【ガルパン&色々】我が輩は西住という家の犬である。 (23)



我が輩は犬である、名前はまだ無い。

何処で生まれたかと問われれば見当はつくのだが、問われぬまま月日は流れ今に至る。


先日、黒森峰とやらに通う女学生に拾われ寝床と食べ物を得られるようになったのだが
この主は我が輩に名前を付けようとはせぬ。

だからと言って我が輩を邪険にしているのかと思えば、朝夕の食事はちゃんと出してくれるし
散歩も満足する距離を付き合ってくれる。

この主に飼われるまで飼い犬になった経験がなかったのでハッキリとは言えぬが
まぁ、好かれてはいるのだろう。



そんな我が輩のちょっとした日常を語ろうと思う。


※ ガルパンと色々な作品のコラボです。
※ 主人公は劇場版のあの犬です。
※ 独自設定やキャラ崩壊があるかもしれません。
※ ガールズ要素、パンツァー要素、夏目漱石先生要素は少なめです。


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その日は晴天が広がり心地よい日差しが降り注いでいた。

午後の事、主と共に日課の散歩をしているとスーパーと言う場所で足を止められた。
見上げれば何やらメモを眺めて頷いている。
我が主はどうも流行りの電子機器には疎いようで俗にいうアナログな器具を好む。
その趣向は犬の気持ちがわかる機械などどいうものを身につけさせる方向に行かぬので歓迎はしている。

しばらくして主が我が輩をつなぐ綱を近くの電柱に括れば
「少し、待っていてくれ」と話しかけスーパーとやらに入って行く。

主を見送りながらさほど疲れてもいない足を休ませようかと座れば、気配を感じたので顔をそちらにと向けた。


『探しましたよ!貴方程の犬(注:犬と書いて漢と読む)がまさかこんな場所になど…』

『さて何の話かな?』

見知らぬ犬の問いかけを聞き流し我が輩は昼寝でもするかと顔を伏せる。



『とぼけないで下さい!アナタは伝説の…』

『…場所、変えようか』






『一体何が目的なんだ?君は』

『僕達と一緒に来てもらえませんか?』

主が繋いだ紐を緩め少し離れた林に入るなり若い相手に問うと、この様な答えが帰ってきた。
詳しく続きを聞くととある場所にいる巨大熊を倒すために仲間を探しているという。
人違いだと言ってやるも相手は聞き入れぬ。まぁ、我が輩は人ではなく犬だが。


暫し問答をしていれば何やら林の奥が騒がしい。

熊だ。
基本的に九州には野生の熊はいないと言える。しかし突然変異した連中に基本も常識も通用しない。
時には泳ぎ、時には人間の作り出した巨大な艦に潜り込み様々な場所に出没するのだ。

我が輩の静止も聞かずに若い彼は熊に…おそらくはヒグマであろう猛獣に向かって行く。

仕方あるまい、大きな目標有る若者を見捨てる事は出来ぬ。


我が輩は傷だらけになった若者の前に立つとヒグマと対峙する。

『我が輩はお前達と共には行けぬ。だから代わりに「荷物」を持って行け』

『荷物?』

我が輩がこの若者程の年の頃、出会った老犬から伝えられた事を思い出す。
思えばあの老犬も飼い犬という身分だった。戦い方も老犬は主から学んだとも。




『撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心…
 若者よ、あの「鬼首」と討つのならば部隊を率いることにもなろう
 掟と心を堅く、守り固く進み、必殺の技を撃ちこめ』

『必殺の…技』

『それも「荷物」の一つだ、持って行け。目に焼き付けてな』


会話中の空気の読めぬヒグマの爪を躱しつつ、若者に見やすい位置まで誘い込む。
我が身、既に鉄。我が心、既に空。
当たらぬ攻撃に焦るヒグマの視界から消えれば我が輩の姿を求め辺りを探す。
しかし、ヤツが捉えたものは我が輩の影。
影を生み、影で誘い、影に紛れて牙を抜刀する。

影・覆滅抜刀牙。

ヒグマの倒れる音と共に我が輩が言葉と共に受け継いだ技を、若者に受け取らせた。





若者と別れ、スーパーへと戻ると不安げな我が主が駆け寄ってきた。
思えば今の我が輩は脱走した犬である。気がつけば首輪につながっていた紐も切れて無くなっている。
さて、どう誤魔化そうかと思っていれば主に抱きつかれた。

数分そのままでいたのだがいつものように我が輩の頭をポンポンと軽く叩くと
初めて出会った時と同じようなやさしい口調で語りかけてきた。
あの時の「来るか?」とは違い
「帰ろうか」という言葉を。

勿論、我が輩は頷きながら返事をした。
我が輩は西住という家の犬である。から




その日は日差しの柔らかい暖かな陽気だった。

主をあまり心配させるものではないが生まれついての野良の性、ついついふらりと彷徨いたくなる。
この西住家というのはなぜか数カ所にこっそりと外に出られるような穴が開いてる。
人間であれば子供のくぐって行けるサイズだが我が輩も使わせてもらうことにした。



ふと、街中でオープンカフェとやらに視線向ければ仕事中と思われる男性2人が話し込んでいる。
方や七三わけ、方やそれより年配な分けられるほども毛のない中年。
食事をしながらも仕事の会話とは全くご苦労なことである。

「…という訳でですね。そちらからも大洗の学園艦廃校について再考の余地があるという意見を…」

「…ふむ。確かに一度廃校撤回にはなりましたがこの状況ではやはり…」


以前主達が勝利を収め勝ち取った撤回を再び無に返そうとそんな話をしていた。
コレは許せぬと尻にでも噛み付いてやろうと近寄ろうとすれば、どうやら先客のようだ。
サングラスと呼ばれる眼鏡をかけた髪の毛のモジャモジャした男が

いきなり話し込む2人の間のテーブルを蹴り飛ばした。


「なななな、なんなんだ君は!文科省の大事な会話中だぞ!」

「あ?文科省だろうが大統領だろうが勝手に相手の会話に入り込むのが松田流よぉ」

突然のことに混乱する七三の眼鏡の役人とやらにモジャ毛のグラサンが返答する。
我が輩も長く人間観察をしているがそこだけなら正しいのは役人側だ。

「松田…?まさかブラックエンジェルズの…」

「お?おっさん、あんたガキの頃少年ジャ○プを読んでたな?」

どうやら中年の方はモジャ毛を知っているらしい。我が輩は知らぬが有名人なのだろうか。


「だが、今日、俺が用があるのはコッチの役人様でなぁ!」

「な、何の用だ!君が」

「ナンノもゴクミもねぇんだよ!
 折角若いネェチャン達がガンバった結果をまたナシにする気かお前ぇ!」


「ま、待て! 大洗の学園艦は廃校にしたほうが良いという細かいデータがここに…」

む。あのモジャ毛はどうやら廃校反対派なのか。
そう思った瞬間、彼が眼鏡役人が持っていたノートPCを拳でぶん殴っていた。

「ひ、ひぃ!!」

「細かいデータだぁ? オレはなぁ、細けぇ事はでぇ嫌えなんだ!!」

周りの客も引いているがモジャ毛には細かいことのようだ。

「撤回したんなら撤回したなりに努力すんのが役人の仕事だろうが、あぁ?」

「しかし今から他の学園艦を廃艦にするのは間に合わな…」

「廃艦やめりゃいいじゃねぇか」

「そんな無茶な…」


討論に聞こえはするが完全に脅迫である。
コレも松田流なんだろうか。


と、突如周りが騒がしくなる。
このカフェの前には長めの坂道があるのだが、そこから。
タンクローリーと呼ばれる大きな車が突っ込んできた。



我が輩の前にいる幼い子どもが立ち尽くすのを見るとはねられぬようにと
首根っこを咥え安全な場所へと走る。

他の人間は無事だろうかと振り向いてみれば。


モジャ毛が1人でタンクローリーを押し止めていた。


「テンメェ…人の話してる最中に邪魔すんじゃねぇ!」

いやそれはお前もだろうモジャ毛よ。

運転席に人がいないタンクローリーをゆっくりゆっくり押し返しながらモジャ毛は大声で叫ぶ。

「無茶とか無理とかよぉ、やってみなきゃ分かんねぇよなぁ?
 あの若ぇ姉ちゃんたちも無理や無茶して勝ったんじゃねぇのかぁ?」

七三への説教をしながらも押し返すも
そこにまた数台の車がタンクローリーの尻にぶつかり数珠つなぎに重さが増す。
どうやら坂の上で大規模な追突事故が起きているらしい。


「わわわ…駄目だ…車があんなに増えちゃ…」

「あぁん? ちいっと重くはなってきたけどよぉ…車が数台なんて…
 細けえことは関係ねぇんだよぉ!!」


本当に人間なんだろうか。このモジャ毛は。
助けた子どもなどTVのヒーローを見ているような視線を送っている。
これで更に変身とかされたら敵が哀れになるだけだろう。


モジャ毛の奮闘が数分続いた後、坂の上から何人もの人間が駆け下りてくる。

「手が開いてる人は力を貸してくれ!!」

「黒森峰の戦車道チームが車の引き上げを手伝ってくれてるんだ!」

「ワイヤーを落ちている車に繋いで戦車で引き上げるぞ!」


降りてきた者達はモジャ毛が見えていないようで次々にワイヤーを引っ掛けている。
見えていたらしばらくはパニックだったろう。

パニックから回復しているカフェ回りにいた人間たちは
声掛けに反応し急いで引き上げ作業を手伝った。

一瞬ためらっていたようだが七三達役人も参加している。

我が輩は犬であるので参加も出来ぬのでもどかしい。
仕方なしに坂を登れば戦車乗りの会話が聞こえた。

「副隊長、何故我々がこんな事を…」

「覚えておきなさい、これも戦車道よ。さぁワイヤーがつながった車両から引き上げなさい!」










「おい、役人!」

「ひぃっ!」

路上駐車中の車への玉突きながら怪我人が数人のみで終わった事故の後
モジャ毛が七三に詰め寄る。

「本来ならテメェみたいのはぶっ飛ばしてやるんだがよ」

「だが…よ?」

「その油まみれの背広に免じて今日は見逃してやらぁ!」

と、役人に言えば我が輩の前に高級な犬用ペットフードの缶詰が置かれる。
はて?と見上げればモジャ毛曰く。

「オメェもご苦労さん。コイツは俺とあの役人からのご褒美だ」

と我が輩の頭を撫でながら七三に金は全額払っとけと告げる。
勿論彼は何故だと騒ぐがそれに対し。

「いんだよ、細けえことは!」

と返した。

我が輩も犬では缶を開けられぬと言いたいのだが同じ言葉を返されそうだ。



缶は帰宅してから入手経路を不思議がる主に開封してもらいおいしく食べた。

以前は野良だったのでこうは行かなかったが、今は大丈夫だ。
我が輩は西住という家の犬である。から





我が主は戦車道という武芸をやっている。
この西住家という家自体が西住流という流派であり家主は家元らしい。

学生の戦車道の試合という物はTVなどで流れており、日課の単独での散歩中数回見かけた。



この前の事である。
戦車喫茶なる店の店頭で試合を流していた。
そこに数人の学生服の男たちがいたのだが、そのうちの1人が呟いた。

「ぬぅ!あれぞまさしく『西住流 覇畷輻輳陣』」

「知ってるのか?雷電!」

呼ばれた人物を見れば額に大往生と書いてある人物がいた。
どうやら相撲好きな悪魔のバンドメンバーではないらしい。

長々解説をしていたので要約すると。



【西住流 覇畷輻輳陣 (にしずみりゅう はていふくそうじん)】

戦車道最大流派である西住流の鉄壁の守りを有名にした技の一つ
狭いあぜ道を走るがごとく部隊の戦車をギリギリまで密集させつつも
前方に火力を集中し敵陣を突破する奥義である。

この時に中心にいる車両の防御力と見た目の状況から
必要以上の過剰な保護の事を
この奥義の使い手として歴史に名を残した「西住かほ」の名から
「過保護」というようになった事は歴史研究家の間では有名な話である。

出典:民明書房刊 本部本陣守護るなり より



ということらしい。

帰宅してふと思う。
あの部屋にある無数の傷だらけのクマも何かの技の練習台なのだろうか?

もし、主が我が輩を修行に使うのであれば付き合うことにしよう。

我が輩は西住という家の犬である。から







取り敢えずは此処まで。
ネタが出来れば続きを。

違います違います他人ですよ。

誤解させてすみません。

取り敢えず、今まで出てきた作品は

銀牙 流れ星銀
ザ・松田
魁!男塾

これでいいのか?
わからない人もいるだろうし

>>22
はい、そうです。
今回のは元ジャンプで今はゴラク繋がりです。

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