少女「貴女が『片っぽ魔女』なの?」魔女「そうだよ」 (17)


少女「どうして片っぽ魔女なの?」

魔女「さぁ、どうしてだと思う?」

少女「お胸が片方しかないとか……?」

魔女「それは酷い話だねぇ」

少女「違うの?」

魔女「んー、流石に胸は2つあるさ」

魔女「まぁそれはそれとして、中にお入りなさいな」


魔女「私の孤児院へようこそ小さな魔女さん」



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< リーン…リーン…

少女「……」

魔女「こんな真夜中によく来てくれたねぇ」

魔女「紅茶は好き?」

少女「飲んだことないよ」

魔女「そう、なら飲んでごらん」カチャッ

少女「……香りが」

魔女「安らぐだろう? 子供達が摘んだ葉で作ってみた」

魔女「君には明日から、茶の葉を摘んだりして貰うよ」


少女「……魔女さん」

魔女「んー?」

少女「私がここにいる理由、聞かないの?」

魔女「迷子なんだろう?」

少女「どうして分かるの」

魔女「来た『経緯』とかは分かるだけだよ、本当の理由はそうでない筈だけどね」

少女「………」

魔女「紅茶、飲んだらどうかな?」

少女「うん…」ゴクン


魔女「落ち着いた?」

少女「うん」

魔女「君はお母さんと二人で暮らしていたらしい、けれど最近になって病で死んでしまった」

魔女「だから、君は『お父さん』を探して街をさまよっていた」

少女「……凄い、当たってる」

魔女「そういう仕組みなんだ、ここは」

少女「魔女さんって本当にいたんだね」

魔女「そりゃぁいるから噂になるし、伝説にもなる」

少女「伝説にはなってないよ」


少女「……」ウツラウツラ…

< 「すー…すー…」


魔女「……」

魔女「ふむ」

魔女「今月で孤児は四人目、今年で十三人目だ」

魔女「国の情勢はさっぱりだけど、何をしているのだろうね」

魔女「王子の坊っちゃんは」



< 翌朝 >


少年「おはよー先生!」

魔女「おはよう少年、寝癖を直して来たらどうかねぇ?」

少年「え、どうして?」

魔女「んーん、新しく『家族』が増えるのさね」

少年「本当に!? 男の子? 女の子?」

魔女「ふふ、少年と同じ位の少女だよ」

少年「やったー! どこにいる?」

魔女「私の部屋でまだ寝ているからね、もう少し待ってあげなさいな」


魔女「ほら、分かったら他の子供達を起こして準備をしなさい?」


少年「おっけー!」ダッ!


< 魔女の部屋 >


少女「……ん…」ゴロン

少女「…ベッド……ふかふか…♪」ギュムゥ…

少女「…………」

< ガバッ!


少女「……どこ、ここ…」

少女(紅茶の香りがお部屋に溢れてる……)


魔女の影【ここは私の部屋だよ、少女】ユラ…


少女「ひゃっ……!」


魔女の影【んー?……急になんだい、ひっくり返った声を出したりして】


少女「だ、だって……」


魔女の影【ふふ、影が一人でに動くのが珍しいかい】

魔女の影【魔女にとってはこの程度は当たり前だよ】


少女「魔女……」

少女「……そっか、ここは『片っぽ魔女の孤児院』」


魔女の影【その通り、ほらそこの机に着替えは出しといたから奥の部屋で身体を洗って来な】


少女「はい」

少女(真っ黒な煙が動いてるみたいで……何だか落ち着かないや、魔女の影って)


< 湯の世界 >


─────── ザァァ・・・


少女「……」

少女(な…なにこれ、お湯が下から上に……あっちなんてお湯の玉が宙に浮いて……っ)

少女(…………)ドキドキ

少女「お邪魔します……」

< チャプッ……

少女「あっ……」


少女「温かい…気持ち良い……」チャプンッ




魔女「ふむ……」パチンッ!

魔女(そろそろお昼時に近いねぇ、もう出たかなあの少女は)パチンッ

魔女(子供達に昼食の用意でもさせようかね、歓迎会として倉庫のフルーツでも食べさせてあげる……なんてね)

魔女(んー……あー、それより私が何かデザートでも作ってあげようか)


魔女「ふむ……ふむ……」

赤髪「先生?」チョンッ

魔女「ん、っと……えん?」

赤髪「時計握り締めてないで、この後はどうするの」

魔女「……それより気配消失の魔法は常に使うものじゃないと教えたろう?」

赤髪「楽しくて、つい」ニコッ


少年「うぉー! 俺が一番先に泡を作るんだぁああ!」

黒髪「なんのっ……僕が先に作るんだぁああ!」


< ガガガガガガガガガガ……!!!


赤髪「……なぁに、あれ」

魔女「『クリーム』を作らせてる、ああして素材を空気を含ませて混ぜるのがコツだよ」

赤髪「くりむ?」

魔女「甘い物としては割りと高級な方だと私は考えてるね、まぁ今の世界だと作れる奴なんて二人もいないだろうさねぇ」

赤髪「さすが先生……♪」

魔女「味見は最後にして良いけどね、今はまだあれは生すぎてお腹壊すよ」

赤髪「心を読んじゃだめー」ムーッ

魔女「ふふ、私の背後に回り込んでおどかそうとするのが悪い」


< ヒョコッ……


少女(……夜に見たときは何とも思わなかったけれど、この建物すごくおっきぃ…)

少女(貴族のお屋敷でも四階まであるのかな……こんなに大きいのに)

少女(それに……)


< 「ヒソヒソ…ヒソヒソ…」

< 「ヒソヒソ…ヒソヒソ…」

< 「ヒソヒソ……」



─────「「【ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ】」」─────



少女(この、囁き声は何だろう……?)


魔女「おはよう少女」

少女「魔女さんおはよ……ここに来るまで、あちこちのお部屋を見回る羽目になっちゃったよ」

魔女「『そうなるように』魔術を仕込んだからね、おかげでこの建物内で迷うことはもう無いさ」

魔女「改めて歓迎するよ、『少女』」

少女「……」


少女「……え?」


魔女「無くなったろう、今まで感じていた違和感が」

少女「ぇ……でも、えっ? なんで……」

魔女「少女が持っていた『名前』を預かった、君の名前はこの孤児院では『少女』として呼ぶ事になる」

魔女「ちょっとした家賃みたいなものだ」ニコッ


少女「どうして、私の名前を預かったの?」

魔女「ここでこれから暮らす間は色々と面倒が多いからね、普通の人間には特に」

少女「魔女さんは?」

魔女「私に都合が良いように仕組みが出来ている、だから私は平気」

魔女「まぁ、常に健康ってだけだけどさ?」

少女(……魔女さんの言うことって、変に遠回しに巧みがあって苦手かも)

魔女「悪かったねぇ、遠回しに巧みがあって」ニコッ

少女「え?」

魔女「何でもないよ、ほら行こうか」

少女「行くって……お外?」

魔女「いーや、まずは昼食の時間さね」

魔女「おなか、減ってるだろう?」




青髪「あ、先生が来たよ」

金髪「先生! 新しく来た子はなんて呼べばいーい!?」


魔女「少女だろうねぇ、うん、少女」

少女「あの二人は?」

魔女「青髪と金髪、ってとこかね」

少女「?」

魔女「名前が無いからね、私はそう呼んでても子供達はどう名乗って呼んでるかは子によって違う」


魔女「場合によっては……ここを出た時、互いが名付け相手になるかもしれないね」


少女「……?」

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