カツオ「家族が面倒みるのは当然じゃないか」(6)

「ねえ、お母さん、結婚したら一緒に住むっ て話、考えてくれた?」
「ダメよ、何を言ってるのよ。せっかくの新 婚生活なのに。慎一さんにだって迷惑がかか るじゃない」
「大丈夫だって。慎一さんちは資産家で家 だって大きいんだから。べつに気にする必要 ないって」
「そういう問題じゃないわよ。『嫁入り道具 に余計なモノまで付いてるわね』なんて笑わ れたら、お母さん、恥ずかしくって相手のご 家族に顔向けできないわよ」
「あははは、出来ちゃった結婚で嫁入りしよ うっていうのに、今更恥ずかしいことなんて 何もないってば」
「あら・・・大きなお腹抱えて大笑いして・・・い い大人が子供みたいに。あなた、もう三十歳 でしょう? すこしは大人らしくしなさい な」
「まだ二十九ですよーだ。とにかくさ、結婚 したら一緒に住も。今日はこれから慎一さん とデートなんだから、きちんと話をすれば大 丈夫だって」
「いやよ、お母さん、同居なんて。慎一さん だって嫌がるに決まってるわ」
「だってこのままこの家で一人で暮らすって わけにもいかないでしょう。二十年前にお父 さんが死んで、もう貯金だってほとんどない のにどうやって生活していくの?」
「パートでもなんでも働けば一人分の食い扶 持くらい稼いでいけるわよ」
「いままで働いたことだってないんだから、 いい年して今更働きに出るなんてムリに決 まってるじゃない」
「まったくこの子は減らず口ばかりで・・・。 ほら、そろそろ慎一さんが迎えに来る時間 よ。準備しないと」
「あら、ホントだ。じゃあ、お母さん、お小 遣いちょうだい」
「もう、この子ったらもうすぐ三十になるっ ていうのに・・・。ほら、これで美味しいもの でも食べてきなさいな」
「ありがとう、お母さん。じゃあ、お寿司で も食べようかな」
「お腹がすくからって食べ過ぎちゃだめよ。 お腹が大き過ぎると体だって危ないんだから ね」
「はーい。いってきまーす」
「おまたせ、慎一さん」
「どうしたの? ずいぶん時間かかってたよ うだけど」
「ごめんなさい。息子の相手してたら時間が かかっちゃって」
「ああ、ニートのカツオくんか。さっき元気に 寿司屋に入っていったが・・・。ありゃ太り過 ぎなんじゃないか?」
「ええ。今度生まれてくるお腹のこの子には あんな風になってほしくないわ、まったく」

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