魔法少女は衰退しました らすと しーずん (354)
本作は『魔法少女まどかマギカ』と『人類は衰退しました』のクロスオーバーです。ラストです。
初めてのSSです。至らないところも多いと思いますが、よろしくお願いします。
キャラは最初の時間軸の状態でした。まどかマギカ要素は何処に……
真・妖精さん無双。
妖精さんが居るから鬱なんてあり得ませんでした。
オリジナル妖精さんアイテムがてんこもりもり。
劇場版及び叛逆を見ていない時に投下を始めた話ですので、叛逆と矛盾した設定をやりつつ叛逆ネタが出るかも知れません。
以上の設定の元、最後の暴走をさせていただきます。
だって次のお話で最終回なんだもん。おまけはあるけどね!
1スレ目
魔法少女は衰退しました - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389948070/)
2スレ目
魔法少女は衰退しました しーずん つー - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400834062/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411563456
午前中に投下すると言って午後にやってきた>>1です。
うぇーい、最後までだらしないぜー
>>912
確かにあのシーンはアニメで見てみたい。
アニメ二期やらないかなー……
>>913
原作9巻を買えば分かるよ(営業スマイル)
実際言っちゃうともろにネタバレですが、今更かな……
とりあえず今回そこそこ詳細に書いちゃいますので注意だ!(遅い
それではラストもはりきっていきましょう。
えぴろーぐ 【わたしたちの、ちきゅう】
―――― わー きゃー ぴー
妖精さん「わぷー」ぽいん
まどか「きゃっ!?」
杏子「妖精さんとグリーフシードが雨みたいに降ってきた……」
巨大さやか『あははっ。なんか、見ていたら楽しくなってきたよ』
ゲルト「綺麗……」
マミ「ええ、本当に……」
シャル「それで? どうやってワルプルギスを倒したのかしら?」
シャル「説明してくれる?」
ほむら「説明するほどの事はしていませんよ。そもそも倒していませんし」
ほむら「結局のところ、あの方々はまだ生きていたかっただけなんです」
ほむら「普通に生きて、普通に大人になって、普通に恋をして……普通に、家族に看取られながら死んでいく」
ほむら「それが出来なくなって、出来る人達が羨ましくて、憎くなる」
ほむら「だったら新しい命を差し上げれば、恨みなんか何処かに吹っ飛んじゃうじゃないですか」
ほむら「ただそれだけですよ」
シャル「分かったような、分からないような……」
ほむら「えー……仕方ありませんねぇ。もっとシンプルに言いましょう」
ほむら「所謂転生です。何に、かは皆さんのご想像にお任せしますけどね」
まどか「転生……って……」
マミ「さりげなく神の領域に踏み込んでるじゃない……」
ほむら「大した話ではないんですけどね」
ほむら「全く、今まで妖精さんの謙遜だと思っていましたけど」
ほむら「本当に、大した事はしていなかったんですね」
シャル「……ところで、妖精さんは兎も角、グリーフシードはどうするつもり?」
ほむら「それは私が保管しておきます」
ほむら「こっちの妖精さんは最大で50万人前後までしか増える事が出来ないようですからね」
ほむら「他の方々は順番待ちをしないといけませんから、私の傍に置いておいた方が良いでしょう」
シャル「……順番?」
まどか「危ないんじゃ……」
ほむら「はは。そんな事ありませんよ」
ほむら「”彼女達”にはもう、絶望なんてありません。あるのは未来への希望だけ」
ほむら「一体何が危険だと言うのですか」
まどか「う、うーん……よく分からないけど、ほむらちゃんがそう言うのなら……」
ほむら「そうそう、”私達”に任せてくれればいいんですよ♪」
疾患QB「……これは……一体、何が……」
ほむら「あ。この人の事すっかり忘れてました」
旧べえ「諸悪の根源なんだけど……」
ほむら「仕方ないじゃないですかぁ。この人、妖精さんの姿が見えなくてあまり絡んでこないから、印象に残らないんですよ」
マミ「そう言えば暁美さんの姿もハッキリとは見えてなかったみたいね……」
旧べえ「積極的にハブしていたのは暁美ほむら自身のような気もするけどね」
まどか「なんか、いまいち実感が湧かないけど、本当に妖精さんになっちゃったの……?」
ほむら「そうですねぇ、九割ぐらいその通り、という感じでしょうか」
ほむら「確かにこの力は妖精さんのものですし、存在の在り方もどちらかと言えば妖精さんのそれですが」
ほむら「あくまで私という人間に妖精さんを混ぜ込んだだけですからね」
ほむら「ハイブリッドとかハーフとかちゃんぽんって感じでしょうか」
まどか「ちゃんぽんって……」
ほむら「まぁ、ほぼ妖精さんって事で大丈夫です」
ほむら「しかしこのままだとあの人にこちらの事見てもらえないんですよねぇ。声も届き辛いし」
ほむら「……ああ、そっか。チャンネルがずれているのか。だから……」
ほむら「キュゥべえさん」
疾患QB「!? な……なん……」
シャル(やけに驚くわね……って、多分ほむらの姿がよく見えるようになったのね)
シャル(……今の私みたいに。さっきまでちょっとぼやけていたのに、今じゃハッキリ見える)
ほむら「あの魔女さん達と友達になっちゃいましたけど、どうされます?」
ほむら「多分あの魔女さん達は、あなた達の”最強戦力”だったのでしょう?」
ほむら「勿論最強というだけですから、まさか全戦闘機能の半分を占めるようなものではないでしょうけど」
ほむら「しかし何百万もの艦隊を派遣してきても、被害は大きくなるばかりですよ?」
ほむら「私としても無益な戦いは好みませんし、そちらも無駄にエネルギーを使いたくない筈」
ほむら「大人しくこの星から撤退してくれませんかね?」
疾患QB「ぐ、ぅ……!」
疾患QB「……………く」
疾患QB「く、くく……くくくくくく」
巨大さやか『……何が可笑しいの』
疾患QB「可笑しいさ。この星から撤退しろだなんて、随分と上から目線だね」
疾患QB「今回の戦い、そして今までの蓄積データから」
疾患QB「妖精達の弱点を、一つだけ推論する事が出来たからね」
杏子「!? まさか……」
疾患QB「そのまさかさ」
疾患QB「――――妖精達は、長距離の移動にあらゆるネットワークを利用出来るのだろう?」
全員「……………へー」
疾患QB「なんだその如何にも『え、そうなの?』って言いたげな態度は」
シャル「あ、ごめん。気にしないで続けて」
疾患QB「……じゃあ続けさせてもらおう」
疾患QB「今までの妖精の行動範囲、そして出現パターンから考えると」
疾患QB「妖精は何かしらのネットワーク」
疾患QB「物理的ケーブルに限らず、電子的繋がりさえも利用して移動出来るのだろう」
疾患QB「そうでなければ、衛星軌道上に存在する僕達の母艦に侵入出来るとは思えないからね」
疾患QB「そして今回のワルプルギスのコントロール奪取」
疾患QB「恐らく僕の通信ネットワークから本艦に侵入し」
疾患QB「ワルプルギスのコントロールシステムを支配下に置いた」
疾患QB「違うかい?」
ほむら「違います」
疾患QB「え?」
ほむら「ああ、でも大体合ってるところもありましたよ」
ほむら「確かになんらかのネットワークがないと、妖精さんの移動に制限が掛かるのは事実です」
ほむら「以前あなた達の母艦にお邪魔した時も、通信ネットワークを利用していたみたいですし」
疾患QB「そ、そうだろ、そうだろ」
旧べえ(出鼻を挫かれて焦ってるな、アレ)
マミ(偉そうに話し出した癖に、本題入る前にこけそうだったものね)
疾患QB「それこそが妖精が地球以外の場所に進出出来ない理由だろう」
疾患QB「つまりネットワーク的接続さえなければ、妖精は僕達の本星まで来られない」
疾患QB「なら話は簡単だ。通信機能のない、無人機械による契約システムを配備すればいい」
疾患QB「無人機械では限定的応答しか出来ないから契約の成功率は下がるだろうし」
疾患QB「君達の妨害もあるだろうから成果は著しく下がるだろうが、コストは十分に収益で吸収出来る筈だ」
疾患QB「僕達は今までと変わらず、魔法少女を、魔女を産み出せる」
疾患QB「撤退する必要なんてないね」
まどか「諦めが悪い……!」
ほむら「まぁ、そういう手に出るとは思っていましたけどね」
ほむら「何しろ魔女化って宇宙を延命出来るほど膨大なエネルギーが生じるみたいですし」
ほむら「多分、年一人でも魔女化してくれれば収支はとんとんに持っていけるんじゃないですかね?」
ほむら「――――時に、今のエネルギー回収量はどうなっていますか?」
ほむら「出来れば直近、ここ一分ぐらいの短期データが良いんですけど」
疾患QB「? 君が何を言いたいのか分からないが……」
ほむら「良いから良いから。具体的な数字を教えてくれなくても良いので」
疾患QB「益々訳が分からないけど、えっと……」
疾患QB「!?」
疾患QB「な、なんだこれは!? どういう……」
マミ「……何があったの?」
疾患QB「僕の方が聞きたいよ! 暁美ほむら! 君は一体、妖精に何をさせたんだ!」
ほむら「んー? 何と言われましても、あなたが何に戸惑っているのか分からないので答えようがないですね」
ほむら「ちゃんと、この場で、詳細に教えてもらわないと」
疾患QB「ふざけるな! 一つしかないだろ!」
疾患QB「世界中の魔法少女のソウルジェムから、濁りが一切消えた事だ!」
まどか「!? そ、ソウルジェムから濁りがって……」
疾患QB「ああ、君が想像していた通りだったよ暁美ほむら!」
疾患QB「短期データ、少なくともここ一分の感情エネルギー回収量はゼロ!」
疾患QB「しかもソウルジェムの感情反転反応が一つの残らず消失している!」
疾患QB「あと少しで魔女化しそうだったものも、全て!」
巨大さやか『感情反転反応?』
ほむら「多分ソウルジェムの濁り、つまりあとどれぐらいで魔女化しそうなのかを観測したものでしょう」
ほむら「ほら、放出されそうな場所に『網』張ってないと、エネルギーが逃げちゃうじゃないですか」
巨大さやか『ああ、成程』
旧べえ「しかし、君は一体何をしたんだ……?」
旧べえ「感情反転反応が消失したという事は、つまり……」
疾患QB「なんらかの方法で、世界中のソウルジェムを浄化した! それもグリーフシードなしで!」
疾患QB「しかも状況が”改善”する様子がない……まだ一分だけだが、継続性がある……」
疾患QB「これではもう、今存在する全ての魔法少女は魔女にはならない!」
疾患QB「いや、それどころか魔女も正気を取り戻すだろう! 感情反転反応、即ち希望から転落した感情」
疾患QB「絶望が消えるのだからね!」
マミ「魔女が全員……」
杏子「正気に戻る……!?」
巨大さやか『え? つまり、どういう……』
ゲルト「つまり……何時の間にか、何もかも解決していたという事です」
ゲルト「魔法少女の運命どころか、魔女の運命すらもひっくり返った……!」
疾患QB「一体どんなテクノロジーを用いた!? 僕達ですら予兆が観測出来なかったというのに……!」
ほむら「そりゃあ、地球というか私ばかり観測していても予兆は分からないでしょう」
ほむら「ま、斜め上の発想で仮に気付いてもどうにかなったとは思いませんけどね」スッ
シャル(? ほむらの奴、空を指さして……)
シャル(つーても、空にあるのは雲とお日様だけなんだけど……)
ほむら「妖精さんアイテム『人工太陽こころぽかぽかー』」
全員「……………は?」
ほむら「ですから、妖精さんアイテム『人工太陽こころぽかぽかー』」
ほむら「太陽そのものを改造し、ソウルジェムや魔女さんの絶望を浄化する」
ほむら「総数50万人の妖精さんが半月以上の期間を掛けて開発した」
ほむら「妖精さん史上から見ても最大の発明品です♪」
全員「ええええええええええええええええええええええええええ!?」
杏子「た、た、たたたたたた、太陽!?」
ゲルト「太陽って、あの太陽ですかっ!?」
ほむら「ええ。あの太陽です」
マミ「そ、そんなのどうやったのよ!?」
マミ「太陽の中心温度って確か一千万度以上で、表面温度も5000度あるって……」
ほむら「妖精さんは高温なんかへっちゃらですからねー。余裕です」
疾患QB「し、しかし開発はそうはいかないだろう!? 数千度もあったらどんな物質もプラズマ化して……」
ほむら「そこら辺は水素原子さん達や熱エネルギー達との交渉次第ですね」
ほむら「私が出向く際着ていた防護服は特殊なもので、熱を完璧にシャットアウトしてくれましたが」
ほむら「『こころぽかぽかー』は太陽自体からエネルギーを受け取ってますからね」
ほむら「機械の周りだけ常温核融合にしてもらいました♪」
疾患QB「じょ……!?」
旧べえ「――――ぷ、ぷは、ははははははっ!」
旧べえ「まさかそんな事まで可能とは! いや、原子の反発性を取り除けばなんとでもなるか!」
旧べえ「さしずめ、みんな仲良くしてくださーいとか、結婚式でもやったのかい?」
ほむら「おや? あなたは気付いたようですね。妖精さんの力の本質に」
旧べえ「君の言動と触れずにあらゆる物に干渉する力を見てピンときたよ」
旧べえ「正直、全く理解できないけどね!」
ほむら「……それで、どうされます?」
ほむら「まだ続けますか? 魔法少女システム」
疾患QB「……………」
ほむら「知ってますよ。あなた達の科学力でも、恒星や木星のようなガス状惑星の開発には着手出来ていない事」
ほむら「対して我々は恒星を弄り回せる」
ほむら「その技術力の差は察してほしいものですが」
ほむら(ま、恒星まで行けたのは、インキュベーターのネットワークの痕跡があったからですけどね……黙秘黙秘っと)
疾患QB「……ああ、そうだね」
疾患QB「ようやく分かったよ……妖精に、僕達の常識は通用しない。対抗する事も出来ない」
疾患QB「なら、刺激しない方が得策だ」
疾患QB「これからは、君達に怯えながら過ごすしかないという訳だ」
疾患QB「……全て、君の思惑通りという事だよ、暁美ほむら」
巨大さやか『って、事は……つまり?』
疾患QB「僕達は地球から撤退するという事さ。今後、もうこの星には関わろうとしないだろうね」
シャル「……!」
まどか「それって……」
マミ「インキュベーターから、地球を取り戻したって事!?」
ゲルト「ほ、本当に勝っちゃった……」
杏子「勝っちゃったよ!」
巨大さやか『あたし達、勝ったんだ!』
「やった――――っ!!」
巨大さやか『勝ったんだ! 勝ったんだーっ!』ズシンズシン
まどか「わわわっ!? もうっ、さやかちゃんはしゃぎ過ぎだよ!」
杏子「あ、あはは! すげぇなっ!」
マミ「もう、魔女と魔法少女が戦う事はない!」
ゲルト「魔法少女も生まれない! 私達の完全勝利です!」
ほむら「……………」
旧べえ「……………」
シャル「どうよインキュベーター! 負け惜しみでも言ってみたら!?」
疾患QB「……そうだね。一つ、言わせてもらうとしよう」
疾患QB「多分あと二百年ほどで、この星の文明は危機を迎えるよ」
シャル「……は?」
杏子「あん? ……テメェ、どういう意味だ」
疾患QB「別に、大した意味はないよ」
疾患QB「僕達は十万年以上前から君達を観測し、文明に干渉を続けていた」
疾患QB「その結果、君達の文明は適切なタイミングで適切なステージに移っていったというだけ」
疾患QB「……もしかしたら聞いているんじゃないかな?」
疾患QB「この星の文明を育んだのは、魔法少女だって」
シャル「!?」
疾患QB「今この星は、飢餓、エネルギー、経済……あらゆる分野で問題を抱えている」
疾患QB「この状況は僕達が誘導したものだ。不安定な情勢の方が少女達は願いを抱きやすく、同時に絶望もしやすいからね」
疾患QB「そしてこの状況を維持してきたのが魔法少女」
疾患QB「聞いた事ないかい? 石油の埋蔵量って、毎年”増えて”いるって」
疾患QB「勿論技術発展もあるし、新たな産油地を見つけたという事でもあるけど」
疾患QB「大半は本当に”増えている”のさ」
疾患QB「当然だよね。石油という価値のある物を望む子は、いくらでも存在するんだから」
疾患QB「――――さて、ここで問題だ」
疾患QB「もしも、今の人類文明から石油が失われたら……どうなるかな?」
マミ「なっ……!?」
疾患QB「他の分野でもそうさ。ダイヤモンド、鉄、湧水……全て”僕達”が与えた物」
疾患QB「君達は自力で発展したと思っている。だけどどれもが、魔法少女を介し僕達が与えてきたものだ」
疾患QB「宇宙の延命に必要なエネルギーを提供してくれた、そのお礼としてね」
疾患QB「そしてそのお礼を使い、人類は今の文明水準を保っている。七十億体まで繁殖もした」
疾患QB「それに十年以内に環境問題を改善する技術発展を起こす予定だった。君達の繁栄は保障されていたんだ」
疾患QB「でもその契約関係は今日で打ち切り」
疾患QB「おめでとう! 君達は今日から家畜から野生動物にランクアップだ!」
疾患QB「厳しい自然環境と天敵と資源問題に、自力で立ち向かうと良い!」
疾患QB「――――何時までこの愚かな獣が絶滅しないでいられるか、それを観察出来ないのが残念だよ」
杏子「こ、コイツ……!」
ほむら「……そうですねぇ。確かに愚かかも知れません。傲慢が過ぎるのも、割とそうだと思いますし」
ほむら「でも”我々”から見たら、あなた達も相当な愚か者ですけどね」
疾患QB「……なんだって?」
ほむら「一つ、助言してあげましょう。”先駆者”としての助言です」
ほむら「あなた達の文明は最適化の繰り返しによってそこまで発展した」
ほむら「今では宇宙の隅々にまで版図を広げ、物理法則を捻じ曲げるほどの科学力も手にした」
ほむら「でもそれ、頭打ちになっていませんか?」
ほむら「新たなエネルギーが何処にも見つからない。見つけても時間稼ぎにすらならない」
ほむら「研究中の技術は現在の理論では解決不可能な問題が生じ、先に進めない」
ほむら「あなた達は今、自力では越えられない壁に直面しているのではありませんか?」
ほむら「最適化し尽くしちゃって、どうにもならなくなってませんか?」
疾患QB「……………」
ほむら「最適化は一見進化のようで、袋小路に逃げ込んでいるだけ。待っているのは、細い細い一本道だけ」
ほむら「それは、自ら終わりを目指して突き進んでいるようなもの」
ほむら「あなた方の方法では、宇宙は救えません」
疾患QB「……確かに、現状僕達のテクノロジーは停滞している」
疾患QB「それで? 君には手があるのかい?」
疾患QB「この冷えていく宇宙を救う」
疾患QB「”誰も犠牲にならない”方法なんてものがさ」
ほむら「――――多様性を持ちなさい」
疾患QB「……多様性?」
ほむら「全てと手を取り合い、全てと心を繋ぐ」
ほむら「木々が枝を伸ばすように、行く先を広げていく」
ほむら「中には折れてしまう枝もあるかも知れない。育ちにくい枝もあるかも知れない」
ほむら「だけどその先は、無限に広がる世界がある」
ほむら「それだけが、単一で越えられない壁を越える唯一の術ですよ」
疾患QB「ふん。くだらないね」
疾患QB「僕達だって、同程度の水準に達した他の文明と技術交流は行っている」
疾患QB「それでも壁は越えられないんだ」
疾患QB「多様性でどうにか出来る問題じゃないんだよ」
ほむら「ふふ。分かってませんね。本当に分かってない」
ほむら「だけど今はまだ、あなた達を救えないのも事実」
ほむら「だからこう言うしかありません」
ほむら「宇宙どころか地球を救えるだけの力すらない身ではありますが」
ほむら「何時の日か、必ず全てを救ってみせます」
疾患QB「ふん。見物だね」
疾患QB「……さて。実は帰還命令を二回ほど無視していてね。このままだと置いていかれそうだ」
疾患QB「僕は帰るから、事の成り行きは見ていられないけど」
疾患QB「それは君に任せるとしようかな」
旧べえ「……………」
疾患QB「それじゃ、”また何時か会える時まで”」
疾患QB「さよならだ」
――――シュンッ!
マミ「! 消え……」
ほむら「あ、ちょっと待って」クイッ
まどか(? ほむらちゃん、何かを掴むような動作を――――)
疾患QB「きゅぶっ!?」べちんっ
まどか「あ、キュゥべえが落ちてきた」
疾患QB「ちょ、何をしたんだ君は!? 今僕は量子変換テレポートで戻ろうとして……」
ほむら「細かい事は気にしない!」
疾患QB「量子化した僕を遠距離から掴んだ挙句実体化させたのがどう細かいんだよ!?」
ほむら「物理的に細かいじゃないですか」
疾患QB「そういうトンチをきかせたつもりって言い方が気に食わない!」
ほむら「ですから細かい事は気にしない」
ほむら「これから母星に帰ろうとしているあなたに、ちょっとしたプレゼントをあげようと思いまして」
疾患QB「はぁ? プレゼント?」
ほむら「はい、どうぞ。今さっき作った私の処女作ですよー」
疾患QB「これは……カイロ?」
ほむら「背中に貼ってみてください」
疾患QB「? こういう感じ――――」
疾患QB「しびばびばびばびびびばばばばばばばばばばーっ!?」ビリリリリ
ほむら「すると全身に超高圧電流が流れます」
疾患QB「ぼ、僕を殺す気かああああああああああああっ!?」
疾患QB「大体なんでカイロから電流が流れるんだよ! 発電機かこれはっ!?」
ほむら「ほら、カイロだと思って使ったらびっくりするじゃないですか。所謂ジョークグッズです」
ほむら「熱を直接電気に変換しているだけですから、お手軽に作れますしね♪」
疾患QB「ただのジョークグッズに何さらりとエネルギーの質を無視したテクノロジーを使っ」
疾患QB「――――!?」
疾患QB「な……ば、馬鹿な!? 熱エネルギーを電気エネルギーに……」
疾患QB「それもお湯を湧かすなどの行程を経ず、直接変換したのか!?」
ほむら「ふふ。ですからジョークグッズです」
ほむら「どーせやるなら、仕組みも冗談みたいになってないと面白味がないでしょう?」
疾患QB「お、面白味って、そんな、どうやって……」
ほむら「それは宿題です」
疾患QB「……宿題……?」
ほむら「ええ。それはあなた達への宿題です」
ほむら「確かに今はまだ宇宙を救う事は出来ませんけど、せめてその方法ぐらいは示唆しませんとね」
ほむら「頑張って、そのカイロを解析してください」
ほむら「妖精さんテクノロジーを使っていますけど、多分あなた達なら模倣可能な筈」
ほむら「上手くいけばわざわざこんな辺境くんだりまで来なくても良くなりますよ」
疾患QB「……………暁美ほむら、君は……」
疾患QB「いや、なんでもない」
疾患QB「……今度こそ、帰らせてもらうよ」シュンッ
巨大さやか『……また消えた』
杏子「なんだよアイツ、ほむらから、よく分かんないけど道具もらったくせに礼一つなしかよ」
旧べえ「ちなみにあのカイロに使われている技術ってどんなものなんだい?」
ほむら「別に大したものは使ってません。エネルギーの質云々なんて、所詮”こちら側”の言い分ですからね」
ほむら「やり方さえ分かれば、あんなのは簡単にひっくり返せる法則なんです」
旧べえ「そうして解析したデータを元に発電施設なりなんなりを作れ、と。熱力学に真っ向から挑むねぇ……」
旧べえ「でも確かに、熱エネルギーを直接電気や運動エネルギーに変換出来れば」
旧べえ「それは僕らのエネルギー問題が完全に解決する事を意味する」
旧べえ「……君は、エネルギー問題にあえぐ僕らを救おうと言うのかい?」
ほむら「なんやかんや種族レベルではギブ・アンド・テイクの関係だったのは事実ですし」
ほむら「折角”上手くいっていた”関係をぶっ壊すのなら、代案を出さなきゃただのワガママです」
ほむら「それに宇宙の熱的死なんて、とんでもない重要問題じゃないですか。ほっといたら私達も死んじゃいますよ」
ほむら「せめて我々が宇宙に飛び出すまでの時間稼ぎはしてもらいませんと」
旧べえ「宇宙に飛び出すまで、か……そう言えば全てを救うと言っていたね」
旧べえ「あの言葉は、ハッタリではないんだね?」
ほむら「さて、どうでしょうか」
ほむら「”あちら”なら兎も角、こちらでは少々難易度が高そうです」
ほむら「ただまぁ、不可能ではありません。道程も、少しは見えています」
ほむら「難題ではありますが、絵空事ではありませんよ」
ほむら(そう、妖精になっていなければ、言えなかったでしょう)
ほむら(妖精となった事で、空間に刻まれた種族の記憶を読み取れたからこそ)
ほむら(彼等の力の本質を、A地球の歴史を知ったからこそ、”可能”だと言える)
ほむら(……A地球の妖精は、執念じみた憧れで願いを叶えた)
ほむら(そして彼等は人であろうとするがために、自身が持つ万能の力を外へと捨てるようになった)
ほむら(神々すらも超える力と、人でいようとする心を分離させてしまった)
ほむら(そんな力が万物に宿る”心”と結合した時、何が起きるのか)
ほむら(――――万能の力を持った、一つの命が生まれる。それがA地球の”妖精さん”の正体)
ほむら(重要なのは、その力は本来妖精が持っているものであり、妖精が生きている限りいくらでも湧くもの)
ほむら(どれだけ捨てようと、生きている限り、人でいようとする限り心から溢れ続け)
ほむら(周りのあらゆるものを命の定義に引き上げ続ける)
ほむら(ならば必然妖精が存在する限り、辺りに満ちる力の総量は増え続ける。妖精さんがどんどん産まれていく)
ほむら(そして増えすぎた妖精さんはやがて妖精の周りに留まれなくなり、外へと溢れる)
ほむら(溢れた妖精さんは荒れ果てた世界を楽しく開拓し、『人』の住める世界に変えていく)
ほむら(そこに『人』が定着すれば、そこにある自然物や彼等の作った道具から新たな『思考するもの』達が生まれ)
ほむら(捨てた力と結びつき、新たな命を産み出す――――溢れるほどに)
ほむら(そのサイクルが、人類が衰退して千年に満たない期間で、妖精が数千万人まで繁栄出来た仕組み)
ほむら(今や妖精さんが百億、二百億にまで増え、A地球を覆い尽くすようになった理由)
ほむら(例えどんなに大きな壁が立ち塞がろうと、どんなに強固な壁にぶつかろうと)
ほむら(立ち止まった場所で産まれた”命”が、何時か必ずその壁を打ち砕く)
ほむら(それが『妖精』の力。あらゆる”命”と手を取り合える”彼等”だから出来る事)
ほむら(それじゃあ、地球から妖精さんが溢れたなら? 生まれ続けた妖精さんが、いずれ地球に留めておけなくなったら?)
ほむら(……勿論苦労は多いでしょう。星の外は虚空であり、冷たい世界だから)
ほむら(それでもあらゆる壁を打ち砕ける妖精は、いずれ地球を飛び越え、月を乗り越え、オールトの雲を突き抜け)
ほむら(冷たくて寂しい宇宙の全てを、その向こうにある未知なる世界の全てを)
ほむら(楽しさと、温かさと、命で満たしていく)
ほむら(妖精の繁栄は地球なんかじゃ留まらない。これからも大いに、際限なく発展していき)
ほむら(いずれ”世界”は妖精のものとなる)
ほむら(でも、こちらの妖精さんにその方法は使えない)
ほむら(こちらの妖精さんは、あくまで力そのものが本体。太古の姿を変えていない)
ほむら(向こうが捨てた力によって生じさせた理論を、本体で行うしかない)
ほむら(それでは力の総量は変わらない。力の結合と剥離を繰り返し、力が巡るだけ)
ほむら(こちらの世界の妖精さんが50万人までしか増えられないのはそれが原因。50万まで増えると力が枯渇してしまう)
ほむら(これでは星を、世界を妖精さんで覆う事は出来ない。虚空を温かさで満たせない)
ほむら(これでは全てを救えない)
ほむら(……だったら別の手法を使うまでの事)
ほむら(そう、彼等は”手を取り合う者”であり、”命の多様性を広げる者”)
ほむら(だから――――)
シャル「……ほむら。アイツら、本当に帰った?」
ほむら「……ええ。地球周辺のネットワークでは、もう彼等の存在は検知出来ません」
ほむら「多少の置き土産はあるようですが、ネットワークが遮断されていますし、廃棄されたものでしょう」
ほむら「あの子が言っていたように、地球から完全に撤退したようです」
シャル「……そう」
旧べえ「つまり僕は完全に見捨てられた訳だ。ま、清々するけどね」
まどか「ようやく、全てが終わったんだね……」
巨大さやか『……だけど……』
シャル「……………」
ほむら「さて、これからが忙しくなりますよ」
全員「え?」
ゲルト「えっと、暁美さん? それはどういう……」
ほむら「どういうって、もう。インキュベーターの話、ちゃんと聞いてました?」
ほむら「癪ですけど今までインキュベーターの助力によって地球の文明は成り立っていたのですよ?」
ほむら「このままだと人類は遠からず全滅です。何かしら手を打たないとダメじゃないですか」
マミ「それはそうかも知れないけど、でも手を打つって言ったって……」
まどか「ほむらちゃんには何か作戦があるの?」
ほむら「作戦というか、方針程度には。まぁ、なんとかなるでしょう」
まどか「なんとかって……」
まどか「……………そっか、なんとかなるのか」
巨大さやか『なんだろうね、ほむらがなんとかなるって言うのなら』
巨大さやか『きっとなんとかなる。そんな気がしてきたよ』
ゲルト「ええ、本当に。なんとかしちゃうんでしょうね」
マミ「お祭り騒ぎになるまで盛り上げながら」
杏子「理不尽に全てをぶっ壊しながら」
旧べえ「不条理に何もかも巻き込みながら」
シャル「だけどとっても楽しく、ね!」
ほむら「勿論。それだけは保障します」
ほむら「さぁ、皆さん! 張り切っていきましょう!」
ほむら「この世界を、もっと楽しくしに!」
……………
…………
………
……
…
―――― 一ヶ月後 ――――
シャル「えーっと、蜂蜜とヨーグルトと」
まどか「アーモンドにゼラチン、みかんの缶詰」
さやか「砂糖に牛乳にかぼちゃ……って、あたしの荷物だけやたら重くない!?」
シャル「え、今気付いたの?」
まどか「てっきりさやかちゃん、妖精さんパワーのお陰で力持ちになったから重いの持つのを買って出たのかと……」
さやか「いや否定はしませんけどね!? 実際辛くはないけどさ!」
シャル「なら良いじゃん。適材適所よ」
さやか「ちょっとは労わろうって気はないの? それでも友達?」
シャル「さやかを信用してるのよ」
さやか「空虚な言葉だなオイ……」
まどか「もう、二人ともあまりじゃれ合ってないで、早くほむらちゃんのお家に行こうよ」
まどか「折角ほむらちゃんが私達を信じて送り出してくれたんだから、期待に応えないと!」
シャル「信じて送り出したも何も」
さやか「ただの買い出しなんだけど」
まどか「良いの。こういうのは気分が大事なんだから」
まどか「ほむらちゃんに頼まれて買い物だなんて……まるで、ど、同棲している夫婦みたいだよーっ///」
シャルさや(まるでパシリみたい、とか思ってるのは私だけだろうか……)
シャル「まぁ、確かに最近暑いし、牛乳とかは早く持っていかないと腐りそうよね」
シャル「建物もないから、直射日光もろ当たりだし」
さやか「ワルプルギスで見滝原壊滅だったからねー。何処も滅茶苦茶。あたしの家も半壊」
まどか「こっちの方はまだ家の形が残ってるだけマシみたいだけどね」
まどか「都心部はそれこそ、跡形もないみたいだし」
シャル「思いっきりビルを投げ飛ばしてたからね。そりゃ跡形もないでしょ」
まどか「復興にどれだけ掛かるかな……」
シャル「まぁ、死者はほむらのお陰で出てないし、”最先端技術”でのサポートもあるし」
シャル「そんなに時間は必要ないでしょ。一年は必要かもだけど」
さやか「……そんな大惨事でも、ほむらの家は完全無傷だったけどね」
さやか「今更だけど、見滝原の人を全員あの家に詰め込めば万事解決だったんじゃないかなー」
シャル「……咄嗟に無理と言えないあたり、私も大分あの不条理世界に毒されたわね」
まどか「あの家、中がどうなっているのか、未だにほむらちゃん以外把握出来てないもんね」
シャル「最近はアイツ自身把握しきれてない気がしなくもないのよねぇ……」
シャル「っと、そうこうしていたら家が見えてきたわね」
\わいわいがやがや/
まどか「……相変わらず、凄い行列」
シャル「人だけならただ賑やかなだけなんだけどねー」
さやか「大半が、まぁ、その……」
さやか「怪物だからなぁ」
まどか「しかも普通の人には見えない怪物」
まどか「魔女だもんね」
シャル「魔女と魔法少女が一列に並んで、とあるお家に押し寄せる」
シャル「ほむらが”あんな事”しなければ、絶対見られなかった光景よね」
さやか「……いや、本当にアイツはとんでもない事したよね」
まどか「そうだねー……もう三週間も前の話なのに、昨日の、ううん、今さっき起きた出来事のように覚えてる」
シャル「まさか妖精さんパワーで公共・軍事用・アマチュア用のあらゆるネットワークを乗っ取り」
シャル「全世界に魔女と魔法少女、ついでに妖精さんの事を公表した時には、流石に驚いたわ」
シャル「お陰で今や世界中から魔女や魔法少女がうちにやってくる始末」
シャル「妖精さんパワーで人間に戻りたいって、忙しいったらありゃしないわ」
さやか「一ヶ月前にアイツがいいんちょちゃんに、家に帰っても騒ぎにならないって言った理由がよく分かったよ」
さやか「そりゃ世界中で魔法少女が現実にものになり」
さやか「その魔法少女の末路達が全員正気を取り戻した挙句、人間の姿に戻って表舞台に出てきたんだもん」
さやか「しかもそれを可能にしたのは自称全宇宙最高の科学力を持った妖精さんとそのお友達」
さやか「こんな大騒ぎの中じゃ、行方不明になった女の子が一人家に帰ったなんて事件のうちに入らないよね」
まどか「理解不能な事を一気に捲し立てて、相手がポカンとしているうちに全てを終わらせる」
まどか「ほむらちゃんらしいと言うかなんというか……」
シャル「しかも世界規模で。思い付いてもやらないっつーの普通」
さやか「ま、それを手伝おうとするあたし達も、もう普通側じゃないんだろうけどね」
さやか「この買い物も、魔女や魔法少女を元に戻している妖精さんのモチベ意地のために使われるお菓子の材料だし」
シャル「そうかもね」
シャル「さて、それじゃそろそろ家に入って――――」
シャル「……ん?」
まどか「? どうしたの?」
シャル「いや、何かしら……気の所為かも知れないけど」
シャル「この列、全然前に進んでないような……」
さやか「ああ、確かに。でもそれは単に一人一人時間がかかって……いや、それはないか」
まどか「魔女を人間に戻す時は別でも、魔法少女を人間に戻す時はほんの数秒で終わる筈だし」
まどか「それに杏子ちゃんやマミさん、ゲルトルートさんも居るから、今まで結構サクサクと進んでいたよね」
まどか「確かに、ちょっと変かも……」
杏子「ちくしょう! 一体何処に行ったんだっ!」バンッ
さやか「うわっ!? 杏子ちゃん!?」
杏子「え、あ、さやか様! すみません、驚かせちゃって」
さやか「いや、それは良いけど……どうしたの?」
杏子「えっと、その」
杏子「ほ、ほむらの奴、見ませんでしたか?」
さやか「ほむら? いや、見てないけど……」
シャル「……まさか、居ないの?」
杏子「……ああ、中々列が進まないと思って部屋を見たら、姿が消えていたんだ」
杏子「しかも妖精さんも一緒に」
まどか「どういう事……?」
シャル「自分を待っている魔女や魔法少女を前にして、ふらりと何処かに出掛けるなんて考えにくいわね……」
シャル「魔女とか魔法少女に関しては、あまりサボろうとしないし……」
さやか「――――まさか、過激派?」
まどか「え?」
さやか「朝、テレビでやってたんだ」
さやか「妖精さんパワーの凄まじさに脅威を感じた人達が、妖精さん排斥運動ってのをやってたって」
さやか「そんで、なんとかって組織のリーダーが言ってたんだけど」
さやか「妖精が人類に干渉を続けるなら、実力行使も辞さないって……」
まどか「!? じ、実力行使!?」
シャル「……ネットで見た事があるわね。妖精排斥運動過激派」
シャル「人間賛歌を謳う、と言えば聞こえは良いけど、実態は人間至上主義者の集まり」
シャル「彼等にとって人間以外の、例えば自然、あと特定の人種は資源であり利用すべきもの」
シャル「そんな思想を根底から覆す妖精さんの存在は、彼等にとって絶対的な敵らしいわね」
シャル「一応魔女や魔法少女も対象みたいだけど、とりあえずは妖精さんが一番の標的みたいで」
シャル「人間の優秀さを示すために”実力行使”に出るという予想は、確かにあったわ」
まどか「その実力行使って……」
杏子「十中八九テロだな」
杏子「もし連中の仕業なら、ほむらや妖精さんを拉致して」
杏子「観衆の前で公開処刑しようとしている、とかか?」
シャル「思想が思想だけに否定出来ないわね……人間じゃないと認識した相手になら、なんでも出来るのが”人間”だもの」
まどか「そんな……!」
さやか「お、落ち着こうまどか! 言い出しっぺのあたしが言うのもなんだけど、ただの推測で……」
マミ「た、大変よ佐倉さん!」
ゲルト「大変ですーっ!」
まどか「っ!? ま、マミさん!?」
マミ「あ、鹿目さん! 丁度いいところに!」
マミ「もう、佐倉さんから話は聞いた?」
まどか「え、ええ。ほむらちゃんが居なくなったって」
ゲルト「実は部屋に、こんなメモが残されていたんです」
シャル「メモ?」
さやか「ま、まさか犯行声明……?」
ゲルト「? えっと、これがそのメモなんですけど……」
杏子「……どれどれ……」
ちょっと疲れたので、妖精さん達を連れて休憩に行ってきます。
一時間ほどで帰ってくるつもりなので、
魔女さん達と適当にお茶会でも開いて楽しんでいてくださいね♪
PS:決して飽きたって訳じゃありません
シャル「……………」
まどか「……………」
さやか「……………」
杏子「……………」
マミ「……………」
ゲルト「……………」
シャまさ杏「ただのサボりじゃ―――――――――――――んっ!?」
じゃーん じゃーん じゃー……
ほむら「おっと、鹿目さん達の叫び声。どうやらメモを読んだようですね」
ほむら「魔女さんや魔法少女さんを人間に戻すのは大切な事ですが」
ほむら「『こころぽかぽかー』で絶望を取り払った今、急ぐ必要はなくなりましたからね」
ほむら「適度に休憩を挟まないと♪」
妖精さん「おてがみたべた?」
ほむら「一応あのメモは食べられる素材にしてはみましたけど、食べるかどうかは分かりませんねー」
ほむら「それはそうと、どうですか妖精さん」
ほむら「私お手製の電波遮断スーツの着心地は」
妖精さん「せまいながらもいごこちのよいわがやですな?」
ほむら「スーツはお家にするものじゃないでしょ。それに我が家というより生まれ故郷かと」
妖精さん「じもとのおうえんしたーい」
ほむら「とりあえず、当面はそれで我慢していてください」
ほむら「人間の作った電波は本当に空気を読みませんからね。ウザいったらありゃしない」
ほむら「そのうち、妖精さんに優しい電波に変えてもらいませんと」
ほむら(……いずれ妖精さんと人間が共に生きていくためにも)
ほむら(A地球の妖精が手に入れられなかった”未来”を手にするためにも)
ほむら「っと、人気を避けていたら森に入っちゃいましたね」
ほむら「まぁ、こういう静かな環境の方が気分転換には良いですし、しばらくぼーっと過ごすのも――――」
――――なにかきた
――――なんかきたきた
――――へんなの、きたきた
妖精さん「ぴーっ!?」ピュン
ほむら「……悪くないと思ったんですけどねぇ。妖精さん、隠れちゃいましたか」
ほむら「そこの草むらに隠れている人、出てらっしゃい」
ほむら「出てこないとこっちに引っ張り出しますよ?」
少女「……………」ガサッ
ほむら(あら、随分と小さな女の子。恰好はなんかボロボロで、みすぼらしいですけど)
ほむら「どうしました? なんか恰好が随分と……」
少女「こ、来ないで!」バッ
ほむら(? 何か宝石みたいなのを取り出して――――って、あれ、ソウルジェムじゃないですか)
ほむら(という事は、魔法少女ですか)
ほむら「落ち着いてください。私は敵じゃありません」
ほむら「ほら、テレビとかで聞いてませんか? 暁美ほむらという名前」
少女「知らない……もう一ヵ月、テレビなんて見てない……」
少女「ソウルジェムが黒くなって、嫌な予感がして誰もいない場所に逃げて」
少女「なのにいきなりソウルジェムが綺麗になって」
少女「魔女を狩ろうとしたら魔法少女っぽいのに妨害されるし」
少女「もう、何がなんだか……」
ほむら(めっちゃタイミング悪い時に『こころぽかぽかー』の効力を受けたんですね……)
ほむら「うーん、何から説明したものか――――」
――――とっつげきー
ほむら「しゃがみっと」スッ
ヒュンッ
少女「!? な、何? 何なの!?」
「馬鹿な!? 拳銃の弾を避けるなんて!」
「偶然に決まってる! もう一発――――」
ほむら「なんだか知りませんが、つまーれ」ミョンミョンミョン
「!? 弾が詰まった!」
「糞! こうなったら直接仕留める!」
少女「! 木の影から、大人が……男の人……」
ほむら「全く。いきなり発砲だなんて物騒な」
ほむら「あなた達、あれですか? 最近テレビでやってる妖精さんの過激派だかなんだかの人」
ほむら「見たところ外国の方のようですけど、遠路はるばるご苦労な事です」
ほむら「持ち込んだのか購入したのかは知りませんけど、日本で拳銃を手にするのは大変だったでしょう」
男A「……やるぞ」
男B「ああ」チャキ
ほむら「あらあら、こちらを無視してナイフを取り出す。お話したいのに」
ほむら「……ひょっとして、こちらの小さな女の子も殺そうとしている、なんて事はありませんよね?」
少女「え……?」
男A「当然だ」
男B「その宝石……魔法少女の証だな」
男B「人間のためにも、危険な化け物は駆除するだけだ」
少女「え、え……?」
ほむら「あのー、こんな不毛な戦いはやめませんかねー?」
ほむら「”我々”妖精は人間の皆さんと仲良くしたいと思っています。攻撃的な意思は持ち合わせておりません」
ほむら「事実我々の技術の一部は既に人類側に提供してあり、それはこの見滝原の復興に役立てられる筈です」
ほむら「手を取り合い、共に発展していきたいと思うのですが……」
男A「ふん、お前たちの力など必要ない」
男B「人間の力を嘗めるな。お前達がいなくても、人間は進歩していけるんだからな」
ほむら「……嘗めるなもなにも、絶滅しちゃったくせに。進歩は途中で頭打ちになってたし」
ほむら「自分に出来る事と出来ない事が分からない人って、最後は結局自滅するって知らないんですかね……」
ほむら「ま、私は肉体的にはいくらでも替えが利くので切られても平気ですけど」
ほむら「流石にこんな小さな子を切らせる訳にはいきませんね」
ほむら「ワガママな大人には退場願いましょう」
男A「ふん、道具を作る時間を与えると思って――――!?」
男B「な、なんだ!?」
男A「雑草が、足に絡み付いて……!?」
ほむら「時間は与えられるものではありません。作るものです」
ほむら「えーっと、落ち葉と土を混ぜてー丸めてーこねこねーっと」
ほむら「あとはその辺に落ちていた空き瓶にさらさらっと入れて、シェイクシェイク~」
ほむら「完成! 私お手製妖精さんアイテム『大進化栄養剤』~♪」
ほむら「これを、どばどばーっと地面にたらせばー」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
少女「……え、何? 何?」
少女「なんか、地面が揺れて……」
――――ドゴォッ!!
少女「って、じ、地面から大量の根っこがあああああああああああああああっ!?」
男A「な、なんだこりゃああああああああああ!?」
男B「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
ほむら「『大進化栄養剤』は浴びた生物の細胞分裂を活性化」
ほむら「突然変異と個体内淘汰を経る事で通常の数十億倍の速度で進化を促し、驚異の生命体を誕生させる」
ほむら「バイオでハザードな事態が起きる事必須の超危険アイテムです♪」
少女「超危険ならなんで使ったのおおおおおおおおおおお!?」
ほむら「まぁ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。あの男の人達を懲らしめる目的で使っただけですし」
ほむら「流石にそろそろ効き目が切れる筈ですし」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ウワー、ショクブツガー、ネガー
ほむら「……ええ、そろそろ」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ギャー、ナンカクチガハエテ、ヒーッ
ほむら「………………」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ グェーッ、ニゲラレナイー、ギャア
ほむら「……………やば。ちょっと使い過ぎたかも」
少女「使い過ぎたかも、じゃないでしょおおおおおおおおおおおおお!?」
少女「なんかもう色々可笑しいでしょ! 高さ100メートル近くまで育ってるし!」
少女「口とかあるし! 触手がたくさん生えてるし!」
少女「ぶっちゃけビオ○ンテじゃない!」
ほむら「しかも植獣形態の方ですね。ほぼ動物」
少女「何がどう進化したらこうなるの!?」
ほむら「さぁ? 生物の可能性は無限大って事なんでしょう」
ほむら「でもこれ以上進化されると色々不味い気がするので、そろそろ大人しくしてもら」
しゅるるるるるるるっ!
ほむら「うわー、蔓が伸びてきてつかまったー(棒読み)」
少女「ちょ、な、ちょおおおおおおおおおおお!?」
少女「何自分で生み出した怪物に捕まってんの!? 馬鹿なの!? 死ぬの!? というか死亡フラグじゃない!」
ほむら「いやですーしにたくないですーたすけてくださーい」
少女「本当に助けてほしいならもう少し緊張感を持って叫んでよ!?」
少女「大体こんな大きな植物の怪物にどう立ち向かえば良いって言うの!?」
ほむら「あ、これあなた用の武器である伝説の聖剣です。私のハンドメイドですよー」ポイ
少女「ひゃあっ?! 私の傍に投げてきて危な……って、手元にあるならそれで自分を縛ってるの切ってよ!?」
男A「ひぃぃぃぃぃ! たすけてくれぇぇぇぇぇ!?」
男B「誰かああああああっ!」
ほむら「わー、怪植物が町に向けて侵攻を始めましたー……あ、あっちの方が人口多いから、その方が盛り上がりが」
少女「今指示したよね!? もろに指示出したよね!?」
男×2「たすけてくれえええええええええええええっ!!」
少女「五月蝿い! 大の大人が泣き叫ぶなっ!」
ほむら「さぁ、見滝原の危機を救えるのはあなただけです!」
ほむら「今こそ魔法少女から伝説の騎士にランクアップするのですよっ!」
少女「うっがああああああああああああああ!! 分かったわよ! やればいいんでしょ!」
少女「言われた通り魔法少女を止めて――――」
少女「伝説の騎士になって、とりあえずこの植物怪獣もろともアンタもぶった切る!」
ほむら「あ、一応私一時間休憩してる事になってるので、あと三十分ぐらいで片付けてくださいね?」
少女「知るかあああああああああああああああああああああっ!」
それから見知らぬ魔法少女さんは、巨大怪植物との戦いを始めました。
体格差もあって中々不利だったようですが、途中この怪物の存在に気付いた鹿目さん達が駆けつけて
助太刀してくれたのでなんとかなりました。
捕まっていた男の人達もすっかり私達に平伏したようで、もう過激な事はしないと思います。
あと、その魔法少女さんですが、なんか見滝原の英雄に祭り上げられていました。怪獣を倒した伝説の騎士として。
これから彼女がただの人間に戻るのか、それとも伝説の騎士のままでいるのかは彼女次第。
こっそりソウルジェムを身体に戻しておいたので、魔法少女にはなれないでしょうけどね。
そんなところです。
魔法少女は本日も、絶賛衰退中。
このお話はここまで!
ようやく辿り着きました、えぴろーぐ。最終回。
最後の一節、投稿中でも色々言葉を付け足したり削除したりしていたけど、結局一言に落ち着きました。
たぶんこれがいちばんいいとおもいます。
【エンディングについて】
9巻発売前までは、エンディングは「キュゥべえ撤退後人類は衰退しちゃったけど楽しいし、それも悪くないよね?」
という感じでした。はい、人退世界の過去話というつもりで書いていたんです。
んで、9巻で人類と妖精さんの歴史が明かされました。いぇーい。方向転換の理由がこれでござる。
【ほむらの宇宙云々について】
ほむらと言うか、>>1の人退世界の未来予想図という名の妄想。
今は旧人類の遺産で繁栄している妖精ですが、そのうち自分達の足で立ち、進まなければならない日がくる。
それはとっても大変だけど、妖精と妖精さんなら、きっとなんとかしちゃうのだろう。
パイオニアさん達が暗くて寂しくて冷たいと言っていた宇宙が、地球みたいに温かくて面白おかしい世界になったら素敵だなぁ。
そんな、あったらいいなという妄想をそのままぶつけました。
そんなこんなで色々ありましたが、どうにか終わりまで書けました。
途中から書き溜めなしの突貫工事故シナリオの矛盾やいい加減さが生じるなど、初心者にしたって酷い手際の悪さが
目立ったと思いますが、こんな作品でも少しでも面白いと思ってもらえたら幸いです。
もっと感謝の言葉を言いたいけれど、こういう時に言葉が思い付かない自分の文章力の乏しさが泣ける。
なので最後はシンプルに。
今まで読んでいただきありがとうございました。
次回作でお会いする事がありましたら、その時は感想なり叱責なりを書いてやってください。
びくんびくん震えながら意欲を滾らせ、妄想を滾らせようと思います。
それではさよならっ!
まぁ、おまけがあるけどね
乙乙
本当に面白かったです。
被害が出なくても規模の大きい(しかも誰が得してるのかわからない)ことしてたら反発もあるよね
番外編待ってます
乙
初めての突貫でこれって本気で凄いな。
おまけも期待してる。
面白かった。ありがとー。
乙でした
1スレ目から追いかけてきたけど、無事完結したうえここまで仕上げてくるとは……
ハーメルンとか他のとこでは投稿せんの?
なぎさは なかまに なりたそうに こちらをみている!
乙でした
すんげぇ面白かったよ
そういやさやかちゃん、結局最強魔王形態にならなかったな
一度くらい見てみたかった
乙
このSSのおかげで名前しか知らなかった人退に手を出し人退SSも書き原作最終巻まで見届ける事が出来た
色んな意味で自分にとって架け橋な作品だったありがとう
乙、最後に出てきた少女の元ネタとかあるんかな?
マーゴちゃんとジョシュア君がこっちの世界に視察にきたりしませんか...?(震え声)
ふと思ったんだがインキュベーターいなくなったら人類は衰退する一方なんだよね?
つまり妖精さんもおらずインキュベーターも撤退した世界がモヒカンほむら達のいた世界なんかな?
半月ぶりにこんにちは。>>1です。
本編終わってだらっとしていたら半月も経っていたZE!(アカン
>>46
結局のところ分からない事が怖いんじゃないかなーと。
分からない事を「そういうもんだ」に出来ないのは、人間の美徳であるのと同時に悪癖でもあると思います。
あとまぁ……なんやかんや人間は、自分が一番偉いと思ってる気がするので。口では色々言っていても。
>>48
突貫と言ってもゴール(ほむらの妖精化と、インキュベーターの穏便なお引き取り)は最初から決めていたので、
結構どうにかなった感じです。ひとまず完結出来て自分も満足。
……最初から書き直したい衝動がない訳ではないけど。
>>50
長い間読んでもらえて、こちらとしては嬉しい限りです。
今のところ他での活動予定はなしです。台本形式じゃないとスラスラ書けない奴なので……
地の文入れると割とガチに千文字書くのに二週間掛かるから困る。
なぎさちゃんはピュアなままでいてほしいので、うちのカオス集団から離しておきましょう
>>55
さやかちゃん一応正義の味方なので……それに魔王モードになったらワルプルさんの出番が……
はい、設定付けるだけ付けて使わないのは作者の技量が低い所為です。
>>57
さぁ、あなたの書いた人退SSを教えるのです。公表してないのなら出せ(脅迫
>>60
元ネタはないですけど、キャラとしては『その辺の魔法少女』。
まだまだこういう子も居るけど、ちょっとずつ良くしていこうする象徴に……なっていると良いなぁ
>>63
来た後の展開が思い付かないのでないです(無情)
と言うかマーガレットさんとまどか達はちゃんとコミュニケーションが取れるのだろうか。
助手さんが惚れるぐらいだか美人の姿をしていると思うけど……
>>67
人退では原作設定、まどマギの方もQBの推測とはいえ、どちらの人間も相方が居ないと大した事ないので、
当SSの人間も大した事ありません。誰かの助けがないと、今の文明を維持するのは難しいかと。
モヒカンに関しては、アレじゃないですかね。インキュベーターが「騒乱起こした方が魔法少女いっぱい作れそう」
と思って世界を混乱させたけど、うっかりやり過ぎて核戦争になっちゃった感じ(イマカンガエマシタ)
たくさんの方々に読んでもらい、楽しいと思ってもらえて良かったです。
次回作が何時になるかは分かりませんが、何時かまた書きたいと思います。
さて、おまけは全部で四本の予定となっております。
今回のおまけはこちら。
えぴそーど おまけ さん 【おりきりさんの、へいぼんなまいにち】
『おりこさんのばあい』
見滝原総合病院
医師「……という事になるが、良いかな?」
ほむら「はい、大丈夫です。当日はよろしくお願いします」
医師「うむ……少し遅くなってしまったか。それでは、三日後に」
――――カラカラ……パタン
ほむら「……ふぅー……いよいよ心臓の手術かぁ」
ほむら「元々心臓の手術をするために入院したとはいえ、いざその時が来るとなるとちょっと緊張します」
ほむら「先生は凄腕らしいし、頭の中には妖精さんがいるし、干し妖精さんのブレスレットもしているし」
ほむら「失敗する要素がないのは安心ですけど」
ほむら「……前日は食事制限とかあるのが面倒ですねぇ……あと注射とかもするし」
ほむら「それに手術後はしばらく検診とかで忙しいだろうし……」
ほむら「あーあ。早く元の生活に戻って、妖精さんと遊びたいなぁ」
――――ぼくらおもとめ?
――――まじで?
――――ちょーかつやくしたーい
――――でもそっち、いけませぬ
――――ごめーんねー
ほむら「ですよねぇ……はぁ」
ほむら「……しかし……三日後ですか……」
ほむら「……………」<ベッドの傍に置いてある漫画を手に取る
ほむら「……………」<漫画をぱらぱらと捲る
ほむら「……………」<閉じて、元の場所に漫画を戻す
ほむら「……暇」
ほむら「持ってきた文庫も漫画も全部読んじゃったし……」
ほむら「誰かと話していればそれだけで退屈を紛らわせるのですが」
――――でしたらぼくらとー
――――たべりませう?
――――とーくだとーく
――――もりあがります?
ほむら「それでも良いですけど、あなた達、なんか面白い話題あるんですか?」
――――……よくかんがえたらなかたです
――――ぼくら、へいへいぼんぼんなまいにちすごしてますゆえ
――――わだいせいかけらもなし
ほむら「うん、知ってました。でも平々凡々な毎日ではないでしょ。平均的にエキサイティングなだけで」
ほむら「はぁ……どうしたものですかねぇ」
ほむら「もう夕方だから今日は誰もお見舞いには来てくれないだろうし」
ほむら「……夕日……」
ほむら「……夕日を見ていると、なんかこう……」
ほむら「……………若気の至りに走りたくなっちゃうと言うか」
ほむら「……………走っちゃいますか」
――――せーしゅんですな
――――おはこきっぷ、かいます?
――――ばいくぬすんじゃう?
ほむら「盗まなくても走れます」
ほむら「例えば夜中に病院を抜け出すとかすれば、ね」
……………
………
…
ほむら「ふんふふんふふーん♪」
ほむら「いやー、意外と簡単に脱走できましたっ」
ほむら「まぁ、妖精さんアイテム『メガクモール』のお陰ですけど」
ほむら「看護婦さん達、天井の染みを私と勘違いして捕まえようと何度もジャンプしてましたねー」
ほむら「……傍から見ると完全にアレな薬やってる人でしたけど、通報とかされてませんよね?」
ほむら「まぁ、尿検査で異常は出ないでしょうし、どーでもいいでしょう」
ほむら「……………うーん」
ほむら「外に出たのは良いんですけど……目的がないんですよねぇ」
ほむら「ぶっちゃけ引っ越してすぐ入院生活だったから、見滝原の地理には疎いし……」
ほむら「すっかり陽も沈んじゃったから遊べる場所も限られてるし……」
ほむら「……寒いし」
ほむら「なんか思ったより面白くない。適当に散歩したらもう帰っちゃおうかなぁー」
――――にんげんさん、にんげんさん
ほむら「おっと、妖精さん。どうされましたか?」
――――にんげんさん、ぴんちです?
ほむら「ピンチ? いえ、私は特に問題なしですけど」
ほむら「そりゃ、病室抜け出したのがバレていたら後々大ピンチだとは思いますが」
――――ではなくー
――――ほかのにんげんさん、ぜっさんだいぴんちでは?
ほむら「他の……何処かの家の人間がピンチという事ですか?」
――――そー
ほむら「……どの家か分かりますか?」
――――あっちー
――――こっちー
――――ぜんしーん
ほむら「真っ直ぐですね。了解です」
ほむら「ところで、その情報は何処から聞いたもので?」
――――できごとから、じかに?
ほむら「成程」
ほむら「相変わらず――――意味が分かりませんねっ!」タタタ・・・
――――あっちー
――――あっちー
――――こっちー
ほむら「あっちですねっと……なんだか高級住宅街みたいな場所に来てしまいましたね」
ほむら「特にこの家は他と比べて随分大きいし、地主さんのお家でしょうか」
ほむら「ほほう、表札によると『美国』さんという方の……」
ほむら「……美国? はて、最近何処かで聞いたような……」
サササ
ほむら「ん?(誰か居たような?)」
ほむら(……なんでしょう。急に不穏な雰囲気が立ち込めてきた気がします)
ほむら(離れた方が良さそうな……)
――――ここー
ほむら「へ? 此処?」
――――ここで、えまーじぇーしー
ほむら「……立ち去るのは後にしましょうか」
ほむら(妖精さんがお知らせするぐらいだから相当なピンチの筈。見逃せませんね)
ほむら(しかしこの豪勢なお宅、恐らくセキュリティも相応。他人が易々と入れるとは思いません)
ほむら(いえ、そもそも見知らぬ人のお宅に入る事が困難なのですが)
ほむら(普通のお宅なら多少強引に侵入する事も可能でしょうけど、こうも豪華だと警備員とかも居そうですからね)
ほむら(まぁ、また『メガクモール』を使えばなんとか――――)
「い、嫌ああああああああああああああああああああっ?!」
ほむら「……どうやら『メガクモール』を使っている暇はなさそうですね」
ほむら(立ち塞がる者一人一人を節穴にしている時間はなさそうです。ここは真っ向から突入するしかない)
ほむら(とはいえ私みたいな非力な乙女が玄関から突入する事は不可能)
ほむら(なら、方法は一つ)
ほむら「別のルートから侵入するしかありませんね」
――――時刻は少し巻戻り、美国家
サササ・・・
織莉子「……………ふぅ」
織莉子(……マスコミ関係者は、ようやく家の周りから居なくなったみたいね)
織莉子(尤も近くに潜んでいて、何時でもスクープを収められるようにしているんでしょうけど)
織莉子(明日も、学校に行く時は人目に付かないよう注意して……)
織莉子(……何時までこんな生活を続ければ良いのかしら)
織莉子(お父様の経費改ざん疑惑が取り沙汰されて、早一週間)
織莉子(学校では、所謂……いじめのようなものが始まり)
織莉子(近所の人も、私の顔を見るとひそひそと何かを話し出す)
織莉子(何より、マスコミは私への取材を試みようとしてくる)
織莉子(確かに私は美国の娘ではあるけど)
織莉子(でもまだ未成年、義務教育すら終えていない私が父の仕事のお金に関わっている訳ないのに)
織莉子(私はお父様じゃないのに)
織莉子(どうして? どうしてみんな……)
織莉子(……駄目ね。弱気になっちゃ)
織莉子(誓ったじゃない。志半ばで亡くなったお母様のためにも、この街に尽力するお父様のためにも)
織莉子(私は美国に相応しい娘になる。気丈に振る舞わねば)
織莉子(それにお父様が不正なんてする筈がない。疑惑は何時か必ず晴れる)
織莉子(何より、一番辛いのはお父様自身)
織莉子(私が真っ先に心を折られてどうする。もっと強くあらねば――――)
織莉子「……考え込んでいたら、もうこんな遅い時間になってしまったわね」
織莉子「お風呂に入り、そろそろ寝ないと……」
織莉子「……?」
織莉子(妙ね……普段お父様は、この時間はまだ明日の仕事の準備をしている筈)
織莉子(なのに、お父様の部屋の前だと言うのに妙に静か)
織莉子「……お父様? あの、先にお風呂に入ってもいい?」コンコン
織莉子「……ノックをしても返事がない」
織莉子「お父様? あの、開けますよ?」カチャ
織莉子「……お父さ――――」
織莉子「!?」
織莉子(お、お父様が、ドアノブにネクタイを掛けて、首を吊って……!?)
織莉子(これって、自さ……)
織莉子「い、嫌ああああああああああああああああああああっ?!」
織莉子(なんで!? なんでお父様が首を吊って!?)
織莉子(い、いえ! それより、早く下ろさないと!)
織莉子「お父様しっかりして! 今助けるから……」
織莉子「ほら、もう大丈夫! 下したから平気です! だから返事を――――」
織莉子「! ……息を、してない……」
織莉子「そんな……なんで……なんで、こんな……!」
織莉子「……誰、か……」
織莉子「誰かお父様を助け――――」
「とおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうっ!!」
ドグシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
織莉子「って、窓ガラスがぶち破って誰かが侵入してきたああああああああああああ!?」
織莉子「何!? 何なの!? え、本当に何なの!?」
ほむら「あ、どうもお邪魔します。暁美ほむらと申します」
織莉子「へ? あ、ああ、どうも、美国織莉子です」
織莉子「じゃなくて!? 不法侵入者じゃない!」
ほむら「気にしない!」
織莉子「気にするわよ! 確かに今はお父様の救命活動をしなくちゃいけないけど!」
ほむら「救命活動?」
ほむら「ああ、あちらの方ですね。妖精さんが言っていたように、随分とピンチに見えます」
織莉子「と、兎に角、泥棒だかなんだか知らないけど助ける気があるなら手伝って! 救急車を呼ぶとか!」
織莉子「それが嫌ならお金でも宝石でも勝手に盗っていきなさい!」
ほむら「救急車ならもう呼んであります。既にピンチなのは聞いていましたし」
ほむら「わざわざ不法侵入したのは”こういう人”を助けるためです」スッ
織莉子(あの子、ポケットに手を入れた? もしかして何か救命活動に使える道具を……)
ほむら「まだ魂がそこにあるなら、肉体機能を修復すれば良い。私の”友人達”には容易い事です」
ほむら「そんな訳で妖精さんアイテム『呼び戻しハンマー』♪」テッテレー
織莉子「巨大な鈍器を取り出した!?」
ほむら「って、重っ!?」ズシンッ
織莉子「だけど落として床に穴開けた!?」
ほむら「ふんっ、ふーんっ……このハンマー重くて持ち上がらないんですけど……」
ほむら「人命は地球より重いので? いや、そういうの今は良いですって。使えなきゃ意味ないし」
ほむら「……別のアイテムにしましょう」
織莉子「え!? ハンマー意味ないの!? というか今の独り言は何!?」
ほむら「えーっと、救命に使えそうな奴……あ、これで良いか」
ほむら「『AED乾電池』~」
織莉子「……今度は乾電池?」
ほむら「はい、どうぞ。これをあなたのお父様の柔肌にぴとっと付けてください」
織莉子「は、はぁ……(なんで私に渡すのだろう……まぁ、いいか)」
織莉子「えっと、こう……ぴとっと」
ほむら「そうする事で」
――――ビリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
織莉子「しばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!?」
ほむら「電気ショックが流れ、心臓マッサージやら人工呼吸やらをまとめてやってくれます」
織莉子「なばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!」
ほむら(うーん、何か言おうとしてますね。多分、『なんで私まで痺れてんの!?』みたいな感じの事でしょう)
ほむら「……ついでに持ってる側も救命って事じゃないですかね? サービスというか、おまけみたいな感じに」
織莉子「ふざべるばあああああああああああああああああああああ!!」
織莉子父「ごばぁっ!!」バチンッ!
ほむら「あ、息吹き返した、のと同時に電池の方も破損しましたか」
織莉子「ぜー……ぜー……」
織莉子「お、お父様……! ぜはー……ぜはー……」
織莉子父「わ、私は……一体……?」
織莉子「お、覚えて、ごふっ……」
ほむら「なんか死に掛けていたんで、それを、まぁ、我々で助けました」
織莉子「そ、そうです! お父様、首を吊っていて、息も止まっていて……」
織莉子「あと少しで本当に死んでしまうところだったんですよ!」
織莉子父「そうだったのか……すまない、助かった」
織莉子「もう……本当に……心配、したんですから……」
織莉子父「織莉子……」
ほむら「……あの、失礼を承知で訊きたいのですが」
織莉子父「ん? なんだね」
ほむら「自殺しようとしたのでは?」
織莉子「……?」
織莉子父「……どういう、意味かね?」
ほむら「いえ、私が来た時にはもう下されていたので、正確には分かりませんけど」
ほむら「あなたはどうやら首吊りという如何にも自殺風な形で死にかけていたようじゃないですか」
ほむら「でも自殺なら助けられて『助かった』とは言わないと思いまして。覚えがないのも奇妙な気がしましたし」
ほむら「理由ぐらいは聞いておこうかと思――――」
――――ピーポーピーポー
織莉子「あ、救急車が来て……」
ほむら「ヤバい!」
織莉子「え?」
ほむら「私病院抜け出して遊んでいたんですよ! だから見つかるとヤバいです!」
織莉子「え? え? 何、あなた病人」
ほむら「サラバデスッ!!」ガシャアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
織莉子「なんで無事な方の窓ガラスをぶち破って出て行くの!?」
\オイ、イマダレカイエカラデテキタゾ!カンジャノカゾクカ!?/
\カメラマン、アイツヲオエーッ!ナンダカシランガネタダゾー!/
織莉子「……なんだったのかしら、あの人」
織莉子父「嵐のような人だったな……」
織莉子「……時にお父様。どうして首を吊っていたのですか?」
織莉子父「え?」
織莉子「先程のあの方……暁美さんだったかしら。彼女が言っていたように」
織莉子「自殺しようとした人間が、助けられて『助かった』というのは、聊か奇妙です」
織莉子「生死の境を彷徨って直前の記憶か混濁していたとしても、死にたいという想いはその前から抱いていた筈」
織莉子「お父様の言動は、矛盾しているように思えます」
織莉子「どうして、首を吊っていたのですか?」
織莉子父「……えっと、その、そんな大した話では」
織莉子「危うく死んでいたであろう事が大した話ではないと言いますか」
織莉子父「……………」
織莉子「お・と・う・さ・ま?」
織莉子父「……最近、バッシングやマスコミの張り付き、近所の人の態度が酷いだろう?」
織莉子「え? ……確かに酷いです。私も学校に行くのすら一苦労ですし」
織莉子(学校でクラスメートから直に侮辱される事もあります……っと、これは言わなくても良いでしょう)
織莉子父「それでその、ストレスが溜まってだな?」
織莉子「ええ、まぁ、私も溜まっていますからね……で?」
織莉子父「……趣味のブレイクダンスをやって発散しようとして」
織莉子「は? え、ブレイクダンス?」
織莉子父「それで大して上手くもないのに大技決めようとしたところ転んでしまい」
織莉子父「緩めていたネクタイが運悪くドアノブに引っ掛かって」
織莉子父「……そのまま、こう、きゅっと」
織莉子「はぁ、きゅっと……」
織莉子父「……………」
織莉子「……………」
織莉子「ふんっ!!」
織莉子父「右ストレートっ!?」バキィッ
……………
………
…
それから時は流れて……四日後
ほむら「んー、手術も終わってようやく自由です!」
ほむら「まぁ、そうは言っても今日は安静にしろと言われてますが。縫い目が開くかもですし」
ほむら「今日はベッドでごろごろしながら、お昼のバラエティ番組でも見てますか」
ほむら「ぽちっとな」
『……次のニュースです。先日緊急入院する事になった見滝原市市議会議員である美国久臣氏ですが』
『本日十時頃、議会に辞職の意思を伝えたとの事です』
『美国議員は経費改ざんの疑惑をもたれており、議会は……』
ほむら「美国? はて、何時だか聞いたような……」
ほむら「ああ、あそこのお家か。成程そういう事でしたか」
ほむら「そういえばあそこのお家に居た、私と同い年ぐらいの娘さん。名前とか聞いてませんでした」
ほむら「……なんだか物静かで優しそうで、面白そうな人でしたし」
ほむら「今度会えたら、私の手作りおやつでもご馳走して友達になりたいなぁ♪」
『きりかさんのばあい』
ほむら「ふんふんふふ~ん♪」
ほむら「今日は一人でお買い物~お気楽ご機嫌お買いもの~♪」
ほむら「食べ物じゃなくて消耗品を~か~う~よ~♪」
ほむら「……妖精さんは、素材は高級品を集めてくれますけど、”加工品”になると変な機能持たせますから」
ほむら「文房具とかはちゃんとお店で買わないと、後々大変なんですよねぇ」
――――ぼくら、そーいうとこありますからなー
ほむら「分かってるなら気を付けてほしいものです。ま、何時でも忘れないその遊び心もまた可愛らしいのですが」
ほむら「ふぅ……しかし荷物が多い」
ほむら「シャルロッテさんという居候が加わり、消耗品の使用頻度が増えたので」
ほむら「面倒だしまとめ買いしちゃえと思ったのは失敗でしたか……歩き辛くて仕方ありません」
――――ぼくら、おてつだう?
――――ぼくらのどうぐでむてきぱわー
――――らくらくおうちまではこびます?
ほむら「んー、今回は遠慮しましょう。家まであと少しですし」
ほむら「それに楽ばかりしていたら体力がますます落ちちゃいますよ」
ほむら「自分の足で歩き、しっかりと筋肉を付ける事にします」
――――にんげんさん、どりょくのひとねー
ほむら「えっへん。もっと褒めてくださいな」
ほむら「まぁ、ティッシュとかトイレットペーパーとか、かさ張るだけで重くはないので筋肉が付くほど大変では……」
ほむら「……ぁ」
ほむら「ああー……やっちゃった……」
ほむら「日用雑貨ばかり気にしてて、肝心の文房具を買うの、忘れていました」
ほむら「特に消しゴム。うっかり買い忘れるのを何度も繰り返して」
ほむら「いよいよ本当に買わなきゃ不味いってぐらい小さくなっていたのに……」
――――つくります? つくります?
ほむら「……以前作ってもらった消しゴムが、消した文字が具現化するトンデモ道具でしたので止めておきます」
――――あー……
――――ふひょーかー
――――やはり、けしたもじがふえるほうがよかたのでは?
――――それだー
ほむら「それだーじゃないでしょう。増えたら消しゴムの意味がないじゃないですか」
ほむら「しかしどうしたものか」
ほむら「家は間近。行きつけの文房具店がある商店街は彼方」
ほむら「商店街の方までわざわざ消しゴム一個のために戻るのは面倒臭い」
ほむら「金額とか種類に今回は頓着しないので、何処か近くに手頃なお店は……」
ほむら「……やっぱりこういう時は便利ですよね」
ほむら「コンビニ」
……………
………
…
\ラッシャーセー/
――――それはがそりんすたんどではー?
ほむら「いや、知りませんよそんな事……それより」
ほむら「えーっと、消しゴム消しゴム……あった」
ほむら「特に値段とか種類を気にしなければ、コンビニは便利なものです」
ほむら「おやつに関しては種類も値段も充実しているようですし」
――――すいーつすいーつ
――――いろとりどりー
――――おねだりちゃんすー?
ほむら「そうですね。何時も手作りお菓子をあげてますけど、たまには噂のコンビニスイーツなる物も食べてみますか」
ほむら「……この濃厚ロールケーキとか美味しそうですね。買ってみましょう」
ほむら「えーっと、それじゃあそろそろお会計を……」
チャリーンッ
ほむら「ん?」
ほむら(あら、女の子がレジの前でしゃがみこんで……ああ、お金を落としてしまったのですか)
ほむら(ふむ、見た目地味系。多分同年代。おどおどとした挙動から判断するに性格は引っ込み思案)
ほむら(……結構、落としてしまったようですね。手伝ってあげますか)
ほむら「あの、もし――――」
DQN「んだよテメェ……なにとろとろしてんだよ」
ほむら(……うわぁ、変なのが女の子の後ろに並んでた)
ほむら(チャラチャラした格好に、粗暴で品性のない言動。女の子を気遣わない無神経さ)
ほむら(……リアルDQNって初めて見た)
女の子「す、すみません……あ、」チャリンッ
DQN「たく、何してんだか……さっさと拾えねぇんなら退けよ」
女の子「あ、えと、その……」
DQN「早く退けっ!」
女の子「ひっ!」
ほむら「……………」
DQN「たく、これだから愚図は――――」
ほむら「ほいっと」カチッ
DQN「あ? なんか背中に取り付けられ」
ほむら「はい、がっちょんっと」ガチンッ
DQN「え、え?」
DQN「ぐ、わあああああああああああああああああああああああああああ!?」バリバリバリバリー
DQN女「……………」プシュー
DQN女「え、ちょ、なんであたし女に……今自分の事あたしって言っちまった!?」
DQN女「て、テメェ!?」
ほむら「?」
DQN女「首傾げてすっ呆けるな! 後ろに居たお前、あたし、いや俺に何をしやがった!?」
ほむら「えー、別に何もしてませんよー」
ほむら「妖精さんアイテム『性別切り替えレバー』」
ほむら「上下にレバーを動かすだけで性別の切り替えが自由自在。生理的機能もバッチリ切り替えた性別の物に」
ほむら「染色体、ひいては遺伝子レベルでの事象に喧嘩を売る超常的を通り越してジョークの域」
ほむら「そんなとんでもテクノロジーの集積体をあなたの背中に張り付けただなんて」
ほむら「やる訳ないじゃないですかッ!」
DQN女「一から十までがっつり知り尽くしてなきゃ言えない事喋って堂々と惚けるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ほむら「惚けるなと言われましてもねぇ」
DQN女「て、テメェ――――」
ほむら「それより、此処から離れた方が良いですよ?」
DQN女「はぁ? なんの事……」
男共「ハァハァハァハァハァハァ」
DQN女「」
ほむら「性別が切り替わると、妖精さん的不思議ロジックによりモテモテになります」
ほむら「特に女の子になると大変ですよ。力も相応に弱くなってるのに、周りは野獣だから……」
DQN女「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいい!?」
DQN女「ち、ちくしょお! 覚えてろっ!!」ダッ
男共「逃げたぞ! 追えっ!」
DQN女「なんでぇ!?」
\キャーギャーウオオオオオオオオ/
ほむら「……行っちゃいましたか」
ほむら「しかし覚えてろと言われましてもねぇ」
ほむら「困ってる女の子を助けもせず罵倒する男なんて記憶に留めておく価値もないですし、無理ですね」
ほむら「っと、それより」
ほむら「大丈夫ですか? そこのあなた」
女の子「あ、えと……」
ほむら「ああ、突然の事に驚いて、まだお金を拾えていませんでしたか」
ほむら「手伝いますよ」
女の子「ぅ……ぁ……ぁり……」
ほむら「ほいほいほいっと……えーっと、こんなものかな」
ほむら「はい、どうぞ」
女の子「あ……」
ほむら「……うーん、どうしたものか。みんなあの、元男の人を追い駆けてしまいましたね」
ほむら「店に居た客だけでなく店員さんも。これではお会計が出来ません」
ほむら「次のバイトさんが来る時間なんて分かりませんし……」
女の子「……………」
ほむら「……どうかしましたか?」
女の子「え? あ、その」
ほむら「もしかしてあの性別が切り替わった人の事が心配なのでしょうか?」
女の子「……えと……それは……無くもない、けど……」
ほむら「あのような相手でもその後を心配するとは、お優しいんですね。私も見習いたいところです」
ほむら「でもそれは大丈夫。あのレバーで性別を切り替えると」
ほむら「人格の方も徐々に切り替わります。周囲の認識により、自己の認識が上書きされていくからです」
ほむら「恐らく一週間もすれば、あの方はそこらの不良女子と同じ性格になっている筈です」
女の子「性格が、変わる……」
ほむら「そうなれば生活にも慣れていく事でしょう」
ほむら「それに妖精さんアイテムで起こした出来事。収束せずとも安定はするものです」
女の子「……………」
ほむら「しかしどうしましょう、消しゴムとこのスイーツ……」
女の子「あ、あの!」
ほむら「? はい、なんでしょう?」
女の子「その、あの……わ、私に……」
女の子「私にそのレバーを付けてほしい!」
ほむら「……はい?」
女の子「わ、わ、私、呉キリカって言うんだ!」
キリカ「私、内気な性格で、友達とかも……作れなくて……」
キリカ「こんな自分を変えたいと思っていて」
キリカ「だからそのレバーがあれば、もしかしたら!」
ほむら「……気持ちはよく分かりますが、あまり便利な道具に頼るのはよくありませんよ?」
キリカ「う……でも……」
ほむら「ほいっと」ガチョンッ
キリカ「えっ!? あ、頭にレバーが……」
ほむら「だからお好きなタイミングで、自らの意志で切り替えると良いでしょう」
ほむら「男らしい勇気と女らしい優しさが欲しい時に」
キリカ「う、うん! ありがとう! 君は、恩人だ!」
キリカ「これで私は……生まれ変われるっ!」ダッ
ほむら「おっと、行ってしまいましたね。買い物は良かったのでしょうか?」
ほむら「……ああ、そういえば」
ほむら「あのレバー、異性の方じゃないと操作出来ないって事を言い忘れていました」
ほむら「……まぁ、最初の切り替えの時に多分気付く筈」
ほむら「私もそろそろ帰るとしましょう」
ほむら「……スイーツと消しゴムの代金を此処に置いてから、ね」
それから時は流れて・・・
ほむら「ふぅ……我が家も随分な大所帯になったものです」
ほむら「シャルロッテさんだけでなく、ゲルトルートさんに佐倉さん」
ほむら「あと優木さん。合計四人の居候」
ほむら「消耗品の使用スピードは一人暮らしの時の五倍」
ほむら「先日まとめ買いしておいたのに、すぐに無くなってしまいましたよ」
ほむら「あと筆記用具もそろそろ買い揃えないといけませんね。皆さんが学校通いを始めた時のために」
ほむら「以前買い物に行った時はうっかり消しゴムを買い忘れるなどのミスもありましたが」
ほむら「今回はばっちりメモを用意してますから安心です」
ほむら「さて、そろそろ商店街に――――」
\キャーワーキャー/
ほむら「? なんか騒がしいですね……」
――――おまつり?
――――みこし?
――――かつがれます?
ほむら「まぁ、無いとは言い切れませんけど」
ほむら「でも今のは祭りというより、二人ぐらいでわーわー騒いでいるだけのような……」
ほむら「あ、あの二人かな?」
キリカ「待って、待ってくれぇぇぇぇ!」
織莉子「ああもう! しつこい!」
キリカ「そんなつれない事言わないでくれ! 君に冷たくされたら、私はショックで灰になってしまう!」
織莉子「だったら灰になりなさい!」
キリカ「ああ! 君のその冷たい言葉もまたゾクゾクしてしまうよ!」
織莉子「全然平気じゃない! と言うかもういい加減諦めてほしいのだけど!」
キリカ「諦められる訳がないじゃないか!」
キリカ「何処かの誰かからもらったレバーを頭に付けてもらったけど、自分じゃ切り替えられず」
キリカ「それで通行人に頼んで切り替えてもらったら、今度は元に戻れなくなって途方に暮れていた時」
キリカ「君が助けてくれた! 君がレバーを戻してくれた!」
キリカ「これはもう運命! 私達は赤い糸で結ばれていたんだよっ!」
織莉子「あの日はちょっと気分転換に公園まで足を運んで」
織莉子「そこで見つけたあなたがわんわん泣き叫んでてうっとおしかったから声を掛けただけよ!」
織莉子「運命も何もないじゃないっ!」
キリカ「それこそ運命だよ! 君は泣き喚く私に声を掛けてくれた!」
キリカ「その優しさ、惹かれるなという方が無理があるとは思わないかい!?」
キリカ「即ちこれは――――愛なんだ!」
織莉子「い、意味が分からないっ!?」
織莉子「ああもう! なんで私がこんな目に遭わなきゃならないの!?」
織莉子「あの駄目親の元から離れたいから、県外の寮付き進学校を受験するために勉強しまくって」
織莉子「あの日はその疲れを癒そうとちょっと散歩に出ただけだったのにーっ!」
キリカ「今こそ私の想いを受け止めてくれーっ!!」
織莉子「全力で拒絶するわっ!」
\ヒーワーキャー/
ほむら「……痴話喧嘩?」
――――なかよさそー
ほむら「いや、仲が良いかは微妙な気も……と言うかあの二人、女の子同士ですよね」
ほむら「一方は愛とかなんとか叫んでいましたが……鹿目さんと言い佐倉さんと言い、
見滝原はそういう方が多いのでしょうか。新宿二丁目みたいな感じに」
ほむら「それにしてもあの二人、何処かで見たような?」
ほむら「……ああ、そうかそうか。思い出した。どちらも懐かしい顔ですね」
ほむら「……ふむ」
ほむら「帰りに公園で食べようと思っていた手作りおやつ」
ほむら「手土産としては上級でしょう」
――――からんでいくすたいるで?
ほむら「当然。あんな面白そうな事、無視するなんて出来ません」
ほむら「えー、そこの元気なお二人さーんっ!」
ほむら「私の手作りロールケーキ、一緒に食べませんかーっ?」
妖精さんメモ
『気持ちダダ漏れお面』※オリジナル※
表情が変化する不思議なお面です。被っている人の気持ちがもろに表れるため、被っても表情は隠せません。
むしろ被らない方がマシでしょう。
……なんの役にも立たないしょーもない道具なので、これ以上書く事もないです。
『解けない知恵の輪』※オリジナル※
解けそうで解けない、だけど絶対に溶けない知恵の輪です。
暇潰しに使え……いや、解けない事分かってるから使えな……いやでもカチャカチャやるのも結構楽し……
そうこうしている間に時間を潰せる道具です。すごいですね(棒読み)
『呪い剣』※オリジナル※
装備すると呪われてしまい、不幸に襲われるとんでもないアイテムです。
その呪いたるや凄まじく、カミキリムシが襲来してくる、酸性雨が降ってくるなどのおぞましい呪いが次々と……
……材料が木材と石なので、呪いの基準がそこなんですよね……人間には割と無害です。
むしろ珍にしてレアなカミキリムシが捕まえられるかも。
『メガクモール』※原作登場※
妖精さんが作ってくれた特殊なスプレー剤です。浴びせられると節穴になり、
とんでもない見間違い(壁に書かれた『09』の落書きを、摩天楼に上るピンクの像と誤認するレベル)をするようになります。
ついでにどんな見間違いでも受け入れられるよう、知力も低下するようです。危険ですね、社会的に。
ちなみに目に入るとかなり沁みて痛いみたいです。普通の防犯スプレーとしても使えるなんて、とても便利な道具ですね。
『性別切り替えレバー』※オリジナル※
がっちょんと切り替えればあら不思議、取り付けた人の性別が切り替わってしまうアイテムです。
レバーを戻さない限り恒久的に性別は切り替わったままで、その切り替えは異性にしか行えません。
しかしながら恒久的という事は肉体の一時的な組み換えではなく、性の決定を行う染色体、
即ち遺伝子レベルで情報が書き換えられているはず。
レバーの切り替えだけでどうしてそんな事が可能なのか? そんな遺伝子書き換えを行って人体に悪影響はないのか?
卵巣や精巣など、性に特有の臓器まで一瞬で作り変えるためのエネルギーは何処から来ているのか?
そんな事は考えるだけ無駄なので、気にせずがっちょんといきましょう♪
今日はここまで!
……我ながら、よくもまぁ別編しか持ってないのにこのネタやろうとしたものだ。
二人の情報を仕入れるために別編読み直し、SS読み込み、Wikiを参照し、大百科を閲覧し、画像検索し……
結果、キリカの契約前の姿をこんな感じでねつ造。いぇーい(白目)
でもどうしても二人を幸せにしたかったのです。仕方ないね(粛清)
それではあと三回、お楽しみいただければ幸い。
でわわー
乙
>>75-76の2レスで終了するシリアス
このろくにシリアスが息してない空間大好きだ
>織莉子(なんで!? なんでお父様が首を吊って!?)
ここがアイエエエエ!?で再生されたのは俺だけじゃないはず
おとんの自殺未遂もとい事故死の原因がアホすぎてワロスwww
>そこらの不良少女と同じ
真人間になるかどうかは本人次第かwww
男→女のTSF(性転換)ネタは好物だが、このスレに限っては各登場人物にスイッチ取り付けたいな。
>>105
まどかさんは自分に取り付けるかな?
それともほむらちゃんに取り付けるのかな?
さやかちゃんは多分お婿さん決定だな。
そろそろ
どうも、最近人退の平行植物の元ネタだと思われる『平行植物』について知った>>1です。
年末が近付くにつれリアルの忙しさが増してきたでござる(言い訳)
>>99
当SSはほのぼの理不尽コメディです(今更
>>102
このSSにニンジャはいない。いいね?
>>104
妖精さんが関わった結果、因果律が操作されたようです。
……実際のとこ、別編でおとんが首吊ってる場所は何処なんだろう?
自分はドアノブに見えたけど、2コマ前の絵だと高いとこからぶら下がっているような……
>>105
沙々「女の子でもクズはやっぱりクズですからねぇ」
>>107
ほむらさんが男子も真っ青なイケメン美少女になって(恋愛的に)無双するSSが読みたくなりました。
責任とって書いてください(ぇ)
>>109
そろそろでした。
それでは今回も短めですが、おまけ四部作の二作目いきます。
またトリップ可笑しくなってる……
ここで直ってる、筈
えぴそーど おまけ よん 【ゆまさんちの、げきてきびふぉーあふたー】
―――― ワルプルさん襲撃の翌日 ――――
―――― 見滝原某所 ――――
ほむら「えー、皆さんの頑張りと妖精さんの活躍により、インキュベーターは地球から撤退しました」
ほむら「しかしまぁ、それで何もかも解決とはいかないのが現実」
ほむら「いえ、魔法少女の問題はなんとかなるでしょう。そのための作戦が現在進行中です」
ほむら「当面の問題は、ワルプルギスさん上陸による被害」
ほむら「スーパーセル何万個分かも分からぬエネルギーの塊の襲来です。見滝原どころか風見野とかも余波でめっちゃくちゃ」
ほむら「とは言え、そちらも人的被害がなかったのでいずれは修復されるでしょう」
ほむら「住民の多くが避難所生活を強いられていますが、時間がそれを解決してくれます」
ほむら「……こちらのお二人を除いて」
ゆま「」チーン
旧べえ「」チーン
ほむら「可哀想に、二人は天に召されてしまい……!」
マミ「こらこらこらこら。勝手に殺さない。真っ白に燃え尽きてるだけだから」
ほむら「えへへ。いやー、何となく言ってみたくて」
ほむら「話を戻しまして。なんで二人は燃え尽きているのですか?」
ほむら「まぁ、大方想像出来ますけど」
マミ「多分想像通り」
マミ「今まで仮住まいにしていた空き家が、昨日のワルプルギス襲来の余所で倒壊しちゃったみたいなのよ」
ほむら「そりゃまぁ、そうでしょうね。ビルが飛び交う大祭り状態だったようですし」
ほむら「空き家に住んでいた、というのは初耳ですけど」
ほむら「……ふむ。私達が今立っているこの瓦礫」
ほむら「ゆまさん達が暮らしていた家の残骸ですか」
マミ「あら、分かるの?」
ほむら「ええ。保存されている記憶に、二人が生活していた事が記されていますからね」
マミ「記憶?」
ほむら「種族記憶とでも言い直しましょうか。空間にしっかり保存されているんですよ」
ほむら「それを参照すれば、この星で起きたあらゆる出来事が分かります」
ほむら「まぁ、妖精さんの力で保存されているので、彼等がここに来てからの分しかありませんが」
マミ「……途中からよく分からないけど、つまり」
ほむら「妖精さんパワーを使えば秘密の個人情報探りほーだーい♪」
マミ「今後暁美さんはうちに出入り禁止ね」
ほむら「あらららら」
ほむら「……しかしまぁ、こうも完全にぺっちゃんこだと確かにもう住めませんね」
ほむら「それに当然ながら、新しい家を探そうにも」
ほむら「最先端技術で建てられたビルすら倒壊している有り様。ただの空き家が残っている道理はない」
ほむら「新居は見つからず、今のお二人は完全なホームレス状態……という事で、よろしいでしょうか?」
マミ「流石暁美さん。説明要らずね、その通りよ」
マミ「……一応ね、こうなる前まではそこまで酷い生活じゃなかったのよ?」
マミ「あの時も確かに空き家暮らしだったけど、そんなに古い建物じゃないみたいで」
マミ「建物の劣化はちょっと気になるぐらいで問題があるとは言えないし、風雨はちゃんと防げそうだった」
マミ「それと食べ物は山からキュゥべえが川魚や山菜、キノコとかを集めて、ゆまちゃんに食べさせていたみたい」
ほむら「完全な狩猟生活ですね」
マミ「でも自給自足は出来ていたわ」
マミ(塩とか味噌は私があげていたけど、それぐらいは、ね?)
ほむら(まさか塩や調味料の類を自分で作っていたとは思えませんが、それぐらいは見逃しましょうか)
ほむら「まぁ、彼の今の身体能力なら、ゆまさんを満腹にするだけの食料は得られるでしょう」
ほむら「問題はバランスですが……」
マミ「そっちも問題なし。山菜や果物を多めに、だけどタンパク源である肉や魚もあった」
マミ「今は真っ白になって分かり辛いけど、ゆまちゃんの血色、前より良くなってるでしょ?」
マミ「ちゃんとした食事を取ってきた証拠だわ」
ほむら「マシになった程度ですけどね」
マミ「不摂生の期間が長かったんだから、それは仕方ないわよ。一日二日じゃどうにもならないわ」
マミ「あと給食費とかで必要になる現金は、ゆまちゃんの家に残っていた数万円分のお金を使ってるらしいわ」
ほむら「ふーん……数万円……」
マミ「そして何より、ゆまちゃんがキュゥべえとの生活を楽しんでいるようだった」
マミ「だから本人達が言ってこない限りは、しばらく二人だけの生活をさせてあげようと思っていたんだけど……」
ほむら「家が壊れ、根無し草となったからには放ってはおけない、と」
マミ「そんなところね」
ほむら「そんなところと言われましてもねぇ……児童相談所とかに強制連行で良いでしょう」
ほむら「仮にホームレス生活をするにしても、一年も続けられるとは思えません。
残されていたお金数万円って、給食費一年分あるかないかだし」
ほむら「遠足とかなんだとか、学校行事があればその都度出費がある訳で」
ほむら「そもそも家庭訪問が行われたら一発で詰む状況じゃないですか」
ほむら「どうせ長続きしない生活なんですから、さっさと新生活に移行した方が良いと思いますけど」
マミ「辛口ねぇ……確かにそれも選択肢の一つだとは思うけど、でも」
旧べえ「何を馬鹿な事を!」
ほむら「あら、復活しましたね」
旧べえ「ゆまを児童相談所に連れていくと聞かされて黙っていられるか!」
旧べえ「虐待をずっと止められなかった無能な国家の犬にゆまを預けるなんて、出来る訳ないだろ!」
マミ「……こんな感じで、一方が断固拒否の姿勢を貫いているのよ」
ほむら「気持ちは分からないでもないですけどね」
ほむら「……表向きは」
ほむら(ぶっちゃけ、ゆまさんと二人きりの生活楽しみたいだけでしょあなた)<イオンチャンネル干渉中
旧べえ(ギクッ)
ほむら「やっぱり児童相談所に連行で――――」クイクイ
ほむら(……おや、ゆまさんが私の服の裾を引っ張って……)
ゆま「……わたしも、ねこさんといっしょにいたい……」
ゆま「ねこさんといっしょにくらすの、すごく、すごく楽しくて」
ゆま「だから、できたらもっといっしょに……」
ほむら(おっと、自己主張……虐待されて、自分の意見を中々言えない環境に順応してしまった筈なのに)
ほむら(これは良い傾向。潰してしまうのは惜しいですし、否定によってマイナスに落ちてしまうのは不味い)
ほむら(この歳で無意識に搦め手とは、恐ろしい子!)
ほむら「……ふむ。本人達にこうも言われては、とても拒否など出来ませんね」
マミ「じゃあ――――」
ほむら「私の基本方針は順法ではなく、明るく楽しく前向きに、です」
ほむら「何時か終わると分かっていても、かけがえのない楽しい日々を送りたいのなら」
ほむら「それを手伝わないという選択肢、私の中にはありませんっ!」
ほむら「ほいほいほーいっ」
――――ズゴガゴゴゴンガコンッ!!
ゆま「うわーっ! 倒れた柱とかがかってに動いてる!」
旧べえ「相変わらず出鱈目な能力だなー」
マミ「えっと、どんなものにも干渉する能力、だっけ?」
ほむら「ええ。正確には干渉というよりも説得やお願いという形になりますが」
ほむら「どんな非常識も無理やり起こしているのではなく、物理的に起こり得る事象に過ぎない」
ほむら「そう大した力ではありません」
マミ「そうは言うけど、あの出鱈目パワーが無理やりじゃないっていうのはちょっと納得出来ないわね」
ほむら「いやいや、本当に”あらゆるもの”に干渉出来れば、無理やりよりずっと世界は自由に広がるものなんです」
マミ「うーん……それってどういう……」
旧べえ「そう難しく考えなくてもいいんじゃないかな」
旧べえ「みんなで力を合わせれば、より凄い事が出来る」
旧べえ「そういう事だろう?」
ほむら「ええ、そういう事です」
マミ「ふーん? キュゥべえは妖精さんについて随分詳しいのね」
マミ「私の方が、長く見てきたと思うのに」
旧べえ「いやぁ、どうだろう。不思議と、そこには反論出来る気がするね」
ほむら「ふふ。そうかも知れませんね」
ほむら「さて、ゆまさん。そろそろ完成します」
ほむら「中はとても面白い事になっていますから、期待していてくださいね?」
ゆま「ほ、ほんとう!?」
ほむら「ええ。ようせいさんうそつかない」
ほむら「……ほい、完成!」デンッ
ゆま「わぁっ! もうおうちができちゃった!」
マミ「流石妖精さんパワーね」
ほむら「えっへん!」
ゆま「ねぇ、ねぇ! 早くおうちにはいろ!」
ゆま「中、どうなってるのかな!」
旧べえ「こらこら。ゆま、そんなにはしゃいだら危ない――――」
マミ「そうよ、家は直ったけど周りにはまだ瓦礫があるから――――」
旧マミ(……いや、ちょっと待て)
旧べえ(”暁美ほむら”が作ったものが、果たして真っ当なものなのだろうか?)
マミ(と言うか中は面白い事になってるってあの子が断言した以上)
旧マミ(絶対にまともな訳がない!)
旧マミ(そう、例えば開けたら中に巨大ダンジョンが広がっているとか!)
マミ「だ、駄目よゆまちゃん!」
旧べえ「その扉を開けたら駄目だあああああああああああっ!」
ゆま「え?」キィ
マミ(あ、勢いつけて飛び出したから……)
旧べえ(ゆまが開けた扉に、僕達が突っ込む形で入って――――)
旧マミ「わ、ああああああああああああああああああああああああああああ!?」
マミ「う、うーん……」
マミ「私は一体……確か、暁美さんが作った家にうっかり飛び込んで……」ギュム
旧べえ「きゅぶっ」
マミ「あ。ご、ごめんなさいキュゥべえ!? ち、近くに居たって気付かなくて……」
旧べえ「い、いや、大丈夫……手で押し潰されたぐらい何ともないから……」
旧べえ「それより、此処は暁美ほむらが作った僕とゆまの新居……の筈だよね?」
マミ「筈だけど……」
旧べえ「……見事に石造りのダンジョンに放り出されたなぁ。此処は通路かな」
マミ「完全に予想通りの展開じゃない……」
マミ「もう! 暁美さんったらいくら遊び心の塊だからって、こんなアトラクション、家にはいらないでしょ!」
旧べえ「うーん、一体どんな干渉をすればこんな物が一瞬で作れるのか……空間に対するものか、
或いはもっと簡易的な操作なのか」
旧べえ「中々興味深い」
マミ「キュゥべえもそんな事言ってないで、此処から脱出する方法を考えてよ……」
旧べえ「考えても、と言われてもねぇ」
旧べえ「通路の中だからそもそも全体像が把握出来ないし、その通路はかなり遠くまで伸びている」
旧べえ「全て攻略するには時間がかかりそうだ、という事しか分からないよ」
旧べえ「大体今の暁美ほむらは、妖精さんと同等の力を持った存在じゃないか」
旧べえ「ハッキリ言って、考えるだけ無駄だよ。”彼女達”は常に僕達の発想の上をいく事が出来るのだからね」
マミ「うぅ……」
マミ「もぉーっ! 何時も何時もやり過ぎなのよっ!」
マミ「ただ家を建てるだけなのに、なんでこんな巨大ダンジョン用意しちゃってる訳!?」
マミ「この調子だとドラゴンも居るんじゃないかしら! 前の料理対決の時みたいに!」
旧べえ「あり得ないと言い切れないのがまたなんとも」
ドラゴン「グルルルル」
旧べえ「あ、君もそう思う?」
マミ「あなたも暁美さんの力で無理やり配置されちゃったのよね? 本当にもう、あの子には……」
旧マミ「……………」
旧マミ「い、何時の間にか傍に居たあああああああああああああああああああ!?」
ドラゴン「ギャオオオンッ」
マミ「ひぃっ!? 微妙に覇気のない声だけど叫んだーっ!?」
旧べえ「しかもあの牙もろに捕食者のそれだよ! こっち食べる気満々だよ!」
マミ「デザインが料理対決の時に見たのとほぼ同じだけど、ネタ切れなのかしら!? だったらやらなきゃいいのに!」
ドラゴン「グルルル」
旧べえ「あわわわわ……こ、こっちに来た……!」
マミ「どうしましょう、どうしましょう……」
マミ「そうだわ! へ、変身!」<魔法少女モード
マミ「おおおおお落ち着くのよ私! ドラゴンなんて前にも倒したし!」
マミ「それに今の私はソウルジェムなし! 魔法はいくらでも使い放題よ!」
旧べえ「い、いや、でも暁美ほむらがその事を無視するとは……」
旧べえ「無双してもつまらないし、そういう能力は使えないように封じてあっても可笑しくない気が……」
マミ「へ? ……ま、まさかぁ」
マミ「……………まさか」
マミ「……ティロ・フィナーレ」
――――ぽすっ
マミ「……不発、かしら」
旧べえ「……魔法で作った銃から空気が出ただけだし、不発、だよね」
マミ「ちなみにキュゥべえは?」
旧べえ「うん。マミの後に試してみたけど、やっぱり駄目だったよ。力が使えない」
旧べえ「今の僕はリアルに猫並の力しかないみたいだ」
マミ「あら、そう」
旧マミ「……………」
ドラゴン「ゴァッ」
マミ「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
旧べえ「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!?」
マミ「に、逃げ、逃げぇぇぇぇぇぇぇ!?」
旧べえ「ど、何処か安全な場所に逃げなくては!」
マミ「きゃああああああああ!? いやあああああああああああああああ!」
旧べえ「マミ! マミ、落ち着いて!」
マミ「これが落ち着ける訳ないでしょ!? ドラゴンよ! ガチドラゴンよ!?」
マミ「多分あれ火とか吐いてくるのよ! 前もそうだったし!」
ドラゴン「ボオオオオオオオオオッ」カエンホウシャ
マミ「あちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!?」
マミ「無理! 絶対無理ぃぃぃぃぃぃぃぃい!」
旧べえ「だから落ち着くんだ!」
旧べえ「暁美ほむらが、危険なだけのイベントを作るとは思えない!」
旧べえ「このドラゴンを倒す、或いは脱出するための仕掛けがある筈だ!」
マミ「し、仕掛け!?」
旧べえ「なんか暁美ほむらはそういう事しそうじゃないか! イベントはクリア出来ないと面白くないとか言って!」
マミ「ええ、ええ! そうね! 確かにあの子そういう事しそうよね!」
旧べえ「例えば床にスイッチがあって、それを踏んだらトラップが」
――――カチッ
旧べえ「……うっぷす。床にスイッチが」
旧べえ「……そりゃ、予想はしていたけどさ……何というか、その……お約束過ぎない?」
マミ「まぁ……彼女、お約束好きだから」
旧べえ「問題はどんなトラップが作動するか、か」
マミ「うーん、落石とか竹槍射出とか落とし穴とか」
パカッ
旧べえ「……落とし穴か」
マミ「みたいね」
旧マミ「お、落ちるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
ひゅうるるるるるるるるるるる……
……………
………
…
マミ「うう……一体どれだけ落ちたのかしら……」
マミ「ドラゴンは……居ない、というか見えないというか」
マミ「周りが真っ暗で、何も見えないわね……」
旧べえ「あ、あの、マミ……」
マミ「? キュゥべえ? 何処に居るの?」
旧べえ「……君が無事なのは喜ばしい事だし、周りが見えないから致し方ないとは思うけど」
旧べえ「僕の上に乗ってる事にそろそろ気付いてくれないかい?」
マミ「え? あ、ああ、またやっちゃったわね……」
旧べえ「いや、それは構わないけど、早く退いてくれると助かる。流石に重」
マミ「重くない!」
旧べえ「ぎゅべっ!? な、なんで全体重を乗せて……!?」
マミ「うーん、それにしても此処は何処なのかしら……」
旧べえ(あ、無視するんだ)
マミ「辺りが真っ暗で何も見えない……というか何もない?」
マミ「手探りで周囲を探っても、何一つ触れないし……」
旧べえ「……暁美ほむら的に、この後どのような展開を作ると思う?」
旧べえ「暁美ほむらという”人間”については、君の方が詳しいと思うのだけど」
マミ「そう言われても、さっきあなたが言っていたじゃない。妖精さんの力は私達の想像の上を行くって」
マミ「万能の力と楽しさ重視の発想が結びついたら、それこそなんでもありよ」
マミ「まぁ、落とし穴だし、前みたいに地下王国があったりするんじゃない?」
旧べえ「地下王国?」
マミ「ファンタジー世界そのもののような、そんな場所だったわ。魔王とかグリフォンとか居たし」
旧べえ「ふーん。なら、今度は未来都市じゃないかな。またファンタジーだとネタ被りだし」
マミ「ああ、そうね。そういう事しそうよね、暁美さん」
マミ「未来都市ねぇ……見滝原よりも巨大なビルが立ち並んでる感じの街並みも、妖精さんなら一瞬で……」
――――ふわっ
マミ「え……きゃっ!?」
マミ(な、何!? 突然光が満ちて……!)
マミ「……………う、そ……さっきまで何もなかった筈なのに」
マミ「光が収まったら、辺りが未来都市に!?」
旧べえ「……いやはや、まさか本当に都市が広がっているなんて」
マミ「さっきまで気配なんてなかったのに、人の姿まであるし……」
マミ「ああ、でも良かった……人のいる空間なら安心出来るわ」
旧べえ「そうだね。まさかこんな場所でドラゴンと遭遇はしないだろう」
旧べえ「走り回って疲れたし、休憩を入れようか」
旧べえ「……休憩できる場所なら良いけど……」
マミ「きっと大丈夫よ。殺気とかは感じないし」
マミ「それにしても、凄い都市ね」
マミ「デザイン性重視のビル、透明なチューブみたいな道路、その中を走る浮遊する車」
マミ「正に、私の想像した通りの未来都市ね」
旧べえ「つまり、人間の想像する未来都市という訳か」
マミ「キュゥべえは違うの? って、あなた、確か宇宙人だったわね」
旧べえ「うん。人間のいう未来都市も、僕達からすると発展途上もいいとこだよ」
旧べえ「まぁ、文化の違いもあるだろうけど、もっと合理性を追求した」
旧べえ「例えば球体の浮遊建造物とかがあるね。球体は必要な素材の量や、観測などをする上で都合が良いんだ」
マミ「あんな感じのやつ?」
旧べえ「……驚いた。いくら妖精さんの力によって作られたとはいえ、まさか地球でアレを見られるとは」
マミ「うーん、確かに未来っぽいけど」
マミ「でもなんか、浮いてるわね。デザインが他と違い過ぎて」
旧べえ「確かに、そうかもね」
旧べえ(暁美ほむらの未来都市のイメージは、一体どうなっているんだ?)
マミ「それにしても、お腹がちょっと空いてきたわねぇ……走って、エネルギーを使っちゃったからかしら」
旧べえ「元々お昼に近い時間でもあったからね。何か食べたいな」
マミ「どこかに食べ物屋とかないかしら」クンクン
マミ「……匂い、全然感じないわね」
旧べえ「確かに。些か奇妙だね……」
マミ「うーん、何か甘い物食べたいのだけど……」
旧べえ(甘い物……クレープとか食べたいなぁ……あの香りとか食感、好きなんだよねぇ)
マミ「……? あら、急に匂いが……」
旧べえ「……本当だ。それもこの匂い……」
マミ「クレープ!」
マミ「あっちから匂いがするわ! きっとあのお店がクレープ屋ね!」
マミ「キュゥべえ、早速行きましょ!」
旧べえ「ふむ……この食欲をそそる香りに抗うのは、精神疾患を患った僕には難しいね。行こう」
マミ「ええっ!」テテテ
マミ「すみませーん」
店員「はい、いらっしゃい。何にします?」
マミ(……うん。予想通りクレープ屋だったわ)
マミ「えっと、このイチゴクレープを――――」
マミ(あ、そう言えば今、お金っていくら持ってたっけ? お財布に二千円は入っていたと思うけど)
マミ(……そもそも円が使えるのかしら。世界観の設定とかあの子意外と細かそうだし、もしかして――――)
マミ「……あ、あれ?(メニューの値段……)」
マミ(……『イチゴパフェ 150フォル』?)
旧べえ「! ……これは……」
マミ(え、ちょ、こんなの書いてあったかしら!? ど、どうしよう……)
マミ「あ、あのー……此処って、このお金は……」
店員「ん? なんだい、この紙は? 肖像画かい?」
マミ「えと、その」
マミ「あ! 私急用が……さ、さよならーっ!」
店員「? さよなら……?」
マミ「はぁ、はぁ……もう! まさかお金が使えないなんて!」
マミ「食べられると思ってお腹がクレープモードだったのにーっ!」
旧べえ「クレープモードって……いや、それより」
旧べえ「マミ、気付かなかったかい? さっき、お店のメニューが目の前で書き換わったのを」
マミ「!? お店のメニューが……書き換わった?」
マミ「そう言えば……見た時には値段が書いてなかったような……」
旧べえ「……正確には、値段は書いてあった、と思う」
旧べえ「しかし僕達がお金を支払う寸前、値段が未知の貨幣に書き換わったようなんだ」
旧べえ「まるで、僕達がクレープを食べるのを妨害するように、ね」
マミ「それって……」
旧べえ「恐らくは暁美ほむらからの干渉だ。この世界に手を加えられるのは、世界の創造者である彼女以外には居まい」
旧べえ「問題はその意図だけど……」
マミ「……意図に関してはハッキリしてるわ」
旧べえ「え?」
マミ「あの悪戯っ子、突発的なトラブルに遭遇して慌てふためく私達を見て楽しんでるのよ!」
旧べえ「……えー? そうかなぁ……?」
旧べえ「確かに彼女は悪戯好きだけど、なんと言うか、こういう趣味の悪い事は彼女らしくない気が……」
マミ「さっきキュゥべえ自身が言ってたじゃない! 自分は暁美さんの事をよく知らないって!」
マミ「でもあの子、私を散々酷い目に遭わせてきたのよ! 熱湯風呂とか落雷とかイン○ィージョーンズごっことか!」
旧べえ(何そのお笑い要素しか感じない酷い目の数々)
マミ「妖精さんパワーを手にしても中身が変わらないのなら、これぐらい規模の大きい悪戯をしても不思議じゃないわ!」
旧べえ「うーん……マミがそう言うなら信じるけど……」
マミ「そうに決まってる! ぷんぷんっ!」
旧べえ(マミってこんなに感情的だったかな?)
旧べえ(いや、これが『魔法少女』から解放されたマミの、自然体と言うべきか)
旧べえ(……うう。罪悪感で押し潰されそう……)
マミ「ああもう、自分が悪戯されてると分かったら、急にこの町もむかっ腹立ってきたわ!」
マミ「こんな町、ゲームみたいにゾンビでも溢れて滅びちゃえばいいのよ!」
旧べえ「なんだいその子供みたいな駄々の捏ね方は……」
旧べえ「それに、そんな事言ってイベント起きちゃったら一体どうするつもりなんだい?」
マミ「どうするって、そうねぇ……」ソウゾウチュウ
通行人「た、大変だーっ!ゾンビの大群が町に押し寄せてきたぞー!」
マミ「……イベント拾うの、早過ぎない?」
旧べえ「まぁ、今回は口に出していたし……仕事が早いのは”妖精さん”としてはそう可笑しな事ではないかな」
マミ「……とりあえず」
旧マミ「に、逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
その後僕達は、それはもう大冒険を繰り広げた。
ある時はゾンビに溢れた街を駆け回りながら警察署の地下に広がる研究施設を攻略し、
ある時は魔物で溢れる森の中を走り回りながら剣術に磨きをかけ、
ある時は魔法学院の生徒として学業に励み、
ある時は宇宙からの侵略者を生身で迎撃する事になった。
僕達は降りかかる様々なトラブルや妨害を切り抜けながら先に進み続けた。
熱く、激しく、そして理不尽な戦いを幾度となく繰り返した。
そして・・・
マミ「ついに、ついにダンジョンの最深部に来たわね……!」
勇者「長い戦いだった……」
タコ型宇宙人「しかしそれも此処で終わります」
空手家「この世界を滅ぼそうとする神を倒し、世界に平和を取り戻そうぜ!」
刑事「世界の破壊なんてテロ行為、やらせる訳にはいかねぇ。必ず逮捕してやるぜ」
マミ「ええ! 勿論よ!」
マミ「一体何時仲間になったのかも覚えてないモブ×4の助力もあるし、きっと倒せる!」
マミ「私達は神殺しとなって世界を救うのよ!」
旧べえ「色々投げやりだね、マミ」
マミ「投げやりにもなるわよ! 仲間の世界観はバラバラだし! 神殺しって何よ!? 中二はもう卒業したのよ!」
旧べえ「いやー、君は割と現在進行形で真っ盛りのような」
マミ「うーるーさーいーっ!」グリグリ
旧べえ「ちょ、靴の踵で踏まないで!? 痛い痛い痛い!」
マミ「兎に角、準備は万端! みんな、行くわよ!」
仲間「おーっ!」
旧べえ「いたた……とりあえず、これで終わると良いんだけど」
旧べえ(……正直、今の暁美ほむらの思考が全く読めない)
旧べえ(確かにここに来るまでに、何度も不条理なトラップやイベントに襲われた)
旧べえ(妖精さんの力を手にした彼女なら、途中からそれらを仕込む事は容易だろうけど……)
旧べえ(……暁美ほむららしいイベントやトラップもあれば、そうとは思えない物も多数あった)
旧べえ(マミも同様の感覚を覚えている。まぁ、二人とも違和感を覚えたイベント、というのはなかったけど)
旧べえ(共通しているのはどれも僕達が想定したタイミングで起きている事)
旧べえ(こちらを観測し、その都度手を加えているのが自然だ)
旧べえ(だが何のために? 何かやってほしいアクションがあるのなら、こんなまどろっこしい事をせずに直接イベントを作れば……)
旧べえ(……そう言えば、このダンジョンの攻略を始めて大体二時間は経っているんだよなぁ)
旧べえ(飽き性な彼女の事だ。ラスト直前になって「やっぱ飽きたからこの遊びは終わりでーす」とか言い出しそうな気もする)
マミ「扉を開けるわよ」キィッ
旧べえ(おっと、そろそろ気を引き締めるとしよう。どんなのが出てくるか、想像も出来ないし)
――――カッ!!
マミ「っ!? ま、眩し……」
旧べえ(な、なんだ!? 扉から光が――――)
ほむら「あ、おかえりなさーい」
旧マミ「……え?」
マミ「え……え?」
マミ「え、外? え?」
ゆま「ねこさん、おかえりー」
旧べえ「え、あ、た、ただいま……え?」
ほむら「お二人とも、随分長い事家に居ましたねぇ……二時間十八分ですか」
ほむら「その間暇でしたから、ゆまさんに私お手製の自立人形を渡しちゃいましたよー」
ほむら「ちなみに名前は『クララドールズ』。全部で十五体居ますよー」
ほむら「……何処で調整間違えたのか、性悪ばかりですけど。一人どっか行っちゃったし」
ゆま「そんな事ないよ? この子たち、あそんでくれるし」
ほむら「ゆまさんは良い子ですねー」アタマナデナデ
ゆま「えへへー///」
勇者「くっ! ここが神の世界なのか!」
タコ型宇宙人「何処かに神が居るのですね!」
空手家「探し出してやろうぜ!」
刑事「待て! まずは本部に応援を……」
ほむら「時に、あそこのむさ苦しい方々は誰ですか? なんか世界観に統一性がないのですけど」
ほむら「ご説明願いたいのですが」
マミ「ご説明も何もあなたのせいでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
旧べえ「何をすっ呆けてるんだ君はあああああああああああああああああああああああ!!」
ほむら「へ?」
マミ「中にドラゴンとか配置して!」
ほむら「は? ドラゴン?」
旧べえ「しかもダンジョンはあまりにも無秩序な作りだし!」
ほむら「だ、ダンジョン?」
マミ「町に辿り着いたらゾンビに襲われ、紆余曲折を経た挙句神を倒す事になっちやうし!」
旧べえ「しかももしかしたら打ち切りとかあるかもと思ったら本当に打ち切り!」
マミ「一体何を考えてるのよ!」
旧べえ「せめてちゃんとクリアさせてほしいものだよね!」
ほむら「……えと、あのー……」
ほむら「お二人とも、どんな想像をしながら家に入ったのですか?」
マミ「どんな想像も何も暁美さんと妖精さんがしでかしそうな事しか」
マミ「……ん?」
旧べえ「……『どんな想像をしながら』?」
ほむら「確かにこの家には仕掛けを施しましたけど」
ほむら「それは『部屋の中身が想像したとおりの物になる』というものでして」
旧べえ「……想像した、とおりの?」
ほむら「ええ。家の中がどうなっているのか、想像するとその通りに変化する仕組みです」
ほむら「ゆまさんに少しでも喜んでもらおうと、ちょっと小粋な仕掛けを施したのですけど」
マミ「……小粋な、仕掛け」
ほむら「まぁ、怖い想像をすればそれがそのまま具現化してしまう訳ですが、常時更新型にしたので常に上書き可能」
ほむら「楽しさが楽しさを呼ぶ、そんな素敵なお家にしたかったのです」
ほむら「時にゆまさんは、中がどうなっていると思っていたのですか?」
ゆま「えっと、おねえさんはようせいさんになったんだよね?」
ゆま「だからおとぎばなしみたいな、キラキラでふわふわした、楽しそうなかんじになってると思ったんだけど……」
ほむら「だ、そうです」
ほむら「それで? みなさん、どんな想像をしながら入ったのですか?」
旧べえ「え、えと、きっと家の中にはダンジョンが広がっているとか思って」
ほむら「なら、中にはダンジョンが広がっていたでしょうね」
マミ「何時ぞやみたいにドラゴンが配置されているんじゃないかと思ったり」
ほむら「なら、想像した通りのドラゴンと出会ったのでは?」
旧べえ「未来都市が広がっていると考えたら」
ほむら「未来都市が現れた」
マミ「こんな町なんてゾンビで滅びちゃえとやけになったから」
ほむら「ゾンビでいっぱいに」
旧べえ「そ、そしてもしかしたら打ち切られるかもと思って」
ほむら「こうして不条理イベントは打ち切られ、外に戻ってきた、と」
マミ「……えと、それって、つまり?」
ほむら「そりゃまぁ、根っこを辿れば私の普段の行いの所為なんでしょうけど」
ほむら「お二人の、自業自得?」
マミ「」チーン
旧べえ「」チーン
ゆま「あ、二人ともまっ白になっちゃった」
ほむら「やれやれ……」
ほむら「まぁ、お二人の事は置いといて、ゆまさん。こちらがあなたの新しいお家です」
ほむら「想像してみてください。あなたが望むがままに、世界は変えられます」
ゆま「わたしの、思うがまま……」
ほむら「さぁ、あの扉を開ければ――――」
ゆま「おねえさん」
ほむら「? はい、なんですか?」
ゆま「このお家、考えたとおりになっちゃうんだよね?」
ゆま「ゆまとねこさんで考えたことがちがったらどうなっちゃうの?」
ほむら「え? えーっと、多分最新の方に更新されつつ、色々混ざった感じになるかと……」
ゆま「どうなるかは分からないの?」
ほむら「分からないという訳では……ただあちらの方々の気分次第な面も多々ある訳で」
ゆま「分からないんだよね?」
ほむら「いや、その、断言出来ないだけ」
ゆま「分からないんだよね?」
ほむら「……は、はい。ちょっと、分からないです。はい」
ゆま「もぅ。どうなるか分からないものを、ひとにあげてもこまっちゃうよ?」
ほむら「い、やぁ……その、ゆまさん好みの作りになったら楽しいだろうなと思って……」
ゆま「おうちがころころ変わっちゃったら、住むのがたいへんだよね?」
ゆま「そういうこと、考えないで作ったの?」
ほむら「す、すみません……何時もノリで生きていて……」
ゆま「プレゼントはうれしいけど、そういうこと考えないと、もったいないよ」
ゆま「だから、ちゃんとしたおうちに作りなおして?」
ほむら「……は、はい」
ほむら(小学生に叱られてしまった……)ダウーン
こうしてゆまとキュゥべえの新居は、ごくごく普通の物が無事(?)完成したのでした。チャンチャン
妖精さんメモ
『妖精さんコンパス』 ※原作設定※
妖精さんを紐で結び、ぶらぶらとぶらさげればあら不思議。なんとコンパスとして機能します。
探し物も危険もガッチリサーチ。難点は探し物のついでに面白トラブルも呼び寄せる事ぐらいです。
大変便利なので、皆さんも妖精さんを見つけたら是非お使いください。
『妖精さんパソコン』 ※オリジナル※
エリーさんにプレゼントされた、全長500メートルの超巨大CPUです。
CPUと言いましたが、中に入っているのは基盤ではなく新聞紙とそろばん。なんでそんなものでヨタバイトって
とんでもないレベルのメモリを作り出せるのでしょうね?
また、多様な武装を装備しており、機体下部から出現する巨大砲台は町一つを遠赤外線で温め、
レーザー砲台は癌細胞を綺麗に撃ち抜き、プラズマ砲は電波をばら撒いて妖精さんを鬱にさせる……
なんとも恐ろしい兵器となっています。
ちなみに内部は電波でいっぱいらしく、妖精さんではメンテナンスが出来ないそうです。
じゃあ、誰が整備出来るんでしょうね? このオーバーテクノロジーの塊。
『リビドーマイク』 ※オリジナル※
歌ってみればあら不思議。聞いた人々動物物体現象、兎に角何でもかんでも感動させてしまうマイクです。
理論上はコンピューターやバクテリアすらも感動させ、行動に変化を起こすとかなんとか。
……私、こんな道具使った覚えがないのですけど、何故か書かなきゃいけない気がしまして。
まぁ、妖精さんと係わればこの程度の不思議は日常ですから、気にしませんけどね。
今日はここまで!
のんびり更新気味ですが、次回ものんびりおまちくだされ……
サヨナラッ!(爆発四散
乙
流石はゆまちゃん、悪ノリの化身を口先一つでだう~んさせてしまったww
乙乙
複数人が全然違うこと考えてたら分断されるだけですんだのかな?
この作品の泣き人形も性悪かwww
残りは、1f原作ほむらと、アイドルメガほむかな?
楽しみにして待ってます
どうも、人退の新刊が出るとの情報を掴みテンション上げ上げの>>1です。
やったね、早くとも来年になると思っていたのにね!
>>137
いたずらっ子にはわたわた慌てふためいたり感情的になるよりも、
真摯に叱った方が効果覿面です(子供扱い
>>139
考えた事がもろもろ実体化されてよりカオスになります
>>142
だってイバリちらすしネクラだしウソツキでレイケツな挙句ワガママでワルクチばかりで
ヤキモチ焼きのナマケ者、しかもミエっ張りなくせしてオクビョウだしヒガむしガンコな奴等ですから……
ノロマなのとマヌケなのは悪い子じゃないと思うけど
>>143
何故ばれたし。とはいえアイドルさんはあれで完結ですが。
続けても歌ってワルプルさんと仲良くなるだけだし……
それでは今回は1f原作ほむらさんのお話。
ストーリーなぞるだけだから展開が予想できるね!(白目
では始めます。
えぴそーど おまけ ご 【原ほむさんの、あたたかなせかい ぜんぺん】
第一話 【夢の中で会った、よね?】
簡単なあらすじ。
原作ほむらさんの元に妖精さんが一人迷い込んだようですよ?
―――― 見滝原病院 ――――
ほむら「……これは、どうすれば良いのかしら」
ほむら(まさかあのゴミが妖精さんだったなんて……水に浸けたら戻るって、とんでもない生命力ね)
ほむら(しかも、此処にこうして妖精さんが現れた以上)
ほむら(あの並行世界云々は夢ではなく、間違いなく本当の出来事と思うしかない)
ほむら(異次元を創造し、数多の世界とつなげるほどの超常的科学力を持つ存在が来てくれたのは、正直心強い)
ほむら(今度こそ本気で挑むと決めたけど、本当にそれだけで何もかも上手くいったら苦労はないもの)
ほむら(……………)
ほむら(ところでこの子、元の世界に戻れるのかしら? 仲間とか居ないようだけど)
ほむら(……………)
妖精さん「だうーん……」
ほむら「……それで、なんであなたはぐったりしているの?」
妖精さん「ここ、でんぱいっぱいです……」
ほむら「電波?」
妖精さん「でんぱあると、うつるんです……」
妖精さん「こいつらくうき、よまぬです……」
妖精さん「あしたはしごとあるので、はやくねるです……」
ほむら(何を言っているのかよく分からないけど、電波に弱い、という事なのかしら?)
ほむら「うーん……そういう魔法はあまり得意じゃないのだけど……」
ほむら「でも、なんとかしてあげましょう」
ほむら「ちょっとしたお礼に、ね」
……………
………
…
ほむら「……どう、かしら」
ほむら「魔法で電波を遮断出来る洋服を使ってみたのだけど、上手く出来たかしら?」
妖精さん「かいてきですなー」
妖精さん「すがすがしくて、ふえそうなかんじ?」
ほむら「増える?」
妖精さん「でもふえそうでも、ふえない?」
妖精さん「こっち、ぼくらのもとがおりません」
妖精さん「ふえたくてもふえらんなーい」
ほむら「???」
ほむら(どういう意味……増える……増殖?)
ほむら(……分裂でもするのかしら。あまり想像したくない光景ね)
ほむら(まぁ、それは良いとして……これからどうしたものかしら)
ほむら(確かに私は心機一転し、気持ちを切り替えた。だけど努力が必ず報われるなんて事はない)
ほむら(まどか達を救うのに必要なのは気持ちだけじゃない。確かなプランが必要)
ほむら(とは言え、私とまどか達を取り巻く情勢は厳しいの一言に尽きる)
ほむら(魔法少女の真実、得られるグリーフシードの量、まどかの性格、さやかの状況、巴マミの志、佐倉杏子の立場……)
ほむら(全てが、皆にとって不利な状況にある。或いは、インキュベーターの干渉がいくらかあったのか)
ほむら(せめて、どれか一つでも解決出来れば良いのに……)
ほむら(……いや、待って)
ほむら(そうよ……一つ、それも一番重要で致命的なところが、解決出来るかも知れない!)
ほむら「――――妖精さん」
妖精さん「およびー?」
ほむら「確かあの空間に居た時、その……並行世界の私が言っていたけど」
ほむら「あなた達の技術なら、魔女を人間に戻す事も可能なのよね?」
ほむら「だったら魔法少女を人間に戻す、もしくは魔法少女を魔女にしない事は出来ないかしら」
妖精さん「まじょ?」
ほむら「ええ、魔女」
妖精さん「……はて?」
ほむら「……魔女を知らないのかしら?」
妖精さん「しってるよーな、しらないよーな?」
ほむら(……あ、これアレだわ。記憶力が足りない感じ)
ほむら「……魔女についてはまた今度説明するわ」
ほむら「だったら私の、ソウルジェムについては分かる?」
妖精さん「ほー。にんげんさん、きれいなおたましー」
ほむら「! 魂だって分かるのね?」
ほむら「だったらこれを元の、本来の形に戻す事は可能かしら?」
妖精さん「……わけないはなしですが?」
ほむら「……本当に訳ないなら、なんで目を逸らすのかしら」
妖精さん「ぼくひとりでもなんとかなりますです」
妖精さん「ただ、ひとでたりなし。こちらのできごと、おはつですゆえこねもなし」
妖精さん「めいしこうかんとほんやくからはじめますので……」
ほむら「? できごと? ……まぁ、良いわ。それで?」
妖精さん「……ふたつきぐらいあれば」
ほむら「二月……」
ほむら(……全てが終わった後、か)
ほむら(いえ、未来に希望が持てるようになったと、前向きに考えましょう)
ほむら(ソウルジェムの秘密を知っても、人間に戻れるとなれば希望をつなげる。魔女化を延長出来れば、それで十分)
ほむら「ありがとう、それで大丈夫よ。お願いできる?」
妖精さん「おまかせあれー」
ほむら(良し……最悪の問題に、一応は対策が立てられた。これは大きな収穫)
ほむら「後はみんなに私の話を聞いてもらうだけ」
ほむら「そしてみんなで、あの過酷な未来を変えてみせる……!」
妖精さん「それもにんげんさんのねがいで?」
ほむら「え? ええ。そうね」
妖精さん「それならこちらをおたべくだされー」ヒョイ
ほむら(……何処からともなく、飴玉を取り出したわね)
妖精さん「それたべますと、にんげんさん、おはなしきいてくれやすくなります」
妖精さん「……ここだと、ききやすくなるだけでげんかいでした」
ほむら(……聞きやすくなる、ね。おまじないみたいなものかしら)
ほむら「……じゃあ、遠慮なく……ぱく」
ほむら「……味がないのだけど」
妖精さん「あじ、いります?」
ほむら「……………飴には、必要だと思うわ」
妖精さん「はー、わかりますです」
妖精さん「つぎのにこぽあめには、あじつけときます」
ほむら「にこぽあめ? 変な名前の飴ね……」
妖精さん「それではー」
ほむら「それでは?」
妖精さん「さっそくにんげんさんのおはなし、きいてもらいます」
妖精さん「にんげんさん、そこのほうでおつながりゆえ」
妖精さん「そこからいちばんなかよしにんげんさん、つれてきますです」
妖精さん「いんがー、しっちゃかめっちゃかですゆえ、ひっぱるのはかんたんですな」
ほむら「???」
妖精さん「いーとーまきまきいーとーまきまき」
ほむら(……可愛く歌って)
妖精さん「こね、くとっ!」ビシッ
ほむら(やたら可愛いポーズ取っちゃって、この子本当に可愛)
――――ズギンッ!!
ほむら「ぐぁっ!?」
ほむら「あ、頭が……割れ……!?」
ほむら「い、しきが……落ち……」
……………
………
…
ほむら「ん、んん……ふわぁぁ……」
ほむら「……え、ちょ……私、寝ちゃってた……?」
ほむら「た、大変! 今日はエイミーを助けないと、まどかが契約してしまうのに!」
ほむら「急いで公園に行かないと――――」
――――ふにっ
ほむら(……何か軟らかいものが……)
まどか「すぅ、すぅ……」
ほむら(あ、まどかだったのね。なら軟らかいのも納得)
ほむら(それにまどかが此処に居るのなら、別に慌てなくても――――)
ほむら「……………」
ほむら「ま、まどかあああああああああああああああああああああああああああ!?」
ほむら「な、なななななん、なんでまど、まどかが此処に!?」
ほむら(いや、それより・・・…此処、何処!?)
ほむら(病室じゃない! 全体的に真っ黒で、何かがひしめいているような――――)
妖精さん「にんげんさん、おめざめー?」
ほむら「よ、妖精さん!? これは……」
ほむら(まさか、彼がこの世界を創り上げた!?)
ほむら(あり得ない話じゃない……”別世界”の私も、あの異空間を作ったのは妖精さんだと言っていた)
ほむら(だけど単体で、しかもこれほど大規模な所業を短時間で……!?)
妖精さん「ここ、にんげんさんのいちばんふかいとこー」
ほむら「え? ふ、深い?」
妖精さん「にんげんさん、そこのほうでおつながりー」
妖精さん「しゅーごーてきむいしきというやつです」
妖精さん「うえのほうから、にんげんさんのおこころおつれしました」
ほむら「???」
ほむら(集合的無意識? で良いのかしら……底の方で繋がっている?)
ほむら(この子達、語彙が豊富というか、子供っぽい話し方をしながら難しい話をしてくるというか……)
ほむら(えーと、話を統合すると……ここは集合的無意識って場所なのかしら。それで心を連れてきた)
ほむら(……心……無意識……そこから連想するのは……)
ほむら「夢、かしら?」
妖精さん「え?」
ほむら「はぁ……なんだ夢なのね」
ほむら「いや、寝ている事には変わりない訳だけど、でもどうにもならないしー」
ほむら「それにループしたばかりだから精神的にもお疲れなのよねぇ」ダラー
妖精さん「こころのおくふかくなので、よくぼーにしょーじきですな?」
まどか「う、うーん……」
ほむら「あら、まどかが起きたわ……と言っても私の夢なのだから、どーせ空想なんだけど」
まどか「……あ、あれ? ここ何処? 私、なんでこんなとこに……」
ほむら「あー、まどかだわー、久々に何も知らない時のまどかだわー」
まどか「え? あ、あの、あなたは一体……というか、なんで私の名前を知って……」
ほむら「だってこれ(私の)夢だし」
まどか「へ? あ、ああ、なんだ、夢なんだ」
まどか「えっと、あなたの名前はなんていうのかな? あ、私は」
ほむら「鹿目まどか、でしょ。聞かれたから答えるけど、私は暁美ほむらよ」
まどか「暁美さん?」
ほむら「ほむらって呼んで」
まどか「え、あ、うん。ほむらちゃん……夢なのに色々細かいなぁ」
まどか「って、それより今日はエイミーに会いに行くつもりだったのに、なんで寝ちゃったんだろ?」
まどか「それに、どうすれば起きられるのかなぁ。ほむらちゃん、分かる?」
ほむら「そんなの私が知る訳ないでしょ」
まどか「そっかぁ。うーん……」
ほむら「……………」
ほむら(……まどか。私の大切な、大切な親友)
ほむら(私が弱かったから、最後まで本当の奇跡を信じられなかったから、たくさん辛い目に遭わせてしまった)
ほむら(だけど私はもう迷わない)
ほむら(今度こそ、あなたを……)
まどか「? ほむら、ちゃん?」
ほむら「……まどか」
まどか「え?(ほむらちゃんが、私の頬に手を伸ばして……)」
ほむら「今度こそ……あなたを、守ってみせるわね」ニコッ
まどか「!?!?!?!?!!?!!」ズキューンッ
ほむら「? どうしたの、まど……」
――――アケミサーン
ほむら「ん? 声が……」
妖精さん「あー……そろそろおきるじかんです?」
ほむら「そう……まだまだ足りないけど、仕方ないわね」
まどか「……あ、あの……」
ほむら「?」
まどか「あの、もしまた会えたら……」
まどか「今度は、ほむらちゃんじゃなくて――――」
ブツッ
ほむら「――――――――」ガバッ
看護師「! ……暁美さん、目が覚めた?」
看護師「手術、無事に終わったわよ」
ほむら「……………」
看護師「……暁美さん?」
ほむら(……どうせ夢なら、もう少し色々と堪能したかったわ……)ションボリ
こうして、本来エイミーの救出に向かわねばならない一日目は終わってしまった。
幸いなのか、バタフライ効果が云々かんぬんで影響したのか、エイミーは無事。まどかが魔法少女になる事はなかった。
そして――――
―――― 見滝原中学二年生教室 ――――
ほむら(特に大きな変化はなく、転校初日を迎えた)
ほむら(妖精さんは私の盾の中で、魔法少女を人間に戻すための研究中)
ほむら(仮に私の努力が実り、マミやさやか達と協力関係が築け、ワルプルギスの夜を撃破出来たとしても)
ほむら(魔女化の問題が残っていては、真のハッピーエンドは手に入らない)
ほむら(全ては、妖精さんの研究に掛かっている――――)
ほむら(……研究、よね? なんか折り紙とか鋏とかデンプン糊が材料みたいなんだけど)
ほむら(ま、まぁ、どんな高度な発明も、最初は簡単な材料からスタートするわよね。うん)
和子「暁美さん、教室に入って!」
ほむら(と、考え事はここまでね)
――――カラカラ
和子「彼女が転校生の暁美さん。暁美さんは心臓の病気で――――」
ほむら(さて、まどかの姿を確認しましょう)
ほむら(……居たわ。さやかも近くの席にいる。二人とも魔法少女にはなっていないようね)
ほむら(下準備はここまで。ここからが、本番)
ほむら(今度こそ、まどかを、みんなを幸せに……)
まどか「……………!」ワタワタ
ほむら(……? 何かしら、まどかの様子が変ね?)
ほむら(慌てている? と言うより、戸惑っている?)
ほむら(今までのループでは、あのような挙動不審なまどかは見た事がない)
ほむら(何かイレギュラーが生じている? 一体……)
和子「さ、暁美さん。自己紹介いってみよ!」
ほむら「――――あ、はい」
ほむら「えっと、暁美ほむらです。よろしく――――
……………
………
…
クラスメートA「暁美さんって、前は何処の学校だったの?」
クラスメートB「前は部活何やってた?」
クラスメートC「すっごい綺麗な髪だよねー」
ほむら(……そろそろまどかに接触するとしましょう)
ほむら(今回、まどかには魔法少女についてちゃんと教える)
ほむら(魔法少女から遠ざける方法は、労力の大部分をまどかに割かねばならない)
ほむら(”全員”を助けると決めた以上、申し訳ないけど……まどかだけに振り分ける事は出来ない)
ほむら(いえ、そもそも私だけの力ではハッピーエンドには辿り着けない)
ほむら(まどかなら、マミやさやかとの関係を良くするのに最適の協力者に――――)
ほむら(言い訳、かしらね。心の底では、まどかを一番に考えてしまう事への)
クラスメートB「……暁美さん?」
ほむら「……ごめんなさい。少し気分が悪くなってしまって。保健委
まどか「はいはいはいはいはいはいはいはいはいっ!」シュタッ!
ほむら「!?」ビクッ
まどか「ほむらちゃん、保健委員呼んでいたよね!? ねっ!?」
ほむら「え、ええ(よく聞こえたわね、今の声)……気分が悪」
まどか「じゃあ連れて行かないと!」
ほむら「え? え?」
まどか「みんな! 行ってくるね!」ダーッ
ほむら「えええええええええええ?」
ほむら(まどかに手を引かれて無理やり教室の外に連れ出されてしまった……)
ほむら(いえ、それは問題ないというか、連れ出すつもりだった訳だし、まどかに手を引かれると昔を思い出して嬉しいし)
ほむら(でも……)
まどか「……!///」ソワソワ
ほむら(何故赤面しながら、こう、そわそわしているのかしら? 目が合うとすぐ逸らしちゃうし)
ほむら「……鹿目まどか、あの」
まどか「あふぅっ!」クラッ
ほむら「!? だ、大丈夫!?」
まどか「だ、大丈夫……ほむらちゃんに名前を呼ばれて、ちょっとノックアウトしただけだから……」
ほむら「そ、そう(意味が分からない……)」
まどか「あ、あのね、ほむらちゃん……」
ほむら「? 何?」
まどか「いきなりこんな事言って、頭の可笑しな子だと思うかもだけど……」
ほむら「言ってみなさい。あなたの話なら、聞いてあげるから」
まどか「……えっと、あのね――――」
まどか「私達、一週間ぐらい前に……夢の中で会った、よね?」
ほむら「……………」
ほむら「……………」
ほむら「……………ハイぃ?」<杉下○京さん風
まどか「あのね、一週間前……その、夢、を見てね……」
まどか「あの時、ほむらちゃんに会ったの……本当だよ?」
ほむら(……会ったって、でも、あれ夢で……)
ほむら(確かに妖精さん、夢とは一言も言ってなかったような……)
ほむら(……心を底の方に連れてきたとかなんとか言ってたような……)
ほむら(え? じゃあ何? あれは夢じゃなくて、実は人間というのは心の奥底で何かを共有していて)
ほむら(その共有している何かを介して、まどかの意識と出会っていたと?)
ほむら(……なにそれ妖精さんすごい)
ほむら(い、いえ、落ち着くのよ暁美ほむら。これは、その、凄いけど大した話じゃない。対面しただけの事)
ほむら(むしろ転校前にまどかと接触を持てた。これは色々と好都合だわ)
ほむら「……ええ、会ったわ。ちょっとした裏ワザを使ってね」
まどか「! ほ、本当に!?」
ほむら「ええ、本当に」
ほむら「それで、そうまでしてあなたに会ったのには理由があるの」
ほむら「今日、私の家に来てくれない? そこで全てを話すわ」
まどか「……うん、良いよ」
まどか「あ、でも……」
ほむら「? でも?」
まどか「話を聞く代わりと言ったら難だけど、一つだけ、お願いしてもいい?」
ほむら「ええ。あなたのお願いなら、多少の無茶は聞いてあげるわ」
まどか「えっとね、その、変な事言っちゃうから驚かないでほしいんだけど」
まどか「私の――――」
ほむら「私の?」
まどか「お姉さまになってくださいっ!」
ほむら「……………ハイぃ?」
まどか「あの夢でほむらちゃんに会ってから、ほむらちゃんの事を思うだけで心と身体が熱くなって……!」
ほむら「え、ちょっと……」
まどか「あれは夢だからって、現実じゃないんだって思って諦めようとしたけど」
ほむら「あの、まどか?」
まどか「でも本当のほむらちゃんに会ったら、本当に居たんだって分かったら!」
ほむら「ちょっと落ち着」
まどか「これが恋だって気付いちゃったから!」
ほむら「ぶっ!? な、何言っ」
まどか「だから私のお姉さまになってくださいーっ!」ダキッ
ほむら「ええええええええええええええええっ!?」
ほむら「なにこれ!? なんで!? ほわーいっ!?」
まどか「お姉さまーっ!!」
ほむら「私はまだ了承してないんだけどおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
こうして始まった、今回のループ。最後のつもりで挑む、いや、最後にするために挑む周回。
今までと違う流れが希望へと繋がるか、それとも何時も通り絶望なのか。
或いは別の意味で絶望する羽目になるのかは、今の私にはまだ分からない……
第一話・完
第二話 【それはとっても妬ましいなって】
―――― とある路地裏 ――――
ほむら「……魔法少女はいずれ魔女となる。この戦いは、最初からキュゥべえの掌での出来事に過ぎない」
ほむら「アイツは奇跡を売り歩き、その利益を貪り食う……そういう悪魔なの」
ほむら「分かってもらえたかしら?」
まどか「はいっ! お姉さまからのお願いです! 例えこの命を失おうとも契約はしません!」
ほむら「えっと、死なれるぐらいなら別に……契約しても妖精さんが戻してくれそうだし……」
ほむら「だからその、本当に危ないと思ったら契約しても良いのよ? 死ぬよりマシだから、うん、多分」
ほむら「あとお姉さまは止めて……抱き着いたりはしてもいいけど、お姉さま呼びは……」
まどか「うんっ! 死なない範囲で絶対に契約しないよ、ほむらちゃん!」ギューッ
ほむら「そ、そう。ありがとう」
ほむら(わー、全く嬉しさを感じないわー。私が何度もループしている事を含めて全部信じてもらえたのにー)
ほむら「……と、とりあえずまどかの説得は完了、っと」
ほむら「次は巴マミか、それとも美樹さやかのどちらを……」
まどか「む……私以外の女の子にも手を出すつもりなの? ハーレム作っちゃうの?」
ほむら「あなた、話聞いてなかったの? というか私をなんだと思ってるのよ」
ほむら「さっき説明したでしょ。手を打たなければ、必ず全員が”死ぬ”事になる」
ほむら「あなたの幼馴染である美樹さやかも今日がある意味分岐点で」
ほむら「――――あ」
まどか「?」
あ、直し忘れてる……場所はとある路地裏ではなく、ほむホームです。
脳内修正お願いします……
――――翌日・見滝原中学校
ほむら(うっかり、というかまどかに気圧されてすっかり忘れていた! 昨日マミとさやかが接触する事を!)
ほむら(インキュベーターが狙っているのはまどかだけじゃない。
さやかもまた資質がある以上、インキュベーターのターゲットなのは変わらないのに!)
ほむら(正義感が強く、思い込みの激しい彼女が魔法少女になったら……)
ほむら(……悪い事探しは止めましょう)
ほむら(幸い、マミの今までの行動パターンから、いきなり契約を勧める事はない筈)
ほむら(まずは魔法少女体験ツアーを始め、魔法少女がどのようなものか教えながらさやかの意思を確かめようとする)
ほむら(尤も、仲間を欲している彼女は無意識に魔法少女になるよう誘導するでしょうけど……)
ほむら(ともあれイレギュラーが発生していなければ、今日が魔法少女ツアーの開催日になる筈)
ほむら(さやかが魔法少女に対し固定観念を抱く前に、真実を伝えれば……)
まどか「ほむらちゃんっ!」
ほむら「……おかえり。どうだった?」
まどか「うん。言われたとおりさやかちゃんを喫茶店に誘ってみたけど、今日は用事があるから行けないって」
ほむら「そう。予想通り、マミと接触してしまったと考えるべきね」
ほむら「でもこれは想定内。次の一手としては昼休みに接触を持つのがベストかしら」
ほむら「しかし、いきなり魔法少女の悪い面を伝えても果たしてさやかが契約を躊躇うか……」
まどか「……羨ましい」
ほむら「え?」
まどか「あ、ごめん。羨ましいじゃないや――――妬ましい」
ほむら「より怖い方に訂正されても……」
まどか「だってそうでしょ!? ほむらちゃん、そんなにさやかちゃんの事心配して! 私の時はそうでもなかったのに!」
ほむら「いや、だってあなたキュゥべえに会う前にどうにか出来たし、話、鵜呑みもいいとこだったし」
まどか「そういう理屈はどうでもいいの! 恋する乙女は感情一直線なの!」
まどか「さやかちゃんがほむらちゃんの関心を引いたら、それはとっても妬ましいなって、思っちゃうの!」
まどか「ほむらちゃんには私だけのお姉さまでいてほしいのぉーっ!」
ほむら「ま、まどか!? 声、声大きいから!?」
\キャーキャー/
さやか(何やってんだアイツ等……)←怪訝な眼差し
……………
………
…
ほむら「結局昼休みはまどかを宥めるのに潰され、そのまま放課後になってしまったわ……しかもさやかを見失うし」
まどか「ごめんなさい……」
ほむら「いえ、まどかが悪い訳では……元を辿ると自分の所為だと何故か思わなくもないから」
ほむら「とりあえずマミの魔力を追ったところ薔薇の魔女の結界を発見。まず間違いなく、彼女達は此処に入った」
ほむら「この結界の魔女はマミなら余裕で勝てる相手だけど……でも、戦いでは何が起きるか分からない」
ほむら「油断した結果思わぬピンチを招く事もあり得る」
ほむら「そうなればマミの身が危ないだけでなく、キュゥべえに唆され、さやかが契約してしまうかも知れない」
ほむら「一応二ヶ月後にどうにか出来るかもだけど、あくまでかも知れないだし」
ほむら「その前に魔女化し、誰かに倒されてはもうどうにもならない。かと言って放置すれば一般人の犠牲者も出てしまう」
ほむら「なんとしても、そうなる事だけは避けないと」
ほむら「私はこれから結界に入り、二人の行動を監視するわ。まどかは此処で待っていて」<変身
まどか「うんっ!」
ほむら「――――それじゃ、行くわね」
――――ぐにゃああぁ……
ほむら「……無事、結界に侵入出来たわ」
ほむら「使い魔の気配は殆どない。マミが排除していったみたいね」
ほむら「早くマミ達を追い駆けないと。のんびりしていて間に合わなかった、となっては後悔してもしきれないもの」
まどか「頑張って、ほむらちゃん!」
ほむら「ええ、頑張るわ」
ほむら「……………」
ほむら「ねぇ、なんであなたが此処に居るのかしら?」
まどか「待てと言われたけど身体が勝手に動いて後を追っちゃった」
まどか「ごめんね?」
ほむら「ごめんねじゃないでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ほむら「ああもう! 一人でサクサク行こうと思っていたのに……!」
妖精さん「おやくだちー」ポーン
ほむら「きゃ!?」
まどか「わっ!? ほ、ほむらちゃんの盾から、小人さんが……!?」
ほむら「えっと、よ、妖精さん、どうしたの?」
まどか「あ、妖精さん、なんだ……」
妖精さん「にんげんさん、このさきおいそぎです?」
ほむら「え、ええ……急いで行きたいわ」
妖精さん「でしたらふたとーりのほうほうがありますが?」
まどか「二通り?」
妖精さん「ひとつはー、しょーしょーおじかんかけますが、あんぜんです」
妖精さん「ふたつはー、たいへんおもしろいですが、しょーしょーきけんです」
妖精さん「どーします?」
ほむら「……何故時間を掛けるのと面白いのを比べるのかは分からないけど」
ほむら「早い方でお願いするわ。少々の危険なら魔法でなんとか出来るし」
妖精さん「りょーかいしましたー」
妖精さん「それではおまちをー」テテテ
まどか「あ、妖精さん、何処かに行っちゃった……」
ほむら「あ……どうしよう……あまりのんびりしていられないけど、待っていた方が良いのかしら……」オロオロ
まどか(おろおろしているほむらちゃん、可愛い)
まどか「えっと、今の子は?」
ほむら「え? あ、えっと、あの子は……妖精さん、らしいわ」
ほむら「直近のループで、その、色々あって、私と一緒に時間遡行してしまったの」
ほむら「だけど彼等は高度な科学力を持っていて、今はその力を借りて……」
ほむら「……そう言えば、ちゃんと頼んだ訳じゃないのに力を貸してくれてるのよね」
ほむら「後でお礼と、正式にお願いしないと」
妖精さん「おまたせですー」
ほむら「!?(早い!)」
妖精さん「まだざいりょーかくほしただけですので、あとしばらくおまちくだされ」
ほむら「材料って……結界に落ちていた茨とか、鋏とか……」
まどか「枯れ木に、枯れ葉に……」
妖精さん「にんげんさんがくれた、のりですー」
まどか「……高度な、科学力?」
ほむら「ちゅ、中間素材ってやつよ、多分、きっと」
妖精さん「ではではー」シュババッ
まどか「!? す、すごい速さで妖精さんが動いて……」
ほむら「なんてスピード……魔法少女である私ですら捉えきれない……!」
ほむら「捉えきれない……ほどのスピードで……」
妖精さん「かんせいですー」
ほむら「……ジャンプ台? あの、バネが付いている……」
まどか「スーパーマ○オとかで出てくる感じの見た目のやつだね……材料が植物だけど」
妖精さん「じゃんぴんふらっしゅです」
妖精さん「とてもおもしろくおくりだせますが、ちゃくちになんありです?」
ほむら「えっと、これを使えば巴マミ達のところまで行けると言うの?」
妖精さん「そうおもうこころがだいじ?」
ほむら「気持ちの問題!?」
まどか「ほむらちゃん……どうする?」
ほむら「……………」
ほむら(さっきはああ言ったけど、急いで追い駆ける必要はない。契約する確率は低いし)
ほむら(でも……確かめておく必要があるわね)
ほむら(異空間すらも容易に作り出す科学力)
ほむら(それを、たった一人でどの程度発揮出来るかを……)
ほむら「……分かったわ。使わせてもらいましょう」
ほむら「でも、行くのは私だけ。向こうでどのような危険があるか分からないもの」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「心配しないで。あなたには護身用としてこの短銃をあげる」
ほむら「っ!? ほ、本物!?」
ほむら「ええ。でも魔力で反動が生じないようにしたから、玩具感覚で使えるわ」
ほむら「マミが使い魔を一掃しているから心配ないと思うけど、万一襲われたらこれで撃退して」
ほむら「それでも駄目そうなら、このジャンプ台で私の下にきて」
まどか「……分かった」
ほむら「妖精さん、まどかの事を頼んだわ」
妖精さん「まかされますが?」
ほむら「それじゃ、改めて……行ってくるわね」
ほむら(とは言ったものの……このジャンプ台、どう使えばいいのかしら)
ほむら(とりあえず普通に乗って……うーん、マミの姿でも思い浮かべれば……)
――――グンッ
ほむら「え?(なんかジャンプ台が沈み込んで――――)」
――――バンッ!!
ほむら「勝手に射出うううぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ キラッ☆
まどか「も、物凄い勢いで飛んでいっちゃった!?」
妖精さん「もくてきちまでいっちょくせーん」
妖精さん「おんそくとっぱでおっとどけー!」
まどか「一直線に飛んでいくの!? というか今音速越えって言った!?」
まどか「え、しかもアレ、確か着地に難ありって……」
まどか「……………まさか……」
―――― 薔薇の魔女さんのお部屋 ――――
ゲルト【ゲジュルブゥアゥゥウ!!】
マミ「はっ! ほっ! たぁっ!」
さやか「す、すげー! マミさん、攻撃を潜り抜けながら軽やかに戦ってる!」
QB「魔法少女なら、あれぐらいの動きは大した魔力も必要とせずに行える」
QB「君も僕と契約すれば、力を手に入れられるよ」
さやか「……あたしもマミさんみたいに戦える……」
QB(ふむ。美樹さやかは魔法少女に好印象を抱いたようだ。願い事が生まれれば、容易に契約してくれるだろう)
QB(幸い彼女は近しい人物が怪我で入院している。あの怪我は、現代の人類の科学力では治療不可能なものだ)
QB(契約の時期はそう遠くないだろう)
QB(そろそろ勧誘対象をまどかに戻そう。彼女の資質、そこから得られるエネルギーは是非とも欲しい)
マミ「さぁ、そろそろ止めよ!」
マミ「ティロ――――」
――――ぃぃぃぃぃぃぃいいいいやああああああああああああああああああああああ
マミ「? 何、この声……?」
さやか「あれ? なんかこの声、聞き覚えが……」
QB「なんだ? これは一体――――」
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ドンッ!!
マミ「ぶっ!?(せ、背中に何か当たって……黒髪の、女の子……?)」
マミ(というかこれ、なんか砲弾みたいな勢いで突っ込んできたから)
マミ「私も一緒にどんがらがっしゃあああああああああああああああああああああああああああ!?」
ほむら「あびらごんがらがっしゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ゲルト【ピグルブヴェガッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?】
ちゅどーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!
さやか「!? ま、マミさんに誰かぶつかって、魔女の方に突っ込んでいった!?」
QB「凄まじい運動エネルギーだ……これではまるで小惑星の衝突だ」
QB「激突してきた何者かは勿論、巻き込まれたマミや魔女も無事ではないだろう」
さやか「そんな!?」
マミ「う、うーん……」
さやQ「あれ?」
さやか「……マミさん、無事みたいだけど」
QB「可笑しいなぁ……計算上そんな事はあり得ないのだけど……」
ほむら「ほむぅ……」
さやか「……マミさんにぶつかってきた子も、無事みたいだけど」
QB「なんで?」
ゲルト【】シュウウウ
さやか「あ、魔女だけ消えていく」
QB「衝撃で内部のグリーフシードが壊れたのかな……なんというご都合主義」
――――シュオオオ……
さやか「……結界も消えちゃった」
QB「ぇー……」
マミ「う、うう……一体何が……?」
ほむら「いたた……確かに着地に難ありね、これ……」
ほむら「あれ? 魔女は? ん?」
マミ「……あなた、魔法少女?」
ほむら「え? ……あ、はい……ん?」
マミ「もしかしてあなた、私を攻撃してきたのかしら」
ほむら「え?」
マミ「体当たり、してきたわよね?」
ほむら「……えーっと」
ほむら(あ、これヤバいわ。マミの目が明らかに敵意と猜疑心に溢れている)
ほむら(そりゃそうよね。後ろからいきなり体当たりを仕掛けてきた奴は誰だって敵だと思う。私だってそう思う)
ほむら(……な、なんとか誤解を解かないと……)
ほむら「えっと、これは違うの。攻撃じゃなくて」
ほむら「話せば長くなるし、色々複雑な過程を経ての事だから、何処か落ち着ける場所で話を……」
――――キラッ☆
ほむら(ん?)
ほむら(何かがこっち飛んできて――――)
まどか「ほむらちゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ
ほむら「っ!?」ビクッ サッ
まどか「ちょ!? 避け――――」
ちゅどーんっ\マドーッ/\マミーッ/
さやか「……………」
QB「……………」
ほむら「……………」
まどか「うう……いたた……はっ!」
まどか「もう! 避けるなんて酷いよっ!」
ほむら「……酷いのはこの際どうでも良いとして、なんであなたが此処に来ているのかしら?」
ほむら「私がジャンプ台を使ってから、一分も経ってないと思うのだけど」
まどか「え、あ。えーっと……とても一言では言い表せないのだけど」
まどか「……我慢出来なくてあのジャンプ台使っちゃった♪」
ほむら「我慢しなさいよ!? たった五分も待てないの!?」
まどか「だってだってーっ!」ギュム
まどか「……ぎゅむ? 何か踏んだ?」
マミ「」チーン
ほむら「……マミ……」
まどか「……私がぶつかって、気絶しちゃったのかな?」
ほむら「……………あなた、これどうするつもり?」
まどか「え?」
ほむら「私、今マミに攻撃してきたと誤解されて、それを解こうとしていたのよ?」
ほむら「なのにその最中に背後から一撃とかもうあれじゃない。弁明出来ないわよね?」
ほむら「転校二日目でもう詰みルートに入りかけなんですけどおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ほむら「どうすんの!? ねぇどうすんの?! 巴マミとどうすれば仲直り出来るのよこれ!?」
まどか「ま、待って! 私に策があるから!」
ほむら「っ……策?」
まどか「うん! それはね……」
――――ぎゅっ!
ほむら(! まどかが私の手を掴んで……)
まどか「逃げるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ほむら「逃げるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!」
ぴゅーっ
さやか「……逃げた」
QB「うん、確かにあれは逃げたね」
さやか「……ところでさっきのあれ、まどかと転校生だよね?」
QB「うん、確かにあれは鹿目まどかと、君達のクラスに転校してきた暁美ほむらだね」
さやか「……あの二人、何しにきたの?」
QB「そんなの僕に分かる訳ないじゃないか」
さやか「ですよねー」
第二話・完
第三話 【もう何も怖くないとか】
ほむら(どうも、暁美ほむらです)
ほむら(この周回で見滝原中学に転校し、早数日)
ほむら(巴マミと絶望的な敵対関係になりました☆)
ほむら(……不味い、不味いわこれ)
ほむら(何が不味いって巴マミが私の話を聞いてくれない。てんで聞いてくれない)
ほむら(今日だって公園で偶然見付けたので話し掛けたら、魔法少女モードで銃突き付けられちゃったし)
ほむら(あまりにもモロな敵対行動に驚いて、つい、ほむって叫んじゃったわ。はーずかしー)
ほむら(まぁ、敵対されても仕方ないわよね。この前話し合いを提案しながら後ろから奇襲攻撃だものね)
ほむら(また奇襲されないか疑いたくもなるわよね。信頼なんて出来ないわよね)
ほむら「……どうすればいいのかしら……」
まどか「ごめんなさい……私の所為で……」
ほむら「いえ、まどかの所為ではないわ。あなたは私を心配してくれただけなのだから」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「ところであなた、此処が何処だか分かってる?」
まどか「何処って、そんなの勿論! ほむらちゃんのお家だよ!」
ほむら「そうね、私の家よね」
ほむら「ところで、今は何時かしら?」
まどか「えーと、夜の十一時過ぎ、だね。そろそろ寝ないとね」
ほむら「寝る前にお家に帰りなさい」
まどか「えー……」
ほむら「えー、じゃないでしょ。あなた、門限はどうしたの? お家の方が心配するわ」
まどか「大丈夫! 今日は泊まるってママとパパには言ってあるから!」
ほむら「私が駄目だって言ったらどうするつもりだったのよ」
まどか「ほむらちゃんならOKしてくれるって計算の下での行動だよ」
ほむら「Oh……」
まどか「だけどどうしよう。巴先輩、このままだと次の魔女で負けちゃうんだよね?」<さりげなく密着
ほむら「……………」<特に抵抗せず
ほむら「次の魔女……お菓子の魔女と巴マミの相性はかなり悪い」
ほむら「油断していなければまだ勝機があるけど、美樹さやかという仲間を掴みかけているマミは」
ほむら「まず間違いなく浮かれている。そんな状態で戦えば、ほぼ確実に死ぬわね」
まどか「なんとかしないとね……」
ほむら「ええ……なんとか……」
妖精さん「おなやみー?」
ほむら「あ、妖精さん」
妖精さん「にんげんさん、おなやみですか?」
ほむら「……まぁ、悩んでいると言えば、悩んでいるわね」
妖精さん「ぼく、おてつだえることあります?」
ほむら「……………」
ほむら(先日作ってもらったあのジャンプ台は、確かに高度な……無駄に高度な技術力が使われていたように思える)
ほむら(あの時はあくまでマミの下へと行けるよう頼んだから、あんな道具が出来た。或いは開発期間の問題)
ほむら(もっと方向性を具体的に示せば、時間に猶予を与えれば、あれよりかはマシな物が出来る)
ほむら(……筈)
ほむら「妖精さん、一つお願いしてもいい?」
妖精さん「にんげんさんのおねがいなら、なんでもきくしょぞん」
ほむら「なら、ちょっと武器というか、護身具みたいな物を作ってほしいの」
ほむら「今から……そうね、最短で二日以内に、マミは命の危機に陥る」
ほむら「だけどマミは私を信頼してなくて、恐らく協力を申し出た私を拘束してくるわ」
ほむら「私とマミの相性は悪い。タイミングが分からないと時間停止が間に合わなくて拘束が避けられず」
ほむら「拘束された状態では武器一つ取り出せないから、自力で抜け出す事も出来ない」
ほむら「だから、手足が使えなくても拘束から抜け出せる道具は作れないかしら?」
ほむら「マミが危機に陥ったら、すぐに助けに行けるような……」
妖精さん「にんげんさん、たいへんですなー」
妖精さん「しかしごあんしんあれ」
妖精さん「ふつかあれば、りっぱなぶきをそうびできますが?」
ほむら「本当? なら、是非ともお願いしたいのだけど」
妖精さん「りょーかいですー」
妖精さん「それではさぎょうばに、ごー」ポーン
ほむら(え? 妖精さんが私の方にジャンプしてきて――――)
ぱくっ ごくんっ
ほむら「……………の、飲んで……しまったわ……」
まどか「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
ほむら「ど、どうしましょうまどか!? 妖精さん、妖精さん食べちゃったわ!?」
ほむら「あわあわわわわわわ……!」
まどか「落ち着いてほむらちゃん! 妖精さん、自分からほむらちゃんの口に飛び込んでいたよ!」
まどか「だから、その……き、きっと大丈夫だよ! だって妖精なんだし!」
ほむら「そ、そうかしら……そうなのかしら……」
まどか「そうだよ、た、多分……」
ほむら「はぅ……」オドオド
まどか(おどおどしているほむらちゃん超可愛い)
それから時は流れて・・・
―――― お菓子の魔女の結界 ――――
マミ(美樹さんがグリーフシードを見付けたとキュゥべえから連絡があり、結界に入った訳だけど)
マミ(たった今、恐らく私の後を追って入ってきたであろう暁美ほむらと遭遇)
マミ(その後ろには……鹿目まどか、だったかしら。美樹さんの友達も居る)
マミ(一体何を企んでいるのか……)
マミ(……企んで、いるのか……)
マミ「……なんで振り向いた瞬間、二人揃って土下座している訳?」
ほむまど「こちらの誠意を示しているだけです」
マミ「はぁ……(でもその体勢だと、お腹の辺りに武器を隠せるのよね……警戒しないと)」
マミ「それで、なんの用かしら? この前、もう会いたくないと伝えた筈だけど」
ほむら「えと、その、どうしても話し合いがしたくて」
ほむら「こちら、粗末な品ですが……」
マミ(駅前のブランド菓子店のチョコレート……)
まどか「あとこちら先日の謝罪の意味も込めまして……」
マミ(そこそこ高価そうなネックレス……)
マミ(……賄賂?)
妖精さん「にんげんさんたち、しゃざいしてますので、ぼくもつられるです?」
マミ(そこらの地面に落ちていたと思われるビー玉――――)
マミ「!?」
ほむまど「妖精さん!?」
妖精さん「さぎょーかんりょーしたので、おしらせにきたです」
ほむら「そう、なの……私、あなたの事食べちゃったと思って心配していたのよ」
妖精さん「いえきのおふろはしげきてきでしたな」
ほむら「想像以上に逞しい生命体なのね、あなた」
まどか「でも良かったぁ……無事だったんだね」
妖精さん「ときにうしろのにんげんさん、げきおこぷんぷんまるです?」
ほむまど「え?」
マミ「……そう、あなたは使い魔を飼っている魔法少女なのね」
まどか「へ?」
ほむら「――――あ」
ほむら(ヤバい、ヤバいヤバいヤバい! 失念していたわ!)
ほむら(妖精さんって、結界の中で出会ったらもろに使い魔じゃない!)
ほむら(あまりにも可愛くて非常識で明るいから、自分もそう誤解していた事を忘れていた!)
ほむら(こ、これでも、まだ関係が良好なら説明を聞いてくれたかも知れないけど――――)
マミ「はっ!」<リボン展開!
ほむら「ですよねーっ!?」ギュッ
まどか「私もーっ!?」ギュッ
妖精さん「ぴ――――――――――っ!?」ピュー
マミ「逃した、か。仕留めたいけど、美樹さんの事もあるから深追いは出来ないわね」
マミ「……やはりあなたは信用出来ないわ。何を話そうとしていたのかは知らないけど、しばらくそうしていなさい」
マミ「そして、二度と私の前に出てこないで。今度もし現れたら」
マミ「命の保証は、出来ないわよ?」
スタスタ・・・
ほむら「……うう……結局こうなってしまうのね……」
まどか「ほ、ほむらちゃん、どうしよう……このままじゃマミさんが……!」
妖精さん「はー、にんげんさん、こわかたですー」
ほむら「妖精さん……戻ってきてくれたのね」
ほむら「早速で悪いけど、この前頼んでおいた発明を使う時が来てしまったわ」
まどか(そ、そうだ! ほむらちゃんは、こうなる事を予測して妖精さんに発明をお願いしていた!)
まどか(もしかしたら、本当にどうにか出来るかも……!?)
妖精さん「それではおひろめですー」スッ
ほむら「? リモコン?」
妖精さん「にんげんさん、きどー」ポチッ
ほむら「え」ピカッ!
まどか「ぶっ!? ほむらちゃんの身体が光って……!?」
ロボほむ「……………」
まどか「全身金属で出来た、ほむらちゃんの形をしたブリキ人形的なものになってた……」
ロボほむ「ナニカサレタヨウダワ」
まどか「何かってレベルじゃないよ!? 全身くまなく魔改造だよ!」
ロボほむ「ソレヨリ、コノコウソクヲヤブリ、トモエマミタチヲ、タスケニイカナクテハ」
――――シャキンッ!
ロボほむ「ン?」スパッ
まどか「あっ、ほむらちゃんの肩から刃が出てきてリボンの拘束を切っちゃった……」
ロボほむ「……アノ」
まどか「?」
ロボほむ「……モシカシテ、ワタシ、カナリトンデモナイコトニナッテル?」
まどか(あ、自覚は無いんだ)
ロボほむ「ト、トニカク、ダッシュツデキタワ!」
ロボほむ「ハヤクマミタチノモトニイカナクテハ!」ガシャンガシャン
まどか「うわぁ、足音が色々と手遅れな感じだよぉ……」
まどか「……そして私は置いてきぼりというね」
妖精さん「にんげんさん、おいかけます?」
まどか「え?」
妖精さん「しこみますが?」
まどか「……………」
妖精さん「……………」
まどか「遠慮しときます」
……………
………
…
シャルロッテ【……】ゴゴゴゴ
マミ「さぁ、さっさと終わらせるわよ!」
――――バシュ、バシュッ!
さやか「流石マミさん! 魔女に攻撃の隙を与えない!」
マミ「ふふっ、これなら楽勝ね! 帰ったらうちでパーティよ!」
QB(……ふむ。何時も以上に隙だらけだ。あの魔女相手にこの調子では、マミの脱落は避けられない)
QB(さやかがマミの後を継いで魔法少女になっても、マミほどのエネルギー回収は見込めないけど)
QB(魔法少女になれば、まどかが二次成長期を終える前に、美樹さやかの死ぬ確率は極めて高くなる)
QB(親友の蘇生。鹿目まどかの人格を考えれば、容易に契約に誘える一文だ)
QB(マミには此処で死んでもらった方が得だね。助言はしないでおこう)
マミ「これで止めっ! ティロ・フィナーレ!」ドンッ
シャル【――――】シュルッ・・・ニュルンッ!
マミ「!? ま、魔女から蛇みたいなのが……まさかこれが本体!?」
マミ(不味い! 攻撃の反動で動きが取れない!)
マミ(こ、このまま死――――)
――――ばっこーんっ!!
シャル【ガゥ!?】
マミ「!?」
さやか「ま、魔女が何かに吹き飛ばされた?」
QB(これは……)
「アブナイトコロダッタワネ」
マミ「! この声……」
マミ「まさか脱出出来るなんて……いえ、それよりなんで……」クルッ
ロボほむ「……………ド、ドウモ」
マさQ「ロボだああああああああああああああああああああああああああああ!?」
マミ「え、ロボ!? 人間じゃなくてロボ!?」
ロボほむ「シ、シツレイネ。ワタシハニンゲンヨ……イチオウ」
マミ「何その曖昧かつ自分でも自信がなさそうな答え!?」
さやか「というかアレ転校生なの!? デザインと声がそれっぽいけど!?」
QB「な、内部に暁美ほむらの魂はあるようだけど、え、なにこれ、訳が分からない」
ロボほむ「ア、チョットマッテ。サッキ、ロケットパンチデウデヲトバシテイテ」
ロボほむ「エーット、コウスレバイイノカシラ……ア、ハマッタ」ガチャン
マミ「言い訳出来ないほどにロボじゃない!?」
ロボほむ「ソ、ソレハトモカク、アノマジョハワタシガタオスワ」
ロボほむ(さて、盾から爆弾を取り出して……)
――――ガチョンッ
ロボほむ「エ? ……ウデガ、カッテニアガッテ」
――――ガチャン、ガチャガャンッ
ロボほむ「……ゼンシンカラホウダイガデテキタワ」
ロボほむ【全砲門解放、攻撃を開始します】
ロボほむ「!? クチガ、カッテニ」
――――ドドドドドドドドドドドドドドドド!!
ロボほむ「ソシテホウモンガイッセイニヒヲフイターッ!?」
さやか「ひぃ!? マシンガンとかミサイルとかレーザーが一杯出てるーっ?!」
QB「質量保存の法則的とかどうしてんの、ねぇどうしてんの?」
シャル【!!?!?!?!!!?!?!?】
ずどーんっ!!
マミ「あ、魔女が吹き飛んだ……私のティロ・フィナーレでも仕留めきれなかったのに、凄まじい威力……」
ロボほむ「フゥ……ドウニカナッタワネ」ドドドドドド
ロボほむ「……トモエマミ、アナタガブジデ、ホントウニヨカッタ」ドドドドドド
ロボほむ「モシ、コノコトデスコシデモワタシヲシンヨウシテクレタナラ、コンド、ハナシヲ……」ドドドドドド
ロボほむ「……イツマデコノホウダイハコウゲキヲツヅケルノカシラ?」ドドドドドド
妖精さん「たまぎれまでですかなー」
ロボほむ「アラ、ヨウセイサン……ソレデ、タマギレッテイツニナルノカシラ?」ドドドドドド
妖精さん「さぁ?」
ロボほむ「……ハ?」ドドドドドド
妖精さん「だんがん、すとれすがもとですゆえ」
妖精さん「にんげんさん、すとれすためこんでましたからなー。うちほうだいです」
妖精さん「すっきりするまでうちつづけるとよいのでは?」
ロボほむ「……………」ドドドドドド
ロボほむ「ミ、ミンナヨケテェェェェェェェェェェェェェェェェ!?」ドドドドドドドドドドドドドドドド!!
マミ「もうさっきからずっと避け続けてるわよおおおおおおおおおおおおおおお!?」
さやか「ひぃぃぃぃぃ!? 嫌だあぁぁあぁ! こんなとこで死にたくないよぉぉぉぉ!」
QB「きゅぷーーーーーーーーーーーーーーーーい!?」
……………
………
…
まどか「で、その結果がこれ?」
マミ「」ガクガク
さやか「」チーン
QB「」グチャァ
ほむら「その結果がこれです……」←撃ち切ったら元に戻った
まどか「えーっと……巴先ぱ」
マミ「ひぃっ!? な、何!? なんなの!?」
マミ「またあんな怖い攻撃してくるの!? も、もう抵抗しないから、逆らわないから!」
マミ「まままままさかあなたも暁美さんみたいな攻撃が!」
まどか「出来ませんし出来るようにもなりたくないですから安心してください」
ほむら「マドカー・・・」
マミ「ごめんなさいすみませんもう何も怖くないとか調子に乗ってました割と何もかも怖いです」
マミ「もう魔法少女しませんから活動休止しますからだからお願いもう苛めないで……!」
まどか(恐怖のあまり幼児退行している……)
ほむら(……今ならこちらの話を聞いてくれそうね。そしてキュゥべえも、さっきの攻撃に巻き込まれて潰れている)
ほむら(話をするなら、今が好機)
ほむら「……苛めるなんて、そんな事しないわ。魔法少女の活動休止もしなくていい(したら魔女になっちゃうし)」
ほむら「むしろ私はあなたの力を借りたいの」
マミ「私の、力……?」
ほむら「――――ワルプルギスの夜」
マミ「……!」
ほむら「私は、その魔女を倒すためにこの町に来た」
ほむら「だけど奴は恐ろしいほどの力を持った、”最強の魔女”。私一人ではどうにもならない」
ほむら「私には今、強力な力を持った魔法少女が必要なの」
ほむら「……力を、貸してくれないかしら?」
マミ「暁美さん……」
マミ「別に無くてもなんとかなりそうな気がしたのは気の所為かしら」
ほむら「気の所為であってほしいわ、私としても」
ほむら「……実態はどうあれ、私は今、力が欲しい」
ほむら「だから、ワルプルギスの夜を倒して、この町を守りましょう」
ほむら「――――私と一緒に」
マミ「あ、暁美さん……」
ほむら「ねっ?」ニコッ
マミ「――――!!!?!」ズキューン
マミ「あ、暁美さ「そおおおおおおおおいっ!!」すげぶっ!?」ゴッ
ほむら「!? ま、まどかがマミの顔面に膝蹴りを!? なんで!?」
まどか「だってこの人今、絶対ほむらちゃんに抱き着こうとしたもん!」
まどか「ほむらちゃん密着権は私だけのものだよ! 権利違反は許さないから!」
ほむら「そんな権利あなたにもあげた覚えがないのだけど!?」
マミ「むっきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! なんだか知らないけど怒ったわ!」
マミ「大体なんであなた、暁美さんを独占してるのよ!? 私にも分けてくれていいじゃない!」
ほむら「え!? なんであなたも勝手に権利主張してるの!?」
まどか「だってほむらちゃんは私のお姉さまですよ! お・ね・え・さ・ま!」
マミ「な!? 何を……!」
\キャーギャーピーギャー!/
ほむら「ふ、二人とも落ち着いて……あの、こういう台詞はアレだけど私の事で争いは……」
ほむら「……争いは……」
さやか「う、うう……一体何が……というかあたし、なんで気を失って……」
ほむら「……」スススッ
さやか(え、なんで転校生があたしの傍に)
ほむら「あなたの傍が一番落ち着くわ」ピトッ
さやか「!?」
……………
………
…
―――― ほむホーム ――――
ほむら「ふぅ……今日は疲れたわね……」
ほむら「……でも、巴マミの救出と、協力関係の構築が出来た」
ほむら「マミとはあの錯乱時間軸を境に距離を置いていたから、チームを組むのは久しぶり」
ほむら「苦労はあったけど、今までとは違う……上手くいっているって実感がある」
ほむら「この調子なら……」
妖精さん「どのちょーしー?」
ほむら「妖精さん……」
ほむら(そう、全てはこの子のお陰)
ほむら(この子が私とまどかを夢の中で会わせてくれたから)
ほむら(巴マミを救い、圧倒するほどの力を与えてくれたから)
ほむら(今のこの関係が出来上がった)
ほむら(さやかはまだ分からないけど、でも悪い関係ではないと思う)
ほむら(まだ問題は山積み。魔女化の事も、佐倉杏子の事も、ワルプルギスの夜の事も……)
ほむら(でもきっと、大丈夫)
ほむら(妖精さんがいれば、この先もきっと――――)
お姉さまーっ!!
勝手に射出うううぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ キラッ☆
私も一緒にどんがらがっしゃあああああああああああああああああああああああああああ!?
ナニカサレタヨウダワ
ひぃぃぃぃぃ!? 嫌だあぁぁあぁ! こんなとこで死にたくないよぉぉぉぉ!
ほむら「……………」
ほむら(この先……あと半月以上、私、やっていけるかしら……)ゲッソリ
第三話・完
とりあえず今日はここまで!
妖精さんが(原作9巻の設定的に)増殖出来なくなったため、割と大人しく事態が推移しております。
……割と大人しいでしょ? 当SS本編に比べれば。
さて、本当は杏子ちゃん登場までを前編にしたかったけど、思っていた以上に長くなり三話で前編に。
冒頭は説明含めて書かなきゃならん事が多いのでどうしても長くなる……
後はサクサク進む筈なので、後編で一気に9話消化できる、かな? 出来なければ中編が挿入されます。
全く、原作ストーリーをなぞるとか不吉な予感しかしませんな!
そんな白々しい事を言いながらまた次回。
ではー
乙
SS本編よりもまどかのほむらに対する感情が危険な気がするのはきっと気のせい
ニコぽアメの効力をもってしてもロボほむ状態はノーセンキューなのかwww
乙
1fでこれとかやべえ
>>195
わり…と…?
ロボ化とか十分おかしいと感じたのは久々なせいだろうか…
同じガガガの俺ツイで免疫付いてるはずなのにおかしい。
大変お待たせいたしました。
結局中編を作る事になりました>>1です。
>>197
こちらの暁美さんも正史だとそのうち愛云々語っちゃうし、感情面の危険性ではきっと釣り合ってます(白目)
>>199
まどか「私が惚れたのは白く艶やかな肢体を持ったほむらちゃんだから」
ほむら「え、身体目当てなの?」
>>200
一応数日間、妖精さんが頑張って準備してますので。フラグたっぷり積み重ねてますよー
なお、フラグの蓄積は一ヶ月続く模様。
>>201
本編だったら全長20メートルまで巨大化した挙句何処からともなく変形パーツが飛来し、
内部でまどかやシャルが回し車に乗せられて動力生産に使われ、しかも唐突に巨大怪獣出現で大決戦……
ぐらいな事をなったので、それよりマシかと(酷
何か書こうとすると言い訳ばかり思いつくので今日はシンプルに。
それでは中編、いってみよー
えぴそーど おまけ ろく 【原ほむさんの、あたたかなせかい ちゅうへん】
第四話【奇跡も、魔法も、無力だよ】
―――― 見滝原中学校 ――――
ほむら「ふんふふんふふーん……♪」
まどか「ほむらちゃん、ご機嫌だね」
ほむら「え? あ、思わず鼻歌を歌っていたわ。恥ずかしい……」
ほむら(でも、上機嫌になってしまうのも仕方ないわね)
ほむら(何度もループを繰り返したけど、ここまで上手く事が運んだのは初めて)
ほむら(昨日は一時妖精さんのとんでもレベルについていけるか不安になったけど……)
ほむら(みんなを救えるのなら、多少の理不尽は受け入れましょう)
ほむら(むしろ過酷な運命と敵対するのだから、多少理不尽なぐらいが丁度良いじゃない)
ほむら(妖精さんがいれば勝てる。私達は、夜を越えられる)
ほむら(そう思えるのだから……)
ほむら(……そういえば、昨日は色々あって私が時間をループしている事を伝えられなかったわね。ソウルジェムの秘密も)
ほむら(そのぐらいなら話しても平気でしょうし、さやかにはキュゥべえへの注意喚起も必要だから)
ほむら(早めに話し合いの機会を設けた方が良いかも知れないわね)
ほむら「ねぇ、まどか。今日はみんなでお出掛けしない? さやかやマミを呼んで」
ほむら「マミとはチームを組んだばかりだし、さやかとはあまり関係がないから、これを期に親睦を深めたいのだけど……」
まどか「うんっ! いい考えだと思う!」
ほむら「なら、マミは私がテレパシーで呼んでみるから、さやかを呼んできてくれない?」
まどか「分かった!」
ほむら(さて――――)
ほむら(マミ。マミ。聞こえるかしら?)テレパシー
マミ(暁美さん? どうしたの?)テレパシー
ほむら(今日、まどかと一緒に出掛けようと思うのだけど、あなたも一緒に来ない?)テレパシー
ほむら(一応さやかも誘っているのだけど)テレパシー
マミ(……ごめんなさい。放課後は魔女探しをするって決めているから)テレパシー
ほむら(確かにそれも大事だと思うけど、でも、親睦も深めない?)テレパシー
ほむら(遊びながらでも、結界の探索は出来ると思うわ)テレパシー
マミ(……やっぱり、遠慮しておくわ。誰かがちゃんと結界を探さないと、犠牲者が出てしまうかも知れない)テレパシー
マミ(結界探しは私に任せて、あなた達は楽しんでらっしゃい)テレパシー
ほむら(そこまで言うなら、無理強いはしないけど……)テレパシー
マミ(ごめんなさい。日曜日とか、時間のある時なら行こうと思うから……それじゃ、またね)テレパシー
ほむら(……失敗、したのかしら)
ほむら(まぁ、彼女は魔法少女を神格化している節があるし……遊びの優先順位が低いのは仕方ない)
ほむら(また今度、そうね、彼女の言ったように日曜日辺りにでも誘ってみましょう)
まどか「ほむらちゃーん……」
ほむら「おかえり……って、元気ないわね。もしかして、駄目だったの?」
まどか「うん……さやかちゃん、今日は用事があるみたい」
ほむら「そう。マミにも、魔女退治を優先するから遊びには行けないって言われてしまったわ」
まどか「そう……」
ほむら「じゃあ、二人で出掛けましょうか」
まどか「そうだね、二人で……」
まどか「……え?」
ほむら「? そんな首を傾げなくても……さやかとマミと親睦を深めるのが目的とは言ったけど」
ほむら「元々、遊びに行きたいから提案した事よ?」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら(……こんな事を提案出来るようになったのも、妖精さんのお陰ね。精神的余裕がある)
ほむら(まぁ、あまり余裕があり過ぎると大切な事をうっかり忘れそうだけど)
ほむら(何十回もループしているこの私に限ってそんな事はないからね!)キリッ
妖精さん「ふらぐたったー?」
ほむら「きゃっ!? 妖精さん!?」
まどか「! ほ、ほむらちゃんの制服の胸元から! 胸元からッ!」
ほむら「胸元って強調しないで!? 気にしてるんだから!」
まどか(あ、気にしてたんだ……スレンダーなのが良いのに)
ほむら「もうっ、他の人に見られたらどうするのよ……ちゃんとポケットの中に居て」
妖精さん「あー、おしこまれますー」
妖精さん「もっとつめてー」
ほむら(キツいのが好きなんだ……M?)
ほむら「えっと、妖精さんは隠してっと……それで、まどか。一緒に遊ばない?」
まどか「勿論! ほむらちゃんのお誘いを断るなんて勿体無いよ!」
ほむら「ありがとう。それじゃ、行きましょ」
まどか「うんっ!」
さやか「……………」
―――― 翌日・夕方 見滝原病院屋上 ――――
さやか「恭介の手が現代の医学じゃ治らないって分かったから契約で治してあげたい!」 ← すっかり忘れられていました
QB「やけに説明口調かつ端折り気味なのが気になるけど、まぁ、契約する上で問題はない」
QB「いくよ――――」
さやか「く、あぁ……!」
QB「さぁ、受け取るといい。それが君の運命だ」
さやか「はぁ、はぁ……これが……あたしのソウルジェム……」
さやか(……良いんだ。この方法で)
さやか(恭介の怪我を直し、またあの演奏を聞く……そのためには、これしか手がないんだから)
さやか(それに、魔法少女になって町の平和を守る事が悪い訳ない)
さやか(これが、正しい選択なんだ)
さやか「……恭介の怪我は……」
QB「もう面会の時間は過ぎているし、確認は明日以降だね。だけど問題なく叶ったよ」
さやか「そう……」
さやか「ん? なんか、ソウルジェムが反応している……?」
QB「ふむ。どうやら魔女の反応だね。病院からは離れているだろうけど、そう遠くもないようだ」
さやか「なっ!? だったらマミさんに連絡――――」
さやか「いや、マミさんを呼んでいる間に誰かが犠牲になったら……」
さやか「……あたしの初陣に相応しいかなっ!」
……………
………
…
さやか「この廃工場から、すごい反応がある……」
QB「これほど強い反応だ。まず間違いなく、此処に魔女が居るね」
QB(……ここの魔女は精神攻撃が主。美樹さやかの性格的に、この魔女の攻略は難しくないだろう)
QB(とは言え、初陣を一人で挑ませるのは少々不安だ)
QB(そうだね。マミではなく、暁美ほむらと組ませてみよう)
QB(マミから、彼女と協力関係を結んだと聞いている。暁美ほむらに協力要請すれば、共闘してくれる算段が高い)
QB(そうすれば、暁美ほむらの力をもう一度確認出来る)
QB(昨日僕の身体を粉砕した、魔法とは異なる未知の力を……)
QB「さやか。暁美ほむらに連絡を取るといい。彼女に協力を仰ごう」
さやか「え? て、転校生に?」
QB「ああ。初陣は一人で挑むより、二人で挑んだ方がいい」
QB「マミは僕のテレパシーの圏内に居ないようだけど、暁美ほむらは居るみたいだから好都合だ」
QB「マミと彼女は共闘関係を結んだようだし、さやかが頼めば、彼女は多分協力してくれるだろう」
QB「お願いしてみるといい」
さやか「……………」
さやか「いや……遠慮しとく」
QB「? どうしてだい?」
さやか「どうしてって、まぁ、なんつーか……昨日アイツの攻撃で危うく死に掛けたトラウマというか……」
さやか「そんな事ないとは思うけど、実はあたしらの事こっそり葬ろうとしてんじゃないかなーとか」
さやか「でなきゃ、あんな滅茶苦茶な攻撃してくるとは思えなくて……」
QB「ふむ。可能性は否定出来ないね」
さやか「だ、だからさ! 今日はあたし一人。転校生と一緒に戦うのは、マミさんと一緒の時にする」
さやか「それにほら、さっさと魔女を倒さないとね!」
QB「さやかがそう言うのなら、僕は構わないけど」
さやか「じゃあ、早速結界への入り口は……あった! 突入!」
――――ぐにゃああ……
さやか「良し、入れ――――って、足場がない!?」
箱の魔女の使い魔達【】ワラワラ
QB「さやか、すぐに変身するんだ。もう使い魔が集まり始めている」
さやか「OK!」<変身
使い魔【!】ワラワラ
さやか「どぉりゃあっ!」
使い魔A【!?】バキッ
使い魔B【!!】ガッ
使い魔C【?!】ゴシャ
さやか「良し……!」
QB「油断しないで。使い魔は一体一体は大した事ないけど、無尽蔵に湧いてくる。無理だと思ったら見逃すのも手だ」
さやか「そんな事、出来る訳ないでしょ! 一匹でも逃がしたら誰かが死ぬかも知れないんだから!」
さやか「何体でも相手になってやる! 全員かかってこいってんだ!」
――――ガッ ゴッ ベキッ!
さやか「……! 奥に何かいる!」
さやか「あれがこの結界の、魔女か!」
魔女(エリー)【――――!】
使い魔達【】ワラワラ
さやか「使い魔を呼んだか、でも無駄ぁ!」ゴシャァ!
エリー【!!】ワタワタ
さやか(? コイツ、使い魔を呼ぶばかりで全然攻撃してこない?)
さやか(もしかして、コイツ自体に戦う力はないのか!)
さやか「だったら難しい事は考えず、そのまま突っ込む!」
さやか「まずは、突き上げ!」
――――ゴッ!!
エリー【!!?!?!?!?】
さやか「そして浮かんで無防備になったところを、ぶっ刺す!」
さやか「これで止めだああああああああああああっ!」
――――ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!
さやか「ほげええええええええええ?!」
エリー【!!?!?!?!?】
QB「なっ、爆発!? 魔女の攻撃……じゃない!」
QB「これは、現代兵器による攻撃か!」
さやか「ごへっ、げほげほっ……な、なん……!?」
――――ずがーんっ!!
QB「きゅぶしゃっ!?」グシャア
さやか「ひぃっ!? キュゥべえが爆風に巻き込まれて粉々に!?」
――――ずがんっごごごっどんどんどんっ!
さやか「ぎゃぶっ!? ば、爆風が痛い!?」
さやか「なんなの!? 一体これ何が起きてるの!?」
さやか「い、いや、でも、き、奇跡を願ったあたしの魔法ならこれぐらい」
――――ちゅどーんどどどどずがーんどーんどーんがががががががが
さやか「出来るかああああああああああああああああ?!」
エリー【!!??!?!?!?】
さやか「なんなの!? 前と言い今日と言い、あたしは爆撃される星の下に生まれたのかよ!?」
さやか「げぼぁ!? 爆風で吹き飛ばされ、ごうぶっ!?」
さやか「ひぃ、ひぃ、ひぃ!」
さゆか「こ、この爆撃の前じゃ……」
さやか「奇跡も、魔法も、無力だよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
―――― その頃結界の外では ――――
ほむら「偶然志筑仁美を見つけて追い駆けてみたら、魔女の結界があったわ。コイツの事、すっかり忘れてた」ポイポイ
ほむら「この魔女は底の方で控えているから、外から手榴弾を投下すると楽に片付くのよねぇ……」ポイポイ
まどか「でもそれだとグリーフシードも壊れちゃわない?」
ほむら「そうなんだけど、魔法を使わなければ急激には濁らないし、ループ重ね過ぎてストックは山ほどあるし」ポイポイ
ほむら「今日はまどかと一緒に、放課後デートを楽しんでいたのよ?」ポイポイ
ほむら「グリーフシードなんかより、まどかと一緒に過ごす時間の方が大切よ」ニコッ ポイポイ
まどか「ほ、ほむらちゃぁん……///」スリスリ
ほむら「はい、止めに燃料気化爆弾投下」ポイッ
――――しゅううぅぅ……
ほむら「……良し、結界が消えたわ」
ほむら「後はグリーフシードが残ってるか一応確認して――――」
さやか「」プスプス
ほむまど「え?」
まどか「……あれ、さやかちゃん……だよね?」
ほむら「え、ええ……色が青じゃなくて黒だし、髪型はアフロになっているけど、きっとさやかね」
ほむら「……そういえば魔法少女の契約をした彼女の初陣は、大抵この魔女が相手だったわね」
ほむら「あと忘れていたけど、パターン的に今日はさやかが契約しやすい日だったわ。うっかり」
まどか「つまり魔女相手に奮戦していたさやかちゃんの頭上から、こう、爆弾を」
ほむら「ぽぽぽぽーんっと」
ほむまど「……………」
ほむら「やっちゃった♪」
まどか「ちゃんと謝ろうね?」
謝罪しましたがさやかと敵対関係になりました☆
第四話・完
赤い子「……何時まで待ってもキュゥべえ来ない……」
第五話 【絶対後悔させてやる】
―――― 昼休み 見滝原中学校屋上 ――――
ほむら「第一回、美樹さやかとどうすれば和解出来るか会議~」
まどか「どんどんぱふぱふー♪」
マミ「いやいやいやいやいや、待って待って待って待って?」
マミ「放課後になって呼び出されてみれば何? なんであなた達美樹さんと敵対関係になってるの?」
マミ「その美樹さんも魔法少女になった報告は事後だし。私の扱い雑過ぎない?」
ほむら「そう見えるだけよ」
まどか「それより、本当にどうしたらいいのかな」
ほむら「うーん。何度もこの時間軸をループした経験を言わせてもらうと、ああなったら関係修復不能だし……」
マミ「ちょ、今さらりと時間軸をループって……」
ほむら「あら、まだ話してなかったっけ? 私、魔法で何度も過去に戻ってるの。みんなちょくちょく死ぬから」
マミ「それ一行で説明済ませちゃっていいの!?」
ほむら「良いの良いの。私の知ってる中じゃ大した秘密じゃないし」
マミ「まだ何かあるの!?」
まどか「なんかほむらちゃん、自棄になってない?」
ほむら「……正直なってるわね」
ほむら「さっきも言ったけど、過去のループの経験では、ああなった美樹さやか」
ほむら「つまり不信感を抱いた美樹さやかと和解出来た経験は一度もないの」
ほむら「だから彼女とどうすれば和解出来るのか、そもそも出来るのか……自信が持てない」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「それにさやかの性格的に賄賂は通用しそうにないし」
マミ(私には通用すると思っていたんかい……)
マミ「だ、大丈夫よ! 一度は敵対していた私とだって和解出来たのなら、美樹さんと出来ない道理はないわ」
マミ「とりあえず、原因を教えて。それが分かれば私もアドバイス出来るから」
ほむら「マミ……」
ほむら「大量の手榴弾で爆撃した後、魔女諸共うっかり燃料気化爆弾で葬りそうになったんだけど」
マミ「なにやっちゃってんのあなたあああああああああああああああああああああ!?」
マミ「出来る訳ないでしょ!? 二度目よ二度目! 一昨日魔女諸共私達を葬りかけた時反省してなかったの!?」
ほむら「だ、だって、あの時結界の中にさやかが居るなんて思わなくて……」
マミ「自分が危険な武器を取り扱っているという自覚を忘れないでほしいんだけど!?」
ほむら「あと、うっかりさやかが契約する事も忘れてて……」
マミ「そこどうしたらうっかり忘れられるの!?」
まどか「ま、まぁまぁ、巴先輩。ほむらちゃん、今回のループは上手くいっていて油断していたらしいので……」
ほむら「ごめんなさい……妖精さんが頼もし過ぎて、つい気が……」
マミ「(妖精さんって、確か一昨日結界で見せてくれた使い魔? よね)……はぁ。もういいわ」
マミ「それで? そんな失敗を繰り返さないために、他に忘れてる事はないかしら?」
ほむら「う……実はその、忘れていた訳じゃないのだけど……」
ほむら「さやかが契約する事で、連鎖的に引き起こるイベントがあって」
マミ「イベント?」
ほむら「えっと、あのね……」
……………
………
…
―――― 放課後 市街地 ――――
まどか「お昼休みに言ってたけど……見滝原に戻ってくるっていう、佐倉さんってどんな人なの?」
ほむら「簡単に言うと、グリーフシード目当てに使い魔を放置する、そうね……悪い魔法少女、かしら」
ほむら「だけど残虐非道な悪人って訳じゃないわ。彼女なりの事情がある」
ほむら「ただ、真っ直ぐ過ぎるさやかはそれを受け入れられない」
まどか「確かに……さやかちゃん、ちょっと潔癖症なところがあって、クラスの子とぶつかる事も多いし……」
ほむら「杏子の好戦的な性格もあって、二人は鉢合わせると戦闘に発展する事が多いのよ」
ほむら「まぁ、今回はマミが生きている。今もさやかと一緒に魔女退治に出向いている」
ほむら「佐倉杏子はマミと顔見知りだし、マミも彼女が根っからの悪人でない事は知っている」
ほむら「そして杏子の実力も」
ほむら「マミなら戦闘を回避しようとするわ。さやかもそれに従う筈だから、今は戦う心配はないわね」
まどか「そっか……良かった……」
ほむら「まだ安心出来ないわよ」
ほむら「マミが別行動をしている時を狙って、杏子はさやかを呼び出そうとするかも知れない」
ほむら「彼女なりのお節介なんだけど、さやかはそんな事知る由もないわ」
ほむら「そうなれば、間違いなく戦闘になる」
まどか「そんな……でも、マミさんにずっと付いてもらう訳には……」
ほむら「だからどうにかして彼女達に、冷静な話し合いの場を設けないと……」
ほむら「私達は私達で、出来る事を探しましょう」
まどか「うんっ」
(――――暁美さん! 暁美さん、聞こえる!?)
ほむら「!? これは、マミからのテレパシー……?」
まどか「え? マミさんから?」
ほむら(もしもし、マミなの?)テレパシー
マミ(ああ、良かった! 繋がった!)テレパシー
ほむら(どうしたの? そんな慌てて)テレパシー
マミ(そ、そう! 大変なの!)テレパシー
マミ(美樹さんと佐倉さんが二人きりで接触してしまったの!)テレパシー
ほむら(な、なんですって!? どうして!?)テレパシー
マミ(今日見付けた魔女が、やたら使い魔を囲っているタイプで……)テレパシー
マミ(注意していたけど、使い魔と戦っているうちに逸れてしまったの!)テレパシー
マミ(それで、その、悪い魔法少女と戦う事になったって連絡が……)テレパシー
マミ(ご、ごめんなさい! 私……)テレパシー
ほむら(……いえ、あなたは頑張ってくれた。謝る必要はないわ)テレパシー
ほむら(さやかはマミの近くに居るのね?)テレパシー
マミ(ええ! だけど今、使い魔と魔女の妨害にあってそっちに中々行けなくて……)テレパシー
マミ(今回はこの魔女を見逃すのも――――)テレパシー
ほむら(いいえ、あなたはそのまま魔女を退治して)テレパシー
ほむら(二人は、私が止める)テレパシー
マミ(暁美さ…… プツッ
ほむら「……………」
まどか「どうしたの? ほむらちゃん」
ほむら「……さやかが杏子と遭遇してしまった。今は交戦状態にあるみたい」
まどか「!? そんな! なんで、マミさんと一緒だったんじゃ……」
ほむら「詳しい説明は後。今はさやかを探さなくては……」
まどか「わ、私、あっちの方を探してみる!」
ほむら「その必要はないわ」ファサッ
まどか「はぅっ!?(か、髪の毛掻き上げて……カッコ良すぎてずっきゅーんっ!///)」
ほむら「交戦しているとなれば否応なしに魔力を発する。それを探れば特定は容易」
ほむら「……方角はあっちね」<変身
ほむら「彼女達は私が止める。まどかはそこで待っていて」シュッ
まどか「……………」
まどか「はっ!? ほむらちゃんに魅了されてたら置いてかれちゃった!」
まどか「うわーん! 折角カッコ良く戦うほむらちゃんが見れると思ったのにぃーっ! 酷いよぉ!」
まどか「だけどそんなクールなとこも大好きーっ!!」
ほむら(二人の戦いが始まってしまった以上、急いで止めなければ……!)
ほむら(二人はソウルジェムが魂である事を知らない。相手を事故で殺してしまう事もありうる)
ほむら(杏子はそんな無茶はしないと思うけど……でも、さやかは別)
ほむら(万一さやかが死ぬような事があったら、約束してくれたとはいえ、まどかが契約してしまうかも知れない)
ほむら(妖精さんが元に戻してくれる手筈だけど、可能ならまどかは魔法少女にしたくない)
ほむら(でも、どうやって止める?)
ほむら(杏子は場数を踏んでいるだけに引き際を弁えているから、私が出れば早々退くとは思うけど)
ほむら(だけど彼女との対話は、それだけで、高潔であろうとするさやかの癪に障る)
ほむら(最悪、杏子と話をしただけで同類と思われかねない)
ほむら(まぁ、それは本当に最悪のパターンなのだけど、可能性がゼロではない以上無視は出来ない)
ほむら(どうすれば……)
妖精さん「そんなときこそぼくのでばんです?」
ほむら「! 妖精さん、何か案があるの?」
妖精さん「このようなこともあろうかと、ひみつへーきをつくっとりましたな?」
ほむら「秘密兵器?」
妖精さん「こちらですが?」
ほむら「これは……鍵?」
妖精さん「きらきらふわふわきーです」
妖精さん「きらきらふわふわなので、りゅーけつざたにはなりませぬ?」
ほむら「えっと、よく分からないのだけど、使えば血が流れないという事?」
妖精さん「そー」
ほむら「そ、そう……まるで理屈が分からないけど……」
ほむら「ところでそんな道具、何時の間に作ったの?」
妖精さん「たったいまですが?」
ほむら「え」
妖精さん「たったいま、そくせきでつくりましたです」
ほむら「……………」
ほむら(嫌な予感しかしない……)
ほむら(あ、武器を打ち合う音が聞こえてきたわね……近い……見付けた!)
ほむら(って、さやかが杏子に組み伏された!?)
ほむら(不味い! もう決着が付くなんて!)
さやか「くっ、そぉ……!」
杏子「……アンタさぁ、まだやる気?」
杏子「そんな弱っちいくせに、逐一使い魔なんて狩ってたら身が持たないよ?」
さやか「五月蝿い! 誰がアンタみたいな奴に……!」
杏子「……ウゼェ。超ウゼェ」
杏子「ちっとは自分の弱さを分かったかと思えば、全然反省する気なし」
杏子「アンタみたいな言ってもやっても分かんない馬鹿は……無理やり引退させるしかないよねぇ!」
ほむら(! ソウルジェムが砕かれてしまう! そうなったら、さやかが……)
ほむら(時間停止……いや、既に組み伏されているあの状態では、触った瞬間二人の時間が動いてしまう!)
ほむら(くっ! どうなるか分からないけど……もう妖精さんに頼るしかない!)
ほむら「さやか! これを使って!」
杏子「!? 誰だ――――」
さやか「! 転校生……!?」
さやか(何か投げつけてきた……アレは、鍵? あ、あたしの手元まで転がってきた……)
さやか(もしかして、この状況を打開する道具? それを使えば、コイツを――――)
さやか(い、いや、転校生があたしを助けるなんて、裏があるに違いない!)
さやか(そうだ、アイツは一昨日、昨日とあたしの事を始末しようとしてきた!)
さやか(きっとこの鍵も――――)
杏子「もーらいっと!」
さやか「あ……!」
ほむら「?! な、何しているの!? あの状態なら、あなたの方が先に取れた筈……」
さやか「え、えっ……!?(ま、まさか本当に、たすけるため……!?)」
杏子「ふーん……何があったかは知らないけど……まぁ、あれだ。アイツも魔法少女みたいだし」
杏子「ルーキーのくせして先輩の言う事を聞かないと、こうなる」
さやか「っ……!」
杏子「さて、奪ったは良いけど使い方も分からないし……止めは普通に槍でいっか」
杏子「終わりだよ」
さやか「っ!」
ほむら(こ、こうなったらまとめて爆弾で吹き飛ばすしか――――)
――――カッ!
ほ杏さ「?!」
ほむら(な、に……いきなり目の前が眩しく……!)
ほむら(……光が収まって……その……)
ほむら(妖精さんアイテムを持った、さ、佐倉杏子が……)
ほむら(――――なんというか、ふりふりで、ふわふわで、女の子っぽい格好に……)
ほむら(あと、鍵を掴んでいた右手には奇妙な形のステッキがあって)
ほむら(……そ、傍に……黄色くて、小さな羽が生えてて)
黄色QB「ワイはキュゥべえやっ!」
ほむら「大阪弁で喋るインキュベーターが……」
杏子「な、なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああ!?」
さやか「え、え、な、え、え?」
杏子「な、何、何なのこれ?! なんであたしこんな可愛い、じゃなくてうっとおしい恰好してんだ!?」
杏子「あ、アンタ、一体何を投げつけたんだ!?」
ほむら「へ? あ、その……私もよく分からないのだけど……」
ほむら「……に、似合ってる、わよ?」
杏子「よく分からん同情なんてすんじゃねええええええええええええええっ!?」
杏子「くっそ! こんなん着るぐらいなら裸の方がマシ、って、いくら引っ張っても脱げねぇ!? どうなってんだこれ!?」
杏子「こ、こんなとこ、マミの奴に見られたら――――」
マミ「お、遅れてごめんなさい!」
杏子「」ガンメンソウハク
ほむら(なんというタイミングで……)
マミ「え? ……え? 佐倉、さん?」
杏子「チ、チガイマスヨ?」ガタガタ
マミ「いや、絶対佐倉さんでしょ」
黄色QB「そうや! この子はワイのパートナーの佐倉や!」
杏子「勝手にパートナー認定された!?」
黄色QB「ちなみに戦うにはこのカードを使うしかあらへんけど、今は一枚しかないで」
黄色QB「しかも効果は風を起こす程度の代物や」
杏子「しかも強制的かつ想像を絶する形で弱体化させられてるし!?」
マミ「……鍵がステッキになって、ふりふりふわふわな衣装で、カードで戦い、大阪弁マスコット」
マミ「つまりこれってカードキャプター佐く」
ほむら「それ以上いけないわ。マミ」
マミ「そ、そうね」
マミ「……………えーっと……」
杏子「……………」
マミ「……に、似合ってる、わよ?」
杏子「うわあああああああああああああああああああああああんっ!!」ダッ
マミ「あ、逃げた」
ほむら(……どう考えても敵対しました本当にありがとうございます)
ほむら(で、でも、さやかは助け出せたし、結果オーライよね……うん)
さやか「……転校生」
ほむら「あ、うん。何?」
さやか「今の、何?」
ほむら「え。えーっと……さぁ? 妖精さんが作ってくれた道具なんだけど……」
さやか「ふーん。そうなんだ……」
さやか「今回はアイツが拾ったけど、本来なら、あたしが受け取る筈の物だったんだよね?」
さやか「あ、あんなふりふりで、キュートというか子供っぽい恰好にさせ」
さやか「しかも杏子って奴が言うには大きく力が落ち、胡散臭いマスコットが付くという」
ほむら「……そ、そうね。そうなったんでしょうね」
さやか「……………」
ほむら「……えーっと」
さやか「ふんっ!」ブンッ
ほむら「ひぃ!? 剣を投げてきたぁ!?」
マミ「み、美樹さん?!」
さやか「やっぱりアンタは信用ならねーっ! つかお前はあたしを殺す気かぁっ!!」ブンブンブンブンッ
ほむら「きゃあああああああああああああああああああああ?!」
妖精さん「にんげんさん、こーふんしてますなー」
ほむら「あれは興奮通り越して殺意満々って言うのよ!」
さやか「待てやゴルァ! あたしをコケにした事、絶対後悔させてやる!」
ほむら「ひいいいいいいいいいっ!? 剣が! 剣が弾幕のようにぃぃぃぃぃぃぃ!?」
妖精さん「かすりまくっててんすうかせぐです?」
ほむら「残機が一つしかない時に稼ぎプレイなんてする訳ないでしょお!?」
ほむら「な、なんでこうなるのおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
第五話・完
第六話 【こんなの絶対可笑しいよ】
―――― 放課後 住宅地 ――――
ほむら「うう……まさか杏子とも敵対してしまうなんて……」
ほむら「あの子はビジネスライクな付き合いが出来るから、仲間になってくれると思ったのに……」
まどか「ほむらちゃん……」
マミ「だ、大丈夫よ! きっと仲直り出来るわ!」
マミ「それに、私が仲間に付いたのよ? なんとかなるって!」
ほむら「マミ……」
まどか「私も、多分大丈夫だって思うよ」
まどか「今までみたいに、致命的な仲違いって訳でもないんでしょ?」
ほむら「……まぁ、マミが生きているから、私がマミを殺したと誤解されるパターンはないし」
ほむら「杏子はさやかより話を聞いてくれるタイプだから、和解のチャンスはありそうだし……」
まどか「なら前向きにいこうよ。きっと大丈夫だから」
ほむら「まどか……」
妖精さん「びりょくながらすけだちいたしますが?」
ほむら「……そう、ね。微力だけで良いから、助太刀願うわね」
まどか(魔法少女を人間に戻す研究をしてくれる手前、善意を無碍には出来ないよね……)
マミ「とりあえず、関係悪化が著しい美樹さんから対処しましょう。それこそ修復不能になる前に――――」
QB「みんな、大変だ」スッ
まどか「! キュゥべえ……!」
ほむら「そう言えば最近すっかり見掛けなかったから忘れていたわ」
QB「……酷くない? 君、二回も僕を爆破してるんだけど」
ほむら「え。二回はしてないわよ、二回は」
マミ「むしろ爆破されたのになんで無事なの……?」
QB「ああ、まぁ、そんな事はどうでもいい。大変な事が起きている」
QB「美樹さやかと佐倉杏子が出会い、戦いを始めた」
ほむら「!? な、なんですって!?」
QB「場所は近くの歩道橋だよ。まどか、僕についてきて」
まどか「え、っと……」
ほむら(コイツ、さやかと杏子の決闘を止めるという形でまどかを契約させるつもりね)
ほむら「……私達も当然付いていくわよ。さやかと杏子の戦いを無視する事は出来ないから」
マミ「そうね。キュゥべえ、案内して」
QB「分かった。こっちだ」
……………
………
…
QB「此処だ。ほら、あそこに……」
マミ「ええ、確かに居たわ……美樹さんと……」
ほむら「杏子ね……昨日逃げた時と同じ格好の」
まどか「え、何アレ。カードキャプターさく」
ほむら「佐倉杏子は魔法少女。良いわね?」
まどか「アッハイ」
ほむら「それよりちゃっちゃと止めないと……」
ほむら「そこの二人! 無駄な争いはとっとと止めなさい!」
さやか「っ! 転校生……!? 今度こそあたしを始末しに来たのか!?」
ほむら「いや、しないから……」
杏子「あ、テメェ! どうなってんだよオイ!」
杏子「こんなとんでもない服着せやがって!」
ほむら「あ……それは、その、あなたに着せるためじゃなくて……」
さやか「そうだよね、あたしに着せて辱めて、しかも弱体化させるのが目的だもんね!」
ほむら「そ、そういう訳でもないのだけれど」
杏子「あの黄色いキュゥべえが言うには、カードを五十三枚集めなきゃ元の姿に戻れなくて」
杏子「一部のレアなカードは有料ガチャを引かなきゃ手に入らないって言われたんだぞ!」
ほむら「ちょ、そんなぼったくりシステム私把握してないけど!?」
杏子「しかもガチャで最上位のレアカード出る確率1%だし!」
杏子「お陰でそのガチャ引くために一体いくら盗んだと思ってんだ!」
さやか「なっ! アンタ窃盗まで……」
さやか「絶対許せない!」
ほむら「お、落ち着いて……その、魔法少女同士で戦うなんて可笑しいわ……」
さや杏「アンタの所為でしょうがあああああああああああああああ!!」
ほむら「ひぃっ!?」
まどか(怯えるほむらちゃん可愛い)
マミ(あの二人、普通に仲が良いような……)
マミ「ああもう、二人共落ち着きなさい!」
さやか「マミさん、なんでコイツの肩を持つんですか! こんな悪者……!」
さやか「それとも知り合いだから手心加えてるとか!?」
マミ「そういう訳じゃなくて……」
さやか「マミさんに出来ないのなら、あたしがやる……あたしがやらなきゃ駄目なんだ……!」
マミ「もう! だから話を聞きなさいよ!」
ほむら「と、巴マミの話も聞かないなんて、どうすれば……」
妖精さん「どない?」
ほむら「きゃっ!? よ、妖精さん!?」
ほむら(不味い、妖精さんの事がインキュベーターにばれるのは……)
QB「? 妖精、とはなんの事だい?」
ほむら(?! 妖精さんの姿が……見えて、ない……?)
ほむら(一体どういう……いえ、これは好都合。コイツに妖精さんの存在が分からないうちに……)
ほむら「妖精さん! どうか二人の争いを止めて!」
妖精さん「でしたら、こちらをおつかいくだされ」
ほむら「これは、クラッカー?」
妖精さん「いままでのけんきゅーででたはいざいをもとに、さくせいしました」
ほむら(今までの研究の廃材……という事は、リサイクル品かしら)
ほむら(今までより性能は落ちそうだけど、でも、今までのキツさを考えれば……)
ほむら(多分、丁度いい!)
ほむら「妖精さん! 使い方は!?」
妖精さん「ふつーにどーぞ?」
ほむら「つまりこの紐を引けばいいのね!」
ほむら「――――えいっ!」
――――きゅっ
どっぱああああああああああああああああああああああああああああああああんっ! ! ! !
ほむら「な、なんかすっごい沢山出てきたぁ!?」
さやか「な、なんだ!? 転校生が何かして」
象「ぱおおおおおおおおおおおおんっ!!」
さやか「なんで象がいるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ライオン「がるるるるるるっ!!」
杏子「ぎゃあああああああああ!? 服を噛むな!? ひぃぃぃぃ! 引き摺られるぅぅぅぅぅ!?」
ピエロA「おーほっほっほー!」ポイポイ
ピエロB「ばいーんばいーん!」ポイポイ
マミ「ちょ、ボールをばら撒かないで!? 通行人の迷惑になるからー!?」
鳩×たくさん「ぽっぽー」
QB「きゅぶっ!? 糞が、糞が落ちてくる!?」
ほむら「あわわわわわわわわ!? く、クラッカー引っ張っただけなのに……」
ほむら「なんか過去最大級にどんちゃん騒ぎになってるんだけど!?」
妖精さん「ぜんりょくでおたのしみしていただくしょぞんですゆえ」
ほむら「こんな事に全力尽くす前に、魔法少女を人間に戻す研究に全力尽くしなさいよぉーっ!?」
さやか「転校生! 早く止めろ! こんな、ふざけた真似でみんなを惑わすなっ!」
ほむら「そ、そんな事言われても、私にも止め方なんて……」
さやか「くっ! やっぱりアンタは倒さなきゃ――――」
クラウン「おっほほほーっ!」ガシッ
さやか「え(あたしのおへそに嵌まってるソウルジェムを取り外されて――――)」
クラウン「ぽーい!!」ブンッ
さやか「投げ捨てたあああああああああああああああああああああああ!?」
ほむら「マジですかあああああああああああああああああああああああ!?」
さやか「ちょ、しかもトラックの上に載って……アンタ本当に何してくれちゃ」パタッ
マミ「え!? み、美樹さんが倒れた!?」
QB「まるで状況が理解出来ないけど今のは不味いよ。何を隠そうソウルジェムこそが魔法少女の魂で」
マミ「え、なんでピエロが私を引っ張って、いやいやいやいや!? 火の輪くぐりとか無理だから!? 出来ないから!」
QB「本体から100メートル離れると、コントロール出来なくなった身体は死体に戻ってしまい」
杏子「ぎゃあああああああああ!? このブランコ滅茶苦茶なスピードで動くううううううう!? 怖いいいいいい!」
杏子「つーかこれ何処にもぶら下がってないし! 空中浮遊してるし! どんな仕組ぎゃああああああああああああ!」
QB「つまりソウルジェムはコンパクトで安全な姿であり、ソウルジェムが砕かれない限り君達は無敵で」
マミ「ちょっと五月蝿い! その話今しなきゃ駄目なの!?」
QB「いや、駄目かどうかと言われると、その」
マミ「じゃあ黙って、ひいいいいいいいい!? 十人ぐらい人が乗ってる一輪車が私の方にぃぃぃぃぃぃぃ!?」
ぎゃあああああわああああああああうわあああああどひゃああああああああああああ!!
QB「……………」
QB「こんなの絶対可笑しいよ! この話を聞けば大抵の人間は絶望し」
ライオン「がぶっ」
QB「マミッター」ブラーン
まどか「……どうすんの、これ」
ほむら「……どうしましょう、これ」
妖精さん「こんごのために、ごかんそーをうかがいたいですな?」
まどか「これの一体何処が廃材で作ったのかとか、あのクラッカーにどうやって収めていたのとか」
まどか「ツッコミどころ満載過ぎて何も言えないよ!」
まどか「ねぇ、ほむらちゃん助けてよ! みんなをもっとこう、シリアスな感じに戻してよ!」
ほむら「……えーっと……」
ほむら「あ、そうだ。さやかのソウルジェム回収しないとー」シュンッ
まどか「え、消え……」
まどか「……………」
まどか「逃げたあああああああああああああああ!?」
第六話・完
第七話 【本当の気持ちと向き合わなかった結果がこれだよ】
ほむら「……………」正座中
さやか「……………」正座中
まどか「……………」
マミ「……………」
杏子「……………」
まどか「……ほむらちゃん、さやかちゃん。なんで自分達が正座させられてるか、分かってるよね?」
ほむら「は、はい。えと、三日前の事、でしょうか……?」
マミ「そうね、三日前も大惨事だったわよね」
マミ「クラッカーの中から溢れた大量の象とかライオンとかピエロとかの所為で大パニック」
マミ「挙句最後は重さに耐えられなくて歩道橋崩落。ついでとばかりにソウルジェムの秘密も露呈」
マミ「でもね? 私達、そこは責めてないの」
マミ「歩道橋ぐらいなら、まぁ、許してあげる。ソウルジェムの秘密は、まぁ、あなた達も被害者だし」
マミ「特にソウルジェムの秘密は、なんかあの非常識空間の中ではむしろ癒し要素に思えてくる始末だし」
杏子「でもな、あたし達が聞きたいのは三日前じゃなくて、一昨日の事なんだ」
杏子「一昨日は何をしたんだ? ん?」
ほむら「は、はい。その……」
ほむら「そ、ソウルジェムの秘密を知ったさやかは……大概自暴自棄になるパターンが多くて」
まどか「ふーん、そうなんだー。そうなのかなー、さやかちゃん?」
さやか「う、うん。自暴自棄、自暴自棄になってました。今回もです。はい」
ほむら「し、しかも間の悪い事に、そのタイミングで志筑仁美が、その……」
ほむら「さやかの好きな人である、上条恭介に告白すると宣戦布告した場合」
ほむら「自分はゾンビだから、死んでるから、恋する資格なんてないと思い悩む事が多くて……」
ほむら「今回もそのパターンになってしまい、このままでは不味いなーと……」
まどか「ふむふむ成程。気持ちは分からないでもないね。私の場合はどーんとこいだけど」
杏子「そうだなぁ。ゾンビが恋とかちゃんちゃら可笑しいって思うのも、無理ないよねぇ」
杏子「で? それからどうしたんだ?」
さやか「そ、それから、あの、恭介が盗られると思ったら怖くなって、悲しくなって」
さやか「そんな時に、えと、ほ、ほむらに唆されて!!」
ほむら「なっ!? さ、さやか、あなた私を売」
まどか「二人とも、仲間割れは最後まで説明してからにしてくれない?」
ほむさや「は、はひ」
まどか「それで、ほむらちゃんにな・ん・て、唆されたの?」
さやか「え、えと、その、唆されたというより、相談というか、愚痴に乗ってくれて」
さやか「それでその、延々話し続けて真夜中まで盛り上がった時に……」
さやか「よ、妖精さんが……」
マミ「……また妖精さんなのね……」
マミ「妖精さんに、何を言われたのかしら?」
さやか「……私がゾンビで、恭介は人間だから恋は出来ないって言ったら……」
さやか「……ゾンビ同士なら大丈夫って」
マミ「……………成程。成程」
ほむら「そ、そりゃ、まぁ、クラッカーの中にあらゆる物理法則を無視したテクノロジーを詰め込める妖精さんだし」
ほむら「ちょっと考えればゾンビの一つ二つ簡単にこしらえる事が出来るって分かったでしょうけど」
ほむら「あの時は、その、真夜中まで起きていて」
ほむら「……し、深夜のテンションってやつで」
まどか「はしゃいじゃったんだね。理性のスイッチ完全オフにした状態で」
ほむら「……はい。GOサインをノリで出してしまいました」
さやか「……はい。あたしも背中を押ししてしまいました」
杏子「そうかいそうかい」
杏子「その結果が――――この有り様という訳だ」
学生ゾンビ「アー」
サラリーマンゾンビ「アー、アー、ウー」
ベビーゾンビ「アー、アー」
ママゾンビ「アーウー、アー、ウー」
町に溢れるゾンビ,s「アー、ウー」
マミ「……完全にバイオ○ザード2の様相じゃない……」
ほむら「曰く、吸い込むとゾンビになってしまうウィルスを見滝原にばら撒いたとかなんとか」
ほむら「妖精さんが一晩でやってくれました」
杏子「いやどう考えても可笑しいだろこれーっ!?」
杏子「一体どんなウィルスを使えばこんな大☆惨☆事を起こせるんだよ!?」
妖精さん「いんふるえんざがもとですが?」
杏子「インフルエンザ怖過ぎるぞオイ!?」
マミ「不幸中の幸いなのか仕様なのか、あのゾンビ達は人間を襲わないし」
マミ「あーうーしか言わないけど知性はあるし、魔法少女の素質があると抵抗力があるのかああいう腐ったゾンビにはならないけど」
マミ「既にこの見滝原パニック、全世界に広まってるんですけど!? テレビでも放映されちゃってるし!」
妖精さん「しかしいつかほどでなおりますが?」
妖精さん「しゅっせきていしは、はっしょうごいつかかんですゆえ」
マミ「なんでそこまで詳細にインフルエンザの特性に拘るの!?」
杏子「て言うか戻るのアレ?! 腐ってるんだけど!?」
杏子「どんなとんでもテクノロジーだよオイ!?」
妖精さん「そまつなものですが?」
杏子「粗末なの!?」
妖精さん「それに、ぼくひとりではできませなんだ」
妖精さん「にんげんさんのごきょうりょくあってのものですな」
マミ「……ご協力?」
ほむら「……妖精さんは止まった時の中を動けるから、時間停止を使って研究時間稼いだり」
さやか「ウィルスの培養に使う細胞を、あたしの回復魔法で増やしたり」
ほむら「国内の細菌研究の施設から色々道具を盗み出したり」
さやか「電磁波が生じるような場面ではあたし達が作業を進めたり」
ほむさや「いやー、深夜のテンションって怖いですね!」
マミ「怖いってもんじゃないでしょおおおおがあああああああああああああ!?」
杏子「酒でも飲んでたんじゃねぇのかテメェら!?」
まどか「ねぇ、どうすんの!? どうすんのこの惨状!」
ほむら「……えと……ど、どうしましょう?」
まどか「どうにもならないよ! 取り返しのつかない失敗って言ってもここまで大規模かつ迷惑千万なのは稀だよ!」
さやか「うう……昨日は結局みんなの手から逃げ回るのに必死だったし……ほむらとガチの逃避行だよ……」
杏子「そりゃこんだけやっちまえば逃げたくなるのは分かるけどさ……だからって本当に逃げちゃ駄目だろ」
まどか「私としては本当に怒ってるのはそこだけどね……ほむらちゃんとの逃避行なんて妬ましい妬ましい……」ギリギリ
マミ「怖い怖い。鹿目さん、本音が怖いから」
マミ「だけど、私も同じ意見よ。いくらやっちゃったからって、二人で私達から逃げるなんて……」
マミ「お陰でこのゾンビパニックから一日経った今日になって、ようやく事情が分かった有り様だし」
ほむら「反省してます……」
さやか「丸一日あたし達の追跡という行為で時間を無駄にしてしまった事、大変申し訳なく――――」
さやか「あ」
まどか「ん? どうしたの?」
さやか「……忘れてた」
さやか「今日、仁美が告白する日だ」
ゾンビ上条「アー、ウー」
ゾンビ仁美「アー、ウー♪」
ゾンビ上条「ウー♪」
マミ「ぞ、ゾンビ化しても分かるぐらいいちゃついている……!」
まどか「もう駄目だよフォローしようがないぐらい清々しく恋が成就してるよアレ」
さやか「……本当の気持ちと向き合わなかった結果がこれだよ」
さやか「あたしって、ほんとバカ」
ほむら「さやか、フラグ回収には早いから。あとそのフラグ絶対回収しちゃいけないから」
杏子「つーかさー、これどうすんの? 見滝原ガチでヤバい事になってるんだけど」
まどか「そうだよ、このままなんてそんなの絶対可笑しいよ」
マミ「あなた達、どう責任を取るつもり?」
ほむら「……逆に考えましょう」
さやか「ああ、そうだね。逆に考えるんだ」
まどか「……逆に?」
ほむさや「どうせあと数日で戻るんだから、投げっぱなしでいいや、とね!」
まマ杏「投げっぱなしなのおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
第七話・完
まマ杏「マジで投げっぱなしなのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
YES、投げっぱなしです(終わりの挨拶
さぁ、妖精さんの研究が捗り、大分とんでもない事が起き始めてきました。
とは言え見滝原ゾンビ化はウィルスさんのパワーを借りているので、実は本当に大した事ではなかったり。
ほむら達の力も借りましたし。
月には行けなくとも絵本の中に新たな世界を作り、超局所的な降雨を生み出し、段ボールでオスプレイもどきを作れる。
それが妖精さんクオリティ。
さぁ、次回こそいよいよ本当に最後です。とりあえず今回ほどは待たせない、筈。
それじゃばいびーっ!
乙
あいっかわらずひっでえな!(褒め言葉)
鍵でふわふわ? って思ったらまさかのCCかwwwwww
乙
相変わらずの腹筋崩壊サブタイww
>>252
今日 昨日 一昨日 一昨昨日
A B C D
今日 一日前 二日前 三日前
>>255
改めて見るとひでぇwwww
特に今回更新分のサブタイトルは呼吸困難レベルで笑ったwwww
結界の外から爆撃ネタはほむらがグータラするSSで既に見ていたから驚かなかったが、
カードキャプター佐倉は流石に腹筋が耐えられなかった。
CC佐倉は流石に草不可避
>>1さん、ほむまんをほむほむしてもよろしいでしょうか?
どうも、>>1です。
前回より早く投稿すると言ったな……あれは嘘になった。
という訳で、中々時間が取れず未だ未完成です……が、目途は立ったので予告に。
来週月曜日の午前中に投下いたします。
最後ぐらいは予告しないとね! そんな言葉で遅れた事を誤魔化そうとしつつ、今日はさいなら~
どうも、人類は衰退しました平常運転を発売日に読んだ>>1です。
……妖精さんのはしゃぎぶりを私は見誤っていたようだ。毎度マザー○ップ墜落ぐらいのノリで
やっても良かったかも知れない。もしまた人退SS書く時は注意しよう(ぇ
>>249 >>257 >>258
CC佐倉は前回投下分では渾身のネタでした。かなり気に入ったので誰かCC佐倉のSS書いて(くれくれ厨
>>253 >>256
大体サブタイ考え、それを回収させるのにシナリオ考案時間の半分は費やされておりますので、
笑ってもらえたなら私としても嬉しい限りです。
>>259
まどか「そんなの、私が許さない」
ほむら「だからサブタイ回収が早いって」
それでは今度こそ本当に最後の投下タイム。
いきまっしょーい!
第八話 【私って、ほんとはバカだしー】
―――― 見滝原中学校・屋上 ――――
ほむら「ふぅ……最近ちょっとドタバタしていたけど、今日はやっと落ち着けるわね」
まどか「ドタバタの原因は主にほむらちゃんと妖精さんの所為だけどね。謎クラッカーと言い、見滝原ゾンビ化と言い」
まどか「というか、ゾンビ化は現在進行形だし。うち、パパもママもたっくんもあーとかうーしか言わないし」
ほむら「その件に関しましては真に申し訳ございません……」
まどか「キスしてくれたら許してあ・げ・る☆」
ほむら「あ、許してくれなくても結構です」
まどか「ぶぅー」
ほむら「……こほん」
ほむら「いよいよ残す問題は二つだけ」
ほむら「最終決戦、コイツを倒さねば夜明けは見られない――――ワルプルギスの夜。そして」
まどか「魔法少女が魔女になるという真実、だね」
ほむら「はぁ……どうしたものかしら」
まどか「魔女化の事を伝えたら、確か巴先輩が一番大変な事になるんだっけ?」
ほむら「ええ。私が経験した中で一番酷い時は、杏子を殺し、私も殺そうとした」
ほむら「勿論全部が全部そうなった訳じゃないけど、自害したパターンも多いし……」
ほむら「今回の選択ミスは、本当に全てを台無しにしかねないわ」
まどか「……ちょっと思ったんだけど……それって話さなきゃいけない事なの?」
まどか「秘密に出来るのなら、そのまま秘密にしといた方が良いんじゃないかな」
まどか「言うとしても、妖精さんに人間に戻してもらってからで良いんじゃ……」
ほむら「そうしたいのは山々だけど、インキュベーターがそれを許すとは思えない」
ほむら「奴は魔法少女が魔女になる際のエネルギーを目当てに活動している」
ほむら「そして以前、まどかが魔女になれば、莫大な量のエネルギーを得られると言っていた」
ほむら「奴はまどかを魔法少女にするためならどんな手も使う」
ほむら「例えばあなたの身近な人物に死んでもらい、その蘇生を願わせる」
ほむら「そのために……今まで伏せていた、魔女化の真実をマミ達に打ち明ける、とか」
まどか「! ……そっか、キュゥべえは情報を明かすだけで、自分の思う展開に誘導出来る……!」
ほむら「今更ながら、私達は圧倒的に不利な立場に置かれている」
ほむら「どうにかして、この状況を打開する策を考えなくては……」
まどか「うん……全てを知っている私達がなんとかしないとね……!」
ほむら「ええ、私達が……」
ほむら「……………」
ほむら「んー、真面目に考えるのも面倒だから、妖精さんに頼ろうかしらー」
まどか「待って待って待って待って待って?」
まどか「いや、ほむらちゃん。安易な手段にすぐ頼っちゃ駄目だよ? ちょっとは自分で考えようよ?」
ほむら「だってー。私って、ほんとは馬鹿だしー。ドジだしーノロマだしー陰険眼鏡だしー」
まどか「いきなり何言ってるの? あとほむらちゃん眼鏡じゃないでしょ?」
ほむら「今まで妖精さんに頼ったらなんとかなったじゃない。だったら今回も妖精さんに頼りましょうよー」グデー
まどか「ほむらちゃん、せめてちゃんと座ったままで話して! 屋上の床で横にならないのっ!」
ほむら「ぶっちゃけ見滝原をラクー○シティ化させた時点でもうなんでも良いやって気がして……」
まどか「そりゃあれだけの事をすれば大概の事はなんでも良いやって気にはなるけど本当になっちゃ駄目だよ!?」
ほむら「それに妖精さんに頼んだ方が安心確実だし……」
まどか「ぐっ、それは否定出来ない……」
ほむら「……妖精さーん」
妖精さん「およばれー?」ヒョコ
まどか(あ、ほむらちゃんの髪から出てきた)
まどか(……今日もほむらちゃんが作ってくれた、電波遮断機能付き洋服を着てる)
まどか(う、羨ましい……!)
ほどか「?」ゾワッ
ほむら「えと、妖精さん。さっきの話だけど、あなたならどんな手が思い浮かぶのかしら?」
妖精さん「そーですなー」ゴソゴソ
妖精さん「こちらのくっくるぱーぼむをつかえば、たいがいきにならなくなりますかと?」
ほむら「くっくるぱー……」
まどか「ぼむ……」
妖精さん「ひとたびつかえばくっくるぱー」
妖精さん「うつったきぶんもそうなかんじにがうたいもんくです」
ほむまど「……………」
ほむら「じゃあ、それ最後の手段で」
まどか「ああ、うん。そうだね、最後の手段にしとこうね。うん」
まどか「とりあえず、妖精さんは最後の手段だから、そうなる前は自力でどうにかしないとね」
ほむら「そうね。と言っても、私達に出来るのはキュゥべえよりも早く、やんわりと真実を伝える事ぐらい」
ほむら「後は……グリーフシードを大量に集めておく事、かしら」
まどか「グリーフシードを?」
ほむら「ソウルジェムは私達の魂であり、そこに溜まる穢れとは即ち呪い……魔女の糧である負の感情なの」
ほむら「元々肉体の維持のために微量ながら魔力を使っているから、穢れは戦わなくても溜まるのだけど」
ほむら「精神の不安定化、もっと言えば負の感情はそれを加速させる。自ら呪いを生んでしまうから」
ほむら「魔女化という救いようがない運命から生じる絶望は、相当なものよ」
まどか「そっか……じゃあ、それを浄化出来ないと……」
ほむら「勢い余ってそのまま魔女化、なんて事になったら笑えないわ」
ほむら「一応ループを重ねた事で相当量の備蓄はあるけど……でも、いよいよワルプルギスの夜が迫っている」
ほむら「戦いの苛烈さを考えると、この備蓄はあまり切り崩したくない」
ほむら「出来れば、そのため用の分を確保したいところね」
まどか「成程……」
ほむら「……だけど一番の問題は巴マミか」
まどか「巴先輩……錯乱、しちゃったんだっけ……」
ほむら「毎回そうなる訳ではないけど……でも、そうなる可能性が一番高い」
ほむら「今回のループでは妖精さんの力があるから手は打てるけど、そうなる前に誰かが死なれたらどうにもならない」
ほむら「どれだけ妖精さんが凄くても、死を遠ざける事が出来る訳では――――」
ほむら「出来る、訳では……」
妖精さん「あー、かぜにのってころころころがりまするー」コロコロー
ほむら(……あ、この子居るだけで世界観が優しくなるタイプだ。理屈でなく感覚で理解出来たわ、うん)
ほむら「と、兎にも角にも、妖精さんばかりには頼ってられない。私達でやり遂げましょう!」
まどか「うんっ! あ、だったら今日家に来ない?」
ほむら「え? まどかの家に?」
まどか「そう、作戦会議をしにね。何時もほむらちゃんの家でやってるけど、偶には家に来てよ!」
ほむら「でも、いきなりお邪魔したら迷惑じゃ……」
まどか「家族をゾンビにさせられたんだから、今更急な訪問ぐらい迷惑でもなんでもないよ」
ほむら「グサッ……じゃあ、お言葉に甘えようかしら。作戦会議は必要だし」
まどか「やったー!」
ほむら「もう、そんなに喜ばなくても……」
――――キーンコーンカーンコーン
ほむら「っと……お昼休みも終わりね。そろそろ教室に戻らないと」
まどか「ん。そうだね……あれ?」
ほむら「? どうしたの、まどか」
まどか「いや、今日はさやかちゃん屋上に来なかったなって……用事があるから遅くなるとは言ってたけど」
まどか「私とほむらちゃんがここでお昼食べる事は知ってたから、来ると思ったのに……」
ほむら「大方誰かに捕まって、教室で食べる事になったんじゃないかしら」
ほむら「そんな事より、早く片付けて教室に戻らないと遅刻するわよ」
まどか「はーい」
――――ガチャッ
マミ「」
さやか「」
杏子「」
ほむまど「……………え?」
ほむら「え……あの……なんでみんな、屋上に通じる扉の裏に居たのかしら……?」
さやか「……まどかとお昼を一緒にしようと思って……ついでに学校で見つけた杏子とマミさんも誘って……」
さやか「そしたら二人の話し声が聞こえて、立ち入りタイミングを計るために聞き耳立ててたと言いますか……」
まどか「……何時からいたの?」
マミ「……鹿目さんの家族がみんなゾンビになってるって辺りから……」
ほむら「……ソウルジェム、大丈夫?」
杏子「……割とアウトな感じ」
まどか「……ほむらちゃん、これからどうし」
ほむら「くっくるぱーぼむ~」テッテレー
まマさ杏「ですよねー」
その後、見滝原中学校でやたらカラフルな馬鹿五人が珍騒動を起こしたのは、また別の話……
第八話・完
第九話 【こんな展開、僕が許さない】
QB「勘違いしないでほしいんだが、僕らは何も人類に悪意がある訳じゃない。全ては宇宙の寿命を延ばすためなんだ」
QB「目減りしていくエネルギー……この問題解決のために、僕達は感情からエネルギーを生み出す技術を発明した」
QB「しかし当の僕らには感情がなかった。正確には利用出来るような、なんだけどね」
QB「そこで君達人類、特に二次成長期の少女達に目を付けたんだ」
QB「希望から絶望へと落ちる時、君達の感情は膨大なエネルギーを生じさせる」
QB「君達の犠牲は宇宙を救う、尊いものになるのさ」
QB「だから――――」
マミ「だーかーらー、ケーキはやっぱシンプルなショートケーキが一番でしょー」
さやか「いやいや、あたしはチョコ一筋ですから。杏子もそう思うでしょ?」
杏子「食いもんを区別すんじゃねぇ」
ほむら「これそういう問題じゃないから。ちなみに私は今パンプキンケーキが食べたい」
さやか「意外と可愛いもん好きだなオイ」
まどか「ほむらちゃん、今は好きな物聞いてるのであってこれから食べに行く訳じゃないからね?」
QB「君達、ちょっとは絶望する素振りぐらい見せてくれない?」
QB「なんなの? なんで全く無反応なの?」
QB「全員きっちり生存しちゃってこのままじゃ鹿目まどかが契約しそうにないから」
QB「こうして暁美ほむらの家で超重要な話してるんだよ? 魔女になっちゃうんだよ?」
QB「なのに動揺しないどころか関心すら見せないのはどういう事なの?」
QB「あれだよ? 泣くよ? 感情ないけどエネルギー回収の目途が立たなくて泣くよ?」
さやか「あー、まぁ、うん。いきなり聞けばそうなったかもだけど……」
さやか「ぶっちゃけ昨日聞いたし」
QB「え、マジ?」
さやか「マジマジ」
まどか「私は彼是一月近く前に聞いたよ」
QB「ちょ、え、誰経由で?」
ほむら「私」
QB「あ、ああ、うん。そういや君、イレギュラーだったね。イレギュラーな事態ばかりで忘れていたよ」
QB「でもだからってみんな平然としてるのはなんでなんだい? さやか達は昨日聞いたんでしょ?」
杏子「そりゃあ……まぁ、あれだ。くっくるぱーになってたし」
QB「そんなよく分からないけど著しく知能が低そうな言葉で説明されても」
杏子「だからよく分からないけど著しく知能が低くなってたんだよ」
杏子「こうして元に戻ってるのになんでまだ精神的に平気なのかは分かんねぇけどさ」
ほむら「それは……やはり脳に後遺症が……」
マミ「怖い怖い。想像したくない」
まどか「というかその場合、私巻き込まれただけだよね? いくら絶望しても元々魔女にならないんだし」
ほむら「大丈夫。いくらまどかがくっくるぱーになっても、あなたは私の親友よ」
まどか「いくら惚れてるからって、それで喜べるほど私今はくっくるぱーになってないからね?」
QB「何なのこれ? 君達なんでこんなお気楽系の雰囲気漂わせてるの? まどか、暁美ほむらに惚れてるの?」
QB「というかさ、今この見滝原で何が起きてるんだい? なんか市内全域がゾンビだらけなんだけど」
ほむら「別に良いじゃない。どーせ大した事にはならないわよ、多分」
さやか「そーそー。多分へーきへーき」
マミ「元凶が開き直らない」
QB「え? あれ君達がやった事なの?」
ほむら「そんな訳ないでしょ。私達はただの魔法少女なんだから」
QB「じゃあさっきのマミの言い分は何なんだい?」
ほむら「原因を知っているってだけよ」
QB「原因? それは一体?」
ほむら「んー、と……」
妖精さん「?」 ← 実は五人が囲んでる場所の中心に居た
ほまマさ杏「……妖精さんの仕業?」
QB「いや、みんな揃って何もないところじっと見た後答えられても。というか妖精さんって何?」
QB「なんか前にもそんな事言ってたよね?」
ほむら「あなたには知る由もない事よ」
QB「……成程。僕には教えられない、と。つまりそれが君達の切り札という訳だね」
まどか(切り札は切り札だけど……なんというか、核爆弾みたいな?)
QB「……やれやれ。君達の手はまるで読めない。お手上げだ」
QB「正直魔女化の話は、”理解は出来ないけど”こちらの切り札だったのに、それが通用しない以上」
QB「僕が打てる手はない。僕には、直接人間をどうこうする力や権利はないからね」
ほむら「随分素直に引き下がるのね」
ほむら「その引き際の良さ……ワルプルギスの夜かしら?」
QB「ふむ。やはり君は知っていたか……そうだね。近々ワルプルギスの夜がこの見滝原を襲う」
QB「あの魔女は現在この地球に存在する、どんな魔女よりも強大だ」
QB「どれだけ魔法少女が集おうと倒せない。追い払うのが精一杯だ……多数の犠牲と引き換えにね」
QB「だけど鹿目まどか。最高の素質を持つ君なら、ワルプルギスの夜を倒せるだろう」
まどか「……私は、契約しないよ」
QB「口ではいくらでも言えるね。特に人間の場合は」
QB「鹿目まどか。君は所謂優しい人間だ。町を蹂躙し、友の命を奪おうとするワルプルギスの夜を無視は出来ない」
QB「しかも君は暁美ほむらに惚れている」
QB「あらゆる想いが、君を契約へと導くだろう」
QB「そして、その膨大な素質を持つ君は最強の魔女として、この星に死をもたらす。それが君の運命だ」
QB「どうだい? 少しは自分の運命に戦慄したかい? 絶望したかい?」
まどか「やっぱり私はストロベリー味が良いかなぁ」
QB「聞けよ!? なんでちょっとこっちの一人語りが長くなったからってもう飽きちゃってるの!?」
ほむら「私かぼちゃ系が食べたーい。パンプキンパイでも良いわよー」
さやか「だから食いたい物の話じゃないっつの」
QB「だからはこっちの台詞だよ!? 何なの?! 全員僕の事おざなりすぎるでしょ!?」
マミ「やっぱりショートケーキが一番よ」
杏子「食いもんを区別すんな。等しく皆平らげろよ」
さやか「だからそっちもそういう話じゃないっつーの」
\ワイワイガヤガヤ/
QB「…………あったまきた。感情ないけどプッツンきた」
QB「こんな展開、僕が許さない」
QB「そうだ。僕達は希望と絶望からエネルギーを取り出すのが使命」
QB「インキュベーターとして、君達を必ず絶望させてみせる」
QB「……ワルプルギスの夜を迎えるのを、楽しみにしているよ」スッ
ガシッ
QB「あれ? 足にリボンが……?」
マミ「あ、そうだキュゥべえ……一つ言い忘れていたんだけど」
マミ「私達、気にしてないだけで……怒ってない訳じゃないのよ?」
QB「え」
さやか「そーそー。アンタのせいであたしはゾンビになるし、恭介は仁美に盗られるし」
さやか「つー訳だからさぁ……割とムカムカしてんのよ」
QB「あ、あれ……あれー?」
杏子「まぁ、そんな訳だ。ほむらから聞いたけど、お前の身体って端末かなんかに過ぎないんだってね?」
杏子「良かったなぁ。その身体、いくら潰しても替えが利くんだろ?」
QB「そ、そうだけど……でも、その、わざわざここに転移してくる訳じゃ」
ほむら「妖精さんアイテム『引き寄せ磁石』~」
ほむら「なんでもこの磁石を使うと、欲しい物が次々と、必要以上に引き寄せられるらしいわ」
ほむら「あなたが何処に逃げようと、使ってないスペア諸共ここに連れ戻してあげる」
QB「え、何その超技術。ちょっとそんなの聞いてない」
まどか「てぃひひひひひ……私はみんなと違って魔法は使えないけど……」
まどか「人間その気になれば、猫ぐらい素手で殺せるんだよ?」
QB「あ」
あんぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
第九話・完
第十話 【もう誰にも頼らないもん】
ほむら(どうも暁美ほむらです。今日は大切な友人達を自宅に招いております)
ほむら(数多のループを積み重ね、ついに辿り着いた全員生存関係良好の最高条件)
ほむら(しかもみんな魔法少女の真実を知っても絶望せず、むしろ鋼鉄メンタルを身に着ける)
ほむら(いっえーい☆)
ほむら(……はい、喜びのターンここまで)
ほむら(そんなこんなで、今回のループはとても上手くいっている旨を昨日まどか達に伝えたら)
ほむら(なんという事でしょう。みんなでパーティをしようという話になった)
ほむら(パーティと言ってもパジャマパーティで、みんなでお茶菓子持ち込んでわいわいしようってだけなんだけど)
ほむら(それでも……私にとっては”久しぶり”のパーティ)
ほむら(とても楽しみにしていたし、実際ついさっきまで楽しかった。今も、きっと気持ちとしては楽しい)
ほむら(だけど――――止めさせなければ)
ほむら(みんなを、止めなければならない)
ほむら(だって……)
さやか「うんわっ!? これほむら!? 超可愛い!」
マミ「暁美さん、こんな小さい頃から眼鏡掛けてたのねー」
杏子「……可愛い」
妖精さん「にんげんさんにも、ちびにんげんじだいがあったのかー」
ほむら(みんなで、私の幼い頃やらなんやらが赤裸々に記録されているアルバム? を勝手に見ているのだから……!)
ほむら(事の発端はまどかで、原因はやっぱり妖精さん)
ほむら(みんなでだらだらとお喋りしていた時、まどかが唐突に私のアルバムを見てみたいと言い出して)
ほむら(だけど私はあくまで心臓の治療のためにこっちで暮らしている訳で、だからアルバムは実家。ここには置いてない)
ほむら(そう伝えたところ、妖精さんが……)
――――だったらいま、おつくりしますが?
ほむら(迂闊だった。彼なら、何をしてもおかしくないのに)
ほむら(……魔法少女でも反応出来ない超スピードでまどかが妖精さんにGOサイン)
ほむら(妖精さんも魔法少女の視力で捉えられない超スピードで発明一丁)
ほむら(出来上がったのは……”私の記憶”をコピペして作ったというアルバムだった)
ほむら(もう何が凄いって、”私の記憶”から作っているから私の思い出見放題)
ほむら(しかも壁をスクリーンにして、映像データとしてみんなに公開するという自殺物の代物!)
ほむら(挙句私ですら忘れている事、深淵の記憶とやらから呼び起こすようで)
さやか「ほほう、ほほう♪」
マミ「これは中々……!」
杏子「あっはははははははははは!」
妖精さん「にんげんさんにたのしんでもらえて、ぼくもしあわせですー」
ほむら(子供時代の、根暗で僻みで間抜けな時代の私が赤裸々に暴かれていく……!)
ほむら(こ、このまま自分でも把握してたりしてなかったりする恥ずかしい過去が露呈したら!)
ほむら(他の人に笑われるのはまだしても、まどかに嫌われでもしたら――――)
ほむら「……そう言えばまどかは? 言い出しっぺだったのに」
さやか「ああ、まどかならそこに」
ほむら「? そこって……」
まどか「」ビクンビクン
ほむら「あら、まどかったら鼻血を噴き出して顔面蒼白になりながら明らかに危ない痙攣しちゃって」
ほむら「って、まどかああああああああああああああああああああ!?」
マミ「なんか、幼稚園児の暁美さんの映像を見たら」
マミ「ほむらちゃん 小さい頃から 可愛いな こんなの見たら 吹かずにおれず」
マミ「と言った後、大量の鼻血を吹いて……」
ほむら「それ辞世の句!? というか辞世しちゃう気!?」
杏子「それより次見ようぜ次!」
杏子「ほら、小学生の辺りとか!」
妖精さん「ではそのようにえいぞーうつします」
ほむら「しょ、小学校って……」
ほむら(小学校の時の私って何か恥ずかしい事してなかったっけ……?!)
ほむら(いや、眼鏡で根暗で僻みで間抜けでのろまだったけど、身体が弱いって境遇を考えればそう変じゃない、筈!)
ほむら(大丈夫、堂々としていればいいのよ……そもそも小学校時代とはつまり過去であり今ではないのであって)
ほむら(未熟な姿や劣った姿を見られたところで私が恥じる必要はないのよ、うん!)
さやか「あ、ほむらがクラスメートの男子にラブレター送ろうとしてる」
ほむら「あ゛あああああ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛!?」ジタバタ
マミ「!? 暁美さんがいきなり頭を抱えながら浜辺に打ち上げられた魚みたいに跳ねてるわ?!」
妖精さん「めずらしーおすがたですな?」
杏子「そんなに恥ずかしかったんかい……」
ほむら(――――ま、まま、不味い!)
ほむら(まさかよりにもよって”あれ”がみんなの目に晒されるなんて!)
ほむら(アレだけは! アレだけは……!)
さやか「えーっと、どんな文面のやつを送ったのかなー」
ほむら「止めなさい! それ以上見たら舌噛み切って死ぬわよ!」
杏子「死なないから、アンタ魔法少女だから」
ほむら「じゃあソウルジェム砕いて死ぬ!」
マミ「ボッシュートです」リボンシュルシュル
ほむら「ぎゃああああああああああああああああああ!?」
ほむら「嫌! お願い、お願いそれだけはあああああああ!」
さやか「……そんなに見せたくないの?」
ほむら「当然よ! ラブレターの文面を誰彼かまわず見せられる奴が居るなら、そいつは恋が成就してる奴よ!」
さやか「意外と多そうな括りだな、おい」
さやか「……つー事は、アンタはふられた訳だな」
ほむら「ぐ……そ、そうよ……初恋は実らないって言うじゃない」
ほむら「だから、あの、私のラブレターなんて見ても何も得るものはないと言うか」
さやか「ふむ。確かに失敗したラブレターを参考にするのは、あまり良くないね」
ほむら「でしょ? でしょ? だから、その」
さやか「だから反面教師としてしかとその文面を覚えておこう」
ほむら「この糞ヤロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
マミ「暁美さん取り乱し過ぎ! キャラ変わってるから!」
杏子「つーかどんだけ嫌なんだ……一体何を書いて……」
マミ杏「……………」
マミ「私も後学のために見ておこーっと」スス
杏子「あたしもー」ススス
ほむら「げぇっ!? 増えたっ!?」
妖精さん「それではまもなくこうかいですー」
ほむら「あ、ああ……!」
ほむら「だ、駄目ええええええええええええええええええええええええええ!!」
・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。
どうしてあなたは私の心をかきみだすの?
あなたのそばにだれかがいると、私の心はちくちくするの。
あなたがそっとほほえむと、私の心はきゅっとしめつけられるの。
あなたの声を聞いてしまうと、私の心はバタバタと走り出しそうになるの。
ねぇ、あなたはどうしてそんなに私の心をいじめるの?
あなたは私をどう思っているの?
もうこの気持ちはおさえられない。おさえたくない。
だから今日、あなたに伝えます。
放課後に、私とあなたが初めて出会ったこの場所に来てください。
あなたを思う、一人の女の子より。
・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。・:*:・:*:・゚'☆,。
ほむら「」
さやか「わーお」
マミ「あらあら」
杏子「おやおや」
さやか「これ、ポエムじゃん……何? ポエムでラブレター書いた訳?」
杏子「うわ、しかも男子にラブレターだと気付かれず、クラス中に回されたぞ」
杏子「……ああ、待ち合わせ場所が何処か分からんかったんだな。私達が初めて会ったこの場所でって」
さやか「女子の同情する眼差しがほむらに向けられてる……」
杏子「まぁ、精一杯考えたもんだし、笑うのは可哀想だよなぁ」
マミ「そうよねぇ。中々出来も良いし」
さや杏「え」
マミ「え?」
マミ「……………あ、いや! あくまで小学生としてはという事だからね!?」
さやか「あ、はい……うん」
ほむら「……………」
杏子「おーい、ほむらー? 生きてるー?」
さやか「まぁ、なんだ。予想外だったけど」
さやか「結構可愛かったよ? クールな転校生にもこんな一面があったんだなって」
ほむら「」ピキッ
マミ「うん、可愛かった可愛かった♪」
杏子「ほむらもちゃんと女の子だったんだなー。好感度アップだな」
妖精さん「にんげんさんのみりょくに、ぼく、めろめろめろめですー」
ほむら「……う」
さやか「あ、怒った? いや、でも馬鹿にしてる訳じゃないんだよ」
さやか「なんつーのかなー、ほら、今までは……一応取っつきにくいキャラだったし」
さやか「親しみが持てたと言うか、アンタの事知れてあたしは嬉しいと言うか」
ほむら「う、う、ぐ」
さやか「だからちょっとやり過ぎたかもだけど――――」
ほむら「う、ふ、ふぐぅうぅぅうぅぅ……!」ポロポロ
マさ杏(な、泣いたああああああああああああああああああ!?)
マミ「ご、ごごごごごごめんなさい! そんな、泣くとは思ってなくて!」
さやか「ごめん! 本当にごめん! まさかそんなに嫌がってたなんて……!」
杏子「ほ、ほら! その、あたしの恥ずかしい思い出見ていいから! 馬鹿にしていいから!」
さやか「そ、そうだ! あたしも恥ずかしい秘密アンタにだけ教えちゃうから、だからその」
ほむら「わ、わだ、わだじ……」
――――パシッ
マミ「あ、没収したソウルジェムを奪って……」
ほむら「わだじ家出するうううううううううううううううううううううううっ!!」ダッ
マさ杏「えええええええええええええええええええええっ?!」
さやか「家出ってこの家アンタしか住んで、ああ、ほむら!? ほむらーっ!?」
マミ「何処行くの暁美さーん!?」
杏子「つーか姿見えないし! 魔法か!? 時間停止使ったのかよおーいっ!?」
……………
………
…
―――― 見滝原公園 ――――
QB「やれやれ……昨日は大変な目に遭ったよ」
QB「そりゃ今まで何度も経験してきたよ。真実を知った魔法少女に殺される程度の事は」
QB「でも流石に未知のパワーで何百ものボディを強制的に集められた挙句全て殺されるのは初めてだったよ……」
QB「いくらボディは食べて再利用するって言っても、エネルギー変換時にロスが生じるから勿体無いのに……」
QB(……しかし、あの力は一体……あれが彼女達の言っていた、妖精なる力なのか?)
QB(調査が必要か? とは言え、センサーで感知出来ない対象をどうやって……)
QB「ん?」
ほむら「……………」ジワァ、ポイ
ほむら「……………」ジワァ、ポイ
ほむら「……………」ジワァ、ポイ
QB(あれは……暁美ほむら? 公園のベンチに座って何を……?)
QB(……なんか、猛烈な勢いでソウルジェムを浄化してる)
QB(え、何あの消耗スピード。五秒に一個グリーフシードを使ってるんだけど)
QB(どんだけー……)
QB(あ、いやいや。あまりにも猛烈なエネルギーの発生に思わず感情が生じそうになった。危ない危ない)
QB(……ふむ。また無意味に殺される可能性はあるが、丁度いい)
QB(妖精の力とやらを主に行使しているのは、暁美ほむらと推測出来る)
QB(彼女の周囲を詳細に調べれば何か分かるかも知れない)
QB(あの未知の力が僕達に役立つものという可能性もあるし、多少のリスクは仕方ないね)
QB「やぁ、暁美ほむら。こんなとこで何をしているんだい?」
ほむら「……キュゥべえ」
QB「見たところ一人のようだね。まどかやマミ達とは別行動中かな」
QB「それとも、昨日の妖精とやらの力を使うための仕掛けでもしているのかい?(ふむ……気になる存在は感知出来ない)」
QB(単純にここでソウルジェムの浄化をしていただけ……?)
QB(いや、昨日もこちらのセンサーに反応はなかった。より詳細な分析が必要だろう)
QB(少し時間を稼ぐか)
QB「……ソウルジェムの浄化は結構な事だけど、使い終わったグリーフシードをそこらに捨てるのはどうかと思うよ」
QB「ほら、回収してあげるからこっちに投げて」
ほむら「……………」
QB「? 暁美ほむら、どうし――――」
ほむら「ふんっ!」パンッ
QB「きゅぶしっ!?(い、いきなり銃で額を撃ち抜かれ……!?)」
QB「な、なんだい? いきなり攻撃してくるなんて穏やかじゃな」<newボディ
ほむら「ふんっ!」ズドン
QB「ぃべくしっ!?(こ、今度はマグナムで全身バラバラにーっ!?)」グチャア
QB「だから一体なんなんだい? そんなに荒れ狂うなんて、僕の知る君らしくないね」<木陰に身を隠す
QB「鹿目まどかやマミ達はどうしたんだい?」
ほむら「……もう……もう……」
QB「もう?」
ほむら「もう誰にも頼らないもんっ!!」
QB「……え?」
ほむら「まどかは私の恥ずかしい過去を知りたがるし、妖精さんは面白ければなんでもするし!」
ほむら「嫌だって言ったのにさやかもマミも杏子も止めてくれないし!」
ほむら「あなたはどーせ自分の事しか考えてないし!」
ほむら「もういいもん! 私一人で頑張るもん!」
ほむら「びええええええええええええええええええええええっ!!」ジワァ、ポイ
QB(うわー……噴水のように涙を吹き出しながらソウルジェムを浄化してる……)
QB「……君、口調変わってない?」
ほむら「こっちが地なの……ぐすん」
QB「あ、そうなの……」
QB「ま、まぁ、そういう事なら僕は何も言わないよ……じゃあ、そろそろお暇させていただき」
ほむら「待って」ガシッ
ほむら「……ストレス発散させてもらうわ」
QB「ですよね」
\キュプーシッ/
第十話・完
第十一話 【最後に残っちゃった道しるべ】
ほむら「……えー、昨日は醜態を晒して申し訳ありませんでした……」
さやか「いや、こっちも悪かった……ごめん」
マミ「いくら可愛かったからって、やり過ぎたわ……」
杏子「すまねぇ……秘密を暴くなんて、あたしらしくなかったよ……」
まどか「眼鏡ほむらちゃん、もっと見ていたかった……」
ほむら「……こほん。この話はこれで終わりにしましょう」
ほむら「なんか最近ほのぼの日常系ギャグアニメのような日々を送ってきたけど」
ほむら「間もなく、本当の魔法少女の日々が戻ってくる」
マミ「……ついに、来るのね」
ほむら「ええ。統計的には、明日にでも」
ほむら「だから!」バッ
さやか(! ほむらが何かを取りだした……一体……!)
ほむら「第一回、ワルプルギス討伐会議を開きましょー!」<立て看板設置
まどか「どんどんぱふぱふー♪」
さマ杏「いやいやいやいやいや」
さやか「何を取り出したかと思えば立て看板かよ!?」
マミ「と言うかノリが完全に日常系ギャグアニメのそれじゃない!」
杏子「そもそも第一回って、第二回とか予定してんのかよ。明日来てもおかしくないのに」
ほむら「……はっ!? 私ったらなんて馬鹿な事を!?」
さやか「気付いてなかったんかい!?」
マミ「あなた完全に日常系ギャグアニメの住人と化してるわよ!?」
杏子「思考回路がループ前並にポンコツ化してるぞ」
妖精さん「はて、どーしてこうなったんでしょうなー?」
さマ杏(あなたのせいだよ、妖精さん)
ほむら「……こほん。と、兎に角、作戦を立てなければならない事は間違いないわ」
マミ「そ、そうね。相手は魔法少女の間で伝説のように語られている魔女……無策で挑むのは危険過ぎる」
さやか「ほむらは過去に戻れるから、何度も戦ってんだよね? どんな奴なの?」
ほむら「……特殊な能力はないのだけれど、純粋に強過ぎるのが厄介ね」
ほむら「その出鱈目な魔力は、高層ビルすら宙に浮かべるほど」
ほむら「更にその防御力は指向性地雷やミサイル、ロケットランチャーの直撃すら平然と耐えるわ」
マミ「とんでもない奴ね……」
さやか「そ、そんなのとどうやって戦えばいいんだよ……」
ほむら「幸い、と言えるかは分からないけど、過去のループではマミやまどかが命を賭し、撃退には成功している」
ほむら「もしかすると魔力のない攻撃が通用し辛いだけかも知れない」
杏子「つまり、あたし達攻撃型の魔法少女が戦いの鍵になる訳か」
ほむら「ええ……とは言え、過去の戦果もあくまで撃退しただけ。真っ向勝負で撃破したのは」
ほむら「十日で地球を滅ぼせる魔女になるほどの素質を持った、まどかだけよ」
まどか「……………」
ほむら「尤も、力を制御できずに一瞬で魔女になってしまったけど」
杏子「つまり契約してかるーくハッピーエンド、とはいかない訳だ」
ほむら「そういう事」
ほむら「さて……どうしたものかしらね」
さやか「……………」
マミ「……………」
杏子「……………」
まどか「……………」
ほむら「じゃ、妖精さんでいいかしら?」
さマ杏「意義なーし」
まどか「ちょっと待って」
まどか「いや、本当に待って。みんなちょっとは考えようよ? 自力でどうにかしようよ?」
さやか「まどか、これは負けられない戦いなんだよ? 手段を選んでる場合じゃないよ」
まどか「選んじゃいけない手段もあると思うんだけど? 見滝原ゾンビ化の事忘れてない?」
杏子「大丈夫大丈夫。妖精さん悪い子じゃないからさ」
まどか「悪い子ではないけど迷惑な子だよね? お陰で見滝原、ゾンビの町って観光客でごった返したんだよ?」
マミ「元に戻ったから良いんじゃないかしら?」
まどか「戻りましたけど、弊害残ってますから。見滝原の人同士なら、あーとかうーで会話出来るようになったという弊害が」
ほむら「良いじゃない楽で確実ならそれで。私もう繰り返すの面倒臭いし」
まどか「ごめんほむらちゃん。言ってる事ついてけない。納得出来ない」
妖精さん「にんげんさん、たのしいことおすきでない?」
まどか「あなたの楽しいの基準が分からないの!」
ほむら「まぁまぁ、落ち着いてまどか。あなたの言いたい事は、実際のところちゃんと理解しているわ」
ほむら「確かにまた見滝原がゾンビの町になるような……或いはそれ以上の事が起きるのは私としても避けたい」
ほむら「だけど、ワルプルギスの夜を真面目に倒そうとすれば」
ほむら「見滝原そのものが、壊滅的被害を受ける事になる」
まどか「……!」
ほむら「見滝原の人々がゾンビになっても良いとは思わない。それでも、本当に死んでしまうよりかはマシな筈」
ほむら「無慈悲な力に対抗するには理不尽な奇跡で挑む」
ほむら「それが確実で、確かな方法だとは思わない?」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「ぶっちゃけると昨日の出来事のせいでグリーフシードのストックが皆無だから、頼らざるを得ないだけなんだけど」
さマ杏「スイませェん……」
まどか「良い話風なのをまとめてごっそりひっくり返したね?」
ほむら「まぁ、そんな訳だから存分に頼るとしましょう! 妖精さん、お願いできるかしら?」
妖精さん「たのまれればことわれないのが、したうけのつらいとこですな?」
ほむら「え。辛いの?」
妖精さん「もっとかこくなろうどうじょーけんつきつけてー」
ほむら(あ、そういえばこの子、M体質ぽかったわね……)
ほむら「ま、まぁ、やる気出してくれるのなら頼もしいわ。ワルプルギスにも勝てるような道具、期待してるわよ」
妖精さん「のーきはいつまで?」
ほむら「出来れば明日に備えて早めに寝たいし、午前一時までにしましょう」
妖精さん「とっかんこーじでかんせいさせまっしょー!」ピョンッ
妖精さん「おやくそくのじかんまでにはのうひんしまっせ!」
ほむら「……………」
ほむら(巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか……それが私の想定していた最初の”最高の戦力”)
ほむら(ただ、それでもワルプルギスの夜相手に犠牲なしで勝てるとは思っていなかった)
ほむら(だけど妖精さんなら)
ほむら(見滝原全土をゾンビ化させ、インキュベーターの身体をも自由に集める高度な科学力なら……或いは……!)
ほむら「頼むわよ、妖精さん……」
ほむら「私の願いが叶うかどうかは、あなたに掛かってるのだから……!」
……………
………
…
―――― AM1:00 ――――
妖精さん「ついにかんせいしたです……さいきょーむてきのちょーへーきが」
ほむら「う、嘘……!」
さやか「ほむらの家に泊まって、妖精さんの発明が完了するのを待っていたけど……」
マミ「ま、まさかこんな物を一晩、いえ、それより短い時間で作るなんて!」
杏子「これが、妖精の科学力……!」
まどか「でも、これ……!」
全長50メートルの巨大リ○ちゃんロボ【】デーン
まどか「勝てるとか勝てないじゃなくて世界観変わっちゃうでしょーっ!?」
妖精さん「ちょーおおきなひとがたほーだい、おりかさんいちごーです」
ほむら「へ、部屋の空間を魔法で広げておいて良かったわ……広げてもギリギリのサイズだけど」
マミ「何をどうすれば一晩でこんな物が出来上がるの!? と言うか材料は何処から!?」
さやか「これ本当に科学なの?! 魔法じゃないの!?」
まどか「優れた科学は魔法と見分けが付かないって誰かが言ってたけどジョークとも見分けが付かないんだね……」
杏子「つーかなんで○カちゃん人形なんだよ……」
ほむら「ま、まぁ、外観に関しては今更何も言わないわ……」
ほむら「問題はスペック。どれほどの戦闘力があるのか」
妖精さん「そちらもごようぼうにおこたえしますです」
妖精さん「ちょーごーきんぼでーは、みさいるとかはねかえすです」
妖精さん「ろけっとぱんち。いんせきだってこーなごな」
妖精さん「めからびーむ。こんくりどろどろとかすです?」
妖精さん「くちれーざー。れいとーこーせんはきますです」
まどか「す、凄い!」
さやか「ところで冷凍光線ってどんな原理なんだ?」
マミ「ビームにしろレーザーにしろエネルギーの一点照射だから、科学的に考えると高熱になるだけよね……」
杏子「考えたら負けじゃね?」
妖精さん「さらにおっぱいみさいる。おいろけぱわーでてきさんめろめろです」
ほむら「おっぱいミサイルは外しときなさい」
妖精さん「あー……ふひょーかー……」
まどか「で、でも、他の武器だけでも凄いよ! これならワルプルギスの夜も倒せるかも!」
妖精さん「おっずも、わるぷーさんとりかさんでは、りかさんがれーてんななばいですが?」
マミ「誰相手に賭け事やってるの?」
ほむら「それで、どうやって戦わせるの? 自動操縦?」
妖精さん「……きゅーごしらえで、みかんせいぶぶんおおし」
妖精さん「じんこうちのう、とうさいできず……」
妖精さん「むのーなぼく、みすてられます?」
ほむら「これだけ立派な物を作ったあなたが無能なら、全人類が無能以下になってしまうわ」
まどか(むしろ妖精さん製の人工知能とか、嫌な予感しかしないよね)
さやか「だけど自立行動しないって事は、誰かが操縦しないといけない訳?」
妖精さん「そーですなー」
妖精さん「さんにんのりでせっけいしましたです」
ほむら「三人乗り……」
マミ「えっと、どうしたらいいかしら……やはり暁美さんには乗ってもらうとして……」
ほむら「いえ、私以外の三人……さやか、マミ、杏子に乗ってもらうのが得策ね」
マミ「え?」
ほむら「私の攻撃手段……銃やミサイルなら、遠距離からの砲撃支援が可能よ」
ほむら「勿論それはマミや杏子にも可能でしょうけど……でも私の場合、攻撃時にグリーフシードを気にしなくていい」
ほむら「不慮の事故でストックがない以上、魔法による援護はいずれ尽きる。その上魔女化の危険すらある」
ほむら「私ならその点は気にしなくていい。弾数に限りはあっても、私は魔女化を気にしなくていい」
ほむら「全員で生還するには、私以外の三人で乗ってもらうのが一番良い……」
さやか「で、でも、妖精さんの作ったロボットと最強の魔女の戦いだよ!?」
さやか「生身で近くにいたら危険過ぎる! その点あたしなら、怪我しても魔法で……」
ほむら「それでは援護が期待出来ないし、それに、魔女化の危険があっては意味がないわ」
杏子「……確かに、ほむらの言う組み合わせが一番確実か」
さやか「! 杏子、何を――――」
マミ「美樹さん、これは見滝原の命運を賭けた戦いになるの。妥協は許されない」
マミ「……暁美さんの作戦が、最も合理的よ」
さやか「マミさんまで……」
まどか「だ、だったら私が乗るよ! 私なら最初から戦う力がないから、ロボットに乗れば戦力に……」
ほむら「駄目よ。巨大ロボに乗っての戦闘なんて、内部がどれほど危険か分からない」
ほむら「魔法少女のタフネスがなければ流石に危険だわ」
まどか「でも、でも……!」
ほむら「大丈夫。私はあくまで全員生存を目指してこの作戦を言っているの。死ぬつもりなんて毛頭ない」
ほむら「それにあの妖精さんが作ったロボットよ?」
ほむら「きっと、ワルプルギスの夜だって楽勝よ。私の出番なんてないかも知れないんだから」
さやか「ほむら……」
さやか「……分かった。そうまで言うなら、あたしも従う」
まどか「……………」
ほむら「……さぁ、一度は操縦しとかないとね」
ほむら「みんな、お願いできる?」
マミ「ええ、勿論」
杏子「ぶっつけ本番するほど油断しちゃいないよ」
さやか「えーっと、どうやって乗り込めばいいのかな……?」
妖精さん「こちらからおのりくだされ」ポンッ パカッ
さやか「あ、足の部分から入れるのね」
マミ「へー、中は階段になってるの……」テクテク
杏子「開けたら閉めるっと」ガシャン
ほむら「……………どう? ちゃんと操縦室に行けた?」
『あー、あー、マイクのテストちゅー』
まどか「あ、さやかちゃんの声だ」
マミ『特に問題なく入れたわ。外の声もよく聞こえるし……まぁ、操縦席のデザインがメカというより、喫茶店風なのが謎だけど』
ほむら「そ、そう(まるで想像出来ない)……操縦は出来そう?」
杏子『あー、それなんだけどさー』
杏子『なんかボタンが十個ぐらいあるだけで、レバーとかが見当たらねーんだよなー』
杏子『いや、レバーでどうやって操縦するんだって言われたら困るけどさ』
さやか『でも確かに、ボタンだけじゃ動かし方の想像すら出来ないよね』
さやか『どうやって操縦するの?』
ほむら「そうね……妖精さん、教えてくれない?」
妖精さん「うごきませんが?」
人間,s「……………え?」
妖精さん「こちら、こてーほうだいです。あしなんてかざりです」
杏子『飾りなのかよ!? いや、それ言ったら人型してる時点でアレだけど!』
まどか「そう言えば妖精さん、戦闘ロボットじゃなくて人型砲台って言ってたね……」
ほむら「くっ……迂闊だった……ちゃんとオーダーを出すべきだったわ……」
さやか『ならこれ、役立たずって事!?』
ほむら「いえ、市街地までワルプルギスが侵攻してきた時には役立つはずよ」
ほむら「最終防衛ラインだと思えば、そんな役立たずと言うほどではない、かと」
マミ『まぁ、一晩で割と頼もしい最終防衛ラインが出来たと思えば、悪くはないわよね』
杏子『……だな。あたしらじゃ、一晩頑張って準備してもグリーフシードを数個集めるのが精々だろうし』
杏子『妖精さんがいなけりゃ本来あたし達だけで戦ってたんだ。十分だよ』
さやか『……そう、だね。うん、悪い事言った……妖精さん、ごめん』
妖精さん「もっとけなしてー」
さやか『喜んでるんかい!?』
マミ『あはは……まぁ、操縦出来ない以上、もうやる事はないわね。武器は流石に使えないし』
マミ『そろそろ寝ましょう。明日に備えないと』
マミ『……あら? 操縦席の扉にノブがないわね……』
ほむら「ノブがない?」
マミ『これじゃ出られないわね……妖精さん、開けてもらえないかしら?』
妖精さん「あきませんが?」
人間達「……………え?」
妖精さん「こちら、まだまだみかんせいゆえ、とびらかいへーしませぬ」
ほむら「……開閉しないの?」
妖精さん「とっかんこーじですからなー」
まどか「えっと、じゃあさっき開けた足の部分をこっちから開ければ……」
妖精さん「あんぜんかんりじょー、なかににんげんさんはいると、なかからしかあけられませぬ」
マミ『……それとなくティロ・フィナーレ』ガンッ
マミ『あ、全然ダメ。攻撃してもビクともしない』
妖精さん「むてきのちょーごーきんですからー」
ほむら「……えっと、扉が開くようにするにはどれぐらいの時間が……」
妖精さん「はいせんとりつけがひつよーですゆえ、あとふつかほどかと?」
ほむら「……………」
ほむら「あれ?」
―――― 翌日 ――――
ほむら「……ふふ」
ほむら「ふ、ふふふふふ」
ほむら「うふふふふっ! あーっははははははははははっ!!」
ほむら「私はついに辿り着いた! 誰も死なず、皆と打ち解け、運命を乗り越えようと誓い合った時間軸に!」
ほむら「さやかの回復魔法!」
ほむら「マミの強大な遠隔射撃!」
ほむら「杏子の遠近ともに活躍出来る戦闘技能!」
ほむら「もう何も怖くない! 全てが望んだ通りなのだから!」
ほむら「後悔なんてする訳ない! 始めて掴んだ最高の結果なのだから!」
ほむら「一緒に居られる! この夜を越えれば全てが終わるのだから!」
ほむら「なのに、なのに……」
ワルプルギス【ウフフフフ、アーッハハハハハハハハハハ!!】
ほむら「なんで私一人でワルプルギスに立ち向かう羽目になってんのよおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ほむら「助けはねぇ! 仲間もねぇ! グリーフシードも余ってねぇ!」
ほむら「守りはねぇ! 攻め手もねぇ! トラックは一台置いてある!」
ほむら「わたしゃこんな戦い嫌だぁ……こんな戦い嫌だぁ……」
ほむら「なんで最後の最後で、ロボットに仲間全員閉じ込めらちゃうのよぉー……」
ほむら「……このまま実家に帰りたい」グテー
ワルプルギス【アッハハハハハハハハハハハハ】
ほむら「……まぁ、そうは言っても無視出来ないし」
ほむら「結局これしかなかった……今朝までに徹夜で作ってもらった妖精さんアイテム」
ほむら「これが最後に残っちゃった道しるべ……私達がハッピーエンドを掴めるかの全てが、これに掛かっている」
ほむら(妖精さん曰く”急ごしらえ”の代物……何処までやれるかは分からない)
ほむら(だけどここまで来たらやるしかない!)
ほむら(ええ、そうよ! どーせここで負けても後ろには”アレ”が控えている!)
ほむら(だからこの戦いは――――私の意地だ!)
ワルプルギス【フゥアハハハハハハハハハハハハ】
ほむら「覚悟しなさい、ワルプルギスの夜! 私は、必ず未来を掴み取ってみせる!」
ほむら「先発として使うアイテムはこれ――――」
ほむら「『自らぶつかっていくスタイルの箪笥の角』!!」
……………
………
…
―――― ほむホーム ――――
まどか「ほむらちゃん……」
まどか(見滝原には避難警報が出ている……ママから電話で避難所に行くよう言われた)
まどか(幸い、かは分からないけど、ほむらちゃんの家でお泊りする事になっていたから)
まどか(避難所で私の姿が見えなくても、まだママ達には怪しまれてないと思う)
まどか(……多分ちゃんと避難所に行ったのかを確認しようとしている電話とメールが幾つも来てるけど)
まどか(ごめんなさい、ママ、パパ。まどかはちょっと悪い子になります)
まどか(だって……みんなが戦おうとしているのに、私だけ逃げるなんて出来ないから)
杏子『くそっ……結局前線はアイツに任せる事になっちまったか……』
さやか『悔しい……』
マミ『大丈夫……いざとなったら、ここまで引き連れるという話になってる』
マミ『町には大きな被害が出てしまうけど、でも、人命さえ守れれば……』
まどか「……………」
妖精さん「にんげんさん、ぼくのせいでたいへんなことになってます?」
まどか「……妖精さん……」
さやか『……いや、前にほむらが言ってた』
さやか『妖精さんがいなければ、あたし達全員死んでいたって』
マミ『ええ……命の恩人であるあなたを悪く言うなんて出来ない』
マミ『それに、前線に出向けないだけ。あなたは確かに一晩も掛けずに最強の兵器を用意してくれた』
マミ『奴がここまで来たら、いよいよ私達の出番よ』
杏子『そーだな。それまで精々ゆっくりさせてもらおうぜー』
杏子『結局あまりたくさんは眠れなかったしな。丁度いいってもんだ』
まどか「みんな……」
QB「やれやれ、避難所にいるかと思ったら此処にい、うわっ!?」
まどか「あ、キュゥべえ(唐突に登場したのにまず自分から驚くという……)」
QB「え、何この巨大ロボ……え、なにこれ?」
まどか「……私達の最終兵器だよ」
QB「ふ、ふーん……こ、こんなのが最終兵器ねぇ……素材はただの木材のようだけど」
まどか「でも目からビームが出るんだよ」
さやか『口からレーザー吐くよ』
マミ『ロケットパンチもあるわ』
杏子『おっぱいミサイルもあるぞー』
QB「訳が分からない……エネルギー反応、ほぼ皆無なんだけど……」
QB「あ、いや、そんな無駄話をしている場合じゃない」
QB「鹿目まどか。君の大切な暁美ほむらがワルプルギスの夜と戦いを始めた」
QB「でも、彼女はこのままじゃ敗北するだろう。彼女の素質では、あの魔女は倒せないからね」
QB「どうだい? 彼女を助けたくないかい?」
まどか「……ほむらちゃんは負けないよ。妖精さんの道具もあるんだから」
QB「……確かに、最終的にワルプルギスの夜は倒されるかも知れない」
QB「君達が妖精と呼ぶ存在のテクノロジーは、僕達でも正確な評価が出来ないからね」
QB「でも、君達が全てをちゃんと評価出来ているというのも、おこがましい話じゃないかな?」
マミ『……なんですって?』
QB「簡単な話だ。ワルプルギスの夜が本気を出したら、”暁美ほむらなんて虫けら同然”という事さ」
QB「――――ふむ。早速戦局がひっくり返ったようだね」
まどか「え……」
QB「どうだい、鹿目まどか」
QB「彼女が、君の愛する者が今どんな状況に置かれているか――――知りたくないかい?」
QB「そして、もしその命が危機に晒されていると知りながら無視して」
QB「結果、彼女の命が潰えたら……果たして、君は後悔せずにいられるのかな?」
まどか「……!」
さやか『ま、まどか! 駄目、そいつは――――』
まどか「……ごめん、みんな」
まどか「私、やっぱりほむらちゃんが心配で……何もせずにいられないの!」ダッ
マミ『か、鹿目さん!』
QB「……うん、人間はやはり理解しがたいね」
QB「誘導だと分かっていながら引っ掛かるなんて、訳が分からないよっ」スッ
杏子『糞! これじゃあキュゥべえの思惑通りになっちまう!』
杏子『妖精さん! なんとか出来ないか!?』
妖精さん「……………」
杏子『……妖精、さん?』
妖精さん「……」
妖精さん「にんげんさん、おたすけせねば」
妖精さん「ぼくらのひかり、おまもりせねば!」ダッ
さやか『よ、妖精さん!? 何処に……!』
杏子『一体、何をする気なんだ……?!』
……………
………
…
ワルプルギス【……………】
ほむら「はぁ、はぁ、はぁ……!」
ほむら(強い……強過ぎる……!)
ほむら(通常兵器だけで戦いを挑んでいたら、間違いなく負けていた……!)
ほむら(箪笥の門で大ダメージを与え、ヌンチャクで攻撃を捌き、ヘルメットでガードしなければ、今頃……)
ほむら(……箪笥の角とか、ヌンチャクとか、ヘルメットとかでよく善戦出来たわね……今更か)
ほむら(兎に角、もう流石に抑えられない。他に発明品もないし)
ほむら(妖精さんが用意してくれた最強の兵器を頼るとしましょう)
ほむら(そうと決まれば早速撤退――――)
――――グルンッ
ほむら「え……?(ワルプルギスの夜が逆さま状態から反転して……?)」
――――ゴオッ!!
ほむら「きゃあっ!?」
ほむら(な、何これ……凄い威圧感と魔力……まさか、今まで本気じゃなかったという事!?)
ほむら(しまった! 妖精さんの発明品が”強過ぎた”!)
ほむら(突貫工事とノリだけで作った発明品でも、奴を本気にさせるのに十分だった!)
ほむら(! 奴の攻撃が、避け、あ、いや、ヘルメ――――)
――――ズガンッ!!
ワルプルギス【……フ、フフ、ウ、ウゥウゥゥ】
ワルプルギス【フッアッ、ハハハアウハハアハハハハハハハッ!!】
ほむら(ぐっ……攻撃の余波で吹き飛ばされた……足が折れたのか、動けない……!)
ほむら(アイツは私を見失ったのか、それとも眼中にないのかは分からないけど、こっちを見ていない)
ほむら(でも、広範囲に無差別攻撃をされたら、今度こそ終わる……)
ほむら(早く足を治さなければ……でも、治癒魔法はそんなに得意じゃない……)
ほむら(こ、このままでは……!)
――――スッ
ほむら「……!(誰かが私の手を掴んで……)」
ほむら「まど、か……?」
まどか「良かった……まだ生きていた……」
まどか「本当に……間に合って、良かった……」
ほむら「まどか……どうして……いえ、間に合ったって……?」
まどか「……ごめん、ほむらちゃん」
まどか「私……魔法少女になる」
ほむら「え……」
まどか「このままだとほむらちゃん、死んじゃうかも知れない。そんなの、私が耐えられない」
まどか「だけどみんなはほむらちゃんの家から動けない。私も、生身じゃほむらちゃんを抱えて逃げるなんて出来ない」
まどか「勿論ワルプルギスの夜をみんなのとこに誘導なんて無理」
ほむら「でももしワルプルギスの夜が避難所の方に行ったらパパやママ、他にも色んな人が死んじゃう」
まどか「ほむらちゃんを助けたいけど、他の人を見殺しにも出来ない。私……わがままだから」
まどか「だから、私の命を使わせて」
まどか「みんなを助けるために……契約、させて」
ほむら「……結局、この時間軸でもあなたを契約させてしまうのね」
ほむら「全く。自分の無力さに反吐が出るわ……」
ほむら(でも、今回はそれで構わないかも知れない)
ほむら(どの道妖精さんがいれば人間に戻れる。ワルプルギスの夜を契約でさっくり倒し、後は悠々自適な生活)
ほむら(オチとしてはちょっと物足りないけど、それはそれで悪くないわよね……)
QB「鹿目まどか。そろそろ願い事を言ってくれ。ワルプルギスの夜が何時こちらに攻撃してくるか分からない」
まどか「うん……そう、だね……」
QB「さぁ、鹿目まどか。君は魂を代価に、どんな祈りを捧げるんだい?」
まどか「……………」
まどか「私の願いは――――」
「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」
第十一話・完
第十二話 【わたしの、最高の……】
ほむら「全ての、魔女を……?」
QB「!? そ、その祈りは……そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない」
QB「因果律そのものに対する叛逆だ! 君は、本当に神にでもなるつもりなのか!?」
QB「そんな事をすれば、君は概念そのものになってしまうんだよ!?」
ほむら「概、念……?」
QB「暁美ほむら、君からも止めるように言ってくれ!」
QB「このままだと全てが、僕達の努力が全てなかった事になってしまう!」
QB「それだけじゃない! 彼女がこのまま願いを叶えれば」
QB「もう始まりも終わりもなくなる、もう誰にも認識出来ず、誰にも思い出せない。何にも干渉出来ない」
QB「ただの概念に成り果ててしまう!」
ほむら「そ、それって……そんなの、死ぬよりも辛いじゃない!」
まどか「それでも構わない。ほむらちゃんを、みんなを守れるのなら、それで」
ほむら「だ、だったらワルプルギスの夜の消滅を願えばいいのよ! それなら……」
まどか「そうなったら、きっとワルプルギスを倒す事しか出来ない魔法少女になっちゃう」
まどか「ほむらちゃん、前にも言ったよね? 私が魔法少女になって力を使うと、一瞬で魔女になってしまうって」
まどか「多分それは、力をコントロール出来なかったんじゃなくて、ワルプルギスを倒す事を願ったからだと思うの」
まどか「そのためだけに、魔法の全てを使ってしまうからだと思う」
まどか「だからその願いじゃ駄目。私が魔女になって、地球が滅茶苦茶になっちゃう」
まどか「私が、私自身の手で――――私を終わらせる」
まどか「そういう願いじゃないと、みんなを守れないから」
ほむら「そんな、じゃあ、じゃあ……」
まどか「それじゃあ、そろそろお別れだね」
まどか「ばいばい……ほむらちゃん」
ほむら「嫌! ばいばいなんて、お別れなんて嫌っ!」
ほむら(どうすればいいの?! どうすれば、まどかを止められる!?)
ほむら(どうすれば、どうすれば……!)
「ちょっとたーんまー」
――――カチッ
ほむら「! こ、この声……妖精さん!?」
妖精さん「はー、まにあいましたです」
ほむら「どうしてここに……いえ、それより早くまどかの契約を止めないと――――」
ほむら「!? まどかの動きが、止まってる……」
ほむら「いえ、周りの景色も……全てが……」
ほむら「これは、時間そのものが止まっている!?」
妖精さん「ちょっとたんまでとまってもらってますですが?」
ほむら「ちょ、ちょっとたんまで時間を止められるの……流石妖精さんね」
ほむら(でも、これは好機! 今なら妖精さんにお願い出来る! 妖精さんなら……まどかを止められる!)
ほむら「よ、妖精さん、お願い! まどかを、願いを止めて!」
ほむら「このままだとあの子が概念になってしまう! だから――――」
妖精さん「……ちょいむりかも?」
ほむら「……え、無理って……」
妖精さん「にんげんさん、いんがおおきすぎ。ぼくひとりではむりむりだー」
妖精さん「ふたりいれば、なんとかできたですが……」
ほむら「そんな、やだ、じゃあ、まどかは……」
ほむら「やだ、やだ、やだやだ……そんなのやだぁ……!」
ほむら「こんなの、あんまりよ……なんで、まどかがこんな目に……!」
妖精さん「……にんげんさん、どーしてもあのぴんくにんげんさんのねがい、とめたい?」
ほむら「止めたいわよ! だけど、あなたにも出来ないのなら私なんかじゃどうにも……」
妖精さん「……………」
妖精さん「でしたら、なんとかいたしましょー」
ほむら「え……?」
妖精さん「ぼく、ぼくのちからでここにいますです」
妖精さん「だからちからぜんぶつかうと、ぼくきえますです」
ほむら「き、消える?! あなた一体何を!?」
妖精さん「ですがぜんぶつかえば、ぎりぎりいけそーですな」
妖精さん「しばらくにんげんさんのこころのなかでおせわになりましょー」
妖精さん「あとでちからかえしてもらえればだいじょーぶでしょーし?」
ほむら「よ、妖精さ――――」
妖精さん「それではこんごとも、よろしくねー」
ほむら「っ!?」
ほむら(な、何……今のは……!?)
ほむら(私……今、”一体誰と話して”……)
まどか「これが私の祈り、私の願い……みんなを不幸にするルールなんて壊してみせる」
ほむら(ま、不味い! もう願いを叶えようとしている!)
ほむら(どうしたらいいの!? どうしたら、どうしたら――――)
にんげんさんは、どーしたいー?
ほむら(……私が、どうしたいのか……)
ほむら(私の願いは……)
ほむら(そうだ、どうすればじゃない……どうしたいのか、そのために”どうすればいいのか”)
ほむら(私の願いは、まどかと一緒に生きる事)
ほむら(そのためにはまどかのあの願いを止める! 後の事なんてどうでもいい!)
ほむら(まどかを止めるには、あの子の因果をどうにか出来れば……!)
ほむら(何か、何か使える物は……)
ほむら(……釣竿……)
ほむら(なんで私……釣竿なんて握ってる? これが”あの子”が最後に残したものなの?)
ほむら(この釣竿で何が出来る?)
ほむら「……違う」
ほむら(ううん、この釣竿で何が出来るかなんてどうでもいい……何をしたいか!)
ほむら(この釣竿で私は――――)
まどか「さぁ、願いを叶えてよ。インキュベ――――」
ほむら「まどかぁっ!!」
まどか「っ……ほむらちゃん、何――――」
ほむら(そう、何が出来るかなんてどうでもいい! 私は願いのためならなんでもするって決めた!)
ほむら(私はこの釣竿でまどかを止める! 概念なんかに、絶対させない!)
ほむら(恨まれたって構わない、傷付けたって構わない! だってこのままお別れなんて”楽しくない”もん!)
ほむら(まどかは何がなんでもこの世界に引き留める!)
ほむら(そのためには、そのためには――――)
ほむら「す……すろーいんぐっ!!」
まどか「え?(ほむらちゃんが、何時の間にか持っていた釣竿をこっちに向けて振って……)」
まどか(それで、私の方に釣り針が飛んで――――)
ずぶぅっ!!
まどか「その釣竿が胸に刺さったあああああああああああああ!?」
QB「刺さったああああああああああああああああ!?」
ほむら「刺さったああああああああああああああああ!?」
まどか「なんでほむらちゃんまで驚いてるの!?」
ほむら「だ、だって刺さるとは思わなくて……」
まどか「じゃあなんで投げてきたの!? え、というかこれどうしたいの!?」
ほむら「えーっと、えーっと、どうしましょう?」
まどか「なんで私に聞くの!? なんで私より戸惑ってるの!?」
ほむら「と、ととと、とりあえず……引き抜くわっ! ふんっ、ふーんっ!」
まどか「え、あ、ちょ、痛い痛い痛い!? というかなんか引っ掛かって」
まどか「あ、抜けちゃ――――」
――――すっぽーん
ほむら「な、なんか出た!? え、なんか光の玉みたいなのが……なにこれ!?」
まどか「知らないよ!? だからどうしてほむらちゃんそんなに戸惑ってるの!?」
まどか「というかその釣竿なんなの!? ”そんな変な道具、私見た事ないんだけど”?!」
ほむら「私も! 見た事なんて……多分、ないわよ?」
まどか「なんで疑問形!?」
ほむら「え、それよりこれどうしよう……そ、その辺に捨てて良いかな!?」
まどか「ダメでしょ!? 理由は分からないけどそれはダメだよ! というか捨てるぐらいなら私の中に戻そうよ!?」
ほむら「そ、それは駄目よ! なんとなく駄目! 戻しちゃいけない気がする!」
ほむら「せめて燃えないゴミとかリサイクルゴミの日に出さないと……」
まどか「なんでゴミ扱いなの!? ほむらちゃんの目にはそれどう映ってるの!?」
QB「あ、暁美ほむら……君は一体、何をした!?」
ほむら「え、あの、知らない」
QB「知らない!? 知らない訳がないだろっ!」
QB「君の持っているそれは――――鹿目まどかの因果じゃないか!」
ほむまど「え、ええええええええええええええええええええっ!?」
QB「このままではまどかは願いを叶えられない……いや、それだけじゃない」
QB「まどかは殆ど願いを伝えていた。既に内包した因果が願いを叶えようと動き出していた」
QB「このままでは制御を失った因果が、魔女を消し去る力として暴走し」
QB「救いもなにもない、魔法少女を殺戮するだけの力として動き出してしまう!」
QB「最悪この宇宙そのものが魔法少女を生む法則と認識され、滅ぼされてしまうかも知れない!」
ほむら「え、え、え、ええっ!?」
まどか「そ、そんな危険なものなの!?」
QB「こんな事態がそもそもあり得ないんだ! 因果を取り出す、しかも契約の履行中にそれを行うなんて前例がない!」
QB「一体どんなイレギュラーが起きるか、どんな災いをもたらすか、計れる訳がないじゃないか!」
QB「せめて被害を最小に抑えるための努力をするしかない!」
QB「早くその因果をまどかの中にもどすんだ! そうすれば、まどかの意思に従い宇宙が再編される筈だ!」
QB「もしくは君がその因果を取り込み、願いを伝え直すんだ! それでもまどかと同様の効果がある可能性が高い!」
QB「僕達の望む展開ではないが、どちらでも最悪は避けられる! さぁ、早く!」
まどか「ほむらちゃん! 早く、私の中にそれを戻して!」
ほむら「っ! や、やだっ!」
ほむら(そんな事言われても無理よ! だって、これを戻したらまどかは概念になってしまう!)
ほむら(だから、だから……)
ほむら「……そう、だ……何もまどかの中に戻さなくてもいい」
ほむら「この因果は私の中にも取り込める。私が願いを叶える事も出来る」
ほむら「だからこの因果は――――」
ほむら「アンタに押し付ける!」
QB「きゅぶっ!?」
QB「ご、あ……な、何をして……」
ほむら「あなた達、宇宙を維持するためのエネルギーが欲しかったんでしょ!? だったらくれてやるわ!」
ほむら「これから一生、種族全員で……」
ほむら「宇宙のエネルギーを管理しときなさい!!」
――――ギュウウウルウウルウルウルウルウルウルルルルウウウウウウ!!!
QB「な、ぐごがあぁあぁあああああぁぁあああああああああああああぁあああ!?」
まどか「きゃああああああああああああああ!?」
ほむら「な、何!? 何が起きて……!」
ほむら(キュゥべえを中心に渦……い、いえ、宇宙みたいなのが見える! アレは一体!?)
QB「因果が、因果をこの僕に移したと言うのか!? なんて事を!」
QB「駄目だ、法則が、あ、が、ぼ、僕が、僕達の存在が、概念に置き換えられ――――」
QB「知性、記憶が、じょ、上位化、統一、だ、個が、保、シフト、され」
QB「こんな、こんな馬鹿な事が……」
QB「僕達の種族そのものが消えるなんて、そんな、あり得な
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
まどか「なんなの?! な、何が起きて……!?」
ほむら「う、宇宙が改変されている……」
ほむら「私が、宇宙のエネルギーを管理してなさいと願い、それをインキュベーターに押し付けた……」
ほむら「その所為でインキュベーターそのものが神となり、彼等が宇宙のエネルギーを管理する世界になろうとしているんだわ!」
まどか「そ、それ大丈夫なの!?」
ほむら「……きっと、大丈夫。奴等はエネルギーを司る概念となる反面、エネルギー以外の事に干渉出来ない筈」
ほむら「つまり奴等は感情エネルギー……個々の人間の絶望を拾い集めるだけの存在となる」
ほむら「それはつまり魔法少女を産む者が消える。だから、そういう宇宙が生まれる筈……!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
まどか「ならこの揺れは、振動はなんなの!?」
ほむら「そこまでは分からないわよ! でも、私から離れちゃ――――」
スルッ……
ほむら(!? つ、釣竿が……私の手から抜けて……)
ほむら(待って、あの釣竿は、あの力で出来て……その力を返さないと)
ほむら「駄――――」
―――――――――
―――――――
―――――
―――
―
――――みーんみんみんみんみんみーん
ほむら「……ふぅ。今日も暑いわね……冷房付けようかしら……」
ほむら「それに暇だわ。宿題も全部片付けちゃったし」
ほむら(……”ワルプルギスの夜”から二ヶ月が過ぎた……今はもう、夏休みに入っている)
ほむら(インキュベーターが感情エネルギーを収集する概念と化した事で、魔法少女は存在そのものが消えたようで)
ほむら(私達は、何時の間にかただの人間になっていた)
ほむら(いえ、ただの人間になっていた……というのは誤り。”元々”人間なのだから)
ほむら(正直、今でも混乱する。あの日の出来事は全て夢か私の妄想だったのではないかと思わなくもない)
ほむら(だって巴マミと佐倉杏子の両親は死んでいないし、美樹さやかは上条恭介のリハビリにずっと付き添ってる)
ほむら(私は目が悪いから眼鏡を掛けているし、心臓の事もあるから週に一回の通院が欠かせない)
ほむら(それに、アイツらによって発展した筈の人類の文明が洞窟生活まで退化していない)
ほむら(文明が退化してない理由は、アイツを概念化させた原因である私やまどかが生まれるだけの文明が必要だから)
ほむら(その辻褄合わせに……とか考えているけど、答えは分からない。改変前世界の事を私だけが覚えているのも変な話だし)
ほむら(インキュベーター、魔法少女、魔女……)
ほむら(これを題材に脚本を一本書き上げたら、私、大金持ちになれそうね。劇場版が三本ぐらい作られそう)
ほむら(つまるところ、私にはあの時の出来事が本当の事だと言える証拠は持っていない)
ほむら(むしろ、月日と共にその記憶が薄れている……妄想と変わらぬものになろうとしている)
ほむら(それに――――あの子だっていなくなった)
ほむら(その姿形をハッキリとは思い出せない。だけど確かにいて、私を守ってくれた……あの子)
ほむら(宇宙が改変されていく最中の記憶……あの時彼方に吸い込まれた釣竿……)
ほむら(そして――――)
――――ピンポーンッ
ほむら「……はい、どなたかしら」
まどか「こ、こんにちは、ほむらちゃん!」
ほむら「まどか……」
まどか「えっとね、ほむらちゃん。今日、暇だったら一緒にお出掛けしない?」
まどか「あのね、マミさんやさやかちゃん、杏子ちゃんとも一緒になんだけど……」
ほむら「……………」
ほむら「……勿論参加させてもらうわ」
まどか「やった!」
ほむら「ちょっと待ってて。今仕度してくるから。部屋で待ってて」
まどか「あ、大丈夫。ここで待ってる」
ほむら「そう? じゃあ、すぐに戻るから待ってて」
ほむら「……さて、どうしたものかしらね」
ほむら「友人達とのお出かけ、ちょっとはおめかししないと。この服部屋着だからこのままで外出はしたくないし……」
ほむら「んー、今日は青系にするか、それとも黒にするか……」
ほむら「どっちがいいかしら」
こじんてきには、あおですかなー
ほむら「……青ね。分かったわ、そうしましょう」
ほむら(二ヶ月前から、よく聞こえてくるこの声)
ほむら(彼……ええ、なんとなく男の子っぽい声だからそう呼ぶけど……)
ほむら(彼は、私の頭の中で暮らしている)
ほむら(ええ、きっと……いまいち覚えがないけど……改変前の宇宙で、私に力を貸してくれた”彼”)
ほむら(あの時言っていたように、彼はあの釣竿を作る際力の全てを使ってしまい)
ほむら(そして釣竿と一緒に、そのまま力を喪失してしまった)
ほむら(心は私の頭の中に残したけど、力を失った今では外に出る事が出来ない。釣竿が行方不明では力の回収も無理)
ほむら(彼はこのまま私の頭の中でのみ生き、私と共に死ぬ事になる)
ほむら(それを聞いた時、私はとても後悔した。彼に重荷を背負わせてしまったと、申し訳なくなった)
ほむら(でも、彼は私を許してくれた……それどころか、私の役に立てて嬉しいと言ってくれた)
ほむら(そして、償い……というよりご褒美として、いっぱい楽しい事をしてほしいと)
ほむら(私の心に宿った彼は、私の楽しさを共に感じられる)
ほむら(だから私が幸せになり、人生を楽しむ事が、最高の褒美となる……そう言っていた)
ほむら(……あの釣竿が見つからない限り、彼は本当に一生私の頭の中で過ごす事になるのかも知れない)
ほむら(学校を卒業して、大人になって、結婚して、子供を産んで、年老いて……)
ほむら(その中で、私は一体どれだけ楽しい事が出来るのだろう。どれだけ彼を喜ばせられるのだろう)
ほむら(考えても答えは出ない。出る筈がない)
ほむら(だって)
ほむら「――――お待たせ、まどか」
世界はこんなにも楽しさであふれている。
ドアから一歩踏み出すだけで、言葉に出来ないほどの幸福に飲まれてしまう。
さぁ、覚悟していなさい。
力なんてなくても、外に飛び出したくなるぐらい楽しくなってやるんだから。
あなたなら、こんな小さな奇跡ぐらい簡単に起こせるって知ってるんだから。
……だから、早くこっちに戻ってきてね。
わたしの、最高の妖精さん。
まどか「私の立ち位置取られたっ!?」
という訳で、最後のおまけも完結。ついに全て出し切りました。おまけと言うより別編? 気にするな。
さて。
初投下が1月からなので、約一年……おかしい、私は本来このSSは六月には完結させるつもりだったのに、
どうしてこんな事になっている?
恐らくは皆様のたくさんの書き込みのせいです。
モチベーション上がりまくり、新ネタを投下せずにいられなかったのが原因だと思われます。
最後の最後まで笑ってもらえたなら私としても嬉しい限りです。
あまり感情を言葉にするのは苦手なので(物書きとして致命的)、あとがきはこのぐらいにしておきます。
シナリオ一本書くのに大分時間を使うやつなので次回が何時になるかは分かりませんが、
もし偶然目に留まったら適度に苛めてやってください。妖精さんっぽく喜ばせていただきます。
では、またいつか! みなさまお元気で!
あ、この後HTML化依頼しますので、あまり長くは書き込めない筈。
何かあればお早めに!(コメ乞食
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