魔王「勇者をコンプする」(42)
側近「……どういうことですか?」
魔王「つまりだな、魔物が千差万別のように勇者も千差万別――様々な勇者とあらかじめ出会ったり戦ったりすることで脅威に備えるんだ」
側近「なる程、しかし随分アグレッシヴなディフェンスですね」
魔王「まあ基本的に受け身だから暇だしね」
側近(やっぱただの暇潰しなんだろうなぁ……)
魔王「じゃあ早速出発するから準備を……」
バターン
勇者「ようやくたどり着いたぞ魔王!」
魔王「うわタイミング悪……いわけじゃないか。側近」
側近「書記の準備は完了しています」
魔王「よし、じゃあ」
勇者「魔王、覚悟!!」
魔王「――登録開始」
勇者no.001
ふつうの勇者
これといった特徴がないふつうの勇者。
ただしそれは魔王にとっては、ということであり。
本来は1人で国1つをやすやすと滅ぼすことができる。
倒した数:1
魔王「早速勇者をナンバリングできた、日頃の行いが良いのかな」
側近「日頃の行いが悪いから勇者が来ているのでしょう」
魔王「うーむ、確かに」
側近「さあ行きますよ」
魔王「さらば魔王城……」
側近「というか魔王のいない魔王城って……」
こうして魔王と側近の冒険がはじまった!
……
魔王「勇者いないねぇ」
側近「ここら辺は辺境の地ですからね……たどり着く者は少ないですから」
魔王「村に行けば1勇者くらいいるだろ」
側近「勇者の単位って勇者なんですか……」
魔王と側近は「悪魔の村」にたどり着いた!
山田先生「お、織斑君・・・!織斑君っ!! ン───っ!!」びくびくっ
山田先生「はぁはぁ・・・・織斑君のことを考えると、胸がキュんキュんしてしまいます・・・・。」
山田先生「ふふふ、また明日、私の胸で誘惑してあげましょう♪」
翌日
山田先生「ここまでで分からない生徒はいませんか?」
一夏「あの、先生・・・・」
山田先生「どうしたんですか?織斑君」
一夏「ほとんど分かりません・・・・・。」
山田先生「あらぁ、困りましたねぇ。どのあたりが分からないんですか?」ずいずい むにゅぅ
一夏「せ、先生・・・・胸が当たってます・・・・・。」
山田先生「ふふふ、当ててるんですよぉ♪」
>>6
すまん、スレ立ての目的で書いたのにレスしちまった
無視してくれ
酔っ払ってるんだ、すまん・・・・
魔王「相変わらず寂れた村だね」
側近「ここは魔物や人間のはぐれ者の集まりですからね」
魔王「本当だ、はぐれメ○ルがいる」
側近「この世界にはぐれ○タルはいません」
魔王「ちょっとしたギャグじゃん……ん?」
?「……貴様、魔王だな」
魔王「そういう君は……浮浪者かい?」
?「ハハハ、まあそう思われても仕方ないか。俺は――勇者だ」
魔王「お」
側近「なんと」
はぐれ「通称、はぐれ勇者と呼ばれている」
魔王「……経験値高いの?」
側近「はぐれメタ○から離れてください」
「悪魔の村」――村唯一の料理屋。
魔王「つまり君は勇者から『はぐれ』ていると」
はぐれ「ああ、俺は世界を救う気なんてさらさら無いからな」
側近「通りで殺気もなにも無いわけですね」
はぐれ「はは、剣なんてここ何年も振るってないからなぁ……それより俺はてっきりお前らに殺されるもんかと思って、交渉しようと声をかけたんだが――どうやら気苦労だったようだな」
魔王「殺意を持ってかかってこない限り応戦しないよ、僕もそれほど暇じゃないんだ」
側近「本当は面倒くさいだけのくせに」
魔王「うぐ」
はぐれ「確かに暇が無きゃできないよな、魔王が勇者の図鑑を作るなんて」
側近「まったくです」
魔王「一番強いんだぞ、最強なんだぞ、泣くぞ」
はぐれ「ハハハ、魔王も案外悪いヤツじゃないみたいだ」
魔王「まあ僕が統率して侵略してるわけじゃないしね、そこそこ力があるから勝手に祭り上げられてるだけで」
はぐれ「ん?どういうことだ?」
側近「つまりですね」
……
スライム「おい兄ちゃん金貸せよ」
ベス「誰が青色ごときに貸すかよ」
スライム「へー、そんな口聞くんだ……言っておくけど俺の先輩にキングスライムさんいるからな」
ベス「あ、あのキングさんの知り合い!?……い、いくらでしょうか?」
スライム「わかりゃいいのよ」
……
側近「こんな感じです」
魔王「紙芝居……」
はぐれ「なる程わかりやすい」
はぐれ「おかしいと思ったんだよなー伝承やら王の話で魔王の侵略活動は聞くが実際にやっているところは見たことねーもん」
魔王「だから、国が信じられなくて『はぐれ』た?」
はぐれ「……参ったね。側近さん、この人何者?」
側近「もちろん私の尊敬する――魔王様です」
魔王「no.002にして大当たりだよ。話、聞かせてくれるかな?」
はぐれ「……どうぞ、人にも相容れず、魔にも相容れず、勇者からすら『はぐれ』た――浮浪者の話ならいくらでも」
はぐれ「俺はある国で勇者として産まれた、父親が勇者だったんだ」
側近「血縁型の勇者ですね」
はぐれ「ああ、親父は幾多の魔物を蹴散らし、国を守り続けた英雄で俺の誇りだった――そんな背中を見て、俺は育ち、そして尊敬していた」
はぐれ「『いつかあんな風になりたい』ってな……だが」
魔王「実際に待っていたのは」
はぐれ「そう、親父が死んで勇者になった俺を待っていたのは」
はぐれ「国同士の醜い争いだった」
側近「なる程、軍事利用ですか」
魔王「魔物における僕なんかよりよっぽど効果的に、そしてオフェンシブに使われているね」
はぐれ「ストレート過ぎるんだよ、流石に面と向かって国を落としてこいと言われた時は正気か疑ったね」
はぐれ「もちろん言い訳もされたがな、『領土を広げ、魔物から1人でも多く民を守るため』だってな。しかしショックだったよ、親父がしていたことはなにより」
はぐれ「人の強さに」
魔王「人間は恐ろしいからね」
側近「どんな状況であろうと自分の欲に忠実ですからね」
はぐれ「そこで俺は気づいた。魔物を全滅しても争いは消えない、目標が人になるだけだってな」
はぐれ「だから『はぐれ』た」
はぐれ「人を守るために人から『はぐれ』た、戦うために戦いから『はぐれ』た、世界を救うために世界から『はぐれ』た」
魔王「……僕達的に言えばディフェンシブな攻めだね」
はぐれ「勇者ってのは、それこそ偶像でいいんだよ」
はぐれ「喋れるから利用される、動けるから使われる、力があるから武器になる」
はぐれ「勇者がすべてから『はぐれ』た方が、争いは少なくなるのさ」
はぐれ「……ま、浮浪者の聞くに耐えない戯れ言さ」
側近「そんなことはありません、貴重な話をありがとうございます」
魔王「人間界もドロドロしてるね、こらから先を思うと嫌になっちゃう」
はぐれ「悪いヤツばかりじゃないさ。魔物だってそうだろう?あんたみたいなのだっているんだし」
魔王「僕は悪いヤツだよ、じゃなきゃ勇者は寄ってこない」
はぐれ「いや良いヤツさ、どうでもいいヤツだ」
魔王「駄目じゃん」
はぐれ「でも悪からも善からも『はぐれ』た俺に会えるのはそんぐらいなもんだぜ?どうでもいいヤツってのは案外無きゃ無いで困るんだよ」
はぐれ「あんたみたいなのが必要なんだろうな、人間にも。悪とか善とかに縛られないヤツが」
魔王と側近は「悪魔の村」を出発した!
側近「不思議な人でしたね、平和のために逃げるなんて」
魔王「ハリネズミのジレンマみたいなものだね。力がある勇者なりの苦悩に特化した勇者か、no.002ではもったいないくらいの逸材だ」
側近「……そういえば、あの人はなんで魔王様を魔王様だとわかったのでしょう?伝承や聞いただけで実際に見たことない筈なのに……」
魔王「だったら見たんじゃないかな」
側近「まさか魔王城に!?確かに悪魔の村から近いですけど……目視できるぐらい近寄られたらいくらなんでも気づきますよ」
魔王「腐っても……いや、『はぐれ』ても勇者ってことさ。勇者コンプ、もしかしたらとんでもない難題かもね」
勇者no.002
はぐれ勇者
はぐれた勇者。
戦うために逃げている。
平和のために逃げている。
自分以外のために逃げている。
逃げ続けられるということは、それだけ強いということ。
倒した数:0
今日はここまで。
発見した勇者:2
キル数:1
はぐれ勇者と離れて3日がたっていた!
魔王のこうげき
魔王「――追記完了」
ふつうの勇者に1060722のダメージ!
ふつうの勇者は倒れた。
魔王「やれやれ、魔王と疑われなくても魔物と思われるのは防げないか」
側近「変身魔法でも使いますか?」
2人は着々とキル数を稼いでいた。
キル数:8
魔王「しかしここらへんは勇者が多いね」
側近「ここは強力な武器を製造する『炉の国』付近ですからね」
魔王「通りで好戦的なわけだ、新しい武器の実験台ってことね」
側近「そのようですね」
魔王「じゃあついでに寄ってみようか、『炉の国』」
魔王「どんな勇者に出会えるのかな」
……
「見たか?さっきの魔物」
「ああ、一撃であの重装備をブチ壊してた」
「おそらく上位の……しかも従者まで連れていますから相当名のある魔族でしょう」
「どういうヤツか、そんなことは関係ない。それが魔ならば」
『我ら四人が切り捨てる』
魔王「遠いね、『炉の国』」
側近「そもそも徒歩というのが無茶なんですよ、素直に飛びましょう」
魔王「いやーそういうのは風情が無いし、なにより」
魔王「ああいった輩に出会えない」
側近「……そうですね」
2人の前に、突如四人組が現れた!
「初めまして魔物さん」
「ですがここでさよならです」
「何故なら俺達四人が」
「断ち切るからな」
『息も意識も生きる気も』
魔王「珍しいね……パーティーか」
魔法使い「ええ、私は魔法使い、索敵から攻撃まで幅広く使える『脚』」
僧侶「ワタクシは僧侶、メンタルでありエンジンである『体』」
戦士「俺は戦士、壊し続ける『腕』」
勇者「そして我が勇者、このパーティーの『頭』だ」
『我ら四人で一つ。四身一体の勇者なり!』
魔王「これだから苦労は買ってでもやるべきなんだ――登録開始」
魔法使い「『稲妻』!」
雷が魔王を襲う!
魔王「遅……っ?」
魔王は避けようとするが光る鎖によって身動きがとれない!
僧侶「……『束縛』」
稲妻が魔王の身を焼き焦がす!
戦士「食らえッ!」
戦士の剣による攻撃!魔王にヒット!
鎖が千切れ魔王は吹き飛んだ!
魔王はそのまま動かない。
勇者「……ジャスト30秒、上出来だ」
側近は唖然としている。
側近「……なんなんですかあなた達」
勇者「言ってるだろ?『脳』で」
戦士「『腕』」
僧侶「『体』」
魔法使い「『脚』」
『四人で一人の勇者さ』
側近「なる程、人造勇者というヤツですか」
僧侶「正解です、魔物にもそんな知識があるんですね」
戦士「俺達は対魔王用の最終兵器さ」
魔法使い「四人をそれぞれ勇者の『脚』、『腕』、『体』、『脳』として育て上げることによってふつうの勇者じゃたどり着けない境地にたどり着いた」
勇者「究極の勇者だ」
側近「嫌でもわかりますよ、変ですよあなた達……いや、あなたですか」
魔法使い「ワタクシ達が変だって?魔物の言うことは理解できないわ」
側近「ちょっとその一人称ワタクシの」
戦士「まあなんて言おうが別にいい」
勇者「すぐにさよならだ」
「確かにそうだな」
戦士「誰だ今のは」
僧侶「ワタクシではありません」
魔法使い「私でもないわよ」
勇者「じゃあ誰だ?お前か?」
側近「いいえ」
側近「――魔王様です」
魔王は立ち上がった。
魔王「やれやれ、ロクに効きもしない呪文ばっかり、やっぱり武器に頼ってるのかね」
魔法使い「馬鹿な!殺した筈……」
僧侶「しかし死んでない」
戦士「ならもう一度殺そう」
勇者「ではそういうことで」
四人が一斉に襲いかかる!
魔王「話は十分聞けたし、もう君達……いや君は」
魔王「――登録完了だ」
魔王のこうげき!
魔法使いは塵となった。
僧侶「なっ!?」
戦士「あ!?」
勇者「ぬ!?」
魔王「『束縛』」
数え切れない程の鎖が波のよいに三人へ襲いかかる!
僧侶「そんな!?『脚』がなければ避け……」
魔王「『稲妻』」
巨大な神の怒りが降り注ぐ!
あたりが光に包まれた!
側近「十秒も、かかりませんでしたね」
魔王「いや、まだ一人」
勇者「……ック」
満身創痍の勇者が現れた!
側近「あら、他の2人を盾にでもしたんですかね」
勇者「当たり前だろ……我が、『脳』さえ生きていれば……また四身一体は再生可能なのだ……」
魔王「次はないよ『束縛』」
勇者「『転ッ」
勇者が呪文を唱えるより早く、魔王がその身を拘束する!
勇者「……クソッ」
魔王「さて、登録は完了してるけど」
魔王「最後に聞きたいことが一つ」
勇者「……我が国の場所は死んでも吐かんぞ」
魔王「そんなことはどうでもいいんだ、こんなくだらない勇者をつくる国なんてね」
勇者「なっ……」
魔王「なんで四身一体なの?」
勇者「……無論、強いからだ」
魔王「何を言ってるんだい?」
魔王「弱いよ」
勇者「!!」
魔王「さっきも側近が言ったでしょ?『何をしているんだ』って」
魔王「『脳』『腕』『体』『脚』だか役割をきめて四人がまるで一人のように戦うなんて、無駄じゃないか」
魔王「四身一体って……なんで一身を四分の一体にしてしまうんだ」
魔王「パーティーが強いのは団結力とかそういうことじゃなくて『四人』なのが強いんだよ」
魔王「『四人』は『一人』殺しても『三人』にしかならない、だけど君達は『一人』殺すだけで身体を四分の一も削ってしまう」
魔王「四分の一なんて、それこそ致命傷じゃないか」
勇者「な……あ……」
魔王「……君は『脳』なのに分からなかったのかな?」
魔王「おっと気負いする必要はないよ、悪いのは」
魔王「君の四分の一だけだったって話だ」
魔王のこうげき!
魔王「賢い勇者がいれば愚かな勇者もいるんだね」
側近「ええ、人間の考えることは意味がわかりません」
魔王「多分意味なんてないんだ。遊べる意図があれば十分なんだよ」
側近「そんなもんですかね」
勇者no.003
四身一体勇者
1+1+1+1を1にしかできなかった人造の勇者。
人間が造ったものは大抵が同じ結果になる。
1+1が2になる方が稀なのだ。
倒した数:1
発見した勇者:3
キル数:9
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