榛名「おかえりなさい」 (33)
榛名「・・・・・・」
榛名「提督、榛名はまた金剛姉様達に冷たくあたってしまいました」
榛名「みんな、榛名を心配して声をかけているのに」
榛名「榛名はダメですね・・・」
榛名「わかってはいるんです。受け入れなければならないことは」
榛名「でも、今の榛名にはこうせずにはいられないんです」
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榛名「平凡な生活を送っていた提督が、妖精が見えるというだけで、戦場に行くことになるなんて」
榛名「たった1枚の紙切れが、こんなにも残酷な意味を持っているなんて」
榛名「でも、提督がいてくれたからこそ、榛名と出会うことができたんですよね」
榛名「なんだか、複雑ですね」
榛名「提督が行方不明になってから、もう月も経ってしまったんですね」
榛名「榛名が戦闘中に、みんなと逸れて途方に暮れてしまった、あの嵐の夜」
榛名「提督は、危険を顧みず、哨戒艇で榛名を助けに来てくれましたね」
榛名「でも、深海棲艦の砲撃に当たって・・・提督の乗っていた哨戒艇が沈んで・・・」
榛名「提督はどうして脱出しなかったんですか?」
榛名「何よりも、提督を助けられなかった榛名が、一番許せないです」
榛名「提督が行方不明になってから、もう月も経ってしまったんですね」 ×
榛名「提督が行方不明になってから、もう1月も経ってしまったんですね」 〇
榛名「榛名はもう、全然大丈夫じゃないです」
榛名「提督がいないと、何もできないんです」
榛名「提督との楽しい語らいの日々は」
榛名「もう、一緒に過ごすことはできないんでしょうか」
榛名「悲しくて、涙も枯れてしまいました」
榛名「榛名達に、何の罪があるのでしょうか」
榛名「でも、榛名は信じています。提督はきっと、まだ生きているって」
榛名「提督がいない毎日は、とても長く感じます」
榛名「榛名はもう、耐え切れそうにないです」
榛名「だから、早く帰ってきて下さい、提督」
榛名「提督・・・・・・?」
榛名「本当に・・・本当の本当に提督なんですか?」
榛名「―――っ!」ダキ
榛名「う・・・うぅ・・・!」ポロポロ
榛名「良かった・・・本当に良かった・・・!」ポロポロ
榛名「榛名は信じていました! 提督は絶対に生きているって!」ポロポロ
榛名「あ・・・」
榛名「・・・ふふ、提督に頭を撫でられるのも、久しぶりですね」
榛名「提督、みんなも待っています。早く会ってあげて下さい」
榛名「榛名も金剛姉様も、みんな提督のことを待っていました」
榛名「長く、辛い毎日でしたが、みんな元気ですよ」
榛名「さぁ、早くこちらへ」
榛名「みんな、とても喜んでいましたね」
榛名「金剛姉様も、みんなも涙を流して喜んでいました」
榛名「金剛姉様が泣き止まなくて、困ってしまいました」
榛名「そういえば、まだお風呂に入っていませんでしたね」
榛名「提督、今日は一緒に入りましょう」
榛名「恥ずかしがる必要はありません。榛名達は、契りを交わしている仲ではありませんか」
榛名「さぁ、久しぶりにゆっくり浸かりましょう」
榛名「今夜はゆっくり休んで下さい」
榛名「提督があの後、どう過ごしていたのか気になりますが」
榛名「それはまた、明日にでもお話しましょう」
榛名「何の変哲もない、普通の日々が」
榛名「こんなにもありがたいことだったなんて」
榛名「提督、あの時は榛名を助けてくれて、本当にありがとうございました」
榛名「提督が来てくれなかったら、きっと榛名は深海棲艦に沈められていたでしょう」
榛名「本当に嬉しかったです」
榛名「そして、あの時提督を助けられなかった榛名を、許して下さい」
榛名「榛名が離脱しなければ・・・榛名にもっと力があれば」
榛名「提督を助けられたかもしれなかった」
榛名「ん・・・」ポン
榛名「そんな、気にするなって・・・」
榛名「・・・提督、ありがとうございます」
榛名「ずっと、一緒ですよ?」
榛名「ふふ・・・久しぶりですね。一緒の布団に寝るのは」
榛名「提督の顔・・・冷たい」スッ
榛名「でも、榛名にとっては暖かいです」
榛名「提督がいてくれるだけで、榛名は幸せです」
榛名「提督、その・・・久しぶりに・・・」
榛名「ん・・・」
榛名「提督が帰ってきてから、3月が過ぎましたね」
榛名「提督のいない辛い毎日は、とても長く感じましたが」
榛名「提督と一緒に過ごす毎日は、本当に短く感じます」
榛名「本当に・・・」
榛名「提督が帰ってきてくれて、泣きじゃくる榛名を」
榛名「提督は、優しいその手で頭を撫でてくれました」
榛名「提督の手は、とても冷たく感じましたが」
榛名「とても、とても暖かい手でした」
榛名「そして、疲れているはずなのに」
榛名「無理して微笑んで、榛名を抱いてくれましたね」
榛名「・・・・・・」
榛名「・・・やっぱり・・・そうですか」
榛名「・・・・・・」
榛名「提督は、本当に榛名達のことを大切にしてくれました」
榛名「兵器である榛名達のことを、人間として接してくれました」
榛名「戦争しか知らなかった榛名達に、生きる喜びと楽しみを教えてくれました」
榛名「それなのに、別れを告げるんですね」
榛名「良いんですよ。榛名には、もうわかっています」
榛名「ありがとうございます、榛名の優しい提督」
榛名「書類作成をしている最中、1枚の書類を見た途端、血相を変えていましたね」
榛名「くしゃくしゃにして、机に閉まっていましたが」
榛名「榛名、見ちゃったんです」
榛名「提督の・・・死亡報告書を」
榛名「提督の乗った哨戒艇が沈んだあの海域から、遠く離れた小さな孤島の沖に」
榛名「提督は流されたんですね」
榛名「提督は、あの時脱出していたんですね」
榛名「でも、途中で力尽きて・・・」
榛名「・・・・・・」
榛名「体が沈まず、そのまま海を彷徨っていたなんて、奇跡ですよね」
榛名「まるで、未練があるように・・・沈むわけにはいかないって」
榛名「提督は、やっぱり優しいです」
榛名「榛名だけではなく、みんなにです」
榛名「自分が死んでも、こうして榛名達に会いに来てくれるなんて」
榛名「でも」
榛名「その優しさは、今の榛名達には残酷過ぎるものなんです」
榛名「・・・榛名が、榛名があの時提督を助けていれば」
榛名「提督は死なずに済みました」
榛名「みんなを愛し、みんなから愛された提督は」
榛名「もういない」
榛名「どこにもいないんです」
榛名「あるのは、提督と過ごした日々の記憶だけ」
榛名「・・・・・・」
榛名「あの時、沈むのは榛名だけで良かったんです」ツー
榛名「ゴメンなさい・・・ゴメンなさい・・・!」ポロポロ
榛名「・・・提督は、最期まで榛名に優しいのですね」
榛名「榛名の所為なのに、そんな言葉をかけてくれるなんて」
榛名「・・・・・・」
榛名「なんだか、提督らしいですね」
榛名「では、行きましょう」
榛名「途中まで、榛名もご一緒します」
榛名「・・・提督は、逝ってしまいましたね」
榛名「みんなには別れを告げず、榛名だけに・・・」
榛名「・・・・・・」
榛名「提督が大好きだった、青い海」
榛名「そんな海が、榛名も大好きです」
榛名「今はもう、空は青くありませんが」
榛名「夕波が綺麗ですね」
榛名「提督、見ていますか?」
榛名「こんな綺麗な光景、提督と一緒に眺めたかった」
榛名「・・・・・・」
榛名「提督は、ずっと榛名達の記憶の中で生き続けます」
榛名「ありがとうございます、榛名の優しい提督」
榛名「そして」
榛名「さようなら、榛名の・・・」
榛名「優しい提督」
――― 終 ―――
榛名「・・・って言う話を考えたんですがどうですか?」
提督「・・・」
ってオチだろ?
このSSまとめへのコメント
補足ありがとう
榛名ちゃん天才。
でも残念だが絶対そうはさせないからな(キリッ)
かぐや姫のあの人の手紙って曲を思い出した
ふさぎ込んだ女の元に死んだ想い人が帰ってきて・・・ってやつ
一流の悲劇を最後の一文で三流の喜劇にするんじゃないwww
個人的には大好きだ。