※きんいろモザイク短編
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陽子「あぢー……」ペッコペッコペッコペッコ
アリス「ちょっとヨーコ、下敷きであおぐなんてはしたないよ……」
陽子「えー、いいじゃん……真夏日だよ今日……」ペッコペッコペッコペッコ
アリス「ダメだよー、曲がりなりにも日本人女性でしょ? もっと上品にならないと!」
陽子「ま、曲がりなりにもって……」
アリス「あ、意味は分かる? 『いかに不十分であろうと』ってことだよ」
陽子「分かるよ! 曲がってないし! ど真ん中ストレート日本人女性だし!」
アリス「それなら下敷きじゃなくて、もっとちゃんとしたのを使わないと」
陽子「なんだよちゃんとしたのって」
アリス「例えばほら、こんなのとか」パタタタタ
陽子「お、扇子かー」
アリス「これぞ日本の心であり女性のたしなみだよ……」パタパタ
陽子「くー、ドヤ顔が腹立つ」
アリス「扇子だけにセンスがいい、なんて……あ、思わず小粋なジャパニーズジョークが出ちゃったよー」
陽子「それは寒いオヤジギャグだ」
陽子「でも扇子なんて使ってるのアリスだけだって」
アリス「そんなことないよー」
陽子「じゃあA組に見に行ってみようよ! 絶対カレンとか下敷き派だから!」
A組
陽子「頼もー!」
カレン「あっつー……」パタパタ
陽子「なっ……!」
陽子「カレンがうちわを使ってる! どうして!?」
カレン「つ、使ったらダメデスか?」
陽子「てっきり下じきであおいでるのかと……仲間だと思ったのにー!」
カレン「あー……」
カレン「ヨーコ、あれデスね」
カレン「女子力ないデスね」フッ
陽子「な、なにをー!」
アリス「いやー、やっぱり下敷きはないよー」
カレン「まあ、最低限デスよねー女の子として」
陽子「ぐぬぬ……でっかく『祭』って書いてるくせに!」
カレン「ウチはうちわ派ー、なんちゃって……Oh、自然とウィットに富んだジャパニーズジョークを口ずさんでしまったデス」
陽子「だからそれオヤジギャグ! こんな寒いギャグいうやつに女子力ないとか言われたくないんだけど!」
陽子「っていうか下敷きはダメでうちわはOKってなんでだよ!」
カレン「だって下敷きって、元々あおぐために使うものじゃないデス」
アリス「文房具をそうやって涼むために使ってるところが、ズボラな印象を与えるんだよー」
陽子「う……反論できない」
アリス「分かったら、ヨーコも明日から扇子を買って日本人の心と女子力を手に入れようね」
陽子「まるで日本人の心も女子力も持ってないみたいな言い方……屈辱だ!」
陽子「しかもさ、扇子って高いんじゃない?」
アリス「大丈夫だよ、私のは100均で買ったし」
カレン「私のも100均デス」
陽子「108円あればセットで買える日本の心と女子力って一体……」
カレン「チッチッチッ、分かってないデスヨーコ」
アリス「うんうん、その108円分の工夫を怠らないのが女子力なんだよ」
カレンアリス「ねー!」
陽子(うぜぇ)
カレン「そういう点でヨーコは女子力が低いデス」
アリス「ホント、女子力が不足してるよー」
陽子「お、お前ら女子力って言葉使いたいだけだろ……! ブームはとっくに過ぎてるのに!」
陽子「大体、あおぐのに下じき使っただけでそこまで言われる筋合いはないぞ!」
カレン「いやー、日ごろの行動もデスよね」
アリス「うん、いつも早弁してるし」
カレン「制服もいい加減に着てマスし」
アリス「食品サンプルにかじりつくし」
カレン「大ざっぱデスし……」
陽子「うぅ……」
アリス「マンガ肉大好きだし……」
陽子「それはアリスの勝手なイメージだろ!」
カレン「まあとにかくそんなこんなで女子力低いデース」
陽子「お、お前ら寄ってたかって……でも否定できない! くそー!」
綾「あら、陽子にアリス……来てたのね」
忍「何の話をしてるんですか?」
アリス「シノ、アヤ!」
カレン「ヨーコの女子力が低いって話デース」
忍「陽子ちゃんが?」
忍「そんなことありませんよ、陽子ちゃんにも女の子らしいところはあります」
陽子「しの! しのならそう言ってくれるって信じてたよ!」
アリス「例えばどんなところ?」
忍「そうですね……」
忍「えーと……」
忍「うーん……」
忍「あー……」
忍「……」
忍「……zzz」
陽子「寝るなよ!」
忍「! ね、寝てませんよ……」
忍「……そ、そういえば、最近暑いですねー」
陽子「くそー! 露骨に話題逸らされた!」
陽子「じゃあ綾は!? 綾は私の女子らしいところを知ってるよな!?」
綾「え? そ、そうね……えーと……」
綾「うーん……」
綾「……/////」
陽子「なぜ赤くなる?」
綾「……べ、別にいいんじゃないかしら……女子らしくなくたって」
陽子「な、なんだよそれー!」
綾「女子らしくない一面も、ヨーコノイイトコロッテイウカ……ソノ///」モゴモゴ
陽子「うわーん! 女のしての自分を否定されたよー!」
綾「そっ! そんなつもりは!」
カレン「ヨーコ、現実を見るデス」
綾「オンナトシテヒテイシタワケジャナクッテ、ワタシハイマノヨーコノママデジュウブンミリョクガアルッテイウカ」ボソボソ
アリス「受け入れないとスタートラインにも立てないんだよ?」
綾「イマノジブンヲ、イマノヨーコノママデイテクレタラソレデ……」ボソボソ
陽子「くうう……」
陽子「ふん、なんだよ! 別に女子力とか必要ないし! 私は私らしく生きていくし!」
綾「タシカニクイシンボウデオオザッパナトコロハアルケド……ソンナトコロモキライジャナイッテイウカ……」ボソボソ
カレン「私は私らしく、デスか……」
カレン「ふぅー……言うことが若いデスね、ヨーコ」
綾「ムシロソノ……ドッチカッテイウトスキッテイウカ……」ボソボソ
陽子「同い年だろ!」
カレン「女子力が欠けてる女の子は、はっきり言ってモテないデスよ?」
カレン「それは、女性として悲しいことだと思いマセンか?」
綾「ス、スキッテイウノハライクノホウノイミダカラネ!」ボソボソ
陽子「わ、私には友達がいればいいから!」
綾「ラ、ラブノホウノイミジャナインダカラ……カンチガイシナイデヨネ!」ボソボソ
カレン「そんなこと言ってられるもの今のうちデース」
綾(……あれ? 聞かれてない?)
陽子「何をー」ガルル
烏丸「あらあら、ケンカはよくありませんよー?」
陽子「からすちゃん!」
カレン「ケンカじゃないデス、女子力の重要性について議論してたデース」
烏丸「あらー、女子力?」
忍「女子力といえば、烏丸先生は女子力にあふれてますよね!」
烏丸「え? そ、そうかしらー?」
忍「そうですよ! おしゃれですし、優しいですし!」
烏丸「うふふ、お世辞でも嬉しいわー」
忍「お世辞じゃないですよー! 本心です!」
陽子(普通はお世辞でもおしゃれとは言えないよ、ジャージ姿の人には……)
烏丸「そんなこと言われると照れるわねー」
忍「そんな先生は、さぞかし男の人にモテるんでしょうね!」
烏丸「え」
忍「やっぱり今も、お付き合いしてる人とかいらっしゃるんですか?」
烏丸「そ、それは……」
忍「そういえばそろそろ結婚されてもおかしくない年齢ですし……」
烏丸「ひっ」
忍「あ、もしかしてもう結婚されてましたっけ? だとしたらすみません……」
烏丸「」
烏丸「も、もう許して……」ポロポロ
忍「ええ!? ど、どうして泣いてるんですか先生!? 何か嫌なことでも!?」
烏丸「うああ……」ポロポロ
忍「ど、どこへ行くんですか先生! 先生ー!?」
忍「い、行ってしまいました……」
カレンアリス陽子綾「…………」
カレン「……ああなりたいデスか? ヨーコ?」
陽子「な、なりたくない……」
カレン「厳しいことを言うようデスが、このままだと……あれが未来のヨーコの姿デス!」
陽子「い、いやだ……!」
綾(先生散々な言われようね)
陽子「でも、女子力ってどうやったら上がるんだ……?」
陽子「いや、そもそも女子力って何なんだ……?」
陽子「誰か教えてくれー!」
カレン「ふふふ、知りたいデスか」
陽子「知りたい!」
カレン「良いデショウ……それではこれより、ヨーコの女子力アップキャンペーン開始デス!」
カレン「題して……『(≧ω≦)カワイイは作れるんだゾ♪( つ・`ω・´)つ目指せщ(゚д゚щ)ゆるふわ☆モテカワガール(≧ω≦)』」
陽子「な、なんかうすら寒いタイトルだな」
カレン「そう感じるのはまだ女子力が低いからデス」
陽子「ま、マジか……」
カレン「まずは、形から入るのが大切だと言うことで……」
カレン「話し方を変えるデース!」
陽子「話し方……ああ、確かに私の口調はちょっと男っぽいもんな」
カレン「これからは、語尾に『だゾ』をつけるデース!」
陽子「……『だゾ』?」
カレン「そうだゾ! こんな感じだゾ!o(*゜ω゜*)o」
陽子「こ、これでいいのかゾ?」
カレン「感情がこもってないゾ!o(`ω´)o こうだゾ!(≧ω≦)」
陽子「難しいゾ……(´ω`;)」
カレン「あ、今のいい感じだゾ♪へ(*^0^*)へ」
陽子「分かってきたゾ!(*^_^*)」
カレン「その調子だゾ!(*^ω^)ノシ」
陽子「いやちょっと待て」
カレン「どうしたんだゾ? (@_@)」
陽子「いやどう考えてもおかしいだろこれ……なんだよだゾって。こんな喋り方してるやついねーよ」
カレン「もー、ヨーコは忍耐が足りないデース!」
陽子「お前、女子力女子力言ってたくせに実は女子力のことほとんどしらねーだろ!」
カレン「そ、そんなことないデース! ほら、言ってやってくださいシノ!」
陽子「人頼みかよ!」
忍「……zzz」
陽子「寝てるし! 興味なしか!」
忍「! ね、寝てませんよ……」
忍「デ、ナンノハナシデシタッケ?」ヒソヒソ アリス「ヨーコノジョシリョクヲノバソウッテハナシダヨ」ヒソヒソ
陽子「誤魔化さなくていいよ! 認めろよ!」
忍「わ、分かりました……私が陽子ちゃんに真の女子力を伝授してあげましょう」
陽子「おお、自信ありげ」
忍「まず女子力に欠かせない要素、それは!」
忍「『ファッションセンス!』」バーン
アリスカレン綾「…………」
陽子「……よりによってしのがそれ言っちゃう?」
忍「あれ?」
陽子「というか学校だから制服しかないけど……」
忍「いいえ、制服ひとつ取っても、様々な着こなし方があります」
忍「リボンやベストの有無は自由ですし、綾ちゃんのようにタイツをはいたり、カレンのようにパーカーを着るという手段もあります」
忍「アリスのようにカーディガンを腰に巻く、というのも一つの手ですね」
忍「……というように、制限のきついように見える制服にも、無限の表現があります」
忍「いえ、むしろ……制限がきついからこそ、細かな工夫が際立つのです!」キリッ
陽子「おお! し、しのがまともにファッションを語っている!」
忍「それをふまえて、陽子ちゃんの服装を見直してみましょう」
忍「今の陽子ちゃんは、上はポロシャツだけ、下もスカートに白ソックス、指定靴というシンプルなスタイルですね」
陽子「うんうん」
忍「ボーイッシュな陽子ちゃんには一番適しているとも言えるスタイルですが、このままでは味気ない感じがします。特に上半身」
忍「そうですね……スポーティな雰囲気を出しつつ、さわやかさとそこはかとないセクシーさを香らせるファッション、をテーマにしましょう」
陽子「おお、なんかすごそうだ!」
忍「となるとやはり……アレですね」
陽子「アレ、とは……?」
忍「ズバリ、コレです!」
陽子「……何それ」
忍「スクール水着です!」
陽子「いや、見たらわかるけども」
忍「スポーティかつさわやかでセクシー!」
忍「どうです?」
陽子「どうです? じゃねーよ! こんなの着て授業受けられるか!」
忍「もちろん水着だけ着てたら校則違反です」
忍「なので水着を……インナーとして着るのです」
綾「……」ゴクリ
陽子「ただの変態だろ! まだ水泳の授業始まってないのに!」
忍「うーん……いい案だと思ったのですが」
陽子「どこがだよ……」
カレン「それが気に入らないなら、逆に制服の上にスク水を着てみたらどうデス?」
忍「それもありですね」
陽子「じゃあカレンが着てみなよ」
カレン「え? そんな妙な格好イヤデス」
陽子「おい」
アリス「じゃあ、次は私の出番だね」
陽子「え、これ一人ずつ言っていく感じなの?」
アリス「女として好かれるということ……それにはやっぱり、『外見の美しさ』が必要になってくる」
アリス「外見の美しさのうち、ファッションについてはもうシノがレクチャーしてくれたからOKとして」
陽子「何の収穫も無かったけどな」
アリス「わたしからは、身体的な美しさについて教えようと思う!」
陽子「身体的な……プロポーションとか?」
アリス「うん、それも一つの要素だね」
カレン「でもプロポーションに関しては、ボンキュッボンのヨーコはもう言うことないと思いマース」
陽子「どこでそんな言葉覚えたんだ」
カレン「むしろその……」ジー
アリス「な、何が言いたいの?」
カレン「体型に限っては、アリスの方がヨーコに教えを乞うべきでは?」
アリス「う……」
綾(確かに……他人のこと言えないけど)
アリス「しゃ……」
アリス「シャラーップ!!」ガオー
陽子「アリスが怒った!?」
アリス「よ、ヨーコの胸は……自己主張が強すぎるからダメ!」
陽子「えぇ!?」
アリス「日本人ならもっと慎ましくて、謙虚であるべきなんだよ! ヨーコのはダメ! もう全然ダメ!」ガミガミ
陽子「胸にダメ出しされても……どうしろと!」
カレン「ただのひがみにしか聞こえないデス」
アリス「だから今回は特別に……わたしが少し貰ってあげるね」
陽子「いや、やれねーから」
アリス「遠慮はいらないよー」ニコ
陽子「目が怖いんだけど……っておい! 掴むな!」
アリス「うーん……と、取れない……!」ギュー
陽子「いたた! 取れるわけねーだろ! 引っ張るな!」
綾「……///」
カレン(アヤヤ、便乗するチャンスデスよ!)
綾「え!」
綾「わ、私も欲しいわ……!///」ソー
綾「ってそんなのできるわけないでしょ!///」バシーン
陽子「いてー! なんで叩いた今!?」
アリス「コホン……えー、まあ冗談はさておいて」
陽子(目は完全に本気だったけどな)
アリス「体型についてはもう言うことないんだけど……他に改善するべきところがあるよ」
陽子「というと?」
アリス「髪、だよ!」
陽子「髪か……確かにあんまり手入れもしてないし、髪型も何にも工夫してないな」
アリス「しかもこの時期になると湿気でモワモワ度が上がっちゃうからね、余計に手入れは必要だよ」
陽子「なるほどなー」
忍「湿気でモワモワ?」
アリス「あー、シノはサラサラヘアーだからそういうのには無縁なのかもね」
アリス「髪質によっては、湿度が高くなるとフワッと広がっちゃって、まとまりが悪くなるんだよ……わたしもそうなんだけど」
陽子「しのはいいよなー、サラサラで。何か手入れについてアドバイスとかない?」
忍「うーん、アドバイスですか……」
忍「金色に染めてみる、というのはどうでしょう? すごく良くなると思います」
陽子「しの視点でだけ良くなっても……」
アリス「他には、眉毛をちょっと整えてみたらいいと思う」
陽子「眉毛かあ」
カレン「マユゲくらいなら道具持ってるので今ここでいじれマスよ?」
アリス「本当? じゃあさっそく整えてみようか」
陽子「え、今やるの?」
アリス「善は急げ、だよ!」
アリス「それじゃ剃っていくね……まずは眉の下側から」ゾリ
陽子「ま、マジでやるのか……」
カレン「ヘイ、ちょっと待つデス」
アリス「?」
カレン「どうせなら私にやらせてクダサイ!」ワクワク
カレン「こんな面白そ……重大な任務は、この九条カレンがやるにこそふさわしいデース!」
陽子「お前今面白そうって言いかけたろ」
アリス「ちょっとカレン! 今はわたしの番なんだからわたしがやるの!」
カレン「オシャレなら私の方がアリスより詳しいデース!」グイ
アリス「わたしが!」グイ
カレン「私が!」グイ
陽子「お、おいおいお前ら剃刀を取り合うなよ……危ないだろ」
綾(これは2人で取り合ってるうちに大失敗するパターンだわ……!)
綾「ま、待ちなさい2人とも!」
綾「ここはしのに任せるべきだわ! 一番手先が器用だもの!」
忍「私ですか!?」
カレン「む……」
アリス「まあ……シノなら任せてもいいけど」
綾「そういうわけで、頼むわよしの」
忍「他人の眉毛を剃るのは初めてですが……陽子ちゃんのためなら頑張ります!」
忍「誰にも真似できない独創的な眉毛にしてみせますね!」
陽子「普通でいいよ……」
忍「……」ゾリゾリ
カレン「おお、精密機械のような正確な動き……!」
アリス「さすがシノだよー!」
忍「いえ、それほどで……も……」ムズムズ
忍「へっくし!」ゾリッ
カレン「あ」
アリス「あ」
綾「ああっ!」
忍「」
陽子「え、何? 何があったの?」
忍「ごごごごごめんなさい陽子ちゃん!」ブルブル
陽子「何で謝ってんの? どうなっちゃったの私の眉毛!?」
アリス「だ、大丈夫だよ! これくらいならまだ修正は効くから!」
綾「すごく極細の眉になっちゃいそうだけど……」
陽子「マジかー……」
忍「ご、ごめんなさい……選手交代でお願いします」
カレン「それでは次は、アヤヤがやるべきデスね」
綾「わ、私が!? 無理よそんなの!」
カレン「大丈夫デス! 大事なのは技術力ではなく、愛の大きさデス!」
綾「愛……」
陽子「いや技術力だろ」
綾「わ、分かったわ! 私、やってみる!」
カレン「その意気デス!」
陽子(大丈夫かな……)
綾「じゃ、じゃあ行くわよ……」ブルブル
陽子「すげー手震えてるんだけど! 一番心配な人選なんだけど!」
数分後
陽子「どう、終わった?」
アリス「……」
忍「……」
陽子「え、なんで黙ってるの?」
綾「陽子……」
綾「ご、ごべんな゛ざい……」ズビズビ
陽子「なんで泣いてるの!?」
綾「最初右眉が剃りすぎだったから、左を剃ってたらやりすぎちゃって……」
綾「調整しようと右を剃ってたら、そこをまたやりすぎちゃって……そうこうしてるうちに」
綾「眉毛無くなっちゃったー!」ビエーン
陽子「」
カレン「……ブフッww」
陽子「おい笑うな」
陽子「ちょっこれ……どうすんの!?」
アリス「に、2、3日もすれば生えてくるよ、きっと」
陽子「それまで眉毛なしでいろってか! キツイよさすがに!」
カレン「えーじゃあ……次はアヤヤの女子力レクチャーデスね」
陽子「勝手に次行くな!」
綾「ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……」ズーン
忍「当の綾ちゃんはそれどころじゃなさそうですけど……」
陽子「落ち込みすぎだろ……」
綾「お、お詫びに私の眉も全剃りするわ……!」ブルブル
陽子「しなくていいよ!」
陽子「はあ……やっぱりあれだな……慣れないことはするもんじゃないな」
陽子「柄にもなく女子力なんてあげようとするから、こんなことになるんだ」
カレン「ダメデスよヨーコ、ネガティブになっては」
陽子「でも……」
忍「陽子ちゃん、元気を出してください」
陽子「……」
忍「ファッションとか、髪型とか、眉毛とか……実は、そんなことは二の次なんです」
忍「女の子の一番の魅力……それは、笑顔ですよ」
忍「いつも明るい笑顔で周りを元気にする陽子ちゃんが、女子力低いわけないじゃないですか」
陽子「しの……」
忍「ほら、顔をあげてください……そして、いつもの笑顔を見せてください」
陽子「しの……ありがとう」
忍「…………」
忍「ふふっww」
陽子「なんで笑った! なんで笑った今!?」
忍「す、すみません……でも……眉が……」プルプル
陽子「半分はしののせいじゃんか! ちくしょー!」ダッ
忍「あっ陽子ちゃーん!」
陽子(思わず教室を飛び出してしまった……)
チラチラ
陽子(うぅ……周りの視線が痛い……)
陽子(はぁ……今日は厄日か?)
烏丸「あら、猪熊さん……元気ないわね、どうしたの?」
陽子「あ、からすちゃん……」
烏丸「あら? 猪熊さん眉毛が……」
陽子「うん、その眉毛の話なんだけどさ……」
烏丸(これが今の流行りかしら? だったら「変なことになってる」とは言わない方がいいわねー……)
烏丸「え、えーと、よく似合ってると思うわー」
陽子「似合ってるの!? 逆にショックだよ!」
烏丸「え? え?」オロオロ
陽子「実はかくかくしかじかで……」
烏丸「……そんなことがあったのね」
陽子「うん……」
烏丸「え、えーと、さっきは「似合ってる」なんて言ったけど、あれは本心じゃないというか、全然似合ってないしむしろすっごく変だわ」
陽子「それフォローのつもり!?」
烏丸「と、とにかく元気を出して!」
陽子「元気。元気かー……」
陽子「もっとおしとやかな方が、女の子らしいのかなー……?」
烏丸「猪熊さん……」
烏丸「……そうだわ、ちょっと付いてきて」
陽子「?」
演劇部 部室
烏丸「懐かしいわー、ここの部屋」
烏丸「高校卒業して以来だから……3年ぶりくらいかしら」
陽子(3年どころじゃないだろ……)
陽子「でもなんでこんなところに……」
陽子「あ、もしかして仮面でも貸してくれるの?」
烏丸「さすがに仮面つけて学校生活送るのはちょっと……」
烏丸「えーと、確かこの辺に……」ゴソゴソ
烏丸「あったわ!」
陽子「それ……化粧セット?」
烏丸「ええ、これでこうすれば……」カキカキ
烏丸「ほら、鏡見て?」
陽子「あ……眉毛が復活してる」
烏丸「うふふ、人数が少なかったからこういう仕事もやったりしてたのよ」
陽子「さすが元演劇部」
烏丸「それにしても懐かしいわー、もうあれから3年も経つのね……」
陽子(やたらと3年を強調してくる……悲しい嘘だ……)
烏丸「私たちが使ってた小道具なんかもたくさんあるわね」ゴソゴソ
陽子「あ、あんまりいじらない方がいいんじゃ……」
烏丸「あら? これって……私がよく来てた衣装だわ」
陽子「え、そうなの?」
陽子(衣装というか……トーテムポールにしか見えないけど)
烏丸「まだ綺麗なままね……後輩たちが大事に扱ってくれてるんだわ」ジーン
陽子(多分誰も着てないんだろうな……)
烏丸「ちょっと着てみようかしら……」
陽子「え、やめた方が……」
烏丸「大丈夫、体型はあのころから変わってないはず……」
ビリッ
陽子「あ……」
烏丸「……」
烏丸「……人間って、自分では気づかないうちに成長してるものなのね」シミジミ
陽子(成長と言うか太っただけなんじゃ……)
陽子「まあとにかく……ありがとう、からすちゃん」
烏丸「うふふ、どういたしまして……でも本当は校則違反だから、今回だけよ?」
陽子「うん、もう慣れないオシャレはしないよ……」
烏丸「ううん、オシャレはしていいのよ」
烏丸「最初は失敗もするだろうけど、それで『やっぱり自分には向いてないんだ』って、あきらめるのはよくないわ」
烏丸「何度も失敗を重ねて、それでも上手くなろうとし続ければ、いつの間にかオシャレのセンスが身に着いてるわよ」
陽子「からすちゃん……」
陽子(ジャージ姿の人に言われると説得力ないなあ)
陽子(でも……)
烏丸「ファイト!」ニコッ
陽子(元気は出た、かな)
陽子「からすちゃん、私、頑張って女子力アップさせるよ!」
烏丸「ええ、応援してますよ!」
烏丸「でも、一つ覚えておいて」
陽子「?」
烏丸「猪熊さんは今のままでも、十分素敵だってこと」
陽子「い、いやあそんなこと……」
烏丸「もちろん誰しも良い所ばかりとはいかないから、もっと魅力的な人になるために変わっていこうとする姿勢は大事だし、それを忘れてしまえば輝きは無くなってしまうわ」
烏丸「だけど、悪いところを変えることにばかり気を取られて、良いところまで変えてしまったら、なんだかもったいないと思うの」
烏丸「猪熊さんは、明るくて元気でスポーツが得意で、ちょっぴり男勝りなところもあって、それはいわゆる『女子力』とは違うのかもしれないけど……」
烏丸「そこに魅力を感じてくれている人もいる……先生もその一人よ」
陽子「先生……」
烏丸「だから、そこは大事にしてほしいし、そこには自信を持っていいのよ」
陽子「はは、なんか照れるな」
「ヨーコー!」
陽子「?」
烏丸「あら、呼ばれてるみたいよ?」
ガララ
カレン「ヨーコ! ここにいたんデスか!」
アリス「教室を出ていったきり戻ってこなかったから、探してたんだよ?」
陽子「みんな……」
忍「心配しました……もしかして山に帰ってしまったのかと……!」
陽子「熊じゃねーよ」
綾「あの……陽子、本当にごめんなさい! 眉毛失敗しちゃって……」
忍「い、いえ! 最初に失敗したのは私ですし、責任は私にあります! すみませんでした!」
陽子「あはは、それはもういいって」
カレン「元はと言えば私が『女子力ない』って言ったのがきっかけデスし、ゴメンなさいデス」
アリス「それについては私も……ごめんね?」
陽子「ううん、大ざっぱというか、ガサツなところがあるのは事実だし、今回はそれを見直すいい機会にもなったよ」
陽子「むしろ、それを指摘してくれる友達がいることを、嬉しく思うよ」
綾「……あの」
綾「わ、私は! 陽子のおおらかなところ……嫌いじゃないわよ」
綾「というかその……好きか嫌いかで言えば……す、好き、よ……//」
陽子「綾……」
忍「私も、陽子ちゃんのかっこいいところが憧れです!」
アリス「守ってくれそうだもんね!」
カレン「女子力が無くたって、ヨーコはイケメン力で補ってるから大丈夫デス」
陽子「みんな……」
烏丸「ね?」
カレン「そういえば、ヨーコの眉毛、復活してるデース!」
アリス「ホントだ!」
陽子「ああ、これは……からすちゃんにやってもらったんだよ」
綾「烏丸先生に?」
忍「いつもよりかわいくなってますよ!」
陽子「そ、そうかな……」テレ
カレン「いいなー! 私もやってもらいたいデース!」
烏丸「ダメですよー、化粧は校則違反ですからね」
カレン「むー」
烏丸「いいじゃない、みんなくらいの年齢なら化粧なんてしなくてもかわいいわ」
烏丸「むしろすっぴんでも人前に出られる若々しさがうらやましいくらいよ……」ニッコリ
陽子(笑みが怖い……)
烏丸「あと3年もして先生くらいの年になれば、よく分かるわ」
カレン「3年? 先生ってまだ20歳デスk……モゴ」
陽子「カレン、それは触れちゃダメだ……」
陽子「まあとにかく、からすちゃん、今日はありがとう……助けてもらったし、色々と教えてもらったよ」
烏丸「ふふ、先生だもの……当然よ」
陽子「しのはからすちゃんのこと尊敬してるけど……なんだか分かるような気がする」
忍「ですよね!」
忍「やっぱり烏丸先生は素敵です!」
烏丸「ううん、そんなこと……みんなよりほんのちょっと人生経験があるってだけだわ」
忍「何と言いますか……亀の甲より年の功、ですね!」
烏丸「え」
烏丸「と、年の功……」ガーン
アリス「し、シノ! 使いどころが間違ってるよ!」
忍「……あれ?」
END
カレン「クゼハシ先生は、すごく女子力高そうデス!」
久世橋「え……そ、そうですか?//」
カレン「やっぱり男の人からはモテモテなんデスよね!?」
久世橋「……っ!」
久世橋「そうやってまた先生のことをからかうつもりですか!?」ガオー
カレン「ええ!? そんなつもりないデース!」
久世橋「待ちなさい! 今日という今日は許しませんからね!」
カレン「ひぃい! 何で怒ってるデスかー!?」
ありがとうございました
きんいろモザイクssもっと増えろ
このSSまとめへのコメント
独特のクレイジーな感じが見事に再現されている
ここは厳しめに100点としておこう
おもしろかった。