一夏「……? 鈴?」(269)


この作品は、フィクションでありisのssです。
作中に登場する人物・組織・団体・国は架空の物であり
実際の物とは、一切関係がありません。

あらかじめ ご了承ください

また、>>1独自のisの解釈や戦術論、及び、キャラクター(is等も)が多数
登場しますが、突っ込みたくなるのを ぐっとこらえてください。

それから、ちょっぴりクロスってますが、あえてその作品は内緒にしておきます。
わかった方は、密かに喜んでください。

最後に>>1はisをアニメでしか知りません。あしからずです。


 ――放課後――

 ――is学園寮・談話室――

鈴「…何でもない」

一夏「ウソ言うなよ。 明らかに元気が無いじゃないか」

鈴「……ほっといて。 お願いだから」



一夏「…あ」

一夏「…………」

一夏(何なんだよ、いったい…) ハア…


 ――is学園寮・ラウラとシャルの部屋――

一夏「…という事があってな」

一夏「二人とも、何か知らないか?」

シャル「…………」

ラウラ「…………」

一夏「…?」

シャル「一夏……、本気で言ってるの?」

一夏「何がだよ?」

ラウラ「嫁よ、最近のニュースは見ているか?」

一夏「ああ…それなりに」


ラウラ「日本の尖閣諸島の事件は?」

一夏「知ってるよ。 また何隻かの中国漁船が、日本の海保の船に体当たりしたってやつだろ?」

ラウラ「一夏…なぜ、そんなに涼しい顔をしていられるんだ?」

一夏「前にもあったし…、今回は、日本の法廷で裁かれるみたいだけどな」

一夏「それがどうかしたのか?」

ラウラ「そうか…。 一夏、ここは以前から領土問題で もめていた場所だ」

ラウラ「中国にしてみれば、自国の領海で操業していた漁船を勝手に拿捕し」

ラウラ「不当に裁こうとしている、と取られる行為だ」


一夏「何言ってんだよ、ラウラ。 だからと言って日本が主張を取り下げたら」

一夏「尖閣が中国の領土だって、認めてしまう事になるじゃないか」

ラウラ「その通りだ」

ラウラ「世界の目から見れば、明らかに非は中国側にあるが」

ラウラ「中国も日本も、引くに引けない状況に追い込まれつつある」

一夏「………戦争になるかもしれないって言いたいのか?」

ラウラ「…そうだ」


一夏「…………」

一夏「大丈夫だよ」

ラウラ「…………」

一夏「そりゃ確かに中国との仲は、険悪になりつつあるけど…」

一夏「国際情勢を考えれば、そんな簡単に戦争なんて出来ないだろ?」

一夏「ましてや、日本には世界の警察、米軍がいるわけだし…」

ラウラ「…普通はな」


ラウラ「だがな、一夏…戦争というものは、きっかけさえあれば」

ラウラ「いとも簡単に起きてしまうものだ」

一夏「…………ばかばかしい」

一夏「起こらないよ、そんな事…」 ススッ…

シャル「どこに行くの? 一夏?」

一夏「鈴の部屋だよ。 大丈夫だって、安心させてくる」


ラウラ「…………」

シャル「…………」

シャル「…育った環境の違い、かな」

ラウラ「たぶんな…」

シャル「…ラウラは来たかな? 本国からの通知」

ラウラ「来た。 おそらく、eu諸国の人間には出されているだろう」

ラウラ「いつでも日本を出国できる準備を整えろ、と…」


 ――is学園寮・鈴の部屋――

     コン コン

一夏「おーい、鈴、いるか?」

鈴(…!) ビクッ

一夏「…………」

一夏「鈴、大丈夫だよ。 …戦争なんて起きないって」

鈴(…………)

一夏「そりゃ、中国と日本の仲が悪くなってるけど…」

一夏「俺たちまで、そうなる必要は ないだろ?」

鈴(…………)


一夏「…鈴、ここを開けてくれ。 一緒に飯でも食おう?」

鈴「……って」

一夏「…? 鈴?」

鈴「帰って!!!」

一夏「!?」

一夏「…………」

一夏「…鈴」

一夏「…………」

一夏「わかった…」

     トボ トボ トボ…


鈴(…………)

鈴「…………一夏」 ピラッ…


     -凰 鈴音殿へ-

 ○月●日より一週間以内に”甲龍”と共に中国に帰国せよ。

命に従わない場合は、反逆行為とみなし、貴殿の父親の身柄を拘束する。

     -在日・中国大使館員○○-



鈴(………だめなの、一夏) ポロッ

鈴(今回は…起きてしまうかもしれないのよ…!) ツー…


 ――翌日の朝――

 ――1組教室――

セシリア「おはようございます、一夏さん」

一夏「おはよう、セシリア」

箒「……おはよう、一夏」

一夏「おう、箒。 おはよう」

一夏「ん…? 箒、なんだか元気がないな?」

箒「………そんな事は無い」

セシリア「…………」

一夏「おいおい…。 2人とも鈴と同じで、戦争が起こるかもしれないって思ってるのか?」

箒「…!」

セシリア「…!」


一夏「大丈夫だって…。 日本には米軍だっている」

一夏「中国が手を出せるわけ無いって」 ニコ

箒「……だと良いのだがな」

一夏「なんだよ、引っ掛かる言い方だな?」

箒「昨日…日本政府から連絡があって」

箒「私に護衛の人間が着くそうだ…」

一夏「……!?」

セシリア「……実は、わたくしに日本からの出国準備をしておくよう」

セシリア「イギリスから通達がありました……」

一夏「!!」


一夏「…………マジかよ」

箒「それだけではない」

箒「中国の代表候補生に近づくな、とも言われている」

一夏「なっ……!?」



山田「は~い、みなさ~ん! 静かに~!」

山田「えーっと、まず、授業を始める前に」

山田「転校生を紹介します。 さ、自己紹介を」

??「…………」 スッ

??「…………」 スッ


 is学園の制服に身を包んだ、二人の少女が教室に入って来る。
二人とも、黒髪のボブカットで、どちらかと言えば可愛い、と言うより
美人、と言う方がしっくりする面持ちだった。



??「はじめまして、田中 和美です」 ペコリ

??「同じく、はじめまして。 鈴木 二葉です」 ペコリ

山田「お2人は、日本の代表候補生で しかも専用機持ちです!」

山田「みなさん、仲良くしてくださいね」

          ハ~イ


 ――休憩時間――

 ――1組教室――

二葉「織斑くん」

一夏「ん?」

二葉「ちょっと…顔を貸してもらえますか?」

一夏「お? おお…いいけど」


 ――is学園・どこかの個室――

二葉「では、織斑くん。 時間が無いので手短にお話します」

一夏「はあ…」

二葉「私はis・ss(シールド・サービス)部隊所属の者です」

二葉「重要人物 保護プログラムに基づき」

二葉「本日付けで、あなたの護衛を仰せつかりました」

二葉「よろしく」

一夏「!?」

一夏「保護プログラム…」

二葉「そうです。 くわしい事は、今夜あなたのお部屋で…」

二葉「話はそれだけです。 教室に戻りましょう」

二葉「私の事は、二葉、と呼んでください」

一夏「…………」


 ――夜――

 ――is学園寮・一夏の部屋――

箒「一夏…」

一夏「…! 箒…。 どうしてここに?」

二葉「私が和美に連絡して、連れてきてもらいました」

和美「……よろしく、織斑くん」

一夏「…………」


二葉「それでは、お話します」

一夏「…………」

箒「…………」

二葉「まず…お二人とも、尖閣諸島の事件は知っていますか?」

箒「もちろん」

一夏「連日、テレビで報道されているからな…」

二葉「……それは正しい情報ではありません」

箒・一夏「!?」

二葉「今、報道規制がかけられていますが、実際の海保の船は」

二葉「中国海軍の艦に魚雷で撃沈されています」


箒「……なっ!?」

一夏「うそだろ!?」

二葉「まだあります。 現在、中国海軍は尖閣諸島に上陸、占領し」

二葉「そのまま駐留しています」

箒「…………」

一夏「ちょっと待てよ! なぜ正しく報道しない!?」

二葉「理由はいくつかありますが、まず、パニックを防止する為と…」

二葉「中国在留邦人15万人を人質に取られている為です」

箒「なんだと!?」

一夏「国際法ガン無視かよ…!」


一夏「…いや、待てよ? 日本にも大勢中国人がいるのに それは成り立つのか?」

二葉「在日中国人は、約70万人います」

二葉「しかも…全員ではありませんが、今、リアルタイムで日本各地で暴動…」

二葉「いえ…ゲリラ戦を展開しています」

箒・一夏「!!!!」



二葉「残念ながら、インターネット等で事実がもれ始めており」

二葉「報道規制は今日、明日中にも解かれるでしょう…」

和美「私達は、各地の暴動在日中国人の中に is工作員が潜んでいる可能性を考慮し、」

和美「篠ノ之博士と その妹、および男性is適正者の身柄を保護する為」

和美「ここに派遣されました」

箒「…………」

一夏「…………」


     コン コン…

鈴「一夏、起きてる?」

一夏「…り」

 口を開こうとした一夏の口をそっと押さえる二葉。
そして、自分の口に人差し指を立て、『シーッ』というジェスチャーをする。

一夏「…………」



鈴「…………」

鈴(一夏……、もう寝ちゃったか)

鈴(…………明日、帰国する前に)

鈴(会えると…いいな)

     テク テク テク…


二葉「…………」

二葉「もう、いいです」

一夏「…………」

箒「これから…どうなる?」

二葉「わかりません」

二葉「沖縄の米海兵隊は、在日米人を救出中」

二葉「明日には、おそらく米軍が第7艦隊を率いて 沖縄に到着すると思われます」

和美「詳しい事は言えませんが、日本の警察・自衛隊は」

和美「現在、各地の暴動鎮圧を遂行中です」

一夏「…………」

一夏「ほぼ…全面戦争じゃないか……!」


 ――翌日の朝――

 ――is学園寮・ロビー付近――

鈴「…………」

鈴「…………あ」

鈴「一夏!」

鈴「…!?」

二葉「…………」 ズイッ

一夏「…おはよう、鈴」



鈴(…見ない顔。 ……そっか、一夏の護衛ってわけね)


一夏「…………鈴の心配通りになってしまったな」

鈴「……………………」

鈴「一夏……」

鈴「あたし…帰国する」

一夏「…………」

鈴「で、ね」

鈴「一つだけ……お願いを聞いて欲しいの」

一夏「…なんだ?」

鈴「………あたしを」

鈴「抱きしめて……」

一夏「!!」


二葉「だめだ。 許可できない」

二葉「中国の代表候補生」

二葉「お前は自分の立場をわかっていない!」

鈴「…そう…だよね」 クス…

鈴「でも」

鈴「それでも」

鈴「お願い…! 一夏…!」

一夏「…………」

鈴「……もうあたしは」

鈴「これで…二度と一夏に…会えなくなる…!」 ポロッ

鈴「お願い…いち、か……ひっく……」 ポロ ポロ




     ギュッ…



二葉「!!!」

一夏「…ごめんよ、二葉さん」

一夏「ほんの少し…目をつむってくれ」

二葉「…………」

鈴「あり…がと、一夏……ぐすっ…………」 ポロポロ

鈴「あたし…………忘れない……から………ひっく…」 ポロポロ

鈴「一夏と…過ごした…ひぐっ…………ここでの……毎日……を!」 ポロポロ

鈴「忘れないから……!!」 ポロポロ

一夏「…………鈴…………鈴」 グスッ…




???「……取り込み中 すまないんだが」



二葉「!? だれだ!?」

一夏「!?」

鈴「!?」

???「なに…。 ただの通りすがりのサラリーマンさ」

???「is・ss部隊のエース、三条…いや」

???「今は 鈴木 二葉 だったかな?」 ニコ

二葉「!!!?」

二葉(…こいつ、何者なんだ!? どうして私の本名を…!?)

???「ふふふ…そう警戒しないでくれ」

???「用事が済んだら、すぐ帰るさ…」 スッ…




 そう言うと、スーツ姿だが体格の良いその男は、口の開いた封書を二つ、差し出した。



スーツ男「凰 鈴音さんだね? 君の親父さんに手紙を託された」

スーツ男「封書の口は、私が開けたのではない」

スーツ男「最初から開いていたんだ…」

スーツ男「別に私に読まれても構わない、と言ってね」 クスッ

スーツ男「もう一通は君に、だ、織斑 一夏くん」 スッ…

一夏「俺に? 鈴の親父さんから?」

スーツ男「ああ…そうだ」

一夏「…?」 ガサガサ…


     いちかえ

 鈴お とめるして ほしい

中国にかえる よくない ぜつたい だめ

鈴わ いちかが すき    けつこん ゆるす

けつこん、だめでも まもる してほしい

おねがい きく してほしい

鈴 しあわせ それでいい

     おつちやんより



一夏(……親父さん)

一夏(…あれ? これで終わりっぽいのに)

一夏(もう一枚あるな?) ガサ…


     翻訳     私の娘、鈴へ

 鈴…元気にしているだろうか? もちろん私は、元気だぞ。

覚えているかな? お隣のフェイさん家の犬…。 ココがお母さんになったよ。

なんと7匹も子犬が産まれたんだ。 一匹どう? と言われたけど、家は

飲食店だからね……。 悪いけど断ったよ。



 この手紙は、普通に送ると お前に届かないかもしれないから

信頼できる日本人の方に託した。 と、言っても店に来ていた常連さんなんだけどな。

でも、お父さん、お客さんを見る目には自信があるんだぞ?


 ……頼みがある。 鈴。

もし、中国政府が、お前に帰国命令を出しても 中国に帰らないで欲しい。

そのまま、日本に留まるんだ。

 なに、お前の持っているisを手土産に、亡命すればいいんだよ。

私の事は心配しなくていい。 たかだかラーメン屋の親父に、いちいち目くじら立てるほど

政府も暇じゃないさ。 だから大丈夫。

 毎週届く、お前からの手紙は、とても明るい内容だ。 お父さん、いつも楽しみにしている。

そして、『一夏』の名前が出なかった手紙がない事にも気が付いてるぞ? ふふふ……。

 そうだよな…。 お前が寝る間も惜しんで勉強して、代表候補生になったのは、

幼馴染の彼の為、だものな……。


 お父さん…、あの時ほど、自分が情けなくなった事は無かったよ……。

私にもっと経済力があれば……鈴に苦労をかけずにすんだのに。

 でも、お前は、そんな私に いつも元気な笑顔を見せてくれた。

いつも 私の事を気づかってくれた。

いつも 「お父さん、ありがとう」 と言ってくれた。

私は……本当にお前に救われた。


 だから私は、お前の幸せを心から願っている。

お前のことだ……。 きっと私を助けようと考えるだろう。

 でも、あえて言う。 お父さんは、それを望んでいない。



 鈴……。 私の自慢の娘よ。 どうか、幸せになってくれ。



              父より


一夏「…………」 グスッ…

一夏「…これ………鈴あての…」

一夏「…あれ?」



スーツ姿の男は、いつの間にか居なくなっていた……。



一夏「……まるで風だな」

一夏「鈴…」

一夏「……!」

鈴「尖閣諸島は中国のものでしょ!?」

一夏・箒「うるさい!!」ボカッ

鈴「うぅっ……せ、尖閣は中国の」

一夏・箒「この……!!」ガシガシ

鈴「尖閣諸島は日本のものです……!!」




          鈴は…

          手紙を握り締めたまま

          泣き崩れていた……



鈴「…………お父さん………」 ボロボロ…

鈴「お父さん……お父さん……お父さん…!」 ボロボロ…


 ――午前中――

 ――is学園寮・談話室――

ニュース「本日、午前7時に政府から発表された戒厳令は」

ニュース「日本全国の都市圏を中心に公布され、暴動を扇動している者を」

ニュース「警察が取り締まって治安維持に努めています」

ニュース「また、在日外国人が出国する為、各地の国際空港、港に人が殺到しており」

ニュース「大変、危険な状況になっています」


ニュース「日本国民の皆さん、どうか落ち着いて行動してください」

ニュース「なるべく自宅から出ないようにし、戸締りを厳重に行ってください」

ニュース「それでは、各地の暴動による被害と 避難所の情報を……」



一夏(テレビは、『組織的な暴動』として取り上げている……)

一夏(昨日までうるさく言ってた尖閣の事も 中国の名前も出てこない)

一夏(is学園も今日は授業を取り止めて、自室待機を命じられている……)

一夏(ここは…自分の家族の安否を心配する娘達でいっぱいだ)

一夏(…………)


 ――is学園・特別対策室――

一夏「千冬姉!」

千冬「バカ者! 許可無く ここに来るな!」

          バキッ!

一夏「ぐっ…!」

千冬「貴様はis・ss部隊の者だろう。 要人に勝手な行動を取らせるな!」

二葉「………すみません」


一夏「…すまねえ、千冬姉」

一夏「どうしても、相談しておきたい事があるんだ」

千冬「…なんだ?」

一夏「鈴の親父さんを救いたい…!」

二葉「」

千冬「…………」

千冬「開いた口が塞がらないな…」

一夏「何とでも言ってくれ…。 ああ…確かに俺は、バカな事を言ってるさ……」


一夏「でもよ…」

一夏「鈴が…泣いてるんだよ……」

一夏「たった一人の、血の繋がった家族の身を案じて」

一夏「ずっと泣いているんだよ!!」

           バキッ!

一夏「ぐはっ!!」

千冬「バカ者が!! そんな立場の人間は、大勢いる…」

千冬「凰、一人だけを特別扱いするな!!」


一夏「…………」

一夏「くそ……くやしいよ、千冬姉」

一夏「どうして俺は……」

一夏「千冬姉みたいに強くないのかな……」

千冬「…………」

二葉「…………」


一夏「俺さ、いろいろ考えてみたんだ」

一夏「俺だけで…鈴の親父さんを 助けられないかなって」

一夏「…………けど」

一夏「自分の見ることの出来る、限られた情報で 俺の実力じゃ…」

一夏「どうやったって…無理だ」



一夏「だからここに来た」

一夏「千冬姉の立場で見られる情報と 千冬姉の実力なら……」

一夏「可能なんじゃないかって…!」

千冬「…………」

二葉「…………」

一夏「頼む、千冬姉…! 俺に出来る事なら、何だってやる!」

一夏「だから、頼む…千冬姉!」 土下座


千冬「……………………」

千冬「…………はあ」

二葉「………………」

千冬「……立て、一夏」

千冬「物事にはな…色々と順番があるものだ」

千冬「私は、凰を特別視していないが…、同時に皆、同じ生徒の一人、として見ている」

千冬「今は話せない…。 だが、手をこまねいている訳ではない」

千冬「それだけは、わかってくれ」


千冬「もちろん お前の力が必要になったら借りるつもりだ」

一夏「千冬姉!」

千冬「だから、それまで大人しく待っていろ。 いいな?」

一夏「…………」

一夏「わかった、千冬姉…」

二葉「…………」


 ――午後――

 ――is学園・地下施設――

千冬「束……」

束「あ、ちーちゃん」

千冬「状況は どうだ?」

束「そうだね…。 日本の自衛隊基地は、一応機能してる」

束「暴動群衆……ううん、その皮を被った中国兵に相当手を焼いてるよ」

束「でも何故か…米軍基地は、ほとんど被害を 受けていないね」


束「そうそう、米軍って言えばさ」

束「沖縄に向かってる第七艦隊の動きも あからさまに鈍いんだよね」

束「とっくに艦載機の攻撃距離に入っているのに」

束「ただの一機も飛ばそうとしない」

束「おまけに」

束「中国艦隊も尖閣諸島から動こうとしないしね」

千冬「……………」


千冬「やはり、お前の言う通りか」

束「ウィキペディア程度で出て来る 情報開示なんて甘甘だね」

束「今回の出来事は、かなり周到に準備された、米中による軍事作戦だよ」

束「中国は尖閣で問題行動を起こし、強引に自国領土にしたい」

束「そうしないと……自国の世論につき続けている ウソがバレるし」

束「何よりも国民の批判が、中国政府に向かいかねないからね」


束「だけど、ここで厄介なのは日米安保」

束「あんまり大っぴらに軍事行動を取ると 自衛隊を相手にしなくてはならないし」

束「何よりも米軍を巻き込んじゃう☆」

束「そこで……在日中国人に潜り込ませた工作員が大活躍!」

束「日本各地で暴動を誘発させ、日本国内を混乱させる」

束「結果」

束「治安維持の為に警察だけでは手が足りず、自衛隊もそれに回される」

束「尖閣に構っていられなくなる」


千冬「そして、『暴動』は日本国内の問題、として扱われ」

千冬「日米安保の対象外……」

千冬「その隙に尖閣は、中国に『いつの間にか』奪われるが」

千冬「米軍は沖縄本島の『防衛』を『存在感』だけで、それを果たした」

千冬「後は、『話し合い』で日中に解決を促す」

千冬「そういう形を取るだろうな……」


束「それにしても日本政府も腐ってるよね」

束「現場の海域に近い海自の三隻の潜水艦は、何度か防衛目的の攻撃許可を求めているけど」

束「現状維持の指示だけだもん」

束「正直、国会議事堂にハープーンでも、ぶち込んで やりたい気分だよ☆」

千冬「珍しく意見が合うな。 私はバンカーバスターを打ち込んでやりたい」

千冬「議事堂には地下壕があるからな」

束「わお! さすがちーちゃん! 抜け目が無いね~!」


 ――夜――

 ――is学園寮・鈴の部屋――

一夏「二葉さん…すみません、わがままばかり言って…」

二葉「まったくです…」 ハァ…

      コン コン

一夏「………鈴、起きてるか?」

鈴「……? 一夏?」

      ガチャ…


一夏「良かった、起きてたか」

鈴「………何? 一夏」

一夏「話がある」

一夏「千冬姉の所に行こう、鈴」

一夏「鈴の親父さんを助ける作戦会議を開くってさ!」 ニコ

鈴「!?」


 ――is学園・仮設ブリーフィングルーム――

千冬「…来たか、凰」

鈴「どういう事なんですか!? 千冬さん!?」

千冬「とりあえず、聞け」

鈴「は、はい…」

千冬「まず…言っておくが、何も凰の父親だけを救う作戦ではない」

千冬「日本政府から要請があってな……」


千冬「大使館員とその家族、および現地、邦人企業の要人等が」

千冬「大勢護送されるという情報を キャッチしたそうだ……」

千冬「我々はこれを急襲し、人質を救出する」

鈴「…………」

鈴「…その中に、父は、いるんですか?」

千冬「ああ」

鈴「!!」

一夏「良かったな……鈴」


千冬「だが…そうそう良い事ずくめではない」

千冬「日本政府に打診した結果、お前の亡命を isと引き換えになら認めるそうだが」

千冬「本作戦において、甲龍の使用は認めないとの事だ……」

鈴「っ!!」

鈴「……そんな」

一夏「千冬姉……!?」


千冬「まあ、最後まで話を聞け」

千冬「実は…な。 束」

束「はいはーい!」 ピョコ!

鈴「!!?」

一夏「!!?」

束「is発明者にして、超☆天才美少女!! 束さんだよ~ん!」

千冬「もうすぐ20代後半だろうが……」


束「ほうほう、キミが、ちーちゃんの言ってた娘だね!?」

束「ほいこれ!」 ドドン!!

鈴「……is!?」

束「これは作ったは いいけど、そのまま放置してた、いわくつきの第三世代型is!!」

束「その名も、白椿(ゆきつばき)!!」

束「もうデータは、摂り尽くしているから邪魔だったの! キミにあげるね☆」 ウインク

鈴「……はあ」

一夏(…束さん。 ぜんっぜん、ありがたみが無いよ……)


千冬「…まあ、とにかく、だ」 ハァ…

千冬「これでお前に作戦参加の機会を与える」

鈴「はいっ!」

千冬「よし…。 学園にあった、お前のパーソナルデータは入力済みだ」

千冬「細かい調整をした後、機体のデータを頭に叩き込んでおけ」

千冬「言っておくが…ぶっつけ本番だから相当きつくなると思う」

千冬「覚悟しておけ」

鈴「はいっ!」

千冬「作戦開始は明日の17:00からだ」

千冬「それでは、本作戦の説明をする。 まず……」


 ――深夜――

 ――is学園寮・一夏の部屋――

     ☆一夏はシャワーを浴びている☆

二葉「今の内に、話しておきたい事がある」

鈴「…なに?」

二葉「お前は……織斑 一夏 の…何なのだ?」

鈴「………一夏は、きっと幼馴染って言うわ」

二葉「お前は、どう思っている?」

鈴「…大切な人」 ///

二葉「……そうか」


二葉「実は……な。 織斑 千冬に お前の父親を助けてくれと」

二葉「織斑 一夏が、懇願しているのを目撃した」

鈴「!!!?」

鈴「どういう事!?」

二葉「どうもこうもない無い……。 そのままの意味だ」

二葉「土下座までしてな」 クス

鈴「…………」


二葉「……大事にしてやるんだな」

二葉「誰かの為に……あんなに真っ直ぐ行動出来る人間を」

二葉「私は 他に知らない」 クスッ

鈴(一夏……)

二葉「さ、そろそろ自室に戻れ。 作戦行動まで時間が無い」

二葉「休める内に休んでおくんだ」

鈴「…うん」

今日はこれで終わります。
>>37、もう1レス後にして欲しかった……。

>>53>>54の間が抜けてた……。


千冬「で……だ。 例の計画の進行状況はどうなってる?」

束「んふふ! もうちっとで終わるよ!」

千冬「本当に中国の核兵器は、心配しなくてもいいんだな?」

束「モチのロンだよ! ちーちゃん!」

束「ま、これで、隠れ家の一つが 使い物にならなくなっちゃうけど」

束「隠れ家は、またいつでも作れるから 気にしないでね!」

千冬「そうか…。 楽しみだな」 フフフ…

千冬「私の可愛い生徒達を苦しめた罪」

千冬「その身で、あがなってもらおう……」

束「今回は束さん、ご立腹maⅩ☆ だから、遠慮しないよー!」

↑を投下し損なってた……不覚。


 ――朝――

 ――is学園寮・談話室――

ニュース「引き続き暴動の続報をお送りします。 午前7:00台の最新情報です」

ニュース「東京、名古屋、大阪、神戸、福岡、札幌などの主要都市では」

ニュース「依然として暴動の沈静化はしておらず」

ニュース「さらには発電所などの……」

          ビューウイ……ザザー……



女生徒達「!!??」

          ザザー…………

女生徒達「ザワ……ザワ……」

          ザザー…… ピーーーープッ……

          ピッ(3) ピッ(2) ピッ(1)


          (音声のみ)

テレビ「……どこの船だ?」

テレビ「中国の……駆逐艦と思われます!」

テレビ「何!? 漁船じゃないのか!?」

テレビ「応援を呼べ! 何か…嫌な予感がする!」

テレビ「近くに『いりおもて』がいます! 後、もう一隻『いしがき』!」

テレビ「よし、警告に向かう!」

テレビ「該当船に、航路設定……」


          ドガアアアアッ!!!

          ワアアアアッ!! ギャアアアアッ!!

テレビ「……ほ、報告!」

テレビ「報告しろ…! 武田!」

テレビ「…!! 武田ァッ!!!」

          プッ…… ザザー……… ピッ…


          (音声のみ)

テレビ「……した!? 『なは』! 応答せよ!」

テレビ「船長! 2時に爆炎を確認! 『なは』のいる辺りです!!」

テレビ「!? ……まさか」

テレビ「攻撃を受けたのか!?」

テレビ「…………」

テレビ「『なは』は、中国の駆逐艦、と言っていたな?」

テレビ「はい」

テレビ「映像を残せ! 撮影を開始しろ! 総員、ライフジャケットを装着!」

テレビ「『いしがき』との映像リンクを忘れるな!」

          プッ…… ザザー……… ピッ…


          (映像つき)

テレビ「…『なは』の沈没を確認!」

テレビ「攻撃該当船、接近中!」

テレビ「総員、警戒態勢!」

テレビ「!?」

テレビ「船長!」

テレビ「1時、雷跡を確認! 魚雷です!! 距離、およそ2000!!」

テレビ「なんだと!? 取り舵! 速力最大!!」

テレビ「だめです! 逃げ切れません!!」

テレビ「距離、1000!!」

テレビ「くっ……! 総員! 海に飛び込め!」

          ドガアアアアッ!!!

          プッ…… ザザー……… ピッ…


          (映像つき)

テレビ「『いりおもて』からのリンク途絶!」

テレビ「……反転180度! 速力最大!」

テレビ「航路、沖縄本島!」

テレビ「船長!!」

テレビ「命令を実行せよ!」

テレビ「くっ……りょ、了解!」

テレビ「……………………」


テレビ「総員、聞いてくれ」

テレビ「『いりおもて』と『なは』の乗組員を 救出したい気持ちは、わかる……」

テレビ「だが」

テレビ「今は、貴重な証拠映像を残してくれた彼らの為にも」

テレビ「我々は……日本国民の為に」

テレビ「泳いででも、這ってでも、『真実』を伝えなくてはならない!」

テレビ「どうか…歯を食いしばって耐えてくれ……!」

テレビ「どうか……」


          プッ…… ザザー……… ピッ…

ニュース「……………………」

ニュース「……え? あっ!?」

ニュース「い、今のは何!? …えっ? ああ…えと……」

ニュース「視聴者の皆様、え、映像が大変乱れました……」

ニュース「心からおわびします…。 そ、それでは、引き続き暴動の続報を……」

          ザワ…… ザワ……


 ――二時間後――

 ――is学園・地下施設――

千冬「どうだ? 束?」

束「だめだね……」

束「日本政府も米軍に要請しないし」

束「米軍にも動きは 全くないよ~」

千冬「……そうか。 期待はしてなかったが」

千冬「やはりショックだな……」

束「ふふん…でも、面白い映像は どっさり収穫したけどね!」

千冬「餌に食いついた、か…」

千冬「よし、束、作戦の第二段階だ」

束「アイアイサー! ポチッとな!」 ピッ


 ――午前中――

 ――is学園寮・談話室――

ニュース「引き続き、暴動のニュースをお伝えします」

ニュース「現在、東京の暴動は 鎮火しつつあり」

ニュース「各地の暴動も それぞれで落ち着きつつあるとの・・・」

          ビューウイ…… ザザー……

モブ子「…!」

モブ美「まただ!」

          プッ…… ザザー……… ピッ…

          ピッ(3) ピッ(2) ピッ(1)


テレビ「…まります。 大沢 一郎 同志」

テレビ「報道は、しっかり押さえてくれなくては……」


テレビ「いやいや…申し訳ない、ワン大使」

テレビ「前回同様、日本人は下の統制がまだまだ甘い様で……」

テレビ「早く中国の様な、言論統制体制を敷きたいですな」 ハハハ…



モブ子「」

モブ美「」



モブ子・モブ美(あれって…大物政治家の 大沢 一郎 議員!?)


テレビ「それにしても、肝を冷やしましたが」

テレビ「アメリカも 静観を続けてくれている様で、安心しました」


テレビ「なに…。 その辺りの根回しは万全ですからな」

テレビ「所詮……あの国の正義など」

テレビ「金で どうにでもなる程度なのですよ」 クッ クッ クッ…


テレビ「さすが、大沢 一郎 …ですな」 ハッ ハッ ハッ!



モブ子「なに…言ってるの…? この人達……」

モブ美「……信じらんない」


テレビ「そうそう……大使。 一つ、問題がありまして」


テレビ「ふむ?」


テレビ「暴動が少し 大きくなりすぎて困っているのです」

テレビ「さすがに…発電所を狙われるのは、好ましくありません」

テレビ「なんとかなりませんか?」


テレビ「……残念ですが、お力には なれませんな」

テレビ「しかし」

テレビ「暴動は、日本国内の問題です」

テレビ「治安維持の為に 犠牲者が出るのは、仕方ありませんよ」


テレビ「ですが……それでは、そちらの工作員にも犠牲者が…」


テレビ「構いません。 代わりは、いくらでもいますからな」

テレビ「工作員とわからない様に死体を処理してくれれば」

テレビ「問題ないでしょう」


テレビ「そうですか…。 それでは、その様に…」

            二人 ハハハ…


 ――is学園・地下施設――

束「上手くいったよ、ちーちゃん」

束「この放送は、今朝のと合わせて エンドレスループ!」

千冬「他はどうなってる?」

束「全世界のネットに 中国の国防費の不正状況や」

束「人権無視の邦人人質および、例の日本巡視船 撃沈の映像を」

束「絶賛☆配信中!」

千冬「よくやった」


束「後、中国国内には それプラス、中国軍 軍事施設の情報や」

束「軍事兵器の弱点、簡単な武器のつくり方とその運用方法なんかも」

束「載せちゃってま~す!」

千冬「どのくらい持ちそうだ?」

束「中国のサイバー防衛機能は 麻痺させてるけど…」

束「復旧に二時間として…半日くらいは持つかな?」

束「日本の方は、一日以上は 余裕だと思う」

千冬「…日本は、良くも悪くも平和ボケしすぎだな」 ハア…

束「配信元の束さんの隠れ家が見つかるのも それくらいかな?」


千冬「これで……」

千冬「中国国内でも暴動が起きればいいが」

束「大丈夫だよ。 元々いろんな火種は、あったんだから」

束「人種差別、民族差別、貧富格差、政府の公金横領……」

束「いつまでたっても 無くならない閉塞感に、もう爆発寸前だった」

束「だからこそ、中国もここまで強引に 事を進めたんだろうけどね」

千冬「まあ、そうだな……」


 ――昼――

 ――is学園・特別対策室――

????「織斑先生、セシリア・オルコットです」

セシリア「わたくし以下、数名の入室許可を いただけますか?」

千冬「許可する。 入れ」

セシリア「失礼します」

シャル「失礼します」

ラウラ「失礼します」


千冬「要件は何だ?」

セシリア「はい。 つい先ほど、イギリス本国から通達がありました」

セシリア「本件において、イギリス政府は」

セシリア「わたくしの身柄を一時的に is学園、並びに日本政府に譲渡する」

セシリア「また、人道的見地に立ち、イギリスは日本国支持を」

セシリア「約束する、との事です」 ニコ

千冬「そうか…」 クスッ

セシリア「わたくしと ブルーティアーズ……どうぞ、存分にお使いください」

ラウラ「我がドイツも支援目的なら、という名目はついていますが」

ラウラ「裁量は、そちらに任せるそうです」

シャル「フランスも同様です」

千冬「うむ…各国政府に 感謝の意を伝えておいてくれ」


千冬「さて…全員揃ったか?」

千冬「いよいよ作戦開始時刻が 近づいているが、各員、準備はいいか?」

一夏・鈴・箒・セシリア・シャル・ラウラ 「はいっ!」

和美・二葉「………………」

千冬「お前達は、どうする?」

二葉「…上からの指示が 特にありませんので」

和美「このまま要人警護を続けます」

千冬「…そうか。 すまないが 頼む」


千冬「では…これより、我々は 海自潜水艦『なだしお』に乗り込み」

千冬「上海沖でisを展開してステルスモードで上陸…」

千冬「後に提供された情報を元に 要人護送車を確保する」

一同「はいっ!」

千冬「護送車の車種と、予想される護衛の数……」

千冬「そして、敵の戦術を頭に叩き込んだな?」

一同「はいっ!」

千冬「よし…いい返事だ」

千冬「行くぞ!」


 ――海自潜水艦『なだしお』艦内――

       ヴヴヴヴヴヴヴヴ…

千冬「皆……朗報だ」

千冬「中国で暴動が発生したと、連絡があった」

一同「…!」

千冬「思ったより遅かったが……規模は 予測より大きい」

千冬「ウイグル、チベット、重慶、南京、四川に上海…」

千冬「ほほう…首都北京にも飛び火してるな」

一同「………………」

千冬「さらに いいニュースだ」

千冬「日本の暴動は、ほぼ鎮火しつつある」

千冬「二、三日後には、戒厳令も解除される見込みだそうだ」

千冬「それと、大沢一郎議員他、数名の議員が行方不明になっているとか」


千冬「さて…凰。 何度もすまないが」

千冬「もう一度、中国の代表候補生の詳細を教えてくれ」

鈴「はい」

鈴「まず…代表候補生は、あたしを含めて全部で8人」

鈴「いずれも最新のis甲龍、もしくは甲龍の派生種型isを装備しています」

セシリア「派生種?」

鈴「あたし達は、甲龍砲撃型って呼んでるけどね」

鈴「正式には 甲龍咆哮型」

鈴「あんたと同じ、中、長距離型の支援特化タイプisよ、セシリア」

セシリア「なるほど……」


鈴「このタイプは、あたしが知る限り、3機確認してるわ」

鈴「…そして」

鈴「1人と1機…こいつは、敵に回したくないってのが居るの」

鈴「そいつは、スピードと近接戦闘を特化したタイプの甲龍……甲龍覇王型」

鈴「空間圧砲を外して、反重力推進と慣性制御を 極限にまで強化した機体よ」

ラウラ「……どのくらいの強化だ?」

鈴「あたしの甲龍を1とするなら……軽く2~3倍の速度が出せるわ」


ラウラ「……イグニションブーストを普通に使っている様なものか?」

鈴「当たらずとも遠からず……って所かしら」

鈴「いずれにしても、詳しいスペックは あたしも知らされていない…」

鈴「一度だけ、あいつとやりあったけど」

鈴「あいつは……わざとあたしに負けたわ」

シャル「? どういう意味?」

鈴「日本のis学園行きのチケットを賭けた、試験模擬戦闘でね……」

鈴「先に言った性能を見せつけられたんだけど」

鈴「あたしは一方的に攻めながら、有効的なダメージを与えることが出来なかった」

鈴「そして…」


鈴「突然、機体不良を理由に棄権したわ」

シャル「…………」

鈴「あたしは腹が立って、あいつにどうして本気を出さなかったのか聞いた」

鈴「そしたらね……」

鈴「『小日本などに行く価値など無い』」

鈴「って、恐ろしい程の殺気を込めた目で言い返されたわ…」

シャル「小日本?」

鈴「単なる侮蔑語よ…。 日本を見下してるの」


一夏「名前、なんて言ったっけ?」

鈴「張 小梅(チャン シャオメイ)よ」

鈴「シャルロットくらいの長さの黒髪で、後ろに三つ編みで束ねてたわ」

鈴「背は、あたしよりちょっと高いくらい…かな?」



千冬「後は可能性だが、それらが我々の前に 立ちふさがるかもしれない」

千冬「こちらの予測では、中国の第二世代機、『白虎』(バイフー)が」

千冬「恐らく護衛に着くと考えているが……」

千冬「心しておいてくれ」

一同「はい!」


 ――尖閣諸島近海――

 ――中国艦隊・旗艦・艦橋――



副艦長「…艦長、米軍から入電」

副艦長「降伏勧告です」

艦長「…………」

副艦長「降伏しましょう、艦長」

副艦長「小日本の我が工作員は、ワン大使の放送を見て、ほとんど降伏しています」

副艦長「本国では、同時多発的に暴動が発生し、治安維持もままならない状況…」

副艦長「我々だけが、ここで奮闘しても無意味です」


艦長「…………」

          ダーンッ……! ドサッ

艦長「ふん…腰抜けの老人めが…」

艦長「だから、お前は副艦長止まりなのだ!」 ガスッ!

艦長「総員、戦闘配置! 対空、対is、対艦戦用意!」

艦長「正義は我にあり! 恐るな! 我々には新型砲がある!」

艦長「戦闘機など、ものの数ではない!」


 ――米軍第7艦隊・旗艦・艦橋――



参謀「……応答、ありません」

参謀「中国の艦隊は、駆逐艦クラスが三隻」

参謀「いずれも戦闘態勢をとっている模様です」

提督「…ふむ」

提督「やむをえん…」

提督「これより、我が第七艦隊は、敵艦隊に対し総力戦を開始する」

参謀「はっ!」


参謀「潜水艦隊、対潜水艦戦用意!」

参謀「f-18、緊急発進、護衛イージス艦、イージスシステム起動!」

参謀「…?」

参謀「提督、日本のイージス艦、及び潜水艦が協力を申し出ていますが?」

提督「………うむ、申し出を受けよう。 イージスシステムリンクを」

提督「潜水艦は 我々から見て、この位置からの攻撃を要請してくれ」

参謀「はっ!」


 ――中国艦隊・旗艦・艦橋――



オペレーター「米艦隊より戦闘機群多数!」

艦長「全駆逐艦、衝撃砲の全砲門を開け」

艦長「目標、敵艦載機群!」

艦長「私の合図と共に一斉射撃せよ!」

艦長「敵潜水艦隊には、誘導機雷を敷設してある」

艦長「海の下の事は、心配するな!」


 ――米軍第7艦隊・旗艦・艦橋――



参謀「提督! 潜水艦隊より入電!」

参謀「広範囲に水中誘導機雷が敷設されており」

参謀「足止めを食らっている模様です!」

提督「…………」

参謀「提督! f-18戦闘機、全機発進完了! 対艦攻撃準備が整いました!」

提督「うむ」

提督「全機、攻撃開始!」


 ――中国艦隊・旗艦・艦橋――



オペレーター「敵艦載機、攻撃態勢」

オペレーター2「艦長! 全艦、衝撃砲の発射準備、完了しました!」

艦長「…うむ。 合図を待て」

オペレーター「敵艦載機、急速接近!」

オペレーター「!!」

オペレーター「艦長! 敵機から、高熱源体が 発射されました!」

艦長「…………」

オペレーター「距離、10000!」


艦長「衝撃砲、発射!」

     ドゴオオオオンッ!

艦長「衝撃砲、そのまま連射モードで迎撃せよ!」

オペレーター「はっ!」


 ――米軍第7艦隊・旗艦・艦橋――



参謀「!? こ、これは!?」

提督「報告せよ」

参謀「はっ! 我が戦闘機部隊の対艦ミサイルが、すべて迎撃……!」

参謀「f-18にも被害が出ている模様です」

提督「……isか?」

参謀「いえ……駆逐艦からの砲撃の様ですが……詳細は不明です」

提督「ふむ……よし、もう一度攻撃を……」


参謀「提督! f-18・デルタ・リーダーから入電!」

参謀「敵は衝撃砲を使っている、との事です!」

提督「何!? …だがあれは、isのコアがあって 出来る事ではなかったか?」

参謀「……私も、その様に記憶しております」

提督(……どういう事だ?)

提督(…………)

提督(…………!)

提督(まさか……砲塔にisのコアを使っているのか!?)

提督(…………)

提督(ありえる……しかもメリットは大きい)


提督(イギリスでも極秘の研究段階に入ったと聞くが)

提督(isのコアを従来のパワードスーツの様に使うのではなく)

提督(大容量のエネルギー施設に直結させる事で)

提督(兵器の大型化を図る、という話……)

提督(…………)


提督「参謀」

参謀「はっ」

提督「中国に譲渡された、isのコアの総数を把握しているか?」

参謀「……確か20個前後だったかと」

参謀「詳しく調べましょうか?」

提督「いや…」

提督「忘れてくれ、今は戦闘中だ……こちらに集中しなくては」

提督「…………」

提督「よし、f-18に帰還命令を出せ」

提督「しばらく様子を見る」

参謀「はっ!」


 ――海自潜水艦『なだしお』艦内――

鈴(もう一度、おさらいして おかないと…)

鈴(白椿(ゆきつばき)……箒の紅椿のプロトタイプとして作られた第三世代is)

鈴(紅椿のセカンドシフトの能力、接触エネルギーチャージを持っているけど……)

鈴(そのチャージスピードは、あまり早くなかった……)

鈴(その代わり、紅椿の様に白式限定ではなく)

鈴(操縦者の任意で、他のisにエネルギーを供給する事が出来る)

鈴(…………)

鈴(でも、武器は 零落白夜無しの雪片二型のみ……)

鈴(完全に後方支援型isね……)


鈴(…………)

鈴(ううん)

鈴(ここに居られるだけでも 幸せに思わなくちゃ)



二葉「実は……な。 織斑 千冬に お前の父親を助けてくれと」

二葉「織斑 一夏が、懇願しているのを目撃した」

二葉「……大事にしてやるんだな」

二葉「誰かの為に……あんなに真っ直ぐ行動出来る人間を」

二葉「私は 他に知らない」 クスッ



鈴(……………………)


一夏「鈴、大丈夫か?」

鈴「……!? い、一夏!?」 ドキッ///

鈴「い、いきなり、話しかけないでよね!」 ///

一夏「わりぃ……。 脅かすつもりじゃなかったんだけど」

鈴「……もういい。 で? 何か用なの?」

一夏「おいおい、用が無いと話しかけちゃダメなのかよ?」

鈴「そうよ」

一夏「……!?」

鈴「一夏、この際だから、はっきり言ってあげるわ」

鈴「今回の作戦は、今までの様な遊びとは 訳が違う」

鈴「あたし達は……人を殺す覚悟がいる」

一夏「…………」


鈴「そうしなければ、味方が死ぬ事になる」

鈴「それが『戦争』よ」

一夏「…………」

鈴「あんたの事だから、あたしを気遣ってくれたんだろうけど……」

鈴「あたしより、自分の事を心配して」

鈴「そして、あんたの白式と対になるis、紅椿の箒と」

鈴「どんな風に連携して敵を殲滅するか」

鈴「その事について、もっと箒と話をして」

一夏「鈴……」

鈴「もういいでしょ? あたしは白椿(ゆきつばき)を どう戦局に応じて使うか」

鈴「その事で頭がいっぱいなの」


一夏「…………」

一夏「………わかった」

     スゴ… スゴ…

鈴「……………………」

鈴(…………これで、いいのよ)



セシリア(…………鈴さん)

シャル(…………)

ラウラ(…………)


箒(…………)

一夏「…箒、いいか?」

箒「ああ……」

箒「一夏、鈴の為にも」

箒「今は、目の前の戦いに集中しよう」

一夏「…………」

一夏「わかっているさ、箒」

箒「よし……」

箒「それではまず、連携だが……」


二葉「…………」

和美「……妙な事になったね」

二葉「和美……」

和美「でもさ、上もわかってて やっているかも」

二葉「……だな。 定時連絡でも 指示を仰いでも」

二葉・和美「『現状を維持せよ』」

二葉・和美「…………」

      ハハハ……

二葉「……不謹慎だな、こんな時に」 クスッ

和美「いいんじゃない? あたし、嫌いじゃないけど。 こういうの」 クスッ


二葉「ところで……和美」

和美「ん?」

二葉「織斑一夏を どう思う?」

和美「保護対象者」

二葉「そういう意味では なくて」

和美「冗談よ。 結構イケメンよね。 残念な所も多いけど」

二葉「残念?」

和美「私の要・保護対象者の 篠ノ之 箒」

和美「あれは、織斑くんに完璧に惚れてるわね」

二葉「そ、そうなのか!?」

和美「二葉はそういうの疎いから、わからなかったと思うけど」


和美「ここに居る、あたし達以外の専用機持ちも多分」

和美「彼に惚の字ね」

二葉「……五股もかけてるのか」

和美「ああ、それちょっと違う」

二葉「?」

和美「なんとなんと、織斑くん、彼女達の気持ちに」

和美「『まったく』気付いてないんだわ。 これが」

二葉「…………」 唖然…

二葉「信じられん……」

二葉「私でも 元・中国代表候補生の気持ちには、気付いたのに……」


和美「けどさ、双葉がそんな話を振ってくるなんて 珍しいわね」

和美「……もしかして、双葉も織斑くんに惚れちゃった……とか?」 ニヤニヤ

二葉「……どうだろう? 私は、彼に惹かれているのかな?」

和美「あら。 意外な反応」

二葉「私だって、まだ十代の乙女だ。 異性に興味くらい抱く」

二葉「正直を言えば……仕事抜きで会いたかった、という所……かな」

和美「ふーん。 そうなんだ」

和美(それって、結構な惹かれっぷりですぞ、二葉)

和美(織斑一夏か……)

和美(がぜん、興味が湧いてきた♪)




※補足説明

和美と二葉のisについて。
二人のisは、ラ・ファール・リヴァイブ・ss(シールド・サービス)カスタムで
防御に特化したリヴァイブだと思ってください。

イメージとしては00に出てきた、ケルディムガンダムみたいなのを
想像して頂ければわかりやすいかと……。

武装は、ライフル等の中距離兵器をなくして 自動小銃系の火器と近接武器
そして、両腕に付けられた大型のシールドです。
カラーリングは、山田先生のやつと同様のものだと思ってください。





スマソ、ここでいったん切ります。


 ――3日後の夜――

 ――中国国内某所――

    ブロロロロッ……

千冬「……ふむ、情報通りだな」

千冬「あの車列の中央、三台のバスに人質が乗っている」

千冬「敵戦力は、装甲車が三台に軍用トラックが二台……」

千冬(思ったより少ないな……?)

千冬(トラックにis装備者が乗っていれば、おかしくはないか)

千冬「よし、作戦は予定通り行う」

千冬「私が先陣を切り、その隙に………」

   ピピピ……ピピピ……ピピピ……


千冬「……いったい何だ?」

     ガチャ

千冬「私だ……ん? 束か?」

束『ちーちゃん! ちょっとまずい事になったよ!』

千冬「!? どうした?」

束『中国のミサイルサイトが、稼働状態に入ってるんだよ!』

千冬「なんだと!? お前は核兵器の心配は、ないと言っただろう!」

束『それは大丈夫。 発射されるのは irbm(中距離弾道ミサイル)だけど』

束『『核弾頭』は搭載されていないから』

千冬「……!? と、いう事は…!?」

束『そう、ミサイル『そのもの』は 発射されるんだよ!』

千冬「くっ……!」


千冬「どれだけの数が、発射される?」

束『84発』

千冬「……!!」

束『完全に誤算だったよ~』

束『他のミサイルサイトは、完全コンピューター制御だったから』

束『束さんの超悪質ウイルスでシャットダウン状態に出来たんだけど』

束『一箇所、東西冷戦の時代に作られた様な、古っる~い奴があって』

束『それが手動で動いているんだよ~』

千冬「…………」

千冬「ミサイルの目標はどこだ?」


束『今調べてるけど……日本の主要都市に向けて10発は確実だね…』

千冬「日本政府の動きは?」

束『日本海に展開してるイージス艦と、米軍のイージス艦で迎え撃つ予定』

千冬「……!? isじゃないのか!?」

束『間の悪い事に米軍の第三世代は、尖閣諸島に集結してる』

束『そして、日本の第二世代の火力じゃ irbmの破壊は難しい……』

千冬「…………」

千冬「成功の確率は?」

束『このタイプのmd(ミサイルディフェンス)は、前例が少ないからね……』

束『良くて五分五分ってとこだと思う』


千冬「……私が行くしかないか」

束『残念だけど、それが一番確実だね』

束『今から、ちーちゃんのisにデータ転送するよ』

束『それから、現状で箒ちゃんの紅椿が 最も最速で航続距離が長いから』

束『箒ちゃんに輸送してもらうのが、後々いいと思う』

千冬「……そうか、わかった」

      ピッ……

千冬「…………」

千冬(だが、篠ノ之は貴重かつ大きな戦力……)

千冬(そして、一夏と離れるのも大きなマイナスだ)

千冬(…………)


千冬「よし みんな、時間がないので手短に話すが……」

千冬「私と篠ノ之で、特殊な任務に行かなければ ならなくなった」

全員「……!」 ザワッ…!

千冬「正直、ここに来て 私だけならともかく」

千冬「篠ノ之まで居なくなるのは、厳しい戦力ダウンだ」

千冬「…………すまない」

一夏「大丈夫だ、千冬姉」

一夏「俺たちで 何とかする。 安心して行ってくれ!」

千冬「一夏……」

     ピピピ……ピピピ……

千冬「データ転送が終わったか…」


千冬「それでは……オルコット、お前が指揮を取れ」

セシリア「…! わ、わたくしが!?」

千冬「うむ……本来は、ボーデヴィッヒに任せたいのだが」

千冬「ボーデヴィッヒには、篠ノ之のポジションに入ってもらいたい」

千冬「できるな? ボーデヴィッヒ?」

ラウラ「はっ! 問題ありません!」 ビシッ!

千冬「現状で ボーデヴィッヒを除いて、isを含めた指揮能力が一番高いのは」

千冬「オルコットと 私は判断する。 頼むぞ?」

セシリア「……わかりましたわ!」

千冬「よし、いい返事だ。 …そしてみんな」

千冬「死なないでくれ……」

全員「はいっ!」


千冬「では、各自isを展開!」

     スウウウウウウンッ!

千冬「篠ノ之、目的地まで頼む」

箒「了解です」 グッ(千冬をお姫様抱っこ)

     ゴウッ!!  ……キィィィィィンッ

シャル「さすが第四世代……相変わらず凄いスピードだね」

ラウラ「うむ。 それでは、セシリア、指示を」

セシリア「わかりました。 まず……」


和美「あ!!」

一夏「!?」 ビクッ!

鈴「何!? 敵!?」

二葉「ど、どうした!? 和美!?」

和美「…………」

和美「あ、あたしの要・保護対象者が……飛んでっちゃった……」

     ……………………

     プッ…アハハハ……!



―――――――――――


一夏「はああああっ!!」

     ズバッ!! ボウンッ!

セシリア「次! ラウラさん!」

ラウラ「任せろ!」

     ドオオオオオンッ!!

ラウラ「よし! 足は止めた!」

シャル「油断しないで! トラックから敵が出てくるよ!」

     バッ! ダダダダダッ…

鈴「!?」

和美「男!? 白虎(バイフー)じゃない!?」


敵兵「総員! リミッターを解除しろ!」

     ブバババッ!! ビリビリビリ!(敵の軍服が破れる音)

敵兵「護送車を死守するんだ!」

セシリア「戦闘用サイボーグ!?」

ラウラ「停止結界!!」

     ピシイイイッ!!

敵兵「グッ!?」

ラウラ「誰でもいい! 手足を切断しろ! それで無力化できる!」

一夏「わかった!」

     ズバッ! ズバババッ!

ラウラ「次っ! 停止結界!」



―――――――――――


一夏「はあ、はあ、はあ、はあ……」

ラウラ「はあ、はあ、はあ、はあ……」

セシリア「お疲れ様です、一夏さん、ラウラさん」

シャル「こっちも終わったよ!」

和美「装甲車と 乗っていた兵士の武器と 通信機は、無力化したわ」

二葉「よし。 上々だな」

鈴「みんな! 今の内にシールドエネルギーのチャージをしておくわ!」

鈴「あたし達の任務は、まだ終わったわけじゃない」

セシリア「! そ、そうですわね! 気を引き締めませんと!」

一夏「……よし、頼む、鈴」

鈴「うん……」


 ――中国軍・ミサイルサイト周辺――

     ゴオオオオッ!

箒「! 千冬さん! あれを!」

千冬「くっ! もう打ち上げ始めている!」

千冬「1…2……大体10発くらいか……! あれにはもう、追いつけない……!」

箒「なんて事だ……!」

千冬「だが」

千冬「残りはすべて、叩き落とす!」

千冬「暮桜!!」 スウウウウウウンッ!!

箒(こ、これが、千冬さんのis、暮桜!)


千冬「篠ノ之、お前はここで待機だ」

箒「え!? し、しかし!」

千冬「二度は言わん。 お前には、帰りも働いてもらわなくては ならんからな」

箒「! …分かりました」

千冬「では……行ってくる」

     ゴウッ!!

箒「は、早い……」

箒(千冬さんのisは、第一世代のはずなのに……)

箒(…………)

箒(いや、今は、そんな事どうでもいい)

箒(どうかご無事で……千冬さん)


 ――中国国内某所――

    ブロロロロロッ……

セシリア「みなさん、警戒態勢を維持してください」

セシリア「このまま海自潜水艦『なだしお』との合流ポイントまで急ぎますわよ!」

鈴「…………」

シャル「…………」

シャル「…………鈴」

シャル「差し出がましいようだけど、いいの?」

シャル「鈴のお父さん……二台目のバスに居るよ?」

鈴「…………」

鈴「……ありがと、シャルロット」


鈴「でも…今、会っちゃうと……緊張の糸が切れちゃいそうだから……」

鈴「『なだしお』に戻ってからにする」

シャル「……うん。 そう……だね、その方がいいのかも」

シャル「邪魔しちゃったね……じゃ……」 ヒューン…

鈴「ううん……」



一夏「…………」

シャル「…ゴメン、一夏」

シャル「やっぱり無理だった……」

一夏「…いや、いいんだ。 シャルのせいじゃないよ」

一夏「むしろ、俺達の方が 鈴以上に気を引き締めないとな」

シャル「そうだね」 クスッ


ラウラ「!?」

ラウラ「これは!?」

ラウラ「みんな! 気を付けろ!」

ラウラ「何かが高速で接近して来るぞ!」

セシリア「!!」

セシリア「数は!?」

ラウラ「一機だけだが……とんでもなく早い!」

ラウラ「箒の紅椿と同等か、それ以上の速度だ!!」

一同「!!!!」

一同(まさか…!)


セシリア「ラウラさん! 接触までの時間は!?」

ラウラ「もう、1分無い!」

セシリア「くっ……!」

セシリア「バスを運転している自衛隊員さん! 出来るだけ目標ポイントへ急いでください!」

セシリア「わたくし達は、ここで追っ手を食い止めます!」

自衛隊員「了解! ご武運を!」

セシリア「各員、y字型フォーメーション!!」

セシリア「敵と認識しだい、わたくしを含めたisの長距離射程武器で先制攻撃しますわ!」

セシリア「鈴さん、確認を!」

鈴「わかったわ!」


鈴「ラウラ! リンクよろしく!」

ラウラ「任せておけ! シュバルツェア・レーゲン、最大望遠!」

鈴「リンク確認……」 ピピピ……

鈴「…………」 ピ……ピ……

鈴「!! 間違いない!!」



鈴「張 小梅(チャン シャオメイ)の甲龍覇王型!!」



一夏「おいでなすったか…!」

シャル「高速戦闘に極限まで特化した機体……」

和美「会いたくなかったなぁ……」

二葉「ぼやくな、和美」


セシリア「ラウラさん! シャルロットさん!」 バッ!(スターライトmkⅢ)

ラウラ「わかっている!」 ギュン!(キャノン砲)

シャル「こっちもokだよ!」 スチャッ!(アサルトライフル)



     ドギュウンッ!! ドォンッ!! ダン!ダン!ダン!



セシリア「くっ!」

ラウラ「あの速度で回避運動だと!?」

シャル「どれだけ慣性制御機能を上げたら、あんな動きが出来るの!?」


セシリア「まだですわ!!」

セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュンヒュン!!



     ズギュウンッ! ズギュウンッ! ギュギュウンッ!

              バチィッ!!



シャル「!! 命中した!」

セシリア「よし! 足を止めましたわ!」

ラウラ「上出来だな!」


和美「……!?」

二葉「ちょっと待て! 奴の速度は落ちてないぞ!!」

一夏「!?」

鈴「!?」

     ギュンッ! バッ!



小梅「…………」



セシリア「そ、そんな!?」

ラウラ「確かに、ブルーティアーズのビームが命中したはず……!」

シャル「ど、どうして!?」


二葉「詮索は後だ!! 攻撃しろ!!」

シャル・セシリア・ラウラ「!!」

ラウラ「停止結かっ……」

     ギュンッ!! ドゴオッ!!

ラウラ「ぐっ!?」

     ギュンッ!!  ドガッ! バキッ! グボォッ!!!

ラウラ「あああああああああああああああっ!!!」

一夏「!! ラウラ!!」 バッ!!

小梅「…………」 ヒョイッ

一夏(くっ……!! 何だよ、このデタラメな速さは!!)


シャル「このぉっ!!」 タタタタタタタ……!

和美「くっ……!」 タタタタタタタ……!

二葉「当たれっ!!」 タタタタタタタ……!



小梅「…………」 回避! 回避!



シャル(だめっ……! 当たらない!!)

和美(それに、あの速度で動き回られたら……!)

二葉(同士打ちの危険性があるっ……!!)


セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュン ヒュン!

     ズギュウンッ! ズギュウンッ! ギュギュウンッ!

              バチィッ!!

セシリア「よしっ!!」

鈴「!?」

鈴(何!? 今の違和感!?)

ラウラ「……くっ! これでも食らえっ!!」 ワイヤーブレード!!

     ヒュヒュヒュ……ガシッ!

ラウラ「なっ!?」

ラウラ(ワイヤーブレードを掴まれた!?)

小梅「……はあっ!!」 グイッ!!

ラウラ「ぐうっ!?」


小梅「双天牙月!!」 シュン!

ラウラ「甘いっ! 停止結界!!」

     ブンッ!!

ラウラ「!?」

一夏「双天牙月を投げつけた!?」

シャル(いけない!)

セシリア(aicの弱点を知っている!?)

ラウラ(ワイヤーブレードを掴まれて 思う様に動けない上に)

ラウラ(双天牙月か、本体のどちらかしか止められん!!)

ラウラ(……ならば、本体だ!!)

ラウラ(本体を止めれば、皆が援護して……!) バッ!!

     ヒュン!!


ラウラ「!?」

小梅「……その迷いが」

小梅「スキを生む!!」

     ドグオッ!!!

ラウラ「あああああああああああああああああっ!!」 スウウウウウウンッ…(is停止)

     ドサッ…

セシリア「ラウラさん!!」

一夏「このおっ!!」 ブオッ!

シャル「くっ!!」 ダン ダンッ!

小梅「…………」 回避! 回避!


     ズギュウンッ! ズギュウンッ! ギュギュウンッ!

              バチィッ!!

セシリア(どうですのっ!? これで3発目ですわ!!)

鈴「……!!」

小梅「…………」

鈴(やっぱり、効いてない!?)

     ゴウッ!! ドガガガガガガッ!!!

シャル「あああああああああああああっ!!」 スウウウウウウンッ…(is停止)

和美「きゃああああああああああああっ!!」 スウウウウウウンッ…(is停止)

二葉「和美!! シャルロット!!」

二葉「このぉっ!!」 タタタタタタタッ!


セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュン ヒュン!

鈴「セシリア! 待って!!」

セシリア「!? 鈴さん、何ですの!?」

鈴「小梅(シャオメイ)の機体、何か変だわ……」

鈴「さっきから、セシリアの攻撃しか当たってない」

鈴「……ううん、セシリアの攻撃を わざと食らっている様に見える!」

セシリア「……!?」

セシリア(そういえば、ビームの直撃を3発も喰らいながら)

セシリア(平然と動き回っていますし……)

セシリア(機体に損傷が全く無いのもおかしい……!)


小梅「……いい判断だ、凰」

鈴「……!」

一夏「どういう事だ!?」

小梅「さすがは、一年、という短期間で」

小梅「我が国の代表候補生に登り詰めただけの事はある……」

小梅「だが!」 ゴウッ!

鈴「くっ!?」

     ドガッ!!

鈴「……っ!!」

小梅「貴様、何だ、その機体は?」

小梅「我が国の”甲龍”を小日本に売ったか?」

小梅「売国奴め!!」 ドガァッ!!

鈴「ああっ!!」


一夏「鈴!!」

二葉「鈴!!」

セシリア「鈴さん!!」



一夏(イグニッション・ブースト!!) ギュンッ!!



小梅「!!」

     ズガァッ!

小梅(……瞬時加速! あなどれん!)

一夏「くそっ……! 浅い!」


二葉「大丈夫か!? 鈴!?」

鈴「ええ……平気よ」

鈴「白椿(ゆきつばき)は、思った以上に 頑丈に出来てるわ」

セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュン ヒュン!

鈴「!! セシリア!!」

     ズギュウンッ! ズギュウンッ! ギュギュウンッ!

              バチィッ!!

小梅「…………フッ」

セシリア「!?」

一夏「なっ……!?」

二葉「……損傷が、回復した!?」


小梅「驚いた様だな……」

小梅「そう……これが甲龍覇王型……」

小梅「武装を減らした代わりに、高速近接戦 特化と」

小梅「粒子エネルギー吸収・自己修復機能を搭載した」

小梅「最強のisだ!!」 ゴウッ!!

     ガキィ!!

二葉「……何が最強のisだ!」

二葉「私の盾を砕けない段階で、最強などではないっ!!」

     タタタタタタタッ!

小梅「ちっ! 日本鬼子め!!」


セシリア「最強など、片腹痛いですわ!」

セシリア「あなたなどより、織斑先生の出す罰則トレーニングの方が、まだ怖いですわ!」

一夏「ハハッ、言えてるな!」

鈴「みんな! 小梅(シャオメイ)は、あれだけの装備を積んでいる!」

鈴「武装は、おそらく双天牙月だけよ!」

鈴「そして、ビーム兵器は通じない! 実体弾で攻撃をして!」

鈴「必ず、ここであいつを止めるよ!!」

小梅「…………」

小梅「…………ふっ」

小梅「フハハハハハハハッ!!」


一夏「……!?」

セシリア「何が可笑しいんですのっ!?」

小梅「いや……何」

小梅「あまりにも滑稽でな……」

二葉「滑稽……だと?」

小梅「哀れな日本鬼子達は、罠にかかっている事に」

小梅「今だに気がついていないのか……と思ってな」

二葉「……!?」

鈴「!? ……まさか!」

鈴「おとり……なの? 要人護送そのものが!?」


小梅「さすがだな、凰 鈴音」

小梅「その通りだ」

一夏「……!」

セシリア「……だとしたら、わたくし達も舐められたもの、ですわね」

小梅「ふん……すでに半数近くやれていては」

小梅「説得力も無いがな」

セシリア(くっ……!) ギリッ…

二葉(奴の……いや、中国の狙いは)

二葉(戦闘データの蓄積と 我々のisの拿捕)

二葉(そして、世界唯一の男性is適性者、織斑一夏の捕獲!!)

鈴(…………)


鈴(だけど……違和感がある)

鈴(何故、小梅(シャオメイ)は、単機で来たの?)

鈴(いくら強くても 援護も無しなんて……無茶すぎる作戦だわ)

鈴(……!!)

鈴「……小梅(シャオメイ)、あんた無断で来たのね?」

小梅「…………」

一夏「どういう意味だ? 鈴」

鈴「今、中国は混乱状態。 つまり命令・指揮系統は、相当乱れているはず……」

鈴「そんな中で、あたし達の情報をキャッチしたけど」

鈴「上層部の命令を待たずに彼女は、行動を起こした」


二葉(……なる程。 手柄を立てれば、不問にされると思ったのか……)

セシリア(せっかくのチャンスを 逃したくなかったのですわね)

一夏「……て事は、さっきの罠、とかいう話は」

一夏「ハッタリっつー訳だな……」 スッ…

小梅(……ちっ)

二葉「…………」 スッ…

セシリア「…………」 スッ…

鈴「…………」 スッ…


二葉「はあっ!」 タタタタタタタ!

小梅「…………」 回避!

一夏「だあああああああっ!!」 ブオッ!!

セシリア「これでっ!」 バシュウ!!(ミサイル発射)

小梅「ふん……」 回避!



鈴(くっ……! とは言うものの、こちらの実体弾系の主力は、すでに……!)

鈴(あっさり自分の機体の装備を暴露したのは、自分の優位性を確信していたから)

鈴(どうしたらいいの……!?)


一夏「くそっ! はあああああああっ!!」 ババッ!!

小梅「どうした? さっきのを もう一度やらないのか?」 回避!

一夏「……!」

小梅「フフフ……瞬時加速は、恐ろしくエネルギーを消費する技……」

小梅「使えても後2回……という所なのだろう?」

一夏(…………)

一夏(落ち着け……あいつは、ああやって 俺の動揺を誘っているに過ぎない)

一夏(今は……チャンスを待つんだ!!)

一夏「だあああああっ!!」


二葉「……鈴、ひとつ手がある」

鈴「! ……聞かせて」

二葉「奴は、さっきの会話で こちらは、もうビームを使わないと思っている」

二葉「その虚を突くぞ」

鈴「!? どうやって!?」

二葉「あいつがスキを見せた際に、シールドを投げる」

二葉「後は……わかるな?」

鈴「!! わかったわ、セシリアに伝える!」

二葉「頼んだぞ」 ゴウッ!


小梅「どうした! その程度か!!」

     ギィンッ! ガァン!! ガギィッ!!

一夏「くっ、くそっ!!」

鈴「一夏!」 ブオッ!

小梅「!! ちっ!」 回避!


一夏「はあ、はあ、はあ……す、すまない、鈴」

鈴「一夏、手短に話す」

     ゴニョ ゴニョ ゴニョ……

一夏「はあっ!? マジで言ってるのか!? それ!?」

鈴「あいつは、免疫無さそうだから 効果は有るわよ」

鈴「……たぶん」

一夏「無かったら……相当、間抜けだぞ、俺……」

鈴「いいから やんなさい。 あんたにしか出来ないのよ」

一夏「……わかった」

鈴「任せたわよ」 ヒュン…

一夏(自信ねえなぁ……) ハア…


小梅「はああっ!!」

     ガァンッ!! ギィンッ!! ゴガンッ!!

二葉「ぬぐっ……! このっ!!」

小梅「当たらんっ!」 回避!

二葉「ちっ……!」

二葉(防御主体のこの装備では、やはり無理か……!)

鈴「二葉っ!!」

二葉「!!」

二葉(よし……準備が整ったか!)


鈴「一夏! 始めて!!」

一夏「!……気は進まないが、わかった!」 ゴウッ!

小梅「……?」

小梅(何をする気だ?)



一夏「…………」 ピタッ…

小梅「!?」

一夏(え~とっ……爽やかな笑顔で……)

一夏「ウォーアイニー小梅(シャオメイ)……」 ニコ
   (「愛してる、小梅(シャオメイ)」)

小梅「……!?」 ///

二葉「今だ!!」 ブンッ!(シールド投てき)


小梅「ぬっ!?」 回避!

小梅「ば、馬鹿め! そんな攻撃など……」



     ズギュウンッ! ズギュウンッ! ギュギュウンッ!

               ボウンッ!!!



小梅「!!!?」

小梅「あああああああああああっ!!」

小梅(シ、シールドが、爆発した!?)

小梅(!! ……あの白人が、シールドをビームで破壊したのか!)


セシリア「今ですわ!」

鈴「一夏!」

二葉「行けぇ!!」



一夏「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」 イグニッション・ブースト!!



小梅「!!!」

小梅(さっきのダメージで、機体の速度が!!!)



     ズガァァァッ!!!





小梅「ぐああああああああああっ!!!」

鈴「よしっ! 決まった!!」

セシリア「さすが、一夏さん!」

二葉「気を緩めるな! 奴のisは、まだ機能停止していない!」

一夏「とどめ!」 ブオッ!

     ガギィッ!!

一夏「!!」

小梅「……なめるなぁ!!」 グアッ!!

     ピピピ……甲龍覇王型 セカンドシフト

     モード   破 天 轟 雷


セシリア「!?」

二葉「セカンドシフトだと!?」

鈴「くっ……!!」



     ゴウッ!!! ガシィッ!!!



二葉「ぬぐっ!?」

セシリア「二葉さん!!」

     ズギュウウウウウウウ……!

二葉「!?」

二葉「ば、バカな!?」


     スウウウウウウンッ……(二葉のis、機能停止)

セシリア「!!?」

一夏「いっ、いったい何が!? やられてた所も修復したぞ!?」

鈴「……! ま、まさか……!」



二葉「気を付けろ! シールドエネルギーを吸い取られた!!」



三人「!!!!」

小梅「くくく……」

小梅「ハハハハハハッ!!」


一夏「このぉ……二葉を放せ!!」 ゴウッ!!

小梅「ふん……」 ポイッ…

二葉「ぐはっ……!」 ドサッ…

一夏「……!!」

     ガキンッ!! ゴガッ!! ギギンッ!!

小梅「フハハハッ!! 人質など必要ない!」

小梅「私のisは、最強なのだから!!」

一夏「く、くそっ!!」

一夏(ただでさえ早いのに 掴まれたら、そこで終わるっ!!)

一夏(どうすればいい!?)


小梅「やるじゃないか、日本鬼子……!」

小梅「この最強isのスピードにも 何とか付いてくる。 くくく……」

小梅「もう少しエネルギーが必要かな?」

     ゴウッ!! ガシィッ!!

セシリア「ああっ!!」

      ズギュウウウウウウウ……!

セシリア「!! シールドエネルギーが!!」

      スウウウウウウンッ……(セシリアのis機能停止)

鈴「セシリア!!」

一夏「セシリア!!」


小梅「ふふふ……さて、どうする? 日本鬼子、凰?」

小梅「大人しく捕まるか?」

一夏「…………」

鈴「…………」

小梅「今なら……最高のモルモットとして扱ってやるぞ?」

一夏「…………」 ギリッ…!

鈴「…………」


鈴「一夏」

一夏「何だ? 鈴」

鈴「あたしが、あいつと組み合ったら」

鈴「小梅(シャオメイ)だけ、切れる自信、ある?」

一夏「……難しいと思う」

鈴「じゃあ、あたしごとなら、切れる?」

一夏「もっと無理だ」

鈴「ふふっ……だよね。 そう言うと思ったわ」

鈴「だったら……道は、ひとつしかないわね」

一夏「!……何か、考えがあるのか?」

鈴「あるわ」


鈴「でも、一言だけ言っとく」

鈴「あたしを……信じて」

一夏「……!?」

鈴「じゃ、やってみるわ!」 ヒュウ! 

一夏「お、おい! 鈴!」



鈴「あたしが相手よ、小梅(シャオメイ)」

小梅「…………ふん、そうか」

小梅「まあ、こちらとしても その方がいい」 ニヤニヤ

鈴「……代表候補生 決定戦の決着もつけたいしね」

小梅「結果は、変わらないと思うがな」 ニヤニヤ


鈴「……ひとつ、聞いてもいい?」

小梅「何だ?」

鈴「あんた、何であたしを最後まで残したの?」

小梅「…………!」

鈴「まあ、大体の予想は出来てるけどね」

鈴「それは、あたしの機体がデータに無いから……なんでしょ?」

小梅「…………」

鈴「だから、あたしとの接触をなるべく避けた」

鈴「未知の攻撃をされる事を」

鈴「恐れて……ね」 ニヤ……

小梅「…………」 ゴウッ!

     ガキィッ!!


鈴「くっ……!!」

一夏「鈴!!」

小梅「ふん……」

小梅「やはり、ハッタリ、か……」

小梅「今の攻撃にすら、何とか反応できる程度……」

小梅「そんな鈍い機体で」

小梅「私は倒せんぞ!!」

     ガシィッ!!

鈴「……!!」

小梅「だが……目障りな存在である事は、確かだ」

小梅「このまま、シールドエネルギーを吸い尽くしてやる!!」

      ズギュウウウウウウウ……!


     (掛かった……!)

     ガシィッ!!

小梅「!?」

小梅「凰! 貴様、何を考えている!?」

小梅「自ら私を掴むなんて……何をするつもりだ!?」

鈴「……あたしのisの機能、教えてあげよっか?」

小梅「!?」

鈴「あたしのis、白椿(ゆきつばき)の特殊能力……」

鈴「他のisに エネルギーを供給する事が出来るのよ!!」

      ズギュウウウウウウウ……!

小梅「なっ!!?」


鈴「あんたのis、エネルギーを吸い取るのが自慢の様だけど」

鈴「どのくらいのキャパシティ(容量)が あるのかしら?」

鈴「試してあげるわ!!」

     ズギュウウウウウウウ……!

小梅「や、やめろ!!」

     ビー ビー

     警告 エネルギー供給過多 

     オーバーフロー オーバーフロー

小梅「!! ま、まずい! これ以上は……!」

小梅「このぉ!!」 ドガァッ!!

鈴「ぐっ……!!」


一夏「鈴!!」

鈴「来ないで!! 一夏!!」

鈴「あたしを信じて!!」

一夏「……!!」



小梅「こ、このっ!! このっ!! 放せ!!」

     ドゴォッ!! バキィッ!!

鈴「ぐはっ…!」

小梅「き、貴様、正気か!?」

小梅「このままでは、私の機体は爆発する!!」

小梅「至近距離のお前も ただでは、すまんぞ!!?」


鈴「元より、承知の上よ! それに勝算が無い訳じゃない!!」

鈴「白椿(ゆきつばき)は、並みのisより頑丈に出来てる!!」

鈴「シールドエネルギーも甲龍の倍はあるわ!!」

鈴「あたしは……生き残る! 生き残ってみせる!!」

小梅「!!!」

     ビー ビー

     警告 エネルギー供給過多 

     オーバーフロー オーバーフロー

小梅「……やめろ」

小梅「やめろ、やめろ!やめろ!!」

小梅「やめろ!!やめろ!!やめろ!!やめろ!!やめろ!!やめろ!!やめろ!!」

小梅「やめてぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」


     ジュウウウウウウウウウ!!

小梅「あああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

鈴「!?」

小梅「あ、熱い!!!」

小梅「isがっ!!」

小梅「熱いっ熱いっ熱いっ!! 熱いいいいいいいいっ!!」

鈴「小梅(シャオメイ)!?」

小梅「し、甲龍! 待機、待機モードへ……!!」

     ビー ビー

     警告 けけけけけ……制御ふのののの 制ぎぎぎぎぎぎg

小梅「ひいっ!!?」

鈴「……!!」


     ジュウウウウウウウウウ!!!

小梅「あああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

一夏「……鈴、離れてくれ」

鈴「! 一夏……」

一夏「もう勝負は着いた……いいだろ?」

鈴「…………」

鈴「……そうね」

鈴「お願い、一夏」

鈴「小梅(シャオメイ)を助けてあげて……」

一夏「わかってる……零落白夜」

一夏「発動っ!!!」

今日は これで終わります。




―――――――――――



 ――午前4時頃――

 ――海自潜水艦『なだしお』艦内・医務室――

     ヴヴヴヴヴヴヴ……

小梅「…………」

小梅「……?」

小梅「ここは……?」

?「気がついた?」

小梅「!……凰?」


鈴「おっと……動かない方がいいわ。 ひどい怪我してる上に、拘束されてるから」

鈴「ここは、船の中の医務室よ」

小梅「…………」

鈴「あんたの怪我だけど、両手両足に火傷を負ってるわ」

鈴「特に左腕の火傷は酷くて……広範囲に跡が残る」

小梅「…………」

鈴「あんたのisは、コアを残して破壊したわ」

鈴「一応言っとくけど、そうしないと あんたは助けられなかった」

小梅「…………」


小梅「…………私は、捕虜か?」

鈴「そうなるわね」

小梅「なぜ殺さなかった?」

鈴「あたし達の目的は『要人救出』だからよ」

鈴「敵の殲滅じゃない」

鈴「……それに、あんたを今の中国政府に帰したら」

鈴「間違いなく粛清されるんじゃないの?」

小梅「…………」

鈴「あんたは死にたいのかも しれないけど、もうちょっと生きてみたら?」

鈴「あんたの言う小日本ってやつが、どんな国なのか」

鈴「それを見極めてからでも 遅くないんじゃない?」

小梅「…………」


     コン コン

ラウラ「鈴、そろそろ交代の時間だ」

ラウラ「! 捕虜は、目を覚ましたのか……」

鈴「うん」

ラウラ「どちらにしても交代しよう。 後は任せてくれ」

鈴「わかった……お願いね」

ラウラ「ああ……」

     パタン……

ラウラ「…………」

小梅「…………」


小梅「……聞いてもいいか?」

ラウラ「なんだ?」

小梅「何故、is搭乗者のお前達が 私を見張る?」

小梅「ここは、おそらく軍艦の内部……そして私は、isを無くした ただの小娘だ」

小梅「小日本の軍人の男が、やるべき事なんじゃないか?」

ラウラ「その通りだな」

小梅「だったら何故……?」

ラウラ「お前に対する配慮だ」

小梅「!?」


ラウラ「教官に教わったのだが」

ラウラ「過去、日本は自国の民間人の女に 敵に捕まれば、恥ずかしめを受けると」

ラウラ「教育していたそうだ」

小梅「…………」

ラウラ「お前も、その可能性があると 判断されたのだ」

小梅「…………」

ラウラ「…………」

小梅(……私は)

小梅(どうしたらいい?)

小梅(…………)




 それからの一ヶ月は……中国にとって、大激動となった。



 尖閣諸島は、日本の自衛隊と 米国第7艦隊との 共同戦線により見事奪還し

中国国内の暴動は内戦に発展した。







 中国政府は当初、暴動に対して武力鎮圧を行っていたけど

あまりにも広範囲に広がりすぎた暴動に対処できず、篠ノ之博士が流したネットの情報で

武装した民間人は返って反発した。

 元々、中国には 代表的な言語だけでも5つもある様な国で

民族的な対立はずうっと残っていた。 それに火を付けた形になり、泥沼化していった。

 そして、中国政府は最後の手段に出た。

自国に向かっての核攻撃……まさに究極の暴動鎮圧方法を選択する。

しかし、それは篠ノ之博士、千冬さん両名によって大部分が 防がれた。







 そこから更に問題は複雑化する。

中国の核兵器が封じられている事を知った周辺各国は

『人道支援』目的で中国領に侵攻。

そして、モンゴル・ウイグル・チベットは独立を宣言。

東シナ海では、フィリピンが南沙諸島を奪還した。

 その際、中国の難民は 億単位の数に膨れ上がるものの……

日本の有様を見て、周辺国の受け入れは ほとんど無く、多くの民間人が路頭に迷う事となった。







 独立宣言は更に続き、中国は5つか6つの国になりそうな勢いで

内戦の火は 収まりそうになかった……。







 ひるがえって日本では、在中邦人の救出作戦と、

在日中国人の強制送還を 同時進行で行っていた。







 日本政府がここまで強硬手段に出たのには、理由があった。

千冬さんが撃ち漏らしたirbm(中距離弾道ミサイル)は

日米のmd(ミサイルディフェンス)で迎撃するも2発が着弾。

二つとも都市部に命中し、核弾頭こそ搭載されてなかったけど

犠牲者が多数出たので、日本の世論は 大規模な中国人排斥運動へとつながった。

 これに対し、政府内でも中国側の息のかかった 政治家や官僚のあぶり出し

憲法改正や 核兵器の保有議論までなされた。







 そして……あたしは亡命した事で 日本のis学園に居る事を許されたけど……

無期限の監視体制を敷かれていた。

もちろん白椿(ゆきつばき)も返還させられている。

 けど、それほど息苦しくは無かった。 監視の人間が、見知った人物だった事も大きい。

それから、あたしのお父さんも亡命を認められ、ここ(is学園)の食堂で働いている。

 ……そんな あたしを快く思わない生徒も多いけど

今は仕方ないって、思った。





 ――夜――

 ――is学園・屋上――

     ピ……ピピ……ピピ……ピ……

束「…………」

千冬「束……」

束「! ……ちーちゃん」

束「何かな?」

千冬「少し、聞きたい事があってな」

束「…………」


千冬「中国軍が管轄していた核兵器……」

千冬「icbm(大陸間弾道ミサイル)を含めた、すべての弾頭が」

千冬「ダミーだったのは、どういう事なんだろうな……」

束「…………」

千冬「最初から疑問だったんだ」

千冬「この短期間で どうやって中国の核兵器を 無力化したのか……」

束「…………」

千冬「そこで私は考えた」

千冬「この短期間ではなく……何年も前から時間をかけて」

千冬「少しづつ、ダミーに変えていったのではないか?……と」

束「…………」


千冬「私が知りたいのは、動機と核弾頭のその後だ」

千冬「話してくれ、束」

束「……どうして、それが束さんだって思うのかな?」

千冬「こんな大それた事、他にやる奴を知らないからだ」

束「証拠が有る訳でもないのに?」

千冬「証拠ではないが、目撃情報は多数ある」

千冬「弾頭とダミーを取り替えて 金をもらった奴はすべて」

千冬「妙なテンションの東洋人の女を見ている」

束「…………」

千冬「…………」


束「ちーちゃん。 束さんは、何を発明したかったと思う?」

千冬「isじゃないのか?」

束「ブッブー。 はっずれー」

千冬「…………」

束「束さんはね……量子変換技術を作りたかったんだ」

千冬「は? それはもう、普及している技術じゃないか」

束「ううん、私が言ってるのは それじゃない」

束「もっともっと、それを進化させた 究極の量子変換装置」

千冬「……!?」

束「根本はね、いわゆる、『核のゴミ』を何とかしたかったんだ」

千冬「…………」


束「私は、量子変換技術を応用すれば、物質変換も可能じゃないの?」

束「そう考えた。 科学の錬金術ってやつだね」

千冬「…………」

束「でも、それは並大抵の発想では、たどり着けない道だった……」

束「それこそ、あらゆる発想を180°転換させないと 行けない様な、ね」

千冬「……だが、お前は成功させた」

束「まあね」

千冬「それで? 弾頭を無害化させて、どこにやったんだ?」

束「ちーちゃんも よく知ってるハズだよ」

千冬「……!?」


束「最初は苦労したねー」

束「福島まで行ってジミ~に、セシウム集めたり」

束「事故原発に赴いて、メルトダウンした放射性物質 集めたりしてさぁ……」

千冬「……いつの話だ?」

束「やっと実験に使える量を集めて 変換させたら……」

千冬「…………」

束「な~んと! isのコアが出来ちゃいましたぁ!」

千冬「!!!!!」

千冬「な、なんだと!?」


束「私は、コアを徹底的に調べて、様々な特性がある事に気がついた」

束「そして、発表したのが」

千冬「……is、か」

束「そこからは、割と楽だったかなー」

束「日本政府は 研究費用を たんまり出してくれたし」

束「それを元手にして、中国の核弾頭を買い漁る事が 出来たから」

千冬「お前が失踪してた期間……それが目的だったのか……」

千冬「そしてコアは、467個作ったんじゃなく」

千冬「467個『しか』作れなかったのか……」

束「そういう事」


千冬「……まったく。 お前という奴は……」

束「そう怒んないでよ、ちーちゃん」

束「前にも言ったけど isが何なのか、束さんにも よく分かっていないんだから」

千冬「はあ……そんなものに私達は、乗っているのか……」

束「まあ仮説なら 立てているけどね」

千冬「……もしかしたら、生命体か?」

束「……えっ!?」

千冬「私は科学者じゃない。 証拠がどうの、ではなく」

千冬「『感覚』的にそう思ったんだ」

束「……な~んだ」

千冬「束には、根拠があるのか?」


束「ん~? ま、ちーちゃんと似た様なもんかな……」

千冬「そうか……」



???「……これは、えらい事を聞いてしまったな」



束「!!?」

千冬「!!?」

???「脅かしてすまない」

???「立ち聞きするつもりでは、なかったのだが……」

???「出るタイミングを見失ってしまってね」


千冬(この私が……気配を感じなかった……だと!?)

束「……誰なのかなぁ?」

???「ふふ……何、ただの通りすがりのサラリーマンさ」

束「で? そのリーマンが何の用?」

リーマン「他意はない。 少し、聞きたい事があってね」

リーマン「織斑 千冬……」

千冬「……私に、聞きたい事?」

リーマン「君は、今回の作戦の立案者だ」

リーマン「だが……その為に大勢の人々に犠牲が出た」

リーマン「その事について……君は、どう思っているのかね?」

束「……!!」

千冬「…………」


リーマン「…………」

千冬「そうだな……否定は出来無い」

千冬「おそらく そうなるだろう、と、予測もしていた」

リーマン「…………」

千冬「もし……」

千冬「あなたが、その罰を 私に下そうと言うのなら」

千冬「甘んじて それを受けよう」

束「!!」

リーマン「ほう……」

束「ダメ!! そんな事は、私がさせない!!」 バッ!

千冬「やめろ! 束!!」

束「……!! で、でも!!」


リーマン「ふふ……すまない、篠ノ之博士」

リーマン「少し、意地の悪い質問だった」

束「……!」

リーマン「いずれにせよ、何をしたのか理解しているのなら」

リーマン「これ以上 責めるつもりはない」

リーマン「その上で、これからしっかり行動すればいい……」

リーマン「では……」

千冬「待て、名前くらい教えて欲しい」

リーマン「…………」

リーマン「名乗る程の者ではないが」

リーマン「高槻 巌 だ……」


千冬「……!!」

束「……ちーちゃん、知ってる人?」

千冬「噂程度なら、な……」

千冬「米国の諜報機関、ciaをたった一人で敗北させた男と」

千冬「同じ名前だ……」

束「…………」

千冬「だが、今の男は 幻でも何でも無い」

千冬「冗談ではなく、恐ろしい実力を感じた……」

千冬「私がisを展開しても 勝てるかどうか」

束「まさか……」


千冬「いずれにしても、気を引き締めなければ……」

束「そうだね! セキュリティーをもっと……」

千冬「そうじゃない、束」

千冬「私が……図に乗らずに 己を制する、という意味で、だ」



千冬「私自身の為にも、な」



束「…………」


 ――翌日の朝――

 ――is学園・2組教室――

     ガヤ ガヤ…  ガラガラ

鈴「おはよー」

     シーン……

鈴「…………」 テク テク

鈴「……!」

     机の上に「中国へ帰れ」という落書きがあった

鈴「…………」 ハア…

鈴(え~っと、ベンジン、ベンジンっと) ゴソゴソ…


??「手伝おうか?」

鈴「?」

鈴「二葉……」

二葉「ほら、ベンジンと雑巾」

鈴「ん……ありがとう」

     ゴシ ゴシ ゴシ…

二葉「今日のは すんなり取れるなっと……」 ゴシ ゴシ

鈴「……そうね」 ゴシ ゴシ


 ――昼休み――

 ――屋上――

鈴「ふう……」

鈴「…………」

      ピーーヒョロロロー……

鈴(今日もいい天気ね……)

???「あれ? 鈴?」

鈴「?」

鈴「シャルロット……と セシリア」

シャル「今日も購買のお弁当?」

セシリア「たまには、食堂に顔を見せられては?」

鈴「…………」


鈴「一夏は、元気かな?」

シャル「うん……。 まあ、元気 かな……」

鈴「……そっか」

セシリア「差し出がましいかも しれませんけど」

セシリア「一度……お話をされては いかがでしょう?」

鈴「…………」 クスッ…

鈴「いつか、ね……」

     スタ スタ スタ…

セシリア「あ…………」

シャル「…………」


セシリア「見ていて、痛ましいですわ……」

シャル「もう少し時間、かかっちゃうかな……」

セシリア「…………」

シャル「セシリアは、一夏の事を諦めるの?」

セシリア「は、はあ!? な、何をおっしゃいますの!?」 ///

セシリア「諦めて たまるものですか!」 ///

シャル「ふふ、ボクもだよ?」

シャル「……でも」

セシリア「…………」


シャル「今は……鈴が、一歩リードかな?」

セシリア「……認めたくは、ありませんが」

セシリア「今の一夏さん……心 ここにあらず、といった感じですものね」

シャル「うん……」

セシリア「…………」

シャル「…………」

シャル「フランスも日本と戦争しないかな……」 ボソッ…

セシリア「シャルロットさん。 思い切り 不謹慎な事、言わないでください」

シャル「冗談だよ」 クスッ…

セシリア「冗談でも言っては、いけません」 ムー

     アハハ……


 ――放課後――

 ――is学園寮・談話室――

ラウラ「嫁よ、来週の休日、時間はあるか?」

一夏「わりぃ……その日は、実家に戻って雑用をする予定なんだ」

ラウラ「そうか……」

一夏「今週なら空いてるぜ?」

ラウラ「あいにくと、私の都合が悪い」

一夏「そっか……残念」

ラウラ「…………」


ラウラ「……あれ以来」

一夏「ん?」

ラウラ「1組に来ないな、鈴……」

一夏「…………」

一夏「しょうがないさ……今は」

ラウラ「…………」

一夏「今回ばかりは、すぐに今まで通り、とは行かないよ」

ラウラ「…………」

一夏「いつか……戻るさ」


 ――夜――

 ――食堂――

箒「2組に 移る事になった?」

和美「そ」

箒「突然だな……」

和美「まあ、あたしは政府機関の人間だし、上からの命令は 絶対だからね~」

箒「二葉も鈴の監視役、として2組に移ったが……それと関係が?」

和美「まあ、当たらずとも遠からず、ってとこね」

和美「詳細は、明日わかる事だから 内緒にしとくって事で」

箒「むう……」


和美「それよりさ、織斑くんとは どうなのよ?」

箒「ぶっ!!」 ///

和美「待ってるだけじゃ、なぁんにも変わらないよ?」 ニヤニヤ

箒「なななな、何を言ってるんだ! き、貴様!」 ///

和美「まあ、真面目な話。 箒は今、ちょっと負けちゃってるよ?」

箒「……!」 ///

和美「け、ど。 肝心の織斑くんが、あれじゃあ」

和美「今、何やっても効果は 無さそうだけどね」

箒「…………」

和美「……あたしが言うのも 何だけどさ」

和美「攻め時は、変化が起こったら スグ!! を心がけるといい思うな!」 ニコ


 ――翌日の朝――

 ――is学園・2組教室――

     ガヤ ガヤ…

2組の先生「はーい、みんな静かに」

2組の先生「今日は、皆さんに転校生と クラスを移ってこられる生徒さんを紹介します」

     トコ トコ トコ…

鈴「!?」

和美「もう知っている人も居るでしょうけど……田中 和美です」

和美「あえて言っておきますけど、私は この転校生の監視役ですので」

和美「皆さんも そのつもりで接してください」


2組の先生「はい次、転校生さん」

??「……張 小梅(チャン シャオメイ)だ」

小梅「よろしく」

2組の先生「何か言いたい事は、ありますか?」

小梅「…………」

小梅「私は、中国人だ」

     ザワ……!

小梅「だが、亡命した事で、今は国籍上『日本人』となっている」

     …………

小梅「亡命した理由は……『真実』を知ったからだ」

     …………


小梅「そして、真実を 知らなかったがゆえの代償が」

小梅「これだ」

     彼女は、左腕の火傷の跡を 高々と見せた

小梅「…………」

小梅「今更 謝罪しても、許されるとは思わないが、それでも私は 謝りたいと思う」

小梅「……ごめんなさい」 ペコリ

     …………


小梅「私は……何をすべきか、探している」

小梅「今、この瞬間にも 真実を知らずに代償を払い続けている」

小梅「中国人を 何とかしてやりたい、と思うし」

小梅「堂々と対等な立場で 私は中国人だ、と言える世の中にしたい」

小梅「それが……私の望む事だ」

鈴「…………」

小梅「もっとも、その『中国』という名詞そのものが 無くなりつつあるが……」



小梅「最後に」

小梅「私に 真実と 居場所を 与えてくれた、日本国と 日本人に」

小梅「心からの感謝をする」

小梅「ありがとう」

     …………


 ――休み時間――

 ――2組教室――

鈴「……思ったより元気そうね」

小梅「凰か……」

小梅「お前は逆に、元気が無いな」

鈴「ほっといてよ……」

小梅「まあ、ある程度は仕方ない、か……」

鈴「…………」

小梅「だが、お前が 萎縮する必要は無いだろう?」

鈴「え?」


小梅「私は、私だ」

小梅「かつての中国の非道は恥じるが……これからの私を蔑む様な人間には」

小梅「容赦をするつもりはない」

小梅「堂々と胸を張って生きる」

小梅「そのつもりだ」

鈴「…………」

小梅「……お前は、きっと私よりも 日本人に近いのだろう」

小梅「私が知った、真実の歴史での 日本外交の誠実さには、驚嘆させられるが」

小梅「同時に媚び、へつらう姿にも見える。 事なかれ主義も良くない」

小梅「過去の歴史がどうあれ、今現在の状況に不満があるのなら」

小梅「はっきり言う事が大切だ」

鈴「…………」


小梅「そうしなければ……欲しいモノは手に入らない」

小梅「なって欲しい世の中には、ならない」

小梅「私は、そう思っている……」

鈴「…………」



鈴(あたしが望むもの……)

鈴(あたしが望む事……)

鈴(…………)

鈴(……それは)


 ――1組教室――

鈴「一夏」

一夏「んお!?」

一夏「り、鈴……!?」

鈴「何よ、その顔……ってまあ仕方ないか」

鈴「ちょっと話があるの。 昼休み、屋上に来てくれる?」

一夏「お、おう」

鈴「別にとって食おうってワケじゃないんだから、ビクビクしない!」

鈴「じゃ、お昼にね!」 ニコ!

一夏「…………」 唖然…


シャル(鈴……?)

セシリア(何だか……様子が?)

ラウラ(ガラリと変わったな?)

箒(き、来たのか!? へ、変化、とやらが!!) ///


 ――昼休み――

 ――屋上――

一夏「それで? 話って?」

鈴「…………」 キョロ キョロ……

一夏「……何してんだ? 鈴?」

鈴「えっ!? う、ううん! 何でも無い!」

鈴(……おかしいわね。 てっきり、みんな来るって思ったのに……)

鈴(どういう事かしら……?)

一夏「……鈴?」

鈴「あ、うん。 ごめん」


鈴「えっと、ね……」

鈴「…………」

鈴「あたし、一夏を避けてた」

一夏「…………うん」

鈴「正直言うと……」

鈴「あたしが、中国に帰ろうとしたあの時」

鈴「一夏に抱きしめられた後……もう一夏にかかわらない様にしようって」

鈴「自分に枷(かせ)をかけたの……」


一夏「…………」

鈴「それが、一夏に迷惑をかけない、最善の方法だと思って」

一夏「…………」

鈴「……でも、救出作戦が終わって is学園に帰ってきてから」

鈴「何だか……上手く言えないけど、何もかもが『違う』って感じるようになった」

鈴「自分自身すらも……」

一夏「…………」

鈴「ふふ……変な事 言ってるな、あたし」

一夏「いや……なんとなく分かるよ、それ」

鈴「そう? あんたの事だから、あいずち打ってるだけじゃないの?」

一夏「何だよ……人がせっかく同意してるってのに」


鈴「ごめん、一夏」

鈴「あたしが言いたかったのは……」



鈴「いつも通りに、一夏と接したいって事」



一夏「…………」

鈴「何だか 遠回りしちゃったけど、そういう結論を あたしは出した」

鈴「それで……いいかな?」

一夏「ああ、もちろんだ、鈴」

一夏「久しぶりに お前の酢豚とか食べたいしな」

     アハハ……


鈴「……本当に久しぶり。 一夏とこうやって話すの」

一夏「ああ、そうだな」

鈴「やっと……帰って来たって思えた」 ニコ

一夏「そうか」 ニコ

鈴「ありがとう、一夏。 これで あたしの話は、おしまいだから」

一夏「え? これで?」

鈴「何よ? 他に何かあるって思ったの?」

一夏「あ~いや、そんな事は……」

鈴「いいから言ってみなさいよ。 何だと思ったのよ?」

一夏「でも、これ言っちゃって違ってたら、すっげー間抜けだし……」 ///


鈴「いいから言ってよ、気になるじゃない」

一夏「お、おう……。 じゃ、じゃあ言うけど……」 ///

一夏「告白されるのかと思ったんだ……」 ///

鈴「……………………」

鈴「はあっ!!?」 ///

鈴「なななななな、何で、そう思ったのよ!?」 ///

一夏「い、いや、例の……ほら、妙なスーツのおっさんが 渡してくれた手紙」

一夏「鈴の親父さんが……」 ピラ……


     いちかえ

 鈴お とめるして ほしい

中国にかえる よくない ぜつたい だめ

鈴わ いちかが すき    けつこん ゆるす

けつこん、だめでも まもる してほしい

おねがい きく してほしい

鈴 しあわせ それでいい

     おつちやんより




鈴わ いちかが すき 

鈴わ いちかが すき 

鈴わ いちかが すき 

鈴わ いちかが すき 

鈴わ いちかが すき 





鈴「」 /// ぼひゅん!!

鈴(わーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!) ///

鈴(おとーーーーーーーさーーーーーーーーーーん!!) ///



鈴「あ……がっ……う……」 ///

一夏「……やっぱり、自意識過剰だったか」 ハア…

鈴「!!」

鈴「ちょちょちょ、ちょっと、待ちなさいよ!」 ///

鈴「そ、そんなに簡単に、結論を出すもんじゃないわ!」 ///

一夏「え」

一夏「……でも、それじゃあ、つまり……」 ///


鈴(そ、そうよ! こ、これはチャンスなのよ!!) ///

鈴(こ、この際、状況がグダグダとか、雰囲気とかは、置いといて) ///

鈴(い、言うのよ! 凰 鈴音!!) ///



鈴「あ、あた、あた、あたし、あたしはっ」 ///

鈴「い、一夏、の事っ……!!」 ///

一夏「……ゴクッ」 ///

     こつん☆

一夏「へ?」

一夏「!!! うわぁっ!!!」


     ズギュウンッ!!

一夏「」 ハアッ ハアッ…

鈴「ブルーティアーズ……」

     ※注 小梅(シャオメイ)以外、全員isを展開してます

シャル「はい、鈴。 そこまで、だよ?」

ラウラ「どさくさに紛れて、何をするかと思えば」

箒「一夏……」

セシリア「危ない所でしたわ……」



一夏「そりゃこっちのセリフだよ!!」

一夏「ていうか、何で俺が攻撃されなきゃならない!?」

セシリア「なんとなくですわ」

一夏「当たったら間違いなく死んでるよ!? 俺!!」


二葉「ほう……あれが、こ、告白、というものか」 ///

二葉(自分も……いつかは……) ///

和美「ん~……ちょっと違うんだけど、あれ、まだ途中だからね、二葉?」

二葉「途中? で、では、最後まで行ったら、どうなる?」

和美「そりゃあ、キスくらいは するでしょうね~」 ニヤニヤ

二葉・小梅「キス? キスとは何だ?」

和美「はいはい、二人でハモらな~い。 後でググってみてね~」

二葉・小梅「???」


小梅「そうだ、和美、ちょっと降ろして くれないか?」

和美「お!? まさか告白する!?」

小梅「あ~いや……あの男に聞きたい事があるんだ」

二葉「聞きたい事?」

小梅「すぐ済む」

和美「ほいほい。 なんか知らないけど、わかったわ」 ヒュウン

     トトン……

小梅「えーっと、一夏? だったか?」

一夏「ん? って! あの時の!?」

小梅「凰から何も聞いてないのか……」

小梅「亡命が認められて、今日、is学園に転校してきたんだ」

一夏「そうか、よろしくな」


小梅「個人的に 礼と 謝罪を しておきたくて……」

小梅「すまなかった……そして助けてくれて、ありがとう」

一夏「ああ、別に気にしなくてもいいぜ」 ニコ

小梅「そ、それと」 ///

一夏「?」

小梅「あの時言った事は、本当か?」 ///

一夏「あの時?」

小梅「シールドを 投げられる前に言った、お前の言葉だ」 ///


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一夏「…………」 ピタッ…

小梅「!?」

一夏(え~とっ……爽やかな笑顔で……)

一夏「ウォーアイニー小梅(シャオメイ)……」 ニコ
   (「愛してる、小梅(シャオメイ)」)

小梅「……!?」 ///

二葉「今だ!!」 ブンッ!(シールド投てき)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一夏・鈴「……あ」

小梅「…………」 ///


和美「小梅(シャオメイ)、ちなみに なんて言われたの?」

小梅「あ、愛してる、と……」 ///モジモジ

二葉「!?」

シャル「!?」

セシリア「!?」

箒「!?」

ラウラ「!?」

和美「……わちゃ~」


セシリア「一夏さぁん…………」 ゴゴゴ……

シャル「………………一夏?」 ゴゴゴ……

箒「………………一夏」 ゴゴゴ……

ラウラ「………………嫁ぇ」 ゴゴゴ……

二葉「織斑 一夏…………」 ゴゴゴ……

和美「……お~い」



一夏「ひいいいっ……!!」 ゾワゾワッ!

一夏「お、俺、今回、悪くないよな!?」

鈴「……まあ、そうなんだけど。 弁解させて くれそうにもないわね」

一夏「」

     ダダッ!!!

小梅「あ! ま、待ってくれ! 一夏!」 ダッ!


シャル「一夏! どういう事なの!?」 ヒュン

ラウラ「嫁よ! 説明しろ!」 ヒュン

セシリア「いったい、何人 手を出せば、気が済みますの!?」 ヒュン

箒「このハレンチが!!」 ヒュン

二葉「待てー!!」 ヒュン

和美「行ってらっしゃーい」

鈴「…………」

鈴(…………なんか)

鈴(色々と腹が立ってきた……) ムカムカ


鈴「あーーーもう!!!」

鈴「待ちなさーーーい!!」



鈴「一夏ぁ!!」 ダッ!



     おしまい

皆さんお疲れ様でした。これで終了です。
まあ、ある程度 覚悟はしてましたが、やっぱり叩かれましたね~。
 今回、話題性のある題材を使ったので、『敵』に名前が無いのは
リアリティや臨場感に欠けるな……と思い、>>1の創作キャラを入れました。
和美と二葉も同じ理由です。

ラストに関しては、最初、何年か後 一人ぼっちになった鈴を
一夏が迎えに行ってプロポーズする……みたいなのを考えていたんですけど
isっぽくないな……と思って、こうしました。

最後に読んでくれた人、ありがとうございました!


armsもチラッと混ざってて中々面白かったぞ

>>258
ありがとう、気づいてくれましたか!正解です!

いけね、あげちゃった……

すげぇおもしろかった!
結構危ない話題引っ張って来たなと思ったけど

>1乙

>>261
ありがとう、そう言ってくれるなんて嬉しい。
まあ自分でも これは、まとめとかには、載らねえだろうな……
とは思ってる。それだけに投下し損なったのは、痛かった……!

デリケートな話題でよくぞ書ききってくれた。
時の文があったら鈴や一夏の心理描写がもっと濃密だったかもしれないが、
これはこれでスピード感があった

原作isの方の世界では支那が健全な国家であることを祈るばかり。
お疲れ様でした

>>265
まあ、ビビって最初に「これは作り話だぞ!? 本気にすんなよ!?」
って予防線張っといたんだけどね~。

ご意見、ありがとう。 最初のラストは、そんな感じだったんだ。
小梅(シャオメイ)も死ぬ予定で、彼女を手にかけた鈴は
どんどん自分を追い詰めて行って、そんな鈴を一夏が支える。
だけど鈴は……みたいな展開。

でも結局「だめだ……isっぽくない……」と思って書き直したんだわ……。
自分としては、こんなデリケートな問題も明るいラストに出来る、isのキャラって
やっぱすげーなぁ……と思う。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom