タッタッタッ！
店員「は、はいただいまー！」

海未「牛丼まだですか？」

店員「も、申し訳ありません！ただいま調理中でして…」

海未「…作り置きとかないんですか？」

店員「も、申し訳ありません…
先ほど団体のお客様がいらっしゃいましてそれで…」

海未「はぁ」

海未（こう言い訳されると責めるに責められませんね…）

店員「あと10分ほどでお出ししますので！」

海未「……お願いします」

・・・
・・
・

店員「お待たせしました！牛丼並盛りです！」

海未「はい」

ドンッ

海未「……」
海未「なんですかこれは」

店員「お待たせしたお詫びとしてサービスさせていただきました！」
店員「特盛り牛丼です！」

海未「………」

特盛り『牛でゴワス』

海未「そうですか」
海未「ありがとうございます」ﾆｺｯ

店員「ではごゆっくりどうぞー！」

海未（ニコニコ）

・・・
・・
・

店員「ありがとうございましたー！」

海未（ニコニコ）

トコトコ

海未「……」

トコトコ

海未「……」
海未「……………げふっ」

海未（深夜になんてもの食べさせてくれやがるんですかあの店員はあああああ！！！）

海未（しかもマヨネーズついてなかったですしっ）
海未（どうなってるんですかね！深夜のす◯屋はァ！）

海未「………」ブツブツ

？？？「くっくっく…」

ガサ…

？？？「器の小さいお嬢さんだ…」

海未「っ！だ、だれ？！」

？？？「うち？うちはなぁ」
？？？「魔法使いのお姉さんや」

海未「……はぁ？」

路地の小道から突如現れた女性。
ボロ切れに身をまとめった怪しげな女との出会いが、
遠い未来、海未の人生に大きな影響を与えることになることを
この時の海未はまだ知らない…

？？？「さっきの、見てたよ」
？？？「牛丼が出せなくてあんたは怒っていたけど…
もしかしたら何か深い事情があったんじゃないのかい？」

海未「事情って……団体でお客さんが来たから遅れたんでしょう？」

？？？「"深い"事情と言っただろう？」
？？？「あんたがプリプリ怒ってる裏に、
のっぴきならない事情があったかもしれないと言ってるんだよ、あたしは」

海未「さぁ…そんなこと私には知る由もありませんよ」

？？？「そうだろうね」
？？？「だがあたしは知っている。その答えを」

海未「へぇ。なら教えてくださいよ」

？？？「いいだろう。
見せてやるから私についておいで…」

海未「"見せる"……？」

海未「どこに連れて行く気ですか」

？？？「すぐそこだよ」

海未「言葉で説明すれば済む話じゃないですか。
今ここでその事情とやらを教えてくださいよ」

？？？「うるさい娘だね」
？？？「わたしはどうにも言葉で説明するのが苦手なんだ」
？？？「だから直接みせてやることにした」

海未「はぁ？直接って…」

？？？「いいから黙ってついてきな！」

海未「……」

ザクザク…ザクザク…