律子「もしもし、プロデューサー」 (15)
律子「どうしたんですか? 電話なんて」
律子「ああ、はい、どうぞ……」
律子「…………ああー、はい」
律子「今度の土曜日ですか?多分大丈夫だと思いますけど……」
律子「はい、スケジュールの調整しておきます」
律子「いや、そんな……全然。はい……」
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律子「ええ、ええ……」
律子「……うーん、そりゃ最初に行くんだったら、多少ベタな方が」
律子「…………遊園地とか」
律子「もー、笑わないでくださいよ」
律子「……だってほら、二人で乗れるもの、沢山ありますし……」
律子「コーヒーカップ、メリーゴーランド、ジェットコースターなんかも……」
律子「……やっぱりしめは観覧車でしょう」
律子「えぇー?そりゃベタベタですけど、ロマンチックじゃないですか」
律子「…………うん、まぁ」
律子「夕陽をバックに二人、揺られて……なんて」
律子「……もー!そんなに笑わないでよ!」
律子「はぁ…………もういいわよ」
律子「……あ、結局遊園地にするんですか?」
律子「ふふっ、プロデューサーも人のこと言えないじゃないですか」
律子「……はいはい、そうですね」
律子「え、うん。……ああ、はいはい。それなら、今週中に返してくれれば」
律子「どうでした?」
律子「…………分かってないなぁ、プロデューサーは」
律子「甘々なのが良いんじゃないですか」
律子「すごく人気の作家なんですよ?」
律子「……ええ、オフィスラブを扱った作品が多くて」
律子「私、好きなんです」
律子「えっ、憧れ……は、そりゃ、ありますよ」
律子「職場恋愛ってロマンチックで……あ、また笑った」
律子「もういいですよ、もーもーもー」
律子「はい……はい、はい、じゃあ、また明日……」
律子「…………」
律子「オフィスラブかー……」
律子「はぁー……」
あずさ「……もしもし、律子さん、どうしたんですか?」
あずさ「ええ、はい……今度の土曜日?お休みですか。分かりました」
あずさ「いえ、仕事だと思ってたので……はい」
あずさ「はい、はい…………」
あずさ「…………うーん」
あずさ「初めて行くなら、そうですね〜」
あずさ「……あ、この間オープンしたっていう水族館とか」
あずさ「……ええ、ほら、隣町の」
あずさ「そうですそうです」
あずさ「……ええ、楽しそうですよ〜?」
あずさ「…………はい、いえいえ」
あずさ「はい?はい…………プロデューサーさんに?」
あずさ「それで、何て言ってました?」
あずさ「うふふ、それはそれは……」
あずさ「そうですね〜、オフィスラブですか……」
あずさ「私も結構……はい。ふふ……それ、分かります」
あずさ「そうですね。…………あ、すみません。そろそろお風呂に……」
あずさ「いえ…………はい。じゃあ、また……」
P「もしもし、あずささん」
P「あ、お風呂だったんですか……」
P「いえ……全然。急を要する用事じゃないので」
P「はい……」
P「あの……今度の土曜日なんですけど、遊園地、行きませんか?」
P「……えっと、知り合いと行く予定だったんですけど、仕事入っちゃったらしくて……」
P「ええ、フリーパスなので、もったいないし、一人じゃ寂しいし……」
P「はい……良いんですか?ありがとうございます」
P「見え見え?何がです?」
P「……そうですか、はい」
P「ええ、じゃあ、また……」
P「ははっ、そうでした。ええ……」
P「では……はい……」
P「……ふぅ。あれ……メール来てる」
From 律子
この間隣町にできたっていう水族館なんか、良いんじゃないですか?
あずささん、行きたがってましたし
P「へぇ……水族館か。良さそうだな」
P「『サンキュー。そっちのが良さそうだから、誘ってみるよ』と……」
P「……すぐ、電話しなおすってのは、いかがなものか……まあ、いいか」
P「もしもし、あずささん」
P「すみません、すぐ、かけ直してしまって……」
P「さっきのことなんですが、やっぱり、遊園地じゃなくて水族館とかどうですか?」
P「え?フリーパス?」
P「……あ、ああ、日にちをずらして、行くことにしたんです」
P「だから、水族館に……いや、俺、行きたいんです」
P「はい……はい……そうです」
P「いや、それは……そうですね——」
おわり
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