もしもあの時貞本エヴァでシンジのサルベージがうまく行かなかったら (205)

エヴァSS

エヴァンゲリオン漫画版(貞本エヴァ)STAGE50「心の中へ…」からの分岐再構成

基本の流れは貞本エヴァですがテレビ、旧劇、新劇などの要素が都合よく挟まります


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420824210

==== 第九使徒との戦いから1か月 ネルフ本部 管制室 ====

ビーーーッ ビーーーッ ビーーーッ …

   (響き渡る警報音)

マヤ「エヴァ、信号を拒絶!」

マコト「プラグ内、圧力上昇!」

リツコ「現作業中止、電源落として!」

マヤ「だめです! プラグが排出されます!」

パシュウウウウゥゥ

   (突如として開いたエントリープラグのハッチから流れ出すLCL)

ミサト「シンジくん!!」

ザバアアアアアァァ

   (LCLに浮かんで流れてくるシンジの学生服)

   :
   :

==== ケージ ====

ミサト「うっ……うっ……」グスッ…

   (シンジの学生服を抱きしめ、作業通路にうずくまってむせび泣くミサト)

ミサト「人一人助けられなくて、何が科学よ…」

   (初号機を見上げ叫ぶミサト)

ミサト「シンジ君を返して……返してよっ!」

   (歩み寄るリツコとマヤ)

リツコ「ミサト……」

ミサト「うっ……ううっ……」

リツコ「最初から……やりなおしね……」

ミサト「……え?……」グスッ

   (初号機を見上げているリツコ)

ミサト「やりなおすって……あんた、さっき『失敗』って――」

リツコ「改良はしてみたけど、所詮は10年前に失敗した手順の焼き直し」

ミサト「……」グスッ

リツコ「こうなると、基礎的なデータ集めからやり直すしかないけれど……まあ、なんとかやってみるわ」

ミサト「……」

リツコ「さあ、少し早いけど、今日はこれできりあげましょう」

ミサト「リツコ……」

リツコ「ああ、それも寄越してちょうだい。貴重な研究材料だから。……シンジくんを助け出すための、ね」

ミサト「えっ?……え、ええ」

   (抱きしめていた学生服をリツコに差し出すミサト)

ミサト「そうよね……あたしがこんなじゃあ、レイとアスカに笑われちゃうわね」グスッ

   (立ち上がるミサト)

ミサト「ありがとう、リツコ。……頼んだわよ、シンジくんのこと」

リツコ「勘違いしないで。自分の仕事をしているだけよ」

ミサト「うん……。それでも、ありがと」

   (立ち去るミサトの後姿を見送るリツコとマヤ)

マヤ「……あの……基礎的なデータ集めって――」

リツコ「さあ……この先どうすればいいのか、見当もつかないわ」

   (ため息をつくリツコ)

マヤ「センパイ……」

リツコ「とりあえず、ここを片づけさせて。仕切り直しよ」

マヤ「は、はい!」

   :
   :

==== 数日後 発令所 ====

カタカタカタ……

マコト「ん?」

   (眼鏡をなおしてモニタを凝視するマコト)

マコト「なあ」

シゲル「あ?」

マコト「あれ、レイちゃんじゃないか?」

   (初号機ケージを映した画像の一隅 作業通路にたたずむ少女)

シゲル「……そうみたいだな」

マコト「何してるんだ? あんなとこで」

シゲル「ここんとこ毎日来てるみたいだぜ」

マコト「そうなのか?」

シゲル「このあいだのサルベージ実験の時にも来てたらしいよ」カタカタカタ…

マコト「ふうん……レイちゃんがねえ……何事にも動じないって感じだけど」

   (身じろぎもせず佇んでいるレイ)

マコト「やっぱり、エヴァに命を預けてる身としては無関心じゃいられない、ってことなのかな……」



==== ケージ ====

レイ「……」

    (外周通路のひとつ 初号機を見下ろしているレイ)

レイ(碇くん……もう、戻らないつもりなの?)

レイ(鈴原くんのことで、もう立ち直ることはできないと思っていた……でも、あなたは戻ってきて、私たちを救ってくれた)

   (目を伏せるレイ)

レイ(碇くん……戻ってきて。そこにいてはダメ……)

   :
   :

==== ターミナルドグマ ====

    (磔にされたリリスの前に佇むゲンドウと冬月)

冬月「どうするつもりだ、碇」

ゲンドウ「……」

冬月「覚醒したエヴァ……本当に我々の手に負えるのかね?」

ゲンドウ「……」

冬月(まったく、何を考えている? ユイくんばかりか、お前の息子まで戻って来ないというのに……)

   :
   :


==== 数日後 司令執務室 食卓 ====

  (広大なフロアに据えられたテーブルについているゲンドウとレイ)

ゲンドウ「レイ」カチャカチャ…

レイ「はい」

ゲンドウ「学校はどうした……最近、行っていないようだな」

レイ「……はい」

ゲンドウ「体調はどうだ」

レイ「問題……ありません」

ゲンドウ「そうか……ならいい」カチャカチャ…

レイ「……はい」

   :
   :

==== 通学路に近い廃屋 ====

   (佇んでいるレイ)

レイ(そう……体調に問題はない)

レイ(なのに……どうしてここから学校へ足が進まないのかしら)

レイ(鈴原くんのこと……碇くんのこと……人とのつながりが、少しはできたと思っていたけれど)

レイ(それも……壊れてしまったと思うから?)

ミィ~

レイ「?」

   (足元を見るレイ 歩み寄る白い子猫)

レイ(子猫……)

   (鞄を傍らにおろし、子猫を抱き上げるレイ)

レイ(こんなに痩せて……母親とはぐれたのかしら)

レイ「ごめんなさい。何も、食べるものを持っていないの」

ニィ~

レイ(私の栄養補助剤でもお腹の足しになるのかしら)

レイ「?」

♪~

レイ(ピアノの音?)

   (子猫を片腕に抱き鞄を拾い上げるレイ)

レイ(なぜ、こんなところで――)

   (音のする方へ歩き出すレイ)

レイ「!」

   (壁を回り込むレイ 廃屋の一室に置かれたグランドピアノを誰かが弾いている)

レイ「……」

   (演奏者の顔が見える位置までくるレイ 学生服を来た銀色の髪の少年)

少年「……知ってる? この曲」

レイ「え?」

少年「さっき街あるいているとき聞いた。――何て曲か、知ってる?」

レイ「……ベートーベン作曲、交響曲第9番ニ短調作品125」

少年「ふーん……」

レイ「……」

少年「その制服、第一中学のだね」

レイ「ええ」

   (立ち上がる銀髪の少年)

少年「連れてって」

レイ「……」

少年「道に迷った。こんなトコに来るはずじゃなかったのに」

レイ「……あなた、転校生?」

少年「まあね……君は? なんでこんなトコにいるの? 君も道に迷ったの?」

レイ「いいえ。私は――」

少年「なんでネコ、抱いてんの?」

レイ「……」

ニィ~

   (胸に抱いた子猫に視線を落とすレイ)

レイ(そうね……)

   (鞄を置き、子猫をそっと地面におろすレイ)

レイ「もう、行きなさい」

   (歩き出すレイと少年 ついて行こうとする子猫)

ニィ~ ニィ~

レイ「ついてきてはだめ。飼ってあげられないもの」

少年「……」

   (子猫を両手で抱え上げる少年)

ニィ~

レイ「……」

少年「……」ギュッ…グキッ

ニギャッ!

レイ「!」

少年「もう……死んだよ」ポイッ

   (動かなくなった子猫を草むらに投げ捨てる少年)


レイ「……なぜ……そういうことをするの?」

   (動揺し少年を睨みつけるレイ)

少年「だって、君、ついてこられて困ってたんだろ?」

レイ「だからと言って[ピーーー]ことはないわ」

少年「だってこのネコ、ほっといてもどうせ死ぬんだよ?」

レイ「!」

少年「親もいないし食べ物もないし……飢えて苦しんで徐々に死ぬんだ。だから、今殺してやった方がいいんだよ」ニコ…

レイ「……」ゾクッ

レイ(なに? この感じ……私は、なぜ怯えているの?)

レイ(怯えている?……そう……怯えている……私自身がこうしたかもしれないから)

レイ(……以前の私だったら……でも……)ギュッ…

   (ブラウスの胸元を不安げに掴むレイ)

レイ(碇くん……)ハッ…

レイ(碇くんなら、わかるのかしら……私は……)

レイ「あなた……誰?」

少年「……僕は渚カヲル。フィフスチルドレンだよ」

レイ「……フィフス?」

カヲル「聞いてない? ――綾波レイさん」

   :
   :

本日はここまで

・・・の前に、>>9 を再投下します


レイ「……なぜ……そういうことをするの?」

   (動揺し少年を睨みつけるレイ)

少年「だって、君、ついてこられて困ってたんだろ?」

レイ「だからと言って[ピーーー]ことはないわ」

少年「だってこのネコ、ほっといてもどうせ死ぬんだよ?」

レイ「!」

少年「親もいないし食べ物もないし……飢えて苦しんで徐々に死ぬんだ。だから、今殺してやった方がいいんだよ」ニコ…

レイ「……」ゾクッ

レイ(なに? この感じ……私は、なぜ怯えているの?)

レイ(怯えている?……そう……怯えている……私自身がこうしたかもしれないから)

レイ(……以前の私だったら……でも……)ギュッ…

   (ブラウスの胸元を不安げに掴むレイ)

レイ(碇くん……)ハッ…

レイ(碇くんなら、わかるのかしら……私は……)

レイ「あなた……誰?」

少年「……僕は渚カヲル。フィフスチルドレンだよ」

レイ「……フィフス?」

カヲル「聞いてない? ――綾波レイさん」

   :
   :

本日はここまで

コピペしただけじゃsaga付けても禁止ワード出てこないよ?コピペした上でピーの部分直さないと…
内容はすごく面白そうだから期待

()がテレビの副音声みたいだな

>>14
寝ぼけてた

>>15
会話だけで進んでいくのが理想なんだけど
アニメや漫画の視覚的な情報をセリフだけでやろうとすると
無理があるので

少し軌道修正します
次から

>>7からつづく

少年「ふーん……」

レイ「……」

少年「その制服、第一中学のだね」

レイ「ええ」

   (立ち上がる銀髪の少年)

少年「連れてって」

レイ「……」

少年「道に迷った。こんなトコに来るはずじゃなかったのに」

レイ「あなた、転校生?」

少年「まあね……君は? なんでこんなトコにいるの? 君も道に迷ったの?」

レイ「いいえ。私は――」

少年「なんでネコ、抱いてんの?」

レイ「……」

ニィ~

   (胸に抱いた子猫に視線を落とすレイ)

レイ(そうね……)

   (鞄を置き、子猫をそっと地面におろすレイ)

レイ「もう、行きなさい」

   (歩き出すレイと少年 ついて行こうとする子猫)

ニィ~ ニィ~

レイ「ついてきてはだめ。飼ってあげられないもの」

少年「……」

   (子猫を拾い上げる少年)

少年「……」ジー…

ニィ~

レイ「……」ハッ…

少年「……」グッ…

レイ「待って」

少年「……なに?」

レイ「何を……するつもり?」

   (警戒した様子で少年を睨みつけるレイ)

少年「だって、君、ついてこられて困ってたんだろ?」

レイ「だからと言って殺すことはないわ」

少年「ふーん……よくわかったね」

レイ「!」ギクッ

少年「このネコ、ほっといてもどうせ死ぬんだよ?」

レイ「……」

少年「親もいないし食べ物もないし……飢えて苦しんで徐々に死ぬんだ。だから、今殺してやった方がいいんじゃないの?」

レイ「……」ゾクッ

レイ(なに? この感じ……私は、なぜ怯えているの?)

レイ(怯えている?……そう……怯えている……私自身がそうしたかもしれないから)

レイ(……以前の私だったら……でも……)ギュッ…

   (ブラウスの胸元を不安げに掴むレイ)

レイ(碇くん……)ハッ…

レイ(碇くんなら、わかるのかしら……私は……)

レイ「私が、飼う」

少年「え?」

レイ「私がその子の面倒を見る。だから、放して」

少年「そうなの? さっきは飼えないって言ったじゃないか」キョトン

レイ「いいから、放して」

少年「別に、いいけど」ヒョイ

   (子猫を地面に戻す少年)

ニィ~

   (その子猫を抱き上げ、ふたたび少年を睨むレイ)

レイ「あなた……誰?」

少年「僕は渚カヲル。フィフスチルドレンだよ」

レイ「フィフス? あなた、エヴァのパイロット?」

カヲル「そうだよ。聞いてない? ――綾波レイさん?」ニコ…

   :
   :

とりあえずここまで

>>19つづき

==== 通学路 ====

   (歩いているカヲル、レイ)

レイ「……」ピタッ

カヲル「……?」

レイ「――その角を曲がれば、あとは学校まで道なりだから」

カヲル「えっ?」

   (踵を返すレイ)

レイ「……」スタスタスタ…

カヲル「おーい」

   (レイを追うカヲル)

カヲル「なんで学校行かないの?」

レイ「この子を連れては行けないもの」

ニィ~

レイ「あなたこそ、学校へ行くんじゃなかったの?」

カヲル「君が行かないなら、僕も行くのやめたよ」

レイ「……」ピタッ

レイ「なぜ? 道順は教えたのに」

カヲル「それよりネルフに連れて行ってよ」

レイ「……」

カヲル「正式な配属はもう少し先だと思うけど……早く会ってみたいんだよ。僕のエヴァンゲリオンに」

レイ「……」

レイ(「僕の」エヴァンゲリオン?)

   :
   :

==== ネルフ本部 実験場 管制室 ====

   (窓の外には半ばLCLに浸かったテストプラグが1本)

   (モニタ上 プラグ内映像 不機嫌そうな表情のアスカ)

マヤ「シンクログラフ、マイナス12コンマ8……起動指数ギリギリです」

リツコ「ひどいものね。昨日より更に落ちてるじゃない」

ミサト「アスカ、今日調子悪いのよ。二日目だし」

リツコ「シンクロ率は表層的な身体の不調に左右されないわ。問題はもっと深層意識にあるのよ」



==== テストプラグ内 ====

リツコ『アスカ、上がっていいわよ』

アスカ「……」



==== 管制室 ====

ミサト「――アスカのプライド、ずたずたね」

リツコ「……弐号機のコア、変更もやむなしかしらね」

ミサト「え? どういうこと?」

リツコ「近いうちにフィフスチルドレンが来ることになったわ」

ミサト「……なによそれ、タイミング良すぎなんじゃない?」

リツコ「委員会が直で送り込んできた子よ」

ミサト「委員会が……」

リツコ「見る?」

   (データ媒体を取り出すリツコ)

ミサト「もちろんよ」

   (厳しい表情で受け取るミサト)

==== 女子トイレ ====

ザーーーッ

アスカ「う~~~」

   (洗面所 手を洗っているアスカ)

アスカ「女だからって、何でこんな目にあわなきゃなんないのよ……子供なんて絶対いらないのに」

   (鏡の中の自身の姿を見るアスカ)

アスカ「なんで? どうして?」

   (鏡に手を突くアスカ 目を伏せる)

アスカ「なんで急にうまくいかなくなっちゃったのよ……この前までちゃんとシンクロできたのに……」

   (ふと顔を上げるアスカ)

アスカ「!」

   (鏡の中、こちらを窺っているカヲルの顔)

   (慌てて振り返るアスカ ポケットに手を突っ込んでたたずんでいるカヲル)

アスカ「誰!? チカン!?」

カヲル「?……チカンってなに?」

アスカ「チカンはチカンよ! でなきゃ変態でしょ!? 女子トイレを覗くなんて!」

カヲル「……覗いたのは確かだけど、君の独り言が聞こえたからだよ」

アスカ「……」

カヲル「君ねえ……エヴァは心を開かなければ動かないよ」

アスカ「!」

アスカ「何……言ってんの? あんた」

アスカ「なんであんたにそんな事がわかるのよ! あんな人形にどうやって心を開けって言うの!?」

カヲル「エヴァは人形じゃないよ。ちゃんと心がある。それにシンクロできないってことは、君が心を閉ざしてるってことさ」

アスカ「!」

アスカ「なによ……エラそうに……」ワナワナ…

アスカ「なんで初対面の変態にそんなこと言われなきゃならないの? パイロットはあたしよ!?」


==== 通路 女子トイレの前====

   (子猫を抱いて歩いてくるレイ)

   『何も知らないくせに!!』

   (トイレの中から響くアスカの声)

レイ(……惣流さん?)

アスカ『それ以上エラそうなこと言ったら、ただじゃおかないわよ!!』




==== 女子トイレ ====

   (入っていくレイ カヲルを見咎めて)

レイ「あなた、何故こんなところにいるの?」

アスカ「ファースト!? なによ、この変態、あんたの知り合い!? 」

レイ「勝手に歩き回ってはだめ、フィフス」

アスカ「あんたが連れてきたの!?……って……『フィフス』!?」

カヲル「?」

アスカ「あんた……エヴァのパイロットだって言うの!?」

カヲル「そうだよ」

ミサト「どうしたの!? あんたたち」

レイ「葛城三佐……」

アスカ「あ……」グラッ…

   (よろけるアスカ)

ミサト「アスカ!?」

   (抱き留めるミサト)

ミサト「貧血起こしてるみたい……医務室に運ぶわ」

レイ「……手伝います」

ミサト「いいわ、まかせて……あら?」

レイ「?」

ミサト「どうしたの? そのネコ?」

レイ「……学校に行く途中で拾って――」

ミサト「拾った? それをどうして――」

レイ「……」

ミサト「……まあいいわ」

   (カヲルに顔を向けるミサト)

ミサト「渚カヲルくんね?」

カヲル「はい」

ミサト(渚カヲル……過去の経緯は抹消済み……生年月日はセカンドインパクトと同一日。それ以外はすべて不明)

ミサト(委員会が直で送ってきた子供、か……ただの子供じゃない。必ず何かあるわ)

ミサト「あなたはまだ部外者のはずよ。すぐに出てってちょうだい」

カヲル「……」

ミサト「レイ、送ってあげて」

レイ「でも――」

アスカ「ミサト」

ミサト「アスカ?」

   (ふらつきながら身を起こそうとするアスカ)

アスカ「もう放して。自分で立てるわ」

ミサト「だめよ! まだ顔が真っ青だわ」

アスカ「放してってば!」バッ

ミサト「アスカ!」

アスカ「大丈夫だって言ってるでしょ!」

   (カヲルをにらむアスカ)

アスカ「こんなことぐらいで……負けちゃいられないのよ、あたしは」

ミサト「……アスカ?」

カヲル「……」

ビーーーッ ビーーーッ ビーーーッ…

一同「!!」

男性オペ『総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦、用意! 繰り返す――』

アスカ「使徒!? まだ来るの!?」

   :
   :

==== 発令所 ====

シゲル「目標は衛星軌道上に停滞中。映像で確認しました。最大望遠にします!」

ヴン…

リツコ「これは……」




==== 廊下 ====

男性オペ『総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦、用意。エヴァンゲリオン零号機および弐号機パイロット両名は緊急配置』

レイ「葛城三佐……」

ミサト「なに? レイ」

レイ「猫を――」

ミサト「えっ? ああ、そうね……」ゴソゴソ……ピッピッ…

ミサト「ああ、私ですけど。ちょーっちお願いしたいことがあるんだけど――」

レイ「……」

アスカ「ミサト、放して。あたし、行かなきゃ」ハァ…ハァ…

ミサト「大丈夫? そうだ、レイ、あなたアスカを――」

アスカ「やめてよ! 大丈夫だってば!」

黒服「お呼びですか」

ミサト「早くて助かるわ。その猫、ちょっち預かっててくれない?」

黒服「――は?」

カヲル「えーと、葛城さん」

ミサト「なに?」

カヲル「どうしよう、僕。外に出たら危険ですよね?」

ミサト「しかたないわね……。とりあえず、私と一緒に来なさい。もう、勝手に歩きまわっちゃダメよ」

   :
   :

支援

>>27 ありがとう

>>26のつづき 次から

   (中略)

    :
    :

==== 第十の使徒撃退後 ネルフ本部 病室 ====

   (ベッドの上に横たえられているアスカ 虚ろに天井を見つめている)

レイ「惣流……さん……?」

アスカ「……」

レイ「惣流さんは……セカンドは、どうしたんですか?」

   (アスカのベッド際、男性医師とならんで立っているリツコ)

リツコ「そっとしておいてあげて。精神に負担をかけ過ぎたのよ。……助けるのが少し遅すぎたわ」

レイ「……どういうことですか?」

リツコ「……」

レイ「もとに戻るんですよね?」

リツコ「今は何とも言えないわ。限界ギリギリのダメージを受けたのよ。心の最深部までね」

レイ「……」

リツコ「もとに戻るのは難しいわ」

レイ「そんな……」

   :
   :


==== ネルフ本部 廊下 ====

ミサト「渚カヲルくん」

   (振り返るカヲル)

ミサト「たった今から、正式にネルフ本部配属およびエヴァンゲリオン弐号機のパイロットに任命します」

カヲル「……」

   :
   :

わくわく
支援

>>30 ありがとう はかどらないけど

>>29つづき 次から

==== アスカの病室 ====

   (うつろに天井を見つめたまま横たわっているアスカ)

医師「じゃあ、私はこれで」

リツコ「ええ、ありがとう」

   (出ていく医師)

リツコ(ふう……)

アスカ「……」

リツコ(シンジくんに続いてアスカまで……これじゃパイロットが何人いても追いつかないわ……)

   「センパイ」

   (振り返るリツコ バインダを抱えて立っているマヤ)

マヤ「大丈夫ですか?」

リツコ「ええ……ごめんなさい、大丈夫よ」

マヤ「あまり、無理なさらないでください……あの……」

リツコ「どうしたの?」

マヤ「初号機のテレメトリ、今日の分の解析がおわったんですけど、その中に……」

   (バインダを開いて記録紙らしきものを見せるマヤ)

リツコ「……どういうこと?」

マヤ「マギで4回走らせて、全て同じ結果でした」

リツコ「まるで、あの使徒の攻撃に呼応していたみたいね。時刻も、強度も」

マヤ「センパイもそう思いますか?」

リツコ「……シンジくんのサルベージ作業、急ぐ必要がありそうね。初号機のデータ、詳しく調べてみましょう」

マヤ「はい!」

   (出ていくマヤ そのあとを追って病室を去りかけるリツコ)

リツコ「……」ピタッ

リツコ(あるいは……呼応していたのは……)

   (寝ているアスカを振り返るリツコ)

リツコ(……パイロットへのダメージに対して?)

   :
   :

==== ネルフ本部 実験場 管制室 ====

   (窓の外には半ばLCLに浸かったテストプラグが1本)

   (モニタ上 プラグ内映像 目を瞑っているプラグスーツ姿のカヲル)

リツコ「あと0.3下げてみて」

マヤ「はい」

ピピピピピ……

冬月「このデータに間違いはないな?」

マコト「はい。全システムは正常に作動してます」

マヤ「マギによるデータ誤差も認められません」

リツコ「なんてこと……ほんの試しにシンクロテストを受けさせただけなのに……」

   (モニタの中のカヲルを見るリツコ)

リツコ「まさか、コアの書き換えなしに弐号機とシンクロするなんて」

マヤ「でも、信じられません!……いえ……システム上ありえないです」

ミサト「でもこれは事実なのよ」

   (テストの様子を腕組みしながら見ているミサト)

ミサト「まず事実を受け止めてから、原因を探ってみて」

マヤ「……はい……」

ミサト「初号機のほうは?」

リツコ「この後、レイに入ってもらって、模擬体経由でのシンクロテストを行う予定よ」

ミサト「レイを? でも、この前は初号機に――」

リツコ「そのために、マギによるバックアップと、パーソナルデータのリアルタイム補正をしながら進めることにしているわ」

ミサト「だとしても!」

リツコ「わかってる」

ミサト「……」

リツコ「でも、選択の余地はないのよ」

ミサト「……そうね……」

   :
   :

==== ネルフ本部 廊下 ====

   (プラグスーツ姿で模擬体実験場へ急ぐレイ)

レイ「……」スタスタ…

カヲル「ああ、ファースト」

   (更衣室から出てきたカヲル レイに並んで歩き出す)

レイ「……なに」

   (カヲルをちらりと横目で見てまた視線を戻し歩き続けるレイ)

カヲル「僕も正式にパイロットだってさ。昨日言われた。さっきシンクロテスト受けてきたよ」

レイ「そう」

カヲル「そういうわけだから、改めてよろしく」

レイ「……よろしく」

カヲル「槍投げるとこ見てたよ。すごかったね」

レイ「そう? よくわからない」

カヲル「……」スタスタ…

レイ「……」スタスタ…

カヲル「……ふーん」

レイ「……何?」

カヲル「君は、僕と同じだね」

レイ「!」ピタッ

カヲル「……だって、そうだろ?――」

レイ「いいえ……同じじゃないわ」

   (カヲルをにらむレイ  怪訝な顔をするカヲル)

レイ「確かに、私たちを構成している物質は同じ……でも違うのは、これまで誰と出会い、どう生きてきたかということ」

   (レイの脳裏をよぎる、シンジの手の記憶)

レイ「あなたと私はよく似ているかもしれないけど、同じではないわ」

カヲル「……」

   :
   :

まったり支援

>>35 ありがとう

まったりいきます 次から

==== 模擬体実験場 管制室 ====

   (窓の外にはLCLに浸かった模擬体)

   (モニタ上、シミュレーションプラグ内の映像 搭乗しているレイ)

リツコ「――用意はいい? レイ」

レイ『はい』

リツコ「いいわ。はじめましょう」

マヤ「了解。テスト、スタート」

男性オペ『テスト、スタートします。オートパイロット、記憶開始』

女性オペ『モニター、異常なし』

男性オペ『シミュレーションプラグを挿入』

   (窓の外、模擬体に飲み込まれていくシミュレーションプラグ)

女性オペ『システムを模擬体と接続します』

マヤ「シミュレーションプラグ、マギの制御下に入りました」

男性オペ『シンクロ位置、正常。プラグ深度、変化なし』

リツコ「マギを通常に戻して。シミュレーションプラグを模擬体経由で初号機本体と接続します」

マヤ「了解」



==== 初号機ケージ ====

女性オペ『初号機、主電源、接続完了』

男性オペ『各拘束具、問題なし』

==== 模擬体実験場 管制室 ====

男性オペ『エヴァ初号機、コンタクト確認』

マヤ「データ受信、再確認。パターン、グリーン」

リツコ「どう? レイ」

レイ『問題、ありません』

リツコ「異常を感じたら、すぐに中止するのよ」

レイ『はい』

リツコ「……接合テスト、セカンドステージへ移行」

マヤ「初号機、第2次コンタクトに入ります」

グウウウウウゥン……

   (モニタ上 目を閉じて俯いているレイ)

マヤ「ハーモニクス、すべて正常位置」

リツコ「初号機からのパルス逆流は?」

マヤ「いまのところ、兆候ありません」

リツコ「……つづけて」

女性オペ『第3次接続を開始』

マヤ「セルフ心理グラフ、安定しています」

リツコ「了解。A10神経接続、開始」

   :
   :


==== シミュレーションプラグ内 ====

ヴォーーーー…

レイ(……なに?)

レイ(私が私でない感じ……とても変)

レイ(体が融けていく感じ……私が分からなくなる)

レイ(私の形が消えていく……私でない人を感じる)

レイ(誰かいるの? この先に……)

レイ(……碇君?)

--------
----
--

もしもシリーズ好き

>>39 ありがとう

>>38のつづき 次から

レイ「……」ハッ…

   (制服姿 両側を木立に挟まれた歩道に立っているレイ)

ミーン ミーン ミーン…

   (照りつける夏の日差し 蝉の声 目の前に続いている歩道)

   (振り返るレイ)

レイ「……?」

   (少し離れた街路樹の根元に幼い男児が立っている)

   (3歳くらい 麦わら帽子 縞の半袖シャツ 半ズボン)

ミーン ミーン ミーン…

   (幹にしがみついて鳴いている蝉を見上げている)

「シンジ」

   (レイの背後から大人の女性の声  顔をあげ、レイの背後のどこかを見る幼児)

レイ「!」

   (振り返るレイ  何本か奥の並木の陰  こちらを向いて立っている女性)

   (ふたたび幼児に向き直るレイ)

レイ(この子……碇くん?)

   (レイをよける風もなくこちらへ駆けてくる幼児 とっさに抱き留めようと身をかがめるレイ)

   (と、レイの体をすり抜けて背後へ走り去っていく)

レイ「!!」

   (振り返るレイ 先ほどの女性が幼児を抱き上げる)

レイ(お母さん? 碇くんの――)

女性「行きましょう」

   (振り返り、レイと反対方向に歩き出す女性)

レイ「……」

   (我知らずスカートの太腿のあたりを握り締めているレイ)

レイ「碇……くん?」

   (女性の肩越しに顔をのぞかせ、不思議そうにレイの方を見る幼児)

   (レイが見えている風ではなく、レイの方向に視線がたよりなく彷徨う)

女性「どうしたの?」

   (半ば振り返って腕の中の幼児に問う女性)

幼児「……ううん」

   (半ばレイの方を向いている女性の顔)

   (顔立ちと表情はぼやけてよく見えないが口許がほくそ笑んでいるのがわかる)

レイ「……!」

   (二人を追って歩き出すレイ  気付かぬふうに歩み去っていく女性)

レイ「……」スタスタスタ…

   (次第に足を速め、小走りになるレイ)

   (しかしカメラをズームバックするように女性の背中が遠のいていく)

レイ「碇くん!!」タッ…タッ…タッ…

   :
   :


==== 管制室 ====

マヤ「ハーモニクスレベル、プラス16」

リツコ「気分はどう? レイ」

レイ「……」

リツコ「……レイ?」

   (モニタの中、目を瞑っているレイ)

リツコ「……」

   (目を瞑ったまま、わずかに眉をひそめる)

リツコ「テレメトリは?」

マヤ「呼吸、脈拍、正常。プラグ深度、変化ありません」

リツコ「……」

マヤ「どうしますか?」

リツコ「実験中止。初号機とのシンクロを切って」

マヤ「カットですか?」

リツコ「ええ。初号機からのフィードバックに注意して」

マヤ「了解。カウントスタートします。シンクロカット・シーケンス、スタートまで10秒。8、7……」

==== 並木道 ====

ミーン ミーン ミーン…

レイ「……」ハッ…ハッ…ハッ…

   (いつの間にか全力で走っているレイ  裏腹に遠のいていく女性の後姿)

ガッ…

レイ「!」

ドサッ

   (何かに躓いて転倒するレイ)

レイ「……つ……!」ハッ!

   (顔をしかめて右足首を見るレイ 息を呑む)

   (足首から先がガラス細工のように砕けている)

   :
   :

==== 管制室 ====

ピピピピ……

マヤ「シーケンス、スタートしました。パルス、正常。切断完了まで25秒――」

リツコ「……」




==== 並木道 =====

ミーン ミーン ミーン…

レイ「……」ハァ…ハァ…ハァ…

   (身を起こそうとするレイ)

   (身体を支えて地面に突いた左腕が肩口から砕け、また地面に転がる)

   (必死に身をよじって起きようとするレイ 遠ざかる母子の後姿)

レイ「……んっ!」ガシャン…

   (もがくたびに体のあちこちが砕け、細かい砂になって風に吹き払われていく)

   (舞台照明が落ちるように周囲の景色が闇に消えていく)

   (遠ざかる母子の姿だけがくっきりと見えている)

   (上体が砕け、首だけになって地面に転がるレイ)

レイ「……!!!」

   (叫ぼうと必死に口を動かすが声が出てこない)

   (やがて母子の後姿も闇に消え、何も見えなくなる)

--------
----
--

レイ「!」ハッ…

==== 実験場 シミュレーションプラグ ====

プシュー…

   (開くハッチ 覗き込むリツコ)

リツコ「レイ?」

レイ「赤木博士……」

   (呆然とリツコの顔を見るレイ)

   (リツコの背後 機材の片づけをしている作業員たち)

リツコ「大丈夫? あなたは――」

   (自分の両手をかわるがわる見ているレイ)

レイ「碇くんは?」

リツコ「えっ?」

   (周囲を不安げに見回すレイ)

レイ「碇くんが……!」ハッ!

ガバッ

リツコ「きゃっ!」

   (プラグから飛び出し、実験場の外へ駆けだしていくレイ)

リツコ「レイ! どこへ行くの? レイ!!」

   :
   :


==== 通路 ====

カツカツカツ…

レイ「……」ハッ…ハッ…

   (LCLを全身から滴らせながら走っていくレイ 後に点々と残るLCLだまり)

   :
   :

==== 初号機ケージ ====

レイ「……」ハッ…ハッ…

   (アンビリカルブリッジに立って息を切らしているレイ)

   (ぐっしょりと濡れた髪から頬をつたって顎から滴るLCL)

レイ(碇くん……)ポタッ……ポタッ……

   (歩み出て手すりにつかまり、初号機を見上げるレイ)

レイ(忘れてしまったの? なぜ?)ポタポタ……

  「――ふーん」

レイ「!」

   (振り返るレイ)

カヲル「……」カツカツカツ…

   (ケージに入ってくるカヲル 初号機を見上げる)

レイ「……フィフス」

カヲル「一機足りないと思ったら、そういうことか」

レイ「……」

カヲル「なに、泣いてんの?」

レイ「え?」

   (頬を触ってみるレイ 頬を伝ってとめどなく流れてくる涙)

レイ(涙?……泣いているのは……私?)

カヲル「サードチルドレン……碇シンジくん……だっけ?」

レイ「……」

   (うつむくレイ)

カヲル「戦闘中に我を忘れて、エヴァに取り込まれたって聞いたけど――」

レイ「……」

カヲル「仕方ないよ」

   (レイの横顔を覗き込むカヲル)

カヲル「サードがバカだったんだ」

レイ「!」

   (キッとカヲルを睨むレイ)

カヲル「……?」

パアアアアァン!!

カヲル「――っ!!」

レイ「……」

   (カヲルの頬を張ったまま、睨んでいるレイ)

カヲル(痛って……)

   (頬を押さえるカヲル)

レイ「……」プイッ…スタスタスタ……

   (ケージを出ていくレイ)

カヲル(なっ……なんなんだよ……)

   :
   :

==== リツコの研究室 ====

   (デスクについてメモを取っているリツコ)

   (リツコの横の椅子に、半ば俯いて腰かけているレイ 制服姿 腫れぼったい目をしている)

   (レイの後ろにバインダを抱えて立っているマヤ)

リツコ「――そう……」

レイ「……」

リツコ「慎重を期したつもりだったけど、かえって苦痛を与えてしまったってことね……」ハァ…

   (メモを取り終えてデスクの上にペンを転がすリツコ)

リツコ「悪かったわね、レイ。――マヤ?」

マヤ「はい。いまの話とあわせて、今回のデータを少し詳しく見てみます」

リツコ「シンジくんとコンタクトできる可能性があることがわかっただけでも収穫だわ。システムを調整して、明日また試してみましょう」

マヤ「はい、センパイ」

リツコ「お願いするわ。きょうはもう帰っていいわよ、レイ」

レイ「はい」ガタン……

   (立ち上がるレイ  退室しようとするマヤとレイ)

リツコ「ああ、レイ」

レイ「……?」

   (立ち止まり振り返るレイ デスクの引き出しの一つをあけるリツコ)

リツコ「忘れるところだったわ。これ。昼間言ってた――」

   (鈴のついた細い赤いベルトを取り出し手渡すリツコ)

レイ「……ありがとうございます」

リツコ「いいのよ。子猫ちゃんによろしく」

レイ「はい……失礼します」

   :
   :

==== ミサトのオフィス ====

ミサト「――まったくもう……」

   (頭を振るミサト ミサトのデスクの前に立つカヲル)

ミサト「女子トイレでの件といい、あなたの態度、問題が多すぎるわよ」

カヲル「でも僕――」

ミサト「上司と話すときはポケットから手を出しなさい!」

カヲル「……僕、親切のつもりで言ったんですけど、割と。なんで痛い思いした上に怒られなくちゃなんないの?」

ミサト「レイの気持ちも考えなさい」ハァ…

   (ため息をつき、書類をまとめるミサト)

ミサト「仲直りするのよ。いいわね?」

カヲル「仲直りって……僕、ファーストに仲良くしてもらったことないんですけど――」

ミサト「じゃあ仲良くしなさい! これは命令よ」ジロッ

カヲル「……」ポリポリ…

   :
   :

==== レイのマンション ====

ガチャン……カチッ

   (ドアを閉め、部屋の明かりを灯すレイ)

レイ「……」

   (がらんとした室内 シンジが最後にきたときに比べると少し物が増え整頓されている)

ニィ~

   (レイに歩み寄り足にまとわりつく白い子猫)

レイ「ただいま……」

   (子猫の後ろ頭を少し撫でてやるレイ)

レイ「……」スタスタスタ……ドサッ

   (部屋を横切り、鞄を置くレイ ついて歩く子猫)

レイ「……」ジャー……

   (キッチンに立ちケトルに水を入れ、コンロにかけるレイ)

   (容器からティースプーンで茶葉をすくいポットに入れる)

レイ「……」ゴソゴソ…

   (棚から取り出したキャットフードを床に置いた皿に少しあけ、ミルクをまぶしてやるレイ)

レイ「ごめんなさい、遅くなって」

ニィ~

   (餌を食べ始める子猫)

レイ「……」コポコポコポ……

   (ポットにお湯を注ぐレイ)

レイ「……」カチャカチャ

   (ポットから紅茶を注ぎ、カップを持ってベッドに腰掛けるレイ)

ニィ~

   (餌を食べ終わってまたレイにまとわりつく子猫)

   (カップをおき、リツコからもらった首輪をつけてやるレイ)

   (紅茶を飲みながら、部屋を見回す)

レイ「あなた、行儀がいいのね」

グルルル…

   (レイに撫でられ目を閉じて喉を鳴らしている子猫)

レイ(人に飼われていたのかしら……捨て猫?)

レイ「私に、あなたの言葉がわかればいいのに……」

   :
   :

==== 闇に包まれた通信室 ====

   (広大なフロアの中央のデスクに座るゲンドウ)

   (その頭上を取り巻く様に浮かぶモノリス群)

モノリス06『――やむを得ない? 言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ。最近の君の行動には目に余るものがあるな』

ゲンドウ「どう言われましても、槍はもう元には戻せませんよ」

   (立ち上げるゲンドウ)

ゲンドウ「これ以上の審議は無用でしょう。私は退席させていただく」

   (部屋の出口に向かうゲンドウ)

モノリス01『碇』

   (立ち止まるゲンドウ)

モノリス01『これ以上、事を独断で進めるなら、次はもう君の席はないぞ』

   (肩越しに半ば振り返るゲンドウ)

ゲンドウ「……心しておきましょう」カツカツカツ…

  (退室するゲンドウ)

モノリス03『それもやむなし……か』

モノリス01『碇……ゼーレを裏切る気か』

モノリス02『そもそも君がもっと真面目にやっていれば、こんなことにはならなかったはずだよ』

   (部屋の一隅 パイプ椅子に腰かけているカヲル)

カヲル「……」

モノリス02『次からは事前に知らせて欲しいものだな、タブリス。……聞こえているのか?』

カヲル「聞こえてるよ」

モノリス群『……』

カヲル「仕方ないだろ? あの時は槍を使うのがあまりにも唐突過ぎたし、あそこで僕が止めるのも変だし」

モノリス群『……』

カヲル「それより、僕がここに来るの、もうまずいんじゃないかなあ? 正式にネルフの一員になったんだよ?」

モノリス01『わかっている。しかし連絡は怠るな。碇がまた不穏な動きを少しでも見せたら、すぐに知らせるのだ』

カヲル「わかってるよ。言われた通りファーストチルドレンには張り付いてるし……まあ、相手は女の子だしね。四六時中ってわけにもいかないけど」

モノリス群『……』

カヲル「それにしても、人間というのは奇妙な生き物だね。自分以外のものに興味を持ちすぎる。他人のために必死になったり――」

   (昼のレイの様子を思い浮かべるカヲル)

カヲル「――泣いてみたり、怒ったり……見てて飽きないけど」

モノリス01『人間とはそうしたものだ』

カヲル(まあ……人間と呼んでよければ……ね。ファーストの場合)

   (頬を少しさすりながら聞いているカヲル)

モノリス01『しかし我々の計画が実行されれば、人はそう言ったわずらわしさから解放されるだろう』

   :
   :

支援

>>54 ありがとう
>>53のつづきから

==== 数日後 模擬体実験場 =====

カタカタカタ…

   (モニタの中 目を閉じてシートについているレイ)

リツコ「……」ハァ…

リツコ「――いいわ、レイ。きょうはここまでにしましょう」

レイ『……』

   (目を開けるレイ)

リツコ「気持ちはわかるけど、これだけがあなたの仕事じゃないのよ」

レイ『……はい』

   (落胆した様子のレイ)

   (消えるモニタ)

リツコ「一転して手がかり無しとはね……初日にレイが見たのは、結局、何だったのかしら」

マヤ「可能な設定の組み合わせは逐一試してるんですけど……」

リツコ「見落としがないか、もう一度洗い直しましょう。まずは最初のときの状況を再現してみないことには、始まらないわ」

マヤ「はい……それにしても――」

リツコ「なに?」

マヤ「レイの様子……レイがあんなに落ち込むなんて」

リツコ「……」

マヤ「なんだかんだ言って、女の子なんですね……なんとかしてあげたいですけど……」

リツコ「……!」

リツコ(……そう……)

   (初号機を映した別のモニタを見るリツコ)

リツコ(ただの人形かと思っていたけど……最近、表情が人間らしくなってきたのは、そのせい?)

マヤ「……センパイ?」

リツコ「……ええ、そうね。何とかならないものかしらね……」

   :
   :

==== アスカの病室 ====

ピッ……ピッ……ピッ……

アスカ「……」

   (天井を虚ろに見つめてベッドに横たわっているアスカ)

レイ「……」

   (腫れぼったい目 ベッド際に立ち、憔悴したようすでアスカを見下ろしているレイ)

レイ(あなたなら……呼び戻せるのかしら)

アスカ「……」

ピッ……ピッ……ピッ……

レイ(碇くんと一緒に暮らしていた、あなたなら……)

ピッ……ピッ……ピッ……

アスカ「……」

レイ「……」クルッ…

   (とぼとぼと病室の出口へ向かうレイ)

   「……ファースト?」

レイ「!」

   (立ち止まるレイ ゆっくりと振り返る)

アスカ「……」


   (レイの方に顔だけ向けているアスカ ぼんやりとした眼差し)

アスカ「あんた……何やってんの? こんなとこで」

レイ「……」

   (何か言おうとして口をつぐみ、また天井を見るアスカ)

アスカ「あたし……何やってんだろ……こんなとこで……」

   :
   :

このシリーズ?は毎度良いな

エヴァ年とやらだな

支援

1乙!④!!
いつも、1書くシリーズはどれも原作の雰囲気が出てて凄い

>>58 >>59 >>60
ありがとう

>>57のつづきから

==== アスカの病室 ====

ピッ……ピッ……ピッ……

看護師「――こんどはそっちを向いて……そう、それでいいわ。次は――」

   (アスカに処置をしている看護師たち  大人しく処理されているアスカ)

   (部屋の一隅で話し合っているミサトとリツコ)

ミサト「――それで?」

リツコ「記憶に多少の混乱がある以外は正常と言っていいわね」

ミサト「混乱?」

リツコ「この間の使徒との戦闘の少し前あたりからが、かなり怪しい感じね。戦闘そのものは全くと言っていいほど、覚えていないようだわ」

ミサト「そんな……どうして?」

リツコ「裏を返せば、それだけ深い心理的ダメージを受けたということよ」

ミサト「そっか、確かに……」

ピッ……ピッ……ピッ……

ミサト「思い出せない方がいいのかもしれないわね。今のアスカにとっては」

   :
   :

==== アスカの病室 ====

ピッ……ピッ……ピッ……

   (ベッドに横たわり、天井を見ているアスカ)

アスカ「そっか――」

   (アスカのベッドの横、丸いすに腰かけリンゴの皮を剥いているレイ)

レイ「……」シャリシャリ……

アスカ「――負けたんだ、あたし」

レイ「……ごめんなさい」

アスカ「なんで謝るのよ」

   (少し顔を巡らせてレイの方を見るアスカ)

アスカ「あんたが気にすることないでしょ。聞きたがったのは、あたしなんたから」

レイ「……」シャリシャリ……

アスカ「じゃあ、今はあのヘンタイが弐号機のパイロットってわけね」

レイ「……ええ」シャリシャリ…

アスカ「そっか……」

レイ「……」サクッ……サクッ……

   (リンゴを切り分けるレイ)

レイ「……よく噛んで」

アスカ「ありがと」

   (楊枝に差したリンゴを一切れアスカに手渡すレイ ぎこちなく手をだし受け取るアスカ)

アスカ「……」シャクッ…モグモグ

レイ「……」

アスカ「でも、どうしてかなあ。もう少し腹がたってもいいような気がするけど……自分でも変な感じ」

レイ「……」

   (天井を眺めるアスカ)

アスカ「思うようにシンクロできなくなって……なんで動かないの、このポンコツって思ってた」

レイ「……」

アスカ「違うわね。ポンコツは、あたしだった」フッ…

   (寂しげに笑うアスカ)

レイ「セカンド……」

アスカ「セカンド、か……セカンドチルドレン……二番目の適格者……」

レイ「……」

アスカ「パイロットやめちゃったら楽になるのかな……あのとき、バカシンジがしようとしたみたいに」

レイ「……」

アスカ「なんであんたにこんなこと話してるんだろ、あたし」クスッ

レイ「そうね」

アスカ「でも、何だか楽になったわ。もっと早く話せばよかった」シャクッ……モグモグ

レイ「そう……」

アスカ「シンジは?」

レイ「……」フルフル

   (俯き、首を振るレイ)

アスカ「まだ出てこないの? あいつ」

レイ「……一度、模擬体経由で初号機とシンクロできたときに――」

(顛末を語るレイ)

   :
   :

ピッ……ピッ……ピッ……

アスカ「ふーん……」

レイ「……」

アスカ「何やってんのかしらね、シンジのやつ。もしかして、自分の殻に閉じこもって――?」

   (俯いているレイに気付くアスカ  興味をひかれたように顔をレイの方にめぐらす)

アスカ「……」

レイ「……なに?」

アスカ「あんたも、そんな顔するんだ」

レイ「顔?」

アスカ「……ねえ、あんた、シンジのこと、どう思ってんの?」

レイ「碇くん?」

アスカ「そうよ」

レイ「よく、わからない」

   (また俯くレイ)

ピッ……ピッ……ピッ……

アスカ「……わからない?」

レイ「私は……私のことが、よくわからない」

アスカ「……」

レイ「私の中にはいつも、わら人形のようにぽっかりと空っぽの部分があった」

   (制服の心臓のあたりを不安げに掴むレイ)

アスカ「……」

レイ「その空洞が、私をときどき怯えさせ……不安にさせる」

アスカ「……」

レイ「その部分を、碇司令を思うことで埋められるような気がしていた」

アスカ「えっ?」

レイ「なのに…いつの間にかそこに……碇くんがいた」

アスカ「……」

レイ「私は……碇くんに、戻ってきてほしい」

アスカ「……」

レイ「私はもう、わら人形には戻りたくない」

   (目を伏せるレイ)

アスカ「……」

   (驚いた顔でレイを見ているアスカ  少し赤くなっている)

アスカ「て……照れもせずに、そういうこと言うのね、あんた」

レイ「?」

   (顔を上げるレイ)

アスカ「まあ、あんたらしいって言えばあんたらしいけど」

レイ「……」

   (少し体をよじって乗り出すアスカ 少し声を潜めて)

アスカ「ねえ、あんたシンジとはキスしたの?」

レイ「え?」

アスカ「……」ジー

   (また俯くレイ)

レイ「そういう間柄じゃないわ」

アスカ「ふーん……」

レイ「……」

アスカ「前に同じこと、シンジに聞いたら、あんたとはそんなんじゃな言っていってたけど」

レイ「……」

   (アスカの方を見るレイ)

アスカ「でも、何か言いたそうな感じだったわよ、あいつ」

レイ「……」

アスカ「そこまで思ってるなら、言っちゃえばいいのに」

レイ「……」

アスカ「ま、そんなことしたらあいつ、パニックになるかもね」

レイ「……」

   (アスカをじっと見るレイ)

アスカ「なによ」

レイ「もう、助けられないかもしれないと思い始めていた」

アスカ「えっ?」

レイ「でも、あなたと話していたら、まだ助けられるような気がしてきた」

アスカ「……」

レイ「あなたが、碇くんが帰って来るのが当たり前のように話すから」

アスカ「あ、あたしは責任とれないわよ」

レイ「いいの。それでも――」

   「ファースト、いる?」

   (入り口の方を見るアスカとレイ  ポケットに手を突っ込んで戸口に立っているカヲル)

アスカ「フィフス?」

カヲル「ちょっと、いい?」

レイ「……」

   :
   :

ここのカヲル君は空気読めないなww

>>68 漫画版準拠なんで、こんなもんかと

>>67からつづきます

その前に正誤表

>>66

×アスカ「前に同じこと、シンジに聞いたら、あんたとはそんなんじゃな言っていってたけど」

○アスカ「前に同じこと、シンジに聞いたら、あんたとはそんなんじゃないって言ってたけど」

>>67つづき つぎから

   (レイの前に立つカヲル)

アスカ「あんた、ちょっと邪魔――」

   (俯いているレイ 見下ろすカヲル)

カヲル「仲良くしろって命令された」

レイ「そう……」

カヲル「仲良くしてくれない?」

   (俯いたまま答えるレイ)

レイ「命令……なら、そうするわ」

カヲル「……」

   (踵を返すカヲル)

カヲル「それじゃ――」

   (カヲルの目の前に差し出される、楊枝に差したリンゴの一切れ)

カヲル「……」

   (差し出しているレイ)

レイ「食べて行けば」

   (黙って受けとるカヲル)

カヲル「……」シャクッ…

レイ「ごめんなさい、ぶったりして」ガサガサ……

   (リンゴの後始末をするレイ)

カヲル「君の気持ちも考えろって言われた。葛城さんに」モグモグ

レイ「……そう」

   (楊枝の先を少ししゃぶるカヲル)

カヲル「ごちそうさま……えっと――」

   (何かを探すように部屋を見回すカヲル  リンゴの皮などが入った紙袋を差し出すレイ)

カヲル「ありがと」

   (楊枝を入れるカヲル  袋をたたむレイ)

カヲル「明日は……何かわかるといいね、サードのこと」

   (顔をあげるレイ)

カヲル「……なに?」

   (また俯くレイ)

レイ「……ありがとう」

カヲル「いいよ、別に……それじゃ」

   (ヒラヒラと手を振って出口に向かうカヲル)

アスカ「フィフス」

   (振り返るカヲル 真顔で問うアスカ)

アスカ「心を開かなきゃ、エヴァは動かないって――心を開くって……なに? どうすればいいの?」

カヲル「……」

   (目を伏せるアスカ)

アスカ「わかんないのよ」

カヲル「……」

   (またカヲルを見る)

アスカ「あんたは知ってるんでしょ? できてるんでしょ?」

カヲル「……」

アスカ「教えて」

カヲル「……」

アスカ「エヴァとシンクロできないんじゃ、控えだって務まらないじゃない」

カヲル「……」

アスカ「お願い」

   (静かにカヲルを見つめるアスカ  何か言いたそうに見つめ返しているカヲル)

カヲル「……」ポリポリ…

   (困ったように視線を外し頭をかくカヲル)

   :
   :

==== 弐号機ケージ 管制室 ====

ピピピピ……カタカタカタ……

   (操作卓につくマヤ達  後ろに立ち見守るリツコ)

女性オペ『――了解、エントリープラグ挿入』

   (観測窓の外、弐号機の頸部に飲み込まれていくエントリープラグ)

女性オペ『脊髄連動システムを解放、接続準備』

男性オペ『探査針、打ち込み完了』

プシュー…

   (入ってくるプラグスーツ姿のカヲル)

リツコ「ああ、渚くんお疲れ様。今日もいい数値だったわよ」

カヲル「はあ」

   (部屋を見回すカヲル)

カヲル「あの……初号機のほうは?」

リツコ「……」フルフル…

カヲル「……そうですか」

   (操作卓から振り返るマヤ)

マヤ「でも、本当にこれでいいの? シンクロテストをとばして、いきなり起動実験からなんて」

カヲル「……大丈夫だと思いますけど」

マヤ「なぜ?」

カヲル「うまく言えないんですけど……」

リツコ「まあ、いいわ」

マヤ「センパイ……」

リツコ「ただし、少しでも異常が見られたらすぐ中止しますからね。今は。エースパイロットの言葉を信じましょう」

マヤ「はい」

カヲル「……」ポリポリ…

カヲル(なんか、だんだんやりにくくなるなあ……)

==== 弐号機プラグ内 ====

男性オペ『エントリースタート』

女性オペ『LCL電荷、圧力正常値』

男性オペ『第一次接続開始』

アスカ「……」

女性オペ『プラグセンサー問題なし』

女性オペ『検査数値は誤差範囲内』

リツコ『どう? アスカ』

アスカ「大丈夫よ」

リツコ『少し緊張が見られるわね……まだ復帰初日ですからね。無理は禁物よ』

アスカ「わかってるわ」

リツコ『たのんだわよ……作業をフェーズ2へ移行。第2次接続開始』

マヤ『了解。A10神経接続、開始』

シュオーン……シュオーン……ピキーーーン…

ヴォー……

   (プラグ内壁に投影されるケージ内の光景)

アスカ(ここからよ……)

女性オペ『初期コンタクト、問題なし』

アスカ(?)

   (視野の中央ななめ上方、何かがちらつく)

アスカ「……」

   (何か点状の光が見え、その周囲が少し暗くなっている)

アスカ(あれは?……)ハッ!

ガシャン!

   (光の周囲から、視野が環状に切り取られるように闇に包まれる)

アスカ「あ!……」

ガシャン!……ガシャン!…

   (アスカの周囲を包み込む闇)

ウフフフ……アハハハ……

アスカ「!」

   (ふっと光に向かって吸い寄せられるアスカ)

アスカ『なに!?』

   (点像がみるみる大きくなり、翼を広げた第九使徒のシルエットになる)

アスカ『あれは!?』

   (使徒のシルエットの一角、黒々と開いた穴のような眼の形 そこへ吸い寄せられるアスカ)

アスカ『嫌……』

   (視線にさらされるアスカ)

アスカ『いやあああああ!!』

フフフ……アハハハ……

   (周囲を満たす、耳を弄するばかりの嗤い声)

   (身動きもできず目をそらすこともできないアスカ)

アスカ『私の中に入って来ないでぇ!!』

==== 管制室 ====

ピピピピピ…

男性オペ「パイロットの神経パルスに異常発生!」

マヤ「えっ?」

   (モニタの中、うなだれたまま目を瞑り、肩で息をしているアスカ)

マヤ「まさか……精神汚染?」

リツコ「このプラグ深度ではありえない」

   (心理グラフを見るリツコ)

リツコ「PTSDだわ……」

マヤ「えっ?」

リツコ「実験中止。全回路遮断後、ただちにプラグ排出」

マヤ「は、はい!」

カヲル「PTSD?」

リツコ「心的外傷後ストレス障害……おそらく、使徒の攻撃にさらされたときの恐怖を思い出したんだわ。何倍にも増幅されてね」

   (こめかみに手をやるリツコ)

リツコ「あなたのせいじゃないわ」

カヲル「……」

==== 弐号機プラグ内 ====

ゴオオオオオォォ…

アスカ『もうやめてぇ!! お願いだから! これ以上、心を侵さないで!!』

ウフフフ……アハハハ……

アスカ『嫌っ…』

ウフフフ……アハハハ……

アスカ『死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……』

ウフフフ……アハハハ……

アスカ『助けて……助けて、加持さん!!』

ピーッ…

アスカ『!?』

   (突然、ミサトのマンションのリビングを見下ろしているアスカ)

   (テーブルの上の電話機を覗き込んでいるミサト)

電話の音声『――すまない。もし、もう一度会えることがあったら……この前、言いそびれた言葉を言うよ』

   (泣き崩れるミサト)

アスカ『加持さん!?』

==== 管制室 ====

リツコ「まだなの!? 早く!」

マヤ「は、はい……でも、これは……」

   (ふたたび心理グラフを見るリツコ)

リツコ「……エヴァからなの?」

カヲル「……」


==== 弐号機プラグ内 ====

ウフフフ……アハハハ……

   (再び「目」にさらされているアスカ)

アスカ『イヤ! 助けて、加持さん……ママ!』

ウフフフ……アハハハ……

アスカ『ママ!!』

   (拘束がゆるむのを感じるアスカ)

アスカ『……?』

   (ふわりとアスカを後ろから抱きしめる腕)

アスカ『え?』

   (ふりかえるアスカ)

   『……』ニコ…

   (見下ろしている大人の女性 微笑んでいる)

アスカ『……ママ!』

   (幼女に返っているアスカ 夏の日のひまわり畑に佇んでいる)

アスカ『ここにいたの……』

------
----
-

アスカ「……」ハッ…

   (目を開けるアスカ)

ヴォ―― …

   (戻ってくるプラグの作動音 ケージ内の光景 インテリアシートの感触)

==== 管制室 ====

マヤ「――パルス、安定しました。シンクロ率……74.2パーセント……」

   (呆然とリツコを見上げるマヤ)

リツコ「ハーモニクス、すべて正常……まだ余裕がありそうね」

マヤ「でも……信じられません。この前は――」

   (振り返るリツコとマヤ)

カヲル「……」

リツコ「わかっていたの? こうなるって」

カヲル「そういうわけじゃ、ないんですけど……」ポリポリ

   (モニタの中、周囲を確かめるように見回しているアスカ)

カヲル(まいったなあ……)

ビーーーーッ

男性オペ『総員、第一種戦闘配置』

一同「!!」

男性オペ『エヴァンゲリオン零号機ならびに弐号機、発進準備。 予備パイロットはケージにて待機』

アスカ『リツコ』

リツコ「えっ……ああ、わかったわ。マヤ」

マヤ「は、はい。エヴァ弐号機、プラグ排出」

女性オペ『了解。エヴァ弐号機、プラグ排出』

   (モニタ上、消えるアスカのプラグ内画像のウィンドウ)

リツコ「渚くん!」

カヲル「はい?」

リツコ「『はい?』じゃないでしょ? パイロットはあなたよ」

カヲル「あ、はい」タタタッ…

プシュー…

リツコ「エヴァ弐号機、発進準備。パイロットはすぐ行くわ」

女性オペ『了解。エントリープラグ、排出完了。パイロット、搭乗準備』

   (窓の外  開いたハッチから飛び降りるアスカ)


==== 通路 ====

タッタッタッ…

カヲル「……」ハッ…ハッ…

カヲル(でも……まだ乗せてくれるかなあ?)

  :
  :

==== 弐号機ケージ ====

タッタッタッ……

カヲル「……」ハッ…ハッ…ハッ…

   (乗降部で待っているアスカ)

アスカ「頼んだわよ、フィフス」

   (右手を上げるアスカ)

カヲル「え? ……ああ」

パアアァン

   (ハイタッチするアスカとカヲル)

作業員「いいか、渚くん」

カヲル「お願いします」

   (プラグに乗り込むカヲル  閉じるハッチ)

女性オペ『ケージ内、すべてドッキング位置。全作業員は待避』

作業員「行こう、アスカちゃん」

アスカ「ええ」


==== 弐号機プラグ内 ====

ガコン……

女性オペ『――エントリースタート』

男性オペ『LCL電荷、A10神経、接続開始』

シュオーン…シュオーン…

カヲル「……」

ビキイイイイィィン!!

カヲル「うっ!?」

   (真っ赤に染まるプラグ内壁モニタ  顔をしかめ口許を押さえるカヲル)

カヲル(やっぱりダメか……もう……)

==== 管制室 ====

ピピピピピ……

マヤ「パルス逆流! 弐号機、神経接続を拒絶しています」

リツコ「なんてこと……これじゃ、あのときと――」



==== 弐号機プラグ 出入口 ====

   (ハッチを閉じ、離れようとする作業員の一団とアスカ)

プルルルル……

   (鳴り出すアスカの携帯電話)

ピッ…

アスカ「はい?」

リツコ『アスカ、至急ケージに戻って。弐号機に搭乗して、発進準備』

アスカ「えっ? でも――」

リツコ『わかってる。でも――』



==== 管制室 ====

ビーーーッ ビーーーッ ビーーーッ…

リツコ「緊急事態発生よ」

   (一面にアスカの顔を映し出している壁面モニタ)

   (呆然と見渡しているリツコ、マヤ、オペレーターたち)

   :
   :

支援

面白い

支援

気になるが静かに支援

>>83 >>84 >>85 >>86
ありがとう

>>82の修正版からつづきます

==== 管制室 ====

ピピピピピ……

マヤ「パルス逆流! 弐号機、神経接続を拒絶しています」

リツコ「なんてこと……これじゃ、あのときと――」



==== 弐号機ケージ 出入口 ====

   (ハッチを閉じ、離れようとする作業員の一団とアスカ)

プルルルル……

   (鳴り出すアスカの携帯電話)

ピッ…

アスカ「はい?」

リツコ『アスカ、至急ケージに戻って。弐号機に搭乗して、発進準備』

アスカ「えっ? だって――」

リツコ『わかってる。でも――』



==== 管制室 ====

ビーーーッ ビーーーッ ビーーーッ…

リツコ「あなたじゃなきゃ、だめなの」

   (呆然と室内を見渡しているリツコ、マヤ、オペレーターたち)

リツコ「緊急事態発生よ」

   (アスカの顔で埋め尽くされている壁面のモニタ群)

   :
   :

==== 弐号機ケージ ====

カッカッカッ……

アスカ「……」ハッ…ハッ…ハッ…

   (タラップに腰かけて待っているカヲル 立ち上がる)

カヲル「たのんだよ、セカンド」

   (右手を上げるカヲル)

アスカ「……」

パアアアアァン

   (タッチするアスカ)

   (歩み去るカヲル)

アスカ「フィフス!」

   (振り返るカヲル)

アスカ「……ありがと」

カヲル「……」フッ

   (少し笑って手を振り出ていくカヲル)

   :
   :


==== 通路 ====

タッタッタッタッ……

レイ「……」ハッ…ハッ…ハッ…

   (初号機ケージに続く分岐に差し掛かるレイ)

レイ「……」ハッ…ハッ…ハッ…

   (わずかに視線をやり、少し顔をそむけ、そのまま通過する)

レイ「……」ハッ…ハッ…ハッ…

   :
   :

==== 発令所 ====

プシュー…

   (入ってくるミサトとマコト)

リツコ「遅いわよ。何してたの?」

ミサト「言い訳はしないわ。状況は?」

シゲル「目標は現在、大涌谷まで接近。定点回転を続けています」

マヤ「エヴァ零号機は32番から発進。迎撃位置へ移動中。弐号機がバックアップについています」

ミサト「弐号機を出したのね……渚くんのお手並み拝見といきましょうか」

リツコ「いいえ。弐号機にのっているのは、アスカよ」

ミサト「アスカ?……どうして!?」

リツコ「いろいろあってね」ハァ…

ミサト「いろいろって……あんたねえ!!」

   (ミサトの目の前に紙の挟まれたバインダをかざすリツコ)

ミサト「これって……どういうこと?」

リツコ「わからない……でも、事実よ。碇司令も了承済み」

   (司令席をちらりと見上げるミサト)

リツコ「問題ある?」

ミサト「……いいえ」

   (使徒とエヴァ2機の位置を映し出している主モニター)



==== 大涌谷付近 ====

   (上空で回転を続ける二重らせん上の光のリング)

   (その付近にさしかかる2機のエヴァ)

==== 発令所 ====

   (主モニターに映し出されている上空の使徒)

シゲル「膠着状態ですね。まず敵の攻撃手段が読めないことには……」

マコト「青からオレンジへ、パターンが周期的に変化しています」

ミサト「どういうこと?」

マヤ「マギは回答不能を提示しています」

リツコ「答えを導くにはデータ不足というわけね。ただ、あの形が固定形でないことは確かだわ」

ミサト「先に手は出せない、か……」




==== 零号機プラグ内 ====

ミサト『レイ、アスカ。しばらく様子を見るわよ』

   (モニタ上の使徒を睨んでいるレイ)

レイ「……了解――」

アスカ『ううん……来るわよ!』

レイ「!」


   
==== 大涌谷付近 ====

ビュンッ…

   (輪を解いて1本の紐状になり、先端部から2機のエヴァに突進する使徒)

零号機「……」ジャキッ

弐号機「……」パウパウパウッ

   (ライフルを放つ2機 零号機に迫る使徒)

アスカ(弐号機)『!……ファーストっ』ガンッ…

   (使徒に衝突されそうになる零号機を突き飛ばす弐号機)

アスカ(弐号機)『ライフルは効かない!! ミサト、ほかのヤツ!!』

ミサト「デュアルソーを出すわ! Cの883に走って」

アスカ『ラジャー』

ズンッ……ビュッ……ガンッ

   (使徒の攻撃を縦横にかわしながら射出口へ走る弐号機)

==== 発令所 ====

ミサト「アスカ!? なんて動きを……」

リツコ「最初の頃もすごかったけど、今のはそれ以上だわ」



==== 弐号機プラグ内 ====

ズシン…ズシン…ズシン…

アスカ(ごめんね、ママ。見つけられなくて)

ズシン…ズシン…ズシン…

アスカ(ママは、ずっと、ここにいたのに……ここでずっと、あたしを見ていてくれたのに……)



==== 武器射出口付近 ====

バシュン!!

   (地中からせりあがる二連装のエヴァ用チェーンソー それをつかみ出す二号機)

ビュン…ギャリイイイィン

   (迫る使徒の一端を受け止める弐号機)

レイ「!!」

   (もう一方の端が突如、零号機に迫る)

パウパウパウッ

   (応戦する零号機)

ミサト『レイ! よけて!』

マコト『だめです……間に合いません!!』

   (零号機の目前で先端を6本に分裂させる使徒)

ドズッ…ドズッ…

   (零号機を前後から突き刺す)

レイ(零号機)「くっ……」ジャキン…パウパウパウッ…

   (使徒を掴んで至近弾を浴びせる零号機)

==== ケージ付近 パイロット控室 ====

ザザ…

アスカ『だめよ、ファースト! ライフルじゃ効かない!』ギャリギャリギャリ…

カヲル(零号機……捕まったのか!?)

アスカ『何よ! これも効かないの!?』ギャリギャリギャリ…

リツコ『まずい……侵食型だわ!!』

カヲル(なんだって?)

ミサト『レイ!!』



==== 発令所 ====

   (主モニターに映し出されている零号機 使徒に取り付かれ斜面に背中から倒れこんでいる)

シゲル「目標、零号機と物理的接触!」

ミサト「零号機のA.T.フィールドは!?」

マヤ「展開中です……しかし、使徒に侵食されています!」

ミサト「弐号機は!?」



==== 大涌谷付近 ====

ガシャアアアァン

   (使徒に取り付かれたチェーンソーを投げ捨てる弐号機)

アスカ(弐号機)「!!」

ドンッ……シュババババ…

   (地表をバウンドして弐号機に向かってくるチェーンソー)

バシュッ…ブシュウウウウゥ

アスカ「きゃああああああぁ!!」

マヤ『弐号機、左脚破断!!』

ビュッ……ドカッ

アスカ「うっ!!」

   (弐号機の腹部に突き刺さる使徒の先端部)

==== 発令所 ====

マコト「だめです! 弐号機も侵食されます!」

リツコ「使徒が……積極的に一時接触を試みているの!? エヴァと……」



==== 弐号機プラグ ====

アスカ「くっ……」

ググググ…

アスカ「なに、こいつ……」



==== 発令所 ====

ミサト「アスカ、あなたも侵食されるわ! 排除して!」

アスカ『だめ……食い止めるだけで精一杯……A.T.フィールドは中和してるはずなのに!』

ピピピピピピ…

マヤ「危険です! 零号機の生体部品が侵されています!」

レイ『ハァ…ハァ……あっ!!』

   (モニタの一角に映し出されている零号機プラグ内画像 顔をゆがめるレイ)

マヤ「すでに5パーセント以上が融合されています!」

ミサト「エントリープラグを強制射出!」

マヤ「だめです! 反応しません!」

ミサト「そんな!」

   「初号機の凍結を現時刻をもって解除」

一同「!!」

ゲンドウ「フィフスチルドレンを搭乗させ、ただちに出撃させろ」

ミサト「えっ!?」

一同「……」

リツコ「……わかりました」クルッ

リツコ「初号機のコアユニットをM05タイプに切り替えて再起動」

マヤ「は……はい」

ミサト「リツコ!」

リツコ「……」ジロッ

ミサト「そんなことをしたら、シンジくんはどうなるの!?」

リツコ「公私混同がはなはだしいわよ、葛城三佐」

ミサト「渚くんは弐号機のコアを書き換えなくてもシンクロできたわ!」

リツコ「これは実戦よ。シンクロテストとは違う」

ミサト「でも――」

ゲンドウ「葛城三佐!」

ミサト「司令!」クルッ

ゲンドウ「……」

ミサト「司令は、それでよろしいのですか!?」

ゲンドウ「聞こえないのか。出撃だ」

ミサト「……」

一同「……」

ミサト「……はい……」

  

==== 初号機ケージ ====

作業員A「――急げ!」

カヲル(まったく……人使いが荒いよ……)

作業員B「40秒で搭乗だ、渚くん」

カヲル「はい」

カヲル(サードチルドレン、か)

   (初号機を見上げるカヲル)

カヲル(悪く思わないでくれよ、碇シンジくん)

女性オペ『――了解。コアユニット、書き換え開始』

ガシャン……グウウウウウウウゥン……

   :
   :

==== 夏の日の小径 ====

ミーンミーンミーン…

   (幼い男児を抱いて歩く母親らしき女性)

ズルッ……

女性「!」

   (抱えた男児の反対側、顔の右半分の皮膚が剥がれ落ちる とっさに掌で押さえる女性)

幼児「どうしたの?」

女性「大丈夫……なんでもないわ」

幼児「?」

女性(ナゼ……ジャマヲスル!?)

ミーンミーンミーン…

   :
   :

==== 零号機プラグ内 ====

レイ「……」ハァ……ハァ……

レイ(誰?)

   (レイの視野の前方、赤い水面に半ば浸かってプラグスーツ姿の少女が立っている)

レイ(エヴァの中の私? いいえ、違う……私じゃない)

レイ「誰? あなた……誰!?」

   (いつの間にか赤い水面の上に浮かんでいるレイ)

レイ「使徒……私たちが『使徒』と呼んでいるヒト?」

使徒(別レイ)『私とひとつにならない?』

レイ「……いいえ。私は私。あなたじゃないわ』

別レイ『そう……でもダメ。もう遅いわ。私の心を、あなたにも分けてあげる』

ズズズズ…ビキビキビキ…

レイ「!」

別レイ『ほら……痛いでしょ? 心が痛いでしょ?』

レイ「痛い……いえ、違うわ」

別レイ『……』

レイ「悲しい……そう……悲しいのね」

別レイ『カナシイ? わからないわ。 でもね、それはあなたの心よ』

レイ「……私の?」

別レイ『気付いていたはずよ。しばらく前から……』

レイ「……」

別レイ『碇くんは、もう帰ってこないということ』

レイ「……違う! 碇くんは――」

別レイ『あなたは、とっくに気付いていた』

レイ「違う……」

別レイ『でも、あなたはそれに気づかないフリをしていた』

レイ「違う……」

別レイ『碇シンジは、もう存在しないのよ』

レイ「!」

別レイ『……』ニヤリ

レイ「嫌……」

別レイ『あなたは何度も呼びかけたのに』

レイ「嫌……」

   :
   :

==== 発令所 ====

ミサト「レイ! 手動でプラグを射出して!!」

   (モニタの中 苦しげに眼を閉じているレイ)

ミサト「レイ!? どうしたのレイ! 応答しなさい!」

==== 零号機プラグ内 ====

別レイ『いくら呼びかけても、もう帰ってくることはない。もう、存在しないのだから』

レイ「嫌……」

別レイ『さあ……私とひとつになりましょう……』

レイ「嫌……」



==== 発令所 ====

レイ『……けて……』

ミサト「えっ?」

レイ『たす……けて……』

ミサト「レイ!? 返事をして、レイ!」

   (突如顔を上げるレイ ぎゅっと目を閉じたまま)

レイ「たすけて! 碇くん!!」

一同「えっ!?」


==== 大涌谷付近 ====

ブワッ…

   (零号機の背面から膨れ上がる不定形の物体)

==== 夏の日の小径 ====

ミーンミーンミーン…

女性「どうしたの? シンジ」

   (右頬を抑えたまま男児に問う女性)

幼児「こえが……」

女性「声?」

幼児「うん」

女性「そんな声は聞こえないわ。ここには、私達しかいないもの」

幼児「……うん……でも――」

女性「シンジ」

幼児「たしかにきこえたんだ」

女性「シンジ」

幼児「あのこえは……あや……なみ……」

女性「シンジ」

シンジ「あやなみ……『綾波』?……僕は……!」

   (14歳にもどって女性の傍らに佇んでいるシンジ)

女性「シンジ」

シンジ「えっ!?」

   (いつの間にか闇に包まれている)

素体「シンジ」

シンジ「うっ……うわああああ!!」

素体「どうしたの? 私とひとつになりたいのでしょう?」

シンジ「嫌だ!」

素体「あなたは十分戦ったわ。行きましょう……痛みも悲しみもない、永遠の世界へ」

シンジ「やめろ、放せ! お前は母さんじゃない!! 」

素体「シンジ」

シンジ「助けて! ……母さん!!」

フワッ……

シンジ「!」

   (素体の背面から抜け出すように現れる、髪の長い大人の女性のような人影)

シンジ「……えっ?」

人影「シンジ」

シンジ「……」

人影「自分の進む道は、あなたが自分で決めるのよ」

シンジ「……」

人影「ほら……聞こえたでしょう? あなたを呼ぶ声が」

シンジ「……」ハッ…

人影「……」

   (光に包まれるシンジ)

   :
   :



==== 初号機ケージ アンビリカルブリッジ上 ====

初号機「……」

作業員A「ん?」

ビイイイイイイィン…

   (光を帯びる初号機の目)

カヲル「えっ!?」

ガクン!……グラッ

作業員A「わっ!」

グゴゴゴゴ……

   (首をめぐらす初号機)

メキメキメキ……

作業員B「待避! 待避だ!!」

   (崩壊するアンビリカルブリッジ 必死で出口に向かう作業員たちとカヲル)


1乙!
うう、緊迫の展開ですね。

==== 発令所 ====

ビーーーーッ

一同「!」

ミサト「な、なに!?」

ヴヴヴ…ヴヴヴ…ガチャッ…

リツコ「私です――えっ!?」



==== 初号機ケージ 入口付近 ====

作業員A「初号機が!! 初号機が動いてます!!」

バキバキバキ…

   (拘束具をひきはがそうとする初号機 波打つLCL)



==== 発令所 ====

リツコ「まさか! 暴走!?」

ミサト「渚くんを脱出させて! 早く!」

リツコ「……彼はまだ乗ってないわ」

ミサト「何ですって!?」



==== 初号機ケージ ====

カヲル「うっ…うう……」

   (崩壊した通路の端に辛うじて捕まっているカヲル)

カヲル(A.T.フィールドを使うわけにもいかないし……)

作業員B「渚くん!! これにつかまれ!」

カヲル(こんなとこで死んだら洒落にならないよ!)

バリバリバリ…

一同「!」

初号機「……」ウオオオオオオオオオオオォン!!

==== 発令所 ====

   (マイクに呼びかけているリツコ)

リツコ「LCLが漏出している! 隣接ケージの作業員もすべて避難させて!!」

ミサト「どうなってるの!? こんなときに……」ハッ!!

   (モニタの中 第一拘束具を引きちぎり自由になった腕で第二拘束具を引きちぎろうとする初号機)

バキバキバキ

ミサト「シンジくん……」

リツコ「えっ?」

   (めちゃめちゃになったケージ)

ザバアアァ…

   (LCLをかき分けて背後の斜路を歩いて登っていく初号機)

ミサト「あなたがやっているの!?」

リツコ「そんな、ありえないわ!!」

   (射出口にとりつき、手がかりを探すように壁を見回す初号機)

ミサト「隔壁閉鎖! 手が付けられなくなる前に――」

ゲンドウ「初号機を出せ」

ミサト 「えっ!?」

ゲンドウ「全固定ロック解除。初号機を射出しろ」

ミサト「……」

ゲンドウ「葛城三佐」

ミサト「は、はい!! 日向くん」

マコト「了解!!」カタカタカタ…

バシュッ!!

   (打ち出される初号機)


==== 大涌谷付近 ====

ガラガラガラ……ガシャーン

   (勢い余って中空に飛びあがる初号機)

…ズンッ

   (着地する初号機)

>>102 ありがとう
とりあえずここまで

>>106 ありがとう

正誤表
>>101
× 作業員B「待避! 待避だ!!」
○ 作業員B「退避! 退避だ!!」

>>104のつづき 次から

==== 弐号機プラグ内 ====

アスカ「……初号機!?」


==== 零号機プラグ内 ==== 

レイ「……」ハッ!!

   (目を開けるレイ)

レイ「初号機……フィフスが?」

   (モニタの中 走ってくる初号機)

レイ「ちがう……碇くん? 碇くんが……来てくれたの?」



==== 大涌谷付近 ====

ヒュッ…

   (零号機から、初号機に延びていく使徒の一端 先端がレイの形になる)


==== 零号機プラグ内 ====

レイ(あれは……私の心?……碇くんと一緒になりたい、私の心?)

別レイ『そう……これがあなたの心?』

レイ「!」ビクッ

   (初号機を見ているもうひとりのレイ  それを怯えるように見るレイ)

別レイ『「触れあいたい」「唇を重ねたい」「失いたくない」……これが――』

   (レイに向き直る)

別レイ『「好き」ということ?』

レイ「……」

別レイ『そう……』ニコ

レイ「!」ハッ…



==== 大涌谷付近 ====

   (初号機にまとわりつく使徒の先端部  初号機を巻き取ろうとする)

初号機「……」ウオオオオオオオオオォン…

グググ……ブチッ!

   (使徒の紐状の体を手でつかんで引きちぎる初号機)

使徒「……」キアアアアアアアアアァ!!



==== 零号機プラグ内 ====

別レイ『イタイ……痛いの……碇くん』

   (動きが鈍る初号機)

レイ「えっ?」

   (新しい先端がまたレイの姿になり初号機にすがりつく)

   (巻き取られていく初号機)


==== 発令所 ====

ビーーーーッ…

マヤ「初号機頸部に侵食発生!」

ミサト「シンジくん!?」


===== 大涌谷付近 ====

初号機「……」オオオオオオオオオオオォン

   (次第に身動きがとれなくなる初号機)

   :
   :

==== 闇の中 =====

ゴボゴボゴボ…

   (液体の中を溺れるようにもがくシンジ 一中の制服姿)

シンジ『綾波…』

ゴボゴボ…

シンジ『どこ!? 綾波!!』

   『碇くん?』

シンジ『綾波!?』

   (闇の中 うずくまっているレイ 顔を上げる)

   (制服姿 涙にぬれている頬)

シンジ『綾波!!』

   (必死にたどりつき手を伸ばすシンジ)

レイ『碇くん……』

   (シンジにすがりつくレイ)

シンジ『あっ……綾波?』

   (戸惑いながらも抱き止めるシンジ)

シンジ『よかった……無事で』

レイ『ごめんなさい、なにもできなかった』グスッ…

シンジ『いいんだ、もう』

   (レイの背中を少しさすってやるシンジ)

シンジ『これでいいんだ……』


==== 大涌谷付近 ====

弐号機「……」ズズズズ…

   (使徒を握り締める手に葉脈のようなものが浮き上がり広がっていく)


==== 弐号機プラグ内 ====

アスカ(ううっ……うっ!?)

ズズズズズ…

アスカ(なっ……何かが流れ込んでくる……)

アスカ(ファースト!? これが、ファーストの……心?)

アスカ(あのバカ……ここまで思ってんならどうして――)ハッ!!

   (前方に見える闇)

アスカ(?)

   (レイを抱きしめているシンジ)

アスカ(バカシンジ!?……えっ?)

   (視野の端 なにかがぽつんと見えている そちらを見るアスカ)

   (闇の中、インテリアシートに着いたプラグスーツ姿のレイ)

   (涙を浮かべた目を見開いてシンジたちを見ている)

アスカ(ファースト? どういうこと!?)

   :
   :


==== 零号機プラグ内 ====

   (闇の中を見やるレイ)

   (シンジにすがりついているもうひとりのレイが半ばふりかえる)

   (ほくそ笑み、見ているレイに声もなく語りかける)

別レイ《あなたも、こうすればよかったのに》

レイ「!」



==== 闇の中 ====

レイ(別レイ)『碇くん……』

   (シンジの目を覗き込む、もうひとりのレイ)

シンジ『なに……んっ……』

   (唇を塞がれ目を見開くシンジ)

レイ『……』

シンジ『……』

プハッ…

シンジ『あ、綾波?』

別レイ『碇くん』

   (少し上目づかいにシンジを見るもうひとりのレイ 上気した頬)

   (シンジの肩に顎を預け耳元でささやく)

別レイ『私とひとつになりましょう』

シンジ『えっ?』

別レイ『それは……とても気持ちのいいことなのよ』

シンジ『あ……あの……』



==== 発令所 ====

   (モニタ上、使徒に巻き取られほとんど見えなくなっている初号機)

   (片腕だけが使徒の体の間からはみ出している)

   (うごめいている使徒)

ピピピピピ……

マヤ「変です……目標の識別信号が、初号機に切り替わります!」

ミサト「やられた! これで奴が侵入しても自爆しない!――」


==== 零号機プラグ内 ====

ミサト『――ドグマに苦もなく辿り着けるわ!』

レイ「!」ハッ…

レイ「だめ!」グッ…

   (身を縮めるレイ)


==== 大涌谷 ====

シュルシュル…

   (初号機に絡みついていた使徒の体が悲鳴のような音を上げて初号機からほどけていく)


==== 闇の中 ====

   (突然、シンジから引き離されかけるもうひとりのレイ)

別レイ『きゃっ……』

   (とっさに力をこめ抱き留めるシンジ)

シンジ『あっ……綾波!?』


==== 大涌谷 ====

ビイイイィン

   (ほどけるのが止まり、引き伸ばされピンと張る使徒の体)

レイ(零号機)「!!」


==== 闇の中 ====

   (必死に抱き留めるシンジ)

別レイ『碇くん…』

シンジ『ど……どうなってるの!? 綾波――』

   『バカシンジ!!』

シンジ『えっ?』

   (声の方を振り仰ぐ  闇の中に浮かぶアスカ)

   (赤いプラグスーツ インテリアシートについている)

シンジ『アスカ!? どうして――』

アスカ『そいつはファーストじゃない!!』

シンジ『えっ?』

   (もうひとりのレイを向き直るシンジ  その向こうの闇にぽつんと浮かぶレイに気付く)

シンジ『あっ……綾波!? で、でも――』

   (自分が抱き留めているレイを見るシンジ)

別レイ『……』

   (一瞬、白い紐状の使徒がオーバーラップする)

シンジ『きっ……君は!? あっ――』

   (怯むシンジ 一瞬、力がゆるむ)

別レイ『あっ……』

   (シンジの手をすり抜けて引き離されるもう一人のレイ)


==== 大涌谷 ====

シュルシュルシュル…

   (零号機にむかって引き込まれていく使徒)


==== 弐号機プラグ内 ====

アスカ「あっ……」ガクッ

   (解放されるアスカ 視野が戻ってくる)

アスカ「……ファースト?」

   (使徒が引き込まれていく先を見やるアスカ)

==== 発令所 ====

マヤ「A.T.フィールド反転、一気に侵食されます!」

リツコ「使徒を押え込むつもり!?」

ミサト「初号機は!? 初号機はどうしたの!?」

   (モニターのひとつ 不自然な姿勢で地面に転がって動こうとしない初号機)

マヤ「わかりません……A.T.フィールド、微弱!」

ミサト「シンジくん!? 起きて! 零号機が!」


==== 大涌谷付近 ====

ビュルルルル…

   (零号機に引き込まれていく使徒と、不定形の物体)

   (膨張する零号機コア)


==== 発令所 ====

マヤ「フィールド限界! これ以上はコアを維持できません!」

ミサト「レイ! 何してるの!――」


==== 零号機プラグ内 ====

ミサト『――機体は捨てて逃げるのよ!』

レイ「だめ」ピッピッ…ピッ…

   (シート座面のスイッチを操作するレイ)

レイ「私がいなくなったら、A.T.フィールドが消えてしまう――」ピッピッ

   (操作部から現れるレバー)

レイ「だから、だめ」ガシュッ

   (レバーを引く)

フイイイイイイイィン…

   (インテリアシート後部のディスクが高速回転を始める)

==== 発令所 ====

ピッ… (モニタの一角に現れる、自爆装置起動の表示)

ミサト「レイ……死ぬ気?」


==== 零号機プラグ内 ====

フイイイイイイイィン…

レイ「……」

   (窓外の初号機を一瞥するレイ

レイ(碇くん……)

   (とめどなく頬を伝う涙)

レイ(もし、そこにいるのなら……生きて……みんなを守って)

レイ(碇司令を……葛城三佐を……惣流さんを……赤木博士を……みんなを)

   (目を伏せる)

レイ(そして……少しでいいから……三人目の綾波レイのことを、気にかけてあげて)


==== 大涌谷付近 ====

ボコッ…ボコッボコッ…

   (零号機のコアがへこんでいく)

マヤ「コアが潰れます! 臨界突破!」

==== 零号機プラグ内 ====

フイイイイイイイィン…

レイ(さよなら……碇くん)

  「綾波」

レイ(え?)

   (振り返るレイ)

   (闇に包まれたプラグ 側壁のハッチが開いている)

   (ハッチの外は夜 淡い月明かりを背後から受けている誰かのシルエット)

レイ「!」

   (呆然とその様子を見るレイ)

   (涙を浮かべて微笑んでいるシンジ 何か言っているが声は聞こえない)

レイ「……」

   (涙をいっぱいに浮かべた目を見開くレイ)

   (手を差し伸べるシンジ)

   (シンジに向かっておずおずと手をのばすレイ)

   (触れ合おうとする手と手)

   (閃光――)


==== 大涌谷付近 ====

カッ……

   (大爆発を起こす零号機)

   (吹き飛ぶ市街地)

==== 発令所 ====

ドオオオオオオオオォォ

   (白光に満たされた主モニター)

一同「……」

シゲル「目標、消失」

   (俯いているミサト)

ミサト「……現時刻をもって作戦を終了します。第一種警戒態勢へ移行」

マコト「了解。状況イエローへ速やかに移行」

ミサト「各機の状況報告」

マコト「初号機……感度ありません。引き続き確認中」

ミサト「……」

シゲル「弐号機のテレメトリ復旧。装甲に熱損傷多数……パイロットの呼吸、脈拍は正常」

   (手を握り締めるミサト)

ミサト「……零号機は?」

   (涙を浮かべているマヤ)

マヤ「感度なし……エントリープラグの射出は……確認されていません……」

ミサト「生存者の救出、急いで!」

リツコ「もしいたら――の話ね」

ミサト「!」

   (猛然と振り返りリツコを睨む ミサトの眼から飛び散る数敵の涙)

リツコ「……」

   (俯いているリツコ)

ミサト「……」

   (顔をそむけるミサト)

   :
   :

自爆は避けられないか…
そもそもシンジがどうなることやらという問題もあるか

今回も楽しかった
続きが楽しみ

>>119 >>120 ありがとう

正誤表
>>75
×(点像がみるみる大きくなり、翼を広げた第九使徒のシルエットになる)
○(点像がみるみる大きくなり、翼を広げた第十使徒のシルエットになる)

>>118の続きから


========

ドオオオオオオォ…

   (零号機の爆発でできたクレーターに芦ノ湖の湖水が瀑布となって流入している)

キイイイイイイイィン…

   (クレーター湖の上空を遊弋する数機のVTOL機)


==== 湖面 ====

   (湖面に突き出している弐号機の上体)

   (ゴムボートが横付けされ、エントリープラグはイジェクトされている)

キイイイイイイイィン…

無線の声『弐号機パイロット、収容しました。これより帰投します』

   (上昇してくるVTOL)



==== 機内 ====

無線の声『湖水の流入が止まりません。機体の回収には起重機台船が必要です』

   (毛布を羽織り、窓外を見ているアスカ 頬には絆創膏)

無線の声『初号機は湖底にて発見――』

   (数隻のゴムボートが集まっている湖面)

無線の声『装甲は原型をとどめていません。A.T.フィールドをほとんど展開していなかったと思われます』

   (水中に横たわる黒焦げの物体)

無線の声『最悪、コアの状況次第ではありますが……修復は難しいかもしれません』

   (数人のダイバーが合図をかわしながら何か器具を取り付けようとしている)

無線の声『零号機のパーツは損傷が激しく、回収は困難です。エントリープラグからの救難信号はまだ捕捉できません。現在、目視にて捜索中――』

アスカ(バカシンジ……ファースト……)

キイイイイイィン…

   :
   :

==== 発令所 ====

女性オペ『第11使徒の構成物質はいまだ発見できず。現在探索作業を続行中――』

男性オペ『レベルCの汚染区域は南西方向に広がっています。以後、48時間の外出禁止を維持してください――』

女性オペ「青葉さん、ちょっと――」

シゲル「あ?」

   (席を立つシゲル)

シゲル「なに?」

女性オペ「これなんですけど……」

   (モニタ上に映し出されている一連の数値とヒストグラム 刻々と更新される)

シゲル「……いつから?」

女性オペ「さっき気付いたんですけど、正確にはログを見てみないと」

シゲル「何かな……」

女性オペ「あっ、消失しました」

シゲル「……場所はわかる? 念のため、捜索隊に知らせて」

女性オペ「あっ、はい――」カタカタカタ

   :
   :

========

シンジ「……」

シンジ(……ここは?)

シンジ(僕は……死んだのかな……)

シンジ(なんだろう……あったかい……)モゾ…

シンジ(やわらかい……これは……)

   (手が動くことに気付き触ってみる)

シンジ(……プラグスーツ?……プラグ――)ハッ…

   (目の焦点があう)

   (ゆっくりと首をめぐらす)

シンジ「!」

   (インテリアシートの上 横たわっているレイの上に覆いかぶさるように倒れていたことに気付く)

   (身を起こすシンジ)

シンジ(ここは……)

   (周囲を見回すシンジ)

   (エントリープラグの内部らしき場所)

シンジ(プラグの中? でも……)

   (外壁の一部が破断して木立が覗いている)

キイイイイイイイィン…

   (かすかに聞こえるジェット機のエンジン音)

シンジ(なんで僕は――)ハッ!

   (さっと振り返りレイを見る)

シンジ「……」

   (胸が微かに上下しているのがわかる)

シンジ(よかった……息してる……)

シンジ「……」ブルッ

   (自分が裸であることに気付く)

シンジ(何で……)

シンジ(何か……着るもの……)


シンジ「……」ゴソゴソ…

   (インテリアシートの座面の下を探るシンジ)

シンジ「……」パサッ……

   (サバイバルキットから、小さく折りたたまれた銀色の保温フィルムを取り出す)

   (広げて羽織るシンジ)

シンジ「……」

   (レイの顔を見るシンジ 特に外傷はなく、少し眉根を寄せて目を閉じている)

シンジ(あれは……何だったんだろう……)

   (レイの姿をした使徒に口づけされた場面がよみがえる)

シンジ「……」

   (レイの、少し開かれている唇に視線が吸い寄せられる)

シンジ(な……何考えてるんだ……僕は……)

シンジ「……」

シンジ(息……してるよな……) 

   (レイの顔を覗き込むシンジ)

   (間近に見るレイの顔立ち 頬に涙の跡)

シンジ「……」ドキドキ…

   (かすかに呼吸音が聞こえる)

シンジ「……?」

   レイの閉じられたまつ毛がかすかに震える    

 シンジ「!」

   :
   :

========

   (闇)

レイ「……」

   (明るくなる視界)

レイ「……」

   (目の焦点があう)

レイ(碇くん……?)

   (こちらを覗き込んでいるシンジの顔)

レイ(私は……死んだの?)

シンジ「あ……綾波?」

レイ「……碇……くん」

シンジ「よかった……」

レイ「……」

   (ゆっくりと首をめぐらすレイ)

シンジ「立てる?」

   (手を差し伸べるシンジ)

   (その手を握るレイ)

レイ「……ええ」

   (立ち上がるレイ)

レイ「……ここは?」

シンジ「エントリープラグの中みたい」

レイ「……エントリープラグ?」

シンジ「たぶん……零号機の」

   (シートから降りるシンジとレイ)

レイ「……」

   (亀裂から樹林を見るレイ)

レイ「私……死んだと思ったのに……」

   (立ち尽くすレイ  シートの方に戻るシンジ)

レイ「なぜ……碇くんがいるの?」

シンジ「わからない……」ゴソゴソ

レイ「……」

シンジ「でも……」

   (手を止めるシンジ)

シンジ「聞こえたんだ、綾波の声が」

   (立ち上がり戻ってくるシンジ)

レイ「……」

シンジ「よいしょ……っと……」ギギギギ…

   (側面の非常用ハッチを解放するシンジ)

   (発煙筒に着火し、プラグのすぐ外の地面へ放る)

   (ハッチの内側に腰を下ろすシンジとレイ)

レイ「……呼んだの。碇くんを」

   (レイの顔を見るシンジ)

レイ「会いたかったから」

シンジ「……」

   (シンジの顔を見るレイ)

シンジ「……ありがとう」

   (正面に顔をもどし、はにかんだように笑うシンジ)

シンジ「僕も……綾波にまたあえて、うれしい」

レイ「……」

(緊張を解いたように少し微笑む)

キイイイイイイイィン…

   (大きくなる爆音 顔を上げるシンジとレイ)

   (ハッチから外へ踏み出し、上空を仰ぐ)


キイイイイイイイィン…

   (ホバリングしているVTOL機)

   (手を振るシンジとレイ)

レイ「碇くん」

   (レイの指さす方を見るシンジ)

   (防護服の一団が近づいてくるのが木立の間からちらちらと見える)

   (と、立ち止まる一団)

   (一か所に集まり、何か話し合っている)

シンジ・レイ「……」
  
   (また歩き出し、近づいてくる一団)

防護服『レイ!』

レイ「赤木博士……」

   (木立から、プラグの墜落でできた空地に出てくる一団)

   (銃を構えている)

シンジ・レイ「!」

ガチャッ…

   (少し離れた場所 シンジに銃を向ける一団)

防護服(リツコ)『そこのあなた! レイから離れなさい!!』

シンジ「えっ?……」

リツコ『早く! 手を頭の後ろに組んで跪きなさい!』

   (おずおずと手を上げるシンジ)

   (シンジが膝をつくのを見て一斉に取り巻く防護服の一団)

ドカドカドカ……

シンジ「えっ? えっ!?」

リツコ『レイ! こっちへ!』
     
レイ「赤木博士!?」

シンジ「ちょっと!……リツコさん……綾波!」

レイ「碇くん!?」  

   防護服の一人に腕を掴まれリツコの方へ連れて行かれるレイ


レイ「どうして!? 碇くんは――」

リツコ『そこにいるのは……』

キイイイイイイイィン…

   (3機に増えている上空のVTOL機)

リツコ『……シンジくんかどうか、わからないわ』

レイ「えっ?」

キイイイイイイイィン…

   (バイザーの中から油断なくシンジの確保作業を見ているリツコ)

   (手錠をかけられ、防護服の一団に取り囲まれて連れ去られていくシンジ)

   (呆然とその様子を見ているレイ)

   :
   :

正誤表
>>62

×  (アスカに処置をしている看護師たち  大人しく処理されているアスカ)
○  (アスカに処置をしている看護師たち  大人しく処置されているアスカ)

>>129のつづき 次から

==== ネルフ中央総合病院 レイの病室 ====

レイ「……」

   (ベッドに横たわり天井をぼんやりと見ているレイ)

アスカ「……」シャリ…シャリ…

   (ベッド際の丸椅子に腰かけリンゴの皮剥きに没頭しているアスカ)

カヲル「……」

   (その様子を退屈そうに見ているカヲル)

レイ「……」

アスカ「……」シャリ…シャリ…

カヲル「……まだ?」

アスカ「話しかけないで」イラッ

カヲル「……」

アスカ「……」シャリ…シャリ…

カヲル「……下手くそだな」

アスカ「!」キッ

カヲル「そんなに厚く剥いたら食べるとこなくなるだろ」

アスカ「うっさいわね! 文句があるなら自分で剥きなさいよ!」

カヲル「……しょうがないな……」

レイ「……」

アスカ「ふん!」

カヲル「……」シャリシャリシャリシャリ……

アスカ「!」

カヲル「……剥けたよ」コトッ

アスカ(な……なによ、こいつ!)

カヲル「食べる? ファーストは――」

プシュー…

   (入ってくるリツコ)

リツコ「検査の結果が出たわ」

   (バインダに挟まれた用紙に視線を走らせるリツコ)

リツコ「特に異常は無いようね……痛みとか違和感を感じなければ、きょうはもう帰っていいわよ」

レイ「……え?」

アスカ、カヲル「……」

リツコ「それじゃ――」クルッ……カツカツ…

レイ「赤木博士」

リツコ「……」ピタッ

レイ「あの……碇くんは?」

アスカ、カヲル「……」

リツコ「……言ったはずよ。あの子がシンジくんかどうかわからない――」

アスカ「どうしてよ!」

リツコ「……」

アスカ「見たわよ。どっから見てもバカシンジじゃない!」

リツコ「たしかに――」

   (レイたちに向き直るリツコ)

リツコ「――歯の治療痕など身体的特徴は、エヴァに取り込まれる直前のシンジくんを100パーセント再現していると言っていい」

一同「……」

リツコ「記憶の継続性や自己認識も認められる……碇シンジくんしての」

アスカ「じゃあ何で!――」

リツコ「問題はあそこに、零号機にいるはずのないシンジくんがなぜ現れたか、よ」

一同「……」


   (アスカを見据えるリツコ)

リツコ「あなたたちの話によると、使徒はレイの姿であなたたちの前に現れた」

アスカ「!」

リツコ「あの使徒は、そういう力をもっていた。加えて……あなたが救助されたころ、微弱な波長パターンが検知された」

アスカ「波長パターン?」

リツコ「そして、検知されたほぼその場所で、零号機のプラグが発見された」

一同「……」

リツコ「マギの判定結果は、パターンオレンジ」

レイ、アスカ「えっ……」

リツコ「……」

アスカ「それって――」

リツコ「あれは、本物のシンジくん自身なのか、エヴァを侵食した使徒そのものなのか、あるいはその中間なのか――まだわからないのよ」

一同「……」

レイ(そんな……)

   :
   :

1乙!
ますます展開が読めなくなってきてる。
1が挑戦してきたもしもシリーズの中でも難しいテーマだよな
支援!

支援

>>137 ありがとう
いや、あんまりひねるつもりはないんだけど

>>138 ありがとう

>>136つづき

==== 闇の中 ====

ヴォン……

   (輪を成して浮かぶモノリス群)

モノリス01「いよいよ約束の時は近い。これで死海文書に記述されている使徒はあとひとつ」

モノリス08「しかしその道程は長く犠牲も大きかった」

モノリス09「左様。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機そして初号機の損失」

モノリス11「さらに第三新東京市消滅」

モノリス09「碇の解任には十分すぎる理由だな」

モノリス07「バカな男だ。冬月を無事に返した意味の分からぬ男でもあるまいに」

モノリス04「新たな人柱が必要だな。碇に対する――」

モノリス01「加えて……事実を知る者が必要だ」

   :
   :


==== ネルフ本部 リツコの研究室 ====

ガチャッ……パタン

リツコ「……ふう……」ドサッ

   (デスクに資料をおき腰かけるリツコ)

リツコ「……」

   (資料の山を少し眺める)

リツコ「……」カチャ…ピッピッ…ピッ…

リツコ「……ああ、私です。初号機のデータレコーダーは?……」

   (話しながら資料の山を探る)

==== 初号機ケージ ====

ガコーン…ガガガガ…

男性オペ「はい……ええ、お送りしておきました」チラ…

   (傍らの黒焦げの物体を少し見上げる)

男性オペ「はい、良好です。タイムスタンプの精度が少し怪しい感じですけど。通信記録とよく一致しないところが――」



==== リツコの研究室 ====

リツコ「これね……そう……目を通しておくわ。ありがとう」

ガチャ…

リツコ「……」コポコポコポ…

   (マグカップにコーヒーを注ぐ)

リツコ「……」バサッ…

   (厚い記録用紙の束を取り上げるリツコ)

リツコ「……」

   (機械的に視線を走らせるリツコ デスクの上のカップに手を伸ばす)

リツコ「……?」ピタッ

   (手が止まる ページをもどすリツコ)

リツコ「……」ペラッ……ペラッ……

リツコ「……」

ガチャッ…ピッピッピッ……

リツコ「……ああ、赤木ですけど。零号機のデータレコーダーはどうなってる?……そう……至急送ってちょうだい。それはいいから……ええ、お願い」

ガチャッ

リツコ「……」カタカタカタ……

   (猛然とデータ端末のキーを叩き始めるリツコ  画面をスクロールしていくコマンド群)

リツコ「……」カタカタカタ……タンッ

   (実行キーを叩くリツコ)

リツコ「……」

   (眼鏡に反射しているスクリーンの光)

   (画面上、進捗状況を示す数値が断続的に上昇していく)

リツコ「……」

ガチャッ…ピッピッピッ……

リツコ「……ああ、マヤ? 至急、検算して欲しいデータがあるんだけど――」

   :
   :


==== レイのマンション ====

   (明かりの消えた部屋 射し込んでいる月明かり)

   (ベッドに横たわっているレイ 掛け布団の上で丸くなって眠っている子猫)

   (月を見るともなしに見ているレイ)

   :
   :


==== リツコの研究室 ====

リツコ「……」

リツコ(そう……)

   (画面上の図表を見ているリツコ)

リツコ(そういうことだったの……)         

リツコ「……」

   (デスクの一隅、ゲヒルン時代の職員の集合写真  微笑んでいる母ナオコを見る)

   :
   :

==== 初号機ケージ ====

   (作業が行われておらずひっそりしている)

   (フロアを見下ろす作業通路に佇むゲンドウ  その半歩後ろに立つリツコ)

ゲンドウ「……」

リツコ「……」

   (下方に横たわる初号機の残骸)


ゲンドウ(ユイ……)

   (装甲がほとんど失われ表面が黒焦げになっている)

   (手足の末梢が焼け縮み、歯をむき出した口が開かれ首が後ろに反っている)

   (見開かれた眼球と胸部のコアは死んだ魚の目のように白く濁り輝きが失われている)

ゲンドウ(これが……お前の選択した道か……)

リツコ「……」

   (ゲンドウの横顔に目だけ向けているリツコ)

リツコ「……」クルッ……カツカツカツ……

   (踵を返し立ち去りかけるリツコ)

ゲンドウ「……赤木博士」

リツコ「……」ピタッ

   (振り返るリツコ  初号機を見つめたままのゲンドウ)

ゲンドウ「……ありがとう」

リツコ「……」

   (ゲンドウの横顔を見ているリツコ)

リツコ(……ずるい人……)

リツコ「……」クルッ…

カツカツカツ……

   :
   :

==== ネルフ本部 研究棟 隔離面会室 ====

   (ベッドに腰掛けているシンジ 検査着姿)

   (シンジの前、向かい合って立つミサトとリツコ  リツコの後ろに立つマヤ)

ミサト「――どういうこと?」

リツコ「零号機が自爆する前に、初号機のコアは機能を停止していた」

ミサト「だから! どうしてそんな――」

リツコ「それは……そこにあるべきものが、そのときすでになかったから。あるいは――」

ミサト「あるいは?」

リツコ「あるいは……『いなかった』から」

ミサト、シンジ「!」

リツコ「おそらく、初号機と融合しようとした際、使徒もまた初号機から融合されかけていた。そしてレイが使徒を抑え込んだ時に、一緒に零号機に引き込まれた」

ミサト「……そんなことが起こりうるの?」

リツコ「シンジくんだけの力でできるとは思わない。でも――」チラ…

シンジ「……」

リツコ「できたかもしれない。初号機のコアに宿っていたものなら」

シンジ「え?」

リツコ「そして、爆発から守ったのよ。……おそらく、自らの身を挺して」

シンジ「!」

ミサト「ホントに、そんなことが起こったと言えるの? 都合よく解釈しすぎじゃないの?」

リツコ「14通りのシナリオに基づいて、マギにモデル計算をさせてみた。全ての物的証拠と観測値を矛盾なく説明できるのは、いま話したシナリオだけよ」

ミサト「……じゃあ――」

リツコ「ええ。ここにいるのは、碇シンジくんと考えて差し支えないわ。……少なくとも、今のところは」

ミサト「……そう……」

リツコ「まだ体調が万全でないし、2、3日は経過観察を兼ねて、ここにいてもらうことになるけど」

シンジ「あ……はい」

リツコ「以上よ」

ミサト「……ありがと、リツコ」

リツコ「別に、あなたにお礼を言われるようなことはしていないわ」

ミサト「……」ガバッ…

シンジ「あっ……」

   (ミサトに抱きしめられるシンジ)

シンジ「ミ……ミサトさん!――」

ミサト「よかった」

シンジ「え?」

   (体を離すミサト シンジの肩を掴んだまま、涙を流して微笑んでいる)

ミサト「お帰り、シンちゃん」ポロポロポロ……

シンジ「た……ただいま」

   (はにかんだように笑うシンジ)

リツコ、マヤ「……」

   (右手で涙をぬぐうマヤ)

   :
   :


==== 司令執務室 ====

ゲンドウ「――そうだ。サードチルドレンは現状維持」

   (誰かと通話しているゲンドウ)

ゲンドウ「ファースト、セカンド、フィフスも同様だ。監視だけは怠るな」

ガチャ…

ゲンドウ「……」

冬月「……しかし碇……レイとお前の息子が生きているとなれば、キール議長らがうるさいぞ。彼らにどんな言い訳をさせるつもりだ?」

ゲンドウ「放っておけ。老人たちに何ができるものか」

冬月「……」

ゲンドウ「エヴァ、アダム、リリス……すべてが我々の手に揃っているのだからな」

冬月「あるいは……揃っていると思わせているのだから……か」

ゲンドウ「……」

   :
   :

==== 隔離面会室前 ====

プシュー…

   (ドアが開き出てくるリツコとマヤ)

マヤ「……レイ?」

   (入口から少し離れた壁際に背をあずけて立っているレイ)

マヤ「ずっといたの?」

レイ「……」

   (俯いているレイ)

リツコ「聞いての通りよ、レイ」

レイ「……はい」

リツコ「行ってあげたら? シンジくんのところへ」

レイ「……」

マヤ「……レイ?」

   (壁から身を起こしリツコに向きあうレイ)

レイ「赤木博士……お聞きしたいことが――」

リツコ、マヤ「……」

   :
   :

==== ターミナルドグマ リリスの間 ====

コオオオオオオォォ……

   (突き当りの壁 巨大な赤い十字架に磔にされているリリス)

レイ「……」

   (L.C.L.だまりのほとりに佇みリリスを見上げているレイ)

カツカツカツ……

   (後ろから歩み寄るリツコ)

リツコ「……」

   (レイのとなりに並ぶリツコ)

レイ「……?」

   (眉を顰めるレイ その様子を見ているリツコ)

レイ「この……感じは……」

リツコ「そう……。強くなっているのね」

レイ「……」

リツコ「時が近づいているということ」

レイ「……」

   (目を閉じるレイ)

レイ(感じる……)

   《……私ニ……還リナサイ……》

レイ(そう。この感じ)

   (目を開け、リリスの仮面を凝視するレイ)

   《……私ニ還リナサイ……》

リツコ「アダムは生命の実を食べ、使徒に永遠の生命と力を、リリスは知恵の実を食べ、人類に知恵と死を与えた。私達は、知恵と死と、産み増えることしか受け取れなかった」

レイ「……」

リツコ「人々が追い求めてやまない、永遠の命……でも、使徒も同じく知恵の実を求めてリリスを目指す」

レイ「……」

リツコ「アダムとリリスの融合は、全てを無に戻し、また新たな生命の萌芽となるの。知恵と永遠の生命を携えて……新たな生命となるために。でも、その生命に宿るものは、私たち人類か、使徒かは……わからない」

レイ「……永遠の命を手にして、どうするのですか」

リツコ「命が永遠であることが重要なのではないの。私達すべての魂を一つにすることが重要なのよ」

レイ「……」

   (隣のレイを見下ろすリツコ)

リツコ「レイ、あなたはその扉となり、全ての心を補完する道しるべとなるの」

   (リツコを見るレイ)

レイ「……私は、そのためにいるのですか?」

リツコ「あなたは、処置なくしては、生きながらえることができない」

レイ「……」

   《……私ニ還リナサイ……》

レイ(私の役目は決まっている。目的を知ろうと知らずとも)

   《……私ニ還リナサイ……》

レイ(でも――)

リツコ「……」

   《……私ニ還リナサイ……》

   (視線を落とすレイ ブラウスの胸のあたりを掴む)

レイ(心が、騒ぐ。長い間、私の心には碇司令しかいなかったのに)

   《……私ニ還リナサイ……》

レイ(他の人や、たくさんの出来事が、私を変えていく)

   《……私ニ還リナサイ……》

   (またリリスを見上げるレイ)

レイ(私は、還らなければならないの? 誰かのために……誰のために……?)

   《……私ニ還リナサイ……》

   (また俯くレイ)

レイ(私は……私の生き方は……私の望みは……)

   《……私ニ還リナサイ……》

レイ「……」ハッ…

レイ(「私の生き方」?……「私の望み」?……)

   《……私ニ還リナサイ……》

レイ「……」

   (リリスを見上げるレイ 口を引き結ぶ)

レイ(「私の役割」は……「私の生き方」は、自分で決める)

   《……私ニ還リナサイ……》

レイ(たとえ、長くは生きられなくとも)

   《……私ニ還リナサイ……》

レイ(生命の実なんていらない。私はあなたじゃない)

   《……私ニ……還リナサイ……》

レイ(私は私。私は……残された時間を、自分の意志で生きる)

   《……私ニ……還リ……ナサイ……》

レイ(自分の場所は、自分で見つける)

   《……私……ニ……還リ……ナサイ……》

レイ(私には、その場所がある)

   《……私……ニ……》

レイ(待っている人がいる。会いたい人がいるもの)

   《……》

レイ「……」

   (我に返るレイ)

リツコ「……レイ?」

レイ「……」クルッ…タッタッタッ…

   (駆け出すレイ)

リツコ「レイ!」

レイ「……」ピタッ

   (立ち止まるレイ)

レイ「……ありがとうございました」

リツコ「……」

タッタッタッ…

リツコ「……」

   (リリスを見上げるリツコ)

リツコ「……」フッ…

リツコ(……おあいにくさま)

クルッ……カツカツカツ…

ゴオオオオオォン…

   (閉じる隔壁)

   :
   :

==== シンジの病室 ====

プシュー…

アスカ「――じゃあね、バカシンジ」

シンジ「うん……ありがとう。えっと――」

カヲル「渚カヲル」

シンジ「う、うん。渚くんも」

   (手を振るシンジ)

プシュー…

   (出ていくアスカとカヲル  上げていた手を降ろすシンジ)

シンジ「……」

   (しばらくアスカたちが出て行ったドアを見ている)

シンジ「……」ガサ…

   (読みかけていた雑誌に手を伸ばすシンジ)

シンジ「……」

シンジ(来なかったな……綾波……)

シンジ(やっぱりあれは……使徒のせい……だったのかな……)

コンコン……

シンジ「は……はい?」

プシュー…

ゲンドウ「……」スッ…

シンジ「!」

   (入ってくるゲンドウ)

シンジ(父さん……)

   (シンジのベッドの傍らに立つゲンドウ ズボンのポケットに片手を突っ込んだまま)


ゲンドウ「体調はどうだ」

シンジ「……問題ないよ」

   (少し警戒した表情で応えるシンジ)

ゲンドウ「そうか……ならいい」

   (顔をそむけるゲンドウ)

ゲンドウ「新たな機体が配備されるまで、特段お前がすべきことはない。ゆっくり休め」

シンジ「……うん」

ゲンドウ「……」

シンジ「……?」

   (眉をひそめるシンジ)

シンジ「……父さん?」

ゲンドウ「……」クルッ…

   (出口に向かうゲンドウ)

シンジ「……」

   (立ち止まるゲンドウ)

ゲンドウ「……シンジ」

シンジ「なに?」

ゲンドウ「母さんには……遭えたのか」

シンジ「えっ……」

ゲンドウ「……」

   (わずかに頭をシンジの方に振り向かせているゲンドウ)

   (俯くシンジ)

シンジ「よく、わからない」

ゲンドウ「……」

シンジ「でも……あれが……あれがそうだったんだと思う」

ゲンドウ「……そうか」

シンジ「……」

ゲンドウ「ならいい」

シンジ「……」

   (再び出口に向かうゲンドウ  少し背をすぼめているように見える)

シンジ(父さん……)

プシュー…

ゲンドウ「!」

   (開いたドアの向こうにレイが立っている)

レイ「!」

シンジ(あ……綾波?)

レイ「碇司令……」

   (唖然としてゲンドウを見上げているレイ)

ゲンドウ「……」

   (無言ですり抜けて出ていくゲンドウ  見送るように振り返るレイ)

   (立ち止まるゲンドウ)

ゲンドウ「レイ」

レイ「……」

ゲンドウ「すまなかったな」

プシュー…

レイ「司令……」

   (閉じたドアをしばし見つめるレイ)

レイ「……」

   (シンジの方を振り返るレイ)

シンジ「あ、あの……何か食べる?」

   (枕元のチェストをさぐるシンジ)

レイ「……」

   (ベッド際の椅子に歩み寄るレイ)

シンジ「なんか、いろいろお見舞いもらっちゃってさ。でも、別に病気じゃないし――」

レイ「……」

   (椅子に腰かけるレイ)

シンジ「あ、リンゴがあるけど――」

レイ「……」

シンジ「剥こうか……って……」

レイ「……」

   (何か言いたげにしながら俯いているレイ)

シンジ「あの……アスカから聞いた。綾波が、僕を助けようとして、すごく苦労してたって」

レイ「……」

シンジ「ほんとに……なんてお礼を言っていいか――」

レイ「――私の……気持ち」

シンジ「えっ?」

レイ「あれは、私の気持ち。あの時……使徒につかまっていたとき」

シンジ「……」

レイ「ただ、気が付かなかっただけ……自分でも……目をそらしていただけなの」

シンジ「……」

レイ「あのとき、あの使徒に襲われなければ、ずっと目をそらし続けていたと思う」

シンジ「……」

   (シンジの目を見るレイ)

レイ「あれが、私の本当の気持ち。でも――」

シンジ「あ……あの……」

   (また俯くレイ)

レイ「でも……私の勝手な気持ち」

シンジ「……」

レイ「もし碇くんが迷惑なら――」

シンジ「め……迷惑じゃない」

   (顔を上げるレイ)

レイ「……」

シンジ「迷惑じゃない……迷惑なんかじゃない」

レイ「……」

シンジ「あの時……いっしょに生きようって約束した」

   (互いの脳裏によみがえる、第5の使徒との戦いの後 月の下を支え合って歩いた記憶) 

レイ「……」

   (レイの目を見るシンジ)

シンジ「僕は、君を失いたくない」

レイ「!」ハッ…

   (手を差し伸べるシンジ おずおずと握るレイ)

   (レイの指先を確かめるようにさするシンジの指)

シンジ「やけど……残らなかった?」

レイ「……うん」

シンジ「そっか、よかった」

レイ「すぐ、冷やしてくれたから」

   (しばし二人の間に落ちる沈黙)

シンジ「あの……遅くなるよ」

レイ「……うん」

シンジ「そこまで送るよ」

   (ベッドを降りるシンジ  立ち上がるレイ)

レイ「だいじょうぶ」

   (手をつないだまま戸口に向かうシンジとレイ)

シンジ「気を付けて」

レイ「……うん」

   (ドアの開閉ボタンに手を伸ばすシンジ 顔を上げるレイ)

レイ「……碇くん」

シンジ「なに?……んっ」

   (シンジに口づけるレイ  目を見開くシンジ)

レイ「……」

シンジ「……っ」プハッ…

   (頬を染めてシンジの目を見るレイ  真っ赤になっているシンジ)

シンジ「あ……あの……!」

ポフッ…

レイ「……」

   (シンジの肩に顎を預けるレイ)

レイ「もっと早く……こうすればよかった」

   (固まっていたシンジ  息を吐き、レイの背中に腕をまわす)

シンジ「……うん」

シンジ、レイ「……」

   (何か思い出したように身じろぎするレイ)

シンジ「……なに?」

レイ「ネコを……拾ったの」

   (シンジの肩でつぶやくレイ)

シンジ「――ネコ?」

レイ「子猫。白い」

シンジ「綾波の家にいるの?」

レイ「うん」

シンジ「なんか、意外な感じだな」フフ…

レイ「そう?」

シンジ「名前は?」

レイ「……え?」

シンジ「何ていうの? 名前。その猫の」

   (体を離してシンジの顔を見るレイ)

レイ「……つけてない」

シンジ「え? 名前、ないの?」

レイ「思いつかなかった。名前付けること」

シンジ「そっか……じゃあ、つけてやらないと――」ニコ…

レイ「そうね」クスクス…

   (またシンジの肩に顎を預けるレイ)

   :
   :

==== セントラルドグマ ダミープラント ====

シュオー… ドクン…ドクン…

リツコ「……」

レイたち「……」コポ…コポ…

   (無数のレイのスペアが浮き沈みするオレンジ色の水槽  その前に佇むリツコ)

リツコ(長くは生きられない……か)

レイたち「……」コポ…コポ…

リツコ(そうも言っていられないわね、立場上……)

   (手の中のリモコンのような装置を見つめるリツコ)

レイたち「……」コポ…コポ…

リツコ(あなたたちには役に立ってもらわなければ、ね)

レイたち「……」コポ…コポ…

リツコ(これまでとは、違った形で……)

レイたち「……」コポ…コポ…

リツコ「……」スッ…

   (装置をポケットにおさめるリツコ)

レイたち「……」コポ…コポ…

リツコ「……」

   :
   :

>>73

×リツコ「ただし、少しでも異常が見られたらすぐ中止しますからね。今は。エースパイロットの言葉を信じましょう」
○リツコ「ただし、少しでも異常が見られたらすぐ中止しますからね。今はエースパイロットの言葉を信じましょう」


>>135 一部修正
修正前
リツコ「――歯の治療痕など身体的特徴は、エヴァに取り込まれる直前のシンジくんを100パーセント再現していると言っていい」

修正後
リツコ「――物理的情報では完全に一致。生後の歯の治療跡など身体組織はエヴァに取り込まれる直前のシンジくんを100パーセント再現していると言っていい」


りっちゃんは何する気なんだろう

原作のアニメで頭に浮かんで来させてくれる繊細な描写 静かな表現に脱帽支援

>>160-162 ありがとう

>>160 そうか、悪巧みっぽくも見えるね

>>161 副音声系は嫌いな人もいるので良し悪し


■正誤表
>>135
× リツコ「記憶の継続性や自己認識も認められる……碇シンジくんしての」
○ リツコ「記憶の継続性や自己認識も認められる……碇シンジくんとしての」


>>159のつづき 次から

==== 夕暮れ 零号機の爆発クレーター 湖畔 ====

シンジ「……」

   (携帯電話を耳に当てて佇んでいるシンジ)

   (荒れ果てた岸辺 ビルや家屋の残骸が散在している)

自動音声『――1件の新しいメッセージがあります。 1番目のメッセージ。23日、午後、2時、18分』

ケンスケ『碇……僕だよ。ケンスケ。悪いけど、君には会わないで行く』

シンジ「……」

ケンスケ『っていうか、もう一生会うこと無いかもしれないな』

シンジ「……」

ケンスケ『だって、そうだろ? 僕たち……笑って会うなんてこと、もう絶対に無理だもんな』

シンジ「……」

ケンスケ『じゃ、がんばれよ。さいなら』

自動音声『再生が、終わりました。メッセージは以上です――』ピッ…

シンジ「……」

   (携帯電話をもった手をだらりと降ろすシンジ)

チャプ……チャプ……

   (岸辺に打ち寄せる波)

シンジ「ケンスケも委員長も……クラスのみんなも家を失って他のところへ行ってしまった」

レイ「……」

   (呟くシンジの傍ら シンジの横顔を見ているレイ)

チャプ……チャプ……

シンジ「誰もいなくなってしまった……ネルフの外には……友達と呼べる人は誰も……」

レイ「碇くんのせいじゃない……鈴原くんのことも」

シンジ「……」ピクッ

チャプ……チャプ……

レイ「いつか、わかってもらえる」

シンジ「そう……なのかな……」

チャプ……チャプ……

レイ「大丈夫だから」ソッ…

   (携帯電話を握ったままのシンジの左手を右手で包む)


シンジ「……うん……」

   (寂しげに笑うシンジ)

チャプ……チャプ……

   :
   :


==== 少し離れた場所 ====

カヲル「……」

   (ポケットに手を突っ込んでたたずむカヲル  シンジとレイの様子を見ている)

   :
   :



==== 闇の中 ====

   (虚空に円を成して浮かぶモノリス群)

モノリス01「――機は熟した。行くがよい、タブリス」

カヲル「わかってるよ――」

   (ぶっきらぼうに応じるカヲル)

カヲル「――最初からそのために、僕はいるんだから」

   :
   :


==== 弐号機ケージ ====

カヲル「……」

   (アンビリカルブリッジ 弐号機を見上げているカヲル)

カヲル「……」

   (俯くカヲル)

カヲル(やっぱりダメか……)

   (ポケットに手を突っ込んで虚空を見ているカヲル)

カヲル(仕方ないな……地味に行くか……)

カツカツカツ……

カヲル(?)

   (ケージの入口  壁に寄りかかって腕組みをしているアスカ)

カヲル「……」スタスタ…

   (行き過ぎようとするカヲル)

アスカ「……何やってんの、あんた。冴えない顔して」

カヲル「……」ピタッ

   (ため息をつくカヲル)

カヲル「……議長と同じこと言うなよな……」

アスカ「えっ? なに?」

カヲル「……何でもないよ」スッ…

アスカ「どこ行くのよ」スッ…

カヲル「……ついてくるなよ。どこだっていいだろ」スタスタ…

アスカ「よくないわよ!」

カヲル「……」ピタッ…

アスカ「あ……あたしは正規パイロットよ? 予備パイロットの状態を常に把握しとく義務があるわっ!」

カヲル「……」ハァ…

カヲル(まあ……弐号機で突撃されても面倒だしな……)ポリポリ…

カヲル「……勝手にしなよ」スタスタ…

アスカ「か……勝手にって……あんたねえ!!」スタスタ…

   (歩き出すカヲル 肩を怒らせてついていくアスカ)

   :
   :

==== エレベーター内 ====

グウーーーン…

カチン…カチン…

   (ドアの上、増えていく地階数表示)

アスカ「ねえ、どこ行くのよ」

カヲル「……勝手についてきたのはそっちだろ」

カチン…カチン…

カチン…

アスカ「!」

   (階数表示がLEEEになり、変わらなくなる  なおも下降するエレベーター)

アスカ「ちょ……ちょっと……どこまで降りるのよ、このエレベーター」

カヲル「……」

   :
   :


==== ターミナルドグマ ====

カツカツカツ…

   (虚ろに反響するカヲルとアスカの足音)

   (周囲を不安げに見回しながらカヲルに続くアスカ)

カヲル「……」

   (隔壁に突き当たる)

アスカ「……行き止まり?」

カヲル「……」チラッ…

   (施錠装置を見やるカヲル)

カチン…ビーーーッ

ゴンゴンゴンゴンゴン…

   (開き始める隔壁)

アスカ「こっ……これ、どういう仕組み?」

カヲル「……」

ゴンゴンゴンゴンゴン…ガシャーン…

アスカ「!!」

   (隔壁の向こうに広がる広大な空間  突き当りの壁にそびえる白い巨人)

アスカ「な……何よこれ……って、ちょっと! 待ちなさいよ!!」

   (無言で入っていくカヲルを慌てて追うアスカ)

   :
   :



==== リリスの間 ====
 
コオオオオオオォ…

   (壁の巨人を見上げるカヲルとアスカ)

アスカ「これは……エヴァ?」

   (L.C.L.だまりの岸壁の縁に歩み寄るカヲル  眉をひそめる)

カヲル「……やはり……これはアダムじゃない」

アスカ「え?」

カヲル「黒き月……リリス」

アスカ「リリス?」

カヲル「そうか……最初からここにいたんだね……」

アスカ「な……何言ってんの? あんた」

カヲル「そして、ずっと待っていた……継承者がここまでくるのを」

プチ…プチ…

カヲル「……?」

ズルッ…

   (リリスの身体の下端、人間の下半身に似た肉塊がひとつ、ちぎれて落下する)

ドボーン…

カヲル(……腐ってる!?)

パシャン… パシャン…

   (二人の足元、岸壁に打ち寄せるL.C.L.の波)

   「あまり縁に寄ると濡れるぞ」

アスカ、カヲル「!」

   (振り返るカヲルとアスカ)

アスカ「え……」

   (隔壁を背にしたフロアの一角 何か敷物を敷いて胡坐をかいているゲンドウと冬月)

冬月「フィフスチルドレン――」

   (冬月とゲンドウの間に酒の瓶が置かれている)

冬月「それとも……『タブリス』……と呼んだ方がいいかね?」

アスカ「……たぶ……?」

カヲル「何を……してるんです?」

冬月「悼んでいるんだよ」

カヲル「……」

冬月「まあ、座りたまえ。お茶でいいかね?」

   (買い物袋から大きめのペットボトルを取り出す冬月)

   (歩み寄るカヲル)

冬月「どうした? 君も来たまえ」

アスカ「えっ?……あっ……はい」

   (我に返って歩み寄るアスカ)

   (敷物の一隅に座るカヲルとアスカ)

冬月「……」コポコポ…

   (二人に紙コップを渡しお茶を注いでやる冬月)

カヲル「……用意がいいんですね」

冬月「そろそろ来る頃だと思っていたのでね」

カヲル「……」

プチ…プチ……

   (リリスを眺める一同)

冬月「無残なものだ」

プチ…プチプチ……

冬月「欠けた心……いや――」

   (酒を少しすする冬月)

冬月「――心を欠いた肉体、と言うべきかな」

カヲル「心?……リリスの?」

冬月「……」

プチプチプチ……

一同「……」

ズルッ……ドボーン…

チャプ…チャプ…

   :
   :

==== レイのマンション ====

   (フロアに敷いたクッションに並んで座っているシンジとレイ)

   (シンジが操る猫じゃらしに狙いを定めては飛びかかる子猫)

   (紅茶のカップをもって、その様子を目を丸くして見ているレイ)

   (耳をピンと立て、猫じゃらしの動きを俊敏に目で追う子猫)

   (顔を見合わせ、くすくす笑うシンジとレイ)

   :
   :


==== リリスの間 ====

カヲル「……アダムは?」

ゲンドウ「……」ゴソ…

   (黙って上衣のポケットに手を入れるゲンドウ)

   (手の中の物をしばらく見つめる)

ゲンドウ「……好きにし給え」ゴトッ

   (カヲルの手の届くところに石化した胎児状のものを置く)

カヲル「……」

   (つかみ上げるカヲル)

アスカ「何? それ……」

カヲル「……」

アスカ「……化石?」

   (「アダム」を手の中で回しながら見るカヲル)

ピキッ……

カヲル「あ……」

   (つかんだ指のあたりから亀裂が入る)

バキン……バラバラバラ……

   (細かく砕ける「アダム」)

カヲル「!」

   (カヲルの手から砂となって滑り落ちる「アダム」の残骸)

   (その様子を見ているゲンドウ、冬月、アスカ)

カヲル「これは……」

冬月「すでに、我々とともにある、ということだ――」

カヲル「……」

冬月「――君の心もな」

   (コップの酒を一口すする冬月)

カヲル「……利用できるものは何でも利用するんですね」

冬月「気に食わんかね?」

カヲル「……別に……」

アスカ「あ、あの……」

カヲル「なに?」

アスカ「あんた達の言ってること、さっきから全っ然わかんないんだけど」

カヲル「……わかんない方がいいよ」

アスカ「よ……よくないわよ! ちゃんと説明しなさいよ!」

カヲル「……」ゴクゴク…

プチ…プチ…

冬月「彼女に会うことはかなわなかったか」

…ドボーン…

ゲンドウ「……」

冬月「彼女が一人で初号機に残ったのは、我々の生きる強さを信じていたからこそではなかったか」

ゲンドウ「……」

   (コップを口に運ぶゲンドウ)

冬月「いずれ会える時がくる。我々は彼女の意思を継いで生きて行かなければならないが……たとえ、一人になったとしても」

ゲンドウ「……」

冬月「いや、生きて行こうとする我々の中に、すでに彼女はいるのだ」

ゲンドウ「それを見失っていたのか……今まで」

プチ…プチ…

冬月「碇、お前には、まだ違う生き方がある」

ゲンドウ「……」

プチ…プチプチ…

   (次第に垂れ下がってくるリリスの体  左肩口に亀裂が入り、徐々に深くなる)

プチプチプチ……

アスカ「あ……」

……ブチッ

   (破断する左肩口)

ズズズズズ…

   (左腕のない上体が、楔が撃ち込まれた右手を支点に回転し垂れ下がる)

ズルズルズル……ドドーーーーーン…

   (楔で支えられた右掌が状態の重みで裂け、全体が落下する  上がる水柱)

ズズズズズ…

   (左腕も楔を支点にぶら下がるが、重みで掌が裂けて落下する)

…ドボーン

一同「……」

ゴボゴボゴボ…

   (砕けながら沈んでいく、半壊したリリスの残骸)

ザバン……ザバン……

   (岸壁に打ち寄せる波 少し岸壁を乗り越えて広がるL.C.L.)

一同「……」

   (背後の壁に残された赤い巨大な十字架)

   :
   :

正誤表

>>172
×(楔で支えられた右掌が状態の重みで裂け、全体が落下する  上がる水柱)
○(楔で支えられた右掌が上体の重みで裂け、全体が落下する  上がる水柱)

支援


ゲンドウの目的は変わったのだろうかもしかして

支援

>>174 >>175 >>176
 ありがとう

>>173からつづきます

==== ネルフ本部 コンピュータールーム ====

ゴウウウウウウウウゥン…

ミサト「……」カチャカチャカチャ…

   (配線スペースでネットワークに不正アクセスしているミサト  後ろ髪を結い上げている)

ミサト「……」カチャカチャ…タンッ…

[File not found]ピピッ

ミサト(これもか……)

ミサト(全ての使徒を倒すだけじゃない……委員会は何かをしようとしていた)

ミサト(でも……その目論みはどこかで狂った……)カチャカチャカチャ……

ミサト「……」カチャカチャ…タンッ…

[File not found]ピピッ

ミサト(「人類補完計画」……)

   (天井を仰ぐミサト)

ミサト(結局、彼らは何をしようとしていたのかしら……)

   :
   :


==== 闇の中 ====

   (輪を成して浮かぶモノリス群)

モノリス02『先にリリスの分身たる初号機が失われ――』

モノリス05『ついにリリスまでが失われた』

モノリス12『もはや「《裏》死海文書」に記された神と人との融合……補完への望みは潰えた」

モノリス01『いや――』

モノリス群『……』

モノリス01『「《裏》死海文書」はあくまで預言の書。その解釈のひとつが誤りだったに過ぎん』

モノリス08『だが「補完」が行われなければ、もはや未来は定まった道の上にはない』

モノリス07『そうだ。いかなる災禍が訪れるか、もはや誰にも予見することはできん』

モノリス01『左様。我々は備えなければならぬ』

モノリス群『……』

モノリス01『そして待つのだ』

モノリス05『しかし――』


モノリス01『左様、それには長い時を要するかもしれん』

モノリス09『しかし、待つほかに何ができよう?』

モノリス02『待つのだ。如何に長くかかろうとも』

モノリス03『我らの時代にその時が訪れずとも』

モノリス01(キール)『待つほかは無いのだ』

モノリス群『……』

キール「ふたたび、時が満ちるのを――」

  :
  :


==== 共同墓地 ====

ヒュウウウウウゥ…

   (緩やかに起伏する地面  見渡す限りの墓標の群れ)

シンジ「……」

   (墓標の一つの前に立つ私服のシンジ、レイ)

シンジ(トウジ……ごめん……)ガサッ…

   (花束を供えるシンジ)

シンジ、レイ「……」

シンジ「新しい花……」

レイ「え?」

シンジ「お参りに来てる人がいるんだね」

レイ「……」

シンジ「委員長……なのかな……」

レイ「……」

キイイイイイイイィィン

シンジ「!」

   (シンジたちから少し離れた場所  爆音と共に飛び立つVTOL)

シンジ「……え?」

   (窓の奥、ちらりと見えるゲンドウの横顔)

シンジ「父さん?」

キイイイイイイイィィン


   (高度を上げるVTOL)

シンジ「どうして父さんが……」

レイ「明日は、鈴原くんの月命日だから」

シンジ「えっ?」

レイ「碇司令は、鈴原君の告別式の会場に入れてもらえなかったの。だから――」

シンジ「じゃ……じゃあ、この花は……」

レイ「当日だと、人が来るから」

シンジ「……そうだったんだ……」

キイイイイイイイィィン……

   (遠ざかるVTOLを見送る三人)

   :
   :

シンジ、レイ「……」ザッ…ザッ…

   (バス停に向かうシンジとレイ)

シンジ「……あの……ごめん、今日は無理言って」

   (シンジの顔を見るレイ)

シンジ「おかげで、やっとお参りできた。……ありがとう」

レイ「ううん、いいの」

   (視線をもどし、はにかんだ笑みを浮かべるレイ)

   :
   :

   (バス停から向かってくる墓参の人々とすれ違う)

シンジ「……?」

   (ふと顔を上げるシンジ  人並みの中の顔が目に留まる)

シンジ「!」

   (少し離れたところで立ち止まり目を見開いているヒカリとケンスケ)

シンジ(委員長……ケンスケ……)

   (一瞬、見つめ合うシンジたちとヒカリたち ヒカリたちを残して歩み去る人々)

シンジ「……」フイッ…

   (いたたまれなくなって視線をそらし、また歩き始めるシンジ)

レイ「……」

   (続くレイ)

ヒカリ、ケンスケ「……」

   (ヒカリ達の横に差し掛かるシンジたち 歩度をやや緩めて)

シンジ「……ごめん……二人とも」

   (俯いて通り過ぎるシンジ 並んで歩くレイ)

ヒカリ「碇くん!」

シンジ「!」ハッ…

   (立ち止まるシンジ  恐る恐る振り返る)

シンジ「……」

   (花束を握り締めて 何か言いたげにこちらを見ているヒカリ  ヒカリとシンジ達を見比べているケンスケ)

   :
   ;

とりあえずここまで


本人は全力を尽くした……んだがやっぱり辛いな

支援

>>183 >>184 ありがとう
>>181つづき

==== それから セントラルドグマ ダミープラント ====

コポ…コポ…

   (オレンジ色の水槽の中 浮き沈みしているレイのスペアたち)

ゲンドウ「……」ギシッ…

   (双眼顕微鏡から目を離し、眉間をもむゲンドウ  白衣姿)

カツカツカツ…

   (別室から歩いてくるリツコ  白衣  両手に湯気の立つマグカップ)

リツコ「司令、少し休まれては?」

ゲンドウ「私はもう司令じゃない」

リツコ「失礼しました、『所長』」

ゲンドウ「……こんなことに君が付き合う必要はない」

リツコ「そうですけど……」

   (コーヒーを手渡すリツコ)

ゲンドウ「……すまん」

リツコ「いいえ」

   (一口すするゲンドウ)

コポ…コポ…

ゲンドウ「……」

   (浮き沈みするレイのスペアたちを見やるゲンドウ)

ゲンドウ「赤木君」

リツコ「はい?」

   (デスクの上の実験メモから顔を上げるリツコ)

ゲンドウ「私は昔、ここにあるダミーをこの手で破壊しようと思ったことがある」

リツコ「……」ピクッ

ゲンドウ「いや、レイを……レイそのものも…」

リツコ「……」

ゲンドウ「レイは、計画のために作られた存在だった。……ユイをかたどって」

リツコ「……」

ゲンドウ「ふとやりきれなくなったのだ……無数のユイを見るのを」

リツコ「……」

ゲンドウ「長い間、忘れていた。あのとき、君のお母さんが――」

リツコ「……」

ゲンドウ「……いや……すまん」

リツコ「そうなさらなくてよかったのでは?……今となっては」

ゲンドウ「……」

リツコ「これらは……いいえ、彼女らは生きています。魂は無くとも、それでもレイのためのデータを与えてくれている」

ゲンドウ「レイはもともと……『その日』まで生きながらえればよかった。今のようなことなどまるで想定していなかった」

リツコ「……」

ゲンドウ「とうてい及ばぬことだ。人並みの娘のように生きていくことなど……仕事についたり、まして――」

コポ…コポ…

   (デスクに向き直り俯くゲンドウ)

リツコ「……でも、そうしてやりたいとお思いなのでしょう?」

ゲンドウ「……」

リツコ「焦る必要はありませんわ」

(ゲンドウの肩に手をおくリツコ)

ゲンドウ「……」

   (書類を取り上げるリツコ)

リツコ「この賦活化物質はだいぶ効果があるみたいですよ。E-03Cですが」

ゲンドウ「ああ」

   (カップをデスクに置くゲンドウ 眼鏡をずりあげて、リツコが差し出した書類に視線を走らせる)

ゲンドウ「しかし、まだこれでは風邪薬程度だな――」

コポ…コポ…

   (浮き沈みしているレイたち)

   :
   :

短いですがとりあえずここまで


そういうことだったのか

>>189 ありがとう
>>187の続きから投下します

==== 新第三東京市上空 機内 ====

キイイイイイィン…

   (高度を上げるVTOL)

   (席についているミサト、シンジ、レイ、アスカ、カヲル  窓から外を見ている)

   (眼下を行き過ぎていく地上の景色)

   (芦ノ湖畔 重機が瓦礫を取り除き、道路を整備している)

   (山並みの向こうに見えてくる太平洋)

キイイイイイィン…

   :
   :



==== エヴァ専用リニア線 相模湾 第9番停車場 ====

ガコーン ガコーン ダダダダ…

   (新しいエヴァを乗せた台車が停車している 周囲で働いている作業員たち)

マヤ「ほらぁ、そこっ! もたもたしない!」

作業員「す、すみません!」

マヤ「まったくもう……」

ミサト「……マヤちゃん……キャラ変わったんじゃない?」

マヤ「えっ……そ、そんなことないと思いますけど……」

   (少し紅くなるマヤ)

ミサト「まあねー、多少厳しくなけりゃ務まらないんでしょうけど」

マヤ「はい……センパイって、やっぱりすごい人だったんだなって、改めて思います」

ミサト「あはは……」

マヤ「でも、それを言うなら葛城さんだって――」

ミサト「そうねぇ……」ウーン

ミサト「司令代行なんて、肩が凝るばっかり……早く後任の司令が来ないかしら……」コキコキ…

マヤ「司令と言えば……最後の方は『委員会』とうまく行っていなかったみたいですね」

ミサト「そうらしいわね」

マヤ「その『委員会』も解体……エヴァシリーズの配備が急に認められたのも、何か関係があるんでしょうか?」

ミサト「どうかしらね……」

   (少し離れたところ  機体を眺めている子供たち  近づくミサト)

ミサト「どう?」

シンジ「これが新しい機体……ですか?」

ミサト「そう、量産型のね」

アスカ「でも、もう使徒は来ないんじゃなかったの?」

ミサト「たしかに、リリスが失われたことでアダムの子らによるサードインパクトは回避された」

レイ「……」

ダダダダ… ガコーン…

ミサト「でも、《裏》死海文書に預言された――預言されたと考えられていた筋書が狂ったことで、そこに記されていなかった使徒たちが動き出そうとしている」

カヲル「『外典』……ですか」

ミサト「ええ。リリスが失われた今、新たな使徒は、もう世界中どこに現れてもおかしくない」

アスカ「だったら、もうあそこに籠ってる必要なんて、ないんじゃないの?」

マヤ「いずれは、世界中のどこに使徒が現れても、24時間以内にエヴァを派遣できるように配備する計画なの。でも、まだ当面はあそこを拠点とせざるを得ない。ノウハウの蓄積が、まるで違うから」

ミサト「新第三東京市は、要塞機能を省いて、エヴァパイロットの訓練と使徒の研究拠点として再編される。規模は前よりだいぶ小さくなるわね」

子供たち「……」

ガシャン… グオオオオオオォン…

作業員「――技術課長! オーケーです」

マヤ「いいわ、運んで」

作業員「了解」

ガコン……ガタン……ガタタン…

   (動き出すエヴァ運搬車両  車両の上に横たわっているエヴァシリーズ)

   (それぞれ黒、黄、紫を基調とした6、9、13号機がゆっくりと行き過ぎていく)

シンジ「量産型って、いままでと形がだいぶ違うんだね」

アスカ「なーんか、シュミ悪い感じよねー。……ねえ、あんたは平気なの?」

カヲル「別に……もともと僕用に調整されてた機体だし」

シンジ「そ、そうなんだ……」

アスカ「顔なんてウナギみたいだし……それにあの口! だいたい、なんで唇なんか――」

   「違うのはクチビルだけじゃないにゃ!」

一同「えっ?」

ガタタン…ガタタン…

   (13号機に続いて運ばれてくるピンクを基調とした8号機)

   (その上に仁王立ちしているメガネの少女  シンジ達とは違う学校の制服)

少女「しょせん4号機までは先行量産タイプ。けど、このエヴァシリーズは違ぁーう!」

   (人差し指と親指をL字型にした手を突きだして芝居がかって振って見せる少女)

一同「……」

少女「稼働時間問題を解決するS2機関搭載、収納式の主翼により自力飛行が可能、加えて少々のダメージなら数分で回復する自己修復機能付き! これこそ来る使徒同時展開に対応すべく配備された、世界初の本物のエヴァシリーズなのにゃ!」

   (唖然とする子供たち 困り顔のミサトとマヤ)

アスカ「……な、なによ、あいつ」

ミサト「真希波・マリ・イラストリアス……ユーロ支部の問題児ね」

   (腕組みをして見上げているミサト)

マリ「よっ! はっ! ほっ!――」タンッ…タンッ…

   (機体から飛び降りてくるマリ)

マリ「――はっ! とっ! ――あり?」ズルッ

一同「えっ?」

マリ「――っとっとっとっ……どいてどいてどいてーーー!」

シンジ「うああああああっ!!」

ドサッ!……

マリ「……痛ったあ……痛ったたたた……ん?」

シンジ「……」モガモガ…

   (マリの胸元に埋もれているシンジの顔)

マリ「あっ……」ムクッ

シンジ「……っはあっ……」

レイ「大丈夫?」スッ

シンジ「う、うん……」

マリ「メガネ、メガネ……」

アスカ「――ユーロ支部!? 知らないわよ、こんなやつ!」

   (転がっていた眼鏡をみつけてかけ、四つん這いのまま振り返るマリ)

マヤ「北極のベタニアベースで、永久凍土内で休眠状態だった使徒の極秘調査に携わっていたのよ」

ミサト「そう。……加持の遺した情報によれば、ね」

アスカ「こいつが!?」

ミサト「結局、うまくいかずに基地は放棄する羽目になったそうだけど……マリはそのとき、その使徒を一人で処理したのよ。仮設装備のエヴァ1機と引き換えにね。だから――」

マリ「――よっと」

   (立ち上がるマリ)

ミサト「――腕は確かよ」

アスカ「なんか納得いかない! ぜぇったい何かのコネで取り入ったに決まってるわっ!」

マリ「まーまー、仲良くやろうよ、お・ひ・め・さ・ま」

シンジ「お姫様?」

カヲル「あー、言い得て妙だな」

アスカ「な、なによ! あんた達まで!!」

トゥルルルル……ピッ

ミサト「はい。……ああ、お疲れ様、日向君……そう、やっぱり……」

一同「……」

ミサト「……わかったわ。引き続きよろしく頼むわ。それじゃ」ピッ…

ミサト「噂をすれば、ね」

シンジ「噂?」

ミサト「浅間山地震研究所に張りついてた日向君からの連絡よ」

一同「……」

ミサト「マグマだまりの透視画像に見つかった影を調査していたの。マギの分析結果は、パターン青」

一同「!」

   (緊張する面々)

アスカ「使徒!?」

マヤ「まだ完成体になっていない蛹の状態みたいなものね」

ミサト「その使徒の捕獲を検討しているの。細部はこれから詰める必要があるけど……できうる限り原形をとどめ、生きたまま回収する」

カヲル「できなかったときは?」

ミサト「即時殲滅。それしかないわね」

シンジ「でもどうやって? マグマの中なんですよね?」

マヤ「エヴァ用の耐熱・耐圧・耐核防護服……局地戦用のD型装備なら耐えられる。初期のエヴァ用だから、唯一残ってる弐号機にしか使えないけど」


アスカ「ほかのエヴァはどうするのよ」

ミサト「バックアップね。耐熱装備はなくても、機体の修復ができるから――」

   (説明を続けているミサト)

   (俯いているレイに気付くシンジ)

シンジ「どうしたの?」

   (隣にいるレイの顔を覗き込むシンジ)

レイ「ううん……」

シンジ「……」

レイ「まだ……続くのね」

シンジ「そうだね」

レイ「……」

シンジ「……怖い?」

   (顔を上げるレイ)

レイ「そう……怖い」

   (また俯くレイ)

レイ「今まで、考えたことなかった」

シンジ「そりゃ怖いよ」

   (顔をあげてシンジを見るレイ)

レイ「……」

シンジ「怖いに決まってる」

レイ「碇くんは、あのときもそう言ったわ」

シンジ「えっ?」

   (また俯くレイ)

レイ「ごめんなさい……私、何もわかっていなかった」

シンジ「……大丈夫だよ」

   (レイの手を握るシンジ  顔を上げるレイ  真顔で見ているシンジ)

シンジ「頑張ろ」

レイ「……うん」

   (真顔で応えるレイ)

アスカ「ほらあ! 昼間っからイチャイチャしてるんじゃないわよ!」

シンジ「べっ……別にイチャイチャしてなんかないだろ」

カヲル「昼間じゃなきゃいいのかよ」

アスカ「なっ! ……何言ってんのよ、このヘンタイ!」

ミサト「――どしたの? シンちゃん」

シンジ「あっ……いえ……」

レイ「……」

シンジ「まだまだ戦いが続くんだなって」

ミサト「えっ?」

子供たち「……」

ミサト「そう……そうよね……」

子供たち「……」

ミサト「でも、あなたたちの場合はちょっと違うわ」

シンジ「えっ?」

ミサト「あなたたちは、大人への階段を上ろうとしている。そうすればもうエヴァとシンクロして操ることはできなくなるのよ」

シンジ「え?……」

ミサト「……」

   (少し寂しげに微笑んで子供たちを見下ろすミサト)

アスカ「で、でも……それじゃあパイロットはどうするのよ?」

マヤ「あなたたちの下級生から適格者を選抜して、訓練していくことになるの。あなたたちと同じように学校に通いながら訓練を受け、いずれあなたたちと交代することになるわね」

子供たち「……」

ミサト「機体とはそれぞれ相性があるから、各々、決まった機体に配属になる。あなたたちには先輩として、後輩のパイロットをマンツーマンでコーチしてもらうつもりよ」

シンジ「そ、そんな! いきなり言われても、コーチなんて……」
   
ミサト「えーっと、シンジくんの13号機はっと……この子ね」

   (タブレット端末の画面を見せるミサト  画面を覗き込むシンジ)

   (少しあどけない感じのショートヘアの少女 緊張した面持ちの顔写真)

シンジ「……女の子なんだ……」

ミサト「どう? 可愛いでしょ?」


シンジ「えっ?」

ミサト「でも、浮気は駄目よん」ヒソ…

シンジ「な、何言ってるんですか!」

レイ「……?」

ミサト「そうだ、無事終わったら、みんなで温泉に行きましょうか?」

カヲル「温泉?」

ミサト「現場の近くにいい温泉宿があるのよ」

マリ「はーい、さんせーい!」

アスカ「そういうとこだけ出てくるんじゃないわよ、このコネメガネ!」

シンジ「ケンスケ達にお土産買って行こうか」

レイ「そうね」

ミサト「――じゃあみんな、本部に帰って作戦会議よ」

シンジ「はい!」

レイ「はい」

アスカ「はーい!」

カヲル「はーい……」

マリ「合点承知ぃ!」

   (駐機場に向かって歩き出す一同)

   (線路上を運ばれていくエヴァシリーズ)

ガタタン…ガタタン…

   (真っ青な空、緑の山々、富士の稜線、白い雲)

   :
   :

おしまい

■MEMO

◎元ネタ、参考にした既存作品など

・【エヴァ】欠けた心と人形(web漫画)

・PSP 新世紀エヴァンゲリオン2 造られしセカイ 使徒、襲来 ベストED(動画)

・PSP版エヴァンゲリオン2 綾波レイシナリオダイジェスト(動画)

・新世紀エヴァンゲリオン鋼鉄のガールフレンド2nd実況プレイ Part14(完)(動画)

・夏子 ~御前崎博士とクローン人間(漫画)


◎関連SSなど

・もしもヱヴァ「破」で3号機の起動実験がうまく行っていたら
 レイ「・・・碇くんの頬っぺた、プニプニしてみたい・・・///」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376493346/)

・もしもヱヴァ「破」であの時碇シンジがそのフロアにいたら
 アスカ「乗るなら早くしなさい!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398870354/)

・もしもヱヴァ「破」のあと初号機の中でも14年たっていたら
 もしもヱヴァ「破」のあと初号機の中でも14年たっていたら - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411265665/)

・もしもヱヴァ「破」のあと「来い!」がクセになっていたら
 もしもヱヴァ「破」のあと「来い!」がクセになっていたら - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412402005/)

・もしもヱヴァ「Q」のアヤナミレイ(仮)がリナレイだったら
 アヤナミレイ(仮)「いっかーりくーん、どこー?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1378826143/)

・もしもヱヴァ「Q」で綾波レイも回収されていたら
 レイ「ここは……どこ?……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379514608/)

・もしもあの時綾波レイの怪我が本編より少しだけ軽かったら
 もしもあの時綾波レイの怪我が本編より少しだけ軽かったら - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402415123/)

・もしもあの時貞本エヴァでアスカの症状が少しだけ軽かったら
 もしもあの時貞本エヴァでアスカの症状が少しだけ軽かったら - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416844213/)

・もしもあの時綾波レイのつぶやきが皆に聞こえていたら
 http://seesaawiki.jp/lrs/d/%c1%ed%b9%e7%a5%b9%a5%ec73-551

・ヱヴァ新劇場版の結末を妄想してみる
 パターン1
   その1 シンジ「何ですか? これ」ミサト「教科書よ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380811845/)
   その2 シンジ「エヴァ最終号機?」(Bルート) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1390831079/)
 パターン2 http://seesaawiki.jp/lrs/d/%c1%ed%b9%e7%a5%b9%a5%ec73-357
 パターン2' http://seesaawiki.jp/lrs/d/%c1%ed%b9%e7%a5%b9%a5%ec73-368
 パターン3 http://seesaawiki.jp/lrs/d/%c1%ed%b9%e7%a5%b9%a5%ec73-693

・漫画版LAST STAGEの続きを妄想してみる(断片的)
 パターン1 http://seesaawiki.jp/lrs/d/%c1%ed%b9%e7%a5%b9%a5%ec72-687
 パターン2 http://seesaawiki.jp/lrs/d/%c1%ed%b9%e7%a5%b9%a5%ec73-3

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年02月14日 (土) 21:23:29   ID: MayClCxP

超気になる

2 :  SS好きの774さん   2015年08月04日 (火) 05:11:27   ID: lhKsMEQ1

読みにくいんだよド素人が

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom