側近「魔王様が部屋から出てこない」 (39)
側近「魔王様、勤務時間ですよ」トントン
「……」
側近「魔王様、14歳で寝坊だなんて恥ずかしいですよ」
「……」
側近「魔王様、朝ごはんは魔王様の大好きな勇者さん特製おにぎりですよ」
「……」ピクッ
側近「脈ありですか、やれやれ嘘に決まっているでしょう。魔王様、早く出て来て下さい」
「……いやだ、嘘つきは信用しない」ペッ
側近「出て来いって言ってんだろ小娘」バキバキメギャーッ!!
魔王「ギャーーーーーーーーーーーー!?」
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――――――
―――
―
側近「つーことがあったのですが、魔王様が部屋に閉じこもったまま出てこなくなりました」
オーク隊長「今朝騒がしいと思ったら魔王様の部屋の扉ぶち抜いたのかよ……」
側近「仕方がないでしょう、出てこないんですから。結局魔王城に連れてくることが出来ずに家に放置してきましたけど」
オーク隊長「もっと穏便に出来なかったのかい」
側近「あの年の娘にちょっとでも甘い顔をすると今後舐められかねないので、今のうちの調きょ……教育をですね」
オーク隊長「お、おう。普段から魔王様に対して厳しい気がしないでもないが、そういう事にしておくよ」
オーク隊長「それで?何でまた魔王様は閉じこもっちまったんだよ」
側近「私にも理由までは知りません。あの娘の事ですから、よっぽどの理由があるのでしょう」
オーク隊長「どうするんだ?このまま魔王城に魔王不在ってワケわからん状態が続くのもマズイだろ」
側近「数日放っておけばそのうち自分から出てくるでしょうけど」
オーク隊長「仕事はどうするんだよ、打ち合わせとかあるだろ」
側近「それは私達だけでも出来ます。どうせ魔王城でする主な仕事なんて権力持っただけの役立たずでクズな貴族達の謁見くらいですから。幸い各地の視察なんかは今はスケジュールに入ってないですし」
オーク隊長「魔王様がいないとその貴族の相手をするのが俺かアンタになっちまうんだが……竜爺はやりたがらないし」
側近「やれやれってやつですね、まったく……私もそれは嫌なので説得にでも行きましょうか」
オーク隊長「朝に武力行使してる分今更説得も何もあったもんじゃないと思うがな……」
――――――
―――
―
魔王『……』
側近「魔王様ー、貴女の忠実な僕の私が来ましたよー」ドンドン
魔王『私に忠実な僕だったら扉を破壊したりはしない。補修するの大変だったんだぞ』
側近「あ、これ自分で直したんですか、凄いですね」
オーク隊長「魔王様、仕事があるんだから出てこなきゃ困りますぜ」
魔王『政務は自分の部屋でも出来る、必要な書類だけ置いて魔王城に返れ。私は部屋から一歩も出ん』
側近「呆れたものですね。まぁ書類は全部持ってきましたけど」
オーク隊長「普段は真面目な分、反動でこんなことになっちまうのかなぁ」
側近「魔王様、貴族共の相手は貴方でないと話になりません」
オーク隊長「連中も面子ってもんがあるんだ。魔王様の顔を見ずに帰ったら他方から変な噂も立てられちまうんだぞ?」
魔王『事前に今週いっぱいの謁見はキャンセル入れておいた、菓子折り付きで。つーかそもそもあんな連中の戯言なんてゴミ捨て場にでも投げ捨てておけ』
側近「何と用意周到な……」
オーク隊長「勝手にンな事されても困るんだけど……」
魔王『私は魔王だぞ!!他の部下には伝えたし、予定も自分で組み直したぞ!!国が運営出来ていればそれでよかろうなのだ!!帰れ!!』
側近「なんて娘でしょうか。その濁ったドブ川の中に住むゾウリムシにも到底適わない腐ったプライドは一体何なんですか」
魔王『よく分からん例えで私を単細胞生物と同類に扱うな!!』
側近「今の貴女はそれ以下です。まったく、一体誰がこんな風に捻くれた性格にしてしまったのでしょう」
オーク隊長「……」
側近「隊長、どうして私を見るのですか」
側近「仕方がないですね。今朝のように強行手段で行きます」キュィィィィン
オーク隊長「な、なにも魔法を使わなくても」
側近「一発限りの大魔法です。問答無用情け無用☆消し飛べー☆」シュゴオオオオオオオオ!!
オーク隊長「消し飛べェ!?」
シュー…
側近「この煙が晴れる頃には魔王様の可愛らしい部屋が木っ端微塵になって顕になっているハズです」
オーク隊長「やったか!?」
側近「おいやめろ」
キュピーン
側近「案の定健在ですね」
魔王『フハハハハハ!扉は既に強化を施してある!!魔法は勿論、押しても引いてもレベルを上げて物理で殴っても効かないぞ!!』
魔王『悔しいか!悔しいだろうな!!だが私の受けた屈辱を貴様らが味わうまで私はこの部屋から出るつもりは無い!!』
魔王『どうしてもというのなら出てやってもいいが?その代り、私の……』
魔王『私の……』
魔王『……』
魔王『おーい……』
側近「別の方法を考えますか」スタスタ
オーク隊長「魔王様、なんか喋ってたけど最後まで聞かなくていいのか?」
側近「……はて、何も聞こえませんでしたが?」
オーク隊長「さいですか……」
側近「さてと、どこから攻めましょうか」
オーク隊長「あ、俺にいい考えがあるんだが」
側近「そうですね、特に思いつきもしないので委ねます」
―作戦1・子供を使う―
オーク隊長「魔王様とてヒトの子だ、年下相手には強くは言えんだろう」
側近「という訳で、貴方達に魔王様の説得を頼みたいのですが」
リザード君「もうやったよ、朝飯の時に」
エフルちゃん「朝ごはん持って行ったら、壁を殴る音と共に部屋の前に置いておけって……」
オーク隊長「……」
側近「……」
―作戦1 おわり―
側近「行動が完全に引きこもりのそれではないですか……」
オーク隊長「若干眩暈が……」
リザード君「ったく、昨日勇者が飛び入りで飯作ったせいで当番がずれ込んで今日俺たちが朝飯作る羽目になったんだぜ?」
エルフちゃん「でも、せっかく用意したのに魔王様の顔も見れなくて寂しいね」
側近「そういえばあの腐れ勇者、魔王様が留守だと分かるとすぐ帰ろうとしてましたね」
オーク隊長「しっかり飯つくらせてんじゃねーか……俺も食ったけど」
リザード君「そうだ、次俺にやらせてくれないかな!」
オーク隊長「何か策でもあるのか?」
リザード君「へへッ!この家の構造なら誰よりも知り尽くしてるんだぜ!任せときなって!」
―作戦2・天井の通気口から侵入―
リザード君「子供の小ささならではだぜ!」
側近「そういえば、ウチの空調は天井に直接着いているタイプでしたね」
オーク隊長「場所取らないからって魔王様が決めたんだったな。値段高いからやめてほしかったんだけどな……」
エルフちゃん「自宅の空調取りつけに掛けるお金を渋られる魔王様……」
側近「で、そこから侵入した程度では魔王様に返り討ちに会いますよ」
リザード君「大丈夫大丈夫!そこで、家中からかき集めたコイツの出番だ!」バッ
カサカサカサ
リザード君「これ、投下します」
オーク隊長「……黒いな」
エルフちゃん「……光ってるね」
側近「」
オーク隊長(側近が白目剥いてるの初めて見た……)
オーク隊長「しかしまぁ……効果は十分見込めそうだな。嫌でも出てきそうだ」
リザード君「おうさ!じゃあ行ってきます!」ビシッ
オーク隊長「検討を祈る!」
エルフちゃん「無茶しないでね?」
リザード君「へへッ!無事に帰ってきたら今日の夕飯の当番代わってくれよ!」
エルフちゃん「あっ(察し)」
側近「……この廊下の通気口から天井に入れます。とっととそれを持って消えてください」
リザード君「ああ、じゃあ行ってくるね(何か辛辣だな……)」
リザード君「えっと、確か……ここを昇ってから……んしょ」
リザード君「魔王様の部屋までは、ここを曲がって……ここで右に行って……」
リザード君「ん?これは……」
メキッ
メリメリッ
グシャ
ボギャッ
グチョッ
バリッ
ブチャッ
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛
オーク隊長「……」
エルフちゃん「……」
側近「まぁ、当然対策はしてありますよね」
オーク隊長「分かってて行かせただろ……」
側近「あんなものを私に見せた罰です、Gと共に消えてください。あ、それと後でバ○サン買ってきましょう」
エルフちゃん「消えてくださいってそういう……」
―作戦2 殉職―
エルフちゃん「あ、そういえば」
オーク隊長「何か思いついたのか?」
エルフちゃん「うん、魔王様最近ネットゲームにハマってるって言ってたから」
側近「まさか、そのゲームやりたさに仕事をサボっているのではないでしょうね」ゴゴゴゴゴゴ
オーク隊長「い、いや、あの娘は流石公私混同するような娘じゃないぞ……」
側近「いえ、有り得ます。一たび休みを取ればゲームゲームゲームゲーム……頭沸いてるんじゃないですかね」
オーク隊長「たまの休みをどう使おうがそんなもんそのヒトの自由だろ!!万年休みの取れない俺たちの気持ちが仕事=趣味のアンタに分かってたまるか!!」ドンッ!!
側近「働くサラリーマンパパの代弁どうもありがとうございます」
エルフちゃん「と……とにかく、今は魔王様はゲームやってると思うから、私達もそのゲームをプレイすればいいんじゃないかなーって……」
側近「ほらみなさい、仕事もせずにゲームをするなんて以ての外で……」
エルフちゃん「魔王様、仕事はもう終わってるよ?」
側近「はい?」
エルフちゃん「部屋の前の書類……」
側近「あー……全部終わってますね。しかも完璧です」
オーク隊長「やることはキチンとやるからなぁ……」
―作戦3・ネットゲームで説得―
側近「説得できるかどうかは分かりませんが、とりあえずログインしましょう」
オーク隊長「プレイするのは俺かよ……」
側近「私、力加減が出来ずにパソコンをよく破壊するので」
エルフちゃん「私はあんまり分からないから……」
オーク隊長「へいへい……えっと?新規キャラクター作成っと」ポチッ
側近「……」
オーク隊長「キャラメイクはこれでいいか……後は外部のチートツール使って専用掲示板でIPぶっこ抜いてウチと同じアドレスを探すか。多分それが魔王様だしな」
側近(このオークの頭のどこにそんな専門用語が言えたりツールが使えるような脳ミソが詰まっているのでしょう)
オーク隊長「なぁ、凄く失礼な事考えてないか?」
オーク隊長「お、当たった、コイツが魔王様だな……」
エルフちゃん「えっと……名前は」
側近「"✝閃光の堕天使✝ ダーク・アイズ・イリュージョナー"」
オーク隊長「……」
エルフちゃん「……」
側近「……」
側近「このプレイヤーに個人チャットで蓮コラ投下します」カタカタカタ
オーク隊長「えぇ!?」
側近「BANされるでしょうけどどうせ捨てアカですので問題はありません。他にも掲示板を荒らして運営に広域規制をかけさせて他者とのコミニュケーション手段を断ちましょう」カタカタカタ
エルフちゃん「えー……」
ギャアアアーーーーーー!!
オーク隊長「……蓮コラ踏んだな」
ケイジバンガーーーー!!
エルフちゃん「……」
側近「よし」
オーク隊長「よしじゃねーよ」
―作戦3 自滅―
オーク隊長「おーい、説得はどうなったんだよ……」
側近「あんな痛々しい名前、成人してから悶絶するに決まっています。早いうちに更生させておいた方がいいでしょう」
側近「それにこのゲーム、基本無料と謳っていますが課金要素だらけじゃないですか。まったく、貴重な魔王様のお小遣いを搾取しようなどと……恥を知れ恥を」
オーク隊長「それはこっちの管理問題だろ」
側近「ともかくです。これで本格的に打つ手は無くなった訳ですが……」
オーク隊長「腹も減れば部屋から出てくるだろ」
竜爺「魔王の娘っ子なら、さっき一週間分の食糧を部屋に溜めこんでいたぞ」ヌッ
オーク隊長「うわビックリした!?」
側近「竜爺様、居たんですか」
竜神「うむ、どうやら通販で買い込んだようじゃ。お主らが魔王城に行っている時間帯を指定してのう」
オーク隊長「ホント抜け目ないな。籠城戦の準備も万端とは」
側近「あの娘の本気度が伺えますね。何がそこまで彼女を駆り立てるのか」
―作戦4・亀の甲より年の劫―
竜爺「ともかくだ、話は最初から最後までしっかりと聞かせてもらっておるわ。今度はワシに任せるといい」
エルフちゃん「竜爺様が?」
オーク隊長「一体なにするってんだ?」
竜爺「亀の甲より年の劫というじゃろう、まぁ見ておれ。あの娘もヒトの子、老人であるワシには強くは言えんだろうて」
側近「それ一番初めに同じセリフを聞きました。そして失敗してます」
竜爺「……」
竜爺「なんと」
側近「何も聞いてねぇなこのジジイ」
―作戦4 毒にも薬にもならず―
側近「完全に打つ手が無くなってしまいましたね」
オーク隊長「せめて理由が分かればねぇ、こっちも動きやすいんだが」
勇者「あれ?みんな何してるの?」ガチャ
側近「来やがりましたね他国の侵略者め」
勇者「アハハ、酷い言い草だね」
オーク隊長「いや、魔王の自宅に訪問する勇者って図は明らかにおかしい」
側近「一応現状は話しておきますか、解決策があるかもしれませんし。カクカクジカジカです」
勇者「へぇ、あの真面目な魔王がねぇ」
エルフちゃん「勇者さん、何か分かった?」
勇者「いや全然」
側近「即答ですか、役立たずめ」
竜爺「そもそも勇者よ、お主は何をしにここに来た。毎度毎度行っておるが、お主は自分の立場というものを……」
勇者「あ、魔王に夕食作ってきたんだけど。食べるかな?まだ夕食食べてないよね?」
竜爺「無視ですかそうですか」
オーク隊長「なんやかんややってるウチにもうそんな時間か……」
勇者「二日連続になっちゃうけど、みんなの分もちゃんと作ってきたから食べようよ」
側近「ああもう、貴方はいつもそうやって……まぁいいですけど。せっかくですし、いただきましょうか」
エルフちゃん「わーい!勇者さんのお料理美味しいから大好きー!」
勇者「フフ、ありがとう。リザード君は……あの天井から垂れている血の先かな?」
エルフちゃん(あっ)
オーク隊長(忘れてた)
側近「まぁアレは放っておいて……では勇者さん、食器並べるので手伝ってもらって……」
側近「……?」
魔王『……』
勇者「魔王」
魔王『……』
勇者「約束、果たしに来たよ」
勇者「一緒に食べよう」
ガチャ
魔王「……うん」
側近「!?」
オーク隊長「!!?」
オーク隊長「え?は?ええ?」
側近「魔王様?」
魔王「……なんだよ、勇者が夕食を私に献上しようというんだ。その気持ちを無碍にするなど魔王として出来る筈も無いだろう」
側近「流石、貴族の気持ちはゴミ捨て場に投げ捨てたヒトのいう事は違いますね」
勇者「いやぁ、昨日魔王がいないのに僕が夕食作っちゃったでしょ?だからその埋め合わせで料理を持ってきたんだけど、こんな事になってるなんてね」
側近「まさかと思いますが、魔王様。昨日勇者さんの手料理を一人だけ食べられなかったから私達に八つ当たりをしたという、とてもじゃないですが人に言えないような理由で引きこもっていた訳ではムグッ」
魔王「うるさああああああああああい!!お前たちがいけないんだぞ!!私抜きで勇者が作った目玉焼き乗せチーズハンバーグと特製プリンを食べたお前たちが!!せめて私の分残しておけよ!!」
オーク隊長(理由はそれかーーーーーッ!!)
側近(なんか始めの方でそんな話が出てましたね)
勇者「はいはい、今日は魔王だけに沢山いいものを作ってきたからその辺にしておこう」
魔王「うぐゅ……ま、まぁ今日の所は勇者の顔に免じて許してやろう!!勇者という好敵手がいる食卓に、この魔王抜きでは恰好が付かんだろう!!以後気を付けろよ!!」
側近「……」
オーク隊長「……」
エルフちゃん「……」
竜爺「……」
魔王「……」
一同「……」ニヤッ
魔王「わ……笑うなああああーーーーーーーーッ!!そこは普通怒るだろーーーーーーーーッ!!」
ギャーギャー!!
側近「やれやれってやつですね、まったく。あの娘には怒るよりも笑ってやった方が精神的に効きますのでこれが最適解というべきか」
勇者「フフ、こうしてみると、やっぱり普通の女の子だね」
側近「いい加減、ウチの魔王様を惑わすのはやめてもらえませんか?今日みたいに国務が滞っても困りますので」
勇者「その程度で国を停滞させるような器じゃないよ、彼女は」
側近「ええ、知っています。貴方なんかよりもずっと……」
魔王「ええい!!お前たち早く準備をするぞ!!勇者!お前には私特製のデザートを用意してあるから、食後はそれを食え!」
勇者「うん、ありがたく貰うよ」
側近「魔王様、私の分は無いのですか」
魔王「無い!!」
側近「……」ギリギリギリ
魔王「頬を摘まむなーーーーーーー!!」バタバタバタ
アハハハハハハハ
リザード君「……」
リザード君「……二重に忘れられた……」ガクッ
側近「魔王様が部屋から出てこない」 おわり
終わった
側近は魔王の事大好きだよ、多分
もしお付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました
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(このSSまとめていただける場合はこのレスは一番最後に持ってくるか丸々無かったとこにしてください)
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