「あっ、あっ」
プロデューサーが、白い水たまりの中で四つん這いになっている。はだけたワイシャツから出ている乳頭から、スプリンクラーのように母乳を撒き散らす。
「違う…違うんだ千早、これは…あっ」
プロデューサーが言い訳の言葉を喋ろうとする度に、母乳はピュッと途切れ、感じて言葉が出なくなる度に、再び噴水のごとく吹き出し始める。
私はしゃがむと、水たまりの中に手を入れる。そして、プロデューサーが胸に仕込んでいたブラジャーを、両手で拾い上げた。
ブラはプロデューサーの母乳でグショグショに濡れており、拾った私の手がベトベトになる。
「………」
左手にブラジャーを持つと、右手を見つめた。母乳が手から腕を伝い、肘から水滴となって落ちた。
ぺろり。
指を舐めると、舌の先から、ほのかな甘みと僅かな酸味が感じられた。
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私がプロデューサーの異変に気付いたのは、今朝のことだった。
「いや、今日は暑いな」
そう言ったプロデューサーのワイシャツは、汗で透けていた。その透けっぷりといえば、一昔に流行ったスケルトンカラーとでも言うべきもので、見ているこっちの方が恥ずかしくなってくる。
私はそこから目を背けようとしたが、何か強烈な違和感を覚え、プロデューサーの身体を見つめ直した。
見えるはずのものが見えない。この見えるはずのものというのは、乳首だ。
そう。ワイシャツがスケスケならば、乳首が見えなければおかしい。下着にシャツくらいは着ているが、このプロデューサーの濡れっぷりには何の意味もなさない。
乳首が見えない。その通りだ。しかし、そんなことは問題になどならない。その代わりに、ワイシャツから透けて見えるもの。それこそが、違和感の正体だった。
…ブラジャー?
「あ…」
「ん?」
私の声にならない声に反応し、プロデューサーがこっちを向いた。
ブラジャーのことを訊かなければ。そう思っても、喉から声が出ない。まるで、プロデューサーのワイシャツに水分を持って行かれたように。
何も言わない私を、プロデューサーは不審な目で見ている。しかし、不審者はどう見てもプロデューサーだ。このアングルからの、ワイシャツの下に透ける黒いブラジャーを見れば、世界人口の98%はそう答えるだろう。
「………」
プロデューサーはポリポリと頭を掻くと、私に背を向け歩き去っていく。
「はぁ…っ」
私の喉から、肺から絞り出された空気が通り抜ける。
なんだったのだろう。何故、プロデューサーはあんなものを着用しているのか。
あまりのことに、頭が思考を拒否している。近年ではメンズブラというものも珍しくないらしいし、それをプロデューサーもつけているにすぎない。そう、短絡的に結論づけた。
しかし、そう思っても、ブラジャーを着用する成人男性に対する不信感はとても拭えるものではなかった…
そして今、プロデューサーは私の足元で母乳を撒き散らしている。
ブラジャーをしていたのは、このためか。
しかし、プロデューサーの乳首から止め処なく流れる母乳は、こんなブラ一つで賄いきれるような量ではない。
「あっ、あっ、あー…」
プロデューサーの表情が、恍惚へと変わっていく。
雄っぱいから母乳を遠慮なく撒き散らすのが気持ちいいのだろう。
「やめてくれ、千早…見ないでくれ…」
そう言いながらも、プロデューサーの息遣いはどんどん荒くなっていく。
言葉とは裏腹に、身体は見て欲しいと言わんばかりに胸をはだけ、腰をくねらせていた。
それにしても…何故、プロデューサーから母乳が出るようになってしまったのだろう…?
一つだけ、思い当たることがあった。あれは、昨日の出来事…
「千早ちゃんは何をお願いするの?」
春香が私に問いかける。その手には長方形の、色のついた紙が一枚。短冊だ。
そう、来週はもう七夕。私達は事務所に飾る笹に吊るすための短冊を書いていた。
「春香は、どうするの?」
私は、質問を質問で返す。書くことなど、何も思い浮かばなかった。
「私? 私は、うーん…アイドルとして、早く大きなステージに立てますように! かな?」
春香は笑顔でそう答えた。
「そう…」
春香は、夢の成功を願っている。そうだ。七夕というものは、自分の夢を願う場所なのだ。
けど。私は同じように、夢を願うつもりはなかった。
だって、夢は自分で掴み取るものだから。努力の末に、勝ち取るものだから。
叶えてもらうような夢は、夢じゃない。春香を否定するわけではない。これは私のプライド。
だから。もしも神様がいて、一つだけ願いを叶えてくれるのだとしたら。それは、努力で勝ち取るものではなく…
私はその短冊に、一つの願いを乗せた。
『プロデューサーから母乳が出ますように』
私のせいだ。
私のせいで、プロデューサーは苦しんでいるのだ。
「見るな、千早…」
プロデューサーの瞼から涙が一筋流れ落ち、母乳の水たまりへと落ちた。
次の瞬間…私は、母乳たまりに顔から突っ込んだ。
「な…千早!?」
「んぐっ、んぐっ!」
飲む。プロデューサーの母乳を、飲む。次から次へと溢れ出てくるが、ひたすら喉の奥に押し込んでいく。
「千早…」
顔を上げると、プロデューサーは泣きそうな顔で私のことを見ていた。
「千早っ…」
抱きしめられる。母乳で私の服までもが濡れてしまうが、構わない。私も、彼の体を抱き返した。
例え、汗でスケルトンカラーになろうが。例え、母乳を巻き散らかそうが。私は貴方の全てを受け入れます。
だから、プロデューサー。
「ずっと、一緒に…」
終わり
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