女「週末戦争」(15)

女「……」

女「来たわね」

女「……週末が」

毎週土曜日、近所のスーパーでは99%offという超大特価セールが開催される

おばさん「あら、奥さんも来たのね」

女「ええ、それはもちろん」

しかし、このセール品は限定数しかないため、買える人は限られる

おばさん「言っておくけど、お隣さんだからって譲る気はないわよ」

女「気遣い無用ですよ、私も本気で行きますから」

このセール品を買うためだけに集まる奥様方、商品との倍率にしてなんと500倍にも上る

店員「大特価セール開始まで後一分でーす!」

女「……絶対に取ってみせる」

人々は、このセール品を賭けた取り合いを、週末戦争と呼ぶ!

店員「大特価セール、開催です!」

奥様方「うおおおおおおおおおおおお!!」ドドドドド

おばさん「どけどけどけえええええ!!」ドドドドド

女「おどりゃああああああ!!」ドドドドド

開始の合図と同時に、店内に大勢の奥様方がなだれ込む

女「(今日のセール品は、卵と鶏肉!)」

女「(2つの陳列されている場所は離れている為、片方は諦めざるを得ない)」

女「(そして!、昨日の夜、旦那と約束したわ)」

女「今夜のおかずは鶏の唐揚げにするのよおおおおお!!」

迷わず鶏肉コーナーへと向かう

女「ちんたらトロいんじゃあああ!、どけえええ!」ドン

女「(鶏肉コーナーへ向かうにはあそこの角を曲がる必要がある)」

女「(最短距離で行くにはあそこをインぎりぎりでドリフトしなきゃいけない)」

婆さん「……」スッ

女「!!」

婆さん「まだまだ若いもんには負けんよ」

女「(くそっ!、インを取られた!)」

婆さん「フェッフェッ」

女「(インを取られた以上、最速で曲がることは出来ない)」

女「(……だったら!、あの技を使うしかない!)」

女「とおっ!」バッ

婆さん「!?」

商品棚の端に跳び乗る!

女「(この僅かな出っ張りの上を走ることで商品を踏みつけることなく)」

女「(さらに!、インの更に内側を突ける!)」

女「お先に失礼しますね!」ギュンッ

婆さん「あやつめ……やりおるわい」

女「(ここを曲がったら後は真っ直ぐ突き進むだけ)」

女「(しかし!、今使った技の最大の欠点がネックになる!)」

女「(それは、今走っている商品棚からは鶏肉のある商品棚は通路を挟んで向こう側なこと!)」

女「(つまり、鶏肉の置いてある商品棚に行くには飛び移らなければならない!)」

女「(しかし!、飛び移るにしても通路に降りるにしても少なからず失速してしまう)」

女「(すぐ後ろは後を追いかける人の波)」

女「(失速した状態で人波に飲まれること、それは大型トラックに轢かれると同義!)」

女「(この欠点を解消するため、私は新たな技を開発した!)」

女「とりゃあっ!」ダンッ

女「(商品の更に奥!、そこの壁を蹴る!)」シェアッ

女「(これにより、減速することなく、むしろスピードアップして通路に着地する!)」

秘技、三角跳びっ!

女「(後は、鶏肉に向かって走るのみ!)」

鳥肉好きなの?

夫人「ぶほおおおおお!!」シャーッ

女「!!」

なんと、前方からふくよかなおばさんが突っ込んでくる!

女「(もう一つのルートを使ったのね)」

女「(あっちはこっちの道と比べて数秒のロスがある)」

女「(それゆえ、人が少なく、競争率は低くなり、環境はこっちよりもいい)」

女「(そして、その数秒のロスを補うためにローラースケートを履いてきたみたいだけど)」

夫人「止まんねえええええ!!」シャーッ

女「(どうやらブレーキの仕方をご存知ない様子!)」

女「(あの体型では端に寄ってもぶつかってしまう!)」

女「(だけどこれくらいは簡単に対処できるわ)」

女「(だって、今まで使った技を習得するために身体能力、特にバランス感覚を鍛えたんですもの!)」

女「(後はタイミングね)」

夫人「ぶはああああああ!!」

女「(今!)」

女「てやあっ!」タシュッ

ぶつかる直前、斜め前方に跳ねる!

女「(そして、商品棚の端に着地、)」

女「(更に飛ぶ!)」ズガッ

商品棚からの跳躍により、太ったおばさんの頭上を飛び越える!

女「ふっ」スタッ

夫人「ぬごおおおおおお!!」ズガガガ

デブのおばさんが後続の人並みと激突する!

そして!

女「取っったぁぁ!!」ガシィッ

一番乗りで今回のセール品である鶏のもも肉を手にする!

おめでとう、今日の週末戦争では、見事勝利を収めた!

………

女「……ってことがあったの!」

夫「へぇー、やっぱりとんでもないんだなぁ、それって」モグモグ

女「……で、どう?、頑張って作ったんだけど」

夫「……うーん」

夫「揚げる時間が長いんじゃないかな、肉が固くなってるよ」

女「えっ、嘘!?」パクッ

女「……ほんとだ」モグモグ

夫「味付けは僕の好みでいいんだけどね」

夫「週末戦争に備えて身体能力を鍛えるのはいいんだけども」

夫「少しは料理の腕も鍛えた方がいいんじゃないかなぁ」

女「……そうね」シュン

夫「そうだ」

夫「僕の知り合いがお料理教室に通ってるんだけど」

夫「よかったら君も行ってみるかい?」

女「むむむ……仕方ないわね」

女「いいわ!、料理の腕も鍛えていつか腰が抜けるくらい美味しい料理を作ってあげる!」

夫「はは、楽しみにしてるよ」


新婚主婦の挑戦は続く


おしまい

最初、週末と終末をかけようと思って書き始めたけどネタが浮かばなかったためにこうなった。

見てくれた人、ありがとう


>>7
ささみフライが好物です。親子丼も好きです。
ちなみに鶏の唐揚げはレモン汁かける派です。

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