少年「世界は色に溢れている。」(16)
空の青。夕焼けの赤。
草原の緑。雪の白。
…夜の黒
世界にはたくさんの色が溢れている。
でも、この世の中でどれだけの人がそをな事を意識しているだろうか?
最近はそんなことばかり考えてしまう。
…え?
考えすぎじゃないかって?
まぁ、確かにそうかもな。
けど、仕方ないと思うんだ。
俺にとっての“色”っていうのは特別だから…。
〇5月14日
―朝―
朝のラッシュ。電車の中は満員だ。
俺は人混みが嫌いだ。
いや、苦手と言った方がいいかもしれない。
俺の前のサラリーマンが必死で身を縮めている。
隣の女子大生の長い髪が、学ランの肩にかかる。
あぁ。ウザいな。
何より身近に“色”が溢れすぎている。
気分を紛らわせるために、お気に入りの曲を聞こう。
俺はポケットからイヤホンを取り出し耳に当てがう。
~♪~♪♪
やっぱこれだな…いい感じだ。
俺はそっと目を閉じる。学校の最寄り駅まではまだもう少しかかる。
少し仮眠をとるか。
もちろん立ったままだから熟睡はむりだけど…。
少なくとも、何も見なくて済むしな。
…学園前~…学園前でございます…
少年「ふあ~ぁ。…着いたか。」
電車のドアが開くと同時に様々な“色”の群れに押され、駅のホームへと降りた。
少年(白、赤、白、紫、水色…あ、あの人は灰色か。珍しいな。)
ホームから改札に向かう途中で肩に軽い衝撃が伝わってきた。
…誰かかに後ろからぶつかられたらしい。
大学生「ふらふら歩いてんじゃねぇ!気ぃつけろや!!」
少年「あぁッ?あんたこそ…」
少年は自分に罵声を浴びせてくる人物に対して振り返る。
少年「…!…あ、あぁ…」
その人物のを見た少年の顔は青ざめていく。
大学生「何?お前。ビビってんの?」
少年「…あんたの方こそ、気を付けろよ。」
大学生「はぁ!?何調子乗ってんだ!…あ…おい!…待てよ!逃げんのか!?」
大学生は少年に向けて罵声を浴びせ続けるが少年は早足で改札口へ向かった。
朝っぱらから嫌な気分になった。
さっき難癖をつけられたことが原因じゃない。
久し振りに“あれ”を見てしまったからだ。
少年(さっきのヤツは確かに“黒”だった。)
少年は恐る恐る背後を確認した。
遥か後方には駅のロータリーと、その隅のベンチに座りながら携帯を操作している先程の男の姿があった。
同時にその男に一直先に向かって行く乗用車も見えてしまった。
少年「…。」
少年は目を瞑って顔を背けた。
そのまま後ろを見ることなく、彼は視界を正面に戻した。
背後から断片的に聞こえてくる悲鳴からして、あの男がどうなったか想像するのは簡単だ。
少年「だから…“気を付けろ”って言ったのに。」ボソッ
少年(まったく…本当に嫌なものを見てしまった。)
忠告はしたんだけどな…。
…まぁ“黒”いやつは、もうどうしようもないからな…
…どうしようも…
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