男「たった一つの願い事」 (7)

男「今日って七夕なんだな」

女「そうだよ。短冊に願い事を書くんだよ」

男「それを笹の葉に吊るす。おかしな風習だな」

女「それでもロマンチックじゃない?」

男「……まぁ、それもそうだな」

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女「で、素直に短冊書いてるけど」

男「いいじゃん。こういうことも」

女「まぁいいけど。らしくないね」

男「うるせーよ」

女「で、なんて書いてるの?」

男「見せねーよ」

女「意地悪」

男「あたりめーだ。恥ずかしい」

男「さて、書き終わったな」

女「結局見せてくれない」

男「お前だって見せてくれねーじゃん」

女「まぁね。恥ずかしいもん」

男「やっぱり恥ずかしーんじゃねーか」

女「当たり前じゃん。願い事は心なんだよ」

男「ちょっとかっこいいこと言っても誤魔化されないからな」

女「ちぇっ」

男「吊るし終わったな」

女「ひた隠しにされた気になる」

男「お前が見せてくれるならいいよ」

女「えー……どうしようかな」

男「悩むくらいなら見るな見るな」

女「うーん……わかった!見せっこしよう!」

男「見せっこって、お前もう吊るしたじゃん」

女「今から書くもん」キュッキュッ

男「あっずるい!それはなしだろ!」

女「書いたもの勝ちですー」

男「くそっ。高い所に吊るしやがって」

男「しかし色んなこと書いてるな」

『病気がよくなりますように』

『足が早くなりますように』

『……』

『……』

男「七夕もこう考えたらいいものなのかも知れないな」

女「男、見せっこしよ」

男「絶対嘘書いてるだろ。お前のことだから大体わかるぞ」

女「いいじゃん、減るもんじゃないし」

男「……あーもうわかったよ、好きにしろ」

女「やったね。ごね得ごね得」ゴソゴソ

男「全く……俺のなんてわかるのか?」

女「男は癖字だからわかるよ」

男「ちぇ。まぁいいけどさ」

女「あったあった。……へー」ニヤリ

男「なんだよその顔……」

女「いや、男も可愛いところあるんだと思って」

男「うるせーよ……全く」

女「はい、私のはこれ」

『女と幸せになれますように』

『男と幸せになれますように』

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