一度だけ、本物の星を見たことがある。
旅行先ではなく、自分の部屋の窓からだ。空気が綺麗で、夜がちゃんと暗い町み住んでい
る人にはさして珍しくもないだろうが、俺が10年間暮らした埼玉県川越市は残念ながらそのどちらでもない。
晴れた夜でも、肉眼で見えるのはせいぜい二等星までだ。
でも、とある真冬の真夜中、何気なく眼を向けた窓外に、俺は確かに見た。星などほとん
どない、深夜でもどこか白っぽい天蓋を垂直に切り裂いた、一瞬の閃光を。小学四年生か五年生
だった俺は、何か願い事をしなきゃと子供らしい事を考えた.......まではいいが、真っ先に浮かんだ
願い事は「モンスターがレアアイテム落としますように」という情緒の欠片もない願い事だった。
何せ当時ハマっていた沈黙の遺跡エストポリス外伝のレベリング中だったのだから
あの日と同じ色、同じスピードの流星を、俺は三年（あるいは四年）ぶりに見た。
しかし今回は肉眼によってではないし、背景はダークグレーの夜空ではない。
　　　　　　　　　　　　[ナーヴギア]
全世界初に全感覚投入型インターフェース.マシンの作り出す、薄暗い
迷宮の奥底で、だ。

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