海未「ラウドクワイエットラウド」 (14)

鬱要素有り

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EP.1【小学生の三人】

穂乃果「えーことりちゃんもう帰っちゃうの?」

ことり「うん。ごめんね!」

穂乃果「ううん。お母さんから呼ばれるてんならしょうがないよ!ね、海未ちゃん?」

海未「うん!」

ことりちゃんは申し訳なさそうにお別れを告げて帰って行きました。

今、この場所には私と穂乃果ちゃんの二人。

何だかドキドキしています。

穂乃果「次!」

海未「は、はい?」

穂乃果「次は海未ちゃんの番だよ!」





私達の中で流行してる遊び。
宝物の見せ合い。

穂乃果ちゃんは綺麗な貝殻。
ことりちゃんは猫さんのシール。

ついさっきまで、その猫のシールを眺めていたのですが。
ことりちゃんは急用で帰ってしまい。
私が宝物を見せる番になってしまいました。

穂乃果「まだー?」

海未「あ、今から出しますから」

鞄の中に入っている半楕円の小さな世界。
かわいい女の子と木で出来たお家。
そして、振れば舞う綺麗な雪。

スノードーム。

外は暑くセミの鳴き声が聞こえるけど、これを眺めていると、まるで冬が来たみたいでこの暑さを忘れてしまいます。
ほんの一瞬。一瞬だけ。

穂乃果「おぉーっ!」

海未「スノードームです」

穂乃果「すのーどーむ?へーすのーどーむって言うんだ!何だか綺麗だね!」

本当の所。
これは私の宝物ではなく。
家に飾ってあって物を持って来ました。

毎週の宝物大会で私の宝物はもう出尽くしてしまい。
これを見た瞬間、これを宝物と言う事にしようと決まりました。

穂乃果「えへへ。雪降ってるみたい」

でも穂乃果ちゃんはすごく気に入ってるみたいで良かった。

今までに持って来たどの大切な宝物よりも家に飾ってあった置物に感動していたのが少し残念だったけど。

穂乃果「ねっ!降ってみていい?」

海未「いいですよ」

穂乃果「ありがとう!」

穂乃果ちゃんはスノードームを大きく振りました。

このスノードームはスイッチがあって押すと自動で雪が舞うのですが、電池が切れて手動でやらなきゃいけないのが少し残念です。

電池を入れてくれば。
この綺麗で小さな雪の世界を穂乃果ちゃんと二人で見ていてられたのに。

穂乃果「あっ!」

いつの間にか穂乃果ちゃんの手からはスノードームは消えていて。

穂乃果ちゃんの目線を追うと開いていた窓からスノードームは飛び出し。

ガシャンと音がした。

身を乗り出してたしかめる。

雪は辺りの地面に散らかり、木の家は何処かへ。
女の子は地面に転がっており土で汚れています。

穂乃果「う、海未ちゃん。ごめんなさい!」

可哀想だと思いました。
綺麗な世界にいたのに。
放り出された先は汚れた世界。


EP.2【三日前】

穂乃果「ねーねー海未ちゃん!合宿楽しみだねっ!」

海未「はいっ!って言っても最後の合宿ですが・・・」

絵里「もう、どんよりさせないでよ。私達最後の合宿よ?」

穂乃果「でも、全部終わったのに合宿なんてする意味あるのかなぁ?」

希「お別れ会。何てなんか悲壮感漂うやろ?だから、μ’sの合宿って事でええやん?」

穂乃果「おぉーっ!何かそれいいっ!」

海未「来年も再来年もこの合宿を続けて行けたらいいですね」

にこ「そのつもりよ!」

絵里「また来年もみんなで合宿!勿論、練習も何もないただ遊ぶだけの合宿だけどね」

穂乃果「さいこーっ!」

希「ほんと楽しみやんなぁ・・・」

にこ「ちゃんと私達の活動日誌としてブログに載せて置いたから感謝しなさいよ!」

穂乃果「にこちゃん、準備万端だね!」

にこ「当たり前じゃない!」

絵里「それより、海なの?山なの?」

海未「残念ながら海って聞きました」

希「じゃあ前と同じ所?」

穂乃果「じゃないかなぁ。でもいいじゃん!山、暑いし!」

海未「都市部よりは涼しいですから!」

穂乃果「もー海未ちゃんは本当に山好きだなぁ」

海未「好きですから!山登り!」

EP.3【汚れた世界】

穂乃果「ねぇ、海未ちゃん」

海未「はい」

目の前に海が広がっていて、隣には穂乃果。

穂乃果「夜の海未もいいね」

でも、決して穂乃果の方は見ずにただ海を眺めながらはいと答える。

何故か穂乃果は私の手を。小指だけ握っていて。
私の体は硬直したまま動きません。
大きく動いてるのは潮風に吹かれてなびく髪と心臓。

お互い、普段しているような会話が出来ていない。
穂乃果が思い付いた言葉を喋り。
私はそれを肯定するだけ。

何だか味わった事も無いような心地よい感覚。

穂乃果の手は少し震えていて、私はその震える手を握り返す事も出来ずに波を目で追う。




穂乃果「海未ちゃん、私と出会えてよかった?」

海未「・・・はい」

この空間にいると嘘が付けなくなる。
いや、嘘を付く事が罪になってしまうかのようだ。

普段の私なら恥ずかしくてこの質問に答えて無かっただろう。

だが今は驚く程スムーズに私は穂乃果との出会いを良かったと肯定した。

質問の意図が分からず、真っ白な頭をそのままにして。
反射的に真実を言う。

穂乃果「手、もっと握りたいな」

海未「・・・はい」

でも、穂乃果の手は私の小指から離れずにそのまま動かない。

穂乃果「・・・えへへごめん海未ちゃん」

海未「はい?」

穂乃果「何だか夜の海って怖くて。手握っちゃったっ!」

さっきとは変わって明るい声色で言った穂乃果を見ると。

笑いながら泣いていて。

その涙の理由を知らない私は夜の闇のせいにして見て見ぬ振りをした。



穂乃果「私、もう行くねっ!眠いし」

海未「あっ、は、はい!」

泣いてる事を悟られないように欠伸をしながら去って行く穂乃果を見て。
私はその後について行く。

声も掛けられないまま別荘に着くと、穂乃果は後ろを振り向き。

穂乃果「付いて来てたんだ」

そう言って、また欠伸をした。

私達は多分両想いだ。

ここで私が告白をすれば、友達関係は終わり恋人となる。

私はそれがたまらなく怖い。

友達関係の壁を壊す事みんなの反応、未来の事が。

だからせめて。
後、もう少し待って欲しい。

みんなが私達にあまり干渉しなくなる大人となるまで。
その時は付き合ってる事を隠せばいい。
両親にも隠しそしていつまでも仲の良い友人と思われながら、私達は愛を育みたい。

同性と言う現実がこんなにも私の心を臆病にし、足に絡み付いて次に踏み出せない。

凛「あーっ!二人とも遅いにゃー!」

ひょっこりと顔を出した凛。

ことり「二人で何してたの?」

続いてことりもひょっこり顔を出す。

穂乃果「ううん!何も!」

ことり「もうお布団の準備できてるよー」

海未「すみません。ありがとうございます」

穂乃果「私、もう眠いやー」

凛「枕投げはー?」

海未「やりません!何時だと思ってるんですか?いっぱい遊んだから後は寝るだけてです!寝坊しても知りませんよ?」

凛「う、海未ちゃん怖いにゃあ・・・」

海未「さぁ、早く寝ますよ!」

ことり「うん、そうだね!・・・ってもう花陽ちゃんは寝てるけど」

絵里「静かにねっ!」

綺麗に並べられた布団の端っこ。

もう花陽は夢の中で、私達はその眠りに気を使い小声で話す。

希「電気消すよー?」

みんながはーいと言うと、真っ暗になり海の波の音が身近に感じる程、はっきりと聞こえた。

海未「す、すみません。ちょっとトイレ」

私はゆっくりと立ち上がり、目を凝らしながら布団と布団の間を通り抜ける。

絵里「電気付けようか?」

海未「だ、大丈夫です!目も慣れてきましたから」

絵里「そう。気を付けてね」

海未「・・・はい」

確かトイレはあそこを曲がった所にあったはずだ。

花陽を起こさないようにゆっくりと歩く。

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