提督「提督用兵装?」 (55)
明石「えぇ、艦娘の指揮官である提督を深海棲艦の攻撃から防衛するための装備です」
提督「でもなぁ…俺そんなに戦線まで行くことなんてないぞ。長距離無線で指示出せるし」
明石「いえいえ、最近は深海棲艦も思い切った戦術を仕掛けることが多くなりまして…艦娘を迂回して指揮船や泊地を襲撃されるなどで
提督側の損害も増えつつあります」
提督「頭を叩きにくるというわけか」
明石「ということでいざという時なまくら軍刀やらちんけな豆鉄砲では身を守り切れるかわかりません。
提督の命と健康とその他諸々をお守りするために明石が心を籠めてお作りした最新装備が」
提督「な、なまくら…ちんけ…」
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明石「まずはこちらっ!提督ブレード~!」テーテッレテレテレー
明石「超高密度の合金製っ!更にそれだけじゃありません、ヒートブレードの採用によって力を入れなくても大抵のものは触れるだけで真っ二つです!」
提督「うぉおおお!スゲー!…ちょっと待て明石」
明石「はい?」
提督「これちょっと大きすぎないか?」
明石「やだなぁ、遠近の関係でそんな風に見えるだけですよ」
提督「いや実際デカすぎるだろ。工蔽の屋根に届いてるぞ」
明石「うーん、そう言われればそんな気が…作ってる時は全然気づかなかったわ…見た目よりは意外と軽いかもしれませんよ?ちょっと持ってみてください」
提督「えっ、ちょ」
明石「うん、しょっ!あっ」ズルッ
ズズーン
長門「明石、いないのか?」
陸奥「凄い音がしたから来てみたけど、どうやらこのデカブツが倒れた音だったみたいね」
長門「何だこれは…お好み焼きのプレートか?」
陸奥「さぁ何かしら?明石の作る物ってワケわかんないものばっかりだし」
そ、そんなことありません~~~
大体当たってると思うが
陸奥「? 長門姉、何か言った?」
長門「お好み焼き…これだけ大きければどれだけ…」ホワホワ
お、おい明石、どこ触ってるんだ!
ふふふ、いいではありませんか、いいではありませんか提督う~
陸奥「…まさか…提督に明石?下にいるの?」
長門「スイッチは、と…温度調整も付いているとはお好み焼きプレート確定だな」
あ、明石…やめろ、やめてくれ…俺達まだそんな…
いきなり?じゃあいきなりじゃなければいいんですか提督?ん?そうですよねぇ?
陸奥「長門姉、手伝って!このままじゃ提督がねっとりと陰湿に、流されるままに手籠めにされちゃう!」
長門「陸奥、サラダ油はないか?」
陸奥「ぬうおおおおおおおお!!!!」グググググ
提督「ぶっはぁ!し、死ぬかと思った…」
明石「ちっ、いいところで…あっ、陸奥さん。ありがとうございます」
陸奥「はぁっ、はぁっ、はぁっ…な、何やってんのよ明石も提督も…」ゼェゼェ
明石「いやあ、まぁ…色々とですよ。ねえ、提督?」
陸奥「……フケツ」
提督「む、陸奥…」ガーン
長門「うむ、準備万端だ。イグニッション・ファイア―!」カチッ
陸奥「ちょ、ちょっと…何だか異様に暑くない?」
明石「あーっ!?長門さん何してるんですか!」
長門「陸奥、このプレート少し火力が弱くないか?これだけ大きければ温まるのに少し時間がかかるものなのかもしれんな」カチカチ
陸奥「あ、床が溶けて沈みはじめたわ」
提督「…『触れるだけで何でも真っ二つ』か。それだけは本当だったようだな」
明石「あああ、私の傑作がぁ…」
陸奥「地球の中心まで沈んじゃえばいいのよあんなの」
長門「ふんっ」ブスッ
陸奥「ねぇ機嫌直してよ長門姉、コンビニでお好み焼き買ってあげたじゃない」
長門「私はあのだんびらプレートで焼いたお好み焼きが食べたかったのだ。コンビニのなんて」
陸奥「ふ~ん、じゃあいいわよ。私一人で食べるから」
長門「ま、待て陸奥!」
―――――
明石「うぅ…私が丹精込めて作り上げた芸術品が母なる地球の一部になってしまうなんて」
提督「お前は鎮守府を何だと思ってるんだ…」
明石「提督をお守りしたい一心で仕事の合間を縫って夜なべしてまで作ったのにぃ」グスグス
提督「うっ」ズキ
明石「やっぱり私、邪魔なんですね。黙ってアイテム売ってた方がいいんですよね」グスグス チラッ
提督「そ…そんなことない…と、思うぞ?」
明石「やっぱり提督もそう思われますかっ!」ガバッ
提督「うわっ!?」
明石「そうです!我々は何故つまずくのですか!?立ち上がるためです!うんうん、そうですよね」コクコク
提督「お前の場合は立ち上がった後が問題だと思うが」
明石「さぁ気を取り直して次に行きましょう!お次はこれですっ!」
提督「聞いちゃいねぇ」
明石「提督バッヂ~!」テーテッレテレテレー
明石「大きさ、重さはそのまま…しかしその正体はありったけの武器を僅か2cm足らずに凝縮したリーサルウェポンなのですっ!」
提督「ありったけの武器って…こんな小さいのに何を仕込んであるんだ?毒針やナイフとか」
明石「えーとですね、煙幕、目くらましのフラッシュ、照明弾…他にも色々とありますが極めつけは本邦初!怪力光線が実装されているんです!」
提督「怪力光線なんて特撮でしか見た事ないぞ…どうやって操作するんだこれは?」
明石「何しろ小さすぎてバッヂ本体にスイッチを配置すると誤動作の危険があります。提督が特定の動きと音声を発することで武器が作動するんです」
提督「おお、ようやく明石がまともな説明を始めた!」
明石「ふふん、やれば出来る子ですからね私は。じゃ、提督早速お願いします」
提督「えーと、まずは煙幕からだな」
明石「『ヘビィ・スモーキング……俺の真っ黒な胸に飛び込んで来い。どこまでもメンソールに抱きしめてやる』 はい、リピートアフターミー」
提督「……」
明石「あ、聞こえませんでした?結構長いですからね、もう一度 『ヘビィ・スモーキ」
提督「やめろォ!」
明石「どうしたんですか提督、お母さんに自作のポエムノートを朗読された中学生みたいな顔して」
提督「やけに具体的なこと言いやがって…大体セリフが長すぎるんだよ!それにそんな難解なポーズが緊急時に取れるか!何だよその首の角度は」
明石「私の好きなアニメ会社がよく使うんですよこの角度」
提督「首を痛めるわ!」
明石「むぅ、さっきから文句ばっかり言ってますけどね…普通に喋ったり普通に取れる体勢ならどうなりますか?」
提督「う…」
明石「誰かと会話してたらいきなり煙幕が張られたり、背伸びをしたら怪力光線が発射されたりしてたらえらいことになりますよね?」
提督「そ、それはそういうことをしないように注意してれば」
明石「そんな状態で任務がこなせるんですか?提督にとってもストレスが溜まりますよ」
提督「だがこれが役立つような緊急時にそんな悠長な」
明石「それは提督の甘えです。何度も訓練すれば発動過程を完璧にマスターできます。それに提督たる者、いつでも冷静沈着でいなきゃいけないんじゃないですか?」
提督「そんな面倒なことするくらいならコントローラーか何かを」
明石「この装備の最大の強みは秘匿性なんですよ?いくら深海棲艦でも提督の胸元から照明弾やら殺人光線が飛び出すとは予想できないでしょう?
でっかいコントローラーなんて付けたら怪しさ全開ですよ」
提督「ぐ、ぐぬぬ」
明石「御安心ください。ポーズとセリフはものすっっっごく……カッコイイですから!」
榛名「提督はどこにいらっしゃるのでしょう…榛名、せっかくお弁当をお作りしたのに」
霧島「榛名姉さん、いくら提督でも日に八回も九回も食事しないわよ」
金剛「榛名の食わせ好きには困ったモノデース。このままじゃ提督、ハムになっちゃいマス」
比叡「大丈夫ですよ金剛姉さま、比叡のダイエットフードをあげとけば」
霧島「…比叡姉さんの料理って深海棲艦相手に使えないかしら」
バスターランチャー!アドヴァンドスラッシュ!ドーンブレイカー!
榛名「あっ、提督の声です!提督、今榛名が参ります!」タタッ
金剛「明石の声もしたような気が……アイツが絡んでるといつもロクな事にならない気がするデス」
比叡「そういえば金剛姉さま!明石さんったらひどいんですよ、この前料理をおすそ分けしたら何と砲弾の中に詰めてたんですよ!」
霧島(もうやってたのね)
提督「始祖の光よ、我の元に来たりて身を焦がせ……我に仇なす者に神威を知らしめよ!開闢の光、プリミティブ・ライト!」ペカー
明石「うおっ、まぶしっ ライト点灯の動作確認は出来ましたね、次はラジオの選曲と音量調整です。『虚ろなる闇より出でし…」
提督「う…うわぁあああ!もういやだああああ!!」
明石「どうしたんです提督、心が壊れて人間ではなくなってしまったんですか」
提督「何でいい歳こいてこんなことしなけりゃならないんだ!イタすぎるんだよおおお!!」
明石「軟弱者ッ!」ベチン
提督「痛いっ!?」
明石「もう提督はイタいイタいって…今殴られた自分の頬とどっちが痛いんですか?えっ?」
提督「だってこんな所他の艦娘に見られたら俺生きてけねぇよ…」
明石「はぁー…いいですか提督、イメージするのは常に最強の自分です。外敵など要りません、提督にとって戦う相手とは自身のイメージに他ならないのです」
明石「他人なんて関係ありません。これは自分との戦いなんですよ提督」
提督「自分との…戦い…」
明石「次行きますよ、準備はいいですか?」
提督「ああ…ああ…!行ける、行けるよ明石…!」
明石(よっしゃ)
榛名「提督!お弁当お持ちしま…し…」
提督「 虚ろなる闇より出でし稲妻 我の求めに応じよ 第三、第二、第一拘束術式解除 」
金剛「」
霧島「」
比叡「あ、提督!何されてるんですか、今日は比叡もお弁当作ってきましたよ」
明石「しーっ!今いいとこなんですから!」
提督「 囁きと祈りを寄り合わせ力とせん… 魔電磁の秘術、ここに在り 」
比叡「明石さんにはあげませんよ。比叡は食べ物を粗末にする人は嫌いです」プイッ
明石「え~?凄く強力だったんですよあれ。環境汚染がひどいとかで開発中止されちゃったけど」
提督「 ラジエイション・ターミナル 発動 」
『…ガガッ…ピー…ザザッ…ちは、お昼のニュースです。アメリカ政府は今日、深海棲艦への対抗策として初の国産艦娘をお披露目しました』
『特に戦艦アイオワさん、空母エンタープライズさんと言った大型艦娘はイベントの目玉で…』
『…ミズーリさんが「BBAとか言うな」と泣きだしてしまうハプニングもありました。次の』
提督「うぅ…き、きつい…明石、やっぱりもう少し短くできな…」
明石「そんなぁ勿体ないじゃないですか。こんなにかっこいいのに…ね、四人ともそう思いますよね?」
金剛「て、テートク…」
霧島「ぷ、ぷぷっ…ラジエイションって…発動って…」ピクピク
比叡「? 比叡、聞き逃してしまいました。提督、もう一回やってもらえますか?榛名は何やってたかわかる?…榛名?」
榛名「か…」
榛名「かっこいい…」
提督「…へ?」
榛名「かっこいい!とっともかっこいいです提督!榛名、感激ですっ!」
明石「おおっ、榛名さんはわかりますか!」
金剛「榛名―!?」
榛名「提督の凛々しいお姿とお言葉、榛名は一瞬たりとも見逃していませんっ!えっと『うつろなるやみよりいでし…」
提督「うわあああああ!やめろ、やめてくれ―!!」
霧島「ぶっ…ぶははははは!!もうダメ、我慢できないっ!闇って何なのよ、ラジエイションって!あはははっ」
金剛「き、霧島笑っちゃダメです…ぷ、ぷぷっ…そ、ソーリー…ぷぷぷっ」
榛名「…までんじのひじゅつ、ここにあり!らじえいしょん・たーみなるっ!」ビシッ
提督「ウワァアアアアアア!!!」ビクンビクン
比叡「て、提督があんなにあられもない姿でのたうちまわるなんて…何て兵器なの…」
明石「えーとコマンド表の順番で行くと次はレーダー機能、っと」
比叡「あれ?このノートは何でしょう?」
明石「あっ、それは提督の実家から送られてきた荷物の中に混じってたんです。提督ったらそれ読んだ瞬間血相変えて
海に投げ捨てちゃって…気になるから持ってきちゃいました」
金剛「えーと、『黒の書』…?ぼろっちいコ○ヨのノートにしか見えないデース」
霧島「し、しかも学年と番号と名前書いてあるわよ…くくくっ、さ、『3年C組7番ブラック・シュヴァルツェ』だってぇ!
あはははははっ、ひーっ、ひーっ…お、お腹痛いっ…」
榛名「おおお…!提督ってこんな才能をお持ちだったんですね!」
比叡「でも何で捨ててしまわれたんでしょう?見た所こんなに書き込まれたノートですから思い出の品だと思うのですが」
榛名「これを参考にこまんど表を作られたんですね。こんなにかっこいいならそうしたいって気持ちも」
提督「うおおおおおお!!!」バッ
榛名「きゃっ!」
提督「何故だ!何故俺の記憶から消し去った筈のあのノートをお前が持っているんだああああ!!」
明石「えーと、バッヂを誰かに悪用されないためにも提督しか知らないような情報を使えればいいかなっと思いまして」
榛名「ぶらっく・しゅヴぁるつぇ提督、榛名はもっとそのノートを読みたいです!」
提督「……」フラッ
比叡「て、提督っ!?気絶されてしまいました…」
金剛「なんかバッヂがビービーうるさいデス」
明石「あ、やばい…霧島さん、そのバッヂを砲に入れて海に撃ちっぱなしてください!」
霧島「そんなこと言ったって今は艤装つけてないわよ」
明石「ええっと、確かレールガンの試作品が…あった!そっち持って榛名さん!」
明石「行きますよ…3、2、1……ここからいなくなれえええ!」
バシューン
明石「ふぅ…これでひとまずは安心ね。デストロイモードがここで発動してたらシャレにならなかったわ」
金剛「何デスカ、DESTROY MODEって?」
明石「こっちの話ですよ」
明石(言えない…持ち主のバイタルが停止したら怪力光線と有毒ガスをまき散らしながらエネルギーが尽きるまで自律行動するなんて言えない…)
――――――数日後
『お昼のニュースです。アメリカ軍艦娘部隊の初陣はこれまでに前例のない、奇妙な敵との戦闘になりました。怪光線をまき散らしながら海上を不規則に移動していた有毒ガスの雲は
アメリカ海軍の攻撃を全く受け付けず、一日中太平洋を彷徨った末に日没ともに自然消滅しました。これについて…』
提督「また深海棲艦の新兵器か…いや、そもそも深海棲艦なのかこれ」
明石「ぎくっ」
提督「何だぎくって」
明石「あ、そういえば提督。榛名ちゃん青葉新聞にラノ…小説連載し始めたって知ってます?」
提督「その話はやめろ」
明石「何でですか、榛名ちゃんの隠れた才能が開花したのが妬ましいんですか?」
提督「あれから顔合わせる度に俺の黒歴史設定を聞き出そうとしてくるんだよ!弁当作ってきてくれたり
ボタンのほつれを治してくれたりする優しくて家庭的な榛名はどこ行ったんだよ!」
明石「ほーそんなことまでしてもらってたんですか。そうですかそうですか」
提督「な、なんだよ急に」
明石「別に何でもありませんよ?提督こそ何か後ろめたいことでもあるんですか?」ツーン
提督「……な、なぁ明石」
明石「何ですか?」
提督「また何か作ったのか?提督用兵装とか言って張切ってたじゃないか」
明石「!」バァァ
提督(…やっぱり作ってたのか)ゲンナリ
明石「はいはい、実はですねぇ…色々と材料調達に苦労しましたが遂に完成しましたっ!」
明石「提督ピストル~!」テーテッレテレテレー
提督「またそのネーミングか…見た目は普通だな。重さもちょっと重たいくらいか」
明石「そう、見た目も重さもほとんど制式拳銃と変わりません。ですが…まぁ物は試しです。さあ提督、一発ぶっ放してみてください」
提督「ここで銃は撃てんぞ」
明石「ああ、あそこのドラム缶にでも撃ってみてください」
提督「え、あんな遠くの…まぁいいか」チャキッ
―――鎮守府近海―――
熊野「あら?」
鈴谷「どしたの熊野」
熊野「いえ…鎮守府の方で何か光ったような」
鈴谷「太陽の照り返しだよ、今日は日差しが強いもん」
熊野「そうでしょうか…何だか胸騒ぎが」
鈴谷「あれ~?あれあれ~?なになに、そんなに提督のこと心配なの?」
熊野「はっ?な、何をおっしゃるんですの!母港を気にかけるのは当然ですわ!」
鈴谷「まったまたぁ~」
明石「げほっ、げほっ…提督、ご無事ですか?」
提督「だ、第一種戦闘配備…第一種だ!警報を出せ!敵襲だ!」
明石「やっぱりカリホルニウムは威力が強すぎたみたいですね」
提督「…はっ?」
明石「提督、反動の方とかはいかがでした?この銃、火薬じゃなくて電気の力で弾を飛ばしてるんですよ!反動は非常に少ないはずです」
提督「そんなもんわかるかっ!あああ、工蔽の半分が吹っ飛んじまった…」
明石「まぁ大丈夫ですよ。あそこら辺は処分予定のジャンク品ばっかり置いてありましたから」
提督「そういう問題じゃないだろ…もう嫌だ…おうち帰る」フラフラ
明石「認めます…確かに今までの装備は一長一短、癖の強いじゃじゃ馬が多かったかもしれません」
提督「『一長』がどこにあったんだ…」
明石「ですが、提督を失意のまま去らせるのは私のプライドが許しません!とっておきの、しかも超安全な信頼性ナンバーワンの装備をお見せしますっ!」
明石「えーと、どこだったかなぁ…まさかさっきので蒸発しちゃったかな」
提督「明石、もう帰ってもいいか?」
明石「あ、あったあった…どっこいしょ!」ズズーン
提督「うわっ、デカい!」
明石「どうです!提督シェルター壱号機!」テーテッレテレテレー
提督「ええ~?」
明石「何ですかその反応は」
提督「だってこれどう見たって海水浴場のブイのデカイ奴じゃないか」
明石「ふふん、提督の眼は節穴ですか?これでもチタン合金の装甲で作ってあるんですよ?あとタングステンとか、アダマンチウムとか…
生半可な攻撃なんぞ雨霞のようなものです」
提督「まさか最近資源が不自然に減ってた原因って…」
明石「まま、そう言わずに!文句は乗ってみてからいくらでも受け付けますよ!」
提督「や、やめろ!むぐっ…」
明石「どうですか提督、中々良いものでしょう」
提督『!…!!…』
明石「あれ?あ、伝声管が閉まってる…それに空気口も」
提督『ぶはーっ、はーっ…!こ、[ピーーー]気か明石…』
明石「まぁまぁ、どうですか乗り心地は」
提督「狭いし息苦しい…大体何でお前の水着写真が貼ってあるんだ…しかもその裏になんか縮れた毛が」
明石「うふふ、お守りですよお守り!もう提督ったらスケベなんだからぁ」
提督「何なんだ一体…これはどうやって動かすんだ?それらしき物が付いてないぞ」
明石「艦娘に曳航してもらうんです。これが本当のヒモ男…ぷぷっ」
提督「やかましい!あと武装の一つくらい付いてないのか」
明石「そこの穴に栓がはまってますから押し出してください」
提督「こうか?」ポコッ
明石「消火用のポンプを改造しました。海水を吸い上げて深海棲艦どものお高く止まったツラにぶっかけてやってください!」
提督「……」
明石「あれ、提督?何でこっちにノズルを」
明石「ぺっ、ぺっ…うぅ、しょっぱいです…どうせかけるならもっと別のモノにしてくださいよう」
提督「全く暇さえあれば変なものばっか作りやがって…もう出る、どうやって開けるんだ?」
明石「それ外側からしか開けられませんよ?」
提督「は?」
明石「うふふ…提督にはコイツの性能を証明してもらいます…何、死にはしませんよ。当たってもどうということはないですから」
提督『ちょっとまっ…』
明石「グッド・ラック」
天龍「提督のやつ、どこに行っちまったんだ?いつもなら見送りに来てるはずなのに…」
龍田「あら、天龍ちゃん提督がいなくて寂しいの?」
天龍「ばっ、バカ!何言って」
電「ここまでテンプレなのです」
雷「ねぇねぇ、てんぷれって何なの?」
電「おねえちゃんは知らなくてもいいのです。あれ、明石さん?それと…」
天龍「おう明石か!提督見なかったか…ってなんだそりゃ?」
明石「あ、出撃するんですね。ちょうど良かった、提督も連れてってください」
雷「司令官?司令官なんてどこにも…あっ、司令官!?」
明石「提督ったらよっぽどみんなのことが心配だったんですね…『陣頭指揮を執る』とか言って聞かないんです」
天龍「て、提督…」キュン
龍田「提督、何だかものすごく不本意そうに見えるわあ…」
明石「照れ隠しです」
雷「司令官、さっきからもがいてて苦しそう…」
明石「武者震いです」
電「あっ、大人しくなったのです」
明石「酸欠…いえ、覚悟を決めたみたいですね。じゃあ提督のことお願いします」
龍田「あの、普通に足手まと」
天龍「わかったぜ…提督の命、預かった」
明石「天龍さん!」
天龍「提督…俺を信じろ。お前を信じる俺を信じろ……お前が俺を守りたいってんなら、まず俺がお前を守ってやる」キラキラ
提督『………』
天龍「俺達を、誰だと思ってやがる!!行くぞ、出撃!」
電「私たちまで一緒にしないでほしいのです」
明石「何もしてないのにキラづけとは早くも効果が表れているわね…ふふっ、自分の才能が時々怖いわ」
天龍「お、重い…重いぜ提督ぅ…」グテー
龍田「そんなもの引っ張ってるからだと思うわ天龍ちゃん」
雷「ね、ねぇ次は私に曳かせてよ天龍」
天龍「やだ」
雷「ずるいわよそんなの…天龍のけちっ!」
天龍「やだったらやなんだよ!俺のなの!」
雷「う"う~っ…うわぁ~ん、天龍がいじめる~!」
龍田「天龍ちゃん、雷ちゃんにも提督運ばせてあげて?ね?」
天龍「むぅ…ちょっとだけだぞ、ちょっと貸すだけだからな!」
雷「えへへ~司令官っ!雷が守ってあげるからねっ!」
電「お互いアホな身内を持つと苦労するのです」
龍田「…天龍ちゃんはアホじゃないもん…」
『ヌ、ヌ級!敵ノ艦娘ガ動キ出シマシタ!』
『何!?皆輸送船バカリダト思ッテイタガ』
『イヤ、何故カ上手ク動ケンヨウデス…ヤリマス!』
『待テリ級!』
『タ級少佐ダッテ…戦場デ手柄ヲ挙ゲテ出世シタンダ!』
―――――
ドーン!
雷「きゃあっ!」
提督『ぐぇええっ!?』
リ級『ナッ!?ア、当タッタハズナノニ』
ヌ級『アノ変ナブイノヨウナモノニ阻マレタ…何ダアレハ』
提督『うぅ…い、いでぇ…頭がガンガンする…』
雷「し、司令官大丈夫!?司令官!」
電「お客さんがおいでなすったのです。司令官、ゲッサムなのです」
提督『明石の野郎…俺をハメやがったな…』
天龍「ハメる…?龍田、ハメるってなんだ?」
龍田「提督う~?龍田ちゃんに何教えちゃってるのかしらぁ?」ギギギギ
提督『い、いやこれはその…ぶぇっ!?』ガキンガキン
リ級『コノ!コノ!シズメ、シズメ!』ヒュンヒュン
ヌ級『バ、バカナ…キイテナイノカ…?』ドンドン
提督『がっ、ぎゃっ、やめっ…』ガンガンガンガン
雷「し、司令官すごい!全部跳ね返しちゃってる!」
電「たぶん中身はミンチよりひどいことになってるのです」
天龍「提督…お前、自分の身を盾に…」キュン
龍田「天龍ちゃんはピュアなだけなのよ…アホなんかじゃないわ…」ブツブツ
電「よっしゃ、向こうの攻撃は提督バリアーで完全に遮断できることが証明されたのです。今度は奴らのフ○ッキンフェイスにブチかます番なのです」
龍田「でも電ちゃん、向こうはもう撤退しちゃったみたいよ?」
電「チッ、なのです」
龍田「明石ちゃん(と電ちゃん)って本当何考えてるのかしら…提督ぅ?生きてる?」
提督「………」
龍田「うわぁ」
電「ゲ○吐いて気絶してるのです…ばっちいのです」
龍田「装甲は傷一つ付いてないけど、中の人間はそれほど頑丈にできてないものね…ぶっちゃけ生きてるだけでもすごいわぁ」
天龍「提督!お前…」
龍田「て、天龍ちゃん?提督、ゲ○まみれよ?」
天龍「馬鹿野郎…本当に馬鹿野郎だなお前は…こんなボロボロになるまで頑張りやがって」ギュッ
雷「ていとく―――!バカ、バカ、バカ―――――ッ!!」ガバッ
電「なんとお姉ちゃんも続いたのです」
天龍「よしっ、ちゃんと捕まってろよ提督」
提督「う、う~ん…先輩…もう飲めないで…あります…」
雷「あーっ!天龍ずるい!私も提督おんぶする!」
天龍「お前にはどう考えたって無理だろ!」
ギャーギャー
電「自分の姉がゲ○まみれの男をおんぶするかしないかで争ってるなんて流石にキツすぎるのです……龍田?」
龍田「」
電「…しばらく一人にしてあげるのです。夕ご飯までには帰ってくるのですよ」
龍田「」
赤城「あっ、ゲ…提督、もうお加減はよろしいんですか」
提督「今何て言いかけたんだ赤城」
赤城「明石さんが探してましたよ。また試作品を作ったから試してくれって」
提督「……」ツカツカ
明石「あっ、提督!もう歩いても大丈夫なんですか?」
提督「ちっとも大丈夫じゃない、しばらくはまともに飯も食えなかったんだぞ」
明石「やっぱりあのお守りが効いたんですね!明石の溢れんばかりの提督LOVEを込めたお守りが」
提督「LOVEが一ミリでもあるならもう俺を実験台にするのはやめてくれ…あんな鉄の棺桶はもうごめんだ」
明石「鉄の棺桶とは何ですか。そういう苦情は死んでからにしてください」
提督「おい」
明石「さて、提督もお楽しみにしているでしょうが新作来てますよ。今回の装備は…」
提督「まるで聞いちゃいねぇ…今回も実験台か…」
明石「身代わり提督人形、略して身代わりくん~!」テーテッレテレテレー
提督「う、うわああっ!?いきなりどこから出してきたんだ!」
明石「えへへ、驚きました?毛の一本に至るまで提督を完全再現してみました」
提督「き、きもちわりぃ…ここまでそっくりとは…」
明石「何しろ敵を欺くためですからね、生半可な再現では駄目です。いざと言う時はこれを身代わりにしてとんずらすれば完璧ですよ!」
提督「やっとまともなものが…いや待て」
明石「どうしたんですか提督、身代わりくんをそんなに調べて…まさか提督ってナルシ」
提督「明石、こいつって目からレーザー撃ったりはしないよな?」
明石「はい?」
提督「人工知能搭載で勝手に動いたりとか、実は全身が武器の塊とかそんな余計な機能つけてないよな?」
明石「提督…失礼ですがSF小説の読み過ぎでは?」
提督「お前がそれを言うか…それにしてもどうやってここまで」
明石「それはですね、提督がお休みになった後に…あ」
提督「へ?」
明石「いえ、提督の健康診断のデータ、それに何といっても私の脅威の観察眼のたまものですっ!」
明石「いえ、提督の健康診断のデータ、それに何といっても私の脅威の観察眼のたまものですっ!」
提督「とにかく、これは精巧すぎてそこらへんに出しといたら混乱を招くな…人目に付かないところにしまっておいてくれ」
明石「じゃあ提督の私室にでも」
提督「絶対やだ」
明石「えー、じゃあ私の私室に保管しておきますよ」
提督「まぁそれでいいか…頼んだぞ明石」
明石「えっ、いいんですか!やったあ!よいしょっと…あっ」ズルッ
身代わりくん「」ゴトッ
明石「ご、ごめんね身代わりくん、痛かった?…ってどうしたんです提督、頭抱えて」
提督「あ、頭が割れるように痛い…何かで殴られたみたいだ…」
明石「頭痛ですか?ちゃんとお眠りになってます?」
提督「最近は誰かさんのおかげで深夜まで始末ひょ…はれ?あがっ、かっ…」
北上「ねーねー提督、北上さまだよー?起きないともっとすごいことやっちゃうよー」ビヨーン
大井「北上さん口の中なんて弄ったら汚いわよ」
北上「だって提督起きないんだもん。てーとくー?ぷっ…あはは!ねぇねぇ見てよ大井っち、すっごい顔!」
大井「いい加減起きてくださいよ提督!北上さんをこれ以上汚さないで!」ゲシゲシ
明石「て、てーとく何ですかその顔っ!ぷ、ぷぷぷぷっ」
提督「お、おへだってしゅきでこんな…い、痛い痛い!背中が思いっきり蹴られてるみたいに痛い!」
北上「あれ、明石っちじゃん。どうしたんだろうあんな大笑いして…えっ、提督?」
大井「何だ、これ人形だったんですね。それなら日頃のうっぷんを遠慮なく晴らせます。このっ!北上さんやっ!他の女の子にっ!色目ばっか使って!」ゴッスゴッス
明石「て、提督!しっかりしてください、急に倒れちゃって…どうされたんですか?」
北上「ねぇねぇ大井っち。これ持って帰っちゃおっか」
大井「…きっと明石さん、こんなものをわざわざ作ってはあんなことやこんなことを…破廉恥にもほどがあるわ」
北上「あはは、大井っちって本当にドスケベだよねえ。ほら、頭の方持って」
大井「くっ、結構重いわね…」
明石「そんなの非科学的ですよ。断言します、ありえません」
提督「じゃあこの背中のミミズ腫れはどうやって説明する気なんだ」
明石「て、提督……はじめてがこんなところだなんて明石…」
提督「お前何か俺が寝た後にどうとか言ってた気がするんだが」
明石「げ。聞こえてたんですか」
提督「やっぱ何かやってやがったな!さぁ吐け、全部吐きやがれこのマッド工作艦が!」
明石「え、えーとですね…科学的手法だけでは身代わりくんのリアリティの演出にはちょっと不安でして」
提督「非科学的とか言ってたくせに…」
明石「提督の御髪とか爪、【検閲ニヨリ不許可】とか頂戴して埋め込んじゃいました。まぁおまじないみたいなもんですよ」
提督「原因それかよ…もろ呪いの人形じゃないか…」
明石「提督ったら随分迷信深いですねえ。多分思い込みかなんかですよ」
提督「大体何でお前が俺の部屋に…うおおっ!?」ゾクゾクッ
明石「ど、どうされたんですか提督?」
提督「い、今何か柔らかいものが…」
大井「な、なななな、なっ…」
北上「ふぅ~ん、提督の抱き心地ってこんな感じなんだねぇ。いいねえ、しびれるねぇ」
大井「こ、この変態提督っ!北上さんから離れなさいっ!」ゴスッ
北上「これ人形だよ大井っち。あと提督なら渡さないよ」
大井「このっ、このっ、このっ!」ガスガスガス
北上「も~壊さないでよ?後で返しにいくんだから」
―――――
提督「ま…前が見えねえ…」フラフラ
明石「て、提督…やばいわ、これ本物かも…」
大井「ふ、ふふ…北上さんを汚した罪…たっぷりと償ってもらいますよ…」
北上「え、大井っち…何なのそれ」
大井「マッサージ器(仮称)ですよ…うふふふふふ、ふふふふ…提督と北上さんは私のものだって印を提督の身体の一番奥まで刻み込んであげるわ…」ヴィイイイイイ
北上「お、大井っち?いくら提督そっくりでもそんなとこまでは作り込んでないと思うよ?」
大井「壊してあげるッ!!」
北上「あっ」
―――――
提督「あ、明石…あの人形は一体どこにあ―――――――」
明石「あれ?さっきまであそこに座らせておいたはずなんですけど…ま、まさか本当に独りでに動き出しちゃったんじゃないですよね…」
提督「――――――――」
明石「提督?提督―?」
明石「し、死んでる…」
北上「あーあ、本当に壊れちゃった…大井っちのせいだよもう」
大井「……ハッ、わ、私ったら何を」
北上「せっかくお風呂の中に放置したりとか駆逐艦の部屋に夜這いさせたりとか訓練標的にしたりとか色々考えてたのに」
大井「ご、ごめんなさい北上さん」
北上「まぁやらかしちゃったことはしょうがないよ。二人で謝りにいこ?ね?」
大井「う、うん…」
―――――
北上「明石っち、いる?おーい明石っ「う"えええええん!!でいどぐううう!!!」
大井「あ、明石さんあんなに泣いて…そんなに悲しかったのかしら」
北上「壊した方がいうのもアレだけどダッ○ワイフ…ハズバンド?にそこまで執着するのもどうかと思うよ」
提督「」
明石「まだケッコンもじでながっだのにぃ…あがじをおいでがないでぐだざいよぉ…うえぇん、でいどぐぅ…」グスグス
大井「て…提督?うそ、本当に…」
北上「あ、大井っち。マッサージ器(大嘘)借りるよ?」
大井「き、北上さん!?あとそれはマッサージ器なの!あくまでマッサー(ry」
北上「おりゃ」ズブッ
提督「はふんっ!?」ビクンッ
北上「おっ、やった」
提督「はぁっ、はぁっ、はぁっ…ゆ、夢だったのか…なんて夢だクソッ…」
北上「ねぇねぇどんな夢見てたの?教えてよ」ヴィイイイ
提督「や、やめろ!そのおぞましい物体を俺に近づけるなぁ!」
明石「ていとくうううううう!!」
提督「どわあっ!?」
明石「で、でいどぐ…生きで、らっしゃっだんでずね…うぅ…」ズビズビ゙
提督「あ、明石…って垂れてる!色々な液が垂れて来てるぞ明石!」
大井「明石さん…鼻水くらいは拭いたほうが」
北上「愛など粘膜が産みだす幻想に過ぎんって言う人もいるし、別にいいんじゃないの?」
明石「う"ええええ~~ん!でいどぐうう~!」
提督「わ、わかったわかった!わかったからまずは顔拭いてこい!」
北上「あれから一か月かぁ…」
金剛「あれで明石関連のトラブルも少しは減ると思ったのデスガ…」
龍田「全然減ってないわねぇ。むしろ…」
陸奥「あ、また追いかけられてるわ提督」
明石「提督―!何で逃げるんですか―!?」
提督「お前ケッコンカッコカリのシステムも知らんのか!艦娘の方から指輪渡しても意味が無いんだよ!」
明石「それくらい知ってます!ですから指輪を改造して『カッコガチ』指輪をわざわざ作ったんじゃないですか!」
明石「24時間年中無休で明石が提督をフル装備でお守りできる指輪です!」
提督「それ付けてると生命の危険を感じるレベルで疲れるんだよ!」
明石「提督の生命力と艦娘のパワーを直結する革新的技術なんですよ?」
提督「ふ、ふざけ…危うく干からびるとこだったじゃないか!」
明石「次からは自重してある程度は出力セーブしますから!トラストミー!」
提督「トラストできるかぁああ!」
北上「まぁ、アリ、なんじゃない?あーいうのも」
金剛「理解できない世界デース」
龍田「かわいそうだけどあれも提督の仕事の内ってことねぇ」
陸奥「合掌、ね」
明石「私が絶対、ぜ~ったいにお守りしますから!待ってくださいよ提督―!」
提督「い、いやあああ!!」
―おしまい
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