ミーナ「友達でいようよ」(43)

ミーナ「友達になろうよ」
の続き。

相変わらず捏造満載。

ギャグとかラブコメ要素とかほぼ無い上に超長文なので
そういうのが嫌いな方はすいません。

//森林

ミーナ「はッ、は……ッ!!」タタタタッ

ミーナ「んく……ッ」

ミーナ「く……あッ」

ミーナ「い、息、苦しい……」

ミーナ「ふ……く……」

ミーナ「でも、走らないと……」

ミーナ「追いつかれたら、終わり……」

ミーナ「逃げなきゃ、逃げきらなきゃ」

ミーナ「は……は……ッ、んく……」

ミーナ「はぁ、はぁ……ッ」

ミーナ「……」チラ

ミーナ(いない……休める?)

ミーナ(少しでいい。息を整えるだけでも……)

ミーナ(立ち止まりたい。脚を止めて、呼吸を整えたい……)

ミーナ「……ダメ。甘いこと考えちゃダメ」

ミーナ「少しでも遠くに行かなきゃ。すぐにみつかっちゃう」

ミーナ「見つかったら終わりだよ」

「分かってるじゃないの」

足を前に踏み出した体勢のまま、「え」と唇を震わせかけた直後。

「はッ!」

ミーナ「あぐぅッッ!?」

背中に強い衝撃が走ったのは直後。

衝撃に押される勢いのまま前方向に一回転し、私は地面に仰向けになる。

薄曇りの空が視界に広がる。

ミーナ「ん、は……い、ぃた……」

強い痛みが全身に走り、身体が痺れる。

普通なら動けない、けど。

彼女がそんな間を許してくれるハズがない。

そんなの今まで痛いくらい思い知らされてきた。

ミーナ「ふあぁッ!」

思い切り身をよじって横に転がる。

ほとんど同時。

頬をかすめるくらいの位置で地面が爆裂し、えぐれた泥が飛び散る。

ミーナ「ひぎぃッ!」

飛散する砂粒や泥を避けながら、全力を振り絞って横に飛び退く。

ビュオン!!

轟音が、ついさっきまで私のいた空間に響く。

ミーナ「んくッ!」

体をひねる動作のまま闇雲に、手に触れる泥を握り締めて思い切り投げつける。

次の一撃を振り落とそうとしているであろう彼女、その気配めがけて。

「ッ!」

ミーナ「んぁッ!」

あてずっぽうだったから直撃はしない。

けど、目くらましくらいにはなったみたい。

たたらを踏む形になった彼女を見て、私は両足に力を込める。

ミーナ「ッッッッ!!!!」

即座に立ち上がり、駆け出す。

一目散と言う表現がピッタリだったと思うけど、本当に必死で。

追いかけてくる気配を振り切って、私は走った。

ミーナ(に……逃げきれるの?)

ミーナ(いや、逃げきるのは無理だよ)

ミーナ(絶対に見つかる。多分すぐに)

ミーナ「なら、今するべき事をしなきゃ」

気がつけば、目の前には深い草むらが広がっていた。

ミーナ(足跡、消さなきゃ)

がさがさと草むらを掻き分け、前進する。

ここ数日の雨で、生い茂る草には水滴が溜まっていた。

ドロドロの地面は足場が安定していない。

音を出さないよう苦労して歩く。

開けた場所に出たのは、それから程なくしてのこと。

ぬかるんだ地面が足を取る中、前進する。

この場所、見覚えがある。

ミーナ「ここは、そっか。あの時の」

ミーナ「っていうことは、あそこには……」

ミーナ「……ダメ。ここは、ダメ」

ミーナ「こんなところで見つかったら大変なことになっちゃう」

ミーナ「別のトコに……」

身を翻そうとして。

目の前に飛び込んできた黒い塊に、反射的にのけぞる。

ミーナ「ひはッ!」

ぶん、という空気を引き裂くような音が私の耳元で唸る。

視認なんか出来ない。

ほとんど勘。

反射的に転がるようにして右側に飛び退く。

それまで私のいた空間が切り裂かれたのは直後のこと。

ミーナ「んくッ!!」

飛び退きながら、視線は離さない。

相手は百戦錬磨。

避けられた後に取るべき行動を当たり前に取ってくる。

ビュン!!

と、黒い何かが目の前の数ミリの空気をなぎ払う。

いや、何か、じゃない。

彼女だ。

ミーナ「うあ!!」

後ろに大きくのけぞってソコから離れる。

意識なんかせず、ただ離れることだけを本能的に考えてとった行動だけど、それが功を奏した。

ぶん、ぶん、びゅおん、という風切り音が、さっきまで私の転がっていたところで鳴り響く。

弾かれたように飛びすさる私は、反射的に構えを取る。

対人格闘訓練で彼女に教え込まれた、追い詰められたときの防御の姿勢。

奥歯をかみ締めて衝撃に備える、けど。

今度は予想も予測も当たらず、何事も起きないまま。

私は怪訝な思いのまま、いつのまにか正面にたっていた彼女の様子を伺う。

「……」

彼女は何事もないかのような悠然さで、私を見つめる。

悠然だけど、明確な意志。

メラメラと燃えるような敵意。

ミーナ「……」

「鬼ごっこは終わりかい?」

ミーナ「あ、う」

「観念したかい? それとも、また逃げ出す?」

ミーナ「……私は」

「どっちでもいい。何にせよ」

「あんたはここまでさ」

それは、たとえるなら。

怒り狂う百獣の王。

名は体を示すというのはまさしくこのことなんだろう。

心に肉食獣の誇りを携えた美女が、私を標的に定めて。

その豊かな胸に怒気を詰め込んで。

友達のはずの彼女が、死神みたいにキレイな笑顔を湛えて。

私の前に歩み寄る。

ミーナ「……アニ」

アニ「終わらせてあげる」

まるで極限まで引き絞られた弓が、その力を解き放つようなしなやかさ。

見とれてしまうほどの流麗な軌道の蹴り技は、けれど凶悪なまでの攻撃力で、私を襲う。

逡巡のかけらもなく。

アニ「ふッ!!!!」

ミーナ「くぅぅぅぅぅッ!!!!」

私の側頭部を狙って放たれたハイキックは、ガードの上からでも私の脳をしたたかに揺らす。

弾き飛ばされる勢いを逆に利用してアニから離れた私は、転げるように地面を滑ってから、ほとんど片膝立ちになるようにして地面を踏みしめる。

途切れそうになる意識を何とかつなぎ止め、立ち上がる私の眼前に、細く長い足がなぎ払われる残像が見えた。

アニ「はッ!!」

ミーナ「ひうぅぅぅ!!」

がぃん、と頭の奥で金属の音がこだまする。

耳鳴りが酷い。

手足から力が抜けそうになる。

けど。

ミーナ「は……あ……!!」

アニ「まだ立ち上がるの?」

ミーナ「ぁ……」

アニ「一発で楽にしてやろうと思ってたのに」

アニ「ワケが分からないまま気絶するのが一番痛みが少ないって、分かってるはずじゃないの?」

ミーナ「そ、だね。今までいっぱい経験してるし」

ミーナ「いつもならそうしてたかもね」

アニ「……」

ミーナ「でも今日だけはそういうわけにはいかないの。分かるでしょ?」

アニ「……」

ミーナ「私、諦めない。絶対に諦めないから」

この決意は本物。心からの本音で。

今にも悲鳴をあげたくなるほどの状況で、それでも私は彼女のことを思う。

そばにいられるのは、もしかしたらこれで最後かもしれないから。

アニ「へぇ、そうかい」

そんな私の心境を、彼女は汲み取ったのかもしれない。

アニ「そこまで言うなら仕方ないさ」

興奮に彩られた表情。

赤らんだ頬。

ひどく、深い感情。

アニ「望み通り」

アニ「ぶち殺してあげるよッ!!」

年にふさわしくない色気を振りまきながら、アニは。

踊り狂うように憎しみをぶちまける。

昔、その唇からもれた一言。

友達という言葉を反芻しながら、私は疾風のような彼女を迎え撃つ。

アニ「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

ミーナ「くぅンッ!!!!」

高く振り上げた左足がムチのようにしなり、真横に薙ぎ払われる。

はずだった。

ミーナ「はひぃッ!!」

とっさに……ホントにとっさに、頭だけを後ろに仰け反らせた私は、顔面の直前を斜めに横切っていった黒いモノを愕然と見ていた。

アニ「ち、しぶとい」

小さく毒づくアニを尻目に、私は身構えなおす。

ミーナ「まだまだ、だよ……」

息を整えるのが精一杯の私は、額から流れ落ちる汗を拭いながら前傾姿勢になる。

アニのいうとおり。我ながらしぶといと思う。

けど、もうここまでかな、とも思う。

ミーナ「ここまで、かな」

アニ「?」

ミーナ「ここで終わり、だね」

アニ「へぇ。ずいぶん潔いね。さっきまでのていたらくとは大違いじゃないの」

ミーナ「うん……ごめんね、みっともない姿を見せて。もう大丈夫だから」

アニ「……」

ミーナ「もう大丈夫」

我ながら何が大丈夫なんだか。

内心あきれながらも、何かを決意したことだけはアニに伝わったみたいで。

彼女は冷徹な表情に僅かな呆れを含ませて、私を睨み据える。

アニ「つくづく損な性格だよね、アンタ」

アニ「苦しむことになるよ」

ミーナ「どこかで聞いた言葉だね」

アニ「……ち」

ミーナ「ごめんね。私、今日は何があっても諦めないって決めてるの」

アニ「はッ。そう」

ミーナ「笑いたくなる気持ちはわかるよ。私だって自分のことじゃなかったら笑い飛ばしてたかもしれないし」

ミーナ「でもね。私、だめなんだ。こうして、アニが目の前にいるのに、何もできないまま終わるなんて耐えられない」

アニ「そう。で、どうする? このまま逃げおおすつもり?」

アニ「それならそれでいいよ、あんたのことは、そこでおしまいだから」

ミーナ「逃げないよ」

アニ「……」

ミーナ「逃げない。もう逃げたりしない。ここで私は、アニと……戦うよ」

アニの表情が変化する。

怒りの表情から落ち着き払った顔へ。

無表情なのが彼女らしくて、そしてどんな表情よりも怖かった。

アニ「どんなことがあっても逃げない、か。そんなの、カッコイイように見えるけどね。タダのバカさ、実際のところ」

アニ「死ぬ直前まで打ちのめされて、耐え忍んで」

アニ「でも結局は何も出来ないままなんてよくある話さ」

アニ「それ、ダメなだけでしょ」

ミーナ「かもね」

ミーナ「でも私って諦め悪いから」

ミーナ「最後まであがく人、嫌いじゃないんだ。かっこ悪いとも思わないし」

ミーナ「アニだってそう言ってたよね。かっこ悪いコトを必死でやるやつって、実は意外とカッコイイって」

アニ「……」

ミーナ「たとえば、アニの好きな人なんか、そういう人でしょ?」

アニ「……黙りな」

ミーナ「カッコ悪いことを真剣にしてる人、知ってるよ」

ミーナ「その子はとっても不器用で……でも純粋な子」

アニ「あいつが? は、あいつはそんなんじゃ……」

ミーナ「エレンのことじゃないよ」

アニ「……」

ミーナ「好きな人にキチンと気持ちをいえなくて、それでも諦められないからちょっかい出す子、私、知ってる」

ミーナ「けっこう性格いいのに、わざと悪いように見せてる子、知ってる」

アニ「……黙りなって」

ミーナ「涼しい顔して、一生懸命な人を見るとほっとけない子、私、知ってる」

ミーナ「そんな子と一緒にいれば、移るよ。だって、そういう気持ちって」

アニ「黙りなって言ってンのよッ!!!!」

ハイキックが私を襲ったのは、その叫びとほとんど同時。

視界の隅に何かが見えたと同時に、頭の横をガードしていた腕に強烈な衝撃が走る。

アニ「はぁぁぁぁ!!!!」

続けざまに放たれた蹴り技は、後ろへ弾かれる勢いのまま、寸前で避ける。

防げたのはホントにたまたま。

偶然そこに腕を構えていただけで、防ごうという意識が発生する前のこと。

アニの鋭い蹴りをまともに受けとめることができたのは、一番硬い場所に足が当たってくれたからで。

その後の襲撃をいなせたのも、まぐれ以外のなにものでもない。

きっと、幸運がいくつも重なり合ってようやく生まれた奇跡みたいなものだった。

ともあれ。

私は、何とかアニの初撃を防ぎ切ることができた。

アニ「ちょこまかウザいヤツだね」

口の端をかすかに吊り上げ、彼女は顔をしかめる。

アニ「あんたの性格そのものって感じの戦い方だよ。ホント、虫唾が走る」

アニ「まぁいいさ。蹴りまくってやるよ」

アニ「餞別さ」

ミーナ「はは。おっかないね、アニ」

ミーナ「悪いけど、その餞別はいらないよ」

ミーナ「私、負けるつもりはないから」

アニ「……」

アニ「……へぇ、冗談ってわけでもなさそうなツラしてんね」

ミーナ「本気だから」

アニ「……は」

アニ「あんた、スゴいね。才能あるよ。いや、天才かもね」

ミーナ「そっかな。ほめられるようなこと、まだしてないけど」

アニ「してるよ。ずっとしてるよアンタ」

アニ「知り合ってからずっと、アンタは私に、そういうこと、してるよ」

アニ「で、そんなふうに何でもなさそうな顔してられるってのはさ、私には考えられない」

ミーナ「そう? 私にとっては当たり前なんだけどな」

ミーナ「お友達と仲良くするのって、当たり前なんだけどな」

アニ「……ああ、もういい。もう疲れた」

ミーナ「そ? じゃ、やめにする?」

アニ「……」

アニ「マジであんた」

アニ「人をイラつかせる天才だよッ!!!!」

ミーナ「ッ!!」

これは避けられない。

そう悟った時、私の頭の中に昔の光景が広がった。

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