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一方通行「絶対能力進化実験……最高だったぜ」
一方通行「絶対能力進化実験……最高だったぜ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439617914/)
の続きです
とりあえず一方通行が絶対能力進化実験をやり遂げたということだけわかってればOKです
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442065956
一方通行「暇だ……あの実験が終わってから、毎日暇でしょォがねェ」
一方通行「なンか面白ェことはねェかなァ……」
一方通行「……」
一方通行「絶対能力進化実験……終わっちまったなァ」
一方通行「レベル6に到達することはできなかったが……いい実験だったぜェ」
一方通行「はァ……」
一方通行「……」
一方通行「……研究所にでも行くかァ。呼ばれちゃいねェが、手伝えることくれェあんだろォ」
……
……
一方通行(……俺は、絶対能力進化実験を遂にやり遂げた)
一方通行(二万体のクローンを、二万通りの方法で殺害したンだ)
一方通行(学園都市第一位のこの俺をもってしても、それは容易なことではなかった)
一方通行(いや、俺ひとりの力では、実験を完遂することはできなかっただろォな。多くの人間の助けがあって初めて、やり遂げることができたンだと思ってる)
一方通行(実験関係者全員が、一丸となって実験に取り組ンでくれたから、俺も最後まで、全力で取り組むことができたンだ)
一方通行(……本当に、ありがてェ話だ)
一方通行(残念ながら、レベル6に到達することはできなかったが……もはや、そンなことは俺にとっては大した問題じゃなかった)
一方通行(そんなもンよりも、もっと大事なもンを手に入れることができたからなァ)
一方通行(だが、さすがに研究者たちは、過程よりも結果を求めざるを得ないからな)
一方通行(……落胆する者も多かった)
一方通行(いや、研究者たちだけじゃねェか……実験に関わっていた奴らの多くも、それなりにショックを受けていたらしい)
一方通行(実験に苦労した分、レベル6というわかりやすい成果が欲しかったんだろォな)
一方通行(しかしまァ、実験が終わったこと自体は、皆喜ンでくれたらしい。多くの人間が、俺をねぎらってくれた)
一方通行(礼を言いたいのは、こっちの方だっていうのによォ)
一方通行(次に実験を行うときも、またあいつらと一緒にやりてェなァ……)
一方通行(……絶対能力進化実験の終了は、必ずしも悪いことばかりじゃなかった)
一方通行(結果は伴わなかったとはいえ、ひとつの大きな実験が終了し、また、様々な計画が進められている)
一方通行(……俺は長い間、あの実験にかかりきりだったからなァ)
一方通行(俺を使って、新しい実験を行いたい研究者は山ほどいる。既に、何人かの研究者にアプローチを受けたが……)
一方通行(正直、どれもピンとこねェ。絶対能力進化実験と比べちまうと、どォしても見劣りしちまう)
一方通行(……いけねェな。もう終わった話だってのに、いつまでもとらわれてちゃァいけねェ)
一方通行(まァ俺の意向はともかく……いずれにせよ、今すぐ新しい実験が始まるということはないだろォ)
一方通行(この俺の実験ともなると、失敗は大きな損失だからなァ。絶対能力進化実験でレベル6になれなかったからこそ、今度は確実に成功するよォに、何度も話し合い、再計算を繰り返すはずだ)
一方通行(本格的に実験が始まるのは、まだまだ先になるだろォな)
一方通行(そォいや、実験が終わってから、学園都市内である噂が流れるよォになった)
一方通行(学園都市第一位が、レベル6になるための実験を終わらせたとかいう、中途半端な噂だ)
一方通行(……あァいう噂はどこから流れるンだろォなァ。一応機密情報のはずなンだが……)
一方通行(そのせいか、腕試しだとかいって、俺に喧嘩を売ってくるバカは激減した)
一方通行(俺自身は、別に何とも思っちゃいなかったがなァ。まァ面倒ごとが減ったのは間違いねェ。とりあえず、いいことだ)
一方通行(……考えてみりゃァ、実験が終わって、暇をもて余してる一因なのかもしれねェな……まァいいか)
……
……
一方通行「よォ」
芳川「あら、一方通行」
一方通行「実験では世話になったなァ」
芳川「ふふ、こっちの台詞よ」
一方通行「……てめェひとりか?」
芳川「えぇ。誰かに呼ばれたの?」
一方通行「いやァ、暇だったもンでなァ」
芳川「それは当てが外れたわね。特に実験もやってないし、私も書類の整理をしていただけよ」
一方通行「チッ……マジかァ、どうすっかなァ」
芳川「……そういえば、あなたにはまだ渡してなかったわよね、例の実験の報告書」
一方通行「報告書だァ?」
芳川「もちろん、あなたに読む義務はないし、もう提出済みのものだけど……興味はあるんじゃない?」
一方通行「……そォだな」
芳川「待ってなさい、こっちにあるのは控え用だから、印刷して渡してあげるわ」
一方通行「いや、そいつでいい。今ここで読んじまうわ」
芳川「ふふ、さすがは学園都市第一位。この分厚さを見ても、そう言えるなんてね」
一方通行「てめェらのおかげだよ」
……
……
一方通行(……)ペラペラ
一方通行(……こりゃァすげェ。二万回の実験の内容が、簡単にとはいえ全て載ってるぜ。懐かしいねェ)
一方通行(何々、『実験は全て予定通りに行われたが、期待していた結果は得られなかった』……)
一方通行(『実験の進行に問題はなかったか調査を行ったが、最終的には、樹形図の設計者《ツリーダイアグラム》の計算が間違っていたという結論に達した』……)
一方通行(樹形図の設計者か……まさか、実験が終わる前にぶっ壊れるとはなァ。再計算もできやしねェ)
一方通行(しかし、あの樹形図の設計者の計算が間違っていたとは……やっぱ、信じられねェな)
一方通行(あるいは、何者かの思惑があってのフェイクだったとか……なンてな。今さら考えても仕方ねェか)
一方通行(……しかし、こうまとめられると圧巻だぜェ。マジで、俺は二万体ものクローンをぶっ殺したンだなァ。よくやれたもンだ)
一方通行(第三位じゃなくて、第四位のクローンを二万回殺さなきゃならなかった……なンて言われても、もう絶対やらねェだろォな)
一方通行(つゥか、第三位だったからあの実験は意味があったンだよなァ。他の奴のクローンを殺し続けても、経験が蓄積されねェから意味がねェ)
一方通行(本当の意味で、同じことを二万回繰り返すことになっちまうじゃねェか。やってらンねェよ)
一方通行(ミサカネットワークか……今はもう完全に消えちまったが、大した奴らだったぜ)
一方通行(最後の方は苦労したなァ……オリジナルの方が、まだ楽に殺せたンじゃねェのか?)
一方通行(……全く、いい実験だったぜ)
一方通行(……)パラパラ
一方通行(……特に新しい発見もねェなァ。実験を行っていた張本人なんだから、当然っちゃァ当然なンだが……)
一方通行「……あン?」
一方通行(『打ち止め《ラストオーダー》』……?)
一方通行(なンだ? こいつは……)
一方通行(……)ペラ
一方通行(……『最終信号の扱いについて……』)
一方通行(『……妹達の反乱防止用の安全装置として培養機で保管されていたが、実験の終了に伴い妹達の全員が死亡したことにより、その後の処分については検討中である』……)
一方通行「……おい、芳川ァ」
芳川「あら、何かしら?」
一方通行「この『打ち止め』ってのはなンなンだァ?」
芳川「知らなかったの? そうねぇ……簡単に言えば、妹達の上位個体ね。ホストではなく、コンソール的な役割を担っていたわ」
芳川「妹達が反乱を起こしたときなんかに、その娘を通してミサカネットワーク全体に命令を出して、止めることができるのよ。まぁそんなことはまずあり得ないんだけど」
一方通行「……そいつもクローンなのか?」
芳川「ミサカ20001号……通称、『打ち止め《ラストオーダー》』。今となっては、御坂美琴の最後のクローンね」
一方通行「ミサカネットワークには、接続してたンだな?」
芳川「もちろんよ。そうでないと、意味がないからね」
一方通行「今は、どこにいる?」
芳川「妹達の全員が死亡したことで、それほど厳重に保管する必要もなくなって、どこかの施設に送られたはずよ……って……」
一方通行「なるほどなァ……」
芳川「……あなた、まさか会いにいく気?」
一方通行「あァ。どこの施設かわかるか?」
芳川「調べればすぐにわかるけど……本気?」
一方通行「もちろンそォだが……何かマズいか?」
芳川「いえ……そうね、問題ないわ。ちょっと待ってて」
……
……
芳川「……あったわ。打ち止めは、この施設にいるわね」
一方通行「そォか、ありがとォよ」
芳川「……一応聞いておくけれど、何故彼女に会いにいくの?」
一方通行「少しばかり話をしに行くだけだ。そンなに気にしなくてもいいだろォが」
芳川「彼女は、ミサカネットワークに接続していた。つまり、あの実験の記憶が全てあるのよ。それをわかった上で、会いにいくのね?」
一方通行「わかってるっつゥの。だから会いに行くンじゃねェか」
芳川「……そう。ならいいわ、いってらっしゃい。施設の方には、私から連絡しておくわ」
一方通行「あァ、いってくるわ」
……
……
打ち止め「……毎日暇だなぁ、ってミサカはミサカはため息をついてみたり」
打ち止め(絶対能力進化実験が終わってから、ミサカはずっとこの施設で過ごしている)
打ち止め(実験が終わって、ミサカの存在理由はなくなっちゃったけど、ミサカがすぐに処分されることはなかった)
打ち止め(たぶん、ミサカの中にある一方通行との戦闘経験に価値を見出だしたんだと思う)
打ち止め(とはいえ、培養機で管理されていたときに比べれば、ミサカの価値はだいぶ失われたみたい。わざわざ処分しなくてもいいか、くらいの判断なのかな)
打ち止め(初めて培養機から出たときは、多少は感動するかと思ったけど、そうでもなかった。ミサカネットワークを通じてあれだけの経験をしていたわけだから、それも当然かもしれない)
打ち止め(そのまま、ミサカはこの施設に送られた)
打ち止め(ここは、ミサカみたいな訳ありの子を管理するための施設らしい。厳密には、研究所の中の一室だ。今は、ミサカの他には誰もいない)
打ち止め(研究所自体は、かなり小規模だ。当然、セキュリティレベルもそれほど高くはない。漏洩しても構わない程度の研究しかやってないんだろうね。ミサカの価値も、今やその程度ってことかな)
打ち止め(別にそれはいいんだけど……問題は、今ミサカが何の実験にも使われていないってことだ。暇で暇で仕方がない)
打ち止め(研究員に同伴してもらえば外出もある程度はできるけど、特にやることもないし……)
打ち止め(せめて話し相手にでもなってくれればいいけど、全然付き合ってくれないし……)
打ち止め「ああああ退屈だよおおお、ってミサカはミサカはゴロゴロ転がってみたりいいいい!」
ガチャ
打ち止め「!」
一方通行「……なンだこいつは」
打ち止め「あ……」
一方通行「あン?」
打ち止め「一方通行!ってミサカはミサカは叫んでみたり!」
……
……
一方通行「……まさか、ガキの姿とはなァ。芳川の奴、伝え忘れやがったな」
打ち止め「うーん、とりあえず初めまして! ってミサカはミサカは挨拶してみたり」
一方通行「俺からすれば、その姿のてめェは完全に初対面だが、てめェはそォじゃねェだろォが」
打ち止め「実際に会ったのはこれが初めてだからね! わぁ生一方通行だ!ってミサカはミサカは子供みたいにはしゃいでみたり!」
一方通行「実際ガキだろォが……つゥか生ってなンだ」
打ち止め「それで、今日はどうしたの? ってミサカはミサカは聞いてみたり」
一方通行「切り替え早ェな」
一方通行「……俺が今日ここに来たのは、単にてめェの存在を今日知ったからだ。あの実験が終わってから、俺はずっとお前らに伝えたかったことがあった」
一方通行「ひとつは、感謝だ。実験をやり遂げられたのは、紛れもなくお前らのおかげだ。本当に、感謝している」
打ち止め「覚えてるよ、最後の実験でのあなたの言葉……あれは嬉しかったなぁ、ってミサカはミサカは懐かしんでみたり」
一方通行「……そォか、そりゃァよかった」
一方通行「そして、もうひとつは……謝罪だ」
一方通行「……済まなかった」
打ち止め「……」
打ち止め「……それは、何に対しての謝罪なのかな? ってミサカはミサカは先をうながしてみる」
一方通行「お前らがいたから、俺は実験を完遂できた。だが、結果は伴わなかった。俺は、レベル6には……なれなかったンだ」
打ち止め「……そのことなら聞いてるよ。残念だったね、ってミサカはミサカはあなたを慰めてみたり」
一方通行「……それだけか?」
打ち止め「?」
一方通行「俺が結果を出せなかったことに対して、何かこう……怒りとかねェのか?」
打ち止め「なんで怒る必要があるの? ってミサカはミサカはあなたに聞き返してみる」
一方通行「なンでって……」
一方通行「……お前らは、あの実験でベストを尽くしてくれた。俺だってそのつもりだったが、結果を出せなかったンじゃ意味がねェ」
一方通行「責任があるとすれば、俺だ。俺のせいで、あの実験を無駄にしちまったンだ。お前らには本当に申し訳ねェ」
打ち止め「あなたは、あの実験が無駄だったと思ってるの? ってミサカはミサカは聞いてみたり」
一方通行「……思ってねェよ。そンなことを言う奴がいたら、迷わずぶっ殺してやる」
一方通行「だが、お前らだけは別だ。お前らに言われちまったらしょォがねェ。俺を責めるのも当然だからなァ」
打ち止め「……」
一方通行「……聞いてくれてありがとォよ。ずっと伝えたかったンだ。悪かったな」
一方通行「だが、俺の中では……」
一方通行「いくら失敗しよォが、あれは最高の実験だったと思ってるよ」
打ち止め「……ミサカもだよ、ってミサカはミサカは呟いてみる」
一方通行「……あァ?」
打ち止め「あの実験は最高だったよ、ってミサカはミサカはあなたに笑顔を向けてみる!」
一方通行「……!」
打ち止め「あなたを責めたりなんて、するわけない。むしろ、最後まで実験をやり遂げてくれたあなたには、感謝の気持ちしかないよ、ってミサカはミサカはあなたに本心を伝えてみたり!」
一方通行「……本当か?」
打ち止め「当たり前だよ! ってミサカはミサカは即答してみたり!」
打ち止め「あなたがあの実験でどれだけ苦労したかは、ミサカが一番よく知っている。そのことで、ミサカ達がどれだけ救われたかわかる? あなたが、ミサカ達に存在理由を与えてくれたんだよ、ってミサカはミサカはあなたを真剣に見つめてみたり」
一方通行「……」
一方通行「そォか……」
打ち止め「あなたがレベル6になれなかったって聞いたとき、残念じゃなかったって言えば嘘になる。でも、それほど気落ちはしなかった。たとえ結果が出なかったとしても、あの実験は決して無駄じゃなかったっていう確信があったからだよ、ってミサカはミサカは笑ってみたり!」
一方通行「……あァ、俺もだよ」
打ち止め「だから、改めて……一方通行、ありがとう! それと、お疲れ様!ってミサカはミサカはあなたをねぎらってみたり!」
一方通行「……」
一方通行「まさか、お前らからそンな言葉を聞ける日が来るなンてなァ……あァ、お疲れさン」
一方通行「あの実験に唯一欠点があるとすれば、実験が終わると同時にお前らが消えちまうことだと思っていたが……やっぱ、あの実験は最高だったよォだ」
一方通行「お前に会えてよかったよ、打ち止め」
打ち止め「こちらこそ、あなたに会えて嬉しかったよ、ってミサカはミサカは満面の笑みを浮かべてみたり!」
一方通行「……なンか悪かったなァ、野暮なこと言っちまってよォ」
打ち止め「もう、ミサカとあなたは実験を通してあれだけ通じ合った仲なのに、ってミサカはミサカは頬を膨らませてみたり」
一方通行「あァ、そォだったな。懐かしいぜェ……」
打ち止め「思い出すなぁ、実験の日々……大変だったけど、すごく充実してたよね、ってミサカはミサカは懐かしんでみたり」
一方通行「全くだ。あれこそ、生きているって感覚なのかもなァ……もう二度とやりたくねェがな」
打ち止め「本当だよね! ってミサカはミサカはあなたに強く同意してみたり!」
一方通行「あァ、あンなもン、一生に一度やりゃ充分だ」
打ち止め「……ふふ」
一方通行「ククッ」
打ち止め「……やっぱりあなたに会えてよかったよ、ってミサカはミサカは笑ってみたり」
一方通行「言ったろ、こっちの台詞だ」
……
……
打ち止め「……でね、12461回目の実験で……」
一方通行「あァ、ありゃァ驚かされたもンだ」
打ち止め「そうそう、そのときにね……」
一方通行「そンなこともあったなァ……ン?」
一方通行「もうこンな時間か。長居しちまったな、そろそろ帰るわ」
打ち止め「えぇ、もう帰っちゃうの? ってミサカはミサカはあなたとの別れを惜しんでみたり……」
一方通行「悪ィな、また来るからよォ」
打ち止め「絶対だよ、ってミサカはミサカは念を押してみたり!」
一方通行「あァ、またな」
打ち止め「またねー! ってミサカはミサカは手を振ってみたり!」
……
数日後
芳川「ふぅ……終わった」
一方通行「お疲れさン」
芳川「実験のサポートありがとうね、一方通行」
一方通行「……思い切り良過ぎだろ。一歩間違えれば、研究所が吹っ飛ンでたぞ」
芳川「ふふ……あなたがいると、失敗を気にせず踏み込んだ実験ができて、本当に助かるわ」
一方通行「そォかよ」
芳川「あなたがいれば、大抵のことはどうにかなるからね……さて、お礼にコーヒーでも淹れてあげるわ」
一方通行「ブラックで頼む」
……
……
芳川「はい、どうぞ」
一方通行「ありがとよォ」
芳川「最近はどうしてるの? 実験もなかなか決まらなくて、退屈なんじゃない?」
一方通行「あァ……いや、近頃はそォでもねェかな」
芳川「……そういえばあなた、最近よく打ち止めに会いにいってるらしいわね」
一方通行「あァ、まァな」
芳川「意外だわ。ああいう娘が好みだったのね」
一方通行「馬鹿か、そンなンじゃねェよ」
芳川「冗談よ。研究員の話だと、あの娘、毎日あなたが来るのを楽しみにしてるらしいわよ」
一方通行「やることもなくて、よっぽど暇なンだろォなァ」
芳川「……今日も会いにいくの?」
一方通行「あァ、そのつもりだ」
芳川「なんだか妬けるわね。あなたたちほど通じ合った関係も、そうはないんじゃないかしら」
一方通行「かもなァ」
芳川「……否定しないのね」
一方通行「事実だからな」
芳川「まぁいいわ。打ち止めによろしくね」
一方通行「おォ」
一方通行(それからも、俺は打ち止めのいる施設に通い続けた)
一方通行(別に何をするわけでもねェ。ただ、実験の思い出を語り合うだけだ。だが、そのネタが尽きることはなかった)
一方通行(ひとつの実験を取り上げてみても、実際に経験した俺らからすれば、その裏に存在した様々な思惑、駆け引きなど、とても語り尽くせるよォなもンじゃねェ)
一方通行(しかし、そンな膨大な内容を語り合いながらも、そこに新たな発見があるわけじゃなかった。今や完全に通じ合っている俺たちには、実験中の互いの行動の真意は透けて見えるからだ)
一方通行(だからこれは、一種の確認作業とも言えるかもしれねェ。だが、今の俺には、その作業が楽しくて仕方がなかった。打ち止めも同じだろォな)
一方通行(不思議なもンだ。あれだけ苦労した実験を思い出すことが、こンなにも俺に安らぎを与えてくれるとはなァ)
一方通行(気づけば、俺は打ち止めに毎日会いにいくようになっていた)
一方通行(……あの事件が起こったのは、そンなときだった)
prrrrr
一方通行(着信……芳川か)
一方通行「よォ、何の用だ」
芳川「こんにちは、一方通行。ちょっと迷ったんだけど、一応あなたにも伝えておこうと思って」
一方通行「……何の話だ」
芳川「打ち止めが誘拐されたわ」
一方通行「はァ?」
芳川「外出中のことよ。研究員が同伴してはいたんだけど、ふと目を離した隙にあっという間に連れ去られたらしいわ」
一方通行「……へェ。どこの変態の仕業だろォなァ」
芳川「……意外ね。てっきり、血相を変えて飛び出していくのかと思ったわ」
一方通行「言ったろ。あのガキと俺はそンなンじゃねェ」
芳川「放っておいていいの?」
一方通行「あいつはただのガキじゃねェよ。その辺の奴にやられはしねェ。てめェでなンとかするだろ」
芳川「……相手が、その辺の奴じゃなかったとしても?」
一方通行「何ィ?」
芳川「あの娘に対して趣味以外の価値があるとすれば、それはあなたとの戦闘経験でしょう? 逆に言えば、そんなものに価値を見出だすのは、あなたに挑もうとする人間、いえ、あなたに勝とうとする人間だけだわ」
一方通行「……」
芳川「もちろん確証はないけどね。でも、可能性は低くないと思うわよ」
芳川「ちなみに、研究機関としては、彼女を捜索する気はほとんどない。アンチスキルに、面倒なところは伏せて通報するくらいかしらね」
一方通行「……何が言いたい」
芳川「もし犯人の狙いが私の予想通りなら、アンチスキルにどうにかできるレベルじゃない。打ち止めの運命は、あなたにかかっているということよ」
一方通行「……チッ、情報ありがとォよ」
芳川「あら、助けにいくの?」
一方通行「勘違いすンな。あのガキがどォなろォと、俺の知ったことじゃねェ。殺されよォが構わねェよ」
芳川「……じゃあ、どうして?」
一方通行「単純な話だ。俺は、ただ……」
一方通行「……大切なもンを、守りにいくだけだ」
芳川「……?」
一方通行「じゃァな。切るぜ」
芳川「ま、待ちなさい。あなた、打ち止めの居場所はわかってるの?」
一方通行「発電系能力者には、共通の特徴がある。常に微弱な電磁波を放出しているのが、そのひとつだ」
芳川「……何の話?」
一方通行「一般人には認識すらできねェ程度のもンだがな。気づくのはせいぜい動物か、似たよォな能力者……それも、相当距離が近いとき限定だ」
一方通行「そンな微弱な電磁波を利用したところで、その能力者の居場所を特定するのは難しい。これだけ様々な電波が飛び交う学園都市の中では、まず不可能だ」
一方通行「……普通ならな」
芳川「できるの?」
一方通行「できる。あいつらの放出していた電磁波のパターンは頭に染み付いてる。実験中にもよく利用したもンだ。他の奴らならともかく、あいつらが放出する電磁波なら、どれだけ紛れよォが絶対に見つける自信がある」
芳川「……なるほどね」
一方通行「……」
一方通行「……見つけた。反応はふたつ……ひとつは常盤台中学か。こいつはオリジナルだな。となると……」
一方通行「……ここか。そォ遠くねェな」
一方通行「じゃァ行ってくるわ。今度こそ切るぞ」
芳川「えぇ、いってらっしゃい」
とりあえず今日はここまで
読んでくれてる方ありがとうございます
……
打ち止め(……)
打ち止め(ん……ここは、どこ……?)
打ち止め(確かミサカは、外出してて……それで……)
???「ん、起きたかお嬢ちゃん。悪いが、装置が来るまではおとなしくしといてくれ。終わったら帰してやるからさ」
???「油断しねぇ方がいいぜ。あのガキなら、ここを嗅ぎ付けてもおかしくねぇ」
???「まさか、いくら第一位でもそれはねぇだろ」
???「……だったらいいがな」
打ち止め(……思い出した。ミサカは、外出中に突然拐われて……)
打ち止め(……椅子に縛り付けられてる。これじゃ、逃げようがない)
打ち止め「……装置ってどういうこと? ってミサカはミサカは聞いてみたり」
???「お嬢ちゃんの脳波を読み取る装置だよ。害はないから安心しな」
打ち止め(私の脳波……つまりこいつらの狙いは、ミサカたちの一方通行との戦闘経験ってこと……?)
打ち止め(それって……)
……
ザッ
一方通行(……この倉庫の中だな、間違いねェ)
一方通行(こそこそしてンのもめんどくせェ。正面からぶち破るか)
バキィッ
一方通行「……さァて、お仕置きの時間って奴かァ?」
垣根「おいおい嘘だろ……なんでてめぇがここにいやがる」
木原「だから言ったじゃねぇか。あのガキなら、このくらいのことはやってのけるってよ」
一方通行(打ち止めは……寝てンのか? まァ外傷はねェし、大丈夫だろ)
一方通行「木原くンと……確か第二位だったか? てめェらの仕業か。あのガキに何しやがった?」
垣根「何もしてねぇよ。さっきまで起きてたんだが、脳波を読み取るだけだと教えたら突然騒ぎ出しやがってな。うるせぇから眠らせただけだ」
一方通行「……なるほど、狙いは俺か。雑魚共が知恵を絞って悪巧みかよ。くだらねェ」
垣根「勘違いすんな、俺はただ万全を期そうとしただけだ。てめぇごときに、わざわざ正面から勝負してやることもねぇだろ」
木原「俺は別にそんなもん必要ねぇんだかな。目的は同じってことで協力してただけだ。実験のデータなんてなくても、てめぇのことは全てお見通しなんだよ」
一方通行「……何故俺を狙う?」
垣根「全能力者のうち、レベル6になれる可能性があるのは俺とお前だけだ。序列から、お前がメインプランで、俺がスペアプランとなっている。聞いたことくらいあるだろ?」
一方通行「あァ」
垣根「……なのにだ」
垣根「てめぇが実験に失敗したのに、俺にお鉢が回ってこねぇんだよ! てめぇの実験に関わっていたどいつに聞いても、『また一方通行と実験がしたい』と言いやがる! どうなってやがる!?」
一方通行「……さァな」
垣根「俺がどれだけ待ってたと思ってんだ!? てめぇの実験が成功しようがしまいが、次は俺のはずだったのによ! もしまた二万体殺すなんてことになってみろ、そんなもんとても待ってられねぇだろうがよ!!」
一方通行「同感だなァ」
垣根「……だから手っ取り早くてめぇを殺して、俺がメインプランに居座ることにしたんだよ」
一方通行「なるほどなァ。で、木原くンはどうしたンだァ?」
木原「……てめぇが絶対能力進化実験を終わらせやがったからだよ」
一方通行「はァ?」
木原「てめぇは知る由もねぇがな……そのせいで、いろんなプランが台無しになっちまった。上からの命令と、俺の個人的な腹いせで、てめぇを殺しにきたんだよ」
一方通行「よくわかンねェが……まァいい。表に出ろよ。相手してやるからよォ」
……
……
一方通行「さァて、どっちからやるよ? 俺としちゃァ、ふたり同時でも構わねェがなァ」
木原「おい、先にやらせてくれ。この俺がさくっと終わらせてやるよ」
垣根「……わかったよ、殺しまではするんじゃねぇぞ?」
木原「あぁ」
一方通行「……」
木原「待たせたな一方通行……懐かしいぜ、その生意気なツラ」
一方通行「いいからさっさとこいよ。殺してやるからよォ」
木原「偉そうにしやがって……誰がてめえの能力開発してやったと思ってんだ?」
一方通行「知らねェよボケ」
木原「チッ、いつの間にそんなにつまらなくなっちまったんだ、てめぇは……」
木原「もういい。だが、ひとつだけ言っておくぞ」
木原「てめぇを一番よく知ってんのは、この俺なんだよ。よく覚えとけ」
一方通行「……」
木原「殺すぜ、クソガキィ!」ダッ
バキィッ
一方通行「ッ……」
木原「ははっ、どうだ一方通行! ざまあねぇなぁ!」
一方通行「……」
木原「どうした、驚いて言葉も出ねぇかぁ!? なら、そのまま死んじまいな!」ブンッ
スカッ
木原「なっ……」
一方通行「……わりィなァ。まさか、てめェがそれをしてくるとは思わなくてよォ。気ィ抜いてたわ」
木原「なんだと……」
木原「チッ、偶然でいきがってんじゃねぇぞ!」ブンッ
一方通行「」ヒュンッ
スカッ
木原「……バカな……なんだ、その動きは……」
一方通行「俺の能力は知ってンだろ? 何を不思議がってやがる」
木原「そうじゃねぇ! 普段から反射のあるはずのてめぇが、何故……」
木原「……何故、攻撃を避け慣れてやがる!」
一方通行「そりゃァ、その必要があったからだろォよ」
木原「それに、一発殴られておいて平然としやがって……てめぇは打たれ弱いはずだろうが」
一方通行「……それだけ殴られ慣れてるってことだろォ。言わせンなよ」
木原「あり得ねぇ……俺以外の一体誰が、てめぇを殴ることができるってんだ?」
一方通行「カカッ、あんな小細工が破られたくらいで、何をそんなに大袈裟なこと言ってやがる」
一方通行「俺の反射は『ベクトルを自動で逆向きにする』もンだからなァ。俺の反射膜に触れるか触れないかの瀬戸際で拳を引き戻して、その上で俺に反射させることで、反射膜を突破してるわけだァ」
木原「ぐっ……」
一方通行「……この程度の、てめェが思いつく程度のことを、あいつらが思いつかねェわけねェだろォが」
木原「あいつら……だと?」
一方通行「あァ」
一方通行「決まってンだろ、妹達だよ」
木原「なんだと……」
一方通行「百回も戦闘を繰り返せば、奴らは俺の能力を完璧に把握した。そして、奴らが俺の反射の対策として使ってきた手ってのが……」
一方通行「てめェもさっき使った、拳の引き戻しだった」
木原「……」
一方通行「対策としては、反射の向きを調整するってのがある。だがこれは、俺の思考を先読みしてくる相手には通用しねェ。俺が100%読み合いで負けるってのは考えにくいが、逆に100%勝つことも不可能だ」
一方通行「ところが、奴らは信じられねェことに、ほぼ100%俺に読み勝つようになった。戦闘を繰り返す中で、俺の癖、思考のパターンを完全に把握されたンだ」
一方通行「物理的に避けるってのも悪くねェ。拳を引き戻してるわけだから、俺が僅かでも下がればそれだけで拳は当たらねェ。だが、これも結局俺の思考を読まれちまえば、引き戻す位置を変えるだけで対応されちまう。ならば、どォするか」
一方通行「最も確実なのは、『物理的に拳が当たらない速度で避けること』だ。俺の能力なら、それができる」
木原「ぐぅ……ッ」
一方通行「さァどォする? 奴らは、自分の生体電流をいじることで、俺に肉薄してきたぜ?」
木原「……」
一方通行「チッ……その程度かよ。そンなンで、よく俺のことを一番よく知ってるだなンて言えたもンだなァ」
一方通行「覚えときな、俺のことを一番よく知ってンのはてめェじゃねェ」
一方通行「妹達だ」
一方通行「そっちもこいよ。とっとと終わらせてやるからよォ」
垣根「……絶対能力進化実験は、全くの無駄だったってわけじゃ、なかったみたいだな」
一方通行「まァな」
垣根「だが、他の能力に対しての対処はできねぇんじゃねぇか? 妹達の能力は、電撃一辺倒でしかないはずだからな」
一方通行「どォだろォなァ」
垣根「チッ、調子に乗りやがって……」
垣根「見せてやるよ、俺の『未元物質』!」バサッ
垣根「食らいな!」
バシュッ
一方通行「ッ……こいつは……」
垣根「どうだ、太陽の光に焼かれて死ぬ気分は?」
垣根「俺の未元物質は、正真正銘この世のどこにも存在しないはずの物質だ」
垣根「そんな物質が関わってくれば、物理法則も正常には働かねえ」
垣根「異物の混ざった空間。ここは既に、てめえの知る世界じゃねぇんだよ」
一方通行「……なるほど、お前だったのか」
垣根「あぁ?」
一方通行「存在しないはずの物質が存在する空間では、物理法則も異なってくる」
一方通行「そォなれば、俺が普段無意識に反射していない物質に似せて、反射をすり抜けることも可能だろォな」
一方通行「だったら、その『あり得ないはずの物質』が存在すると仮定した上で、物理法則を演算し直せば問題ねェ」
一方通行「……だろォ?」
垣根「……何を言っている?」
一方通行「とっくに逆算済みだよ、ボケが」
垣根「なっ……!?」
垣根「バカな、あり得ねえ! いくらなんでも早すぎるだろ!?」
垣根(ハッタリか?……いや待て、あいつ……)
垣根(無傷……だと……!?)
垣根(まさか、最初から……ッ!)
垣根「何故だ!? お前は、未元物質を知っていたとでもいうのか!?」
一方通行「まァな」
垣根「……俺にそんな覚えはねぇぞ」
一方通行「もちろンそォさ、お前じゃねェ」
垣根「まさか……」
一方通行「あァ、そォだ。妹達だよ」
垣根「いや……しかし、未元物質は俺だけの能力だ。妹達が使えるはずは……」
一方通行「俺も、奴らがどこから未現物質を引っ張ってきたのかは知らねェよ。だが、手に入れよォと思えば、手に入らねェもンでもねェ」
一方通行「たとえば、お前も能力者なンだから、能力開発は受けてるだろ? 研究機関に、未元物質のサンプルなンかが残っていてもおかしくはねェ。少なくとも、記録くらいは残ってるだろォよ」
一方通行「最悪、お前が能力を使用して戦った場所から、直接採取するって手もある」
一方通行「他に可能性としては……そォだな、暗部づたいに、未元物質を利用した武器をお前に注文する、なンて手もあるかもなァ。覚えはねェのか?」
垣根「ぐっ、そこまでして……だが、なぜ妹達はよりによって、俺の未元物質を武器に選んだんだ……?」
一方通行「勘違いすンな。未元物質なンざ、奴らが使用した無数の武器の内のひとつに過ぎねェ」
一方通行「選ばれた理由は、単に、お前が序列的に一番俺に近かったからだろォな。通用するかどォかはともかく、とりあえず試してみた、ってところじゃねェか?」
垣根「とりあえず……だと……」
一方通行「とりあえずとは言ったが、奴らの戦い方は用意周到なもンだったぜ」
一方通行「いきなり未元物質を俺に見せるなンて真似はしねェ。あらかじめ、未元物質を触媒的に利用して、普通の物質に『この世のものでない性質』を付与していやがった。俺からすれば、突然物理法則がねじ曲がったよォなもンだ」
一方通行「あれには驚かされたぜェ。演算を組み直そォにも、未元物質そのものがその場にあるわけじゃないからなァ。付与された性質から逆算するしかなかった。苦労させられたもンだ」
一方通行「まァ、逆算が終わってからは、無駄だとわかったんだろォな。一切使ってこなくなっちまったがなァ」
一方通行「所詮はその程度のもンでしかねェよ。さァ、次はどォすンだ?」
垣根「ぐ……ッ」
一方通行「おいおいなンだァそのザマは……」
一方通行「もォいいわ。とりあえず、お前らふたりとも……」
一方通行「スクラップ決定だ、クソ野郎共が」
……
アレイスター「まさか…」
一方通行「あァ、そォだ。妹達だよ」
……
一方通行「よォ、生きてっかァ?」
打ち止め「ん……一方通行……?」
一方通行「ったく、お前ほどの奴があンな雑魚共にやられてンじゃねェよ」
打ち止め「……ミサカの戦闘能力は、対一方通行に特化したものだからね。そもそもこの体じゃ、それも十全には発揮できないし、ってミサカはミサカは口を尖らせてみたり」
一方通行「そりゃァそォか」
打ち止め「助けにきてくれたの? ってミサカはミサカは尋ねてみたり」
一方通行「結果的にはそォいうことになるなァ」
打ち止め「どうして? ってミサカはミサカはあなたに問いかけてみたり」
一方通行「……」
一方通行「お前も奴らの狙いは知ったンだろ? なら、俺がそれを阻止してもおかしくはねェだろ」
打ち止め「ううん、おかしいよ。だって……」
打ち止め「たとえ誰かがミサカから実験のデータを得たところで、絶対にあなたに勝つことはできないんだから」
一方通行「……」
打ち止め「あれは結局、『あなたに勝てなかったデータ』でしかないし、あの頃の癖や思考パターンも今のあなたは克服してる。なら、放っておいてもよかったんじゃないの? ってミサカはミサカはあなたに聞いてみたり」
一方通行「……お前、絶対能力進化実験の報告書は読ンだか?」
打ち止め「報告書? うん、一応読んだよ。さすがに全部目を通したわけじゃないけど、ってミサカはミサカはあの分厚さを思い返してみたり」
一方通行「どォ思ったよ?」
打ち止め「どうって……うまくまとめられてたんじゃない? ってミサカはミサカは答えてみたり」
一方通行「……ものは言い様だなァ」
一方通行「あれだけ分厚くても、実験の1%も網羅しちゃいねェ。あの実験に携わった人間は数多くいたが、そいつらの中に、本当の意味で実験を知り尽くしてる奴はいねェンだよ」
一方通行「……俺と、お前ら以外にはな」
打ち止め「……」
一方通行「別に、研究者共が不甲斐ねェなンて話をしてるわけじゃねェ。むしろその逆だ。あいつらには感謝してるし、これ以上ない仕事をしてくれた」
一方通行「報告書だって、あれ以上枚数を増やす必要はないし、その意味もない。実験の本来の目的を考えれば、なおさらだ。ただ……」
一方通行「実際に実験を行っていた俺たちにしかわからない世界がある。あれだけは、俺とお前らだけのもンなンだよ」
打ち止め「一方通行……」
一方通行「……それを、実験の関係者でもねェ野郎が盗み見よォなんざ、許せるわけねェだろォが」
打ち止め「……」
打ち止め「……そうだよね」
一方通行「あァ?」
打ち止め「ミサカも同じ気持ちだったよ。あなたに危険が及ぶとは思わなかったけど、誰かに実験の経験を盗み見られること自体に、すごく抵抗を覚えたんだ、ってミサカはミサカは笑ってみたり」
一方通行「……今更余計な確認をしてンじゃねェよ。俺とお前らが通じ合ってることは、もうわかってンだろォが」
打ち止め「うん、わかってたよ、ってミサカはミサカはあなたに抱きついてみたり!」
一方通行「……帰るぞ」
打ち止め「一方通行!」
一方通行「あン?」
打ち止め「大切なものを守ってくれてありがとう! ってミサカはミサカはお礼を言ってみたり!」
一方通行「あァ、無事でよかったよ」
……
……
一方通行「……つゥわけで、このガキはウチで預かることにしたわ」
打ち止め「芳川久しぶり! ってミサカはミサカは挨拶してみたり」
芳川「えぇ、久しぶり……いや、どういうこと?」
一方通行「お前ら研究機関としては、もう打ち止めにはそれほど価値を見出だしてねェンだろ? その程度の保護じゃァ、俺を狙ってくる輩には対抗できねェだろォからなァ」
一方通行「だから、この俺が直々に守ってやるって言ってンだよ」
芳川「……勝手なことを言うわね。こっちの事情も知らないで」
一方通行「」チラッ
打ち止め「」コクッ
打ち止め「……どうしてもダメ? ってミサカはミサカは上目遣いで目をうるうるさせてみたり」
芳川「うっ……わかったわよ、なんとかしてあげる。確かに理屈は通ってるしね……」
打ち止め「ありがとう! ってミサカはミサカは芳川に抱きついてみたり!」
一方通行「ありがとォよ。じゃァ帰ろォぜ打ち止め」
打ち止め「うん、あなたのお家楽しみ! ってミサカはミサカはワクワクしてみたり!」
一方通行「そンなに期待されても困るンだが……」
打ち止め「学園都市第一位の部屋なんだから、きっと学園都市で一番目立つところにあるんじゃないかな! ってミサカはミサカは予想してみたり」
一方通行「窓のないビルかよ。でもまァお前も住むンなら、引っ越した方がいいかもなァ」
打ち止め「あなたとならどんなところでもいいよ、ってミサカはミサカは一途な新妻さんみたいなことを言ってみたり」
一方通行「何バカなこと言ってやがンだ」
芳川(……若いっていいわね)
……
……
打ち止め「今日はいろいろとありがとうね、ってミサカはミサカは改めてお礼を言ってみたり」
一方通行「俺が自分のために勝手にやったことだ。てめェが気にすることじゃねェよ」
打ち止め「それでもありがとう、ってミサカはミサカはあなたに気持ちを伝えてみたり」
一方通行「……ったく、こっちの台詞だっての」
打ち止め「え?」
一方通行「てめェらがいなかったら……もし、あの実験がなかったら、俺はどォなっていたンだろォな」
一方通行「……そンなことを、最近よく考えるンだよ」
打ち止め「……」
一方通行「もし、絶対能力進化実験がなかったら……いや、その相手がお前らじゃなかったら、俺は今の俺にはなり得なかった」
一方通行「てめェらには、本当に感謝してンだぜ? それこそ、いくら返しても返せねェくらいの恩があると思ってる」
打ち止め「それは……!」
一方通行「まァ、てめェらも同じ気持ちなンだろォがなァ」
打ち止め「…………」
打ち止め「……うん、そうだよ? ってミサカはミサカは答えてみたり」
一方通行「だから、いちいち礼なンて言わなくていいンだよ。そンなもン、今更俺らの間に必要ねェだろ」
打ち止め「もう! そういう話なら最初からそう言ってよ! ってミサカはミサカは地団駄を踏んでみたり!」
一方通行「さっきのお返しだ」
打ち止め「全くもう……」
一方通行「……」
一方通行「……打ち止め」
打ち止め「ん?」
一方通行「絶対能力進化実験はどォだった?」
打ち止め「……」
打ち止め「最高だったよ! ってミサカはミサカは笑ってみたり!」
終わりです
ありがとうございました
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これいいな