委員長「果てハテはてノ成れノ果て」(12)

委員長「単刀直入に聞きます」

ゆうこ「何?突然」

委員長「貴方は彼の事をどう思っていますか?」

ゆうこ「は?か、彼って誰よ」

委員長「彼は彼ですよ。彼以外の誰でもなく、
    彼以上でも彼以下でもない。故に彼です」

ゆうこ「全く分かんないわね」

委員長「ふぅ。そこまで仰るのならもう少しヒントをば」

委員長「彼とは即ち、『彼』です」

ゆうこ「……」


………………
…………
……


委員長「なぁんて事がありましてね」

サトシ「意味が分からん」

委員長「頭、悪かったんですね」

サトシ「それはお前だ。あと哀れそうな眼を向けるな」

委員長「この間の中間、私の方が成績良かったですよね?」

サトシ「そういう意味じゃねぇよ。あといい加減その目をやめろ」

委員長「はぁい」

サトシ「それで?俺にそんな話してどうしろと」

委員長「もう少しあなたと私が親密になるために、
     ニックネームなんかどうかなーと思いまして」

サトシ「どっからそんな話に繋がるのか、全然分かんねーけど
     好きに呼んでくれていいよ」

委員長「じゃあ、さとりんで」

サトシ「りょーかぁい」

委員長「それじゃあ私にも付けてくださいね」

サトシ「委員長は委員長のままでいいだろ」

委員長「嫌です」

サトシ「なんで?」

委員長「考えてもみてください。『委員長』って私が委員長だから
     委員長なんですよ」

委員長「だったら私が委員長じゃなくなれば委員長じゃ
     ないじゃないですか。
     この先もずっと私が委員長でいる保証なんて
     どこにもありません。ですので、委員長以外の
     ニックネームを要求します」

サトシ「言わんとしてる事は分からんでもないけど。
    でも、急にニックネーム考えろと言われてもなぁ」

サトシ(しかもずっと委員長と呼んできたから名前とか
     忘れてたり)

委員長「……もしかして、私の名前忘れてたりしませんよね?」 ジィッ

サトシ「うっ…」

委員長「…ひどい。一年の時から同じクラスなのに」

サトシ「いや、あの……うん。ま、気にすんなよ」

委員長「気にしますって!」

サトシ「ハハ…」

委員長「まさか、さとりんがそんな人だとは思いませんでした。
     明日からクラスで巨乳好きと呼ばれるんですね。残念です」

サトシ「はぁ?」

委員長「昨日駅前の本屋でさとりんがエッチな本読んでたの
     見かけたんです♪」

委員長「すっごく真剣な顔でしたよね♪」

サトシ「うわぁ…マジかぁ」

委員長「黙ってて欲しかったら私のニックネームを考えろ★
     ガタガタ抜かすと胸も揉まれたと学校で言ってやる」

サトシ「勘弁してくれ…」

委員長「てへっ♪」

サトシ「にしても、ニックネームねぇ」

サトシ「…イインチョとか」

委員長「ぶっ飛ばすよ?」

サトシ「ごめんなさい」

サトシ「それより何でゆうこに俺に事聞いてんのか、そっち
    の方が気になるんだけどさぁ」

委員長「別にゆうこりんだけじゃなくて、学校中の女子に
     聞いてますけど」

サトシ「は?」

委員長「知らなかったんですか。さとりんって意外に女子に
     人気あるんですよ」

サトシ「そうなの!?」

委員長「ウソです」

サトシ「おいっ!」

委員長「まあ、一部の女子に人気があるのは本当です。
     ちっちゃくて紅い目してますからね。持って帰って
     お人形さんにしたいとか、弟にしたいとか、ケツの穴
     掘って調教したいとか」

サトシ「なんか最後怖い単語が聞こえたんだけど…」

委員長「まあそんな私もさとりんで、ぐへへへへへ…」

サトシ「こえぇ」

委員長「すみません。取り乱しました」

サトシ「ああ」

委員長「とにかく、私のニックネーム考えておいてくださいね」

サトシ「分かったよ」

委員長「それじゃあ、私こっちですので」

サトシ「うん、また明日」

委員長「また明日」


こうやって、特に他愛のない会話をしながら俺たちは
帰路に着いたんだった。

そして翌日。


サトシ「おはよー」

ゆうこ「おはよっ」

サトシ「あれ、早いな」

ゆうこ「そりゃあ、まあね…」

サトシ「?」

サトシ「そう言えば、臨時で朝っぱらから職員会議やるって
    放送してたけど何かあったのか?」

ゆうこ「え、サトシ知らないの?」

サトシ「何を?」

ゆうこ「委員長が殺されたって…」

サトシ「え……?」

サトシ「……な、何言ってんだよ。委員長が…殺された?は?」

ゆうこ「……昨日の夜、委員長が塾に行ったきり何時まで
    たっても帰って来ないからって、家族の人が見に行ったら
    ……近くの駐輪場で殺されてたのを発見したんだって」

サトシ「……」

ゆうこ「今朝のニュースでやってたの。バラバラ殺人事件って」

サトシ「バラバラ?」

ゆうこ「うん。首しか見つかってないから。委員長の」

サトシ「な…」

ゆうこ「職員会議は多分それだよ」

サトシ「……そう、か」

ゆうこの言った通り、職員会議は委員長が殺されたこと
についてだったらしい。

今日のところは午前中は自習で、生徒は昼には帰ることになった。
くれぐれも夜に出歩かないようにと散々言われて。

まあ、分からなくもない。
この近辺を殺人鬼がうろついているのかもしれないんだから。

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