だからこそ、未来側はあなたを『あなた』のデコイとしてこの時空間に滞在させた」
朝比奈(中)「…………わたしがいなければ、この時間のわたしが誘拐されていたから?」
長門「誘拐に限らず、何らかのターゲットにされていた可能性が高い。だから未来側はあなたをこの時間に送り込み」
朝比奈(中)「キョンくんと行動を共にさせた……そういうことだったんですね」
朝倉「ついでとは言いませんが、未来側からの指令を行うのにもちょうどよかったんだと思いますよ。ちょうどいいって言い方はアレですが」
長門「彼が誘拐されることも、未来側からすれば既定事項であると推測される」
朝比奈(中)「…………そう、ですか」
朝倉「……キョンくんのことでしょうから、朝比奈先輩の変わりの変わりに誘拐されることも折り込み済みだったでしょうね」
朝倉「尤も、どこから知っていたのか。どこまで知っているのかは分かりませんが」
朝比奈(中)「………………」
朝倉「……あたしたち、おそらくキョンくんも朝比奈先輩が誘拐される状況よりかは、はるかによかったと感じてますよ」
朝比奈(中)「…………はあぁ……また、助けられてばっかりだったぁ……」ヘナッ
長門「あなたが落ち込む必要はない」
朝比奈(中)「でも……だってぇ、またわたし……」
朝倉「ふふっ、まぁまぁ、いいじゃないですか。あたしはまだ『失敗コンビ』解散するつもりはないですよ?」ニコッ
朝比奈(中)「うぅ……振り回され続けるのはもう嫌ですー!」
新川「はっはっは。仲良きことは美しきかな……眼福ですな」
森「新川、前見て運転なさい。見失わないで」
新川「はい」ブォオン!
朝倉「(薄々思ってはいたけど上下関係複雑なのね古泉くんの機関!!!)」
橘「早ぁ……。あれって古泉さんのとこの、ですよね?」
キョン「傭兵執事と凄腕メイドのコンビだな。どうやら多丸兄弟の出番は無さそうだ」
橘「傭兵……? って、今はそんな悠長に話してる場合じゃ……っ! 藤原さん!」
藤原「僕の知る既定事項は朝比奈みくるが……いやでも歴史の事実として誘拐した瞬間の姿かたちは紛れもなく朝比奈みく―――」ブツブツ
橘「藤原さん!!!!」
藤原「ええい!! なんだと言うんだ橘京子!! 考え事の邪魔をするな!! 今僕は忙しいんだ!!」
橘「こっちだってピンチなんです!! このっ……!」
キョン・橘「「巨乳フェチ!!」」
藤原「ああっ!!?!?」
キョン「ナイスハモリ」パチン
橘「いえーい! ハッ! そんな場合じゃなかった!」ガーン!
藤原「しょうもないコントに付き合わせるんじゃない!!!!!!! 僕は忙しいと言っているだろうが!!!!」
橘「だ、だからっ! こっちだってピンチなんですってば!!! どう切り抜けるんですかこの状況!!!」
藤原「切り抜けるも何も、端から失敗すると分かっているのだからキリの良いところで無抵抗降伏すればいい話だろう!!」
橘「むっ………………その手がありましたか!」ピコーン
藤原「バカなのか? なぁ、お前はバカなのか橘京子」イライラ
橘「バカとは心外です!!! そもそも失敗する作戦を実行しようとする考えがわたしには分かりかねますっ!!」
藤原「なにを今更!! 何度も何度も言うがこれか既定事項だ!! こうすべき、しなければならないことなんだ!!」
橘「そうやって既定事項既定事項! いーっつもそればっかりじゃない!! それ言っとけば許されると思わないでください!! この巨乳フェチ!!」
藤原「お、お前……いい加減堪忍袋の尾が切れたぞ、お前らとは今日この場で―――!!」
キョン「落ち着けお前ら」ビシッ! バチンッ!!
橘「あうっ」
藤原「っづあぁ!! なんで僕は平手!!?!?」
藤原「なにを……っ!!」ギリッ
キョン「落ち着けつってんだろ。冷静になれお前ら二人共」
キョン「ささいなケンカでせっかく気づいてきたモン壊そうとするんじゃねぇ」
キョン「お前らもお前らで今まで何やらゴソゴソ頑張ってきたんだろう?」
橘「…………」シュン
藤原「……チッ」
キョン「しょうもねぇ口喧嘩でそれを台無しにしちまうのか? それで『佐々木』は満足するのか?」
橘「っ!」
キョン「冷静になれよ。失敗するのが作戦の内なら、今だってまだ作戦通りじゃないか。なにも焦る必要はない、そうだろ?」
キョン「さっき藤原が言ってた通り、キリのいいとこで俺を解放してそれでいいじゃないか。それで作戦成功だろ?」
橘「…………はい」
藤原「…………」
キョン「確かに、橘の言う通り、勝算のない作戦を実行するのはどうかと思うこともある。だがな」
キョン「『失敗は成功のもと』こんな言葉があるくらい、挑戦することは良いことなんだ」
キョン「だからまぁ、失敗するだとか成功だとか、それも確かに大事だけどまずは」
キョン「最期までやりきることが第一だろ? なぁ、藤原」
藤原「…………初めからそう言ってる」
キョン「だとよ橘。焦るのは分かるがこれも作戦の内だから我慢してくれってよ」
橘「はい…………あの、ごめんなさい藤原さん」
藤原「…………」
橘「頭にきていくら事実でも巨乳フェチとか悪口言っちゃって……」シュン
藤原「」ガタッ
キョン「素だから。この子素で謝ってるだけだから。抑えろ藤原」
橘「……あの」
キョン「藤原、橘は謝ったぞ?」
藤原「…………フー。分かった、もういい。これ以上憤ってもしかたない。今までの失言、暴言は寛容する」
藤原「……こちらもイライラしてた非はある。それでいいだろう」フン
橘「藤原さん……」
藤原「それよりも、降伏するにはまだ早いな。失敗するとはいえ、一矢報いるぐらいのことはやるべきだろう」
橘「はいっ! 運転手さん! まだ捕まらないように車ぶっ飛ばしてください!!」
「マカセトケッ!!」ブォオン!!!
キョン「やれやれ、ようやく仲直りか。世話の焼けるやつらだ」ハハッ
キョン「まったく…………」
キョン「………………さて」
キョン「なんで俺がお前らの仲を取り持たなきゃならないわけ!!?!?!?!!?」ガーン!
橘「いや知りませんけど!!?!?!?」ガーン!
キョン「仲裁とかしなきゃいけなかったの俺!!?!!?!?」
藤原「誰が言わずとも勝手にやってきたのはあんただろ!!!!!!」ガガーン!
キョン「敵に塩を送るようなことしちゃってたぁあぁあぁあああぁぁああぁあああ!!!!!」
橘「(アホなのかな……この人)」
藤原「(愚か者もいいところだな……なぜこんな奴に……)」イラッ
ブォオォオン!!
森「速度を上げましたね。取り逃がさないで」
新川「御意」グッ!
朝倉「おかしいわね。もう彼らには逃げる理由がないと思うんだけど……」
朝比奈(中)「わたしじゃなくキョンくんを誘拐しちゃったから……ですよね?」
朝倉「それもですし、というかむしろキョンくんを誘拐できてる時点で何かおかしいんですよね」
朝比奈(中)「キョンくんならいつでも脱出、いやそもそも捕まらないのが普通ですもんね」
森「(当たり前なのでしょうけど、信頼の幅が人外ですね、彼)」
長門「彼が敢えて現状を維持している」
朝比奈(中)「それは……どうしてなんでしょう?」
長門「不明」
朝倉「このカーチェイスを楽しんでいるとかだったらあとでオシオキしなきゃ!」
長門「推測はできる。一つ目は既定事項の遂行」
朝比奈(中)「わたしが誘拐されること、ですね」
長門「二つ目は彼の能力が使用できない状況下にある」
朝倉「まぁこれは間違いなくありえないわね。キョンくんだし」
森「(根拠になるほどの存在なのね、彼)」
長門「三つ目……」
朝比奈(中)「三つ目は……?」
長門「……彼自身、何らかの計画を実行中であること」
朝比奈(中)「ふえっ!? キョンくんが?」
森「……」
朝倉「……ふふーん? 大本命、一番ありえそうじゃない? 長門さん」ニヤッ
長門「…………」
ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!
橘「あわっ! きゃっ!! や、山道に差し掛かったみたいですね……凄い揺れ」
キョン「しかし、中々の腕前じゃないか。優秀なドライバーもいたもんだな」
「アザッス!」
藤原「……で、あんたはいつまでここにいる」
キョン「いつまでって、そりゃあお前らが解放してくれるまでだよ」
藤原「一々癪に障るようなことを言うな。あんたならいつでも、いや初めから捕まるようなことにはならなかったはずだ」
藤原「朝比奈みくるの身代わりになるくらいなら、他にいくらでも方法はあったはずだ。なのに、なぜ今まだあんたはここにいる?」
キョン「仮に気まぐれと答えたとして、お前は納得がいくのか?」
藤原「…………気まぐれ、ふん。いいだろう。どうせ答えないとい言うならば、まだ気まぐれのほうが納得できる」
キョン「あっそ。まぁ、色々考えてそうで気難しい奴だな」
橘「あ、あわわわ!! う、後ろ!! 古泉さんのお仲間さんがもうすぐ側にぃい!!」
藤原「潮時か……いいだろう。橘、既定事項は果たした。大人しく降伏してやろうじゃないか」
キョン「……あぁ、怪我する前にそうしたほうがいいな」
橘「そ、それじゃあ……運転手さん、速度を落として止まってください」
「アイヨッッッ!!」キキィ!!
橘「わ! わ! わわ!!」グラグラッ!
藤原「…………ふん」
キョン「…………さぁって」
新川「むっ」
森「速度を落とした……諦めたのかしら。まだ油断しないで」
新川「心得ております」
朝倉「はー、意外と諦める時はあっさりなのね。てっきり車ごと爆破でもしてトンズラするのかと」
朝比奈(中)「そそそ、そんな物騒な!!?」ガーン!
森「……どうやら、諦めたみたいですね。車を止めて新川は待機」
新川「承知しました」
森「あなたたちは……」
朝倉「お構いなく。お邪魔はせず、自分の身は自分で守りますので」ニコッ
長門「同じく」
朝比奈(中)「あ、あのっ! えっと! わ、わたしも!」
森「……では、自己責任でお願いします。降りますよ」
朝倉「キョンくん元気かしらねー。拷問とかされてないといいけど」
朝比奈(中)「ご、拷問っ!!?」ビックゥ!!
長門「……兵糧攻め?」
朝倉「まぁ、長門さんにとっての一番の拷問はそれでしょうけど、そんな短時間的な兵糧攻めに効果はないでしょうに」
森「人質を解放なさい。あなたがたは失敗しました。色々とね」
朝倉「ホントにね」
森「無抵抗で降伏するならば、この場は見逃してあげます。車から出てきなさい」
ガラッッ
朝倉「お、出てき…………はい!?」
朝比奈(中)「えっっ!!?? きょ、キョンくん!!?」
長門「…………」
森「……あの、それは一体、どういうおつもりで……?」
キョン「おらぁあああぁあぁあっっっ!!! こっちにゃ人質がたんまりいるんだぞ!!! 解放してほしくば指示に従えぇいい!!」ドドン!!
橘「ひいぃ……うわぁん! どうしてこんなことにぃ……」
藤原「なにを考えているんだこの男は!! 急に『人質になれ』などと笑顔で言ってきたかと思えば……っ! このっ!」ギッギッ!
朝倉「………………なにしてるの? あの男」
長門「人質をとっている」
朝倉「見たら分かるわよ!!!! 分かったところでなんでそんなことしてるのかが分かんないけどね!!!!」
森「……やはり、心配は杞憂でしたか」
朝比奈(中)「きょ、キョンくぅん……」オドオド
朝倉「そうだった……キョンくん心配するよりは向こうの組織の人心配してた方がよかったわね……」ハァ
ここっまでー
すいません、3レスだけ追加で投下しときます。キリよかったんで
キョン「見ての通り!! この人質たちは拘束され身動きが取れない状態だ!!! ちなみにさっきまで人質だったのは俺だ!!」ドーン!
朝倉「ちなまんでいいわよ。ていうかなに、この茶番劇。いつまでやるの?」
キョン「さっさと姿を現さなければこいつらの命はないと思え!!!! えぇ!!?!?」ジャキッ!!
橘「ひ、ひいぃぃいいぃいいぃいぃいいいいぃいいぃぃいい!!! も、モデルガン!!!」ビクビク!
藤原「モデルガンだと分かっているならそこまで怯えなくてもいいだろう!!!」
朝倉「姿を現せって、一体誰に向かっての…………人、質」ハッ!
朝倉「長門さん……」
長門「…………」コクリ
朝比奈(中)「えっ? えっ? な、なんですか?」
キョン「さあ!! そろそろ現れてもいい頃だろうよ!!! 焦らすのはもういいだろう!!!」
藤原「!! っ、あんた……っ! だから今回僕たちが出向いた時を狙って……っ! くそっ!」
朝倉「朝比奈先輩……キョンくんに捕えられている彼らが、あたしたちに対しての人質でないのなら、一体誰に対する人質だと思いますか?」
朝比奈(中)「それは……! まさか……!」
長門「その、まさか」
橘「はわわわわ!! ご、ごめんなさいぃ―――!!」
キョン「―――なぁ!!!」
キョン「『佐々木』ぃ!!!!」
橘「ごめんなさいぃ……『佐々木』さん……ドジしてしまいました」ウゥ
朝倉「やっぱり……キョンくんの目的は」
長門「『佐々木』との対峙」
藤原「このっ……! くっ! ほどけない……っ! クソォ!!」
キョン「暴れるな藤原。なぁに、間違っても死なせるようなことはないさ。俺は血も涙もないやつじゃない」
キョン「まぁでも。『佐々木』の対応次第じゃ、今後お前の家の住所はどこかの大病院になるだろうな」ニコッ
藤原「死よりも辛いことをしてるじゃないか!!!!! 冗談じゃないぞ!!!!」ジタバタ!
キョン「暴れなさん、なっ」ビシッ!
藤原「あふぅ……ん」ドサッ
橘「ふ、藤原さーーーーーーーん!!!!! うわぁああぁあああん!! 次はあたしの番なんだーーっ!!!」
キョン「そのまま騒いでたらマジで藤原の後を追うことになるぞ……?」ゴゴゴ!
橘「…………」ピタッ
キョン「分かればよし」
朝倉「でも、キョンくんは何回か『佐々木』さんに直接会いに行ってるはずだけど……なんでまた今更、今ここで……?」
長門「彼の言動から推察するに、今まで『佐々木』は彼の前に姿を現さなかった。あくまで彼が会っていたのは人質の彼らまで」
長門「未だ彼は『佐々木』との再会を果たしていないと窺える」
朝倉「意図的に『佐々木』さんがキョンくんと会うのを拒絶してる、ってことね……でも、この場で改めてキョンくんが『佐々木』さんを呼ぶってことは」
長門「現在人質である彼らが、『佐々木』の庇護下を離れたからであると考えられる」
朝倉「そっか。いつもキョンくんが向かってたのは言わば敵陣、『佐々木』さんのテリトリーだったものね」
朝倉「いくらキョンくんと言えど、そう易々と敵陣の牙城は崩せなかった、ってことかしら」
朝比奈(中)「(……昨日あの未来人さんが姿を現した時に人質にしなかったのは、既定事項のため……ですよね)」
朝倉「で、巡ってきたチャンス……。『佐々木』さんからすればピンチだけど……さぁ、どんな出方をする?」
長門「油断禁物」ピリッ…
朝倉「分かってるわよ」ジリッ!
森「…………」スウゥ…
橘「(ワー。ものすごい緊張感ダー。ダメだ―、この空気に飲まれてわたし、意識、が…………んっ)」クラッ
橘「ふみゅぅ……」トサッ
キョン「!!? いや違う!! 無実だ!!!! 俺は何もやってない!!! 信じてくれ!! 勝手に!! 勝手に橘が寝落ちしたんだ!!」ワタワタ!
朝倉「人質にまでしといて今更何言ってんのよ」
ピリッ
キョン「……」ピクッ
朝倉「!」
長門「……」
森「(……なにか、きた?)」
朝比奈(中)「っ、じ、時空振動……!? ち、違う……でも、とてつもなく大きな……!」
ピシッ!
朝倉「(……確実に『何か』が来てる……いえ、もう……来た。長門さん!)」
長門「(膨大な量の情報フレアを観測。3年前の情報爆発の際に感じた自律進化の可能性に類似した反応が継続中)」
朝倉「(やっぱり……この『何か』は……)」
藤原「っ…………ん? な、に……っ!? バカな!? 時空振動……じゃない! ということは―――来たのか!?」
キョン「『佐々木』よ…………待ち侘びたぜ。ついに…………っ!?」ゾクッッ!!
『少しだけ、借りるよ』
こんだけー。3レスじゃなくて4レスでした! いつも通り改行多くてすいません。この手しか知りません!
10時過ぎぐらいに投下ーー!
投下―
キョン「っ……!」
朝比奈(中)「い、今の声は……?」
長門「言語を介さないコミュニケーション。実際には発声されていないものを声と認識した」
朝倉「キョンくんがよくやるやつですよ。所謂テレパシー……なんて安易にカテゴライズしていいのかは疑問だけど」ジリッ
森「『少しだけ、借りるよ』……わたしにはそう聞こえましたが、一体何の―――!」ピクッ!
橘「…………」ユラッ
藤原「お、おい……橘京子……?」
朝倉「(いや、あれは、もう……)」
キョン「……よぉ」
橘「…………」
橘『あれっ? あたしいつの間に眠って……あ! もしかして藤原さんが―――!』
キョン「何の真似だ? 『佐々木』」
朝比奈(中)「(さ、さっきまでの彼女の雰囲気とは違う……わたしでさえ、そう分かる)」
橘『…………まいったな、自分では結構自信があったんだけどね』バキッ!
森「(彼の作った拘束具をいとも簡単に……これが、『佐々木』の力……ということですか)」
長門「(強烈なプレッシャー、推測であるが、表面的な力だけなら彼にも引けをとらない)」ビリッ
キョン「いつから物真似が特技になったんだよ。俺だけじゃなく、さっき会ったばっかの奴にだってバレバレだ」
橘『おっと、ならばこれは僕の過大評価だったようだ。いやお恥ずかしい。初対面の人にさえ見破られるような陳腐なものだったとはね』
朝倉「(物真似云々よりも、あなたのもつその圧倒的とも言える存在感が何よりの証明になってるのよ!)」ビリビリ!
橘『しかも……これまたお恥ずかしいことに、どうやら色々と抑えきれずに体外に漏れてしまっているみたいだね』チラッ
朝倉「っ……!?」
橘『あまり橘さんの体に長居することはできないようだ。彼女の体に悪影響を及ぼすかもしれないからね』
キョン「……そうか」
橘『うん、だから手短にしよう。あ、それと―――』
橘『久しぶり―――親友』ニコッ
キョン『あぁ、久しぶり―――親友。こっちではな』ニッ
橘『とは言っても、僕の見た目は今現在橘さんなわけで、正確には再会したという事実にはなりえないかもしれない』
橘『だったらと、君は言うだろうキョン。なぜおまえ自身がお前の体でここに来ないのか、と』
キョン「あぁ、答えは簡単だ。お得意の『今はまだその時じゃない』だ」
橘『ならいつがその時になるってんだ?』
キョン「それは僕にも君にも分からない。ただ、時が過ぎ、本当の再会を果たすことは既定事項による事実だ」
朝比奈(中)「?、???」
朝倉「……互いの言いたいことを先読みして会話してる……何この新しい変態達」ヒクッ
キョン「まぁ、橘さんの体を借りてまでここに現れたわけは、言わずとも……俺が呼んだからだ」
橘『その通り。僕としても、僕のお仲間がかつての親友に引き裂かれるところなんてできれば目に入れたくないからね』
キョン「……とんだ茶番だ」ハッ
橘『くっくっく、大根役者の君が言うのかい』フフッ
朝倉「……通じ合ってます感ハンパなーい……わね、この二人」
長門「…………」
キョン「ま、俺としてもどういう形であれ、お前がここに現れるとはあまり期待していなかったがな」
橘『何を言うんだいキョン。僕としては時が来ればすぐにでも君の元へ行きたいというのに』
キョン「だからその時ってのはいつ来るんだよ」
橘『それは神のみぞ知る』
キョン「つまりお前か?」
橘『くっくっく、バカなことを。僕も君も、ただの矮小な人間の一人だよ』
キョン「違いねぇな」
朝倉「……」
森「……」
朝倉・森「「(会話に入りずらい……)」」
橘『さて、先ほども言った通り、談笑はここまでにして……用件を済ますとしようか』
橘『キョン、人質を解放し―――』
キョン「してる」パッ!
橘『―――てるね、もう』
藤原「っ、んっ!? なっ、枷が外れている!? いつのま、に……っ! 『佐々木』!!」
橘『藤原くん、そんなに怒りをあらわにしてどうしたのかな?」
藤原「僕達、僕の独断行動を笑いに来たのか?」
橘『いいや、そんなつもりは毛頭ないよ。好きにすればいいんじゃないかな。僕のことなど気にせずにね』
キョン「……」
藤原「なら何故、この男の安い挑発に乗った!?』
橘『挑発? それは誤解だ藤原くん。僕はただ、キョンから君たちを解放してもらいたく―――』
藤原「茶番はもういいと言っているだろう!!」
橘『……茶番はもういい、か。藤原くん、言葉を返すようだが』
橘『君が行った今回の一連、これこそまさに茶番とは思わないか?』
藤原「なっ……! お前も! 既定事項の重要性と僕の役目を理解していないのか!!?」
橘『理解が進んでいないのは君の方だ。僕たちは目的を果たすための手段を選べないほど落ちぶれたのかな?』
橘『なにかの犠牲によって生まれたものはその責任を背負うべきだ。君はそれを本当に考えて行動してたかい?』
藤原「っ……お前は!! さっきも言った通り、僕たちのやることに口を出さないと言ったはずだ!』
橘『言ったね。だから今まで僕は口を出さず、今回も何も言わないでおこうと思っていたんだけど』
橘『どうやら、君の考え方と僕の理想は相容れないらしい。人はもっと理知的であるべきだとは思わないかい?』
藤原「僕が無計画だとでもいいたいのか!? 僕がどれだけ……っっ!」
橘『考えて行動しようと、物事の判断は結果で決まる』
橘『失敗に価値なんてないよ。価値とは成功した結果のみが持つものだからね』
藤原「っ……!!!!」
キョン「…………」
橘『……おっと、長居は無用だったね。橘さんにも、キョン達にも悪いし、僕らは帰るとするよ』
キョン「そうか、なら気をつけて帰れよ。心配はいらないとは思うが」
橘『あぁ、その気持ちはありがたく受け取っておくよ。さぁ、帰ろう藤原くん。君の既定事項とやらももう済んだのだろう?』
藤原「…………好きにすればいい」
橘『これは弱ったな。内部分裂をしにきたわけじゃなかったのだけど……まぁ、それは追々帰ってから解決することにしようか』
藤原「…………」
橘『それじゃあキョン、いずれまた』
キョン「あぁ、分かってるさ」
橘『くつくつ……あと、キョンのご友人の皆さんも』
朝倉「あ、あたしたちのこと……?」
長門・森「「……」」
橘『度々のご迷惑、申し訳ありません』ペコリ
朝比奈(中)「しゃ、謝罪……!?」
橘『ただ、私共もあなた方と同じく、理由と信念を持って行動しているつもりです』
橘『その結果がこういう風になってしまうのは既定事項であり、実力不足でもある、と私は認識しております』
藤原「………………」
橘『ですので、今後まだ少し至らぬところをお見せするやもしれませんが、ご理解の方をお願いしたく申し上げます』
橘『まことに勝手なお願いとは存じますが、どうぞよろしくお願いいたします』
朝倉「そんな急に……しかも言ってること本当に結構勝手だし……」
橘『では皆さん。また近いうちに会いましょう』ニコッ
橘『それでは―――』パッ
藤原「―――」パッ
朝倉「……生体反応の消失」
キョン「……帰った、か」
朝比奈(中)「ふえぇ……」ヘナッ
朝倉「大丈夫ですか? 朝比奈先輩」
朝比奈(中)「い、一瞬のうちに色々ありすぎて何が何だか……」
朝倉「あたしも同じですよ……あれが『佐々木』さん、かぁ……ふーん」
キョン「…………」
朝倉「当然と言うべきか、随分息ぴったりだったわね、キョンくん」
キョン「ん? 当たり前だろ、いつから親友やってると思ってんだ」
朝倉「うぐっ……い、いつになく真面目に返してくるのね」
キョン「ボケ枯渇症か?」
朝倉「誰がよ!!! あ……」
キョン「まぁ、真面目な話。ようやく『佐々木』が絡んできそうな状況になってきたってこった」
キョン「藤原の言う既定事項も、橘の組織の根回しも、『佐々木』の機会とやらも……あぁ、あと宇宙人もいたか」
キョン「奴らのそういう準備がそろそろ出来上がる頃であるに違いない。近い内ってのはそういうことだ」
朝倉「準備って……前々から思ってたんだけど、結局彼女たちの目的は何なの?」
朝倉「『佐々木』さんの力を持ちながら、涼宮さんの『力』を一体どうしようというの?」
キョン「…………さあ」
朝倉「さあ、って……キョンくんでも分からないの?」
キョン「まさか……『親友』のことで分からないことなんてないさ」
朝倉「だったら―――!」
キョン「『分からなくなっちまった』……なんて悲しすぎるだろ?」
朝倉「っ…………キョン、くん」
キョン「俺たちも帰ろう。朝比奈さんと、ハルヒたちの時間もあるしな」
朝倉「……大丈夫? キョンくん」
キョン「心配するな。『なる』ように『する』だけの力はあるさ」
橘「……ん、むぅ……?」ムクッ
橘「あれ……? あたし……アレ? ここは……っ!?」
藤原「起きたか」
橘「藤原さんっ!? ここ、じゃなくって! 計画は!?」
藤原「失敗した……想定通りにな」
橘「そうですか……え? い、いつの間に? というかあたしはいつから気を失って……」
藤原「……橘京子」
橘「? なんですか?」
藤原「お前は……『佐々木』をどう思っている?」
橘「へ? なんですか急に?」
藤原「いいから答えろ。お前にとって、『佐々木』とは一体なんだ?」
橘「そ、そりゃあ……ニュアンスの違いはありますが、なんというか『佐々木』さんはあたしの中での『本物』です」
藤原「他には?」
橘「ほ、他ぁ? え、えーっと……あ、お友達でもあります! あ、一応公私の線引きはしていますよ?」
藤原「他は? 他にはないのか?」
橘「ほ、他と言われましても……急にどうしたんですか? 藤原さん??」
藤原「……僕は、僕のために『佐々木』を利用しているにすぎない」
橘「え、ええ……それは前から言ってることですよね」
藤原「言い換えれば、『佐々木』は手段だ。僕の目的のための」
橘「は、はぁ。藤原さんにとっての『佐々木』さんは手段……とやかく言うつもりはありませんが、それが何か?」
藤原「……お前が気を失っている間に、色々と、『佐々木』に説教された」
橘「ふえっ!? や、ややややっぱり『佐々木』さん来たんですか!? うわわわわ! あ、後で謝っとかないと……」
藤原「……『手段を選べないほど落ちぶれたのか』、こんなことを言っていたな」
橘「う……ご立腹、というわけですか」アワワワ
藤原「そんなことはどうでもいい。ただ僕は―――」
周防「バラ―――バラ―――?」スッ
藤原「っ……周防九曜!」
橘「わっ! 周防さん、なんだか久しぶりですね」
周防「―――ここにきての―――分裂は―――非常に―――よくない」
藤原「……っ」ギリッ
藤原「宇宙人風情が、僕の何を知っているというんだ!?」
周防「――――――なんでも―――知っている」
藤原「適当なことを……っ!」
周防「―――この段階で―――問題を―――起こしたくはない」
藤原「問題? それは僕のことを―――!」
周防「『佐々木』」
藤原「っ!?」
周防「―――あなたの―――せい―――どうにかして」
橘「?。???」
『やれやれ』
藤原「っ……!」
橘「さ、『佐々木さん』!?」
『僕の出しゃばりは、やはりよくない方向に出てしまうみたいだね。控えよう』
『さて、藤原くん。やはり君は先ほどの僕の物言いに納得ができていないようだね』
藤原「…………フー」
『おや?』
藤原「……納得が、できていないわけじゃあない。あれから考えた。僕自身、甘さがあったことを認めよう」
周防「―――」
藤原「ただ……迷いができたのも事実だ」
『迷い?』
藤原「…………これまでと、これからの。僕の、僕たちのやり方についてだ」
橘「…………ええっっ!!?」
周防「――――――クスッ」
『くつくつ……少しだけ再会が遠のきそうだよ―――キョン』
ここまでーー
今日中には、できれば投下します!
とうかー
森「皆様、わたしたちはこれで失礼します。報告することが山積みですので」ニコッ
朝比奈(中)「あ、あの! 森さん、新川さん。その……ありがとうございました!」ペコ
森「とんでもありません。当然のことをしたまでですよ」ニコッ
新川「それでは、お気をつけてお帰り下さい。では、また」ブロロロロ
朝倉「……うーん、プロフェッショナルだわ。さすがは古泉くんが属す組織なだけあるわね」
キョン「さて、なにはともあれ。これで朝比奈さんがこの時間軸でやるべきことは全て終えたはずです」
朝比奈(中)「あっ、そう……みたいですね。未来から帰還命令が出てます。でも駐留時間軸の時間設定がない……?」
朝倉「ああ、朝比奈先輩。それのことなら多分」
長門「これ」ピッ
朝比奈(中)「み、未来からの手紙!? ど、どうして長門さんたちに……」
朝倉「いやぁ、実は未来のお偉方様が直接あたしたちに渡しに来たんですよ」
朝比奈(中)「えええぇえぇぇえええぇえええっ!!? ど、どどどどうして、そんなっ!」
長門「読んで」スッ
キョン「俺か?」
長門「あなた宛て」
キョン「そういや今までもそうか。それじゃ…………なるほど、分からん!」
朝倉「分からんことないでしょうに。見せて。あ、やっぱり元の時間軸に戻るように書かれてますね」
朝比奈(中)「わ、わたしにも見せてください。差出人は……やっぱり書いてないですね」
朝比奈(中)「あの……この手紙は一体誰が……?」
長門「…………」
朝倉「えーっと……それは……禁則事項、です」
キョン「えぇ……」
朝倉「変な反応しないでよ!!! 仕方ないでしょ!! すいません、朝比奈先輩、こればっかりは、その……」
朝比奈(中)「あっ、いえ! わたしこそごめんなさい。詮索するようなことを聞いて……でも、いいんです」
朝比奈(中)「いつか……この時代でのことが思い出になる時には、分かることですから」ニコッ
朝倉「朝比奈先輩……」ジーン
朝比奈(中)「……キョンくん。ここ数日間。本当にお世話になりました」ペコ
朝比奈(中)「なんて、言葉ぐらいじゃお礼にならないけど……」
キョン「とんでもない。朝比奈さんがいつも入れてくれるお茶は俺の働きじゃまだまだ足りないぐらいですよ」
朝比奈(中)「ふふっ、ありがとう。そして、朝倉さん、長門さんも、未来の都合に巻き込むようなことしちゃってごめんなさい」
朝倉「いえいえ、こういうことはお互い様です。持ちつ持たれつ」
長門「改変世界の時はこちらが迷惑をかけた。だから、いい」
朝倉「掘り返さないでぇ! 長門さぁん!」ウワァ!
朝比奈(中)「……ありがとう、朝倉さん、長門さん。それじゃキョンくん帰りの時間指定をお願い」
キョン「はい。じゃあ失礼して……」スッ
朝比奈(中)「えっ!?」ドキッ!
朝倉「っあ!!!!」バチコーン!!
キョン「が、っぁああああああぁああああ!!!!! 何しやがる朝倉ぁ!!!!」ズザザー!
朝倉「朝比奈先輩に何する気よ!!! そんな怪しげに手ぇ出して!!」ドーン!
キョン「(俺はただ直接時間指定した場所を脳内に送ろうとしただけだ!!)」ドドーン!
朝倉「!!(コイツっ……直接脳内に……!)……じゃなくて!!」
朝比奈(中)「???」
朝倉「なら直接触れなくても今こうやってできてんでしょーが!!!」
キョン「……………………!」
キョン「なるほどな……!」ピコーン
朝倉「バカなのか下心ありきなのか……この男は」ハァ
朝比奈(中)「(び、ビックリしたぁ……)」ドキドキ
長門「……」
キョン「それじゃ、この時間で」
朝比奈(中)「うん。二日後の私が過去に向かった時間の一分後。場所はあの掃除用具の中」
キョン「えぇ、お気をつけて。お待ちしてますよ」
朝比奈(中)「じゃあ……キョンくん、朝倉さん、長門さん。また二日後に―――」ニコッ
長門「……現在時空から消失した」
朝倉「帰っちゃったわね。あーあ、これで夜が寂しくなるわ。だから長門さ」
キョン「行こうか?」ズイッ
朝倉「結構」ビチィ!!
キョン「目はやめて! 目は!!」アァアア!!
朝倉「それにしても……あなたの『親友』さんは一癖も二癖も……」
キョン「あぁああああぁあぁああぁああああああああぁああぁあああああああ!!!!」
朝倉「な、なによ。そ、そんなに痛くしてないでしょ? だ、大丈夫……よね?」
キョン「な、なんで未来の俺が朝比奈さんに情報制限をかけたのか聞くの忘れた……」
朝倉「そ、そんなこと? ていうか今更……まだ分かっていないのが意外だわ」
キョン「? 朝倉は知ってるのか? 朝比奈さんが話してくれたのか?」
朝倉「言わないわよ。朝比奈さんがせっかく何も言わずに帰ったのに」
キョン「だったら……」
朝倉「頭の中覗き見するのはかってだけど、涼宮さんに怒られても知らないわよ?」ニヤッ
キョン「……なんでハルヒだ?」ピタッ
朝倉「さーあ? 知りたければ覗けばいいじゃない、ねー長門さん」
長門「わたしは積極的に覗かれたいとは思わない」
朝倉「ちょ、言い方!! 『頭の中』を略さないで!! わたしがダメな変態になっちゃう!!」
キョン「うーむ…………」
朝倉「ま、その内分かるんじゃない? 少なくとも二日後にはキョンくんが朝比奈さんに情報制限をかけるわけなんだし」
キョン「それはそうなんだが……すっきりしないな」
朝倉「だったら……ココ、覗いてみる?」トントン
キョン「そ、そんなところ……いいのか!?」ハァハァ
朝倉「怪しく言わないでよ!!! そんなところって頭だから!! どこ覗こうとしてるのよ!!!」
キョン「ハルヒが怖いからそれは止しておく。モヤモヤするが」
朝倉「モヤモヤするのもあながち間違ってないけどね。それじゃあたしはこれで帰るわ。待ち合わせ時間、大丈夫なの?」
キョン「なに! もうそんな時間か? おのれハルヒ! よもやこんな真似を……っ!」
朝倉「いや涼宮さんなにもしてないし」
キョン「行くぞ長門!! 遅刻でもしていちゃもんつけられたら敵わん!! それ、走るぞ!」シュン!
長門「……」シュン!
朝倉「…………走ってないし!!! チート技使って瞬間移動してるだけじゃないの!!!!」ガーン!
朝倉「まったく……。それにしても鈍感な男ね。こっちはこれからが忙しくなるっていうのにもう……」
朝倉「…………頑張るしかないか! よし!」
朝倉「そうと決まればまずはいつも通り『戦場』へ行かなきゃね。腕が鳴るわ!」ゴゴゴゴ!
キョン「よっ」シュン
長門「……」シュン
朝比奈「あ」
ハルヒ「や!」
古泉「どうも」
キョン「間に合ったと思ったんだけどな。随分早い集合じゃないか、不思議は見つからなかったのか?」
ハルヒ「全然!! 痕跡すらなかったわよ!」
キョン「その割には何やら上機嫌じゃないか? 何かいいことでもあったのか?」
ハルヒ「いいこと? ふふん、さてそれはどっちのセリフなんでしょうねぇ?」
朝比奈「あ、あはは……」
キョン「あん? 何訳の分からんことを言ってるんだお前は……」
ハルヒ「あ! 訳の分からんことと言えば! あんた、あの電話は何!?」
キョン「電話? あぁ、そういやそんなことも……それがどうしたって?」
ハルヒ「だからあのみくるちゃんの真似した電話は何なのって話よ? どういう意図があってそんなこと―――」
朝比奈(偽)「う?」パッ
朝比奈「うえっっ!?」
ハルヒ「みくるちゃんだわっっっっっ!!!!!!!! みくるちゃんが二人いるっっ!!!!!」ガガーン!!
朝比奈(偽)「まぁ、つまりはこういう、ムギュウ!!! っこら! 離せっ! ハルヒ!」ググッ
朝比奈「す、涼宮さん苦し……ピィ」グググッ
ハルヒ「みくるちゃん二人に囲まれるなんて夢のようだわ!! ハッ! 古泉くん写真!! 写真撮って!!」ギュウゥウ!
古泉「承知しました。それでは……ハイチーズ」
キョン・ハルヒ「「ぱしゃ!」」ニッ
ハルヒ「なぁああぁああぁああぁんでよっっっっっ!!!!!! なんであんたがキョンなのよ!!!!!」バシッッ!!
キョン「ロミオ的なッ!!?!?? 俺は元々俺だろうが!!! あと痛ぇ!!」ジンジン
ハルヒ「あたしはみくるちゃん二人に囲まれてる写真を……あぁ!! みくるちゃんが!! みくるちゃんのオリジナルが!!」
長門「オリジナルではなく唯一無二」
朝比奈「ピヨェェ……」
朝比奈(偽)「クソゥ……いざとなったら朝比奈さんとなり北高の偶像崇拝に……っ!」
ハルヒ「なるか!!! みくるちゃんを亡き者にするな!!」バシィ!
ハルヒ「みくるちゃん! しっかりなさい! ほら! こっからが長いんだから! ねぇ!」ユサユサ
朝比奈「ムミューン……」
キョン「いてー……ったく、今日は女が厳しい日だぜこりゃあ」ヒリヒリ
古泉「それは比較的日常ではあると思いますが……どうやら、大変だったようですね」
キョン「なーに、それこそただの日常でしかなかったさ。ま、お前んとこにも助けられたしな」
古泉「余計な手出しではなくてよかったです。お役に立てたようで何より」
キョン「時に古泉、お前にとってのハルヒは何だ?」
古泉「僕にとっての涼宮さん、ですか……そうですね」
古泉「神」
キョン「……」
古泉「と、以前の僕ならば答えていたのでしょうが……今の僕にとって、彼女は友人であり、団長なのですよ」
古泉「あなたには見抜かれているでしょうが、僕が帰属する組織を問われた時、果たして僕が挙げるのは『機関』であるのか、と」
古泉「自分でも確信が持てなくなっているのですよ」
キョン「どちらにせよ、ハルヒの味方でいてやるならそれでいい。頼むぜ、副団長」
古泉「……いつになく真面目ですね。どういうおつもりですか?」
キョン「ひどい言われようだな。俺はキメる時はキメるぜ」
古泉「それが今である、と?」
キョン「話はそらすが古泉」フイッ
古泉「話も目もそらしましたね。何でしょう?」
キョン「俺が悩むことに心当たりはないか?」
古泉「………………え?」
ハルヒ「もうそろそろ朝倉さんが先に向かってるはずだから、わたしたちもそろそろ……」
朝比奈「はぁい」
長門「……」コクリ
古泉「ほう、情報制限ですか」
キョン「その引っ掛かりがとれないまま帰っちゃったからなー」
古泉「ふむ、情報制限……それも恐らくは、指令とは無関係の…………ああ」
キョン「む、古泉分かったのか?」
ハルヒ「何が分かったって? お宝の在りか?」
キョン「んなもん知るか」
古泉「いえ、あながち間違いではないかもしれませんよ。僕の推測ではね」
キョン・ハルヒ「「?」」
古泉「なんでもありません。それよりも、涼宮さん何か仰ることがおありで?」
ハルヒ「あ、そうそう! 今日の不思議探索は午後カットでおしまい!」
キョン「なんだって? そりゃまた急な」
ハルヒ「昨日もだけど、ここんとこ結構動き詰めだしね、たまには休んでもいいでしょ。不思議も逃げやしないわよ」
キョン「そもそも見つけれてもないけどな」
ハルヒ「というわけで解散よ!! 解散!! あんたも個人で不思議探索やったみたいだし、今日ぐらいゆっくり休みなさい」
キョン「へーへー、お心遣いおりがとうごぜえやす。じゃお言葉に甘えるとするかね。あ、古泉」
古泉「なんでしょう? 僕もこれから頂いた休暇を満喫しようと思っていたところなのですが」
キョン「なのですが、じゃねえよ。説明大好き一樹くんが回答放棄で帰っちまうとは何事か」
古泉「いえいえ、僕のはただの憶測ですし、それに……」
キョン「それに?」
古泉「これ以上は、涼宮さんに怒られてしまいそうですから」
キョン「……まーたハルヒかよ。ったく、どいつもこいつもよ」ハァ
古泉「んっふ」
「さあって! やるわよー! みんな!」
「お、おー!」
「おー」
「……」
「時間は限られているわ! なんとしても明日の……遅くても朝までには準備を完了しなきゃいけないのよ!」
「だったらもう普通にゆっくりすれば……」
「ここまでまってそれはない!! それはないわよ!! 絶対に!!」
「あ、そうなんだ……絶対かぁ」
「……」モグモグ
「あ、だ、ダメですよ!! 長門さん! まだ食べちゃあ……!」
「問題ない。試食」
「大ありなのよ。あなたの試食は終わることないんだから離れて……全然離れないわね!!! えぇ!!?」
「ちょっと! そんな遊んでちゃ間に合わな……あ、キョンと古泉くんに連絡しとかなきゃ」
「みくるちゃん、古泉くんに連絡お願いね。時間と場所だけでいいわ」
「あ、はぁい」
「……」ズゾゾ
「吸うものじゃないからそれ!!!」ガーン!
「あ、もしもしキョン? 言い忘れてたこと……え? あぁ違う違うヒバゴンの話じゃなくて」
「普段どんな会話してるのよ……」
「明日も今日と同じ場所に集合ね! 時間は午後2時ジャスト!! 絶対に来なさい!! 来なきゃ後悔するわよ!」
「……え? やっと真相がわかる? あたしが犯人? ちょっと、何の話……なんか勘違いして……あ、切れた。まぁいいわ!」
「いいわ! で済ましちゃいけないような怪しい会話だったけど!!!?」
「はいはい口動かさないで手を動かす!! 特に有希!! 試食はいいけど、食べ過ぎは駄目よ!」
「承知した」モグモグ
「「絶対分かってない!!」」ガーン!
「さぁー!! 気合入れてやるわよー!! ファイト―!!!」
「「「おー……」」」
ここまでー。次かその次ぐらいで終了予定。
で、投下頻度的な問題で次スレは怪しいです……すいません!
おしゃぁ、とうかー
pipipipipipipipipipi
キョン「zzz……んぐぁ? 朝、いやもう昼か」
キョン「んーっ。久々に解放感ある朝だ。と言いたいところだが、どうやら今日も拘束されるらしいな。それに昼だ」
キョン「やれやれ……」
キョン妹「キョンくーん! もうお昼だよーっ!!」バン!
キョン「あぁ、ちゃんと起きてるよ」
キョン妹「あ! キョンくんあのねーっ! 今日はー……」
キョン「うん? なんだ?」
キョン妹「あ、うーんと……ううん! やっぱりなんでもないよ!」
キョン「なんだ歯切れの悪い。また何かやらかしたのか? 正直に言え。四国を僅かにに日本海側にずらす他に何やったんだ」
キョン妹「もーっ! 違うよ! イタズラなんかじゃないもん!! それに前のは四国じゃなくて高知県だけだもん!」
キョン「尚更ダメだろ。高知の人に謝りなさい」ビシッ
キョン妹「いてっ! ごめんなさーい。でも今日は本当にイタズラしたとかじゃないんだもん!」
キョン「じゃあなんだってんだよ」
キョン妹「だーかーらー、それは言えませーん! やっぱりなんでもないの!」
キョン「やはり、お前何かまた悪さを……」
キョン妹「わたしは順番を守ろうとしただけだもんっ!」
キョン「順番? そりゃ何の順番だ? 誰の握手会があるんだ? 俺?」
キョン妹「い、い、か、ら! 早く準備していってらっしゃーい!! 帰ってくるころには分かるから! ねっ!」グイグイ
キョン「分かった分かった。分かったから押すな。ったく……まぁ、今日で全部分かるならそれでいいか……」
駅前
キョン「お」
古泉「やあ、こんにちは」
キョン「お前だけか」
古泉「ええ、珍しくね」
キョン「じゃあ一旦帰るわ」クルッ
古泉「お待ちを。華やかさはありませんが、談笑の相手ぐらいにはなりますよ」ガシッ
キョン「だ、男娼……」ゴクリ
古泉「とんだ勘違いはおやめください」
キョン「ハルヒが最後なのはいつものことだが、朝比奈さんと長門も来てないのは珍しいな」フワァ
古泉「おや、まだお気づきにならなかったのですか?」
キョン「昨日お前が説明放棄して帰ったせいでな。それで? 今日のこの集合で一体なにが分かるってんだ?」
古泉「そうですね。何が分かると言うならば……」
古泉「涼宮さんも案外、普通の女の子ということぐらいですよ。尤も、これは前々から感じてはいたことですが」
キョン「ハルヒが普通の女の子? はっ、冗談きついぜ古泉」
キョン「お前は長門が逆立ちしながら白目向いてヒンディー語喋ってたら普通とでも言うのか? え?」
古泉「それは絶対に言いませんが、そもそもの例え話が意味不明すぎます。どれか一つでも驚きますよ」
キョン「यह ऐसा होगा। होमो」
古泉「एक गलत धारणा है।」
キョン「なんで分かるんだよ!? そのハイスペックはちょっと引くわ!!」ガーン!
古泉「んふっ、これも機関の教養の内ですよ」
キョン「機関怖えぇ……なにを育成するつもりなんだ……」
ハルヒ「あっ、おーまたー! 集合時間ピッタリだからまぁセーフでしょ!」
朝比奈「こんにちはぁ。ふわぁ……」
長門「……」
キョン「ピッタリじゃねーけどな。5分オーバーだ。朝比奈さんと長門に免じて許してやるが」
朝倉「あら? あたしには免じてくれないのかしら?」
キョン「おぉ朝倉。お前もハルヒに呼ばれたのか?」
朝倉「呼ばれたというか……あぁ、やっぱりまだ気づいてなかったのね」
キョン「おい……なんだ古泉も朝倉もみんなそろって『はぁ……まーだ分かってないのかこいつ』みたいな視線と物言い!」
朝倉「だって……ねぇ?」
古泉「ええ。まぁいいじゃないですか。いつもあなたに見透かされてばかりの我々からしてみれば結構貴重な体験なんですから」
朝倉「そうそう、キョンくんより優位に立ってるのってなんだか気分がいいし!」
キョン「くっ! 目覚めん! 目覚めんぞ俺は……Mの快感なんかにっ……!」ギリッ
朝倉「いや何と戦ってんのよ」スパーン!
ハルヒ「はいはいそこ! 何やら盛り上がってるのはいいけど、そろそろ移動するわよ!」
キョン「移動? どこに?」
ハルヒ「山」
キョン「川」
長門「穂」
朝倉「たk、じゃなくてなんで合言葉みたいになってんの? 誰が分かるのこの合言葉」
ハルヒ「というわけで、先日訪れた山! あの山に行くわよっ!」
キョン「えー、何しにだよ? あの山は結局なにも宝なんぞ出てこなかっただろ。なぁ長門」
長門「そう。せいぜいツチノコぐらい」
古泉・朝比奈「「えっ」」
ハルヒ「見落としがあるかもしれないでしょ! 一回諦めたと見せかけて油断したところを見つけ出してやるのよ!」
キョン「ハルヒ。下を見て不思議を探すのもいいが、上だ。上を見てみろ。不思議なんかじゃない、この何の変哲もない青空こそ俺らの―――」パアァ
朝倉「あの、みんな駅向って置いてかれるわよ?」
キョン「……………………」
キョン「ま、負けんぞっ! 俺は……Mなんかに……M……Mかぁ」
朝倉「だから何と戦ってんのよ。ていうかもう負けそうになってるじゃないの」スパーン!
鶴屋山
ハルヒ「登れー♪ 登れー♪ そこに山がある限り―♪」
長門「……jas○ac申請中」
朝倉「嘘はいけないわっ長門さん!! 一mmたりとも聞いたことないメロディーだったもん!!」ビシッ!
朝比奈「ふっ、ふぅ、ひぃ、ひぁ……!」
キョン「……………………いい」グッ
古泉「意味深なガッツポーズはやめてください」
ハルヒ「がんばれっ♪ みくるちゃん♪ ゴールはそこだっ♪」
朝比奈「ひぃーーーっ! ふぅ、はぁ、ふぅう」
朝倉「えらくご機嫌ね涼宮さん。自分で作詞作曲するぐらいには」
キョン「山登りがそんなに楽しいのかね。確かに不思議探すよりかは健康的で有意義かもしれんが」
古泉「涼宮さんがご機嫌なわけも、そろそろ分かると思いますよ」
キョン「ハルヒがご機嫌…………この先で誰か死んでたりするのか?」
朝倉・古泉「「涼宮さんのご機嫌になるポイントがおかしいっっ!!」」ガーン!
キョン「もしくはすげぇ綺麗に泥団子つくれる土見つけたとか……」
朝倉「一転してそんな幼稚な……振幅が大きすぎない?」
古泉「心配せずとも、誰かの不幸や個人の幸せで涼宮さんはあそこまでご機嫌になられてるわけではないと思いますよ?」
キョン「その根拠は?」
古泉「ですから、今に分かりますよ」
キョン「チッ、ちょっとぐらいヒントくれてもいいじゃねえか」
朝倉「(今まで結構それっぽい発言はあたしもしてきたんだけどなぁ……気づかなかったのよねぇ……)」
ハルヒ「はい、ついた!」ドーン!
キョン「おう。ここも確か掘ったよな。そのハルヒの家、もといデケェ岩が目印だとか言って」
ハルヒ「誰が岩に住んでんのよ誰が。んで、これはい! あんたと古泉くんの分」
キョン「ん? またシャベルか」
ハルヒ「うん、スコップね!」ニコォ
キョン「……」イラァ
朝倉「しょうもないいざこざはやめてね?」
キョン・ハルヒ「「……はい」」
キョン「で、また、この……円匙(シャベル)で掘ればいいのか?」
ハルヒ「うん! それ(スコップ)でここ! 今日はここだけ掘ればいいわ! 他はいい!」
キョン「なんで?」
ハルヒ「なんでも!」
キョン「食い気味に言わんでも……ったく」
古泉「まぁまぁ、文句言わずに掘りましょう。もしかしたら……何か素敵な宝物を見つけることができるかもしれませんよ?」
キョン「……はぁ、いいか古泉。どうやらお前はまだ現実が見えていないようだから教えといてやる」ザクザク
古泉「はい」ザクザク
キョン「今まで俺たちは不思議探索と称して色々幅広く活動してきて、なんーーーの成果も挙げれてないだろ?」ザクザク
古泉「概ね仰る通りですね」ザクザク
ハルヒ「……ふふ」ニヤニヤ
朝比奈「……えへへ」
キョン「その結果を踏まえてだ。つい二日前に散々掘った場所からなにか出てくると思うか? いいや思わないね、一流のハルヒニストならな」ザクザク
古泉「ハルヒニストという言葉が気になりますが……まぁ、普通ならそう都合よくは出てきたりはしないでしょう」ザクザク
朝倉「……」ニヤニヤ
長門「……」
古泉「ですが、ここを掘るように指示したのはあの涼宮さんですよ? 何か出てきても逆に不思議じゃありません」ザクザク
キョン「分かってない。分かってないねぇ古泉。いくらハルヒの力と言えど、そんなラノベみたいな都合のいいことなんて」カンッ!
キョン「」
古泉「おやぁ???」
古泉「今、何かあたりましたよね? 軽い金属音が聞こえましたよね??」
キョン「……スー、おちけつ古泉。ききまがちえかも知れんだろ」
古泉「とりあえず、あなたが落ち着いてください。落ち着いてもう一度掘ってみてください」
キョン「あ、ああ。落ち着いて……ヒッヒッフー。ヒッヒッフー……よし」
朝倉「なにがよしなのか」
キョン「ほ、掘るぞ古泉……」
古泉「えぇ、ゆっくりとお願いします」
朝比奈「…………………………」
長門「朝比奈みくる」
朝比奈「ひゃ、ひゃいぃいいい!!??」ビクッ
キョン「せー、っの」カンッ!
キョン「…………古泉」
古泉「はい、なんでしょう」
キョン「………………フー」
キョン「これ絶対なんかあるぞ!!!!!!! これ絶対なにか埋まってるって!!!!! これ!! これやばいぞ!!!」フゥ!
ハルヒ「~~~っ!」プルプル
朝倉「テンションの上がり方が……都合がよすぎるんじゃなかったのかしら?」
キョン「やべーよ。これ絶対やべーやつだぜ古泉。700億円とか埋まってたらどうしよう……」
古泉「それは多分、いえ絶対ありえませんので。とらぬ狸の皮は気にしなくていいです」
キョン「さすがに700億はないか。だよな、3000万ぐらいが関の山か」ハハハ
ハルヒ・朝比奈「「…………」」シラー
朝倉「(ちょっと!! お二方がシラーってなってるぅ!!!! 無意識のデリカシーの無さがひどいっ!!)」
古泉「げ、現金に固執する必要はないかと……そうでなくともきっと素敵なものが入ってますよ」
キョン「…………えっ? もしかして新川さん入ってる!?」
朝倉・古泉「「なんでっ!!?!?!?!?」」ガガーン!
キョン「取り出してみたが……あまり大きくはない箱だな。500万ぐらいか?」
古泉「現金換算はここまでにして、涼宮さん。このようなものが出てきましたよ?」
キョン「あっ! こらっ! ハルヒ! これは俺と古泉が掘り出したものだからな! 俺のもんだぞ!!」
古泉「あれ、僕は……?」
ハルヒ「はーしょうがないわねぇ。そんなにその箱の中のモノが欲しい? まぁ、どーしてもってんなら今日は特別に―――」ニヤニヤ
キョン「欲しくないものだったらいらない!」ドーン!
ハルヒ・朝比奈「「ええっ!!!」ガガーン!
キョン「その時はちゃんと団長に引き取ってもらうから。じゃあ古泉、開けるぞ」
ハルヒ「ちょ、ちょちょ! ま、待ってそんなこと言われたら心の準備が……!」
キョン「安心しろ、仮に俺の無くした靴下だったとしても……俺はいらん!」
ハルヒ「あたしもいらないわよ!! なにその不毛な不要なものの押し付け合い!! そうじゃなくって!!」
キョン「ええいうるさい! もう開ける!! いざ! 開け!! 魔界の扉」パカッ
朝倉「失礼な」
ハルヒ「ああっ!!」
キョン「これは…………チョコレート?」
ハルヒ「…………そ、そうだけど! どうなのよ!」
キョン「いやどうなのよって………………ん? あーーーっっ!!!! これ、そういう……ああーーーっ!!」
古泉・朝倉・朝比奈「「「(遅……)」」」
キョン「…………そういう、ことか。あれも……これも」
古泉「今日が何の日か、ようやくお分かりになりましたか」
キョン「あぁ、忙しかった、というより今まであまりに縁のないものだったから忘れてたぜ」
キョン「バレンタインデー……そういうことだったってわけ、か」ハァ
朝倉「遅すぎるわよ。勘は働いていないみたいね」
キョン「そうは言われてもよ。まぁ、予想できないだろ、これは」
ハルヒ「ふ、ふん! まぁ、最後の最後までバレずにサプライズができたからこれはあたしの勝ちね! うん!」
キョン「誰と戦ってんだ誰と。まぁ、確かに気づかなかったが……だからお前はあんなだったのか」
ハルヒ「あんなって……えっ!? あたしなにか態度に出るくらい変だった!?」
古泉「彼が一番早く涼宮さんの変化に気付いてましたよ」
キョン「だってあまりにおかしかったから」
ハルヒ「そ、そんなに言われるほどおかしい覚えはないし!」
キョン「おかしすぎてクラスで浮いてたぐらいだぞ」
ハルヒ「それは別に元から……って何言わすのよ!!!」バシッ!
キョン「痛い」
ハルヒ「……で、どうするのよ?」
キョン「どうするって、なにが?」
ハルヒ「そ、れ! あたしと有希とみくるちゃんと朝倉さんが徹夜して作ったそのチョコ! 義理だけど!」
キョン「あぁ、このショコラか」
朝倉「なんでわざわざ言い直すのよ」
ハルヒ「い、いらないならあたしに返すって言ってたけど……ど、どうなのよ!」
キョン「…………そうだな」
古泉「あぁ、僕はもちろんありがたくいただきますよ。時間をかけてゆっくり食べさせていただきます。皆さん、ありがとうございます」
ハルヒ「みんなの愛と情熱と気合と根性と嫉妬と妬みとやる気と闇と黒歴史が入ってるからね!! たんと味わいなさい!」
朝比奈「いえいえ、おいしくできたかは自信ないですけど」
長門「味は保証する」キラーン
朝倉「試食であれだけ食べればね。味わって食べてね、古泉くん」
古泉「えぇ、もちろん(黒歴史……?)」
ハルヒ「で? あんたはどうするの? いらないってんなら今この場で返してもらっても構わないけど」フイッ
キョン「……中身は700億でも、3000万でも、500万でもなかったけどよ」
キョン「まぁ、それ以上の価値のモノが入ってたって言うありがちな言葉で前置きした上で」
キョン「ありがたく、頂戴する。いただきます、皆」
ハルヒ「な、なによその前置き……まったく素直じゃないんだから!」
朝倉「どの口が言うのやら……似た者同士よね、意外と」
長門「700億以上の価値……確認のためもう一度チョコレートを―――」
朝比奈「た、食べ過ぎですよ! 何十kg食べるつもりですかぁ!」
キョン「…………」フゥ
古泉「おや、感動のあまり食べる前からお腹いっぱいですか?」
キョン「バカ言え。こういうモンは別腹って相場が決まってんだよ」
古泉「んふっ、そうですか。それで、どうです? これで色々分からなかったことが分かってすっきりしましたか?」
キョン「あぁ、ようやく、本当に解放された気分だよ。ここ最近は本当に色々あったからな」
キョン「………………ま、それでも」
キョン「それに対するご褒美があったから、よしとするか」
キョン「……ありがとうよ」
ここまでーー。あと1回の投下で終わらせることができるでしょう。
そこまでお付き合いください
ハルヒ「ふあぁ……さて、用件も済んだし帰りましょ。さっきもいったけど徹夜してたから眠いのよ」
朝比奈「ふみゅう……」
キョン「えっ!? 今から不思議探索するんじゃないのか!? 不思議探しは!?」
ハルヒ「なんで今日に限ってそんな意欲的なのよ!!! それを毎週持続させるだけの気概を見せなさい!!」
朝倉「よく徹夜してそんな鋭いツッコミができるわね。あたしには無理だわ」
キョン・ハルヒ「「ダウト」」
朝倉「早いし息ぴったりじゃないの!! あ」
長門「予定調和」
古泉「では、このチョコレートはありがたく頂戴して、皆さんもお疲れでしょうしお礼も兼ねて」
古泉「彼に山の下まで送ってもらいましょう」
ハルヒ「それっ! 古泉くんナイスアイデアだわ!」
朝倉「いいわね。それこそがキョンくんのもっとも正しい使い方だもの」
キョン「おい」
朝比奈「んぅ……」ウツラウツラ
古泉「朝比奈さんも限界のようですし、どうかここは一つお願いしますよ」
キョン「ったく……仕方ない。今日だけだぞ」
ハルヒ「やたーーっ! 楽できるわよみくるちゃん!」ユサユサ
朝比奈「ん……? ふぇ?」
朝倉「(キョンくんにしては意外と聞き分けがいいわね)」
古泉「では参りましょうか」
キョン「おう、じゃあな古泉。また学校で」
古泉「ん?」
キョン「さいならー」シュン!
古泉「ちょ…………えぇ……」
古泉「…………彼はチョコのようには甘くない、ということでしょうかね」ハハ
古泉「……降りましょうか」
朝倉「どうりで聞き分けが良いと思ったら」
キョン「古泉も言ってたろ。疲れてんのは女性陣だけなら古泉は元気に下山してくるだろうさ」
朝倉「はぁ……同情するわ古泉くん」
ハルヒ「キョン! 古泉くんには悪いけどみくるちゃんが本当にダメっぽいから送って行くわ」
朝比奈「……クー」
キョン「お前は大丈夫なのか?」
ハルヒ「はっ! 眠いと言ってもあと6徹ぐらいは余裕だわ! SOS団の団長なめんじゃないわよ!」
キョン「そうか、じゃ任せたぜ」
ハルヒ「うん。それじゃ今日は解散! また部室でね!」
キョン「あぁ。あ、あとハルヒ」
ハルヒ「ん? なに?」
キョン「今回はまんまとお前にしてやられた結果となったが、来月」
キョン「お前達にゃ必死こいてホワイトデーを堪能してもらうことになるだろうぜ」ニッ
ハルヒ「…………ふ」
ハルヒ「あははっ! 上っ等じゃない! あんたと古泉くんで知恵振り絞ってきなさい!」
ハルヒ「……楽しみにしといたげるわ! じゃあね!」
キョン「しまったな……これじゃ逆効果か」
朝倉「また涼宮さんを満足させるような計画を練らなきゃいけないみたいね」
キョン「お前も協力してくれるのか?」
朝倉「まさか。だってあたしもお礼をもらう側なんだもの」
キョン「それもそうか」
朝倉「じゃっ」ポンッ
朝倉「あたしも、期待しておくわね。行きましょ長門さん」
長門「……期待してる」
キョン「長門もかよ……やれやれ、重い期待だなこりゃ」
キョン「…………」モグモグ
キョン「甘いな、うん。人生もこのチョコのように甘ければいいのになぁ……」モグモグ
キョン「うまい」ゴクン
朝比奈(大)「……公園のベンチで一人で喋ってると怪しく思われますよ?」クスッ
キョン「あなたがいるじゃないですか。待ってましたよ朝比奈さん」
朝比奈(大)「ちゃんと、6枚目の、最後の手紙の通りに来てくれたんですね」
キョン「あなたとの約束を反故にするほど、俺はバカじゃありませんよ」
キョン「『すべてが終わったとき、七夕の夜に出会った公園のベンチに来てください』」
キョン「……これは告白イベントかなんかですか?」
朝比奈(大)「ち、違いますよ! あ、それ……」
キョン「さっきあなたたちからもらったチョコです。ありがとうございます」
朝比奈(大)「ど、どうも……?」
キョン「ハルヒのは『チョコレート』、長門のは『寄贈』、朝比奈さんのは『義理』、朝倉のは『人間』って文字が書かれてました」
キョン「こりゃ一体……?」
朝比奈(大)「あ、あはは……わたしのは涼宮さんの指示に従って書いたんです」
キョン「とすると、本当は朝比奈さんは何て書こうとしてたんです?」
朝比奈(大)「えっ? あ、えーっと……き、禁則事項です」
キョン「…………ほーぅ」
朝比奈(大)「い、意味深な目でこっちを見ないでください! み、見てます!? 頭の中!?」
キョン「そんな野暮なことはしませんよ。さて、どれもおいしくいただいたところで」
キョン「本題に入りましょうか。あなたが、俺をここに呼んだわけを聞かせてください」
朝比奈(大)「といっても、キョンくんの情報制限はもう解けて今回の全容は知っているんでしょう?」
朝比奈(大)「特にわたしから言うほどのことは……」
キョン「……まぁ、そうですね。今の朝比奈さんが俺に言うことは特にないでしょう」
キョン「未来の指令を俺に手伝わせたのだって特に大した意味を持たない。俺の行動が見たかっただけだ」
キョン「『すべてが終わったとき』……それは決して今日この日のことじゃない」
朝比奈(大)「……ほんとになんでも知ってるのね」
キョン「ある程度だけですよ」
朝比奈(大)「ふふ、あなたにとってはわたしも未来の人間の立場ではいられないものね」
朝比奈(大)「……キョンくん。もう直に、未来にとって大きな分岐点が訪れます」
キョン「……」
朝比奈(大)「もしその分岐点でわたしたち側の望まぬ未来になってしまったら……」
朝比奈(大)「……はっきり言うと、わたしがいる時代に置いてもキョンくん、あなたの正体は掴めていません」
キョン「…………」
朝比奈(大)「つまり、あなたというイレギュラーが未来に及ぼす影響は計り知れないものであるということ」
朝比奈(大)「こうしてただわたしと話しているだけで数千、数万の未来への分岐点が存在しています」
朝比奈(大)「わたしのいる未来じゃとても予測できないほどの変化」
朝比奈(大)「その可能性を持つのは現時点では、涼宮さん。そしてキョンくん、あなたも数えられています」
キョン「過大評価ですよ」
朝比奈(大)「キョンくんは……ひょっとしたら未来のその先、時間の終着点のことでさえ知っているのかもしれない」
朝比奈(大)「未来がこれからどうなるのか、分岐点であなたがどう動くのか……」
朝比奈(大)「これはわたしたち未来人、それと恐らく長門さんたちや古泉くんたちでさえ予測できない」
朝比奈(大)「未来の決定権はあなたにある」
キョン「…………」
朝比奈(大)「……これから起こる分岐点の前に伝えたかったのはそれだけかな」
朝比奈(大)「百も承知のことだろうけど、改めて未来側の意思表示として今日ここにわたしは現れました」
キョン「…………そうですか」
キョン「未来の決定権なんて大層なもの、欲しいと思った覚えももらった覚えもないんですがね」
朝比奈(大)「あなたが分からなけらば誰も分からないわ」クスッ
朝比奈(大)「今日わたしが言いたかったのは、本当にそれだけ。それだけのために呼び出しちゃってごめんね」
キョン「とんでもない。またいつでもこの時代に遊びに来てください」
朝比奈(大)「ふふ、是非そうしたいわ。あ、それとキョンくん、これ」
キョン「ん?」
朝比奈(大)「ハッピーバレンタイン」スッ
キョン「おぉ、朝比奈さんから2つも……! 地球上で唯一の男だろコレ!!」
朝比奈(大)「じゃあお返しは…………」
朝比奈(大)「未来で待ってますね! それじゃあ―――また」
キョン「また……か。会えるといいな」
キョン「少なくともそれを可能にするのが、この時間にいる朝比奈さんの役目だろうからな」
翌日
ハルヒ「ん、おはよ」
キョン「お、ごちそうさま」
ハルヒ「いやいま言う!?」ガーン!
谷口「おおおおい国木田今キョンの野郎がす、涼宮にごごごちそうさまだって!!!」
国木田「気持ち悪いよ谷口、単純に」
ハルヒ「ほ、ほら。クラスのやつにざわつかれても面倒くさいでしょ! 感想は部室で聞くから400字以上の文書で―――」
キョン「しまった! もしかしたら字数制限オーバーか!!?」ドサッ
ハルヒ「辞典か!!! 何をどうやったら一晩でこんなに書けるのよ!!! うわヒンドゥー語のページとかある!!!」ガーン!
キョン「まぁ、統括するとうまかったよ。ありがとよ」
ハルヒ「こんだけ書いて結局内容それだけ!!!?」
ハルヒ「って、だから今言うな……っ、そ、そうおいしかったのね。ま、まぁあたりまえだけど!」
ハルヒ「ちゃんと有希とみくるちゃんと朝倉さんにも言うのよ! みんな頑張ったんだから!」
キョン「分かってるよ」
ハルヒ「それと、今日の放課後は忙しくなるから覚悟してなさい!!」
キョン「まーた妙なこと考えてるんじゃないだろうな」
ハルヒ「とっても素敵なことだから安心しなさい!!」グフフ
キョン「既に笑い方が不穏だっての……ハルヒ」
ハルヒ「なによ」
キョン「これからも……何が起ころうとSOS団を頼んだぜ」
ハルヒ「…………」
キョン「どした? 変な顔して」
ハルヒ「っ!! あ、あんたに言われたくないっての!! それに言われなくたって!」
ハルヒ「SOS団のことなら任せときなさい!! あたしの団なんだから!!!」
キョン「……あぁ、信頼してるぜ」
放課後
キョン「…………おいハルヒ」
ハルヒ「なに? あ! そこ横入りすんな!! ルール守らないやつは参加資格なしだからね!!」
キョン「放課後にやるといっていた素敵なことってのは……」
ワーワー! ギャーギャー! ウォー! ウォー!
キョン「校内の男どもを集めて朝比奈さんの手作りチョコを争奪させるという……」
キョン「戦争の火種にしかならないようなことなのか?」
ハルヒ「そうよ!!」
朝比奈「せんそっ、そそそうなんですかぁ!!?」
キョン・ハルヒ「「愛おしさゆえに!!!!」」クワツ
朝比奈「え、ええっ!!?」
古泉「それだけ魅力的だということですよ。巫女装束も大変に合ってますし」
朝比奈「あ、ありがとう」
ハルヒ「あれ有希は……!!? こ、こらー! 有希―!! あんたはこっちよ!! なんで参加者側にいるのよ!!?」
長門「……わたしのミス」
ハルヒ「その通りだわ!!! 早く上がってきなさい! もう、チョコならあとでまたあげるから!」
キョン「(……この騒ぎの中から朝比奈さんを連れ出すのか……しかも当の朝比奈さんは事情を知らないときた)」
キョン「(……骨が折れそうだ)」フゥ
谷口「うぉおおぉおぉおおぁぁあああぁああああああああ!!! 朝比奈さんの手作りぃいいいいい!!!」ウォー!
国木田「谷口、みっともないからやめて」
キョン「見知った顔もいれば、なぜだか女子も何人かいるな」
長門「おそらく単純に糖分を補充したいだけ」
ハルヒ「それは有希でしょうに。そろそろ始めるわよ!! みくるちゃんの手作りチョコ争奪大アミダクジ大会ー!!」
ウォオォオオオォオォオオォオオォオオオオオオオオオ!!!
朝比奈「い、いぇーい」パチパチ
ハルヒ「さっき配った整理券順にアミダクジに名前書いてってもらうから一列に並びなさい!! さっさと動くのよ!!」
キョン「用意周到かよ」
古泉「用意周到と言えば、あなた方はどうなんです? 今日ですよね、朝比奈さんを過去に送るのは」
キョン「だから困ってるんだよ。まさかこんなイベントを開催するなんて……」
古泉「お困りでしたらお手伝いしますよ。できる範囲であれば」
キョン「といってもなぁ……」
ハルヒ「アミダに名前書いたら横のみくるちゃんに握手していいわよ! 3秒間だけね!!」
朝比奈「お、お待ちしてまーす」
キョン「あの状況で主役が消えるのはなぁ……如何なものか」
古泉「なるほど……でしたら、僕にいい案がありますよ」
キョン「あん?」
古泉「実行するのはあなたですけどね」ニコッ
ハルヒ「はいはい! ちゃっちゃと動く動く!! そこのあんた! 長いわよ! さっさと離れて待機してなさい!」
朝比奈「ふ、ふえぇ……」
古泉「……そろそろですか?」ボソッ
キョン「……あぁ」
古泉「では、やりましょうか」
キョン「……あぁーー! やりたくねぇ……」
古泉「そうも言ってはいられない状況でしょう。さあ」
キョン「……分かってるよ」
朝比奈「はひぃー……」
キョン「朝比奈さん、少し疲れたでしょう。裏で飲み物でもどうですか?」
朝比奈「あ、ありがとうキョンくん」
キョン「てわけだ。ハルヒちょっとだけ外すぞ」
ハルヒ「1分だけよ! あとちょっとだから飲み物のんだらそれだけ頑張ってみくるちゃん! てわけで1分間はあたしが代わりに握手するわ!」
谷口「ええぇえ!!?」
国木田「何その顔喜怒哀楽の全部が詰まってるよ」
キョン「じゃあ、こっちに」
朝比奈「あれっ? キョンくん、どうして二人に?」
キョン・キョン「「こういうことなんで」」ガシッ
朝比奈「ふえっ!?」
キョン・キョン「「任せたぜ」」シュン
キョン「ふぅー……」
古泉「急いでください。このままだと涼宮さんの握撃会での被害が増えます」
キョン「わかってるっての。何が悲しくて……」
朝比奈(偽)「野郎どもとの握手して笑顔振りまかなきゃなんないんだっての……」
古泉「朝比奈さんはそんなこと言いませんよ」
朝比奈(偽)「が、がんばりまぁす!!」
キョン「っと」シュン!
朝比奈「わっ!」
キョン「やべ、思ったより時間がない。朝比奈さん聞いてください」
朝比奈「え、え? な、なんで部室に瞬間移動? キョンくん?」
キョン「えーっと、とりあえず、そう。掃除用具箱に入って。あっ、まずは巫女服から制服にシャッターチェンジ!」パシャッ!
朝比奈「えっ? ええっ!? な、なんで? わっ! 制服に着せ替えられてるっ!!?」
キョン「それで、未来へ連絡して8日前の午後3時45分に時間遡行するように申請してください」
朝比奈「え、どうして? そんな簡単に申請が通るとは……」
キョン「超特急です!!」
朝比奈「ひゃ、ひゃい! えーっと!」
キョン「あとは……あ、プロテクトか。朝比奈さんすいません」ポンッ
朝比奈「……あれっ? こんな簡単に申請が? なんで? えっ? キョンくん?」
キョン「……よし、これで完了。もう大丈夫だよな」
朝比奈「え、えっとこれは? 一体? キョンくん、わたし過去に行って何をすれば……?」
キョン「それじゃあ、あとはそっちの俺が全て理解しています。くれぐれも、お気をつけてください」
朝比奈「はっ、はい。え、と……行ってきます……?」
キョン「…………現在時空間から消失。ちょいオーバーだが、間に合った……はぁ」
キョン「あとは……もうすぐ……」ガタッ
キョン「…………おかえりなさい、朝比奈さん」
朝比奈(中)「……あ、えーっと」
朝比奈「ただいま、キョンくん」ニコッ
キョン「さあ、急いで! もう一人の俺が精神的満身創痍です。シャッターチェンジ!!」パシャ!
朝比奈「も、もう1人のキョンくんが? あっ、そう言えば巫女服でしたね。それで確か……」
キョン「手作りチョコ争奪イベントの続きです!」
朝比奈「! そ、そうでした。わ、わたしが今抜け出してきてるってことは……まさか」
キョン「もう一度いいます、もう一人の俺が精神的満身創痍です!! お願いします!!」
朝比奈「ひゃ、ひゃいぃい! い、急ぎましょう!!」
キョン「今行くぞっ!」シュン!
朝比奈(偽)「あ、あひゃひゃ! ありがとゴザイマース!」
古泉「あ、朝比奈さん? お疲れからか笑顔がぎこちないですよ?」
朝比奈(偽)「そ、そですかぁ? お、おかしいなぁ」
ハルヒ「ダメよみくるちゃん! マスコットなるもの常に全力全開笑顔でいなきゃ!! こんな風に!」ニィ!
朝比奈(偽)「(だったらお前がやればいいだろが!!)」グギギ
古泉「あ、朝比奈さん!!?」
朝比奈(偽)「ふ、ふえぇ……!」
古泉「!」
キョン「よっ」シュン!
朝比奈「っとと」シュン!
古泉「帰ってきたようです」ボソッ
朝比奈(偽)「分かってる。ここは自然に……」ボソッ
朝比奈(偽)「あっ! あんなところにフェレットがいるーっ!」
ハルヒ・古泉「「!!?」」
朝比奈(偽)「(見よ! この朝比奈さんのようにかわいい発言を言いつつ裏に逃げる作戦! 我ながら完―――)」タタタッ
キョン「我ながら馬鹿か」ゴンッ!
朝比奈(偽)「いてっ!? お前朝比奈さんをよくも!!」
キョン「フェレットて。バカか。お前の中の朝比奈さん像はどうなってんだ」
朝比奈(偽)「お前は俺だ」
キョン「確かに」ポン
朝比奈「あ、あの……」
キョン「だが朝比奈さんの偽物はいらない」パチンッ
朝比奈(偽)「ぶふぉぉお……」シュッ
キョン「じゃあ朝比奈さん。あとは頼みます」
朝比奈「はい! つ、次はわたしが頑張ります! お、お待たせしましたぁ!!
ウォオオォオォオオォオォォォオオオオォォオオオォオ!!
キョン「……はは、やっぱ朝比奈さんじゃなきゃだめだよな。流石、朝比奈さんクオリティ」
キョン「…………」
朝倉「あら? 何してるのよキョンくん、あなた確か今中庭でSOS団のイベントやるとか言ってなかった?」
キョン「おぉ、朝倉か。ハルヒが言いまわってたのか道理で……まぁ色々あって休憩中だ。やーーーっと全部が片付いたはずだからな」
朝倉「そ、お疲れさま」
キョン「あとチョコありがとよ。うまかった」
朝倉「お粗末様。お菓子はあまりつくらないから楽しかったわ」
キョン「……朝倉」
朝倉「なに?」
キョン「お前の望む未来の形ってどんなのだ?」
朝倉「未来の形……? そうね、特に意識して考えたことないかしら。現状を観察するのが役目だし」
朝倉「でも、未来の形と言うか最終的な目標はそりゃ自律進化の可能性よね」
朝倉「それを情報統合思念体が完全に理解できれば、あたしの目的も達成させたと言ってもいいわね」
キョン「……なるほどな。朝倉にも望むべき未来があるってわけだ」
朝倉「む。何よその言い方。ちょっと失礼じゃない?」ムスッ
キョン「悪い悪い。悪気はないんだ。ただ、そう感じただけで」
朝倉「そんなこと聞くキョンくんはどうなのよ。あなたはこれから先どうしたいの?」
キョン「…………俺は―――」
キョン「俺の力とハルヒの『力』を消失させる。『力』の継承者は―――涼宮ハルヒで終わらせる」
涼宮ハルヒの陰謀 完
ここまでーー! てわけで長い間放置したりしててすいません。
ただ、やはり投下頻度が安定しないのはどうかと思い、次スレも未だ検討中です。
短いスレなどはたまに立てるつもりなので、そこでもよろしくいただけたらと思います。
次スレがもし立てば、その時はよろしくお願いします。
長い間ありがとうございました!
今までのまとめとか貼っていただけませんかね
最初から読みたいんだが
>>470
前スレ
ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」
ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440765266/)
ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」 キョン「退屈しないだろ?」
ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」 キョン「退屈しないだろ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441618557/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEE!!!!!!」 キョン「暴走するなよ?」
ハルヒ「キョンTUEEEEEE!!!!!!」 キョン「暴走するなよ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444835920/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEEE!!!!!!!」 キョン「消失してるぞ?」
ハルヒ「キョン「TUEEEEEEE!!!!!!!」 キョン「消失してるぞ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446966133/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEE!!!!!!!!」キョン「動揺してるな?」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEE!!!!!!!!」キョン「動揺してるな?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450521607/)
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEE!!!!!!!!!」 キョン「憂鬱入ってるよなぁ」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEE!!!!!!!!!」 キョン「憂鬱入ってるよなぁ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455258389/)
新スレ
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!」 キョン「憤慨してみたり」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!」 キョン「憤慨してみたり」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1482558156/l50)
誘導ですー
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません