【オリロンパ】超高校級の凡人とコロシアイ強化合宿【安価進行】 (573)


・オリロンパです。

・ダンガンロンパ(無印)の致命的なネタバレを含みます。
 スーパーダンガンロンパ2、絶対絶望少女の些末なネタバレを含むかもしれません。

・多くの登場キャラ及び舞台はオリジナルになりますので、ご注意ください。

・キャラメイクはありません。

・安価スレですが、そぐわないものは下にずらすことがあります。ご了承ください。

・多くの先駆者様の作品を参考にしています。


では、始めます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451904437

「知ってるか、希望ヶ空学園の20期生のスカウトがもう始まってるらしいぞ」

「ああ、そう言えばそんな時期か・・・今年はどんな連中がスカウトされるんだろうな」

「良いよなあ、卒業すれば成功は約束されたも同然なんだぜ? 俺もスカウトされないかなあ」

「バカ、俺達みたいな普通の高校生が希望ヶ空に入れるわけなんかないだろ? チャンスがあるとしたら【超高校級の幸運】だけど・・・確率何分の1だよ。選ばれる気なんかしねえわ」

「いやいや、今年は【幸運】以外にも、【超高校級の普通】って枠でスカウトがあったらしいぞ?」

「・・・そもそも、一般人の中から抽選で選んだのが【幸運】じゃなかったか?」

「さあな、所詮ウワサだから」

「ウワサ、ねえ・・・ま、それがホントだとしたら、【超高校級の普通】に選ばれた奴はかわいそうだよな」

「かわいそう? どうしてだ?」

「だって、『あの』希望ヶ空が【超高校級の普通】って言うんなら、それは何の才能も持たない、何の特徴もない人間って烙印を押されるってことだぜ? そんなの――」



「――そんなの、【超高校級の凡人】ってことじゃねえか」




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   / __  マ ゝ'      _>'7   , -y-y                        r≦}  r== y

.  / /   ノ  /       r='′ 廴_ /_//_/       / ニニニ ̄ 7          /  /.r-/_-'_/
  /  `ー '  ./r─‐t  r‐‐t 7  7= i   7 r─‐t r‐‐y ./ /   /   / r─‐t r‐‐y ./  / |   |
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    /__/.       |  /          超高校級の凡人とコロシアイ強化合宿 />'´
          \__ノし//       
        __)/⌒ヽ(_
          ̄)ヽ__ノ( ̄ ̄ ̄

         /⌒|「⌒\


約50年前、希望ヶ峰学園で起きたある事件を発端として人類史上最大最悪の事件が発生し、世界は絶望へと包まれた。

しかし、未来機関をはじめとする希望を信じる人々の働きにより、世界に少しずつではあるが希望が広がっていった。

そして、今からおよそ20年前、新生希望ヶ峰学園――『希望ヶ空学園』の誕生により、世界の復興は果たされたのだった。



希望ヶ空学園は、前身となる希望ヶ峰学園と同じく『超高校級の才能を持つ高校生』を集めた学園だ。

世界の希望の象徴とまで揶揄されている。


なんでも、希望育成のための研究機関でもあるため、入学費用は格安。

経営費用の多くは世界の財閥からの出資でまかなっているのだという。


希望ヶ空学園は、希望ヶ峰学園と同じく完全スカウト制で、スカウト条件は二つ。

【現役高校生であること】と、【超高校級の才能を持つこと】だ。


入学すれば将来の成功は約束されたも同然との評判だ。

現代に生きる高校生なら誰もが希望ヶ空学園にスカウトされることを夢見ていることだろう。

とまあ、こんな誰でも知ってるような話は置いといて、そろそろお決まりの自己紹介といこうか。

俺の名前は平並 凡一(ヒラナミ ボンイチ)。

特徴は特にナシ。長所もナシ。平々凡々なごく普通の高校生だ。

何をやってもうまくいかず、どれだけ頑張ってもせいぜい平均程度。

どうせこれからもこんなふうにつまらない日常を過ごしていくのだろう、と思っていた。

俺の元に、あの封筒が届くまでは。

封筒は希望ヶ空学園からのスカウトの通知書だった。

十中八九、希望ヶ峰学園のミスか近所の誰かのいたずらだろうと思って確認の電話を3回ほどかけた。

けれど、俺は本当に【超高校級の普通】としてスカウトされたようだった。

曰く、特別な才能を持たない一般高校生の中で、最も平均的で、普遍的な高校生。それが俺だったのだ。

言うなれば、【超高校級の凡人】と言う方がより正確なのだろう。



ちなみに、電話をかけた時に毎年一般から抽選で選ばれる【超高校級の幸運】とは違うのかと尋ねた。

その答えは、【幸運】はあくまでも抽選による結果であり、俺は厳正な審査の上選ばれた【超高校級の普通】である、ということらしい。



「『我々希望ヶ空学園は、平並 凡一様を【超高校級の普通】として希望ヶ空学園20期生にスカウトいたします』・・・?」



封筒は希望ヶ空学園からのスカウトの通知書だった。

十中八九、希望ヶ峰学園のミスか近所の誰かのいたずらだろうと思って確認の電話を3回ほどかけた。

けれど、俺は本当に【超高校級の普通】としてスカウトされたようだった。

曰く、特別な才能を持たない一般高校生の中で、最も平均的で、普遍的な高校生。それが俺だったのだ。

言うなれば、【超高校級の凡人】と言う方がより正確なのだろう。



ちなみに、電話をかけた時に毎年一般から抽選で選ばれる【超高校級の幸運】とは違うのかと尋ねた。

その答えは、【幸運】はあくまでも抽選による結果であり、俺は厳正な審査の上選ばれた【超高校級の普通】である、ということらしい。



俺みたいに何もできないやつが希望ヶ空に行く資格なんてない。

希望ヶ空に行ったところで凡人の俺には何もできない。

だから、スカウトを辞退しようか。



始めは、そんな風に考えていた。

けれど、このまま平凡な人生を歩んでも、将来どうなるかなんて想像するまでもない。

結局、こんな何もない人生を進むだけなんだ。

だったら――。

そして今、俺は希望ヶ空学園の前に立っている。

俺は、希望ヶ空学園に20期生として入学することに決めたのだ。





もしかしたら、ここでなら、あらゆる才能の集うこの学園でなら、俺の人生を変えられるかもしれない。

この時、【超高校級の凡人】である俺は、そんな淡い希望を抱いていた。





とは言っても、今日は別に入学式の日じゃない。

制服の採寸を兼ねた身体測定の日だ。

学園に入るのが初めてだから緊張はするけど、いつまでもこんなところで立ち止まっていてもしょうがないからそろそろ中に入ろうか。





――なんてことを考えながら学園に足を踏み入れた瞬間、俺の意識はあっさりと闇へと消えていった。





     PROLOGUE

        超
        高
        校
        級
  超高校級の凡人は
        夢
        を
        見
        る
        か
        ?


・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



ザザーン・・・ザザザーン・・・



・・・木の揺れる音がする・・・。

・・・俺は希望ヶ空学園に入ろうとして、それで・・・。

俺は・・・どうなったんだ・・・?

ゆっくりと目を開けると、そこに広がっていたのは雲一つない空だった。

・・・いや、違う。空じゃない。

あれは、『空の映像が映し出された天井』だ。

・・・どういうことだ?



身体を起こして周りを見渡すと、俺はどうやら巨大なドームの真ん中で倒れていたらしい・・・。

ドームの中にはいくつかの建物があり、端の方には木々が並んでいる。

と、そこでようやく、少し離れたところにしゃがんでこっちを見ている人がいることに気が付いた。

その人は・・・

安価↓2
【1、緑色のパーカーを着たはねっ毛の女子だった。】
【2、白いベストの制服を着た真赤な髪の男子だった。】
【3、メイド服を着た銀髪の女子だった。】

3

安価↓

35分までに来なかったら>>14で進行します。

選択:【2、白いベストの制服を着た真赤な髪の男子だった。】



その人は、白いベストの制服を着た真赤な髪の男子だった。

「起きたみてえだな! いつまで寝てやがんだ!」

彼は、すっと立ち上がるとこちらの方に近づいてきた。

平並「……ここは、どこだ?」

「んなもん知るか! 分かってるのは、どこかのドームの中ってことだけだ! 詳しい事は皆が戻ってこねえと分かんねえ!」

皆?


「それよりまずは自己紹介だな。 オレは、【超高校級のクレーマー】として希望ヶ峰学園に20期生としてスカウトされた火ノ宮範太だぁ! なんか文句でもあんのか!」


╋━━【超高校級のクレーマー】━━━━━━━━━━━━━━╋

┃                                        ┃
┃            火ノ宮 範太/ヒノミヤ ハンタ            ┃
┃                                       ┃

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


平並「文句はないけど……【クレーマー】?」

火ノ宮「……てめー、今、クレーマーって聞いて『いちゃもんをつけてばっかの悪質な客』って思っただろォ!」

平並「う、うん……」

火ノ宮「オレをあんな奴らと一緒にするんじゃねえ!!」

平並「違うのか?」

火ノ宮「あったりまえだァ! オレがクレームをつけるのは商品に欠陥があった時だけだ! 自分のミスすら企業のせいにする『悪質クレーマー』とはまったくちげーんだよ!」

平並「……そうか、ごめん」

火ノ宮「フン、分かりゃいいんだ!」

火ノ宮「で、てめーの名前と才能はなんだ? どーせてめーも希望ヶ空の20期生なんだろ?」

平並「ちょ、ちょっと待て! どうして俺が希望ヶ空にスカウトされたことを知ってるんだ!」

火ノ宮「ここに集められてた連中が皆そうだったから、多分そうじゃねーかと思ったんだよ。その反応から見るに当たりみてえだな」

平並「ここに集められた人って……俺達以外にも人がいるのか?」

火ノ宮「ああ。てめーを入れて16人だ」

平並「16人……」

16人という人数は、多い……様な気がする。

火ノ宮「で? てめーの名前は?」

平並「……あ、ああ。俺は、平並凡一。【超高校級の普通】として希望ヶ空にスカウトされていた」


╋━━【超高校級の普通】━━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃          平並 凡一/ヒラナミ ボンイチ            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


火ノ宮「【普通】? それがてめーの才能なのか?」

平並「ああ。なんでも、一般人の中から完全な抽選で選ぶ【超高校級の幸運】とは違って、一番普通な高校生を審議して決定したらしい。何の特技も特徴もない、言うなれば、【超高校級の凡人】ってところだ」

火ノ宮「【凡人】ねえ……まあそんなの関係ねえや。仲良くしようぜ!」

平並「凡人の俺なんかでよければ、よろしく」

火ノ宮「アァン? 仲良くすんのに凡人がどうとか関係ねえだろうが!」

平並「……そうだな」

火ノ宮君、口調は荒いしケンカ腰なのも気になるけど……よく見ればベストやワイシャツもピシッと着ているし、悪い人じゃないみたいだ。

火ノ宮「んじゃあ、てめーが寝てた時のことを簡単に説明するぜ」

平並「ああ、頼む」

火ノ宮「多分平並もそうなんだろうが、オレは身体測定の為に希望ヶ空に行ったんだ。そして、建物の中に入った瞬間に気を失って、気が付いたらここに倒れてたんだ」

平並「そうだ。俺も、身体測定で希望ヶ空に入って……」

火ノ宮「だろうな。そんで、気が付いて周りを見渡したらオレ以外にもたくさん倒れてる奴がいたんだ。で、最終的にてめー以外は全員気が付いたから、自己紹介をして、どうしてここにいるのかを確認したんだ」

平並「だろうなってことは、まさか全員そうだったのか?」

火ノ宮「おう。で、てめーも気づいてるだろうがここは巨大なドームの中みたいだから、とりあえず手分けして調査することになった。そんで、オレはここでてめーが起きるのを待ってたってわけだ」

平並「そうだったのか、ありがとう」

火ノ宮「気にすんな。目を覚まさないからって、一人放っておくのはおかしいだろ」

それにしても……。

16人全員が気絶して、気づいたらここにいたって、そんなことあり得るのか?

考えられるのは誘拐ぐらいだけど、だとしたら普通人質は縄で縛っておくものだろうし……。

火ノ宮「さて、事情も話したところで、皆このドームのあちこちに調査に行ってるから、平並の自己紹介がてらオレ達も調査にいかねえか?」

考え事をしていると、火ノ宮からそんな提案を受けた。

平並「そうしようか」

このドームがどうなっているのか、自分の目で確認してみないと何とも言えない。

他の皆の事も気になる。火ノ宮の反応を見るに、俺なんかとは違って本物の超高校級の才能を持った人たちみたいだし。

火ノ宮「おら、そこにこのドームの地図があるみてーだから、見てみろ。どこから行くかはてめーに任せた」

ホントだ。木の看板に地図が載っている。

地図があるということは、ここは何かの施設……なのか?

とにかく、地図に目を通してみよう。

http://i.imgur.com/sy4Bx8F.png

今俺達がいる場所……俺が倒れていたのは真ん中の【中央広場】みたいだな。

ここから八本の道が伸びていて、看板の他にあるものといえば、監視カメラとモニターぐらいだけど……。

平並「このモニター、なんだ?」

見た目は普通のモニターだけど、スイッチがどこにも無い。

しかも、なんでこんなところに?

火ノ宮「知らねーよ、そんなもん」

平並「そりゃそうか」

じゃあ、どこへ行こうか。

安価↓
【1、宿泊棟】
【2、食事スペース/野外炊さん場】
【3、倉庫】
【4、???(建物)】
【5、玄関ホール前】
【6、自然ゲート前】
【7、???ゲート前】
【8、???ゲート前(赤)】

選択:【2、食事スペース/野外炊さん場】

平並「……なんだこれ」

食事スペースと野外炊さん場は高い鉄の柵に囲まれており、入り口にもしっかりとした扉が付いていた。

中には三人ほどいる様子で、俺達が来たのにも気づいたみたいだ。

火ノ宮「おお、この扉開くみてえだな」

平並「いや、中に人がいるし開くだろうとは思うけどさ……」

ギギギと音を立てながら中へ入ると、三人がこちらの方に歩いてきた。

「おや、無事に起きれたみたいですね」

平並「おかげさまでな。 あ、そうだ」

折角三人もいるのだからと、まとめて自己紹介を済ませてしまった。

「なるほど、【超高校級の普通】ですか。希望ヶ空学園も面白いことをやりますね」

平並「俺なんかが希望ヶ空なんかに来ていいのか、ってのは思うけどな。それで、お前達は?」

「では、次は僕が行かせていただきますよ」

始めは、黒いジャケットを着た茶髪の男子からのようだ。

……なかなかイケメンだな。

「僕は杉野 悠輔(スギノ ユウスケ)と申します。世間の皆様からは【超高校級の声優】と呼ばれているようです」


╋━━【超高校級の声優】━━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃          杉野 悠輔/スギノ ユウスケ              ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


平並「声優、か」

杉野「ええ。アニメの声優やバラエティのナレーターとかやらせていただいているのですが、名前とか聞いたことありませんか?」

平並「ああ、そう言えば夕方のアニメでそんな名前を見たような……あれ? でも確かもっと渋い声じゃなかったか?」

杉野悠輔という名前は見かけたことがあるけど、確かその時演じていたのはもっと渋い声の老人だったよな……。

少なくとも、こんなさわやかな声じゃなかったはずだ。

杉野「あー・・・それは、『こんな感じじゃなかったかのう?』」

平並「んなっ!?」

火ノ宮「おお、急に渋い声になったな」

杉野「他にも、『こんな声や』『あんな声や』『可愛い声とかも出せますよ?』」

そう言いながら、杉野は次々と声色を変えていった。

杉野「【超高校級の声優】の呼び名は伊達じゃないってことですよ。この技術のおかげで様々な役がもらえますしね」

凄いな……。

これが、【超高校級】なのか。

次に話し出したのは、セーラー服を着た紺色の長い髪の毛を持った女子だった。

「わたくし、蒼神紫苑と申します。僭越ながら、【超高校級の生徒会長】としてスカウトされましたわ」


╋━━【超高校級の生徒会長】━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃            蒼神 紫苑/アオガミ シオン            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


【超高校級の生徒会長】……ぼんやりと噂には聞いたことあるけど……。

平並「たしか、超不良校をたった二年半で更生させた立役者……だったっけ」

蒼神「あら、お知りになられていたようで、光栄ですわ。そうですわね。前にいた学校では、入学当初から生徒会・・・まあ一年生でしたから正式な役員でこそありませんでしたが、生徒会役員補佐として色々お手伝いさせていただきましたわ」

火ノ宮「そんで、一年生の時の生徒会選挙で生徒会長に当選したんだよな」

蒼神「ええ。わたくしも生徒会長になるという夢が叶ったので良かったですわ」

……ん?

平並「ちょっと待ってくれ、今の言い方だと、生徒のためというよりもむしろ……」

蒼神「わたくしのためですわよ?」

平並「……」

生徒会長なら普通は生徒の為に立候補するものじゃないのか……?

蒼神「勘違いなさって欲しくないのは、わたくしが生徒会長になるときにその旨は全校生徒にしっかりとお伝えしましたわ。その上で、彼らはわたくしについてきてくださると言ってくれたのです」

平並「ということは、そいつらは蒼神についていけば大丈夫だって思ったってことか?」

蒼神「簡単に言えば、そうですわね。わたくしはただ生徒会長になりたいのではなく、『不良校を再生させた生徒会長』になりたかったのです」

火ノ宮「そいつらは、てめーを信頼してたってことだなァ!」

蒼神「ええ、わたくしにはそれだけの人望と実力がありましたから」

平並「それ、自分で言う事か?」

蒼神「もちろん。そうでなくては生徒会長は務まりませんし、ましてやわたくしは【超高校級の生徒会長】ですから」

なるほど。

これは確かに、【超高校級の生徒会長】だ。

平並「えっと、じゃあこの食事スペースと野外炊さん場についての説明を――」

「ちょっと待てよ!」

平並「え?」

あ、もう一人いるのを忘れていた。

火ノ宮「おいおい、だめじゃねえか! あー……てめー、名前なんつったっけ?」

「お前にはさっき説明したよな! 結局こんな感じになるのか!」

平並「ご、ごめん」

火ノ宮「すまねえ! 本当にすまねえ!」

「いいんだよ、別に……慣れてるから」

そして、その黄色い安全ヘルメットをかぶった作業着の男子はひとつ溜息をついてから、自己紹介を始めた。

「新家柱だ。【超高校級の宮大工】とは、ボクの事だよ」


╋━━【超高校級の宮大工】━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃             新家 柱/アラヤ ハシラ              ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


【超高校級の宮大工】……?

新家「あ、その顔は『【超高校級の宮大工】なんて知らないぞ』って顔だろ!」

平並「い、いや、そんなことは」

ごめん、ある。

新家「分かりやすいことを言うと……ボクは塔和神宮の建て替えとかに関わったんだ」

平並「塔和神宮!?」

塔和神宮の建て替えって、確か国家の威信をかけたプロジェクトの一つで、規模にしては異様な速さで建築が完了したっていう話じゃなかったか?

平並「もしかして、あの異様な速さの理由って」

新家「ボクが頑張ったんだよ。誰も覚えててくれないけど」

平並「それは……」

新家「慰めとかは別にいらないよ。昔からボクは、えーとほらあれだよ」

火ノ宮「空気か?」

新家「そう、それ。昔から空気で存在感が無くて……」

……超高校級の生徒でも、こんな悩みがあるのか。

新家「でも、良いんだ。宮大工として仕事が出来るなら、その結果は皆が認めてくれるから。ほら、ちょっと前に完成した希望ツリーってあるだろ?」

平並「ああ」

希望ツリー。

確か、完全木造の12階建ての仏塔だったか。

新家「ボク、希望ツリーの責任者やってたんだぜ」

平並「それは……すごいな」

……うん、たとえ空気でも、やっぱり超高校級だ。


俺なんかとは違うな。

杉野「自己紹介も済んだところで、食事スペースと野外炊さん場について説明させていただきますね」

平並「ああ、頼む」

杉野「地図上では二つのエリアに分かれていましたが、実際は二つのエリアを分けるものは無いみたいですね」

平並「そうみたいだな」

二つのエリアは堅そうな土の地面で地続きになっていた。

地図上で『食事スペース』とされていたところには、大きな長方形の丸太を模したテーブルが中央付近に二つと、周りに4人掛けのテーブルが4つほどおいてある。

杉野「座り心地はそこそこでしたね」

平並「はあ……」

いや、知らないけど。

杉野「それと、そこにほら、監視カメラとモニターがありますね」

平並「……あるな」

火ノ宮「ここにも、か」

『野外炊さん場』の方に目をやると、屋根の付いた調理場と加熱用の炊さん場があった。

蒼神「調理場はあまり広くありませんでしたわ。せいぜい6人が限界でしょう」

新家「それに、調理場の側の大きな冷蔵庫には新鮮な食料が山ほどあったぞ」

杉野「もし僕達16人がここで暮らすことになっても一週間程度は過ごせると思いますよ」

平並「……そんな展開にはならないと良いんだけどな」

にしても、16人が一週間だから、えーと、100日分以上用意されてるのか。
新鮮な食材が、なぜそんなに?

平並「それにしても、加熱はあそこでたき火をしなきゃいけないんだな」

野外炊さんとはいえ面倒な。

蒼神「あ、あそこはガスが通ってるみたいですので普通に調理できるみたいですわ」

平並「……」

火ノ宮「案外便利なんだな」

平並「調理器具とかはあったのか?」

杉野「調理場のシンクの下に包丁やボウルはありましたよ」

平並「……食材があるんだから当然あるか」

火ノ宮「普通に調理できるだけの設備は整ってるみてえだな」

新家「そういうことだな」

こっちにも監視カメラやモニターがある。

平並「……じゃあ、他の人にも自己紹介しなきゃだから」

杉野「分かりました、では、僕達はもう少しここにいます」

何日も過ごせるだけの食料と、十分整った調理設備。
これが意味するのは……。

火ノ宮「次はどこだ?」

平並「そうだな……」

安価↓
【1、宿泊棟】
【3、倉庫】
【4、???(建物)】
【5、玄関ホール前】
【6、自然ゲート前】
【7、???ゲート前】
【8、???ゲート前(赤)】

選択:【1、宿泊棟】

宿泊棟、か……。

さっきの地図にも『宿泊エリア』と書いてあったし、このドームは宿泊目的の施設なのか?

壁が真っ白に塗られた直方体の建物。

高さからして二階建てのようだ。



建物の中に入ると、広いラウンジの壁に、茶色いブレザーを着たオレンジ髪の女子がよっかかっていた。

「おや、君の物語も無事に始まったみたいだね」

平並「……はい?」

「ああ、別に気にすることは無いさ。これはボクの癖みたいなものだから」

……妙におかしな言い回しをするな。

「さて、自己紹介と行こうか。ボクの名前は明日川棗。【超高校級の図書委員】さ」


╋━━【超高校級の図書委員】━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃            明日川 棗/アスガワ ナツメ            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


平並「図書委員……だから物語だなんて話を?」

明日川「いや、図書委員だから、というよりは本好きが高じて【超高校級の図書委員】になった、という方が正確だよ」

それもまたおかしな気もするが……まともに話せる相手ではなさそうだな……。

平並「……まあいいや、俺は平並凡一。【超高校級の普通】だ」

明日川「普通、ね。『普通』とは、いつどこにでもいるような様子を表す言葉だけど、つまり君は一般人代表であるという認識で問題はないかな?」

平並「あ、ああ、大丈夫だ」

回りくどい言い方だな……。

自己紹介が終わると、今度は火ノ宮が口を開いた。

火ノ宮「で? この施設はなんなんだ? 名前から大体分かるけどな」

明日川「ふむ。火ノ宮さんも予測している通り、ここはその名の通り『宿泊するための建物』のようだよ」

平並「まあ……そりゃそうか」

明日川「玄関ホールにはいくつかのテーブルとイス、そしてドリンクボックスがある。地図を見る分だと他にもランドリーやダストルームがあるようだし、あからさまに生活のための建物だ」

平並「地図?」

明日川「ほら、そこにかかっているだろう」

明日川の指す先を見ると、確かに壁に地図がかけられている。

どれどれ・・・。

http://i.imgur.com/7bv0KV0.png

確かに、ランドリーやダストルームの文字があった。

まあ、すぐそこに洗濯機のある部屋が見えてるから、多分そこがランドリーなんだろうとは思っていたけど。

ただ、それよりも気になることがある。

いくつもの名前が書かれている小部屋だ。

俺の名前や火ノ宮、杉野や明日川の名前も書いてあるという事は、他の名前も多分ここに集められた人たちの名前なんだろう。

平並「この、名前が書かれているのは……?」

明日川「ああ、それは多分――」

「あ、君、ちゃんと目を覚ましたんだね!」

俺の疑問に対して明日川が答えようとしたその時、玄関ホールにそんな声が響いた。

その声のする方を向くと、緑色のパーカーを着たはねっ毛の女子が階段を降りてくるところだった。

「君の名前、ヒラナミ君で合ってるよね?」

平並「ああ、合ってるけど、なんで俺なんかの名前を?」

火ノ宮「おい、マジで言ってんのか? この地図の名前から考えれば、すぐにわかんだろォ?」

ああ、そういうことか。

「それに、個室にネームプレートがかかってたから間違いないと思ってたけどね」

個室?

平並「明日川、この名前が書いてある部屋って個室なのか?」

明日川「そうさ。多分だけどね」

平並「多分?」

明日川「多分というのは、カギがかかってて中に入れなかったからさ。だけど、『宿泊棟』にあってそれぞれ割り当てられた部屋として考えられるのは個室しかないだろう?」

なるほど。

「あ、そうだ。私だけ名前を知ってるのも不公平だよね。私、七原菜々香。【超高校級の幸運】として希望ヶ空学園にスカウトされたんだ」


╋━━【超高校級の幸運】━━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃          七原 菜々香/ナナハラ ナナカ            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

平並「……お前が【幸運】だったのか」

七原「あれ? 私のこと知ってるの?」

平並「いや、【超高校級の幸運】がどんな人なのか気になってたから」

七原「気になってた?」

平並「ああ。俺は平並凡一。【超高校級の普通】としてスカウトされたんだけど……全国の高校生の中で一番普通だっていう理由でスカウトされたんだ」

七原「へえ」

平並「だから、普通の高校生の中から抽選で選ばれた【超高校級の幸運】はどんな人なんだろうと思っていたんだよ」

七原「うーん……でも、私はただ抽選で選ばれたわけじゃないと思ってるの。私って昔から運だけは良かったから、私が【超高校級の幸運】に選ばれたのはある意味で必然だったんだよ、きっと」

平並「……そうか」

もしかしたら、その言葉の通り、七原は【超高校級の幸運】として偶然選ばれたのではなく、幸運の持ち主として希望ヶ空にスカウトされたのかもしれない。

そして、例年は抽選枠だったところを俺が【超高校級の普通】としてスカウトされたのだと考えれば、俺にスカウトが来た理由も納得がいく……のか?

明日川「それで? 二階はどうだった?」

七原「全然ダメだよ。一応地図はあったんだけど、どの部屋も名前が隠されてる上に鍵がかかってて何の部屋かも分からなかった。一階のダストルームにはカギがかかってなかったんだけど……」

火ノ宮「カギがかかってる部屋には何かあんのか?」

七原「分かんない」

カギがかかってる部屋とかかってない部屋がある?

カギをかけるならすべての部屋にかければいいのに、どうして?

明日川「気になっていることは他にもある。君達も気づいているだろうが、中央広場にもあったあの監視カメラとモニターだ」

平並「モニターって、部屋の端にかかっているアレの事だよな?」

明日川「そうだ。まあモニターは娯楽のためのテレビである可能性があるが、それにしてはスイッチもリモコンも見当たらない」

火ノ宮「ホントみてえだな」

明日川「加えて言えば、監視カメラというのはその名の通り『何かを監視するため』にあるものなんだ。別に宿泊棟についててもおかしくはないけれど……何か引っかかるんだ」

平並「……」

七原「あ、二階の地図は階段のところにあるよ。何の意味もないけど」

二階の地図……あれか。

近づいて確認してみる。

http://i.imgur.com/8CJxT9i.png

火ノ宮「マジでなんもわかんねえじゃねえか!」

七原「だからそう言ったよね」

平並「……そろそろ他の人にも挨拶してくるか」

明日川「じゃあ、ボク達はもう少しここを調査してみるよ」

七原「あまり期待は出来ないけど」

宿泊棟には16人分全員の個室が用意されていた。

寝泊りするのに問題はないだけの設備は整っていたようだけど……。

平並「宿泊棟、ねえ……」

火ノ宮「とりあえず、他のところにも行ってみようぜ」

平並「そうだな」

安価↓
【3、倉庫】
【4、???(建物)】
【5、玄関ホール前】
【6、自然ゲート前】
【7、???ゲート前】
【8、???ゲート前(赤)】

選択:【4、???(建物)】

……ここの建物、地図だと文字が潰れて読めなかったけど、何なんだろう。

謎の建物の前まで行ってみると、そこにいたのは二人の男女だった。

やっぱりここにも監視カメラとモニターか……。

「おお、無事に目を覚ましたのであるな!」

俺に声をかけて来たのは、ススで汚れた白衣を着た青い髪の男子。

平並「ああ、おかげさまでな」

「それでは自己紹介をさせてもらうぞ! お主、『ティアラ』という会社に聴き覚えはあるか?」

ティアラ?

平並「それって、雑貨メーカーだったっけ。 『日常をちょっとだけ豊かにする』ってキャッチコピーで斬新なアイデアとセンスで実用的な雑貨を開発しているって話の」

「うむ、そうであるな」

平並「確か、社長は現役高校生で【現代のトーマス・エジソン】と噂される人物ってネットニュースで見たことが……ん?」

現役高校生って、まさか。

「気づいたようであるな? そう、この吾輩、遠城 冬馬(エンジョウ トウマ)こそが【現代のトーマス・エジソン】にして、【超高校級の発明家】である!」


╋━━【超高校級の発明家】━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃          遠城 冬真/エンジョウ トウマ            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


平並「それはすごいな」

遠城「そうであろうそうであろう! わっはっはっは!」

凄いんだけど……こいつ、笑い声が大きいな。

平並「にしても、発明家ってのは何をするんだ? いまいちピンとこないんだけど」

火ノ宮「読んで字の如く何かを発明するんだろうがァ! 代表的なのはトーマス・エジソンだな!」

遠城「うむ。かのトーマス・エジソンは千を超える発明をしたと言われており、蓄音機や白熱電球といった、人々の生活を一変させるものを発明していったのである!」

なるほど……。

遠城「ただ、吾輩はエジソンほど天才的な発明はまだ出来ないのである」

平並「そうなのか? 【超高校級の発明家】なんだろ?」

遠城「悔しいが、人々の生活のすべてを変えるような発明はまだできておらぬ。ただ、まあそこは別に問題ではない。 出来ないことはこれから出来るようになればよいのであるからな! わっはっはっは!」

そう言った遠城は、心の底から笑っているようだった。

遠城「それに、吾輩の真髄は日常を少しだけ良くするアイデアにある。 ……む、また一つアイデアを思いついたぞ。メモを取らねば!」

すると遠城はポケットからペンとメモを取り出し、すごい勢いで何かを書き始めた。

なんて元気なやつだ……。

「次はアタシの番ね」

遠城がメモを取っている隙に自己紹介を始めたのは、白いスカートをはいた水色の髪の女子だ。

「アタシは【超高校級のダイバー】、東雲瑞樹よ」


╋━━【超高校級のダイバー】━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃            東雲 瑞希/シノノメ ミズキ             ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


平並「東雲瑞樹……あ、名前は聞いたことあるぞ」

東雲「ホント? 嬉しいじゃない」

平並「えっと、確か海の美化運動の話で出てきたような……」

東雲「そうね。地元の海の美化運動の代表者で、他の地域の海の美化運動にもかかわり始めたから、その関係かしら」

平並「へえ、代表者だったのか」

東雲「そうよ。……というか、もともと最初はアタシ一人しか海の掃除をしてなかったのよ」

平並「たった一人で美化運動を始めたのか?」

東雲「ええ。でも、気づけばいろんな人が参加するようになって、アタシの地元の海は観光名所にまでなったわ」

平並「すごいじゃないか」

東雲「あんまりアタシが頑張ったって、感じはしないんだけどね。アタシはただ、海が汚れたままになってるのが嫌いだっただけだから」

火ノ宮「それだけ聞くと、どっちかってーと【超高校級の美化委員】の方が近そうなんだがな」

東雲「ああ、アタシが綺麗にするのは海だけだから。別に陸地がどうなってもいいってわけじゃないけど、もともとダイビングが趣味で、海の掃除はその延長線上にあるだけなのよ」

平並「なるほどな」

とはいっても、やはり【超高校級のダイバー】とされるほどにはダイビング技術が卓越していることは間違いないのだろう。

平並「次は俺の番……っと、遠城、もう良いのか?」

いつの間にかメモを取り終えていた遠城に話を振ってみる。

遠城「ああ、いいのである……たいしたアイデアではなかったからな……」

平並「そ、そうか。じゃあ自己紹介するけど、俺は平並凡一。【超高校級の普通】だよ」

篠原「【超高校級の普通】?」

平並「ま、一般人代表だと思ってくれればいい。……【超高校級の凡人】の方が正しいかもな」

篠原「ふうん……ねえ、アンタ趣味は?」

平並「趣味? 特にないけど……」

篠原「じゃあさ、ダイビングやってみない? せっかくなら何かやってみようよ」

平並「いや、いいよ。泳ぎはあまり得意じゃないし……」

正確には、泳ぎが得意じゃないというより、得意なものが無いんだけど。

遠城「得意じゃない、というのは理由にならんぞ」

平並「え?」

遠城「出来ないことは出来るようになるまで練習すればよいのだ。一見実行不可能なアイデアでも、努力して考え抜けば可能になるものもある。やる前から諦めるというのは愚かな行動であるぞ」

平並「……」

遠城「もちろん、どうしてもやりたくない、というのならば別であるがな」

篠原「ま、気が向いたら教えてよ。手取り足取り教えてあげるからさ」

平並「……わかったよ」

火ノ宮「ところで、この建物はなんだ?」

平並「あ、それを確認しないとな」

東雲「それなんだけど……この建物、扉にカギがかかってるみたいなのよ」

平並「カギが?」

ためしに開けようとしたけど、なるほど確かにカギがかかっている。

遠城「地図では名称が確認できなかった上、建物の周りを廻ってみても中は見えなかったのである」

東雲「ってことは、外からは見えないような、ばれたらまずいようなものが中に入ってる……ってことも考えられるよね」

平並「……今はこの辺りが限界か」

東雲「とりあえず、アタシたちはまだ残って考えてみるけど、アンタは他の人達に挨拶してきなさい」

平並「ああ。じゃあまた後でな」

遠城「うむ」

中身の見えない謎の建物……一体何なんだろうか。

火ノ宮「今は考えててもしょうがねえな」

平並「次はどうしようか」

安価↓
【3、倉庫】
【5、玄関ホール前】
【6、自然ゲート前】
【7、???ゲート前】
【8、???ゲート前(赤)】

選択:【3、倉庫】

平並「これが倉庫か……」

倉庫と名はついているものの、その建物はどちらかといえば旧家のお屋敷にあるような立派な蔵だった。

火ノ宮「割と大きいな」

平並「そうだな」

とりあえず扉を押しあけて中に入ってみる。

倉庫の中には棚にずらりと物が並んでおり、ロープやら地球儀やらさまざまなものが置いてあるようだった。

そしてその中央には二人の姿が見え、その二人もこっちに気づいたようだった。

平並「お前達は?」

すると、真っ白な白衣を着た緑髪の男子が酷くおびえた様子で声をかえしてきた。

「な、名前を聞くなら……じ、自分から名乗るのが礼儀ってもんだろう……」

確かに、それもそうだ。

平並「俺は平並 凡一。【超高校級の普通】として希望ヶ空にスカウトされた」

「ちょ、【超高校級の普通】? おかしな肩書だな……」

平並「まあそう思うのも無理はないけど……まあ、ただの凡人って思ってくれれば間違いない」

「そ、そうか……じゃあ、ぼくの番だな……。ぼ、ぼくは根岸章……気が付いたら【超高校級の化学者】になってた……よ、よろしく……」


╋━━【超高校級の化学者】━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃            根岸 章/ネギシ アキラ            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


平並「気が付いたらなってた? どういうことだ?」

根岸「し、知らないよそんなの・・・ぼ、ぼくは自分のやりたいようにやってたら・・・気づいたらそんな風に呼ばれてたから・・・」

火ノ宮「確か、あの【スラチウム】を発見したのは根岸だったよな?」

根岸「ひ、ひぃっ!」

火ノ宮「おい、なんでおびえてんだ!」

平並「ま、待て! スラチウムって、最近発見された新しい元素の事か!?」

ニュースで大々的に取り上げられていたから、その名前は聞いたことがある。

まさか、それを発見したのがこの根岸だったのか。

根岸「せ、正確には発見したかもしれないってだけだよ……」

平並「ん? 完全に発見したわけじゃないのか?」

根岸「は、発見も何も……ぼ、ぼくがいた学校はかなり設備が整ってたんだけど、こ、高校の設備じゃ『未知の原子が存在するかもしれない』ってところまでしかわからなかったんだ……」

……いや、高校の設備だったらそれでも十分凄い事なんじゃないのか!?

根岸「だ、だから希望ヶ空学園でもっと詳しく実験するつもりだったんだ……だ、だけど」

平並「こんなことになっちゃってる、ってわけか……」

根岸「あ、ああ、もうおしまいだ! き、きっとぼくがなにかしたせいでこんなことになったんだ!」

平並「ちょ、ちょっと」

根岸「あ、朝ご飯粒のこしたのがいけなかったのかな!? そ、それとも一昨日食器を割っちゃったこと!? も、もしかして」

平並「お、落ち着け根岸!」

大声で根岸を止めようとしてみるけど、根岸の被害妄想は止まらない。

そうやって慌てていると、メイド服を着た銀髪の女子が声をかけてきた。

「彼は時々そんなかんじになるみたいです。放っておけばそのうち治まりますよ」

平並「えーと……お前は?」

「申し遅れました。わたし、城咲かなたです。幸運にも【超高校級のめいど】として希望ヶ空学園にすかうとされました」


╋━━【超高校級のメイド】━━━━━━━━━━━━━━━━╋

┃                                        ┃
┃            城咲 かなた/シロサキ ---            ┃
┃                                       ┃

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


【超高校級のメイド】、か。

メイド服を着てるからもしやとは思ったけど、そのまんまだったか。

城咲「本当はご主人様のお屋敷を離れるわけにはいかなかったのですが、人生経験のため、とご主人様に言われまして、希望ヶ空学園に来ることにいたしました。」

平並「ご主人様?」

城咲「ええ。十神財閥の当主、十神白夜様です」

平並「十神財閥……って、あの十神財閥か!?」

火ノ宮「オレが知ってる十神財閥は一つしかねえな」

十神財閥。

世界の富の3割を所持しているという噂もある財閥で、あらゆる分野における超一流の企業の多くが十神財閥のものであるはずだ。

そんな財閥の屋敷に仕えているとは、さすがは超高校級……。

平並「【超高校級のメイド】ってことは、掃除とか料理とかが上手いのか?」

城咲「はい。わたしはお屋敷でめいど長をつとめていましたので、【超高校級の料理人】には劣るかもしれませんが、一流のさあびすを提供することが可能です」

平並「さすがは【超高校級のメイド】だな」

城咲「いえ、わたし自体は特に何がすごいというわけではなく、十神財閥のめいどとして仕えていることが評価されたのだと思います」

そうは言うが、あの十神財閥だ。

超一流のメイド技術を持っていなかったら仕えることなんて出来ないだろうし、ましてやメイド長になんてなれないだろう。

さて、自己紹介も済んだところで倉庫の情報を聞こう。

根岸も随分落ち着いたみたいだし。

城咲「ここの倉庫、日用品から工具にいたるまで様々なものがそろっているようです」

平並「へえ、そうなのか」

根岸「か、カンヅメやお菓子みたいな食料品も……じ、充分あるみたいだよ……」

平並「倉庫っていうより物置みたいな役割なのか?」

倉庫と物置がどう違うかってよくわからないけど。

火ノ宮「窓は高い所に小さいものが一つあるだけか」

城咲「そうですね。でも、電灯は最新式なので別段暗いわけでもありません」

意外とハイテクなんだな。

……やっぱり監視カメラとモニターもあるし。

城咲「あ、そうそう。一つだけ気になることがありました」

平並「気になる事?」

城咲「この倉庫、かなり物が乱雑に置かれていたので先ほど軽く整理をしたのですが、ほとんど埃はありませんでした」

火ノ宮「言われてみれば、全然埃っぽくねえな」

根岸「つ、つまり……ひ、頻繁に使われていたってことだよ……」

ってことは……。

平並「この施設には、前に人がいた?」

城咲「はい。しかも、ごく最近まで」

……。

俺達は、倉庫を後にして中央広場に戻ってきた。

あの倉庫……明らかに人がいた痕跡があった。

ここはどういう施設なんだ?

平並「次はどこへ行こうか」

安価↓
【5、玄関ホール前】
【6、自然ゲート前】
【7、???ゲート前】
【8、???ゲート前(赤)】

選択:【5、玄関ホール前】を採用して、今回の投下はここまでです。
お疲れ様でした。

次回でキャラ、舞台紹介が終わると思います。

最初の投下からミスだらけですいませんでした。
是非よろしければ、最後までお付き合いください。

感想ありがとうございます。

今日でプロローグ終われば理想。

では、投下します。

選択:【5、玄関ホール前】

玄関ホール、と書かれていた場所まで来ると、そこは大きく、そして重厚な鉄の扉で閉ざされていた。

扉の右上には派手なマシンガンが設置されている……えっ、マシンガン……?

とりあえず、その前にいた男女に声をかけようとすると、どこからか声が聞こえてきた。

『おっ、目ぇ覚ましたのか。良かった良かった』

……ん?

誰だ今の声。

目の前にいる二人は喋ってないし……。

『そっちじゃねえ、もうちょい下だ、下』

平並「下?」

その声に従って目線を下の方に下げると、女子が左手にはめている黒い人形がこちらに話しかけてきている……ような気がした。

『おう、やっと気づいたな!』

平並「え、人形?」

『おうとも、オレは人形さ』

すると、その人形をはめていた淡いピンクの髪の女子が話しかけてきた。

「この子の名前は黒峰琥珀って言うの。気軽に琥珀ちゃんって呼んでね」

琥珀『おいおい、琥珀ちゃんはねえだろうがよ。』

平並「えっと……この人形が琥珀……でいいのか?」

琥珀『そうそう。そんで、コイツは露草翡翠。見ての通り【超高校級の腹話術師】だ』


╋━━【超高校級の腹話術師】━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃            露草 翡翠/ツユクサ ヒスイ            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


露草翡翠……そういえば聞いたことあるな。

メディア露出を嫌う腹話術師で、人形と本人の軽妙な会話が人気なのだとか。

琥珀『ほら、翡翠もなんか喋れって!』

露草「翡翠は特に何か言う事は無いからねー」

琥珀『そんなこと言わずに自分で自己紹介しろって! いつも腹話術じゃねえか!』

なるほど……さっきから琥珀が喋っている間は露草の口がピクリとも動いていない。

これが【超高校級の腹話術師】か……。

露草「腹話術なんてとんでもない。翡翠は、自分でしゃべれない琥珀ちゃんの代わりに声を出してあげてるだけなんだから」

琥珀『よく言うぜ! オレがいないとまともにしゃべることさえできないくせに!』

露草「もう、なんてこと言うのよ!」

火ノ宮「……お前達、よくもまあこんなにしゃべれるよなあ」

琥珀『ひでえ言い草だな!』

でも、ホントに露草と琥珀だけでどこまでも喋れるんじゃないかな……。

琥珀『ところで、お前の名前はなんつーんだ?』

平並「俺は、平並凡一。一般人代表の、言うなれば【超高校級の凡人】だよ」

琥珀『【凡人】か、希望ヶ空はそんなやつもスカウトするんだな』

平並「いや、凡人って言うのは俺は自分で言ってるだけだけどな。けどまあ、その認識で間違いない」

琥珀『そういうもんか』

そういうもんだ。

露草「ってことは、凡一ちゃんだね!」

平並「ぼ、凡一ちゃん!?」

そんな呼び方初めてだぞ。

琥珀『よろしくな、凡一!』

平並「……琥珀、後で露草にちゃん付けを止めてくれって言っておいてくれ」

琥珀『分かったぜ』

露草「やめないよ?」

……勘弁してくれ。

「次は俺様の番だな」

今度は、真っ黒な服装のぼさぼさ髪の男子の自己紹介が始まった。

……やけに高圧的な態度だな。

「聞いて驚け! 俺様は【超高校級の王様】だ!」

平並「お、【王様】?」

こんなボサボサ髪の奴が、王様なのか?

「そうだ! 俺様こそがかのインバスア王国の王様だ!」

平並「インバスア王国?」

そんな国、聞いたこと無いぞ。

「インバスア王国を知らないのか? 250年前から続く由緒ある王国だぞ?」

平並「すまん、知らなかった……」

琥珀『知らなくて当然だぜ?』

え?

火ノ宮「申し訳なさそうにしてっけど、そんな国はねえよ!」

平並「でも今【超高校級の王様】だって……え、嘘?」

「悪い悪い。ちょっとしたジョークだ、正直に言うよ。僕は【超高校級の呪術師】だ」

平並「【呪術師】って、呪いか」

「そうそう。五寸釘から黒魔術までなんだって使えるんだよ」

平並「それは……本当なのか?」

琥珀『嘘だぜ』

平並「……」

こいつ……。

「ちょっと、露草っち、ネタバレが早すぎんぜ?」

露草「今のは琥珀ちゃんだよ?」

「ああ、そうだったな、ごめんごめん」

平並「……で、本当は?」

「わかったっちゃ、わっちの名前は隠明寺……なんだよその目は……わかったよ、正直に言うよ」

すると、その男子は右手で髪の毛をガシガシと掻いた。

「はぁ……俺の名前は古池河彦。【超高校級の帰宅部】だ」


╋━━【超高校級の帰宅部】━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃          古池 河彦/フルイケ カワヒコ           ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


……おい、また嘘なんじゃないだろうな。

古池「あ、お前今『帰宅部なんてどうせ嘘だろう』とか思っただろ」

平並「……どうしてばれた」

琥珀『そりゃ思うだろうよ』

火ノ宮「っていうか思いっきり顔に出てたぜ、平並」

古池「悪いが、これは本当だぜ。証明は出来ないけどな」

……とにかく、古池は相当な嘘好きのようだな。

平並「それで、この扉は開きそうなのか?」

琥珀『てんでだめだな。びくともしねえ』

平並「そうか……」

古池「閉じ込められたのか……他の場所がどうなってるか知らないけど」

露草「そうじゃない? だって、私達誘拐されてるんだし」

平並「……やっぱり、誘拐なのか」

琥珀『あったりめえだろ! こんな大人数がおんなじタイミングで同じ場所に集められるなんて誘拐以外あり得ねえって!』

古池「しかも、全員希望ヶ空の新入生みたいだしな……」

露草「綿密な計画もあっただろうし、そんな犯人が監禁場所に脱出経路を残すかな?」

火ノ宮「残すわけねーな」

琥珀『それにほら、物騒なマシンガンに謎のモニターに監視カメラ……やな予感しかしねえぜ』

古池「そうだな……」

平並「ところで、さっきから気になってるんだけど、どうして急に古池はそんななげやりになったんだ?」

古池「……嘘つくとき以外は大体こんなかんじなんだ」

火ノ宮「めんどくせえ性格してるよな……てめー」

古池「ま、いいや。とりあえずよろしくな、平田」

平並「……平並だよ」

玄関ホールを後にした俺と火ノ宮は、中央広場に戻ってきた。

あの大きな扉は固く閉ざされていた……。

……俺達は、ここから出られないのか?

平並「……次はどこに行こうか」

安価↓
【6、自然ゲート前】
【7、???ゲート前】
【8、???ゲート前(赤)】

選択:【6、自然ゲート前】

SF映画の宇宙船に出てくるような両開きの扉の前には、ニット帽をかぶった金髪の男子が立っていた。

「起きたのか」

平並「ああ」

「じゃあ、自己紹介でもしておくか……オレの名前はスコット・ブラウニング……【超高校級の手芸部】とか呼ばれてるらしい」


╋━━【超高校級の手芸部】━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃              スコット・ブラウニング             ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

スコット「オレの事はなんでも好きなように呼んでくれ」

平並「じゃあスコット……【超高校級の手芸部】って?」

スコット「どうやら、オレの編んだぬいぐるみや刺繍が軒並みコンテストで優勝したらしい。プロも多数参加していたコンテストでな」

平並「本当か!? すごいじゃないか!」

スコット「別に……あんなもんで賞をとっても嬉しくないさ」

平並「……?」

スコット「ほら、今度はお前の番だぞ」

平並「あ、ああ。平並 凡一、【超高校級の普通】……【超高校級の凡人】だよ」

スコット「【凡人】、ねえ……」

平並「それでここは……自然ゲート?」

スコット「みたいだな。中央広場にあった地図には【宿泊エリア】と書いてあった。普通に考えればこのドームが【宿泊エリア】なんだろうな。だから、多分この先に『自然エリア』があるんじゃないかとオレは思う」

火ノ宮「開かねえのか?」

スコット「ああ、びくともしない。一応センサーはあるみたいだが……ほら、上のランプが赤いだろ? 多分、緑とかになったら開くようになるんじゃないか?」

平並「いまできることは何もない、か」

スコット「そういうことだ。ま、オレはもう少しここでのんびりしてるさ」

平並「じゃあ俺は他の人に挨拶してくるよ」

……ここにも監視カメラとモニターがあるな。

自然エリア、ねえ……。

平並「ということは、ここは複数のエリアに分かれた施設になるのか?」

火ノ宮「だとしたら、かなり巨大な施設になるぞ」

……。

平並「次はどこに行こうか」


安価↓
【7、???ゲート前】
【8、???ゲート前(赤)】

選択:【8、???ゲート前(赤)】

玄関ホールの真反対に位置するゲートにやってきたけど……。

何だこのゲート……SFチックだった自然ゲートとは違い、真赤なシャッターが下りている。

その前に立っていた、暗い赤髪の学生服を着た男子はこちらを一瞥して……無視した。

いや、なんで無視したんだ。

平並「あー……ちょっといいか?」

「……なんだ」

平並「俺は平並凡一。【超高校級の普通】として希望ヶ空にスカウトされたんだけど、簡単に言えば一般人代表。ただの凡人だよ」

「そうか」

平並「……それだけ?」

「何の用だ?」

平並「いや、せっかくなら自己紹介してほしいからさ」

すると、その男子の方から「ちっ」と軽い舌打ちが聞こえてきた。

「……俺は岩国 琴刃(イワクニ コトハ)。【超高校級の弁論部】だ」

╋━━【超高校級の弁論部】━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃            岩国 琴刃/イワクニ コトハ            ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

岩国「初めに言っておくが、俺は誰かと慣れ合う気なんて毛頭ない」

平並「慣れ合うって……そんな言い方ないだろ」

岩国「ここからの脱出において最低限の協力はしてやるが、それ以上の無駄な交流は控えさせてもらう」

平並「無駄って……」

火ノ宮「諦めろ、平並。こいつはさっきもそんな感じだったぜ」

岩国「別に、お前達と敵対しようなんて思ってないから心配するな」

平並「そうなのか?」

岩国「俺は自分の賢さには自信があるが、完璧だなんて思ってない。他人の意見が脱出のヒントになる可能性がある以上、それなりの協力はさせてもらう」

平並「だったら仲良くしようぜ。同じ男子なんだし」

岩国「仲良くしたって無意味だ。いや、中途半端な信頼は害にすらなり得る」

平並「……なら、中途半端じゃない、本当の信頼を築けばいいだろ」

岩国「ふん。何を言われても俺はスタンスを変えないぞ。希望なんて持たなければ、絶望なんてしなくていいからな」

平並「絶望……?」

岩国「話は済んだな。なら、俺は他のところを見てくる」

平並「お、おい!」

岩国「それと、俺はこんななりをしているが、心も戸籍も生物学上も紛れもなく女だ。残念だったな、凡人」

そう言って、岩国は中央広場の方へ歩いて行った。

平並「……えっ? 女子?」

……とりあえず、岩国の事は置いておいてこの赤いゲートについて考えてみよう。

平並「このゲート、他とはちょっと違うな……」

自然ゲートは両開きの扉だったけど、ここは商店街で見るようなシャッターが下ろされている。

ただし、その色は赤だ。

サイズもかなり大きい。

ここにも監視カメラとモニターはあるけど、ゲート前の空間が、自然ゲート前よりも広めになっている……出入り口前と同じくらいか。

平並「なあ火ノ宮、このゲート、どう思う?」

火ノ宮「さあな。知らねえけど、この先には特別な何かがあるってことだろ、明らかに」

平並「……そうだよな」

とりあえず、中央広場に戻ってきた。

多分、あのゲートは特別なものなんだろう……それだけの毒々しさを、あの赤いシャッターからは感じた。

平並「次に行こう……最後は、もう一つのゲートか」

【7、???ゲート前】

自然ゲートと同じような扉の前に立っていたのは、短パンを穿いた金髪ポニーテールの女子だった。

「あ、起きたんだね! 良かった良かった。一人だけいつまでたっても起きなかったからどうなっちゃったかと思って」

平並「なんとか無事だったよ」

「そっか。 自己紹介しないとだね! 私は大天翔! 気軽にカケルって呼んでくれてもいいよ!」

平並「い、いや、いいよ」

大天「えー……まあいいや、よろしくね。ああ、そう言えばまだ私の肩書を言ってなかったね。私は、【超高校級の運び屋】!」


╋━━【超高校級の運び屋】━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃                                       ┃
┃             大天 翔/オオゾラ カケル             ┃
┃                                       ┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


平並「【運び屋】?」

大天「そ! 手紙やプレゼントはもちろん、依頼さえあれば人や思い出、笑顔だって運んじゃうんだから!」

平並「へえ、だから運び屋か。それってなんでも運べるのか?」

大天「お金さえもらえればね。よほどのものじゃなきゃ運ぶよ」

火ノ宮「よほどのものってなんだ?」

大天「さあ? 箱の中身とかは見ないで運ぶこともあるからヤバイヤツも運んだことあるかもしれないし、別にそのあたりは詳しく考えてないけど」

平並「それってまずいんじゃないか……?」

すると、大天はやれやれとでも言いたげに首を振った。

大天「いい? ばれなければ犯罪じゃないんだよ」

火ノ宮「…………いやダメだろ!」

大天「私はお金がもらえればそれでいいからね。誰かが不幸になるようなことは出来るだけしたくないけど」

……随分お金本位のようだな。

平並「まあいいや……このゲートは?」

ここも他に漏れず監視カメラとモニターが置いてあるが、それ以外で特に気になる点はない。

殆ど自然ゲートと同じ。

ランプも赤だ。

大天「さあ? 名前も分からないし、びくともしないからどうしようもないよ」

平並「やっぱりか……」

大天「というか、このドームの端をぐるっと回ってみたけど出られそうなところはなかったよ?」

平並「一周したのか?」

大天「うん。そんな苦になる距離でもなかったけどね。木が並んでて邪魔だったけど」

火ノ宮「ちっ、やっぱり閉じ込められたのか」

大天「……そうなるね」

大天「私、職業柄結構いろんなところでたくさんの人と接することが多いから、結構噂話とか好きなんだけど、こういう状況、なんか聞いたことあるんだよね……」

平並「本当か?」

大天「うん……集団誘拐って、過去を見ると結構例があるんだよね」

火ノ宮「ああ、テレビとかでもたまに取り上げられてんな」

大天「その目的は色々だけど……真っ先に考えられるのはやっぱりお金なんだよね」

平並「まあ、そうか」

ここにいるのは16人……しかも、全員【超高校級】だ。

身代金も多額を請求できるだろう。

大天「……でも、だとしたらこんな施設に監禁する理由が無い……・それに、そもそも、私、こんな大きなドームは見たこと無い」

平並「……」

……この施設は、そして俺達を閉じ込めた犯人は一体何なんだろうか。

平並「……とりあえず、見て回れる所はこれで全部……かな」

火ノ宮「だな。そろそろ手分けした調査も終わってるだろうし、中央広場で待ってようぜ」

平並「そうするか」

大天「ん、じゃあ私ももう戻ろうかな」

そして、俺達は中央広場へと向かった。

皆を待つために中央広場に戻ったけど、俺達が付いた時には既に俺達以外の全員が揃っていた。

蒼神「これで全員揃いましたわね」

平並「俺達が最後か」

明日川「そうだね。待ちくたびれてしまったよ」

新家「おせえよ、お前達」

火ノ宮「悪いな」

蒼神「さて、とりあえず全員揃いましたので、食事スペースにでも移動して情報の共有を――」

その時。




ぴんぽんぱんぽーん!




突如、ドーム内に奇天烈な音が鳴り響いた。

根岸「な、なんだ……!?」

火ノ宮「静かにしろォ! なんか放送が来るぞ!」

ざわつく俺達を、火ノ宮の声が一喝する。

そして、放送が聞こえてきた。



『あーもう、なっがすぎ! やる気あんのかオマエラ!』


その放送の声はひどくだみ声で、そして、果てしない不快感のある声だった。



『今すぐ【自然エリア】のメインプラザに集合!』

ブツッ!!


七原「……終わった……?」


その放送は、たったの10秒にも満たないような放送だったけど、俺達に際限のない戸惑いと不安を残していくには十分すぎるものだった。

東雲「何、今の……」

七原「気分悪い……」

平並「……なあ、どうする?」

新家「どうするって……」

火ノ宮「どうするもなにも、行くしかねえだろ! 集合かけられてんだからな!」

根岸「で、でも……行ったら何かヤバイことになるんじゃ……」

火ノ宮「だからって、号令は守らねえとダメだろ!」

根岸「お、おまえ、もしかしてクソ真面目なのか……!?」

火ノ宮「あァん? やんのかてめえ!」

杉野「待ってください!」

火ノ宮「ああ?」

杉野「……とりあえず、僕は火ノ宮さんに賛成です」

根岸「な、なんでだよ……」

杉野「この状況から見て、僕達が集団誘拐されたことは確実。なら、今の放送は犯人によるものと考えていいでしょう」

蒼神「それはそうですわね」

琥珀『っていうかそれ以外考えらんねーな!』

杉野「であれば、ここで犯人の要求に逆らっても無駄に犯人を刺激するだけです」

根岸「そ、それもそうか……」

明日川「そんなことをすれば最悪の場合全員殺されてしまうかもしれないね」

城咲「殺されてしまうのですか!?」

明日川「そういう物語もあるってことさ」

古池「……とにかく、行くしかないってことか」

スコット「そういう事だな」

大天「とりあえず、行ってみよっか!」

遠城「うむ、そうだな」

平並「あれ? 【自然エリア】って、多分あの自然ゲートの先だろ? あのゲートって開かないんじゃなかったか?」

スコット「それなら問題ない。さっき放送が終わったタイミングで、自然ゲートの上のランプが赤から緑に変わっていた」

スコットに言われ目線を自然ゲートの方に移すと、なるほど確かにランプが緑色になっていた。

大天「ってことは、通れるようになってるってことだね?」

火ノ宮「なら、早く行くぞ!」

蒼神「そうですわね。遅れたら何をされるかわかったものではありませんわ」

岩国「……」

すると、何も言わずに岩国が自然ゲートの方へと歩き始めた。

杉野「僕達も、行きましょう」

琥珀『そうだな!』

自然ゲートはすんなりと開いた。

その先は50メートルほどのまっすぐな薄暗い通路になっており、人が3人ほど並んで歩けるくらいの幅だ。

通路の先の扉が開くと、そこに広がっていたのは先ほどまで俺達がいた【宿泊エリア】とさほど変わらないような景色だった。

七原「なんか似たような景色だね」

城咲「でも、建物はまるでありませんよ?」

杉野「多分また地図の看板があるはずです。とりあえず中央まで行きましょう」

杉野の声に従って俺達16人は中央に行くと、そこにはやはり看板があった。

琥珀『どれどれ?』

http://i.imgur.com/ywZAn19.png

これが【自然エリア】か。

確かに、【宿泊エリア】に比べて露骨に自然が多い。まともな建築物は多分森の中の展望台しかないだろう。

蒼神「犯人の言っていた【メインプラザ】は……あっちですわね」

火ノ宮「おらァ! 行くぞ!」

東雲「そんな大声出さなくてもわかるって……」

火ノ宮「あァ!?」

明日川「ほら、物語は始まってるんだ。早くページをめくらないと」

琥珀『このねーちゃんさっきから何言ってんだかよく分かんねえな!』

明日川「ふっ。ボクの物語はボクだけが読めれば何も問題はないさ」

根岸「わ、わけわかんない事言ってないで早く行こうよ……」

城咲「そうです。早く行かないと、何をされるか分かりませんよ」

そして、俺達はメインプラザへと移動した。

メインプラザの奥の方には、木でできた簡易的なステージがあった。

案の定、監視カメラとモニターも。

新家「で、犯人の指示通りメインプラザに着いたけど、これからどうすればいいんだ?」

蒼神「とりあえず、次の指示を待ちましょう。すぐに次の放送が入るはずです」

平並「そうだな……」

と、放送が始まるのを待っていた俺達だったが、そこに響いた声は放送ではなかった。



「なんでメインプラザに集まるだけでこんな時間がかかるんだよ! ただでさえ時間が押してるってのに!」


さっき聞いた、あの声だ。

全身を不快感が駆け巡る。

「それじゃ、集会をはじめまーーーす!」

その声と共に、ステージ上に白と黒に塗り分けられたぬいぐるみが飛び出した。

そのぬいぐるみは、とても見覚えのある顔をしていた。

根岸「こ、今度はなんなんだよぉ!」

明日川「ちょっと待ってくれ。今、どこから飛び出したんだ?」

火ノ宮「んな事どうでもいい! このクマは……こいつは!」

平並「教科書に載っていた、絶望の象徴じゃないか!」

新家「嘘だろ……嘘だろ、こんなの!」

七原「そんな、だって、【超高校級の絶望】はもうとっくの昔に滅んだんじゃ……!」

騒然とする俺達を尻目に、そのぬいぐるみはてとてとと歩いてステージの中央に歩いてきた。

「あーあーあー、やっぱりこうなるよね。まあいいよ。自己紹介から始めるね」



高校生なら、いや、小学生でも知ってる世界の常識。

歴史の教科書を開けば、縄文時代よりも先に習うはずの絶望的な事件。



かつて世界を絶望に叩き落とした、その象徴が、俺達の目の前にいた。

確か名前は――





「ボクはモノクマ! この【少年少女ゼツボウの家】の施設長なのだ!」


平並「モノ……クマ……」

根岸「な、なんでコイツがこんなところに……!」

七原「だ、大丈夫だよ! きっと、希望ヶ空学園の用意したレクリエーションかなんかだよ」

新家「レクリエーションにしたって度が過ぎてるだろ!」

動揺が、どよめきが、恐怖が、俺達の間に広がっていく。

蒼神「まあ、まずドッキリなんかではないでしょうね。こんな悪趣味なドッキリ、許されるわけがありませんわ」

モノクマ「おっ、さすが蒼神さんは分かってるね! そうだよ、ドッキリなんかじゃないよ!」

明日川「……【閉鎖空間】……【超高校級の生徒達】……そして【モノクマ】……」

そんな中、明日川が、なにやらぶつぶつと呟いている。

モノクマ「っていうか、ほら! 時間押してるんだから早くやることやっちゃうよ!」

平並「時間が押してる?」

モノクマ「オマエのせいだよオマエの!」

そう言ってモノクマが指差したのは、紛れもなく俺だった。

平並「お、俺のせい?」

モノクマ「そうだよ! オマエがいつまでたっても起きないから自己紹介を何回もする羽目になって時間がかかったんだよ! 反省しとけ!」

平並「は、反省って……起きなかったのは俺のせいじゃないだろ」

モノクマ「口答えをするな!」

杉野「それで? 僕達を集めたのは自己紹介をするためですか?」

モノクマ「そんなわけないじゃん」

杉野「……まあ、そうですよね」

モノクマ「じゃあ、そろそろ本題に入るよ」

平並「本題?」

モノクマ「えー、知っての通り、オマエラは全員希望ヶ空学園の20期生としてスカウトされました」

蒼神「そうですわね」

モノクマ「そんなオマエラは世界の希望! ……なのですが、世界の希望となるにはオマエラは未熟すぎるとボクは思うのです」

新家「未熟って……」

火ノ宮「あんだとコラァ!」

モノクマ「というわけで、急遽オマエラをこの【少年少女ゼツボウの家】に招待し、強化合宿を開催することに致しました!」

根岸「きょ、強化合宿……?」

モノクマ「そう! ここで共同生活を送る事によってオマエラのたるんだ精神を叩き直し、世界の希望として活躍できるよう成長してもらうのです!」

明日川「……」

スコット「話だけ聞けば、随分と立派なことだな」

琥珀『モノクマが絡んでる時点でやな予感しかしねーけどな!』

モノクマ「そんなこと言わないでよ! これはオマエラのための強化合宿なんだから!」

岩国「……」

大天「……期限は? 期限はどうなってるの?」

古池「……そうだ、期限だ。二泊三日か? 一週間か? まさか一ヶ月ってことは無いと思うが」

モノクマ「何言ってんの? 強化合宿なんだから、オマエラの成長がみられるまでに決まってるでしょ?」

七原「え?」

モノクマ「つまり、こういう事だよ」

火ノ宮「オイ、まさか……!」



モノクマ「オマエラは、ボクが成長したとみなさない限り、この施設から一歩も出られませーん!!!」



平並「……は?」

新家「なんだよそれ!! 成長したかどうかって……そんなのお前の気分次第じゃないか!」

東雲「じゃ、じゃあ、アタシ達、当分ここから出られない……ってこと?」

火ノ宮「当分どころじゃねえ……【絶望の象徴】であるモノクマのことだ! 脱出の権限がモノクマにある以上、一生オレ達をここに閉じ込める気かもしれねえ!」

根岸「い、いやだ……! ま、まだやり残したことがたくさんあるのに……!」

古池「帰せよ……とっととここから出せよ!!」

モノクマ「安心してよ! 誰でも分かるようなはっきりとした『基準』を決めたから!」

遠城「基準じゃと?」

モノクマ「そう! この条件を満たした人物を、ボクは『一人前に成長した』と認めることにします」

平並「つまり、その条件を満たせば外に出られるってことか?」

モノクマ「ま、そういうことだね。 その条件は――」

すると、明日川が急にはっとした表情になった。

明日川「その条件って……!!」






モノクマ「この中の誰かを、殺す事だよ」




……は?

この中の誰かを、殺す?

明日川「やっぱりそうか……!」

……やっぱり?

平並「おい、明日川。やっぱりって、何を……」

杉野「殺すって……どういう意味ですか!」

明日川に言葉の真意を聞こうとしたが、それよりも先に杉野がモノクマに対して啖呵を切っていた。

モノクマ「どういう意味って、そのまんまだけど? 刺殺爆殺毒殺殴殺銃殺絞殺なんでもござれ! とにかく、オマエラ16人のなかの誰かを殺せばここから出してやるって言ってんの!」

新家「どうしてそれが『成長した』ってことになるんだよ!」

モノクマ「いい? オマエラはここで共同生活を過ごすうちに少なからず絆とかいうものを強めていくと思うんだよ。悲しいことにね」

七原「悲しいことって……」

モノクマ「でもね! そんなもんは偽物なの! まやかしなの! 幻想なの! 薄っぺらい偽りの絆をぶっ壊してこそ、人は『成長した』と言えるのです!」

根岸「む、無茶苦茶だ……!」

モノクマ「別に殺さなくてもいいんだよ? オマエラがここで一生を過ごすことになるだけだし」

杉野「ですが、食料は? 冷蔵庫には一週間分程度しかなかったと思いますが」

モノクマ「そこは心配しなくてもいいよ! 食料も含め、オマエラがここで生活する上では何の不自由もさせないから!」

岩国「……」

…………。

沈黙が俺達を支配する。

その沈黙を破ったのは、大天だった。

大天「ふざけないでよ!!」

モノクマ「ん? どうしたの?」

大天「私を早く外に出してよ! 私は……こんなところにいる暇なんてないんだから!」

モノクマ「だから、そのためには誰かを殺せって言ってんの! 理解力ないねー。これだからオマエラは未熟なんだよ!」

ステージを降りて、こちらの方へ歩いてくるモノクマ。

大天「そんなの、いいから、早く……!」

……大天の様子がおかしい。

平並「お、おい、一旦落ち着けって!」

大天「落ち着けるわけないでしょ!」

すると、モノクマは大天の目の前に来て、こういった。

モノクマ「まあ、落ち着けないのも分かるけどねー。そんなんだとあっさり死んじゃうよ? 君のお姉さんみたいに」


ガッ!!!


その瞬間、大天はモノクマを蹴り飛ばしていた。

大天「……なんで、知ってるの!!!!」

大きく飛んで向こうの草むらに転がったモノクマはムクリと起き上った。

モノクマ「そんなことはどうでもいいんだよ。今、オマエ、ボクの事蹴ったよね?」

大天「蹴ったからなんだっていうの!」

モノクマ「『施設長への暴力の一切を禁じる』……規則違反は、死刑だよ」

平並「……は?」

モノクマ「死ね」

その言葉と共に、大天の前方の地面に穴が開き、そこから無数の槍が飛び出した。

杉野「大天さん!」

大天「……え?」

その幾重の槍は、大天を大きく貫いていた……ように見えたが、よく見ればその槍は大天の体を数ミリ単位で避けていた。

目の前で止まった槍に腰を抜かし、その場にへたり込む大天。

モノクマ「とまあ、本来ならここで大天さんには死んでもらうところだったんだけど、まだ規則も知らせてないし、こっちの落ち度ってことで許してあげるよ。無駄に人数減らしたくないしね」

大天「……今、私……」

飄々とした態度のモノクマ。

けれど、もうわかった。

これは、冗談なんかじゃない。

下手をすれば、死ぬ。

は、はは……なんだよ、これ。

いきなりこんなところに誘拐されたと思ったら、監禁されて、ココから出たかったら誰かを殺せって?

馬鹿げてる。こんなの、現実なわけがない。

でも、まさしく今、モノクマは大天を殺そうとした。

それは、間違いない。

平並「……」

火ノ宮「一つききてえことがあんだけどよォ」

モノクマ「何?」

火ノ宮「誰かを殺せばってのは、たとえば今ここで誰かを殴り殺したらオレはここから出られんのか?」

新家「はぁ!?」

杉野「火ノ宮君、一体何を……!」

火ノ宮「例えばの話だ、黙ってろ! 条件や基準がルールとしてあんなら、そのルールは確認しとかねえとダメだろうが!」

古池「……だからって、そんな例えはやめてくれ」

モノクマ「そんな見てて面白くない殺人は認めないよ! 詳しい規則はこれで確認しなよ!」

そう言ってモノクマは再び俺達の元に歩いてくると、俺達にあるものを手渡してきた。

これは……指輪か?

モノクマ「それ、起動してみてよ。指にはめてもはめなくてもどっちでもいいからさ」

東雲「起動って言われても……」

遠城「これは……もしや、数年前にグレープ社の開発した簡易映像投影機か」

平並「ああ、空中に画面を表示するヤツだっけ」

遠城「うむ。数十年前の文献には『未来の道具』の代名詞ともなっていたものだな。実現可能とはなったが、このサイズのものとなるとコスト面がクリアできずに一般販売はまだされていないものだったはずであるが……」

琥珀『そんな高価なもんが16個も用意されてんのか?』

根岸「そ、そんなことより……ど、どこかにスイッチが……」

七原「あ、これかな?」

探ってみると、宝石部分の側面にスイッチがあった。

それを押すと、目の前に画面が浮き出てきた。

平並「うお……」

まず、【平並 凡一】と自分の名前が表示され、その後いくつかの項目があらわれた。

モノクマ「その指輪は電子指輪『システム』って代物でね、電子生徒手帳を内蔵している上、象が踏んでも壊れないんだ。もちろん、耐火性、耐寒性、耐水性、耐圧性もバッチリだよ!」

スコット「さっき言ってた規則は、この『強化合宿のルール』か」

モノクマ「そうそう。それ、よく読んどいてね。今度はもうさっきみたいな温情はないから。読んでないから知りませんでしたーなんてのが許されるのは、受精卵までなんだよ!」

新家「それじゃ誰も許されないじゃないか……」

モノクマ「それと、『システム』はそれぞれの個室の鍵にもなってるから絶対に失くすなよ! 失くしても再発行なんてしてやらないからね! それじゃ!」

アディオス!という掛け声とともに、モノクマはどこかへと消えていった。

再び、俺達の間に流れる沈黙。

……誰かに話しかけてみよう。

誰に話しかけようか?

安価↓2【人物指定】

選択:【明日川】

平並「おい、明日川」

明日川「平並君か……まさか、こんな物語になるだなんてな」

平並「……さっき、モノクマが【成長した】って認める条件を発表した時、お前『やっぱり』って言ったよな?」

明日川「ああ、そのように発言したことは記憶している」

平並「あれ、どういう意味だ。明日川は、この状況に心当たりがあるのか?」

明日川「心当たりか……まあ、あると言えばあるし、無いと言えば無いかな」

平並「はあ?」

明日川「ボク達が誘拐された理由までは分からない……。けれど、犯人が何をさせようとしているのかは大体分かる」

平並「どうして?」

明日川「実は、犯人は過去にあったある事件を模倣しているんだ」

平並「模倣って……前にこんな集団誘拐が、誰かを殺す事を強要された事件があるってのか?」

明日川「その通りだ。しかも、犯人はまだ隠していることがある」

平並「隠していること?」

明日川「ああ。そのことも含めて、もうしばらくしたら皆に話をするつもりさ」

平並「……わかった」

気が付けば、まわりにどよめきや焦りの声が広まっていた。

それを止めたのは、杉野だった。

杉野「……とにかく、この自然エリアも先ほどと同じく調査しませんか?」

蒼神「そうですわね。 調べ終わったら食事スペースに集合、という事で」

杉野「ええ……。まあ、【自然エリア】はあまり調べるところもなさそうなので、全部回っても構いませんが」

根岸「ちょ、調査を始める前に……さ、さっきの『規則』を確認しておかない……?」

スコット「そうだな。知らず知らずのうちに規則違反、なんてこともあるかもしれない。そうなったら今度こそ命は無いぞ」

自然と、俺達の視線が大天へと集まる。

大天「……」

……確認してみよう。

『システム』を起動し、『強化合宿のルール』の項目を選択する。

すると、そこにいくつもの文章が表示された。

=============================

【強化合宿のルール】

規則1、生徒達は【少年少女ゼツボウの家】内だけで共同生活を行う。期限は無い。

規則2、【成長完了】と認定された生徒は強化合宿終了となり、この施設からの脱出が可能となる。これを、【卒業】と呼ぶ。

規則3、夜10時から朝7時までを【夜時間】とする。夜時間には【食事スペース】及び【野外炊さん場】は施錠され、立ち入りを禁じる。

規則4、就寝は宿泊棟に設けられた個室でのみ可能とする。その他の場所での故意の就寝は居眠りとみなし、禁じる。

規則5、ポイ捨てをはじめとする、施設内の自然を汚すような行為は全面的に禁じる。

規則6、この施設を含むあらゆる事柄について調べるのは自由とする。特に行動に制限は課せられないが、鍵のかかった扉、施設や監視カメラの破壊を禁じる。

規則7、施設長こと【モノクマ】への暴力の一切を禁じる。

規則8、生徒の誰かを殺したクロは【成長完了】と認定され、【卒業】となるが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけない。

規則9、規則は順次追加されることがある。

=============================

これが規則……。

火ノ宮「んー?」

蒼神「どうしましたか、火ノ宮君?」

火ノ宮「他の規則はとりあえず置いておくにしてもよお……さっき、モノクマが言ってたのは規則8の事だよな?」

規則8って、『生徒の誰かを殺したクロは【成長完了】と認定され、【卒業】となるが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけない。』のことか。

火ノ宮「ごちゃごちゃ回りくどく書いてるが、前半はさっきモノクマが言ってた通り『誰かを殺せばここから出られる』ってことだ」

城咲「そのようですね」

火ノ宮「問題は後半だ……『自分がクロだと他の生徒に知られてはいけない』ってのは、どうやって判断するんだ?」

七原「……よくわからないね」

火ノ宮「ここで誰かをぶっ殺したところで、クロがオレだってのは丸わかりだから、校則違反になっちまう……モノクマが言いたかったのはこういうことなのか?」

火ノ宮の疑問に対し、声を上げたのは明日川だった。

明日川「……その点について、ボクから一つ小噺を語らせてもらおう」

火ノ宮「あぁん?」

明日川「君達は、50年前の【人類史上最大最悪の絶望的事件】についてどれほど知っている?」

……なぜここでその名前が?

いや、モノクマがあらわれたのだからまったくの無関係とも思わないけど。

火ノ宮「それがどうしたってんだよ!」

明日川「焦ってページをめくって読み流してくれるな。これは、大事な質問なんだ」

杉野「どれほど、といわれても……教科書で習う程度の事ですよ」

スコット「希望ヶ峰学園で起きた事件を発端として、世界中を絶望が支配し暴動、テロが鳴りやまなかった……という程度は常識として知っているが」

その程度なら俺も知っている。

明日川「……なら、その希望ヶ峰学園の超高校級の生徒達15名が、希望ヶ峰学園の中に閉じ込められてコロシアイを強要されたことは?」

新家「なっ!?」

……それが、さっき言っていた事件か。

火ノ宮「んな話、聞いたことねえぞ!」

明日川「当然だろうね。そのことを記した図書はもれなく発禁処分や回収対象になっているし、インターネット上でも固くその情報は閉ざされている」

古池「……じゃあ、どうしてお前は知ってるんだ」

明日川「幸いボクの通っていた高校の図書館は発禁図書も保管していたからね、目を通していたんだ」

琥珀『その図書館は大丈夫なのか? 色々と』

露草「ダメなんじゃないかな?」

根岸「お、お前……そうやって変な事を言って……お、俺達を混乱させようとしてるんじゃ……」

大天「で、でも、私も聞いたことあるよ、その話……あくまでも噂だけど」

遠城「信憑性はゼロではない、ということかのう」

根岸「……じゃ、じゃあ、どういうことなんだよ……・そ、その話」

明日川「この点に関してボクから説明することは何もないよ。約50年前、閉鎖空間に閉じ込められて生徒間でコロシアイを強要されていた事実があるということさ」

城咲「お待ちください。その状況は、まるで……!」

明日川「そう。この状況とまるで同じ……つまり、この犯人は、人数と場所の差異はあれど、50年前の再現をしているのさ」

大天「そんな……どうして……・」

明日川「そこまではボクにも分からないさ。犯人の目的までは、ね」

杉野「……その口ぶりから察するに、明日川さんは八番目の規則の詳細をご存知なのですね?」

明日川「そうだ。その規則を補足するルール。それは――」






明日川「【学級裁判】だ」




平並「学級……裁判……」

蒼神「それはどういうルールなのですか?」

明日川「……ボクが説明してもいいけど、正確なルールを把握するために、モノクマから聞いた方が良いだろう」

大天「アイツを呼ぶの!?」

杉野「確かに、万全を期するためならその方が良いかもしれませんね」

火ノ宮「というわけだァ! 出てこいモノクマァ!」

すると、またしてもモノクマはステージ上へと飛び出した。

モノクマ「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!!!」

根岸「ほ、ホントに出てきた……」

城咲「呼べばきてくださるのですね」

モノクマ「まあ今までの話は聞いてたから答えるけどさ、はあ……明日川さん、そのルール知ってたんだね。せっかく初代に倣って隠して行こうと思ったんだけどなあ……」

平並「ってことは、明日川の言ってたことは本当なのか」

モノクマ「そうだよ!」

モノクマは、そう言ってあっさりと認めた。

学級裁判の存在を。

モノクマ「じゃあ説明するけど、先に【強化合宿のルール】を追加するからそっちを確認してね」

ルールの追加……もう一度規則を確認してみよう。

すると、確かに規則が増えていた。

増えた規則は……。


=======================

【強化合宿のルール】

~前略~

規則8、生徒の誰かを殺したクロは【成長完了】と認定され、【卒業】となるが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけない。

規則9、規則は順次追加されることがある。

規則10、生徒間で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、生徒全員参加が義務付けられる学級裁判が行われる。

規則11、学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけが処刑される。

規則12、学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロだけが【卒業】となり、残りの生徒は全員処刑される。

=======================


……【処刑】?

そこに並んでいたのは、およそ日常生活では見かけないような文字だった。

周りの生徒に目をやると、ほとんどの生徒があからさまに動揺を見せていた。

根岸「こ、これ……」

モノクマ「はい! じゃあ説明します!」

モノクマ「規則8に書いてある通り、殺人を犯した生徒は、卒業となりますが、それは、自分がクロでないと周りの生徒を欺くことが条件です!」

新家「欺く……」

モノクマ「クロがしっかりと他の生徒達を欺けたのか? それを判定するのが【学級裁判】なのです!」

モノクマ「死体が発見された際、一定時間の捜査時間を設けます。その後、学級裁判にて、『殺人を犯したクロは誰なのか?』をオマエラに議論してもらいます」

モノクマ「最終的に、クロを多数決で決定し、その答えが正解ならば、クロだけが処刑。不正解なら、クロ以外の全員が処刑となります!」

東雲「処刑って、どういうことなの?」

モノクマ「そのままだよ。電気でビリビリ、毒ガスモクモク、炎でメラメラ……野球ボールでフルボッコでもいいし、プレス機でぺしゃんこ! ってのも譲れないね!」

根岸「そ、そんな……」

火ノ宮「……要するに、【卒業】するためには自分以外の全員を殺さなきゃならねえってことか」

モノクマ「そう! さっすが火ノ宮クン! 冴えてるねえ!」

火ノ宮「うるせえ! クソみたいなルールじゃねえか!」

モノクマ「はぅあ!?」

火ノ宮「ルールとして定められてる以上オレはそれに従うが……人殺しなんかするかよ!」

モノクマ「あー、そうやってもう『自分はクロになりませんよー』ってアピールか。うまいねえ~」

火ノ宮「アァン!? んな訳ねえだろ!!」

杉野「火ノ宮君、挑発に乗るのは控えましょう」

モノクマ「杉野クンはそうやって常識人ぶるんだねえ……」

杉野「……何が言いたいんですか」

モノクマ「いや別に? じゃあ、【学級裁判】の説明も済んだし、ボクは今度こそ……あ、そうだ」

もうどこかに出ていこうか、という雰囲気を見せ歩いていたモノクマは、突如ピタッと動きを止め、くるりと方向を変えた。

その視線の先にいたのは……明日川?




モノクマ「食らえ! 電気ショック!」



バチィッ!!!

明日川「わぁッ!!!」


その瞬間、明日川の体がびくりとはね、そしてその場に倒れこんだ。

平並「お、おい!! 明日川!!」

すぐに明日川の元へ駆け寄る。

明日川はピクリとも動かないが、一応息はあるようだ。

火ノ宮「モノクマァ! 明日川に何しやがった!! 明日川はまだ何も規則違反をしてねえだろうが!!」

モノクマ「大丈夫、明日川さんは別に死んじゃいないから。さっきも言ったでしょ? 無駄に人数減らしたくないって。それに……もし規則違反をしたらこの程度じゃ済まさないよ」

平並「……ッ!!」

蒼神「では、明日川さんに何をなさったのですか?」

モノクマ「明日川さんはこっちにとって都合の悪いことをたくさん覚えてそうだったからね。ちょっと記憶を消させてもらったんだよ」

根岸「き、記憶を……!?」

新家「そんなこと、できるのか!?」

モノクマ「できるよ」

モノクマは、こともなげにそう言った。

東雲「……」

モノクマ「明日川さんの記憶はちゃんと必要な所だけ消したから、それ以外のところはきちんと覚えてるよ。それじゃあね!」

その言葉を残して、今度こそモノクマはいなくなった。



…………。

……………………。


俺達の間に沈黙が流れるのはこれで何度目だろうか。

コロシアイ……学級裁判……処刑……記憶消去……。

言葉だけ見れば、すべてが現実味を帯びていないそれらは、紛れもない現実として、俺の心に深く刻まれていた。

岩国「……」

誰も動こうとしていなかった中、岩国は無言でメインプラザの方へと歩き出した。

蒼神「あら、岩国さん、どちらへ行かれるんですか?」

岩国「……この【自然エリア】の探索だ。こんなところでとどまっていても、何も始まらない」

蒼神「それは……そうですわね」

岩国「今すべきなのは、モノクマ……犯人に対抗するための情報の入手だ。人殺し? バカバカしい。そんなくだらない遊びに付き合う道理など無い」

……それは、その通りだ。

その通りだけど。

岩国「もっとも、この中の一人くらいは犯人の妄言に乗って殺人を企てているかもしれないがな」

そうなのだ。


こんなくだらないルールに則る必要はない。

殺人を犯さなくても、ここで過ごすことを選択すればそれで良いし、もしかしたら別の方法で脱出できる可能性もある。




けれど。


けれども。




ここにいる16人の内、誰か一人でも、この絶望に耐え切れなくなったら、その標的となるのは俺かもしれない。







そして。


最初にこの絶望に耐え切れなくなるのは、【超高校級の凡人】である、この俺なのかもしれない。


その可能性を、俺は否定することができなかった。





PROLOGUE:【超高校級の凡人は超高校級の夢を見るか?】 END


【生き残りメンバー】 16人
◎平並 凡一
◎スコット・ブラウニング
◎根岸 章
◎古池 河彦
◎杉野 悠輔
◎遠城 冬真
◎火ノ宮 範太
◎新家 柱
◎七原 菜々香
◎明日川 棗
◎東雲 瑞樹
◎蒼神 紫苑
◎岩国 琴刃
◎城咲 かなた
◎大天 翔
◎露草 翡翠



     GET!!  【白紙のネームプレート】

『何者にもなれない未熟者の証。一人前を目指して頑張ろう。』


今回の投下は以上です。
なんとかプロローグが終わりました。

感想など書いていただけると励みになります。



生徒が全員出たので、生徒一覧を貼っておきます。
http://i.imgur.com/6NgmbHM.png


次回はおそらく金曜日になると思います。
お疲れ様でした。

今夜10時から再開します。


   ああ絶望は
  ――――――┐
           │凡
           │人
           |に    CHAPTER1   【(非)日常編】
           │微
           |笑       
           |む

ついさっきまで、全員の敵意はモノクマに向いていた。

けれど、岩国の発言により、その意識は互いへと移り変わった。

俺達の視線が、信頼が、疑念が交錯する。

岩国「……食事スペースでの報告会には参加するが、調査は一人でさせてもらう」

そんな中、岩国がそう言ってメインプラザを去ってしまった。

次に口を開いたのは蒼神だった。

蒼神「みなさん、互いに疑いあうのは仕方ありません。ここで、100%相手を信用するのは難しいでしょう」

蒼神「……ですが、岩国さんの言うとおり、いつまでも疑いあってここにとどまっても何も始まりません。頭を冷やす意味も込めて、まずは、この【自然エリア】を調査しましょう」

七原「……そうだね」

根岸「で、でも……こ、この中の誰かが殺人を企んでるかもしれないなら、さ、さっきみたいに誰かと一緒に行動なんてしないぞ……」

杉野「根岸君、それは逆ですよ」

根岸「ぎゃ、逆……?」

杉野「100%信用できないなら、逆に一緒に行動すべきです。二人きりなら確かに危険に感じるかもしれませんが、複数人なら互いを監視することが出来て、ぐっとリスクが減るはずです」

火ノ宮「もしよからぬことを考えてる奴がいるんなら、全員バラバラに歩き回る方があぶねーしな」

杉野「そう言う事です。では、こうしましょう」

杉野「まだ目を覚まさない明日川さんの元に残る人を二名。もう岩国さんは行ってしまわれたのでどうしようもありませんが、残った12人は、4人ずつ三組に分かれましょう」

根岸「……そ、それなら……」

琥珀『ここに残る奴は二人っきりになるけど、他の連中のアリバイがあるんだから変な気もおこさねーだろうしな!』

杉野「何かほかに意見は……なさそうですね」

蒼神「では、ここに残る人を決めましょう。立候補なさる方はいらっしゃいますか?」

安価↓2
【1、ここに残って明日川が目を覚ますのを待つ(一緒に残る人を一人選択)】
【2、4人組を作って調査に行く(三人選択)】

〔なお、1を選んだ場合は報告会で【自然エリア】の調査を聞くことになります。〕

選択:【1、ここに残って明日川が目を覚ますのを待つ(根岸)】

平並「じゃあ、俺はここに残るよ。……明日川の記憶のことも気になるしな」

そう言って俺が手を挙げると、同時に根岸も手を挙げていた。

根岸「ぼ、ぼくもここに残る……」

蒼神「では、平並君と根岸君はここに残るということでお願いします」

杉野「あとは適当に分かれましょうか」

その後、てきぱきとした蒼神の仕切で皆は三組に分かれた。

蒼神「では、お二方。明日川さんが目を覚ましたら、少し安静にしてから先に食事スペースに移動していてください」

平並「ああ、分かったよ」

火ノ宮「じゃあオレ達はとっとと行くぞ!」

琥珀『言われなくても分かってるって!』

そして、メインプラザには俺と根岸、そして明日川だけが残された。

平並「……それにしても意外だな」

根岸「な、何がだよ……」

平並「いや、さっきの話し方だと何となく根岸は4人組になる方に行くと思ったから」

根岸「べ、別に……ここの事は気になるけど……よ、4人になると気を配る方が面倒になりそうだし……」

根岸「こ、ここに残れば気を付ける相手は、ひ、一人だけですむから……」

平並「……やっぱり、信用されてないのか」

根岸「し、信用するとかしないとかじゃなくて……こ、こわいだろ……こ、こんな状況で、み、みんながどう動くかなんてわからないんだし……お、お前もぼくの事、う、疑ってるんだろう……!」

平並「……まあ、完全に否定は……できない」

俺も、周りの皆を完全無欠に安全だ、なんて断言することは出来ない。

なにより、俺自身の事も。

根岸「……い、良いよ別に……」

根岸「そ、それに、それだけが理由じゃないし……」

平並「というと?」

根岸「お、おまえと一緒で、ぼ、ぼくも気になって仕方ないんだ……も、モノクマがやった記憶消去が……」

平並「……そうだよな」

根岸「あ、ああまできっぱりと言い切ってたから、き、記憶消去は多分出来るんだと思う……そ、その方法も気になるけど、や、やっぱりその内容の方が知りたいんだ」

根岸「こ、このドームのことは大体、よ、予想がつくし……だ、だったら、ここに残って明日川さんから話を聞いた方が良いと思ったんだ」

平並「なるほどな……」

そうだ。

モノクマが明日川の記憶から消したかったもの……それはきっと、過去のコロシアイの顛末だ。

平並「明日川が本で読んだ内容が、俺達に知られるとまずかったってことか」

根岸「た、多分ね……」

……。

平並「どちらにしても、明日川が起きてみないと判断できないな」

根岸「お、起きても分からないと思うけどね……」

そして、数分が経ったころ、明日川が目を覚ました。

明日川「……ううん……」

平並「明日川!」

根岸「き、気が付いたのかな……」

明日川「ここは……」

ゆっくりと体を起き上がらせる明日川。

平並「明日川、大丈夫か!」

明日川「平並君、ボクは一体何を……」

根岸「ね、ねえ、どこまで覚えてる……?」

明日川「確か、モノクマから学級裁判の説明を受けて、それが終わって急にこっちを向いたと思ったらバチッって音がした……そこまでだな」

平並「そうか……」

どうやら直前の記憶まではきちんと覚えているらしい。

ということは、やはりモノクマはピンポイントで記憶消去を行ったのか?

平並「あの後、モノクマはあの電撃でお前から記憶を消したと言っていた」

明日川「ボクの記憶を……?」

根岸「た、多分過去にあったコロシアイの話だと思うんだけど……ど、どうかな……?」

明日川「ちょっと待ってくれ……」

そして、手を顎に当て考え込む明日川。

すると、

明日川「う、嘘だ、そんな、まさか……まさか!」

と、急に明日川が声を上げ震え始めた。

平並「明日川、どうしたんだ!」

明日川「……思い出せない」

根岸「……!」

明日川「思い出せないんだ! 確かに読んだ、あの本の内容が!」

平並「……」

明日川「表紙は覚えてる。タイトルも覚えてる。確実に、あのコロシアイの内容が記された本だったはずなんだ。なのに……なのに……なんで中身が何も思い出せないんだ!!」

平並「……やっぱり、モノクマに消されたのか」

明日川「そんな、ボクが、ボクが思い出せないなんて、あり得ない、あり得ないあり得ない!」

根岸「だ、大丈夫……?」

明日川「大丈夫な訳ないだろう! ボクが、ボクが思い出せないことがあるなんて……!」

明日川「読んだ……ちゃんと読んだんだ……」

頭を抱えて体を丸め、絞り出すように声を出す明日川。

平並「……根岸、少しそっとしておいてあげよう」

根岸「……そうだね」

数分後、震えの止まった明日川に声をかける。

平並「落ち着いたか?」

明日川「ああ……とりあえずは……」

その声に、さっきまでのような勢いは無かった。

明日川「正直のところはまだ混乱しているが……いつまでもこうしているわけにもいかないからな……忘れているのも一時的なショックの可能性がある以上、このことについては後回しにするよ」

平並「……わかった」

明日川「それで、二人とも。他の皆は何をしているんだい?」

根岸「さ、三組に分かれてこの【自然エリア】の調査をしてるよ……」

明日川「ふむ、調査か……」

平並「それで、後で食事スペースで報告会をするんだけど、俺達は直接食事スペースに向かう事になってる」

明日川「……分かった」

根岸「も、もう歩ける……?」

明日川「ああ。問題ない……君達を心配させてしまったね。すまなかった」

根岸「お、お前が謝る必要はないだろ……」

平並「悪いのはモノクマなんだからな」

そう、悪いのは、モノクマだ。

自然エリアから宿泊エリアに向かうゲートは、【宿泊ゲート】となっていた。

俺達三人は宿泊ゲートを抜けて自然エリアの食事スペースへと向かった。

食事スペースの中では、既に岩国がイスのひとつに座っていた。

岩国「お前達か」

根岸「い、岩国さん、調査は終わった……?」

岩国「終わったから、ここにいるんだ。考えろ、化学者」

根岸「……わ、分かってたよ……わ、分かった上で聞いただけだろ……そ、そこまで言うことないじゃないか……」

平並「まあ落ち着いて、根岸……」

被害妄想が暴走しそうになる根岸をなだめていると、岩国が立ち上がってこちらへと歩いてきた。

岩国「おい、凡人。さっきこれを渡されたぞ」

そう言って岩国が俺に渡してきたのはカード?

平並「渡されたって、誰にだ?」

岩国「あのぬいぐるみだ。さっき渡し忘れたから、と言っていたな」

根岸「そ、それで、なんなんだ、そのカード……」

岩国「ダストルームのカードキーだ」

平並「ダストルーム?」

それって、確か……。

明日川「それは、宿泊棟にあったあの部屋の事か?」

そうだ、宿泊棟だ。

岩国「ああ。お前達がダストルームを見たかは知らないが、それはあの部屋にある焼却炉を作動させるためのカードキーだ」

平並「焼却炉……」

あとで確認しておこう。

岩国「さっき確認してきたが、そのカードキーは問題なく使えたぞ」

明日川「もう調べてきたのかい?」

岩国「当然。不確定な情報はすぐに確認すべきだからな」

平並「そうか……ということは個室も?」

岩国「ああ、きちんとこの指輪で開いたな」

根岸「ちゃ、ちゃんと動くんだな……」

岩国「それ以上はお前達で勝手に調べろ。じゃあな」

そう言って、岩国はイスの方へ戻ろうとする。

平並「ちょ、ちょっと待て岩国。なんでこのカードキーを俺に?」

岩国「あのぬいぐるみが言うには、そのカードキーは一枚しかないそうだ。面倒事を頼まれたくないから、お前達が持っていろ」

平並「なるほどな」

確かに、これを持っていると誰かがゴミを燃やすのにいちいち駆り出されることになるからな。

岩国は持っているのはいやだろう。

とりあえずカードキーは俺が持っていることになった。

しばらくすると、他の皆も続々と食事スペースに集まってきた。

杉野「明日川さん、もう大丈夫なのですか?」

明日川「……なんとか、大丈夫さ」

杉野「……そうですか。記憶の方は?」

平並「それについては、あとで俺から話す。だいぶショックを受けてるみたいだからな」

杉野「分かりました」

そうしているうちに、どうやら全員集まったみたいだ。

蒼神「では、みなさん揃ったようですので、報告会とまいりましょうか」

蒼神「とりあえずわたくしが進行させていただきますが……よろしいですか?」

一応確認を取っているけど、蒼神は【超高校級の生徒会長】だ。

こういった司会をするにあたって反論のある人はいないだろう。

蒼神「それでは、まずはこの【宿泊エリア】の報告からお願いします」

皆が宿泊エリアを調べたのは、俺が皆に自己紹介をしているときだ。

殆どの人は一つの施設しか見ていないけど、俺と火ノ宮は自己紹介の為に一通り見ており、その報告もすでに知っているものだった。

蒼神「では、次に自然エリアの報告ですわ。平並君達の為に、誰かお願いしますわ」

火ノ宮「じゃあ、まずはオレがやらせてもらうぜ」

火ノ宮「メインプラザのすぐ隣にあった【営火場】だが、まあ簡単に言えばキャンプファイヤーのための場所だな」

平並「キャンプファイヤー、か」

火ノ宮「あ? しらねーのか?」

平並「し、知ってる知ってる。続けてくれ、火ノ宮」

火ノ宮「ならいいけどよ。そうやって、大きな火をくべられるところが三つあった。まあここはそれ以上言う事はねえな」

根岸「え、営火場の火も野外炊さん場と同じで、が、ガスが通ってるのか……?」

火ノ宮「あ? 通ってなかったぜ。ちゃんと燃料も用意しなきゃダメだな、ありゃ」

根岸「……そ、そうか」

杉野「では、次は僕が。【自然エリア】には宿泊ゲートともう一つのゲートがありましたが、そのもう一つのゲートは開きませんでした」

明日川「つまり、ボク達が生活できるのは、【宿泊エリア】と【自然エリア】の二つだけ、という事で大丈夫かな?」

杉野「そう言う事です。そして、その二つのゲートのすぐ近くから、森の中に入れる道がありました。その道はどちらも森の中の展望台へとつながっていましたよ」

平並「展望台、か」

杉野「ええ。ドームの中とは言え、見晴らしはそれなりのものでした。展望台にはベンチや掃除用具入れなどがありましたね」

平並「……そうか」

報告はありがたいけど、一応後で確認しておいた方がいいかもしれないな。

杉野「【自然エリア】で報告すべき場所はもうありませんが、一つ注意事項を」

根岸「ちゅ、注意事項……な、なんだよ」

杉野「【自然エリア】の森に物を捨てるのはポイ捨てになるので規則違反になることは推測できるでしょうが、故意に湖に入り汚れを落とすのも『自然を汚す』、とのことで規則違反になるようです」

平並「規則違反か……わかった。気を付けるよ」

蒼神「報告は以上ですか?」

杉野「ええ」

平並「あ、そうだ。俺から一つある」

蒼神「では、平並君お願いしますわ」

平並「ああ。ちょっとこれを見てくれ」

そう言って皆に見せるのは、さっき岩国からもらったカードキーだ。

七原「それは?」

平並「モノクマからもらったものなんだけど、宿泊棟のダストルームにある焼却炉のカードキーになっている……らしい」

火ノ宮「らしいって、なんだァ! まだ確認してねえのか!」

平並「あー……モノクマからもらったのは、実は岩国なんだ。でも、焼却炉が作動するのは岩国が確認してる」

火ノ宮「ふん……そうかよ」

平並「それで、このカードキーは一枚しかないんだけど、これは誰がもっておくべきだろうかと思ったんだ」

大天「焼却炉の前に置いておくのはダメなの?」

平並「……それも考えたんだけど……」

普通の状況だったら、それが一番わかりやすく、問題もない。

無いのだけど……。

琥珀『そうすると、誰でも簡単に証拠隠滅が出来ちまうな!』

明日川「もし返り血を浴びてしまっても、服ごと燃やしてしまえばあとには何も残らないからね」

大天「……そっか」

この疑念渦巻く中、そうして焼却炉がだれでも使えるようにしておくのは、非常にまずい。

七原「ま、待ってよ! そんな、コロシアイが起こる前提みたいな考え方は……!」

根岸「で、でも、絶対に起こらないなんて確証もないだろ……!」

杉野「……七原さん。気持ちは分かりますが、少しでも、殺人の起こりやすい状況は避けていくべきです」

琥珀『逆に言えば、殺しやすい状況になれば誰かが事件を起こすかもしれねえしな!』

七原「……わかった」

遠城「……それで? 結局、どうするのであるか?」

蒼神「理想だけを言えば、誰か一人が持っているのが一番でしょう」

東雲「でも、ソイツが人を殺したら? 証拠隠滅が簡単にできちゃうんじゃない?」

蒼神「それでも、誰もがいつでも使える状況よりはよっぽどましですわ」

東雲「……」

杉野「……では、とりあえず当面の間、誰かに持っていてもらいましょうか。せっかくだから、平並君、あなたが決めてください」

平並「俺が!?」

杉野「ええ。あなたが思う、一番安全そうな人、で構いませんので。ただし、その人にはみなさん深い注意を払うかと思いますが」

平並「……じゃあ……」

安価↓2【カードキーを渡す人物指定(自分も可)】

選択:【東雲】

平並「東雲、お前に頼んでもいいか?」

東雲「あ、アタシ!?」

平並「嫌なら強要はしないけど……」

東雲「いや、いいわ。アタシが持ってる。アタシを指名したってことは、安全そうって思ったのよね?」

平並「ああ、まあな」

東雲「なら、気分も悪くないし、アタシが持ってるわ」

平並「……ありがとう」

東雲「……ま、もしもこれで事件が起きたらアタシが疑われるんでしょうけどね。仕方ないか」

蒼神「では、カードキーの件もまとまりましたようですので、これからの事について話し合いましょうか」

根岸「これからの事?」

蒼神「ええ……とりあえず、現状ここから出られそうにない以上、ここで生活していくしかありません。幸い、食料等に関しては問題なさそうですから」

蒼神「いつになったら助けが来るのか……それはわかりませんが、私たちは待ち続けるしかありません。明日かもしれませんし、一週間後、下手をすれば一ヶ月単位という事も考えられるでしょう」

新家「そんなに待ってられるか!」

蒼神「だからと言って、誰かを殺す事だけはしてはいけません。そうなっては取り返しがつきませんし、犯人の思うつぼですわ」

新家「……そうだけどよ」

蒼神「そこで、わたくしたちが共同生活する上で、いくつかルールを決めようかと思います」

城咲「るーる、ですか?」

蒼神「ええ。といっても、『規則』のように強制されることはありませんし、破ったところで罰もありませんが」

蒼神「まず一つ、朝、みなさん全員揃って朝食を取りましょう」

根岸「ちょ、朝食を?」

蒼神「ええ。さしずめ朝食会と言った所でしょうか。別に、同じものを食べろなどとは言いませんわ。全員で、集まることが大切なのです」

岩国「……なぜそんなことをしなくてはいけないんだ」

蒼神「一つは、みなさんで足並みをそろえる為です。もう一つは……あまり言いたくないのですが、生存確認ですわ」

平並「……」

スコット「なるほどな」

蒼神「悲しいですが、おそらくわたくしたちはこの生活の中で常にいるかも分からない殺人犯の影に怯え続けることになると思います。全員揃って朝を迎えられる、というのは大きな影響がありますわ」

琥珀『それと、単純に事件が起こらなかったことの安堵も得られるってのもデカイな』

蒼神「ええ。そんなわけで、岩国さんにも参加願います。ただそこで朝食を食べるだけでもよろしいので」

岩国「……ちっ」

これは……認めてくれたのか?

蒼神「それでは、もう一つ。これはルールというよりも心がけなのですが、昼の間は出来るだけ部屋に籠らず外にいるようにいたしましょう」

根岸「な、なんでだよ……」

蒼神「もちろん、部屋の中にいたいなら構いませんわ。ただ、いつまでも狭い空間でいると息がつまりストレスもかかってしまいます」

蒼神「幸いここはドームの中とはいえ自然にあふれています。せっかくなら、外に出てみるのもいいでしょう」

火ノ宮「確かに、その方がストレスはかかりにくいかもしれねえな」

蒼神「ええ。みなさん、おそらくこの生活は長期になる可能性が高いと思います。あまり気を張らずに過ごしていきましょう」

けどまあ……こんな環境で気を張らずに過ごせってのも難しいよな……。

すいません、明日川の記憶について報告するのを忘れていたので、>>165のあたりでこんな報告があったことを脳内で追加しておいてください。


==========

平並「明日川の記憶の件だが……モノクマの言っていた通り、消去されていた」

七原「本当に記憶が……」

平並「明日川が言うには、過去のコロシアイの内容が書かれた本の内容が全く思い出せないらしい」

火ノ宮「それ以外は? 他に消えた記憶はねえのか?」

明日川「……とりあえず、今はまだ混乱中なんだ。明日の朝にははっきりすると思うから、待っててくれ」

火ノ宮「ああ」

平並「……少なくとも、電撃を食らった直前までの記憶や本のタイトルははっきりしていたから、モノクマはかなりピンポイントで記憶を消せると考えておいた方が良い」

杉野「……そうですか」

===========

蒼神「では、これにて報告会を終わりに致しましょう」

報告会が終わり、皆席を立ったり、近くの人と話したりしている。

壁……と言うより食事スペースを取り囲む柵にかかっている時計を見ると、時刻はおよそ夕方6時ごろ。

ドームの天井に広がっていた青空は、いつの間にか夕暮れの空へと変わっていた。

……衝撃的な事ばかり起きて、疲れてしまった。

お腹もすいたので、夕食代わりに冷蔵庫からバナナを二本とって、宿泊棟の方へ向かった。

少しキリが悪いですが、今回は以上です。
次の投下でようやく初日が終わるかとおもいます。

次回は土曜の夜を予定しています。
お疲れ様でした。

開始します。

《宿泊棟》

そうだ。個室に行く前に、一応ダストルームを確認しておこう。

地図で場所を確認してダストルームへと向かうと、そこには既に先客がいた。

東雲だ。

東雲「あ、平並」

平並「東雲か。……カードキー、押し付けちゃって悪かったな」

東雲「いいわ、よく考えたら、たまに燃やしに来るだけでいいんだし」

平並「そうか。助かるよ」

快諾してくれて良かった。

平並「で、その焼却炉なんだけど、かなりデカいんだな」

部屋のサイズもそれなりに大きいけど、その半分近くが焼却炉で埋まっている。

また、焼却炉の入れ口も結構なサイズがある。

大きめの段ボール位なら難なく入ってしまうだろう。

東雲「ちょっと作動させてみる?」

平並「ああ、頼む」

東雲がそばの壁についていたカードリーダーのようなものにカードキーをかざした。

すると、ピッという電子音のあとに、一瞬で焼却炉の中は炎でいっぱいになった。

平並「……火力もすごいな」

東雲「そうね……。確かに、これなら証拠品の隠滅は出来ちゃうわ」

平並「カードキーの管理は、任せたぞ」

東雲「ええ」

……何か話題でも振ってみようか。

安価↓2
【1、コロシアイ生活について】
【2、ダイバーという才能について】

選択:【2、ダイバーという才能について】

平並「そう言えば、東雲は【超高校級のダイバー】なんだよな?」

東雲「まあ、そういう風に呼ばれてはいるわね」

……なんか引っかかる言い方だな。

東雲「そんな肩書なんかより、アタシにとっては海で泳ぐってことの方が何倍も大切なのよ」

東雲「まわりにどう思われてるかなんて、海の中じゃ関係ないしね」

平並「……そうか」

東雲「小さいころから海で泳ぎ続けてきたし、そのおかげでそんな肩書を貰えたんでしょうけどね」

東雲「正直な所、皆はコロシアイを強要されていることにストレスを感じてるんでしょうけど、アタシは海で泳げないことが何よりもストレスよ」

東雲「……あの湖、どうにかモノクマと交渉して泳げるように出来ないかしら」

平並「……あまり無理はするなよ」

東雲「分かってるわよ。死んじゃったらそこでおしまいだもの」

《個室前(ヒラナミ)》

東雲と別れ、個室へと向かう。

それぞれのドアに貼ってあるネームプレートを見て、自分の部屋を探す。

平並「あったあった。ここか」

とりあえず何もせずにドアノブに手をかけて開けようとするが、ガチャガチャと音を立てるだけで開きそうにない。

平並「ちゃんとカギは閉まってるんだな」

よく見ると、ドアノブの上に小さな丸い鉄の板がついている。

平並「これか?」

ポケットに入れておいた『システム』を取り出し、宝石部分をその板にかざす。

すると、ガチャリと音がした。

平並「おお、開いた。『システム』は指に着けておいた方が良いかもな……」

何はともあれ、部屋の中に入る。

内側からカギを閉めるのにも『システム』が必要なようだ。

《個室(ヒラナミ)》

個室の中は、思っていたより広かった。

残念ながら窓はないみたいだけど、壁際のベッドはかなり大きいし、トイレやシャワールームも併設されていた。

ただ、それよりも壁際に置いてあるものが俺の目を引いた。

平並「これ……俺がよく読んでたマンガじゃないか」

そこに置いてあったのは、俺が日常生活でよく使っていたものだ。

マンガや目覚まし、小説に雑誌、その他もろもろのおもちゃなど……。

平並「……どうして」

染みの付き方から見ても、明らかに俺の私物だ。

なじみの品があるのはありがたいけど……はっきり言って不気味だ。

一体なんでこんなものが。

…………。

私物の事はとりあえず置いておいて、机の方に目を向けると、そこには一枚の紙が置いてあった。

平並「汚い字だな……」

おそらくモノクマが書いたのだろう……言葉遣いが無駄に丁寧なのも腹立たしい。



==================

【施設長からのお知らせ】

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

このコロシアイ強化合宿で初めての夜を迎える皆様は、大きな不安にさいなまれていることかと申し上げ御座います。

そこで、ささやかながらわたくしからプレゼントをご用意いたしました。

この机の二段目の引き出しの中をご覧くださいませ。

==================



と、そこまで読んだところで目が止まる。

平並「引き出し?」

紙の示す通り、引き出しを開けてみる。

その中に入っていたのは、直方体のプラスチックケース。

ビニールで封はされているけど、その中身は見ることが出来た。

ナイフにスパナ、そして拳銃だった。

平並「……悪趣味だな。」


==================

そちらは、凶器セットになっておりございます。

いつ襲ってくるかもわからない殺人者への反撃にしても良し。

周りの皆様が動きを見せる前に先手を打つのも良し。

刺殺撲殺銃殺……。

使い方は、皆様次第でございますので、存分に活用なさってください。

==================



平並「誰が活用なんかするか」

封も開けずに、凶器セットをごみ箱に放り投げようとして……やめた。

……一応、取っておこう。

使う気は無いけど……もしもの、もしものためだ。

文章はここで終わっている。

紙を丸めてごみ箱に捨てようかと思ったその時、裏面にもなにやら文章が書いてあることに気が付いた。



==================

夜時間の間は、宿泊棟は完全に断水となります。

お手洗いなどは夜時間になる前に済ましておくことをおススメいたします。

==================



平並「そういう大事なことは最初に言っておけよ……」

紙をぐしゃぐしゃに丸めて、ゴミ箱の方へ投げた。

けど、入らなかった。

平並「……幸先悪いな」

ベッドに腰掛け、バナナを食べながら今日の事とこれからの事を考える。

俺達16人は、全員、希望ヶ空学園に20期生として入学する予定だった。

けれど、身体測定のために希望ヶ空に行ったところで、誘拐されてしまった。

そして、犯人はこの複合ドーム施設……【少年少女ゼツボウの家】に俺達を閉じ込めた。

犯人は直接手を下そうとはしないが、ココから出るためには誰かを殺せと言っていた。

明日川が言うには、犯人は過去の事件を模倣しているらしい。

……過去にあったコロシアイ生活の事について何かが分かれば、犯人の思惑もわかるのだろうか。



そして、これからの事だ。

俺達は、初対面同士でそこに信頼も何もないが、犯人に対抗するためには一致団結しなくてはならない。

そうでなくとも、少なくとも、絶対に犯人の思惑になんて乗ってはいけない。

どんな理由があっても、それは、人を殺していい理由には決してなりえないのだから。

そう、それだけは、だめなんだ……。

その後、考え事やシャワーを浴びているうちにみるみる時間は過ぎていった。

間もなく夜時間になるな、と思っていると、


ぴんぽんぱんぽーん!


と、例の奇天烈な音が鳴り響いた。

平並「な、なんだ!?」


壁にかかったモニターに、モノクマが映る。


モノクマ『間もなく、午後10時、夜時間になります。夜時間は一部立ち入り禁止区域となります。健やかな成長のため、どうか安らかにお眠りください』

ブツッ!

あの、ひたすらに不愉快な声。

平並「誰のせいでこうなったと思ってんだ……」

……とりあえず、今日はもう寝るか。

どうか、今日のこの出来事が、ただの悪夢でありますように。

【1日目:リザルト】

平凡な日常は突如終わりを告げ、始まってしまったコロシアイ強化合宿。
ここから出るには、誰かを殺すしかないのか?
終わらない絶望が、今、幕を開けた。

《好感度》

火ノ宮…2

明日川…1.5

東雲…1.5

根岸…1

その他…0

初日が終了いたしましたので、ここで(非)日常編の進行の説明をします。

特別なイベントが発生しない場合、以下のように進行します。


【朝食】
安価↓2【人物指定】
〔三人まで選択可 岩国のみ単独〕

【自由時間・朝、昼、夕】
安価↓2【人物指定】
〔安価↓2のコンマが60未満なら通信簿イベント発生〕
〔安価↓2のコンマが60以上なら安価↓3を含めた三人での交流〕

【夕食】
自由行動・夕で交流を取った生徒と共に夕食を取る
or
それ以外の安価↓2【人物指定】の生徒とともに夕食を取る
〔二人まで選択可 岩国のみ単独〕


モノクマメダル及びモノモノマシーンは宿泊棟の玄関ホールに存在していますが、特に記述はしません。

交流の際に話のタネにする程度です。



好感度は交流するたびに上昇し、通信簿イベントは少しだけ上がりやすくなっています。

好感度が10に達すると学級裁判で使用できるスキルが獲得できます。

【2日目】

《個室(ヒラナミ)》

……目を覚ました俺の視界に映ったのは、見慣れない天井だった。

ここは……そうか、確か……。

ゆっくりと覚醒していく頭の中で、昨日起こったことを思い返していた。

いきなり、この施設に閉じ込められて、絶望の象徴であるモノクマがあらわれ……。

そして、ここから出たければ誰かを殺せと言われて……。



もしかしたら、これは夢なんじゃないかと思っていた。

目が覚めたら、いつも通りの平凡な日常が始まるんじゃないかと思っていた。

けれど、この悪夢は嘘偽りのない現実だった。



ぴんぽんぱんぽーん!!


またしても、あの奇天烈な音が流れてきた。

モニターに、モノクマが映る。

『オマエラ、おはようございます! 施設長のモノクマが朝七時をお知らせします! 今日も張り切って、一人前目指して頑張りましょう!』

ブツッ

平並「……昨日の夜にもあった時報か」

どうやら、夜10時と朝7時に流れるみたいだ。

平並「そういえば朝食会の時間決めてないな……もう少ししてから行くか」

ベッドから起き上がり、寝癖を直して適当に時間をつぶしてから個室を出た。

宿泊棟の玄関ホールに行くと、そこではある生徒がドリンクボックスの前で立っていた。

安価↓2【人物指定】

蒼神

age 安価↓
風呂入ってくるのでその間に来なかったら>>193を採用します。
というか、安価は直下の方がいいですね

選択:【蒼神】

ドリンクボックス。

見た目は、コンビニで見かけるようなものと同じく、透明のガラス戸の中に飲み物がずらりと並んでいる。

その前に、蒼神が立っていた。

平並「おはよう、蒼神。どうしたんだ、こんなところで」

蒼神「おはようございます、平並君。いえ、ドリンクボックスの説明を読んでいまして」

平並「説明?」

蒼神の指差す方を見てみると、確かにドリンクボックスの扉に何か紙が貼ってある。

蒼神「ご利用はご自由に、だそうですわ。夜時間の間にモノクマが補充してくださるようです」

平並「ふうん……」

飲み物は、お茶やジュース、スポーツドリンクやミネラルウォーター等いろんなものが並んでいた。

とりあえず、今はいいか……。

ドリンクボックスからお茶を取り出す蒼神に話しかける。

平並「なあ、蒼神。朝食会やるのはいいけど、集合時間を決めてなかったよな?」

蒼神「ええ、わたくしも先ほどそれに気づきました。まあ、今日はしばらくすればあつまるでしょうし、今日決めましょうか。時間は8時でいいでしょう」

平並「まあ、そんなもんだな。あまり遅くなりすぎても困るし」

別に遅くなったところで時間は腐るほどあるのだが……。

蒼神「そろそろ、わたくし達も食事スペースに向かいましょう」

平並「そうだな。案外皆もう揃ってるかもしれないし」

《食事スペース》

食事スペースには既に殆どの生徒達が揃っていたけど、なにやらざわついているようだった。

近くにいた明日川に声をかける。

平並「おい、明日川。どうしたんだ?」

明日川「平並君と蒼神君か。……その、記憶消去の話だ」

神妙な顔つきになる明日川。

一体どうしたんだ。

平並「記憶消去?」

蒼神「昨日、明日川さんがモノクマに受けた記憶消去の事ですか?」

明日川「そうであってそうではないんだ」

平並「……どういうことだ?」

明日川「君達に一つ聞きたい」





明日川「……君達は、自分と親しくしていた人たちの顔を全員思い出せるか?」

明日川「家族でも、親友でも、とにかく仲の良かった人だ」


平並「家族って……そんなの……あれ?」

明日川に言われて、家族の顔を思い浮かべようとする。





……思い出せない。




平並「あ、あれ? ま、待て、待ってくれ……!」

思い出そうとする。

小学校の時、家族でキャンプに行った。

中学生になったら、家族で旅行へ行った。

希望ヶ空への入学を決めた日は、家族で豪華なレストランに行った。

思い出は、確かにある。

なのに……!

平並「なんで、顔が思い出せないんだ!」

蒼神「……! おかしいですわね……。」

横を見れば、蒼神も同じ反応をしていた。

明日川「やっぱり、君達も同じか!」

平並「同じってことは、まさか」

明日川「ああ……。ボクも含め、この場にいる全員が家族や親しかった友人の顔を忘れてしまっているんだ!」

平並「一体……なんで……!」

明日川「ボクだけだったなら、まだわかる。きっと、昨日の電気ショックの副作用だ」

蒼神「ですが、全員となると……話が変わってきますわね」

その時、

モノクマ「やあやあ、オマエラ、ご機嫌はいかがかな?」

そんな声と共に、絶望の象徴がどこからともなく現れた。

平並「……ご機嫌良いワケ無いだろ」

モノクマ「え、そう? こんな大自然あふれた中にいるのに?」

火ノ宮「そういう問題じゃねえだろうがァ! てめーオレ達に何しやがった!!!」

大声で啖呵を切る火ノ宮。

それに続くように、皆が口々に叫びだした。

新家「どういうことなんだよ!」

琥珀『ふざけてんじゃねえぞ!』

大天「な、何なのよ、もう!」

モノクマ「ああああーーーーー、うるさーーーーーーーーーいいいい!!!! なんでオマエラはそうやって文句しか言えないんだよ!!」

モノクマの声で、ぴたりと俺達は黙り込んだ。

モノクマ「ま、オマエラがまだまだ未熟だからってだけなんだけどね、うぷぷ……」

岩国「用件はなんだ、ぬいぐるみ」

モノクマ「ぬいぐるみじゃなくて、モノクマ! ボクは施設長なんだぞ!」

岩国「いいから用件だけを伝えろ」

モノクマ「ハァ……用件って、そりゃあオマエラの置かれた状況を確認してもらいに来たんだよ」

根岸「じょ、状況って……」

モノクマ「まだ、全員揃ってないけど、こっちも待ってられないからね」

そのモノクマのセリフで、周りを見渡して、気づいた。

七原がまだ来ていない。

平並「七原がまだだ……まさか!」

モノクマ「あーあー、安心して、七原さんはまだ寝てるだけだから。こっちとしても初日から事件起こすなんて思ってないし、別にいいよ」

平並「……」

信用は出来ないけど……とりあえず今は信じておくしかないか。

杉野「それで、状況を確認、とは? 僕達がここに閉じ込められていることですか?」

モノクマ「それだけじゃなくて、オマエラの記憶の事だよ」

城咲「やはり、奪ったのですね」

モノクマ「そうそう。実を言うとね、昨日明日川さんの記憶を奪ったのは、ボクが記憶消去できるんだよっていうアピールだったんだ」

遠城「アピール、であるか……」

明日川「そんな簡単に……ボクの記憶を……・!」

モノクマ「で、実はオマエラをここに連れてくるときに、明日川さんだけじゃなくて全員の記憶も奪ったんだよ」

平並「全員の……大事な人の顔の記憶をか」

モノクマ「いや? それだけじゃないけど」

平並「え?」

モノクマ「オマエラさあ、今っていつごろだと思ってる?」

根岸「い、いつごろって……そ、そんなの」

モノクマ「そう! 答えは、希望ヶ空学園20期生の入学から2年後だよ!」

根岸「ま、まだ答えてないじゃないか……! って、え?」

2年後……?

火ノ宮「おい! どういうことだ、モノクマァ!」

モノクマ「さあね、ボクは嘘はついてないから、後はオマエラで考えな! 考えてこそ、人は成長できるんだよ!」

平並「お、おい! 待てっ!」

モノクマ「じゃあね!」

俺の静止の声はモノクマに届くことはなく、モノクマはどこかへと消えてしまった。

根岸「け、結局、ど、どういう意味だったんだよ……?」

火ノ宮「知るかよ! ……けど、考えてみねーとどうしようもねえだろ」

城咲「今が、実は2年後だったって……ほんとうなのでしょうか?」

杉野「それを確認する術は、僕達にはありません」

蒼神「モノクマの言う事を鵜呑みにするのはよくありませんわ。ただ、まったくの嘘だ、ハッタリだと断定することもまた、賢明な判断とは言えませんわ」

大天「もしかしたら、過去の記憶だけじゃなくて未来の記憶も消されてるかもしれないってこと……?」

東雲「……」

平並「否定は……出来ないな」

少なくとも、モノクマが記憶を消せることは間違いないのだから。

根岸「で、でも、そんなの、なんで……?」

明日川「それはモノクマにしか分からない……けれど、ボク達にこうして不安を抱かせているというだけでも、充分効果はあるだろうね」

根岸「……・」

新家「結局また謎が増えただけかよ……」

杉野「……そう言う事になりますね」

…………。

モノクマの残して行った言葉は、俺達に大きな不安と、そして絶望を残して行った。

七原「あれ? 皆、そんな暗い顔してどうしたの?」

その直後、目を覚ましたらしい七原がのんきな声を出しながら食事スペースにやってきた。

七原への説明が済んだあと、城咲が口を開いた。

城咲「……とりあえず、みなさん、朝食にしませんか?」

杉野「そうですね。みなさん朝食はまだですよね?」

火ノ宮「ああ? それがどうした?」

杉野「いえ、ただの確認です」

火ノ宮「チッ……」

なんでいつも火ノ宮はケンカ腰なんだろうか。

まあ、とりあえず朝食にしようか。

城咲「朝食はわたくしがおつくり致しましたので、ぜひ皆さん味わってください!」

おお!

城咲の示す調理場には、既に料理がいくつか並んでいた。

古池「【超高校級のメイド】が作る朝食か……うまそうだな」

平並「……確かに」

七原「城咲さん。これだけの量作るの、大変だったよね? ごめんね、手伝ってあげられなくて」

城咲「いえ、ご主人様のお屋敷にいる際は毎朝調理しておりましたので、この程度は何も問題ありません」

七原「なら良いんだけど……」

平並「じゃあ、お言葉に甘えて、俺ももらおうか……」

そう言って調理場へと向かおうとした俺を止めたのは、ある一声だった。

根岸「ちょ、ちょっと待てよ……!」

平並「どうした、根岸」

根岸「な、なんでお前達、そ、そんな簡単に食べようとするんだよ……」

城咲「……どういうことですか?」

根岸「こ、こんな状況だぞ……ど、毒が入ってるかもしれないだろ……!」

城咲「そんな、毒なんて入れるはずがありません!」

根岸「く、口では何とでも言える……!」

杉野「……悪いですが、この朝食にどくが入ってる可能性は低いと思いますよ」

根岸「ど、どうして……そ、そんなことが言えるんだよ……」

杉野「よく考えてください。そもそもこの施設に毒はありませんでした」

根岸「け、けど、洗剤はあっただろう……ど、毒ってのは、案外簡単に手に入るんだよ……!」

杉野「では、もしも、毒が調達できたとして、この状況で城咲さんが毒を入れたら……学級裁判で真っ先に怪しまれるのは誰だと思いますか?」

平並「……城咲か」

杉野「そう言う事です」

根岸「……わ、わかったよ」

根岸「……で、でも、ぼくはお前達がちゃんと食べた事を見てから食べるからな。しょ、食器も自分で用意する……」

城咲「ええ、食べていただけるのであればそれでかまいません」

根岸「……ふ、ふん……」

どうにか、丸く収まったようだ。

とりあえず、全員城咲の料理を食べるのかな、と思って周りを見渡すと、いつのまにか岩国が居なくなっていた。

……あいつは、仕方ないか。

今回は以上です。
次回は多分今日の21時辺りになると思います。

【2日目:自由行動・朝】の交流相手だけ今安価を取ります。

安価↓【人物指定】
〔安価↓のコンマが60未満なら通信簿イベント発生〕
〔安価↓のコンマが60以上なら安価↓2を含めた三人での交流〕

なお、このスレでは00はゼロとして扱います。

では、お疲れ様でした。

七原把握です。

時間が出来たので、今日の6時ごろから開始します。

【自由行動・朝】

城咲の料理はすごく美味しかった。

チープな言葉でしか表現できないのが非常に悔やまれるが、とにかく美味しかった。

……城咲一人に押し付けるのも悪いから、明日は俺も手伝おうかな……。

食事スペースを出て、昨日確認できなかった展望台へと向かうと、そこには……。

選択:【七原】

《展望台》

そこには、七原がいた。

七原「あ、平並君」

平並「よう……ここが展望台か」

七原「そうだね」

展望台の高さはそれなりにあり、ドームの天井までかなり近づいている。

といっても、手を伸ばして届くほどでは無いのだが。

そして、昨日の報告であった通り、ベンチや掃除道具入れのロッカーがあった。

掃除用具は……葉っぱとかを払うような箒かな、これは。

【通信簿イベント:七原①】

平並「七原って、【超高校級の幸運】だったよな?」

七原「うん! ……あ、今のはシャレじゃないよ?」

【超高校級の幸運】は毎年抽選で選ばれているから、七原もただの一般人であるはずだけど……。

平並「自己紹介の時に、七原が選ばれたのは必然だった、って言ってたけど、どういうことだ?」

七原「私って、昔から運が良かったからね! 多分私が選ばれるんだろうな、って思ってたらホントに当選したんだ!」

平並「運が良かったってのは?」

七原「例えば……そうだ、人生ってさ、選択の連続だよね?」

急に大きな話になったな。

平並「ま、まあ、そうだな」

七原「そこでさ、私が選んだことって、だいたい良い結果になるんだよね」

平並「良い結果?」

七原「例えば、今日どんなことをして過ごすか悩んだときに、家にいたらちょうど親戚が訪ねて来てお小遣いくれたりとか……」

七原「なんとなーく傘を持って出かけたらちょうど雨が降ってきたりとかね」

平並「……それは、運が良いの一言で済まされることじゃないだろ」

七原「ははは、そうかもね」

七原の幸運……もしも、自分で選んだ結果じゃなければどうなんだろう。

安価↓
【1、でも、このコロシアイ強化合宿に巻き込まれたことは、不運だったよな】
【2、じゃあ、サイコロとかだとどうなるんだ?】

選択:【2、じゃあ、サイコロとかだとどうなるんだ?】

平並「じゃあ、サイコロとかだとどうなるんだ? サイコロはほら、自分で選ぶものじゃないだろ?」

七原「あー……サイコロは……うん」

平並「……?」

妙に歯切れが悪い。

平並「さっきまでのパターンからすると、双六とかで一番いい目が出る、とかだと思ったんだけど」

七原「完全に運になるサイコロはちょっと違うんだよね……」

そう言いながら、ポケットから3つサイコロを取り出す七原。

七原「これ、ちょっと振ってみてよ」

平並「? 別にいいけど」

七原から受け取ったサイコロを何度か地面に転がしてみる。

うん、普通のサイコロだ。

サイコロを七原に返す。

七原「今見たとおり、このサイコロ、別に仕掛けは無いんだけど……えいっ」

七原が地面にサイコロを転がす。

すると。

平並「……出目が全部6だ」

七原「……昔から、ずっとこうなんだよね」

そう言う間もサイコロを振り続けているが、出た目はすべて6だった。

平並「怖い怖い、もういい分かった、はい」

七原「だから私、双六はあんまり好きじゃないんだよね」



【通信簿:七原(1/4)】
【七原の幸運は、自分の選択が良い結果をもたらすもの。ただし、サイコロは常に6が出てしまうようだ】

【自由行動・昼】

希望ヶ空がスカウトしたことから見ても、七原の幸運はきっと本物なんだろう。

けど、振っても振っても6が出るサイコロは見てて恐ろしい映像だったな……・。

平並「さて、どうしようかな」

安価↓【人物指定】
〔安価↓のコンマが60未満なら通信簿イベント発生〕
〔安価↓のコンマが60以上なら安価↓2を含めた三人での交流〕

選択:【火ノ宮(コンマ28)】

《倉庫》

倉庫へ行くと、火ノ宮が棚をごそごそと漁っていた。

平並「火ノ宮じゃないか。なにやってんだ、こんなところで」

火ノ宮「ああ? なんだ、平並かよ」

平並「なんだってことは無いだろ……それで?」

火ノ宮「見りゃ分かんだろ! 倉庫に何があるのか確認してんだよ!」

平並「いや、見ては分からないけど……。確認?」

火ノ宮「ああ。何があるのかちゃんと確認しておきてえからな」

平並「何があったんだ?」

火ノ宮「結構そろってんだよな……ジャージとか歯ブラシとか、新品同様のものもある。日用品は大体あんな」

平並「へえ」

火ノ宮「その代り、遊び道具はあんまりねえみてえだ」

平並「それは残念だな……」

【通信簿イベント:火ノ宮①】

平並「ところで、さっきから熱心にメモを取ってるけど、何してるんだ?」

火ノ宮「ああ? 何があったかを書いてんだよ。後から変化があった時に分かるようにな」

そのメモを覗き見ると、ずらりと物の名前が書いてある。

ご丁寧に、数えられるものは個数までだ。

平並「几帳面なんだな」

火ノ宮「まあな、やっぱ何事でもきっちりとしてねえと気持ちわりいし」

平並「ふうん……」

火ノ宮「大体、世の中は雑になってるものが多すぎんだよ。ちゃんと整備されていないもんも多いし、それをないがしろにして妥協してる連中もなァ!」

平並「お、落ち着けって……もしかして、それがクレームにつながってるのか?」

火ノ宮「ま、そうだな。間違ってるもんはきっちり文句を言ってやらねえと気が済まねえんだ、俺は」

平並「へえ……」

この几帳面な性格だからこそ、無茶なクレームはせずに【超高校級のクレーマー】と呼ばれるまでになったんだろうな……。

安価↓
【1、そういえば、ルールやみんなでの決め事とかもちゃんと守ろうとしてるよな】
【2、たとえば、どんなクレームをしたんだ?】

選択:【2、たとえば、どんなクレームをしたんだ?】

平並「たとえば、どんなクレームをしたんだ?」

火ノ宮「どんなって言われても、大したことはしてねえよ」

火ノ宮「そうだな……よくあるのは、商品そのもののクレームだな」

平並「商品そのもの?」

火ノ宮「ああ。つっても、そんな商品ばかり出回ってるわけじゃねえが、致命的に壊れやすかったり、実際に使おうとすると不都合が出てくるモンがあるんだ」

火ノ宮「台所で使うモンなのに錆に弱かったり、二、三度使えばこわれちまったりな」

平並「ああ、確かにそういうのはたまにあるけど、そんなの次から買わなきゃいいんじゃ……」

火ノ宮「ハァ!? ばっかじゃねえの? 商品に文句を言うのは、購入者の権利であり義務だ」

平並「そ、そうかもしれないけど」

火ノ宮「それに、粗悪品をそのままにしておくのは企業にとっても良くねえだろ」

平並「……」

火ノ宮「あ? んだ、その目は?」

平並「火ノ宮って、案外優しいよなと思って」

火ノ宮「アァン?」

平並「いや、なんでもない」

……後は、そのケンカ腰だけなんだよなあ……。



【通信簿:火ノ宮】

【几帳面な性格であり、本来あるべきサービスに欠陥があるのは許せないらしい。クレームを入れるのは、企業への優しさでもあるようだ】

>>224 終盤訂正
【通信簿:火ノ宮(1/4)】



【自由行動・夕】

あの後、火ノ宮の倉庫の物品確認や整理を手伝った。

火ノ宮、性格は悪くないんだけど、あの口調が怖いんだよな……。

平並「さて、どうしようか」

安価↓【人物指定】
〔安価↓のコンマが60未満なら通信簿イベント発生〕
〔安価↓のコンマが60以上なら安価↓2を含めた三人での交流〕

選択:【城咲(コンマ96)+杉野】

《野外炊さん場》

小腹がすいたので、冷蔵庫の果物でも食べようと野外炊さん場にやってきた。

調理場では、城咲と杉野が何やら作業をしていた。

平並「何やってんだ?」

杉野「おや、平並君ですか」

城咲「見ての通り、夕食のしこみです」

平並「夕食か……。そう言えば、夕食は特に集まるようなことは言ってなかったよな?」

杉野「ええ、そうですね。しかし、朝食と同じく大人数で食べても構わないでしょう」

平並「それはそうだな……せっかくだから俺も手伝おうか?」

城咲「おきもちはありがたいのですが、ちょうど今終えてしまいました」

平並「そうか……」

確かに、今は食器洗いが終わったところらしい。

杉野「せっかくですし、向こうに座ってちょっと話でもしましょうか」

《食事スペース》

平並「城咲は分かるけど、杉野は手伝いに来たのか?」

杉野「ええ。僕が来た時はちょうど城咲さんが仕込みを始める段階でしたので」

城咲「おかげで助かりました」

平並「でも……正直、心配じゃないのか? ……気分を悪くするかもしれないけど、毒を入れないか、とかさ」

城咲「だいじょうぶです。杉野さんの事は……というより、皆さんの事は信頼していますから」

杉野「ありがとうございます」

城咲「それに、あの程度の調理場なら、変な動きをすればわたしはすぐにわかりますから」

平並「それは……頼もしいな」

安価↓
【1、そういえば、今日の夕飯はなんなんだ?】
【2、……皆、意外と元気そうだったな】

選択:【2、……皆、意外と元気そうだったな】

平並「……皆、意外と元気そうだったな」

城咲「そうですね。朝、あれほどの事があったわりには、みなさん特別辛そうには……」

杉野「見た目上は、ですがね」

平並「……やっぱり、そうか」

城咲「見た目上、ですか?」

杉野「ええ。 ……こんな状況、混乱して、不安に思って当然なんです。ですが、今はまだかろうじて理性が勝っているんです」

杉野「完全に絶望してしまえば、自分がどうなるか……というより、何をしてしまうか。僕達だって、わかってるはずです」

平並「……」

杉野「幸い、閉鎖空間と言えども、ここは自然にあふれています。それに、まだボク達にとっては新鮮な土地ですから、気分を晴らすことも可能です」

杉野「問題は、明日、明後日以降です。それに、犯人……モノクマだって、このまま何もしてこないとは思えません」

平並「……そうだよな」

杉野「犯人の思惑に乗らないよう、今のうちに皆さんで絆を深めていくのが最善だと思います」

城咲「あたりまえのことですが、大切ですね」

【夕食】

平並「そろそろ夕食にするか……」

安価↓
〔【自由行動・夕】で交流した【城咲、杉野】と夕食を取る〕
or
〔岩国を除く生徒二人まで人物指定〕

気が付けば、食事スペースにはちらほらと生徒が集まりだしてきていた。

城咲「そろそろ夕食に致しましょうか」

平並「そうだな」

朝食会ほどの人数にはならなかったが、多くの生徒が城咲の料理を食べていた。

俺は、さっきのついでということで、城咲、杉野と一緒に夕食を食べることにした。

夕飯は、野外炊さんの定番、カレーだった。

平並「朝も思ったけど、城咲の料理、美味しいな」

城咲「ありがとうございます」

平並「やっぱり、これは、メイドとしてのスキルなのか?」

城咲「そうですね。メイドとして育てられる際に、身に付けました」

平並「ふうん……ん、どうした、杉野」

何故か杉野はスプーンを止めていた。

城咲「お口にあいませんでしたか……?」

杉野「いえ、大変おいしくできていますよ」

杉野ただ、せっかく、カレーを作るならみなさんで協力して作ったほうがよかったと思いまして」

平並「ああ、その方が良かったかもな」

この施設……【少年少女ゼツボウの家】は、その名前からしてもモデルは林間学校などでも使われる少年自然の家なんだろう。

せっかくそんなところにいるのだから、少しは林間学校らしいことをしてもいいんじゃないか?

平並「どれだけ賛同者が出るかは分からないけど……言うだけ言ってみてもいいかもしれないな」

杉野「そうですね。……二日連続でカレーも大変ですし、明後日に企画してみましょうか」

平並「……遅くなりすぎても良くないしな」

城咲「では、その際はわたしもぞんぶんに腕をふるいましょう」

平並「あ、いや、むしろ城咲の負担を減らすためでもあるんだけど……」

その後、夕食はつつがなく進んだ。

周りの皆を見る限り、なんとか普段通りに過ごそうと努めているようだった。

俺は、食器洗いなどの片づけを終えて、個室に戻った。

《個室(ヒラナミ)》

……朝、モノクマが言っていた、記憶の事。

モノクマの言葉を信用するなら、アイツは俺達の記憶を丸々二年分消していることになる。

そして、それは間違いなく可能だ。

モノクマは、あんな電気ショックひとつで明日川の記憶をピンポイントで消した。

だったら、二年間の記憶を丸々消すことだって造作もないはずだ。

それと、もう一つ。

今なお思い出せない、俺の家族の顔。

家族構成は覚えている。

両親はどちらも健在、そして弟が一人、だ。

ただ、その誰の顔も思い出せない。

……モノクマは、何故この記憶も消したんだ?

ぴんぽんぱんぽーん!

モノクマ『間もなく、午後10時、夜時間になります。夜時間は一部立ち入り禁止区域となります。健やかな成長のため、どうか安らかにお眠りください』

ブツッ!


平並「……もう寝るか」

このまま、みんな仲良くしていれば、殺人なんて起きないはずだ。

……そうだよな?

【2日目:リザルト】

明日川だけでなく、全員の記憶が消されていた。
しかも、モノクマは二年間が経過していると言った。
今はまだ、皆なんとか普通に振る舞えているが、この絶望に、いつまで耐えていられるのだろうか。

《好感度》

火ノ宮…4

七原…2.5

杉野…2.5

城咲…2

明日川…1.5

東雲…1.5

根岸…1

蒼神…1

その他…0

今回は以上です。

自由行動はこんな感じで進行しますが、どうでしょうか?


次回は火曜の21時を予定しています。

お疲れ様でした。

予告通り21時から開始します。
すぐに安価があるのでよろしくお願います。

【3日目】

《個室(ヒラナミ)》

ぴんぽんぱんぽーん!

モノクマ『オマエラ、おはようございます! 施設長のモノクマが朝七時をお知らせします! 今日も張り切って、一人前目指して頑張りましょう!』

ブツッ!

朝か……。

目が覚めても、目の前に広がるのは昨日と同じくなじみのない部屋。

この非日常は、今日も変わらず現実だった。

【朝食】

《食事スペース》

適当に身だしなみを整えて朝食会へ向かった。

さて、誰と食べようか。

安価↓【人物指定】
〔三人まで選択可 岩国のみ単独〕

選択:【遠城、新家、明日川】

平並「ここ、座ってもいいか?」

遠城「うむ、かまわんぞ」

平並「じゃあお邪魔させてもらうぞ」

三人が座っていたテーブルに座る。

遠城「それにしても、実に美味な朝食であるな」

明日川「ああ、城咲君の料理の腕が並外れているのは承知しているが、それに加え、食材の新鮮さも美味しさに一役買っているな」

平並「そうなのか?」

明日川「ああ。さっき冷蔵庫の中を改めて確認したが、きちんと新たな食材が納入されていたよ」

遠城「あれだけの食料……毎日追加されるなら、吾輩達だけでは到底消費しきれぬな」

新家「ちょっとアレだよな……」

平並「ああ、もったいないな」

明日川「とはいえ、缶詰なり干物なり、日持ちする物に調理したとして、使い切ることは不可能だろうね」

……犯人は、俺達を監禁しておきながら、どうしてここまで良い扱いをするんだろうか?

安価↓
【1、この施設の事について話す】
【2、記憶の事について話す】

選択:【2、記憶の事について話す】

平並「なあ、俺達の記憶の事についてだけど、どう思う?」

遠城「記憶、であるか」

平並「ああ。一つは、親しい人の顔の記憶を奪った事」

明日川「そして、もう一つは、未来の二年間の記憶の事について、だね?」

平並「そうだ」

遠城「顔については、単純に吾輩達の不安を煽るためであると吾輩は考えている」

遠城「人間、誰しも不安になった時は親しい人の顔を思い浮かべて安心感を得ようとするものであるからな」

明日川「平並君はどう思うんだい?」

平並「大体同じだな」

新家「まあ、その効果は明らかだしな……」

遠城「もう一つ、未来の記憶……というより、問題は『今』が一体いつなのか、であるな」

平並「なあ、明日川。過去の事件について何か思い出せることはないか?」

平並「そこに犯人の思惑が隠されているかもしれない」

明日川「……すまない。その件に関してはまったく思い出せないんだ。……こんなことあり得ないのに」

あり得ない?

平並「いや、明日川が謝る事じゃない」

新家「ってことは、もしかしたら、それを知られるとまずいからモノクマはあんな事をしたってこともありえるよな?」

平並「つまり、過去と同じことがこの二年間で起きた……のか?」

遠城「その可能性は、充分にあり得ることであるな」

だったら……だったら、今、外は……!

明日川「……まあ、考えすぎても仕方ないさ。今のボク達に出来ることはせいぜいここまでだろう」

遠城「そうであるな。吾輩も何かひらめけばいいのであるが……すべてがモノクマの虚言の可能性もある」

平並「……そうだな」

【自由行動・朝】

モノクマは自分たちで考えろと言ったけど、考えれば考えるほどドツボにはまっていく気がする。

もしかして、俺達をそうやって混乱させること自体が目的だったのか?

……今はもう考えるのはやめておこう。

安価↓【人物指定】
〔安価↓のコンマが60未満なら通信簿イベント発生〕
〔安価↓のコンマが60以上なら安価↓2を含めた三人での交流〕

選択:【古池(コンマ08)】

《メインプラザ》

古池「……」

メインプラザにやってくると、古池がステージに腰掛けてぼーっとしていた。

平並「よう、古池。何やってんだ?」

俺が声をかけると、覇気のない古池の顔が急にはつらつとしたものになった。

古池「おっ、平岡じゃねえか! いやな、俺って実は霊感あるからよ、ここにいる霊をみてたんだ」

平並「え、霊を!? ……って、嘘か」

確か、古池は嘘を付くときはテンションが高くなるんだったっけ。

古池「当ったり当たり!」

平並「いや、当たりじゃなくて……っていうか俺平並なんだけど」

古池「ああ、悪い悪い。まあ、これと言って何もしてなかったな」

平並「最初からそう言えばいいのに……」

【通信簿イベント:古池①】

平並「なあ、古池って【超高校級の帰宅部】だって言ってたよな」

古池「ああ、そうだが」

平並「他の部活なら分かるんだけどさ、【帰宅部】の超高校級って、どんなことをすれば認めてもらえるんだ?」

古池「あー、それはだな、お前は知らないだろうが、世の中には『全日本帰宅部選手権』なるものが開催されてるんだよ」

平並「『全日本きた』……何?」

古池「『全日本帰宅部選手権』。簡単に言えば、いかにアクロバティックに学校から家まで帰る事が出来るかを競う選手権だ」

平並「そんなのがあるのか……」

古池「ああ。帰るって言っても、参加者は全員スタートとゴールが一緒なんだ。その中で、いかに相手よりもアクロバティックに帰れるルートを探すのかが勝負なんだ」

古池「例えば、塀の上を走ったりだとか林の中の近道を見つけたりとかな」

古池「で、その選手権で二連覇を成し遂げたのが、俺だった、というわけだ。どうだ、すごいだろ?」

平並「たしかにすごいけど……」

安価↓
【1、それだけなのか?】
【2、で、本当は?】

選択:【1、それだけなのか?】

平並「それだけなのか?」

古池「え?」

平並「いや、確かにすごいけど、他にはないのかな、と思って」

古池「あーあー、あるぞ、あるある。うん」

古池「全国の帰宅部の殆どは、さっき言った『全日本帰宅部選手権』、略して『キタケン』に向けて日々特訓してるんだ」

キタケン……。

古池「ただ、帰宅部の楽しみ方はそれだけじゃないんだ。いかに帰宅を楽しくするかってのも帰宅部の永遠のテーマなわけだ」

平並「そうなのか」

古池「たとえば、帰宅するまでの間出来る限り人とすれ違わない、とか帰るときにルールを決めるんだ」

平並「すれ違わないって……無理じゃないか?」

古池「いや、やってみると、結構いけるんだこれが。向こうから歩いてくる人がどこに住んでいるのかを瞬時に思いだし、どこで曲がるのか判断して出来る限り家に近づくんだ」

古池「さすがの俺も始めの頃は数人とすれ違っていたが、最近では全く誰ともすれ違わずに家まで帰ることも可能になったんだ」

平並「へえ……すごいな」

古池「だろ?」

平並「ああ、こうやって、ホラ話がスラスラ出てくるのは本当にすごいと思うぞ」

古池「……あ、気づいてた?」

平並「いや、誰でも気付くって。大体、途中からかなりテンション高かったぞ」

古池「熱くなりすぎたか……・ちなみにいつから?」

平並「『全日本帰宅部選手権』が出てきた辺りかな」

古池「最初じゃねえか! だったらそう言ってくれよ……」

平並「はは、悪い悪い。で、本当の理由はなんなんだ?」

古池「あー……」

平並「ん?」

古池「あ、用事を思い出したぞ! その話はまた今度な!」

平並「あ、おい!」

そう言って、古池は走り去ってしまった。

……話したくない理由があるのか?



【通信簿:古池(1/4)】

【嘘を付くのが大好きで、嘘を話すときはかなりテンションが高くなる。ただ、どうやら【超高校級の帰宅部】に選ばれた本当の理由は話したくないようだ】

【自由行動・昼】

平並「古池のやつ、なんかおかしかったな……」

あと、そろそろ名前を憶えてほしい。

安価↓【人物指定】
〔安価↓のコンマが60未満なら通信簿イベント発生〕
〔安価↓のコンマが60以上なら安価↓2を含めた三人での交流〕

選択:【岩国(コンマ75)+翡翠】を採用したところで今日は終わります。

次回は金曜の20時頃から始められると思います。

お疲れ様でした。

金曜の夜から始められないことが分かったので、今から少しだけ投下します。
自由行動の安価があるのでよろしくお願いします。

選択:【岩国(コンマ75)+露草】

《食事スペース》

昼食のために食事スペースに来ると、なにやら岩国と露草が言い争っていた。

いや、あれは露草というより……琥珀か。

琥珀『まったく、琴刃はすげえ強情だな!』

岩国「その言葉をそっくりそのままお前に返してやる、腹話術師」

……やけに険悪だな。

露草「あ、凡一ちゃんだ」

平並「その呼び方はやめてくれって……で、何やってるんだ」

露草「今ね、琴刃ちゃんとお話してるんだ」

岩国「違う。こいつが一方的に話しかけて来てるだけだ」

平並「はあ……」

琥珀『だってよ、琴刃は初めの時からずっと一人で過ごしてるじゃねえか。オレはお前とも仲良くやりたいってのに』

岩国「鬱陶しいからもう話しかけてくるな」

琥珀『そんなこと言うなって』

……岩国には悪いけど、個人的には露草の、琥珀の意見に賛成だ。

こんな状況下で、一人だけ孤立した生徒が出てくるのはあまり好ましくない。

それに、俺達は本来同級生になる予定だったわけだし、せっかく知り合ったのだから仲良くなりたいのも本音だ。

とは言え、だ。

岩国「余計なお世話だ。話がしたかったらお得意の人形遊びでもしていろ」

露草「人形遊びって酷いよ。琥珀ちゃんだって生きてるのに」

琥珀『いや、俺は生粋の人形だぜ』

露草「琥珀ちゃん! そんなこと言っちゃだめ!」

岩国「どっちでもいい……!」

ここまで拒絶しているのに、無理に話そうとするのも違う気がする。

さて、どうしようか。

安価↓
【1、露草に加勢する】
【2、岩国に加勢する】

選択:【1、露草に加勢する】

平並「なあ、岩国。そう邪険にしなくてもいいんじゃないか? 別に、減るもんじゃないだろ?」

琥珀『おっ! 凡一もそう思うか!』

平並「仲良くやろうぜ、岩国」

岩国「……はあ、凡人。お前もか」

大きくため息をつく岩国。

岩国「前に言っただろう。お前達と無駄な交流はしないとな」

平並「そうだけど……」

露草「そんなこと言わずにさ。もっと素直になりなって」

平並「素直?」

岩国「……何を言っている」

露草「琴刃ちゃん、何か無理してるような気がするんだよね」

平並「そりゃあ、こんな状況なんだから無理もするだろ」

琥珀『いや、そうじゃなくて……』

岩国「丁度いい、そうやって二人で話していろ」

琥珀が何やら説明しようとしたとき、岩国はそう言いながら食事スペースの外へ歩き出した。

琥珀『おいおい、つれないな琴刃』

露草「待ってよ琴刃ちゃん!」

平並「あ、おい!」

その岩国に露草も付いて行ってしまった。

平並「無理、ねえ……」

【自由時間・夕】

露草のやつ、強引すぎるのは気になるけど、もしかしたら色々と考えているのかもしれない。

平並「岩国とも仲良くできたらいいんだけどな」

さて、どうしようか。

安価↓【人物指定】
〔安価↓のコンマが60未満なら通信簿イベント発生〕
〔安価↓のコンマが60以上なら安価↓2を含めた三人での交流〕

選択【東雲(コンマ61)+遠城】

《湖》

東雲「ねえ、どうしてもだめなの?」

モノクマ「ダメなものはダメです!」

遠城「確かに規則で自然を汚すのはダメとあるが……」

湖のほとりで、二人がなにやらモノクマと揉めていた。

平並「なにやってるんだ?」

東雲「あ、平並君。モノクマにこの湖で泳げないかどうか交渉してたところよ」

平並「ああ、そう言えばそんなことを言っていたな」

遠城「自然を汚さぬようにちゃんと綺麗にしてから入るのはどうかともきいてみたのであるが……」

モノクマ「ダメったらダメなの! この湖はね、豊かな生態系を守るための場所でもあるんだから!」

そう言い残し、モノクマはどこかへと消えてしまった。

東雲「また逃げられた……」

平並「また?」

東雲「そうよ。これでこの話を打ち切られたのは三回目だわ」

平並「そんなに交渉してるのか……」

東雲「ええ。正直な所、いまいちモノクマの言う事が信用ならなくて、現実味に欠けてるのよ」

平並「現実味に欠けてる?」

東雲「本音を言えば、まだ夢なんじゃないかって思ってるの。……もちろん頭では分かってるつもりなんだけど」

東雲「だから、自分の好きな事が思いっきりできれば、現実にも向き合えると思うの」

平並「……そういうものなのか」

遠城「たしかに、吾輩ももっと存分に発明をしたいであるな」

遠城「ここでは、イメージは出来ても実際に試してみることが難しいであるからな」

平並「ふうん……」

安価↓
【1、俺にはよくわからないな】
【2、この施設、やっぱり不便だよな】

選択:【2、この施設、やっぱり不便だよな】

平並「この施設、やっぱり不便だよな」

東雲「そうね。不自由はさせないなんてモノクマは言っていたけど、実際は不自由だらけだもの」

東雲「何より、することが無いわ。……だからこそ、無性に不安な気持ちになるのかもしれないけど」

遠城「それが犯人の目的かもしれんな」

遠城「気を紛らわすものさえないこの状況では、いくら食事をきちんととったところで精神の衰弱は避けられぬ」

平並「……」

東雲「もしこれが悪夢なら、いい加減覚めてくれると嬉しいんだけどね」

平並「まったくだな」

【夕食】

平並「そろそろ夕食にするか……」

安価↓
〔【自由行動・夕】で交流した【東雲、遠城】と夕食を取る〕
or
〔岩国を除く生徒二人まで人物指定〕

選択:【スコット、新家】を採用して今日はここまで。

次回は土曜日の18時を予定しています。
次々回でどうにか動機発表に入れるかなといったペースです。

お疲れ様でした。

予定通り今から開始します。

選択:【スコット、新家】

《食事スペース》

平並「スコットは、それ自分で作ったのか?」

食事スペースにやってくると、なにやらスコットが食べているのは他の人とは違うようだった。

スコット「ああ。シロサキの料理が美味しいのが悔しくてな」

平並「悔しい?」

新家「そいつ、結構アレなんだよ。ほら、えーと、そうだ、負けず嫌い」

平並「へえ……」

スコット「ただ、全然ダメだな。シロサキの方が何倍も美味しい」

平並「そうなのか? 美味しそうにみえるけど……一口もらってもいいか?」

スコットこんなもの、「一口と言わず全部やるよ。ほら」

なげやりになっているスコットから料理を受け取って、口に運ぶ。

平並「これ……! 美味しいじゃないか!」

スコット「いいや、そんなんじゃダメだな。納得できない」

平並「そんなこと無いと思うけどな」

新家「ま、理想が高いのはいいことだ」

平並「……それもそうか」

《個室(ヒラナミ)》

スコットのやつ、結構な完璧主義者みたいだな。

充分美味しかったんだけどな……。



ぴんぽんぱんぽーん!

モノクマ『間もなく、午後10時、夜時間になります。夜時間は一部立ち入り禁止区域となります。健やかな成長のため、どうか安らかにお眠りください』

ブツッ!



平並「……もう寝るか」

ベッドの上でふと考える。

……確かに、この施設は食べて寝るだけなら何の不自由もない。

けれど、それをはるかに大きな不安が包み込んでいる。

多分、限界はそんなに遠くない。

【3日目:リザルト】

犯人が記憶を奪ったその理由は?
次第に、ストレスや不安は大きくなっていく。
それでも、すぐに助けが来るという漠然とした希望を、まだどこかで抱いていた。

《好感度》

火ノ宮…4

遠城…2.5

杉野…2.5

古池…2.5

七原…2.5

明日川…2.5

東雲…2.5

新家…2

城咲…2

露草…1.5

スコット…1

根岸…1

蒼神…1

岩国…0.5

大天…0

ということで3日目が終わりましたが、時間があるのでこのまま4日目に突入します。

【4日目】

ぴんぽんぱんぽーん!

モノクマ『オマエラ、おはようございます! 施設長のモノクマが朝七時をお知らせします! 今日も張り切って、一人前目指して頑張りましょう!』

ブツッ!



平並「朝か……」

この、何も変わらない閉ざされた生活を、俺達はいつまで続けていけばいいのだろうか。



【朝食】

安価↓【人物指定】
〔三人まで選択可 岩国のみ単独〕

選択:【スコット、根岸、大天】

《食事スペース》

スコット「……」

根岸「……」

大天「……」

今日の朝食会は、どこか皆元気が無いようだった。

それも当然だ。

俺達がここに閉じ込められてから丸三日が立とうとしているが、脱出できる気配も、助けが来る気配もないのだから。

大天「……いつまで、ここで過ごしていればいいのかな」

根岸「し、知らないよ……」

スコット「とにかく、待ち続けるしかないさ。オレ達が脱出できる時までな」

根岸「だ、脱出できるまでって……そ、それっていつなんだよ」

平並「それこそ分からない。けど、それ以外に出来ることは何もない」

根岸「……」

安価↓
【1、脱出するだけなら……方法はあるんだけどな】
【2、幸い、ここで生活していく事だけは出来る】

選択:【2、幸い、ここで生活していく事だけは出来る】

平並「幸い、ここで生活していく事だけは出来る。少し癪だけど、モノクマは新鮮な食材を補充してくれるしな」

根岸「……だ、誰のせいでこうなったかを考えると、わ、訳が分からないけど……犯人の目的は?」

平並「さあな」

犯人の目的は、これ以上考えても、根拠も何もないこの状態じゃ所詮想像にしかならない。

大天「……だめだよ」

そんな中、大天がぽつりとつぶやいた。

平並「どうした?」

大天「ダメだよ、それじゃ! 待ち続けるだけなんて……そんなの……!」

スコット「落ち着け、オオソラ」

大天「落ち着いてなんかいれない! 私には、やることがあるのに……!」

平並「それでも、感情的になっちゃだめだ。……モノクマが、犯人が本気なのは大天が一番分かってるだろ」

思い出す。

あの、無数の槍を。

大天「そうだけど……そうだけど、でもっ!」

杉野「みなさん、少しよろしいですか?」

興奮する大天を止めたのは杉野のそんな声だった。

杉野「みなさん、ここでの生活も日が立ちました。精神的にかなりまいっている方も少なくないと思います」

杉野「そこで、親睦会を兼ねて、今日の午後にみなさんでカレーを作りませんか?」

ああ、一昨日に言っていた話か。

根岸「か、カレー……?」

杉野「ええ。幸い此処には材料も道具もそろっています。気を晴らす意味でも、悪くないと思いますが、どうでしょうか?」

七原「私は賛成! やっぱさ、林間学校と言えばカレーだよね!」

琥珀『林間学校じゃねえけどな!』

露草「まあなんとなくわかるけどねー。面白そうだし」

明日川「ふむ、悪くない発想だね」

遠城「いいアイデアであるな!」

七原を始め、賛成する人は次々と現れた。

しかし、当然異を唱える人もいた。

火ノ宮「別に悪かねえけどよ、安全はどうなんだ? こんな状況じゃ、晴れる気も晴れねえだろうが」

つまり、火ノ宮は暗にこう言ってるのだ。


――誰かが、毒をいれるのではないかと。


一瞬、空気がピリッとする。

根岸「そ、そうだよ……そ、それが問題だ」

杉野「もちろん、そのあたりの配慮は万全にいたします。みなさんを疑っているわけではないですが、安全が確保されてこその親睦会ですから」

火ノ宮「具体的にはどうすんだァ?」

杉野「そもそもこの施設に毒が存在しないことは前にも申しあげましたが、それでも万一があります」

杉野「そこで、まず僕と数人で食事スペースと野外炊さん場の中を徹底的に捜索します」

杉野「その後、皆さんがこの中に入るときにこれも二人以上でボディチェックを行います」

杉野「また、カレー鍋にも常に見張りを用意します」

明日川「ふむ。多少窮屈だが、確かにこれなら安全だね」

火ノ宮「チッ、確かにそれなら文句はねえな」

杉野「ですので、出来る限り多くの方に参加していただきたいのですが……」

そこで周りを見渡す。

すると、その中で声を上げた人が一人。

岩国「俺は参加しない」

……やっぱりか。

岩国「まあ、そうやって臆病者どうし身を寄せ合って慰め合ってればいいさ」

露草「えー? 琴刃ちゃんも一緒にカレー作ろうよ」

岩国「そんなことして、何の意味があるんだ」

杉野「ですから、みなさんの親睦を深めようと」

岩国「その、『親睦を深める』という行為自体が無意味極まりないんだ」

平並「またそれか……いいじゃないか、仲良くしようぜ」

岩国「ふん……別に、俺はお前達が親睦会を開くこと自体は反対しない。やりたいなら俺抜きで勝手にやっていろ」

そう言い残して、岩国は出ていってしまった。

露草「むー」

平並「……」

杉野「本当は、岩国さんも参加していただきたかったのですがね」

蒼神「……仕方ありませんわね」

杉野「他に参加を拒否する方は……いないようですね」

杉野「では、僕とともに準備や監視をしてくれる方を募ります。城咲さんには話をしていますので、男女あと二名ずつ、ですね」

さて、俺はどうしようか?

安価↓

【1、カレー作りの準備を手伝う(岩国を除く中から、男子一人、女子二人を指定)】
〔1を選ぶと、今日一日は準備メンバーで過ごすことになります〕

【2、手伝わない】
〔2を選ぶと、【自由行動・昼】の後カレー作りとなります〕

選択:【1、新家、大天、蒼神】

平並「俺、手伝うよ」

新家「ボクもやるぜ」

大天「……私もやる」

蒼神「わたくしも手伝いますわ」

杉野「ありがとうございます。では、平並君達はこのあと食事スペースに残ってください」

平並「ああ、分かったよ」

杉野「では、他の皆さんは昼過ぎに食事スペースにいらしてください」

そして、朝食会は解散となった。

【カレー作り、準備】

杉野「みなさん、ご協力ありがとうございます」

平並「まあ、こんな状況だし、せっかく企画してくれたわけだしな」

蒼神「ええ、こういった企画はみなさんの気持ちを一つにするのにうってつけですもの」

城咲「ありがとうございます。では、まずは、ここに何もないか、確認しておきましょうか」

大天「そうだね」

城咲「もちろん、わたしは何もないことは把握しておりますが、念のためですね」

新家「まあ、全員で確認しておいた方が良いからな」

杉野「じゃあ、調理場から確認しましょうか」

《調理場》

杉野「6人全員で調理場を見るのは少し狭いので、そうですね、男子は冷蔵庫の中を確認しましょう」

平並「分かった」

城咲「では、私たちは調理場ですね」

そして、俺達は冷蔵庫の中に入った。



《冷蔵庫》

冷蔵庫、と言ってもそれなりの広さがある。

ちょっと大きめの物置、というのが表現としては正しいかもしれない。

三人ぐらいなら何とかは入れるぐらいだ。

そして……。

平並「やっぱり、寒いな……」

新家「冷蔵庫だしな。早く確認して戻ろうぜ」

杉野「そうですね」

平並「カレーの材料になりそうなのは……まあ、大体そろってるか」

杉野「じゃがいもやにんじん……人数分も充分ありますね」

新家「肉もあるな。これだけの量、かかる費用も尋常じゃないぞ」

平並「つまり、犯人はそれだけの資金を持っているってことか?」

杉野「それも、かなりの長期間にわたって補充し続けられるほどですね」

新家「……なんなんだろうな一体」

平並「……今は考えても仕方ないさ。早く変なものが無いか確かめよう」

杉野「ええ。毒になりそうなものは……特にありませんね」

新家「そうだな。きのことかもメジャーなものばかりだ」

平並「そのほかに変なものも見当たらないな」

杉野「ええ。ここは大丈夫みたいですね」

平並「あれ、そう言えば、カレールウがないな」

杉野「それなら、昨日倉庫から取って来て調理場の方に準備してあります」

平並「……準備が良いな」

《調理場》

冷蔵庫から出てきた俺達は、調理場を調べていた城咲たちと何もないことを報告し合った。

杉野「何もないことは確認できましたし、必要な材料もあらかじめ用意しておけば大丈夫でしょうね」

平並「そう言えば、皆でカレーを作るって言っても全員は調理場に入れないだろ?」

城咲「そうですね。ですから、今日の調理は基本的に食事すぺーすで行おうと思います」

城咲「包丁も五本しかないので全員が同時に調理することは出来ないかもしれませんが、皮むき器もありますし、問題はないでしょう」

杉野「ええ」

蒼神「グループ分けはどうするのでしょうか? 全員が一つの鍋で作るのは少々大変かと思いますが」

杉野「それは、みなさんが集まってから適当に2グループ程度に分けましょう」

杉野「それと、僕達は調理よりも見張りの方がメインになりますのでよろしくおねがいします」

平並「ああ、分かってるさ」

《食事スペース》

その後、食事スペースの方は全員で確認して、これもやはりおかしなものは見当たらなかった。

平並「これだけ探してもおかしなものは無いし、大丈夫かな」

杉野「そうですね。ここにあるもので殺人を行えるのは、包丁ぐらいでしょう」

大天「でも、包丁で誰かを刺したら、犯人はまず間違いなく丸わかりになるね」

杉野「ええ……ですから、その面でも問題はないかと思います」

すこしくどいほど確認しているが、これで良いんだ。

リスクがある状態じゃ、皆は楽しめないだろうから。

杉野「では、少し早めに昼食を取りましょうか」

蒼神「そうですね。食べ終わってから食材などの準備をいたしましょう」

ということで昼食を取ることになり、折角だからこの6人でチャーハンを作ろうという事になった。

平並「そういえば、皆の料理が腕前はどうなんだ? 城咲は分かってるけど」

蒼神「わたくしは結構得意ですわよ? 料理が上手ければ学校内での人望にもつながりますから」

新家「ボクは味付けは微妙だけど、切ったりするのは得意だな」

平並「へえ、そうなのか」

新家「ああ、数ミリ単位で決まってる設計図通りに作らないといけないことも多いからな。飾り包丁とか、簡単なものならできるぞ」

大天「私はいまいちかな……。野菜炒めとかつくると、いっつも焦がしちゃうんだよね」

城咲「もしかしたら、無駄に火が強すぎるのかもしれません。一度、中火程度で試してみたらいかがでしょう」

大天「分かった、やってみる」

杉野「実を言うと僕もあまり得意ではないのです。簡単な作業ならできますが……平並君はどうですか?」

平並「俺は、【超高校級の普通】の肩書通りに普通だよ。本当に、可もなく不可もなくって感じだな」

城咲「それでは、分担して野菜を切りましょうか。最後に炒めるのはわたしがやりましょう」

平並「ああ、そうしよう」

昼食のチャーハンは美味しくできた。

まあ、俺達は野菜を切ったり材料を準備したりしたくらいで、一番大事な炒めて味付けをするのを城咲がやってくれたから、美味しいのは当然と言えば当然なんだけど。

けど、楽しかったな。これならこの後のカレー作りも楽しくなりそうだ。


その後、準備を始めるまで少し時間が空いた。

誰かに話しかけてみるか。

安価↓
【〔杉野、新家、城咲、蒼神、大天〕の中から一人指定】

選択:【新家】

平並「新家の飾り切り、すごかったな」

新家「だろ? 昔から手先は器用だったからな」

新家「テレビでやってたから昔真似してみたんだけど、ちょっとやってみると出来たんだよな」

平並「ほとんど練習しなかったのか?」

新家「殆どって言うか全くしなかったな。さすがに宮大工の仕事になるとそうは行かなかったけど、それでもそんなに時間はかからなかったな」

平並「へえ……」

やっぱり、センスがあるんだろうな。

それでこそ、【超高校級】なんだろう。

その後、暫く時間をつぶしてから、カレー作りの準備を始めた。

準備と言っても、することはあまり多くない。

冷蔵庫から野菜とかを洗っておいてから、食事スペースの方に持っていく。

包丁やまな板などの調理器具も用意しておいたが、肉だけはギリギリまで冷蔵庫で冷やしておくことにした。

調理中の見張りの分担としては、杉野、城咲、大天が鍋の方へ、残った俺達が包丁などの見張りをすることになった。

ちょうど準備が終わった終わったところで、一人目の生徒がやってきた。

安価↓【人物指定】

選択:【七原】

やってきたのは七原だった。

七原「あ、もう準備できてるんだね」

平並「早いな、七原はもっと遅くに来るかと思ったけど」

七原「平並君、馬鹿にしてるね? 私、ちょっとねぼすけなだけで別に遅刻魔じゃないんだから」

平並「そうかもしれないけど」

七原「それに、私、このカレー作り楽しみだからね。全員参加じゃないのは残念だけど……でも、こんな状況だからね、楽しまなきゃ!」

平並「……ああ。そうだな」

蒼神「では、七原さん。申し訳ありませんが、ボディチェックをさせてください。もちろん、女子の三人で行いますが」

七原「うん! でも、別に何も出てこないと思うけどね」

城咲「それでは……」

七原のボディチェックの結果は……。

蒼神「特に危ないものはありませんでしたが……」

平並「なんか色々出てきたな」

この前見せてもらったサイコロをはじめとして、コインやトランプといった小物が次々とパーカーのポケットから出てきた。

七原「ははは……ポケットの中でこういうのいじってないと落ち着かないんだよね……」

杉野「まあ、問題はありませんね」

七原「じゃあ、皆が来るまで中で待ってるね」

杉野「はい、おねがいします」

その後、次々とくる生徒達にボディチェックを行ったが、特に危険なものを持ち込む生徒は現れなかった。

カレー作り、書き終わるのに時間がかかりそうなので今日は以上です。
あまり進めなくてすいませんでした。

次回は明日の20時からを予定しています。
お疲れ様でした。

予定通り開始します。

【カレー作り、開始】

岩国を除く15人の生徒が食事スペースに勢ぞろいした。

杉野「皆さん、カレー作りに参加していただき、ありがとうございます」

杉野「こんな状況下ではありますが、今日は軽くリフレッシュと行きましょう」

東雲「よし、皆、頑張って美味しいカレーを作ろうね!」

根岸「ま、まあ……た、たまにはこういうのもいいよな……」

蒼神「そこで、今日は二班に分かれてカレーを作ろうかと思いますが……グループ分けはどういたしましょうか?」

七原「ぐっぱーで良いんじゃない? 男女で分かれてさ」

古池「ぐっぱーって、あれか? ぐーとぱーで分かれましょっていう」

七原「うん、それ」

遠城「うむ、それなら平等であるな」

杉野「では、そう致しましょうか」

そして、その結果……


安価↓【人物指定(男女二人ずつ)】
〔男子:スコット、根岸、古池、遠城、火ノ宮〕
〔女子:七原、明日川、東雲、露草〕

その結果、

Aチーム【火ノ宮、古池、露草、七原】

Bチーム【スコット、根岸、遠城、東雲、明日川】

というチーム分けになり、Aチームは俺が監視、Bチームは新家と蒼神が監視することになった。

監視という言い方はよくないけどな……。

平並「あれ、そう言えば俺達も調理に参加した方が良いのか?」

杉野「そうしても良いですが……どの道包丁は足りないので、サポートにまわっていただけると良いかもしれませんね」

平並「ああ、分かったよ」

という事で、カレー作りが始まった。

火ノ宮「よしてめーらァ! 文句のつけようのないカレーをつくんぞ!」

琥珀『別に張り合うもんでもないけどな』

七原「ま、美味しくできるのはいいじゃん!」

古池「じゃあ、俺様の【超高校級のカレー職人】としての才能を発揮してやるぜ!」

露草「河彦ちゃん、また嘘ついてるね!」

……テンション高いな。

まあ、皆この生活で不安もストレスも溜まっていたし、当然だろう。

平並「じゃあ、作り始めるか」

火ノ宮「おう!」

平並「皆、料理の腕はどうなんだ?」

古池「さっきの【カレー職人】は嘘だが、それなりに得意だぞ。家帰ってから親の手伝いはよくしていたからな!」

琥珀『本当は?』

古池「……皮むきなら何とか」

平並「ああ……うん」

火ノ宮「オレは得意だぜ」

七原「ああ、火ノ宮君はレシピとかきっちりグラム単位で守って作りそうだよね」

火ノ宮「その通りだけどなんか文句あんのか!?」

露草「ないない。だから落ち着いて」

火ノ宮「お、おう……」

……心なしか、皆火ノ宮の扱いが上手くなってる気がするな。

古池「女子二人はどうなんだ?」

七原「まあ私は普通かな。あ、でもクッキーとかはたまに作るよ」

平並「じゃあ特に問題はなさそうだな」

七原「そうだね」

火ノ宮「露草は料理はすんのか?」

露草「んー、翡翠はほとんどしないかな。ほら、こっちの手には琥珀ちゃんがいるし」

琥珀『いやいや、料理するときは外せばいいじゃねえか』

露草「外す? そんなこと、そもそも物理的に出来ないよ!」

琥珀『いーや、出来るね! オレを手放して翡翠も料理をしなきゃな!』

露草「翡翠には無理だよ……!」

平並「あー……盛り上がってるところ悪いけど、そろそろ始めるぞ」

露草「あ、うん」

平並「こっちにある包丁は二本だから、野菜を切るのは火ノ宮と七原と俺が順番にやろうか」

古池「じゃあ俺は皮むきするよ……」

露草「翡翠は何すればいい?」

平並「結局、琥珀はどうするんだ?」

露草「あ、別に外せるよ」

火ノ宮「あんだけ騒いで普通に外すんだな……」

露草「なら、翡翠も皮むきするね」

平並「ああ、任せる」

という流れで分担が決まった。

決まったけど……。

火ノ宮「ま、まて、その持ち方はなんだァ!」

露草「え? じゃがいもの皮むきしようとしてるんだけど、なにかおかしかった?」

平並「おかしいって言うか、その持ち方だと確実に指を怪我するぞ!」

露草「そうなの?」

七原「もしかして、露草さんって料理したことない?」

露草「料理して怪我したことはあるよ」

平並「よしわかった、露草は切った野菜やゴミをまとめてくれ」

七原「その方が良いね……」

露草「うん、わかったよ」

平並「じゃあ、露草の分の皮むきは俺がしよう」

そして、ようやく調理が始まった。

平並「古池、言ってた割には皮むきは上手いな」

古池「皮むきにうまいも何もないと思うけど……まあ、手伝いで皮むきをしてたのは本当だからな」

平並「ふうん」

火ノ宮「オラ、皮がむけたやつからこっちによこせ」

平並「ああ、お願いするよ」

七原「こっちもね」

露草「出たゴミはこの袋に入れるから翡翠にちょうだいねー」

琥珀『これなら片手でできるな!』

古池「効率は悪そうだけどな」

うん、役割分担は上手くいったみたいだな。

野菜や肉を切り終わり、材料を鍋の方へ持っていく。

古池「野菜を炒めるのは誰がするんだ?」

平並「あー、どうしようか」

七原「それくらいなら私がやるよ。……まあ、露草さんにはやらせられないしね」

露草「私だとこがしちゃうからね」

七原「……ってよりは、露草さんだとやけどしそうだよね」

平並「……あー、確かに」

琥珀『ま、否定できねえな』

その後、七原と火ノ宮が中心となってカレー作りは進んだ。

というより、これ以降はあまりたくさん人がいてもどうしようもないから、自然とこうなった。

そして……。

七原「うん、こんなもんかな」

火ノ宮「いい匂いじゃねえか」

平並「完成したのか?」

七原「うん。出来たよ」

古池「向こうの班もちょうどできたみたいだな」

露草「いやー、おなかすいちゃったよ! 早く食べよう!」

琥珀『翡翠は殆どなんにもしてねえけどな!』

七原「……あ」

平並「どうした、七原」

七原「ねえ、今の今まで忘れてたけどさ、ごはんは?」

古池「あ……」

火ノ宮「どうすんだ、もうカレーは出来ちまってんぞ、オイ!」

しまった、完全に忘れてたな……。

杉野「ごはんなら問題ありませんよ」

平並「問題ない?」

城咲「ええ。わたしたちは鍋を見張る組でしたけど、みなさんが鍋を使いだす前は時間がありましたので、その時間でお米はたいておきました」

七原「さっすが城咲さん、準備が良いね!」

城咲「いえ、発案は杉野さんでしたから」

杉野「城咲さんの手際の良さのおかげですよ。それでは、夕食にしましょうか」

琥珀『だな!』

杉野「えー、皆さん、カレーが手元にそろったようですね」

杉野「長々と話しても仕方ありませんし、それではいただきましょうか」

そして、あちこちからいただきますの声が上がり、皆がカレーを口に運ぶ。

火ノ宮「おお、結構うめーじゃねーか!」

七原「美味しいね!」

うん、これはなかなかだ。

古池「案外作れるもんだな」

琥珀『まあ味付けは菜々香と範太にやってもらったけどな!』

古池「そういうこと言うなって」

平並「そうだぞ、こういうのは皆で作るから美味しいんだから」

向こうの班の声も聴いてみると、どうやら向こうのカレーもおいしくできたようだ。

その後、みんなは次々とおかわりをし、すぐにカレーのなべは空っぽになった。

片づけも準備メンバーでやろうと思っていたのだけど、気を使ってくれたのだからと火ノ宮たちがやってくれた。

こうして、カレー会は無事に終了となった。



カレー会が終了して解散となった後、準備メンバーは杉崎に言われ食事スペースに残っていた。

杉野「今日はみなさんありがとうございました。おかげでカレー会が無事に終了いたしました」

平並「いや、こっちこそお礼を言うよ。美味しいカレーも食べられたし、皆も元気になったみたいだし」

城咲「そうですね。すこし過剰なほどに事件の対策は行いましたけど、その甲斐もありました」

新家「皆リラックスしてたしなあ」

大天「そうだね。仲も良くなったと思うし、やってよかったと思うよ」

蒼神「あとは岩国さんですが……根気強く話しかけていけばいつかは心を開いてくれるでしょう」

モノクマ「そうかなあ?」

平並「信じて話しかけていけば、きっと心は伝わるさ」

モノクマ「ていうか、他の皆だって内心でどう思ってるかなんてわからないけどね!」

平並「…………おあぁ!! モノクマ!」

い、いつのまに!

モノクマ「もう! にっぶいなあ平並クンは! そんなことしてるとすぐに殺されちゃうよ!」

平並「……」

新家「何しに来たんだ! モノクマ!」

モノクマ「何しにって、そりゃあオマエラに説教をしに来たんだよ!」

七原「説教……?」

モノクマ「そう! 説教!」

モノクマ「みんなでカレーを作るって言うから黙って見てたらなんなの、あの体たらくは!」

蒼神「……どういう事ですか?」

モノクマ「だから、なんで誰も事件を起こさなかったのかって言ってんの!」

……は?

杉野「どうしてもなにも、僕達は断固として殺人をしないために行動していますから。今日のカレー会で、その決意は強くなりましたよ」

新家「そ、そうだ!」

モノクマ「いやさ、チャンスだったじゃんか。色々とさ」

モノクマ「毒なんて、洗剤をちょちょいとすれば誰にだって作れるんだよ。カレー作りをするってことを決めてたんだったら、昨日の内からカレールウに仕込むなり鍋に塗るなりしておけばよかったのに!」

大天「そんなこと、するわけないよ!」

モノクマ「うるさいな、そんなんじゃね! オマエラはこれっぽっちも成長できないんだよ!」

平並「……お前に何を言われても、俺達は殺人なんて起こさないぞ」

モノクマ「ふうん……だったらさ、どうしてカレー作りなんてやろうと思ったの? それも、あんなに殺人を警戒してまでさ」

杉野「……っ!」

平並「それは、皆との絆を深めるためで……!」

モノクマ「それは違うよ」

モノクマ「結局のところ、誰かが殺人を起こすかもしれないって一番考えてるのはオマエラじゃん」

モノクマ「しかも、それを起こすのは自分かもしれない……そう思ってるよね?」

平並「……」

城咲「そんなことありません!」

モノクマ「ま、別にいいけどね。今日事件が起こらなかったのはボクの後押しが足りなかったってだけだし」

大天「後押し……?」

モノクマ「オマエラ、明日を楽しみにしてろよ! アディオス!」

新家「お、おい!」

そして、モノクマは嵐のようにどこかへと消えていった。

平並「……」

新家「なんだったんだ、一体」

蒼神「明日……と、モノクマは言っていましたね」

城咲「そうですね……明日、何をする気なのでしょうか」

杉野「それは考えても仕方ありません。僕達に出来ることは、皆さんを信じる事です」

大天「……そう……だよね」

平並「……そうだ。今日の、皆の顔を見ただろ? 完全に不安がなくなったとは思わないけど、今日のカレー会は確実にいい影響を与えたはずだ」

モノクマが何をしてきたって、関係ない。

皆を……自分の事を信じていればいいんだ。

それで、問題はないはずなんだ。

《個室(ヒラナミ)》

モノクマのせいで最後は暗い空気になってしまったけど、カレー会そのものは成功をおさめた。

皆、これで少しは気楽になってくれると嬉しいんだけど……。

それにしても、モノクマは明日何をする気なんだろうか。

後押し……。

…………。



ぴんぽんぱんぽーん!

モノクマ『間もなく、午後10時、夜時間になります。夜時間は一部立ち入り禁止区域となります。健やかな成長のため、どうか安らかにお眠りください』

ブツッ!



平並「……とにかく、今日はもう寝よう」

明日の事は、明日考えればいいさ。

【4日目:リザルト】

杉野たちの主催の元、全員参加ではないものの無事成功したカレー会。
そのおかげか、皆の顔には元気が戻ったように思える。
けれど、最後に現れたモノクマは不穏な事を言い残していった……。

火ノ宮…5

杉野…4

古池…3.5

七原…3.5

新家…3.5

城咲…3.5

遠城…2.5

明日川…2.5

東雲…2.5

露草…2.5

蒼神…2.5

大天…2.5

スコット…2

根岸…2

岩国…0.5

今回は以上です。


次回は火曜日の21時からを予定してます。
次回でようやく動機発表です。

お疲れ様でした。


当初からカレー作りで事件を起こす気はありませんでしたが、某所のカレーを見てカレー作りそのものを止めようかと思いました。
やりましたけど。

少し遅れましたが開始します。

言うのを忘れていたので今言いますが、岩国の好感度は他の生徒に食らべ上がりづらくなっています。
ご了承ください。

【5日目】

《個室(ヒラナミ)》


ぴんぽんぱんぽーん!

モノクマ『オマエラ、おはようございます! 施設長のモノクマが朝七時をお知らせします! 今日も張り切って、一人前目指して頑張りましょう!』

ブツッ!


平並「……朝か」

今日も趣味の悪いアナウンスが目覚ましになった。

昨日モノクマが言っていたことの真意は……。

どの道、その時にならないと分かんないか。

平並「……行くか」


【朝食】

安価↓【人物指定】
〔三人まで選択可 岩国のみ単独〕

選択:【根岸、スコット】

《食事スペース》

……昨日のモノクマの事は言うべきではないだろうな。

無駄に皆の不安を煽る必要はない。

平並「よう」

スコット「平並か」

根岸「き、昨日は、た、大変だったな……」

平並「いや、別に大したことはしてないさ。企画したのは杉野だしな」

スコット「それでも、責任のある役回りを引き受けたのは立派な事だ」

そう手放しでほめられるとさすがに照れてしまう。

安価↓
【1、カレー作り、そっちの班はどうだった?】
【2、気分は晴れたか……?】

選択:【1、カレー作り、そっちの班はどうだった?】

平並「カレー作り、そっちの班はどうだった? 声を聴く限りだとよくできたみたいだけど」

スコット「いや、全然だめだった。あんなんじゃとても納得できないな」

平並「……そうだったのか?」

根岸「す、スコットの言う事だから……あ、あまり真に受けるなよ……」

平並「あ、そうか」

根岸「ぼ、ぼくは美味しいと思うよ……」

スコット「お前はあんなもので満足したのか? そうだとすればよほど理想が低いんだな」

根岸「そ、そうじゃないけど……き、昨日のは仲良くするのが、も、目的だったし……」

根岸「お、おまえも楽しかっただろ……?」

スコット「……まあな」

平並「なら、良かった」

実際の完成度はともかくとして、楽しんでくれたようだ。

皆、少なからず元気になっているようだし、やはりあのカレー会は開催してよかった。

これなら、殺人なんて誰も――



ぴんぽんぱんぽーん!




――え?


鳴り響いた、あのチャイム。

城咲「な、なんですか!?」

古池「こんな時間になる事なんかなかったよな……?」

スコット「誤作動とも思えないな」

火ノ宮「とにかく静かにしろォ!」

そして、モニターにモノクマの姿が映る。

モノクマ『ハイ! というわけで和気あいあいの青春物語はここまで! とにかく、全員メインプラザに集合! 来なきゃその場でおしおきだから絶対来いよ!』

ブツッ!


……言うだけ言って、映像は消えてしまった。

根岸「め、メインプラザに集合……?」

杉野「……なるほど、そういうことですか」

七原「え?」

杉野「いえ……モノクマが仕掛けてきたんですよ」

スコット「いつまでたっても殺人を犯さない俺達に、業を煮やしたってことか」

杉野「ええ、おそらくは」

火ノ宮「……とにかく、行くしかねえな」

大天「行かなきゃ『おしおき』……だもんね」

平並「……急ごう。ケチを付けられても面倒だ」

そして、俺達はメインプラザへと向かった。

《メインプラザ》

メインプラザに着いた俺達を待ち構えていたのは、壇上に立っている白と黒の絶望の象徴――モノクマだった。

モノクマ「うん、今回はまあまあのタイムだね。ま、全員揃ってるところで収集賭けたんだから当然なんだけどさ!」

火ノ宮「御託はどうだっていい! 俺達を呼び出した理由はなんだァ!」

当然の如く、モノクマの戯言に火ノ宮が食ってかかる。

モノクマ「一つはお説教だよ」

根岸「お、お説教……?」

モノクマ「そ、お説教! もう何人かには話しちゃったんですけどね」

そして、モノクマは昨日俺や城咲たちに話したことと同じような事を言いだした。

その結果は、火を見るよりも明らかだった。

火ノ宮「何を言われたって、殺人なんか犯すわけねえだろうが!」

琥珀『大体、人殺すなんて現実味が無さすぎるっつうの!』

七原「いくら煽られたって、皆を――友達を殺すわけないよ!」

昨日のカレー作りのおかげもあるのか、モノクマへの反抗心をあらわにする皆。

それを、モノクマは軽くあしらった。

モノクマ「はいはい、そうやってありきたりの上っ面のセリフはもう良いんだよ」

モノクマ「それより、これでようやく本題に入れるね」

蒼神「本題、ですか」

モノクマ「そう、本題だよ」

本題……それは間違いなく、昨日言っていた『後押し』の事だろう。

モノクマ「さて、ボクはね、正直オマエラの事を買い被っていました」

東雲「買い被る?」

モノクマ「うん。オマエラも、ここまでやってやれば、あとは自分で『成長』してくれると思っていたのです」

モノクマ「しかし! オマエラがやったことと言えばぬっるい友情をはぐくみ偽りの笑顔でカレー作りなどにいそしむ始末!」

モノクマ「一向に殺人を犯す気配なんてないではありませんか!」

明日川「……それは、ボクの知っている買い被るとは真逆の意味のようにも取れるのだが」

モノクマ「うるさい! これであってるの!」

仰々しく咳払いをする真似をしてから、モノクマはさらに言葉をつづけた。

モノクマ「ボクは、あまりにもオマエラが腑抜けていることに失望したのです!」

モノクマ「そして、思いました……これは、ボクがどうにかしなければならないと!」

モノクマ「すなわち! ボクがオマエラの背中を後押ししてあげるのです!」

根岸「よ、余計な御世話だ……」

蒼神「具体的には、何をなさるつもりですか?」

モノクマ「それは……ねえ、ミステリーに必要なものって、なんだと思う?」

火ノ宮「オイ! 話を逸らすんじゃねえ!」

モノクマ「逸らしてなんかないよ! 人の話はきちんときけ!」

火ノ宮「ぅぐっ!」

……火ノ宮にとって、どんな状況下だとしても今みたいな正論は答えるのだろう。

杉野「ミステリーに必要なもの……凶器でしょうか」

話を進めるために、杉野が質問に答える。

明日川「他に定番なものを挙げるとすれば、閉鎖空間やボク達のような遭難者だろうか」

火ノ宮「俺達の場合は遭難とはちげえけどな」

モノクマ「まあ、そんなところだね。そして、その多くを今の【少年少女ゼツボウの家】はみたしてるんだよ!」

たしかに、その通りだ。

モノクマ「けれど、なぜか殺人が起こらない……その理由をボクは気づいたのです!」

モノクマ「それは、あるものが足りていないからなのです!」

蒼神「あるもの……」

モノクマ「そう!」




モノクマ「それこそが動機なのです!」


平並「動機……」

モノクマ「オマエラみたいな未熟者は、『ここから出たい』って動機だけじゃ足りなかったんだね。うんうん。ま、仕方ないよね」

杉野「ということは、まさか」

モノクマ「そう! オマエラに、【動機】を配ってあげます!」

大天「い、いらない!」

モノクマ「そう言わずにさ、ボクからのプレゼントなんだから!」

モノクマ「【動機】はオマエラの『システム』に転送しておいたから、各自目を通しておくように!」

モノクマ「……どうしてもって時は見なくてもいいけど、その【動機】の中にはオマエラが一番知りたい情報が入ってるよ! それは忘れずにね!」

蒼神「知りたい情報?」

モノクマ「そ! それじゃあ、渡すものは渡したから後は頑張ってね!」

そして、モノクマはいつものようにどこかへと消えてしまった。

…………。

モノクマの残して行った【動機】。

その中身は果たしてなんなのか。

根岸「ね、ねえ……こ、これ、どうするの?」

平並「どうするって言ったって……」

杉野「……かなり、というよりまず間違いなく、この【動機】にはモノクマの悪意が入っているはずです」

杉野「ですが、僕はこの【動機】を確認した方が良いと思います」

新家「なんでだ!? 危ないんだろ!?」

杉野「危ないからですよ。もしここで【動機】を確認しないことを約束して解散したとしましょう」

杉野「では、どうやってその約束が守られているか確認するのですか?」

新家「それは……」

杉野「方法だけならいくらでもあげられます。互いに監視するとかですね。ただし、そのどれもが現実的ではありません」

杉野「ならば、ここで全員が【動機】を確認する方が良いと思いますよ」

確かに、杉野の言う事はもっともだ。

杉野「そうでなくとも、一人で【動機】を確認するより、複数人でいた時に確認する方が精神衛生上安全だと僕は考えます」

新家「……」

七原「……私は賛成かな」

大天「私も賛成。……モノクマの言う事を信じるなら、【動機】の中に私達が一番知りたいものが入ってるんだよね?」

蒼神「信じていいかはわかりませんがね」

大天「そんなの分かってるよ! ……でも、でも!」

平並「……見よう。どのみち、今見なくても、誰かが見てしまう気がする」

平並「だったら、今見た方が絶対に良い。……そうだよな?」

その意見に反論する声は上がらなかった。

『システム』を操作すると、メインメニューの一番下に【モノクマからのプレゼント】という欄が表示されていた。

そのメニューを選択すると、さらに【動機】という欄があらわれた。

平並「……これか」

杉野「では、皆さん一斉に確認する、ということでよろしいですね?」

蒼神「ええ……」

見渡せば、あの岩国を含めた全員が【動機】を確認しようとしていた。

平並「見るぞ……」

そして、【動機】を選択する。

====================

【あなたの一番知りたいことはなんですか?】

真っ黒な画面にその文が白い文字で表示された後、映像が始まった。

音は出ないけど、内容を見る分には問題ない。

映像は、どこかの家の中のようだ。

いや、この家、見覚えがある。

……これは、俺の家だ。

カメラが動き、どうやらリビングへ進むようだ。

その中にいたのは……。

====================


平並「父さん! 母さんも!」

そこには、父さんと母さん、そして弟が笑顔をこちらに向けていた。

顔は、モノクマに記憶を消されてしまったから覚えていない……。

けど、間違えるもんか!

この三人は間違いなく、俺の家族だ!

====================

映像は尚も進む。

三人がこちらに向かって語りかけてきている。

字幕も出た。

――――希望ヶ空学園での生活はどうだ?

――――元気にやってる?

――――お兄ちゃんが希望ヶ空にスカウトされて、僕も鼻が高いよ!

曰く、そんなことを言っていた。

====================



思い出せた……。

家族の顔を、思い出せた……!

――そう安堵したのもたったの一瞬だった。

====================

突如、映像は暗転し、画面には【二年後】の文字。

そして、再び映し出されたのは、ズタボロになった俺の家の光景だった。

そこに、さっきまで笑顔で俺にメッセージを送っていたあの三人の姿はない。

そして、三度暗転。

文章が表示される。

【あなたが一番知りたいことは、卒業の後に教えます!】

====================



そこで映像は途切れていた。

な、何だよこれ……。

頭が働かない。

俺の家族はどうなった……?

七原「きゃああああああ!!!」

大天「やだ、やだ、やめて……!!」

新家「おいっ! おい! なんなんだよ!」

岩国「……」

杉野「なるほど……これは……」

皆も狼狽や驚きの声を上げている。

……。

平並「……クソッ!」

完全にモノクマの罠だった……こんなの……!

……。

…………。

………………。

それからしばらくすると、皆も興奮だけは抑えられたようだ。

全員が沈黙し、うつむいている。

もっとも、不安の顔はまだ色濃く残っている。

きっと、俺もそうなんだろう。

皆が【動機】の映像を吟味し、それに隠された不安と恐怖にさいなまれる中、一人の生徒が声を上げた。


安価↓2【人物指定】

選択:【新家】

新家「なあ……皆が見たのは、どんなやつだった?」

平並「それは……」

どうしても口ごもってしまう。

新家「詳しくどんなものだったかまでは分からないけど、多分、皆の大切なものの映像……そして、二年後の映像……だよな?」

……その通りだ。

もっとも、俺の場合はものではなく人だったけど、それはきっとモノクマが生徒によって変えているのだろう。

皆も言葉にこそしないが、その反応で新家は察したらしい。

新家「そして、その大切なものが壊されたかもしれない……そういう映像だった……そうだろ?」

新家「ボクの【動機】は、ボクが建築に関わった、ボクの誇りである希望ツリーだった。そして、気づけば希望ツリーの周囲が火ノ海になっていた」

平並「……」

新家「……でも、それだけだ」

新家「確実に、壊されたかなんてわからない!」

新家「そもそも、これ自体がモノクマの作ったニセモノの可能性もあるよな!」

新家「だから……、こんな映像を見せられたからって、そんな顔すんなよ……!」

新家「ボク達は……仲間なんだろ……?」

…………。

……新家は強いな。

希望ツリーがどれだけ新家にとって大切なものかは説明されなくても分かる。

新家は、それを失う恐怖に打ち勝っている。

……でも。

根岸「で、でも……あ、あの映像が合成だなんて証拠もないよな……?」

俺の思っていたことを、俺の恐怖を、皆の考えていることを、根岸が口にした。

新家「そうだけど……だからって、モノクマの思うツボじゃダメだ!」

根岸「も、もちろん……! だ、誰かを殺そうだなんて思ってない……!」

根岸「で、でも……」

新家「……」

杉野「……とりあえず、今は解散にしましょう」

怯えた表情で口論する二人の間に入っていったのは杉野だった。

杉野「……個室に戻って、各自、頭を冷やしましょう」

杉野「……くれぐれも、滅多な事は考えないように」

その言葉を合図に、次々とメインプラザから人が消えていく。

新家「あっ、おい!」

そして、最後に俺と新家が残った。

平並「……」

新家「なあ、平並……! お前は……!」

平並「……ごめん」

俺は、新家をメインプラザに残して個室へと走った。

《個室(ヒラナミ)》

……。

…………。

あの【動機】は……本物なのか……。

……もしかして、新家の言うとおりこの映像は偽物なのだろうか。

……でも。

…………。

思考は一向にまとまらない。











…………もし。

……もしも。

あくまでも、もしもの話だ。

もしも、【卒業】を目指すとなると、誰か一人を殺してその他の皆を欺き、最終的にここにいる15人全員を殺す事になる。

身近な15人の命か、どこかにいる家族の3人か。

…………。

……この絶望の闇には、出口が無い。




















……………………。

…………。

……。

違う。

この二択は、身近な15人と、どこかにいる家族3人――――そんな選択肢じゃない。





たった五日間しか共に過ごしていない15人と、十数年の人生を共に歩んだ3人だ。


――そんな選択肢だったら、どっちを選ぶかなんて決まっている。





何時間も考えて……俺はある答えにたどり着いてしまった。








平並「――――殺さなきゃ」





今回は以上です。

凡人だったら、こう考えてしまう方が自然だろうなと思いました。

次回は事件関係をまとめるので、週末かその次の週末です。

お疲れ様でした。

今から事件の詳細を確定させるためにほんの少しだけ投下します。

事件に関する重要な安価があるのでよろしくお願いします。

《個室(ヒラナミ)》


――――――殺人。

それは、最大の禁忌にして決して越えてはいけない一線だ。

けれど、その先に希望があるなら――――。





頭では、分かっている。

どんな理由があっても殺人はしてはいけないのだと。

分かってはいるのだけど……。

何者にも代えられない家族のためなら、15人ぽっちの犠牲は仕方ない。

どうせ、たった数日しか顔を合わせていない連中なんだ。

そんな連中、死んだってかまわない。

平並「……」

最終的に全員を殺す事になるとはいえ、誰か一人は俺自身が俺の手で殺さなければならない。

それが、【卒業】の絶対条件だ。

平並「……誰を殺せばいいんだ」

安価↓2【人物指定(重要)】
〔【安価↓2】の人物を平並君がターゲットにします〕
〔また、【安価↓3】のコンマ値によって、CHAPTER1のクロ・被害者が決定いたします〕

選択:【根岸】&コンマ86によりCHAPTER1のクロ・被害者が決定いたしました。


短いですが、今回の更新は以上です。

次回、来週の日曜日になると思います。
お疲れ様でした。

短いですが更新します。

選択:【根岸】

根岸……そうだ。根岸にしよう。

根岸なら怯えた態度も多いし、うまくやればどこかに誘い出すことも可能だろう。

化学者なら力が強い訳でもないだろうし、多分、俺でも殺せるはずだ。

大丈夫だ。

殺れる。

……殺すとは言ったものの、どうやって殺そうか。

ただ殺すだけじゃダメだ。

殺した後にある【学級裁判】を乗り越えなきゃいけない。

平並「……誰かに事件現場を目撃されたらまずい……夜時間にどこかへ呼び出して、殺せば……」

呼び出す。

どこへ?

……倉庫はどうだろうか。

平並「あそこなら、物がいっぱいあるから何か使えるものがあるんじゃないか……?」

…………。

そして、簡易的なものではあるけど殺害計画が決まった。

まず、凶器には調理場の包丁を使う。

凶器セットは配られていたけど、もしあれが配られたのが俺だけだったら……。

そうでなくとも、まだ誰も開封してなかったら、そこから犯人が俺だとばれてしまうかもしれない。

確か、倉庫に小型ナイフのようなものはあったはずだけど、反撃されるような隙があっちゃだめだ。

殺すなら、一突きで殺せる包丁しかない。

そうだ、殺すときに倉庫にあるジャージを着ておけば、多少の返り血も防げるはずだ。

平並「……大丈夫だよな?」

根岸の呼び出しには、メモ帳の紙を使おうと思う。

脱出口が見つかった、と言ったあたりの事を書いておけばきっと来てくれるはずだ。

……大丈夫、問題ない。

今の時刻は8時を少し過ぎたあたりか。

……夜時間になる前に、包丁を取ってこよう。

《宿泊棟(玄関ホール)》

出来るだけ平静を装って個室を出る。

表情から気取られるのはダメだ。

平常心平常心……。

岩国「……凡人か」

平並「うおっ……よう、岩国」

玄関ホールにいた岩国に声をかけられた。

……大丈夫か?

怪しまれなかったか?

岩国「……お前は、あの動機を見てどう思った?」

とりあえず追及は無いようだ。

平並「どうって……」

安価↓
【1、あんなの、嘘に決まってる】
【2、……わからない】

選択:【2、……わからない】

平並「……わからない。本物かどうかなんて……」

ここについて、俺は嘘を付けなかった。

あれが本物かどうかは、まだ分からない。

けど、俺はそれを見て……。

平並「けど、皆の心を揺さぶるものだってことだけは間違いない。あの動画の真偽なんて関係ない」

岩国「……そうか」

平並「……ああ」

平並「そう言うお前はどうなんだ? 別に【動機】の内容まで詮索しないけどさ」

岩国「……あの動画の正体なんて、俺にも分からない」

岩国「けど、俺はどんな理由があろうと殺人なんて愚かな行為は絶対に犯さない。ただ、他の連中はどうだろうな」

岩国「俺はお前も含めて全く信用していない」

平並「……お前はそういう奴だよな」

岩国「……信じたって、どうせ裏切られるだけなんだ。……それとも、お前は信じていいのか?」

平並「……」

その言葉を聞いて、俺を信じてくれ、なんて言葉は出るはずもなかった。

だって、俺は……。

平並「……じゃあな」

そう言い残して、俺は宿泊棟を出た。

……非情にならなきゃだめだ。

だって、俺はこれから全員を殺すんだから。

《食事スペース》

食事スペースでは、城咲、古池、露草がテーブルについてそれぞれ夕飯を食べていた。

古池「よう、平島。お前も夕飯か」

平並「……あまり食欲が無いから果物だけ取りに来たんだ。あと、お前わざとやってるだろ」

古池「何のことかな?」

平並「……」

琥珀『凡一、もうそこには触れない方が良いぜ』

平並「……そうみたいだな」

城咲「もしよろしければわたしがおつくりした夕食があるのですが、どうですか?」

城咲「みなさん、今日は個室にこもりっきりだったようで、たくさん余ってるんです」

平並「悪いけど、遠慮しとくよ。さっきも言った通り、食欲ないし」

城咲「そうですか……」

《調理場》

食事スペースに人はいるものの、調理場や冷蔵庫には誰もいなかった。

城咲は前に、調理場にいれば調理場の中の事は把握できる、というようなことを言っていたけれど、この距離なら、多分問題ないだろう。

カモフラージュとして冷蔵庫からみかんをいくつか持ってくる。

そして、城咲たちの方を伺いながらシンクの下の扉を開けると、中には五本の包丁がかかっていた。

そのうちの一本をこっそりと取り出し、服の下に隠す。

下手に会話してボロをだしても困るから、城咲たちに話しかけられないようにそのまま調理場を、そして食事スペースを後にした。

《個室(ヒラナミ)》

その後は誰とも会わずに個室に戻ってきた。

城咲の言っていた通り、皆個室に籠っているのだろう。





……今、俺の手には包丁が握られている。

持ってきてしまった。

引き返すなら今の内だけど……今更やめる気なんてさらさらない。

ここから、出ないと。

とりあえず包丁は引き出しにしまい、部屋に備え付けてあった机の上のメモ帳を手に取る。

一枚を破りとり、出来るだけ筆跡が出ないように角ばった文字で呼び出しの手紙を書き始めた。



====================

脱出口が見つかった。

モノクマに見つからないように、夜時間の1時に倉庫に集合。

====================



平並「……まあ、こんなところか?」

色々と長い文を書き連ねたって仕方がないし、これでいいか。

その呼び出し状を持って、個室を出た。

ネームプレートを目印に根岸の個室を探す。

平並「ここか……」

根岸が個室の中にいようといまいと、とにかく手紙だけは入れておこうと思う。

周りに誰もいないことを確認して、ドアポストから部屋の中に差し込む。

気付くかはわからないけど、一応ドアチャイムを鳴らした。

そして、ピンポンダッシュのように、俺は自分の個室へと逃げ込んだ。

これで、後は夜時間を待つだけだ。

もう止まれない。

殺害計画は始まった。

……仕方ない事なんだ。

どうせ人生で関わるかどうかもわからなかった人たちだ。

家族に、会うためなんだ。

だから、仕方ないんだ。

今日はここまで。
最近短くてすみません。

次回は来週の日曜日の予定です。
お疲れ様でした。

9時から投下します。

【夜時間:0時30分】

《個室(ヒラナミ)》

夜10時を告げるモノクマのアナウンスが流れてから、俺はずっと包丁を見つめている。

殺さなきゃいけないんだ。

殺さないと。

……そろそろ倉庫に行って根岸が来るのを待っていた方が良いかもな。

《宿泊棟》

音を立てないようにしてこっそりと個室のドアを開ける。

……誰もいない。

それはそうだ。そのためにこんな時間を選んだんだから。

誰かに見つかる前に、早く倉庫に行っちゃおう。

そう思って、入り口の方へと歩みを進めた。

そして、今まさに扉に手をかけようかとした瞬間。



カツン、カツン……。



背後から、足音が聞こえた。

反射的に振り返ると、そこにいたのは……。

安価↓【コンマ判定】

そこには、露草が立っていた。

露草「どこに行くの? 凡一ちゃん」

……まずい、見つかった。

誤魔化せるか?

平並「……眠れなかったんだ。怖くて不安でさ、ちょっと外にでてリフレッシュしようかと思って」

琥珀『ま、そんな気にもなるよな』

平並「そっちこそ、どうしたんだ?」

琥珀『オレはちょっと飲み物を取りに来たんだが……』

露草「ねえ、そのリフレッシュ、翡翠もついていっていい?」

平並「……ああ、別にいいよ」

少し怖いけど、まだ約束の時間までは少しあるから、適当に切り上げて、すぐに宿泊棟に一度戻れば大丈夫だろう。

《自然エリア》

俺としては宿泊棟の前で軽く済ませるつもりだったけど、露草の提案で自然エリアに行くことになった。

そっちの方が人工物が少ない分星が良く見えるのだと琥珀が言っていた。

露草「きれいだね」

平並「……ああ」

確かにそれはその通りだった。

ドームの天井をそういう設定にしているからかは知らないけど、確かに宿泊エリアよりも自然エリアの方が星が良く見える。

俺達の頭上には、満天の星空が広がっていた。

少しだけ、気分が晴れたような、そんな気がする。

……けれど、俺の胸中にはまだ明らかな殺意がある事もまた事実だった。

……殺さなきゃいけないんだ、俺は。

……そうじゃないと。

琥珀『なあ、平並』

そんなことを考えていると、露草……というより琥珀が話しかけてきた。

平並「なんだ?」

琥珀『回りくどいのは嫌いだから率直に言うぜ。お前、誰かを殺そうとしてるよな?』

平並「……っ! ……そんなわけないだろ」

露草「それ、嘘でしょ?」

平並「嘘じゃない!」

露草「ううん、嘘だよ。だって、そうじゃなかったら、そんな顔してないから」

平並「……」

琥珀『大体、怖くて不安だったら、気分転換とは言え個室から出てこないはずだからな』

平並「……そうか」

全部、読まれてる……。

琥珀『怖いのは分かるけどよ、だからって、外に出るために誰かを殺すなんて、間違ってるぜ!』

平並「うるさい!」

平並「偉そうなことを言うな!」

露草「……」

平並「そんなこと分かってるんだよ……・人を殺していい理由なんてあるはず無いって!」

平並「分かってるんだよ……」

露草「だったら、なんで……」

平並「仕方ないじゃないか! 俺はお前達と違ってただの凡人なんだよ!」

平並「そんな強くなんかないんだよ!」

平並「俺は、家族に会いたいんだよ……!」

琥珀『オレだって、別に不安じゃない訳じゃないぜ。強くなんかないぞ』

露草「……それでも、だめなものはだめなんだよ」

平並「うるさい……! なんなんだよ、さっきから!」

平並「予定とは違うけど……お前を殺したっていいんだぞ!」

平並「こんな時間に自然エリアに来る人間なんていない……今なら、お前を殺したって誰も気づかない!」

服の下に隠していた包丁を取り出して、露草に向ける。

露草「それ……!」

平並「包丁を見せた以上、もうお前を殺すしか、ない……!」

殺意を露草に向ける。

なのに、露草は殆ど動揺していないように見えた。

琥珀『お前……放蕩に殺す気か?』

平並「……殺す。俺は本気だ」

露草「殺せないよ。凡一ちゃんは、【超高校級の普通】……なんだよね?」

平並「……だから何なんだよ」

琥珀『だったら、凡一には皆を殺せないよ。お前はそんな人間じゃない」

平並「たった五日で俺の何が分かるって言うんだよ!」

平並「もしかしたら、お前はそういう人間かもしれないけどな。俺は、お前の言うような人間じゃない……!」

平並「俺は、弱い人間なんだ……仕方ないんだ……!」

露草「じゃあ、本当に殺せるの? 同級生になるはずだった翡翠達tを」



『俺達16人は、全員、希望ヶ空学園に20期生として入学する予定だった。』



平並「……それはそれだろ……今はもうそんな状況じゃない!」

琥珀『ホントに、皆が死んじゃってもいいって思ってんのか?』

平並「家族に会うためなら、仕方ないだろ! 俺達は、まだ出会って一週間もたってないんだぞ!」

露草「確かに、期間は短いけど……【卒業】なんてしたら、この間に仲良くなった人も、皆死んじゃうんだよ?」

平並「分かってる!」




『七原「だから私、双六はあんまり好きじゃないんだよね」 』

『杉野「おや、平並君ですか」 』

『城咲「見ての通り、夕食のしこみです」 』

『古池「おっ、平岡じゃねえか! いやな、俺って実は霊感あるからよ、ここにいる霊をみてたんだ」』

『スコット「ああ。シロサキの料理が美味しいのが悔しくてな」』

『新家「そいつ、結構アレなんだよ。ほら、えーと、そうだ、負けず嫌い」』



皆の顔が思い浮かんでは消えていく。

平並「……でも……でも!」

琥珀『……まだ、諦めきれないのか』

平並「だって……!」

露草「じゃあさ、あんなに楽しくカレーを作ったよね!」

平並「ぐ……!」



『火ノ宮「よしてめーらァ! 文句のつけようのないカレーをつくんぞ!」』

『琥珀『別に張り合うもんでもないけどな』 』

『七原「ま、美味しくできるのはいいじゃん!」 』



皆と絆を深めるために開催したカレー会。

琥珀『あんなに、皆で笑いあってたよな!』

思い出が、俺の前に立ちはだかる。

平並「うぅ……」

露草「それでも、皆死んだって良いって言えるの!?」

平並「……あぁ……あ……!」

全身の力が抜ける。

露草「凡一ちゃんが家族の事を心配してるのは分かるよ。多分、他の皆も同じだもん」

琥珀『でも、それと、皆を殺すなんて、比べること自体がまちがってんだよ』

平並「…………そうだな……!」

琥珀『自分の事を凡人だって言うんなら、人殺しなんてするんじゃねえ!』

露草「そんなの、凡人なんかじゃない……ただの、殺人鬼だよ……」

そして。




カラン……。




俺の手から包丁が零れ落ちるた。

平並「うぅ……あぁ……!」

――俺は、間違っていた……!

露草「……良かった」

平並「ごめん……ごめん……!」

涙が、止まらない。

琥珀『思いとどまったならいいんだよ。間違える事なんて、いくらでもあるんだからな』

平並「皆にも、謝らないと……皆を裏切って……ごめんって……!」

露草「うん……そうだね」

数分後。



時間が経って、なんとか落ち着いてきた。

琥珀『もう大丈夫か?』

平並「ああ。……すまなかったな」

露草「いいんだよ、別に。翡翠たちは一蓮托生の仲間なんだから」

平並「『仲間』……か」

……新家にも、謝らないといけないな。

あの時、俺は新家の言葉に賛同できなかったから。

琥珀『いつまでもここにいたってしょうがないし、もう宿泊棟に戻ろうぜ』

翡翠「そうしよ。翡翠ももう眠いよ」

平並「……ああ」

【夜時間:1時】

《宿泊-自然ゲート》

俺達は、自然エリアを後にして宿泊エリアへつながる廊下を歩いていた。

琥珀『そう言えば、お前、本当は誰を殺すつもりだったんだ?』

平並「……根岸だよ。手紙で倉庫に呼び出したんだ」

露草「倉庫か。確かに色々あるから、都合はいいのかも……」

平並「……ああ。あの時の俺はどうかしていたよ……根岸には、特に謝らないと」

露草「凶器にするつもりだったのは、その包丁?」

平並「ああ……一突きで殺せるものって言ったら、これしか思いつかなかった」

露草「翡翠もそれくらいしか思いつかないな……じゃあ、持ち出したのは凡一ちゃんだったんだ」

平並「……持ち出したこと、ばれてたのか?」

琥珀『あのあと、かなたが包丁がなくなってることに気づいたんだよ。誰が持ち出したかまでは分からなかったけどな』

平並「……そうだったのか」

廊下をでて、宿泊エリアへと戻ってくる。

すると、ちょうど倉庫の扉を開ける根岸の後ろ姿が見えた。

……倉庫に行って、根岸に謝らないと。

そう思って歩き始めた足は、次の露草の言葉で止まった。

露草「でもさ、なんで二本も持ち出したの?」



……二本?



平並「ちょっと待て露草。それってどういう――」






「うわあああああああああああああああ!!!!!!!!」





平並「……っ!?」

今の、根岸の声だ!

急いで、俺達は倉庫へと向かった。

倉庫から後ずさりで出てくる根岸。

平並「根岸! どうした!?」

根岸「っ! お、おまえたちも呼ばれたのか……!」

呼ばれた、というのはきっと俺の出した手紙の事だろう。

平並「そんなことより、今の声は!?」

琥珀『ちょっと待て。お前が持っているのはなんだ?』

根岸「っ! こ、これは……!」

根岸は、とっさに右手を背中に隠したが、その手に持っていたものは俺の目にはっきりと映っていた。

平並「お前それ……拳銃か……?」

根岸「ち、違う……! ぼ、ぼくじゃない!」

平並「あっ、おい!」

足をもつらせながら宿泊棟へと走り去る根岸。

平並「待てよ!」

根岸を追いかけようとしたが、瞬間、

露草「ひぃっ!!!」

露草がそんな叫び声を上げた。

平並「露草! 大丈夫か!」

露草「あ、あれ……!」

平並「あれ……?」

露草が指差した先の、倉庫の中を覗き込んだ。

倉庫の中は、鼻をつんざくような鉄の臭いが充満していた。

床に散らばるのは無数のガラス片。

それを覆い尽くすように広がっているのは、真っ赤に染まった液体――血だ。

そして、その血に沈むように何かが倉庫の真ん中で仰向けに横たわっていた。






ああ、数時間前の俺はなんて言っていたか。

『どうせ、たった数日しか顔を合わせていない連中なんだ』

『そんな連中、死んだってかまわない』

あの時の俺は、なんて愚かだったのか。

人は死んだら、もうそれまでなのだ。

死んでいい人なんて、いないのだ。

それがようやく分かったのに、どうして、ほら、俺の目の前で。






ずたずたにされて鮮血に染まったつなぎに、血の滴る安全ヘルメットを被って。



――――『【超高校級の宮大工】新家 柱』が死んでいるのだろうか。









平並「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!」





ぴんぽんぱんぽーん!


モノクマ『死体が発見されました!一定時間の捜査の後、学級裁判を行います!』




CHAPTER1:【ああ絶望は凡人に微笑む】 (非)日常編 END


【生き残りメンバー】 16人→15人
◎平並 凡一
◎スコット・ブラウニング
◎根岸 章
◎古池 河彦
◎杉野 悠輔
◎遠城 冬真
◎火ノ宮 範太
×【アラヤ ハシラ:DEAD】
◎七原 菜々香
◎明日川 棗
◎東雲 瑞樹
◎蒼神 紫苑
◎岩国 琴刃
◎城咲 かなた
◎大天 翔
◎露草 翡翠

今回は以上です。
というわけで、最初の被害者は新家クンでした。

次回も来週の日曜日を予定していますが、裁判をちゃんとまとめてからの捜査にしたいのでもしかしたら再来週かもしれません。
お疲れ様でした。

今日の更新はナシです。
すいません。

だいぶ時間が空きましたが、非日常編が書きあがったので、明日の18時から投下します。
捜査の安価があるのでよろしくお願いします。

開始します。

がんばれ
応援してるよヽ(*´∀`)ノ


   ああ絶望は
  ――――――┐
           │凡
           │人
           |に    CHAPTER1   【非日常編】
           │微
           |笑       
           |む



『「新家柱だ。【超高校級の宮大工】とは、ボクの事だよ」』


最初に出会った時、俺は彼の存在を忘れていた。


『新家「そう、それ。昔から空気で存在感が無くて……」』


本人の自称する通り、影は薄かったような気がする。


『新家「そいつ、結構アレなんだよ。ほら、えーと、そうだ、負けず嫌い」』


けれど、それでも、彼は欠かせない俺達の仲間だった。


手先はとても器用で。


『新家「なあ……皆が見たのは、どんなやつだった?」』


皆の心が折れかけた時、どうにか皆を支えようとしていた。

そんな、【新家 柱】が、間違いなく、俺の目の前で死んでいた。

平並「おい、おい、なんなんだよ……!」

平並「冗談だろ、なあ……!」

血の海に靴を染めながら一歩ずつ新家の体へと向かっていく。

ガチャリガチャリと割れたガラスを踏みながら進んでいく。

そうしてようやく持ち上げた新家の手は、既に冷たくなり始めていた。

ふと、うしろから息を飲む音が聞こえた。

振り向くと、露草の他に、蒼神、城咲、東雲の三人が、倉庫の入り口に立っていた。

蒼神「……殺人が起こってしまったのですね」

平並「……ああ。俺が来たときには、もう……」

蒼神「そうですか……」

城咲「わたし、皆さんを呼んできます!」

そう言って駆け出そうとする城咲の前に、突如白黒のぬいぐるみが立ちふさがった。

モノクマだ。

モノクマ「その必要はないよ、城咲サン。今、ボクが皆に教えてまわってるから、皆じきにここに集まると思うよ」

平並「教えてまわってる?」

モノクマ「うん。さっきのアナウンス、聞いたでしょ?」

さっきのアナウンス……。

蒼神「……死体が発見された、というアナウンスですわね?」

モノクマ「そうそう」

そういえば、そんな声を聴いたような気も……。

モノクマ「あの放送はね、出来るだけ裁判を公平に行うものなの。だから、あのアナウンスの後はよほどのことが無ければ事件現場に誘導するつもりだよ」

城咲「確かに、わたしたちもそのアナウンスで殺人の発生を知りましたが……」

モノクマ「じゃあ、もう少し待っててね。全員揃ったら改めて説明をするから」

そう言うと、モノクマはいつものように消えてしまった。

蒼神「……それでは、皆さんが揃うまで待つとして、とりあえず平並君は、新家君の死体から離れてこちらに来ていただけますか?」

平並「どうして……」

蒼神「……殺人が起こってしまった以上、わたくし達を次に待つのは学級裁判ですわ。素人知識ですが、出来るだけ現場保全はしておいた方が良いでしょう」

平並「…………わかったよ」

新家の手をそっと地面に置き、ゆっくりと立ち上がり、入り口へと戻る。

そして、しばらくして倉庫の入り口に15人が揃った。

スコット「……ちっ」

火ノ宮「誰がこんな事をしやがったんだ! オラァ!」

七原「そんな……」

それぞれがそれぞれなりの反応を見せる中、再びその白黒の悪魔は俺達の前へと現れた。

モノクマ「はい、皆さんが集まるまで15分かかりました!」

普段ならモノクマの軽口に文句の一つでも上がるのだが、今は、誰もそんな余裕はないようだった。

モノクマ「それにしても、ようやく! ようやく殺人が起こったね!」

モノクマ「いやあ、ここまで長かったねえ、面白くない茶番ばっかり見せられてボクの脳みそがパンクしそうだったよ、あぶないあぶない」

モノクマ「まさかここまでボクの思い通りになるとは思わなかったけど、いやはや、愉快愉快。うぷぷぷぷ……」

根岸「な、何言ってるんだ……ど、どうせお前が殺したんだろ……!」

モノクマ「そんなわけないじゃーん! 新家君を殺したクロはオマエラの中にいるんだよ!」

モノクマ「カレー作りだかなんだか色々やってたみたいだけど、全部無駄だったね!」

杉野「……くっ……」

蒼神「……いいから本題に入ってください」

モノクマ「あ、そう? じゃあ、そうするね」

モノクマ「えー、皆確認したとおり、新家君が何者かに殺されてしまいました!」

モノクマ「というわけで、オマエラには学級裁判で、新家君を殺した真犯人、すなわちクロを見つけ出していただきます!」

モノクマ「それじゃ、これからの捜査の為に時間をとるので、じゃんじゃん捜査しちゃってください!」

モノクマ「あ、捜査時間は食事スペースと野外炊さん場のカギは開けておくからね。捜査はご自由にどうぞ」

火ノ宮「待てよモノクマ! オレ達は警察じゃねーんだ……捜査なんかできるわけねーだろ!」

モノクマ「知らないよ、そんなの! それがレギュレーションなんだから!」

モノクマ「オマエラ自身の命がかかってんだから血反吐を吐いてでも捜査するんだよ! 甘ったれんな!」

モノクマ「あ、でも、さすがに死体の検死とかは出来ないだろうからそれだけはやっておいたよ。【動機】と同じく『システム』に送っておいたから、確認しておくように!」

モノクマ「それじゃ、頑張ってね! アディオス!」

例の如くモノクマはそう言い残し、どこかへと消えていった。

重く停滞した空気だけが場に残っていた。

東雲「ねえ……これ、現実……なんだよね」

杉野「……ええ……夢や幻なんかじゃありません」

杉野「新家君は、確かに殺されていました。……しかも、その犯人は僕達の中にいる……」

根岸「も、モノクマの言う事を、し、信じるのかよ……!」

岩国「俺からすれば、ぬいぐるみの言う事をまったく信じないでこいつらのことを盲信するほうがどうかと思うがな」

根岸「……な、何言ってんだよ……」

岩国「誰かが俺達を裏切って殺人を犯した、と言う方がよっぽど現実的だろう……どうせ、皆裏切るんだからな」

七原「そんな言い方……!」

こうして、次第にその騒ぎは大きくなっていく。

けど、俺はその口論には参加しなかった。

それよりも、俺は目の前で新家の死体を見て、俺がやろうとしていたことの罪の大きさに押しつぶされそうだった。

東雲「現実……これは現実だったんだ……」

だから、聞き逃してしまいそうだった。



東雲「……ふふっ!」



その、小さな笑い声を。

平並「お、おい東雲……なんで笑ってんだよ……」

東雲「え? だって、笑わずにはいられないじゃない」


東雲「こんな楽しいことが現実なのよ!」


根岸「……は?」

平並「何言ってるんだよ……東雲……」

東雲「いや、いきなりこんなところに閉じ込められて殺しあえって言われても、現実味がまったくなかったのよ」

東雲「けど、あの死体を見て確信したわ。やっぱりここは現実なんだって」

東雲「一歩間違えれば死んでいたのはアタシだったかもしれないわ」

東雲「このスリルがアタシがずっと待ち望んでいたものだったのよ!」

東雲「この生と死が隣り合った空間が現実だったなんて最高じゃない!」

東雲「しかも、これで終わりじゃない……今度は命を懸けた【学級裁判】とやらが始まるみたいだわ」

東雲「皆、楽しみましょうね!」

大天「な、何言ってんの……人が死んでるんだよ!」

東雲「だからこそよ! 死ぬリスクの無いゲームなんて、そんなのやる価値ないわ!」

遠城「これはゲームではない!」

口論は収まる気配もなくヒートアップしていく。

それを中断させたのは、やはりというかなんというか、蒼神だった。

蒼神「そこまでにしてください」

蒼神「今はとにかく、言い争うよりも【学級裁判】に向けた捜査をするべきですわ」

根岸「お、お前も、この中に新家を殺した、は、犯人がいると思ってんのかよ……!」

蒼神「……それをはっきりさせるためでもあるのです」

蒼神「ここにいるのは捜査に関しては素人ばかりですが、それでも、こんな閉鎖空間で殺人を行えば何らかの証拠は残るはず……」

蒼神「そうすれば、モノクマの発言の真偽がはっきりすると思いますわ」

根岸「……」

東雲「そうそう! せっかく用意してくれたゲーム、楽しまなきゃ損じゃない!」

遠城「……だから!」

杉野「……東雲さん、しばらく黙っていていただけますか?」

城咲「ですが、捜査と言ってもなにをすればよいのですか?」

蒼神「……とにかく、普段と変わったことはないか、もしくは怪しい行動をした人物を見なかったかを調べればよいかと思います」

蒼神「幸い、この施設はとてつもなく広い施設というわけでもありませんし、規則でもポイ捨ては禁止されているので、何かは見つかると思います」

蒼神「みなさんで、手分けして探しましょう」

火ノ宮「手分けして探すのはいいけどよ、誰か現場を見張っといた方が良いんじゃねーか? 犯人が証拠を隠滅するかもしれねえからな」

蒼神「それは……そうですわね」

蒼神「だれか、現場の見張り……現場保全に努めて下さる方はいらっしゃいますか?」

その蒼神の問いかけに手を挙げたのは、二人だった。

大天「私、やるよ……あまり動き回る気分になれないし、捜査の役には立てそうにないから……」

古池「……なら、俺もやる。一人だけだと、大天がクロだったら怖いだろ」

大天「私を疑ってるの……?」

古池「そう言うわけじゃねえけど……どちらにしても、二人いた方が安全だろ」

蒼神「では、現場保全はお二方にお任せしますわ」

嵐なんかに負けないで!ヽ(*´∀`)ノ

蒼神「あと決めるべきことは……モノクマがやったという検死の確認も含めて、検死をする方、ですかね」

平並「検死って……そんなのできるやついるのか」

蒼神「正直、期待は出来ません。……【超高校級の鑑識】や【超高校級の探偵】が居れば話は別なのでしょうが……」

平並「何か、死体に関して知識のある人か……」

杉野「【超高校級の図書委員】である、明日川さんなら、そういった知識も持ち合わせているのではないですか?」

根岸「な、なるほど……み、ミステリとか読んでるなら、もしかして……」

明日川「……悪いが、ボクが好むのはフィクションばかりでね。現実の死体は見たことが無いし、ボクの活躍できるシーンはなさそうだ」

蒼神「……なら、検死に関しては諦めますか」

火ノ宮「待て。オレがやる」

根岸「ひ、火ノ宮が? お、おまえ、検死なんかできたのかよ?」

火ノ宮「ああ? 出来るわけねーだろ!」

根岸「な、ならなんで名乗り出たんだ……!」

火ノ宮「検死はできねーが、知識ならある……オレは【超高校級のクレーマー】だからな、いつ必要になるかも分からねえから、知識は出来るだけ詰め込んでんだ」

琥珀『クレーマーも大変なんだな』

火ノ宮「だから、素人なりに判断は下せるかもしれねえから、誰も出来る奴が居ねえなら、オレがやるわ」

蒼神「でしたら、検死は火ノ宮君にお願いしますわ」

蒼神「もとより、あくまでモノクマの検死による情報の信ぴょう性を高めるためのものです。成果が得られなくても責めたりはしませんわ」

火ノ宮「当たり前だ! オレは素人だっつったろ!」

……さすがは【超高校級の生徒会長】、蒼神だ。

騒ぎを鎮めただけでなく、現場保全やモノクマの罠の可能性まで潰そうと役割を決めた。

杉野「……とにかく、これで決めるべきことは決めましたかね」

蒼神「では、ひとまず解散にして、捜査を始めましょう」

蒼神「みなさん、かかってるのはわたくし達の命です。そのことをゆめゆめわすれない様にお願いいたします」

荒らしはよくないことだよ!ヽ(*´∀`)ノ

【学級裁判】……。

この中に、新家を殺したクロがいる……。

俺は、そのクロを責める権利なんてない。

俺だって、絶望に染まって根岸を殺そうとしたのだから。

……けど、俺は皆を裏切ってしまった。

俺には、皆を助ける義務がある。

皆を助けるために、クロを明らかにする義務があるのだ。

……だから、とにかく、今は捜査だ。

これは、償いだ。

    〈《【捜査開始】》〉

《倉庫(入り口)》

蒼神の号令の後、俺達の多くは倉庫に残っていた。

とはいえ、倉庫には新家の血が広がっているのだ。

七原や明日川をはじめとして何人かは倉庫から離れていったし、倉庫の中も十何人も入れるような広さはない。

とりあえず、中に入る前にモノクマの検死の結果を見てみよう。

『システム』を操作して、【動機】のデータが入っていた【モノクマからのプレゼント】の項目を選択する。

……この、【モノクマファイル1】か?

平並「……1ってのが腹立たしいな」

もう、こんな事件なんて起こしてはいけないのに。

……とにかく見てみよう。

一人でコピペを連打しても面白くないでしょやめようよ!ヽ(*´∀`)ノ



===================

【モノクマファイル1】

被害者は新家柱。

死亡時刻は深夜12時過ぎ。

死体発見現場は【宿泊エリア】の倉庫。

死因は失血死。

全身に無数の傷がある。

===================

平並「……まあ、こんなものか」

書いてあることはシンプルだ。

必要最低限の情報しかモノクマは与えないようだ。

平並「見ればわかることも書いてあるけど、このなかで有効な情報は……死亡時刻かな」

まあ、死体を見たくない人のためのものでもあるのだろう。


   コトダマGET!! 【モノクマファイル1】

『新家の検死結果。死亡時刻は深夜12時過ぎ。
 死因は失血死。全身に無数の傷がある。』

《倉庫》

モノクマファイルを確認すると、倉庫の中に入った。

倉庫の中には、現場保全の大天、古池と検死を行っている火ノ宮に加えて、杉野と岩国がいた。

中央の新家の死体もあるし、これだけの人数が揃っていれば倉庫も狭く感じてしまう。

……さて、どうしようか。

安価↓
【1、新家の死体を調べる(火ノ宮と話す)】
【2、棚を調べる】
【3、大天、古池と話す】
【4、杉野と話す】
【5、岩国と話す】

便乗して誰かころしにいく

荒らしさんコピペじゃなきゃいいってもんじゃないよ!ヽ(*´∀`)ノ

弁護士の上げ直しスレ結局止まってるじゃんかよ!ヽ(*´∀`)ノ

選択:【1、新家の死体を調べる(火ノ宮と話す)】

倉庫の中央には、今もなお新家の死体が横たわっている。

……昨日の朝までは、はっきりと動いて、生きていたからだが、今ではピクリとも動く気配が無い。

……くそっ……。

けど、新家の死体を調べずに真実が明らかになるとは思えない。

とにかく、死体のそばまで近づかないと。

そして、俺は大きく広がった血だまりの中を、粉々になったガラスの上を歩いていく。

平並「……死体を発見した時もそうだったけど、なんでこんなにガラスが散らばってるんだ?」

よく見てみれば、その破片は一種類ではない。

棚の側にも目を向けてみれば、その正体が分かった。

大きな水槽やビーカー、空き瓶にすりガラスなどと言ったものが割れて散らばっているようだった。

でも、何故、こんな広範囲に広がっているんだ?


   コトダマGET!! 【散乱したガラス】

『倉庫の床にガラスが散らばっていた。

 倉庫に置いてあった水槽、ビーカー、空き瓶、すりガラス等が割れたようだ。』

平並「……火ノ宮、どうだ?」

火ノ宮「あ? ああ、平並か」

検死をしている火ノ宮に話しかける。

火ノ宮「やっぱ素人には無理だな。モノクマファイル以上の事は分かんねえわ」

平並「……そうか」

火ノ宮「ただ、気になることは見つかったぜ」

平並「気になる事?」

火ノ宮「ああ。新家の体を見せても大丈夫か?」

平並「……ああ。問題ない、見せてくれ」

……俺がやろうとしたことの末路は、俺は見なくてはいけない。

火ノ宮「なら……ほら」

火ノ宮が新家の服をめくると、その下から無数の傷跡があらわれた。

平並「うっ……!」

服そのものがボロボロになっていたし、モノクマファイルで知っていたとはいえ、実際にその体を見ると、その生々しさに吐き気が湧いてくる。

火ノ宮「……まァ、一目見たから、もう目をそらしていいぞ」

平並「…………いや、見る」

俺は、見なきゃいけないんだ。

火ノ宮「アァ? ならいいけどよ……で、この傷なんだが、モノクマファイルの通り全身についてやがる」

平並「……そうだな」

火ノ宮「多分、犯人は一心不乱に刺したんだろうぜ。メッタ刺しだ」

平並「……そうか」

火ノ宮「ただ、この傷、傷口がどれも荒いというか……なんつーんだろうな」

平並「荒い?」

火ノ宮「ああ。きっと犯人が使った刃物はよほど刃こぼれしてたんだろうな」

火ノ宮「もっと言えば、傷口はそんなに深くなかったな」

平並「なるほど……」


   コトダマGET!! 【死体の傷】

『新家についていた全身の傷は、傷口が荒く、あまり深いものではなかった』

わざと変な安価をとっちゃダメだよ!ヽ(*´∀`)ノ

平並「……なら、凶器は小型ナイフなんじゃないか? 確かあったよな、この倉庫の中に」

火ノ宮「いや、そりゃねえな」

俺の推理を、火ノ宮はそう言って否定する。

火ノ宮「あのナイフは刃こぼれしてなかったし、それ以前に、倉庫にあった刃物が使われたってことはねえよ」

平並「なんでだ?」

火ノ宮「昨日、夜時間になるまで遠城のヤツと倉庫で危ないものが無いか確認してたんだ」

火ノ宮「そんでよ、刃物類はもともとまとまってたんだが、一つの箱の中に入れて棚の奥の方に押し込んだ」

火ノ宮「凶器に使われたらまずいからと思ったが……ただ、下手に騒がれたらまずいから、持ち出さなかったんだ」

平並「へえ……」

火ノ宮「で、さっきちらっとその刃物を確認してみたが、特に血が付いてたりだのって事は無かったし、使われたようにも思えなかった」

火ノ宮「だから、倉庫にあった刃物は凶器じゃねえぜ」

平並「なるほどな……」


   コトダマGET!! 【倉庫の刃物類】

『倉庫にあった刃物は一か所にまとまっていた。使用された痕跡はナシ。』


   コトダマGET!! 【火ノ宮の証言】

『火ノ宮と遠城は、昨日、夜時間になるまでは倉庫にいたようだ。』

火ノ宮「あと、新家のポケットの中からこんなものが出てきたぞ」

火ノ宮は、脇に置いていた一枚のくしゃくしゃの紙を俺に見せてきた。

ポケットに入っていたからか、血に染まっている。

右上の部分が少し破けているが、文章は問題なく読むことが出来た。


======================

新家君へ

さっきはすまなかった。

謝罪したいので、12時に倉庫に来てほしい。

======================


平並「……これは、呼び出し状か!」

火ノ宮「あァ。呼び出された時間から見ても間違いないだろ」

文字は大きくガタついており、筆跡からクロを特定はできないだろう。

平並「『さっきはすまなかった』、ねえ……」


   コトダマGET!! 【呼び出し状】

『新家が持っていた。右上が破られており、何かの謝罪をしている。

 呼び出し時間は12時。』

火ノ宮「あと、アレが無かったぞ」

平並「アレ?」

火ノ宮「新家の『システム』だ。ポケットを色々探してみたが、どこにも無かった」

平並「『システム』が?」

火ノ宮「あァ。個室のカギにもなってるんだから手放すわけがねえ」

火ノ宮「指にはめてなかったからポケットに入れてるかと思ったんだが、持ってなかった」

平並「ってことは、刺された時に落としたとか?」

火ノ宮「そんなところだろうな」


   コトダマGET!! 【新家の『システム』】

『新家は『システム』を持っていなかった。手放すとは到底思えないのだが……。』

自分で変な安価をとって荒らしの口実にするのはやめよう!ヽ(*´∀`)ノ

平並「じゃあ、俺は他のところも捜査してくる」

火ノ宮「そうか。オレはもうちょっと検死……というか、新家の死体を調べてみるが……」

平並「……無理するなよ」

火ノ宮「アァ? 無理なんかするかよ! てめーこそぶっ倒れんじゃねえぞ!」

……これはもはや一周回ってツンデレなんじゃないだろか。


さて、どうしようか。

安価↓
【2、棚を調べる】
【3、大天、古池と話す】
【4、杉野と話す】
【5、岩国と話す】

全部するなら選ばせるなよハゲ!ヽ(*´∀`)ノ

選択:【2、棚を調べる】

色んなものが雑多に置かれている棚。

何かおかしなものはないか?

おかしなものおかしなもの……。

平並「……ん?」

棚と壁の間に、何かが挟まっている。

平並「なんだこれ……ビニールシートか?」

引っ張り出してみると、確かにそれは白いビニールシートだった。

ただし、

平並「……うわ」

派手に血が付いており、床にも血が滴っている。

平並「なんでこんなところに血が……」

……クロが、このビニールシートを使うとすればどんな理由だ?

……。

平並「……これを使えば返り血を防げそうだな」

シート越しに凶器を握ってシートを被ってしまえば、返り血を完璧に防ぐことは出来るんじゃないか?


   コトダマGET!! 【ビニールシート】

『棚と壁の間に押し込まれていた白いビニールシート。派手に血が付いている』

安価は荒らしを生み出しちゃってるよ!ヽ(*´∀`)ノ

平並「他に何か……」

このビニールシートだけで、血は完全に防げるものなのか?

なにか怪しいものが無いか探してみる。

……あった。

平並「このジャージ、血をぬぐった跡があるな……」

棚の奥にあったジャージの入った箱。

その中の一つに血がべったりと着いていた。

もしかしたら、これで凶器の血や手に着いた血をぬぐったのかもしれない。


   コトダマGET!! 【ジャージ】

『血の付いたジャージ。血はぬぐわれた跡がある。』

棚の調査を続ける。

平並「ビニールシートはこんなところに……ここから取り出したのか……ん?」

奥の方にビニールシートの入った箱を見つけたが、そのすぐそばに妙なものを見つけた。

平並「……これは、刃物か?」

大量の刃物類が詰まっている箱だ。

平並「火ノ宮が言ってたのはこれの事か」

確かに、奥の方に押し込まれていたから、入念に探さないと見つからない。

平並「……でも、ビニールシートを使ったんだから、クロはこれに気づいたはずだよな?」

クロは、この刃物に気づいたうえで、無視したってこと……か?


   コトダマUPDATE!! 【倉庫の刃物類】

『倉庫にあった刃物は一か所にまとまっていた。使用された痕跡はナシ。

 ビニールシートの箱のすぐそばにあった。』

荒らしは早くタルタルソースを作る仕事に戻ってよ!ヽ(*´∀`)ノ

平並「……棚で怪しい所はこんなところかな」

犯行に使われたようなものも見つかった。

ただ、これだけじゃクロの正体までは分からないな……。

平並「さて次は……」

安価↓
【3、大天、古池と話す】
【4、杉野と話す】
【5、岩国と話す】

なんで荒らしのタルタル野郎に3回も安価取られてるんだよ!ヽ(*´∀`)ノ

上げ忘れたよ!ヽ(*´∀`)ノ

僕は君みたいな荒らしじゃないから取らないよ!ヽ(*´∀`)ノ

というか意味のない安価とらせるなよハゲ!ヽ(*´∀`)ノ

選択:【4、杉野と話す】

棚を調べていた杉野に話しかけてみる。

平並「杉野は何か怪しいものは見なかったか?」

杉野「棚に、気になるものは色々見つけましたが……それはおそらく平並さんも見つけたでしょう」

平並「ああ。とりあえず……ビニールシートとジャージかな」

杉野「はい。まず間違いなく犯行に使用されたものでしょう」

杉野「ただ、クロがここに放置していたとなると、クロとしても見つかっても良いものだったはずです」

平並「……そうだな」

0とOで妙に現実味のある自演疑いをかけるのはやめようよ!ヽ(*´∀`)ノ

杉野「単純に僕しか知らない事、となると……包丁の事でしょうか?」

平並「包丁?」

杉野「ええ。昨日、調理場に行ったのですが、包丁が一本なくなっていたのです」

平並「一本なくなってた?」

杉野「はい。食事スペースにいた城咲さん達は持っておりませんでしたので、多分誰かが持ち去ったのかと」

杉野「だとすれば、今回新家さんを刺した凶器は、包丁の可能性が高いですね」

平並「……そうか。そのことは城咲たちに伝えたのか?」

杉野「……いえ。騒ぎになるのはまずいと考えましたので」

平並「……わかった」

……杉野が調理場に来たのは俺の後だ。

俺が包丁を取りに来たときには五本全部そろってたからな。


   コトダマGET!! 【杉野の証言】

『杉野が調理場を訪れた時、包丁は一本だけなくなっていた。』

荒らしと意見が一致するなんてどうかしてるよ!ヽ(*´∀`)ノ

杉野「……起こってしまいましたね、事件」

平並「……ああ」

平並「杉野は、俺達の中に新家を殺したクロがいると思うか?」

杉野「……ええ」

杉野「ただ、僕は最後まで皆さんを信じますよ」

杉野「捜査と、【学級裁判】での議論の結果、『新家君を殺したのはモノクマ』である、という結論が導き出されて欲しいものです」

平並「……そうだな」



……杉野と別れた。

次はどうしようか。

安価↓
【3、大天、古池と話す】
【5、岩国と話す】

>>472 なんて絶対うたないよ!ヽ(*´∀`)ノ

選択:【3、大天、池と話す】

現場保全に名乗り出てくれた二人が、倉庫の端の方に固まっていた。

平並「現場保全、頼んですまないな」

大天「……いや、別に……。皆で頑張らないといけないのに、力が抜けちゃって……」

大天「だって、本当に、人が死んじゃうなんて、こんなの……」

平並「……」

古池「でも、現実だよな」

平並「ああ」

古池「正直、俺達の中にクロがいるなんて思えない」

古池「俺達を互いに疑わせるために嘘をついたんじゃないか?」

大天「私もそう思いたいけど……」

平並「まだ、わからない」

平並「それで、お前達は何か分かったこととかはあるか?」

大天「私は何も……ここにいても、怪しいことしないか見張ってただけだし」

大天「昨日も、ちょっとゼリーを取りに外に出ただけで、後はずっと個室にいたから……」

古池「そういえば、死体を最初に見つけたのは露原と……いや、真面目にやる。露草と平並だったみたいだけど、なんでこんな時間に倉庫なんかに来たんだ?」

平並「あー……気分転換に外を歩いてたんだ」

……ここで本当の事を言ってもいいけど、捜査の段階で色眼鏡で見られるのはまずい。

平並「詳しい事は、学級裁判でな」

古池「ん? まあいいけど」

古池「……俺は、昨日夜時間まで城咲たちと食事スペースにいたんだが、夜時間になる前に確認したら、包丁がなくなってたんだ」

大天「包丁が?」

古池「ああ……だから、きっと凶器は調理場の包丁だ」

平並「……」

包丁、か。

確かに俺が持ち出してしまった。

今、言うべきか?

……いや、二人には悪いけど、ここは黙っていよう。

言うのは、学級裁判だ。

俺を無実だと証明する証拠がない以上、まだ包丁のことを言っちゃだめだ。

問答無用でクロにされる可能性がある。

平並「凶器は包丁……」

古池「ほぼ間違いないと思うけどな。ただ一つ分からないのは、なんでクロは包丁を二本も持ち出したのかってことだ」

平並「……二本? 一本じゃなくてか!?」

古池「ど、どうしたんだ急に……ああ、確かに二本なくなってたよ。城咲と露草も確認してるから間違いない」

平並「……」

そういえば、死体を発見する前に露草もそんな事を言っていた。

これはつまり……俺以外にも包丁を持ち出した人間がいる……ってことか。

その人がクロなのか?


   コトダマGET!! 【消えた包丁】

『昨日の夜時間前、包丁が二本持ち去られていた。

 古池、城咲、露草が確認している。

 うち一本は平並が持ち出している。』

古池「……それと……」

平並「どうした?」

古池「……これは、直接クロにつながるってわけでもないし、これだけでクロだと断定する気もないんだけどな」

古池「俺、見たんだよ」

平並「見たって、何を?」

古池「夜時間になる何分か前だったかな……宿泊棟の中に入ったら、明日川の個室の前で、新家と明日川が言い争ってたんだ」

古池「って言っても、明日川は個室の中にいたから姿は見てないんだけどな。けど、声はばっちり聞こえてたから間違いない」

平並「……それ、他に見ている人はいないのか?」

古池「確証はないけど、多分いないはずだ。個室も防音だから、個室の中にいた人は分からないだろうしな」

平並「個室って防音だったのか?」

古池「知らなかったのか?」


   コトダマGET!! 【古池の証言】

『夜時間になる直前、新家と明日川は口論をしていたらしい。

 目撃者は古池だけのようだ。』

一旦古池たちと別れて調査を再開する。

平並「口論か……一度明日川に話を聞いてみるか?」

ただ、その前に倉庫内の捜査だ。

最後は、岩国に話を聞いてみよう。

まともに取り合ってくれるとは思えないけど……。

擁護してくれる人が0人でも頑張って欲しいよ!ヽ(*´∀`)ノ

平並「岩国は何か気づいたことはあるか?」

岩国「……凡人か」

岩国「捜査の結果色々と分かりつつあるが、まだ何も言えないな」

平並「……それは、俺達を信用してないからか」

岩国「それも一つの理由だが、一番の理由ではない」

岩国「まだ俺の手元に集まっている情報だけでは、判断は下せないんだ」

岩国「限られた情報だけでは、どうしても視点が限られてしまうからな」

岩国「これでも【超高校級の弁論部】なんだ。そう簡単に結論をだしてたまるか」

平並「……そうか」

荒らしさんは内容を読むくらいなら荒らさないでよ!ヽ(*´∀`)ノ

岩国「……ところで、事件が起こってしまったことについて、お前はどう思ってるんだ?」

平並「どうって……」

岩国「カレー作りだのなんだのと試行錯誤した果てに、こうして殺人犯が出たことについてだ」

平並「ッ!」

岩国「全部、、無駄だっただろ?」

平並「無駄なんかじゃ……!」

岩国「無駄だったんだよ!」

岩国「……お前がそうやって信じたところで、結局裏切られただろ」

平並「……? お前――」

岩国「ふん、俺は別のところを調べるからな」

そう言うと、岩国は倉庫の外へと出ていってしまった。

だからなんで僕はsageてるんだよ[ピーーー]よ!ヽ(*´∀`)ノ

荒らしさんさっきの安価はスルーしたね偉いよ!ヽ(*´∀`)ノ

クソ荒らし野郎どもは安価があってもなくても荒らす屑だけどね!ヽ(*´∀`)ノ

倉庫で調べられるところは、大体調べたか。

平並「……さて、これからどうするか……」

杉野「おや、平並君もどこかへ行かれますか?」

平並「ああ、そうしようかと……とりあえず、包丁の件を確認しに調理場に行こうかと思う。お前は?」

杉野「僕は、とりあえず何か痕跡が無いか、宿泊棟に行こうかと思いますが……」

杉野「そうだ、せっかくですから、一緒に行動しますか? 同じ事柄でも複数の視点があればさまざまなものが見えるかと思いますので」

平並「わかった。そうしよう」

じゃあ、どっちから先に行こうか。

安価↓
【1、食事スペース/野外炊さん場】
【2、宿泊棟】

==========

選ぶ順番で内容が文章が多少変わったりするので安価を出していましたが、
確かに結果的にすべて選ぶことになるので今回の捜査パートの安価はこれで最後にします。

次回以降は、捜査パートはストーリに大きく影響が出る所だけ安価を出すことにしますので、よろしくお願いします。

あー疲れた

選択:【1、食事スペース/野外炊さん場】を採用して、今日はここまで。

次回は捜査パートの後半です。

お疲れ様でした。

荒らしは早く帰ってね!ヽ(*´∀`)ノ

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira100987.png
[ゴンベッサ・先原直樹]

ネット上でゴンベッサと呼ばれている、都道府県ssの後書き「で、無視...と。」の作者。
2013年に人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者は自分であると自称し、物議を呼んだ。
詳しくは「ゴンベッサ」で検索

1990年3月30日生 岡山県津山市出身 血液型B型
実家の住所 岡山県津山市大田277-1 電話番号0868-27-1823

騒動から二年以上経った現在も自分のヲチスレに粘着し、監視を続けていることが判明。
【都道府県SS】ゴンベッサ総合★8【先原直樹】→ http://goo.gl/ER3pu5

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