女剣士「は、はじめましてっ!」(348)

男戦士「ん?」

剣士「酒場の紹介で参りましたっ、け、剣士と申しますですっ!」ケイレイ

戦士「…」

剣士「っ!」ビシッ

戦士「…」

戦士「なぁ店主さんよぉ?」

店主「あいよ?」

戦士「なんだこのガキは?」

店主「さっき自己紹介してたじゃねぇかぁ」

戦士「いや、そうだがよぉ…」フー
店主「お前さんが探してた剣士さんには変わりはねぇだろう?」

戦士「剣士…探してたけどさぁ、だからといっていくらなんでもこんな…」

剣士「…っ」オロオロ

店主「まぁ、ほらほら、ちゃんとお前も自己紹介してやんなぁ」

戦士「お断り…」

店主「受け付けてねぇよ?」

戦士「しょうがねぇ…」スクッ

剣士「あ…」

戦士「俺は戦士だ」

戦士「あちこちを傭兵しながら旅をしている」

剣士「は、はい!」

戦士「…」

剣士「…」

戦士「はぁ、とりあえず外に出るぞ」

戦士「店主、世話になったな」

店主「へへ、大事にしろよなぁ」カッカッカ

戦士「はん!」ガチャ

店主「…」

店主「…お前位にしか相手できねぇだろうからなぁ」

―街―
ガヤガヤ…

戦士「…なんだって…こんな」スタスタ

剣士「…っ、っ」タタタタ

戦士「…俺はお守りなんかしたこと…」スタスタ

剣士「…」タタタタ

剣士「あ、あの!」

戦士「あぁ?」

剣士「ど、どこに行くんですかっ?」

戦士「…」

戦士「俺はな、まだお前を認めてはいないのさ」

剣士「はい…」

戦士「だから一度、手合わせ願おうかね」

剣士「っ!わ、わかりましたっ」

戦士「ふん」

―街外れ・草原―
戦士「さて、ここなら問題ねぇかな」

剣士「…」

戦士「言っとくが、俺は女、子供は手を出したくない」

戦士「が、剣の心得があるなら別だ。手加減はしない」スラッ

戦士「お前も、本気でこい」ガチャ

剣士「…」

剣士「わかりました」カチッ シャッ

戦士「ふん、ショートブレードか」

戦士「そんなんで俺はたお」

剣士「っ」ゴゥッ

戦士「!」

ガキィーン!

戦士「ぐお!?」ギリギリ

剣士「はあっ!」クルッ

戦士「きぃ…!」

剣士「」タタタタ

剣士「たぁ!」ブワッ

戦士「このっ!」ギィン

剣士「っ」バッ クルクルクル スラッ

剣士「えい!」ビョッ

戦士「ぬぉおっ」ガキン

剣士「っ」シュン スタッ

戦士「…っ」ガチャ

戦士「…」ハァハァ

戦士(なんだこいつ!)

戦士(高い跳躍からの不意打ち、間合いのつめかた、重い剣撃、回避…こんな動き方の相手は初めてだわ)

剣士「…」

戦士「」ニヤッ

剣士「!」ゾワッ

戦士「なるほど、ただ者じゃないなお前」

戦士「認めるよ、その力」

剣士「じゃ、じゃあ!」

戦士「ただし!もう少し…楽しもうや!」ダダッ

剣士「え?!あ、う、うおおぉっ!」タタタタ

戦士「りいあ!」ブォン

剣士「っ」シュン

ガッ ボゴーン!!

剣士「え?」

戦士「っふ!」グルン ブオッ

剣士「くぅ!?」ガヂン!

剣士「きゃはあ!!?」ブワッ ゴロゴロゴロ

戦士「…」ススス

剣士「…っ」スタッ

剣士「はぁ!」ビョン クルクルクル ギュン!

戦士「…ふっ!」ガキーン!

戦士「おあ゛ぁっ!」グオン!

剣士「あぅん!」ガヂィン!!ギューン …ゴロゴロゴロゴロゴロ

戦士「…」

剣士「はあっ、はあっ…!」ガクガク

戦士「…」

剣士「はあっ…はあっ…、うぐっ」ハァハァ

戦士「…あ」ガシャン

剣士「っ」ビクッ

戦士「」ダダダ

剣士「ご、ごめんなさいぃっ!」バッ

戦士「」ガシッ

剣士「ひょあぁ!」

戦士「すまなかった!」

剣士「…っ!っ!」ブルブル

戦士「け、ケガはないか!?」ガクガク

剣士「な、ないですぅ~!」ユサユサ

戦士「そうか…良かった」

剣士「…」
剣士「………あえ?」

戦士「いやー、驚いた!」バシバシ

剣士「あうあう…」

戦士「女だと舐めてたけど、これほどまでとはなっ」グリグリグリ

剣士「あわあわあわ…」

戦士「まったく、こんなパートナーは初めてだよ」ハッハッハ

剣士「ぱ、パートナー…?」

戦士「認めるよ。俺を戦場以外で追い込んだのはそういないからな」

剣士「じゃあ…!」

戦士「あぁ、改めて言おう」

戦士「俺は戦士だ。傭兵をしながら旅をしている。良しければ俺と組んでほしい」スッ

剣士「…」

戦士「…」

剣士「ぐすっ…」ウルッ

戦士「っ」

剣士「よろしく…おねがいしますぅ!うわああん!」キュッ

戦士「な、泣くなって…」

剣士「こ、こわかったああぁ~!」ビエーン!

戦士「そっちか!」

剣士「す、すみませんでしたっ」

戦士「いやいや、お前が謝る理由なんかないさ」

戦士「俺こそすまなかったな。実力の確認をするだけだったのがつい熱くなっちまった…」

剣士「…ボクが」

戦士「ん?」

剣士「わ、ワタシなんかが本当にパートナーで大丈夫なの…?」

戦士「はん、何を今更」

戦士「まぁ初めてあった時はお断りしようとしたが、今ならお前が…うん、欲しいくらいさ」ニカッ

剣士「そ、そんな~…」///

戦士「ふふっ、じゃあ街に戻りますか」

剣士「はいっ!」

―街―
戦士「さぁて、日も暮れたし歓迎会ついでに腹ごしらえだな」スタスタ

剣士「歓迎会?他にも仲間がいるの?…ですか?」トコトコ

戦士「歓迎会ったって俺がお前にごちそうさせるだけだがな」ハハッ

剣士「そんな!悪いよ…ですよ!戦士さまはワタシの…上司なのにっ」

戦士「そんなかたっくるしくなるなってっ」バシバシ

剣士「あうあう」

戦士「別に上司とか関係ないし、それに楽な話し方で構わないからな?」

剣士「はぃ、…うん!」

―酒場―
戦士「へい店主!」ガチャ

店主「おう!?なんだお前、返却は受け付けてねぇぞ!」

戦士「…ちげぇよ」

店主「んん?」

剣士「戦士さま?」ヒョコッ

戦士「あのな?だから戦士さま、ってのやめてくれ…」

店主「っは!こりゃ傑作だ!」カッカッカ

店主「あの荒くれ傭兵が戦士様たぁな!!」ゲシゲシ

戦士「やぁめろ!!」

<ナンダナンダー?><オイ、アノセンシガオンナツレテヤガル!><マジカヨ!?><アノコカワイイジャン!><バカッ、バラバラニサレンゾ!><アノセンシガナァ…><アノコモカワイソウニ…>

戦士「…」スタッ

剣士「?」

戦士「…」

ヒソヒソヒソ…

剣士「…っ」

戦士「」ドン!!

剣士「!!」ビクッ

ビクッ!!!

戦士「店主!酒だ!」ニカッ

戦士「剣士はミルクか?」ハハッ

剣士「な、なぁ?ボ、ワタシだってお酒飲めるんだから!」

戦士「マジか!?」

戦士「じゃあ酒2つ!あと肉!!今日は剣士の歓迎会だからな、とびっきりのヤツ頼むぜ!」

店主「あいよ!!」

店員娘「…まずは、お酒2つ」ゴトンゴトン

戦士「お、サンキュー!」

剣士「あ、ありがとお!」

店員娘「…戦士さん、かわいい子、捕まえたね?」クスクス

剣士「…」///

戦士「そんなんじゃねぇって!」

店員娘「…あらあら」
<ムスメチャーン!コッチサケミッツー!>
店員娘「…はぁい」

店員娘「…じゃ、ごゆっくり」ペコ

戦士「全く…」

剣士「店員の娘さん?」

戦士「あぁ。信じらんないよな」ハッハッハ

剣士「へー」

戦士「おほん!では、新しい仲間との出逢いに」

戦士「乾杯!」

剣士「かんぱーい!」

ガヂン!パリーン!ビシャー

戦士「う!おいおいおい…」

剣士「わ、わわ!ごめんなさいっ!」ワタワタ

戦士「乾杯にそんな力まなくてもいいって」ハッハッハ

剣士「…き、緊張しちゃった」エヘヘ

戦士「まぁ、いいさ」

戦士「へい店主!かわりのをくれ!」

店主「グラスくらい大事にしてくれよ!」マッタク!

剣士「す、すみませーん!」



店員娘「…」

剣士「濡れちゃったぁ…」ビッショリ

戦士「ははっ!まったく…しょうがないヤツだなぁ」スクッ

剣士「…え、えへへ」

戦士「…良く気がついたな」ボソッ

剣士「え?」

戦士「…わかってたんだろ?あの酒、なんか入ってたみたいだからな」ヒソヒソ

剣士「…」

戦士「…やっぱりただ者じゃないな、お前」

剣士「…っ」

戦士「さて、どういう事なんでしょうか?」

剣士「そ、それは…」

店員の娘じゃなくて店主の娘だわ

店主「おっと、そんなイジメてくれるなよ」

戦士「店主…」

店主「それにこいつのおかげで助かったじゃねぇか」ゴトンゴトン

戦士「それは…どういう事だ?」

剣士「…」

店主「そりゃ…」

店主「しょっぱい酒なんか飲まなくてすんだからな!」カッカッカ

剣士「へ?」

戦士「おい店主さんよぉ!また俺の酒に塩入れやがったのか!?」

店主「あちらのお客様から…」ユビサシ

戦士「あん?」

店員娘「♪」ヒラヒラ

戦士「勘弁してくれ…」

店主「ほら、いつまでもくっちゃべってないて飲めや」

戦士「あぁそうだな、すまない剣士」

剣士「うぅん…」

戦士「では、改めまして乾杯、だ」スッ

剣士「…か、乾杯」

カチン

戦士「~~~っ」グビグビ…

戦士「~っぶぁ!うまし!」ゴトン

剣士「…」チビチビ

戦士「…」

戦士「…ふぅ」

戦士「じゃあ先に聞いておくかね」

剣士「…」

戦士「お前は何者だ?」

剣士「…」コトン

剣士「ボクは…」

戦士「おう」

剣士「…とある隠密の里の生き残り…なんです」

戦士「隠密…暗殺か」

剣士「はい」

剣士「古くから隠密の者は、人間、目上の者に仕えて働きました」

剣士「ですがこの時代、今や魔物も例外じゃありません」

戦士「…」

剣士「ある日、どこぞの魔物の王に仕える事になったんです」
戦士「…」ピクッ

剣士「隠密の事、どこかで噂を聞きつけたのでしょう。その魔物の王は、この国の魔法使いをすぐさま暗殺するようにと命じてきました」

剣士「ボクたちは下調べも出来ないまま、その魔法使いの所まで転送されました」

剣士「転送された先は小さな小屋のような家。囲めばいけると思いました」

剣士「…しかし」

戦士「…」

剣士「魔法使いは強力で、その恐ろしい魔法で仲間の半数は塵になりました」

剣士「命からがら半数が逃げ、体勢を整えようとした時、今度は魔物が現れたんです」

戦士「…」

剣士「その時気がつきました」

剣士「はめられた、と…」

剣士「しかし気づいた時にはすでに遅く、魔物は次々と転送され、ボクたちは応戦しましたが、一人一人…肉塊にされました」

戦士「…っ」

剣士「何とか里の近くまで来れたのはボクと、父だけでした」

剣士「あ、父は里の首領だったんですよ」

戦士「ん」

剣士「…里に戻ってみれば」

剣士「里は何かにつけ押しつぶされたように、くぼんでいました…」

剣士「それを目の当たりにした父は、魔法使い、魔物、そして全ての元凶の魔物の王を激しく恨み、自ら身体を引き裂いて憤死しました…」

戦士「なんて事を…」

剣士「一度に全てを失ったボクはどうする事も出来ず、逃げ…出しました…」

剣士「何日も、何日も…何、日もっ」グスッ

戦士「…」

剣士「な、何口走ってるんだろボクは!」グシグシ

剣士「自分の私情を全部話しちゃうなんて、隠密失格…ですよねっ」エヘヘ

戦士「そんで」

剣士「っ」ビクッ

戦士「ここの店に来たのか」

戦士「俺を探す為に」

剣士「…」

剣士「は、はい…」

戦士「ふぅん」

戦士「ように、お前は忍者だったってことか」

剣士「はい、今は剣士をしてますけど…」

戦士「だから酒になんか入ってるのがわかったのかぁ、なぁるほどなぁ!」ハッハッハ

剣士「…」

戦士「…で、俺と組んで死んだ仲間の仇討ちがしたい、と?」

剣士「…はい」

戦士「…」

戦士「はぁん」

戦士「暗い過去があったのな」スッ

剣士「…」

戦士「それでも淡々としてられるのは、やはり隠密一族の悲しい所か。俺の知り合いにも居たよ、そんな哀れな野郎がな」ゴクン

剣士「…」

店主「なぁ戦士よぉ」ノソッ

戦士「お?」カタン

店主「俺からも…頼むわ」ズビッ
店主「こんな、こんないたいけな女の子が背負う十字架じゃねぇよ~…」グスッ

戦士「聞いてやがったのかよ…」ナクンジャネェ

剣士「戦士さま…」

戦士「…うーん」

戦士「…」

剣士「…」

戦士「ん、その話のってやる」

店主「お?」

剣士「ふえ?」

戦士「それに丁度いいじゃん」

戦士「俺の目的も似たようなもんだし、<ついで>でよけりゃお前の仇討ち、手伝ってやるよ」
店主「本当か!?戦士!」
剣士「ホント!?戦士さまっ!!」ガタッ

戦士「まぁまぁ、落ち着け」オスワリ

剣士「ご、ごめんなさい…」スクッ

戦士「ふむ、まぁタダじゃ受けねぇけどな」

店主「!…なんて野郎だ!」

剣士「そう、だよね」

剣士「傭兵してるなら、報酬は必要だからね。おいくらですか?」

戦士「ふっふっふっ…」

戦士「なぁに、金なんかいらないさ」

店主「あー、あーっ、あーっ!」

剣士「じゃあ、なにが欲しいんですか?」

戦士「そりゃあもちろん!お…」
店主「お前さんが欲しいんだとさ!コイツはよぉ!」

剣士「っ!?」///

戦士「へい!先に言うんじゃねぇよ!」

店主「わかりやすいんだこのタコが!」カッカッカ
ハッハッハッハッ!

戦士「てめぇら笑ってんじゃねぇ!」

店員娘「…また女の子泣かすのー?」

戦士「そんなんじゃねから!!
」わはははははっ

剣士「じ、じつは!」

店主「お?」

剣士「さっきも…戦士さまに、欲しいくらいだって…言われ…てたり…」ゴニョゴニョ////

ヒューッ!!

<ケンシチャンカワイイ!><アンニャロウ…><ハン、オレニハムスメチャンガイルシ!><バラバラニシテェ!><カテルワケネェダロ!>

店主「とんでもねぇ野郎だな」カッカッカ

戦士「ふんっ」

剣士「…」モジモジ

店主「…でもよかったじゃねぇか」ボソボソ

戦士「…」

店主「お前に釣り合うのはこの子だけだろうしよ」ヒソヒソ

戦士「…どうだろう、な」

店主「まぁ、しっかりやれよ!戦士さま!」バシーン!

戦士「~っ!」

戦士「剣士!さっさと食って宿で二次会だ!」

剣士「は、はい!」

戦士「堅苦しいぞ!」

剣士「す、すみま…ごめん!」

戦士「よし!」ゴクゴク

―宿―
戦士「まったく!あいつら…調子乗りやがって」ゴロン

剣士「…戦士さまは」

戦士「ん?」

剣士「どうして傭兵なんかしてるの?」

戦士「そこを聞くのか?」

剣士「ううん!言えないならいいの…」

戦士「まぁ、いいんだけどな」

剣士「あ、あはは」

戦士「俺の目的ってか、表向きは傭兵やってるけどよ、本職はなー、あーそう魔物退治!魔物退治をやってるのさ!」

剣士「魔物退治…?」

戦士「そう!」

戦士「人の世の治安を乱す魔物を千切っては投げ千切っては投げ…」

剣士「…」

戦士「うん、ごめん」

剣士「…でも戦士さま、強いもんね?」

戦士「あ?あぁ、あんなのまだまだ」ヒラヒラ

戦士「完全体の俺はもっと強い」

剣士「完全体?」

戦士「今はまだ本調子じゃないってか、まぁ、うん、そんなんだ」

剣士「…なんだかなぁ」

戦士「それに剣士だってやるじゃないか。この俺をあそこまで追い込むやつはそういない」

剣士「…ホント?」

戦士「あぁ。あの攻め方はやっぱり隠密のか?」

剣士「それもあるけど、自己流も含んであるのかな」

戦士「だろうな、良く鍛えられてる」

剣士「そ、そう言ってもらえると、照れちゃうよ」//

戦士「あ、そうだわ」

剣士「うん?」

戦士「さっきはゆっくり飲めなかったからさ、二次会するって言ったよな!」ゴソゴソ

剣士「あ、言ってたね」

戦士「小瓶だし、たいしていい酒じゃないが、飲もうか」ポチャン

剣士「うんっ」ニコッ

戦士「うむ、では新しいパートナーのためにっ」キュポン

剣士「す、素敵な出逢いに感謝しますっ!」キュポッ

カチン!

イチャラブ書きたかったのに、なんか無駄に広がってしまった

とりあえず理想のイチャラブ目指してノコノコやってきます

――――
ゴゴゴゴゴゴ…………

「かかれ!」

キーーーン……ドドドドドドド《ぎゃああ…》
《たすけ…!》
ギョオオオン!
ドンドンドンドンドンドン
【うわあああああ…!!!】

「くぅ!引け!引けぇ!」
『父上!』
「魔物かっ、あやつ初めから我らを!」

キン ガシッ ブシュシュ…ゴロン
【ぐお゛お゛お゛…】
《お頭、お逃げください!ぐぶぁ!う゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!》

『ううううっ!』
「~~!こい!早く」

…………
『おやめください父上!!』
「…ぉおのれぇ、おのれ魔王おぉぉっ!!」
「ぬおおあああああああっ!!!」
ばりっ ぐしゅっ ゴリゴリびゅくびゅくブブブぶ…
『きゃあああああああああっ!』

――――

…オィ
ダイジョ……カ…
シッカリシロ…オイ

剣士「うぐぐっぐぁぐぐ…」ブルブルブル

戦士「剣士!」

剣士「…っはぁっ!」ビクッ

戦士「…」

剣士「はぁっ、はぁっ、うっく…」

戦士「…水いるか?」

剣士「はぁ…はぁ…」コクン

戦士「待ってろ」

剣士「…」

剣士「…ぐしゅ…、父上…」

戦士「ほら」

剣士「…すみません」

剣士「…」キュッ

戦士「…」

剣士「…」

戦士「飲まないのか」

剣士「っ」

剣士「~…っ!」ゴクゴクッ ブッ

剣士「けほっげほっ!ごほごほっ!」

戦士「…」

剣士「っう、くぅっ…っ」

戦士「…」

戦士「…」サスサス

戦士「落ち着いたか」

剣士「はい、失礼しました…」

戦士「…」

剣士「…」

戦士「…はぁ」

戦士「こんのガキが…、1人で背負いこんでんじゃねぇ」ピン

剣士「あたぁ!?」ピシッ

戦士「まったく、隠密だかなんだか知らねぇが、お前は…いっぺんに家族と仲間、居場所までなくしちまったんだし」

戦士「コレばっかりはどんな悪党だって、もんどり打って泣き叫ぶ事だ」

剣士「…」

戦士「いつまでも感情押し殺してるんじゃねぇよガキ」

剣士「…~!!」

剣士「っガキっていうな!」

戦士「ガーキ!ガーキ!」ゲシゲシ

剣士「な、なんだよいきなりっ!」

戦士「だってお前泣かないし、ガキだし、かたっ苦しいし、ガキだし、面白くないし、ガキだし」

剣士「もーう!ガキガキ言うなっ!」

戦士「お前も言ってんじゃんガッキー」

剣士「変な呼び方しないでっ!」

剣士「ボクが何をしたっていうんだよ!」

戦士「だって泣いてばっかりだし、まったく笑わねぇし、岩ガキだし」

剣士「岩ガキってなにさ!?」

剣士「まったく意味がわからない!戦士さまは何が言いたいの!?」

戦士「あ?まだわかんねえのか」

剣士「わかんないよ!」

戦士「だろうな、俺もわからねぇ」

剣士「はぁ!?自分から言っておいてそれなの?」

戦士「でもよ、ほっとけねぇんだ」

剣士「っ…、なんだよ急に…」

戦士「ほら、アレだ」

剣士「アレじゃわからないよ…」

戦士「アレアレ、あーー…そう!」

戦士「お前は俺と似てるから」ユビサシ

剣士「ど、どこが?」

戦士「じゃあ聞くがお前、親は?」

剣士「し、死んだ…」

戦士「うん、俺もだ」

剣士「え?」

戦士「故郷は?」

剣士「…なくなった」

戦士「俺もだ」

剣士「え、ちょっ…」

戦士「特技は!?」

剣士「っ」ビクッ

剣士「け、剣術…」

戦士「俺もだ!」

剣士「あ、あの」

戦士「今の…仲間は?」

剣士「…!」

戦士「…」

剣士「…」
剣士「…戦士、さま」

戦士「…」
戦士「うん、そして俺には剣士がいる」

剣士「…ん」

戦士「な?良く似てるだろ?」ニカッ

剣士「…んむ」
剣士「…く~っ」ブワッ

戦士「おぉおぉ、また泣くのかがきんちょ」

剣士「っ」

剣士「な、泣きまずっ!ガキっだがらっ!」グズグス

戦士「そうか」
戦士「よし来い、貸してやる」

剣士「お、おっおっ…おがりじまっ、ぐっ…ぅうわあああああぁん!」ギューッ

戦士「ふふん、そうだそうだ泣け泣け」ナデナデ

…………
剣士「…っ」クシュ

戦士「けっこう泣いたな」

剣士「ご、ごえんね」グシグシ

戦士「あん?」

剣士「ボクって、くぅ…あまり人を頼った事、なんて、なかったから…」

戦士「いぃいぃ謝んなって、俺が泣かしたみたいなもんだからよ」

剣士「だけど…」

戦士「それによ、これからはいつでも頼っていいぞ」

戦士「なんせお前は俺の…あー、ほら、パートナー、なんだからな」ヘヘヘ

剣士「~っ」

剣士「はぅん…」コロン

戦士「ん、どうした?」

剣士「戦士さま、ボク、なんか、はぁ、なんかっ、はぁっ、はぁっ」///

戦士「…剣士」

剣士「…」ドキドキ

戦士「腹でもって減ったか?」

剣士「ち、ちぃがぁうの!」ガバッ

戦士「あぁ?じゃあなんだ?」

剣士「もう!何だか良くわかんないけど!今いいところだったの!!」プイッ

戦士「なんで怒る」

剣士「知らないっ!」ププイッ

戦士「俺のせい?」

剣士「色んな意味でっ!」ガオー

戦士「あはっはっはっはっは!」

剣士「うぅ~」

戦士「はっはっ…すまんっ」

戦士「でも、ようやく素直になってきたな」

剣士「そ、そう、かな?」

戦士「ガキっぽさに磨きがかかった」クックック

剣士「むっ!もうガキでいいですよーだっ」イー

戦士「はっはっはっはっ」

戦士「可愛いヤツめ」ナデクリ

剣士「…」//

戦士「ほら立て、そして着替えろ」
剣士「あぁ、うん」ヌギヌギ

戦士「…」
剣士「よいしょ」パサッ

戦士「おい」
剣士「ん?」

剣士「!うわあああああ!」ババッ
剣士「何でいるんだよ!えっち!」

戦士「何言ってんだこいつ」
剣士「で、出てってよっ!」

戦士「はぁ、じゃ先に降りてっぞ」ガチャ
剣士「す、すぐ行くから…」

戦士「ん」パタン

剣士「…」
剣士「…っ」ドキドキ

剣士「な、何か…おかしいなぁ…」///

剣士「…」ゴソゴソ
剣士「はぁ…」

剣士「どうしてドキドキしちゃうんだろう」スルッスルスル
剣士「あの人とは昨日会ったばかりなのに…」

剣士「…っ」
剣士「いやいやいや!」

剣士「あんなの!正体不明だし!何考えてるかわかんないし!叩いてくるし!つり目だし!」プチプチ
剣士「…」

剣士「でも…嫌ってわけじゃなくて」
剣士「むしろ…」

剣士「…」//
剣士「…っ」グウ-

剣士「さ、さっき泣いたから余計お腹すいちゃったな」ゴソゴソ剣士「早く行かなきゃ」ポトッ

剣士「ん?あ、忘れてた」スチャッ

トツトツトツ
戦士「はぁ、やっと降りてきた…な?」
剣士「お、遅くなっちゃった!」

戦士「あー、ほら飯、朝飯、早く食べろ」
剣士「う、うん」ワタワタ

戦士「…」
剣士「~」モグモグ

戦士「お前」
剣士「ん?」

戦士「眼鏡なんかしてたか?」
剣士「コレ?」クイッ

戦士「おん」
剣士「昨日はいろいろあって外してたけど、ボク実はあまり視力が良くなくて…」エヘヘ

戦士「あ?じゃあ見えにくい中で俺と闘ったのか」
剣士「うぅん!そこまで悪くないの。ただ闘う時は眼鏡が邪魔になるし、無い方が感覚が鋭くなるから」

剣士「こうした落ち着いた時にかけてるようにしてるの」ゴクゴク
戦士「…はぁん」

戦士「そうなのか」
剣士「?」ムグムグ

戦士「…」ジー
剣士「…」モグ…モグ…

戦士「…」ジー
剣士「…っ」

剣士「な、なにさ?」
戦士「ん?いや」

剣士「…」//
戦士「食うの遅いなって」

剣士「!!」
剣士「はいはいはい!それはそれはどうもすみませんでしたねっ!」ガツガツ

戦士「おいおい、早食いすると」
剣士「~っ!むん!んむっ!」アパアパ!

戦士「詰まらすぞーっと」っミズ

戦士「さて、旅支度としますか」
剣士「…」

戦士「なぁ、なにむくれてるんだ?」
剣士「むくれてないですぅ!」

戦士「でたでたがきんちょが」ウリウリ
剣士「ふんっ」バッ

戦士「なんだよ」

剣士「…どんかん」

戦士「あん?」
剣士「しらないっ、早く準備するよっ」ノシノシ

戦士「…」

――――
戦士「まぁ、道具はこんなもんだろうな」
剣士「けっこう買ったね」クスリバッカリ

戦士「これからは2人分だしな」
剣士「そ、そっか、そうだよね」

戦士「あぁ、お前は欲しい物とかないのか?」
剣士「欲しい物?」

戦士「武器にしろ、防具にしろ、何かガタがきてるやつあるんじゃないか?」
剣士「そっか」

剣士「えーと?防具は胸当てと籠手くらいだし」キョロキョロ
剣士「剣は…」スラッ

剣士「あ!」
戦士「どうした」

剣士「…ひびが入っちゃってる」
戦士「貸せ」

戦士「んー…?」ジロリ
剣士「…」

戦士「うん」
剣士「…どう?」

戦士「ご臨終だな」
剣士「そ、そんなぁ…」

戦士「たぶんあの時だな」
剣士「…ん?」

戦士「昨日お前を2回弾き飛ばしたせいだ」
剣士「あ、アレかぁ…」ゾクゾク

戦士「身代わりになったな」
剣士「ボクの剣ごめんねぇ!」ウワアアア

戦士「…大事な物か」
剣士「ぅん…」

戦士「…」
戦士「よし、行くぞ」

剣士「えぇ…?」エグエグ
戦士「酒場」

剣士「なんでぇ?」グスッ
戦士「まぁ、くればわかるさ」

戦士「ん、その前に、もう1つ買い物ができた」
剣士「?」スンスン

剣士「戦士さま」
戦士「あん?」

剣士「赤い宝石なんか買ってどうするの?」
戦士「あー、報酬だ」

剣士「?」
剣士「剣と酒場と宝珠にどんな関係が?」

戦士「くればわかる」
剣士「…」

剣士「あーあ、宝石買うお金があったら、もっといい剣買えたのに!」
戦士「お前はこの大事な剣を捨てるのか?」

剣士「壊れちゃったら、使えないもん…」
戦士「まぁうん、任せろ」

剣士「意味がわかんないよぉ…」

―酒場―
戦士「へい!店主!」
店主「どうしたこの野郎!」

剣士「こっ、こんにちは!」
店主「はい、こんにちは」ニカッ

戦士「この扱いだよ…」ハァ
店主「あ?バカかてめぇは!?レディには優しくするのが紳士だろうが!」

戦士「はん!ドラゴンみてぇなゴリゴリマッチョのクセして紳士か?笑えるぜ!」ハッハッハ
店主「あぁん!?ひょろっちぃ優男になりやがって!人間の女の子の1人もエスコート出来ねぇのか!?しみったれが!」

剣士「そうなんですよっ!」

戦士「!?」
店主「!?」

剣士「戦士さまは女性に対する気づかいが足りないよ!!」
剣士「少しは店主さんを見習ったらどうなの!?」

店主「戦士…お前ってヤツは…」
戦士「待て、俺が何をしたという」

剣士「えぇ?」
戦士「すみません」

店主「まぁ、色々あったんだな…色々と」ニヤッ
戦士「な、なんだよ」ミンジャネェ

店主「ところで剣士ちゃんよ」
剣士「はい?」

店主「今日は眼鏡なのか?」
剣士「あ、はい、今日は闘わないから」クイッ ニコッ

戦士「…」

店主「そうかい」
店主「よく似合ってるじゃないか、うん可愛いよ」ニカッ

剣士「~~~!!!」///
剣士「あ、ありがとうございますっ!」ペコッ

剣士「戦士さまっ!?」クルッ
戦士「あん?」

剣士「戦士さまは店主さんみたいになるべきです!!」
店主「はっ!無理無理!こいつは鈍感の唐変木だからな!」カッカッカ

戦士「お前ら…」

店主「で、唐変木の流木が何のようだ?」
戦士「…あ?あぁ」

戦士「剣士、剣を抜け」
剣士「えええ!?」

剣士「こんな所じゃ危ないよ!」
戦士「ちげぇよ、店主に診せるんだ」

剣士「えっ、あ、はい」スラッ
店主「…」ピクッ

店主「貸してごらん」
剣士「ど、どうぞ」

店主「…」
剣士「…」

店主「…」
戦士「どうだ?」

店主「うん…厄介な金属使ってるじゃねぇか。まぁ、出来ねぇ事はないながな」
戦士「そうか、じゃあやってくれるか?」

店主「だがよぉ、高くつくぜ?この後すげぇ疲れるんだこれが…」
戦士「ほら」コロン

剣士「あ」
店主「んん?…!」キラン

店主「おいてめぇ…こいつぁ…!」
戦士「高かったんだぞ」

剣士「んー?」
戦士「頼めないか」

店主「はん!、しょうがねぇなぁ」
店主「それに剣士ちゃんの剣だ、喜んでやろう」カッカッカ

戦士「よし、喜べ剣士、直るぞ」
剣士「えっ?えっ?」

店主「そこに座ってちょっと待ってろよな」
店主「娘ー!」

店員娘「…はぁい」
店主「コーヒーを2人に出しといてくれ」シュルッ

店員娘「…かしこまりました」
店主「俺はちょっとひと仕事だ、後は頼んだぞ」

店員娘「…うん、わかった」ヒラヒラ

店主「じゃ、この剣借りてくぞ」戦士「あぁ、頼んだ」

剣士「よ、よろしくお願いします?」
店主「かっかっか!任しておけ!」ガチャ

ノシノシノシ…

剣士「…」
戦士「…」

店員娘「…コーヒーです」カチャ
戦士「すまない」
剣士「ありがとうございます…」

店員娘「…ごゆっくり」
剣士「…」

剣士「戦士さま?」
戦士「あん?」ズズッ

剣士「何がどうなってるの?」
戦士「わかんないのか?」カチャン

剣士「…剣、直してくれる、の?」
戦士「他に何か?」

剣士「わ、わかんないよ…」クワンクワン

戦士「…」
剣士「…ふぅ」

戦士「…」
剣士「…」

戦士「…」
剣士「…」ズズッ

グラッ…
剣士「っ!?」ブッ
戦士「始まったか」

剣士「な、何がっ!?」
戦士「木をつけろ、揺れるぞ」

―グオオオオオオォォォ…!

ズゴゴゴーン!ズゴゴゴーン!
剣士「きゃああああああああぁ!」
戦士「…」ズズッ
店員娘「…」

ミシミシミシミシ!ガランガランガラン!
剣士「うわあああああああっ!!」
戦士「うん、旨いな」
店員娘「…ありがとうございます」

ズゴゴゴーン…ズゴゴゴーン…
剣士「な、なんで平気なのぉ!?」ガクガクガク

グラグラグラ…

剣士「ううぅ…」ブルブル
戦士「派手にやったなぁ」

店員娘「…今日はかなり頑張ってる方」
戦士「あぁ」

―グオオオアアアアォォォ!

剣士「ひっ!…店主さんって、たまにこんな事してるの…?ていうか人間ですかっ!?」
戦士「滅多にやらないぞ」

店員娘「…アレをやると普段なら3日は寝込む」
剣士「ええっ!?そんなに大変なの!?」

戦士「あの剣は古い技術を使っている物だ。そんな物を直すんだ、かなりキツいだろうな」
剣士「だ、大丈夫なの?」

戦士「そのための宝石でもあるな」
剣士「うぅ、またわかんないことを…」オロオロ

……………

店員娘「…」
店員娘「…終わったみたい」

戦士「お、以外と早かったな」
剣士「店主さん…」

ノシ…ノシ…ノシ…ノシ…

店主「ま、待たせたな…」シュー…
戦士「お疲れ様」

剣士「店主さん!大丈夫ですかっ?」ピタッ
店員娘「…あっ」

剣士「!?あっちゃあああっ!?」シュワッ!
店主「ダメダメ!今の俺に触っちゃいかん!」

剣士「ど、どうしてっ!?」ヒリヒリ
店主「…俺に触ると、火傷するぜ?」

戦士「アホなこと言ってんじゃねぇ」
店員娘「…剣士ちゃん、氷」
剣士「ありがとうございます…」

店主「…」

店主「おら、抜いてみな」
剣士「は、はいっ」

剣士「…」スラッ
剣士「うわぁ…」

戦士「ほぉ」
剣士「な、直ってる…」ギラン

戦士「さすがだな、いい仕事をする」
剣士「なんかますます鋭利になってるみたい…」

店主「そりゃもちろん!この俺がこさえたんだからなぁ!」カッカッカ
剣士「…」

店員娘「…お疲れ」
店主「うむ、店番ご苦労」

剣士「…店主さん」
店主「お?」

剣士「失礼ですが、何者…ですか?」
店主「…」

剣士「…」
店主「…」

剣士「…」
戦士「剣士」

店主「いい、俺が話す」
店員娘「…」

店主「…剣士ちゃん」
剣士「…はい」

店主「俺はだな」
剣士「…っ」

店主「表は酒場の店主!」
剣士「!?」

店主「裏は謎の鍛冶屋!」
戦士「…」

店主「その実体はっ!!」クワッ
剣士「~!」ドキドキ

店主「…」
店主「…すまない、今は目を瞑っていて欲しい」

剣士「そ、そんなぁ…」ガクッ
店員娘「…お父さん」

店主「でも、今はって事だ」
剣士「…」

店主「そこの戦士さまとつるんじまった以上、俺の正体くらい必然的にわかる時が来るからな」
戦士「…っ」

剣士「戦士さま?」
戦士「てめぇなぁ!」

店主「かっかっか!まぁなんだ、お前らが旅に出て万が一の時には飛んで助けに行ってやるからよっ!」
剣士「むむむ…わかりました」

戦士「…」
剣士「戦士さま」

戦士「ん」
剣士「今は聞かないでおくよ…」
剣士「でも、いつかはちゃんと話してもらうからねっ」
戦士「…おぅ」

店主「戦士よ」
戦士「あん?」

店主「俺の所に剣を見せに来たって事は、行くのか」
戦士「あぁ、ようやく決心が付いた」

店主「そうかい…」
店主「やっとかよ!待ちくたびれたぜ!」

戦士「アイツの被害者が増えちまった以上、もう野放しには出来ねぇしな」
店主「全くだ」

店主「でもよぉ、勝てんのか?その体で」
戦士「やるしかないだろ、不本意だが」

店主「難儀なぁ」
戦士「あぁ」


剣士「お2人の話についていけないよぉ…」ショボン
店員娘「…いずれ判るわ」

店員娘「…今は彼に、戦士に力を貸してあげてね?」
剣士「う、うん…わかった」

店主「てかお前の剣は診てなかったが、よかったのか?」
戦士「あぁ、俺の剣くらいどこでも買えるし、何なら棒きれでだって戦える」

店主「そうかい」フッ
戦士「あぁ」

店主「…」ガシッ
戦士「…」ガシッ

剣士「…」
店員娘「…ふふっ」

店主「…」ググ
戦士「…」ググ

店主「…っ」ググググググ
戦士「…」グググ…

店主「ぐおおっ!」ガタッ
剣士「店主さん!?」

店主「ま、参った!」パンパンパン
戦士「はっはっは」

店主「くぅ!俺が元気なら負けねぇのに」ジンジン
戦士「負け惜しみだな」

剣士「なっ、何をしたのっ!?」

店主「ん?何ってそりゃ」ブラブラ
戦士「握手だ」ニギニギ

剣士「え、えぇ…」
剣士「というか!戦士さまは店主さんを負かしたんですかっ!?」

戦士「楽勝」グッ
店主「けっ!」

剣士「あ、明らかに体格違うのに…」
戦士「関係ないな」

店員娘「…さすが戦士♪」
剣士「…」

剣士「…ねぇ、ボクの力ってホントに必要なのかなぁ?」ハァ
店員娘「…えぇ、きっと必要になるわ」

店員娘「…腕力以外でね」ニヤ
剣士「んー?」

戦士「店主、まぁ、その、なんだ」
店主「あん?」

戦士「こいつの剣、直してくれて…感謝する、うん」
店主「!!」

店主「や、やめろ!お前が改まって礼なんかするんじゃねぇ!うぅっ気持ち悪ぃ!」ゾワゾワ
戦士「なっ…!」

剣士「店主さん、ボクの剣を直してくださって、本当にありがとうございますっ!」ペコッ
店主「いいんだよ、剣士ちゃん」キリッ

戦士「…」
店員娘「…まったくもぅ」

店員娘「…戦士さん、あれでもお父さんは内心喜んでるのよ?」
戦士「はん、知ってら」
戦士「あいつとはお前が生まれる前からの付き合いだからな」

店員娘「…そっか」フフッ

――――
店員娘「…気をつけていってらっしゃい、2人共」
戦士「あぁ、世話になった」
剣士「お世話になりましたっ」

店主「…」カチャカチャ

戦士「…」
剣士「店主さん…」

戦士「へい店主」
店主「…」ジャー

戦士「身体、壊すなよ」
店主「…」

店主「…」ヒラッ
剣士「…」

戦士「ふん、行くぞ」クルッ
剣士「え!あぁ、うん…。ほ、ホントにありがとうございましたっ!」ペコッ

剣士「ま、待ってよぉ!」タタタ

店員娘「…」フリフリ

店員娘「…」

店員娘「…素直じゃないね」
店主「なぁに」カチャカチャ

店主「あいつにゃ、余計な言葉はいらねぇんだよ」
店員娘「…いつもケンカばっかりのくせに」

店主「俺なりの特別扱いってやつさ」フキフキ
店員娘「…はいはい」フフッ

店主「ん、疲れたから夜まで寝る。後は任せた」ノソノソ
店員娘「…はぁい。おやすみ」

店主「…」

店主「達者でな」

―街―
剣士「店主さん…、何も言わなかったね」
戦士「いいんだ」

剣士「へ?」
戦士「あいつはそういうヤツなんだよ」

剣士「…」
戦士「まったく、かわいくねぇよなぁ」

剣士「か、かわいいの?」
戦士「はぁ?意味がわからねぇ」

剣士「…なんなのさ」プゥ
戦士「…」

戦士「まだお前の方が」
剣士「えっ今なんてっ」

戦士「おら、さっさと宿に戻るぞ」ツカツカツカ
剣士「ねぇちょっと!さっきなんて言ったのぉ!?」トトトト

―宿―
剣士「今朝」
戦士「あん?」

剣士「戦士さまはボクと良く似てるって、言ってくれたよね」
戦士「ん…まぁな」

剣士「どうしてなのかなーって…」
戦士「…」

剣士「だ、誰だって言えない秘密くらいあるよね!」
戦士「ま、言えない事もないけどな」

剣士「ホント…?」
戦士「どうせ遅かれ早かれバレる事だ。それに」

剣士「?」
戦士「お前の過去だけを知ってるのも、等しくないからな」フフッ

剣士「じゃあ」
戦士「あぁ、少し話そう」

戦士「その前に」スクッ
剣士「うん?」

戦士「…」ガチャ キョロキョロ
戦士「…」パタン カチッ

剣士「鍵…かけるの?」
戦士「まぁ、邪魔されたくないからな」ストン

剣士「…邪魔」
剣士「はっ、まさか!もし怪しい動きをしたら口封じとしてあんな事やこんな事されちゃうの!?」バッ

戦士「阿呆なこと言ってんじゃねぇよ…」
戦士「それともそういうのがお望みなのかぁ?」

剣士「い、いや!そんな事はっ!…思ってないよ?」//
戦士「…もう、寝ようかな」

剣士「すみませんでしたぁ!大人しく聞きますからぁ!」ワタワタ
戦士「ふぅん…」

戦士「ちなみに今から言うことは全て事実だ」
剣士「うん?」

戦士「…信じる信じないはお前に任せる」
剣士「…」

戦士「あと、俺はお前と違って手短に言うから良く聞けよ」
剣士「う、うん」

戦士「じゃあまず俺は人間じゃない」
剣士「…!」

戦士「ある理由で今は人間と魔物の血が半々に流れてるんだ」
剣士「ど、どうして…!」

戦士「まぁ聞けって」
剣士「…ご、ごめん」

戦士「で、親はその魔物の王に殺された」
剣士「…!?」

戦士「ヤツは部下だった。しかし俺たちを裏切り、大勢の兵士が反逆、俺と生き残った少し仲間以は外みんな殺された」
剣士「…」

戦士「しかも国はヤツに乗っ取られた」
剣士「…」

戦士「いやー、まさかたった1人に、一夜の内で陥落させられるなんて思わなかったよ」
剣士「…ぅ」

戦士「で、あまりにも分が悪いから逃げ出した」
戦士「…しかし悪いことに変な魔法使いに出くわしてな」

剣士「え?」
戦士「どうやら族と勘違いされたらしいんだが、まぁその魔法使いが強いのなんの」

剣士「…魔法使い」
戦士「そいつのおかげで俺はこんな半端な身体にされちまった」

戦士「幸い殺されはしなかったが、仲間の何人かは行方不明になった」
剣士「…」

戦士「で、何とか逃げ切った俺達はこの街に紛れ、傭兵として魔物を狩ったり、情報を探していたって訳さ」
戦士「剣術はそこで磨いた」

剣士「…」
戦士「とまぁ、こんな感じだ」

戦士「な、似てるだろ?」ハッハッハ
剣士「そんな…」

戦士「あん?」
剣士「そんなっ、あんまりだよ!」

戦士「…」
剣士「味方に裏切られて、両親も仲間も故郷も奪われて…」

剣士「挙げ句には、身体まで変えられて!」
剣士「そんなの非道いよっ!」

戦士「…まぁ、ひでぇ話だよな」
剣士「うぅ…」ボロボロ

戦士「はははっ、なんでお前が泣く」
剣士「だ、だってっひっぐ…悲しいじゃ、ないか…っ」ゲホッ

戦士「…」
剣士「戦士さま、こんな事があったら、どんな、悪党だって泣く、って…うぐっ」

戦士「あぁ、言ったなぁ」
戦士「だが俺のはもう、とっくに枯れてんのさ」
剣士「…っ!」

剣士「んんっ」ギュッ
戦士「な、なんだぁ?」グラッ

剣士「…泣ぐっ」グシュッ
戦士「今泣いてんだろ…」

剣士「かっ、けほっ!枯れたぶんはぁ、ボクがふっ…泣いで、あげるがらっ!」ギュ-ッ
戦士「別にかわりなんか」

剣士「くっ…!ふぅっ…」フルフル
戦士「………」ポン

剣士「うぅ…うわああああっ!!」
戦士「…」

戦士「…」ナデナデ

戦士「…」
剣士「…っ…」ズッ

戦士「…」
剣士「……はぅ」

剣士「…」ムクッ
戦士「もういいか」

剣士「うん…」スンスン
戦士「…」スッ メガネハズス

戦士「…」ヌグイヌグイ
剣士「んむ…」

剣士「…えへへ」
戦士「…」

戦士「さて、お前はここに居ろ」スクッ

剣士「どこに行くの?」
戦士「飯を貰ってくる。そんな泣きはらした顔じゃ行きたくないだろ」

剣士「あ、ありがとう」
戦士「いいよ」カチッ ガチャ

パタン

剣士「…」
剣士「迷惑…だったかな」グシグシ

剣士「どうしょう…、なんだか泣いてばっかりだなぁ…」
剣士「これから旅が始まるのに、何だか不安だよぉ…」メソッ

剣士「…」
剣士「…っ」ジワッ

ゲンゲン!

戦士「悪い、開けてくれ」
剣士「あ、うん」グシグシ

剣士「…」ガチャ
戦士「すまん」

剣士「いえ…」パタン
戦士「なんだ、まだ泣き足りないのか」

剣士「そ、そんなんじゃ!」
戦士「ほら、用意してもらった。食べろ」スッ

剣士「…」
戦士「どうした?」

剣士「…なんでも、ない」クイッ
戦士「…ふぅん」

戦士「…」ズズッ
剣士「…」チラッ

戦士「…」ワシワシ
剣士「…」

戦士「…」
剣士「…」チラッ

戦士「おい」
剣士「っ」ビクッ

戦士「俺は別に迷惑だなんて思っちゃいないからな?」
剣士「そっかぁ」ホッ
剣士「ってええっ!?き、聞いてたの?」

戦士「どうせそんなこったろうと思った」ハァ
剣士「う、うぅ…」

戦士「だからお前はガキなんだよ」
剣士「あぅ…」

戦士「あーったく!」
戦士「俺はそんな簡単に嫌いになったりしないからよぉ」

戦士「お前はお前らしくしてればいい」
剣士「戦士さま…」パァ

戦士「だからさっさと食え」ビシッ
剣士「は、はいっ、頂きます!」ガブガブ

戦士「なぁ、急いで食べると」
剣士「…うぶっ!んむっんむっ」パンパン

戦士「詰まるんだって…お前は」ミズ
剣士「~っ」ゴクゴク

剣士「っぷぁ…、ご、ごめんなさい…」
戦士「…」

戦士「口のまわり付いてんぞ」ゴシゴシ
剣士「あっ、んむんむ…」

戦士「まったく…」フフッ

戦士「明日から出発だ。早めに休んどけ」
剣士「うん」

戦士「…」
剣士「…」

戦士「なんだか色々あったが」
剣士「ん?」

戦士「お前とは、あー、うまく、いや、何とかイケる気がする。うん」
剣士「ど、どうして言い直したんだよぉ!」

戦士「お前は戦いには向いてるが、それ以外何するかわからねぇからなぁ」
剣士「そ、そんな事ないもん!」

戦士「ほぅ、じゃあ期待してるよ」
剣士「うっ…」

戦士「ふふっ、すまない、呼び止めてしまったな。よし寝ろ」
剣士「…~おやすみっ!」ガバッ

戦士「…あぁ」

―翌朝―
戦士「剣士、準備はいいか」ギュッ
剣士「ばっちり!」グッ

戦士「さぁて、この旅の最大の目的はヤツを、あの魔物の王を倒す事だ」
剣士「うん」

戦士「厳しい旅になるだろう。どんな結果になるかは分からない」
戦士「覚悟はできているな?」

剣士「覚悟は出来てるよ。あらゆる手段を使ってでも、みんなの仇をとってみせるから」
戦士「…」

剣士「あ、あと戦士さまの体も治さないとね」
戦士「ああ?あぁ、そんな事もあったな」

剣士「自分の事だよ…?」

戦士「さて、行くぞ」
剣士「ふぁ、ぅあいっ!」

戦士「なんだその間抜けな返事は」
剣士「な、なんでだろ…、きき急に緊張してきたぁっ」ブルッ

戦士「…」
戦士「落ち着け」ポン

剣士「っ」
戦士「その、あれだ」

戦士「お前だけでも、…俺が守る。うん」

剣士「…」
剣士「わっ」
剣士「わっ、わぅっ、ふぁ!?」///

戦士「しゅっぱーつ」ノシノシ
剣士「ま、待ってよ戦士さまぁ!」

<モウイッカイイッテヨォ!>
<キョウハイイテンキダ…>

~かくして、二人の長いようで短いかもしれない旅が始まった~

―街外れ―
剣士「ねぇ」トコトコ
戦士「あん?」スタスタ

剣士「まずはどうすればいいのかな?」
戦士「あー、そうだな」

戦士「言っちまえば、魔物の王の居場所はわかってるんだよなぁ」
剣士「そういえば戦士さまの国だったんだもんね…」

戦士「だが、2人で乗り込んだところでこっちが先に潰されるだろう」
剣士「うん、無理だと思う…、無理だね」

戦士「じゃあやることは1つだろ」
剣士「そっか、そうだねっ」

戦士「鍛え直しだ」
剣士「仲間探しだ」

戦士「な」
剣士「ね」

戦士「…」
剣士「…」

戦士「は、はっはっはっは」
剣士「あ、あははははっ」

戦士「…」スタスタ
剣士「…」トコトコ

剣士「…今のボクじゃ…、戦士さまのお役に立てない…」ブツブツ
戦士「確かに2人じゃ戦力的にも不利だ…それに剣士に危険が及ぶ可能性も高く…」ボソボソ

剣士「…」
戦力「…」

剣士「戦士さまっ」クルッ
戦士「お、ん?」

剣士「ボクは、強くなりたい!」
剣士「そんで…、きっときっとっ、戦士さまみたいに強くなって、お役にたてるようにがんばるっ!」フンス

戦士「…」
剣士「だ、ダメかな?」

戦士「…ふふっ」
剣士「…」

戦士「それは頼もしいな」ニカッ
剣士「う、うん!頑張るっ!」

戦士「ただでさえお前の力量は買っているよ」
剣士「そ、そんなことぉ…」//

戦士「…だが、お前だけでは力不足だ」
剣士「っ!」ドキッ

戦士「お前が言うとおり、仲間探しも必要だと思うんだ」
剣士「え?う、うん」

戦士「そこで考えた」
剣士「ん?なぁに?」

戦士「お前を鍛えて、仲間を探す事がいっぺんに出来る事…それは」

剣士「それは…?」
戦士「…」

戦士「ついて来い」スタスタ
剣士「ま、待ってっ!」トタトタ

―林道―
戦士「…」スタスタ
剣士「ど、どこに行くの?」トタトタ

戦士「まぁ隣村だな」
剣士「隣村で何かあるの?」

戦士「おら、アレだよ」
剣士「アレじゃわかんなぃ…」

戦士「俺の本職はなんだ?」
剣士「本職…、あぁ!」

剣士「魔物狩りっ!」
戦士「…」ズルッ

剣士「え?あれ?」キョトン
戦士「まぁ、そんな事も言ったな…」ソウイヤ…

戦士「傭兵だよ傭兵」
剣士「あぁ~」ポン

戦士「この時代、どこの街や村にも傭兵は必要なのさ」
剣士「なるほどね」

剣士「けど傭兵は戦うだけでしょ?戦争が無いところは何やってるの?」
戦士「戦闘以外にも、採取や偵察、取引代行を引き受けたりするな」

剣士「へー、何でもやるんだー」




?「…」ガサッ

戦士「戦う機会があれば腕は磨ける」
剣士「それに人が多く集まるなら仲間を誘えるチャンスも増える!」

戦士「そんなこったな」
剣士「さすが戦士さまだねっ」

戦士「まぁな」
剣士「いひひ」ニコッ

ガサッ…

剣士「…」
戦士「…」

剣士「…戦士さま」ボソッ
戦士「つけられてる、な」

剣士「…」
戦士「族か」

剣士「…左右の茂みに2人ずつ、後ろから1人です」
戦士「…ほぉ」

剣士「どうする?」
戦士「ふむ」

戦士「向かって来たら蹴散らすか」
剣士「はい」

山賊「…シシッ」カチャッ

戦士「…」
剣士「…」

?「た、助けてくれぇ~!」ダダダダ

剣士「!?」
戦士「…」

男「さ、山賊に追われているっ!た、助けてくれよぉ!」ガタガタ

剣士「お、落ち着いてっ」ワタッ
戦士「…」

男「あ、あいつら、ここいらで追い剥ぎしてる奴らで、この縄張りに入っちまったら!」

剣士「何が起きるの!?」

シュビッ!

男「げはあっ!!」ドスッ!
剣士「…ボウガン!?」

剣士「戦士さまっ!」
戦士「あぁ」

山賊3「ひっひっひっ…」ガサッ
山賊2「あらあらあらあら」ズルズルッ
山賊1「シシッ、シシッ」カチャッ
山賊4「…俺達の縄張りへよーこそぉ!」ジャーン!

男「う、うぅ…」

剣士「大丈夫ですかっ!?」
戦士「おやおや、汚ねぇヤツらがもっさりと」

山賊2「あーらあらあら、いいのかなぁ?そんなこといってぇえ?」ジャキッ
山賊4「あぁ全く…ついてねぇなぁ」スラッ

戦士「あん?」

山賊1「シシッ、お前、金、置いてかないと死ぬ、シシッ」カチャカチャッ
山賊3「置いてっても死ぬんだがなぁ…ひっひっひっ」

剣士「…」
戦士「はっ、お前らおもしれぇな」ハッハッハ

男「あ、あぁ…」
剣士「…」スクッ

戦士「お、剣士やるか?」
剣士「はい」スッ

剣士「すみません、眼鏡、預かってください」カチッ
戦士「おう」

剣士「…」スラッ

山賊3「お、お嬢ちゃんが相手かい?」
山賊1「シシッ、かわいい、かわいいね、シシッ」

戦士「おい、お前らー」
山賊2「あら?」

戦士「こいつから目ぇ離さない方がいいぞー」
山賊4「あぁ?意味がわからねぇ…」

剣士「」ダンッ!

山賊s「!」

戦士「居なくなるからよぉ」

山賊3「どこに行った!?」
山賊4「消えた…だと?」ザッ
山賊1「どこ、シシッ、どこだ、シシッ」カチャ

山賊2「あらあら…!」
剣士「」…クルクルクル

山賊2「う、うえ…あらああああっ!?」
剣士「っ」シュッ ゲシッ!

山賊2「あぎゃー!!」ドサーッ
山賊3「2ー!?」

戦士「うへー、すげぇ飛び蹴り」
山賊3「てめぇ、刀の錆びにしてやる!」ダッ
剣士「…」ユラッ

山賊3「チェストー!」ビュッ!
剣士「んっ!」シュッ パキーン!

剣士「わぉ」
戦士「へぇ」

山賊3「か、刀が…俺の刀がぁ!」ガクガク
山賊1「折れた、折れた、シシッ」

山賊3「ち、ちくしょおぉ!」ブンッ
剣士「」ヒラッ

剣士「遅いよっ」パチーン!
山賊3「ふがっ…親父にも、ぶたれたこと…ないの、に…」ガクッ

山賊4「な、なんだコイツっ!?」ジリジリ
山賊1「おぉ、強い、強い、シシッ」

山賊1「でも」カチャッ

山賊1「こっちは、見てなくても、いいのかぁシャア!?」ビシュッ!ビシュッ!

戦士「あん?」
剣士「戦士さまっ!?」

ドッ ドッ

戦士「…」
剣士「大丈夫っ!?」

山賊1「シシッ、当たった、シシッ…」
戦士「か…」

戦士「痒いな」ポロッ ポロッ
剣士「…!」

山賊1「うシャア!?」
戦士「剣士、おら」

剣士「はいっ」ビュッ
山賊1「コイシャアアアアァァ!」ビシュビシュビシュッ

剣士「」ピョン
山賊3「飛ぶぞ!」

山賊1「…!」
山賊1「消えた、消えた!」キョロキョロ

剣士「後ろだよっ」グイッ
山賊1「ゲショッ!?」ギリギリ

剣士「キミは危ないから眠ってなよ」ギリギリギリ
山賊1「キシキシキシ、キシキシ、キシ、キシ…」ギリギリギリギリ

山賊1「」デロン
剣士「ふぅ」

山賊3「ま、待ってくれ!」
剣士「待ちますか?」

戦士「まぁ、うん」
剣士「わかりました、どうぞ?」

山賊3「あ、アンタらつ、強いのなっ!?」
山賊3「み、見逃してくれっ!この通りだっ」ガタガタ

剣士「…」
戦士「…」

山賊3「…なっ?お前さんからは金は取らないからっ、だからっ!」
剣士「…」

戦士「コツン」ゲシッ!!
山賊3「うごほおあああっ!!?」ゴロゴロゴロ…ドサッ

戦士「ゲスが」ペッ
剣士「戦士さま…あれはコツンって感じじゃないよ…」

男「あわわわわわ…」

戦士「さて、これでいいか」
剣士「うわー…」

山賊s「」グルグルグルマキ
男「な、なんで私まで…」

戦士「しらばっくれてんじゃねぇ」
剣士「え?」

戦士「まぁ、コイツは山賊ってこったな」
男「!」

剣士「え!?」
山賊5「…いつ、わかった」

戦士「お前、コイツ等に目配せしすぎ」
山賊5「なっ!」

戦士「腕のケガも簡単な仕掛けだろ?見たことあるし」
山賊5「クソぉ…」

剣士「そーゆーことぉ…」ユラァ
山賊5「お、お嬢ちゃん、勘弁して…」

剣士「あげないっ!」バコーン!
山賊5「ひでじぃっ!!」ボコッ

戦士「はい、お疲れ」っ眼鏡
剣士「ありがとっ」カチッ スチャ

戦士「余裕だったな」
剣士「そんなっ、そんなの全然大した事ないよ」

戦士「まぁ、これくらいじゃ鍛錬にもならねぇな」
剣士「だねっ」クスッ

戦士「…」

剣士「行こっか?」
戦士「ん?あぁ、じゃあコイツ等持ってくぞ」

剣士「えぇ、どうするの?」
戦士「小遣い稼ぎさ」グイッ

剣士「戦士、さま…こんなの、が、お小遣い、稼ぎにっ、なる、のっ?」ハァハァ ズリ…ズリ…
戦士「こんなんでも山賊だ。報奨金くらいかかってるかもしれない」ズルズル

剣士「なる…ほどっ、くおっ」ズリッ…ズリッ…
戦士「別に俺1人だけでも持ってけるぞ?」ズルズル

剣士「いやっ、はぁ…ボクもっ、はぁ…手伝いっ、たいっ」ズリ…ズリ…
戦士「…」ズルズル

戦士「まぁ、これも鍛錬の1つだな」
剣士「うんっ」

戦士「おら、もっと腰を入れろ」
剣士「はいっ」グッ

戦士「全身を使え」
剣士「は、はい!」

戦士「村までまだかかるぞ」
剣士「はいっ!」

戦士「疲れたら言えよ?」
剣士「はいっ…うん!」

―隣村―
剣士「つ、ついたぁ…」ゼーゼー
戦士「まぁまぁだな」

山賊s「」テルーン

剣士「お、おしりまる見え…」
戦士「汚ねぇ」

戦士「じゃあコイツ等突き出してくるから、お前は宿で休んでろ」
剣士「うん、ありがとう…」

戦士「ん」ズルズル
剣士「…」

剣士「…」
剣士「はぁ…」

剣士「まぁまぁ、いや、まだまだだね…」
剣士「…宿、どこかなぁ」フラフラ

―ギルド・窓口―
受付「ご協力ありがとうございました」
戦士「へいへい」

戦士「…」
戦士「こんなもんか」チャリチャリ

―掲示板―
戦士「さて、何か要請はねぇかなぁ」
戦士「…」

戦士「まぁ、この辺じゃあ大した依頼なんかたかが…ん?」

{急募・魔人討伐}

戦士「魔人…」
?「なぁ、そこの兄ちゃん」

戦士「あん?」
?「その依頼に興味あんのか?」
戦士「まぁ、な」
?「俺もなんだよ!」グイッ

戦士「…」

戦士「…」
?「おっと、申し遅れた」

槍使い「俺は槍使い、ここのギルドに所属している」アクシュ
戦士「…戦士だ」グッ

槍使い「ひひひっ」
槍使い「そんでさぁあんた、この依頼一緒に受けてみねぇか?」

戦士「あぁん?」
槍使い「だって魔人だぜ?魔物とは桁違いのヤツさ」

槍使い「一度闘ってみてぇじゃん?お前さんも興味あんだろ?」
戦士「…」

槍使い「勝てば金が貰える、楽しそうじゃないか!」ヒヒヒッ
戦士「…魔人相手に楽しそう、ねぇ」

槍使い「なぁ、戦士さんよぉ?やってみねぇか?」
戦士「…」

戦士「ふむ、まぁいいだろう」
槍使い「ホントかい!」

戦士「だが、俺の仲間も連れて行く」
槍使い「仲間?」

戦士「1人だがな」
槍使い「まぁ、1人だけなら…、ソイツ強いのか?」

戦士「まぁまぁだな」ガタッ
戦士「明日の朝、またここに来る」

槍使い「ん?あぁ、わかったぜ、よろしくな!」ヒヒヒッ
戦士「あぁ」スタスタ

槍使い「…」
槍使い「けっ、気取りやがって」

―宿―
戦士「あー、眼鏡をした女剣士の連れなんだが」
主人「あぁ、それなら2階の2つ目の部屋さ」

戦士「すまない」

カツカツカツ…

コンコン
戦士「着いたぞ」



戦士「おい」



戦士「…」ガチャ
剣士「…」クー…クー…

戦士「…」パタン
戦士「…」

剣士「…」スー、スー
戦士「…眼鏡くらい外せ」スッ

剣士「…」エヘヘッ…
戦士「…」コトン

戦士「…ふっ、ガキめ」ナデ

―夜―
ガリガリ
剣士「…ん」パチ
戦士「…」ガリガリ

剣士「…戦士さま?」ボヤァ
戦士「お、やっと起きたな?待ちくたびれて剣をいじっちまった」ガリガリ

剣士「あぁ…ボク、疲れて眠ってて…」
剣士「はっ!」ガバッ

剣士「もう暗くなってる!?」
戦士「おー昼過ぎから良く寝た寝た」

剣士「うぅ…」ガクッ
戦士「まぁ、良い時間だ」フキフキ

剣士「どーして……っ」クルルル
戦士「丁度飯の時間だからな」ゴトン

剣士「は、はい…」///カチッ クイッ

戦士「そういえば」
剣士「?」モグモグ

戦士「明日の朝、討伐の依頼を受ける」
剣士「へー」モグモグ

戦士「魔人の」
剣士「ふー…んっ!?」ゴクン

剣士「魔人!?」ガタン
戦士「うるせえ」

剣士「…ご、ごめん、な、何でまた魔人とか!?」ヒソヒソ
戦士「何となくだ」

剣士「何となくって…魔物より凶悪だって言うのに…」ガックリ
戦士「そんで、1人味方でついて来る男がいる」

剣士「…どんな人?」
戦士「槍使いだ。腕には自信があるみたいだったな」

剣士「槍かぁ」モグモグ
剣士「頼もしい、のかな?」

戦士「さぁな」ワシワシ

―部屋―
剣士「ふぅ、食ったくったー」ポンポン
戦士「ふむ」ゴトン

剣士「…戦士さまの剣って」
戦士「あん?」

剣士「ロングソードだよね?」
戦士「まぁ、そうだな」

剣士「何か剣らしく無いよね」
剣士「幅は狭いのに分厚いし、刃が付いてないみたいだし」

戦士「元は拾い物だからな」
剣士「え!?拾ったの!?」

戦士「剣の形してるし、長さ、重さも丁度良い」
戦士「まるで俺の為にあるみたいだろ」ハッハッハ

剣士「あ、あはは…」
剣士「今までどうやって戦ってきたの…?」

戦士「ん?潰してきた」
剣士「あっ、だからぶっ潰すって言うのか…うわぁ」ゾワッ

戦士「そういえばお前の剣も」
剣士「そうだよ!」スラッ

剣士「刀折っちゃったけど、大丈夫かなぁ?」
剣士「…」ジー

戦士「どうだ?」
剣士「…なんともない」

戦士「どれ」
剣士「はい…」

戦士「…」
戦士「…」コンコン
戦士「…」スッ ボウッ!

剣士「戦士さまっ!燃えてる!?」アワアワ
戦士「店主の野郎、気合い入れすぎだ…」

剣士「ななな、なんなの!?」
戦士「魔力を込めたら燃えた」ブンッ シュバッ

剣士「ま、魔力って…魔法?」
戦士「まぁ、そうなるな」

戦士「今の俺じゃ大した魔法は使えなかったはずだが、どうやらこの剣がおかしくなったようだ」
剣士「そ、そんなぁ…」

戦士「喜べよ、こんなの誰もが持てる剣じゃない」
剣士「でも…なんかちょっと…」モジモジ

戦士「お前は人間だろ?魔力が無いなら燃えないはずだ」スッ
剣士「う、うん」

剣士「むむむ…」グググ
戦士「…」

剣士「…っ」
戦士「…」

剣士「っぷはぁ!」
剣士「燃えないや」エヘヘ

戦士「強度、切れ味は申し分ないんだ、好きに使ってやれ」
剣士「うんっ」カチン

剣士「…」

戦士「…」ゴロン
剣士「あれ?もう寝ちゃうの?」

戦士「明日は魔人と闘うんだ。寝る」
剣士「むー…」

戦士「お前も、さっさと寝ろぉ」ファ-
剣士「…」コロン

戦士「…火消すぞ」フッ
剣士「…」

戦士「…」
剣士「…」

戦士「…」
剣士「…」

剣士「…戦士さま?」
戦士「…くっ」カー…カー…

剣士「…~っ」
剣士「おやすみっ」モゾッ

剣士「…」
剣士「……」
剣士「………」パチッ

剣士「昼寝しちゃったせいで…寝れない…」ギンギン

剣士「…」
剣士「……」
剣士「………」キーン

剣士「…耳なり…してきた」モゾッ
戦士「…」クー…クー…

剣士「…」
剣士「戦士さま…」

剣士「ボクは未熟者です…」
剣士「…」

剣士「だから…」
剣士「強く、なります…」

剣士「まぁまぁじゃなくて、もっともっと…」
剣士「あなたの、為に…」

剣士「…」
戦士「…」

剣士「おやすみなさいませ、戦士さま…」
戦士「…」

剣士「…」
剣士「…」スゥ…スゥ…

戦士「…」
戦士「…」ガキメ…

―朝―
戦士「おい」ユサッ
剣士「…ん、ぅ…」ボヤァ

戦士「早く準備しろ」
剣士「…ぁぃ」ムクッ

戦士「まーた寝ぼけて脱ぐんじゃ」
剣士「ん~…」ヌギヌギ

戦士「ねぇ…」
剣士「…ふぁ~っ」スルッ ポヨン

戦士「外出てるぞ」クルッ
剣士「…」フラフラ

ガチャ…パタン

剣士「…」ユラユラ
剣士「はっ」ピクッ

剣士「…」アサ
剣士「…」センシサマイナイ
剣士「…」ハンラ
剣士「ま、またかぁ!」ウワァ-!

―村―
剣士「…」スタスタ
戦士「…」トコトコ

戦士「なぁ」
剣士「な、なに?」

戦士「お前、隠密だったくせに、そんなに朝弱いのか?」
剣士「そ、そんなことないっ!…もん」

戦士「…まったく」
剣士「昨日昼寝したせいで寝れなかったんだよぉ…」ゴシゴシ

戦士「だが、毎回寝ぼけて目の前で着替えられるとさすがに反応に困るぞ」
剣士「ご、ごめん」エヘヘ

戦士「…はぁ」
戦士「さっさと行くぞ」ツカツカ

剣士「う、うん」トトト

―ギルド―
槍使い「やっと来たか!」
戦士「すまない」

槍使い「まぁ、俺もさっき来たんだがなっ」ヒヒヒッ
戦士「はぁ」

剣士「…」ヒョコ
槍使い「!おい、このお嬢さんは?」

戦士「昨日言った俺の仲間だ」
剣士「えと、剣士です。よろしくお願いしますっ」ケイレイ

槍使い「…」
槍使い「…お」

剣士「…?」
槍使い「お前さん!俺と旅をしてみないか!?」バッ

剣士「えぇっ!?」
戦士「あぁん?」

槍使い「俺にはわかる!お前は良い女だ!」
剣士「なっ、ちょっと」

槍使い「ひひひっ、俺とならきっと楽しくなるぜぇ?」キリッ
剣士「や、別にボクは…」モジモジ

戦士「はっはっはっはっ」
剣士「せ、戦士さま…」

槍使い「あぁ?なんだい急に?」
戦士「まぁ剣士にしちゃあまだまだだが、確かにこいつは悪くないヤツさ」

剣士「ふえっ?」//
戦士「だがよ、俺の目の前でこいつを口説くのはやめてくれ」

戦士「…潰すぞ」
槍使い「いっ!」ビクッ

剣士「っ」ゾワッ
槍使い「じ、冗談じゃないか!本気にするなって!」

剣士「…」
戦士「受け付け」クイッ

槍使い「へ、へいへい」
戦士「…」

剣士「戦士さま」
戦士「あん?」

剣士「助けてくれた、感じ?」
戦士「別に。気に入らなかっただけだ」

剣士「…」ジー
戦士「…」

剣士「そっか♪」ニコッ
戦士「あぁん?」

剣士「なーんでもっ」
戦士「…」

槍使い「やってきたぞ」ノソッ
戦士「ん、行くぞ」

剣士「はいっ!」
槍使い「お、おう」


槍使い「…」

―西の森―
槍使い「魔人は村の西の洞窟にいるそうだ」ノコノコ
戦士「…西か」スタスタ

剣士「魔人…」トコトコ
槍使い「怖いのかい?剣士ちゃん」

剣士「こ、怖くないよっ!」フン!
槍使い「ひひひっ、大丈夫さ。もしもの時は俺が助けてやんよ」キリッ

剣士「そっ」プィ
槍使い「あらま…」

戦士「…」ツカツカ…
剣士「…っ」ピクッ

剣士「戦士さま!待って」
戦士「あん?」ピタッ

剣士「…」イシコロ
剣士「…」ポイッ

ザクン!

槍使い「な…」
戦士「おー」

槍使い「な、なんだこりゃあ!?あぶねぇ!」
剣士「この森、罠が仕掛けられてます」

戦士「…」
戦士「あー、うん、助かった」

剣士「!」
剣士「はいっ」//

槍使い「剣士ちゃんすげー!」
剣士「あ、どもです」ペコッ

槍使い「…この扱い」ガクッ
戦士「当然だろ」

剣士「ここからはボクが前を歩きます」スルッ
戦士「頼む」

剣士「任せてよっ!」
槍使い「…」

槍使い「…」
槍使い(コイツら…俺が誘ってやったのに、揃ってハブにしやがって…)

戦士「罠はその魔人が仕掛けた物のようだな」
剣士「だけど、魔人の罠もボクらの物とそんなに変わりないねっ」エヘヘ

槍使い(しかし剣士ちゃんかわいいなぁ~)デレッ
剣士「戦士さまっ、そこに1つあるよ」ピョン ポヨン

槍使い(小柄だけどなかなかのおっぱい!しかも眼鏡でボクっ娘!)
戦士「ん」スルッ

槍使い「ひひひっ…!」ザクッ
槍使い「ぎいやああああぁ!!」ゴロゴロ

剣士「何やってるのっ!?」
戦士「あるって言ったろ。アホか」

槍使い「いってぇ…」ジュクジュク
剣士「よくトラバサミが痛いで済んだね…」イタソー

槍使い「ふっ、そこらのヤツと比べちゃ困るぜ…」キラッ
戦士「…」

戦士「…」カチッ

ビシュッシュシュシュッ!

槍使い「ぎゃぼおおおぉ!!」カカカカカカ!

戦士「すまん、なんか踏んだ」
剣士「もぅ、危ないよぉ戦士さまぁ」

槍使い「ホントだよっ!」ウガー!

剣士「うわー、見事に矢で縁取られてますねー」
戦士「これは傑作だ」ハッハッハ

槍使い「お前ら絶対助ける気ねぇだろ!?」

―西の洞窟―
槍使い「はぁ…はぁ…ついた…」ボロッ
剣士「大丈夫?」

戦士「大丈夫だろ。他のヤツより死ににくいんだろ?」
槍使い「そんな事言ってねぇ!頑丈だって言いたかったんだよ!」

剣士「槍使いさん!」
槍使い「な、なんだい?」

剣士「対魔人はボク初めてだから、頑張ってね?」コクン
槍使い「いよぉし!お兄さんがんばっちゃうぞぉ!」テカテカ

戦士「…」
剣士「戦士さま」キュッ

戦士「あん?」
剣士「気をつけてください…。ボクも全力でサポートしますから」

戦士「…」
戦士「はん、お前は身を守る事に専念してろ」

戦士「任せろ、上手くやる」
剣士「…はい」ニコッ

槍使い「ホントにこんな洞窟にいるのかよ」ノコノコ
戦士「知るか……?」

キ――――――――ン…

剣士「…っ!」
戦士「…」

槍使い「…なんだ、こりゃあ」
剣士「み、耳鳴りがする…」

戦士「どうやら、ご在宅のようだな」ガシャン
剣士「…」スラッ

槍使い「くぅ~、武者震いがしやがるぜ!」ヒュンヒュン!

ゴゴゴゴゴゴ…
戦士「…気をつけろ」
槍使い「暗くて見えねぇなぁ」ノコノコ

………ヒュッ
剣士「!」
剣士「戦士さまっ!」

戦士「…!」
ゴウッ!!
戦士「っちい!」ザザッ

槍使い「げふぅ!!?!」ボゴーン!
戦士「…来たか」ガシャ

…ザッ、ザッ、ザッ
戦士「…」

ザッ、ザッ、ザッ
剣士「槍使いさん!」
槍使い「だ、だいろぶ、だいろぶ…」グッタリ

ザッ、ザッ、ザッ!
魔人「…退け、人間風情が」

戦士「…」
剣士「こ、これが…魔人」ゾワゾワ

槍使い「な、何が起こったかわからねぇが…」ヨロッ
魔人「…」

槍使い「魔人よ!お前はこの不死身のサラブレッド!槍使い様が直々に」
魔人「喧しいぞ猿め」ヒュヒュ…

……カッ…カッ…………ゴウッ!
槍使い「ブチのべっ!!?」ボゴッ
槍使い「じでゃるぅ~…」ヒュー-ン…

剣士「や、槍使いさん飛んでっちゃったよ!?」
戦士「それは丁度良い、いつか弾き飛ばしてやろうかと思ってたところだ」ガシャン

魔人「…ほぅ」

魔人「貴様、私に挑むか」カチン…カチン…
戦士「あぁ、来いよ」ガシャン

魔人「…」
戦士「…」

魔人「」スッ
戦士「」ギリッ

ヒュヒュッ!
戦士「く!」ギギン!
魔人「ふん」ギギギギ…!

戦士「ぅうう゛!」ギリギリギリ!
戦士「お゛あっ!」ブオン!

魔人「」ガヂン!
魔人「…」スッ

魔人「ほぅ、弾き返すか」
戦士「はん、まだまだ温いな」ガシャン

魔人「…」
魔人「」ヒュ

…カッ………ゴオッ!
戦士「…」ユラッ

…ズガーン!!

魔人「…」ヒュヒュヒュヒュヒュヒュ

剣士「あの白い髪の魔人…長剣の二本を軽々と操ってる…」
戦士「」スススススックルッ

カカカカカカッ…ズボゴゴゴゴッ!
ガラガラガラ…

剣士「さっき槍使いさんを吹き飛ばしたのは斬撃による衝撃波だったんだ…」

戦士「ぜあっ!」ガオン!
魔人「…く」スッ
ガッ…ボゴーン!!

剣士「こんなに、恐ろしく強いはずなのに…」

戦士「うがっ!」ブオン!
魔人「はっ」シャッ!
ガヂン!ガギン!
剣士「なのに戦士さま、あの魔人と渡り合ってるぅ!」キャー!ガンバッテー!

戦士「説明ご苦労!」ガギン!
魔人「ちっ!五月蠅いぞ小娘!」ヒュ

剣士「わ!?」
カッ……

戦士「剣士っ!」
ボゴーン!!ガラガラ…

ガラガラ…
魔人「ふん」
戦士「…」ピクン

戦士「…おい」
「…はぁい!」

ピョン!スタッ!
剣士「あー、びっくりしたぁ!」
魔人「…」
魔人「何なんだ貴様ら」カチン…カチン…

戦士「あん?」
魔人「何者だ?」

戦士「…」
戦士「まだ…気づかないのか?」

魔人「…何?」カチャン…
剣士「え?」

戦士「なら、潰すしかないな」ガシャン
魔人「…」シャッ カチッ

戦士「せい!」グワン!
魔人「」スルッ ヒュン!

戦士「ふっ」ガチン!
魔人「…」ギギギギ

戦士「はあっ!」ブオン!
魔人「…っ」ガン!

戦士「ふおあ゛っ!」ブンブン!
魔人「ぬぅ!」ガヂガヂッ!

戦士「はっ、終わりだな!」ガオン!
魔人「きいぃいい!嘗めるなあっ!!」ゴオオッ!

戦士「うおっ!」グラッ…
魔人「死ね!」ギュオッ!

戦士「ぅぐあはっ!」ザクッ!
剣士「せ、戦士さまっ!?」

戦士「げはっ…」ガラガラン…
剣士「このっ!」シュッ

魔人「…」カチン…カチン…
戦士「来るなっ!」

剣士「!」ピタッ
剣士「で、でもっ!」

戦士「剣士!早く洞窟の外に出ろ!」メラ…
魔人「…!」

剣士「できないよ!戦士さまを置いてなんか…!」
戦士「いいから出ていけ!!」

剣士「っ!」ジワッ
剣士「し、承知しました」

戦士「はぁ…はぁ…」ニヤッ
剣士「…死なないでね」

シュッ

魔人「…」

魔人「…」カチン…カチン…
戦士「はぁ…、はぁ…」メラメラ…

魔人「その魔力…知っているぞ」
戦士「ふん…」ペッ

戦士「お前、まだ剣を鳴らす癖が…直ってない、みたいだな」ガリン ヨロッ
魔人「…」

魔人「貴様…まさか」
戦士「その、まさか、だ!」ガシャン!

戦士「ふんっ!」ドシン!

戦士「ぅぉおおおオオオ…!」キィィイイイ…
戦士「…ア゛ア゛ッ!」…ブゥン!!

魔人「…ぐぁはっ!」バヂーン!!

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…
ドガーン!ガラガラガラガラ…

ガラ、ガラガラガラ…
戦士「…はぁっ、はぁっ」

ガラガラ…
魔人「」ボコン!ガラガラガラ…

戦士「…」ガクッ ガシャッ
魔人「…」

戦士「…はぁ畜生、やはりかなわねぇか」ゴロン
魔人「…」

戦士「おら、やれよ」
魔人「…」

魔人「…ふっ」
戦士「…」

魔人「ふっふっふっふっ…」
戦士「…」

魔人「ふはははははははっ!」
戦士「はははっ…」

魔人「誠に…醜い姿よなぁ」
魔人「王子よ」

戦士「…まったくだ」
魔人「我が国の象徴が今や半魔人とは、なんと嘆かわしい」スッスッ、カチンカチン

戦士「うるせえ。お前はあの時、魔法に引っかからなかったから良かった物を」
魔人「ふはははっ」

戦士「はん」
魔人「そう腐るな」スッ

魔人「立てるか」
戦士「…あぁ」グッ

戦士「うぐっ」ズキッ
魔人「どうだ?人間の生傷とやらは」

戦士「これが結構痛ぇんだ、傷がすぐ塞がらない」ジュクジュク
魔人「ほぅ、私はそうはなりたくない」

戦士「…てめぇが斬ったんだぞ」
魔人「そうだ王子よ、何故私の下へ来た?」

戦士「ま、待て、その前に回復を頼む…」ドクドク…

魔人「ふむ」ジッ
戦士「…」ドクドク…

魔人「」ペッ
戦士「ぐっ、おぉ…!」ヒリヒリ

魔人「それくらい唾を付ければ治る」
戦士「ふざけろ!どアホがっ!」
魔人「男が喚くな、血は止まっただろ」
戦士「な、なぜ止まるんだ…」

戦士「…もういい、後は剣士に看てもらう」ヨロッ
魔人「…剣士?王子の新たな側近か」

戦士「まだ側近じゃねぇがな」
魔人「ほぉ」

戦士「お前には話があったのだが、また後で来る事にする」
魔人「何故だ?」

戦士「お前が居るとややこしくなる」
魔人「…解せぬ」

魔人「なんだ、同胞との再会をこうもあっさり閉めるのか?」
戦士「お前を剣士に合わせると面倒なんだ」フラフラ

戦士「あ、お前、この居場所ギルドにバレてるからどっか移っとけよ」
魔人「…何?」

戦士「お前の討伐指令が出ていたからな」
魔人「なるほど。最近、この森に人間の出入りが多いのはそのせいか」

魔人「どうりで罠が減っている」フム
戦士「…その罠、効いてるぞ。かなり」

魔人「そうか」フハハッ
戦士「…まぁそんな所だ。じゃあな」ヨロヨロ

魔人「待て」
戦士「…」クル…

魔人「そう嫌な顔をするな」
魔人「王子の話ではどうやら私には居場所が無くなってしまったらしい。そこでだ、私を王子の下に置かせては貰えないか?」

戦士「…俺がさっきなんて言ったかわかるか?」
魔人「剣士とやらに説明すれば良いだろう?」

戦士「アイツには、まだ知られたくないんだよ…」
魔人「…」

魔人「はぁ…面倒な奴だ。コレだから奴に裏切られ、運良く半端モノにされる」
戦士「ほっとけ」

魔人「邪魔はしない、王子の話も聞いておきたい」
魔人「お願い出来ないか」スクッ

戦士「…膝をつくな」
魔人「…」

戦士「はっ、こんな時だけ王子扱いしやがって…」
戦士「…今は戦士で通ってる」

魔人「では」
戦士「お前は人間の姿に変われ。後は王子と呼ぶな。絶対だぞ」

魔人「承知した」

―洞窟外―
剣士「…」
剣士「あれからすぐ静かになった」

剣士「さっき、あの魔人に斬られてたよね…」
剣士「戦士さま…まさか…」ジワッ
剣士「そ、そんな訳っ…うぐっ」ガクッ
剣士「…やっぱり、ボク、が、付いてなっ、きゃ…いけなかったんだ…」グスッ

剣士「あ゛っ…あんなキズでっ…うぅ」
剣士「…せ、せんしさまあぁぁぁ~…」ウエーン

?「……五月蠅いぞ、まだ居たのか小娘」スッ
剣士「ひいっ!?」ビクッ!

剣士「き、貴様っ!!魔人…あれ?だよね?…戦士さまはどうした!?」ザッ
?「戦士様?…あぁ、おぅ…前の仲間なら今来る」

ガチン…ガチン…
「…」ヨロヨロ

剣士「!!」
戦士「剣士…待たせた」

剣士「せ、戦士…さま」フルフル…
?「なんと、この小娘が剣士だとは…、何とも拍子ぬ」

シュッ

?「けだな…?」

剣士「うぅ、無事だったんだね…」ウルウル
戦士「あぁ、なんとかな」

?「…」クルッ
?「おい、貴さ」

剣士「もうばかぁ!心配したんだからっ!」ギュッ エグエグ
戦士「すまなぐおっ!…ま、待て、血は止まってるが傷はまだ塞がってないんだ…」ビキッ

?「…ま」

剣士「わわっ!ごめんなさいっ!」バッ
剣士「今手当するからっ」ガサガサ

?「………」

?「私は魔じ」
剣士「戦士さま、傷口見せて」
戦士「ん」ガチャガチャ…ベロン

剣士「!!」
剣士「酷い切り傷…、今消毒して薬塗るからね…」カポッ

?「…んである…ぞ」
?「…」

剣士「かなり滲みるかも…大丈夫?」
戦士「あぁ、やってくれ」

?「おい、聞いてい」
剣士「うるさいな」ギロッ

?「!」バッ
剣士「黙ってて」

?「…」

剣士「」クルッ
剣士「いくよ?」ポンポン

戦士「…ぅ」グシュグシュ
?「…」

戦士「…」
剣士「よいしょ…っと」ホウタイマキマキ

?「…」ポツーン
戦士「…」

戦士「あー、その、剣士」
剣士「なぁに?」クイクイ

戦士「そこのぱっと見涼しげな顔をしているが、内心プライドがキズ付いてかなりヘコんでいる、人間に変化した魔人の事なんだが…」
剣士「えっ、さっきまで戦士さまと戦って大怪我させた上、そんな得体の知れない白い髪のお姉さんぽい魔人なんて、居るの?…そんなのが居たらボクがバラバラにしちゃうかもね」クスッ

戦士「…」
?「…」

剣士「…」マキマキ
剣士「うふっ…あはははっ!」

剣士「うそうそ!冗談だよっ。ボクじゃムリムリ」ニコッ
戦士「は、ははは、そうか、おら、冗談だとさ」

?「あ、あぁ」
剣士「うん、多分ね」キュッキュッ

戦士「はは、は…」
?「…」

剣士「はい、できた」
戦士「あぁ、ありがとう」

?「…」
剣士「戦士さま」

戦士「ん?お、コイツのことか?」
剣士「…もう、こんな無茶しないで。あと、ボクだけ出てけなんて…言わないで…」

戦士「あ?あー、うん…、わかった…。ごめんな」
剣士「…うん」グシュ

?「…」
剣士「で?」

剣士「どうなってるの?」
戦士「…説明する」

剣士「納得のできる説明だと、嬉しいな?」チラッ
?「…」

戦士「そう威嚇するな…」
戦士「コイツはな、俺の仲間の1人なんだ」

剣士「へー」
戦士「あの時魔物の王に敗れた俺達はあの街へ行ったが、コイツだけは人間が嫌いだから離れて暮らすと言って出て行った」

剣士「ふーん」
?「…」

戦士「まぁ、今日まで消息は知らなかったのだが、意外と近くで暮らしていたんだな」
戦士「…一応、元気そうで良かった」

剣士「ほー」チラッ
?「…」

戦士「…」

剣士「じゃあもうボク達を襲わないんだ?」
戦士「あぁ、…そうだよな?」

?「無論だ」
剣士「…」

剣士「キミ、名前は?」
?「ま、前まで魔人だったが、これからは双剣士と名乗らせてもらう」

剣士「へー、双剣士さん?」
双剣士「そ、そうだ」

剣士「ふーん」
双剣士「…うぅ」

剣士「戦士さま?」
戦士「お、おう」

剣士「この人…魔人?これからどうするのかな?」
戦士「あぁ、その件はこれから話をしようとしていた所だ」

戦士「でだ、双剣士、俺達は仇である魔物の王を潰す為に旅をしているんだが、どうだ?仲間にならないか?」
双剣士「ふむ、なるほど、ついに奴へ反撃を仕掛けるか」

戦士「あぁ、こうして他の仲間にも参加するか呼びかけているんだ」
双剣士「そう言う事なら私も是非力になろ」

剣士「ボクは反対かなぁ」

双剣士「う…ぞ」
戦士「…剣士」

剣士「ねぇ双剣士さん」
双剣士「な、なんだ?」

剣士「双剣士さんは、さっきの戦いで戦士さまに大怪我させたんだよ?」
双剣士「…それについては、すまないと思っている」

剣士「思っているだけなの?」
双剣士「す、すまなかった!せ、戦士殿!」ペコー!

戦士「だ、大丈夫だ、もうなんともない…」
剣士「…」

剣士「ていうか、戦う前に戦士さまだって気が付かなかったの?」
双剣士「そ、それは…その」

双剣士「戦士殿が半分人間になっていて…、それで…」
剣士「たとえ半分人間になっていたとしても分からないのなかぁ?」

剣士「斬られ所によっちゃ、死んじゃってたかもしれないんだよ?」
剣士「いくら人間が嫌いだからって、普通いきなり襲っちゃったりしちゃうかなぁ」

双剣士「だから、それは…」
剣士「それになんだかキミ偉そうだよね」

剣士「キミは戦士さまと昔の仲間かも知れないけど、ボクはさっきまで敵だった、しかも初対面なんだよ?」
剣士「戦士さまを追い込んだ強いキミが力になってくれるのは嬉しいけど、もっと気を使ったりできないの?」

双剣士「うっ…うぅ…」ジワッ
戦士「……うわぁ」

戦士「ちょっと剣士、剣士」チョイチョイ
双剣士「…っ」グスッ

剣士「…はい」トトト
戦士「頼む、それぐらいで勘弁してやってくれ…」コソコソ

剣士「…」
戦士「双剣士は俺の従姉でさ、アイツはそう言うヤツだって知ってるから許たんだ」

剣士「ぅむ…」
戦士「多少力任せになったり、気丈に振る舞ったりはしているが…あー、ちゃんと思いやりもある」

戦士「…アイツも十分懲りたはずだ、お前も許してあげてくれないか?」
剣士「…」チラッ

双剣士「…っ…っ」エグッエグッ
剣士「っ~…わかった」ハァ

戦士「すまない、始めは気に入らない事もあると思うが仲良くしてやってくれ」
剣士「…うん」

戦士「…お前には、俺の身を案じてくれた事、嬉しく思っている」ナデ
剣士「んっ」ピクッ

戦士「頼りない俺ために偵察やサポートをしてくれている事、とても評価しているんだぞ?」剣士「…戦士さま」///

戦士「…あー、うん、つまりそう言う事だ」フイッ
剣士「えへへ、わかったよっ」

剣士「戦士さまの頼みだもの。後で…ちゃんとお話しとくよ」戦士「…よろしくな」

剣士「うんっ」コクッ
戦士「あぁ」フフッ

剣士「…そうそう」
戦士「あん?」

剣士「さっき気になった事があったんだけど…、これから双剣士さんともお話するんでしょ?」
戦士「…まぁな」

剣士「じゃあやっぱり後でいいや」
戦士「いいのか?」

剣士「うん、いつでも聞けるし、…そのうちわかるみたいだし」
戦士「そうか、わかった」

剣士「はい」ニコッ

戦士「では、ちょっと外してくれ」
剣士「うん、あっちで待ってるよ」

戦士「双剣士、来てくれ」
双剣士「…っ、あぁ」スンスン

剣士「…」トコトコ
双剣士「…」カツカツ

剣士「あの…双剣士さん」
双剣士「っ!…な、何か」ビクッ

剣士「…さっきは言い過ぎました。ごめんなさい」ペコッ
双剣士「い、いや、私こそ…すま、…ごめんなさい」ペコ

剣士「えへへ、いいの。んじゃ」トトト
双剣士「…あぁ」

戦士「…うむ」

双剣士「…」
戦士「大丈夫か…?」

双剣士「…っ」ブワッ
双剣士「お、王子ぃ…」グズッ

戦士「あぁあぁ、ほら、泣くんじゃない」ゴシゴシ
双剣士「はうっ、ごめんな、王子、っ…お腹の、傷…もう痛くない…?」

戦士「あぁ大丈夫、もう塞がった頃だ」
双剣士「…っ、よか、った」ズッ

戦士「…だからもう泣くな」ポンポン
双剣士「…あの、小むす…少女っ、私のお婆様と…同じくらいっぐすっ…恐、かった…」エグッ

戦士「お前の婆さん、口が達者だったもんな…」

双剣士「…っすまなかった…ぅ、王子とも知らず、襲いかかってしまって…」ヒック
戦士「それならこちらにも否がある」

戦士「言ってしまえば、俺は一目でお前だとわかってはいたんだ」
双剣士「な、ならっ何故言わなかった?」グシッ

戦士「その時俺と剣士以外に今日だけ仲間になった雇われの男が居てな、俺が親しくお前に話しかければ魔人の仲間だとギルドにバレてしまうと思った」
双剣士「…ぅむ」

戦士「お前のおかげですぐ吹っ飛んでったがな」ハッハッハ
双剣士「…」

戦士「まぁ、俺の今の実力を試す事と、お前の腕が鈍っていないかを確かめるためにも、挑発したのもある」
双剣士「私を、試したのか」

戦士「あぁ。ま、この体じゃせいぜいお前を弾き飛ばすのが限界だったって事だな」
双剣士「人間の血が弱らせているのだ、致し方ない…」

戦士「それでも勝てると思っていたのだが、うん、以前より腕が上がっていて少し驚いた。また強くなったな」
双剣士「そ、そうか…?」フニャ

双剣士「…っ、当然だ」キッ
双剣士「剣士たるもの、日々の鍛錬は欠かさない物だ」

戦士「うむ、流石俺の従姉だな」
双剣士「…」ニッ
双剣士「…あ、あまり褒めるでない」フイッ

双剣士「…その」
戦士「あん?」

双剣士「ほ、本当に私が仲間になっても…良いのだろうか…」
戦士「俺は歓迎しているつもりだが…、何故だ?」
双剣士「いや、…王子の連れが…」チラッ

剣士「~」ユラユラ

戦士「あぁ」
戦士「剣士の事なら心配するな」
双剣士「…」

戦士「お前に悪気が無いことはもう伝えてある」
双剣士「そう、か…」

戦士「後でちゃんと紹介しよう」双剣士「…あぁ」

双剣士「…」
戦士「…まったく、剣士たるものがいつまでも縮こまっているなよな」

双剣士「そ、そんな事はなぃっ!次は腰から上下に両断するぞっ?」
戦士「はん、はっはっはっ!お前は普段からそれでいいんだよ」

双剣士「っ…」
双剣士「その…王子、礼を言う。ありがとう」

戦士「…」
戦士「いや、あー、うん、気にするな」フイッ

双剣士「…ふふっ」
戦士「…なんだよ」

双剣士「何、王子…いや、戦士殿があの頃と大してお変わりが無いようで、安心しただけだ」
戦士「はん、お前もそんなに変わってねぇよ」

双剣士「当然だ、私は何時までも私だ」フハハ
戦士「うむ」

戦士「では、剣士を呼ぶぞ」
双剣士「」ピクッ

戦士「…」
双剣士「ちがう!ちがうぞ!?」

戦士「はいはい」ヒラヒラ
双剣士「…調子に乗りおって」フン

戦士「剣士、遅くなったな」
剣士「おっ、やっとお呼びがかかったよぉ」トコトコ

双剣士「…」
戦士「すまない、待たせたな」

剣士「いいよいいよ、久しぶりの再会だものねっ、双剣士さん?」
双剣士「え!?あっ、っそ、ソウダナ!」

剣士「…」
戦士「…なんだその間抜けは」

双剣士「っく!」
剣士「…ぷふっ、あはははっ!もう大丈夫だってばぁ!」

双剣士「べ、別にそういう事ではないっ!」
戦士「もうプライドもクソもねぇな」

双剣士「わ、私は!」
戦士「はいはい、じゃーまず自己紹介なー」

双剣士「貴様っ、流すでないわ!」ゲシゲシ
剣士「あはははははっ!」

戦士「ん、まずは剣士からな」
剣士「はいっ」

剣士「はじめまして!ボクは剣士と申しますっ」ケイレイ
剣士「元隠密をしていましたが、魔物の王にハメられて家族も里も何もかも奪われてしまったので、その仇討ちのために戦士さまと共に旅をさせてもらってます」

剣士「よろしくお願いします!」
双剣士「隠密…そうであったのか」

戦士「おら、次」
双剣士「あ、あぁ」

双剣士「私は双剣士、魔人だ」
双剣士「私も…戦士殿と同じく奴から全てを奪われ、亡命をして来た」

双剣士「今こそ私も国と仲間達の無念を晴らすべく協力しよう」
双剣士「…何分粗相があるやも知れぬが、今後とも宜しく…」

剣士「うん!よろしくね、双剣士さん!」アクシュ
双剣士「…」

戦士「おら」
双剣士「う、うむ、よろしくな、剣士殿」ギュッ

戦士「では、とりあえず村に戻るか」
剣士「うん。…でもどうする?魔人は討伐じゃなくて仲間になっちゃったよ?」

双剣士「あぁ」
戦士「そう言えばそうだな」

剣士「それに槍使いさんも居なくなっちゃったし…」
戦士「では、アイツの事は死んだ事にしよう」キッパリ

剣士「えぇ!そんなっ!?」
戦士「魔人と相討ちになったと言えば、名誉だろ?」

剣士「それは…ちょっと酷いんじゃないかなぁ…」アハハ
双剣士「その槍使いとやらは1人の戦士として死んだのだ。悔いはなかろう」

戦士「うん、それでいい」
剣士「駄目だよ…勝手に殺しちゃ…」ヤリツカイサン、キラワレスギダヨ…


…ガサッ
「…」

剣士「でも魔人を倒したって証拠がないよ?」
戦士「それもそうだな」フム

双剣士「戦利品となる物があれば良いのか?」
剣士「え?う、うん」コクン

双剣士「ならば私の腕を持っていけばいい」スルッ
剣士「え゛!?」

戦士「おいおい…」
双剣士「腕くらいしばし経てば再生するだろう?」カチン

戦士「いや、それは無いだろう」
剣士「だ、ダメダメダメ!」グイッ
双剣士「むぅ…」
剣士「もっと痛くなくて、確実な証拠ないかな…、鎧とか?」

双剣士「これは渡せない。装備は全て私の誇りだ」
剣士「だ、だよね…」


ガサッガサッ
「…」

双剣士「では、私の爪ならどうだ?」
剣士「だからどうして痛いのばっかりなのっ!?」

双剣士「つ、爪ならすぐ治るだろう?」ヘンゲカイジョ
剣士「だ、だって絶対痛いもん!」

双剣士「これしき、痛みの内に入らんわ」
戦士「剣士諦めろ。コイツは確かに女だが、話にならん」

剣士「そんなぁ…」
双剣士「待っていろ」カプッ

戦士「…」
剣士「双剣士さんが待って!」

双剣士「ふっ」ベキッ

剣士「いやぁー!!」ギューッ
戦士「…」キリキリ

双剣士「ぷっ、右の中指の爪だが、もう一つ剥いとくか?」ツメコロン
剣士「うひゃあああ!いいです!十分ですぅ!」ブルッ

双剣士「そうか…」


「…っ」ブルッ

剣士「そうだ!治療してあげるから、早く指見せてっ!」
双剣士「何、これくらい唾をつければ治る」ダラダラ

剣士「そ、それは逆にばい菌が…」
双剣士「」パクッ チュウチュウ

戦士「…」
双剣士「」チュポッ

双剣士「どうだ…止まっただろ?」フフン

剣士「じ、自慢にならないよ!」
双剣士「大丈夫、何故か私の唾液には止血の効果があるんだ」

双剣士「あの時の戦士殿の止血も私がやった」
剣士「!」

剣士「戦士さまっ!?」クワッ
戦士「な、なんだ?」
剣士「戦士さまの怪我、血、止まってたよね!?」ズイッ
戦士「あ、あぁ」

剣士「双剣士さんに、傷口、舐めて貰ったの!?」ズズイッ
戦士「な、舐めてはいない」チカイ…
剣士「そ、そっか…」スッ
戦士「あれはかけたに近いな」ウム

剣士「かけた!?」クルッ
双剣士「っ」ビクッ

剣士「…」メキョッ
双剣士「かけたのではない!お、応急処置だ!応急処置!」
戦士「そ、そういう事なんだ」
剣士「ふーん」

双剣士「…」
戦士「…」
剣士「…」

剣士「…ま、止血されてた事に変わりはないよね」ウン
双剣士「…」ホッ

剣士「でも」
双剣士「っ」ビクッ
剣士「唾液って実は結構汚いんだ。だから次からはボクがお2人を治療するんで、舐めたり付けたりしちゃダメだよ?」
双剣士「わ、わかりました」

戦士「村に戻ると言って長居してしまった。続きは歩きながら話そうか」
双剣士「そ、そうだな」

剣士「まったくもぅ…」ブツクサ
戦士「は、はははは…」

―西の森―
双剣士「そうだ、この辺りの罠には気をつけろ」カツカツ
戦士「あぁ、それについては問題ない」スタスタ

双剣士「何?」
剣士「あの洞窟までは、ボクが罠を見つけて戦士さまに教えて来たんだよ」トコトコ

双剣士「なんと」
戦士「どうやらお前の罠はコイツが使う罠と似たような物らしいぞ」

双剣士「そうなのか」
剣士「でもでも、ここまで自然に溶け込ませる仕組みの罠は、ボクらでもあまり使った事ないから凄く興味あるかもっ!」フンス

双剣士「剣士殿は元隠密であったな」
剣士「うんっ」

双剣士「ならば口外が許せる限りで良い、是非語り合ってみたい物だ」
剣士「いいよ!ボクも双剣士さんの魔人に伝わる話聞きたいしっ」

戦士「…ふっ」


ガサッ…
「…聞いたぞぉ」ヒヒヒッ

―村付近―
戦士「村が見えてきたな」
剣士「夕方近くになっちゃったね」

双剣士「…人間の村か」
戦士「なに、こちらから関わらなければ何もしてこない。アホ以外は」

剣士「ボクたちだってギルドに寄っただけだしね」
双剣士「…そうであっても私は人間が好かないのだよ」

剣士「双剣士さん…?」
戦士「…」

双剣士「…っ、すまぬ、私情を挟んでしまったな」
戦士「はん、別に謝らなくていい」

剣士「そそ、これから好きになってもらえばいいんだしっ」
双剣士「…あぁ」

キラッ

戦士「…」ピクッ
剣士「ん?」

…ヒュッ

双剣士「うっ!」グサッ!
剣士「そ、双剣士さん!?」

双剣士「矢、だな」グラッ
剣士「双剣士さん!動かないでっ!」

キラッ キラッ

双剣士「動かないと当たる」スッ スッ カッ カッ
剣士「だ、誰がこんな…」

戦士「アイツらか、…ギルドの野郎共だな」
剣士「ど、どうしてっ!」

?「ひひひっ!どうしてかなぁ?」
剣士「き、キミは!」

槍使い「お帰りなさいだ、戦士さま御一行…」
槍使い「いや、戦士と魔人さま御一行さんよぉ!」ヒヒヒッ

戦士「貴様…」
剣士「槍使いさん…!」

双剣士「…」

剣士「どうして攻撃してくるのっ?」
槍使い「当然だろ?剣士ちゃん」

槍使い「お前らは魔人と関わってる危ない集団になってるんだよ」
槍使い「その上魔人を討伐せずに金を貰おうたぁ、話が上手く行き過ぎねぇか?」

剣士「そ、それは…」
槍使い「よりにもよって…」

槍使い「俺の見せ場まで失った落とし前はどうつけてくれんだ!?あぁん!?」ドーン
戦士「ありゃテメェが弱いから悪いんだろうが」

剣士「そ、そうだそうだ!」ピョンピョン
槍使い「うるせぇ!」

槍使い「お前たちが何言おうと、お尋ね者になっちまった以上討伐するのがギルドってもんよ」ヒュンヒュンヒュン
槍使い「がっぽり稼がせて貰うぜ!なぁ、みんなぁ!」ジャキン

弓使い「へっへっへ…」
斧戦士「…」ノソッ
刀使い「女性はあまり手をかけなくないのですが…」
女魔術師「あの戦士、なかなか良い男じゃない?」キャハッ

戦士「おぉおぉ、厚い歓迎だな」
双剣士「…」

双剣士「…」ブシュ
剣士「双剣士さん!大丈夫っ!?」

双剣士「あぁ…、かすり傷だ」
剣士「せ、背中まで刺さってたよっ?」

双剣士「貴様等が倒したいのは私であろう?」スラッ スラッ
槍使い「あぁん?」

双剣士「…来い、塵共が」カチン…カチン…
槍使い「ひひひっ!上等だぁ!」

槍使い「気をつけろお前ら、コイツは衝撃波を使うぞ!」
弓斧刀魔「おう!」ババッ

剣士「双剣士さん!」スラッ
戦士「…」

双剣士「来ないでくれ、剣士殿」
剣士「で、でも」

双剣士「大丈夫、見ていて欲しい」
剣士「…う、うん」

戦士「…」

双剣士「」スッ
槍使い「いくぜっ!」ダダッ

斧戦士「ふぅ~」ノッシノッシ
斧戦士「~~ん!」ブオッ!

槍使い「へあっ!」シュバッ
双剣士「っ」ガガチン!

ドン!ボゴーン!

剣士「双剣士さん!土煙でっ…!」
戦士「…ふん」

槍使い「ひひひっ」モヤモヤ…
斧戦士「…」

…ヒュヒュ

カカッ…ブワッ!

槍使い「っぐわあっ!?」ボゴーン!
斧戦士「う~お~!」ズゴーン!
弓刀魔「!」

双剣士「」ブワァ
双剣士「…これしきか、人間よ」カチン…

刀使い「あれが衝撃波」
弓使い「土煙でよく見えなかったぜ…」

女魔術師「あんなの、魔法でも何でもないわ!」メラ…
女魔術師「ファイヤー!」ゴウッ!

双剣士「…」
バゴーン!

剣士「ど、どうして避けないのっ!?」
女魔術師「キャハハッ!バカね!まともに当たっちゃったっ」

女魔術師「あれじゃ魔人でも全身黒こげね♪」
戦士「…」

双剣士「」ヒュ

……カッ!

女魔術師「!」ブワッ!
女魔術師「くぅ!」バッ

ボゴン!

双剣士「…誰が黒こげだと?」
女魔術師「えっ!?」

双剣士「あれしき温さも感じぬわ」ブゥン
女魔術師「うそぉ!?」

女魔術師「な、なんでよっ!直撃したはずっ!」
双剣士「何、ただの魔法抵抗力、だ!」スッ

双剣士「はっ」ジャキン!
女魔術師「ひっ!」
ヒュ、ヒュ
双剣士「っ」カチ-ン カチ-ン
弓使い「離れていろ!女魔術師!」ギリギリ

女魔術師「…う゛ぅ!」タタッ
双剣士「私に穴を開けたのは貴様だな?」

弓使い「へっ、当たったら死ねや!」ヒュ、ヒュ、ヒュ、ヒュ
双剣士「愚かな」ヒュ…
キィーン!

双剣士「…」
刀使い「おっと、させませんよ?」

双剣士「ふん!」シュシュッ!
刀使い「っ」キキィン

双剣士「はあっ!」シュン、シュシュッ、シュバッ!
刀使い「」スッ、キキン、クルッ

刀使い「はっ」ズバッ!
双剣士「ぐっ」ブシュ!

剣士「斬られたっ!?」
戦士「…」

弓使い「おらおら!」ヒュ、ヒュ、ヒュ
双剣士「ぬぅ!」キン、キン、グサッ
刀使い「せいっ」シュバッ
双剣士「ちぃっ!」ギィン!

刀使い「まだまだ!」ビュッビュッ!
双剣士「っ」ギンギンッ
刀使い「胴がお留守ですよっ」ズバッ!
双剣士「ぐわっ!」ブシャッ

刀使い「」ストッ
刀使い「ふっふっふっふっ…」ペロッ
双剣士「っ…」ガシャン

刀使い「ふぅん…」
刀使い「魔人化」
双剣士「…」
刀使い「してもいいんですよ?」フフッ

双剣士「っ!」
戦士「!」
戦士「おい、やめろ!」ガシャン
剣士「双剣士さん!」

槍使い「おーっと」
槍使い「邪魔はさせねぇぜ?」ヒュン
斧戦士「…」ズモモッ

戦士「野郎…」
剣士「…」スッ カチッ

双剣士「…」
弓使い「へっへっへ、もうお終いかぁ?」

刀使い「お仲間さんも危ないようですが、良いのですか?」
双剣士「…ふっ」

双剣士「ふはっ、ふはははははっ!」
弓使い「な、なんだぁ?」

刀使い「あらま、窮地に追いやられて壊れちゃいましたか?」双剣士「いいや」

双剣士「私は正気さ」ヨロッ

弓使い「なら、もっと針山にしてやろうか」ヘッヘッヘ
刀使い「白い長髪の魔人…なかなか美しい作品が出来上がるでしょうねぇ~ふっふっふっ」

双剣士「…」
双剣士「人間は面白い」カチン

双剣士「守るべき者の為に、己を磨く為に、信ずる道を突き進む為に、欲望の為に…、あらゆる手段で我が物にしようとする」
双剣士「その狡賢さ、醜さ、残虐さは、我ら魔人ですら吐き気を催す程だよ」カチン…カチン…

弓使い「だからなんだってんだ?お前が死ねは俺達は英雄になれるんだぜ!?」
刀使い「魔人も人を殺すでしょう?私達は皆一緒なんです」

双剣士「…貴様等と、一緒に、するなあぁっ!!」キーーーーーン

弓刀「!」キーーーーーン
槍斧「な、なんだぁ!?」
女魔術師「うぅ…」

戦士「…」

双剣士「身に覚えの無い迫害を受けるわ、昼夜襲われるわ、寝床も奪われるわ!」
双剣士「私が何をしたという!」

双剣士「ただ平穏に過ごしたい思うのは私だって同じだというのに!」
剣士「双剣士さん…」

双剣士「だから…」カチン…
双剣士「だから人間は嫌いなんだあああぁ!!!」ゴオゥ!!

弓使い「ぐわあああっ!」バチン!
刀使い「うわああっ!?」バヂン!

戦士「…っ」
双剣士「…」

双剣士「安心しろ、魔人化はしない…、殺しもしない」
双剣士「…ただ二度と弓を、刀を!扱えなくしてやるわ!!」ジャキン!

槍使い「な、なんだこの、毛穴に針が刺さるような…!」
斧使い「うお…う゛おぉ…」ブルッ
剣士「…っ、は、ははっ、こわぁ…」ダラダラ
戦士「あーあーあー」

戦士「アイツら死ぬかもな」
槍使い「な、なんだと!?」

戦士「殺しはしないと言ったが、アイツがああなったら今の俺じゃ止められない」
槍使い「そんな、あの怪我じゃまともに動けは…」

双剣士「ふははははは!!」ガヂンガチンガヂンカヂン!
刀使い「う、うぎぎ…!」ガンガンガンガン

弓使い「ち、ちくしょう!」ギリッ
双剣士「うがあ゛っ!」ギャン!
刀使い「うっ!」ゴッ バタッ
双剣士「ちぃぃぃ!邪魔だう゛らぁあ゛!!」ボッ

………コッ!
弓使い「う、うわ」ガオンッ ガッ!ガッ…ガッ…ゴロゴロゴロ…

弓使い「」グデン
女魔術師「…ひっ!」

刀使い「弓使い!こ、このぉ!」バッ
双剣士「うふはははははああ゛ぁ!!」ガヂン!

槍使い「…」

戦士「さて、俺らもやるか?」ガシャン
槍使い「ひ、ひひひっ、あぁ…やってやるぜ」ヒュン

槍使い「お前はぁ、会った時から気に入らなかったんだよぉ!」シパン!
戦士「奇遇だな、俺も、だ!」ブオン!

剣士「…」
斧使い「…」

剣士「キミはどうする?」
斧使い「…お、おおぉ」

斧使い「お前、ちち、ち小さい。おお俺、大きい。相手、に、ならない。む、無駄、だ」
剣士「…」

剣士「ボクね、キミみたいに優しい人大好きだよ」ニコッ
斧使い「へ、へへ」

剣士「…おバカさんだからさ」
斧使い「へへ、へ?」

剣士「」ダン!
斧使い「!」

斧使い「ききき消えた!?」キョロキョロ

斧使い「ど、どこだ…ぐふっ!」ギリッ
剣士「…」ギリギリギリギリ…

斧使い「んぶっ!首…、ぐえっ…!」ギリギリ…
剣士「あはっ」ギギギギギ

剣士「…良いこと教えてあげる」ボソッ
斧使い「ぶぶっ!ぐぶぶぶ…」ブクブク

剣士「…小さいモノにはね、大きいモノを狩るための猛毒、があるんだよ?」ギヂギヂ…

斧使い「ぶ……っ……」グラン…
剣士「」ピョン

…ドシーン!
クルクル スタッ
剣士「…なーんて、聞こえてないか」

…ビュンビュン!ブオングオン!
槍使い「うしゃあ!」シュシュッ
戦士「ふんっ」ガンガン

戦士「…さすが剣士だ、あんなデカブツ、雑作もない、な!」ブオン!
槍使い「…あいつは、俺達の中で、最弱、だ!」ギイン!

槍使い「俺は、最強、だ!」ビュアン!
戦士「お前は、あのデカブツの、次だ!」スルッ

戦士「はあっ!」ズドン!
槍使い「ぐはあっ!」ガズッ!

ゴロゴロゴロ…

戦士「はん、雑魚が」ガシャン
槍使い「…」

女魔術師「や、槍使い!」
槍使い「…誰が、雑魚だぁ?」ムクッ

戦士「…」
槍使い「なんか、当たったかぁ?」ガラン

戦士「…ほぅ」
戦士「丈夫さはなかなかのようだな」グググッ

槍使い「ひ、ひひっ…」ヒュ
女魔術師「もうやめて!」

槍使い「おらああぁ!」ビュホッ!
戦士「」ギンッ
戦士「ごあっ!」ブウン!
槍使い「ぐはあっ!」ガッ!

グルグルグル…
槍使い「………ごはっ」ドサッ
女魔術師「いや…嫌、もうやめてぇ…」グスッ

槍使い「…黙ってろお!」
女魔術師「っ!」ビクッ
槍使い「こ、いつにはぁ、がはっ、負けたか…ねぇんだよおおおぁぁ!」ガクガク

剣士「…槍使いさん」
戦士「…」

双剣士「きぃいぃいいあぁ!」シャシャシャシャシャ!
刀使い「しゃああああああ!」キキキキキ…
双剣士「じぃいやっ!」ガギッ
刀使い「うわっ!」パキーン
カラカラーン…
刀使い「そんな…、か、刀がっ」
双剣士「ふはははっ!終わりだな゛ぁ!?」
双剣士「ふんっ」ザクッ
刀使い「うわああああっ!」ブシュウ!
双剣士「…この腕では二度と刀は持てまいてぇ」ニタァ

刀使い「あ、悪魔めっ!!」
双剣士「悪魔ではない…、魔人だ!」ゲシッ
刀使い「ぐふっ、げほっげほっ…」ドクドク…
双剣士「…おっと」

双剣士「」ペッ
刀使い「うっ」
双剣士「」グリグリ
刀使い「ぎゃあああああっ!」

双剣士「止血だ」
刀使い「」
双剣士「…ふん、口だけの、人間風情が」ユラッ
双剣士「…」

双剣士「」ドサッ

剣士「双剣士さん!」シュッ
戦士「…」

戦士「さぁ、残りは俺達だけになったな…?」
槍使い「ああ…、決着、つけるぞ…ひひっ…」ユラユラ

戦士「…」ガシャン
槍使い「…ぅおお゛ぉっ!!」ブウン

戦士「」スッ
戦士「ふっ」ガッ!

槍使い「ぐあっ…!」ゴシャッ!
戦士「…」

槍使い「…はあっ…う゛っ…、はあっ、はあっ…」グググッ…
戦士「…」グッ

女魔術師「やめてぇ!」タタッ
女魔術師「っ」ガバッ

戦士「…」
槍使い「…はあっ…はあっ…」

女魔術師「もう、これ以上戦ったら…死んじゃうよ…」グスッ
槍使い「俺は、死なな…うっ…!」

女魔術師「バカっ!いくら死なない体にされてるからって!精神の方が死んじゃうかも知れないんだからっ!」ギュ
槍使い「…」

槍使い「俺は…負けねぇ…」
槍使い「最強は…俺だ、俺だけだ!」
槍使い「こんな!こんな奴に負けて…!ち、ちくしょう…」
槍使い「ちくしょうおおあぁ!!奴ばかり良い思いしやがってええぇ!!」

女魔術師「うぐっ…ひっく…」
槍使い「うおおぉっ!やっぱり剣士ちゃんのおっぱい揉んどくんだったあぁ!!」ウガー
女魔術師「!?」
剣士「!?」ビクッ

戦士「…」イラァ
女魔術師「…バカァッ!」ゴン!
槍使い「あふん!」カクッ
戦士「…」

戦士「おい女…」
女魔術師「な、なに…?」
戦士「このドアホの体、不死身ってのは本当か?」
女魔術師「ほ、本当よ」

戦士「原因は、変なん魔法使いか?」
女魔術師「え、えぇ」
戦士「何処にいる」
女魔術師「知らないわ、ここからずっと南の森で襲われたの…」

戦士「…そうか」ガション
戦士「…」

戦士「剣士、お前は無事だな」
剣士「う、うんっ」

戦士「双剣士を背負えるか?」
剣士「大丈夫だけど…」

戦士「ならば、すぐにここを離れる」
剣士「で、でも戦士さまが!」

戦士「まだ歩ける、が、長く持たない」
剣士「だったら…」

戦士「コイツ等が目を覚ませば面倒だ」
戦士「とりあえず双剣士の洞窟まで戻る」

戦士「いいな?」
剣士「わ、わかったっ」トトト

戦士「…」

戦士「女」
女魔術師「な、何よ」ビクッ

戦士「…コイツの事、大事にしてやれ」
戦士「ドアホでもな」

女魔術師「…わ」
女魔術師「わかってるわよっ!」

戦士「…ふん」ザッザッ
剣士「…」

剣士「あ、あの!」
女魔術師「えっ?」

剣士「…失礼致しました」ペコッ
女魔術師「い、いえ、こちらこそ…」ペコッ

剣士「あと!」
女魔術師「っ」

剣士「今日の事は公にしないでね?」シー
女魔術師「え、えぇ」コクン

剣士「うんっ」
剣士「…」
剣士「ま、待って戦士さまぁ!」ノソノソ

女魔術師「…」
女魔術師「…変な子」クスッ

女魔術師「…」
弓使い「」
刀使い「」
槍使い「」
女魔術師「はぁ、どうしたらいいのよ…」

斧使い「う、うぅん…」
女魔術師「!」

斧使い「あれ、あ、ああ、あぁ…」
女魔術師「斧使い君大丈夫!?」
斧使い「ううん………だ、だ大丈ぉ夫…」
斧使い「み、みみみ、みんな、は?」

女魔術師「この通り…」
斧使い「ぜ、ぜん…めつ…」
女魔術師「みんなヒドい怪我だから、早く治療しなきゃいけないの」
女魔術師「運ぶの手伝って!」

斧使い「わ、わかっ、た」ノシッ
女魔術師「早くよっ!」ワタワタ

斧使い「…」グッ
斧使い「…あ、あの、お、女の子…」

女魔術師「ん?」
斧使い「おおお、おっぱい、おっき…かった…な」//コウトウブニ

女魔術師「…」プツン
女魔術師「どいつもこいつもぉ!!」ウガー!

―西の森―
剣士「…」ノソノソ
双剣士「…」プランプラン

戦士「…」ザッザッ
剣士「戦士さま…」ノソノソ
戦士「…」ザッザッ
剣士「戦士さまぁ」ノシノシ

戦士「…」ザッザッ
剣士「ねぇ戦士さま!」トトト
戦士「…」ザッザッ
剣士「…」

戦士「…」ザッザッ
剣士「…戦士さま?」クルッ
戦士「…」ザッザッ
剣士「っ!そこに罠がっ!」

戦士「…」ザッザッ カチッ
シュバババババッ!
木<カカカカカッ
戦士「…」ザッザッ

剣士「うわー…」ヤガヨケテル-
剣士「…もしかして」
戦士「…」ザッザッ
剣士「…」パッパッ
戦士「…」ザッザッ
剣士「歩いてるけど、気を失ってる…!」ゾー

―西の洞窟―
戦士「…」ザッザッ
剣士「!」

剣士「双剣士さん、ここに寝かせるねっ」スルッ
剣士「戦士さま待って待ってそっちは岩盤!」ギュッ

戦士「…」グラッ
剣士「うわっ」ドタン!

戦士「…」ガバッ
剣士「う、うわぁ…」///

戦士「…」スー、スー
剣士「…」

剣士「…」クスッ
剣士「…お疲れ様でした」ナデナデ

戦士「…」
剣士「…戦士さま」グッ

剣士「お、重いっ…!」アプアプ

戦士「…」スー、スー

剣士「ふぅ…、なんとか抜け出せたよ…」
剣士「戦士さまって意外と重たいんだなぁ」

剣士「体ガッチリしてるもんね」
剣士「…」

剣士「…も、もしあの時とかに…のしかかれちゃったりして…」
剣士「…んで、しっかりホールドされたところで、あんなことや…こんなことをされちゃってぇ…」

剣士「…」///
剣士「…って!違う違う!」

剣士「まずは怪我の治療だよっ!」フンス
剣士「双剣士さんが一番重傷なはず!」トトト

剣士「では鎧外すねー?」カチャカチャ
剣士「…」コトン

剣士「…」スルッ
剣士「わ、双剣士さん肌凄く綺麗…」

剣士「…じゃなくて!傷口傷口ー」
剣士「…」

剣士「あれれぇ?おかしいぞぉ?」サワサワ
剣士「…」

剣士「…傷口、なくなってる」

剣士「…」
剣士「魔人の治癒力って奴なのかな?」

剣士「だからお肌綺麗なのかな」
剣士「羨ましいなぁ…」

剣士「…」ジー
剣士「…」フニフニ

剣士「美乳…だね」ムニムニ
剣士「…」

剣士「ボクのは無駄におっきくて…」パヨパヨ
剣士「あのギルドの人達、胸への視線が凄かったよ…」ハァ

剣士「槍使いさんなんか、触りたいとかさっ…」スルスル
剣士「さて…治療するとこ無いから、双剣士さんは寝かせておこう」

剣士「…戦士さまは槍使いさんに勝ったけど、そういえば午前に双剣士さんとの戦いで怪我をしたんだった」

剣士「診とかなきゃ」
剣士「…ぬ、脱がしますねぇ~」カチャカチャ

剣士「…」スルッ
剣士「すでに包帯巻いてたっけね」スルスルスル…

剣士「…」ハラリ
剣士「…」

剣士「…ん!?」

剣士「む、むむ…」サワサワ

剣士「新しい傷はあるけど、午前の深い傷口…、ほとんど無くなってる…」
剣士「…」ハァ
剣士「やっぱり、間違いないんだね…」
剣士「戦士さま…」

剣士「うん、まだ触れないでおこう」スルスル

剣士「…ちゃんと教えてくれるまで、ね」ポン
剣士「…」

剣士「…」チラッ
双剣士「…」スー…スー…

剣士「…」
戦士「…」クー、クー

剣士「…」
剣士「…」モジモジ
剣士「ぼ、ボクも休もうかな」

剣士「…」スッ カチッ コトッ
剣士「んっしょ」コロン

剣士「…」ジリジリ
戦士「…」クー…クー…

剣士「…~っ」//
剣士「…おやすみっ」クルッ

――――
『…ひっ』

『ひひひっ!』
「…あぁん?」

『まったくよぉ、てめぇばっかり良い思いしやがって…』
「…ちっ」

『ちくしょう…あの時剣士ちゃんのおっぱい、揉んどくんだったぜ…』
「うるせぇんだよ…」

『あぁ?ひひひっ!もったいねぇ!』
「…」イラァ

『…ホントは惚れてやがんだろ?』
「なっ」

『いい女じゃねぇかぁ、可愛がってやりぁいいじゃん』
「どうしてテメェに言われなきゃいけねぇんだ」

『ひひひっ!素直になれやぁ』

『…醜い半魔人さんよぉ?』
「…!」

「だ、黙れ!」
『ひーっひひひっ!』

「く、クソがぁ!!」

―早朝―
戦士「っ」パチッ
戦士「…」

戦士「…」<…ヒヒヒッ>
戦士「…あんの雑魚がっ」ハァ

戦士「…?」ギュッ
剣士「…」クー…クー…

戦士「…」
剣士「」ムニュン

戦士「…」グイ
剣士「ん、ん…」ギュッ ムニムニ

戦士「…っ」
戦士「…はぁ」

双剣士「清々しい、…目覚めであるなぁ?」
戦士「!」

双剣士「おっと、動くと可愛い寝顔の剣士殿が起きてしまうぞぉ?」
戦士「テメェなぁ…」ギロッ

双剣士「そう凄むな」フハハ
戦士「…くだらねぇ」フイッ

剣士「…」スー…スー…ニヘッ
戦士「…このガ…アホが」ボソッ

戦士「なぁ」
双剣士「ん?」

戦士「俺は昨日どうやってここまで来たんだ?」
双剣士「分からぬ。私も目が覚めたら此処にいた」

戦士「お前は剣士が負ぶって来たんだぞ」
双剣士「なんと」

戦士「剣士にお前の事を頼んで、あの魔術師に何か言った後の記憶がない」
双剣士「そうであ……あぁ?」

戦士「あん?」
双剣士「貴様…、女子の剣士殿に私を背負わせたのか?」

戦士「そうだが」
双剣士「…はあぁっ」ガックリ

双剣士「王子…」ノソノソ
戦士「…なんだ?」

双剣士「このたわけがっ!」ゴン
戦士「っ!?」

戦士「な、何しやがる!」ガバッ
剣士「わっ!」ビクッ

双剣士「貴様は本当に変わり映えせんな!」
戦士「な、何だと?」

剣士「なゃに…?ぬゃにぃ…?」ホエホエ
双剣士「ここまでされて、何故分からぬのか…」

戦士「だから何がだよ」
双剣士「…」

戦士「意味がわからない」
双剣士「はぁっ…」

双剣士「苦労かけるな…、剣士殿…」
剣士「な、なにがぁ?」グシグシ

双剣士「あぁ、起こしてすまなかったな、剣士殿」
剣士「うぅん、いいよ」

剣士「おはようございますっ」ペコッ
双剣士「うむ、おはよう」

戦士「…」
剣士「あ、お二人共傷はもう大丈夫ですか?」

戦士「あ?あぁ」
双剣士「貴様は挨拶と礼もできんのかっ!」

剣士「っ!」ビクッ
戦士「…」ムスッ

戦士「…おはよう、昨日は、あー、ありがとう…、手当てとか、うん」
剣士「い、いいんだよぉ、別にぃ~」エヘヘ

双剣士「…」
剣士「ほとんど傷は塞がってた…し」

戦士「そうか」
剣士「双剣士さんも具合どう?」クルッ

双剣士「ん?あぁ、全快だ。昨日はここまで運んでくれたのだそうで、礼を言う、ありがとう」スッ
剣士「いいよっ、ボクたちは仲間なんだからね」ニコッ

双剣士「う、うむっ」ポリポリ
戦士「…」

剣士「あ、お腹すかない?朝ご飯作るよっ」ピョン
双剣士「ならこの奥に食品をまとめてある所がある。好きに使ってくれて構わない」

剣士「わかった、取ってくる!」トトト
双剣士「…」

戦士「…」
双剣士「おい」

戦士「なんだよ」
双剣士「剣士殿はなんと才色兼備な娘であるか…」フム

戦士「あぁ、そうだな」
双剣士「…」ジト

戦士「だからどうした?」
双剣士「…はぁ」

双剣士「自覚しろと言っているのだ!」ゴッ
戦士「っ!だから何故殴る!」

双剣士「黙れこのドアホ!」ゴツッ
戦士「俺の言葉だ!」

双剣士「もう、単刀直入に聞く!」
戦士「最初から聞け!」

双剣士「王子は剣士殿をどう思っているのだ?」
戦士「あっ、あぁん?」

双剣士「聞いたぞ、言え」
戦士「し、知らねぇ…」

双剣士「…だからドアホなのだよ」ハァ…
双剣士「健気に忠義を尽くしてくれている事が何故わからない?」

戦士「…き、昨日会ったばかりのお前に何がわかる」
双剣士「嘗めるな、仮にも私は女だ」

戦士「あん?」
双剣士「あれは…、腹を決めた女の眼、ぞ」

戦士「…」
双剣士「ふっ、気付けぬとは、真に罪な男よのぅ」

戦士「し、知らん」プイッ
双剣士「ふはははははっ!」

剣士「ご飯できましたー!」トコトコ
双剣士「うむ、ご苦労」

戦士「…」
剣士「卵がいっぱいあったんで、卵焼き作ってみました」コトン

双剣士「卵焼き…?」
剣士「双剣士さん卵焼き初めて?」

双剣士「あぁ、卵は飲み物ではないのか?」
剣士「わ、ワイルドだっ…」

剣士「戦士さまもどうぞっ」コトン
戦士「…あぁ」
剣士「…戦士さま元気ないよ?」

双剣士「よいよい、こやつの事は気にするな」
剣士「え、どこかの怪我が痛むのっ?」

戦士「いや、別に…」
双剣士「戦士殿は胸が痛むそうだ」

剣士「胸?」
戦士「っ」

戦士「さっさと食べるぞ」
双剣士「ん、そうであるな、いただこう」

剣士「う、うん」
戦士「…」モグモグ

双剣士「どれ一つ」ヒョイ アムッ
双剣士「…」ムグムグ
剣士「どうかな?」

双剣士「むん!これはなんと美味たるや!」
双剣士「剣士殿は良い料理の腕をお持ちだな」パクッ
剣士「そ、そうかなぁ~」テレテレ

双剣士「…」ジー モグモグ
戦士「…」パクッ
剣士「…おいしい?」

戦士「ん…」モグモグ
剣士「…そっか」
双剣士「…」ジー-

戦士「…」
戦士「…剣士」

剣士「はい?」
戦士「こいつ」ヒョイ
剣士「うん?」

戦士「あー…」
戦士「…」パクッ
戦士「…」モグモグ

戦士「…なかなか、美味いぞ」
剣士「~!」
剣士「あっ、ありがとう!」ニコッ

双剣士「…」
双剣士「ぶふっ!」

剣士「うわっ!」
戦士「きたねぇな!」

剣士「ど、どうしたのっ!大丈夫?」
双剣士「ぶっはははははっ!」

双剣士「すっ、すまぬふっ、だがっこっ、これはぁははははははっ!」
戦士「~!」

戦士「顔洗って来るっ」ノシッ
双剣士「ふひゃひゃひゃひゃひゃ!」ゴロゴロ

戦士「ふんっ!」ツカツカツカ
剣士「え、えぇ~…」キョロキョロ

剣士「せ、戦士さまぁ?」
双剣士「ふはははっ、ふぁあぁ~…」

剣士「双剣士さぁん…」ドユコトー
双剣士「す、すまない剣士殿っ」ハーァ

剣士「戦士さまとなんかあったの?」
双剣士「いや、ふふっ」クスクス

剣士「もう、なんなのさ…」プゥ
双剣士「なぁに、別に邪険にしているわけではないのだ」

双剣士「戦士殿があまりに、ふふっ、うぶなものでなっ」
剣士「戦士さまがうぶ?」

双剣士「ふぅむ」
双剣士「では、奴が戻る前に1つ聞きたいのだが、良いかな?」

剣士「うん、なぁに?」コクン?
双剣士「戦士殿をどう思う?」

剣士「戦士さまを?」
双剣士「言うなれば、好きかどうかだな」

剣士「戦士さまを…好きかどうか…」
双剣士「うむ」

剣士「………」
剣士「って、ええええぇっ!?」

双剣士「どうなのだ?」ズイッ
剣士「ど、どうって…」

双剣士「否か然りで良いからっ」
剣士「そ、それはぁ…って!何言わすのさっ!」///

双剣士「良いではないか良いではないかぁ。言ってしまえばスッキリするぞ?」グイグイ
剣士「いやだよぉ~…」

双剣士「何故にぃ?」
剣士「…は、恥ずかしいじゃん」///

双剣士「くぅ~!色気づいておるくせにっ」ツンツン
剣士「にゅう…」///

双剣士「で、どうなのだ?どうなのだ?」キラキラ
剣士「…聞きたい?」

双剣士「おうともさっ!」
剣士「……ぼ、ボクはね…」

双剣士「うむ、うむっ」セイザ
剣士「ボクは…戦士さま、の事…が」モジモジ

剣士「好き…っ」///
双剣士「~~~!」

戦士「はぁ、戻った」
双剣士「っやはりなぁあああっ!」キャー!

剣士「うわあああああああっ!」/////
戦士「…ぞ」

双剣士「!」
剣士「!!!」

剣士「せっ、せ、せせせせ…!」アワアワ!
双剣士「すっ、凄く間がいいなっ!いや、悪いのか?」フハハハッ

戦士「なんだお前ら…、いつの間にそんな仲良くなったんだ?」
剣士「ぼ、ボクたちは…」

双剣士「…むふふっ」ニヤニヤ
剣士「仲良しさんだよねー?」アクシュ

双剣士「そうであるな」グッ
戦士「はぁん?」

戦士「まぁいい、さて、これからどうするか話し合おうか」
剣士「そ、そうだねっ!」

双剣士「ふむ、これくらいにしておくか」テカテカ
剣士「…」///

剣士「…双剣士さんって…こんな方だっけぇ?」ブツブツ
双剣士「私は私だっ」フハハッ

剣士「絶対おかしいよ…」
戦士「終わったか?」ジッ

剣士「えっ?あ、あぅ、あぅ…」//
双剣士「ふふっ、剣士殿は真に可愛いなっ」

双剣士「…しかしこのドアホときたら」ジトッ
戦士「ついて行けない…」

戦士「で、話していいか?」

剣士「どうぞ」
双剣士「よいぞ」

戦士「…」
戦士「アイツ等の仲間に魔術師が居たのを覚えているか?」

剣士「いたね」
双剣士「あの小娘か」

戦士「そいつが言っていたんだが、あの村からずっと南の森に、俺をこの姿にした魔法使いがいるそうだ」
剣士「じゃあ!」

戦士「あぁ、これからその魔法使いを探しに行く」
双剣士「体を戻しに、か」

戦士「…あぁ」グッ
戦士「で、戻った上でぶっ潰すかな」

剣士「うわぁ…」
双剣士「…」

双剣士「だが、断定した訳ではなかろう?」
戦士「そうだな」

戦士「南には小さな城と街がある。だから先ずはそこへ行って、情報を集める事にしよう」

剣士「わかったよ」
双剣士「うむ」

戦士「では、準備にとりかかるぞ」
剣士「はぁい」

双剣士「…」
双剣士「剣士殿」コソッ

剣士「!」
剣士「な、なに?」コソッ

双剣士「お主の願い、案外早く叶うと思うぞ」ニヤッ
剣士「な、なんで?」

双剣士「いやぁ?そんな気がするだけだ」
剣士「…いじわる」イー

剣士「早く準備しちゃうよっ」トトト
双剣士「あぁ」

双剣士「…」
双剣士「うふふははっ」

双剣士「これだから色恋沙汰は面白い」クスクス

――――
剣士「ボクは準備できたよっ」
戦士「よし、まぁ大した荷物はなかったがな」

剣士「そだね」チラッ
戦士「…あいつは何やってんだ」

剣士「…」モジッ
剣士(双剣士さんのせいでいつも以上に意識しちゃうよぉ~)///

双剣士「すまぬ、遅くなった」ガシャッ
戦士「…」

剣士「あ、双剣士さ…!」
戦士「おい」

双剣士「なんだろうか?」
戦士「その武器の山はなんだ?」

双剣士「今まで私を倒しにきた塵共の獲物だ」
剣士「とっといたの…?」

双剣士「勝利の証にな」
剣士「うわぁ…」

戦士「…」

剣士「どれくらい戦ってきたの?」
双剣士「人間ならば昨日の奴を含めて82人だな。」

剣士「そんなに!?」
双剣士「なぁに、人間相手だ、大したことない」フハハッ

戦士「…昨日苦戦してただろ」ボソッ
双剣士「80人の私に負けた記念すべき犬っころが、なんか申したか?」

戦士「…けっ!」
剣士「で、この剣やら槍やら斧とかはどうするの?」

双剣士「この際処分しようと思ったのだが、思いの外いっぱいあったのでな」
双剣士「今なら全て選び放題だぞ」

剣士「ぼ、ボクは店主さんに直して貰った剣があるからいいよ」
戦士「なら俺か」ガシャッ
戦士「そろそろ換え時だしな、こいつも」

双剣士「むしろ良くそんな鉄くずで戦い抜いたものよ」
剣士「まったくだよっ」

戦士「鉄くずじゃない、立派な剣だったぞ」カランカラン
双剣士「切れ味もない鉄くずが何が剣か」

戦士「斬るより叩き潰す感触が心地良いんだ」ガチャガチャ
剣士「だから殺傷力少ないけど、…傷が治りにくいあたり結構エグいんだよね」

双剣士「そうだ、剣士殿の剣も見せて欲しいのだが、良いか?」
剣士「んあ、どうぞ」スラッ

双剣士「うむ」スッ
双剣士「ふーむ」ジー

双剣士「…」コンコン
双剣士「…」サクッ スパッ

剣士「あ、気をつけて!」
双剣士「案ずるな」

戦士「違う、それ魔力を込めると」ガッチャガッチャ
双剣士「!」ボワッ!

戦士「燃えるんだ」
双剣士「早く言え!」カミガヤケタワ!

双剣士「…なんと見事な剣か…」チリチリ
剣士「だ、大丈夫?」コゲテル…

双剣士「少しだ、構いはせん」
双剣士「が、剣士殿はなかなか良いモノをお持ちだ。切れ味、質量、魔法属性…、大した代物だ」ホゥ

剣士「これは、ここから東の街にいらっしゃる酒場の店主さんが鍛えてくれたんです」
双剣士「何?たかが酒場の店主が鍛えたと言うのか?」

戦士「お前覚えていないか?あの図体のデカい俺の叔父の…」ガチャガチャ ポイッ
双剣士「叔父…図体のでかい…」

剣士「笑い方がへっへっへ、だったよ」
双剣士「へっへっへ…!」

双剣士「あのドラゴンの叔父様か!」
剣士「ドラゴン?」キョトン

戦士「あぁ、アイツが…」
戦士「あ」ガシャン

双剣士「ん?」
剣士「こ?」

戦士「…いや、何でもない」ガチャガチャ
戦士「剣士、今のは忘れろ」ガチャガチャ ポイッ

剣士「い、いやいやいや!無理だよっ!?」

双剣士「何が忘れてくれなんだ?」
剣士「その…、店主さんは戦士さまの叔父さんで、その店主さんはドラゴンだった、ってあたりだと思うんだけど…」

双剣士「んー?知られるとまずいのか?」
戦士「お前…、本当に面倒くさい」ハァ…

双剣士「あん?」
剣士「…実はボクって、あんまり戦士さまの事知らないんだよね」

双剣士「な、何故だ王子!」
剣士「王子!?」

戦士「貴様はもう黙れ!」ガッシャーン
双剣士「何も隠す事はなかろう?」

戦士「好きで隠しているわけでは…」
戦士「あー、だからお前がいるとややこしくなるん…だ」チラッ

剣士「戦士さま…」ススッ
戦士「っ!な、何だ」

剣士「ここまで言われても、ボクにはまだ秘密なの…かな?」ウルッ
戦士「…っ」

剣士「そんなに言えないことなの…?」
戦士「い、いや、そんな訳ではないが…」

剣士「戦士さまは、ボクたちはパートナーだって…言ってくれたけど、なんだか仲間外れみたいで…ちょっと悲しいな…」ニコ
戦士「」ズキッ

双剣士「その時、胸に痛みが走る」
戦士「…」ボリボリ

戦士「あー、その、な、剣士」
剣士「…うん」

戦士「本当は、ここまで隠すような言えない事ではないんだ…よ、うん」
戦士「だけど」

剣士「…だけど?」
戦士「…今の俺は全てを話す資格がないんだ」

剣士「そんな資格なんて…」
戦士「俺が本当の姿でないのが理由だ」

剣士「…魔人じゃないから?」
戦士「あー、うん、元が魔人だから…あ?」

剣士「もう知ってるよ…」
戦士「あ、あぁ?なんだとぉ…」

双剣士「やはりこやつドアホだ」

戦士「いつ、わかった?」
剣士「戦士さまが、魔人の双剣士さんは従姉なんだって言ったあたりには、もう確定かなって思ってた」

戦士「…」
双剣士「自滅ではないか」

戦士「…ならば全て話し」
剣士「でもいいよ、ボクは」

戦士「て……何?」
剣士「戦士さまがまだ話したくないなら、ボクは待つよ」

戦士「剣士…」
剣士「今はその姿だから自信がないんだよね?」

戦士「…」
剣士「だったら、戻ったら話してくれるよね」ギュ

双剣士「おっと、喉が渇いたな」クルッ スタスタ
剣士「…」

剣士「大丈夫、戦士さまの事は絶対嫌いになったりしないから、ね?」
戦士「っ!」

戦士「…はははっ、お前ってやつは」ポン
剣士「んっ」

戦士「本当に、苦労ばかりかけてしまうな」ナデナデ
剣士「…ん」

戦士「こんなしみったれな俺に、良くついて来てくれた」
剣士「そ、そんな事ないっ!」

戦士「いや、そうなんだ。いつも戸惑ってばかりだった」
戦士「だが、もう迷いはない」

剣士「ふぇっ?」

戦士「…が、今は剣士の言葉に甘えさせてもらう」
戦士「俺が本当の自分を取り戻した時、全てを話すよ」

剣士「戦士、さま…」
戦士「…あと、あー、伝えたい事、もある、しな」

剣士「伝えたい事…?」
戦士「そ、それはまだわからなくていい」グッ

戦士「わかっても俺から伝えたいから、絶対に言うなよ」
剣士「…」

戦士「絶対だからな!」クルッ
戦士「…」/// ガチャガチャ

剣士「うん」コクン

剣士「…」
戦士「…」ガチャガチャ

双剣士「ついでにもようしてしまったので少し遅くなったが、話しはもう良いのか?」
剣士「…」ポヤ

戦士「…」/// ガチャガチャ
双剣士「…」

双剣士「戦士殿?」
戦士「うるせえ、忙しいんだ」///ガチャガチャ

双剣士「…」

双剣士「剣士殿…?」
剣士「…」ポヤポヤ

双剣士「もし?」パッパッ
剣士「…」ポヤーン

双剣士「むー…」
双剣士「なんだこの状況は」

剣士「んぁ…」ポヤ
双剣士「剣士殿、しっかりしてくれ」ペンペン

剣士「むぇ…」
双剣士「なんなのだ一体~!」ユサユサ

剣士「あぁあぁぁ…」
剣士「…はっ!」ビクッ

双剣士「お、気がつかれたか」
双剣士「一体何があったのだ?」

剣士「…せ、戦士さまが…ボクを………の……存在……て…」ブツブツ
双剣士「な、なんと申した?」

剣士「存在…大切な…伝える…」エ、エヘ、エヘヘ
双剣士「うむ、心ここにあらず、か…」

双剣士「ふぅむ…」チラッ

戦士「…むー」ガチャガチャ
戦士「たくさんあるが、ろくな物がないな…」ガチャッ ポイッ

戦士「…」
剣士「」ドロ-ン

戦士「…剣士」
剣士「!」ブルッ

剣士「は、はいぃ!!」シャキッ///双剣士「お?」

戦士「すまないが、俺に合いそうな剣を一緒選んでくれないか?」
剣士「…っ!?っ!」アワアワ

戦士「嫌なら別に」
剣士「や、やりゅっ!や、やりますぅっ!」ピョン

戦士「お、おう、助かる」
剣士「はいっ!」ストッ

戦士「…」
剣士「~!」フンフン ガチャガチャ

戦士「ふふっ」ニッ
双剣士「…」

双剣士「ほうほう、これはまた…うふふははっ」ニヤニヤ

戦士「…」ガチャガチャ
剣士「~」ガチャガチャ

剣士「あっ」
剣士「これはどうかな?」
戦士「お、斬馬刀か…、うむ、持ち運ぶには少々重いな」

剣士「そっか」ポイッ
剣士「ん~…」ガチャガチャ
剣士「これは?」
戦士「ハルバード、重さはいいが、どうも長いなぁ」

剣士「ダメかぁ」ペイッ
戦士「…すまないな」
剣士「いいのっ!せ、戦士さまのためだからっ」ニコッ
戦士「あ、あぁ」//
剣士「えへへへ…」///ガチャガチャ
ゴロン…ガチャン
戦士「お?」スッ
剣士「ん?」スッ
ピトッ

「あ」
「…」
「!」バッ

戦士「す、すまん」
剣士「い、いいのっ!」
戦士「…」///
剣士「…っ」//////

剣士「こ、これ、どうかなぁ」ガチャッ
戦士「う、うむ、俺も気になった」ムンズ
戦士「これは、ランスだな」サスサス
剣士「ランス?」

戦士「騎乗で使う槍の事だ」
戦士「だが、どうも普通の物よりやや太めで短いようだ」コンコン
戦士「…」グッ
戦士「ちょっと離れてくれ」

剣士「うん」ススッ
戦士「…ふむ」
戦士「試しにこの木を叩いてみるぞ」ザッザッ
剣士「うんっ」

戦士「…」グググッ
戦士「ふんっ!」ビュオン!
メキャッ!
バキバキバキ…ズドーン!!

剣士「うわぁ!」
戦士「ん、いいなこれ」ガシャン
戦士「よし、これにしよう」
剣士「良かったねっ、戦士さまっ」

戦士「なに、あー、剣士が探してくれたからな。ありがとうだ」ワシワシ
剣士「にゃむ、ふに、うへへへぇっ」///デレッ

双剣士「…」
双剣士「何これ甘酸っぱい」

剣士「でも剣じゃなくなっちゃったね」
戦士「なに、潰す事ができるなら問題ない」

戦士「…ん?ほぅ、どうやらこれは…」
剣士「どうしたの?」

戦士「…」スッ
バチバチッ!

戦士「雷を帯びるようだ」
剣士「わお!すごい!これでボクのとお揃いだねっ!」

戦士「あぁ。これで以前よりお前を守りやすくなる」ガシャッ
剣士「せ、戦士さま…」///

双剣士「私、現在置いてけぼりをくらっている」ハイ
戦士「あん?あぁ、すまなかった、双剣士。居たのか」

剣士「え!あ?ご、ごめんね?」双剣士「いや、別に良いのだが」
双剣士「そうも熱いと…少し妬ましいな…」ボソッ
剣士「ん?」

双剣士「いや、何でもないよ」フフッ

戦士「ありがとう、双剣士。良いのが見つかった」
双剣士「ほう、突撃槍か。貴様らしい」

剣士「あまりはどうする?」
双剣士「そうだな、売っても良いがここは丁重に供養しておこうか」

戦士「お前らしいよ」
双剣士「ふん、これも剣士たるもの、さ」

双剣士「…うーむ、よし、剣士殿、剣を貸していただきたい」
剣士「うん、いいよ」スッ
双剣士「ありがとう」グッ

双剣士「…」スラッ
双剣士「はっ」ボゥッ!

ゴーッメラメラメラ…

剣士「…燃やしちゃうの?」
双剣士「あぁ、武器も主の手元へ返した方が良かろう」

戦士「…」

双剣士「さて、待たせたな」
戦士「いや、遅くなった原因は俺だ」
剣士「いやいや、ボクがグズグズしちゃったから…」

双剣士「いやいやいや」
戦士「いやいやいや」

剣士「…」
戦士「…」
双剣士「…」

剣士「ぷふっ、あはははっ!なにこれっ!」
双剣士「ふははははっ!可笑しいなっ」
戦士「……はははっ」スクッ

剣士「ボクたち、もう仲良しだねっ」
双剣士「あぁ」ニコッ
戦士「うむ」

剣士「よーしっ、この調子で魔物の王を倒すぞーっ!」ピョン

戦士「それはどうかと」
双剣士「それはどうかと」

剣士「えっ」

スペック

戦士:男
がっちり・釣り目・あー、うん・ドアホ・元魔人・大剣→ランス・剣士…///

剣士:女
小柄・ボクっこ・おっぱい・眼鏡・でもお酒の飲めるお年・元隠密・ショートソード・戦士さま…///

双剣士:女
細身・お姉さん・白い長髪・戦士の従姉・魔人・長剣二刀流・ふはは

―西の森―
双剣士「ここら辺も見納めか」カツカツ
剣士「そっか、もう帰れないんだもんね」

戦士「何、奴を倒せば国が戻るじゃないか」
双剣士「そう、であるな」

剣士「ボクたちならきっと倒せるよっ!」グッ
戦士「いや、奴は強力だ。心を操り支配するからな」

剣士「え゛っ!」
双剣士「奴の術で大量の部下を操っているのだからな」

剣士「ふ、普通に強いじゃん~!」
戦士「だからまだ仲間が欲しいな」

双剣士「ふむ、これでは手が足りぬかな」
剣士「うん…」

戦士「あー、あと剣士の鍛錬もだったな」
剣士「う、そんなのあったね…」

双剣士「鍛錬?なら私に任せろ!立派な剣士にしてみせよう!」
剣士「ま、間に合ってまーす!」トトト

戦士「稽古つけてもらえよ」
剣士「え、えぇ…」

双剣士「そう露骨に嫌な顔をされてもなぁ」
戦士「確かに双剣士は面倒なヤツだが、剣の腕は確かだ」

双剣士「それは誉めているのか貶しているのかわからんぞ?」
戦士「俺から頼みたいのだが」
剣士「うーん…」

双剣士「私は構わないぞっ」フハハッ
剣士「…」
剣士「わかりました…受けるよ」

双剣士「おぉ、流石剣士殿」
戦士「あー、だが双剣士」

双剣士「なんだ?」
戦士「先に言っとくが、こいつは並の小娘とは思わないようにな?」

双剣士「はん、当然だっ」
剣士「…」

戦士「でだ、今からさっとだけ村に寄っていく」
双剣士「何故に?」

戦士「お前な、食糧も無しにどうやって行くんだ?」
剣士「そういえば何も準備してないや」

双剣士「そんなもの、狩ればよかろう」
剣士「獣を狩って食べるの!?」

双剣士「何を言っている。人間から剥ぐに決まっているだろ」

剣士「…そ、それは」
戦士「…」ペン


双剣士「あいたっ!?」
戦士「…もし山賊まがいな事をしでかしたら、俺がギルドまで引きずって行くからな」ギロッ

双剣士「か、軽い冗談ではないか~!」
戦士「このドアホ」

剣士「あは、あははは…」

―村―
ガヤガヤ…
剣士「へー、前来た時は知らなかったけど、けっこう賑わうんだね」キョロキョロ
戦士「ふむ」

双剣士「…」モサッ
剣士「うわっ…、双剣士さん?」

戦士「こいつは顔がわれてる可能性があるからな。着てもらった」
双剣士「解せぬ…」

剣士「あはは…まぁまぁ、買い物だけだし、すぐとれ」

女魔術師「あーっ!あんたたちっ!」ユビサシ

戦士「あん?」
剣士「る…」

双剣士「…」モサッ

女魔術師「あんたたち、何でまだこの村に居るの!?」
剣士「キミ…昨日の魔術師さんだよね?」

女魔術師「っ!もしや、また何か悪さしようとしてるんでしょ?」
戦士「おい、人聞きが悪いぞ」

剣士「ボクたち悪さなんてしてないしっ!」
女魔術師「じゃあ何しに来たのよっ」

戦士「南の森までの食糧を調達にだな」
女魔術師「調達…まさかっ!し、食糧を奪いにきたのね!?」

剣士「ち、違うよぉ!」
戦士「うわぁ、この女面倒くせぇー」

女魔術師「今はあたし1人でも、この村を守ってみせるわっ!」
双剣士「…熱い」ムシムシ

剣士「ま、魔術師さん落ち着いて…」
女魔術師「槍使い達が動けない今、あたしがしっかりしなきゃっ!」

剣士「あの…だからね?」
女魔術師「何よっ、あたしは逃げも隠れも」

戦士「少しうるせぇぞ、女」
女魔術師「っ」ビクッ

女魔術師「すす、凄んだって、こっ、恐くないんだからっ」
双剣士「ぶはぁ…、やはりフードは勘弁してくれ」ヌギッ

女魔術師「!」
女魔術師「ま、ままままっ」アウアウ

剣士「おっと」キュ
女魔術師「まむっ!」ンム

剣士「…お願いだから、大きな声出さないで?」パチッ
女魔術師「~っ」コクコク

>>229 店主の笑い方はかっかっか だった

女魔術師「…ホントにただ買い物に来ただけなの?」
剣士「そうなんだってばぁ…」

戦士「南に魔法使いが現れたと言ったよな。これからそこに行くための準備をしていた所だった」
双剣士「まったく、騒がしい小娘がっ」

女魔術師「わ、悪かったわよ…」シュン
剣士「ま、まぁまぁ、昨日あんな事あったしさ。仕方ないよ」


戦士「女、アイツ等はどうしてる?」
女魔術師「槍使いならピンピンしてるわ」

剣士「不死身…すごいね」
戦士「ふん」

女魔術師「あ、斧使いがあんたに会いたがってたわよ」
剣士「ボク?」

女魔術師「…」ジー
剣士「?」

女魔術師「」モニュッ
剣士「ひょわっ!?」

女魔術師「ぐぬぬぅ…、あたしより小さいくせに、立派に育っちゃって…!」モミモミ
剣士「こら、ちょ!や、やめてよぉ~!」ビクッ

女魔術師「今はこれくらいにしておいてあげるわっ」フン
剣士「はぁっ、はぁっ…せ、戦士さまぁ~…」ヨロヨロ
戦士「…」ポンポン
剣士「もう…お嫁に行けないよぉ…」エグエグ

戦士「…し、心配ないから安心しろ」
剣士「うぅ…う?」
双剣士「おやおや」ニヤッ

女魔術師「…そこの魔人」<イマノッテ…
双剣士「なんだ?」<ナ、ナンデモナイ

女魔術師「あんたのせいで刀使いと弓使いは本当に体が不自由になってしまったわ」<ドウイウイミナノカナー?
双剣士「…私は刀と弓を扱えない体にすると言ったはずだ」<コ、コトバノアヤダ

女魔術師「…」<エヘヘ、センシサマヤサシイネッ
双剣士「人間の身で私に挑んだのが間違いだ。身の程を知れ、という所だ」<フ、フン

女魔術師「…冷酷ね」<センシサマァ… ピトッ
双剣士「…」<… ワシワシ

女魔術師「…もう!あんたたちさっきなら何やってんのよ!?」
剣士「えっ?」
戦士「あん?」

女魔術師「さっきからイチャイチャイチャイチャと!うっさいのよ!」
双剣士「…ふふっ」クスッ

戦士「別にイチャついてねぇし」
剣士「ぼ、ボクだってそんなつもり…は、なくも…」ゴニョゴニョ

女魔術師「あらあら」
女魔術師「でもあんたたちっていいコンビよね」

女魔術師「普段はどんなお付き合いなさってるのかしら?」キャハッ
剣士「まま、まだつき合ってないからっ」///
女魔術師「へぇ~」ニヤニヤ

剣士「うぅ…、戦士さまも何か言ってよ!」
戦士「あ?あぁ、普段は一緒に歩き回って、食って、戦って、寝る、そんな感じだな」

剣士「…」
戦士「な、何かおかしいか?」

剣士「絶対おかしいっ!」
女魔術師「絶対おかしい!!」

女魔術師「あんたねぇ!あそこまで言わせておいて、その返しはないわっ!」
剣士「今のは戦士さまが悪いっ!」プー!

戦士「な、何がなんだかわからない」
女魔術師「あんたバッカじゃないの?」

女魔術師「冗談ならまだしも、素でそれなら相当な鈍感よっ!」
剣士「そうだよっ!」

戦士「剣士まで…」
双剣士「…っ…っ!」プルプル

剣士「はぁ、戦士さまは唐変木の流木だって、言われてたくらいだからね…」
女魔術師「あんたも苦労してるのね…」

剣士「魔術師さんも?」
女魔術師「えぇ…」

女魔術師「槍使いなんだけどね?アイツなんか今じゃ最強に目がくらんであたしに見向きもしなくなったわ…」

女魔術師「不死身になる前は、俺がお前を守る(キリッって言ってくれたのに!」
女魔術師「攻撃喰らいすぎて過ぎて脳味噌腐っちゃったのかしら!」モウッ!

剣士「槍使いさん、結構良い人だったんだね」ヘー
戦士「…」

女魔術師「まぁ、すこぶる鈍いヤツだったけどね」
剣士「ふーん」

剣士「えへへへぇ、残念だけどかっこよさなら戦士さまが上だね!」
女魔術師「ほぉ、いってごらんなさいよ!」

剣士「っ…、耳貸して」スッ
女魔術師「?」クイッ

戦士「…」
双剣士「わ、私も聞きたいのだがっ」ウズウズ

戦士「テメェはこれ買ってこい」メモ+オカネ
双剣士「…解せぬ」

剣士「初めて会った時は…始めは……けど……認めて……さまが……ボク……しい…って言ってくれたよへへへっ」ゴニョゴニョ///
女魔術師「な、なんですって?」

戦士「おら、さっさと行ってこい」シッシッ
双剣士「ふん!たった一人の従姉も優遇できないのかっ」ノシノシ

剣士「あと、ボクが…しくて……いてる時は……貸してくれて……優しく…」///
女魔術師「うぅ!聞いてて悔しくなってきたわ!」///

戦士「まだ終わらないのだろうか…」
剣士「待ってー!」

剣士「あとあと、……いつかその時が……大切な…伝え………とか、とかぁ」/////
女魔術師「うわあああああっ!」ムニィ

剣士「ひはいひはいっ!」ギューッ
女魔術師「むかつくわっ!何よ、ちゃっかり上手くいってんじゃない!」

剣士「誰も仲がうまく行ってないなんて言ってませーん」ベロベロバー
女魔術師「きぃーっ!」

女魔術師「あんたたちなんか魔人に邪魔されて別れちゃえばいいのよっ」
剣士「すでにボクの仲間には魔人さんがいますぅ!」

女魔術師「なによっ、なによっ!」ジダンダ
戦士「そう言い争うなって…」

女魔術師「あんたは黙ってなさいっ!」
戦士「す、すみません」

剣士「きっと槍使いさんも落ち着いたら良くなるよ」
女魔術師「う、うん」

剣士「もしね?うまく行かない時はね…」ゴニョゴニョ
女魔術師「…うん…えっ、そんな事」///

剣士「大丈夫、ボクたちは女の子なんだからっ」グッ
女魔術師「…そ、そううまく行くかしら」

剣士「唐変木の流木さんに効くんだから、間違いないよ」ニコッ
女魔術師「っ……ありがとうぅ」フニャ

女魔術師「あたしっ、頑張る!」ギュ
剣士「うん!ボクも応援するよっ」ナデナデ

戦士「仲直り…したのか?ま、まったくついていけない…」

―市場―
双剣士「全く…魔人使いの荒いやつだ」ノソノソ
双剣士「で、何を買えば良いのか」ゴソゴソ

双剣士「ふん…どれも保存性の高い食い物ばかりだな」
双剣士「ん?、これは酒か…王子め、自分ばかり嗜好を偏らせおって」

双剣士「…」
双剣士「うむ、私も何か買ってしまえば良いのか」フハハッ

双剣士「お、ならばあの甘味処を覗いてみるか」カツカツ

――――
双剣士「…」ドーン
双剣士「…少々買いすぎてしまった」

双剣士「あ、あまりにも美味そうな香りを出しているコイツが悪いのだっ!」
双剣士「…」

双剣士「…」
双剣士「…私が悪い、よな」

双剣士「金はまだ半分あるが…」
双剣士「まぁよかろう、食品などそう値は高くあるまい」カツカツ

―道具屋―
双剣士「…な」ワナワナ

双剣士「な、なんだこの値段は…」
双剣士「たかが干し肉が、生肉より高く売られているのか!?」

双剣士「このパンとて、この小ささで通常の倍の値段ではないか!」
双剣士「…」モゾモゾ

双剣士「…」チャリンチャリン
双剣士「うぅ…しくじった」

双剣士「軽はずみな行動が…、まさかこの様に形でしっぺ返しを食らうとは…」ウゥ…
双剣士「…はぅ」ストン

道具屋「…」

双剣士「この金ではひとつずつが限界か…」
双剣士「どうしよう…」

双剣士「…」
双剣士「…」スッ サッ

道具屋「おい」
双剣士「!!」ビックーン!

道具屋「うずくまってどうしたんだい?ねぇちゃん」
双剣士「あ、いや、そのっ…」

道具屋「…まさか万引きしようとは、思っちゃいねぇよなぁ?」ノシッ
双剣士「っ…!」

双剣士「そうだっ!」クワッ
道具屋「な、なに?」

双剣士「盗もうと考えてしまったさ!」
双剣士「無駄な事に金を使い、頼まれた買い物すら達成できぬっ」

双剣士「目的の品はどれも値の張るものばかりで、これでは仲間の分が買えぬではないか!」
双剣士「あぁ、不覚にも盗もうとしたさ!だが、そんな事を考えた自分が不甲斐ない!」ゴロン!

双剣士「自らの行いを恥じて、この身を捧げて謝罪する!さぁ!煮るなり焼くなり好きにしろっ!」ダイノジ!
道具屋「…」

道具屋「えぇ…」

道具屋「ま、待て待て待て!」
双剣士「…っ」グスッ

道具屋「店の真ん中で広がらないでくれよ!」
双剣士「わ、私は盗みを犯そうとしたのだ、ならばっ、ぐすっ見せしめにすればっ、よいっ…!」

道具屋「そんな事しないからさ!な?」スッ
双剣士「…っ…っ」エグエグ

道具屋「…ほら、この保存食が欲しいんだろう!?」ガサッ
双剣士「…」コクン

道具屋「安くしてやるから、起きてくれ!」
双剣士「…許して頂けるのか?」グシッ

道具屋「あぁ、もう無罪放免だから、起き上がってくれ」
双剣士「…」ムクッ

双剣士「…あと」
道具屋「なんだい?」

双剣士「…あれとあれも、まけてほしい」ユビサシ
道具屋「そ、そいつわなぁ…」

双剣士「…ぐすっ」コロン
道具屋「!わかった!安くするから早く出てってくれ!」

双剣士「…あ、ありがとう」フニャ

双剣士「な、何とか頼みの品は揃えられた…」フラフラ
双剣士「…剣士として、何という失態か」

双剣士「後で王子にも叱ってもらおう…」
双剣士「…」フラフラ
双剣士「…して、どこに行けば良いのだろう?」

――――
剣士「じゃあ、槍使いさん達によろしく…言わなくていいや」
女魔術師「そうね…」

女魔術師「あんたたちもせいぜい頑張りなさい」フン
剣士「ありがと」ニコッ

女魔術師「えぇ…じゃ、また」
剣士「うんっ、またねっ!」フリフリ
女魔術師「…ふふっ」ヒラヒラ
剣士「…」フリフリ

戦士「…」ウツラウツラ
剣士「戦士さまぁ!」トトトッ

戦士「…ん」ピクッ
剣士「遅くなりましたぁ」ピョン

戦士「ふぐぉっ!?」グラッ
剣士「あ、ごめんね?」

戦士「い、いや、いいよ」メガネナオシ
剣士「えへへへっ」///

戦士「しかしだな」
剣士「はい?」

戦士「俺は南の森へ行くための食糧調達だと言ったはずなんだ」
剣士「そ、そうだったなー?」

戦士「…あぁ、東にあった太陽が、真上から俺達を照らしてくれるな」マブシイ…
剣士「あ、あの、その…」

戦士「ん?いや、別に俺は怒ってはないぞ?」
剣士「で、でも目が笑ってないよ?」

戦士「昨日戦った相手に何やら俺の事を話して喧嘩したり盛り上がったりしていたようだが、俺は気にしてない」
剣士「それ気にしてるよね!?」

戦士「大丈夫だ。今日の目標はこの街を安全に抜けることにするから」フイッ
剣士「うあー!ごめんなさい戦士さまぁ!」トトト

戦士「なに、食糧調達はすでに双剣士に任せてあるから問題ない」フイッ
剣士「絶対怒ってる~!」トトト

戦士「しかし双剣士遅いな」フイッ
剣士「戦士さま~…」エグエグ

戦士「…」チラッ
剣士「っ…っ…」オロオロ

戦士「…アホめ」クスッ
剣士「うっ…」

戦士「別に怒ってはないと言ったろ?」ミギテ
剣士「…」

剣士「…ごめんね?」ギュ
戦士「ん」ニギ

…カツカツカツカツ…ギュウ!

戦士「!?」グラッ

剣士「?」
戦士「な、なんだ?」

双剣士「お、王子ぃ…」グシュ
戦士「双剣士!?どうかしたのか?」ヒドイカオダナ

双剣士「わ、私は剣、士…ぐっ、失格なのだ…」エグエグ
戦士「い、意味が分からないぞ」ナデナデ

戦士「買い物はどうした?」
双剣士「…っ」スッ

戦士「…うん、買えてるな」ゴソゴソ
戦士「ん?」

双剣士「っ」ビクッ
戦士「なんだこの紙袋」ガサッ

双剣士「そ、それは…」
剣士「…あ、それチョコレートじゃない?」クンクン

戦士「チョコレート?メモには書いた覚えはないぞ?」
双剣士「…」

双剣士「王子…」
戦士「あん?」

双剣士「…私は、剣を置こうと思う」
戦士「あ、あぁ?」

双剣士「そ、そしてギルドに…首をっ、差し出そううぐっ、と思うっ」グスグス
剣士「そ、双剣士さん!?」

戦士「だから話が見えないぞ…」
双剣士「もう、もう私は…」エグッ

戦士「…とりあえず落ち着け」グイッ
双剣士「っ」ポスッ

戦士「こんな街の真ん中では話にならない、場所を移すぞ」
剣士「う、うん」

双剣士「…」

―街外れ―
双剣士「…」
戦士「で、何があった?」

双剣士「…」
剣士「こ、恐い人に追いかけられたの?」

戦士「それはどうかと」
双剣士「ち、違う私はっ」

双剣士「私は、自分の欲望に敗北したのだ…」
戦士「…」

双剣士「あのメモの通り用事を済ませておけば、この様に事には…」
戦士「そこを教えてくれないのか?」

双剣士「…っ」
双剣士「せ、戦士殿のメモの中に、酒と記されてあったのだ」

戦士「ん、まぁ書いたな、確かに」
双剣士「それを見て戦士殿を妬んだ」

双剣士「だから私もつい欲を出してしまったんだ」
双剣士「私は人間の街と無縁の暮らしをしてきた。街を見渡せば辺りには見たこともない食品や道具が売られていて、私は心が踊った」

双剣士「…その時、甘い香りに誘われて買ってしまったのがそれだ」
戦士「…ふぅん」

戦士「で、酒は買えなかったのか?」
双剣士「す、すまない!」ザザッ

戦士「…」
剣士「戦士さま…」

戦士「…まぁ、買えなかったのなら仕方ない」
双剣士「…」

戦士「ただ酒が無かったら今日の夕食が少し寂しくなるだけだしな」
双剣士「…うぅ」ジワッ

戦士「なんだ、それだけか?」
戦士「確かに、お前は街なんか来ることは無いだろうから、魅力的だろう。仕方のないことさ」

戦士「俺はそんな事全然気には…」
双剣士「ち、違う違う!」ブンブン

戦士「は、はぁん?」
双剣士「私は、私が犯したのはそれだけではないのだ!」

双剣士「私はその菓子を買ってしまったため、買い物ができなくなってしまっていた…んだ」
戦士「…」

双剣士「…道具屋について、商品としての保存食の価格に驚いたよ」
戦士「あれは、まぁな」

双剣士「気づいた時の金額では、希望の品は1つずつしか買えなかった」
双剣士「私は…、商品を、か、隠そうとした、してしまった」

戦士「…」
双剣士「そう、盗もうとしたんだっ」ギリッ

双剣士「だが、すぐに店主に見つかってね」
双剣士「…もう自分が恥ずかしい事極まりなかったよ」

双剣士「私はもう剣士として、魔人として、人間より落ちぶれてしまったようだ」ポタッ…
戦士「…双剣士」

双剣士「お願いだ、戦士殿…」
戦士「…」

双剣士「どうか、どうか私を…叱ってくれ」グシュ
戦士「…」

戦士「そうかい」スッ
剣士「戦士さま!?」

剣士「ま、まさか、打ったりしないよね?」クイッ
戦士「そのつもりだが」

剣士「ダメ!そんな事絶対ダメだよ!」ググッ
戦士「…」

双剣士「良いのだ、剣士殿」
剣士「だって!」

双剣士「同族が犯した罪は同族が裁く。私は戦士殿に叱って欲しいのだ」
剣士「だけど…」

戦士「…」
双剣士「離してあげて、くれないか?」

剣士「くぅ…」
剣士「…」スッ

戦士「…」
戦士「いいんだな?」

双剣士「構わない、一思いにやってくれ」
戦士「…よし」

戦士「目をつむれ」
双剣士「…」スッ

剣士「っ」グッ
戦士「…」

戦士「…」
双剣士「…」

戦士「…」ググッ
戦士「~」ハァー…

双剣士「…」
戦士「…」ザッ

双剣士「…」ビクッ
戦士「…」

双剣士「…っ」フルフル
戦士「…」

双剣士「~っ」プルプル
戦士「…」ギュ

戦士「ふん!」ピンッ!
双剣士「ぬゅあ!?」ベヂン!

剣士「わっ!?」スゴイオト
戦士「…」

双剣士「~!!」ジンジン
戦士「よし、終わりだ」

双剣士「そ、そんな、だってこれだけでは!」
戦士「盗みの件は俺が手を下すまでもなく、反省しているのだろ?」

双剣士「う…」
戦士「ただ、剣を置くとかギルドに首を差し出すとかぬかしたから、痛い目にあってもらった」

双剣士「…」
戦士「まぁ、うん、次からは気をつけな」

双剣士「…はい」
戦士「うむ」

戦士「…」
双剣士「…」ヒリヒリ

戦士「…ごめんな」ナデ
双剣士「な、何、問題はない」スクッ

双剣士「…」カツカツ
戦士「…」

双剣士「い、いったぁ~…」

剣士「せ、戦士さま」
戦士「おう」

剣士「デコピンだったんだね」
戦士「なんだ、殴るかと思ったのか?」

剣士「だ、だって打つつもりだって」
戦士「…ありゃあ、アイツが剣士を辞めるみたいに言ったからな」

戦士「それでも、俺は殴ったりはしないさ」
剣士「そっか」

戦士「…だが、少し強く弾きすぎたかもしれん。後で看てやってくれ」
剣士「わかったよ」

剣士「…双剣士さん?」トトト
双剣士「ん、剣士殿…」

剣士「大丈夫?…わ、まっかっか」
双剣士「こ、これくらい痒いくらいだ」ジワッ

剣士「痛みで顔が歪んでるよ…」
双剣士「…くぅ」

剣士「ちょっと待ってね」ゴソゴソ
双剣士「…」

剣士「これ、腫れ覚ましの薬だから…塗るね」
双剣士「ん…」

剣士「…」ヌリヌリ
双剣士「…」

剣士「ガーゼも貼っとくね」
双剣士「…」

剣士「はい、いいよ」
双剣士「…すまない、ありがとう」

戦士「おい」
剣士「あ、はい」

双剣士「…」
戦士「…、そんなに痛かったか?」

双剣士「い、痛くなど、ないっ」
剣士「…」

剣士「…かなり腫れてたよ」コソッ
戦士「そうか…」

双剣士「剣士殿っ」
剣士「あ、あはははは」

双剣士「私は魔人だ、怪我などすぐに治る」フイッ
戦士「そうだな」グニグニ

双剣士「お、押すなっ!」
戦士「はははっ」

剣士「…っ」クスッ
戦士「さて、うだうだしていたからすっかり遅くなったな」

剣士「ご、ごめんなさい」
双剣士「す、すまない」

戦士「とりあえず、南を目指すぞ」
剣士「はいっ」
双剣士「うむっ」

―街外・南―
剣士「南の森を目指すわけだけど、そこまでどれくらいかかるの?」トコトコ
戦士「ん?あー…」スタスタ

戦士「…さぁな」
剣士「え゛?」

戦士「まぁ、普通に行けば2日歩けば着くはずだ」
剣士「な、なんだよー、脅かさないでよー」

双剣士「だが…、南の森の付近とは」カツカツ
戦士「あぁ」

戦士「…」
剣士「ど、どうしたの?」

戦士「俺の…ヤツの城が近い」
剣士「ヤツ…魔物の王…!」

双剣士「南の森に行くとなれば、いずれ魔王の手先との戦いは避けられんな」
戦士「…」

剣士「そうだね…」

戦士「まぁ、とりあえず進めば何とかなるだろ」
剣士「うん!」

戦士「それに早くコイツを使いたい」
剣士「う、うん」

双剣士「そうだ剣士殿!」
剣士「はい?」

双剣士「私との特訓も忘れては困るぞっ」
剣士「…そ、そんな話あったね」

双剣士「思い出したが吉日、今から行おうか!」ズイッ
剣士「で、でも」

戦士「とりあえずあの川に着くまで待て。今日はあの付近で野宿するから、落ち着いてから始めろ」
双剣士「わかったっ」キラキラ

剣士「うへぇ…」フラァ…

―河川敷―
剣士「一応、街から離れてはいるけど、誰かに見られたりしないかなー…」チラッ
双剣士「恥ずかしがる事はない!」

剣士「け、喧嘩に間違われたりとか…」
双剣士「問題ない!」

剣士「戦士さまぁ…」
戦士「あん?ここは林の中だ、存分に稽古してこい」ガチャガチャ

剣士「うぅん…」
双剣士「け、剣士殿は私との稽古は、嫌か…?」シオ

剣士「い、嫌じゃない、嫌じゃないよ!よぉし、がんばるぞー」ブンブン
双剣士「よ、よぉし!始めようか!」

双剣士「まずは剣士殿の実力をみたい、手合わせ願おうか」シャシャッ
剣士「わかった」スラッ

双剣士「さぁ、私を魔王だと思って全力でかかってこいっ!」
剣士「っ」ピクッ

剣士「…よぉし」ストッストッ
双剣士「…」カチン…カチン…

剣士「…」スッ
剣士「」タッ

双剣士「正面から来るか…、良いぞ!」グッ
剣士「」タタタタタ… ビュッ!

双剣士「はぁ!」シュッ!

スルッ

双剣士「っ!」スカッ
剣士「…えへへ、後ろとったよ」チャキッ

双剣士「な、なんと…」
戦士「…ふふっ」

双剣士「…」
剣士「まずは一勝、かな」スッ
双剣士「…なるほど、流石剣士殿、隠密をしていただけはあるな」
双剣士「すまない、侮ってしまった」

剣士「…」
双剣士「次は私、一魔人としてお相手いただきたい」
剣士「お、お願いします!」
双剣士「ふはは、よし」カチン…

剣士「…」スッ
双剣士「…」カチン…カチン…

双剣士「…ふっ!」ヒュッ!
………カッ!
剣士「っ!」バッ
…ボゴッ!

双剣士「やはり避けられるか、良いぞぉ!」ヒュヒュッ!ダダッ
……カカッ!
剣士「ほっ!」クルッ、スタッ

双剣士「はぁ!」ザンッ!
剣士「んっ!」キン!

双剣士「ほらほらほら!」ガンガンガンガン!
剣士「~!」ギンギンギンギン

双剣士「ふん!」ズバッ!
剣士「うっ!」ガヂン!

双剣士「どうした剣士殿!一方的に圧されているぞ!」ビュン!ビュン!
剣士「…」ガギン!ガギン!

双剣士「はあっ!」ザザン!
剣士「っ」シャガミ

双剣士「!」ビュン!
剣士「はあっ!」 ズバッ!

双剣士「ちぃ!」バッ
剣士「」ダン!

双剣士「!」
双剣士「なにっ!?」キョロッ

剣士「」クルクルクル …ゲシッ!
双剣士「ぐあっ!」ドタッ!

戦士「おー」

剣士「」スタッ
剣士「!」

剣士「だ、大丈夫!?」トトッ
双剣士「…」

双剣士「ふ、ふはは…ふははははは!」
剣士「っ」

双剣士「…剣士殿、お強いな」
剣士「ま、まだまだです」アセッ

双剣士「ふふふ、だが…」
双剣士「私もいつまでも負けっぱなしでは面目がないからな」ブワッ ストッ

剣士「…っ」ビクッ
双剣士「もう一度、手合わせ願う」ユラッ

剣士「う、うん」
双剣士「…次は、もっと楽しめるからね」ニッ

戦士「…」

双剣士「フーッ…」カチン…カチン…
剣士「…」ススッ

双剣士「シィ!」ビュオッ!
……ゴッ!

剣士「!!」ブワッ
ガオン! …ボゴーン!

双剣士「きぃぃいいい!」ダダダダダ!
双剣士「ぁあ゛っ!」シュバッ!

剣士「うぅ!」ガギン!
双剣士「とぁ!じぃゃあっ!」ビョッビョオッ!

剣士「っ!」ギン!ザザッ
剣士「このっ!」タッ シュバッ

双剣士「…」ガシッ
剣士「!?」

双剣士「あ゛あっ!」ゲシッ!
剣士「んぐあっ!」ゴッ!

ゴロゴロゴロ…
剣士「うぐ、あぅ…」ゲホッ
双剣士「うふははははっ!」ダダダ!

双剣士「はぁあ!!」シャッ!
剣士「!」グッ

ガギィン!
剣士「…っ!っ?」チラッ

戦士「そこまでだ」ギリギリ…
双剣士「…!!」ハッ

双剣士「わ、私は…」カチャンカチャン
戦士「…」ガシャン

双剣士「剣士!?だ、大丈夫か!?」ザッ
剣士「あ、あはは…、なんとか…」ヒューヒュー

双剣士「す、すまない!実力を見るだけが本気まで出してしまって」ドゲザ
剣士「だ、だいじょうぶ…大丈夫、こんな事、初めてじゃ、ないからっ…」エヘヘッ…イテテ

戦士「…っ」ピクッ
双剣士「そうだ!早く治療!治療を!」ワタワタ

剣士「き、切られてないし、お腹蹴られただけだから、寝てれば、よくな…るよ」クタァ
双剣士「剣士殿ぉ!!」

戦士「…」

戦士「とりあえず俺は剣士を向こうへ運ぶ、お前は手当ての用意を」
双剣士「わ、わかった!」ダッ

戦士「…大丈夫か?」
剣士「…へいき」ニコ

戦士「ん、向こうに連れてくから、抱えるぞ」
剣士「…うん」

戦士「…」グイッ
剣士「んっ!」ズキッ

戦士「…辛抱してくれよ」
剣士「…は、はぃ」

戦士「…」サッサッ
剣士「…っ」

戦士「…」サッサッサッ
剣士「…」

剣士「…」ギュ
戦士「…」サッサッ

戦士「下ろすぞ」スッ
剣士「…んっ」コロン

双剣士「剣士殿、具合は!?」ザッ
剣士「大丈夫だよ、寝てれば治るから心配しないで」ニコ
双剣士「はあぁ…、私は手加減も出来ないのか…」ガックリ
剣士「あ、あはは…」

戦士「…」
戦士「眼鏡、外すぞ」
剣士「あ、はい」
戦士「…」カチ…コトン

剣士「…」ボヤァ
戦士「寝てな」

剣士「…はい」
双剣士「…っ…っ」オロオロ
戦士「お前は大人しくしてろ」
双剣士「…」ピタッ

剣士「………ぅ」
戦士「…」
戦士「…」スルスル
剣士「……?」

戦士「…」ナデナデ
剣士「…」ハゥ…

双剣士「…」スクッ カツカツ…

剣士「…」
戦士「…」ナデナデ

剣士「…戦士さま」
戦士「あん?」

剣士「初めてボクたちが出会った時も、こんな感じだったよね」クスッ
戦士「…む」

剣士「弾き飛ばされちゃうあたり、魔人さんには縁があるよね」
戦士「…そうかもな」

剣士「…」
戦士「…」

剣士「…でも」
剣士「やっぱりかなわないね、勝てないや」

戦士「…」
戦士「お前が弱いんじゃない、相手が悪いんだ」

剣士「それじゃ!」
剣士「…でもそれじゃ、戦士さまのお役にはたてないよ…」

戦士「…剣士」

戦士「お前はしっかり役目を果たしているぞ」
剣士「…だけど、強くなかったら戦えないよ」

戦士「…」
剣士「…ボクは、もっと強くなりたい」

戦士「…」
剣士「…」

戦士「…」ナデナデ
剣士「…」

剣士「…お腹撫でられると、気持ちいい」ハゥ…
戦士「そうか」ナデナデ

剣士「戦士さまの手、ゴツゴツしてるけど優しいね…」
戦士「…」ナデナデ

剣士「…えへへ」
戦士「…」ナデナデ

戦士「…こ、これぐらい、頼めばいつでもやってやる」スリスリ
剣士「!…うん」ニコッ

戦士「…」ナデナデ
剣士「…」

戦士「…」ナデナデ
剣士「…」…スー

戦士「…」
戦士「…」ススッ …スタスタ

戦士「…ふぅ」

双剣士「…はぁ」ドヨーン
戦士「うお?」

双剣士「あ、王子…、剣士殿は…」
戦士「寝ている」

双剣士「そう、か…」
双剣士「…はぁ」ゲヨゲヨ

戦士「…露骨に落ち込んでいるな」
双剣士「それは…仲間を手に掛ける所だったんだ…。落ち込みはする…」

戦士「まぁ、熱くなりやすかったしな、昔からお前は」
双剣士「…面目ない」

戦士「で」
双剣士「…?」

戦士「あいつの実力は測れたのか?」
双剣士「それはもう」スクッ

双剣士「人間の女の身でありながらあの身のこなし、体術は目に余るものがあるなっ」グッ
戦士「そうだな」

双剣士「私を二度も負かして、本気までださせたのだ、まぁ人間相手であれば敵はいないと思うぞ」
戦士「あぁ、間違い無いな」

戦士「…ただ、あくまで人間相手なら、な」
双剣士「…うむ」

―南の森・小屋―
?「…」パチパチ
カサ…

?「…」カリカリカリ
カサカサカサ…

?「…」コトン
カサガサガサリ…キーン…ドゴォオオン!!
ぐああああぁ!!
?「…ふぅ」スクッ

カツカツカツ…ガチャ
魔物「」ブスブス

?「…まったく、学習しない奴らだこと」
魔物「」シュワシュワ

?「新しい魔王さんも忙しいわねぇ。いい加減にしてもらえないかしら」
カサカサカサ…

?「…」
?「もしもーし?」
魔物「があああぁっ!」バッ
?『…消し飛べ』ブワッ

バゴォオオン!!
ぎゃああああああぁ!
魔物「」パチパチパチ…
?「…そろそろ引っ越しね」ハァ…

―夜・河川敷―
パチパチ…
剣士「…ぅ」
剣士「ん」パチ
剣士「…」

剣士「もう…暗いや」ムクッ
剣士「いっ」ズキッ

剣士「あ…あぁ」
剣士「…」ボヤァ

戦士「…剣士?」
剣士「はぁい」

戦士「具合はどうだ?」パサ
剣士「うん、大丈夫です」

双剣士「剣士殿っ!もう起きてよろしいのか?」ズイッ
剣士「だ、大分よくなったよ。もう大丈夫だからね」ニコッ

双剣士「そうか…、よかった…」ホッ
剣士「ごめんね、心配かけちゃって」

双剣士「剣士殿が謝る理由などない!」
戦士「そうだ、このドアホだけ謝ってればいいんだ」

双剣士「っ、…お、王子ぃ…、言い過ぎなのだ…」
戦士「わ、悪かった」
剣士「ふふっ」クスクス

剣士「…ん」
戦士「どうした?」

双剣士「い、痛むか?」
剣士「お…」

双剣士「お?」
剣士「…お腹」

剣士「お腹すいちゃったなぁ!」テヘッ
戦士「…」

双剣士「…」
剣士「…す、す~」

戦士「は、ははははははっ!」
双剣士「ふははははっ!」

剣士「…っ」
戦士「すいたな」

双剣士「であるな」コク
剣士「あ、あの」

戦士「ならば飯にしよう。さぁ出てこい。冷める前に、な」
剣士「…うんっ!」

剣士「うわぁ!すごい!」
戦士「さすが河川敷、野草の宝庫だな」
双剣士「しかし良いのか?」
戦士「あん?」

双剣士「今日買った物を随分奮発したようだか」
戦士「それは、今日は特別だからな」
剣士「特別?」
双剣士「なにかあったか?」

戦士「あー、ほら、うん、双剣士がな」
双剣士「私?」
戦士「仲間になって、ちゃんとした「もてなし」をしていなかったから、な」
双剣士「!」

剣士「あぁ」
戦士「そう言うことだ」

双剣士「王子…」スッ
戦士「…」

双剣士「私の為にこのような催し、その心使い、深く感銘いたしたっ」
戦士「おいおい、お前とは昔からの馴染みだろうに」

双剣士「いや言わせてほしい!及ばすながら、王子の手となり足となり私は」
戦士「はい、双剣士の仲間入りを祝して乾杯」

剣士「えぇっ!?か、かんぱーい」
双剣士「この旅を…ぬあー!?人がせっかく感謝しているのにぃ!」

剣士「っ」ゴクッ
剣士「あれ?何これ?甘酸っぱい」

戦士「悪いな」
戦士「どっかの魔人様がお使い出来なかったおかげで、酒は無いんだ。これは木いちごをすり潰して水で割っただけだ。ま、水よりマシだろう」

双剣士「…うぅ」チビッ
戦士「はははっ、悪かった。もう責めないから」ペンペン

双剣士「ふん」チビチビ
剣士「…」モクモグ

剣士「あ!ならこれは?」ガサッ
戦士「あん?」

剣士「このチョコレート、よく見たらケーキなの!」
剣士「西の国では、お祝い事にはケーキを食べる風習があるって、書でみたことあるよ?」

戦士「…」
戦士「ふむ、なら丁度いいじゃないか」

双剣士「…?」
戦士「ある意味、この買い物は間違いないじゃなかったようだな」

双剣士「そ、そうなのか?」
戦士「お前が選んだものだ。味わっていただこうか」

剣士「うん!」コクン
双剣士「…そ、そうであるな」ニッ

戦士「粗方食事はすんだ。その菓子をいただいてみるか」
剣士「うんっ。はい、双剣士さん」スッ

双剣士「う、うむ」カサ
双剣士「っ」ホワン

剣士「あっ、いい匂い…」
双剣士「…~」ポヤァ

戦士「おい」
双剣士「…はっ!いや、すまん」

剣士「食べてごらんよっ」ワクワク
双剣士「よ、よし」ゴソゴソ

双剣士「…」キラキラ
双剣士「っ」ハムッ

双剣士「…」ムグムグ
双剣士「…」ムグ…

双剣士「!!」

剣士「どう?どお?」
双剣士「…すーーーっ」

双剣士「……………………」
双剣士「……はぁぁぁぁ~」トロン

戦士「…」
剣士「し、幸せそうだっ」

双剣士「はぁぁぁぁ、…甘美」
剣士「~っ!ボクもうたまらない!」アムッ

剣士「!!」
剣士「~~~~~~~~~~」ギュー

剣士「…かんびぃ」フニャ
双剣士「ふははっ剣士殿ぉ、顔がだらしないぞぉ」アハハ

剣士「双剣士さんだってぇ」ウフフ戦士「…なんだこの状況」

双剣士「ささ、王子もお一つ」スッ
戦士「ん」

戦士「…」モグモグ
戦士「ふむ、なるほど美味いな」ワシワシ

剣士「…」
双剣士「…」

剣士「だけ?」
双剣士「だけ?」

戦士「何がだ?」

剣士「…やっぱり男の人にはわかんないんだよねー」ネー
双剣士「そうなのだよ…」ネー

戦士「あぁん…?」

剣士「そだ、双剣士さん」
双剣士「ん、なんだろう?」

剣士「今日の稽古で、ボクの実力としてはどんな感じだった?」
双剣士「あ、あぁ、そうだな」

戦士「…」
剣士「…?」

双剣士「私から言わせてもらえば、予想以上の腕前であった。その強さは間違いないよ」
剣士「そ、そっか」エヘヘ

双剣士「ただし」
剣士「っ」

双剣士「対魔人を考えれば…話は変わる」
剣士「…」

戦士「…例え人間離れの力、技術があったとしても、生半可の傷はすぐ再生する。魔人の厄介な所はその生命力だ」
戦士「まぁ、バラバラにしたり頭潰したり真っ二つにすりゃあ只じゃすまないがな」

剣士「…」

剣士「…」
双剣士「け、剣士殿が力不足なのではない!我々が強すぎるのであってだな…!」

戦士「それは慰めになってないぞ」
双剣士「!?ぐっ、そ、その、剣士殿…」

剣士「…ぷふっ!あははっ!」
剣士「だぁいじょうぶ、気にしてないよ」

双剣士「う、うむ」
剣士「あーそっかぁ、やっぱりダメかぁ」ムー

戦士「…駄目ではないが」
剣士「いいの。…でも、悔しいな」

剣士「もっともっと戦士さまの力になりたいけど、種族の差があるものね」シュン…

戦士「剣士…」
双剣士「剣士殿…」

剣士「いっそのこと」
戦士「…」

剣士「ボクも半魔人になれたらなぁー」エヘヘ
戦士「…」ピクッ

戦士「…何だと?」ジロッ
剣士「じょーだん!冗談だからね?…ごめんなさいっ」

双剣士「だが、悪い話ではなかろう?」
戦士「困る」

剣士「な、う、うぅ…」
双剣士「何故?」

戦士「…」
戦士「こいつには、人間のままで居て欲しいんだ…」

戦士「俺のようにどっちつかずの半端者にはさせたくないからな」
剣士「戦士さま…」

双剣士「…ふむ」
戦士「…」

双剣士「それは」
戦士「あん?」

双剣士「人間のままの剣士殿が良いということか?」
戦士「別に人間と限った訳ではないが…、剣士が剣士のままで居てくれれ、ば…っ」

剣士「…」キョトン
双剣士「ほう」ニヤ

戦士「違うぞ?いや、違うくはないが、いつも通りのこいつが良いというか、種族がどうこう言いたい訳でなくてだな?あー?」
剣士「…」///

双剣士「支離滅裂」フハハハハ
戦士「…ちっ」スク

戦士「片づけしてくる」ガチャガチャ
双剣士「ふはははっ、ご苦労!」
剣士「…ごちそうさま。おいしかった、です」スッ
戦士「あ、あぁ、うん。…良かった」

双剣士「…ふっ」クスッ
戦士「~!」ノシノシ

双剣士「まったく王子は」ニヤニヤ
剣士「あ、あまりからかわないであげてよ」

双剣士「よいではないか、弄り甲斐がある内に弄らなければ勿体なかろう?」
剣士「なんかこっちまで恥ずかしくなるよ…」///

双剣士「おーおー、お熱い事で」ムニムニ
剣士「ど、どこつついてるのさ?」

双剣士「む…」
剣士「…?」

双剣士「王子め…、でかいのが好みなのか?」ワシッ
剣士「うわー!?」ビクン

双剣士「詰め物でないあたり、この発育は憎たらしいな」グニグニ
剣士「や、ちょあっ、はなしっ、あふっ」ジタバタ

双剣士「まったく、これを目の前にしていまだ手を着けないとは…罰でも当たればよい!」

バッチャーン!!
双剣士「!?」
剣士「え!?」

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