暑くなってきたし怖い話でも (27)
前回 夏だし、怖い話を頑張って書いてみる。
夏だし、怖い話を頑張って書いてみる。 - SSまとめ速報
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今回もてきとうに怖い話を創作していきますよー
六時から書き始めます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402644283
大学生だった俺は日々バイトと勉強に明け暮れていた。
家が乏しいため学費は親に頼らず自腹。
大学も本来自分に見合った学力ではないところに受かってしまったため、講義についていくのがやっとだった。
学校のない時間帯はほとんどがバイトと講義の予習復習をしていた。
苦学生、の、つもりはないが周りからそう言われることが多い。
そんな大学生活を送っていた夏休みのこと。
俺はバイトの先輩のアパートに招かれることになった。
正直夏休み中は稼ぎ時なので遊んでる暇はないのだが、先輩の誘いとあっては断れなかった。
この先輩はバイト関係の人間で最も仲のいい先輩だ。
よく相談に乗ってもらったりシフトを変わってもらったりしている。
話も合うし気さくで俺は兄のように慕っていた。
折角よくしてもらっているのに断るのは申し訳ない。
そう思った俺は誘われてすぐに返事を返してしまった。
先輩の家に遊びに行く日。
その日はバイトがあったため夜の九時くらいに先輩の家にやってきていた。
「本当はあと二人来るはずだったんだけど急用でこれなくなっちゃったんだよ。今日は二人っきりだけどいいか?」
先輩は申し訳なさそうな顔をしている。
事前に同じバイト先の仲間が来ることは伝えられていた。
「構いませんよ」
例え二人だけであろうと先輩といるのは楽しいので俺は笑って答えた。
先輩は白い歯を見せるとキッチンの方へ消えていった。
ソファに座っている俺は家を見回す。
この家の間取りは1LDK。現在俺がいるリビングから和室が見える。
家の内装は綺麗で、外装も綺麗だった。
築十年は経っていないと思う。
しかし、そうなるとおかしい。ここは都内だ。しかも駅が近い。歩いて五分だ。
さらに、ここらの家賃の相場は他と比べて高い。
先輩がこんなにいいところに住めるのだろうか?
先輩はフリーターだ。お世辞にも稼ぎがいいとは到底思えない。
キッチンにいた先輩が缶ビール二本を持ってリビングに戻ってきた。
俺のソファの目の前にあるテーブルにビールを置いた。
「いいところだろ。家賃、高そうだろ?」
俺の考えていることがわかったのか、先輩が先に話を振ってくれる。
「実際高いんですか?」
「いや、安いよ」
そのあとに先輩は家賃がどれくらいなのか俺に伝えてくる。
その家賃はありえないほど安かった。
そして、その話を聞いた途端にいっきに空気が重くなったように感じられた。
体も普段より重い気がする。
俺は恐る恐る思っていることを口に出してみた。
「先輩……もしかして……」
「そう、事故物件」
俺は慌ててこの家から出ようとする。しかし、先輩に腕を掴まれて逃げようにも逃げられなかった。
幽霊を信じているわけではない。単純に人が死んだ家に例え一分だってとどまっていたくなかった。
「待てって! 平気だから落ち着けって。この家にいて幽霊が出た経験なんてないから」
「幽霊が怖いわけじゃないです。単純に気味が悪いんですよ」
「そんな気にすんなって。住めば都って言うだろ」
「俺は別にここに住もうとしてるわけじゃないんですけど……」
「まぁ、いいから。な? 先輩の頼みだろ?」
先輩としての権力を振りかざされた俺は渋々、その場に残ることにする。
先輩は俺が帰らないことがわかると安堵の表情を浮かべた。遊び相手がいなくならずにほっとしたのだろう。
俺は大きなため息をつく。先輩は横暴だ。
俺はソファに着いて話を続けた。
「それで。どうしてここに住もうなんて思ったんですか?」
「安いし、幽霊が出るか興味があったから」
ケラケラと先輩は笑いながら話す先輩は楽しそうにしている。
「しかもここで起こった殺人が面白くてよ。男女間のもつれって言うの? ここに住んでた男が二股かけてたらしくてその女の一人に包丁で殺されて死んだよ。んで、その女もここで首吊り自殺したらしい」
俺はその話を聞いた瞬間、全身に悪寒を感じた。
決して怖がっているわけではない。
気味が悪いのだ。
「ほら。そこの和室あるだろ。そこで男が殺されて女がちょうど部屋の真ん中で首を吊ったんだよ」
先輩は和室を指さした。俺は眉根を寄せてその和室を見る。変わった様子はない。
畳も血で汚れているわけではなかった。
それもそうか。そんな事件が起こったなら和室の畳は全替えするだろう。
「それはもう事件後の和室は凄惨な有様だったらしいぞ。
和室の中には滅多刺しになった男の死体と、瞳孔が開いた首吊り死体。
畳に使われている、い草が大量に血を吸っていて、純白のクロスは赤く染まってたらしいぜ」
「や、やめてくださいよ。俺、本当に帰りますよ?」
「悪い悪い。まぁ、変なことは体験してないし安心しろよ」
そう言うと先輩は俺の背中を二回ほど叩いた。
全く、先にこういう物件に先輩が住んでいることがわかっていたら丁重にお断りしていたのに。
俺は先輩の話を断っておけばよかったと後悔する。
まぁ、悪態をついたところでしょうがないか。
話が一段落して、先輩はテーブルの上にあった缶ビールを開けると豪快に一気飲みした。
俺も頭に残った先程の話を洗い流すようにビールを一気に飲み干す。
それからの時間は本当に楽しかった。先輩とつまみとビールを飲み食いしながら他愛もない会話を繰り広げた。
バイト先の女子高生が可愛くない。店長が役に立たない。パートのおばちゃんが妙に突っかかってくる。
本当に非生産的な会話だった。
しかし、時間は瞬く間に過ぎていき、気がつけば夜中の二時を回ったところだった。
お互い、そろそろ限界に近く俺の視界は霞んでいた。先輩も呂律が回っていない。
話が一段落して、先輩はテーブルの上にあった缶ビールを開けると豪快に一気飲みした。
俺も頭に残った先程の話を洗い流すようにビールを一気に飲み干す。
それからの時間は本当に楽しかった。先輩とつまみとビールを飲み食いしながら他愛もない会話を繰り広げた。
バイト先の女子高生が可愛くない。店長が役に立たない。パートのおばちゃんが妙に突っかかってくる。
本当に非生産的な会話だった。
それでも楽しいことに変わりはなかった。
時間は瞬く間に過ぎていき、気がつけば夜中の二時を回ったところだった。
お互い、そろそろ限界に近く俺の視界は霞んでいた。先輩も呂律が回っていない。
睡魔も襲ってきている。寝る時間としても悪くない。
「今日はもう、うちに泊まっていくだろ?」
「はい。そうします」
殺人事件の話はビールと一緒に流してしまった俺はすぐに返事を返した。
だが、先輩が客用の敷布団がないと言い始めた。
俺は何も敷かないでいいと言うと先輩は了承してくれた。
二人で和室に入ると、先輩は電気を消した。
そのまま脚付のベッドの上でいびきをかきながら寝てしまった。
俺は畳に顔を押し付けて、妙に落ち着く畳の匂いを嗅いだ。
訂正
先輩は脚付のベッドの上に倒れこむようにして体を預けると、いびきをかきながらそのまま寝てしまった。
しかし、おかしい。さっきまでやってきていた睡魔が忽然と消えてしまった。
夏の夜は寝苦しい。睡魔もどこかへいってしまう。それは確かだ。
だが、この和室はエアコンが効いている。肌寒いほどに。
だとすれば、寒くて眠気が飛んでしまったのかもしれない。
俺は毛布を借りておけばよかったと後悔する。
中々やってこない睡魔に苛立ちを感じながら俺は何回か寝返りを打った。
先輩のベッドの方に寝返りを打った俺は、いつまで経っても睡魔が来ないため目を開けてしまう。
しょうがない。スマホを弄りながら待つとしよう。
寝ると同時に頭の付近に置いておいたスマホを取ろうとする。
しかし、ベッド下に大きな黒い物体があることに気づく。
脚付のベッドなので下には人が一人入れそうなスペースが出来ている。
まだ夜に目が慣れていないためそれがなんなのかはわからない。
その物体がスペースを覆い尽くしてしまうほど大きいということだけがわかった。
なんだろう。俺には皆目検討もつかなかった。
その前に寝る前に先輩のベッドの下になにかあったっけ?
訂正
夜 ×
暗闇 ○
暗闇にだんだんと目が慣れてくると俺の息が詰まった。
ぼんやりとしていた意識も一気に覚醒する。
狭い空間に閉じ込められたような圧迫感と息苦しさがやってきた。
ベッドの下にあった黒い物体は人間だった。
暗闇に慣れた俺の瞳には黒い長髪の女性が写っている。
仰向けで寝そべり人形のように動かない。ただ虚空を見つめている。
鼻頭がベッドに当たっているが気にも止めていない。
こちらにも気づいていない様子だった。
俺は状況が飲み込めなくて様々な情報が頭の中で錯綜する。
(あれはなんだ。先輩のストーカー? なぜここにいる。さっきまではいなかったはず。
通報したほうがいいのか? それともただの人形? いや、あんな精巧な人形がこの世にあるはずがない。
それに緊張で体が動かない)
支離滅裂と色々な言葉が頭を巡る。
だが、あることを思い出して瞬間、ふと冷静になった。
ここでは殺人事件があった。
だとすればあれはここで死んだ幽霊なのではないか。
いやいや、と。その考えを振り払おうとする。
しかし、現状それが一番納得できる答えだった。
だったら話は早い。寝てしまおう。
それで気づいたら朝だ。
幽霊だったらなんの実害もないはず。
俺は少々自暴自棄になりながら目を閉じようとした。
しかし、目を閉じる前に俺は女性の左手にあるものに気づいてしまった。
包丁だ。それも柄を壊さんばかりに思い切り握っている。
「あ――」
驚いて思わず声を上げてしまい俺は慌てて両手で口を塞いだ。
体中の穴という穴から嫌な汗が吹き出てきた。
一気に心拍数が跳ね上がったのが自分でもわかった。
――気づかれたか?
女性は気づいていないのか微動だにしない。
俺は安心する。
大体、物音立てて気づかれてもどうということはない。
あいつは幽霊かもしれないんだ。
霊体が普通の人間に危害を加えられるはずがない。
あの包丁だって俺には届かない。
数時間前まで幽霊を信じていなかった人間とは思えない思考回路になっている。
そして、さっきの安心のせいで先程まで張り詰めていた緊張の糸が一気に切れた。
それと同時に物凄い眠気がやって来た。
あ、これで眠れる。
そう思った矢先、俺の体は硬直する。切れた緊張の糸が復活する。
突然、女性は顔を俺に向けてきたのだ。
瞳孔が開いた瞳は俺を見ているのか、さらにその先を見ているのかよくわからなかった。
しかし、俺にははっきり女性が自分を視認しているように思えた。
蛇に睨まれた蛙の俺は体の自由の一切を奪われた。
知らず知らずのうちに恐怖のあまりか歯を打ち鳴らした。
先程自分を納得させたのも忘れて混乱する。
女性は表情一つ変えずに俺の方に包丁を持つ左手を伸ばしてきた。
「ひ!」
俺の短い悲鳴も気にせず女性はずるずると、体をベッドの下から出てきた。
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