―――とある研究施設







　　　　　ｺﾞﾎﾟ……


　　　　　　　　　　　　ｺﾞﾎﾟ……





「どうだ……？　上手くいきそうか……？」





「待って……焦らないで……」


　

　
　　　　　　　　　　　　　　ｺﾞﾎﾟ……




　　　　　ｺﾞﾎﾟ……






「そうだ……ゆっくり……」





「もう少し……」







　　　　　　　　　　　ｻﾞﾊﾟｧ！




孫悟空「ぷはーっ！」



男「やった！　成功だ！」



女「ええ、やったわ！」



悟空「あれ？　おめえ達誰だ？　ここどこだ？」


　

女「あの、これ……」

悟空「お、胴着！　サンキュー！」

男「孫悟空……さん、ですね？」

悟空「ああ、そうだ。おめえらは？」

女「助けてください！　追われているんです！」

悟空「はっ？」

男「おい、いきなり急に」

女「でも……！」



　　　　　　　ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ！



悟空「！」

「おい、いたか！？」　　　「いない、そっちは！？」　





悟空「な、なんだなんだ？」

男「も、もうここを嗅ぎ付けてきてたのか！」

女「お願い悟空さん！　このままだと二人とも殺されてしまうんです！」

悟空「なんかわかんねえけどほっとけねえな」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

　　　　　　　　バァン！


兵士「見つけたぞ！　おとなしくしろ！」ﾁｬｷｯ

男「！！」

兵士「目標が増えています！　お前、仲間か！」

悟空「よっ！」ﾋｭｯ


　　　　　ｺﾞｯ　　　　　　　　ﾄﾞｽｯ


兵士「ぐ……」ﾄﾞｻｯ　　　　　　

兵士「がは……」ﾄﾞｻｯ

女「い、一瞬で……！」

悟空「レッドリボン軍みてえな奴らだな、弱っちいし」



　　　　　　　ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ！



「Ｂ部隊から連絡が途絶えました！」　「反応はどっちだ！」　「こっちです！」



悟空「おっと、まだまだいるみてえだな」

女「早く脱出しないと……」

悟空「オラに任せろ、えっと……」ｽｯ

男「……？」

悟空「……」

女「悟空さん……？」

悟空「……おかしい、悟飯やベジータ達の気をまるで感じねえ」

悟空「皆、どうしちまったんだ？」

男「……あなたの仲間は、一人もいません」

悟空「なに！？」

男「皆、死にました」

女「……」

悟空「まさか……」

　　　　　　　ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ！


「この部屋だ！」　　「突入するぞ！」




悟空「……話は後だ。とにかくここを脱出すっぞ！」

男「ど、どうやって……」



悟空「波ぁぁぁぁぁぁぁ！！！」ｶｯ


　　　　ドガァァァァァァァァァァン！


男「うわ！」

女「きゃっ！」

悟空「二人ともオラにつかまれ！」ﾊﾞｯ

「なんだ今の衝撃は！？」　　「構うな、突入！！」


　　　　　　　　ドォン！


兵士「な、何だ……壁に大穴が……」

兵士「まさかここから飛び降りたのか……？」

兵士「ならば、生きてはいまい」



「いや、奴なら可能だ」



兵士「た、隊長！？」

隊長「噂に聞く、奴なら……」

―――廃墟



悟空「なんとか逃げ切れたかな？」

男「ハァ……ハァ……」

女「空を……飛んだ……」

悟空「大丈夫か？　おめえ達」

男「ああ、平気だ」

女「私はちょっと、休ませて……」ｸﾀｯ

悟空「……」

男「……悟空さん？」

悟空「なんてことだ、ホントに誰の気も感じられねえ……界王さままで……」

男「かいおう……？」

悟空「さっき、オラの仲間はみんな死んだと言ったな？」

男「……」

悟空「何か知ってるなら教えてくれ」

男「はい……」

男「今さっき俺たちを襲った連中は『ホワイトリボン軍』という軍隊です」

悟空「ホントにレッドリボン軍みてえな奴らだったんだな……それで？」

男「そいつらにあなたの仲間は殺されたんです」

悟空「う、嘘だろ！？　悟飯も、クリリンも、ベジータもか？」

男「はい、皆さん実力者だったそうですが……」

女「ちょ、ちょっと！」

男「黙ってろ！　……皆さん、奴らの卑劣な作戦で殺されたんです」

悟空「そんな……」

男「特に、ブルマさんとあなたの奥さん、チチさんは……」

悟空「！！」

男「ホワイトリボン軍に嬲られ、残虐に……」ﾌﾙﾌﾙ

悟空「……！！」ﾜﾅﾜﾅ

女「……」

悟空「界王さまー！！」

女「！」ﾋﾞｸｯ

悟空「本当なのか！？　オラが眠ってる間、そんなことが本当にあったのかー！？」

男「悟空さん……」

悟空「界王さまー！！　教えてくれ界王さまーーーー！！」

悟空「ちきしょー！　なんで答えてくんねえんだぁーーー！！！」ﾄﾞｺﾞｫｯ!

女（なんてパワー……！　これなら……！）

悟空「チチ……悟飯、悟天、みんな……」

悟空「許せねえ……！　あいつら……！」ｷﾞｷﾞｷﾞ…

男「悟空さん、仇を取るためにも、一度俺たちのアジトへ来てもらえませんか」

悟空「嫌だ」

男「！？」

悟空「今すぐあいつらをブッ飛ばさなきゃ気が済まねえ」

女「ちょ、ちょっと」

悟空「おめえらはここで待ってろ」ﾊﾞｼｭｯ

女「あ……」

男「……」

―――ホワイトリボン軍・駐屯地



兵士長「奴らは見つかったか」

兵士「いえ、未だ捜索中です」

兵士長「まずいな……隊長の言うとおりだとすると、相当厄介な事態になった」

兵士「やはり、奴らと一緒にいたというあの男が、例の……？」

兵士長「あの建物は旧カプセルコーポレーション本社だ、恐らく間違いないだろう」

兵士長「しかし奴らにあの技術があったとは……誤算だった」



　　　　　　　　　　ドゴォォォォォン！！


兵士長「！？」

兵士「敵襲です！」

悟空「か～め～は～め～……」ｽﾞｽﾞｽﾞ……



兵士「撃て！　撃てぇぇぇぇぇ！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ！



悟空「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」





　　　　　　ぎゃああああああああああああ！！



　　

兵士「例の男です！」

兵士「なんて火力だ！」

兵士「こちらの攻撃が当たりません！」




悟空「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ！！」



　　　　　　ズガガガガガガガガガガ！





隊長「来たか……」



　

　　　　　ﾋﾟｯ　　　　ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ




男「神の名のもとに」

女「神の名のもとに」

老人『おお……お前たち、無事だったか』

男「ええ、導師。作戦は成功しました」

女「孫悟空は、我々の兵器になりました」

男「単純な男でしたよ。こちらの出まかせに簡単に引っかかりました」

老人『そうか、良くやった』

男「ありがとうございます。ですがアジトまで連れてくることはできませんでした」

女「現在彼は、単独でホワイトリボン軍に攻撃を仕掛けています」

老人『それでよい。あの者の力で地上は浄化されるだろう』

老人『神のご意志は果たされるのだ』

男「はい、全ては神の意のままに」

女「神の意のままに」

悟空「うりゃあああああああああああ！！！」



悟空「お前ら許さねえ！！　くらえ！　死ねぇ！！」






兵士Ａ「ダメです！　止まりません！」

兵士Ｂ「ちくしょう！　どうして奴らに味方するんだ！」

兵士Ｃ「あいつらはただの……」



隊長「お前ら、下がっていろ」



兵士Ａ「隊長！」

悟空（あれ、なんでオラこいつらと戦ってるんだっけ）


悟空（そうだ、こいつらがオラの家族や仲間を殺したんだ）


悟空（許せねえ。許せねえ許せねえ許せねえ許せねえ許せねえ許せねえ）


悟空（界王さまもこいつらに殺されたんだ。わかんねえけどきっとそうだ）


悟空（あれ、上手く飛べねえや。ま、いいか）


悟空（か、め、は、め）




悟空「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」




　　　うわああああああああああああああ！！！！


　

兵士「隊長！！」

兵士長「隊長！！」







隊長「止まれ！！」


悟空「おろ？」


隊長「孫悟空、だな？」


悟空「なぁんでそこにいるんだぁ？」











悟空「ベジータぁ」


　

―――界王星

界王「悟空、か」




界王「ずいぶん久しぶりだな。何十年、何百年……いや、もっとか」




界王「地球の様子が気になったのか？」




界王「お前が気に負うことはない。お前たちは『あの時代』の地球のためによく戦った」




界王「今地球で暴れているアレは、取るに足らん贋物だ」

――――――はるか昔


―――カプセルコーポレーション本社・地下




「英雄の細胞、ですか」


「そうだ。先代社長によると、この細胞の持ち主こそが幾度も地球を救った救世主とのことだ」


「ミスター・サタンではなく？　彼の後継者なら地球中にごまんといるがね」


「道場出身のな。ははは」


「まあ、これが先代社長の遺言なのだ。もし将来地球に危機が迫った時、この細胞から英雄のクローンを呼び起こす」


「そんなこと、あるはずもないでしょうがね」


「社長の親族の細胞も保存してあったな。アレと共に冷凍しておこう」

――――――現在



―――界王星




界王「だが時は過ぎ去り、お前たちの細胞は存在すら忘れられた」



界王「そして世界規模で戦争が始まった今、兵器として呼び起こされた」



界王「だが、余りに長い年月は細胞に経年劣化を起こしていた」



界王「あの贋物はかつてのお前よりはるかにパワーダウンしておる。気も察知できていないのが何よりの証拠だ」



界王「クローン技術はかなりのレベルに発達していたが、１００％お前を再現することはできなかったようだ」



界王「それはあの記憶を消され軍隊に所属しているベジータも同様だろう」



界王「そして、一番の欠損は……」

―――地球




ベジータ？「がはっ……」ﾄﾞｼｬｯ

兵士「た、隊長ーーーー！！」

悟空？「どうしたぁベジータ？　おめぇこんなに弱くなっちまってたのか？」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

兵士「やめろ！　隊長から足をどけろ！」　ﾊﾟﾝｯ　ﾊﾟﾝｯ

悟空？「痛っ！？　……？」　ﾎﾟﾀｯ

悟空？「いてえ……？　おかしいな……？」

兵士「皆、隊長を助けるぞ！」

悟空？「うるせえな」ﾎﾞｯ

兵士「ぎゃあああああああ！！」ｼﾞｭｯ

悟空？「さて、もっと楽しませてくれよ……あれ？」

ベジータ？「……」

悟空？「なぁんだ、もう死んじまってんのか、えーっと……」

悟空？「誰だっけこいつ？　忘れた、もういいや」ｸﾞｼｬｯ

悟空？「さーてっと……あれ？　おめぇ達誰だっけ？」

悟空？「ま、いいか。かたっぱしから死ねよ」

兵士「う、撃てぇぇぇぇぇぇぇぇ！」



　　　　　　　ｽﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ……

　　　　　　バァン！


男「！！」

兵士「見つけたぞ！　テロリスト共め！」

女「もう遅い。我々の任務は果たされた」

男「後はあの男が地上の悪であるお前らを浄化してくれるのだ」

兵士「何を！　我々は世界の平和を願う正義の軍だ！　断じて悪などではない！」

男「ふっ、悪に説法など意味を持たん。かつて果たされなかった偉大なる神のご意志は我々が完遂するのだ」ﾋﾟｯ　ﾋﾟｯ

兵士「ば、爆弾……！　逃げろ！」ﾀﾞﾀﾞｯ

女「すべては古の偉大なる神……」ﾋﾟｯ　ﾋﾟｯ







「ピッコロ大魔王様の名のもとに」


　

―――界王星



界王「何度も言うがお前が責任を感じることは無い」



界王「お前たちはあの時代の地球を必死に守り抜いた。自分たちの生きる時代のために」



界王「今の地球の出来事はすべて今生きている地球人の責任だ。お前たちの力が悪用されていることもな」



界王「さあ、もう地球を見るのは止めよう。こっちで茶でも飲まんか？」



界王「……そうか、行くのか。そのために閻魔に体を用意してもらったんだな」



界王「わかった、行くがよい。きっと５分もいられないだろうが、お前ならば十分だろう」



界王「茶を入れて待っておるからな」

―――地球




悟空？「ひゃはははははは！！　死ね死ね死ねぇ！！」


悟空？「ん？　何だおめえ？　オラと似てるなぁ？」


悟空？「天下無敵のオラの真似して勝てると思ってんのか？」


悟空？「ま、いいや。誰でもいいからオラ戦いてえんだ、相手してくれよ」


悟空？「いくぜ界王拳！　死ねぇぇぇぇぇぇぇ！」






　　　　　　　　　　　カッ





　

―――どこかのアジト





老人「……あの二人、死んだか」


老人「たしか二人ともエイジ７９３７生まれじゃったかのう」


老人「まだ若かったが、神のご意志のお役に立てたのだ。本望だろう」


老人「そう、もう少しだ。もう少しで地上の浄化は成される！」


老人「その時こそ、この７つの丸石が輝き、世界を崩壊から救ってくれるのだ！」


老人「もうすぐ、救いの時はもうすぐなのだ！」







老人「はーっはっはっは、はーっはっはっは……」