明久「僕と彼女とささやかな休日」 (45)

•「バカとテストと召喚獣」のSS
•地の文あり
•最終巻以降の時間軸のため、ネタバレあり

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408732883


そこは海だった。

透き通る透明感のある綺麗な海に僕はいた。

辺りでは色んな人達が波打ち際ではしゃいでいて、海水浴場独特の空気が広がっていた。

僕はと言うとビーチパラソルの下で太陽の日差しから身を隠しつつ、一人の女性を待っていた。

あの三年生との試召戦争で、互いに気持ちを伝え合えた、あの人が。


「明久くーん、明久くーん」


優しい甘い声で、彼女は僕の名前を呼ぶ。

きっと振り返ればそこには……


「明久くーん、起きてくださーい」


へ?起きる?





姫路「明久くーん、そろそろ起きてくださーい」


まだ覚めきっていない意識の中で、彼女が僕の体を揺らしているのが分かる。

彼女にユサユサと揺らされるこの動きが、眠りかけの僕には気持ちいいのだが、そろそろ起きないと姫路さんに悪いよな……


姫路「お、起きてくれないと……ち、ちゅーしちゃいますよ?」


前言撤回。

何があったって僕は目を覚まさないぞ。

薄く目を開けると、姫路さんは少し困ったような顔をしている。

ふむ、困った姫路さんも可愛いなぁ。


姫路「起きないんですね、明久くん?……ほ、本当にちゅーしちゃいますよ?」


いいだろう。こちらはいつでも大歓迎だ。


姫路さんは少し悩むような仕草の後で、顔を赤くしながら「よしっ!」と呟いた。


姫路「ほ、本当にしちゃいますからね!?」


そして、姫路さんの顔がゆっくりと近付いてくる。

僕の知る中で最も美しい光景が、僕の視界一杯に広がっていく。

そして、姫路の唇が僕の唇にーー


チーン。


姫路「あ、トーストが焼けたみたいですね」


今ほどトースターに殺意を抱いたことは無いだろう。

そして姫路さんはトコトコと可愛らしい足音と共に、僕の部屋を後にする。

チクショウ!あと少しで姫路さんとのキスが待っていたと言うのに!トーストさえ焼けなければ!


…………トースト?


待てよ、何故このタイミングでトーストが焼けたんだ?

僕はトースターにパンをセットした覚えは無いぞ。

となると、トースターにパンをセットしたのは姫路さんだ。

では何故、姫路さんがトーストを焼いている?


明久「!!?」


僕は布団から飛び起きて、パジャマ姿のままリビングへ急いだ。

思えば、おかしいと思うべきだったんだ。

日曜日の今朝、姫路さんが僕の家にいる事が。

そして、僕を起こそうとした姫路さんの服装に、注意を払うべきだったんだ。


バンッ!と勢いよく扉を開けた。


姫路「あ、明久くん。おはようございます!今丁度、朝ご飯の準備が出来た所ですよ!」


リビングで僕を待っていたのは、可愛らしいエプロンを身につけた必殺料理人だった。

テーブルにはすでに必殺料理人が腕によりをかけて作りあげた朝食達が並んでいた。


明久「……お、おはよう。姫路さん。えっと……その朝食は?」


どうしよう。全身から嫌な汗が流れている。

まだ冬ではないのに、体感温度は冬並みの冷たさだ。


姫路「えっと、坂本君から今日は玲さんがいないと聞いて、明久くんのために来ちゃいました」


少し赤らんだ頬を押さえながら、姫路さんは嬉しそうに答えた。

なお、その姫路さんの頬を押さえた手に装着されていた物は、溶接等の際に使われる手袋であった事を加えて記しておく。

そうか、なるほど。全ての元凶は奴か。

よし、そうとなれば僕の取るべき行動は一つだな。


姫路「?? 明久くん、何をしてるんですか?」

明久「ちょっとメールをね」


えーっと、宛先は霧島さん。

本文には「昨日、雄二が知らない女の人と二人で遊園地に行っていたよ」って書いて。

よし、送信っと。


姫路「じゃあ、冷めない内にちょっと遅め朝ご飯にしましょうか」


まぁ、こっちの問題はまだ残っていたのだけれども。

ん?遅め?


明久「姫路さん、今何時?」

姫路「10時45分ですね」


ありゃ、もうそんな時間か。

昨日は姉さんがいなかったから夜遅くまでゲームしてたから、少し起きるのが遅くなっちゃったな。


姫路「本当は10時には朝食を作り上げる予定だったんですけど、フライパンが……」

明久「フライパンが!? 姫路さん! 一体我が家のフライパンに何があったの!?」


姫路「あ、でもそんな事より、早く食べちゃいましょう、明久くん」

明久「待って!フライパンの行方が凄い気になるんだけど!」

姫路「大丈夫です。ちゃんと処理しましたから」


処理!?処理って一体何の処理!?


姫路「??? 明久くん、顔色が悪いですよ?」

明久「あー、大丈夫。多分寝起きだからかな? ちょっと顔を洗ってくるよ」

姫路「はい、行ってらっしゃい」


そう言って僕はリビングを後にする。

さて、胃薬探すか。




無事胃薬を見つけ、ポケットに胃薬を忍ばせつつ、僕は食卓に座った。


明久「お待たせ、姫路さん」

姫路「いえ、大丈夫ですよ。明久くん」


すでに姫路さんはエプロンを外していた。

よかった、追加は無いようだ。


明久「じゃあ、いただきまーす」

姫路「いただきます」


さて、どうしたものか。

とりあえず、今回の姫路さんの料理を見てみようか。

えーっと、綺麗に焼けたベーコンエッグに、それからレタスやトマトの入ったサラダ。別のお皿にはきつね色に焼けたトーストが二枚乗っていて、小さな器の中はカットフルーツか……


あれ?普通?

それどころか、凄い美味しそうだ。


姫路「明久くん、どうかしましたか?」

明久「え!? いや、大丈夫だよ!!」

姫路「やっぱり、具合悪いんですか?」

明久「ううん、平気!ほら!馬鹿は風邪引かないって言うでしょ!?」

姫路「でも、Cクラスとの試召戦争の時は風邪引いてましたよね?」

明久「うっ……でも大丈夫だから!」


そう言ってベーコンエッグを口に運ぶ。

うん、ベーコンの塩っけと卵のまろやかさがマッチしている。


あれ?凄く美味しいじゃないか。


明久「……ねぇ、姫路さん」

姫路「なんですか?明久くん」

明久「もしかしてだけど……姫路さん、料理の練習とかした?」

姫路「え!? どうして分かったんですか!?」


やっぱりだ。

料理の見栄えを見た時にふと思ったけど、かつての姫路の必殺料理とは段違いの出来だったから、もしやとは思ったんだけど。


姫路「私も明久くんみたいに、料理上手になりたいなぁと思って、美波ちゃん達に色々教わったんです」

明久「へぇ……あれ?じゃあフライパンがどうこうって言うのは?」

姫路「えっと……つい考えごとをしていたら、焦がしてしまって……」

恥ずかしそうにそう言うと、姫路さんはトーストで顔を隠した。

なるほど、美波達にか。

確かに美波は料理が出来たはずだしね。

そう言えば、霧島さんも料理上手だったよね。

まぁ、今は姫路さん作の美味しい朝食に舌鼓を打とう。




『……雄二、起きて』

『ん?あぁ、翔子か。なんだ朝から。用が無いなら帰れよ』

『……昨日、何してた?』

『昨日?昨日は明久の家でゲームをしてたが』

『……嘘』

『翔子?どうしたいきなりぎゃあああああ!!翔子!?何故攻撃を!?』

『……知らない女の人と、遊園地って』

『遊園地!? 何の話をしてぐわああああ!!翔子!!骨が軋む音が!!』

『……答えて。誰と行ったの?』

『だから遊園地なんて行ってねぇ!!信じてくれ!!』

『……私と言うものがありながら!』

『ぐわああああああああああ!!』




明久「ご馳走様でした!」

姫路「ご馳走様でした」

明久「ふぅー、お腹一杯だよ」


いやぁ、本当に美味しかった。

姫路さん、よっぽど練習したんだろうなぁ。

これまでになるなんて、美波達も頑張ったんだろうな。


姫路「そうですか? ありがとうございますね」


そう言いながら、姫路さんはテーブルの上の食器を片付けていく。


明久「あ、いいよ姫路さん。お皿は僕が洗うからさ」

姫路「そんな、いいですよ。私がやります」


明久「いいって、美味しい朝食作ってくれたお礼だって」

姫路「そうですか……じゃあ、お願いしますね」


そう言うと姫路さんはリビングを後にした。どこ行くんだろうか?


明久「……ま、いいか」


少し考えてから、食器洗いを始めた。

きっと僕の部屋のベットでも整えてるのかな?

そんな事、してくれなくてもいいのに。




明久「……よし」


洗い物が終わって、僕は自分の部屋に戻ることにした。

あれから姫路さんがリビングに戻ってこないのも気になるし。

リビングを後にし、僕の部屋をドアを開けるとやはり姫路さんがいた。

姫路さんは僕のベットの横で、熱心に何かを読んでいた。


明久「姫路さん、洗い物終わったよ」

姫路「…………」


声をかけてみたが、姫路さんは振り返らない。

なんだろう?そんな面白い本を読んでるんだろうか?


そーっと姫路さんの近くに寄り、背後からちらりと姫路さんの読んでる本を覗いてみる。


明久「あああああああああ!!」

姫路「きゃああ!!明久くん!?」


その本は、僕の保健体育の教科書だった。

僕はとっさに素早く聖典を姫路さんの手元から奪いとった。

明久「ちょっと!!何してんの姫路さん!!」

姫路「あ、その……天気がいいので明久くんのお布団を干そうと思って、お部屋に入ったんですが……その……」

明久「うん、その?」

姫路「ベットの下を見たら、本があって、つい読んじゃって」

明久「のおおおおおう!!」


姫路さんの羞恥心で赤くなった顔がまた、僕の心をしめつける。


女の子、それも彼女に自分の性癖の象徴とも言える本を読まれる。

これほど恥ずかしい事があるだろうか。


姫路「その……いけないとは思ったんですけど……明久くんの好みが知りたくて……」


「明久くんの好みが知りたくて」。

このセリフ、シチュエーションが違えばきゅんとくるセリフだったであろう。

あいにく、今はグサリとしかこない。


姫路「で、その……明久くんはやっぱり、その本に出てくる娘達みたいなのが好きなんですか?」

明久「あー……えっと」


まっすぐな姫路さんの視線に耐えられずに、明後日の方向を向く。

何かこの状況から逃れる事の出来る話題は無いのか……。

いや、一つあるじゃないか。


明久「ね、ねぇ、姫路さん」

姫路「はい、なんですか?」

明久「姫路さん、どうして僕の家にいるの?」


今朝、ふと気になったまま、今まで放置していた、この疑問が。


姫路「……明久くん、忘れちゃったんですか?」


しかし、姫路さんは頬を膨らませてわざとらしく不満そうな顔を見せた。

忘れちゃったって辺り、僕は何か約束をしていたのだろうか?

うーん、姫路さんには申し訳ないけど覚えてないなあ。


明久「あー、えっと……何か約束してたっけ?」

姫路「……はぁ、その様子だと本当に覚えてないんですね」


姫路さんはため息をついて今度は呆れたような顔をした。

三年生との試召戦争から、姫路さんは表情豊かになった気がする。

きっと、心中で背負ってきた悩みが無くなったからだろう。


明久「うぅ……ごめんなさい」

姫路「酷いです……私はずっと楽しみにしてたんですからね?」


楽しみ?

なんだろう、ますます分からない。

僕が必死に過去の記憶を遡っていくと、姫路さんが呆れた顔をしながらも、答えを発表した。


姫路「今日は、初デートの約束の日ですよ」

ここまでしか書いてないから書けたらまた投下します。

無理だったら依頼出します。

そういや昔明久と優子のSSですんごいのあったな
明久が最終的にAクラス目指すやつ
知ってる人います?

スレチすみません

すみません、ちょっとしばらく時間かかりそうです(ーー;)

>>29
ありましたね。面白かったですよね

続き書く暇が無い(ーー;)

今週中に書けなかったら畳みます。

前スレも途中で畳んだし、次からはちゃんと全部できてから投下しよう。

結局畳みます。
読んでくれた人、待っていてくれた人、すみません。

前回建てたスレも畳んでしまったし、ちゃんと書き溜めするようにします。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom